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特開2024-20205有機電界発光素子及び有機電界発光素子用多環化合物
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  • 特開-有機電界発光素子及び有機電界発光素子用多環化合物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020205
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】有機電界発光素子及び有機電界発光素子用多環化合物
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20240206BHJP
   C07F 7/08 20060101ALI20240206BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240206BHJP
   H10K 85/30 20230101ALI20240206BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240206BHJP
   H10K 50/12 20230101ALI20240206BHJP
   H10K 59/00 20230101ALI20240206BHJP
   C07D 519/00 20060101ALN20240206BHJP
   C07D 471/10 20060101ALN20240206BHJP
【FI】
C07F5/02 A CSP
C07F7/08 R
C09K11/06 660
H10K85/30
H10K85/60
H10K50/12
H10K59/00
C07D519/00 311
C07D471/10 101
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023177566
(22)【出願日】2023-10-13
(62)【分割の表示】P 2019059048の分割
【原出願日】2019-03-26
(31)【優先権主張番号】10-2018-0039925
(32)【優先日】2018-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1, Samsung-ro, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002619
【氏名又は名称】弁理士法人PORT
(72)【発明者】
【氏名】赤司 信隆
(72)【発明者】
【氏名】須崎 裕司
(57)【要約】      (修正有)
【課題】効率に優れた有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】第1電極、第1電極上に設けられた正孔輸送領域、正孔輸送領域上に設けられた発光層、発光層上に設けられた電子輸送領域、及び電子輸送領域上に設けられた第2電極を含み、発光層は、下記化学式1で表される多環化合物を含む有機電界発光素子。式1において、XはC、SiまたはGeであり、Arは、アリール基、またはヘテロアリール基であり、ACは電子受容性基である。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される多環化合物。
【化1】

(前記化学式1において、
は、C、SiまたはGeであり、
Arは、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、
~Rは、それぞれ独立して重水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、
a~dは、それぞれ独立して0以上4以下の整数であり、
ACは下記化学式3で表され、
【化2】


前記化学式3において、
はO、SまたはCRであり、
~Rは、それぞれ独立して重水素原子、または置換若しくは無置換の炭素数1以上5以下のアルキル基であり、隣接する基と互いに結合して炭化水素環またはヘテロ環を形成するか又は形成せず、
、Rは、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、または置換若しくは無置換の炭素数1以上5以下のアルキル基であり、隣接する基と互いに結合して炭化水素環またはヘテロ環を形成するか又は形成せず、
fは0以上3以下の整数であり、
gは0以上4以下の整数であり、
hは0以上5以下の整数である。)
【請求項2】
前記化学式3は、下記化学式3-1または3-2で表されることを特徴とする請求項1に記載の多環化合物。
【化3】

(前記化学式3-1及び化学式3-2において、
及びYは、それぞれ独立してO、SまたはCR2627であり、
26及びR27は、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1以上5以下のアルキル基である。)
【請求項3】
前記化学式1で表される多環化合物は、下記化合物群1に表された化合物から選択される何れか1つであることを特徴とする請求項1に記載の多環化合物。
[化合物群1]
【化4】








【請求項4】
第1電極と、
前記第1電極上に設けられた正孔輸送領域と、
前記正孔輸送領域上に設けられ、請求項1~請求項3の何れか1つの多環化合物を含む発光層と、
前記発光層上に設けられた電子輸送領域と、
前記電子輸送領域上に設けられた第2電極と、を含み、
前記第1電極及び前記第2電極はそれぞれ独立して、Ag,Mg,Cu,Al,Pt,Pd,Au,Ni,Nd,Ir,Cr,Li,Ca,LiF/Ca,LiF/Al,Mo,Ti,In,Sn及びZnからなる群から選択される一つ、これらの中から選択される複数を含む化合物、これらに中から選択される複数を含む混合物、又はこれらの中から選択される1つ以上の酸化物を含む、ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項5】
前記発光層は、ホスト及びドーパントを含み、
前記ドーパントが前記多環化合物を含むことを特徴とする請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記多環化合物は、470nm未満の波長領域を有する青色ドーパントであることを特徴とする請求項5に記載の有機電界発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子及びこれに用いられる多環化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
映像表示装置として、有機電界発光素子(Organic Electroluminescence Device)の開発が活発に行われている。有機電界発光素子は、液晶表示装置などとは異なり、第1電極及び第2電極から注入された正孔及び電子を発光層において再結合させることにより、発光層に含まれる有機化合物である発光材料を発光させて表示を実現する、いわゆる自発光型の表示装置である。
【0003】
有機電界発光素子としては、例えば、第1電極、第1電極上に配置された正孔輸送層、正孔輸送層上に配置された発光層、発光層上に配置された電子輸送層、及び電子輸送層上に配置された第2電極からなる有機素子が知られている。第1電極からは正孔が注入され、注入された正孔は正孔輸送層を移動して発光層に注入される。一方、第2電極からは電子が注入され、注入された電子は電子輸送層を移動して発光層に注入される。発光層に注入された正孔と電子が再結合することにより、発光層内で励起子が生成される。有機電界発光素子は、その励起子が再び基底状態に落ちる時に発生する光を利用して発光する。また、有機電界発光素子は、以上に説明した構成に限定されず、様々な変更が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国公開特許第2010-0120075号公報
【特許文献2】中国特許出願公開第106831773号明細書
【特許文献3】特開2002-265938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、有機電界発光素子及びこれに用いられる多環化合物を提供すること目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、第1電極、第1電極上に設けられた正孔輸送領域、正孔輸送領域上に設けられた発光層、発光層上に設けられた電子輸送領域、及び電子輸送領域上に設けられた第2電極を含み、発光層は下記化学式1で表される多環化合物を含む有機電界発光素子が提供される。
【0007】
【化1】

【0008】
化学式1において、XはC、SiまたはGeであり、Arは、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、R~Rは、それぞれ独立して重水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、a~dは、それぞれ独立して0以上4以下の整数であり、ACは下記化学式2~10の何れか1つで表される構造である。
【0009】
【化2】








