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  • 特開-高効率の抗TFPI抗体組成物 図1
  • 特開-高効率の抗TFPI抗体組成物 図2A
  • 特開-高効率の抗TFPI抗体組成物 図2B
  • 特開-高効率の抗TFPI抗体組成物 図2C
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020287
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】高効率の抗TFPI抗体組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240206BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
A61K39/395 P
A61P7/00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023188371
(22)【出願日】2023-11-02
(62)【分割の表示】P 2021515569の分割
【原出願日】2019-09-06
(31)【優先権主張番号】10-2018-0113974
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】506379781
【氏名又は名称】グリーン・クロス・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】GREEN CROSS CORP.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】キム・ミンジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヨ・グンヘ
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ヘンウン
(72)【発明者】
【氏名】パク・ジユン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ユナ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】抗体誘導血友病患者の処置および血液凝固疾患の予防に効果的に使用され得る、高効率の抗TFPI抗体組成物を提供する。
【解決手段】原薬中のHCPの含有量が10.0ng/mg未満であり、原薬または医薬品中のLPAの含有量が1.0ng/mg未満である、血友病を処置するための抗TFPI抗体を含む医薬の高効率の抗TFPI抗体組成物を提供する。HCPおよびLPAの非常に少ない含有量を有する高効率の抗TFPI抗体組成物は、抗TFPI抗体ポリマー生成を最小化することができる分離/精製プロセスにより提供されてもよく、抗体誘導血友病患者の処置および血液凝固疾患の予防に効果的に使用されてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原薬または医薬品中のHCPの含有量が10.0ng/mg未満であり、原薬または医薬品中のLPAの含有量が1.0ng/mg未満である、血友病を処置するための抗TFPI抗体を含む医薬の高効率の抗TFPI抗体組成物。
【請求項2】
HCPおよびLPAの総含有量が5ng/mg以下である、請求項1に記載の高効率の抗TFPI抗体組成物。
【請求項3】
以下:
抗TFPI抗体を含有する培養物を清澄化するプロセス;
アフィニティークロマトグラフィープロセス;
ウイルス不活化プロセス;
限外濾過およびダイアフィルトレーションプロセス;
混合モードクロマトグラフィープロセス;
ナノ濾過プロセス;および
最終濃縮プロセス
を通して産生される、請求項1または2に記載の高効率の抗TFPI抗体組成物。
【請求項4】
混合モードクロマトグラフィープロセスが、異なるタイプのカラム樹脂を使用して2つ以上の複数の混合モードクロマトグラフィープロセスを実施することにより抗TFPI抗体のポリマーの98%以上を除去することを含む、請求項3に記載の高効率の抗TFPI抗体組成物。
【請求項5】
アフィニティークロマトグラフィープロセスが、以下の工程:アフィニティークロマトグラフィーカラムを通過した溶出液をpH4.0から6.0の範囲で中和すること;および
中和溶出液を放置して、室温(15から25℃)で8から16時間静置すること
を含む、請求項3に記載の高効率の抗TFPI抗体組成物。
【請求項6】
濃縮プロセスが、すすぎ溶液循環/回収プロセスを含む、請求項3に記載の高効率の抗TFPI抗体組成物。
【請求項7】
原薬中の抗TFPI抗体ポリマーの含有量が5%未満である、請求項1に記載の高効率の抗TFPI抗体組成物。
【請求項8】
原薬が3.26ng/mL以下のEC50値を有する、請求項1に記載の高効率の抗TFPI抗体組成物。
【請求項9】
組成物が、精製プロセスに供される原薬中の抗TFPI抗体の単位含有量あたりのHCPの含有量が、清澄化された培養物中の抗TFPI抗体の単位含有量あたりのHCPの含有量より少なくとも50,000倍低い高純度を有する、請求項1に記載の高効率の抗TFPI抗体組成物。
【請求項10】
