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特開2024-20224マイクロ波プラズマ処理を使用した多相複合材料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020224
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】マイクロ波プラズマ処理を使用した多相複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/08 20060101AFI20240206BHJP
   C01F 17/34 20200101ALI20240206BHJP
   C01F 17/32 20200101ALI20240206BHJP
   C01F 7/162 20220101ALI20240206BHJP
   H05H 1/26 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
B01J19/08 K
C01F17/34
C01F17/32
C01F7/162
H05H1/26
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023181046
(22)【出願日】2023-10-20
(62)【分割の表示】P 2021052769の分割
【原出願日】2014-03-18
(31)【優先権主張番号】61/802,769
(32)【優先日】2013-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/208,955
(32)【優先日】2014-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515084719
【氏名又は名称】シックスケー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マッカルーフ・レジダル
(72)【発明者】
【氏名】カマル・ハディディ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】生成された粒子が均一粒径及び均一熱履歴を有し、多種多様の用途に使用できる、多相複合材料を直接製造する方法を提供する。
【解決手段】マイクロ波生成源1、誘電プラズマトーチ3及び液滴作製装置4を含有するマイクロ波プラズマ実施形態を使用して、高速熱分解処理によって、溶液前駆体液滴から多相複合材料を直接製造する方法が開示されている。ここでは均質溶液前駆体を使用して、液滴は狭い粒径分布で生成され、概して均一な熱経路によってマイクロ波プラズマトーチ中に噴射及び導入される。トーチ内での概して均一な熱経路は、軸対称高温域への液滴の層流での軸方向の噴射によって実現される。プラズマ内で、制御された滞留時間で高温に暴露されるときに、液滴は熱分解されて、ガスチャンバ内の制御された速度の排出ガスを用いてクエンチさせることによって、粒子12に変換される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波生成プラズマを使用して粒子を作製する方法であって、
a.水中の、有機溶媒中の、又は水及び有機溶媒の混合物中の塩溶液を調製するステップ、
b.供給噴射装置を使用して、前記塩溶液から前駆体液滴を生成するステップ、
c.前記前駆体液滴をマイクロ波プラズマトーチ中へ軸方向に導入するステップ、
d.マイクロ波生成プラズマに向かうガス流を使用して前記前駆体液滴を連行するステップ、
e.前記前駆体液滴を前記マイクロ波生成プラズマ内の高温に暴露するステップ、
f.前記マイクロ波プラズマ中での前記前駆体液滴の滞留時間を制御するステップ、
g.ガスチャンバ内で排出ガスのクエンチ速度を制御するステップ、
h.前記マイクロ波生成プラズマの排出ガスを濾過するステップ、及び
i.前記排出ガスから粒子を抽出するステップ
を含む方法。
【請求項2】
塩溶液を調製する前記ステップが、水、有機溶媒又は水及び有機溶媒の混合物に酸をさらに添加することによって調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
塩溶液を調製する前記ステップが、少なくとも第1の溶液及び第2の溶液を組み合せることによって調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の溶液を、
水及び有機溶媒を混合すること、
酸を水に添加すること、又は
酸を水及び有機溶媒の混合物に添加すること
によって調製するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の溶液を、
少なくとも1つの塩を水に溶解させること、又は
少なくとも1つの塩を水及び有機溶媒の混合物に溶解させること
によって調製するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の溶液を、
水及びエチレングリコールを混合すること、
クエン酸を水に添加すること、又は
クエン酸を水及びエチレングリコールの混合物に添加すること
によって調製するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
塩溶液を調製する前記ステップが水及び有機溶媒の混合物中で調製され、さらに有機溶媒をエタノール、メタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、テトラヒドロフラン及びその組合せからなる群から選択する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
