(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020210
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】てんかんの治療におけるカンナビノイドの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/05 20060101AFI20240206BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240206BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240206BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240206BHJP
A61K 31/5513 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
A61K31/05
A61P25/08
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/5513
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023179226
(22)【出願日】2023-10-18
(62)【分割の表示】P 2022002833の分割
【原出願日】2015-06-17
(31)【優先権主張番号】1410771.8
(32)【優先日】2014-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1506550.1
(32)【優先日】2015-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FACEBOOK
(71)【出願人】
【識別番号】517437896
【氏名又は名称】ジーダブリュー リサーチ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】ガイ,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ライト,スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】ミード,アリス
(72)【発明者】
【氏名】ジョシ,チャルータ
(72)【発明者】
【氏名】ウィルフォング,アンガス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】「治療抵抗性てんかん」(TRE)の治療において総痙攣発作頻度を低減するためのカンナビジオール(CBD)を含む医薬組成物を提供する。
【解決手段】治療抵抗性小児期てんかんの治療で使用するための、カンナビジオール(CBD)を含む医薬組成物であって、前記CBDが、併用抗てんかん薬(AED)によって達成される発作の頻度に対して、総痙攣発作頻度を50%超低減させる量で存在する、医薬組成物である。前記治療抵抗性小児期てんかんが、ドラベ症候群;ミオクロニー欠神てんかん;レノックス-ガストー症候群等であり、前記CBDが、1種または複数の抗てんかん薬(AED)と組み合わせて使用される、医薬組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱性感染症関連てんかん症候群(FIRES)である治療抵抗性てんかんの治療で使用
するためのカンナビジオール(CBD)。
【請求項2】
治療抵抗性てんかん(TRE)であるてんかんの治療で使用するためのカンナビジオー
ル(CBD)であって、併用抗てんかん薬(AED)によって達成される発作の頻度に対
して、総痙攣発作頻度を50%超低減させる量で存在する、カンナビジオール(CBD)
。
【請求項3】
2種またはそれ以上の併用抗てんかん薬(AED)と組み合わせて使用される、請求項
1または請求項2に記載の使用のためのCBD。
【請求項4】
治療されるべき発作型が、複雑部分発作(機能障害を伴う焦点発作)である、請求項3
に記載の使用のためのCBD。
【請求項5】
併用抗てんかん薬(AED)によって達成される発作の頻度に対して、総痙攣発作頻度
を70%超低減させる量で存在する、請求項1から4のいずれか1項に記載の使用のため