原薬の相対的効力値が、100%モノマーのものと比較して85%以上である、請求項1に記載の高効率の抗TFPI抗体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、血友病を処置するための高効率の抗TFPI抗体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
抗TFPI抗体は、組織因子経路阻害剤(以下、TFPIと呼ぶ)に対して高い親和性を有するヒトIgG4モノクローナル抗体である抗組織因子経路阻害剤(以下、抗TFPIと呼ぶ)組換え抗体である。
【0003】
抗TFPI抗体は、TFPIと活性化第X因子(FXa)との間の結合を阻害し、外因性血液凝固経路における下流の血液凝固因子FXの活性化を誘導することにより血液を凝固させる血友病治療剤として使用される。
【0004】
抗TFPI抗体はIgG4型抗体であり、一般的な抗体産生プロセスに適用される時、プロセスの間のポリマー生成が増加し、そのことが製品の治療効果の低下をもたらし、そして低pH値での抗体の高い不安定性のためにプロセスの再現性が低いという問題が発生する。
【0005】
特に、ポリマーが最終的な抗TFPI抗体濃縮物中に適切なレベル以上で存在する時、ポリマーは、抗原TFPIに対する抗TFPI抗体の結合親和性を低下させ、そのことが抗体の有効性の低下をもたらすという悪影響を有する。
【0006】
したがって、抗TFPI抗体産生プロセスにおけるポリマーの生成を防ぐように処理条件が適切に維持される必要があり、そして抗体精製プロセスにおいて必然的に生成されたポリマーが選択的に除去される必要がある。
【0007】
したがって、高純度の抗TFPI抗体を精製するためのプロセスを開発することは、高効率の抗TFPI抗体治療剤の開発のために必然的に必要とされる。
【0008】
したがって、高効率の抗TFPI抗体組成物を産生するために、本発明者らは、タンパク質不純物を吸着するためのアフィニティークロマトグラフィープロセスにおける中和プロセス、抗TFPI抗体ポリマーの生成を最小化し、混合モードクロマトグラフィー精製プロセスにおいて生成されたポリマーを選択的に除去するためのプロセス、および第1の限外濾過およびダイアフィルトレーションプロセス、第2の限外濾過およびダイアフィルトレーションプロセスおよび最終濃縮プロセスにおいて抗TFPI抗体精製収率を最大化するためのプロセスについての条件に関する研究を行い、高効率の抗TFPI抗体は産生され、それにより本開示を完了することができることを見出した。
【0009】
[先行技術文献]
【0010】
[特許文献]
【0011】
(特許文献1)韓国特許第10-1744899号公報
【0012】
(特許文献2)韓国特許第10-1804988号公報
【0013】
[非特許文献]
【0014】
(非特許文献1)1. Defining your product profile and maintaining control over it, part 2: challenges of monitoring host cell protein impurities. BioProcess Int 2005; 3:52-4, 6, 8
【0015】
(非特許文献2)2. CHOPPI: A Web Tool for the Analysis of Immunogenicity Risk from Host Cell Proteins in CHO-Based Protein Production. Biotechnol Bioeng. 2014 Nov; 111(11): 2170-2182.
【0016】
(非特許文献3)3. Reducing risk, improving outcomes: bioengineering less immunogenic protein therapeutics. Clin Immunol. 2009 May; 131(2):189-201
【0017】
(非特許文献4)4. A systematic assessment of MHC class II peptide binding predictions and evaluation of a consensus approach. PLoS Comput Biol. 2008 Apr 4; 4(4):e1000048
【発明の概要】
【0018】
発明の開示
技術的問題
本開示の目的は、(i)低pHアフィニティークロマトグラフィー溶出プロセスの後に中和プロセスを導入することによりポリマー生成を最小化して、アフィニティークロマトグラフィープロセスにおいて抗体安定性を増加させること、(ii)効率的な精製樹脂を選択することによりポリマー分離条件を決定して、混合モードクロマトグラフィープロセスにおいて抗TFPI抗体中に含有されるポリマーを選択的に除去すること、および(iii)最終濃縮プロセスにおける抗TFPI抗体ポリマーの形成を最小化しながら、抗TFPI抗体精製収率を最大化して、高効率の抗TFPI抗体組成物を産生することにより、HCPおよびLPAの非常に低い含有量を有する高効率の抗TFPI抗体組成物を提供することである。
【0019】
本開示の技術的問題は、上記の技術的問題に限定されず、言及されていない他の技術的問題は、以下の説明から当業者により明確に理解されてもよい。
【0020】
問題の解決策
