(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020219
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】入り組んだ環状帯に配分された補強突出部を有する丸天井型の底部を備えた容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20240206BHJP
B29C 49/48 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
B65D1/02 230
B29C49/48
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023180286
(22)【出願日】2023-10-19
(62)【分割の表示】P 2018235260の分割
【原出願日】2018-12-17
(31)【優先権主張番号】1850392
(32)【優先日】2018-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】504102770
【氏名又は名称】シデル パルティシパション
【氏名又は名称原語表記】SIDEL PARTICIPATIONS
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・ブコブザ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】適切なブロー成形性を提供しながら優れた機械特性を有し、充填後も空のときも良好な安定性を有し、さらに、デザイン性を向上させた容器を提案する。
【解決手段】プラスチック容器に関し、底部(13)が、容器の設置面(141)を形成する座部(14)と、長手方向の軸(X)を中心とする回転体であり、座部(14)の付近から中央アモルファス領域(151)まで延びる凹状丸天井部(15)と、凹状丸天井部から突出し、丸天井部の半径方向内部に延びる強化突出部(16、17)と、を有し、強化突出部が、第1の突出部(16)と第2の突出部(17)とを交互に配置しながら互いに角方向に間隔をおかれて配置され、これらの突出部は、第1の突出部が延びる第1の環状帯(19)と、第2の突出部が延びる第3の環状帯(21)と、にしたがって配分されることを特徴とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部(121)と底部(13)との間で長手方向の軸に沿って延びる本体(11)を含むプラスチック容器(10)であって、底部(13)が、
容器(10)の設置面(141)を形成する座部(14)と、
長手方向の軸(X)を中心とする回転体であり、座部(14)の付近から中央アモルファス領域(151)まで延びる凹状丸天井部(15)と、
凹状丸天井部(15)から突出し、丸天井部(15)の半径方向内部に延びる強化突出部(16、17)と、
を有する容器において、
強化突出部(16、17)が、第1の突出部(16)と第2の突出部(17)とを交互に配置しながら互いに角方向に間隔をおいて配置され、これらの突出部は、第1の環状帯(19)および第3の環状帯(21)にしたがって配分され、
-第1の環状帯(19)において、座部(14)の付近の第1の端部(161)から第2の端部(162)まで第1の突出部(16)が延び、第1の突出部(16)が、その第2の端部(162)と中央アモルファス領域(151)との間に第2の環状帯(20)を提供し、
-第3の環状帯(21)において、中央アモルファス領域(151)の付近の第1の端部(171)から第2の端部(172)まで第2の突出部(17)が延び、第2の突出部(17)が、その第2の端部(172)と座部(14)との間に第4の環状帯(22)を提供することを特徴とする、容器。
【請求項2】
底部(13)が、第1の突出部(16)の第2の端部(162)と、第2の突出部(17)の第2の端部(172)との間に配置された第5の環状帯(23)を有し、前記第5の環状帯に部分的に第1の突出部(16)と第2の突出部(17)とが延びていることを特徴とする、請求項1に記載の容器(10)。
【請求項3】
丸天井部(15)が、段部(24)により分離される異なる2つの領域すなわち第1の領域(15A)と第2の領域(15B)とを含み、第1の突出部(16)の第2の端部(162)は、第2の領域(15B)内で、段部(24)からの距離が、前記第2の領域(15B)を展開した全長の25%から65%のところに通じており、第2の突出部(17)の第2の端部(172)は、第1の領域(15A)内で、段部(24)からの距離が、前記第1の領域(15A)を展開した全長の25%から65%のところに通じていることを特徴とする、請求項1から2のいずれか一項に記載の容器(10)。
【請求項4】
段部(24)が、段部直径(φP)を有し、座部(14)が、座部直径(φA)を有し、比(φP/φA)が0.5から0.85であることを特徴とする、請求項3に記載の容器(10)。