のCBD。
【請求項6】
併用抗てんかん薬(AED)によって達成される発作の頻度に対して、総痙攣発作頻度
を90%超低減させる量で存在する、請求項1から5のいずれか1項に記載の使用のため
のCBD。
【請求項7】
併用抗てんかん薬(AED)によって達成される発作の頻度に対して、総痙攣発作頻度
を100%低減させる量で存在する、請求項1から6のいずれか1項に記載の使用のため
のCBD。
【請求項8】
少なくとも98%(w/w)のCBDを含むカンナビスの高純度抽出物として存在する
、請求項1から7のいずれか1項に記載の使用のためのCBD。
【請求項9】
前記1種または複数のAEDが、クロバザム、レベチラセタム、トピラマート、スチリ
ペントール、フェノバルビタール、ラコサミド、バルプロ酸、ゾニサミド、ペランパネル
、およびホスフェニトインからなる群から選択される、請求項2に記載の使用のためのC
BD。
【請求項10】
前記AEDの1つがクロバザムである、請求項9に記載の使用のためのCBD。
【請求項11】
CBDと組み合わせて使用される異なる抗てんかん薬の数が低減される、請求項1から
10のいずれか1項に記載の使用のためのCBD。
【請求項12】
CBDと組み合わせて使用される抗てんかん薬の用量が低減される、請求項1から11
のいずれか1項に記載の使用のためのCBD。
【請求項13】
低減されるAEDの用量がクロバザムの用量である、請求項12に記載の使用のための
CBD。
【請求項14】
用量が5mg/kg/日~25mg/kg/日である、請求項1から13のいずれか1
項に記載の使用のためのCBD。
【請求項15】
カンナビジオール(CBD)を対象に投与することを含む、治療抵抗性てんかんを治療
する方法であって、前記てんかんが熱性感染症関連てんかん症候群(FIRES)である
、方法。
【請求項16】
1種または複数の併用抗てんかん薬(AED)によって達成される発作の頻度に対して
、総痙攣発作頻度を50%超低減させるのに十分な量でカンナビジオール(CBD)を対
象に投与することを含む、治療抵抗性てんかんを治療する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「治療抵抗性てんかん」(TRE)の治療において総痙攣発作頻度を低減す
るためのカンナビジオール(CBD)の使用に関する。一実施形態において、TREを患
う患者は、子供および若年成人である。CBDは、TREがドラベ症候群;ミオクロニー
欠神発作または熱性感染症関連てんかん症候群(FIRES)である場合に、とりわけ有
効とみられる。これらの適応において、総痙攣頻度は、驚くべきことにかなりの数の患者
において、50%超、70%から90%超の低減を示した。実際に、3カ月の治療の終了
時には、かなりの数の患者から発作が消失していた。
【0002】
好ましくは、使用されるCBDは、CBDが全抽出物の98%(w/w)を超えて存在
するように、高度に精製されたカンナビス抽出物の形態であり、抽出物のその他の構成要
素は特徴づけられている。詳細には、テトラヒドロカンナビノール(THC)は、0.1
5%(w/w)以下のレベルまで実質的に除去されている。別法として、これは、合成に
より作製されたCBDである。
【0003】
使用において、CBDは、1種または複数のその他の抗てんかん薬(AED)と併用さ
れる。別法として、CBDは、1種または複数のAEDと別々に、連続して、または同時
に投与するために配合することができる、またはその組合せは単回投与形態で提供するこ
とができる。CBDが、別々に、連続して、または同時に投与するために配合される場合
、CBDは、指示されたとおりに1種または複数の構成要素を投与するためのキットとし
て、または指示書と一緒に、提供することができる。
【背景技術】
【0004】
てんかんは、世界の人口のおよそ1%に発生し(Thurmanら、2011年)、そ
の70%は、入手可能な既存の抗てんかん薬(AED)を用いてその症状を適切に制御す
ることができる。しかし、この患者群の30%(Eadieら、2012年)は、入手可
能なAEDでは発作の消失を得ることができず、したがって、「治療抵抗性てんかん」(
TRE)を患っていると称される。
【0005】
治療抵抗性てんかんは、2009年に国際抗てんかん連盟(ILAE)によって、「持