上記の目的を達成するために、本開示は、原薬中のHCPおよびLPAの総含有量が10ng/mg以下である、血友病を処置するための抗TFPI抗体を含む医薬の高効率の抗TFPI抗体組成物を提供する。
【0021】
HCP(宿主細胞タンパク質)は、抗TFPI抗体産生における宿主として使用されるCHO細胞において見いだされる固有のタンパク質であり、細胞培養物中のHCPの含有量は約500,000ng/mgと非常に高い。一方、LPA(浸出性タンパク質A)は、精製プロセスにおいて樹脂から解離するタンパク質A不純物であり、その含有量は精製条件により製品間で異なってもよいが、一般的には約10ng/mgである。したがって、HCP不純物の含有量は、LPA不純物の含有量より比較的高く、抗TFPI抗体組成物が有効であるためには、HCPおよびLPAの含有量を下げることが不可欠かつ非常に重要である。
【0022】
抗TFPI抗体組成物中のHCPの含有量が10.0ng/mg未満に維持され、組成物中のLPAの含有量が1.0ng/mg未満に維持される場合、組成物が治療薬として人体に投与される時、それは免疫原性副作用を低下させる優れた特性を有し、したがって抗TFPI抗体組成物として優れた効果を示してもよい。
【0023】
本開示の一実施形態において、HCPおよびLPAの総含有量は、5ng/mg以下であってもよい。
【0024】
抗TFPI抗体組成物中のHCPおよびLPAの総含有量が5ng/mg以下に維持される場合、組成物が治療薬として人体に投与される時、それは免疫原性副作用を低下させる優れた特性を有し、したがって抗TFPI抗体組成物として優れた効果を示してもよい。
【0025】
本開示の別の実施形態において、高効率の抗TFPI抗体組成物は、抗TFPIを含有する培養物を清澄化するプロセス、アフィニティークロマトグラフィープロセス、ウイルス不活化プロセス、第1の限外濾過およびダイアフィルトレーションプロセス、混合モードクロマトグラフィープロセス、ナノ濾過プロセス、および最終濃縮プロセスを通して産生されてもよい。
【0026】
本開示のさらに別の実施形態において、第2の限外濾過およびダイアフィルトレーションプロセスが、混合モードクロマトグラフィープロセスの後にさらに含まれてもよい。
【0027】
本開示のさらに別の実施形態において、混合モードクロマトグラフィープロセスは、異なるタイプのカラム樹脂を使用して2つ以上の複数の混合モードクロマトグラフィープロセスを実施することにより、抗TFPI抗体のポリマーの98%以上を除去してもよい。
【0028】
ポリマーの98%以上が除去される場合、組成物が治療薬として人体に投与される時、それは免疫原性副作用を低下させ、抗TFPI抗体のTFPIへの結合親和性を増加させるという利点を有し、したがって、抗TFPI抗体組成物としてより良い活性を示してもよい。
【0029】
本開示のさらに別の実施形態において、アフィニティークロマトグラフィープロセスは、以下の工程を含んでもよい:アフィニティークロマトグラフィーカラムを通過した溶出液を、pH4.0から6.0の範囲で中和すること;および中和溶出液を放置して、室温(15から25℃)で8から16時間静置すること。
【0030】
本開示のさらに別の実施形態において、濃縮プロセスは、すすぎ溶液循環/回収プロセスを含んでもよい。
【0031】
本開示のさらに別の実施形態において、原薬中の抗TFPI抗体ポリマーの含有量は、1%未満であってもよい。
【0032】
本開示のさらに別の実施形態において、原薬は、3.26ng/mL以下のEC50値を有してもよい。
【0033】
原薬のEC50値が3.26ng/mL以下である場合、組成物は、TFPIに対する抗TFPI抗体の結合親和性を増加させ、TFPIの機能を中和する抗TFPI抗体の能力を改善するという利点を有し、したがって抗TFPI抗体組成物として優れた効果を示してもよい。
【0034】
本開示のさらに別の実施形態において、原薬中のHCPの含有量が10.0ng/mg未満であり、原薬中のLPAの含有量が1.0ng/mg未満であり、同時に、最終製品である原薬中の抗TFPI抗体の単位含有量あたりのHCPの含有量が出発物質である清澄化された培養物中の抗TFPI抗体の単位含有量あたりのHCPの含有量より少なくとも10,000倍低い高純度の抗TFPI抗体組成物が、産生されてもよい。
【0035】
抗TFPI抗体組成物が、原薬中のHCPの含有量が10.0ng/mg未満であり、原薬中のLPAの含有量が1.0ng/mg未満であり、同時に、精製プロセスに供される原薬中の抗TFPI抗体の単位含有量あたりのHCPの含有量が、清澄化された培養物中の抗TFPI抗体の単位含有量あたりのHCPの含有量より少なくとも50,000倍低い高純度抗TFPI抗体組成物として維持される場合、抗TFPI抗体組成物が治療薬として人体に投与される時、それは、免疫原性副作用を低下させるという利点を有し、したがって抗TFPI抗体組成物としてより良い活性を示してもよい。
【0036】
本開示のさらに別の実施形態において、原薬中のHCPの含有量は、10.0ng/mg未満であってもよく、原薬中のLPAの含有量は、1.0ng/mg未満であってもよく、同時に、原薬の結合活性EC50値は3.26ng/mL以下であってもよい。
【0037】