【請求項5】
段部(24)が、高さ(HP)を有し、丸天井部(15)が、高さ(HV)にわたって延び、比(HP/HV)が0.4から0.8であることを特徴とする、請求項3または4のいずれか一項に記載の容器(10)。
【請求項6】
座部(14)が、座部直径(φA)を有し、丸天井部(15)が、高さ(HV)にわたって延び、比(φA/HV)が0.2から0.4であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の容器(10)。
【請求項7】
-丸天井部(15)が、範囲0.5mmから3mmの内部円形区間(18)により座部に結合され、
-座部(14)が、範囲1mmから5mmの外部円形区間(25)により容器(10)の底部(13)から容器(10)の本体(11)までを接続するアール(131)に結合されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の容器(10)。
【請求項8】
第1の突出部(16)と第2の突出部(17)が、それらの個々の第1の端部(161;171)とそれらの個々の第2の端部(162;172)との間で個々の円弧(163;173)に沿って延び、各円弧(163;173)が座部(14)の直径(φA)の25%から45%の曲率半径を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の容器(10)。
【請求項9】
少なくとも5個の第1の突出部(16)と5個の第2の突出部(17)とを含んでいることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の容器(10)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の容器(10)をプラスチック製のプリフォームから製造するための金型(26)であって、前記金型(26)が、容器(10)の本体(11)を形成するように構成されて互いに移動する2個の壁(27)と、容器(10)を構成するプラスチック材料を容器の開口部(121)に向けて押すことによって容器(10)の底部(13)を形成するために壁(27)に対して移動する金型底部(28)とを含む金型において、金型底部(28)が、
-少なくとも部分的に座部(14)を形成するための第1の環状部分(281)と、
-丸天井部(15)を形成するためにプリフォームの中央アモルファス領域に接するように構成されたドーム状の第2の部分(282)とを含み、
前記第2の部分(282)が、
-座部(14)の付近で第1の突出部(16)を形成するように構成された、突出する第1の環状帯(283)と、
-中央アモルファス領域(151)の付近で第2の突出部(17)を形成するように構成された、突出する第2の環状帯(284)とを有していることを特徴とする、金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック容器の設計と製造の分野に関する。
【0002】
より詳しくは、本発明は、プラスチック製のブランク(プリフォーム、またはあらかじめ1回または複数回のブロー成形操作を行った中間容器)のブロー成形または延伸ブロー成形により得られる容器に関する。
【背景技術】
【0003】
ブロー成形による容器製造は、あらかじめプリフォームの構成材料(PETなど)のガラス転位温度より高い温度に加熱したブランクを容器のキャビティを有する金型内に導入するステップと、加圧流体(空気など)をブランクに注入するステップとを含む。摺動ロッドによる延伸成形によりブロー成形を補うことができる。
【0004】
このような技術は、ずっと以前から知られている。同様に、ブロー成形または延伸ブロー成形時に材料が受ける二重の分子配向(軸方向と半径方向)が時には弱すぎて、十分な機械的強度を容器に確実に付与できないことも分かっている。こうした強度不足は、特に、動的(充填時)および静的(充填後の中身の圧力、またはケースを重ねた積み重ねの結果として)に強い応力を受ける容器底部に悪影響を及ぼす。
【0005】
上記の応力に耐えるように構成された丸天井部を画定する中空の形状を容器底部に付与し、これによって容器底部を強化することが知られている。このような丸天井部が1つだけ存在するだけでは不十分となりうる場合があり、たとえば米国特許第4525401号明細書が記載しているように、材料の局部的な肉厚部から半径方向のリブを形成し、これを用いて丸天井部を強化することも提案されている。
【0006】
しかしながら、この構造は、リブにより形成される肉厚部のために底部に追加材料を割り当てることを想定している。
【0007】
その結果として、一方では容器の質量が増加し、これは、材料を節約するという現代の傾向に明らかに反していることが分かる。
【0008】
また、他方では、ブロー成形性(容器がブロー成形により形成される適合性、すなわち材料が金型のキャビティに適切に係合する適合性を「ブロー成形性」と名付ける)に様々な問題が生じる。なぜなら、材料に厚みがあるために、リブに対応する金型キャビティ内へ流れる材料の配分が難しくなるからである。
