(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020228
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】繊維複合体又は金属もしくはプラスチックの鋳造部品を製造するために好適な型及び芯を製造するための方法、この方法において使用される型ベース材料及び結合剤、及びこの方法によって製造される型及び芯
(51)【国際特許分類】
B22C 9/02 20060101AFI20240206BHJP
B22C 1/00 20060101ALI20240206BHJP
B22C 9/10 20060101ALI20240206BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240206BHJP
B29C 64/165 20170101ALI20240206BHJP
【FI】
B22C9/02 103C
B22C1/00 B
B22C1/00 C
B22C1/00 G
B22C9/10 J
B22C9/10 E
B33Y10/00
B29C64/165
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023181527
(22)【出願日】2023-10-23
(62)【分割の表示】P 2020559011の分割
【原出願日】2019-01-07
(31)【優先権主張番号】102018200607.5
(32)【優先日】2018-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】520261530
【氏名又は名称】ラインジヒト ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ヘルツォーク, イヴォ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】3D印刷によって粒状の型ベース材料及び複数成分の結合剤から繊維複合体又は金属もしくはプラスチックの鋳造部品を製造するために好適な型及び芯を製造するための方法を提供する。
【解決手段】本発明によれば、粒状の型ベース材料が、極性親水性末端及び非極性疎水性末端を有する少なくとも一種のケイ素-有機化合物で予備処理される。予備処理された粒状の型ベース材料の層が形成された後、結合剤又は結合剤の少なくとも一つの成分が液体形態で層に付与される。ケイ素-有機化合物は、本発明によって製造される型及び芯の中に含まれる。型ベース材料、及びケイ素-有機化合物は、本発明の方法を実行するために使用されるセットの一部であることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3D印刷によって粒状の型ベース材料及び複数成分の結合剤から繊維複合体又は金属もしくはプラスチックの鋳造部品を製造するために好適な型及び芯を製造するための方法であって、前記方法が、
(a)粒状の型ベース材料を、極性親水性末端及び非極性疎水性末端を有する少なくとも一種のケイ素-有機化合物で予備処理する工程、
(b)予備処理された粒状の型ベース材料の層を形成する工程、及び
(c)結合剤又は結合剤の少なくとも一つの成分を液体形態で層に付与する工程、
を含み、
工程(b)及び(c)が、複数回繰り返される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下に記載される発明は、3D印刷によって粒状の型ベース材料及び複数成分の結合剤から繊維複合体又は金属もしくはプラスチックの鋳造部品を製造するために好適な型及び芯を製造するための方法、この方法に使用されることができる型ベース材料及び結合剤、及びこの方法によって製造される型及び芯に関する。
【背景技術】
【0002】
内部に空洞を持つ、金属、プラスチック、又は繊維複合材料(繊維材料中に埋め込まれたプラスチックのマトリックスを含む複合材料)から作られた構成要素を使用する多数の工業製品がある。かかる構成要素を製造することは、特に空洞が複雑なジオメトリー(例えば細長い湾曲した形状又は切り欠きを有する形状)を持つ一方で、空洞表面が同時に高いグレードの滑らかさを持たなければならない場合は、困難である。ワンピースでかかる構成要素を製造する一つの可能な方法は、「消失型(lost molds)」と称されるものを使用してそれらを鋳造することである。この技術では、上流工程において、型部分(「芯(core)」)が製造され、それは、サイズ及び形状において形成される空洞に対応する。芯は、鋳造用具中に配置される。鋳造用具は、さらなる型部分からなり、その中に連続して液体金属、液体ポリマー材料、又は液体ポリマープリカーサーが注入される。繊維複合体の製造では、芯は、鋳造用具に配置される前に繊維材料で包まれる。鋳造後、希望の空洞を有する繊維複合体又は金属もしくはプラスチックの鋳造部品が得られるが、その中に芯がなお存在する。この芯は、続いて除去されるが、除去操作は、空洞の上述の複雑なジオメトリーのために、芯を破壊することなしには不可能である。型部分としての芯は、「消失」される。
【0003】
例えば鋳造部品中に空洞を形成させるために、砂などの無機材料の芯を使用することは、金属鋳造からの公知技術である。この種の芯はまた、芯の表面が封止されるとして、プラスチックの鋳造のためにも使用されることができる。それらは、結合剤、及び型ベース材料と称される好適な粒状の無機材料を含む成形混合物から製造される。結合剤は、型ベース材料の粒子を一緒に保持し、従って、芯の構造上の一体性を担う。芯は、鋳造手順の間に生じる熱的及び機械的荷重に耐えることができなければならない。鋳造が行なわれた後、芯は、通常振動によって粉砕される。水溶性の結合剤が使用される場合(例えば、硫酸マグネシウム、水ガラス、ポリホスフェート及び/又はボレートに基づく結合剤が使用される場合)、芯は、鋳造手順後に鋳造部品の内部から洗い流されることができる。