HCPおよびLPAの総含有量が5.0ng/mg以下であり、一方で結合活性EC50値が3.26ng/mL以下である場合、抗体組成物が治療薬として人体に投与される時、それは、免疫原性副作用を低下させ、TFPIに対する抗TFPI抗体の結合親和性を増加させるという利点を有し、したがって抗TFPI抗体組成物としてより良い活性を示してもよい。
【0038】
発明の有利な効果
本開示によれば、HCPおよびLPAの非常に低い含有量を有する高効率の抗TFPI抗体組成物は、ポリマー生成を最小化し、生成されたポリマーを効果的に除去し、濃縮プロセスにおいてすすぎ溶液を再循環させ、したがって精製収率を最大化することにより、提供される。したがって、高効率の抗TFPI抗体組成物は、抗体誘導血友病患者の処置および血液凝固疾患の予防に効果的に使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、本開示の高効率の抗TFPI抗体組成物を産生するための全体的なプロセスのフローチャートを概略的に示す。
【0040】
図2A図2Aは、培養物の採取および清澄化プロセスからウイルス不活化プロセスまでのプロセスにおける物質(substance)中の抗体を確認し、不純物除去パターンを確認するために、非還元条件下で(抗TFPI抗体組成物の固有のサイズである)150kDa(左)および還元条件下で50kDaの重鎖および25kDaの軽鎖(右)でSDS-PAGE分析を実施した結果を示す。示されているSDS-PAGEゲルの試料レーンは次のとおりである:レーン1および9-マーカー;レーン2-清澄化された培養物;レーン3-アフィニティークロマトグラフィー非結合溶液(ACU);レーン4-アフィニティークロマトグラフィー洗浄(ACW);レーン5-アフィニティークロマトグラフィーカラム洗浄(ACCW);レーン6-アフィニティークロマトグラフィー溶出液(ACE);レーン7-アフィニティークロマトグラフィー中和溶出液(ACEN);レーン8-ウイルス不活化溶液(VI)。
【0041】
図2B図2Bは、第1の限外濾過およびダイアフィルトレーションプロセスから第2の混合モードクロマトグラフィープロセスまでのプロセスにおける物質中の抗体を確認し、不純物除去パターンを確認するために、非還元条件下で(抗TFPI抗体組成物の固有のサイズである)150kDa(左)および還元条件下で50kDaの重鎖および25kDaの軽鎖(右)でSDS-PAGE分析を実施した結果を示す。示されているSDS-PAGEゲルの試料レーンは次のとおりである:レーン1および10-マーカー;レーン2-第1のUF保持液;レーン3-第1のUF透過液;レーン4-第1の混合モードフロースルー溶液(1st MM FT);レーン5-第1の混合モードカラム洗浄(1st MM CW);レーン6-第2の混合モードロード溶液(2nd MM Load);レーン7-第2の混合モード非結合溶液(2nd MM非結合);レーン8-第2の混合モード溶出液(2nd MM溶出);レーン9-第2の混合モードカラム洗浄(2nd MM CW)。
【0042】
図2C図2Cは、第2の限外濾過およびダイアフィルトレーションプロセスから原薬製剤(formulation)プロセスまでのプロセスにおける物質中の抗体を確認し、不純物除去パターンを確認するために、非還元条件下で(抗TFPI抗体組成物の固有のサイズである)150kDa(左)および還元条件下で50kDaの重鎖および25kDaの軽鎖(右)でSDS-PAGE分析を実施した結果を示す。示されているSDS-PAGEゲルの試料レーンは次のとおりである:レーン1および8-マーカー;レーン2-第2のUF保持液(2nd UF保持液);レーン3-第2のUF透過液(2nd UF透過液);レーン4-ナノ濾液;レーン5-最終保持液;レーン6-最終濃度透過液;レーン7-原薬。
【0043】
発明のモード
本開示の高効率の抗TFPI抗体組成物は、以下に記載されるような最適化された方法により産生されてもよい。しかしながら、本開示は、本開示の実施形態に限定されるとは解釈されず、最適条件は、処理条件の変化と共に変化してもよい。
【0044】
1.培養物の採取および清澄化
【0045】
培養物の採取および清澄化プロセスは、培養物中に含有される細胞および細胞破片を除去することを目的としている。このプロセスは、15から25℃で実施された。
【0046】
まず、PODホルダーはPODフィルターを順番に取り付けられ、次いで入口および出口以外の部分への液漏れを防ぐためにホルダーのハンドルが回され、フィルターは200から300Lの注入用の水で洗い流された。
【0047】
その後、培養物清澄化バッファーは通されて、ホルダー中に取り付けられたPODフィルターおよび出口に接続された滅菌カプセルフィルターが洗浄された。培養物の採取弁が開かれて培養物の清澄化が開始され、培養物の清澄化中にPODフィルターシステムの圧力は29psi(2バール)を超えないように調整された。
【0048】
上記のように培養物の清澄化が完了した後、後洗浄が培養物清澄化バッファーで実施された。後洗浄が完了した後、そこに回収された清澄化された培養物を含有する容器は、秤量され、次のプロセスにおいて使用された。培養物の採取および清澄化プロセスのプロセスパラメーターおよびQA/PA(品質/パフォーマンス属性)が、以下の表1に示される。
【0049】
【表1】
【0050】
2.アフィニティークロマトグラフィー
【0051】