【0009】
これを解消するため、通常の1つの解決方法は、ブロー成形圧を上昇することから構成可能である。しかし、この解決方法は、上昇時の空気注入回路の適合性を見直すことが必要であり、製造方法のエネルギー収支が損なわれる。
【0010】
さらに、すべてのリブが特に機械的強度の観点から同じ特徴を有するように、材料の流れを制御することが難しい場合がある。したがって、容器底部が変形するリスクがあり、それによって充填かつ打栓した容器の安定性が損なわれることがある。
【0011】
別の1つの解決方法は、容器底部の構成材料を押すことからなる。そのためには、特に、材料を押す並進移動式の金型底部を備えた特別な金型を使用する(特に欧州特許第1069983号明細書参照)。材料は押すことで変形率が高くなるので、その結晶性が機械的に高まり、押す段階によって容器底部にその最終形状が付与される。
【0012】
しかし、「ボクシング」と呼ばれるこの技術は、底部の強度が十分になることを保証するものではなく、メーカーは、ブロー成形性の制約を受け続ける個々の形状を用いることを免れられない。
【0013】
したがって、材料の量の制御、ブロー成形性および構造上の強度(特に、一般には中身が炭酸飲料である場合、容器内の超過圧によりもたらされる変形に耐えるための強度)との間で適切な妥協を得られる形状を提案する必要性は依然として存在する。
【0014】
本出願人による国際公開第2013/156710号は、特に上記の必要性に応えることをめざしている。
図1が示すように、この文献は、横断面が星形の輪郭3を有する丸天井部2を備えた底部1を含む容器を提案している。
【0015】
星形の輪郭3は、
-角方向に交互に配置された短い分岐4および長い分岐5であって、長い分岐5が容器の座部6のすぐ近くまで続いている一方で、短い分岐4は座部6から離れている、短い分岐4および長い分岐5と、
-互いに隣接している短い分岐4と長い分岐5を結合する多数の面7と、によって得られる。
【0016】
他ならぬ本発明者らの見解によれば、このタイプの容器では優れた特性を得られるが、特に最終的な顧客が持ちうる評価に関しては改良の余地がある。
【0017】
ここで、最終的な顧客の評価とは、技術的な視点ならびにデザイン的な視点を意味する。
【0018】
技術的な観点からは、長い分岐5と座部6とが近いので、製造上、様々な問題が生じる可能性がある。
【0019】
なぜなら、容器のブロー成形時には、
-材料が金型内に適切に流れないか、あるいは
-適切に流れた材料があらかじめ決められた金型位置から後退する
というリスクが存在するからである。
【0020】
この現象は、星形の輪郭3と座部6とを隔てる領域で特に観察することができる。実際、この領域は面積がそれほど大きくないので、不十分な流れまたは材料の後退がうながされる可能性がある。その結果、この領域が変形するため、容器が不安定となったり、あるいは単に見た目が不完全になったりするリスクが生じうる。
【0021】
換言すれば、この場合、座部6が著しく波打つ可能性があり、その結果、座部は連続性のある設置面を画定するのではなく、そもそも完全に同一平面上にないこともある複数の設置区間を画定するので、これは、容器の良好な安定性に悪影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許第4525401号明細書
【特許文献2】欧州特許第1069983号明細書
【特許文献3】国際公開第2013/156710号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、主に、従来技術の不都合を解消することを目的とする。
【0024】
本発明は、特に、適切なブロー成形性を提供しながら優れた機械特性を有する容器を提案することを目的とする。
【0025】
本発明は、また、充填後も空のときも良好な安定性を有するこのような容器を提案することを目的とする。
【0026】
本発明は、さらに、従来技術に比べてデザイン性を向上させたこのような容器を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
これらの目的ならびに以下に示す他の目的は、プラスチック容器を対象とする本発明により達せられる。この容器は、開口部と底部との間で長手方向の軸に沿って延びる本体を含み、底部が、
-容器の設置面を形成する座部と、
-長手方向の軸を中心とする回転体であり、座部の付近から中央アモルファス領域まで延びる凹状丸天井部と、
-凹状丸天井部から突出し、丸天井部の半径方向内部に延びる強化突出部と、
を有し、
強化突出部が、第1の突出部と第2の突出部とを交互に配置しながら互いに角方向に間隔をおいて配置され、これらの突出部は、第1の環状帯および第3の環状帯にしたがって配置され、
