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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002022
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】印刷装置、及び、印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
B41J2/01 129
B41J2/01 213
B41J2/01 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100957
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東海 良次
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA23
2C056EB58
2C056EC11
2C056EC14
2C056EC74
2C056FA10
2C056FD20
2C056HA44
(57)【要約】
【課題】キャリッジに搭載される照射部から紫外線を照射してインクを硬化させる印刷装置において、紫外線を照射する装置やキャリッジの構造を簡素化する。
【解決手段】第1軸に沿った第1方向に移動可能なヘッドと、第1軸と交差する第2軸に沿った第2方向に相対移動可能な照射部と、を有するキャリッジと、制御部と、を備え、照射部は、第2方向に並ぶ第1照射群及び第2照射群を有し、第1照射群は、第1方向において複数のノズルと重複する位置に配置され、第2照射群は、第1方向において複数のノズルと重複しない位置に配置され、制御部は、第1照射群及び第2照射群から紫外線を照射させる第1モード、及び、第1照射群から紫外線を照射させず、且つ、第2照射群から紫外線を照射させる第2モードを実行可能である、印刷装置。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸に沿った第1方向に移動可能であり、媒体に向けてインクを吐出可能な複数のノズルを有するヘッドと、
前記第1軸と交差する第2軸に沿った方向を第2方向としたとき、前記ヘッドに対して前記第2方向に相対移動可能であり、前記媒体に向けて紫外線を照射可能な照射部と、
を有するキャリッジと、
制御部と、
を備え、
前記照射部は、前記第2方向に並ぶ第1照射群及び第2照射群を有し、
前記第1照射群は、前記第1方向において前記複数のノズルと重複する位置に配置され、
前記第2照射群は、前記第1方向において前記複数のノズルと重複しない位置に配置され、
前記制御部は、前記第1照射群及び前記第2照射群から紫外線を照射させる第1モード、及び、前記第1照射群から紫外線を照射させず、且つ、前記第2照射群から紫外線を照射させる第2モードを実行可能である、印刷装置。
【請求項2】
前記照射部は、
前記第2方向において第1相対位置と第2相対位置との間を移動可能であり、
前記照射部の前記第2相対位置において、
前記第1照射群の位置は前記第1方向において前記複数のノズルと重複する位置であり、
前記第2照射群の位置は前記第1方向において前記複数のノズルと重複しない位置である、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記照射部が前記第1相対位置にある状態で前記第1モードを実行し、
前記照射部が前記第2相対位置にある状態で前記第2モードを実行する、請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記第2照射群は、さらに、
前記第2方向において前記第1照射群の隣に位置する第3照射群と、
前記第2方向において、前記第3照射群を挟んで前記第1照射群とは反対の第4照射群と、を有し、
前記制御部は、前記第2モードにおいて、前記第3照射群から照射される紫外線の照射強度が、前記第4照射群から照射される紫外線の照射強度よりも小さくなるように、前記照射部を制御する、請求項1から3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第3照射群から照射される紫外線の照射強度と、前記第4照射群から照射される紫外線の照射強度と、の合計値が、所定の照射強度となるように、前記照射部を制御する、請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記第2照射群は、さらに、
前記第2方向において前記第1照射群の隣に位置する第3照射群と、
前記第2方向において、前記第3照射群を挟んで前記第1照射群とは反対の第4照射群と、を有し、
前記媒体の単位面積を印刷するために前記ヘッドを前記第1方向に移動させる回数である印刷パス数を、第1パス数、及び、前記第1パス数より多い第2パス数に設定可能であり、
前記制御部は、
前記印刷パス数が前記第1パス数である場合、前記第3照射群および前記第4照射群により紫外線を照射させ、
前記印刷パス数が前記第2パス数である場合、前記第3照射群から紫外線を照射させず、かつ、前記第4照射群により紫外線を照射させる、請求項1から請求項3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項7】
前記媒体の単位面積を印刷するために前記ヘッドを前記第1方向に移動させる回数である印刷パス数を、第1パス数、及び、前記第1パス数より多い第2パス数に設定可能であり、
前記制御部は、前記印刷パス数が第1パス数である場合に前記照射部から照射させる紫外線の照射強度を、前記印刷パス数が第2パス数である場合に前記照射部から照射させる紫外線の照射強度より高くする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項8】
前記ヘッドを前記第1方向に移動させるヘッド移動速度を、第1速度、及び、前記第1速度より低速の第2速度に設定可能であり、
前記制御部は、
前記ヘッド移動速度が前記第1速度である場合に前記照射部から照射させる紫外線の照射強度を、前記ヘッド移動速度が前記第2速度である場合に前記照射部から照射させる紫外線の照射強度より高くする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項9】
第1軸に沿った第1方向に移動可能であり、媒体に向けてインクを吐出可能な複数のノズルを有するヘッドと、
前記ヘッドに対し前記第1方向に並べて配置され、前記媒体に向けて紫外線を照射可能な照射部と、を有するキャリッジと、
制御部と、
を備え、
前記照射部は、前記第1軸と交差する第2軸に沿った方向を第2方向としたとき、前記第2方向に並ぶ第1照射群及び第2照射群を有し、
前記第1照射群は、前記第1方向において前記複数のノズルと重複する位置に配置され、
前記第2照射群は、前記第1方向において前記複数のノズルと重複しない位置に配置され、
前記第2照射群は、さらに、
前記第2方向において前記第1照射群の隣に位置する第3照射群と、
前記第2方向において、前記第3照射群を挟んで前記第1照射群とは反対の第4照射群と、を有し、
前記制御部は、前記第1照射群及び前記第2照射群から紫外線を照射させる第1モード、及び、前記第1照射群から紫外線を照射させず、且つ、前記第2照射群から紫外線を照射させる第2モードを実行可能であり、
前記第2モードにおいて、前記第3照射群から照射される紫外線の照射強度が、前記第4照射群から照射される紫外線の照射強度よりも小さくなるように、前記照射部を制御する、印刷装置。
【請求項10】
第1軸に沿った第1方向に移動可能であり、媒体に向けてインクを吐出可能な複数のノズルを有するヘッドと、
前記第1軸と交差する第2軸に沿った方向を第2方向としたとき、前記ヘッドに対して前記第2方向に相対移動可能であり、前記媒体に向けて紫外線を照射可能な照射部と、
を有するキャリッジを備え、
前記照射部は、前記第2方向に並ぶ第1照射群及び第2照射群を有し、
前記第1照射群が、前記第1方向において前記複数のノズルと重複する位置に配置され、
前記第2照射群が、前記第1方向において前記複数のノズルと重複しない位置に配置された印刷装置により、
前記第1照射群及び前記第2照射群から紫外線を照射させる第1モード、及び、前記第1照射群から紫外線を照射させず、且つ、前記第2照射群から紫外線を照射させる第2モードを実行する、印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、及び、印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線の照射により硬化するインクを用いる印刷装置が知られている。例えば、特許文献1の印刷装置は、複数の紫外線光源を備え、紫外線光源による紫外線の照射強度を制御する。これにより、インクが媒体に付着した後に紫外線を照射するタイミングを制御することにより、インク表面の平滑化の調整を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-202418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の印刷装置は、紫外線を照射するタイミング等を調整可能とするために、紫外線光源を印刷ヘッドより大きくする必要があった。このため、紫外線を照射する装置やキャリッジの構造を簡素化することが難しいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する一態様は、第1軸に沿った第1方向に移動可能であり、媒体に向けてインクを吐出可能な複数のノズルを有するヘッドと、前記第1軸と交差する第2軸に沿った方向を第2方向としたとき、前記ヘッドに対して前記第2方向に相対移動可能であり、前記媒体に向けて紫外線を照射可能な照射部と、を有するキャリッジと、制御部と、を備え、前記照射部は、前記第2方向に並ぶ第1照射群 及び第2照射群を有し、前記第1照射群は、前記第1方向において前記複数のノズルと重複する位置に配置され、前記第2照射群は、前記第1方向において前記複数のノズルと重複しない位置に配置され、前記制御部は、前記第1照射群及び前記第2照射群から紫外線を照射させる第1モード、及び、前記第1照射群から紫外線を照射させず、且つ、前記第2照射群から紫外線を照射させる第2モードを実行可能である、印刷装置である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る印刷装置の斜視図。