アフィニティークロマトグラフィープロセスは、培養物から抗TFPI抗体組成物を吸着および回収することを目的としている。このプロセスは、15から25℃でMabselect sure樹脂を使用して実施されたが、これに限定されるものではなく、従来のProtein A樹脂が使用されてもよい。
【0052】
まず、AKTA精製システムを使用してパッキング評価が実施され、適合性が確認された。さらに、CIP溶液は15分間洗い流され、次いで消毒がカラム洗浄バッファーで実施された。
【0053】
平衡化バッファーで平衡化が実施された後、清澄化された培養物は接続して吸着され、カラムを通過した試料は非結合溶液として回収された。吸着が完了した後、再平衡化が平衡化バッファーで洗い流すことにより実施された。このとき、カラムを通過した再平衡化溶液は、未結合溶液と一緒に回収された。再平衡化プロセスが完了した後、カラムは洗浄バッファーで洗浄され、カラムを通過した洗浄溶液は回収された。
【0054】
溶出プロセスにおいて、カラムはアフィニティークロマトグラフィー溶出バッファーで洗い流され、溶出液はゲル体積の0.8倍に達した時点から回収された。上記のように回収された溶出液は、pH調整溶液でpHを4.0から6.0に調整することにより中和され、中和溶出液は次のプロセスまで15から25℃で保存された。プロセスが完了した後、カラム洗浄が実施され、一方で樹脂がカラム洗浄バッファーで洗い流された。カラムCIPはCIPバッファーで15分間実施され、カラムのpHは平衡化バッファーで安定された。その後、カラムはゲル保存液でフラッシングすることにより充填され、次いでシステムから分離して保存された。
【0055】
アフィニティークロマトグラフィープロセスのプロセスパラメーターおよびQA/PAが、以下の表2に示される。
【0056】
【表2】
【0057】
3.ウイルス不活化
【0058】
ウイルス不活化プロセスは、エンベロープウイルスを低pHで不活化することを目的としている。
【0059】
この実験において、ウイルス不活化プロセスは15から25℃で実施された。クリーンブースにおいて、アフィニティークロマトグラフィーからの中和溶出液のpHは、溶出液を攪拌しながらpH調整溶液(0.1M HCl)を加えることにより、基準pHである3.0から3.8(対照pH1)に調整され、ウイルス不活化は、18から24℃で45分から105分間実施された。
【0060】
ウイルス不活化が完了した後、得られた溶液は、pH調整溶液で再びpH4.5から5.5(対照pH2)に調整された。その後、pH調整された処理溶液は、滅菌カプセルフィルターを使用して濾液回収バッグ中に濾過された。濾過が完了した後、ウイルス不活化溶液は、次のプロセスである第1の限外濾過およびダイアフィルトレーションプロセスに供された。ウイルス不活化プロセスのプロセスパラメーターおよびQA/PAが、以下の表3に示される。
【0061】
【表3】
【0062】
4.第1の限外濾過およびダイアフィルトレーション
【0063】
第1の限外濾過およびダイアフィルトレーションプロセスは、ウイルス不活化溶液を第1の混合モードクロマトグラフィープロセスのロード条件下で限外濾過およびダイアフィルトレーションに供することを目的としている。
【0064】
実際のプロセスは、以下のように実施された。
【0065】
UFホルダーはメンブレンを取り付けられ、固定板が押し付けられるように、トルクレンチで所定の圧力まで締め付けられた。組み立てられたUFホルダーは、「UFシステム」と名付けられた。UFシステムは、第1の限外濾過およびダイアフィルトレーションCIP溶液での循環によりCIPに供され、注入用の水ならびに第1の限外濾過およびダイアフィルトレーションバッファーで洗い流されてpHが安定した。
【0066】
その後、TMP圧力は、透過弁および保持弁を調整することにより1.0±0.5バールに調整された。ウイルス不活化溶液が、10±5mg/mLに濃縮され、濃縮体積の5から15倍に相当する平衡化バッファー(第1の限外濾過およびダイアフィルトレーションバッファー)でダイアフィルトレーションされ、次いでpHおよび導電率が基準を満たすかどうかがチェックされ、ダイアフィルトレーションは終了された。
【0067】
その後、0.22μmフィルターが保持液ラインに接続され、後洗浄が濾過と同時に実施された。次いで、透過弁が閉められ、最終保持液量の約10から30vol%に相当するダイアフィルトレーションバッファーが供給ライン中に注入されて濃縮器および供給ライン中に停滞した液体が加圧され、第1の後洗浄が排水なしで実施された。
【0068】
最終保持液量の20から40vol%に相当するダイアフィルトレーションバッファーが供給ライン中に注入されて1分間循環され、次いで第2の後洗浄が実施され、一方ですすぎ溶液が完全に排出され、それにより保持液濃度が最終標的濃度(3から7mg/mL)に調整された。その後、濾過された第1のUF保持液が秤量され、記録紙が取り付けられた。上記のように実施された第1の限外濾過およびダイアフィルトレーションプロセスのプロセスパラメーターおよびQA/PAが、以下の表4に示される。
【0069】
【表4】
【0070】
5.第1の混合モードクロマトグラフィー
【0071】
第1の混合モードクロマトグラフィープロセスは、HCPおよびLPAなどの不純物を除去し、純度を増加させることを目的としている。
【0072】
