(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020240
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】均一な画像を表示するコンパクトな頭部装着型表示システム
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20240206BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20240206BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20240206BHJP
G02C 11/00 20060101ALN20240206BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B27/01
H04N5/64 511A
G02C11/00
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023183460
(22)【出願日】2023-10-25
(62)【分割の表示】P 2021109204の分割
【原出願日】2016-02-10
(31)【優先権主張番号】237337
(32)【優先日】2015-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(71)【出願人】
【識別番号】518010049
【氏名又は名称】ルムス エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】Lumus Ltd.
【住所又は居所原語表記】8 Pinchas Sapir Street, 7403631 Ness Ziona, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アミタイ,ヤーコヴ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】光学デバイスが開示される。
【解決手段】該光学装デバイスは、入射開口、出射開口、及び少なくとも二つの主要表面及び縁部を有する光伝送基板と、内部全反射によって光波を光伝送基板に入力結合する光学素子と、光伝送基板の二つの主要表面の間に設けられ、光伝送基板からの光波を部分反射する少なくとも一つの部分反射面と、少なくとも二つの主要表面を有する第1の透明板であって、透明板の主要表面のうち一つが、平坦な界面を規定する光伝送基板の主要表面に光学的結合で取り付けられた第1の透明板と、光伝送基板と透明板との間の平坦な界面に層設されているビームスプリッタコーティングと、を備え、光伝送基板に入力結合された光波が、平坦な界面で部分反射され、またこれを部分的に透過する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射開口、出射開口、及び少なくとも二つの主要表面及び縁部を有する光伝送基板と、 内部全反射によって光波を前記光伝送基板に入力結合する光学素子と、
前記光伝送基板の二つの主要表面の間に設けられ、前記光伝送基板からの光波を部分反射する少なくとも一つの部分反射面と、
少なくとも二つの主要表面を有する第1の透明板であって、前記透明板の前記主要表面のうち一つが、平坦な界面を規定する前記光伝送基板の主要表面に光学的結合で取り付けられた第1の透明板と、
前記光伝送基板と前記透明板との間の前記平坦な界面に層設されているビームスプリッタコーティングと、を備え、
前記光伝送基板に入力結合された光波が、前記平坦な界面で部分反射され、またこれを部分的に透過する光学デバイス。
【請求項2】
前記部分反射面によって前記光伝送基板から出力結合された光波が、有意な反射なしに前記平坦な界面をほぼ透過する請求項1記載の光学デバイス。
【請求項3】
前記光伝送基板の前記二つの主要表面は、前記第1の透明板の前記二つの主要表面と平行である請求項1記載の光学デバイス。
【請求項4】
前記ビームスプリッタコーティングは、大きな入射角の場合には大きな反射率を有し、小さな入射角の場合には小さな反射率を有する請求項1記載の光学デバイス。
【請求項5】
前記ビームスプリッタコーティングは、0°と15°との間の入射角の場合には低い反射率を有し、40°を越える入射角の場合には大きな反射率を有する請求項4記載の光学デバイス。
【請求項6】
前記ビームスプリッタコーティングは、40°を越える入射角の場合には35%を越える反射率を有し、15°未満の入射角の場合には10%未満の反射率を有する請求項4記載の光学デバイス。
【請求項7】
前記ビームスプリッタコーティングは前記光伝送基板の一つの主要表面に設けられている請求項1記載の光学デバイス。
【請求項8】
前記ビームスプリッタコーティングは低温でのコーティング処理を利用して形成されている請求項7記載の光学デバイス。
【請求項9】
前記ビームスプリッタコーティングは前記第1の透明板の前記主要表面の一つに設けられている請求項1記載の光学デバイス。
【請求項10】
前記ビームスプリッタコーティングの前記反射率は、40°より大きくかつ60°より小さな入射角の場合にはほぼ一定である請求項4記載の光学デバイス。
【請求項11】
前記ビームスプリッタコーティングの前記反射率は、40°を越える入射角の場合は一定でない請求項4記載の光学デバイス。
【請求項12】
前記ビームスプリッタコーティングの前記反射率は、40°を越える入射角の場合は前記入射角の関数として増加する請求項11記載の光学デバイス。
【請求項13】
大きな入射角の場合の前記ビームスプリッタコーティングの前記反射率は、明所視の領域全体で均一である請求項4記載の光学デバイス。
【請求項14】
前記透明板は前記光伝送基板より薄い請求項1記載の光学デバイス。
【請求項15】
さらに、第2の平坦な界面を形成するように、前記光伝送基板のもう一方の主要表面に光学的結合で取り付けられている第2の透明板を備えている請求項1記載の光学デバイス。