【0010】
化学式2において、Z~Z13はそれぞれ独立してCHまたはNであり、Z~Zのうち2つまたは3つはNであり、Z~Z13のうち少なくとも1つはNであり、eは0以上2以下の整数である。
【0011】
化学式3において、XはO、SまたはCRであり、R~Rは、それぞれ独立して重水素原子、または置換若しくは無置換の炭素数1以上5以下のアルキル基であり、隣接する基と互いに結合して炭化水素環またはヘテロ環を形成してもよく、R、Rは、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、または置換若しくは無置換の炭素数1以上5以下のアルキル基であり、fは0以上3以下の整数であり、gは0以上4以下の整数であり、hは0以上5以下の整数である。
【0012】
化学式4において、iは0~2の整数であり、YはNまたはCR10であり、YはNまたはCR11であり、YはNまたはCR12であり、YはNまたはCR13であり、YはNまたはCR14であり、Y~Yのうち少なくとも1つはNであり、R10~R14は、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、シアノ基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、またはトリフルオロメチル基であり、化学式1のXがCである場合、R10~R14のうち少なくとも1つは水素原子ではなく、Y及びYのうち少なくとも1つがNである場合、YはCR12であり、R12はシアノ基ではない。
【0013】
化学式7において、A~A13はそれぞれ独立してNまたはCR15であり、A~Aのうち少なくとも1つはNであり、A~A13のうち少なくとも1つはNであり、A~A13のうち1つは化学式1のNと結合される部位であり、R15は、水素原子、重水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0014】
化学式8において、B~B10はそれぞれ独立してNまたはCR16であり、B~B10のうち1つは化学式1のNと結合される部位であり、Xは単結合(direct linkage)、O、S、CR1718、またはSiR1920であり、jは0または1であり、jが1である場合、B及びBはCであり、R16~R20は、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0015】
化学式9において、E~E10はそれぞれ独立してNまたはCR21であり、E~E10のうち1つは化学式1のNと結合される部位であり、Xは単結合、O、S、CR2223、またはSiR2425であり、kは0または1であり、kが1である場合、E及びEはCであり、R21~R25は、それぞれ独立して水素原子、重水素原子
、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0016】
化学式3は、下記化学式3-1または化学式3-2で表されてもよい。
【0017】
【化3】

【0018】
化学式3-1及び化学式3-2において、X、R、R、f及びgは化学式3での定義と同一であり、Y及びYはそれぞれ独立してO、SまたはCR2627であり、R26及びR27は、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1以上5以下のアルキル基である。
【0019】
化学式4は、下記化学式の何れか1つで表されてもよい。
【0020】
【化4】
【0021】
化学式7は、下記化学式の何れか1つで表されてもよい。
【0022】
【化5】

