(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020234
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】補強ゴム組成物を加硫する方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/20 20060101AFI20240206BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20240206BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240206BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240206BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20240206BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
C08J3/20 Z CEQ
C08L7/00
C08L9/00
C08K3/013
C08K5/14
C08K5/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023182893
(22)【出願日】2023-10-25
(62)【分割の表示】P 2020542853の分割
【原出願日】2019-02-06
(31)【優先権主張番号】18156093.9
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】509131443
【氏名又は名称】ヌーリオン ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フェノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】Nouryon Chemicals International B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100209037
【弁理士】
【氏名又は名称】猪狩 俊博
(72)【発明者】
【氏名】ビーク,ワルド ジョセフ エリザベス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】カップリング剤を必要とせずに、種々の無機充填剤とゴムとの間の相互作用を向上させる方法を提供する。
【解決手段】補強ゴム組成物の調製方法であって、少なくとも120℃の温度で、少なくとも以下の化合物、(i)ゴムと、(ii)少なくとも1つの無機充填剤と、(iii)少なくとも1つの有機過酸化物と、(iv)フェノール類、パラフェニリデンジアミン、および窒素酸化物から選択される少なくとも1つの酸化防止剤とを混合するステップを含む、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強ゴム組成物の調製方法であって、少なくとも120℃の温度で、少なくとも以下の
化合物、
(i)ゴムと、
(ii)少なくとも1つ無機充填剤と、
(iii)少なくとも1つの有機過酸化物と、
(iv)フェノール類、パラフェニリデンジアミン、および窒素酸化物から選択される少
なくとも1つの酸化防止剤と
を混合するステップを含む、方法。
【請求項2】
補強ゴム組成物を加硫する方法であって、
(a)少なくとも120℃の温度で、少なくとも以下の化合物、
(i)ゴム、
(ii)少なくとも1つの無機充填剤、
(iii)少なくとも1つの有機過酸化物、ならびに
(iv)フェノール類、パラフェニリデンジアミン、および窒素酸化物から選択される
少なくとも1つの酸化防止剤
を混合することにより得られた補強ゴム組成物、ならびに
(b)硬化パッケージ
を含む混合物を調製するステップと、
前記混合物を成形し、加熱して加硫を引き起こすステップと
を含む、方法。
【請求項3】
前記ゴムが、エチレンプロピレンジエンターポリマーエラストマー(EPDM)、エチ
レン-プロピレンコポリマーエラストマー(EPM)、エチレン-ビニルアセテート(E
VAおよびEVM)、天然ゴム(NR)、ブチルゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)
、ブロモブチルゴム(BIIR)、スチレン-ブタジエンゴム(e-SBRおよびs-S
BRを含む)、ポリスルフィド(T)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)
、および水素化ニトリルゴム(HNBR)から選択される、請求項1または2に記載の方
法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの無機充填剤が、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、粘
土、チョーク、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、およびそれらの組合
せからなる群から選択され、好ましくは、シリカ、カーボンブラック、およびそれらの組
合せから選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの有機過酸化物が、ペルオキシケタールおよびペルオキシエステル
からなる群から選択され、より好ましくはペルオキシケタールであり、最も好ましくは、
1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1-ジ(tert-ブチル
ペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ジ(tert-ブチル
ペルオキシ)ブタン、および1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2-イソプ
ロピル-5-メチルシクロヘキサンからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか
1項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの有機過酸化物および任意の前記少なくとも1つの酸化防止剤が、
5~45重量%の固体無機担体上または10~50重量%のゴム中のいずれかに分散され
る、10~50重量%の有機過酸化物と0~50重量%の酸化防止剤とを含む、固体配合
