IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コフロック株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-魚選別機 図1
  • 特開-魚選別機 図2
  • 特開-魚選別機 図3
  • 特開-魚選別機 図4
  • 特開-魚選別機 図5
  • 特開-魚選別機 図6
  • 特開-魚選別機 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002029
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】魚選別機
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/90 20170101AFI20231228BHJP
【FI】
A01K61/90
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100971
(22)【出願日】2022-06-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】591264429
【氏名又は名称】コフロック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】船井 厚志
(72)【発明者】
【氏名】堀田 勝成
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 宏光
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104AA01
2B104CG20
(57)【要約】
【課題】新規な方法で魚を選別する魚選別機を提供する。
【解決手段】魚選別機は:水および魚Fが流れる流路2;流路2を流れる魚Fを撮像して画像データを得る撮像装置;画像データを画像処理して撮像された魚Fのサイズ及び/又は形状に関する情報を得て、当該撮像された魚Fが、魚Fのサイズ及び/又は形状に基づいて規定された複数のグループのうち、どのグループに属するのかを判定する画像処理部;選別空間30と、水および魚Fを共に流路2から選別空間30に導入し落下させるための導入口31と、選別空間30を落下した魚Fを選別空間30から排出するための複数の排出口32と、を規定するケーシング3;および、魚Fが前記選別空間30を落下している際に当該魚Fに向けてエアを噴射して、当該魚Fを、当該魚Fが属するグループに割り当てられた排出口32へ誘導するための少なくとも1つのエア噴射器4、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚選別機であって、
水および魚が流れる流路と、
前記流路を流れる魚を撮像して画像データを得る撮像装置と、
前記画像データを画像処理して撮像された魚のサイズ及び/又は形状に関する情報を得て、当該撮像された魚が、魚のサイズ及び/又は形状に基づいて規定された複数のグループのうち、どのグループに属するのかを判定する画像処理部と、
選別空間と、水および魚を共に前記流路から前記選別空間に導入し落下させるための導入口と、前記選別空間を落下した魚を前記選別空間から排出するための複数の排出口と、を規定するケーシングと、
魚が前記選別空間を落下している際に当該魚に向けてエアを噴射して、当該魚を、当該魚が属する前記グループに割り当てられた前記排出口へ誘導するための少なくとも1つのエア噴射器と、を備える、魚選別機。
【請求項2】
前記ケーシングは、
前記導入口を有する上面部と、
筒状の側面部と、
前記排出口を有する下面部と、を備え、
前記流路を規定する配管が、前記導入口に上方から接続されており、
水の一部を前記流路の外部に流すための分流穴が、前記配管に、前記導入口から上方に離れたところに形成されており、
前記撮像装置は、前記分流穴から前記導入口までの前記配管内の区間を流れている魚を撮像するように構成されている、
請求項1に記載の魚選別機。
【請求項3】
分流槽が、前記上面部上に形成されて、当該上面部が前記分流槽の底となっており、