続的な発作の消失を達成するための、(単剤療法または併用療法のいずれとしてでも)耐
性が高く適切に選択され使用された2つのAEDスケジュールの適正な試行の失敗」(K
wanら、2009年)として、定義された。
【0006】
人生の最初の数年の間にてんかんを発症する個人は、治療が困難なことが多く、したが
って、しばしば治療抵抗性と称される。頻繁な発作を小児期に経験する子供には、認識、
行動および運動遅滞を生じさせ得る神経障害が残ることが多い。
【0007】
小児期てんかんは、子供および若年成人における罹患率が10万人当たりおよそ700
人の、比較的一般的な神経疾患である。これは、人口当たりのてんかんに罹患した成人の
数の2倍である。
【0008】
子供または若年成人が発作を呈する場合、通常、その原因を調べるための調査が行われ
る。小児期てんかんは、多くの異なる症候群および遺伝子変異によって引き起こされ得る
ので、したがってこれらの子供の診断には、ある程度の時間がかかることがある。
【0009】
このような1つの小児期てんかんは、ドラベ症候群である。ドラベ症候群の発現は、ほ
とんど常に、生来健康で発達上正常な幼児に、間代発作および強直間代発作を伴い、人生
の最初の年の間に発病する(Dravet、2011年)。症状は、生後約5カ月でピー
クに達する。長引く認知障害性焦点発作および短時間の欠神発作などのその他の発作は、
生後1年から4年の間に発症する。
【0010】
発作は進行して頻繁かつ治療抵抗性になり、これは、発作が治療によく反応しないこと
を意味する。これらの発作は長引く傾向もあり、5分を超えて続く。長引く発作は、30
分を超えて続く発作または次々と集中して発生する発作であるてんかん重積状態に繋がり
得る。
【0011】
予後が悪いと、子供のおよそ14%が、感染によって、または突然の不確定な原因によ
って、多くの場合絶え間なく続く神経減退によって、発作中に死亡する。患者は、知的障
害および生涯継続する発作を発症する。知的機能障害は様々であり、患者の50%が重篤
であり、中等度および軽度の知的障害がそれぞれ事例の25%を占める。
【0012】
現在のところ、ドラベ症候群に対して具体的に指示された治療はFDAの認可を受けて
いない。標準治療は、抗痙攣剤であるクロバザム、クロナゼパム、レベチラセタム、トピ
ラマートおよびバルプロ酸の組合せを通常必要とする。
【0013】
スチリペントールは、クロバザムおよびバルプロ酸と併せて、ドラベ症候群の治療に対
して欧州で認可されている。アメリカ合衆国においては、スチリペントールは、2008
年にドラベ症候群の治療に対してオーファンドラッグ指定を受けたが、この薬物はFDA
の認可は受けていない。
【0014】
てんかんの治療に使用される強力なナトリウムチャネル遮断薬は、実際には、ドラベ症
候群に罹患した患者の発作の頻度を増加させる。最も一般的なのは、フェニトイン、カル
バマゼピン、ラモトリギンおよびルフィナミドである。
【0015】
管理法として、ケトジェニックダイエット、物理的刺激および迷走神経刺激を挙げるこ
ともできる。抗痙攣薬に加えて、ドラベ症候群に罹患した多くの患者が、向精神薬、刺激
剤、および不眠症治療薬を用いて治療される。
【0016】
その作用機構によって規定される一般的なAEDを、以下の表で説明する。
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
過去40年にわたって、発作を治療するために、非向精神性カンナビノイドであるカン
ナビジオール(CBD)の使用に関する多数の動物実験が行われてきた。例えば、Con
sroeら(1982年)は、CBDが、痙攣誘発薬の投与または電流を流した後のマウ
スにおける発作を予防できることを突き止めた。
【0021】
てんかんに罹患した成人におけるCBDを用いた研究も、過去40年で行われた。Cu
nhaらは、全般てんかんに罹患した8人の成人患者へのCBDの投与によって、その患
者のうち4人に発作の有意な低減をもたらしたことを報告した(Cunhaら、1980
年)。
【0022】
4人の成人患者に200mg/日の純粋なCBDを提供した1978年の研究では、4
人の患者のうち2人から発作が消失したが、一方、残りの2人の発作の頻度に変化はなか
った(Mechoulam and Carlini、1978年)。
【0023】