物の形態で、前記ゴムおよび前記少なくとも1つの無機充填剤に添加される、請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの有機過酸化物および前記少なくとも1つの酸化防止剤が、10~
50重量%の有機過酸化物と5~45重量%の酸化防止剤と0~50重量%の溶媒とを含
む液体配合物の形態で、前記ゴムおよび前記少なくとも1つの無機充填剤に添加される、
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤であり、好ましくはtert
-ブチルヒドロキノン(TBHQ)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ポリ(ジ
シクロペンタジエン-co-p-クレゾール)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-
(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタ
デシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネ
ート、ビス-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)メタン、
4,4’-チオ-ビス(6-tert-ブチル-m-メチルフェノール)、および2,2
’-チオビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)からなる群から選択され
る、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの酸化防止剤が、パラフェニリデンジアミンであり、好ましくはN-1
,3-ジメチルブチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-
N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、およびN,N’-ジフェニル-p-フェニレ
ンジアミンからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの酸化防止剤が、窒素酸化物であり、好ましくは2,2,6,6-テト
ラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカル(TEMPO)、2,2,6,6-テ
トラメチル-4-ヒドロキシ-1-ピペリジニルオキシフリーラジカル(OH-TEMP
O)、4-カルボキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリー
ラジカル(4-カルボキシ-)、2,2,6,6-テトラメチル-4-アミノ-1-ピペ
リジニルオキシフリーラジカル(4-アミノ-TEMPO)、および2,2,6,6-テ
トラメチル-4-オキソピペリジノオキシフリーラジカル(4-オキソ-TEMPO)か
らなる群から選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記硬化パッケージが、元素状硫黄および1以上の硫黄硬化促進剤および/または硫黄
供与体を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
5~45重量%の少なくとも1つの固体無機担体上に分散される、10~50重量%の
少なくとも1つの有機過酸化物と、5~50重量%のフェノール類、パラフェニリデンジ
アミン、および窒素酸化物から選択される少なくとも1つの酸化防止剤とを含む、固体配
合物。
【請求項13】
10~50重量%のゴム中に分散される、10~50重量%の少なくとも1つの有機過
酸化物と、0~50重量%の少なくとも1つの無機担体と、5~50重量%のフェノール
類、パラフェニリデンジアミン、および窒素酸化物から選択される少なくとも1つの酸化
防止剤とを含む、固体配合物。
【請求項14】
10~50重量%の少なくとも1つの有機過酸化物と、フェノール類、パラフェニリデ
ンジアミン、および窒素酸化物から選択される5~50重量%の少なくとも1つの酸化防
止剤と、0~50重量%の溶媒とを含む、液体配合物。
【請求項15】
20~90重量%のカーボンブラック上に分散される、10~80重量%の1,1-ジ
(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1-ジ(tert-ブチルペルオキシ
)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ジ(tert-ブチルペルオキシ
)ブタン、および1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2-イソプロピル-5
-メチルシクロヘキサンからなる群から選択される少なくとも1つの有機過酸化物を含む
、固体配合物。
【請求項16】
前記少なくとも1つの有機過酸化物が、ペルオキシケタールおよびペルオキシエステル
からなる群から選択され、より好ましくはペルオキシケタールであり、最も好ましくは、
1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1-ジ(tert-ブチル
ペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ジ(tert-ブチル
ペルオキシ)ブタン、および1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2-イソプ
ロピル-5-メチルシクロヘキサンからなる群から選択される、請求項12~14のいず
れか1項に記載の配合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物を補強する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムをタイヤに使用するには、補強によってゴムの強度を高める必要がある。このよう
な補強は、充填剤を組み込むことにより行われる。カーボンブラックおよびシリカは、こ
の目的に最も一般的な充填剤である。適切な補強を行うには、充填剤とゴムとの間の相互
作用が強く、充填剤がゴム全体によく分散している必要がある。
【0003】
分散した充填剤は、充填剤-ゴム相互作用だけでなく、充填剤-充填剤相互作用も示す
。十分に分散している場合でも、充填剤粒子は依然として相互に影響を及ぼし相互作用す
