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  • 特開-車両用内装材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002025
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】車両用内装材
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20231228BHJP
   B60R 7/04 20060101ALI20231228BHJP
   B32B 3/00 20060101ALI20231228BHJP
   B29C 39/26 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B60R13/02 B
B60R7/04 C
B32B3/00
B29C39/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100964
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】田村 英久
(72)【発明者】
【氏名】清 大樹
【テーマコード(参考)】
3D022
3D023
4F100
4F202
【Fターム(参考)】
3D022CA07
3D022CC18
3D022CD30
3D023BA01
3D023BB01
3D023BD04
3D023BD11
3D023BE06
3D023BE31
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100DD01A
4F100DD20A
4F100GB33
4F100JK13B
4F202AA42
4F202AB02
4F202AC05
4F202AD05
4F202AH26
4F202AM33
4F202CA01
4F202CB01
4F202CB12
4F202CK12
4F202CQ01
(57)【要約】
【課題】外観が良好で、製造コストを抑制できる車両用内装材を提供する。
【解決手段】車両用内装材1は、基材2と、基材2に配置される軟質材3と、軟質材3を覆い基材2に取り付けられる表皮材4と、を備える。基材2は、表皮材4により覆われる一般面10と、一般面10に連なり軟質材3と接する側面15を備えて表皮材4に対向して開口され、軟質材3が内部にインサート成形される凹部11と、側面15の一般面10と連なる位置から凹部11内側に突出する突起部17と、を有する。突起部17は、凹部11の開口面OPに対して離れる方向に傾斜した傾斜部19を備える。軟質材3は、傾斜部19に沿って充填されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
この基材に配置される軟質材と、
この軟質材を覆い前記基材に取り付けられる表皮材と、を備え、
前記基材は、
前記表皮材により覆われる一般面と、
この一般面に連なり前記軟質材と接する側面を備えて前記表皮材に対向して開口され、前記軟質材が内部にインサート成形される凹部と、
前記側面の前記一般面と連なる位置から前記凹部内側に突出する突起部と、を有し、
前記突起部は、前記凹部の開口面に対して離れる方向に傾斜した傾斜部を備え、
前記軟質材は、前記傾斜部に沿って充填されている
ことを特徴とする車両用内装材。
【請求項2】
軟質材は、突起部の基端部から凹部の開口面に対して直交する方向にパーティングラインを位置させて成形されている
ことを特徴とする請求項1記載の車両用内装材。
【請求項3】
軟質材は、突起部の基端部から傾斜部に沿う方向にパーティングラインを位置させて成形されている
ことを特徴とする請求項1記載の車両用内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に配置された軟質材を覆って表皮材が取り付けられる車両用内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両の内装材として、合成樹脂製などの基材の凹部に対して、クッション性を持たせ商品性を高めるためのウレタン製などの軟質材を有し、軟質材とともに基材の表面側を表皮材により覆ったものがある。
【0003】
このような内装材として、軟質材として発泡材を接着剤によって凹部に貼り付けた後、表皮材で被覆したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-123938号公報 (第5-6頁、図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