-第1の環状帯において、座部の付近の第1の端部から第2の端部まで第1の突出部が延び、第1の突出部が、その第2の端部と中央アモルファス領域との間に第2の環状帯を提供し、
-第3の環状帯において、中央アモルファス領域の付近の第1の端部から第2の端部まで第2の突出部が延び、第2の突出部が、その第2の端部と座部との間に第4の環状帯を提供する、
ことを特徴とする。
【0028】
帯に配分される突出部を交互に配置することにより、見栄えの良いパターンにしながら有効に底部を強化することができる。
【0029】
第1の突出部と第2の突出部を2つの帯に交互に配置する配分により、特に中身が炭酸飲料の場合、丸天井部に対して容器の中身が及ぼす応力が適切に配分される。
【0030】
さらに、第1の突出部と第2の突出部を交互に配置することにより、丸天井部の機械的強度を損なうことなく座部の品質が適切に保たれ、充填されていてもいなくても容器の良好な安定性が保証される。
【0031】
有利には、底部が、第1の突出部の第2の端部と、第2の突出部の第2の端部との間に配置された第5の環状帯を含み、この第5の環状帯に部分的に第1の突出部と第2の突出部とが延びている。
【0032】
この第5の環状帯は、大きい応力がかかる部分で丸天井部が耐えられるように底部の機械的強度が高い。
【0033】
別の1つの特徴によれば、丸天井部が、段部により分離される異なる2つの領域すなわち第1の領域と第2の領域とを含み、第1の突出部の第2の端部は、第2の領域内で、段部からの距離が、この第2の領域を展開した全長の25%~65%のところに通じており、第2の突出部の第2の端部は、第1の領域内で、段部からの距離が、この第1の領域を展開した全長の25%~65%のところに通じている。
【0034】
このようにして、第5の環状帯では、第1の突出部と第2の突出部とが環状に重なりあう。
【0035】
有利には、段部が、段部直径φPを有し、座部が、座部直径φAを有し、比φP/φAが0.5から0.85である。
【0036】
段部の存在とその寸法とによって、容器内の圧力が超過した場合でも丸天井部の上部のみ、すなわち段部と中央アモルファス領域との間の部分だけは反転不能になるので、座部が変形せず、容器がその安定性を保つように保証される。
【0037】
この場合、段部は高さHPを有し、丸天井部は高さHVにわたって延び、比HP/HVが0.4から0.8である。
【0038】
換言すれば、この第5の環状帯で選択される1つの横断面では、連続する2個の第1の突出部の間に1個の第2の突出部があり、これは、従来技術と同様のほぼ星形の輪郭を形成していることが分かる。これにより良好な機械的強度が保証され、この輪郭が容器の安定性に対してリスクとなることはなくなる。
【0039】
1つの好ましい実施形態によれば、座部は、座部直径φA(座部の直径φAとも呼ばれる)を有し、丸天井部が高さHVにわたって延び、比φA/HVが0.2から0.4である。
【0040】
このような比は、丸天井部の良好な機械的強度を保証し、丸天井部が潰れる恐れがない。さらに、容器のブロー成形性も損なわれない。
【0041】
このため、丸天井部の上部が反転する場合でも、座部により形成される設置面を超えて中央アモルファス領域が延びる可能性がないので、容器の安定性が保たれる。
【0042】
1つの有利な実施形態によれば、
-丸天井部が、範囲0.5mmから3mmの内部円形区間により座部に結合され、
-座部が、範囲1mmから5mmの外部円形区間により容器の底部から容器の本体までを接続するアールに結合される。
【0043】
このような寸法値によって、底部の広がりと丸天井部の弱体化を回避することができる。
【0044】
換言すれば、これらの値は、内部および外部円形区間の展開すなわち内部および外部の円形区間が直線の形状を取ろうとする傾向を制限することができるので、丸天井部が、容器内の圧力に耐えられる形状を保つようにされる。
【0045】
有利には、第1の突出部と第2の突出部が、それらの個々の第1の端部とそれらの個々の第2の端部との間で個々の円弧に沿って延び、各円弧が座部直径φAの25%~45%の曲率半径を有する。
【0046】
第1の突出部と第2の突出部の曲率半径の寸法は、底部の機械的強度を良好に保ちながら容器のブロー成形性を損なわないように選択される。
【0047】
好ましくは、容器は、少なくとも5個の第1の突出部と5個の第2の突出部とを含む底部を有する。
【0048】
このような数の突出部により、同様に、ブロー成形性を損なわずに容器底部の良好な強度を保証することができる。
【0049】
本発明は、また、プラスチック製のプリフォームから容器を製造するための金型を対象とし、この金型が、容器の本体を形成するように構成されて互いに移動する2個の壁と、容器を構成するプラスチック材料を容器の開口部に向けて押すことによって容器の底部を形成するために壁に対して移動する金型底部とを含み、金型底部が、
-少なくとも部分的に座部を形成するための第1の環状部分と、
-丸天井部を形成するためにプリフォームの中央アモルファス領域に接するように構成されたドーム状の第2の部分とを含み、