塩溶液を調製する前記ステップが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びその組合せなどのアルカリ金属の、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びその組合せなどのアルカリ土類金属の、スカンジウム、イットリウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金並びにその組合せなどの遷移金属の、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、タリウム、鉛、ビスマス及びその組合せなどのポスト遷移金属の、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、タリウム、イッテルビウム、ルテチウム及びその組合せなどのランタノイドの、トリウムなどのアクチニドの、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、テルル及びその組合せなどのメタロイドの、並びに炭素、リン、硫黄及びセレン並びにその組合せなどの非金属の、カチオンからなる群から塩を選択することによって調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
塩溶液を調製する前記ステップが、
アルミニウム、
イットリウム、スカンジウム及びその任意の組合せ、並びに
ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、タリウム、イッテルビウム、ルテチウム及びその組合せからなる群から選択されるドーパント
のカチオンを含む塩を溶解させることによって調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
塩溶液を調製する前記ステップが、
アルミニウム、ジルコニウム、ケイ素、マグネシウム及びマンガン並びにその任意の組合せ又はランタノイドのセリウムのカチオンを含む塩を溶解し、並びに
パラジウム、白金、ニッケル、銀、金、ルテニウム、ロジウム、バナジウム、モリブデン、コバルト、タングステン及びその任意の組合せからなる群から選択される遷移金属又は非金属のリンをドーピングする
ことによって調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
塩溶液を調製する前記ステップが、マグネシウム及びイットリウムのカチオンを含む塩を溶解させることによって調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
塩溶液を調製する前記ステップが、マグネシウム及びアルミニウムのカチオンを含む塩を溶解させることによって調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
塩溶液を調製する前記ステップが、ランタン、マグネシウム、及びアルミニウムのカチオンを含む塩を溶解させることによって調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
塩溶液を調製する前記ステップが、
ジルコニウム、及び
イットリウム又はサマリウム、
のカチオンを含む塩を溶解させることによって調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
塩溶液を調製する前記ステップが、硝酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、塩化物、リン酸塩、アルコキシド、アトラン、オルトケイ酸テトラエチル、金属ホウ化水素及びその組合せのアニオンからなる群から塩を選択することによって調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記前駆体液滴を連行する前記ステップが少なくとも2つの同軸層流を使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも2つの同軸層流を使用する前記ステップが、空気、酸素、アルゴン、メタン、アンモニア、窒素及びその組合せからなる群からガスを選択することによって調製される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
クエンチ速度を制御する前記ステップが、10ケルビン/秒(K/s)以上10K/s以下の速度を選択することによってさらに調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
クエンチ速度を制御する前記ステップが、制御可能な雰囲気を有するチャンバを選択することによる、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられている、“Method for Making Amorphous Particles Using a Uniform Melt-state in a Microwave Generated Plasma Torch”という名称の、発明者Kamal Hadidi及びMakhlouf Redjdalによる、2012年12月4日に出願された出願第13673737号明細書の一部継続出願である。本願はまた、その全体が参照によりまた本明細書に組み入れられている、“Single-Step Synthesis Method for the Production of Multiphase Oxide Ceramics Using Microwave Plasma Process”という名称の、発明者Makhlouf Redjdal及びKamal Hadidiによる、2013年3月18日に出願された米国特許仮出願第61802769号明細書の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
本発明は概して、マイクロ波生成プラズマを使用した急速熱分解処理によって、溶液前駆体液滴から多相複合材料を直接作製する方法に関する。