図2】印刷装置の要部斜視図。
図3】キャリッジの平面図。
図4】キャリッジの側面図。
図5図4におけるV―V断面図。
図6】キャリッジの平面図。
図7】ヘッドとUV光源との相対的な位置関係を示す模式図。
図8】印刷装置による印刷動作の説明図。
図9】印刷装置のブロック図。
図10】印刷装置の動作を示すフローチャート。
図11】印刷装置の動作を示すフローチャート。
図12】変形例におけるヘッドとUV光源との相対的な位置関係を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係る印刷装置1について説明する。
【0008】
[1.印刷装置の全体構成]
図1は、印刷装置1の斜視図である。
図1に示す印刷装置1は、テーブル31の上に載置された媒体Mに対してインクを吐出し、媒体Mに向けて紫外線を照射することによって媒体Mに付着したインクを硬化させ、印刷を行う装置である。媒体Mは、シート、布、或いは立体物である。シートは、紙、合成樹脂製のシートであってもよい。布は不織布、ニット、布帛のいずれであってもよい。立体物は、衣服や靴などの装飾品、日用品、機械部品、その他の各種の物体を含む。
【0009】
図1には、X軸、Y軸、及びZ軸を示す。X軸、Y軸、及びZ軸は互いに直交する。Z軸は、上下方向に延びる軸であり、鉛直方向に延びる軸ということもできる。X軸、及び、Y軸は、水平面に平行である。以下の説明において、X軸に沿った方向を左右方向とし、Y軸に沿った方向を前後方向とする。詳細には、Z軸に沿う正方向を上方向とし、X軸に沿う正方向を右方向とし、Y軸に沿う正方向を前方向とする。図1におけるX軸、Y軸、及びZ軸は、後述する各図においても同じ方向を示す。なお、X軸は第1軸の一例に対応し、Y軸は第2軸の一例に対応する。また、左右方向は第1方向の一例に対応し、前後方向は第2方向の一例に対応する。
【0010】
印刷装置1は、媒体Mを支持するテーブル31を有する。テーブル31は、前後方向および左右方向に移動しない台である。テーブル31は、平坦な上面に媒体Mを支持する。
印刷装置1は、テーブル31によって媒体Mを動かないように支持し、テーブルに支持された媒体Mの上方でキャリッジ69を走査させる。キャリッジ69は、後述するヘッド80及び照射部70を左右方向に並べて搭載し、ヘッド80から媒体Mに向けてインクを吐出した後、媒体Mに付着したインクに対して照射部70から紫外線を照射する。
【0011】
印刷装置1は、本体部10、及び、移動部50を備える。本体部10は、印刷装置1の設置面に固定される台座である。移動部50は、本体部10に対してY軸に沿って移動する。
【0012】
本体部10は、底板11と、ベース部13と、媒体支持機構30と、駆動機構20と、を備える。底板11は、印刷装置1の設置面に固定される板状の部材である。ベース部13は、底板11の上面に支持され、印刷装置1の各部を支持する。
【0013】
媒体支持機構30は、テーブル31と、高さ移動機構32と、を備える。テーブル31は、上面である矩形の平板と、平板の四隅に配置され平板から下方に延伸する脚部とを有する。
【0014】
高さ移動機構32は、昇降モーター33と、昇降ベルト37と、昇降機構39と、を備え、テーブル31を、Z軸に沿う方向に移動させる。昇降機構39は、テーブル31の4本の脚部の各々に設けられる。昇降機構39は、Z軸に沿って配置されたボールねじと、ボールねじに螺合するナットと、プーリーとを有する。昇降機構39のボールねじはベース部13に回転可能に支持される。昇降機構39のナットはテーブル31の脚部に固定される。昇降機構39のプーリーはボールねじの上部に固定される。昇降機構39のプーリーが回転すると、ボールねじが回転し、ボールねじの回転に伴いナットとともにテーブルがZ軸に沿って移動する。
【0015】
昇降モーター33は、後述する制御部90の制御に従って回転するモーターである。制御部90は、昇降モーター33の回転方向、及び、回転量を制御する。昇降ベルト37は、昇降モーター33の出力軸、及び、4つの昇降機構39のプーリーに掛け渡される環状のベルトである。昇降モーター33が回転することによって昇降ベルト37が循環駆動される。昇降ベルト37は、昇降モーター33の回転を4つの昇降機構39のプーリーに伝達する。これにより、昇降機構39のボールねじが回転し、テーブル31をZ軸に沿って移動させる。
【0016】
昇降モーター33の回転方向は、テーブル31を上方に移動させる正方向、及び、テーブル31を下方に移動させる逆方向に切り替え可能である。印刷装置1は、昇降モーター33を動作させることによって、テーブル31を上昇および下降させる。
印刷装置1は、このようにテーブル31の高さを変化させることによって、後述するヘッド80のノズル部83と媒体Mとの間の距離が、印刷に最適な距離となるように調整する。
【0017】
駆動機構20は、一対のガイド軸15及び、フレーム駆動部40を有する。一対のガイド軸15は、一対のベース部13に掛け渡されY軸に沿って配置される軸状部材である。
【0018】
移動部50は、メインフレーム51と、一対のフレーム脚部53と、を備える。
【0019】
メインフレーム51は、X軸に沿う方向に長い板状部材である。一対のフレーム脚部53は、一対のガイド軸15により、それぞれ前後方向に移動可能に支持される。メインフレーム51は、一対のフレーム脚部53の上に固定され、一対のフレーム脚部53によって下方から支持される。メインフレーム51は、一対のフレーム脚部53とともに、ガイド軸15によってガイドされて、Y軸に沿って移動する。
【0020】
フレーム駆動部40は、フレーム移動モーター41と、伝達ベルト43と、変速機構45と、伝達ベルト47と、を備える。
【0021】
フレーム移動モーター41は、後述する制御部90の制御に従って回転するモーターである。伝達ベルト43は、フレーム移動モーター41の出力軸と変速機構45との間に掛け渡される環状のベルトであり、フレーム移動モーター41の駆動力を変速機構45に伝達する。変速機構45は、第1のプーリーと、第2のプーリーとを有し、第1のプーリーには伝達ベルト43が巻き掛けられ、第2のプーリーには伝達ベルト47が巻き掛けられる。変速機構45は、伝達ベルト43から第1のプーリーに伝達される駆動力によって、第2のプーリーを回転させることにより、伝達ベルト47を駆動する。変速機構45は、第1のプーリーと第2のプーリーの径の比に対応する減速比で、フレーム移動モーター41の駆動力を伝達ベルト47に伝達する。
【0022】
伝達ベルト47は、変速機構45と、ベース部13の-Y方向の端部に配置されるプーリー49とに掛け渡される環状のベルトである。プーリー49は、ベース部13に対し回転自在に設置される。伝達ベルト47はY軸に沿って配置される。伝達ベルト47には、フレーム脚部53が固定されている。このため、伝達ベルト47が循環駆動されることによって、フレーム脚部53をY軸に沿って移動させる動力が作用する。これにより、移動部50は、Y軸に沿って移動する。
【0023】
フレーム移動モーター41の回転方向は、メインフレーム51を+Y方向に移動させる正方向、及び、メインフレーム51を-Y方向に移動させる逆方向に切り替え可能である。印刷装置1は、フレーム移動モーター41を動作させることによって、メインフレーム51を前方および後方に移動させる。
【0024】
メインフレーム51には、キャリッジ支持フレーム61、キャリッジガイド軸63、キャリッジ駆動モーター67、及び、キャリッジ69が設置される。キャリッジ69は、後述するヘッド80、及び、照射部70を備える。
【0025】
キャリッジ支持フレーム61は、X軸に沿う方向に長い板状部材である。キャリッジ支持フレーム61には、X軸に沿ってキャリッジガイド軸63が固定される。キャリッジ69は、キャリッジ支持フレーム61及びキャリッジガイド軸63によって支持され、キャリッジガイド軸63に沿って移動可能である。キャリッジ69がX軸に沿って移動する範囲において、左端の位置をホームポジションとする。本体部10は、ホームポジションにおいて、ヘッド80のフラッシングやクリーニング等のメンテナンスを行うクリーナー17を備える。図1において、キャリッジ69はホームポジションに位置する。
【0026】
キャリッジ駆動モーター67は、後述する制御部90の制御に従って回転するモーターである。キャリッジ駆動モーター67の回転は、キャリッジ駆動ベルト65に伝達され、キャリッジ駆動ベルト65は循環駆動する。
【0027】
キャリッジ駆動ベルト65は、キャリッジ支持フレーム61に対して、X軸方向に沿って掛け渡された環状のベルトである。キャリッジ駆動ベルト65にはキャリッジ69が連結される。このため、キャリッジ駆動ベルト65が循環駆動されると、キャリッジ69はX軸に沿って移動する。また、メインフレーム51がY軸に沿って移動することにより、キャリッジ69は前後方向、すなわち+Y方向および-Y方向に移動する。従って、印刷装置1は、キャリッジ69を前後方向および左右方向に移動させることができる。
【0028】
上述のように、キャリッジ69は、ヘッド80を搭載する。よって、印刷装置1は、ヘッド80を、テーブル31に対し、前後方向および左右方向に移動させることができる。そのため、テーブル31に支持される媒体Mの全体に、インクを吐出できる。また、上述したように、キャリッジ69は照射部70を搭載する。従って、印刷装置1は、照射部70を前後方向および左右方向に移動させることができる。
【0029】
図2は、印刷装置1の要部斜視図であり、キャリッジ69がホームポジションに位置する状態での第1当接部78及びその付近の構成を示す。
照射部70は、第1当接部78を備える。第1当接部78は、下方に突出する板状の突起である。第1当接部78は、照射部70の下方を覆う外装部材である筐体71の-X方向の端部から下方に曲げて形成されている。筐体71は、板金を折り曲げて形成されている。