【請求項16】
ビームスプリッタコーティングが前記第2の透明板に設けられている請求項15記載の光学デバイス。
【請求項17】
前記ビームスプリッタコーティングは、大きな入射角の場合には大きな反射率を有し、小さな入射角の場合には小さな反射率を有する請求項16記載の光学デバイス。
【請求項18】
前記光伝送基板及び前記透明板は、同じ光学材料から形成されている請求項1記載の光学デバイス。
【請求項19】
前記光伝送基板及び前記透明板は、二つの異なる光学材料から形成されている請求項1記載の光学デバイス。
【請求項20】
前記透明板はポリマー系材料から形成されている請求項1記載の光学デバイス。
【請求項21】
光波を前記光伝送基板に入力結合する前記光学素子は、回折素子である請求項1記載の光学デバイス。
【請求項22】
前記光伝送基板の前記二つの主要表面の間に設けられている前記少なくとも一つの部分反射面は、回折素子である請求項1記載の光学デバイス。
【請求項23】
前記光伝送基板の前記二つの主要表面の間に設けられている前記少なくとも一つの部分反射面は、前記光伝送基板の前記主要表面に対して傾斜角をもった向きになっている請求項1記載の光学デバイス。
【請求項24】
前記少なくとも一つの部分反射面は誘電体のコーティングが層設されている請求項23記載の光学デバイス。
【請求項25】
前記光伝送基板の前記二つの主要表面の間に設けられている複数の部分反射面を備え、前記複数の部分反射面は互いに平行である請求項1記載の光学デバイス。
【請求項26】
前記光伝送基板に入力結合された光波の明るさの分布は、前記光伝送基板の前記入射開口の範囲よりも前記出射開口の範囲で一層均一である請求項1記載の光学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板伝送型の光学デバイスに関し、特に、共通な光伝送基板に設けられた複数の反射面を備えているデバイス、またライトガイド素子(LOE:light-guide optical element)とも呼ばれるデバイスに関する。
【0002】
本発明は、頭部装着型ディスプレイ(head-mounted display)、ヘッドアップディスプレイ、携帯電話、コンパクトディスプレイ、3-Dディスプレイ、コンパクトビームエキスパンダーなど、多数の画像技術の応用、それにまた例えばフラットパネル表示装置、コンパクト照明装置やスキャナーなど、非画像用の装置に関して有利な効果をもって実現可能なものである。
【背景技術】
【0003】
コンパクトな光学素子の重要な応用として、頭部装着型ディスプレイがある。その光学モジュールは結像レンズ及び合成装置の両方に機能し、二次元の表示画像(display)が無限遠において結像され、これが反射されて観察者の目にはいる。表示画像は、直接的又は間接的に得ることができる。直接的なものとしては、空間光変調器(SLM)、例えば陰極線管(CRT)、液晶表示装置(LCD)、有機発光ダイオードアレイ(OLED)、走査源、あるいは類似の装置があり、間接的なものとしては、リレーレンズや光学ファイバーバンドルから得られる。表示画像は素子(画素)のアレイを備え、素子(画素)のアレイは、コリメートレンズで無限遠に結像され、非透過型(non-see-through)や、透過型(see-through)の合成装置としてそれぞれ作用する反射面、又は部分反射面によって、観察者の目に向けて伝送される。一般には、従来の自由空間光学モジュールがこの目的に用いられている。しかし、このシステムの所望の視野(FOV)がより広くなるにつれ、従来の光学モジュールは次第に大きく、重く、かさばるものとなり、中程度の性能のタイプであっても実際的でないものとなっている。これは全ての種類のディスプレイ、特に頭部装着型のものに関して大きな欠点である。必然的にこのシステムは、可能な限り軽量でコンパクトであることが望まれている。
【発明の概要】
【0004】
コンパクトさを追求することにより、いろいろな光学的な解決策が得られるが、複雑なものとなってしまう。実際の例に関してはどれも十分にコンパクトにはなっていない。他方では、製造適性の観点で大きな欠点が残って不都合を生じる。さらに、これらの工夫に基づいて得られる光学的な視野角の目の可動範囲(eye-motion-box)(EMB)は、かなり小さく、例えば8mm未満となってしまう。従って、光学系の性能は、観察者の目に対する光学系のわずかな動きに対してさえ、非常に微妙であり、このようなディスプレイで文章を快適に読み取るのに十分な瞳孔の動きを許容するには至っていない。
【0005】
全て本出願人に係る公開公報、即ちWO01/95027,WO03/081320,WO2005/024485,WO2005/024491,WO2005/024969,WO2005/124427,WO2006/013565,WO2006/085309,WO2006/085310,WO2006/087709,WO2007/054928,WO2007/093983,WO2008/023367,WO2008/129539,WO2008/149339,WO2013/175465,イスラエル特許出願232197号、イスラエル特許出願235642号、イスラエル特許出願236490、及びイスラエル特許出願236491に含まれている開示内容は、本件において参照として援用する。
【0006】
本発明は、応用例の中では、頭部装着型ディスプレイのための非常にコンパクトなライトガイド光学素子(LOE)の利用を容易にするものである。本発明は、相対的に大きなEMB値をもって広い視野(FOV)を与える。ここで得られる光学系は、大画面の高画質の画像を供し、また目の大きな動きに適合したものとなる。本発明に係る光学系は、現行の技術水準での(state-of-the-art)実施よりも大幅にコンパクトなものとなり、また、特殊な構造の光学系にも容易に一体化できるため、特に優れた利点を有するものである。