【0003】
近年、金属酸化物セラミックの多相ナノ構造複合材の出現に対して、これらの材料の粗結晶粒の、又はさらに単相ナノ構造の自然な改善としての興味が急上昇している。粒径をマイクロメーターの粗いスケールから、通例、100ナノメートル(nm)未満の粒径を有するナノメートルスケールへ縮小させると、機械的、熱的、光学的、化学的、電気的及び磁気的材料特性を大幅に改善できることが見出された。さらに、これらのナノ複合材料は、これらに対応する単相材料よりも、はるかに安定な相を示す。1つのマトリクス中に複数の相が存在すると、熱的加熱中の結晶粒成長が抑制される傾向がある。これらの新たな材料の特性は、サイトピニングを受けやすく、相微小構造の安定性を担うナノスケール粒界によっても影響される。相安定性を達成するための別の厳密な条件は、ナノ複合材マトリクス中に相ドメインが微細且つ均一に分布した、これらの多相ナノ複合材を製造することである。
【0004】
微小構造長スケール及び組成物中の元素の分布を制御するために、これらのナノ複合材料を合成する多くの合成方法が使用されてきた。大半の方法は、マトリクス構成成分の化学的、熱的及び核生成速度が複雑であり、加えて、包含される溶媒の物理的及び化学的特性がさらに困難であるために、両方の条件を達成することができない。一部の方法は、どちらも達成することができるが、ナノスケールの結晶粒及び構成成分マトリクスの相均質性を達成するために複数の熱処理ステップが必要である。Jordanら(米国特許出願公開第20120322645号明細書、2012年)は、赤外ウィンドウに好適なマグネシア-イットリウム粒子を製造するゾル-ゲルエステル化技法を使用した。この発明は、3つの主なステップを使用する。ステップ1は、水を蒸発させて、金属酸化物カチオンの均質分散物を得るのに必要な有機酸及びアルコールの複合網目よりなるフォームを形成するための、低温で中程度の加熱よりなる。ステップ2は、粒径を20ナノメートル(nm)未満に維持しながら、フォームに埋もれたすべての炭素を除去するために400℃までの熱的加熱よりなる。ステップ3は、約100nmの粒径を有するマグネシア-イットリウムナノ複合材の完全結晶性を実現するために、1100℃までの熱処理を使用する。このような手法の主要な欠点としては、大型の炉が必要になるためにスケーリングが容易でないこと、溶媒を除去するために、また最終生成物の完全結晶化を実現するために、数日ではないにしろ、数時間の熱的加熱が必要なことが挙げられる。
【0005】
超微細でやや均質な金属酸化物ナノ複合材を実現する方法は、R.Laineらによる液体供給火炎熱分解(米国特許第7,770,152号明細書、2010年)である。この方法は、本発明に似て、ナノ複合材粒子粉末を数ミリ秒で製造するために、前駆体の噴霧化液滴を燃焼炎中に噴射する。しかしながら、この方法は、噴霧化による粒子の不均一な粒径及び粒径分布、並びに温度が2000℃を超えない炎での大規模な温度勾配による均質でない熱的加熱を含む、いくつかの欠点を被っている。このことによって、最終生成物の組成分布の相微小構造の不均質性が生じる。サイクロン及びセラミックフィルタを包含する後処理ステップは、ナノスケール粒子から大きな凝集体を分離するために必要である。
【0006】
ナノ複合材料の製造のための1ステップ手法を特徴とする別の方法は、金属前駆体の噴霧化液滴を処理するために高周波プラズマを使用する(Boulos、米国特許第6,919,527B2号明細書、2005)。プラズマを含有するための物理的実施形態の高温及び軸対称は実現されるが、この方法は、一部は、可変径の噴霧液体前駆体の噴射のために、しかし、また皮膜効果のために中空コアを呈するプラズマの不均一性のために、組成の不均一性をなお被っている。プラズマのコアを通過する粒子は、結晶の周囲部を通過する粒子と比較して、十分に処理されない傾向がある。このことは、均質相微小構造を有する粒子の粒子処理及び製造の不均質性につながる。
【0007】
上記より、したがって、本明細書で上述した欠陥及び制限を克服する必要性が当分野に存在することがわかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0322645号明細書
【特許文献2】米国特許第7,770,152号明細書
【特許文献3】米国特許第6,919,527号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
マイクロ波生成プラズマを使用した急速熱分解処理によって、溶液前駆体液滴から多相複合材料を直接作製することによって、従来技術の欠点は克服され、追加の利点が提供される。本方法は、供給原料の組成不均一性及び不均一な熱経路である、材料熱処理業界を悩ませていた2つの主要な課題を解決する。ここで、均質溶液前駆体の使用により、液滴は狭い粒径分布で生成され、概して均一な熱経路によってマイクロ波プラズマトーチ中に噴射及び導入される。トーチ内での概して均一な熱経路は、軸対称高温域への液滴の層流による軸方向の噴射によって実現される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様において、多相複合材料は、最初に水中の、有機溶媒中の、又は水及び有機溶媒の混合物中の塩溶液を調製して、続いて供給噴射装置を使用して、この塩溶液から前駆体液滴を生成し、次にマイクロ波生成プラズマに向かうガス流を使用して、液滴がマイクロ波プラズマトーチ中へ軸方向に導入され、プラズマ内で制御された滞留時間で、高温に暴露されるときに、液滴は熱分解され、ガスチャンバ内の制御された速度の排出ガスを用いてクエンチすることによって粒子に変換され、最後に、排出ガス粒子が濾過及び抽出されて製造された。
【0011】