【0023】
化学式8は、下記化学式の何れか1つで表されてもよい。
【0024】
【化6】

【0025】
化学式9は、下記化学式の何れか1つで表されてもよい。
【0026】
【化7】
【0027】
化学式1において、Arは置換若しくは無置換のフェニル基であってもよい。
【0028】
発光層はホスト及びドーパントを含み、ドーパントが化学式1で表される多環化合物を含んでもよい。
【0029】
化学式1で表される多環化合物は、熱活性遅延蛍光用ドーパントであってもよい。
【0030】
化学式1で表される多環化合物は、470nm未満の波長領域を有する青色ドーパントであってもよい。
【0031】
正孔輸送領域は、第1電極上に配置された正孔注入層と、正孔注入層上に配置された正孔輸送層と、正孔輸送層上に配置された電子阻止層と、を含んでもよい。
【0032】
電子輸送領域は、発光層上に配置された正孔阻止層と、正孔阻止層上に配置された電子輸送層と、電子輸送層上に配置された電子注入層と、を含んでもよい。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、上記化学式1で表される多環化合物が提供される。
【発明の効果】
【0034】
本発明の一実施形態による有機電界発光素子は、効率に優れている。
【0035】
本発明の一実施形態による多環化合物は、有機電界発光素子に適用でき、高効率化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以上の本発明の目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付の図面及び以下の好ましい実施形態により容易に理解できるだろう。しかし、本発明は、ここに説明する実施形態に限定されず、他の形態で実現されることができる。むしろ、ここで紹介する実施形態は、開示された内容が徹底且つ完全になるように、そして、通常の技術者に本発明の思想が十分に伝達されるように提供するものである。
【0038】
各図面を説明するにあたり、類似する構成要素には類似する参照符号を使用した。添付の図面において、構造物の寸法は、本発明を明確にするために実際より拡大して示したものである。第1、第2などの用語は、様々な構成要素を説明するために用いられるが、上記構成要素は上記用語により限定されてはならない。上記用語は1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられる。例えば、本発明の権利範囲から外れない範囲内で、第1構成要素は第2構成要素と命名されてもよく、同様に、第2構成要素も第1構成要素と命名されてもよい。単数の表現は文脈上明らかに違う意味を持たない限り、複数の表現を含む。
【0039】
本明細書において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品、またはこれらの組み合わせが存在することを指定するためであり、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらの組み合わせの存在または付加可能性を事前に排除するものではないと理解すべきである。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あるというときは、他の部分の「真上に」ある場合のみならず、その中間に他の部分がある場合も含む。逆に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下部に」あるというときは、他の部分の「真下に」ある場合のみならず、その中間に他の部分がある場合も含む。
【0040】
まず、図1図3を参照して本発明の一実施形態による有機電界発光素子について説明する。
【0041】
図1は本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。図2は本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。図3は本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
【0042】
図1図3を参照すると、本発明の一実施形態による有機電界発光素子10は、第1電極EL1、正孔輸送領域HTR、発光層EML、電子輸送領域ETR、及び第2電極EL2を含む。
【0043】
第1電極EL1は導電性を有する。第1電極EL1は画素電極または正極であってもよい。第1電極EL1は透過型電極、半透過型電極または反射型電極であってもよい。第1電極EL1が透過型電極である場合、第1電極EL1は、透明金属酸化物、例えば、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、ZnO(zinc oxide)、ITZO(indium tin zinc oxide)などを含んでもよい。第1電極EL1が半透過型電極または反射型電極である場合、第1電極EL1は、Ag、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Mo、Ti、またはこれらの化合物や混合物(例えば、AgとMgの合金)を含んでもよい。または上記物質で形成された反射膜や半透過膜及びITO、IZO、ZnO、ITZOなどで形成された透明導電膜を含む複数の層の構造であってもよい。例えば、第1電極EL1は、ITO/Ag/ITOの3層構造であってもよいが、これに限定されない。
【0044】
第1電極EL1の厚さは、約100nm~約1000nm、例えば、約100nm~約300nmであってもよい。
【0045】
正孔輸送領域HTRは第1電極EL1上に設けられる。正孔輸送領域HTRは、正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、正孔バッファ層、及び電子阻止層EBLのうち少なくとも1つを含んでもよい。正孔輸送領域HTRの厚さは、例えば、約100nm~約150nmであってもよい。
【0046】
正孔輸送領域HTRは、単一物質からなる単一層、複数の異なる物質からなる単一層または複数の異なる物質からなる複数の層を有する多層構造であってもよい。
【0047】
例えば、正孔輸送領域HTRは、正孔注入層HILまたは正孔輸送層HTLの単一層の構造であってもよく、正孔注入物質と正孔輸送物質からなる単一層の構造であってもよい。また、正孔輸送領域HTRは、複数の異なる物質からなる単一層の構造であるか、第1電極EL1から順に積層された正孔注入層HIL/正孔輸送層HTL、正孔注入層HIL/正孔輸送層HTL/正孔バッファ層、正孔注入層HIL/正孔バッファ層、正孔輸送層HTL/正孔バッファ層、または正孔注入層HIL/正孔輸送層HTL/電子阻止層EBLの構造であってもよいが、これに限定されない。
【0048】
正孔輸送領域HTRは、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法(Langmuir-Blodgett)、インクジェットプリント法、レーザープリント法、レーザー熱転写法(Laser Induced Thermal Imaging、LITI)などのような様々な方法を利用して形成されてもよい。
【0049】
正孔注入層HILは、例えば、銅フタロシアニン(copper phthalocyanine)などのフタロシアニン(phthalocyanine)化合物;DNTPD(N,N’-diphenyl-N,N’-bis-[4-(phenyl-m-tolyl-amino)-phenyl]-biphenyl-4,4’-diamine)、m-MTDATA(4,4’,4’’-tris(3-methylphenylphenylamino)triphenylamine)、TDATA(4,4’4’’-Tris(N,N-diphenylamino)triphenylamine)、2-TNATA(4,4’,4’’-tris{N,-(2-naphthyl)-N-phenylamino}-triphenylamine)、PEDOT/PSS(Poly(3,4-ethylenedioxythiophene)/Poly(4-styrenesulfonate))、PANI/DBSA(Polyaniline/
Dodecylbenzenesulfonic acid)、PANI/CSA(Polyaniline/Camphor sulfonicacid)、PANI/PSS((Polyaniline)/Poly(4-styrenesulfonate))、NPD(N,N’-di(naphthalene-l-yl)-N,N’-diplienyl-benzidine)、トリフェニルアミンを含むポリエーテルケトン(TPAPEK)、4-Isopropyl-4’-methyldiphenyliodonium Tetrakis(pentafluorophenyl)borate]、HAT-CN(dipyrazino[2,3-f:2’,3’-h]quinoxaline-2,3,6,7,10,11-hexacarbonitrile)などを含んでもよい。
【0050】
正孔輸送層HTLは、例えば、N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、フルオレン誘導体、TPD(N,N’-bis(3-methylphenyl)-N,N’-diphenyl-[1,1-biphenyl]-4,4’-diamine)、TCTA(4,4’,4’’-tris(N-carbazolyl)triphenylamine)などのようなトリフェニルアミン誘導体、NPB(N,N’-di(naphthalene-l-yl)-N,N’-diplienyl-benzidine)、TAPC(4,4’-Cyclohexylidene bis[N,N-bis(4-methylphenyl)benzenamine])、HMTPD(4,4’-Bis[N,N’-(3-tolyl)amino]-3,3’-dimethylbiphenyl)などを含んでもよい。
【0051】
正孔輸送領域HTRの厚さは、約10nm~約1000nm、例えば、約10nm~約100nmであってもよい。正孔輸送領域HTRが正孔注入層HIL及び正孔輸送層HTLの両方を含むと、正孔注入層HILの厚さは、約10nm~約1000nm、例えば、約10nm~約100nmであり、正孔輸送層HTLの厚さは、約3nm~約100nmであってもよい。正孔輸送領域HTR、正孔注入層HIL、及び正孔輸送層HTLの厚さが上述のような範囲を満たす場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに優れた正孔輸送特性を得ることができる。
【0052】
正孔輸送領域HTRは、上述した物質のほかに、導電性向上のために電荷生成物質をさらに含んでもよい。電荷生成物質は、正孔輸送領域HTR内に均一または不均一に分散されていてもよい。電荷生成物質は、例えば、p-ドーパント(dopant)であってもよい。p-ドーパントは、キノン(quinone)誘導体、金属酸化物及びシアノ(cyano)基含有化合物のうち1つであってもよいが、これに限定されない。例えば、p-ドーパントの例としては、TCNQ(Tetracyanoquinodimethane)及びF4-TCNQ(2,3,5,6-tetrafluoro-tetracyanoquinodimethane)などのようなキノン誘導体、タングステン酸化物、及びモリブデン酸化物などのような金属酸化物などが挙げられるが、これに限定されない。
【0053】
上述したように、正孔輸送領域HTRは、正孔注入層HIL及び正孔輸送層HTLのほかに、正孔バッファ層及び電子阻止層のうち少なくとも1つをさらに含んでもよい。正孔バッファ層は、発光層EMLから放出される光の波長に応じた共振距離を補償して光放出効率を増加させることができる。正孔バッファ層に含まれる物質としては、正孔輸送領域HTRに含むことができる物質を使用することができる。電子阻止層は、電子輸送領域ETRから正孔輸送領域HTRへの電子注入を防止する役割をする層である。
【0054】
発光層EMLは正孔輸送領域HTR上に提供される。発光層EMLは、例えば、約10nm~約100nm、または約10nm~約30nmの厚さを有するものであってもよい。発光層EMLは、単一物質からなる単一層、複数の異なる物質からなる単一層または複数の異なる物質からなる複数の層を有する多層構造であってもよい。
【0055】
発光層EMLは、本発明の一実施形態による多環化合物を含む。以下では、本発明の一実施形態による多環化合物について詳細に説明する。
【0056】
【0057】
「置換若しくは無置換の」は、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、シリル基、ホウ素基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、及びヘテロ環基からなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されている、若しくは置換されていないことを意味する。また、上記例示された置換基のそれぞれは、置換されていてもよく、置換されていないものであってもよい。例えば、ビフェニリル基はアリール基と解釈されてもよく、フェニル基で置換されたフェニル基として解釈されてもよい。ヘテロ環基は脂肪族ヘテロ環及び芳香族ヘテロ環(ヘテロアリール基)を含む。
【0058】
例えば、「置換若しくは無置換の」は、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、及びヘテロ環基からなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されている、若しくは置換されていないことを意味してもよい。
【0059】
本明細書において、ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子がある。
【0060】
本明細書において、アルキル基は、直鎖、分岐鎖または環状であってもよい。アルキル基の炭素数は、1以上30以下、1以上20以下、1以上10以下、または1以上5以下である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、i-ブチル基、2-エチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、シクロペンチル基、1-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-エチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-ブチルヘキシル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-t-ブチルシクロヘキシル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘプチル基、2,2-ジメチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、2-ブチルヘプチル基、n-オクチル基、t-オクチル基、2-エチルオクチル基、2-ブチルオクチル基、2-ヘキシルオクチル基、3,7-ジメチルオクチル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、アダマンチル基、2-エチルデシル基、2-ブチルデシル基、2-ヘキシルデシル基、2-オクチルデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、2-エチルドデシル基、2-ブチルドデシル基、2-ヘキシルドデシル基、2-オクチルドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、2-エチルヘキサデシル基、2-ブチルヘキサデシル基、2-ヘキシルヘキサデシル基、2-オクチルヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基、2-エチルイコシル基、2-ブチルイコシル基、2-ヘキシルイコシル基、2-オクチルイコシル基、n-ヘンイコシル基、n-ドコシル基、n-トリコシル基、n-テトラコシル基、n-ペンタコシル基、n-ヘキサコシル基、n-ヘプタコシル基、n-オクタコシル基、n-ノナコシル、及びn-トリアコンチル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
本明細書において、アルケニル基は直鎖または分枝鎖であってもよい。炭素数は特に限定されないが、2以上30以下、2以上20以下、または2以上10以下である。アルケニル基の例としては、ビニル基、1-ブテニル基、1-ペンテニル基、1,3-ブタジエニルアリール基、スチレニル基、スチリルビニル基などがあるが、これらに限定されない。
【0062】
本明細書において、アリール基は芳香族炭化水素環から誘導された任意の作用基または置換基を意味する。アリール基は単環式アリール基または多環式アリール基であってもよい。アリール基の環形成炭素数6以上60以下、6以上30以下、6以上20以下、または6以上15以下であってもよい。アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、クォーターフェニリル基、キンクフェニリルフ基、セクシフェニル基、ビフェニレニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、ベンゾフルオランテニル基、クリセニル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
本明細書において、フルオレニル基は置換されてもよく、置換基2つが互いに結合してスピロ構造を形成してもよい。フルオレニル基が置換される場合の例示は下記の通りである。但し、これに限定されるものではない。
【0064】
【化8】