【0007】
本発明のさらに大きな用途は、携帯電話のようなモバイルの手持ち型デバイスのための広いFOVを有するコンパクトディスプレイを提供することである。今日の無線でのインターネットアクセスの市場においては、ビデオ伝送を十分にするために大きな帯域が利用可能となっている。限界のある要素といえば、エンドユーザーの持つ機器のディスプレイの品質である。モバイルのための要請によってディスプレイの物理的な大きさが限定され、直接表示される閲覧画像の品質が低いという結果になる。本発明は、非常に大きな仮想的な画像をもって、物理的に非常にコンパクトなディスプレイの実現を可能にする。これはモバイル通信、特にモバイルでのインターネットアクセスにおいて鍵となる特徴であり、実際的な構成の主要な限界の一つに対して解決を与える。従って、本発明は、携帯電話のような、小さな手持ち型デバイスにおいてフルフォーマットのインターネットページのデジタルコンテンツを閲覧することを可能にする。
【0008】
本発明の大きな目的は、従って、従来技術に係るコンパクト光学表示装置の欠点を克服し、また、具体的な要請に基づいて、性能を改良したその他の光学構成要素や光学系を提供することである。
【0009】
本発明によれば、入射開口、出射開口、及び少なくとも二つの主要表面及び縁部を有する光伝送基板と、内部全反射によって光波を光伝送基板に入力結合する光学素子と、光伝送基板の二つの主要表面の間に設けられ、光伝送基板からの光波を部分反射する少なくとも一つの部分反射面と、少なくとも二つの主要表面を有する第1の透明板であって、透明板の主要表面のうち一つが、平坦な界面を規定する光伝送基板の主要表面に光学的結合で取り付けられた第1の透明板と、光伝送基板と透明板との間の平坦な界面に層設されているビームスプリッタコーティングと、を備え、光伝送基板に入力結合された光波が、平坦な界面で部分反射され、またこれを部分的に透過する光学デバイスを提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明を一層よく理解できるように、下記の図面を参照しつつ好ましい実施形態に関して記載する。
【0011】
特に図面の内容に即して、図示した具体的な内容は単なる一例なのであって、ただ本発明の好ましい実施形態の例示として述べることを目的とすることが強調される。発明の原理や概念の説明として最も有益で直ちに理解し得ると思われる形で提示するものである。この観点で、発明の原理的な理解に必要となる以上の詳細に関して、発明を構造的に示そうとはしていない。図面を参照して行われる説明は、当業者に対して、発明のさまざまな例がどのように実施できるかということに関して示唆となるであろう。
【0012】
図面において、
【
図1】従来技術のライトガイド光学素子の例を示す側面図である。
【
図2A】部分反射面のアレイの例を示す詳細断面図である。
【
図2B】部分反射面のアレイの例を示す詳細断面図である。
【
図3】本発明に係る2本の異なる入射光線とともに反射面を示す概略断面図である。
【
図4】基板縁部に透明板が取り付けられた部分反射面のアレイの例を示す断面図で ある。
【
図5】反射面の実際の有効開口を表した、本発明に基づく反射面を示す概略断面図 である。
【
図6】LOEの例に対して視野角の関数として反射面の有効開口サイズを示す図で ある。
【
図7】3個の異なる視野角に対して部分反射面のアレイの例からの反射の詳細断面 図である。
【
図8】LOEの例に対して視野角の関数として二つの隣り合う反射面の間の所要距 離を示す図である。
【
図9】本発明に基づいて、2本の異なる入射光線とともに反射面を示す他の概略断 面図である。
【
図10】基板縁部に取り付けられたくさび形状の透明板を有する、部分反射面のア レイの例を示す概略図である。
【
図11】2本の光線が二つの部分反射面で反射される本発明に基づいて、2本の異 なる入射光線とともに反射面を示す他の概略断面図である。
【
図12】2本の光線が、離れて位置するLOEに入力結合し、隣り合うLOEから 出力結合する本発明に基づいて、2本の異なる入射光線とともに反射面を示すさらに 他の概略断面図である。
【
図13A】ライトガイド光学素子内に埋め込まれたビームスプリッタ面を示す概略 断面図である。
【
図13B】ライトガイド光学素子内に埋め込まれたビームスプリッタ面を示す概略 断面図である。
【
図14】s偏光波のための角度依存コーティングの例に関して、入射角を関数とす るビームスプリッタ面の反射率のカーブを示すグラフである。
【
図15】s偏光波のための角度依存コーティングの例に関して、入射角を関数とす るビームスプリッタ面の反射率のカーブを示すさらに他のグラフである。
【
図16】ライトガイド光学素子に埋め込まれた二つの異なるビームスプリッタ面の 概略断面図である。
【
図17】部分反射面が透明な取り付け板内に形成されているライトガイド光学素子 内に埋め込まれたビームスプリッタ面を示す他の概略断面図である。
【
図18A】入力結合及び出力結合の素子が回折光学素子となっているライトガイド 光学素子内に埋め込まれたビームスプリッタ面の実施形態を示すさらに他の概略断面 図である。
【
図18B】入力結合及び出力結合の素子が回折光学素子となっているライトガイド 光学素子内に埋め込まれたビームスプリッタ面の実施形態を示すさらに他の概略断面 図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明に係るライトガイド光学素子(LOE)の断面図である。第1反射面16は、光学素子の背後に配置された光源(図示せず)から発生された平行光の表示光18によって照明される。反射面16は、入射光が平面基板20内で内部全反射によって捕捉されるように、表示光源からの入射光を反射する。基板の表面26,27での数回の反射の後に、捕捉された光波は部分反射面22のアレイに到達する。これは光を基板から出力結合して、瞳孔25を備えた観察者の目24の方向に向ける。LOEの入力面は入力光波がLOEに入射する面として定義され、LOEの出力面は捕捉された光波がLOEから出射する面として定義される。また、LOEの入射開口とは、LOEにはいる際に入力光波が実際に通過する入力面の部分を意味し、LOEの出射開口とは、LOEにはいる際に出力光波が実際に通過する出力面の部分を意味する。