【0004】
無機材料からかかる芯を製造するためには、耐熱性の型ベース材料(通常は砂)及び結合剤を含む成形混合物が製造されることが通常である。この混合物は、成形用具において所望の型又は所望の芯へと加工される。芯を製造するためには、いわゆる芯射出プロセスにおいて、成形混合物は、規定された圧力及び規定された温度で芯箱(一般的に二つの型部品又は型半分体からなる成形用具であって、それは、使用状態では、製造される芯の形状の少なくとも一つの内部空洞(「型空洞」)を包囲する)中に導入される。結合剤が硬化された後、完成した芯は、芯箱から除去されて、意図されたように使用される。
【0005】
最近では、型及び芯は、3D印刷によってしばしば製造されるようになってきている。3D成分を製造するためのプリンターは通常、少なくとも一つの可動印刷ヘッドを有し、この印刷ヘッドは、従来のインクジェットプリンターの印刷ヘッドと同様に作動する。しかし、インクの代わりに、この印刷ヘッドは通常、液体の結合剤を耐熱性の型ベース材料の層に付与する。この場合、データの基礎として作用するのは、3Dモデルの個別の2D層であることができ、3Dモデルは、コンピューターによってこれらの同じ個別の2D層へと分解される。
【0006】
3D印刷によって鋳造プラスチック又は金属のための型又は芯を一層ずつ構成するためには、耐熱性の型ベース材料の第一の層が枠中に配置される。次に、結合剤が、第一印刷工程において、少なくとも一つの印刷ヘッドを介して付与される。結合剤は、型ベース材料の個別の粒子を相互に結合する。単純化された用語で表現すると、3Dプリンターは、3D成分の第一の層の二次元画像を描く。その後、耐熱性の型ベース材料の第二の層が、第一の層の上に形成される。第二印刷工程において、結合剤がこの層に同様に付与される。結合剤の量は、第二の層内の型ベース材料の粒子を相互に結合させるだけでなく、第一の層の粒子を第二の層の粒子に結合させるように計算されている。一層ずつ、3D成分は、このようにして構築される。ここで特に注意すべきは、個別の層の均一な付与の必要性である。一般的に、層は、結合剤の付与前に圧縮されなければならない。これは、例えば、ローラー又は振動によってなされる。
【0007】
3D印刷によって型及び芯を製造するための好適な装置は、商業的に入手可能である。型及び芯を製造するための好適な3Dプリンターの構造は、例えばVoxeljet AGのWO2016/019937A1の
図1に模式的に示されている。
【0008】
DE102014118577A1は、3D印刷によって型及び芯を製造するための方法を開示する。この方法では、使用される結合剤は、水ガラスと少なくとも一種のホスフェート及び/又は少なくとも一種のボレートの混合物であり、使用される型ベース材料は、珪砂などの材料も含む。結合剤のための硬化剤が、型ベース材料に添加されていてもよい。
【0009】
WO2012/175072A1は、3D印刷によって型及び芯を製造するための別の方法を開示する。この方法では、3D成分を一層ずつ構築するために、耐熱性の型ベース材料の層が形成され、この材料は、噴霧乾燥されたアルカリ金属ケイ酸塩の溶液を添加されている。この溶液は、水(それは、印刷ヘッドを介して層に付与される)を使用して活性化されることができ、それは、水で湿潤された型ベース材料の粒子を、続く乾燥工程の後に、相互に結合させる。
【0010】
WO2011/087564A1も、3D印刷によって型及び芯を製造するための方法を開示する。この方法では、印刷可能な混合物が、耐熱性の型ベース材料、セメント、及び水ガラスから形成され、3D成分を一層ずつ構築するために使用される。
【0011】
型及び芯の3D印刷において生じうる問題は、水ベースの結合剤の付与時に、結合剤がその直接付与された位置に留まらず、重力のために下の方の層に沈み込んでしまうということである。さらに、結合剤が側方に流れて、印刷されるべき領域の外側で型ベース材料の個別の粒子を相互に結合させてしまうこともある。この効果は、「流体移行」という用語でも知られている。連続する層の印刷の間の時間はしばしば、既に印刷された層が十分な程度にまで乾燥及び/又は硬化するためには短すぎるため、この問題は、それぞれの層をさらに印刷していくうちに悪化する傾向がある。型ベース材料の吸着能力に応じて、これは、印刷される型又は芯に関する特定の幾何学的規定からの極めて著しい逸脱をもたらしうる。
【0012】
流体移行の程度に影響を与え得る多数の(一般的に、二つ以上の)要因がある。これらは、特に、結合剤の量及び濃度、並びに添加された結合剤の硬化におけるエネルギー入力である。この議題についての詳細な説明は、例えばRamakrishnan,Robertの“3-D-Drucken mit einem anorganischen Formstoffsystem”[3D Printing with an inorganic molding material system]from 2016(submitted on 24 September,2015 at the Technical University Munich,and accepted by the Faculty of Machinery on January 25,2016;President Univ.-Prof.Dr.-Ing.Gunther Reinhart,Examiners-Univ.-Prof.Dr.-Ing.Wolfram Volk and Univ.-Prof.Dr.rer.nat.Tim C.Lueth)というタイトルの学位論文中に見出される。