第2当接部14は、上方に突出する板状の突起である。第2当接部14は、本体部10の-X方向の端部に設けられる当接部材12から、上方に曲げて形成される。当接部材12は、板金を折り曲げて形成された部材であり、本体部10に対してねじ留めで固定される。当接部材12は、前後方向においてテーブル31と重ならず、且つ、左右方向においてテーブル31と重ならす、テーブル31の右斜め前方に位置する。そのため、第2当接部14は、本体部10の前端付近に位置する。
【0030】
第1当接部78および第2当接部14は、それぞれY軸に対して垂直に形成される。また、第2当接部14の上端14aは、第1当接部78の下端78aよりも上方に位置する。さらに、図1及び図2に示すように、キャリッジ69がホームポジションに位置する場合、照射部70の第1当接部78と、本体部10の第2当接部14とは、+X方向において重なる。
すなわち、キャリッジ69がホームポジションに位置する場合、第1当接部78および第2当接部14の一部は互いに前後方向に重なる。従って、キャリッジ69がホームポジションに位置する状態において、移動部50が前後方向に移動することにより、キャリッジ69が前後方向に移動し、第1当接部78と第2当接部14とが互いに当接する。
【0031】
[2.キャリッジの構成]
図3は、キャリッジ69を下方から見た平面図である。図4は、キャリッジ69を前方から見た側面図である。図5は、図4におけるV-V断面図である。説明の都合上、図4においてはキャリッジ69の外装を外した状態を図示している。
【0032】
キャリッジ69は、ヘッド80と、照射部70と、ガイド62とを備える。キャリッジ69は、ヘッド80および照射部70を、左右方向に並べて搭載する。
【0033】
ヘッド80は、図示しないピエゾアクチュエーターを駆動させることによってインクを吐出する装置である。ヘッド80は、キャリッジ69の外装に固定されることによって、キャリッジ69の右側に配置される。ヘッド80の下方には底面パネル81が設けられる。底面パネル81は、水平に設けられる略矩形状の板であり、図3に示すように、中央が矩形に開口している。底面パネル81の開口からは、ヘッド80が備えるノズル部83が露出する。ノズル部83は、下方に開口する多数のノズルを有し、各々のノズルからインクを吐出して媒体Mに付着させる。
【0034】
図3から図5に示すように、ガイド62は、長手方向を前後方向として、キャリッジ69の外装に固定される部材である。ガイド62は、キャリッジ69の左側の端部に設けられる。図4に示すように、ガイド62は、正面視でL字形状の部材であり、水平に設けられた平板状のガイド部64、およびガイド部64の-X方向の端部から鉛直に立ち上がる平板状の保持部66からなる。
ガイド部64には、前後方向に延びる略長方形の孔であるガイド孔64aが形成されている。図5に示すように、保持部66の+X方向に対向する面には、ともに-X方向側に凹んだ形状の窪みである第1凹部66a、および第2凹部66bが形成されている。第1凹部66aは、保持部66の中央付近に形成され、第2凹部66bは、第1凹部66aよりも前方側に形成される。
【0035】
照射部70は、キャリッジ69の-X方向側に配置される。図4に示すように、照射部70は、照射部70の上部を覆う外装部材であるケース79、および照射部70の下部を覆う外装部材である筐体71を備える。
【0036】
照射部70は、下方に対向する照射口71aを備える。照射口71aは、筐体71が開口して形成された矩形状の孔である。照射口71aは、筐体71の内側から板ガラスによって覆われる。筐体71の内側に設けられたUV光源73は、複数の発光素子73aがX軸方向およびY軸方向に配列されて構成される。発光素子73aは、紫外領域の光を発する光源であり、例えば、UV-LED(Ultraviolet Light Emitting Diode)である。発光素子73aが発する紫外線は、板ガラス及び照射口71aを介して、筐体71の下方に載置された媒体Mに照射される。なお、UV光源73は、紫外線を発することによって形成される。UV光源73は、各々の発光素子73aに合成樹脂製のカバーレンズが装着された構成であってもよいし、複数の発光素子73aを覆う1または複数のカバーレンズを備える構成であってもよいし、板ガラスの内側で発光素子73aが露出する構成であってもよい。また、照射部70は、各々の発光素子73aに対応する、発光素子73aと同数の照射口71aを有する構成であってもよいし、1つの照射口71aが複数の発光素子73aに重なる範囲に開口する構成であってもよい。
【0037】
図4および図5に示すように、ケース79の左側の端部には、第1の突起79a、および第2の突起79bが形成されている。第1の突起79a、および第2の突起79bは、ともに左方向に突出している。第1の突起79aは、下向きに突出した第1ガイドピン74aを備える。第2の突起79bは、下向きに突出した第2ガイドピン74bを備える。第1ガイドピン74aおよび第2ガイドピン74bを「ガイドピン」と呼んでもよい。第1ガイドピン74aおよび第2ガイドピン74bは、それぞれ円柱形状のピンであり、前後方向に並べて配置される。第1ガイドピン74aおよび第2ガイドピン74bは、ともにガイド62のガイド孔64aに嵌合する。従って、照射部70の左側の端部は、ガイド62によって、キャリッジ69に対して前後方向に相対移動可能に支持される。
【0038】
また、図4に示すように、筐体71の右側の端部には、摺動部材71bが設けられる。摺動部材71bは、筐体71の右側の端部の縁に取り付けられる部材である。摺動部材71bは右側の端部の縁から下方に膨出している。摺動部材71bは、ヘッド80の底面パネル81の上面における左側の端部に上方から接する。これにより、底面パネル81によって、照射部70の右側の端部は、キャリッジ69に対して前後方向に相対移動可能に支持される。
【0039】
従って、照射部70は、ガイド62および底面パネル81によって、ヘッド80に対して前後方向に相対移動可能に支持される。
【0040】
また、図5に示すように、ケース79の左側の端部には、板ばね76が固定される。板ばね76は、ケース79の左側の端部と、保持部66との間に設けられ、左右方向に撓む圧縮ばねである。板ばね76は、第1凹部66a、および第2凹部66bに嵌るように曲げて形成されている。板ばね76は、第1凹部66a、または、第2凹部66bに嵌ることにより、照射部70がヘッド80に対して相対移動しないように固定する。
【0041】
図3から図5は、板ばね76が第1凹部66aに嵌った状態のキャリッジ69を図示している。この状態における、ヘッド80に対する照射部70の相対位置を、第1相対位置P1と定義する。照射部70が第1相対位置P1に位置するとき、図3に示すように、ヘッド80のノズル部83の全体は、Y軸において照射口71aと重なる。また、照射部70が第1相対位置P1に位置するとき、第1ガイドピン74aは、ガイド孔64aの後端である第1当て面64bと当接する。
【0042】
図6は、キャリッジ69の平面図であり、板ばね76が第2凹部66bに嵌った状態のキャリッジ69を下方から見た図である。図6に示す状態における、ヘッド80に対する照射部70の相対位置を、第2相対位置P2と定義する。照射部70が第2相対位置P2に位置するとき、照射口71aは、仮想線で示すノズル部83の一部Aと、Y軸において重ならない。ただし、照射部70が第2相対位置P2に位置するとき、照射口71aは、範囲Rの全体と、Y軸において重なる。ここで、範囲Rは、ノズル部83の前側の端部83aから、前方に距離Wまでの範囲である。また、距離Wは、ノズル部83の前後方向の寸法と等しい。
また、照射部70が第2相対位置P2に位置するとき、第2ガイドピン74bは、ガイド孔64aの前端である第2当て面64cと当接する。第1当て面64b及び第2当て面64cを「当て面」と呼んでもよい。
【0043】
図7は、ヘッド80とUV光源73との相対的な位置関係を示す模式図である。
図7には、+Y方向におけるヘッド80と照射部70との位置関係を、第1相対位置P1、及び、第2相対位置P2のそれぞれについて示している。説明の便宜のため、照射部70の+X方向における位置は他の各図と相違する。
【0044】
UV光源73は、上述のように複数の発光素子73aを備える。UV光源73が備える発光素子73aは、複数のLED群72に区分される。図7には、5つのLED群72a、72b、72c、72d、72eに区分される例を示す。LED群72a~72eを区別しない場合、LED群72と記載する。
【0045】
各々のLED群72は、複数の発光素子73aを含む。本実施形態では、LED群72a~72eが、それぞれ、+X方向に2行、+Y方向に5列、合計10個の発光素子73aを含む。UV光源73において、LED群72は、+Y方向にLED群72a、72b、72c、72d、72eの順で並んでいる。
【0046】
一方、ノズル部83には、複数のノズル列84が配置される。図7には、8列のノズル列84a、84b、84c、84d、84e、84f、84g、84hが配置された例を示す。ノズル列84a~ノズル列84hを区別しない場合、ノズル列84と記載する。
【0047】
ノズル列84は、複数のノズルが+Y方向に直線状に並んだ構成を有する。ノズル列84は1列に並ぶノズルで構成されてもよいし、複数列のノズルで構成されてもよい。ノズル列84a~84hは、それぞれ、印刷装置1が印刷に使用するインクを吐出する。例えば、印刷装置1がフルカラー印刷を行う構成において、ノズル列84a、84b、84c、84dは、それぞれ、印刷装置1が使用するシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のインクを吐出する。これらのインク色は一例であり、印刷装置1は、中間色や淡色のインクを使用可能な構成であってもよい。
【0048】
ノズル列84e、84f、84g、84hは、ノズル列84a~84dと同様に、カラー印刷用のインクが割り当てられてもよいが、本実施形態では、ノズル列84e、84fはホワイト(W)インクを吐出し、ノズル列84g、84hは、透明インクを吐出する。透明インクはバーニッシュインクとも呼ばれる。透明インク以外のシアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ホワイト等のインクを、以下ではカラーインクと呼ぶ。印刷装置1は、ノズル列84g、84hによって、カラーインクに重ねて透明インクを吐出することにより、カラーインクの上に透明なコート層を形成する。