図1に示したLOEの場合には、入力面及び出力面の両方が下の基板表面26と一致するが、入力光波と画像光波とが基板の反対側、又はLOEの一方の縁部に位置するような他の構成も想定される。ここで表示光源の中央光波が、基板表面26の法線方向に基板20から出力結合し、部分反射面22が平坦であり、基板20内の入力結合した光波の軸外れ角がα
inであるとすれば、基板平面(の法線)と反射面との間の角度α
sur2は、次の通りである。
【0014】
【0015】
図1から分かるように、捕捉された光線は、二つの異なる方向28,30で反射面に到達する。この特定の実施形態では、捕捉された光線は、基板表面26,27から偶数回の反射の後に複数方向28のうち一つの方向で部分反射面22に達する。ここで捕捉された光線と反射面の法線との間の入射角β
refは、次のようになる。
【0016】
【0017】
捕捉された光線は、基板表面26,27から奇数回反射した後に第2方向30で反射面に到達する。ここで軸外し角は、α’in=180°-αinであり、捕捉された光線と反射面の法線との間の入射角は下記の通りである。
【0018】
【0019】
式中、マイナスの符号は捕捉された光線が部分反射面22の反対側に当たることを表す。
【0020】
図1に示すように、各面に対して光線は方向30に沿って基板表面に到達する。この光線のうちあるものは、方向28に沿って基板表面に再度当たる。無用な反射とゴースト像を防ぐために、方向28に位置する基板表面に当たる光線に対しては反射率が無視可能であるということは、重要なことである。
【0021】
ここで考慮するべき重要な問題は、各反射面の実際の有効範囲(area)である。得られる画像で起こりうる不均一は、各部分反射面(selectively reflecting surface)に到達する異なる光線の異なる反射シーケンスに起因することがある。ある光線は部分反射面と事前の相互作用なしに到達し、別の光線は、1回以上の部分反射をした後に到達する。この状況は
図2Aに示されている。例えばα
in=50°ならば、光線80は、点82で部分反射面22と交わる。光線の入射角は25°であり、光線のエネルギーの一部は基板から出力結合する。そして光線は、特に大きく反射せずに75°の入射角で点84において同じ(選択的な)部分反射面と交わり、また、25°の入射角で点86において再び交わる。光線の残りのエネルギーは、ここで基板から出力結合する。他方、
図2Bに示す光線88は、同じ反射面からただ1回の反射90を行う。これ以上の複数回の反射は、別の部分反射面で生じる。
【0022】
図3は、基板内に捕捉された光を観察者の目24に向けて射出する部分反射面22の詳細な断面図に、不均一性の現象を示している。図示したように、光線80は、部分反射面22と表面27との交線である線100の直前で、上の表面27によって反射される。この光線は部分反射面22に当たらないので、明るさは同じままである。その部分反射面22への初めての入射は、両外面での二重の反射の後に、点102で生じる。この点において、光波は部分反射され、光線104が基板20から出力結合される。他の光線、例えば光線80のすぐ下方に位置する光線88に関しては、部分反射面22への初めての入射は、点106において表面27に達する前に生じる。点106では光波は部分反射され、光線108は基板から出力結合される。従って、外の表面26,27における二重の反射の後に、点110において再び部分反射面22に当たると、出力結合された(coupled-out)光線の明るさは隣の光線104より小さくなる。その結果、点102の左側で部分反射面22に到達する光線80と同じ入力結合の(coupled-in)角度を有する全ての光線が、より小さな明るさを有する。従って、部分反射面22からの反射は、この特定の入力結合の角度のための点102の左側で、現実に「より暗い」ものとなってしまう。
【0023】
現実には人間の目は、無意識のうちに、明るさの有意なばらつきを許容するようになっているが、複数回交差の現象でのこうした差を完全に補正することは困難である。ニア・アイ・ディスプレイ(near-to-eye display)で、目は、単一の視野角で出射した光を積分し、網膜上の一点にこれを結像させる。目の応答曲線は対数的であるため、表示部の明るさに小さなばらつきがあっても認識されないことがある。表示部内で光の均一性が中程度のレベルしかないときにでも、人間の目は高い品質の画像を視認する。この所要の中程度の均一性は、
図1に示す光学素子を用いれば、順当に実現する。大きなFOVを有し、大きなEMBを要するシステムは、所望の出射開口を得るには、比較的多数の部分反射面が必要となる。その結果、多数の部分反射面における複数回の交差に起因する不均一性が、特に、目から離して位置する表示部、例えばヘッドアップディスプレイに関して、より顕著なものとなる。この不均一性は受け入れることはできない。このような場合には、不均一性を解決するために一層組織的な方法が必要となる。
【0024】
部分反射面22の「より暗い」部分は、捕捉された光波の基板からの出力結合に寄与することがより少ないので、LOEの光学性能への影響は悪い(negative)ものしかない。即ち、システムの出射開口に暗い部分が生じ、暗いストライプが画像の中にできる。しかし、各反射面の透明度は、外界のシーンからの光波に関して均一である。従って、出射開口内の暗い部分を補正するように反射面それぞれの間で重複するように設定すれば、重複部を横切る外界のシーンからの光線は、二重の減衰をきたし、外界のシーンに暗いストライプができてしまう。この現象は、目から離して位置する表示部、例えばヘッドアップディスプレイの性能のみならず、ニア・アイ・ディスプレイの性能を大きく低下させてしまい、使用できないことになる。