る。この充填剤-充填剤相互作用により系の強度が向上するが、転動タイヤなどの動的な
用途においてゴムを使用すると、摩擦(散逸)によるエネルギー損失も発生する。
【0004】
シリカ充填剤の場合、ゴムと充填剤との間の相互作用は、シランのようなカップリング
剤を使用して調整することができる。カーボンブラックの場合、このようなカップリング
剤は一般的ではなく、あまり効率的ではなく、商業的に使用されていない。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明の目的は、カップリング剤を必要とせずに、種々の無機充填剤とゴ
ムとの間の相互作用を向上させる方法を提供することである。同時に、動的応力が加えら
れたときに(例えば、転がり条件下で)、硬化コンパウンドのヒステリシスを低減させる
ことも望ましいだろう。転がり条件下では、散逸したヒステリシスエネルギーが熱として
失われ、これにより転がり抵抗が高くなり、燃費が悪化する。
【0006】
この目的は、ゴムの加硫の前に、ゴムと無機充填剤との混合物を有機過酸化物で処理す
ることによって達成された。
【0007】
理論に拘束されるものではないが、我々は、有機過酸化物ラジカルがゴム-充填剤の界
面近くに架橋を形成することにより、充填剤-ゴム相互作用を変化させるメカニズムがあ
るのではないかと推測している。
【0008】
この処理の間に特定の酸化防止剤が存在する必要があることがさらに観察された。これ
らの化学物質の添加により、過酸化物の活性を制御することができる。これらの酸化防止
剤がなければ、過酸化物はゴムの早期架橋および望ましくないゲルの形成を開始する。さ
らに、酸化防止剤は、過酸化物が処理されたゴムの加工特性に悪影響を与えないことを確
実にする。
【0009】
本発明によれば、ゴムと充填剤との両方を含む混合物が、有機過酸化物を使用すること
により改質される。したがって、本発明は、充填剤単独の予備改質に関するものでも、ゴ
ム単独の予備改質に関するものでもない。その代わりに、充填剤およびゴムは、均質混合
されて1以上の酸化防止剤の存在下にある場合に、過酸化物によって処理される。
【0010】
したがって、本発明は、補強ゴム組成物の調製方法であって、少なくとも120℃の温
度で、少なくとも以下の化合物、
(i)ゴムと、
(ii)少なくとも1つの無機充填剤と、
(iii)少なくとも1つの有機過酸化物と、
(iv)フェノール類、パラフェニリデンジアミン、および窒素酸化物から選択される少
なくとも1つの酸化防止剤と
を混合するステップを含む、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この方法によれば、これらの成分の実際の混合中に、有機過酸化物を含むこれらすべて
の成分に少なくとも120℃の温度を適用する。したがって、この方法は、成形(例えば
、押出または成型)前に過酸化物が分解して架橋/加硫を開始するのを防止するために過
酸化物を著しく低い温度で混合してポリマー-充填剤混合物にする、従来の過酸化物-架
橋/加硫開始プロセスとは異なる。
【0012】
補強ゴム組成物は、ゴムと、少なくとも1つの無機充填剤と、少なくとも1つの有機過
酸化物と、フェノール類、パラフェニリデンジアミン、および窒素酸化物から選択される
少なくとも1つの酸化防止剤とを混合することによって調製する。混合機内の実際の温度
は、初期温度設定、使用する材料の量、ミキサーのロータ速度、冷却能力、および混合時
間に応じて変化し得る。典型的な混合実験では、温度は勾配を示す。混合中の温度は、少
なくとも120℃、好ましくは少なくとも130℃、および最も好ましくは少なくとも1
40℃に上昇させるべきである。温度は、好ましくは190℃、より好ましくは180℃
を超えない。
【0013】
温度は、混合物に添加された有機過酸化物のすべてまたは大部分を分解するのに十分で
なければならない。好ましい実施形態では、添加された有機過酸化物の総量の少なくとも
90%が、このステップ中に分解される。これは、処理されたが未硬化コンパウンドの残
留反応性を、レオメーターで測定することによって決定することができる。
【0014】
混合は、例えば、多段式ロールミル(例えば、加熱された2ロールミル)、スクリュー
ミル、連続ミキサー、コンパウンド押出機、(BUSS)混練機、接線式ミキサー(例え
ば、バンバリーミキサー)、噛合式型ミキサー、または密閉式ミキサーで実施することが
できる。
【0015】
混合には通常、約1~20分かかる。
【0016】
上記の成分に加えて、ゴム組成物は、従来の安定剤(オゾン劣化防止剤、熱安定剤、U
V安定剤、電圧安定剤)、伸展(加工)油、低分子量エラストマー(例えば、液体ブタジ
エンゴム)、粘着付与剤、ワックス、顔料、潤滑剤、発泡剤、核剤、水トリー遅延剤、金
属不活性化剤、シラン、染料、および着色剤、などの追加の化合物を含むことができる。
【0017】
好適な伸展油の例は、軽度抽出溶媒和物(MES)、処理留出芳香族系抽出物(TDA
E)、処理残留芳香族系抽出物(TRAE)、ならびにナフテン系およびパラフィン系油
である。留出芳香族系抽出物(DAE)油などの非常に芳香族分の高い油は、多環芳香族
炭化水素(PAH)が存在するため、欧州連合では発ガン性があると分類され、タイヤで
の使用が禁止されているので、使用しないことが望ましい。
【0018】
シランの例は、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(Si69)、
3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン(NXT)、3-メルカプトプ
ロピル-ジ(トリデカン-1-オキシ-13-ペンタ(メチレンオキシド))エトキシシ
ラン(Si363)、およびトリエトキシビニルシランである。
【0019】
これらの追加の化合物は、有機過酸化物、酸化防止剤、および充填剤と混合する前にゴ
ムに添加することができるが、これらの成分のいずれかの後またはこれらの成分のいずれ
かと一緒に添加してもよい。
【0020】
ゴム、無機充填剤、過酸化物、および酸化防止剤を合わせる順序は、問題ではない。し
かし、課せられた温度の結果として過酸化物が分解する前に、酸化防止剤が存在すること
が好ましい。混合段階において温度を過酸化物の分解温度未満に制御できるならば、添加
の順序は重要でなくなる。
【0021】
一実施形態では、過酸化物および酸化防止剤を添加する前に、ゴムを、充填剤および任
意の追加の化合物と予備配合する。過酸化物を添加する前に、ゴムを、充填剤と酸化防止