【0049】
+Y方向において、ノズル列84a~84hのノズルが開口する範囲は距離Wに相当する。照射部70が第1相対位置P1に位置するとき、距離Wの範囲の全体が、+Y方向においてUV光源73に重なる。例えば、図7に示すように、LED群72b、72c、72dは、+Y方向においてノズル列84と重なる。
これに対し、照射部70が第2相対位置P2に位置するとき、距離Wの範囲の少なくとも一部は、UV光源73と重ならない。換言すれば、ノズル部83の幅Wの範囲と重なるLED群72は、UV光源73が有するLED群72の一部である。例えば、図7に示すように、LED群72aのみが+Y方向においてノズル列84と重なり、LED群72b~72eはノズル列84と重ならない。
【0050】
[3.印刷動作]
図8は、印刷装置1による印刷動作の説明図である。図8は、印刷装置1においてテーブル31を含む要部を上方から見た平面図である。
図8は、テーブル31に矩形の媒体Mを載置し、媒体Mの印刷範囲PAにインクを付着させることにより印刷する例を示す。図8におけるキャリッジ69の位置は、印刷開始前の位置である。印刷開始前、キャリッジ69は、+X方向においてホームポジションに位置し、キャリッジ支持フレーム61は+Y方向の端部に位置する。
【0051】
印刷装置1は、後述するように制御部90によって印刷装置1の各部を制御することによって、印刷動作を実行する。
印刷装置1は、フレーム移動モーター41を動作させて、キャリッジ支持フレーム61とともにキャリッジ69を-Y方向に移動させる。-Y方向におけるノズル部83の位置が、印刷範囲PAに重なる位置に到達すると、印刷装置1は-Y方向へのキャリッジ69の移動を停止する。続いて、印刷装置1は、キャリッジ駆動モーター67の動力によってキャリッジ69を+X方向に移動させる。+X方向においてノズル部83が印刷範囲PAに重なる位置に到達すると、印刷装置1は、ノズル部83からインクの吐出を開始する。印刷装置1は、ノズル部83が、+X方向において印刷範囲PAから逸脱する位置に達すると、インクの吐出を停止し、キャリッジ69の移動を停止させる。
【0052】
ここで、印刷装置1は、フレーム移動モーター41を動作させて、キャリッジ支持フレーム61とともにキャリッジ69を-Y方向に所定量、移動させる。キャリッジ69の-Y方向への1回の所定量の移動を、改行動作D4と呼ぶ。印刷装置1は、キャリッジ駆動モーター67の動力によってキャリッジ69を-X方向に移動させる。-X方向においてノズル部83が印刷範囲PAに重なる位置に到達すると、印刷装置1は、ノズル部83からインクの吐出を開始する。印刷装置1は、ノズル部83が、-X方向において印刷範囲PAから逸脱する位置に達すると、インクの吐出を停止し、キャリッジ69の移動を停止させる。
【0053】
このように、印刷装置1は、キャリッジ69を+X方向に移動させる間に、ノズル部83からインクを吐出する。インクの吐出を伴う+X方向への1回の移動を、パスD1とする。また、印刷装置1は、キャリッジ69を-X方向に移動させる間に、ノズル部83からインクを吐出する。インクの吐出を伴う-X方向への1回の移動を、パスD2とする。印刷装置1は、パスD1の印刷のみ実行し、パスD2の印刷を実行しない構成であってもよい。印刷装置1は、例えば、パスD1を実行する毎、及び、パスD2を実行する毎に、改行動作D4を行う。このように、パスD1及び/またはパスD2と、改行動作D4とを組合せて実行することにより、印刷装置1は、+Y方向および+X方向に所定サイズを有する媒体Mへの印刷を行う。
【0054】
印刷装置1は、パスD1、及び、パスD2において、照射部70によって紫外線を照射させる。照射部70は、ノズル部83の-X方向側に位置する。このため、パスD1の印刷時に照射部70により照射を行う場合、ノズル部83から吐出されて媒体Mに付着したインクは、ノズル部83の直後に照射部70による紫外線の照射を受ける。また、パスD2の印刷時に媒体Mに付着したインクは、次にキャリッジ69が-X方向または+X方向に移動する際に照射部70による紫外線の照射を受ける。この場合、印刷装置1は、パスD2で印刷を行った後、改行動作D4を行わずに、キャリッジ69を-X方向または+X方向に移動させながら照射部70により紫外線を照射してもよい。
【0055】
印刷範囲PAの全体に印刷をするために印刷装置1が行うパスD1、D2の回数は、改行動作D4の移動量と、印刷範囲PAのサイズにより定まる。印刷装置1は、改行動作D4を変更することにより、パスD1、D2の回数を変更可能である。つまり、印刷装置1は、改行動作D4の移動量を変更することによって、印刷範囲PAの単位面積あたりのパスD1、D2の回数を変更できる。
【0056】
印刷範囲PAに印刷を行うために必要なパスD1及びパスD2の回数の総和を、印刷パス数と呼ぶ。印刷装置1がパスD2を実行しない場合、印刷パス数はパスD1の回数の総和である。印刷装置1は、例えば、改行動作D4の移動量を2段階、3段階、或いはそれ以上の段階で切り替えることが可能であり、改行動作D4の移動量を無段階で変更可能であってもよい。
【0057】
印刷パス数が多い場合、照射部70が印刷範囲PAの上を移動する回数が多いので、照射部70が印刷範囲PAに照射する紫外線の総量を大きくすることができる。印刷範囲PAにおいてインクを確実に硬化させるために必要な紫外線の総量は、インクの吐出量と印刷範囲PAの大きさにより決まる。つまり、印刷範囲PAに照射すべき紫外線の総量は、印刷パス数とは無関係に定まるので、印刷パス数が多いほど、1回のパスD1、D2で照射する紫外線の量が少なくてもよい。すなわち、照射部70が単位時間に発する紫外線の光量が小さくてもよい。
【0058】
また、後述するように、印刷装置1は、キャリッジ駆動モーター67の回転速度を変更することにより、パスD1、及び、パスD2におけるキャリッジ69の移動速度を変更可能である。キャリッジ69の移動速度が遅いほど、照射部70が印刷範囲PAの上に滞在する時間が長くなるので、照射部70が印刷範囲PAに照射する紫外線の照射量が多くなる。言い換えれば、キャリッジ69の移動速度が遅いほど、照射部70が単位時間に発する紫外線の光量が小さくてもよい。キャリッジ69の移動速度は、ヘッド80の移動速度と見なすことができ、ヘッド移動速度の一例に対応する。
【0059】
印刷動作の実行時、ノズル部83が媒体Mにインクを吐出してから、媒体Mに付着したインクに照射口71aからの紫外線が照射されるまでの時間は、印刷の仕上がりに影響する。この時間を、仮に照射前時間と呼ぶ。
【0060】
ノズル部83から吐出されたインクは、インク滴となって媒体Mの表面に着弾する。着弾した直後のインク滴は隆起しており、インクの表面に凹凸が存在する。その後、インク滴は時間の経過とともに平坦な形状となり、インクの表面が平滑になる。インク滴が媒体Mに着弾してからインク滴の表面が平滑化するまでの時間は、インクの粘度等に応じて定まる。
【0061】
照射前時間が長いと、媒体Mの表面に付着したインク滴が、紫外線の照射によって硬化する前に、平滑化する。このため、照射前時間が長いほど、インク滴が平滑化した状態で硬化するので、光沢が強い印刷物が得られる。これに対し、照射前時間が短いと、媒体Mの表面のインク滴が、十分に平滑化しない状態で硬化する。このため、照射前時間が短い場合は、インク滴の表面に凹凸が残った状態が定着するので、光沢が弱い印刷物が得られる。
【0062】
印刷装置1は、インクを平滑化させてから硬化させる印刷形態を実行できる。この印刷形態をグロス調印刷と呼ぶ。また、印刷装置1は、インクが十分に平滑化しない状態で硬化させる印刷形態を実行できる。この印刷形態をマット調印刷と呼ぶ。印刷装置1は、照射前時間を変更することにより、マット調印刷とグロス調印刷とを切り替えて実行できる。
【0063】
照射前時間は、ノズル部83とUV光源73との位置関係によって変化する。
マット調印刷を行う場合、印刷装置1は、1回のパスD1においてインクの吐出と紫外線の照射を行う。この場合、照射部70は第1相対位置P1に位置する。このパスD1では、ノズル部83から媒体Mに吐出されたインクが、ノズル部83の直後にインクの上を通過する照射部70により、紫外線の照射を受ける。この場合、照射前時間が短いので、印刷物は光沢の弱いマット調の仕上がりとなる。
【0064】
また、グロス調印刷を行う場合、印刷装置1は、1回目のパスD1においてインクの吐出を行い、次のパスD2または2回目のパスD1で、照射部70により紫外線の照射を行う。1回目のパスD1では、ノズル部83から媒体Mに吐出されたインクは、その直後にインクの上を通過する照射部70による紫外線の照射を受けない。このため、照射前時間が長くなるので、光沢の強いグロス調印刷が実現される。
【0065】
グロス調印刷を実行するために、1回目のパスD1でインクを吐出するとともに照射部70を消灯させる動作が考えられる。この動作は、インクが平滑化するまで紫外線を確実に当てない状態を実現できるが、媒体Mに紫外線を照射するためのパスD1またはパスD2が必要である。すなわち、改行動作D4を実行せずに、インクを吐出するパスD1と紫外線を照射するパスD2、或いは、インクを吐出する1回目のパスD1と紫外線を照射する2回目のパスD1を行う必要がある。このような動作は、印刷に要する時間の延長を招く。
【0066】
このため、印刷装置1は、グロス調印刷を行う場合は、照射部70を第2相対位置P2に移動させる。第2相対位置P2では、上述したように、照射部70が有するLED群72のうち少なくとも一部は、ノズル列84に重ならない位置にある。図7の例では、LED群72b~72eは、+Y方向においてノズル列84に重ならない。印刷装置1は、LED群72aを消灯させた状態で、必要に応じてLED群72b~72eを点灯させることにより、媒体Mに着弾した直後のインクが紫外線の照射を受けにくい状態を実現する。これにより、1回のパスD1でインクの吐出と紫外線の照射との両方を行いながら、グロス調印刷を実行できる。
【0067】