軟質材を備える内装材の製造方法として、上記のように接着剤により基材に軟質材を貼り付ける方法の他に、基材を成形型にセットした後、ウレタンなどの軟質材の原液を基材の凹部内に充填し、発泡させることで、軟質材を基材にインサート成形する方法がある。この方法の場合、基材の凹部に連なる一般面と軟質材との境界部に設定される軟質材の成形型のパーティングラインの位置にばりが発生することがある。このばりは、基材を表皮材で覆った状態でその厚みが表皮材表面に表出し、内装材の外観を損なうことがあるため、切除することが必要となり、また、切除しても僅かに残っているだけで外観に影響を与える可能性があるため、完全に除去する必要があり、これらの作業工程の増加によって製造コストを高騰させるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、外観が良好で、製造コストを抑制できる車両用内装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の車両用内装材は、基材と、この基材に配置される軟質材と、この軟質材を覆い前記基材に取り付けられる表皮材と、を備え、前記基材は、前記表皮材により覆われる一般面と、この一般面に連なり前記軟質材と接する側面を備えて前記表皮材に対向して開口され、前記軟質材が内部にインサート成形される凹部と、前記側面の前記一般面と連なる位置から前記凹部内側に突出する突起部と、を有し、前記突起部は、前記凹部の開口面に対して離れる方向に傾斜した傾斜部を備え、前記軟質材は、前記傾斜部に沿って充填されているものである。
【0008】
請求項2記載の車両用内装材は、請求項1記載の車両用内装材において、軟質材は、突起部の基端部から凹部の開口面に対して直交する方向にパーティングラインを位置させて成形されているものである。
【0009】
請求項3記載の車両用内装材は、請求項1記載の車両用内装材において、軟質材は、突起部の基端部から傾斜部に沿う方向にパーティングラインを位置させて成形されているものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の車両用内装材によれば、突起部の傾斜部の位置に形成される軟質材の成形型のパーティングラインに対向する方向から合成樹脂原料による圧力が掛かりにくくなるので、パーティングラインに未硬化の合成樹脂原料が入り込みにくく、ばりが生じにくいため、軟質材とともに基材の一般面を覆う表皮材に軟質材のばりに起因する盛り上がりなどの外観不良が生じにくく、外観が良好になるとともに、外観を向上するためのばりの除去などの工程が基本的に不要となり、製造コストを抑制できる。
【0011】
請求項2記載の車両用内装材によれば、請求項1記載の車両用内装材の効果に加えて、傾斜部に対してパーティングラインが延びる方向が屈曲するため、傾斜部に沿って充填される軟質材の合成樹脂原料がパーティングラインに流れ込みにくくなり、ばりがより生じにくくなる。
【0012】
請求項3記載の車両用内装材によれば、請求項1記載の車両用内装材の効果に加えて、パーティングラインに薄いばりが生じたとしても、そのばりの方向が傾斜部に沿っているため、表皮材を基材に取り付ける際に、ばりが表皮材を表側に押し返す反発力が小さく、基材側に容易に倒れるので、表皮材を取り付けた後でも、ばりにより表皮材の表面に形成される膨らみが少なく、外観を損ないにくい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)は本発明の第1の実施の形態の車両用内装材の中間体を示す断面図、(b)は同上車両用内装材を示す断面図である。
図2】同上車両用内装材の基材を示す断面図である。
図3】同上車両用内装材を示す斜視図である。
図4】(a)は本発明の第2の実施の形態の車両用内装材の中間体を示す断面図、(b)は同上車両用内装材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
図3において、1は車両用内装材を示す。本実施の形態において、車両用内装材1は、例えば自動車などの車両用のコンソールボックスやセンタコンソールの一部などに用いられる。図示される例では、車両用内装材1は四角形状に形成されているが、これに限られず、配置位置の形状や所望の意匠などに応じた任意の形状としてよい。
【0016】