塩溶液は、異なる方法によって生成された。一例において、塩溶液は、溶液中に酸をさらに含めることによって調製された。別の例において、塩溶液は、a)水及び有機溶媒(例えば水及びエチレングリコール)、b)水及び酸(例えば水及びクエン酸)又はc)水、有機溶媒及び(例えば水、エチレングリコール及びクエン酸)の溶液を、a)水及び塩又はb)水、塩及び有機溶媒の別の溶液と組み合せることによって調製された。有機溶媒は、水と混和性である溶媒、例えばエタノール、メタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、テトラヒドロフラン又はこれらの溶媒の混合物から選択された。
【0012】
別の態様において、得られた粒子の組成は、異なるカチオンを有する塩を選択することによって調整される。カチオンは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、ポスト遷移金属、ランタノイド、アクチノイド、メタロイド、非金属の元素及びそれら元素の混合物から選ばれる。
【0013】
例えば、イットリウム(及び/又はスカンジウム)-アルミニウム-ガーネット生成物粒子を製造するために、塩溶液のカチオンは、アルミニウム、イットリウム(及び/又はスカンジウム)及びランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、タリウム、イッテルビウム、ルテチウムなどの他のドーパント並びにその組合せである。生成物粒子は、レーザー又はリン光体及び他の用途のための活性材料として使用できる。
【0014】
カチオンの他の例は、a.)ポスト遷移金属及び遷移金属混合物、b.)マグネシウム及びイットリウム、c.)マグネシウム及びアルミニウム、d.)ランタン、マグネシウム及びアルミニウム、e.)ジルコニウム及びイットリウム(及び/又はサマリウム)から選択される。これらの選択物からの生成物粒子は、触媒、赤外線透過材料、透明外装、熱障壁コーティング及び固体酸化物燃料電池などの各種用途のための活性材料として使用される。
【0015】
別の態様において、塩のアニオンは、硝酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、塩化物、リン酸塩、アルコキシド、アトラン、オルトケイ酸テトラエチル、金属ホウ化水素及びこれらのアニオンの混合物から選ばれる。
【0016】
別の態様において、塩溶液液滴は、少なくとも2つの同軸層流を使用して連行され、このような層流は、空気、酸素、アルゴン、メタン、アンモニア、窒素のガス及びこれらのガスの任意の組合せを使用して生成される。
【0017】
別の態様において、マイクロ波プラズマからの排出ガスは、10ケルビン/秒(K/s)以上10K/s以下のクエンチ速度を選択することによってクエンチされ、クエンチは、制御可能な雰囲気のチャンバを使用して実現される。
【0018】
したがって、本発明の目的は、多種多様の用途のための、概して均一粒径及び均一熱履歴を有する粒子を生成することである。
【0019】
追加の特徴及び利点は、本発明の技法によって達成される。本発明の他の実施形態及び態様は、本明細書に詳細に記載され、主張された発明の一部として見なされる。
【0020】
本発明の各種実施形態によって満足される望ましい目的の本明細書での列挙は、これらの目的のいずれか又はすべてが、本発明の最も一般的な実施形態において、又はそのより具体的な実施形態のいずれかにおいて、個別に又は集合的にのどちらかで、必須の特徴として存在していることを暗示又は示唆していると意味しているわけではない。
【0021】
本発明と見なされる対象は、特に指摘され、明細書の結論部で明確に主張されている。しかしながら、本発明は、構成及び実施方法の両方について、そのさらなる目的及び利点と共に、添付図面と関連付けて読まれる以下の説明を参照することによって、最もよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】米国特許出願公開第2008/0173641号明細書に記載されているようなマイクロ波発生源、誘電プラズマトーチ及び前駆体液滴を分配する液滴作製装置を含有するマイクロ波プラズマ実施形態を使用する、粒子の作製方法を示す。
図2】前駆体液滴を生成するための塩溶液の調製に使用される複数のルートの概略図を示す。
図3】イットリウム塩及びアルミニウム塩をクエン酸及びエチレングリコールと共に使用して、本開示の方法に従って調製した、イットリウム-アルミニウム-ガーネット(YAG)粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図4】非晶質微小構造を示唆している、本開示の方法によって製造されたYAG粒子のX線回折(XRD)パターン及び制限視野回折(SAD)パターンを示す。
図5】か焼イットリウム-アルミニウム-ガーネットのXRDパターンと、本開示の方法に従って製造した純YAG相を示すデータベースからのXRD粉末回折ファイル(PDF)参照との間の比較を示す。
図6】マグネシウム塩及びイットリウム塩をクエン酸及びエチレングリコールと共に使用して本開示の方法に従って調製した、マグネシア-イットリウム粒子のSEM画像を示す。
図7】マグネシウム塩及びアルミニウム塩をクエン酸及びエチレングリコールと共に使用して本開示の方法に従って調製した、スピネル粒子のSEM画像を示す。
図8】本開示の方法に従って製造したナノ複合材相微小構造を示す加熱基材上へクエンチさせた、ランタン-マグネシウム-ヘキサアルミネート生成物粒子のXRDパターンを示す。
図9】本開示の方法による一実施形態、試薬と混合された前駆体金属塩及び付随するマイクロ波プラズマによる加熱処理のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