さらに、印刷装置1は、グロス調印刷を行う場合、LED群72が発する紫外線の光量を調整する。詳細には、+Y方向においてノズル列84に近い位置にあるLED群72の光量を、ノズル列84から離れた位置にあるLED群72の光量より小さくする。この調整を行うことにより、ノズル列84から離れた位置のLED群72が発する紫外線の反射光や漏れ光がインクに及ぼす影響を低減させ、より光沢の強いグロス調印刷を行うことができる。図7の例では、印刷装置1は、LED群72bの光量を、LED群72cの光量より小さくする。また、印刷装置1は、LED群72b及びLED群72cの光量を、LED群72dより小さくしてもよい。
【0068】
このように、印刷装置1は、マット調印刷を行う場合と、グロス調印刷を行う場合とで、LED群72の点灯状態、及び、LED群72の発光強度を異ならせる。ここで、LED群72の点灯状態、及び、LED群72の発光強度をまとめてUV光源73の点灯モードと呼ぶ。印刷装置1がマット調印刷を行う場合の点灯モードを第1モードとし、印刷装置1がグロス調印刷を行う場合の点灯モードを第2モードとする。第1モードは照射部70が第1相対位置P1に位置するときの点灯モードであり、第2モードは照射部70が第2相対位置P2に位置するときの点灯モードである。LED群72の発光強度とは、発光素子73aの発光強度である。発光素子73aの発光強度を制御することは、照射口71aから照射される紫外線の照射強度を制御することと見なすことができる。つまり、制御部90は、UV光源73が有する発光素子73aの発光強度を調整し、制御することによって、照射口71aから媒体Mに照射される紫外線の照射強度を調整および制御する。
【0069】
印刷装置1は、媒体Mにマット調印刷を施す場合、カラーインク及び透明インクの両方に対してマット調印刷を実行する。この場合、印刷装置1は、LED群72を第1モードで点灯させる。
これに対し、媒体Mにグロス調印刷を施す場合、印刷装置1は、例えば、カラーインクを用いるマット調印刷を実行し、その後に、透明インクを用いてグロス調印刷を実行する。透明インクはカラーインクの上に重ねて吐出されることが多いので、透明インクのグロス調印刷を行うことにより、透明インクで覆われる領域の全体を、強い光沢を有する仕上がりにすることができる。従って、印刷装置1は、グロス調印刷を行う場合、最初にカラーインクのマット調印刷を行う間はLED群72を第1モードで制御し、透明インクのグロス調印刷を行う間に第2モードでLED群72を制御する。
【0070】
[4.印刷装置の制御系の構成]
図9は、印刷装置1のブロック図であり、印刷装置1の制御系の機能的構成を示す。
印刷装置1は、制御部90を有する。制御部90は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等で構成されるプロセッサー901、及び、記憶部910を備える。記憶部910は、揮発性のメモリー、及び、不揮発性記憶部を有する。揮発性のメモリーは、例えば、RAM(Random Access Memory)である。不揮発性記憶部は、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク、フラッシュメモリー等で構成される。制御部90は、記憶部910が記憶する制御プログラム911を実行することによって、印刷装置1の各部を制御する。
【0071】
制御部90には、インターフェイス(I/F)91が接続される。インターフェイス91は、ケーブルを利用する有線通信、または、無線通信回線を利用する無線通信を実行する通信装置である。インターフェイス91は、不図示のホストコンピューターと通信を実行して、印刷データを受信する。印刷データは、印刷装置1が媒体Mに印刷する画像や文字のデータ、印刷装置1の印刷実行を指示するコマンド、及び、その他のデータを含む。
【0072】
制御部90には、昇降モーター33、フレーム移動モーター41、キャリッジ駆動モーター67、UV光源73、及び、ヘッド80が接続される。制御部90には、フレーム位置センサー92、テーブル位置センサー93、および、キャリッジ位置センサー94が接続される。
【0073】
制御部90は、昇降モーター33、フレーム移動モーター41、および、キャリッジ駆動モーター67にかかる電流値を取得可能である。制御部90は、取得した電流値から、昇降モーター33、フレーム移動モーター41、および、キャリッジ駆動モーター67の負荷を検知する。
【0074】
制御部90は、UV光源73の点灯および消灯を制御する。詳細には、制御部90は、UV光源73が備えるLED群72a、72b、72c、72d、72eに対し、個別に、点灯、消灯、及び、発光強度を制御する。例えば、制御部90は、印刷時にキャリッジ69が+X方向または-X方向に移動する過程で、UV光源73が印刷範囲PAに接近したタイミングでLED群72を点灯させる。ここで、制御部90は、UV光源73が印刷範囲PAに重なる位置から逸脱するタイミングでLED群72を消灯させる。また、例えば、制御部90は、グロス調印刷を実行する場合に、LED群72aを消灯させ、LED群72b、72c、72d、72eを点灯させる。また、制御部90は、LED群72a、72b、72c、72d、72eに供給される電流を調整することによって、発光強度を調整する。
【0075】
制御部90は、例えば、LED群72aに対してPWM(Pulse Wave Modulation)制御を実行し、パルスのオン/オフのデューティを変更することにより、LED群72aの発光強度を調整できる。LED群72b、72c、72d、72eに対しても同様である。UV光源73は、制御部90の制御に従って、LED群72a、72b、72c、72d、72eへの電流のオン/オフの切り替え、及び、電流の調整を行うLED駆動回路を備える構成であってもよい。
【0076】
制御部90は、LED群72a、72b、72c、72d、72eの発光強度を、記憶部910が記憶する発光設定データ912に従って設定する。発光設定データ912は、印刷装置1の印刷モードがグロス調印刷であるかマット調印刷であるかに応じて、LED群72a、72b、72c、72d、72eの発光強度、及び、点灯か消灯かを定めるデータを含む。例えば、発光設定データ912は、グロス調印刷時にLED群72aを消灯させる場合のLED群72b、72c、72d、72eの発光強度を指定する。この場合、LED群72aを消灯することによって、媒体Mへ照射される紫外線が少なくならないように、LED群72b、及び、LED群72cの発光強度が、マット調印刷時におけるLED群72b、72cの発光強度よりも高い値に設定される。この場合は、グロス調印刷時におけるLED群72b、72cの発光強度の和が所定の発光強度となるよう設定される。ここで、所定の発光強度とは、例えば、テストパターンを媒体Mにグロス調印刷で印刷することを想定して定められる指標値である。或いは、所定の発光強度は、マット調印刷時におけるLED群72a、72b、72cの発光強度の和に基づき定められてもよい。また、発光設定データ912は、印刷装置1が媒体Mに吐出するインクの量、媒体Mにおける印刷範囲PAのサイズ、媒体Mのサイズ、インクの色等に対応付けて、LED群72a、72b、72c、72d、72eの発光強度を定めるデータを含んでもよい。また、発光設定データ912は、媒体Mの単位面積あたりの印刷パス数に対応付けて、LED群72a、72b、72c、72d、72eの発光強度を定めるデータを含んでもよい。また、発光設定データ912は、印刷時におけるキャリッジ69の移動速度に対応付けて、LED群72a、72b、72c、72d、72eの発光強度を定めるデータを含んでもよい。
【0077】
フレーム位置センサー92は、Y軸におけるメインフレーム51の位置を検出するセンサーである。例えば、フレーム位置センサー92は、ガイド軸15に沿って配置されるリニアエンコーダーである。テーブル位置センサー93は、Z軸におけるテーブル31の位置を検出するセンサーである。テーブル位置センサー93は、例えば、昇降モーター33の回転量を検出するロータリーエンコーダー、或いは、昇降機構39のボールねじの回転量を検出するロータリーエンコーダーである。キャリッジ位置センサー94は、X軸におけるキャリッジ69の位置を検出するセンサーである。例えば、キャリッジ位置センサー94は、キャリッジガイド軸63に沿って配置されるリニアエンコーダーである。制御部90は、フレーム位置センサー92、テーブル位置センサー93、及び、キャリッジ位置センサー94の検出値に基づいて、メインフレーム51の位置、テーブル31の位置、及び、キャリッジ69の位置を特定する。
【0078】
制御部90は、インターフェイス91が受信した印刷データに基づいて、各モーターを動作させる。詳細には、制御部90は、フレーム移動モーター41の回転方向の切り替え、及び、フレーム移動モーター41の回転の開始および停止を制御することにより、移動部50を前後に移動させる。制御部90は、昇降モーター33の回転方向の切り替え、及び、昇降モーター33の回転の開始および停止を制御することにより、テーブル31をZ軸に沿って移動させる。制御部90は、キャリッジ駆動モーター67の切り替え、及び、キャリッジ駆動モーター67の回転の開始および停止を制御することにより、キャリッジ69をX軸に沿って移動させる。これらの制御において、制御部90は、フレーム位置センサー92、テーブル位置センサー93、及び、キャリッジ位置センサー94の検出値を利用する。
【0079】
制御部90は、インターフェイス91が受信した印刷データに基づいて、ヘッド80を動作させることにより、インクを吐出させる。
【0080】
[5.印刷装置の動作]
図10、及び、図11は、印刷装置1の動作を示すフローチャートである。印刷装置1が図10の動作を開始する時点において、照射部70は第1相対位置P1に位置し、キャリッジ69はホームポジションに位置し、メインフレーム51は前側の端部に位置する。また、ノズル部83と媒体Mとの間の距離は、印刷に適した距離となるように調整された状態である。図10及び図11に示す動作は、プロセッサー901により実行される。
【0081】