【0065】
本明細書において、ヘテロ環基はヘテロ原子としてB、O、N、P、Si及びSのうち1つ以上を含んでもよい。ヘテロ環基がヘテロ原子を2つ以上含む場合、2つ以上のヘテロ原子は互いに同一または異なってもよい。ヘテロ環基は単環式ヘテロ環基または多環式ヘテロ環基であってもよく、ヘテロアリール基であってもよい。ヘテロ環基の環形成炭素数は2以上30以下、2以上20以下、または2以上10以下であってもよい。ヘテロ環基の例としては、チオフェニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアゾリル基、ピリジニル基、ビピリジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、アクリジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、キノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、フェノキサジニル基、プタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリニル基、インドリル基、カルバゾリル基、N-アリールカルバゾリル基、N-ヘテロアリールカルバゾリル基、N-アルキルカルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基、チエノチオフェニル基、ベンゾフラニル基、フェナントロリニル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、フェノチアジニル基、ジベンゾシロリル基、及びジベンゾフラニル基などがあるが、これらに限定されない。
【0066】
本明細書において、シリル基は、アルキルシリル基及びアリールシリル基を含む。シリル基の例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、フェニルシリル基などがあるが、これらに限定されない。
【0067】
本明細書において、ホウ素基は、アルキルホウ素基及びアリールホウ素基を含む。ホウ素基の例としては、トリメチルホウ素基、トリエチルホウ素基、t-ブチルジメチルホウ素基、トリフェニルホウ素基、ジフェニルホウ素基、フェニルホウ素基などがあるが、これらに限定されない。
【0068】
本明細書において、アミノ基の炭素数は特に限定されないが、1以上30以下であってもよい。アミノ基は、アルキルアミノ基及びアリールアミノ基を含んでもよい。アミノ基の例としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、9-メチル-アントラセニルアミノ基、トリフェニルアミノ基などがあるが、これらに限定されない。
【0069】
本明細書において、ホスフィンオキシド基は、例えば、アルキル基及びアリール基のうち少なくとも1つで置換されてもよい。ホスフィンオキシド基の例としては、フェニルホスフィンオキシド基、ジフェニルホスフィンオキシド基などがあるが、これに限定されない。
【0070】
本明細書において、ホスフィンスルフィド基は、アルキル基及びアリール基のうち少なくとも1つで置換されてもよい。
【0071】
本発明の一実施形態による多環化合物は、下記化学式1で表される。
【0072】
【化9】
【0073】
化学式1において、XはC、SiまたはGeである。Arは、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。R~Rは、それぞれ独立して、重水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。a~dは、それぞれ独立して0以上4以下の整数である。ACは下記化学式2~10の何れか1つで表される。
【0074】
【化10】