米国特許出願公開第2008/0173641号明細書に記載されているようなマイクロ波生成源、他の特許出願に記載された誘電プラズマトーチ及び他の特許に記載された均一前駆体液滴を分配する液滴作製装置を含有するマイクロ波プラズマ実施形態を使用して、高速熱分解処理によって、溶液前駆体液滴から多相複合材料を直接製造する方法が開示されている。ここでは均質溶液前駆体を使用して、液滴は狭い粒径分布で生成され、概して均一な熱経路によってマイクロ波プラズマトーチ中に噴射及び導入される。トーチ内での概して均一な熱経路は、軸対称高温域への液滴の層流での軸方向の噴射によって実現される。プラズマ内で制御された滞留時間で高温に暴露されるときに、液滴は熱分解されて、ガスチャンバ内の制御された速度の排出ガスを用いてクエンチすることによって、粒子に変換される。生成された粒子は概して、均一粒径及び均一熱履歴を有し、多種多様の用途に使用できる。
【0024】
図1を参照すると、金属酸化物ナノ複合材セラミックを作製する本方法は、マイクロ波放射生成装置1、マイクロ波チャンバ2、誘電シースプラズマトーチ3、液滴作製装置4及びガス流連通スキーム5を含む装置からなる。マイクロ波生成装置1は、マイクロ波チャンバ2及び誘電プラズマトーチシース3と組合されて、誘電トーチ3内部の高温域6で安定なプラズマに点火する。塩及び金属溶媒の均質溶液は、タンク7内での一定の撹拌及び圧力の下で、液滴作製装置4へ噴射される。圧電素子8が作動されて均一液滴9が製造され、プラズマトーチ3中へ軸方向に噴射されて、ガス流連通スキーム5のために、ガス層流によって粒子10として連行される。安定なプラズマ11を含有する高温域6では、粒子10は、均質熱処理を受けて球状生成物粒子12となり、ステンレス鋼フィルタ又はセラミックフィルタで収集される。
【0025】
図2を参照すると、金属前駆体の調製法の概略図が示されている。高レベルの前駆体均質性は、分子種、液相のその高い混和性及びその低い融点に依存している。最終的な形態及び微小構造均質性に影響する他の因子としては、モル濃度、溶媒蒸発速度、溶質拡散及び熱処理中に伴う関連熱動力学が挙げられる。本発明は、前駆体調製に3つのルートを使用する。ルート1(図2a)は、有機酸、例えばクエン酸及び有機アルコール、例えばエチレングリコールを包含して、溶液中に溶質を最適に分散させるための複合網目を製造する。本ルートは、MgO-Yの多孔性粒子、MgAl(スピネル)のシェル及びYAl12(YAG)酸化物ナノ複合材を製造するために使用されてきた。ルート2(図2b)は、高モル濃度の水溶性金属塩と混合された、エタノール、メタノール又はプロパノールなどのアルコールを包含する。本方法が使用されて、MgOの固形粒子が製造された。最終的に、ルート3(図2c)は、アルコールで希釈したアルコキシドを用いてより高価な前駆体を使用して、金属酸化物セラミックを製造するための金属源を提供することを包含する。本方法は、LaMgAl1119の粒子を製造するために使用された。3つの混合物すべてが加圧タンク内で完全に撹拌されて、均質溶液前駆体が製造された。
【0026】
本明細書では、レーザー、リン光体、触媒、外装及び可視から赤外のウィンドウ用途に好適な金属酸化物セラミックの組成物が開示される。一部の組成物は、イットリウム-アルミニウム-ガーネット(YAG)、単斜晶系YAM、ペロブスカイトYAP、マグネシウム-アルミニウム-スピネル(MgAl)及びマグネシア-イットリア(MgO-Y)を製造するために、例えばアルミニウム、マグネシウム,イットリウムの二元系、三元系の化学量論的比率をベースとしている。可能な修飾には、既存の複合材料に追加の特性を付与するために、希土類元素よりなる追加の構成要素によってこれらの組成物をドーピングすることが包含される。本複合材料は、5nm未満の非常に小さい粒径を有する非晶質、5nmを超え100nm以下の粒径を有するナノ結晶質、100nmを超え1ミクロン以下の粒径を有する遷移相又は1ミクロンを超える粒径を有する結晶質であることができる、微小構造を有する多相材料である。
【0027】
具体的な一実施形態において、水溶性硝酸アルミニウム及び硝酸イットリウムの化学量論的組成物、蒸留水又は脱イオン水、クエン酸及びエチレングリコールからなる溶液前駆体は、イットリウム-アルミニウム-ガーネット酸化物セラミックを製造するために調製される。代表的な溶液は、Al(NO・9HOの0.5モル溶液1250ml、Y(NO・6HOの0.5モル溶液750ml、クエン酸の0.5モル溶液1798ml及びエチレングリコール17.77mlからなる。前駆体は、組成の分子混合を完全に行うために、磁気ミキサーを使用して少なくとも1時間にわたって完全に混合される。次に前駆体は、高周波駆動の圧作動液滴作製装置によって製造される、数十マイクロメートルから130マイクロメートルまで変化する固有の直径を有する均一液滴として、1から5ミリリットル/分(ml/分)の間の噴射流速で噴射される。粒子連行及び誘電体の内壁の冷却のための合計80SCFHを超えないガス流は、プラズマを5.5KWの比較的低いマイクロ波放射出力にて安定化するために使用されている。YAG粉末粒子は、粉末収集排熱システムの経路に挿入された装置に収容されたナイロン、セラミック又はステンレス鋼のフィルタを使用して収集された。微小構造、粒径及び形態は、走査型電子顕微鏡(SEM)及びX線回折(XRD)技法を使用して調査される。
【0028】
SEMは、図1の非晶質イットリウム-アルミニウム-ガーネット粒子12の粒径、粒径分布及び形態を調査するために使用された。図3を参照すると、得られたYAG粒子がほぼ球状、シェル様であり、表面に多孔性組織を有することがわかる。直径は300から400マイクロメートルで変化するか、又は噴射された前駆体液滴の粒径の4倍である。得られた粒子は、主として、硝酸塩含有前駆体液滴の熱乾燥処理中に排出される溶媒の爆発性のために膨張する傾向があり、フワフワとしている。
【0029】