【0025】
図4はこの問題を解決する実施形態を示す。部分反射面22a,22b,22cの「明るい」部分のみが基板の内側に埋め込まれている。即ち、これらは下主要表面26とは交わらず、この表面の手前で終わっている。LOEの長さを越えて反射面の端同士が隣り合っているので、投影された画像にギャップは生じない。反射面の間に重なりはないので、外から見た場合にギャップはない。LOEを製作するにはいくつかの方法があり、その一つは、厚みTを有する透明板120を、好ましくは光学的セメント接合により、基板の有効範囲に取り付けることである。部分反射面22の有効範囲のみを正確に利用するためには、各部分反射面の実際の有効範囲と、透明板120の必要な厚みTとを算出することが重要である。
【0026】
図5において、入力結合の角度α
inの関数として、表面26の平面内に形成された反射面22nの有効開口のサイズDnは下記の通りである。
【0027】
【0028】
捕捉角αinはFOVの関数として可変なので、反射面22nの有効開口のサイズを算出するために、各反射面22nにどんな角度を対応させるべきかを知ることは重要である。
【0029】
図6に、システムパラメーターに対しての視野角の関数として有効開口を示している。ちシステムパラメーターは、基板の厚みd=2mm、基板の屈折率ν=1.51、部分
反射面の角度α
sur=64°である。視野角を考慮すると、得られる画像の異なる部分は、部分反射面の異なる部分に基づいて形成されることが分かる。
【0030】
本構成に基づくコンパクトLOE表示システムの断面図である
図7に、この効果を示す。ここにおいて、特定の視野角114をなす単一の平面光波112が、部分反射面22a,22b,22cのアレイ全体の一部分のみを照明する。こうして、部分反射面上の各点に関して名目上の視野角が定義され、この視野角に基づいて反射面の必要な有効範囲が算出される。さまざまな部分反射面の有効範囲の正確で詳細な設定は、次のように行われる。各特定の面に対して、面の左縁から特定の目の瞳孔25の中央に向けて、(スネルの法則に基づく屈折を考慮に入れて)光線をプロットする。算出された方向が名目上の入射方向とされ、特定の有効範囲がこの方向に基づいて算出される。
【0031】
図5に示すように、反射面の有効範囲(area)の正確な値は、各反射面22nの明るい部分の左縁部102と下表面26との間の各距離Tを決定するのに用いることができる。有効範囲を大きくするには、面間の距離は小さいことが要件となる。この距離は、LOEの下面に取り付けるべき透明板120(
図7)の厚みを表す。
図5に示すように、入力結合の角度α
inの関数としての距離Tは、下記のようになる。
【0032】
【0033】
図8は、
図6に関連して上述した同じパラメーターについて、視野角の関数としての透明板120の必要な厚みTを示している。厚みTを極大算出値として決定することは、画像上で暗いストライプができることを回避することを確実にするために好適である。もし厚すぎる透明板120にした場合は、正反対の結果を生む。即ち画像上に明るいストライプを出現させてしまう。
【0034】
図9に示すように、2本の光線122,124が平面基板20内に入力結合する。これらは、それぞれ点126,128で部分反射面22aから部分反射される。しかし、光線122だけは、点130において第2部分反射面22bに当たり、ここで部分反射する。光線124は、反射せずに部分反射面22bをスキップする。この結果、点134で部分反射面22cに入射する光線124の明るさは、点132での光線122の明るさより大きい。従って、点134からの出力結合の光線138の明るさは、点132で出力結合する光線136より大きく、画像内で明るいストライプが出てしまう。よって、厚みTの正確な値を、画像内に暗いストライプも明るいストライプもできないように選ぶべきである。
【0035】
図10に示すように、透明板120の厚みTが視野角に依存する所要の構造を成立させる可能な例は、二つの主要表面が平行でないくさび形状の基板20’を用いるものである。相補的なくさび形状の透明板120’が基板に、好ましくは光学的セメント接合によって、取り付けられ、結果的に、組み合わせた構造が完全な直方体となるように、即ち、最終的なLOEの外側の二つの主要表面が互いに平行になるようにする。しかし、この方法には欠点がいくつかある。まず第1に、くさび形状のLOEの製作方法は、平行なLOEよりも複雑で手間がかかる。また、この解決法は、基板平面上で視野角と横位置との間が適正に適合しているEMBの小さなシステムに有効である。しかし、EMBの大きなシステム、即ち、横軸に沿って目が顕著に動きうるシステムの場合には、視野角とくさび形状の透明板120’の実際の厚みとの間にうまく調整を行うことができない。従って、明暗のストライプが画像内に見えてしまうことがある。
【0036】
LOE内の部分反射面の構造による明暗のストライプの発生は、この現象が生じる面に限ったものではない。
図3に示すように、部分反射面22aで2回反射された入射した光線88の明るさは、点110では、点102において部分反射面22aで1回反射された光線80の明るさよりも小さい。この結果、反射された光波112の明るさは、隣の光線104の明るさよりも小さい。しかし、
図11に示すように、部分反射面22aからの反射光波の明るさが異なるのみならず、透過してからの光線140,142の明るさも異なる。その結果、それぞれ点148,150における部分反射面22bからの反射光線144,146の明るさは、やはりまた異なるものとなり、この画像の領域で暗いストライプが生じてしまう。従ってこれらの光線の間の相違に起因して、次に並んだ部分反射面へLOE内での伝送が続くことになる。結果として、多数の部分反射面を有するLOEに対して、正しい入射角に基づいて、各部分反射面は明暗のストライプを形成するため、多数の明暗のストライプがLOEの出射開口の遠い方の縁に集中してできる。このため、画質は大幅に低下する。