【0075】
化学式2において、Z~Z13はそれぞれ独立してCHまたはNであり、Z~Zのうち2つまたは3つはNであり、Z~Z13のうち少なくとも1つはNであり、eは0以上2以下の整数である。
【0076】
化学式3において、XはO、SまたはCRである。R~Rは、それぞれ独立して、重水素原子、または置換若しくは無置換の炭素数1以上5以下のアルキル基であり、隣接する基と互いに結合して炭化水素環またはヘテロ環を形成してもよい。R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、または置換若しくは無置換の炭素数1以上5以下のアルキル基であり、隣接する基と互いに結合して炭化水素環またはヘテロ環を形成してもよい。fは0以上3以下の整数であり、gは0以上4以下の整数であり、hは0以上5以下の整数である。
【0077】
化学式4において、iは0~2の整数であり、YはNまたはCR10であり、YはNまたはCR11であり、YはNまたはCR12であり、YはNまたはCR13であり、YはNまたはCR14であり、Y~Yのうち少なくとも1つはNであり、R10~R14は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、シアノ基、またはトリフルオロメチル基であり、化学式1のXがCである場合、R10~R14のうち少なくとも1つは水素原子ではなく、Y及びYのうち少なくとも1つがNである場合、YはCR12であり、R12はシアノ基ではない。
【0078】
化学式7において、A~A13はそれぞれ独立してNまたはCR15であり、A~Aのうち少なくとも1つはNであり、A~A13のうち少なくとも1つはNであり、A~A13のうち1つは化学式1のNと結合部位である。R15は、水素原子、重水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0079】
化学式8において、B~B10はそれぞれ独立してNまたはCR16であり、B~B10のうち1つは化学式1のNと結合される部位である。Xは単結合、O、S、CR1718、またはSiR1920である。jは0または1であり、jが1である場合、B及びBはCである。R16~R20は、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0080】
化学式9において、E~E10はそれぞれ独立してNまたはCR21であり、E~E10のうち1つは化学式1のNと結合される部位である。Xは単結合、O、S、CR2223、またはSiR2425である。kは0または1であり、kが1である場合、E及びEはCである。R21~R25は、それぞれ独立して水素原子、重水素原子
、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0081】
化学式1において、aが2以上である場合、複数のRは互いに同一または異なり、bが2以上である場合、複数のRは互いに同一または異なり、cが2以上である場合、複数のRは互いに同一または異なり、dが2以上である場合、複数のRは互いに同一または異なる。
【0082】
化学式1において、a~dの少なくとも一つが0である場合、R~Rが結合され得る炭素原子には水素原子が結合される。
【0083】
例えば、a~dはそれぞれ0であってもよい。但し、これに限定されるものではなく、多環化合物のエネルギーレベルの調整などのために、a~dのうち少なくとも1つが1以上であり、水素原子ではない置換基が導入されてもよい。
【0084】
化学式1において、Arは、置換若しくは無置換の炭素数6以上20以下のアリール基であってもよい。例えば、Arは置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換のナフチル基、置換若しくは無置換のビフェニリル基、置換若しくは無置換のアントラセニル基、置換若しくは無置換フェナントレニル基、または置換若しくは無置換のターフェニリル基であってもよい。例えば、Arは置換若しくは無置換のフェニル基であってもよい。例えば、Arは置換されていないフェニル基であってもよい。
【0085】
化学式1のACは電子受容性基であり、化学式1のACを除く構造は電子供与性基ある。即ち、本発明の一実施形態による多環化合物は、電子受容性基と電子供与性基を1つの分子内に含む。
【0086】
化学式2において、Z~Z、及びZ10~Z12のうち少なくとも1つはNであってもよい。
【0087】
化学式3において、fが2以上である場合、複数のRは互いに同一または異なり、gが2以上である場合、複数のRは互いに同一または異なり、hが2以上である場合、複数のRは互いに同一または異なる。
【0088】
化学式3において、f~hの少なくとも一つが0である場合、R~Rが結合され得る炭素原子には水素原子が結合される。
【0089】
例えば、hは1以上であり、Rは置換若しくは無置換の炭素数1以上5以下のアルキル基であってもよい。化学式3は、例えば、下記化学式3-1で表されてもよい。
【0090】
【化11】
【0091】
化学式3-1において、X、R、R、f及びgは、化学式3での定義と同一である。化学式3-1は、より具体的には、下記化学式3-1-1または化学式3-1-2で表されてもよい。
【0092】
【化12】

【0093】
化学式3-1-1及び化学式3-1-2において、Xは化学式3での定義と同一である。
【0094】
化学式3において、XはOまたはSであってもよい。化学式3において、XはCRであり、R及びRは、それぞれ独立して置換若しくは無置換のメチル基であってもよい。
【0095】
上述したように、化学式3において、R~Rは隣接する基と互いに結合して炭化水素環またはヘテロ環を形成することもできる。例えば、化学式3は、下記化学式3-2で表されてもよい。
【0096】
【化13】
【0097】
化学式3-2において、Xは化学式3での定義と同一であり、Y及びYは、それぞれ独立してO、SまたはCR2627であり、R26及びR27は、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、置換または置換されていない炭素数1以上5以下のアルキル基である。例えば、R26及びR27は、それぞれ置換若しくは無置換のメチル基であってもよい。
【0098】
化学式3-2において、Y及びYのうち少なくとも1つはCR2627であってもよい。
【0099】
化学式3-2は、より具体的には、下記化学式3-2-1~化学式3-2-5の何れか1つで表されてもよい。
【0100】
【化14】




【0101】
化学式4は、例えば、下記化学式の何れか1つで表されてもよい。但し、これによって限定されるものではない。
【0102】
【化15】
【0103】
化学式7は、例えば、下記化学式の何れか1つで表されてもよい。但し、これによって限定されるものではない。
【0104】
【化16】

【0105】
化学式8は、例えば、下記化学式の何れか1つで表されてもよい。但し、これによって限定されるものではない。
【0106】
【化17】

【0107】
化学式9は、例えば、下記化学式の何れか1つで表されてもよい。但し、これによって限定されるものではない。
【0108】
【化18】
【0109】
化学式1で表される多環化合物は、下記化合物群1に表される化合物から選択される何れか1つであってもよい。但し、これによって限定されるものではない。
【0110】
[化合物群1]
【化19】



