車両用内装材1は、図1(b)及び図3に示すように、基材2と、軟質材3と、表皮材4と、が互いに重ねられて配置されている。そして、車両用内装材1は、表皮材4側を乗員側、手前側、表側あるいは意匠側とし、基材2側を車体側、反乗員側、背後側、裏側として配置される。
【0017】
図1(a)、図1(b)及び図2に示す基材2は、合成樹脂などの部材により成形されている。基材2は、軟質材3よりも硬質の部材により形成されている。本実施の形態では、基材2は、長方形状の基材本体部6の両長辺に延出部7が連なって形成されている。延出部7は、基材本体部6に対して厚み方向に屈曲して連なっている。そのため、基材2は、断面コ字状に形成されている。
【0018】
基材2には、表皮材4により覆われる主面である一般面10に対して窪んだ凹部11が形成されている。凹部11に軟質材3が充填される。凹部11は、基材2の意匠側に位置する。本実施の形態において、凹部11は、基材本体部6から延出部7に亘り形成されている。そのため、延出部7の先端部が、凹部11が形成されていない縁部12となっている。凹部11は、軟質材3の外形に応じた形状に形成されている。縁部12は、基材2の外殻部である端末部の少なくとも一部を構成している。図示される例では、縁部12は、延出部7の先端部から基材本体部6の一方の短辺に亘り連なっている。
【0019】
凹部11は、底面14の外縁部から側面15が車両用内装材1の表側に壁状に立ち上がって形成され、表皮材4に面して開口されている。底面14と側面15に軟質材3が接する。側面15には、突起部17が形成されている。突起部17は、側面15の一般面10と連なる位置に形成されている。すなわち、突起部17は、側面15の底面14とは反対側の端部である側面15の先端部に形成されている。また、突起部17は、側面15から凹部11の内側に突出している。すなわち、突起部17は、側面15から凹部11の開口面OPに沿って突出する。凹部11の開口面OPとは、凹部11において、側面15の先端のエッジにより囲まれる面をいう。つまり、凹部11の開口面OPは、一般面10と連なる仮想面または一般面10の仮想延長面である。図示される例では、突起部17は、側面15に対して垂直または略垂直な方向に突出している。突起部17の側面15からの突出寸法Pは、例えば2.5mmに設定されている。突起部17の最大幅寸法は、例えば基材2の縁部12の厚み寸法より小さく設定されている。突起部17は、底面14から開口面OP側に離れて位置する。
【0020】
また、突起部17は、傾斜部19を有する。傾斜部19は、凹部11の開口面OPに対して離れる方向に傾斜している。傾斜部19は、一般面10と連なる位置から突起部17の先端部まで傾斜している。すなわち、傾斜部19は、側面15の仮想延長面と一般面10との交線位置から突起部17の先端部に亘り形成されている。傾斜部19の開口面OPに対する傾斜角θは、例えば20°に設定されている。この傾斜角θは、側面15に対する突起部17の抜き勾配よりも大きく設定されている。また、突起部17の先端部は、断面円形状に丸められて形成されている。
【0021】
凹部11の底面14と側面15とのそれぞれに、軟質材3の外端面が密着して配置される。軟質材3は、例えば弾性を有する部材からなる弾性材またはクッション材である。好ましくは、軟質材3は、発泡ウレタンなどの軟質の発泡材からなる。軟質材3は、基材2の凹部11に収容されるように配置され、基本的に凹部11の開口面OPから車両用内装材1の表側に突出しないように設定されている。すなわち、軟質材3は、凹部11の深さ寸法に応じて設定された所定厚み寸法の板状となっている。
【0022】
軟質材3は、基材2の凹部11に対し、インサート成形により一体的に固定される。軟質材3のインサート成形に用いられる成形型のキャビティとコアとのパーティングラインPLが、突起部17の基端部に形成されている。すなわち、パーティングラインPLは、凹部11の側面15の仮想延長面と一般面10との交線位置に設定されている。図示される例では、パーティングラインPLは、傾斜部19の基端部の位置に連なって設定される。そのため、軟質材3には、突起部17の傾斜部19に沿って充填されることで、突起部17の傾斜部19に重なる薄肉部22が形成されている。薄肉部22は、先端部、つまり傾斜部19の一般面10と連なる位置に向かい、徐々に厚み寸法が小さくなるように形成されている。薄肉部22の先端部がパーティングラインPLに連なっている。本実施の形態において、パーティングラインPLは、開口面OPに対して直交または略直交する方向に延びるように設定されている。
【0023】