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的は、3D印刷によって繊維複合体又は金属もしくはプラスチックの鋳造部品を製造するための型及び芯を与えるための、これらの点について改良された方法を提供することである。
【0014】
この目的を達成するため、本発明は、請求項1に規定される特徴を有する方法、請求項11に規定される特徴を有する型及び芯、請求項12に規定される特徴を有する粒状型ベース材料、及び請求項13に規定される特徴を有するセットを提案する。
【0015】
本発明による方法は、繊維複合体又は金属もしくはプラスチックの鋳造(cast)部品を製造するために好適な型及び芯を製造するための、従来技術から知られかつ冒頭で論じた方法と同様に役立つ。本発明によれば、型及び芯は、3D印刷によって粒状の型ベース材料及び複数成分の結合剤から製造される。本発明の方法は、以下の工程を常に含む。
(a)粒状の型ベース材料を、極性親水性末端及び非極性疎水性末端を有する少なくとも一種のケイ素-有機化合物で予備処理する工程、
(b)予備処理された粒状の型ベース材料の層を形成する工程、及び
(c)結合剤又は結合剤の少なくとも一つの成分(要するに、結合剤成分)を液体形態で(通常、3Dプリンターの一つ以上の印刷ヘッドを介して)層に付与する工程。
【0016】
この場合、3D印刷によって型及び芯を製造するための冒頭で説明した従来の手順と同様に、工程(b)及び(c)は、複数回繰り返される。結合剤又はその少なくとも一種の成分は、予備処理された型ベース材料の第一の層に付与され、続いて予備処理された型ベース材料の第二の層が第一の層の上に形成され、続いて結合剤又はその少なくとも一種の成分が付与される。これは、所望の型又は芯の一層ずつの構築が完了するまで繰り返される。
具体的には、本願発明によれば、以下の[1]~[13]の構成が提供される。
[1]3D印刷によって粒状の型ベース材料及び複数成分の結合剤から繊維複合体又は金属もしくはプラスチックの鋳造部品を製造するために好適な型及び芯を製造するための方法であって、前記方法が、
(a)粒状の型ベース材料を、極性親水性末端及び非極性疎水性末端を有する少なくとも一種のケイ素-有機化合物で予備処理する工程、
(b)予備処理された粒状の型ベース材料の層を形成する工程、及び
(c)結合剤又は結合剤の少なくとも一つの成分を液体形態で層に付与する工程、
を含み、
工程(b)及び(c)が、複数回繰り返される、方法。
[2]以下の追加の特徴及び/又は追加の工程の少なくとも一つを有する、[1]に記載の方法:
(a)型ベース材料が、粒状の材料を含み、その粒状の材料の表面にケイ素-有機化合物の親水性末端が結合されることができる、
(b)選択された型ベース材料が、少なくとも一種の水不溶性無機材料を含む、
(c)少なくとも一種の水不溶性無機材料が、砂、ガラス、酸化物、セラミック、ガラス-セラミック材料、及び前記材料の混合物を有する群から選択される、
(d)選択された型ベース材料が、少なくとも一種の水溶性無機材料を含む、
(e)少なくとも一種の水溶性無機材料が、水溶性塩である、
(f)選択された型ベース材料が、少なくとも一種の水溶性有機材料を含む、
(g)少なくとも一種の水溶性有機材料が、水溶性ポリマー又は有機酸の塩、又はこれらの材料の混合物である、
(h)粒状の型ベース材料が、10μm~800μm、好ましくは30μm~300μmの平均粒子直径(d50)を有する、
(i)粒状の型ベース材料が、50cm
2/g~500cm
2/gの範囲のDIN-ISO 9277に従って決定される表面積を有する。
[3]以下の追加の特徴及び/又は追加の工程の少なくとも一つを有する、[1]又は[2]に記載の方法:
(a)ケイ素-有機化合物の極性親水性末端が、ヒドロキシル(-OH)、ヒドロキシレート(-O-)、アミノ(-NH
2)、アンモニウム(-NH
4
+)、カルボキシル(-COOH)、又はカルボキシレート基を含む、
(b)ケイ素-有機化合物の非極性疎水性末端が、少なくとも一つのアルキル基、好ましくはメチル、エチル及びプロピルからなる群からのものを含む、
(c)極性親水性末端及び非極性疎水性末端が、同じSi原子に結合される、
(d)使用されたケイ素-有機化合物が、アルキルシラノレート、特にアルカリ金属メチルシラノレートを含む、
(e)ケイ素-有機化合物の非極性疎水性末端が、Si原子に結合され、ケイ素-有機化合物の極性親水性末端が、C原子に結合される、
(f)Si原子及びC原子が、n個の原子を有する鎖を介して接続され、nが、1~150の整数であり、n個の原子が、C原子、O原子、及びSi原子からなる群から選択される、
(g)使用されたケイ素-有機化合物が、以下の構造式(I)を有する化合物を含む、
式中、nは、1~100の整数であり、mは、1~10の整数であり、Rは、H原子である、
(h)使用されたケイ素-有機化合物が、3-(ポリオキシエチレン)プロピルヘプタメチルトリシロキサンを含む。
[4]以下の追加の工程を有する、[1]~[3]のいずれかに記載の方法:
(a)予備処理のため、ケイ素-有機化合物が、予備処理された型ベース材料中に(予備処理された型ベース材料の乾燥重量に基づいて)少なくとも0.01重量%でかつ多くとも0.2重量%の重量割合で存在するような量で、ケイ素-有機化合物が予備処理中に粒状の型ベース材料に添加される工程。
[5]以下の追加の特徴及び/又は追加の工程の少なくとも一つを有する、[1]~[4]のいずれかに記載の方法:
(a)結合剤が、少なくとも一種の水溶性結合剤成分を含む、
(b)水溶性結合剤成分が、水ガラス、硫酸マグネシウム、ホスフェート、及びボレートからなる群からの少なくとも一種の材料を含む、
(c)結合剤が、少なくとも一種の水不溶性結合剤成分を含む、
(d)水不溶性結合剤成分が、粒状の二酸化ケイ素及び炭酸カルシウムからなる群からの少なくとも一種の材料を含む、
(e)結合剤が、水又は水溶液、特にアルカリ水溶液を含む、
(f)結合剤が、その処理特性に影響を与える添加剤を含む。
[6]以下の追加の特徴及び/又は追加の工程の少なくとも一つを有する、[1]~[5]のいずれかに記載の方法:
(a)少なくとも一つの結合剤成分が、型ベース材料の層中の固定結合剤成分として存在する、
(b)固定結合剤成分が、水不溶性結合剤成分、又は複数の水不溶性結合剤成分のうちの一つである、
(c)固定結合剤成分が、水溶性結合剤成分又は複数の水溶性結合剤成分のうちの一つである、
(d)型ベース材料が、固定結合剤成分で予備処理されている、
(e)層に液体形態で付与される少なくとも一つの結合剤成分が、水、水酸化物水溶液、水ガラス溶液、硫酸マグネシウムの水溶液、ホスフェートの水溶液、及びボレートの水溶液からなる群からの少なくとも一種の材料である。
[7]以下の追加の特徴及び/又は追加の工程の少なくとも一つを有する、[1]~[6]のいずれかに記載の方法:
(a)層への結合剤の付与又は結合剤の少なくとも一つの成分の付与の後、結合剤が硬化される、
(b)硬化が、マイクロ波放射線によって起こる、
(c)硬化が、化学的に起こる、
(d)硬化が、熱的に起こる。
[8]以下の追加の特徴及び/又は追加の工程を有する、[6]又は[7]に記載の方法:
(a)型ベース材料が、アルキルシラノレート、特にカリウムメチルシリコネートで処理された砂である、
(b)任意選択的に(鋳型用途のために)、二酸化ケイ素が、型ベース材料の層中に固定結合剤成分として存在する、
(c)水ガラス溶液が、層への液体結合剤成分として付与される、
(d)硬化が、マイクロ波放射線によって起こる。
[9]以下の追加の特徴及び/又は追加の工程を有する、[6]又は[7]に記載の方法:
(a)型ベース材料が、構造式(I)によるケイ素-有機化合物で処理された砂である、
(b)任意選択的に、二酸化ケイ素が、型ベース材料の層中の固定結合剤成分として存在する、
(c)エステル硬化剤が、型ベース材料の層中の固定結合剤成分としての硬化剤として存在する、
(d)水ガラス溶液が、層への液体結合剤成分として付与される。
[10]以下の追加の特徴及び/又は追加の工程を有する、[6]又は[7]に記載の方法:
(a)型ベース材料が、構造式(I)によるケイ素-有機化合物で処理された砂である、
(b)任意選択的に、二酸化ケイ素が、型ベース材料の層中の固定結合剤成分として存在する、
(c)水ガラスが、層中の結合剤の固定成分として存在する、
(d)エステル硬化剤が、層への液体結合剤成分として付与される。
[11]繊維複合体又は金属もしくはプラスチックの鋳造部品を製造するために好適な型及び芯であって、
(a)型及び芯が、0.01~0.2重量%の範囲のケイ素-有機化合物の割合を持ち、
型及び芯が、任意選択的に以下の追加の特徴の少なくとも一つを有する:
(b)型及び芯が、[1]~[10]のいずれかに記載の方法によって製造される、及び/又は
(c)型及び芯が、特に0.3~2.5重量%の範囲の割合で、硫酸マグネシウム、ホスフェート、及びボレートからなる群からの少なくとも一つの材料を含む、及び/又は
(d)型及び芯が、特に0.1~1.0重量%の範囲の割合で、粒状の二酸化ケイ素を含む。
[12][1]~[10]のいずれかに記載の方法に使用するための粒状の型ベース材料であって、その表面上に、極性親水性末端及び非極性疎水性末端を有する少なくとも一種のケイ素-有機化合物を持つ、型ベース材料。
[13]特に[1]~[10]のいずれかに記載の方法に使用するための、3D印刷によって粒状の型ベース材料及び複数成分の結合剤から繊維複合体又は金属もしくはプラスチックの鋳造部品を製造するために好適な型及び芯を製造するためのセットであって、前記セットが、以下のものを含む、セット:
(a)極性親水性末端及び非極性疎水性末端を有する少なくとも一種のケイ素-有機化合物、
(b)水ガラス、硫酸マグネシウム、ホスフェート、及びボレートからなる群からの少なくとも一種の材料、及び任意選択的に、
(c)粒状の型ベース材料、
(d)二酸化ケイ素及び炭酸カルシウムからなる群からの少なくとも一種の材料、及び/又は
(e)水酸化物水溶液。
【発明を実施するための形態】
【0017】
型ベース材料
型ベース材料は、粒状の材料を含み、その粒状の材料の表面にケイ素-有機化合物の親水性末端が結合されることができることが好ましい。使用される型ベース材料は、かかる材料からなることが好ましい。予備処理された型ベース材料は、粒状材料とケイ素-有機化合物からなることが好ましい。
【0018】
好ましい実施形態では、粒状材料は、(室温で)水に不溶性の少なくとも一種の粒状無機材料を含む。この材料は、砂、ガラス、酸化物、セラミック、金属、ガラス-セラミック材料、及び前記材料の混合物を有する群から選択されることが好ましい。
【0019】
砂は、天然又は合成由来のものであることができる。特に想定されるのは、珪砂、ジルコン砂、クロム鉱石砂、ムライト砂、及びカンラン石砂である。
【0020】
好適なガラスは、特に少なくとも0℃~200℃の温度範囲で水又は水溶液に対する挙動において化学的に不活性な無機ガラスである。
【0021】
公知の酸化物材料のうち、特に好適なものは、酸化アルミニウムなどの金属酸化物である。