この第2の部分が、
-座部の付近で第1の突出部を形成するように構成された、突出する第1の環状帯と、
-中央アモルファス領域の付近で第2の突出部を形成するように構成された第2の環状帯とを有している。
【0050】
本発明の他の特徴および長所は、添付図面を参照しながら、限定的ではなく例として挙げられた本発明の1つの好適な実施形態の以下の説明を読めば、いっそう明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図4】本発明による容器底部の細部を示す図である。
【
図5】
図3のV-V軸線に沿った本発明による容器底部の横断面図である。
【
図6】本発明による容器の製造金型を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図2に示すように、本発明による容器10は、開口部121と底部13との間で長手方向の軸Xに沿って延びる本体11を含む。開口部121は、一般に、本体11の上にあるショルダ12の上に配置された首部122の一端にある。
【0053】
特に、容器10は、図示された実施形態では、PET(ポリエチレンテレフタレートの頭字語)等の熱可塑性材料により製造されたボトルである。
【0054】
図3から
図5に示した底部13は、
-座部14と、
-凹状の丸天井部15と、
-凹状の丸天井部15から突出して丸天井部15の半径方向内部に延びる強化突出部16、17とを含む。
【0055】
座部14は、容器10の設置面141を形成する。設置面141は、容器10が載せられる円の形状をほぼ呈している。
【0056】
座部14は、容器10に入れる中身のタイプと量とに応じて画定される直径φA(「座部14の直径φA」とも呼ばれる)を有する。そのため、大容量の容器10の場合、座部14の直径φAは、容量が小さい容器10の直径よりも大きい。容量は、容器10に入れることが可能な物質(たとえば液体)の量によって画定されることを明記しておく。
【0057】
以下の説明では、慣習的に、記載されているすべての高さが、基準面の役割を果たす容器10の設置面141を起点として測定されている。
【0058】
丸天井部15は、長手方向の軸Xを中心とする回転体であり、座部14の付近から中央アモルファス領域151まで延びる。
【0059】
より詳しくは、丸天井部15が、内部円形区間18により座部14に結合されている。内部円形区間18の範囲は0.5mmから3mmの間である。好ましくは、内部円形区間18の範囲が1.5mmである。
【0060】
さらに、内部円形区間18は凹状を有し、すなわち、座部14の内部に向かって配向された空洞を形成している。
【0061】
内部円形区間18と丸天井部15の中央アモルファス領域151との間で、丸天井部は、互いの間に段部24を形成する2個の個々の領域15A、15Bを含んでいる。第1の領域15Aは、内部円形区間18と第2の領域15Bとの間に含まれ、この第2の領域15Bは、中央アモルファス領域151まで延びている。第1の領域15Aは、1つの円弧により決定され、丸天井部の内部に向いた(したがって容器の外部に向いた)凹部を有している。同様に、第2の部分15Bは、同じく1つの円弧により決定され、丸天井部15の内部に向いた凸部を有しているので、段部24は、この2つの部分の間の曲率変化により画定される。換言すれば、段部24は、領域15A、15Bを分離する境界を構成する。段部24の直径φP(「段部直径φP」とも呼ばれる)は、曲率変化時の直径として画定される。したがって、段部24の位置で決定される。
【0062】
段部直径φPは、有利には、比φP/φAが0.5から0.85の間にあるように選択される。好ましくは、比φP/φAが0.69である。
【0063】
さらに、段部24は、容器10の設置面141から測定した高さHPのところに配置される。高さHPは、段部高さHPと丸天井部の高さHVとの比HP/HVが0.4から0.8の間にあるように選択される。
【0064】
容器10の底部13の良好な機械的強度を得るために、比HP/HVは、好ましくは0.63である。
【0065】
そのため、
図5に示したように、丸天井部15は、0.2mmから2mmの間にある離隔高さH
eだけ設置面141から離れている。好ましくは、離隔高さH
eは、0.75mmである。
【0066】
中央アモルファス領域151は、長手方向の軸Xに中心を合わせた直径φZAの同材料のディスクの形状を呈する。このディスクは、容器10のブロー成形中に変形しない。
【0067】
したがって、設置面141と丸天井部15の中央アモルファス領域151との間で丸天井部15の高さHVを測定し、画定することができる。
【0068】
丸天井部の機械的強度を保証するために、丸天井部15の高さHVは、比φA/HVが0.2から0.4の間にあるように画定される。
【0069】
好ましくは、比φA/HVが0.29に等しくなるように丸天井部の高さHVを決定する。このようにして、丸天井部15の適切な機械的強度が得られる。
【0070】
同様に