前記配管が、前記分流槽を通って前記導入口に上方から接続され、前記分流穴は、前記分流槽より上側に位置し、水の一部は、前記流路から前記分流穴を通って前記分流槽に流れ、
水を前記分流槽から前記選別空間へ排出するための分流出口が前記上面部に複数形成され、それぞれ、前記排出口の真上に位置している、
請求項2に記載の魚選別機。
【請求項4】
前記下面部は、前記排出口のそれぞれに対して設けられて、対応する前記排出口に向かって下向き凹状に形成されたガイド底面を有しており、
隙間が、前記上面部と前記側面部との間に形成されており、
前記分流槽を溢れ出た水が、前記隙間を通って前記選別空間に入り、前記側面部の内面を伝って前記ガイド底面に流れ落ちる、
請求項2に記載の魚選別機。
【請求項5】
複数の前記エア噴射器が、前記排出口のそれぞれに対して設けられており、
魚が前記選別空間を落下している際に、当該魚を、当該魚が属するグループに割り当てられた前記排出口へ誘導するために、当該排出口に対応する前記エア噴射器がエアを噴射する、
請求項1に記載の魚選別機。
【請求項6】
ユーザインターフェースと、
前記ユーザインターフェースを通じた入力に応じて、前記グループの数、前記グループの内容、及び/又は、前記グループに対する前記エア噴射器の割当てを含む選別内容を変更するための設定変更部と、をさらに備える、
請求項1に記載の魚選別機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、魚をサイズ及び/又は形状により選別するための魚選別機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の魚選別機は、特許文献1,2に開示されている。特許文献1の魚選別機は、魚をサイズで選別し、特許文献2の魚選別機は、魚を形状で選別する。特許文献1の魚選別機は、分離用のスクリーンと、魚を滑りやすくするために水を噴霧するシャワー手段とを備える。特許文献2の魚選別機は、撮像容器に投入された魚を撮像するカメラと、魚の画像データを画像処理して魚が良品か不良品かを判別する画像処理装置と、画像処理による判別結果に基づいて、良品ゲートまたは不良品ゲートを開閉するための機構とを有する。
【0003】
魚選別機は、例えば養殖の分野や、魚の食品加工の分野などで従来から広く利用されている。魚選別機は、通常、生きた魚を選別する。魚は、選別後においても、生きた状態が保たれるべきである。したがって、魚への物理的損傷をより低減するような、及び/又は、大気に曝す時間を短くするといった魚へのストレスをより低減するような構成を有する魚選別機が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-5395号公報
【特許文献2】特開平5-161448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、新規な方法で魚を選別する魚選別機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、魚選別機であって、
水および魚が流れる流路と、
前記流路を流れる魚を撮像して画像データを得る撮像装置と、
前記画像データを画像処理して撮像された魚のサイズ及び/又は形状に関する情報を得て、当該撮像された魚が、魚のサイズ及び/又は形状に基づいて規定された複数のグループのうち、どのグループに属するのかを判定する画像処理部と、
選別空間と、水および魚を共に前記流路から前記選別空間に導入し落下させるための導入口と、前記選別空間を落下した魚を前記選別空間から排出するための複数の排出口と、を規定するケーシングと、
魚が前記選別空間を落下している際に当該魚に向けてエアを噴射して、当該魚を、当該魚が属する前記グループに割り当てられた前記排出口へ誘導するための少なくとも1つのエア噴射器と、を備える。
【0007】
前記ケーシングは、
前記導入口を有する上面部と、
筒状の側面部と、
前記排出口を有する下面部と、を備え、
前記流路を規定する配管が、前記導入口に上方から接続されており、
水の一部を前記流路の外部に流すための分流穴が、前記配管に、前記導入口から上方に離れたところに形成されており、