第1の混合モードクロマトグラフィー精製プロセスは、PPA混合モード樹脂を使用して15から25℃で実施された。まず、パッキング評価がAKTA精製システムを使用して実施され、適合性が確認された。その後、滅菌プロセスは、CIP溶液で洗い流し、カラム洗浄バッファーをカラムに通すことにより実施され、次いで、平衡化プロセスは、平衡化バッファーで洗い流すことにより実施された。
【0073】
上記のプロセスを通して平衡化が完了した後、第1のUF保持液が接続され、次いでフロースループロセスが実施された。第1の混合モードクロマトグラフィー精製について、試料はフロースルーモードプロセスにおいてロードされ、フロースルー溶液の回収はロードの時点から開始された。試料のロードが完了した後、平衡化バッファーが注入され、再平衡化プロセスが実施されてカラム中に残っているフロースルー溶液は完全に回収された。
【0074】
その後、カラム洗浄がカラム洗浄バッファーで洗い流すことにより実施され、カラムCIPがCIPバッファーで実施された。CIPが完了した後、カラムのpHは、平衡化バッファーで洗い流すことにより安定された。その一方、カラムはゲル保存溶液で充填され、次いでシステムから分離して別々に保存された。
【0075】
上記のように実施された第1の混合モードクロマトグラフィープロセスのプロセスパラメーターおよびQA/PAが、以下の表5に示される。
【0076】
【表5】
【0077】
6.第2の混合モードクロマトグラフィー
【0078】
このプロセスは、高分子抗体およびHCPなどの残りの不純物を除去することを目的としている。
【0079】
第2の混合モードクロマトグラフィー精製プロセスは、CHTセラミックヒドロキシアパタイト樹脂を使用して15から25℃で実施された。まず、パッキング評価がAKTA精製システムを使用して実施され、適合性が確認された。
【0080】
その後、第1の混合モードクロマトグラフィーフロースルー溶液は希釈バッファーで1:1の比率で希釈され、pHおよび導電率の基準を満たすかどうかについて確認された。それは、滅菌および濾過後のローディング溶液として使用された。次いで、滅菌は、CIP 1溶液で洗い流し、カラム洗浄バッファーをカラムに通すことにより実施され、平衡化は、平衡化バッファーで洗い流すことにより実施された。上記のように平衡化が完了した後、第2の混合モードクロマトグラフィーローディング溶液は接続され、吸着プロセスは実施された。吸着が完了した後、再平衡化プロセスは、平衡化バッファーで洗い流すことにより実施された。
【0081】
再平衡化が完了した後、カラムは溶出バッファーで洗い流され、溶出液はUVピークが0.1AUを下回るまで回収された。このとき、UVピークが基準を満たしていない時、UV値が基準を満たすように、ゲル体積の2倍に相当する溶出バッファーが追加でロードされた。
【0082】
その後、カラム洗浄は、カラム洗浄バッファーで洗い流すことにより実施された。カラム洗浄プロセスが完了した後、カラムCIPは、CIP2->CIP3->CIP2->CIP1の順で溶液をロードすることにより実施された。さらに、カラムは、ゲル保存液で洗い流すことにより充填され、次いでシステムから分離して保存された。回収された溶出液は、秤量され、次いで濾過され、次のプロセスにおいて使用するまで15から25℃で保存された。第2の混合モードクロマトグラフィープロセスのプロセスパラメーターおよび操作条件は、以下の表6に示される。
【0083】
【表6】
【0084】
7.第2の限外濾過およびダイアフィルトレーション
【0085】
第2の限外濾過およびダイアフィルトレーションプロセスは、第2のMM溶出液を標的濃度に濃縮し、次いで溶出液を製剤バッファーでダイアフィルトレーションすることを目的としている。
【0086】
UFシステムは、第2の限外濾過およびダイアフィルトレーションCIP溶液での循環によりCIPに供され、注入用の水ならびに第2の限外濾過およびダイアフィルトレーションバッファーで洗い流されてpHが安定した。さらに、TMP圧力は、透過弁および保持弁を調整することにより1.0±0.5バールに調整された。
【0087】
その後、第2の混合モードクロマトグラフィー溶出液は20±5mg/mLに濃縮され、濃縮体積の5から15倍に相当する平衡化バッファー(第2の限外濾過およびダイアフィルトレーションバッファー)でダイアフィルトレーションされた。pHおよびその導電率は測定され、それらが基準を満たした時に、ダイアフィルトレーションは終了された。
【0088】
さらに、透過弁は閉じられ、最終保持液質量の10から30vol%に相当する第2の限外濾過およびダイアフィルトレーションバッファーは供給ライン中に注入され、第1の後洗浄は、濃縮器および供給ライン中に停滞した液体を該液体を排出せずに移しながら実施された。
【0089】
その一方、最終保持液量の10から30vol%に相当する第2の限外濾過およびダイアフィルトレーションバッファーは、供給ライン中に注入されて1分間循環され、次いで第2の後洗浄はすすぎ溶液を完全に排出しながら実施され、それにより保持液濃度は標的濃度(10から20mg/mL)に調整された。
【0090】
その後、A1HC(Depth filter、Pre-filter)およびDurapore 0.1μmフィルターのフィルターセットは、第2の限外濾過およびダイアフィルトレーション保持液回収容器に接続され、保持液の濾過は実施された。濾過が完了した後、3から7Lのダイアフィルトレーションバッファーでの後洗浄が実施され、それにより第2の限外濾過およびダイアフィルトレーション保持液の最終濃度は5から15mg/mLに調整された。