【0022】
セラミック粒子は、特に炭化物、窒化物、酸化物、ケイ化物の粒子、及び例えばカオリナイトなどの公知のクレー鉱物にも言及する。
【0023】
用語「ガラス-セラミック」は、非晶質のガラス相の中に結晶質のセラミック粒子が埋め込まれているガラスに言及する。
【0024】
粒状材料は、追加的に又は代替的に、中空マイクロビーズ(特に、中空ケイ酸アルミニウムマイクロビーズ及び/又は中空ガラスマイクロビーズ)、顆粒、及び/又はガラス、セラミック、金属又は金属合金に基づく球状体であることができる。
【0025】
リサイクルされたガラス製品(例えば、ガラス顆粒、及び膨張されたガラス顆粒)、及び膨張されたクレー、及び他の安価な粒状物質を使用することも可能である。
【0026】
低融点粒子(例えば、低融点ガラスの粒子)の使用は、繊維複合体又はプラスチックの鋳造部品の製造のために使用される型を製造するときのみ好適であることが通常である。液体金属(例えば、液体アルミニウム)の加工のためには、これらの材料の型は、それほど好適とはいえない。この場合の特に好適な型ベース材料は、高い温度耐性を有する砂、及び上述のセラミック粒子である。
【0027】
粒状材料は、好ましくは600℃より高い、より好ましくは900℃より高い、さらに好ましくは1200℃より高い、特に好ましくは1500℃より高い融点を有する。
【0028】
多数のさらに好ましい実施形態では、選択された型ベース材料は、(室温で)水に可溶性の少なくとも一種の粒状無機材料を含む。これは好ましくは水溶性塩である。
【0029】
使用されることができる水溶性塩は、特に塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、及び炭酸ナトリウム(Na2CO3)の群からの塩を含む。また、硝酸塩、特に硝酸ナトリウム(NaNO3)及び硝酸カリウム(KNO3)も含む。
【0030】
上述の塩は、繊維複合体又はプラスチックの鋳造部品の製造のために使用される型のために特に好適である。
【0031】
多数のさらに好ましい実施形態では、選択された型ベース材料は、(室温で)水に可溶性の少なくとも一種の粒状有機材料を含む。これは、水溶性のポリマー又は有機酸の塩(例えば、酢酸ナトリウム)、又はこれらの材料の混合物、又は尿素、クエン酸、又は酒石酸であることが好ましい。
【0032】
これらの材料は、繊維複合体又は低融点プラスチックの鋳造部品の製造のために使用される型のために特に好適である。
【0033】
粒状の型ベース材料は、好ましくは10μm~800μm、より好ましくは30μm~300μmの平均粒子直径(d50)を有する。
【0034】
追加的に、粒状の型ベース材料は、50cm2/g~500cm2/gの範囲のDIN-ISO 9277に従って決定される表面積を有することが好ましい。
【0035】
型ベース材料の粒子サイズ分布は、製造される芯及び型において、実験的に決定されるFuller又はLitzow粒度分布に相当する高密度充填構造がもたらされるように選択されることが好ましい。これは、浸透される孔の空間を最小化するために使用されることが好ましい。
【0036】
ケイ素-有機化合物
ケイ素-有機化合物の極性親水性末端は、ヒドロキシル(-OH)、ヒドロキシレート(-O-)、アミノ(-NH2)、アンモニウム(-NH4
+)、カルボキシル(-COOH)、又はカルボキシレート基からなる群から選択される少なくとも一種の官能基を含むことが好ましい。特に、親水性末端は、これらの基のうちの二つ以上(例えば、二つ以上のヒドロキシレート基)を含むこともできる。
【0037】
ケイ素-有機化合物の非極性疎水性末端は、少なくとも一つのアルキル基、好ましくはメチル、エチル及びプロピルからなる群からのものを含む。好ましい実施形態では、疎水性末端は、二つ以上のアルキル基を含むこともできる。
【0038】
一つの好ましい実施形態では、極性親水性末端及び非極性疎水性末端は、同じSi原子に結合される。この場合、使用されたケイ素-有機化合物は、好ましくはアルキルシラノレート、特にアルカリ金属メチルシラノレート、より好ましくはカリウムメチルシラノレートを含む。
【0039】
さらに好ましい実施形態では、ケイ素-有機化合物は、トリカリウムメチルシラントリオレート(実験式はCH3K3O3Siであり、カリウムメチルシリコネートとしても知られている)である。
【0040】
さらなる特に好ましい実施形態では、ケイ素-有機化合物の非極性疎水性末端は、Si原子に結合され、ケイ素-有機化合物の極性親水性末端は、C原子に結合される。この場合、Si原子及びC原子が、n個の原子を有する鎖を介して接続され、nが、1~150の整数であり、n個の原子が、C原子、O原子、及びSi原子からなる群から選択されることがさらに好ましい。
【0041】
さらに好ましい実施形態では、ケイ素-有機化合物は、以下の構造式(I)を有する化合物を含む。
式中、nは、1~100の整数であり、mは、1~10の整数であり、Rは、H原子である。
【0042】
特に好ましい実施形態では、ケイ素-有機化合物は、3-(ポリオキシエチレン)プロピルヘプタメチルトリシロキサンを含む。
【0043】
予備処理された型ベース材料
予備処理のため、粒状の型ベース材料は、少なくとも一種のケイ素-有機化合物を添加される。この場合、型ベース材料に対するケイ素-有機化合物の添加量には、最適値が存在する。もしこの割合が低すぎると、ケイ素-有機化合物を添加しても十分な効果が示されないおそれがある。もしこの割合が高すぎると、粒状の型ベース材料が疎水性化されすぎて、続く印刷操作中に型ベース材料の個別の粒子がもはや結合剤と十分に相互作用することができないおそれがある。