前記撮像装置は、前記分流穴から前記導入口までの前記配管内の区間を流れている魚を撮像するように構成されてよい。
【0008】
分流槽が、前記上面部上に形成されて、当該上面部が前記分流槽の底となっており、
前記配管が、前記分流槽を通って前記導入口に上方から接続され、前記分流穴は、前記分流槽より上側に位置し、水の一部は、前記流路から前記分流穴を通って前記分流槽に流れ、
水を前記分流槽から前記選別空間へ排出するための分流出口が前記上面部に複数形成され、それぞれ、前記排出口の真上に位置してよい。
【0009】
前記下面部は、前記排出口のそれぞれに対して設けられて、対応する前記排出口に向かって下向き凹状に形成されたガイド底面を有しており、
隙間が、前記上面部と前記側面部との間に形成されており、
前記分流槽を溢れ出た水が、前記隙間を通って前記選別空間に入り、前記側面部の内面を伝って前記ガイド底面に流れ落ちてよい。
【0010】
複数の前記エア噴射器が、前記排出口のそれぞれに対して設けられており、
魚が前記選別空間を落下している際に、当該魚を、当該魚が属するグループに割り当てられた前記排出口へ誘導するために、当該排出口に対応する前記エア噴射器がエアを噴射してよい。
【0011】
前記魚選別機は、さらに、
ユーザインターフェースと、
前記ユーザインターフェースを通じた入力に応じて、前記グループの数、前記グループの内容、及び/又は、前記グループに対する前記排出口の割当てを含む選別内容を変更する設定変更部と、を備えてよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の例示の魚選別機を含むシステムを概略的に示す。
図2図2Aは、排出口とエア噴射器との位置関係を例示する上面図である。図2Bは、図2Aの受け部を詳細に示す。
図3図1の領域Tにおける魚を撮像するための構造を例示する。
図4】魚を選別するための構成を例示するブロック図を示す。
図5】魚の画像データを例示する。
図6】魚の選別動作を説明するための図である。
図7】魚の選別動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態が説明される。図面は、必ずしも正寸ではなく、機能および作用を例示するにすぎない。例示の魚選別機を含むシステムが、概略的に図1に示されている。実施形態の魚選別機1は、生きた稚魚を選別するために用いられている。
【0014】
魚選別機1は、ポンプ10と、生簀C1に接続された流路2とを備えている。選別前の複数の魚Fが生簀C1内に水棲している。魚Fと水(海水魚なら海水)が、ポンプ10により生簀C1から流路2へ流れ出る。流路2の下流部分は、配管20によって規定されている。ポンプ10による水量は、選別する魚の数等に基づいてインバータ制御される。
【0015】
魚選別機1は、選別空間30、導入口31、および、複数の排出口32を規定するケーシング3を備える。ケーシング3は、導入口31を有する上面部33、円筒状の側面部34、排出口32を有する下面部35、および、上側のカバー部36と、を備える。選別空間30は、上面部33、側面部34、および、下面部35によって囲まれた空間である。
【0016】
導入口31は、上面部33の中央部分に形成されている。配管20の下流部分は上下方向に延在して、カバー部36の開口を通って導入口31に接続されている。したがって、水が、ポンプ10によって、生簀C1から、流路2および導入口31を通って選別空間30に導入され、選別空間30内を流れ落ちる(図1の水流を示す矢印W1参照)。そして、魚Fも水とともに導入口31から選別空間30に導入され、選別空間30内を落下する。
【0017】
下面部35は、下方に延在する管状部分350を複数有しており、各管状部分350の下端口が排出口32として形成されている。実施形態では、4つの排出口32(図2A参照)が形成されている。排出口32のそれぞれは、選別された魚Fを水棲させるための選別生簀C2に接続されている。
【0018】
下面部35は、排出口32のそれぞれに対して設けられ、対応する排出口32に向かって下向き凹状に形成され、水および魚Fを対応する排出口32に案内するための複数(実施形態では4つ)のガイド底面351を備える。