上述の研究とは対照的に、非盲検試験によると、200mg/日の純粋なCBDは、施
設に収容されている12人の成人患者の発作を制御するのには効果がなかったことが報告
されている(Ames and Cridland、1986年)。
【0024】
てんかんに罹患した患者におけるCBDの有効性を見るための年代順で最後の研究が、
CBDが発作を制御することができなかったことを証明したという事実に基づくと、CB
Dが抗痙攣剤として有用であり得るという期待はできない。
【0025】
過去40年の調査において、てんかんの治療用に認可された薬物は30を超えるが、そ
のいずれもカンナビノイドではない。実際、おそらくはこれらの化合物の指定の性質によ
って、および/または既知の精神活性物質であるTHCが痙攣誘発薬とみなされてきた(
Consroeら、1977年)という事実によって、カンナビノイドに対する先入観が
存在するように思われる。
【0026】
近年出版された論文は、カンナビジオールを多く含むカンナビスがてんかんの治療に有
効であり得ることを示唆していた。Porter and Jacobson(2013
年)は、治療抵抗性てんかんに罹患した子供におけるCBDで強化したカンナビスの使用
を調査していたFacebookのグループを介して実施した、親を対象とした調査を報
告している。調査対象の19人の親のうち16人が、彼らの子供のてんかんの改善を報告
したことがわかった。この論文のための調査対象の子供はすべて、存在するCBDの量お
よびTHCを含めたその他の成分は不明であったにもかかわらず、CBDを高濃度で含有
するとされているカンナビスを摂取していた。実際に、CBDのレベルは、0.5~28
.6mg/kg/日(テストしたこれらの抽出物中で)の範囲であったが、THCのレベ
ルは、0.8mg/kg/日の高さであったことが報告された。
【0027】
痙攣誘発薬として記載されている(Consroeら、1977年)THCを含むカン
ナビス抽出物を、それが少量でも、ましてや潜在的に精神活性用量の0.8mg/kg/
日でTREに罹患した子供に提供することは、極めて危険であり、したがって、CBDが
実際に有効であるかどうかを見極めることが真に必要である。
【0028】
今まで、TREに罹患した子供および若年成人におけるCBDの対照臨床試験は行われ
ていない。
【発明の概要】
【0029】
本発明の第1の態様によれば、熱性感染症関連てんかん症候群(FIRES)である治
療抵抗性てんかん(TRE)の治療で使用するためのカンナビジオール(CBD)が提供
される。
【0030】
本発明の第2の態様によれば、治療抵抗性てんかん(TRE)であるてんかんの治療で
使用するためのカンナビジオール(CBD)であって、併用抗てんかん薬(AED)によ
って達成される発作の頻度に対して、総痙攣発作頻度を50%超低減させる量で存在する
カンナビジオール(CBD)が提供される。
【0031】
好ましくは、CBDは、2種またはそれ以上の併用抗てんかん薬(AED)と組み合わ
せて使用される。CBDは、1種または複数のAEDと別々に、連続して、または同時に
投与するために配合することができる、またはその組合せは単回投与形態で提供すること
ができる。
【0032】
好ましくは、治療されるべき発作型は、複雑部分発作(機能障害を伴う焦点発作)であ
る。
【0033】
好ましくは、CBDは、併用抗てんかん薬(AED)によって達成される発作の頻度に
対して、総痙攣発作頻度を70%超低減させる量で存在する。より好ましくは、CBDは
、併用抗てんかん薬(AED)によって達成される発作の頻度に対して、総痙攣発作頻度
を90%超低減させる量で存在する。さらにより好ましくは、CBDは、併用抗てんかん
薬(AED)によって達成される発作の頻度に対して、総痙攣発作頻度を100%低減さ
せる量で存在する。
【0034】
一実施形態において、CBDは、少なくとも98%(w/w)のCBDを含むカンナビ
スの高純度抽出物として存在する。
【0035】
1種または複数のAEDは、好ましくは、クロバザム;レベチラセタム;トピラマート
;スチリペントール;フェノバルビタール;ラコサミド(lacsamide);バルプロ酸;ゾ
ニサミド;ペランパネル;およびホスフェニトインからなる群から選択される。
【0036】
好ましくは、CBDは、クロバザムと組み合わせて使用される。