剤の両方および任意の追加の化合物と予備配合することも可能である。さらに、酸化防止
剤、任意の追加の化合物(例えば、プロセス油)、および過酸化物を添加する前に、ゴム
を充填剤と予備配合することが可能である。別の可能性は、すべての成分(酸化防止剤、
充填剤、有機過酸化物、および任意の追加の化合物)を、ほぼ同時に、順次にまたは混合
して添加することである。
【0022】
混合中、硫黄、硫黄促進剤、または硫黄供与体は存在しない。これらの材料は、加硫を
行う場合、ゴムおよび充填剤を、有機過酸化物および酸化防止剤で前処理した後の、後段
階で添加することができる。
【0023】
有機過酸化物は、純粋な有機過酸化物として、または分散媒体に溶解または分散した有
機過酸化物を含む配合物の形態で、ゴムおよび無機充填剤に添加することができる。分散
媒体の例は、溶媒、無機担体、およびゴムである。
【0024】
一実施形態では、有機過酸化物、および任意の少なくとも1つの酸化防止剤は、すべて
総配合物の重量に基づいて、5~45重量%、好ましくは10~40重量%の固体無機担
体上に分散される、10~50重量%、好ましくは15~40重量%の有機過酸化物と、
0~50重量%、好ましくは5~45重量%、より好ましくは10~40重量%の酸化防
止剤とを含む、固体配合物の形態で、ゴムおよび無機充填剤に添加される。
【0025】
好適な固体無機担体としては、(沈降または発熱性)シリカ、カーボンブラック、(沈
降または天然)炭酸カルシウム、粘土、チョーク、タルク、水酸化アルミニウム、および
水酸化マグネシウムが挙げられる。固体無機担体は、補強ゴム組成物中に存在する無機充
填剤と同じであっても異なっていてもよい。
【0026】
したがって、本発明はまた、すべて総配合物の重量に基づいて、5~45重量%、好ま
しくは10~40重量%の少なくとも1つの固体無機担体上に分散される、10~50重
量%、好ましくは15~40重量%、好ましくは15~40重量%の有機過酸化物と、5
~50重量%、好ましくは5~45重量%、より好ましくは10~40重量%のフェノー
ル類、パラフェニリデンジアミン、および窒素酸化物から選択される少なくとも1つの酸
化防止剤とを含む、固体配合物にも関する。
【0027】
別の実施形態では、有機過酸化物、および任意の少なくとも1つの酸化防止剤は、すべ
て総配合物の重量に基づいて、10~50重量%のゴム中にすべてが分散される、10~
50重量%、好ましくは15~40重量%の有機過酸化物と、0~50重量%、好ましく
は5~45重量%、より好ましくは10~40重量%の少なくとも1つの酸化防止剤と、
0~50重量%、好ましくは5~45重量%、より好ましくは10~40重量%の固体無
機担体とを含む、マスターバッチの形態で、ゴムに添加される。
【0028】
したがって、本発明はまた、すべて総配合物の重量に基づいて、10~50重量%のゴ
ム中に分散される、10~50重量%、好ましくは15~40重量%の有機過酸化物と、
0~50重量%、好ましくは5~45重量%、より好ましくは10~40重量%の少なく
とも1つの固体無機担体と、5~50重量%、好ましくは5~45重量%、より好ましく
は10~40重量%のフェノール類、パラフェニリデンジアミン、および窒素酸化物から
選択される少なくとも1つの酸化防止剤とを含む、マスターバッチの形態の固体配合物に
も関する。
【0029】
別の実施形態では、有機過酸化物、および任意の少なくとも1つの酸化防止剤は、10
~50重量%、好ましくは15~40重量%の有機過酸化物と、0~50重量%、好まし
くは5~45重量%、より好ましくは10~40重量%の酸化防止剤と、0~50重量%
、好ましくは5~45重量%、より好ましくは10~40重量%の溶媒とを含む配合物の
形態で、ゴムおよび無機充填剤に添加される。
【0030】
好適な溶媒としては、イソドデカン、無臭ミネラルスピリット(OMS)、他の従来の
脂肪族溶媒、および上記の伸展油などのゴムコンパウンドの製造に使用される伸展油が挙
げられる
【0031】
したがって、本発明は、10~50重量%、好ましくは15~40重量%の有機過酸化
物と、5~50重量%、好ましくは5~45重量%、より好ましくは10~40重量%の
フェノール類、パラフェニリデンジアミン、および窒素酸化物から選択される少なくとも
1つの酸化防止剤と、0~50重量%、好ましくは5~45重量%、より好ましくは10
~40重量%の溶媒とを含む液体配合物にも関する。
【0032】
さらなる実施形態では、有機過酸化物は、無機充填剤上に分散した有機過酸化物を含む
配合物の形態で、ゴムに添加される。例えば、有機過酸化物はシリカまたはカーボンブラ
ック上に分散させることができる。
【0033】
本発明はまた、20~90重量%、好ましくは20~80重量%、より好ましくは20
~70重量%、および最も好ましくは50~70重量%のカーボンブラック上に分散され
る、10~80重量%、好ましくは20~80重量%、より好ましくは30~80重量%
、および最も好ましくは30~50重量%の有機過酸化物を含む、固形配合物に関する。
【0034】
この配合物中の有機過酸化物は、好ましくは、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキ
シ)シクロヘキサン、1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチル
シクロヘキサン、2,2-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、および1,1-ビ
ス(tert-ブチルペルオキシ)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンから
なる群から選択される。
【0035】
この配合物は、液体過酸化物または液体化過酸化物を、液体と固体とを混合するのに適
した機器を使用して、充填剤に添加することによって調製することができる。このような
機器の例としては、Ploughshareミキサー(Lodigeミキサー)がある。
【0036】
本明細書における「ゴム」という用語は、天然および合成ゴムならびに、エチレンプロ
ピレンジエンターポリマーエラストマー(EPDM)、エチレン-プロピレンコポリマー
エラストマー(EPM)、およびエチレン-ビニルアセテート(EVAおよびEVM)の
ようなエラストマーを含む。
【0037】
好適なゴムの例は、天然ゴム(NR)、ブチルゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)