【0019】
下面部35は、導入口31の真下に位置して、下向き凹状に形成され、導入口31から落下した水を受ける受け部352を備える。受け部352は、後述の通り選別不良により真下に落下した魚Fも受ける。図2Bの通り、受け部352は、4つのポート353を有する。これらは、排出口32と対応付けられており、それぞれが、ガイド底面351と繋がっている。受け部352の水位が上がると、水は、受け部352から4つのポート353のいずれかを通ってガイド底面351上へ排出され、それから、排出口32から排出される。なお、これらのポート353には、1つ(図2Bでは、353(D))をのぞいて、網が設けられおり(網は黒塗りによって示されている)、選別されなかった魚Fは、この1つのポート353(D)からだけ排出され、そして、排出口32(D)(図2A参照)からだけ排出される。
【0020】
図1の通り、分流槽11が上面部33上に形成されている。上面部33は、分流槽11の底となっている。配管20は、その下流側において、分流槽11を通って導入口31に上方から接続されている。複数の分流穴200が、例えばパンチングなどの手段によって、配管20に、導入口31から上方に離れたところで、より具体的には分流槽11より上側の位置において、その全周に渡って形成されている。これにより、流路2内の水の一部が分流穴200を通って流路2の外部に、具体的には分流槽11へ流れ出る。各分流穴200は、選別される魚Fが通過できない大きさになっており、水のみが通過する。そして、分流穴200から導入口31までの区間を規定する配管20の下端部分20Aは、分流槽11内に進入しており、この下端部分20Aの周壁には穴が形成されていない。
【0021】
したがって、下端部分20Aを容器とみなし、かつ、上面部33の導入口31を、下端部分20A(容器)の底穴とみなすことができるので、導入口31からの水の流出速度は、トリチェリの定理により、下端部分20Aの水位に依存する。具体的には、下端部分20Aの水位をh(図1参照;図1では下端部分20Aが満水で水位hが下端部分20Aの高さに等しい状態である)とし、重力加速度をgとし、水の流出速度をvとすると、以下の数1が成立する。
【0022】
【数1】
【0023】
水位hを一定とすれば、流出速度vを、したがって導入口31からの排出流量を一定にすることができる。仮に、下端部分20A(みなし容器部分)が上から下まで実質的に同一胴径であり、かつ、導出口31からの排出流量が一定なら、下端部分20A内の流速も、下端部分20Aの容量によって決定され、一定になる。これは、後述する魚Fの選別のために非常に有効である。
【0024】
複数(実施形態では4つ)の分水出口37が、上面部33に形成されている。分水出口37は、排出口32のそれぞれに対して設けられ、対応する排出口32の真上に位置している。水が、分流槽11から、分水出口37を通って、選別空間30内を流れ落ち、排出口32から排出される(図1の水流を示す矢印W2参照)。これは、選別された魚Fを水で満たしながら選別生簀C2へ流すために設けられている。
【0025】
隙間38が、上面部33と側面部34との間に形成されている。これにより、分流槽11から溢れ出た水が隙間38を通って、選別空間30内に入り、側面部34の内面を伝ってガイド底面351、排出口32へ流れ落ちるようになっている(図1の水流を示す点線矢印W3参照)。
【0026】
魚選別機1は、魚Fおよび水が導入口31を通過後に選別空間30内を流れ落ちる際に、魚Fおよび水に向けてエアを噴射するエア噴射器4を備える。複数(実施形態では4つ)のエア噴射器4が設けられ(図2参照)、排出口32のそれぞれに対して設けられている。
【0027】
エア噴射器4のノズルがケーシング3の側面部34を貫通して、その先端の噴射口が選別空間30内に位置し、不図示の供給源から圧縮されたエアが注入されるエア入口がケーシング3の外に位置している。各エア噴射器4の噴射口は、導入口31の真下の1つの共通の位置(以下、選別ポイントP)に向けられている。なお、図2Aの通り、エア噴射器4のノズルは、分水出口37からの水流W2と干渉しないように、湾曲部分を有する。