【0037】
画像むらの別の発生源は、LOEに入力結合する画像光波の不均一性であることがある。通常は、光源の2本のエッジがわずかに異なる発光強度であるときには、それがあったとしても、観察者にほとんど気づかれない。これは、LOEでのように、基板に入力結合し、次第に出力結合する画像に対しては、全く違う。
図12に示すように、2本の光線152,154が、表示源(図示せず)内の同じ点から生じた平面波156のエッジに位置している。不完全な画像システムの帰結として光線152の明るさが光線154の明るさよりも小さい場合、光線同士が離れた状態であるため、平面波156を直接見たとしても、これらの間の差異はほとんど認められない。しかし、LOE20内に入力結合した後には、条件が変わる。光線154は、反射面16と下主要表面26との間の界面線158のすぐ右側で、反射面16を照明する。その一方、右の光線152は反射面16で反射され、上主要表面27で全反射され、その後に、界面線158のすぐ左側で下主要表面26に当たる。結果的に、2本の光線152,154はLOE20内で隣り合って伝送される。光線152,154から生じ、部分反射面22aで反射された2本の出射光線160,162は、このようなわけで異なる明るさを有する。しかし、入力平面波156とは異なり、2本の異なる光線は隣り合っているので、この相違は、画像上の暗いストライプとして容易に識別されてしまう。この2本の光線164,165は、LOE内で隣り合って伝送され続け、一緒に出力結合される各位置で暗いストライプを生じさせる。当然ながら、この光むらを回避する最良の方法は、LOE内に入力結合する光波の全てを、FOVの全てに対して入射開口の全域で、確実に均一な明るさにすることである。広い入射開口とともに大きなFOVを有するシステムにおいて、この要求を満たすことは非常に困難である。
【0038】
図13A,13Bに示すように、既に
図4を参照して述べたLOEの主要表面の一つに透明板を取り付けることによって、光むらの問題を解決することもある。しかし本実施形態では、ビームスプリッタコーティング166が、平面基板20と透明板120との間の平坦な界面167に層設されている。
図13Aに示すように、2本の光線168,170が平面基板20に入力結合される。ただ光線168だけが、点172において第1部分反射面22aに当たり、ここで部分反射する。一方光線170は、部分反射面22aをスキップして、反射はされない。この結果、LOEに入力結合される際に2本の光線が同じ明るさであるとするならば、下主要表面26から上方向に反射された光線170は、上主要表面27から下方向に反射された光線168よりも大きな明るさとなる。この2本の光線は、平坦な界面167に位置する点174において、互いに交差する。ここに層設されたビームスプリッタコーティングによって、2本の交わる光線はそれぞれ部分反射され、また、ビームスプリッタコーティングを部分的に透過する。従って、2本の光線はエネルギーを交換し、交点174からの出射光線176,178は同じ明るさを有する。これはほぼ、2本の入射光線168,170の平均の明るさとなる。この光線は、さらに加えて、交点180,182において2本の他の光線(図示せず)とエネルギーを交換する。エネルギー交換の結果として、部分反射面22bからの2本の反射光線184,186は、ほぼ同じ明るさとなり、明るいストライプの発生現象は顕著に改善される。
【0039】
同様に、
図13Bにおいて、光線188,190が平面基板20内に入力結合する。しかし、光線188のみが点192において第1部分反射面22aに当たり、ここで部分反射され、上主要表面27によって反射される。この結果、LOEに入力結合する際の明るさが2本の光線で等しいとした場合、上主要表面27から下方向に反射された光線190は光線188よりも大きな明るさとなる。しかし、2本の光線は、平坦な界面167に位置する点194で互いに交差し、ここでエネルギーを交換する。これに加えて、2本の光線は、ビームスプリット用の界面167の上に位置する点196,198において、互いに交差する。この結果、面22aで反射された光線200,202、また面22bで反射された光線204,206は、ほぼ同じ明るさとなり、これに応じて暗いストライプの現象は顕著に抑制される。こうして改良された明るさの効果の均一性は、LOEの入射開口にはいる不均一な照明光で生じた明暗のストライプにも適用できる。結果的に、LOE内に捕捉された光波の明るさの分布は、LOEの入射開口の範囲内よりも出射開口の範囲内の方が、とりわけ一層均一なものとなる。
【0040】
図13Aに示すように、面22aで反射された光線184,186は、LOEから出力結合する前に、界面167と交わる。その結果、単純な反射コーティングを界面167に安易に層設することはできない。なぜならば、界面167は、基板20から射出する光波に対して透明で、かつ透過型の装置利用のために外界のシーンからの光波に対して透明であるべきである。即ち、光波は界面167を小さな入射角で透過し、より大きな入射角で部分反射するべきであるからである。通常は、透過の入射角は0°と15°との間であり、部分反射の入射角は40°と65°との間である。これに加えて、LOE内で伝送される間に光線は界面167を多くの回数横切るので、コーティングでの吸収は無視可能であるべきである。従って、単純な金属コーティングを使うことはできず、高い透明度を有する誘電体の薄膜コーティングを使う必要がある。
【0041】