図4を参照すると、XRD技法を使用するYAG粉末生成物粒子12の内部微小構造の詳細な分析が示されている。これは、粒子生成物の相微小構造が完全に非晶質であると判明したことが明らかにしている。本非晶質状態は、処理された材料が、この具体的な実施形態によるプラズマ高温域から出るときの、高いクエンチ速度の存在を示している。
【0030】
続いて、非晶質生成物粒子は1200℃で1時間か焼され、XRD技法を使用して分析された。図5を参照すると、得られた結晶性構造がYAGの結晶性構造と、XRDデータベースのPDF-33-40を使用して比較されている(参照強度は、比較可能な角度でより良好に目視比較するために、相応にスケーリングされている)。UniMelt処理及びか焼YAG並びに参照として使用した結晶性YAGのXRDプロットの大きいピーク及び小さいピークの大半に完全一致があることが、明らかにわかる。すべてのピークの完全整合は、二元Y-Al酸化物系においてYAM及びYAPの他のいずれの相も含まない、得られたYAGの相純度を示している。
【0031】
図1に示した装置を使用する別の実施形態において、1ステップ熱処理を使用して、高温域での粒子の滞留時間を延長することによって、ナノ結晶性微小構造を有する処理された金属酸化物粒子を製造することができる。滞留時間のこのような延長は、マイクロ波プラズマを収容する誘電管内のプラズマプルームの容積を増加させることによって実現される。これはプラズマ生成源におけるマイクロ波出力の増加によって行われる。細長いプラズマプルームによって、溶媒の完全な蒸発、溶質の乾燥、粒子生成物の溶融及びさらなる焼結が可能となり、粒子がプラズマを収容している誘電管を出る前に、ナノ結晶性微小構造がその場で実現される。これにより、結晶化のためのその場での焼結の追加のステップが可能となり、本段落で記載した非晶質生成物を焼結する後処理ステップが不要となる。
【0032】
イットリウム元素及びアルミニウム元素からなる組成物の修飾は、ナノ複合材金属酸化物YAGの基本的特性を修飾するために、数重量パーセントの量の希土類元素のドーパントの添加を含む。この場合、希土類塩がイットリウム塩及びアルミニウム塩に添加され、熱処理される溶媒はマイクロ波プラズマを使用した。検討される希土類元素としては、ネオジム(Nd)、エルビウム(Er)、テルビウム(Tr)、イッテルビウム(Yb)、ホロミウム(Ho)及びツリウム(Tm)が挙げられる。ドーピングレベルは、0.5から3(モル)パーセントの範囲に及ぶ。製造されたナノ複合材YAG粉末は、レーザー用途のためのホスト材料として作用する。
【0033】
イットリウム元素及びアルミニウム元素からなる組成物のまた別の修飾は、ナノ複合材金属酸化物YAGの基本的特性を修飾するために、数重量パーセントの量の別の族の希土類元素のドーパントの添加を含む。検討される希土類元素としては、セリウム(Ce)、ジスプロシウム(Dy)、サマリウム(Sm)及びテルビウム(Tb)が挙げられる。これは、希土類元素の適切な前駆体源を最初のアルミニウム及びイットリウム溶液前駆体に添加して、マイクロ波プラズマ中に噴射することによって行われる。同様のドーピングレベル、すなわち0.5から3(モル)パーセントが使用される。希土類ドーピングナノ複合材YAGは、リン光体として使用するのに好適である。
【0034】
別の実施形態において、水溶性硝酸アルミニウム及び硝酸イットリウムの組成物、蒸留水又は脱イオン水、クエン酸及びエチレングリコールからなる溶液前駆体は、ニッケル-アルミナ(Ni-Al)オキシドセラミックを製造するために調製される。代表的な溶液は、Ni(NO・7・2HOの0.82モル溶液22ml、Al(NO・9HOの0.82モル溶液847ml、クエン酸の0.82モル溶液900ml及びエチレングリコール14.5mlからなる。ニッケルは、Ni-Al複合体の5モル%比に相当する。2から10モル%の間の他の比も検討することができる。前駆体は、組成の分子混合を完全に行うために、磁気ミキサーを使用して少なくとも1時間にわたって完全に混合される。次に前駆体は、高周波駆動の圧作動液滴作製装置によって製造される、直径が数十マイクロメートルから100マイクロメートルの均一液滴として、1から5ミリリットル/分(ml/分)の間の噴射流速で噴射される。粒子連行及び誘電体の内壁の冷却のための40SCFH以上で合計120SCFHを超えないガス流は、プラズマを5.5KWの比較的低いマイクロ波放射出力にて安定化するために使用されている。ニッケル-アルミナナノ複合材粉末粒子は、粉末収集排熱システムの経路に挿入された装置に収容されたナイロン、セラミック又はステンレス鋼のフィルタを使用して収集された。
【0035】
組成物の他の実施形態は、ニッケル塩の代わりに、アルミニウムカチオンをドーピングするために個別に少量で添加される、白金、パラジウム、ニッケル、銀、金を含む他の金属塩を含むことができる。これらの組成物は、触媒用途に好適である。白金ドープアルミナは、石油化学産業で炭化水素の脱水素で使用されるのに対して、パラジウム及びニッケル・ドープ・アルミナは、炭化水素及び脂肪の水素添加に使用される。銀ドープアルミナは、エチレンをエチレンオキシドに変換するために使用される。
【0036】
別の実施形態において、水溶性硝酸マグネシウム及び硝酸イットリウムの組成物、蒸留水又は脱イオン水、クエン酸及びエチレングリコールからなる溶液前駆体は、マグネシウム-アルミニウム-スピネル(MgO-Y)酸化物セラミックを製造するために調製される。代表的な溶液は、Mg(NO・9HOの0.5モル溶液1744ml、Y(NO・6HOの0.5モル溶液218ml、クエン酸の0.5モル溶液1798ml及びエチレングリコール17.17mlからなる。前駆体は、組成の分子混合を完全に行うために、磁気ミキサーを使用して少なくとも1時間にわたって完全に混合される。次に前駆体は、高周波駆動の圧作動液滴作製装置によって製造される、固有の直径が数十マイクロメートルから130マイクロメートルの均一液滴として、1から5ミリリットル/分(ml/分)の間の噴射流速で噴射される。粒子連行及び誘電体の内壁の冷却のための40SCFH以上で合計120SCFHを超えないガス流は、プラズマを5.5KWの比較的低いマイクロ波放射出力にて安定化するために使用されている。YAG粉末粒子は、粉末収集排熱システムの経路に挿入された装置に収容されたナイロン、セラミック又はステンレス鋼のフィルタを使用して収集された。