【0028】
図3は、図1の領域Tの部分を詳細に示す。魚選別機1は、流路2を流れている魚Fを撮像して画像データを取得するように構成された撮像装置5を備える。撮像装置5は、配管20に、より具体的にはその下端部分20Aに設けられた透明な窓50を備える。窓50は、例えば、強化透明ガラス/アクリルであって、結像の歪みを防止するために平面状である。下端部分20Aは、平面状の窓50を装着可能な大きさの平面部分を有すればよく、例えば角パイプによって構成されてよい。
【0029】
撮像装置5は、配管20の外に設けられ、窓50を通じて、下端部分20A内を下向きに流れる魚Fを撮像するカメラ51と、配管20の外に設けられ、窓50を通じて下端部分20A内に光を照射する少なくとも1つの光源52とをさらに備える。実施形態では、水中で稚魚のような小さい魚Fの像を捉えやすいように、カメラ51として、近接外線カメラが用いられ、光源52として、可視光に加えて近赤外線を照射する近赤外線LEDが用いられている。
【0030】
なお、ガイド12が配管20の下端部分20A内に設けられている。ガイド12は、魚Fが通過できる範囲を局所的に狭め、魚Fが一匹ずつ窓50の傍の撮像領域Rを通過するように魚Fを案内し、サイズおよび形状を測定しやすい姿勢でカメラ51に撮像されることを補助する。
【0031】
こうして、魚Fが撮像領域Rを通過すると撮像装置5によって撮像され、図5に例示されるような魚Fの画像データが次々に得られる。なお、水位hを一定とすれば、下端部分20A内の流速が下端部分20Aの容量(内径および高さ)によって決定されることは上述の通りである。したがって、魚選別機1は、下端部分20Aの容量を設計段階で調整しておけば、魚選別機1の運転中の下端部分20A内の流速を、したがって下端部分20内を流れる魚Fの速度を所望の速度に調整できる構成となっている。例えば、下端部分20Aの容量は、下端部分20A内の魚Fの自由行動が抑制さるような内径を有し、かつ、撮像装置5が、魚Fをピンボケになどの問題がなく選別作業にとって適切な撮像能力(例えば、100匹/分)で撮像できる流速になるように、予め決定される。
【0032】
図4の通り、魚選別機1は、制御装置6を備えている。制御装置6は、画像処理部60を備えている。画像処理部60は、撮像装置5によって得られた魚Fの画像データを画像処理して、当該魚Fのサイズ及び/又は形状に関する情報を取得する。
【0033】
実施形態の画像処理部60は、魚Fのサイズに関する情報として、撮像された魚Fの長さを測定するサイズ測定部600を備える。実施形態では、魚Fの長さの測定として、全長の測定が行われる。これに代えて、体長または尾叉長のいずれかの測定が行われてもよい。サイズ測定部600は、2値化による輪郭抽出などといった例えば特許文献2に開示された周知の画像処理技術を用いて魚Fの長さを測定する。画像データを用いた被撮像物の寸法測定技術は周知であるためその説明は省略される。
【0034】
実施形態の画像処理部60は、魚Fの形状に関する情報を得るために、撮像された魚Fが正常な形状か奇形かを判定する形状判定部601を備える。形状判定部601は、学習済みモデルを有してよい。この学習済みモデルは、一般的なニューラルネットワーク等の機械学習アルゴリズムを用い、正常な形状とラベル付けされた正常な形状の魚の多数の画像データおよび奇形の魚とラベル付けされた奇形の魚の多数の画像データを教師データとした機械学習によって、生成されたものである。この学習済みモデルは、魚Fの画像データの入力を受けると、その魚Fが正常な形状か奇形かを判別(分類)する。
【0035】
画像処理部60は、さらに、サイズ測定部600からのサイズに関する情報、形状判定部601からの形状に関する情報を用いて、撮像された魚Fを、魚のサイズ及び形状に基づいて規定される複数のグループのうちいずれのグループに属するのかを判定する分類部602を備える。
【0036】
実施形態では、4つのグループが設定されている。全長が大きい(例えば、全長が6cm以上)正常な形状の魚は、グループ(A)に分類される。全長が中程度の(例えば、全長が、5cmより大きく6cm未満)正常な形状の魚は、グループ(B)に分類される。全長が小さい(例えば、全長が5cm以下)正常な形状の魚は、グループ(C)に分類される。全長に関わらず奇形の魚は、グループ(D)に分類される。