印刷装置1は、印刷条件を取得する(ステップS11)。印刷条件は、例えば、媒体Mへの印刷がマット調印刷であるかグロス調印刷であるかを指定する情報、印刷パス数に関する情報、キャリッジ69の移動速度に関する情報等を含む。印刷条件は、例えば、媒体Mに印刷する画像や文字を含む印刷データに付加され、或いは印刷データに含まれる。印刷装置1は、例えば、ステップS11で、インターフェイス91により受信した印刷データから印刷条件を取得する。
【0082】
印刷装置1は、ステップS11で取得した印刷条件に基づいて、マット調印刷を実行するか否かを判定する(ステップS12)。マット調印刷を実行すると判定した場合(ステップS12;YES)、印刷装置1は、カラーインク及び透明インクによるマット調印刷を開始する。すなわち、印刷装置1は、UV光源73の点灯モードを第1モードに設定し(ステップS13)、印刷データを取得し(ステップS14)、印刷データに基づきマット調印刷を実行する(ステップS15)。
【0083】
印刷装置1は、マット調印刷を実行しないと判定した場合(ステップS12;NO)、印刷装置1は、印刷データを取得し(ステップS16)、グロス調印刷を開始する。グロス調印刷は、カラーインクを用いるマット調印刷と、透明インクを用いるグロス調印刷とを含む。印刷装置1は、カラーインクの印刷を開始する(ステップS17)。カラーインクの印刷はマット調印刷であるから、印刷装置1は、UV光源73の点灯モードを第1モードに設定し(ステップS18)、印刷データに基づきマット調印刷を実行する(ステップS19)。続いて、印刷装置1は、透明インクのグロス調印刷を実行する(ステップS20)。ステップS20の動作の詳細を、図11に示す。
【0084】
図11に示すように、印刷装置1は、UV光源73の点灯モードを第2モードに設定する(ステップS21)。第2モードは、例えば、LED群72aを点灯させず、LED群72b、72c、72d、72eを点灯させるモードである。
【0085】
印刷装置1は、印刷条件に基づいて、透明インクを媒体Mに印刷する印刷パス数、及び、キャリッジ69の速度を決定する(ステップS22)。印刷装置1は、印刷パス数に応じて、UV光源73が有する複数のLED群72のうち、点灯させるLED群72を選択する(ステップS23)。第2モードの初期値では、LED群72b、72c、72d、72eが選択される。ステップS23で、印刷装置1は、例えば、媒体Mの単位面積あたりの印刷パス数が第1パス数である場合、点灯させるLED群72として、LED群72b、72c、72d、72eを選択する。この例において、媒体Mの単位面積あたりの印刷パス数が第1パス数より多い第2パス数である場合、点灯させるLED群72として、LED群72c、72d、72eを選択する。媒体Mの単位面積あたりの印刷パス数が第2パス数である場合、媒体Mの単位面積あたりの印刷パス数が第1パス数である場合よりも、キャリッジ69が媒体Mの上を走査する回数が多いので、LED群72bを点灯させなくてもインクに十分な光量の紫外線を照射できる。また、LED群72bを消灯させることにより、LED群72が発する紫外線の反射光や漏れ光がインクに照射されることを抑制できるので、インク表面を、より確実に平滑化させることができる。ステップS23で、印刷装置1は、媒体Mの単位面積あたりのパス数により選択するLED群72を変更しなくてもよい。すなわち、印刷装置1は、媒体Mの単位面積あたりのパス数にかかわらず、点灯させるLED群72を固定してもよい。
【0086】
印刷装置1は、印刷パス数に応じて、ステップS22で選択したLED群72の照射強度を設定する(ステップS24)。ステップS24で、印刷装置1は、例えば、媒体Mの単位面積あたりの印刷パス数が第1パス数である場合のLED群72の照射強度は、媒体Mの単位面積あたりの印刷パス数が第2パス数である場合の照射強度より高い。つまり、印刷パス数が少ないほど、LED群72の照射強度が高く設定される。媒体Mの単位面積あたりの印刷パス数が第1パス数である場合、媒体Mの単位面積あたりの印刷パス数が第2パス数である場合よりも、キャリッジ69が媒体Mの上を走査する回数が少ないので、LED群72の照射強度を高く設定することで、インクに十分な光量の紫外線を照射できる。ここで、LED群72の照射強度とは、UV光源73において点灯するLED群72の照射強度の和をいう。
【0087】
ステップS24で、印刷装置1は、ステップS23で選択した各々のLED群72の照射強度を設定してもよい。例えば、印刷装置1は、LED群72b~72eを点灯させる場合に、LED群72bとLED群72cの照射強度の和が所定の値になるように、LED群72b、72cの照射強度をそれぞれ設定する。具体的には印刷装置1は、LED群72bとLED群72cの照射強度の和が、第1モードにおけるLED群72a~72cの照射強度の和と等しいか、その差が所定範囲内となるように、LED群72b、72cの照射強度を設定する。
【0088】
続いて、印刷装置1は、フレーム移動モーター41を駆動させ、メインフレーム51を前側の端部に移動させる(ステップS25)。印刷装置1は、キャリッジ駆動モーター67を駆動させ、キャリッジ69をホームポジションに移動させる(ステップS26)。これにより、照射部70の第1当接部78、および、本体部10の第2当接部14は、互いに前後に重なる位置にある。また、第1当接部78は、第2当接部14よりも前方に位置する。
【0089】
さらに、印刷装置1は、フレーム移動モーター41を駆動させ、メインフレーム51の後方への移動を開始させる(ステップS27)。ここで、メインフレーム51が後方に移動すると、第1当接部78も同様に後方に移動する。上述したように、ステップS26の実行後は、第1当接部78および第2当接部14は互いに前後に重なり、且つ、第1当接部78は第2当接部14よりも前方に位置する。従って、メインフレーム51が後方に向けて移動することによって、第1当接部78は第2当接部14に対して前方から当接する。
【0090】
この当接により、第1当接部78には後方から前方に向かう抗力が作用する。第1当接部78および第2当接部14が当接した直後は、第1当接部78に作用する抗力が小さい。そのため、板ばね76はすぐには第1凹部66aから外れず、照射部70は第1相対位置P1に位置したままである。この状態から、フレーム移動モーター41がさらに駆動を続けることによって、第1当接部78に作用する抗力は次第に大きくなる。第1当接部78に作用する抗力が大きくなると、板ばね76が第1凹部66aから外れ、照射部70は、ヘッド80に対して前方に相対移動を始める。さらにメインフレーム51が後方に移動すると、板ばね76が第2凹部66bに嵌り、第2ガイドピン74bが第2当て面64cに当接する。これにより、照射部70は第2相対位置P2に固定される。すなわち、照射部70は、第1当接部78と第2当接部14とが当接した状態でキャリッジ69が後方に移動することにより、ヘッド80に対して前方に相対移動する。
【0091】
印刷装置1は、第2ガイドピン74bが第2当て面64cに当接したか否かを判定する(ステップS28)。第2ガイドピン74bが第2当て面64cに当接すると、第1当接部78にかかる抗力は負荷としてフレーム移動モーター41に伝達される。ステップS28で、印刷装置1は、フレーム移動モーター41に流れる電流値を取得することにより、伝達された抗力による負荷を特定する。印刷装置1は、フレーム移動モーター41に流れる電流値が所定の値未満である場合には、第2ガイドピン74bが第2当て面64cに当接していないと判定する(ステップS28:NO)。この場合、印刷装置1はフレーム移動モーター41の動作を継続させ、メインフレーム51をさらに後方に移動させる。
一方、フレーム移動モーター41に流れる電流値が所定の値以上である場合、印刷装置1は、第2ガイドピン74bが第2当て面64cに当接したと判定する(ステップS28:YES)。この場合、印刷装置1は、フレーム移動モーター41を停止させ、さらに印刷装置1の各部を初期位置に移動させる(ステップS29)。
【0092】
ステップS29で、印刷装置1は、フレーム移動モーター41およびキャリッジ駆動モーター67を駆動させ、メインフレーム51を前側の端部に、キャリッジ69をホームポジションにそれぞれ移動させる。このとき、制御部90は、第1当接部78および第2当接部14が互いに当接しないように、フレーム移動モーター41およびキャリッジ駆動モーター67を制御する。これにより、メインフレーム51及びキャリッジ69は初期位置に移動される。初期位置とは媒体Mに対する印刷を開始するときの位置であり、例えば、図7に示す位置である。
【0093】
印刷装置1は、印刷データに基づいて、透明インクを用いるグロス調印刷を実行する(ステップS30)。
【0094】
図11の動作において、印刷装置1は、ステップS24でキャリッジ69の移動速度に応じてLED群72の照射強度を設定してもよい。この場合、印刷装置1は、キャリッジ69の移動速度が低速であるほど、LED群72の照射強度を小さくする。キャリッジ69の移動速度が低速であるほど、UV光源73が媒体Mの上に滞在する時間が長いため、UV光源73の照射強度が小さくても、必要量の紫外線をインクに照射できるためである。
【0095】
[6.実施形態による効果]
以上説明したように、印刷装置1は、キャリッジ69と、制御部90とを有する。キャリッジ69は、第1軸に沿った第1方向に移動可能であり、媒体に向けてインクを吐出可能な複数のノズルを有するヘッド80を有する。キャリッジ69は、第1軸と交差する第2軸に沿った方向を第2方向としたとき、ヘッド80に対して第2方向に相対移動可能であり、媒体に向けて紫外線を照射可能な照射部70を有する。照射部70は、第2方向に並ぶ第1照射群及び第2照射群を有する。第1照射群は、第1方向において複数のノズルと重複する位置に配置される。第2照射群は、第1方向において複数のノズルと重複しない位置に配置される。制御部90は、第1照射群及び第2照射群から紫外線を照射させる第1モード、及び、第1照射群から紫外線を照射させず、且つ、第2照射群から紫外線を照射させる第2モードを実行可能である。
【0096】
例えば、第1軸はX軸であり、第2軸はY軸であり、第1方向は+X方向であり、第2方向は+Y方向である。第1照射群は、LED群72a、72b、72c、72d、72eのいずれかであり、一例としてはLED群72aである。第2照射群は、LED群72a~72eのうち第1照射群を除くいずれかであり、LED群72a~72eのうちの複数を含んでもよい。例えば、第2照射群は、LED群72b~72eを含む。