【0091】
上記のように濾過された第2の限外濾過およびダイアフィルトレーション保持液は、秤量され、次のプロセスにおいて使用するまで15から25℃で保存された。第2の限外濾過およびダイアフィルトレーションプロセスのプロセスパラメーターおよびQA/PAが、以下の表7に示される。
【0092】
【表7】
【0093】
上記の分析結果から分かるように、第2の限外濾過およびダイアフィルトレーションプロセスを通して得られた抗TFPI抗体組成物中のHCPの含有量は5.3ng/mgであり、抗TFPI抗体組成物中のLPAの含有量は0.4ng/mgであり、HCPおよびLPAの総含有量は5.7ng/mgであった。抗体組成物中のHCPおよびLPAの含有量は上記のように非常に低く、したがって、抗体組成物は抗TFPI抗体組成物として優れた効果を示すことができることが分かった。
【0094】
8.ナノ濾過
【0095】
ナノ濾過プロセスは、ナノフィルターを使用してウイルスを除去することを目的としている。
【0096】
ナノ濾過プロセスは、15から25℃でナノフィルター(Viresolve Pro)を使用して実施された。まず、ナノフィルターは、注入用の水で洗い流され、次いでナノ濾過バッファーで洗浄された。その後、圧力調整器の圧力は2.0±0.5バールに調整され、圧力弁が開かれてナノ濾過が開始された。
【0097】
ナノ濾過が完了した後、後洗浄が1から3Lのナノ濾過バッファーで実施され、次いでナノ濾液が秤量された。ナノ濾過プロセスのプロセスパラメーターおよびQA/PAが、以下の表8に示される。
【0098】
【表8】
【0099】
上記の分析結果から分かるように、ナノ濾過プロセスを通して得られた抗TFPI抗体組成物中のHCPの含有量は4.5ng/mgであり、抗体組成物中のLPAの含有量は0.4ng/mgであり、HCPおよびLPAの総含有量は4.9ng/mgであった。上記のようにHCPおよびLPAの含有量は非常に低く、したがって、抗体組成物は抗TFPI抗体組成物として非常に優れた効果を示すことができることが分かった。
【0100】
9.最終濃縮
【0101】
最終濃縮プロセスは、ナノ濾液を最終目標濃度に濃縮することを目的としている。まず、透過弁は開かれ、CIPは最終濃度CIP溶液での循環により実施され、pHは注入用の水および最終濃度バッファーで洗い流すことにより安定された。
【0102】
その後、透過弁および保持弁を調整することにより、TMP圧力は1.0±0.5バールに調整され、ナノ濾液は36±10mg/mLに濃縮された。濃縮が終了した後、追加濃縮が最終質量の70%まで実施され、次いで、低下した(reduced)30%の10vol%に相当する最終濃度バッファーが注入され、第1の後洗浄が濃縮保存ラインにおいて充填された液体を液漏れなく移しながら実施された。さらに、残りの20vol%に相当する最終濃度バッファーは注入されて1分間循環され、第2の後洗浄はすすぎ溶液を完全に排出しながら実施された。最終濃縮物が得られ、その質量が測定された。最終濃縮プロセスのプロセスパラメーターおよびQA/PAが、以下の表9に示される。
【0103】
【表9】
【0104】
上記の分析結果から分かるように、最終濃縮プロセスを通して得られた抗TFPI抗体組成物中のHCPの含有量は3.9ng/mgであり、抗体組成物中のLPAの含有量は0.5ng/mgであり、HCPおよびLPAの総含有量は4.4ng/mgであった。抗体組成物中のHCPおよびLPAの含有量は上記のように非常に低く、したがって、抗体組成物は抗TFPI抗体組成物として優れた効果を示すことができることが分かった。
【0105】
10.原薬製剤
【0106】
原薬製剤プロセスは、賦形剤のPolysorbate 80を加えることにより原薬の安定性を増加させ、標的濃度で原薬を製剤することを目的としている。
【0107】
まず、賦形剤のPolysorbate 80は最終保持液に加えられ、十分な混合のために撹拌され、撹拌された溶液は0.2μmフィルターを通して濾過され、それにより原薬が製剤された。
【0108】
【表10】
【0109】
上記の分析結果から分かるように、原薬製剤プロセスを通して得られた抗TFPI抗体組成物中のHCP含有量は4.1ng/mgであり、抗体組成物中のLPA含有量は0.4ng/mgであり、抗体組成物中のHCPおよびLPAの総含有量は4.5ng/mgであった。抗体組成物中のHCPおよびLPAの含有量は上記のように非常に低く、したがって、抗体組成物は抗TFPI抗体組成物として優れた効果を示すことができることが分かった。
【0110】
11.SDS-PAGE分析
【0111】
産生された原薬中の抗体を確認し、不純物除去パターンを確認するために、SDS-PAGE分析が、還元および非還元条件下で実施された。
【0112】
抗TFPI抗体組成物がプロセスの間に精製された主要な試料において、非還元条件下で(抗体の固有のサイズである)150kDaのバンド、および還元条件下で50kDaの重鎖および25kDaの軽鎖(図2、3および4)は、メインバンドと見なされた。その結果、非特異的なバンドの発生も不純物の汚染もなかった。さらに、不純物はプロセスの間に除去されたか、または抗体バンドは非結合溶液中のメインバンドとして検出されなかった。