、ブロモブチルゴム(BIIR)、スチレン-ブタジエンゴム(e-SBRおよびs-S
BRを含む)、ポリスルフィド(T)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)
、水素化ニトリルゴム(HNBR)、EPM、EPDM、EVA、EVM、およびそれら
のブレンドである。ブレンドの例は、NR/BRおよびSBR/BRブレンドである。
【0038】
好適な無機充填剤は、(沈降または発熱性)シリカ、カーボンブラック、(沈降または
天然)炭酸カルシウム、粘土、チョーク、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシ
ウム、およびそれらの組合せである。好ましい組合せでは、カーボンブラックを任意の他
の充填剤と合わせる。シリカ、カーボンブラック、およびそれらの組合せは、本発明の方
法で使用するのに好ましい無機充填剤である。
【0039】
カーボンブラックの例は、ファーネスブラック(石油ブラックとも呼ばれ、芳香族炭化
水素含有液体の部分燃焼によって調製される)、高耐摩耗性ファーネスブラック、ガスフ
ァーネスブラック、アセチレンブラック(800~1000℃および大気圧での熱分解プ
ロセスによって調製される)、ランプブラック(空気のない状態での種々の液体または原
料の燃焼によって生成される)、フレームブラック(スモークブラックとも呼ばれる)、
チャネルブラック(小炎燃焼によって得られる)、サーマルブラック(空気または炎がな
い状態で天然ガスまたは液体炭化水素の分解によって生成される)、および導電性カーボ
ンブラックである。
【0040】
好適なシリカの例は、(非晶質)沈降シリカ(例えば、Ultrasil(登録商標)
VN3 GR)、高分散沈降シリカ(例えば、Ultrasil(登録商標)7000
GR)、およびサーマル/ヒュームドシリカ(Aerosil(登録商標)グレード)で
ある。
【0041】
補強ゴム組成物中の無機充填剤の含有量は、充填剤の種類、補強ゴム組成物の特定の用
途、組成物中に存在するその他の成分(油、可塑剤、ワックスの量など)によって、広範
囲にわたって変わり得る。カーボンブラックの場合、概算では50~300phrになる
。シリカの場合、概算では50~110phrになる。
【0042】
好ましい有機過酸化物は、ペルオキシエステルおよびペルオキシケタールである。最も
好ましいのはペルオキシケタールである。これらの過酸化物は、カーボンブラックによる
破壊に(あまり)敏感ではなく、十分な量のラジカルを与える。
【0043】
好適なペルオキシエステルの例は、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノ
エート(tert-butyl peroxy-2-ethylhexanoate)およびtert-ブチルペルオキシ-3
,5,5-トリメチルヘキサノエート(tert-butyl-peroxy-3,5,5-trimethylhexanoate)
である。
【0044】
好適なペルオキシケタールの例は、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロ
ヘキサン、1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキ
サン、2,2-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、および1,1-ビス(ter
t-ブチルペルオキシ)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンである。
【0045】
補強ゴム組成物は、0.05~2phr(=ゴム100重量部当たりの重量部)、より
好ましくは0.1~1.5phr、最も好ましくは0.15~1phrの有機過酸化物を
含む。
【0046】
酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、パラフェニリデンジアミン、および窒素酸化
物からなる群から選択される。選択された酸化防止剤は、モノアミンおよびホスファイト
のような他のよく知られた酸化防止剤とは対照的に、有機過酸化物の活性を制御すること
ができ、このことは、選択された酸化防止剤が、過酸化物の添加による副作用、すなわち
、ゲル化、早期架橋、ゴム粘度の増加、および結果としてゴム加工の複雑化、の発生を防
止できることが証明されていることを意味する。フェノール系酸化防止剤、パラフェニリ
デンジアミン、および窒素酸化物からなる群から酸化防止剤を選択すると、ゴムの加工に
適したゴム粘度レベルが得られる。
【0047】
好適なフェノール系酸化防止剤の例は、ASTM D4676のクラス3のものであり
、tert-ブチルヒドロキノン(TBHQ;CAS:1948-33-0)、ブチル化
ヒドロキシトルエン(BHT)、ポリ(ジシクロペンタジエン-co-p-クレゾール)
(Vulkanox SKF;CAS:068610-51-5)、ペンタエリスリトー
ルテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピ
オネート)(Irganox 1010;CAS 6683-19-8)、オクタデシル
-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート(
Irganox 1076;CAS 2082-79-3)、ビス-(2-ヒドロキシ-
3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)メタン(bis-(2-hydroxy-3-tert-butyl-5-
methylphenyl)methane)(Vulkanox BKF、CAS:000119-47-1
)、4,4’-チオ-ビス(6-tert-ブチル-m-メチルフェノール)(Sant
onox R、Santonox TBMC、Lowinox TBM-6;CAS 9
6-69-5)、および2,2’-チオビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノ
ール)(Lowinox TBP-6;CAS:90-66-4)が挙げられる。
【0048】
好適なパラフェニリデンジアミンの例は、ASTM D4676のクラス1のものであ
り、N-1,3-ジメチルブチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(Sant
oflex 6PPD;CAS:793-24-8)、N-イソプロピル-N’-フェニ