【0037】
SEMは、マグネシウム-イットリウムナノ複合材酸化物セラミック粒子の粒径、粒径分布及び形態を調べるために使用された。図6を参照すると、得られたMgO-Y粒子がほぼ球状、シェル様であり、表面に多孔性ハニカム様組織を有することがわかる。代表的なシェルの平均径は、約100マイクロメートルであり、噴射された前駆体液滴の直径と比較的同等である。得られた粒子は、主として、硝酸塩含有前駆体液滴の熱乾燥処理中に排出される溶媒の爆発性のために、フワフワして多孔性である。
【0038】
本発明によって合成されたマグネシウムイットリウム酸化物セラミック(MgO-Y)は、赤外線透過に好適である透明体を製造するために、焼結/HIP、熱間プレス及び熱間プレス/HIPを使用して固化させることができる。本発明を用いて製造された粉末は、より低い温度で焼結することが見出され、このため赤外線ドーム又はウィンドウに作製することができる3D固形体に加工するコストを低下させる。
【0039】
具体的な一実施形態において、水溶性硝酸マグネシウム及び硝酸イットリウムの化学量論的組成物、蒸留水又は脱イオン水、クエン酸及びエチレングリコールからなる溶液前駆体は、マグネシウム-アルミニウム-スピネル(MgAl)ナノ複合材酸化物セラミックを製造するために調製される。代表的な溶液は、Al(NO・9HOの0.5モル溶液1333ml、Mg(NO・6HOの0.5モル溶液666ml、クエン酸の0.5モル溶液1798ml及びエチレングリコール17.77mlからなる。前駆体は、組成の分子混合を完全に行うために、磁気ミキサーを使用して少なくとも1時間にわたって完全に混合される。次に前駆体は、高周波駆動の圧作動液滴作製装置によって製造される、固有の直径が数十マイクロメートルから130マイクロメートルの均一液滴として、1から5ミリリットル/分(ml/分)の間の噴射流速で噴射される。粒子連行及び誘電体の内壁の冷却のための40SCFH以上で合計120SCFHを超えないガス流は、プラズマを5.5KWの比較的低いマイクロ波放射出力にて安定化するために使用されている。MgAlナノ複合材スピネル粉末粒子は、粉末収集排熱システムの経路に挿入された装置に収容されたナイロン、セラミック又はステンレス鋼のフィルタを使用して収集された。
【0040】
SEMは、マグネシウム-アルミニウムナノ複合材スピネル酸化物セラミックの粒径、粒径分布及び形態を調べるために使用された。図7を参照すると、得られたMgAl粒子がほぼ球状、シェル様であり、表面に多孔性組織を有することがわかる。代表的なシェルの平均径は、約300マイクロメートル又は噴射された前駆体液滴の直径の3倍である。得られた粒子は、主として、硝酸塩含有前駆体液滴の熱乾燥処理中に排出される溶媒の爆発性のために膨張する傾向があり、フワフワとしている。
【0041】
本発明によって合成されたマグネシウムアルミネートスピネル(MgAl)は、可視から赤外線透過に、又は透明外装として好適である透明体を製造するために、焼結/HIP、熱間プレス及び熱間プレス/HIPを使用して固化させることができる。本発明を用いて製造された粉末は、より低い温度で焼結することが見出され、このためドーム又は透明外装板に作製することができる3D固形体に加工するコストを低下させる。
【0042】
具体的な一実施形態において、水溶性硝酸又は酢酸ランタン、硝酸又は酢酸マグネシウム及び硝酸アルミニウムの化学量論的組成物、蒸留水又は脱イオン水からなる溶液前駆体は、ランタン-マグネシウム-ヘキサアルミネート(LaMgAl1119)ナノ複合材酸化物セラミック粉末を製造するために調製される。代表的な溶液は、Al(NO・9HO100グラムを有する水676.4ml、酢酸マグネシウム8.31グラムを有する61.50ml及び酢酸ランタン5.20グラムを有する水61.70mlからなる。前駆体は、組成の分子混合を完全に行うために、磁気ミキサーを使用して少なくとも1時間にわたって完全に混合される。次に前駆体は、高周波駆動の圧作動液滴作製装置によって製造される、固有の直径が数十マイクロメートルから130マイクロメートルの均一液滴として、1から5ミリリットル/分(ml/分)の間の噴射流速で噴射される。粒子連行及び誘電体の内壁の冷却のための40SCFH以上で合計120SCFHを超えないガス流は、プラズマを5.5KWの比較的低いマイクロ波放射出力にて安定化するために使用されている。LaMgAl1119ナノ複合材粉末粒子は、粉末収集排熱システムの経路に挿入された装置に収容されたナイロン、セラミック又はステンレス鋼のフィルタを使用して収集された。これらのLaMgAl1119ナノ複合材粉末は、熱障壁コーティング又は触媒用途に好適である。
【0043】
図8を参照すると、XRD技法を使用するLaMgAl1119の内部微小構造の詳細な分析が示されている。この図は、段落[0016]で述べたような周囲雰囲気以外の異なる環境へのクエンチの結果を示している。実際に、UniMelt処理後の粒子生成物は、加熱基材中へクエンチされる(代表的な温度約450℃)。これにより、周囲雰囲気中へのクエンチと比べて、クエンチ速度がより低くなる。結果として、図8に示すXRDスペクトルは、ランタン-マグネシウム-酸化アルミニウムのナノ複合材相微小構造の存在を示す一連の鋭利なピーク(黒色の曲線)によって画成されている。
【0044】