【0097】
この構成によれば、ヘッド80に対して照射部70を移動可能とすることにより、ヘッド80が吐出するインクに対して照射部70が紫外線を照射するタイミングを変更可能である。例えば、紫外線を照射するタイミングを遅らせてグロス調印刷を実現できる。さらに、照射部70は、ヘッド80のノズルと重複する位置に配置される第1照射群と、ノズルと重複しない位置に配置される第2照射群とを有し、第1照射群から紫外線を照射させない第2モードを実行できる。このため、例えば、照射部70を移動させることと第1照射群から紫外線を照射させず第2照射群から紫外線を照射する制御とを組み合わせることにより、ヘッド80が吐出するインクに紫外線が照射されるタイミングを遅らせることが可能となる。このように、インクへの紫外線の照射タイミングを遅らせる構成として、照射部70を移動可能とすること、及び、第2モードで照射部70を点灯させることを併用可能である。そのため、照射部70の移動量が比較的小さくても、紫外線の照射タイミングを効果的に遅らせることができる。従って、照射部70の移動量を抑えることが可能となり、照射部70やキャリッジ69の構造の簡素化、及び小型化を実現できる。
【0098】
印刷装置1による印刷方法は、印刷装置1により、第1照射群及び第2照射群から紫外線を照射させる第1モード、及び、第1照射群から紫外線を照射させず、且つ、第2照射群から紫外線を照射させる第2モードを実行する。
この印刷方法によれば、第2モードを実行する場合は、ヘッド80が吐出するインクに紫外線が照射されるタイミングを遅らせることが可能となる。このため、照射部70を移動可能とすること、及び、第2モードで照射部70を点灯させることを併用して、インクへの紫外線の照射タイミングを遅らせることができる。これにより、照射部70の移動量が比較的小さくても、紫外線の照射タイミングを効果的に遅らせることができる。従って、照射部70の移動量を抑えることが可能となり、照射部70やキャリッジ69の構造の簡素化、及び小型化を実現できる。
【0099】
印刷装置1において、照射部70は、第2方向において第1相対位置P1と第2相対位置とP2の間を移動可能である。照射部70の第2相対位置P2において、第1照射群の位置は第1方向において複数のノズルと重複する位置であり、第2照射群の位置は第1方向において複数のノズルと重複しない位置である。
この構成によれば、照射部70を移動させる構成は、第2照射群が第1方向において複数のノズルと重ならない位置まで照射部70を移動可能であればよい。このため、照射部70の全体を複数のノズルと重複しない位置まで移動させる必要がないので、照射部70を移動させる構成を小型化、及び、簡素化できる。
【0100】
印刷装置1において、制御部90は、照射部70が第1相対位置にある状態で第1モードを実行し、照射部70が第2相対位置にある状態で第2モードを実行する。
この構成によれば、照射部70を第2相対位置P2に移動させることと、第2モードの制御とを組み合わせることにより、ヘッド80が吐出するインクに紫外線が照射されるタイミングを遅らせることが可能となる。このため、照射部70の移動量が比較的小さくても、紫外線の照射タイミングを効果的に遅らせることができる。従って、照射部70の移動量を抑えることが可能となり、照射部70やキャリッジ69の構造の簡素化、及び小型化を実現できる。
【0101】
印刷装置1において、第2照射群は、さらに、第2方向において第1照射群の隣に位置する第3照射群と、第2方向において、第3照射群を挟んで第1照射群とは反対の第4照射群と、を有する。制御部90は、第2モードにおいて、第3照射群から照射される紫外線の照射強度が、第4照射群から照射される紫外線の照射強度よりも小さくなるように、照射部70を制御する。第3照射群は、例えば、LED群72bであってもよく、この場合の第4照射群はLED群72c~72eのいずれかである。また、第3照射群は、例えばLED群72b、72cを含んでもよく、この場合の第4照射群はLED群72d、または、LED群72dとLED群72eを含む。また、第3照射群は、例えばLED群72b、72c、72dを含んでもよく、この場合の第4照射群はLED群72eを含む。
【0102】
この構成によれば、第2モードで第1照射群により紫外線を照射させない場合に、第1照射群に近い第3照射群の紫外線の照射強度を、第4照射群より小さくすることができる。このため、ヘッド80が吐出して媒体Mに付着したインクに近いLED群72から照射される紫外線の光量が抑えられる。これにより、照射部70が発する紫外線の反射光や漏れ光の影響がインクに及ぶことを抑制できるので、インクが硬化する前にインク表面を十分に平滑化させて、より光沢に富むグロス調印刷を実現できる。
【0103】
印刷装置1において、制御部90は、第3照射群から照射される紫外線の照射強度と、第4照射群から照射される紫外線の照射強度と、の合計値が、所定の照射強度となるように、照射部70を制御する。
この構成によれば、第3照射群の紫外線の照射強度を抑える場合であっても、ヘッド80が吐出するインクに対し十分な量の紫外線を照射することができ、インクを確実に硬化させることができる。
【0104】
印刷装置1において、第2照射群は、さらに、第2方向において第1照射群の隣に位置する第3照射群と、第2方向において、第3照射群を挟んで第1照射群とは反対の第4照射群と、を有する。印刷装置1は、媒体Mの単位面積を印刷するためにヘッド80を第1方向に移動させる回数である印刷パス数を、第1パス数、及び、第1パス数より多い第2パス数に設定可能である。制御部90は、印刷パス数が第1パス数である場合、第3照射群および第4照射群により紫外線を照射させる。制御部90は、印刷パス数が第2パス数である場合、第3照射群から紫外線を照射させず、かつ、第4照射群により紫外線を照射させる。第3照射群、及び、第4照射群と図8の構成との対応は、上述した通りである。
【0105】
この構成によれば、印刷パス数が多い場合に、媒体Mの上を照射部70が通過する回数が多くなることを利用して、紫外線を照射するLED群72の数を少なくし、より光沢に富むグロス調印刷を実現できる。
【0106】
印刷装置1は、媒体Mの単位面積を印刷するためにヘッド80を第1方向に移動させる回数である印刷パス数を、第1パス数、及び、第1パス数より多い第2パス数に設定可能である。制御部90は、印刷パス数が第1パス数である場合に照射部70から照射させる紫外線の照射強度を、印刷パス数が第2パス数である場合に照射部70から照射させる紫外線の照射強度より高くする。
この構成によれば、印刷パス数が多い場合に、媒体Mの上を照射部70が通過する回数が多くなることを利用して、照射部70が照射する紫外線の照射強度を抑制する。これにより、ヘッド80が吐出して媒体Mに付着したインクに対し、照射部70が発する紫外線の反射光や漏れ光の影響がインクに及ぶことを抑制できるので、インクが硬化する前にインク表面を十分に平滑化させて、より光沢に富むグロス調印刷を実現できる。
【0107】
印刷装置1は、ヘッド80を第1方向に移動させるヘッド移動速度を、第1速度、及び、第1速度より低速の第2速度に設定可能である。制御部90は、ヘッド80移動速度が第1速度である場合に照射部70から照射させる紫外線の照射強度を、ヘッド80移動速度が第2速度である場合に照射部70から照射させる紫外線の照射強度より高くする。
この構成によれば、ヘッド移動速度が低速である場合に、媒体Mの上に照射部70が滞在する時間が長くなることを利用して、照射部70が照射する紫外線の照射強度を抑制する。これにより、ヘッド80が吐出して媒体Mに付着したインクに対し、照射部70が発する紫外線の反射光や漏れ光の影響がインクに及ぶことを抑制できるので、インクが硬化する前にインク表面を十分に平滑化させて、より光沢に富むグロス調印刷を実現できる。
【0108】
また、印刷装置1は、キャリッジ69と、制御部90とを有する。キャリッジ69は、第1軸に沿った第1方向に移動可能であり、媒体に向けてインクを吐出可能な複数のノズルを有するヘッド80を有する。キャリッジ69は、ヘッド80に対し第1方向に並べて配置され、媒体に向けて紫外線を照射可能な照射部70を有する。照射部70は、第1軸と交差する第2軸に沿った方向を第2方向としたとき、第2方向に並ぶ第1照射群及び第2照射群を有する。第1照射群は、第1方向において複数のノズルと重複する位置に配置され、第2照射群は、第1方向において複数のノズルと重複しない位置に配置される。第2照射群は、さらに、第2方向において第1照射群の隣に位置する第3照射群と、第2方向において、第3照射群を挟んで第1照射群とは反対の第4照射群と、を有する。制御部90は、第1照射群及び第2照射群から紫外線を照射させる第1モード、及び、第1照射群から紫外線を照射させず、且つ、第2照射群から紫外線を照射させる第2モードを実行可能である。制御部90は、第2モードにおいて、第3照射群から照射される紫外線の照射強度が、第4照射群から照射される紫外線の照射強度よりも小さくなるように、照射部70を制御する。第1軸、第2軸、第1方向、第2方向、第1照射群、第2照射群、第3照射群、及び、第4照射群と図1図8の構成との対応は、上述した通りである。
【0109】
この構成によれば、第2モードでヘッド80のノズルと重複する位置に配置される第1照射群から紫外線を照射させず、第2照射群から紫外線を照射させることにより、ヘッド80が吐出するインクに紫外線が照射されるタイミングを遅らせることが可能となる。さらに、第2モードで、第1照射群に近い第3照射群から照射される紫外線の照射強度を、第4照射群よりも小さくすることにより、照射部70が発する紫外線の反射光や漏れ光の影響がインクに及ぶことを抑制できる。このため、照射部70を大きく移動させる構成を印刷装置1に具備していなくても、第2モードを実行することによって、インクが硬化する前にインク表面を十分に平滑化させ、光沢に富むグロス調印刷を実現できる。従って、グロス調印刷を実行する印刷装置1において、照射部70やキャリッジ69の構造の簡素化、及び小型化を実現できる。