【0037】
図2Aの通り、排出口32およびエア噴射器4は、グループ(A)~(D)のそれぞれに対して割り当てられている。参照符号の後に付された(A)は、グループ(A)に割り当てられた排出口32/エア噴射器4を示す。(B),(C),(D)も同様である。
【0038】
図4の通り、制御装置6は、エア噴射器4を制御する噴射器制御部61を備える。噴射器制御部61は、分類部602から、魚Fがどのグループに属しているのかに関する分類情報を示す信号を受信する。噴射器制御部61は、その信号に応答して、4つのエア噴射器4(A)~(D)の中から作動させるべき1つを決定し、所定の時間後に、決定されたエア噴射器4を作動させて、これに、圧縮されたエアを噴射させる。それによって、落下している魚Fがちょうど選別ポイントP(図1)を通過するときに、エアを、当該魚Fに当てて、当該魚Fを、当該魚Fが属するグループに割り当てられた排出口32へと誘導する。
【0039】
噴射のタイミングについて:魚は、内蔵器の空気袋より、水の比重とほぼ同じなので、魚の自由行動を抑制すれば、水流速度=魚の移動速度となる。撮像領域R(図3)から選別ポイントP(図1)までの距離は既知である。けれども、水および魚Fが移動する時間は、通常は、ポンプ10の流量等に強く依存するので、撮像領域Rから選別ポイントPに達する時間を一定にするのは難しく、エア噴射のタイミングをとるのは難しく思える。しかしながら、水位h(図1)を一定とすれば、上述の通り、配管20の下端部分20A内の流速を一定にでき、かつ、排出口31からの排出速度v・流量を一定にでき、結果的に、魚Fが撮像領域RからポイントPに達する時間を実質的に固定できる。
【0040】
したがって、噴射器制御部61は、分類情報を示す信号を受けてから、R-P間距離および流出速度vによって割り出される所定のタイミングで、エア噴射器4にエアを噴射させることで、エアを水と共に落下する魚Fに選別ポイントPにて当てることができる。
【0041】
以下、図6図7を参照して、魚選別機1による一連の選別動作が説明される。魚の図示は、正寸ではない。魚Fa,Fb・・・が、ポンプ10によって生簀C1から流路2に供給される。なお、運転中、下端部分20Aは、常に満水状態にされて水位h(図7)が一定(下端部分20Aの高さと同じ)とされることで、魚Fが撮像領域Rから選別ポイントPにまで達する時間が実質的に固定されている。
【0042】
図6の通り、魚Faが撮像領域Rを通過するとき、撮像装置5によって撮像されて、当該魚Faの画像データが取得される。
【0043】
次いで、画像処理部60は、撮像装置5から魚Faの画像データを受信すると、上記のように画像処理をしてサイズ(全長)および形状(正常な形状か奇形か)に関する情報を取得し、当該情報に基づいて、魚Faをいずれか1つのグループに分類する。すなわち、画像処理部60は、魚Faが、グループ(A)(大)、グループ(B)(中)、グループ(C)(小)、グループ(D)(奇)のいずれのグループに属するかを判定する。
【0044】
次いで、噴射器制御部61は、画像処理部60から魚Faの分類結果を示す信号を受信すると、当該結果に基づいて、魚Faが属するグループに割り当てられたエア噴射器4を作動させることを決定し、決定されたエア噴射器4を、当該信号の受信をトリガーとして、所定のタイミングで作動させて、これに圧縮されたエアを噴射させる。すると、図7の通り、魚Faが水と共に落下して選別ポイントPを通過するときに、エアが魚Faに当たって、魚Faが属するグループに割り当てられた排出口32に誘導される。例えば、魚Faがグループ(A)に属すると判定されている場合、エア噴射器4(A)がエアを噴射して、魚Faを排出口32(A)に誘導する。(B),(C),(D)に属する場合も同様である。
【0045】
エアが当てられた魚Faは、ケーシング3の内壁(例えば、側面部34の内面やガイド底面351)にぶつかり、水流W1,W2またはW3によってガイド底面351から排出口32に流され、その排出口32から排出され、選別生簀C2に溜められる。例えば、魚Faが、側面部34の内面にぶつかって張り付いたときには、水流W3によって流し落とされる。