具体的な一実施形態において、水溶性硝酸ジルコニル及び硝酸イットリウムの化学量論的組成物、蒸留水又は脱イオン水、クエン酸及びエチレングリコールからなる溶液前駆体は、8重量%イットリア安定化ジルコニア(8YSZ)ナノ複合材酸化物セラミック粉末を製造するために調製される。代表的な溶液は、硝酸ジルコニウム水和物50.24グラムを有する水251.24ml、硝酸イットリウム7.32グラムを有する23.84ml、クエン酸38.72グラムを有する水251.24ml及びエチレングリコール3.78mlよりなる。前駆体溶液は、組成の完全な分子混合を確実にするために、磁気ミキサーを使用して少なくとも1時間にわたって完全に混合される。次に前駆体は、高周波駆動の圧作動液滴作製装置によって製造される、固有の直径が数十マイクロメートルから130マイクロメートルの均一液滴として、1から5ミリリットル/分(ml/分)の間の噴射流速で噴射される。粒子連行及び誘電体の内壁の冷却のための40SCFH以上で合計120SCFHを超えないガス流は、プラズマを5.5KWの比較的低いマイクロ波放射出力にて安定化するために使用されている。8YSZナノ複合材粉末粒子は、粉末収集排熱システムの経路に挿入された装置に収容されたナイロン、セラミック又はステンレス鋼のフィルタを使用して収集された。これらの8YSZナノ複合材粉末は、固形酸化物形燃料電池(SOFC)用途の電解質として好適である。
【0045】
具体的な一実施形態において、マグネシウム-アルミニウム-オキシニトリド(MgALON)ナノ複合材酸化物セラミック粉末を製造するために、水溶性硝酸又は酢酸マグネシウム及び硝酸又は酢酸アルミニウムの化学量論的組成物並びに蒸留水又は脱イオン水からなる溶液前駆体は、調製され、次に窒素マイクロ波プラズマガス中に噴射される。前駆体溶液は、組成の完全な分子混合を確実にするために、磁気ミキサーを使用して少なくとも1時間にわたって完全に混合される。次に前駆体は、高周波駆動の圧作動液滴作製装置によって製造される、固有の直径が数十マイクロメートルから130マイクロメートルの均一液滴として、1から5ミリリットル/分(ml/分)の間の噴射流速で噴射される。粒子連行及び誘電体の内壁の冷却のための40SCFH以上で合計120SCFHを超えない、窒素からなるガス流は、プラズマを5.5KWの比較的低いマイクロ波放射出力にて安定化するために使用されている。MgALONナノ複合材粉末粒子は、粉末収集排熱システムの経路に挿入された装置に収容されたナイロン、セラミック又はステンレス鋼のフィルタを使用して収集された。これらのMgALONナノ複合材粉末は、透明外装用途に好適である。
【0046】
図9を参照すると、非晶質又はナノ結晶性金属酸化物粒子は、そこに記載された均一溶液液滴に従って作製される。所望の化学組成物は、反応物質の指定された割合に従って、最初に混合される。続いて、反応物質は十分に撹拌されて、反応物質の均質分子混合物が生じる。溶液は次に、液滴作製装置のリザーバ内部に蠕動ポンプ又は加圧タンクを使用して圧送される。リザーバがいっぱいになると、高周波駆動電子機器を使用して圧電変換器が作動され、溶液リザーバの堅い天井又は膜に妥当な摂動を加える。このことは次に、リザーバ内の溶液の体積に外乱を生じる。摂動がレイリー分解則(Rayleigh’s breakdown law)を満足する場合、溶液はキャピラリーノズルを通じて、電子機器駆動の所与の周波数に対して一定速度で出る均一液滴の連続した流れとして出現する。液滴の流れの性質が特に注目されるのは、液滴流がバーストモードではなく、代わりに均一液滴を有するジェットの形態であるためである。これより前に、図9の右側を参照すると、マイクロ波放射が導波管にプラズマチャンバに向けて導入され、プラズマチャンバには、誘電プラズマトーチが導波管に対して垂直に位置し、配置されている。2つの環状流が導入される。一方の環状流は、噴射された液滴を導入するためであり、他方の環状流は、プラズマトーチの外管の内壁を、プラズマからの高熱の影響下での溶融から保護するためである。両方の環状流が所定の位置に導入されると、プラズマは、誘電プラズマトーチ内部で点火される。プラズマを安定化するために、連行流と冷却流の妥当な組合せが選ばれる。また、これらの流れは、プラズマに向かって液滴をスムーズに循環させて、高温域の上で液滴の再循環や逆流を生じるおそれがある乱流を避けるように選ばれる。高温域に今や存在するプラズマに液滴が到達すると、液滴は、高温域におけるプラズマの均一温度プロフィールと共に均一熱経路を特徴とする、均一溶融状態に供される。すべての溶媒が燃焼除去されるため、液滴は容量測定的に及び均一に処理される。処理された粒子は、プラズマの出口ノズルの下の制御雰囲気クエンチチャンバ内へ出る。粒子生成物は、ナイロン、セラミック又はステンレス鋼フィルタ内に収集され、その微小構造並びにその機械特性、光学特性及び熱特性について分析された。
【0047】
本発明は、そのある好ましい実施形態に従って詳細に説明されてきたが、当業者によってその多くの修正及び変更が行われてよい。したがって、添付の特許請求の範囲によって、本発明の精神及び範囲に含まれるこのようなすべての修正及び変更が扱われることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-11-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波生成プラズマを使用して粒子を作製する方法であって、
a.水中の、有機溶媒中の、又は水及び有機溶媒の混合物中の塩溶液を調製するステップ、
b.供給噴射装置を使用して、前記塩溶液から前駆体液滴を生成するステップ、
c.前記前駆体液滴をマイクロ波生成プラズマに導入するステップ、
d.マイクロ波生成プラズマ内で環状流のガス流を使用して前記前駆体液滴を連行するステップ、
e.前記ガス流を、プラズマに向かって液滴を循環させて、プラズマの高温域の上で液滴の再循環や逆流を生じさせ得る乱流を避けるように制御することにより、前記マイクロ波プラズマ中での前記前駆体液滴の滞留時間を制御するステップ、
.前記マイクロ波プラズマから粒子を回収するステップ
を含む方法。