【0110】
[7.変形例]
図12は、変形例におけるヘッドとUV光源との相対的な位置関係を示す模式図である。
図12には、ヘッド80の別の例として、第1ヘッド87、及び、第2ヘッド88を含むヘッド80aを印刷装置1が備える構成を示す。図12は、+Y方向におけるヘッド80aと照射部70aとの位置関係を、第1相対位置P1、及び、第2相対位置P2のそれぞれについて示している。説明の便宜のため、照射部70aの+X方向における位置は他の各図と相違する。
【0111】
第1ヘッド87には、複数のノズル列85を含むノズル部が設けられる。ノズル列85は、詳細には、ノズル列85a、85b、85c、85d、85e、85f、85g、85hを含む。ノズル列85a~ノズル列85hを区別しない場合、ノズル列85と記載する。
【0112】
ノズル列85は、複数のノズルが+Y方向に直線状に並んだ構成を有する。ノズル列85は1列に並ぶノズルで構成されてもよいし、複数列のノズルで構成されてもよい。ノズル列85a~85hは、それぞれ、印刷装置1が印刷に使用するインクを吐出する。例えば、印刷装置1がフルカラー印刷を行う構成において、ノズル列85a~85hは、それぞれ、印刷装置1が使用する各色のインクを吐出する。この場合のノズル列85へのインク色の割り当ては任意である。例えば、ノズル列85a、85bがシアン、ノズル列85c、85dがマゼンタ、ノズル列85e、85fがイエロー、ノズル列85g、85hがブラックのインクを吐出する。
【0113】
第2ヘッド88には、複数のノズル列86を含むノズル部が設けられる。ノズル列86は、詳細には、ノズル列86a、86b、86c、86d、86e、86f、86g、86hを含む。ノズル列86a~ノズル列86hを区別しない場合、ノズル列86と記載する。
【0114】
ノズル列86は、複数のノズルが+Y方向に直線状に並んだ構成を有する。ノズル列86は1列に並ぶノズルで構成されてもよいし、複数列のノズルで構成されてもよい。ノズル列86a~86hは、それぞれ、印刷装置1が印刷に使用するインクを吐出する。例えば、ノズル列86a~86dは、ホワイトインクを吐出し、ノズル列86e~86hは透明インクを吐出する。
【0115】
この変形例において、印刷装置1は、照射部70に代えて、照射部70aを有する。
ヘッド80aの第1ヘッド87と第2ヘッド88とは、+Y方向において異なる位置にある。これら第1ヘッド87及び第2ヘッド88の両方に対応させるため、変形例の印刷装置1は、+Y方向において第1ヘッド87及び第2ヘッド88の位置に重なる照射部70aを備える。
【0116】
照射部70aは、照射部70と同様に、複数の発光素子73a、及び、複数の照射口71aを有する。照射部70aが備える発光素子73aは、複数のLED群101に区分される。図7には、8つのLED群101a、101b、101c、101d、101e、101f、101g、101hに区分される例を示す。LED群101a~101hを区別しない場合、LED群101と記載する。
【0117】
各々のLED群101は、複数の発光素子73aを含む。図12の変形例では、LED群101a~101eが、それぞれ、+X方向に2行、+Y方向に5列、合計10個の発光素子73aを含む。UV光源73において、LED群101は、+Y方向にLED群101a、101b、101c、101d、101e、101f、101g、101hの順で並んでいる。
【0118】
照射部70aは、照射部70と同様に、+Y方向に移動可能であり、第1相対位置P1と、第2相対位置P2との間を移動する。
+Y方向において、ノズル列85a~85hのノズル、及び、ノズル列86a~86hのノズルが開口する範囲を範囲W2とする。このうち、ノズル列86a~86hのノズルが開口する範囲を範囲W3とする。
【0119】
照射部70aが第1相対位置P1に位置するとき、範囲W2の全体が、+Y方向において照射部70aに重なる。例えば、図12に示すように、LED群101b~101gは、+Y方向においてノズル列85及びノズル列86と重なる。
これに対し、照射部70aが第2相対位置P2に位置するとき、範囲W3の範囲の少なくとも一部は、照射部70aと重ならない。換言すれば、範囲W3と重なるLED群101は、照射部70aが有するLED群101の一部である。例えば、図12に示すように、LED群101aのみが+Y方向においてノズル列86と重なり、LED群101b~101hはノズル列86と重ならない。
【0120】
図12の構成では、第1相対位置P1において、照射部70aは、+Y方向で第1ヘッド87及び第2ヘッド88の両方に並んでいる。照射部70aが第1相対位置P1に位置する場合、制御部90は、第1モードを実行し、LED群101a~101hから紫外線を照射させる。このため、第1ヘッド87が吐出するカラーインク、第2ヘッド88が吐出するホワイトインク及び透明インクに対し、照射部70aから紫外線を照射することができる。この場合の照射前時間は、媒体Mに付着したインクが平滑化するための時間より短いため、マット調印刷が実行される。
【0121】
照射部70aを第2相対位置P2に移動させた場合、制御部90は、LED群101aを消灯させ、LED群101b~101hの中で選択したLED群101から紫外線を照射させる。この動作は、第2モードの動作に相当する。このため、第2相対位置P2において、照射部70aは、範囲W3に重なる位置では紫外線を照射しない。
このとき、第1ヘッド87が吐出するカラーインクに対しては短い照射前時間で紫外線が照射される。この場合の照射前時間は、照射部70aが第1相対位置P1に位置する場合と同様である。これに対し、第2ヘッド88が吐出する透明インクに対しては、長い照射前時間で紫外線が照射される。この照射前時間は、媒体Mに付着した透明インクが平滑化するための時間以上であるため、グロス調印刷が実行される。
【0122】
このように、図12の変形例では、カラーインクを吐出する第1ヘッド87と、透明インクを吐出する第2ヘッド88とを別に備える構成において、透明インクのグロス調印刷を可能とする。この変形例には、上記実施形態で説明した制御部90による制御を適用し、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0123】
例えば、第1照射群は、LED群101a~101hのいずれかであり、一例としてはLED群101aである。第2照射群は、LED群101a~101hのうち第1照射群を除くいずれかであり、LED群101a~101hのうちの複数を含んでもよい。例えば、第2照射群は、LED群101b~101hを含む。第3照射群は、例えば、LED群101bであってもよく、この場合の第4照射群はLED群101c~101hのいずれかである。また、第3照射群は、例えばLED群101b、101cを含んでもよく、LED群101b~101dを含んでもよく、LED群101d~101hにおける他の組合せを含んでもよい。これらの場合の第4照射群は、LED群101d~101hにおける組合せを含む。
【0124】
図12の変形例におけるノズル列85及びノズル列86とインク色との割り当ては任意に変更可能である。例えば、ノズル列85a~85hに割り当てられるインクは中間色のインクや淡色のインクを含んでもよく、ノズル列86a~86dにホワイト以外のカラーインクを割り当ててもよい。
【0125】
[8.他の実施形態]
上記実施形態は、本発明を適用した一具体例を示したものに過ぎない。本発明は上記実施形態の構成に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0126】
上記実施形態において、照射部70をX軸に沿う方向に移動可能とする構成は、上述した態様に限定されない。例えば、上記実施形態では、照射部70を移動させるための構成として、第1当接部78および第2当接部14を備える構成を示した。この構成は一例であり、例えば、第1当接部78および第2当接部14のいずれか、或いは両方を、弾性部材によって構成してもよい。この弾性部材は、ゴムやシリコンによって構成されてもよいし、コイルばねや板ばねであってもよい。
【0127】
上記実施形態において、照射部70とヘッド80との相対的な位置は適宜に変更可能である。例えば、上記実施形態では、照射部70がヘッド80の-X方向側に設けられる例を示したが、例えば、2つの照射部70をキャリッジ69に搭載し、ヘッド80の+X方向側および-X方向側に照射部70を配置した構成としてもよい。この構成において、さらに、2つの照射部70が一体としてヘッド80に対して相対移動する構成としてもよい。
また、印刷装置1が移動部50をY軸に沿って移動させる構成、及び、テーブル31を上昇および下降させる構成についても、適宜に変更可能である。
【0128】
図9に示した機能ブロックのうち少なくとも一部は、ハードウェアで実現してもよいし、ハードウェアとソフトウェアの協働により実現される構成としてもよい。図10及び図11のフローチャートの処理単位は、印刷装置1の動作についての理解を容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものである。そのため、図示した処理単位の分割の仕方や名称によって実施形態が制限されることはない。
【符号の説明】
【0129】
1…印刷装置、31…テーブル、50…移動部、51…メインフレーム、61…キャリッジ支持フレーム、67…キャリッジ駆動モーター、69…キャリッジ、70、70a…照射部、71…筐体、71a…照射口、72、72a~72e…LED群、73…UV光源、73a…発光素子、80、80a…ヘッド、81…底面パネル、83…ノズル部、83a…端部、84、84a~84h…ノズル列、85、85a~85h…ノズル列、86、86a~86h…ノズル列、87…第1ヘッド、88…第2ヘッド、90…制御部、91…インターフェイス、92…フレーム位置センサー、93…テーブル位置センサー、94…キャリッジ位置センサー、101、101a~101h…LED群、901…プロセッサー、910…記憶部、911…制御プログラム、912…発光設定データ、M…媒体、P1…第1相対位置、P2…第2相対位置。
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12