【0044】
予備処理された型ベース材料は通常、自由に流動できる製品の形である。
【0045】
より好ましくは、ケイ素-有機化合物が予備処理された型ベース材料中に(予備処理された型ベース材料の乾燥重量に基づいて)少なくとも0.001重量%でかつ多くとも0.1重量%の重量割合で存在するような量で、ケイ素-有機化合物を予備処理中に粒状の型ベース材料に添加する。この範囲内では、0.01重量%~0.05重量%の割合がさらに好ましい。これは特に、使用された粒状の型ベース材料が10μm~800μmの平均粒子直径(d50)を有する場合、及び使用されたケイ素-有機化合物がアルカリ金属メチルシラノレート、より好ましくはカリウムメチルシリコネートを含むか、又は構造式(I)の化合物、特に3-(ポリオキシエチレン)プロピルヘプタメチルトリシロキサンである場合に当てはまる。
【0046】
粒状の型ベース材料に対するケイ素-有機化合物の添加量は、上述の「流体移行」が生じる程度にも影響を与える。ケイ素-有機化合物の重量割合の最適値は、特に0.01重量%~0.1重量%であることが実験研究によって確認されることができる。
【0047】
この目的のために好適な手順が、上述のRamakrishnanの学位論文から知られている。それは、特定の印刷パラメータに従った複数の同心リングからなる構造を含む標準化されたテスト試料を製造することを含む。これらのテスト試料が製造された後、これらのテスト試料は、8バールの規定された作用圧力の圧縮空気で吹き飛ばされる。空気流は、リングの間隙中の結合されていない粒状材料を除去する。これらの材料が吹き飛ばされた後、テスト試料の重量は、精密天秤によって確認される。
【0048】
流体移行の程度が大きいほど、より多くの材料が間隙中に接着物の形で残る。これらの接着物は、精密天秤によって測定される重量を増加させる。
【0049】
「流体移行」は、テスト試料の重量がその意図された重量を超える百分率を表わす。それは、円盤状のテスト試料の密度とテスト要素の公称体積(CADデータから得られる)から計算されることができる。ケイ素-有機化合物を使用することによって、重量がその意図される重量から0.1%未満しか逸脱しないテスト試料を製造することが可能である。
【0050】
ケイ素-有機化合物は、予備処理された型ベース材料の表面に付着されることが好ましく、特にその親水性末端を介して付着されることが好ましい。
【0051】
結合剤
好ましい実施形態では、結合剤は、以下の特徴を有する:
・ それは、少なくとも一種の水溶性結合剤成分を含む。
・ それは、少なくとも一種の水不溶性結合剤成分を含む。
・ それは、水又は水溶液、特にアルカリ水溶液を含む。
【0052】
結合剤は所望により、その加工特性に影響を与える少なくとも一種の添加剤(例えば、ポリエチレングリコール、ナトリウム2-エチルヘキシルスルフェート(Sulfetal)などの湿潤剤、界面活性剤(Byk)又は流動学的添加剤)を含む。
【0053】
水溶性結合剤成分は、水ガラス、硫酸マグネシウム、ホスフェート、及びボレートからなる群からの少なくとも一種の材料を含むことが好ましい。
【0054】
水ガラスは、溶融物から固化されたガラス状の水溶性アルカリ金属ケイ酸塩(特にケイ酸ナトリウム、カリウム及びリチウム)と、それらの水溶液の両方を指す用語である。本発明の文脈で使用するために、ナトリウムの水ガラスが特に好適である。二種以上の異なる水ガラスの混合物を使用することも可能である。
【0055】
水ガラスの一つの特徴は、それらの係数(modulus)であり、この用語は、水ガラス中のSiO2:M2Oのモル比を意味し、式中、Mは、Li+,K+又はNa+から選択されることが好ましい。水ガラスは、好ましくは1.2~4.5の、より好ましくは1.5~3.3の係数を有する。
【0056】
GB782205Aは、本発明の文脈で使用するのに好適な結合剤であって、CO2の導入によって硬化されることができる結合剤であるアルカリ金属水ガラスを開示する。さらなる好適な水ガラスベースの結合剤は、例えばDE19925167A1,DE102007045649A1又はUS5474606Aから公知である。
【0057】
ボレート(borate)は、ホウ酸の塩又はエステルである。ホウ酸はそれ自体、ボレートの中に含められることができ、しばしばトリヒドロゲンボレートと称される。塩は、それらのイオン格子に、陰イオンとして、ボレートイオンBO3
3-及び/又はその凝縮形態(例えば、B4O5(OH)4
2-、テトラボレート)を含むことを特徴とする。
【0058】
ホスフェート(phosphate)としては、従来のホスフェート(例えば、リン酸アンモニウム)だけでなく、特にポリホスフェート、及びナトリウムヒドロゲンホスフェートなどのヒドロゲンホスフェートも使用されることができる。
【0059】
ポリホスフェートは、オルトリン酸(H3PO4)の塩の凝縮物として知られており、一般実験式Mn+2PnO3n+1及び構造M-O-[P(OM)(O)-O]n-Mを有し、式中、Mは、一価の金属であり、nは、3又は4までの数であることができる。しかし、ポリホスフェートには、短鎖(つまり、オリゴ)ホスフェートもしばしば含められ、この場合、nは8~32の数であることができる。環状ポリマーは、メタホスフェートと称される。
【0060】
本発明の文脈で使用するのに好適な結合剤であって、ポリホスフェート及び/又はボレートに基づく結合剤は、例えばWO92/06808A1に開示されている。さらなる好適なホスフェートベースの結合剤は、例えばDE10359547B3,DE19525307A1又はUS5711792Aから公知である。
【0061】