図3から
図5を参照すると、強化突出部16、17は、第1の突出部16と第2の突出部17とを交互に配置することによって、互いに角方向に間隔をあけて配置されている。
【0071】
第1の突出部16は、座部直径φAの25%から45%に含まれる曲率半径を有する円弧163に沿って、第1の端部161と第2の端部162との間に延びている。
【0072】
第1の突出部16の円弧163は、この円弧163の各側にそれぞれ延びる第1の面164と第2の面165とによって丸天井部15に結合される。
【0073】
第1の突出部16の面164、165は、横断面で第1の突出部16がV字型を形成するように平面形状を有する。しかし、面164、165は、膨らんだ形状を有することも同様に可能である。
【0074】
第2の突出部17は、座部直径φAの25%から45%に含まれる曲率半径を有する円弧173に沿って、第1の端部171と第2の端部172との間に延びている。
【0075】
第2の突出部17の円弧173は、円弧173の各側にそれぞれが延びる第1の面174と第2の面175とによって丸天井部15に結合される。
【0076】
第2の突出部17の面174、175は、横断面で第2の突出部17がV字型を形成するように平面形状を有する。しかし、面174、175は、膨らんだ形状を有することも同様に可能である。
【0077】
好ましくは、容器10の底部13が少なくとも5個の第1の突出部16と5個の第2の突出部17とを含んでいる。
【0078】
図3から
図5に示した実施形態によれば、底部13は、7個の第1の突出部16と7個の第2の突出部17とを含んでいる。
【0079】
いずれにしても、第1の突出部16の数と第2の突出部の数とが同じでなければならない。
【0080】
突出部16、17は、
図3から
図5に示したように複数の環状帯に配分されている。
【0081】
第1の環状帯19が画定されており、この第1の環状帯では、第1の突出部16が、座部14の付近の第1の端部161から、段部24の上でこの段部と中央アモルファス領域151との間の丸天井部15の第2の領域15Bに配置される第2の端部162まで延びている。
【0082】
その場合、第1の突出部16は、それらの第2の端部162と中央アモルファス領域151との間に第2の環状帯20を決定する。
【0083】
第3の環状帯21が画定され、この第3の環状帯では、第2の突出部17が、丸天井部15の第2の領域15Bにおいて、中央アモルファス領域151の付近の第1の端部171から、段部24と座部14との間で丸天井部15の第1の領域15Aに配置される第2の端部172まで延びている。
【0084】
第2の突出部17は、第2の端部172と座部14との間で第4の環状帯22を決定する。
【0085】
第5の環状帯23は、第1の突出部16の第2の端部162と第2の突出部17の第2の端部172とを境界としている。そのため、第1の突出部16と第2の突出部17は、この第5の環状帯23にそれぞれが部分的に延びている。
【0086】
特に、突出部16は、それらの第2の端部162によって、丸天井部15の第2の領域15Bにおいて、段部24からの距離が、この第2の領域15Bを展開した全長の25%から65%のところに通じている。
【0087】
領域15Bの「展開した全長」とは、領域15Bを決定する円弧を測定した長さを意味する。
【0088】
突出部17に関しては、それらの第2の端部172によって、丸天井部15の第1の領域15A内で、段部24からの距離が、この第1の領域15Aを展開した全長の25%から65%のところに通じている。
【0089】
領域15Aの「展開した全長」とは、領域15Aを決定する円弧を測定した長さを意味する。
【0090】
図3および
図4に示したように、第1の突出部16と第2の突出部17は互いに離れている。
【0091】
より詳しくは、第1の突出部16は、4mm以下の距離、好ましくは約1mmの距離だけ第2の突出部17から離れている。
【0092】
しかし、底部の機械的強度を高めるために、隣接する第1の突出部16と第2の突出部17が互いに接触するように、すなわち、これらを隔てる距離がゼロになるように検討することも可能である。
【0093】
図3から
図5に示したように、底部13は、底部13を容器10の本体11に接続するアール131を含む。
【0094】
より詳しくは、
図5を参照すると、座部14は、外側円形区間25により接続アール131に結合されている。外側円形区間25の範囲は1mmから5mmである。好ましくは、外側円形区間25の範囲が3mmである。
【0095】
さらに、外側円形区間25は凸状の形状を有し、すなわち、容器10の内部に向いた空洞を形成する。
【0096】
容器10を製造するために、特に前述の底部13を製造するために、
図6に示したような金型26が一般に使用される。
【0097】
このような金型26は、
-容器10の本体11とショルダ12とを形成するための2個の側壁27と、
-容器10の底部13を形成するための金型底部28とを含む。