【0111】
本発明の一実施形態による多環化合物は、一重項エネルギー準位及び三重項エネルギー準位の差が0.2eV以下であってもよく、結果的に熱活性遅延蛍光材料として利用可能である。本発明の一実施形態による多環化合物は、有機電界発光素子用材料に適用され、効率の向上に寄与することができる。
【0112】
また、図1図3を参照して有機電界発光素子について説明する。
【0113】
発光層EMLは、化学式1で表される多環化合物を1種または2種以上含む。発光層EMLは、化学式1で表される多環化合物の他に公知の物質をさらに含んでもよい。
【0114】
発光層EMLはホスト及びドーパントを含んでもよく、ドーパントが化学式1で表される多環化合物を含むものであってもよい。本発明の一実施形態による多環化合物は、熱活性遅延蛍光用ドーパントであって、発光層EMLに含まれてもよい。本発明の一実施形態による多環化合物は、470nm未満の波長領域を有する青色光ドーパントであって、例えば、440nm~約470nm、または約450nm~約470nmの波長領域を有する濃い青色(deep blue)光ドーパントであってもよい。
【0115】
ホスト物質としては、当技術分野に知られている一般的な材料を制限なく採用することができる。例えば、DPEPO(Bis[2-(diphenylphosphino)phenyl]ether oxide)、CBP(4,4’-Bis(carbazol-9-yl)biphenyl)、mCP(1,3-Bis(carbazol-9-yl)benzene)、PPF(2,8-Bis(diphenylphosphoryl)dibenzo[b,d]furan)、TcTa(4,4’,4’’-Tris(carbazol-9-yl)-triphenylamine)、及びTPBi(1,3,5-tris(N-phenylbenzimidazole-2-yl)benzene)のうち少なくとも1つを含んでもよい。但し、これによって限定されるものではなく、例えば、Alq(tris(8-hydroxyquinolino)aluminum)、CBP(4,4’-bis(N-carbazolyl)-1,1’-biphenyl)、PVK(poly(n-vinylcabazole)、ADN(9,10-di(naphthalene-2-yl)anthracene)、TCTA(4,4’,4’’-Tris(carbazol-9-yl)-triphenylamine)、TPBi(1,3,5-tris(N-phenylbenzimidazole-2-yl)benzene)、TBADN(3-tert-butyl-9,10-di(naphth-2-yl)anthracene)、DSA(distyrylarylene)、CDBP(4,4’-bis(9-carbazolyl)-2,2’-dimethyl-biphenyl)、MADN(2-Methyl-9,10-bis(naphthalen-2-yl)anthracene)、DPEPO(bis[2-(diphenylphosphino)phenyl]ether oxide)、CP1(Hexaphenyl cyclotriphosphazene)、UGH2(1,4-Bis(triphenylsilyl)benzene)、DPSiO(Hexaphenylcyclotrisiloxane)、DPSiO(Octaphenylcyclotetra siloxane)、PPF(2,8-Bis(diphenylphosphoryl)dibenzofuran)などをホスト材料として使用することができる。
【0116】
例えば、発光層EMLはドーパントとしてTPD(N,N,N’,N’-tetraphenyl-pyrene-1,6-diamine)、BCzVBi(4,4’-Bis(2-(9-ethyl-9H-carbazol-3-yl)vinyl)-1,1’-biphenyl;4,4’-Bis(9-ethyl-3-carbazovinylene)-1,1’-biphenyl)、ACRSA(10-phenyl-10H,10’H-spiro[acridine-9,9’-anthracene]-10’-one)、4CzPN(3,4,5,6-Tetra-9H-carbazol-9-yl-1,2-benzenedicarbonitrile)、4CzIPN(2,4,5,6-Tetra-9H-carbazol-9-yl-isophthalonitrile)、DMAC-DPS(Bis[4-9,9-dimethyl-9,10-dihydroacridine)phenyl]solfone)、及びPSZ-TRZ(2-phenoxazine-4,6-diphenyl-1,3,5-triazine)のうち少なくとも1つをさらに含んでもよい。また、発光層EMLは、公知のドーパント材料として、スチリル誘導体(例えば、1,4-bis[2-(3-N-ethylcarbazoryl)vinyl]benzene(BCzVB)、4-(di-p-tolylamino)-4’-[(di-p-tolylamino)styryl]stilbene(DPAVB)、N-(4-((E)-2-(6-((E)-4-(diphenylamino)styryl)naphthalen-2-yl)vinyl)phenyl)-N-phenylbenzenamine(N-BDAVBi)、ペリレン及びその誘導体(例えば、2,5,8,11-Tetra-t-butylperylene(TBP))、ピレン及びその誘導体(例えば、1,1-dipyrene、1,4-dipyrenylbenzene、1,4-Bis(N,N-Diphenylamino)pyrene)などをさらに含んでもよい。
【0117】
発光層EMLは青色光を発光する青色発光層であってもよい。発光層EMLは480nm以下、または470nm以下の波長領域の光を発光する発光層であってもよい。発光層EMLは、蛍光発光を放射する蛍光発光層であってもよい。発光層EMLは、遅延蛍光発光を放射する遅延蛍光発光層であってもよい。
【0118】
電子輸送領域ETRは発光層EML上に設けられる。電子輸送領域ETRは、正孔阻止層HBL、電子輸送層ETL及び電子注入層EILのうち少なくとも1つを含んでもよいが、これに限定されない。
【0119】
電子輸送領域ETRは、単一物質からなる単一層、複数の異なる物質からなる単一層、または複数の異なる物質からなる複数の層を有する多層構造であってもよい。
【0120】
例えば、電子輸送領域ETRは、電子注入層EILまたは電子輸送層ETLの単一層の構造であってもよく、電子注入物質と電子輸送物質からなる単一層構造であってもよい。また、電子輸送領域ETRは、複数の異なる物質からなる単一層の構造であるか、発光層EMLから順に積層された電子輸送層ETL/電子注入層EIL、正孔阻止層HBL/電子輸送層ETL/電子注入層EILの構造であってもよいが、これに限定されない。電子輸送領域ETRの厚さは、例えば、約100nm~約150nmであってもよい。
【0121】
電子輸送領域ETRは、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェットプリント法、レーザープリント法、レーザー熱転写法などのような様々な方法を利用して形成されてもよい。
【0122】
電子輸送領域ETRが電子輸送層ETLを含む場合、電子輸送領域ETRはアントラセン系化合物を含むものであってもよい。但し、これに限定されるものではなく、電子輸送領域は、例えば、Alq(Tris(8-hydroxyquinolinato)aluminum)、1,3,5-tri[(3-pyridyl)-phen-3-yl]benzene、2,4,6-tris(3’-(pyridin-3-yl)biphenyl-3-yl)-1,3,5-triazine、2-(4-(N-phenylbenzoimidazolyl-1-ylphenyl)-9,10-dinaphthylanthracene、TPBi(1,3,5-Tri(1-phenyl-1H-benzo[d]imidazol-2-yl)phenyl)、BCP(2,9-Dimethyl-4,7-diphenyl-1,10-phenanthroline)、Bphen(4,7-Diphenyl-1,10-phenanthroline)、TAZ(3-(4-Biphenylyl)-4-phenyl-5-tert-butylphenyl-1,2,4-triazole)、NTAZ(4-(Naphthalen-1-yl)-3,5-diphenyl-4H-1,2,4-triazole)、tBu-PBD(2-(4-Biphenylyl)-5-(4-tert-butylphenyl)-1,3,4-oxadiazole)、BAlq(Bis(2-methyl-8-quinolinolato-N1,O8)-(1,1’-Biphenyl-4-olato)aluminum)、Bebq(berylliumbis(benzoquinolin-10-olate)、ADN(9,10-di(naphthalene-2-yl)anthracene)、及びこれらの混合物を含んでもよい。電子輸送層ETLの厚さは、約10nm~約100nm、例えば、約15nm~約50nmであってもよい。電子輸送層ETLの厚さが上述のような範囲を満たす場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに優れた電子輸送特性を得ることができる。
【0123】
電子輸送領域ETRが電子注入層EILを含む場合、電子輸送領域ETRはLiF、LiQ(Lithium quinolate)、LiO、BaO、NaCl、CsF、Ybのようなランタノイド金属、またはRbCl、RbIのようなハロゲン化金属などを
使用することができるが、これに限定されない。また、電子注入層EILは、電子輸送物質と絶縁性の有機金属塩(organo metal salt)が混合された物質からなってもよい。有機金属塩は、エネルギーバンドギャップ(energy band gap)が約4eV以上の物質であってもよい。具体的には、例えば、有機金属塩は、金属アセテート(metal acetate)、金属ベンゾエート(metal benzoate)、金属アセトアセテート(metal acetoacetate)、金属アセチルアセトネート(metal acetylacetonate)、または金属ステアレート(stearate)を含んでもよい。電子注入層EILの厚さは、約0.1nm~約10nm、約0.3nm~約9nmであってもよい。電子注入層EILの厚さが上述のような範囲を満たす場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに優れた電子注入特性を得ることができる。
【0124】
電子輸送領域ETRは、上述したように正孔阻止層HBLを含んでもよい。正孔阻止層HBLは、例えば、BCP(2,9-dimethyl-4,7-diphenyl-1,10-phenanthroline)及びBphen(4,7-diphenyl-1,10-phenanthroline)のうち少なくとも1つを含んでもよいが、これに限定されない。
【0125】
第2電極EL2は、電子輸送領域ETR上に設けられる。第2電極EL2は、共通電極または負極であってもよい。第2電極EL2は透過型電極、半透過型電極または反射型電極であってもよい。第2電極EL2が透過型電極である場合、第2電極EL2は、透明金属酸化物、例えば、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、ZnO(zinc oxide)、ITZO(indium tin zinc oxide)などからなってもよい。
【0126】
第2電極EL2が半透過型電極または反射型電極である場合、第2電極EL2はAg、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Mo、Tiまたはこれらを含む化合物や混合物(例えば、AgとMgの合金)を含んでもよい。または上記物質で形成された反射膜や半透過膜及びITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、ZnO(zinc oxide)、ITZO(indium tin zinc oxide)などで形成された透明導電膜を含む複数の層の構造であってもよい。
【0127】
図示していないが、第2電極EL2は補助電極と接続されてもよい。第2電極EL2が補助電極と接続されると、第2電極EL2の抵抗を減少させることができる。
【0128】
有機電界発光素子10において、第1電極EL1と第2電極EL2にそれぞれ電圧が印加されることによって、第1電極EL1から注入された正孔(hole)は正孔輸送領域HTRを経て発光層EMLに移動し、第2電極EL2から注入された電子は電子輸送領域ETRを経て発光層EMLに移動する。電子と正孔が発光層EMLで再結合して励起子(exciton)を生成し、励起子が励起状態から基底状態に落ちながら発光する。
【0129】
有機電界発光素子10が前面発光型である場合、第1電極EL1は反射型電極であり、第2電極EL2は透過型電極または半透過型電極であってもよい。有機電界発光素子10が背面発光型である場合、第1電極EL1は透過型電極または半透過型電極であり、第2電極EL2は反射型電極であってもよい。
【0130】
本発明の一実施形態による有機電界発光素子10は、上述した多環化合物を発光層EMLの材料として使用することにより、効率が向上する。
【実施例0131】
以下、具体的な実施例及び比較例を通じて本発明をより具体的に説明する。下記実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲はこれに限定されない。
【0132】
(合成例)
本発明の一実施形態による多環化合物は、例えば、下記のように合成することができる。但し、本発明の一実施形態による多環化合物の合成方法は、これに限定されない。
【0133】
1.化合物8の合成
本発明の一実施形態による化合物8は、例えば、以下のように合成することができる。
【0134】
(中間体1Aの合成)
【化20】