図14は、s偏光について、明所視の領域での3個の代表的波長、即ち470nm,550nm,630nmでの入射角の関数として反射率カーブを示している。図示したように、例えばs偏光波について、40~65°の範囲の大きな入射角における部分反射の反射率(45~55%)、また小さな入射角における低い反射率(5%未満)の必要とされる動作を行うことが可能である。p偏光波については、ブリュースター角に近いため、40~65°の範囲の入射角の場合には大きな反射率を得ることは不可能である。LOE方式の画像システムに通常利用される偏光はs偏光であるので、必要とされるビームスプリッタは非常に容易に設けることができる。しかし、外界のシーンからの光波であって、小さな入射角で界面に当たり、ほぼ非偏光である光波に対しては、ビームスプリッタコーティングは実質的に透明であるべきであるので、ビームスプリッタコーティングは、p偏光波についても小さな入射角の場合には小さな反射率(5%未満)を持つべきである。
【0042】
残る難点は、LOE20が複数の異なる部品から組み立てられることにある。通常、製作工程は光学素子をセメント接合することを含み、LOE20の本体が仕上がった後に必要な角度依存的な反射コーティングがライトガイド面に施されるので、セメント接合の部分を損なう恐れのある従来の高温コーティング方法を利用することはできない。しかし、イオンアシストのコーティング方法とともに、新しい薄膜技術もまた、低温での処理に用いることができる。部品の加熱を不要にすることで、セメント接合された部品を安全にコーティングすることができる。別の方法として、周知の高温コーティング方法を利用し、その次に適正な位置にセメント接合を行うことにより、LOE20に隣り合った透明板120に必要なコーティングを容易に施すことができる。透明板120が薄すぎず、かつコーティング処理の間でも変形できるという場合にのみ、この追加例の手法を利用することは、明白に可能である。
【0043】
上述したようなビームスプリッタの機能を構成する際に、考慮に入れるべき課題がいくつか存在する。
【0044】
a.LOE内に捕捉された光線は主要表面26,27で全反射されるのみならず、内部の部分反射の平坦な界面167でも反射されるので、これらの3面は互いに平行にし、LOE内で最初の入力結合方向を、光線が確実に維持することが重要である。
【0045】
b.
図13A,13Bに示すように、透明板120は本来のLOE20よりも厚みが小さい。透明板120の厚みが均一性の最適化のために重要であるとする
図7~10中の非コート板に関する事情にもかかわらず、コーティング板の厚みは別の事情から設定されることがありうる。つまり、やや厚い板を製作し、コーティングを施し、セメント接合することは容易である。他方では、やや薄い板の場合は、光波を基板から実際に出力結合するLOE20の有効な体積は、所定の基板の厚みに対して大きくなる。また、透明板120とLOE20との間の厚みの正しい比率は、基板内でのエネルギー交換プロセスに影響を与えることがある。
【0046】
c.通常、フルカラー画像のために設計されたビームスプリッタに対して、反射率のカーブは、色彩に関する効果を抑止するために、明所視の全範囲で可能な限り均一であるべきである。しかし、本発明で図示した構成において、多くの光線が、LOE20から出力結合する前に多くの回数交差しあう。従って、この要件は必須ではない。当然ながら、ビームスプリッタコーティングは入射した画像の全波長のスペクトルを考慮するべきであるが、部分反射のカーブで色彩に関する平坦さは、システムの諸パラメーターに基づいて許容されてよい。
【0047】
d.ビームスプリッタコーティングの反射率/透過率の比率は、必ずしも50%対50%である必要はない。暗い光線と明るい光線との間の必要なエネルギー交換を行うために、他の比率を使用してもよい。さらに
図15に示すように、より単純なビームスプリッタコーティングを利用してもよい。この反射率は、40°の入射角において35%から次第に増加し、65°の入射角において60%に達するものである。
【0048】
e.LOEに設けるべきビームスプリッタ面の数は、一つに限られない。
図16に示したように、別の透明板208をLOEの上面にセメント接合で取り付けてもよい。また、ビームスプリッタコーティングをLOE20と上透明板208との間の平坦な界面210に層設し、二つのビームスプリッタ面を有する光学デバイスを得てよい。2本の異なる光線212,214は、コーティングされた平坦な界面210上の点215において、互いに交差する。また、平坦な界面210には、さらに光線が点216,217において交わる。これは、下側のビームスプリット用の平坦な界面167での交差に追加して行われることである。結果として、反射光線218,220の均一性が、
図13A,13Bの実施形態における均一性よりさらに高くなることが期待される。当然ながら、二つのビームスプリット用の平坦な界面を有するLOEを作成する方法は、ただ一つの平坦な界面を有するものの場合よりも困難である。従って、不均一な表面に重大な問題があるシステムにのみ、考慮すればよい。上述のように、四つの反射面と平面26,27,167,210は全て互いに平行であることが重要である。
【0049】
f.透明板120は、必ずしもLOE20と同じ光学材料から製作する必要はない。さらに、シリケート系材料からLOEを製作してもよく、目の安全性の目的のために、透明板(layer)をポリマー系材料から形成してもよい。当然ながら、外表面の光学性能を確実にし、透明板の変形を防止することに留意する必要がある。
【0050】
g.これまでは、透明板は全部が無地である(blank)と想定してきた。しかし
図17に示すように、部分反射面222a,222bを透明板120の内部に形成し、LOEの利用可能な体積を大きくしてもよい。これらの面は部分反射面22a,22bと厳密に平行にして、正しく同じ姿勢に向けることが必要である。
【0051】
透明板120の厚みと光学的材料、ビームスプリッタコーティングの本来の特性、ビームスプリッタ面の数、LOE内の部分反射面の位置など、上記実施形態の全てのパラメーターは多くの異なる値を取ることができる。これらは、光学系のさまざまなパラメーター、また光学特性と製作コストの特定の要請に基づいて決定される。
【0052】
これまでは、主要表面に対して傾斜角をもった向きになっていて、通常は誘電体のコーティングが層設されている部分反射面で、光波は基板から出力結合すると想定してきた。しかし