特に好ましい実施形態では、本発明で使用される結合剤中のホスフェートは、ナトリウムヘキサメタホスフェート((NaPO3)6)を含む。
【0062】
水不溶性結合剤成分は、粒状の二酸化ケイ素(特に、粒状の非晶質二酸化ケイ素)及び粒状の炭酸カルシウムからなる群からの少なくとも一種の材料を含むことが好ましい。
【0063】
二酸化ケイ素を水ガラスベースの結合剤と共に成形混合物に添加することが有利でありうることは、E.I.du Pont de Nemours and Co.のDE2434431A1から既に知られている。かかる添加の結果として、水ガラスで結合された型及び芯の強度の顕著な増大を達成することができる。
【0064】
粒状の二酸化ケイ素は、水中の懸濁液として使用されることが好ましく、特にコロイド状の水性懸濁液として使用されることが好ましい。この場合に使用される懸濁液は、(使用される懸濁液の全重量に基づいて)10重量%~80重量%の範囲の固形分含有量を有することが好ましい。
【0065】
特に好ましい実施形態では、懸濁液は、好ましくは低分子量シリカの凝縮によって製造される粒子の懸濁液である。代替的に、粒状の二酸化ケイ素は、別の方法で、例えば四塩化ケイ素からの火炎熱分解によって製造されることができる。天然の非晶質シリカも使用されることができ、その例は、DE102007045649A1に開示されている。
【0066】
粒状の二酸化ケイ素は、好ましくは5nm~1.5μm、より好ましくは10nm~1μmの範囲の平均粒子直径(d50)を有する。
【0067】
低分子量シリカの凝縮による粒状のコロイド状懸濁液の製造は、公知の手順である。低分子量シリカ(例えば、モノシリカ(オルトシリカ)、ジシリカ、又はトリシリカ)は、特に酸性又は塩基性条件下では凝縮しやすい。これらの低分子量シリカが凝縮すると、所望のコロイド状の懸濁液が形成される。これらの懸濁液は、極めて幅広い様々な平均粒子サイズのものが商業的に自由に入手可能である。
【0068】
本発明で特に好ましく使用される粒子及びコロイド状懸濁液は、純粋なモノシリカから出発して調製されることが好ましい。
【0069】
本発明で使用される結合剤は、以下の成分を以下の割合で組み合わせることによって形成されることがより好ましい。
・ 40重量%~99重量%、より好ましくは50重量%~80重量%の範囲の割合の少なくとも一種の水溶性結合剤成分。
・ 1重量%~40重量%、より好ましくは5重量%~30重量%の範囲の割合の少なくとも一種の水不溶性結合剤成分。
・ 10重量%~60重量%の範囲の割合の水又は水溶液、特にアルカリ水溶液。
【0070】
全ての百分率割合は、水又は水溶液を含む結合剤の全ての成分の添加された全重量に基づいている。成分の割合は、合計100重量%になる。
【0071】
付与方法の変形例
原則として、結合剤をその全ての成分の混合物の形で与えて、この混合物を予備処理された粒状の型ベース材料の層に付与することが可能である。しかし、一つの特に好ましい実施形態では、結合剤の少なくとも一種の成分は、型ベース材料の層の中の固定(stationary)結合剤成分として存在し、結合剤の残りの成分のみが、液体形態で層に付与される。
【0072】
第一の好ましい方法の変形例では、固定結合剤成分は、水不溶性結合剤成分、又は複数の水不溶性結合剤成分のうちの一つを含む。特に好ましくは、この場合の型ベース材料は、固定結合剤成分で予備処理される。従って、例えば、型ベース材料の層を形成する前に型ベース材料を上述のコロイド状の水性二酸化ケイ素の懸濁液と混合し、そこに結合剤の残りの成分(例えば、水ガラス)を液体形態で、特に上述の印刷ヘッド(単数又は複数)を介して付与することができる。
【0073】
層に液体形態で付与される少なくとも一つの結合剤成分は、使用される特定の結合剤に応じて、水、水酸化物水溶液(特に水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの水溶液)、水ガラス溶液、硫酸マグネシウムの水溶液、ホスフェートの水溶液、及びボレートの水溶液からなる群からの少なくとも一種の材料を含むことが好ましい。
【0074】
第二の好ましい方法の変形例では、固定結合剤成分は、水溶性結合剤成分、又は複数の水溶性結合剤成分のうちの一つを含む。この場合も、特に好ましくは、型ベース材料は、固定結合剤成分で予備処理される。従って、例えば、型ベース材料の層を形成する前に型ベース材料を水ガラスと混合し、そこに結合剤の残りの成分(例えば、上述のコロイド状の水性二酸化ケイ素の懸濁液)を液体形態で付与することができる。
【0075】
熱硬化及び自己硬化方法の変形例
使用される結合剤に応じて、層への結合剤の付与又は結合剤の少なくとも一つの成分の付与の後、結合剤が硬化されることが好ましいかもしれない。このために、以下の手順が選択肢として利用できる:
・ 硬化が、マイクロ波放射線によって起こる。
・ 硬化が、化学的に起こる、特にCO2によって又は自己硬化性添加物によって起こる。
・ 硬化が、熱的に起こる。
【0076】
この種の熱硬化方法の変形例は、例えば以下の条件下で有利であることができる。
・ 型ベース材料が、アルキルシラノレート、特にカリウムメチルシリコネートで処理された砂である。
・ 水ガラス溶液が、層への液体結合剤成分として付与される。
【0077】
この場合、硬化が、マイクロ波放射線によって起こることが好ましい。特に鋳造用途のための芯又は型を製造する場合、上述の二酸化ケイ素が、型ベース材料の層中に固定結合剤成分として存在することが好ましいかもしれない。
【0078】
しかし、本発明の方法の好ましい実施形態の大部分では、結合剤は、自己硬化が可能であるように選択される。二つの特に好ましい自己硬化方法の変形例が以下に記述される。