【0135】
アルゴン(Ar)雰囲気下、200mLの3口フラスコに化合物Aを2.0g、脱水ジエチルエーテルを30mL加えて、室温で1.6Mのn-BuLiを10mL滴下した後、室温で2時間撹拌した。その後、20mLの脱水ジエチルエーテルに溶かした化合物Bを滴下させ、その後12時間程度攪拌した。反応終了後、水を加えて有機層を分取し、溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン溶媒使用)で精製し、白い固体の中間体1Aを2.20g(収率62%)得た。
【0136】
FAB-MS測定で測定された中間体1Aの分子量は440であった。
【0137】
(中間体2Aの合成)
【化21】
【0138】
アルゴン(Ar)雰囲気下、100mLの3口フラスコに化合物1Aを2.0g、トルエンを20mL加えて、そこにメチルスルホン酸を0.73g、ポリリン酸を1.0g加えて、4時間加熱還流攪拌を行った。反応終了後、水を加えて有機層を分取し、溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン溶媒使用)で精製し、白い固体の中間体2Aを1.9g(収率95%)得た。
【0139】
FAB-MS測定で測定された中間体2Aの分子量は422であった。
【0140】
(化合物8の合成)
【化22】
【0141】
アルゴン(Ar)雰囲気下、100mLの3口フラスコに化合物Cを1.0g、中間体2Aを0.95g、ナトリウムtert-ブトキシドを0.43g、トリス(ジベンジリ
デンアセトン)ジパラジウム(0)を0.04g、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラートを0.05g、トルエン20mLを加え、8時間加熱還流攪拌を行った。反応終了後、水を加えて有機層を分取し、溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン、ヘキサン混合溶媒を使用)で精製し、白い固体の化合物8を1.7g(収率94%)得た。
【0142】
FAB-MS測定で測定された化合物8の分子量は802であった。
【0143】
2.化合物40の合成
本発明の一実施形態による化合物40は、例えば、以下のように合成することができる。
【化23】
【0144】
化合物8の合成において、化合物Cの代わりに化合物Eを使用したことを除き、化合物8の合成と同様の方法で化合物40を収率81%で得た。FAB-MS測定で測定された化合物40の分子量は661であった。
【0145】
3.化合物69の合成
本発明の一実施形態による化合物69は、例えば、以下のように合成することができる。
【化24】
【0146】
化合物8の合成において、中間体2Aの代わりに中間体3Aを使用したことを除き、化合物8の合成と同様の方法で化合物69を収率89%で得た。FAB-MS測定で測定された化合物69の分子量は818であった。
【0147】
4.化合物127の合成
本発明の一実施形態による化合物127は、例えば、以下のように合成することができる。
【化25】
【0148】
化合物8の合成において、化合物Cの代わりに化合物Fを使用したことを除き、化合物8の合成と同様の方法で化合物127を収率86%で得た。FAB-MS測定で測定された化合物127の分子量は602であった。
【0149】
5.化合物131の合成
本発明の一実施形態による化合物131は、例えば、以下のように合成することができる。
【化26】
【0150】
化合物8の合成において、化合物Cの代わりに化合物Gを使用したことを除き、化合物8の合成と同様の方法で化合物131を収率91%で得た。FAB-MS測定で測定された化合物131の分子量は638であった。
【0151】
上述した合成例は一例示であり、反応条件は必要に応じて変更されてもよい。また、本発明の一実施形態による化合物は、当技術分野に知られている方法及び材料を用いて様々な置換基を有するように合成されてもよい。化学式1で表されるコア構造に様々な置換体を導入することにより、有機電界発光素子に使用されるのに適した特性を有することができる。
【0152】
(素子作成例)
上述した化合物8、40、69、127、及び131を発光層のドーパント材料として使用し、実施例1~5の有機電界発光素子を作製した。
【0153】
[実施例化合物]
【化27】