【0113】
ゆえに、本開示の精製プロセスは、不純物、微生物およびウイルスに汚染されていない高効率の抗TFPI抗体組成物を原材料培養物から効果的に産生するための最適なプロセスであることが確認できた。
【0114】
以下、本開示の効果について対照実験を実施することにより得られた結果をまとめた結果が、説明される。
【0115】
A.ポリマー生成の最小化のためのプロセス最適化実験
【0116】
本開示は、アフィニティークロマトグラフィー溶出液を中和するプロセスの導入を通してポリマー生成を最小化することを特徴とする。
【0117】
ポリマー生成を最小化するために、抗TFPI抗体組成物は、アフィニティークロマトグラフィー溶出プロセスのpHを3.2から3.6に維持することにより最初に溶出された。次に、ウイルス不活化は、ウイルスの安定性を確保するために低pHで1時間から1時間30分実施され、次いで次のプロセスはpHを上げて実施された。以下の3つの対照実験は、ポリマー生成が中和プロセスの導入を通して最小化できるかどうかを確認するために実施された。
【0118】
<実験例1>
【0119】
一般的な抗体について、ウイルス不活化を、低pHアフィニティークロマトグラフィー溶出プロセスの直後に実施し、この場合、溶出プロセスからの溶出液の純度は、ウイルス不活化後に96.0%から85%に低下し、そのポリマー含有量は11%増加した。
【0120】
<実験例2>
【0121】
溶出液を、低pHアフィニティークロマトグラフィー溶出プロセス後に、放置してpH調整せずに室温で8から16時間静置し、次いでウイルス不活化プロセスに供した。この場合、溶出直後の96%の純度は、8から16時間の静置に続くウイルス不活化後に83%に低下し、ポリマー含有量は13%増加した。
【0122】
<実験例3>
【0123】
溶出液を、低pHアフィニティークロマトグラフィー溶出プロセス後に、pH4.8から5.2に中和し、放置して室温で8から16時間静置し、次いで再び低pHに滴定し、ウイルス不活化プロセスに供した。この場合、溶出直後の96%の純度はウイルス不活化後に91%に低下し、ポリマー含有量は5%増加した。
【0124】
これらの実験例を考慮すると、アフィニティークロマトグラフィー溶出プロセス直後のpH中和プロセスを通して物質を安定化させ、次いでウイルス不活化プロセスを実施することにより、ポリマーの形成が約2倍阻害されることが確認できた。
【0125】
上記の実験例1から3の結果は、以下の表11に要約される。
【0126】
【表11】
【0127】
13.ポリマー形成と抗TFPI抗体の効果との相関関係の検討
【0128】
ポリマー形成と抗TFPI抗体の効果との相関関係を検討するために、それぞれ100%、90%、および60%のモノマー含有量を有する抗TFPI抗体は、ポリマー形成を増加させることにより構築され、それらの結合活性効力について試験された。
【0129】
100%モノマーで構成される抗TFPI抗体についての結合活性効力試験におけるEC50値は、1.91ng/mLであると決定された。10%の増加したポリマー含有量による90%のモノマー純度を有する抗TFPI抗体についての結合活性効力試験におけるEC50値は、2.53ng/mLであると決定された。40%の増加したポリマー含有量による60%のモノマー純度を有する抗TFPI抗体についての結合活性効力試験におけるEC50値は、3.26ng/mLであると決定された。ポリマー含有量が増加するにつれて、抗体の結合活性は低下すること、および60%のモノマー純度を有する抗TFPI抗体の結合活性効力値は100%のモノマー純度を有する対照と比較して40%以上低下することが、確認された。結果は、以下の表12に要約される。
【0130】
【表12】
【0131】
B.CHT樹脂を通したポリマー除去
【0132】
抗TFPI抗体は、IgG4型抗体であり、IgG1型抗体より高いポリマー生成率を有する。ポリマーが生成されると、TFPIに対する抗TFPI抗体の結合親和性が低下し、したがって該抗体の効果が低下する。したがって、処理条件は、産生プロセスにおいてポリマーが生成されるのを防ぐために、適切に維持される必要がある。それにもかかわらず、高効率の抗体治療剤は、中間プロセスにおいて産生されたポリマーを選択的に除去することにより高純度の抗体試料を産生できる時にのみ、開発されることができる。
【0133】
本発明者らは、抗体中に含有されるポリマーをプロセスの間に選択的に除去するために、スクリーニング後に(最も効率的な精製樹脂CHTセラミックヒドロキシアパタイトである)混合モード樹脂を選択し、最適なポリマー分離条件を確立した。その結果、CHT樹脂を使用した精製プロセスを通して12-23%のポリマーが除去され、したがって100%に近い純度が得られることが確認された。
【0134】
【表13】
【0135】
C.濃縮およびバッファー循環/回収プロセス
【0136】
限外濾過およびダイアフィルトレーションプロセスの回収率は、圧力条件、タンパク質特性およびタンパク質濃度に影響される。
【0137】

ゆえに、回収率は同じ条件下でタンパク質回収法により増加できることが、確認された。つまり、収率はすすぎ溶液を循環させながら膜上に吸着したタンパク質も回収することにより増加できることが、確認された。
図1
図2A
図2B
図2C
【外国語明細書】