【0079】
自己硬化性の結合剤を使用する一つの変形例(1)の場合:
・ 型ベース材料が、構造式(I)によるケイ素-有機化合物で処理された砂である。
・ エステル硬化剤(例えば、ジアセチン又はトリアセチン)が、型ベース材料の層中の固定結合剤成分としての硬化剤として存在する。
・ 水ガラス溶液が、層への液体結合剤成分として付与される。
【0080】
この方法の変形例では、マイクロ波による硬化はもはや不要であり、代わりに、硬化は、熱エネルギーを使用することなしに、硬化剤によるゾル-ゲル変換によって達成される。ここでもまた、鋳造用途のための芯又は型を製造する場合、上述の粒状の二酸化ケイ素が、型ベース材料の層中に固定結合剤成分として存在することが好ましいかもしれない。
【0081】
自己硬化性の結合剤を使用する別の変形例(2)の場合:
・ 型ベース材料が、構造式(I)によるケイ素-有機化合物で処理された砂である。
・ 水ガラスが、型ベース材料の層中の結合剤の固定成分として存在する。
・ エステル硬化剤(例えば、ジアセチン又はトリアセチン)が、層への液体結合剤成分として付与される。
【0082】
この方法の変形例では、マイクロ波による硬化はもはや不要であり、代わりに、硬化は、熱エネルギーを使用することなしに、硬化剤によるゾル-ゲル変換によって達成される。ここでもまた、鋳造用途のための芯又は型を製造する場合、上述の粒状の二酸化ケイ素が、型ベース材料の層中に固定結合剤成分として存在することが好ましいかもしれない。
【0083】
上記方法によって製造される型及び芯
上記方法によって製造される型及び芯は、特に0.01~0.09重量%の範囲のケイ素-有機化合物の割合を持つ。
【0084】
好ましい実施形態では、以下の特徴のうちの一つ又は以下の特徴の組み合わせを有する:
・ 型及び芯が、特に0.3~2.5重量%、さらに好ましくは0.5~1.0重量%の範囲の割合で、硫酸マグネシウム、ホスフェート、及びボレートからなる群からの少なくとも一つの材料を含む。
・ 型及び芯が、特に0.1~1.0重量%の範囲の割合で、5nm~1.5μmの範囲の平均粒子直径(d50)を有する粒状の二酸化ケイ素を含む。
【0085】
型及び芯を製造するためのセット
本発明のセットは常に、以下の成分を含む:
・ 極性親水性末端及び非極性疎水性末端を有する少なくとも一種のケイ素-有機化合物、及び
・ 水ガラス、硫酸マグネシウム、ホスフェート、及びボレートからなる群からの少なくとも一種の材料。
【0086】
これらの二つの成分は一般的に、セット中で相互から分離されて存在する。
【0087】
好ましい実施形態では、セットは、以下の成分の少なくとも一つをさらに含む:
・ 粒状の型ベース材料、
・ 二酸化ケイ素及び炭酸カルシウムからなる群からの少なくとも一種の材料、及び/又は
・ 水酸化物水溶液。
【0088】
特定の好ましい実施形態では、これらの追加成分のうち、固体成分は、粒状型ベース材料と共に既に混合されている。
【実施例0089】
本発明のさらなる特徴、及びそれから生じる利点は、以下の実施例から明らかである。以下に記述される実施形態は、説明のため、及び本発明のより良い理解のためのみの役割を有し、いかなる限定としても解釈されるべきではない。
【0090】
(1)カリウムメチルシリコネートで予備処理された粒状の型ベース材料の提供
Freihung,ドイツにあるSTROBEL QUARZSAND GmbHからのタイプGS14の砂99.98重量部(平均粒度:0.13mm;理論上の比表面積:176cm2/g)に、34重量%のカリウムメチルシリコネート割合を有する水溶液0.02重量部が添加され、完全に混合された。
【0091】
(2)3-(ポリオキシエチレン)プロピルヘプタメチルトリシロキサンで予備処理された粒状の型ベース材料の提供
Freihung,ドイツにあるSTROBEL QUARZSAND GmbHからのタイプGS14の砂99.98重量部(平均粒度:0.13mm;理論上の比表面積:176cm2/g)に、3-(ポリオキシエチレン)プロピルヘプタメチルトリシロキサン0.02重量部が添加され、完全に混合された。
【0092】
(3)印刷可能な水ガラス含有結合剤成分の提供
水ガラス含有結合剤成分として、Betol 50T(修飾されたケイ酸ナトリウムの水溶液、係数:2.6;固形分の割合:44重量%(Woellner GmbH & Co.KG,Ludwigshafen,ドイツ))が、水及び所望により少量の界面活性剤と混合された。
【0093】
(4)水不溶性の結合剤成分の提供
第一の水不溶性の結合剤成分として、合成起源の非晶質SiO2粉末(平均粒子サイズ0.1~0.3μm)が提供された。
【0094】
(5)自己硬化性結合剤を使用した芯の製造
アルミニウム鋳造用の芯を製造するために、(2)で予備処理された型ベース材料99重量部が、(4)で提供されたSiO2粉末1重量部と混合された。この混合物から、層が形成された。この層は、続いて圧縮された。形成された層は、0.2mm~0.5mmの範囲の均一な層厚さを有していた。この層の上の領域に、(3)で提供された水ガラス含有結合剤成分が印刷によって付与された。印刷が行なわれた後、混合物の新しい層が、印刷された層の上に形成され、上述の範囲の層厚さに圧縮された。この層は、再び(3)で提供された水ガラス含有結合剤成分を印刷された。この手順は、所望の芯が完成するまで繰り返された。この芯は、マイクロ波放射線によって硬化された。
【0095】
硬化された芯は、未処理の型ベース材料を使用した比較条件下で製造された芯と比べてずっと良好な幾何学的形状の仕様を満足していた。