【0098】
2個の側壁27は、たとえば財布の開口部のように互いに離れたり接近したりして、容器のブランク(プリフォーム)を導入し、その後、形成された容器10を取り出すことができるように、可動式である。
【0099】
有利には、金型底部28が、容器の型抜きと、上記のボクシング技術の実施とを可能にするように、すなわち、構成材料のプラスチックを開口部121に向かって押すことによって容器10の底部13を形成するように、側壁27に対して可動式である。
【0100】
金型底部28は、
-座部14を少なくとも部分的に形成するための第1の環状部分281と、
-丸天井部15を形成するためにプリフォームの中央アモルファス領域に接するように構成されたドーム型の第2の部分282とを含む。
【0101】
図6に示したように、第2の部分は、
-座部14の付近で第1の突出部16を形成するように構成された、突出する第1の環状帯283と、
-中央アモルファス領域151の付近で第2の突出部17を形成するように構成された、突出する第2の環状帯284とを有する。
【0102】
上記の底部13は、美しい外観を提供しながら容器10に入れる炭酸飲料の中身の応力に対して良好な機械的強度を提供する。実際、下から見ると、
図3に示したように、底部3は、向日葵の花の形状を呈し、その場合、第1の突出部16と第2の突出部17は、向日葵の花の花びらを形成している。
【0103】
そのうえ、第1の突出部16と第2の突出部17とによって不安定性のリスクが制限され、さらにはリスクがなくなる。
【0104】
実際、第1の突出部16と第2の突出部17とを分けることによって、一方では、金型26内に適切に材料が流れ、他方では、いったん成形が行われると、材料が、あらかじめ決められた成形位置から後退しない。
【0105】
しかも、丸天井部15には、座部14と、第1の突出部16と、連続する2個の第1の突出部16の間に挟まれた第2の突出部17との間に含まれる領域152があり、この領域が存在することによって、同様に、材料が良好に流れ、後退をなくすことができる。領域152の面積は、従来技術の面積大きい。
【0106】
その結果、第1の突出部16は、座部14のすぐ近くまで延びるので、容器10の不安定性を生じるような座部の変形の発生が回避される。
【符号の説明】
【0107】
10 容器
11 本体
12 ショルダ
121 開口部
13 底部
131 接続アール
14 座部
141 設置面
15 丸天井部
151 中央アモルファス領域
16、17 突出部
161、171 第1の端部
162、172 第2の端部
163、173 円弧18 内部円形区間
19 第1の環状帯
20 第2の環状帯
21 第3の環状帯
22 第4の環状帯
23 第5の環状帯
24 段部
25 外部円形区間
26 金型
27 側壁
28 金型底部
281 環状部分
282 ドーム状の部分
283、284 環状帯
【手続補正書】
【提出日】2023-11-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部(121)と底部(13)との間で長手方向の軸に沿って延びる本体(11)を含むプラスチック容器(10)であって、底部(13)が、
容器(10)の設置面(141)を形成する座部(14)と、
長手方向の軸(X)を中心とする回転体であり、座部(14)の付近から中央アモルファス領域(151)まで延びる凹状丸天井部(15)と、
凹状丸天井部(15)から突出し、丸天井部(15)の半径方向内部に延びる強化突出部(16、17)と、
を有する容器において、
強化突出部(16、17)が、第1の突出部(16)と第2の突出部(17)とを交互に配置しながら互いに角方向に間隔をおいて配置され、これらの突出部は、第1の環状帯(19)および第3の環状帯(21)にしたがって配分され、
-第1の環状帯(19)において、座部(14)の付近の第1の端部(161)から第2の端部(162)まで第1の突出部(16)が延び、第1の突出部(16)が、その第2の端部(162)と中央アモルファス領域(151)との間に第2の環状帯(20)を提供し、
-第3の環状帯(21)において、中央アモルファス領域(151)の付近の第1の端部(171)から第2の端部(172)まで第2の突出部(17)が延び、第2の突出部(17)が、その第2の端部(172)と座部(14)との間に第4の環状帯(22)を提供することを特徴とする、容器。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器(10)をプラスチック製のプリフォームから製造するための金型底部(28)であって、容器は、開口部(121)と底部(13)との間で長手方向の軸に沿って延びる本体(11)を備え、底部(13)が、容器(10)の設置面(141)を形成する座部表面(14)と、長手方向の軸(X)を中心とする回転対称を示し、座部表面(14)の付近から中央アモルファス領域(151)まで延びる凹状丸天井部(15)と、凹状丸天井部(15)から突出し、丸天井部(15)の半径方向内部に延びる強化突出部(16、17)と、を有し、前記金型底部(28)は、金型(26)の壁(27)に関して可動に搭載され、それらは互いに移動することができ、且つ、容器の本体(11)を形成することを意図されており、前記金型底部(28)は、前記容器(10)の構成プラスチック材料をその開口部(121)に向かって押し戻すことによって、容器の底部(13)を形成するように壁(27)に関して可動である、当該金型底部であって、前記金型底部(28)は、