図18Aに示すように、回折素子230,232を利用した基板に対して光波が入力結合、出力結合するシステムもある。既に述べた同様の均一性の問題が、この構成にもつきまとうと言える。図に示すように、表示源の同じ点からの2本の光線234,236が、入力結合用の回折素子230の2本の縁部で、間隔をおいて位置して、基板238に入力結合する。隣り合う光線は、それぞれ出力結合用の回折素子232で出力結合される。従って、光線間に相違がある場合には、出力結合した光波の中に容易に見ることができる。これに加えて、均一化された出力結合した画像を有効にするためには、出力結合用の回折素子232の回折効率は次第に増加される。結果的に、同じ点光源からの異なる光線は、光学素子から出力結合する前に回折素子232内の異なる位置を通過する可能性があるので、画像内で異なる明るさになる。光むらの他の原因として、回折格子のすぐ左側の下面に光線236が当たる間に、回折格子232の右縁部240で光線234が部分的に基板の外へ回折してしまい、そこでは回折しないことがある。この結果、2本の隣り合う光線234,236のための回折格子232内の出力結合の全位置について、光線236は一層大きな明るさになってしまう。この差は容易に観察できる。
【0053】
図18Bは、これらの問題を解決するための同様の手法を示す。図において透明板242は、基板238の上面244にセメント接合されている。界面246には、上述したものと同様のビームスプリッタコーティングが層設されている。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学システムであって、
光ガイド光学素子であって、二つの互いに平行な主要表面及び縁部と、光波が前記光ガイド光学素子に入る入力開口と、前記光波が前記光ガイド光学素子から出射する出力開口と、を有する、光ガイド光学素子と、
前記光ガイド光学素子の前記二つの主要表面の間にあり、前記二つの主要表面から分離され、かつ前記二つの主要表面と平行な、前記光ガイド光学素子の内部に埋め込まれた少なくとも一つのビームスプリッタ面であって、前記少なくとも一つのビームスプリッタ面は、
前記ビームスプリッタ面の法線に対して45°を超える角度で入射する光波に対して、約60%未満の反射率で部分的に反射し、かつ部分的に透過し、
前記ビームスプリッタ面の前記法線に対して45°を下回る角度で入射する前記光波に対して反射率が約5%未満であり、
前記ビームスプリッタ面に衝突する外部シーンからの非偏光(波)に対して実質的に透明である、ように構成されており、
前記光波は、470、550、及び630nmの波長を含み、
前記主要表面での内部全反射によって伝搬する前記光波は、前記二つの主要表面で複数の内部全部反射を受け、前記入力開口と前記出力開口との間の前記少なくとも一つのビームスプリッタ面に複数回衝突する、光学システム。
【請求項2】
誘電体の薄膜コーティングの反射率は、入射角にわたって可視光の少なくとも二つの波長の各々に対して、前記反射率の値の10パーセント以下だけ変化する、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項3】
前記誘電体の薄膜コーティングの前記反射率は、前記法線に対して45°を超える角度で前記入射角の関数として徐々に増加する、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項4】
前記ビームスプリッタコーティングの前記反射率パーセンテージは、前記入射角の範囲内の各入射角に対して、前記可視光の少なくとも三つの波長の間で10パーセント以下だけ異なる、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項5】
前記光波を前記光ガイド光学素子に結合するための光学素子をさらに備える、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項6】
前記光波を出力結合するための前記少なくとも一つの部分反射面は、前記ビームスプリッタ面の一方の側部に第1の部分反射面を含み、前記ビームスプリッタ面の第2の側部に第2の部分反射面を含む、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項7】
前記少なくとも一つのビームスプリッタ面は、前記出力開口と少なくとも部分的に重なり合う、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項8】
前記光ガイド光学素子は、二つの異なる光学材料で作製されている、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項9】
前記二つの異なる光学材料は、シリケート系材料及びポリマー系材料を含む、請求項8に記載の光学デバイス。
【請求項10】
前記少なくとも一つのビームスプリッタ面は、少なくとも二つのビームスプリッタ面として実装され、前記少なくとも二つのビームスプリッタ面の各々は、前記光ガイド光学素子の前記二つの主要表面の間で前記光ガイド光学素子の内部に埋め込まれ、前記光ガイド光学素子の前記二つの主要表面に平行である、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項11】
前記光波を出力結合するための前記少なくとも一つの部分反射面は、前記ビームスプリッタ面のうちの二つの間に挿入されている、請求項10に記載の光学デバイス。
【請求項12】
前記誘電体の薄膜コーティングは、
S偏光を有する光波に対して、部分的に反射し、かつ部分的に透過するように構成されている、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項13】
大きい入射角での前記コーティングの前記反射率は、明所視領域全体に対して実質的に均一である、請求項1に記載の光学デバイス。
【外国語明細書】