【0037】
好ましくは、異なる抗てんかん薬の数、またはCBDと組み合わせて使用されるAED
の用量が、低減される。より好ましくは、低減されるAEDの用量は、クロバザムの用量
である。
【0038】
好ましくは、CBDの用量は、5mg/kg/日より多い。したがって、15kgの患
者に対して、一日当たり75mgを超える用量のCBDが提供される。例えば10/mg
/kg/日超、15mg/kg/日超、20mg/kg/日超および25mg/kg/日
超などの5mg/kg/日を超える用量も、効果的であると想定される。
【0039】
本発明の第3の態様によれば、カンナビジオール(CBD)を対象に投与することを含
む、治療抵抗性てんかんを治療する方法であって、てんかんが、熱性感染症関連てんかん
症候群(FIRES)である方法が提供される。
【0040】
本発明の第4の態様によれば、1種または複数の併用抗てんかん薬(AED)によって
達成される発作の頻度に対して、総痙攣発作頻度を50%超低減させるのに十分な量でカ
ンナビジオール(CBD)を対象に投与することを含む、治療抵抗性てんかんを治療する
方法が提供される。
【0041】
定義
本発明を説明するのに使用される用語のいくつかの定義を、以下に詳述する。
【0042】
本出願に記載のカンナビノイドを、その一般的な省略形と共に以下に列挙する。
【0043】
【0044】
上記の表は、網羅的ではなく、参照のために本出願において同定されるカンナビノイド
を単に詳述している。今まで、60を超える異なるカンナビノイドが同定されており、こ
れらのカンナビノイドは、異なる群(フィトカンナビノイド;エンドカンナビノイドおよ
び合成カンナビノイド(新規なカンナビノイドまたは合成により作製されたフィトカンナ
ビノイドもしくはエンドカンナビノイドとすることができる))に分けることができる。
【0045】
「フィトカンナビノイド」は、天然由来のカンナビノイドであり、カンナビス植物中に
見ることができる。フィトカンナビノイドは、植物から単離し、高純度の抽出物を作製す
ることができる、または合成により複製することができる。
【0046】
「高純度カンナビノイド」は、カンナビス植物から抽出され、その高純度カンナビノイ
ドが純度98%(w/w)以上になるように、その他のカンナビノイドおよびカンナビノ
イドと共抽出される非カンナビノイドの構成要素が除去される程度まで精製されているカ
ンナビノイドとして、定義される。
【0047】
「合成カンナビノイド」は、カンナビノイドまたはカンナビノイド様構造を有する化合
物であり、植物によってよりもむしろ化学的手段を使用して製造される。
【0048】
フィトカンナビノイドは、中性(脱炭酸形態)、またはカンナビノイドを抽出するのに
使用される方法によってカルボン酸形態として得ることができる。例えば、カルボン酸形
態を加熱することによって、カルボン酸形態の大部分のカルボキシル基が除去され、中性
形態になることが知られている。
【0049】
「治療抵抗性てんかん」(TRE)は、1種または複数のAEDの試行によって適切に
制御されないてんかんとして、2009年のILAEガイダンスによって定義されている
。
【0050】
「小児期てんかん」は、小児期にてんかんの原因を生じさせ得る多くの異なる症候群お
よび遺伝子変異を指す。これらのいくつかの例として、ドラベ症候群;ミオクロニー欠神
てんかん;レノックス-ガストー症候群;原因不明の全般てんかん;CDKL5変異;ア
イカルディ症候群;両側性多小脳回;Dup15q;SNAP25;および熱性感染症関
連てんかん症候群(FIRES);良性ローランドてんかん;若年ミオクロニーてんかん
;乳児スパズム(ウエスト症候群);ならびにランドー-クレフナー症候群がある。上述
の列挙は、多くの異なる小児期てんかんが存在するので、非網羅的である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
高純度CBD抽出物の調製
以下は、下記の実施例に記載の拡大アクセス試験に使用された、既知で一定の組成を有
する高純度(98%w/w超)のカンナビジオール抽出物の作製を記載している。
【0052】
要約すれば、試験で使用した原薬は、CBDを得るための溶媒結晶化によってさらに精
製されている、カンナビス・サティバ・L.(Cannabis sativa L.)