【0046】
ここで、水流W1,W2,W3の通り、選別空間30内を流れ落ちた水が、ガイド底面351に一時的に溜まる。このガイド底面351に一時的に溜まった水が、魚Faがぶつかるときの衝撃を吸収するクッションとして機能する。当然ながら、エアの噴射量は、魚Faがケーシング3の内壁にぶつかったときに死なない程度に予め調整されている。
【0047】
このような一連の選別動作が、魚Faに続いて魚Fbに対しても行われ、魚Fa,Fb・・・が次々に選別される。
【0048】
なお、画像処理で魚の情報が適切に得られない、エアが選別ポイントPで適切に魚Fに当たらないなどの理由によって選別の不良が生じ得る。この場合、魚Fは、受け部352に落下する。この魚Fは、上述の通り、唯一網が設けられていない奇形グループ(D)のポート353(D)を通って、排出口32(D)から排出される。
【0049】
特許文献1のスリットおよびシャワー圧を利用する魚選別機では、ウロコの剥がれ、胸ビレやエラの折れ曲りといった物理的損傷のリスクが高く、また大気に曝される時間も長いのでストレスも大きく、選別中に死に至るリスクが、とりわけ稚魚の場合には非常に高いので、小さい魚には不向きである。一方、実施形態の魚選別機1は、流路2を流れる魚Fを撮像し、画像処理し、水と共に落下する魚Fにエアを噴射するという新規な選別方法を利用することで、魚が大気に曝される時間を極力抑えており、それによって、魚へのストレスを抑えている。また、実施形態の魚選別機1は、滞留した水によるクッション機能により選別時の衝撃も緩和している。結果的に、実施形態の魚選別機1は、選別後の魚の生存率の向上をもたらすものであって、デリケートな生きた稚魚の選別に非常に適している。
【0050】
また、特許文献2の魚選別機は、魚を一匹ずつ撮像容器に投入して撮像することを必要とし、かつ、画像処理の結果に基づいて良品ゲートおよび不良品ゲートを開閉させるための機構を必要としている。一方の実施形態の魚選別機1は、流路2を流れている魚Fを撮像しており、魚Fを撮像容器内に一時的に溜めておくことを必要とせず、また、水と共に落下する魚Fにエアを噴射しているので、ゲートを開閉する機構を必要としない。したがって、実施形態の魚選別機1は、素早い選別を可能にする。
【0051】
魚選別機1は、淡水魚にも海水魚にも適用可能である。カバー部36や上面部33を外してケーシング3内を清掃することができる。ベアリング、ギア、アーム等の機械的に作動する可動部を無くしていることも特徴の一つである。海水の場合、可動部は塩害によるダメージを最も受けやすい。魚選別機1は、可動部がないので耐久性が高い。また、魚選別機1が海上の筏上に設置されるとき真水での洗浄ができないが、可動部がないので海水での洗浄が可能である。
【0052】
撮像装置5が、ハウジング53によってユニット化されており、配管20に対して着脱可能であり、カメラ51を、最新のものに取り換えたりするなど、魚選別機1の他の構成部品をそのままにして、アップデートできる。画像処理部60も、最新の画像処理プログラムに簡単にアップデートできる。
【0053】
カメラ51や光源52はハウジング53に収容されており、水が充填されているわけではない。大気側温度と水中温度との差によって、窓50のカメラ51側の面に結露が生じて、画像ボケが生じ得る。この対策として、図3の通り、エアドライヤ13(例えば、メンブレンドライヤ)が設けられ、圧縮されたドライエアをハウジング53内に供給して、結露を、したがって結露により生じ得る画像ボケを防止する。エアドライヤ13の供給量は、使用する撮像装置5の大きさ等に応じて適宜決定される。
【0054】
窓50の流路2側の面には、水中の浮遊物や魚の粘膜などによって汚れが付着して、画像ボケが生じ得る。この対策として、図3の清掃用エア噴射器14が、圧縮されたエアを水中で窓50の流路2側の面に向けて噴射できるように配管20に接続されている。ガイド12には、複数の穴が形成されており、エアの通過を許容する。さらに、画像処理部60は、図示されていないが、画像処理によって、窓50への固形物の貼り付きといった汚れを検出する汚れ検出部を備えている。汚れ検出部が汚れを検出したときに、清掃用エア噴射器14が制御装置6によって制御されて、エアを水中に噴射して攪乱水流を生じさせ、窓50の流路2側の面を清掃する。