軟質材3及び基材2を覆う図1(b)に示す表皮材4は、車両用内装材1の意匠面を構成する部材である。表皮材4は、軟質材3よりも厚みが薄いシート状に形成されている。本実施の形態において、表皮材4は、薄膜状に形成されている。表皮材4は、少なくとも軟質材3の表面全体を覆って配置されている。表皮材4は、皮革により形成されていてもよいし、合成樹脂などにより形成されていてもよい。
【0024】
表皮材4は、皴が寄らないように張力が付与された状態で基材2に固定されている。表皮材4は、基材2の端末部から基材2の裏側に折り返され、基材2に対して接着剤やステープルなどの固定部材により固定されている。
【0025】
そして、車両用内装材1を製造する際には、予め成形された基材2を軟質材3のインサート成形用の成形型にセットして型締めし、その内部のキャビティに対して、合成樹脂原料を撹拌混合して射出すると、合成樹脂原料が発泡を伴いながら反応してポリウレタンとなりつつ流動末端に向かって流れていき、軟質材3を形成する。このとき、凹部11の一般面10と連なる位置から凹部11内側に突出する突起部17を備え、その突起部17に凹部11の開口面OPに対して離れる方向に傾斜した傾斜部19を形成して、軟質材3を、傾斜部19に沿って充填することで、軟質材3に傾斜部19の傾斜に沿って薄肉部22が形成される。そのため、突起部17の傾斜部19の位置に形成される成形型のパーティングラインPLに対向する方向から合成樹脂原料による圧力が掛かりにくくなるので、パーティングラインPLに未硬化の合成樹脂原料が入り込みにくく、ばりが生じにくい、または、仮にばりが生じたとしても、薄肉のばりとなる。
【0026】
そこで、軟質材3のインサート成形後、別途形成した表皮材4を、軟質材3とともに基材2の一般面10を覆うように取り付け、表皮材4の端末部を基材2の端末部から基材2の裏側に折り返して、例えば接着剤あるいはステープルなどの固定部材により基材2に対し表皮材4を固定すると、表皮材4に軟質材3のばりに起因する盛り上がりなどの外観不良が生じにくく、外観が良好になるとともに、外観を向上するためのばりの除去などの工程が基本的に不要となり、製造コストを抑制できる。
【0027】
また、パーティングラインPLを凹部11の開口面OPに垂直な方向に延ばして設定することで、傾斜部19に対してパーティングラインPLが延びる方向が屈曲するため、傾斜部19に沿って充填される軟質材3の合成樹脂原料がパーティングラインPLに流れ込みにくくなり、ばりがより生じにくくなる。
【0028】
次に、第2の実施の形態について、図4を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0029】
図4(a)及び図4(b)に示す第2の実施の形態の車両用内装材1は、第1の実施の形態における軟質材3の成形型のパーティングラインPLを、傾斜部19の傾斜に沿って延びるように設定するものである。すなわち、本実施の形態のパーティングラインPLは、凹部11の開口面OPに対し傾斜する方向に延びている。
【0030】
このようにすることで、軟質材3とともに基材2の一般面10を覆う表皮材4に軟質材3のばりに起因する盛り上がりなどの外観不良が生じにくく、外観が良好になるなど、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができるとともに、仮に軟質材3を構成する合成樹脂の一部がパーティングラインPLに入り込んで薄肉部22に連なる薄いばりBが生じたとしても、そのばりBの方向が傾斜部19に沿っているため、表皮材4に張力を付与しつつ基材2に取り付ける際に、ばりBが表皮材4を車両用内装材1の表側に押し返す反発力が小さく、基材2の縁部12側に容易に倒れるので、表皮材4を取り付けた後でも、ばりBにより表皮材4の表面に形成される膨らみが少なく、外観を損ないにくい。したがって、外観を向上するためのばりBの除去などの工程も不要となり、製造コストを抑制できる。
【0031】
なお、上記の各実施の形態において、車両用内装材1は、コンソールボックスやセンタコンソールの一部などに用いられるものに限らず、任意の車両用の内装材として用いてよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、車両の車室に備えられるセンタコンソールの一部などとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 車両用内装材
2 基材
3 軟質材
4 表皮材
10 一般面
11 凹部
15 側面
17 突起部
19 傾斜部
OP 開口面
PL パーティングライン
図1
図2
図3
図4