の高CBD含有化学種の液体二酸化炭素抽出物である。結晶化のプロセスは、具体的には
、その他のカンナビノイドおよび植物構成要素を除去して、98%を超えるCBDを得る
。
【0053】
カンナビス・サティバ・L.植物を栽培し、収穫し、加工して、植物抽出物(中間体)
を作製し、次いで結晶化によって精製して、CBD(原薬)を得る。
【0054】
植物出発物質は、植物原料(BRM)と称され、植物抽出物は中間体であり、医薬品有
効成分(API)は、原薬のCBDである。
【0055】
植物出発物質および植物抽出物のどちらも、仕様によって制御される。原薬の仕様を、
以下の表1に記載する。
【0056】
【0057】
達成されたCBD原薬の純度は、98%を超えている。予想される不純物は、関連する
カンナビノイド(CBDA、CBDV、CBD-C4およびTHC)である。
【0058】
カンナビス・サティバ・L.植物の異なる化学種は、特定の化学成分であるカンナビノ
イドの生産量を最大限にするために作製されている。植物の1つのタイプは、主にCBD
を生成する。(-)-トランス単量体のみが自然に発生し、さらに、CBDの立体化学は
精製中に影響を受けない。
【0059】
中間体の作製
植物抽出物である中間体を作製するステップの概略を、以下に示す。
1.栽培
2.脱炭酸
3.抽出番号1-液体CO2を使用
4.抽出番号2-エタノールを使用した「脱ろう」
5.濾過
6.蒸発
【0060】
高CBDの化学型を栽培し、収穫し、乾燥させて、所望の状態になるまで乾燥室で保管
した。1mmのスクリーンを備えたアペックスミルを用いて、植物原料(BRM)を細か
く刻んだ。粉砕したBRMを、抽出前に最大3カ月間フリーザーに保管した。
【0061】
CBDAのCBDへの脱炭酸を、大容量のHeraeusトレーオーブンを使用して実
行した。Heraeusの脱炭酸バッチサイズは、およそ15kgである。トレーをオー
ブン中に配置し、105℃に加熱し;BRMが105℃に到達するのに96.25分かか
った。15分間105℃で保持した。次いで、オーブンを150℃に設定した。;BRM
が150℃に到達するのに75.7分かかり;BRMを、150℃で130分間保持した
。オーブン内での総時間は、冷却の45分、脱気の15分を含めて、380分であった。
【0062】
60bar/10℃で、液体CO2を使用して抽出番号1を実施し、植物原薬(BDS
)を作製し、結晶化に使用して、テスト材料を得た。
【0063】
粗CBDのBDSを、標準条件下(マイナス20℃でおよそ50時間、エタノール2v
ol)で、抽出番号2で脱ろうした。沈殿したワックスを、濾過して除去し、ロータリー
エバポレーター(最大60℃の水浴)を使用して溶媒を蒸発させ、BDSを得た。
【0064】
原薬の作製
中間体である植物抽出物から原薬を作製するための製造ステップは、以下のとおりであ
る。
1.直鎖または分枝のC5~C12アルカンを使用した結晶化
2.濾過
3.直鎖または分枝のC5~C12アルカンからの任意選択の再結晶化
4.真空乾燥
【0065】
上記の手段を使用して作製された中間体植物抽出物(12kg)を、30リットルのス
テンレス鋼容器中の直鎖または分枝のC5~C12アルカン(9000ml、0.75v
ol)に分散した。
【0066】
混合物を、すべての塊が破壊されるまで手動で撹拌し、次いで、密閉した容器を、およ
そ48時間、フリーザーに配置した。
【0067】
結晶を、真空濾過によって単離し、一定分量の直鎖または分枝の冷たいC5~C12ア
ルカン(計12000ml)で洗浄し、60℃の温度の10mbを超える真空下で乾燥さ
せた後、原薬を分析用に提出した。
【0068】
乾燥させた生成物を、FDA食品グレード認可済みのシリコーンシールおよびクランプ
を備えた医薬品グレードのステンレス鋼容器中で、マイナス20℃のフリーザーに保管し
た。
【0069】
以下の実施例1~3は、カンナビジオール(CBD)を含む高純度カンナビス抽出物の
使用を記載している。カンナビジオールは、カンナビス植物中に最も豊富な非向精神性カ
ンナビノイドである。動物での先の研究によって、CBDが多数の種およびモデルに対す
る抗痙攣効果を有することが、実証されている。
【0070】
実施例1は、TREに罹患した子供における拡大アクセス治療プログラムで作成された
データを記載している。
【0071】
実施例2~4は、それぞれ、ドラベ症候群、ミオクロニー欠神発作およびFIRESに