ル-p-フェニレンジアミン(IPPD、Vulkanox 4010;CAS 000
101-72-4)、およびN,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(Vulk
anox DPPD;CAS 74-31-7)が挙げられる。
【0049】
好適な窒素酸化物の例は、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフ
リーラジカル(TEMPO;CAS:2564-83-2)、2,2,6,6-テトラメ
チル-4-ヒドロキシ-1-ピペリジニルオキシフリーラジカル(OH-TEMPOまた
はTEMPOL;CAS:2226-96-2)、4-カルボキシ-2,2,6,6-テ
トラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカル(4-カルボキシ-TEMPOまた
はTEMPACID;CAS:37149-18-1)、2,2,6,6-テトラメチル
-4-アミノ-1-ピペリジニルオキシフリーラジカル(4-アミノ-TEMPOまたは
TEMPAMINE;CAS:14691-88-4)、および2,2,6,6-テトラ
メチル-4-オキソピペリジノオキシフリーラジカル(4-oxo-TEMPOまたはT
EMPONE;CAS:2896-70-0)である。
【0050】
また、これらの酸化防止剤の2つ以上の組合せ、例えば、パラフェニリデンジアミンと
フェノール系酸化防止剤または窒素酸化物、例えば、6PPDおよびOH-TEMPOと
のこのような組合せ、を使用することができる。後者の組合せにより、充填剤-ゴム相互
作用がさらに向上し、充填剤-充填剤相互作用がさらに低下する。
【0051】
上記の酸化防止剤のうちの1種を、異なるタイプの酸化防止剤、例えばトリメチルジヒ
ドロキノリン(TMQ)と組み合わせて使用することも可能である。
【0052】
補強ゴム組成物は、好ましくは、0.01~4phr、より好ましくは0.05~2p
hr、および最も好ましくは0.1~1phrの、フェノール類、パラフェニリデンジア
ミン、および窒素酸化物から選択される1以上の酸化防止剤を含む。これらの示された酸
化防止剤に加えて、かなりの量の他の酸化防止剤を添加することができる。
【0053】
得られたゴム組成物を硬化パッケージと混合し、成形し、加熱して、加硫を引き起こす
ことができる。
【0054】
したがって、本発明はさらに、補強ゴム組成物を加硫する方法であって、
(a)上記の補強ゴム組成物、および
(b)硬化パッケージ
を含む混合物を調製するステップと、
前記混合物を成形し、加熱して加硫を引き起こすステップと
を含む、方法に関する。
【0055】
硬化パッケージは、一般的に元素状硫黄、硫黄硬化促進剤および/または硫黄供与体、
硬化活性剤、例えばZnOおよびステアリン酸、ならびに任意選択で助剤の組合せである
硫黄硬化パッケージであり得る。
【0056】
「元素状硫黄」という用語は、式Sn(式中、nは少なくとも1である)を有する化合
物を指し、したがって、その原子、オリゴマー、環状および/またはポリマー状態の硫黄
を含む。硫黄は、好ましくは0.1~2.5phr、より好ましくは0.5~2.5ph
r、最も好ましくは0.8~2phrの量で、補強ゴム組成物に添加する。
【0057】
好適な硫黄硬化促進剤および硫黄供与体の例は、ベンゾチアゾール、ベンゾチアゾール
スルフェンアミド、ジチオカルバミン酸塩、およびチウラムである。
【0058】
ベンゾチアゾールの例は、2-メルカプトベンゾチアゾールおよび2,2’-ジチオビ
スベンゾチアゾールである。
【0059】
ベンゾチアゾールスルフェンアミドの例は、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾールス
ルフェンアミド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2-モ
ルホリノチオベンゾチアゾール、およびN-ジシクロヘキシルベンゾチアゾール-2-ス
ルフェンアミドである。N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドは
、使用時に危険なニトロソアミンを放出しないため、好ましい硫黄硬化促進剤である。
【0060】
チウラムの例は、チウラムポリスルフィドおよびチウラムモノスルフィドである。チウ
ラムポリスルフィドとしては、チウラムジスルフィド、チウラムトリスルフィド、チウラ
ムテトラスルフィド、およびチウラムヘキサスルフィドが挙げられ、チウラムジスルフィ
ドが好ましいチウラムである。
【0061】
チウラムジスルフィドの例は、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウ
ラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、イソブチルチウラムジスルフィ
ド、ジベンジルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、およびテ
トライソブチルチウラムジスルフィドである。テトラベンジルチウラムジスルフィド(T
BzTD)は、使用時に危険なニトロソアミンを放出しないため、好ましい硫黄硬化促進
剤である。
【0062】
チウラムテトラスルフィドおよびチウラムヘキサスルフィドの例は、それぞれジペンタ
メチレンチウラムテトラスルフィドおよびジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィドで
ある。
【0063】
ジチオカルバミン酸塩の例は、ジメチルジチオカルバミン酸ビスマス、ジエチルジチオ
カルバミン酸カドミウム、ジアミルジチオカルバミン酸カドミウム、ジメチルジチオカル
バミン酸銅、ジアミルジチオカルバミン酸鉛、ジメチルジチオカルバミン酸鉛、ジエチル
ジチオカルバミン酸セレン、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバ
ミン酸テルル、ピペリジニウムペンタメチレンジチオカルバメート、ジアミルジチオカル
バミン酸亜鉛、ジイソブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛
、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカ
ルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジブチルジチオカルバ
ミン酸ナトリウム、ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、およびジベンジルジチオカ
ルバミン酸亜鉛である。
【0064】
チウラムモノスルフィドの例は、テトラメチルチウラムモノスルフィド、イソブチルチ
ウラムモノスルフィド、ジベンジルチウラムモノスルフィド、テトラベンジルチウラムモ
ノスルフィド、およびテトライソブチルチウラムモノスルフィドである。
【0065】
助剤の例は、1,3-ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン(Perkalink
(登録商標)900)、ヘキサメチレン-1,6-ビス(チオ硫酸ナトリウム)二水和物
、(Duralink(登録商標)HTS)、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリ
アリルイソシアヌレート(TAIC)、およびトリメチロールプロパントリメタクリレー
ト(TRIM)である。
【0066】
あるいは、硬化パッケージは、有機過酸化物硬化パッケージである。この目的に好まし
い有機過酸化物は、過酸化ジクミル、環状三量体メチルエチルケトンペルオキシド、2,
5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、およびジ(t-ブ
チルペルオキシイソプロピル)ベンゼンである。過酸化物とは別に、助剤、例えば、ポリ
マレイミド(ビスマレイミドおよびトリスマレイミドを含む)、ポリシトラコンイミド(
ビスシトラコンイミドおよびトリスシトラコンイミドを含む)、1,3-ビス(シトラコ
ンイミドメチル)ベンゼン(Perkalink(登録商標)900)、ヘキサメチレン
-1,6-ビス(チオ硫酸ナトリウム)二水和物、(Duralink(登録商標)HT
S)、シアヌル酸トリアリル(TAC)、イソシアヌル酸トリアリル(TAIC)、およ
びトリメチロールプロパントリメタクリレート(TRIM)、を添加することもできる。
【0067】
補強ステップで添加された過酸化物のすべて、または少なくとも大部分が前記ステップ
中に分解したため、加硫ステップ中にその過酸化物の干渉はない。補強ゴムが補強ステッ
プ後に有機過酸化物残留物を含んでいる場合、これらの残留物は、加硫ステップ中に熱的
に、または硫黄および硫黄促進剤/供与体との相互作用のいずれかによって分解される。
【0068】
硬化パッケージを、好ましくは1~20phr、好ましくは1~10phrの量で添加
する。
【0069】
硬化パッケージを、好ましくは、例えば2ロールミル、カレンダー、または(密閉式)
ミキサーを使用して、低温(20~100℃)でゴム組成物に添加する。得られた混合物
を型に入れ、120~220℃、好ましくは130~200℃、最も好ましくは140~
190℃の範囲の温度で加熱する。
【実施例0070】
[実施例1]
天然ゴムを、トレッドゴム組成物の従来の成分であるカーボンブラック、プロセス油、
オゾン劣化防止剤、および安定剤と予備配合した。詳細を表1に示す。
【0071】
【0072】
予備配合したゴムを、120℃の密閉式ミキサーに添加した。異なる量の以下の過酸化
物を添加し、得られた混合物を、まず30rpmのミキサー速度で2分間混合し、その後
ミキサー速度を100rpmに上げた。混合中、温度は>150℃に上昇した。100r
pmで2分間混合した後、混合物を集積し、室温に冷却した。
【0073】
使用した過酸化物:
1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン-Trigonox(登録商
標)22-C50
1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン-
Trigonox(登録商標)29-E90
tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート-Trigonox(登録商標
)21S
tert-ブチル-ペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート-Trigon
ox(登録商標)42S
2,2-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ブタン-Trigonox(登録商標)D
1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘ
キサン
【0074】
得られた組成物の粘度に対する過酸化物処理の効果を決定するために、ムーニー粘度(
100℃で)をISO 289-85に従って測定し、ムーニー単位(MU)で報告した
。
【0075】
結果を表2に示す。使用した過酸化物の量は、純粋な過酸化物として計算したphrで
示す。結果は、過酸化物の量の増加が粘度の有意な増加をもたらさないことを示す。すな
わち、ゴムコンパウンドは適切な加工特性を保持している。
【0076】
【0077】
補強ゴムコンパウンドを2ロールミルに添加し、以下の硬化パックを添加した。
【0078】
【0079】
硬化反応速度を決定するために、ISO 6502-1991(ローターレスキュアメ
ーターを使用した加硫特性の測定)に従って、160℃でレオメーターデータを記録した
。表4に報告されているのは、t90、すなわち、最大トルクレベルが90%になるまで
の時間である。
【0080】
【0081】
硬化パックを含むが硬化前のゴムコンパウンドのペイン効果は、The science and tech
nology of rubber, 3rd edition, J.E. Mark, 2005, page 388に記載されているように決
定した。この試験では、動的粘弾性測定を使用して、充填された系のペイン効果を測定す
る。この実験によれば、ゴム試料は、100℃および0.7Hzで周期的なせん断ひずみ
を受けた。ひずみは0.3%から100%まで変化する。測定は、ゴム分析装置、Got
tfert製の「Visco Elastograph」で実施した。この試験では、試
料の弾性率と受けるひずみとの間の関係を測定し、これにより、ゴムと充填剤との間の相
互作用を評価する。G’0.7%~90%として報告されたペイン効果の低下は、充填剤
-充填剤相互作用の良好な尺度である。充填剤-充填剤相互作用は、充填剤-ゴム相互作
用の良好な指標である。充填剤-充填剤相互作用が高いことは、充填剤-ゴム相互作用が
低いことを示し、その逆もまた同様である。
【0082】