【0154】
下記化合物C-1~C-10を発光層のドーパント材料として使用し、比較例1~10の有機電界発光素子を作製した。
【0155】
[比較例化合物]
【化28】















【0156】
実施例化合物及び比較例化合物のS1準位とT1準位を非経験的分子軌道法で計算した。具体的には、Gaussian社製Gaussian09を用いて、汎関数にB3LYP、基底関数6-31G(d)を用いて計算を行った。その結果を下記表1に示した。ΔESTは一重項エネルギーレベルと三重項エネルギーレベルの差を意味する。
【0157】
【表1】
【0158】
上記表1の結果を参照すると、実施例化合物8、40、69、127及び131、比較例化合物C-2、C-4~C-9は、低いΔEST値を示しており、熱活性遅延蛍光を発現すると考えられる。一方、比較例化合物C-1、C-3、C-9及びC-10は、高いΔEST値を示しており、熱活性遅延蛍光を発現していないと考えられる。実施例1~5及び比較例1~10の有機電界発光素子は、ITOで150nmの第1電極を形成し、HAT-CNで10nm厚さの正孔注入層を形成し、NPBで80nm厚さの正孔輸送層を形成し、mCPで5nm厚さの電子阻止層を形成し、DPEPOに上記実施例化合物または上記比較例化合物を20%ドープした20nm厚さの発光層を形成し、DPEPOで10nm厚さの正孔阻止層を形成し、TPBiで30nm厚さの電子輸送層を形成し、LiFで0.5nm厚さの電子注入層を形成し、Alで100nm厚さの第2電極を形成した。各層はすべて真空蒸着法で形成した。
【0159】
実施例1~5及び比較例1~10による有機電界発光素子の最大発光波長(λmax)及び外部量子効率(EQE)を測定し、下記表2に示した。表2のEQEは10mA/cmにおける値である。
【0160】
【表2】
【0161】
上記表2の結果を参照すると、実施例化合物8、40、69、127及び131は、全て発光波長が470nm未満以下の濃い青色ドーパントであって適した発光波長を有し、また、熱活性化遅延蛍光による高効率を実現した。比較例1、6、9、10は、発光効率がかなり低く、実施例1~5に比べて発光波長もより短波長である。比較例4、5、8は比較的高い効率であるが、実施例1~5に比べて長波長であり、濃い青色発光が実現できていない。比較例7は、濃い青色に近い波長であるが、効率が実施例1~5に比べて低い。比較例2は濃い青色を帯びず、また、高い効率でもない結果となった。比較例2は、計算値のESTが小さいにもかかわらず、熱活性化遅延蛍光を発現していない可能性がある。比較例3は、効率が低く、また、実施例1~5に比べて長波長であり濃い青色を実現できていない。
【0162】
本発明の一実施形態による多環化合物は、濃い青色発光用熱活性遅延蛍光ドーパントとして利用可能である。
【0163】
本発明の一実施形態による多環化合物を含む有機電界発光素子は、濃い青色を実現するとともに、高効率を実現することができる。
【0164】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更せずに、他の具体的な形態で実施できることが理解できるであろう。よって、以上で説明した実施形態は、すべての面において例示的なものであり、限定的ではないと理解すべきである。
【符号の説明】
【0165】
10 有機電界発光素子
EL1 第1電極
HTR 正孔輸送領域
HIL 正孔注入層
HTL 正孔輸送層
EML 発光層
ETR 電子輸送領域
ETL 電子輸送層
EIL 電子注入層
EL2 第2電極
図1
図2
図3