罹患した子供におけるCBDの有効性を実証している。
【実施例0072】
治療抵抗性てんかんに罹患した子供および若年成人におけるカンナビジオールの有効性
材料および方法
小児期発現の重篤な治療抵抗性てんかん(TRE)に罹患した27人の子供および若年
成人を、カンナビス植物から得たカンナビジオール(CBD)の高純度抽出物を用いて治
療した。この研究の参加者は、CBDの拡大アクセスコンパッショネート使用プログラム
の一部であった。
【0073】
すべての患者は、4週間のベースライン期に入り、その際、親/介護者は、すべての可
算の連動発作型に注意し、予測される発作の日誌をつけた。
【0074】
次いで、患者は、ベースラインの抗てんかん薬(AED)レジメンに加えて、既知で一
定の組成の、5mg/kg/日の用量のセサミオイル中の高純度CBD抽出物(98%超
(w/w)のCBD)を受け取った。
【0075】
不耐性が発生するまで、または最大用量が25mg/kg/日に達するまで、1日用量
を、増加量2~5mg/kgずつ、徐々に増加させた。
【0076】
2~4週間の定期的な間隔で、患者を診察した。血液、肝臓、および腎臓の機能ならび
に併用AEDレベルに対する臨床検査を、ベースラインで、および4、8および12週間
のCBD療法後に実施した。
【0077】
結果
27人の子供および若年成人の患者が、少なくとも3カ月の治療を受け、そのすべてが
治療抵抗性てんかんを患っていた。
【0078】
すべての患者が、少なくとも2種の併用抗てんかん薬を摂取していた。これらは、クロ
バザム;レベチラセタム;トピラマート;スチリペントール;フェノバルビタール;ラコ
サミド;バルプロ酸;ゾニサミドを含んでいた。摂取されていた併用抗てんかん薬の平均
数は、2.7個であった。大多数が、クロバザムおよび/またはバルプロ酸を摂取してい
た。
【0079】
CBDのクロバザムとの共治療は、レスポンダーレートが50%を超える肯定的な治療
反応の有意な予測判断材料であった。オッズ比(OR)は、総発作低減に対しては3.3
、痙攣発作に対しては1.9であった。ORは、一定の事象または成果のオッズが、2つ
の群に対して同様であるかどうかを評価する。具体的には、事象または結果が起きるであ
ろうオッズと、その事象が起きないオッズの比を測定する。ORが1より大きいことは、
CBDとクロバザムとの組合せを用いて治療された患者が、この組合せの薬剤を摂取して
いなかった場合よりも発作の明確な低減を有する、より良好なオッズを有するであろうこ
とを表している。
【0080】
治療開始前に患者が患っている発作の中央値は、月当たり、発作は30回であり、月当
たり4~2,800回の範囲の発作が記録されていた。
【0081】
27人の患者に対する有効性結果を、以下の表2にまとめる。
【0082】
【0083】
表2は、3カ月の療法後に、患者の48%の発作が>50%以上低減したことを示して
いる。
【0084】
注目すべきことには、7%に当たる患者の2人が、3カ月目の段階で発作から完全に解
放されたことであった。
【0085】
27人の対象のいずれも、3カ月の治療期間中に取りやめることなく、有害事象も穏や
かで、耐性も良好であった。共通する有害事象として、眠気、疲労、食欲減退、食欲増大
および下痢が挙げられた。
【0086】
5人の対象におけるクロバザムの用量は、その鎮静作用によって低減された。
【0087】
結論
これらの暫定的結果は、CBDが、既存のAEDに対する反応が良好でない患者に対し
て高い割合で、発作の回数を有意に低減させることを示している。カンナビジオールは、
一般的に、最大用量25mg/kg/日で、耐性も良好であった。
【0088】
治療抵抗性の患者のこの群において、これほどの多数が効果を得ることができたことは
、驚くべきことであった。患者のほぼ半数(48%)が、患っている発作の回数が少なく
とも50%低減したという利益を受けた事実は、注目すべきことであった。
【0089】
さらに、少なくとも2種の抗てんかん薬で発作が制御されなかった患者のほぼ4分の1
(22%)が、彼らが体験していた発作の回数の90%の低減を体感し、7%は、3カ月
の試験期間の終了時には、完全に発作が消失していた。
【0090】
さらにより注目すべきは、この属性群のいくつかの定義されたサブセットに対する結果
であり、これらを以下の実施例2~4に提示する。