表5の結果は、過酸化物の量が増えると、充填剤-充填剤相互作用が低下する(ペイン
効果が低下する)ことを示す。
【0083】
【0084】
硬化パックを含む補強ゴムコンパウンドを型に添加し、160℃で2倍の時間で硬化さ
せ、最終的な硬化レベル(2*t90)の90%まで硬化させた。
【0085】
ゴム補強の程度は、ISO 37:1995に従う引張試験を使用して決定し、300
%ひずみと100%ひずみでの引張弾性率の差、すなわちM300-M100を測定して
決定した。高いM300-M100値は、ゴム補強が高いことの良好な指標である。
【0086】
表6の結果は、過酸化物の量が増えるとゴム補強が向上することを示す。
【0087】
【0088】
充填剤-ゴム相互作用を表す相互作用パラメータは、比(M300-M100)/(ペ
イン効果)を使用して決定した。
【0089】
表7の結果は、過酸化物の添加により相互作用パラメータが増加し、充填剤-ゴムの相
互作用が向上することを示す。
【0090】
【0091】
タイヤの転がり抵抗の指標としての硬化ゴムコンパウンドのヒステリシス損失は、An
ton-Paar粘度計で振動(1%ひずみ、1Hz)を使用して、硬化ゴムの細片(1
3mmx38mm、厚さ2mm)において、60℃でのタンジェントデルタ値(tanδ
=動的貯蔵弾性率に対する動的損失弾性率の比G”/G’)を測定することによって決定
した。
【0092】
tanδは、振動下で硬化ゴムに応力をかけたときのエネルギー損失を表し、タイヤの
転がり抵抗の指標である。tanδ値が低いということは、転がり条件下でのエネルギー
損失が極小であることを示唆する。理想的には、tanδはできるだけ低い。
【0093】
表8は、過酸化物の添加がtanδの低下をもたらすことを示す。
【0094】
【0095】
[実施例2]
実施例1の手順に従って、表9のゴム組成物を調製した。
【0096】
【0097】
表9は、酸化防止剤および過酸化物を含まないゴムコンパウンドを熱処理すると、ゴム
が分解し、ムーニー粘度が低下することを示す(実験1と2とを比較されたい)。粘度の
低下が小さいことによって示されるように、酸化防止剤の添加(実験3)は分解を防ぐ効
果がある。
【0098】
酸化防止剤の非存在下で過酸化物を添加すると(実験4)、粘度が大幅に増加する。こ
れは、望ましくない架橋が発生したことを示す。得られたコンパウンドは、加工が困難で
あった。過酸化物と酸化防止剤の両方を添加すると(実験5および6)、そのような架橋
は生じなかった。
【0099】
[実施例3]
表10に示すように、異なる酸化防止剤を使用して実施例2を繰り返した。
【0100】
【0101】
表10は、アミン酸化防止剤(NaugardQおよびWingstay29)および
ホスファイト酸化防止剤(Irgafos168)が無効であることを示す。それらの存
在にもかかわらず、粘度が増加しており、このことは架橋が発生していることを意味する
。
【0102】
[実施例4]
表11に示すように、酸化防止剤の組合せを使用して、実施例3を繰り返した。
【0103】
この酸化防止剤の組合せは、トレッドゴムコンパウンドを安定させるための従来のパッ
ケージである。2phrのSantoflex 6PPDは、過酸化物の望ましくない粘
度増加効果からゴムコンパウンドを保護するのに十分であった。
【0104】
【0105】
項目18は、レベル0.44phrの過酸化物が粘度に悪影響を与えないことを示す。
表10、項目14(実施例3を参照)は、高レベルのOH-TEMPOによって、ゴムの
解膠(制御された鎖分解)がもたらされることを示す。OH-TEMPO(項目19およ
び20)のレベルを低下させることにより、ペイン効果をさらに低下させ、相互作用パラ
メータを向上させることができる。
【0106】
0.2phrのOH-TEMPO(項目20)と比較した0.1phrのOH-TEM
PO(項目19)の最適な結果は、OH-TEMPOの量を増加させることによる過酸化
物のラジカル捕捉によって説明することができる。
【0107】
[実施例5]
エマルションスチレン-ブタジエンゴム(e-SBR)を、120℃で3分間、成分を
密閉式ミキサーで混合することにより、シリカおよび伸展油と予備配合した。詳細を表1
2に示す。
【0108】
【0109】
異なる量の過酸化物および酸化防止剤を添加し、得られた混合物をまず30rpmの速
度で混合し、2分後、ミキサー速度を50rpmに上げ、その後温度が>150℃に上昇
した。8~9分間混合した後、混合物を集積し、室温に冷却した。
【0110】
ゴムコンパウンドを2ロールミル(40℃)に添加し、以下の硬化パックを添加した。
【0111】
【0112】
この硬化剤混合の後、得られたコンパウンドを高温の型に添加し、160℃で25分間
硬化させて、2mm厚の硬化シートにした。硬化後、引張試験(ISO 37:1995
に従う)および硬さ(IRHD、ISO 48:2010)を使用して機械的特性を評価
した。
【0113】
表14は、補強およびゴム-充填剤相互作用に対し酸化防止剤のレベルが大幅に影響す
ることを示す。
【0114】
e-SBRを使用したこれらの実験は、フェノール類、パラフェニリデンジアミン、お
よび窒素酸化物から選択される酸化防止剤がなければ、これらがないと全く処理不能な屑
片がもたらされるため、実施できなかったことに注意すべきである。
【0115】
5~45重量%の少なくとも1つの固体無機担体上に分散される、10~50重量%の少なくとも1つの有機過酸化物と、5~50重量%のフェノール類、パラフェニリデンジアミン、および窒素酸化物から選択される少なくとも1つの酸化防止剤とを含む、固体配合物。
10~50重量%のゴム中に分散される、10~50重量%の少なくとも1つの有機過酸化物と、0~50重量%の少なくとも1つの無機担体と、5~50重量%のフェノール類、パラフェニリデンジアミン、および窒素酸化物から選択される少なくとも1つの酸化防止剤とを含む、固体配合物。
10~50重量%の少なくとも1つの有機過酸化物と、フェノール類、パラフェニリデンジアミン、および窒素酸化物から選択される5~50重量%の少なくとも1つの酸化防止剤と、0~50重量%の溶媒とを含む、液体配合物。
20~90重量%のカーボンブラック上に分散される、10~80重量%の1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、および1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンからなる群から選択される少なくとも1つの有機過酸化物を含む、固体配合物。