- 少なくとも部分的に座部表面(14)を形成することを意図された第1の環状部分(281)と、
- 強化突出部(16、17)が互いに角度的に離間され、第1の突出部(16)および第2の突出部(17)は、第1の突出部(16)が座部表面(14)の付近の第1の端部(161)から第2の端部(162)まで延び、第1の突出部(16)が中央アモルファス領域(151)およびb第2の端部(162)の間に第2の環状帯(20)を形成する、第1の環状帯(19)と、第2の突出部(17)が中央アモルファス領域(151)の付近の第1の端部(171)から第2の端部(172)まで延び、第2の突出部(17)が座部表面(14)および第2の端部(172)の間に第4の環状帯(22)を形成する、第3の環状帯(21)とに従って、交互に配置されるようにして、丸天井部(15)を形成するように、プリフォームの中央アモルファス領域に接するように意図されたドーム形状の第2の部分(282)と、
を備え、
前記第2の部分(282)が、
- 座部表面(14)の付近で第1の突出部(16)を形成するように意図された、突出する第1の環状帯(283)と、
- 中央アモルファス領域(151)の付近で第2の突出部(17)を形成するように意図された、突出する第2の環状帯(284)と、
を具備する、
ことを特徴とする、金型底部。
【請求項2】
底部(13)が、第1の突出部(16)の第2の端部(162)と、第2の突出部(17)の第2の端部(172)との間に位置された第5の環状帯(23)を有し、部分的に第1の突出部(16)と第2の突出部(17)とが延びている形状であることを特徴とする、請求項1に記載の金型底部(28)。
【請求項3】
丸天井部(15)が、段部(24)により分離される異なる2つの領域すなわち第1の領域(15A)と第2の領域(15B)とを含み、第1の突出部(16)の第2の端部(162)は、第2の領域(15B)内で、レベル(24)からの距離が、前記第2の領域(15B)を展開した全長の25%から65%のところに通じており、第2の突出部(17)の第2の端部(172)は、第1の領域(15A)内で、段部(24)からの距離が、前記第1の領域(15A)を展開した全長の25%から65%のところに通じている形状であることを特徴とする、請求項1から2のいずれか一項に記載の金型底部(28)。
【請求項4】
レベル(24)が、レベル直径(φ
P
)を有し、座部表面(14)が、座部表面直径(φ
A
)を有し、比(φ
P
/φ
A
)が0.5から0.85である形状であることを特徴とする、請求項3に記載の金型底部(28)。
【請求項5】
レベル(24)が、高さ(H
P
)を有し、丸天井部(15)が、高さ(H
V
)にわたって延び、比(H
P
/H
V
)が0.4から0.8である形状であることを特徴とする、請求項3または4のいずれか一項に記載の金型底部(28)。
【請求項6】
座部表面(14)が、座部表面直径(φ
A
)を有し、丸天井部(15)が、高さ(H
V
)にわたって延び、比(φ
A
/H
V
)が0.2から0.4である形状であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の金型底部(28)。
【請求項7】
-丸天井部(15)が、範囲0.5mmから3mmの内部円形区間(18)により座部表面に結合され、
-座部表面(14)が、範囲1mmから5mmの外部円形区間(25)により容器(10)の底部(13)から容器(10)の本体(11)までを接続するアール(131)に結合される、
形状であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の金型底部(28)。
【請求項8】
凹状丸天井部(15)の第1の突出部(16)と第2の突出部(17)が、それらの個々の第1の端部(161;171)とそれらの個々の第2の端部(162;172)との間で個々の円弧(163;173)に沿って延び、各円弧(163;173)が座部表面(14)の直径(φ
A
)の25%から45%の曲率半径を有する形状であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の金型底部(28)。
【請求項9】
凹状丸天井部(15)が少なくとも5個の第1の突出部(16)と5個の第2の突出部(17)とを備えている形状であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の金型底部(28)。
【外国語明細書】