【0055】
エア噴射器4は、一定時間エアを噴射しなかったときには、強制的にエアを噴出して、清掃を行う。
【0056】
得られた画像データ、魚のサイズおよび形状の測定・判別結果、選別した魚の総数、各グループに該当した魚の数といった選別動作によって得られる情報は、リアルタイムベースで、図4の情報記憶部62に記録されてよい。情報記憶部62に記憶された情報は、その後に、研究材料として用いられてよい。例えば、奇形の魚の画像データが、個体単族か伝染病等の研究に活用されてよい。また、不図示の外部装置(例えば、遠隔地にあるユーザのパソコン、スマートフォン)が、インターネットなどの通信手段を介して、情報記憶部62に記憶された情報にリアルタイムでアクセスできるとよい。
【0057】
形状判定部601は、上記学習済みモデルを用いて奇形か否かを判定するものに代えて、特許文献2に開示された画像処理技術を用いて、魚Fの形状に関する情報として、魚Fが良品か不良品かを判定してもよい。
【0058】
魚選別機1は、さらに、図4の通り、ユーザによって操作されるユーザインターフェース15と、ユーザインターフェース15を通じた入力に応じて、エア噴射器4の設定や選別内容を変更する設定変更部63を備えてよい。ユーザインターフェース15は、例えば、キーボードや、タッチパネルディスプレに表示された設定画面等でよい。設定変更部63は、ユーザによるユーザインターフェース15を通じた入力に応答して、以下の設定変更を行ってよい。
【0059】
例えば、設定変更部63は、エア噴射器4のエアの噴射時間及び/又はエア圧を変更してよい。そして、噴射器制御部61は、変更された値に従って各エア噴射器4の噴射時間及び/又はエア圧を制御する。
【0060】
変更可能な選別内容は、例えば、グループの数、グループの内容、及び/又は、グループへの排出口32の割当てといったものを含む。例えば、上記実施形態では、魚が4つのグループに選別されるように設定されていた。
【0061】
設定変更部63は、魚が正常な形状か奇形かといった魚形状によってのみ規定される2つのグループに選別されるように、または、大きい魚(例えば、全長が5cm以上)と小さい魚(例えば、全長が5cm未満)といった、魚のサイズによってのみ規定される2つグループに選別されるように、2つのグループを設定してよい。また、それに応じて、設定変更部63は、第1グループには、排出口32(A)・エア噴射器4(A)、第2グループには、排出口32(D)・エア噴射器4(D)といったように、改めて規定されたグループに対して排出口32・エア噴射器4を割り当ててよい。そして、変更された選別内容に従って、画像処理部60は画像処理して分類を行い、噴射器制御部61はエア噴射器4を制御する。
【0062】
その他、設定変更部63によって、例えば上記(大)、(中)、(小)、(奇)のグループのうち、グループ(大)に対して、排出口32(A)・エア噴射器4(A)ではなく、排出口32(B)・エア噴射器4(B)を割り当てるといったように、割当てのみが変更されてもよい。設定変更部63は、例えば、グループ(大)、グループ(小)、グループ(奇)といった、または、グループ(大)、グループ(中)、グループ(小)といった3つのグループを設定してもよい。
【0063】
設定変更部63は、上記実施形態では全長が6cm以上の正常な形状の魚をグループ(A)(大)と設定していたが、例えば、グループ(A)(大)を、全長が7cm以上の正常な魚とするといったように、グループの具体的な内容を変更できるように構成されてもよい。
【0064】
なお、実施形態では、4つの排出口32を有するケーシング3が用いられていたが、これに代えて、2つ、3つ、又は5つ以上の排出口32を有するケーシング3が用いられてよい。
【0065】
例えば、複数の排出口32のうち1つ排出口32を導入口31の真下に設けて、この排出口32から魚を排出するときには、エア噴射器4を使用しないでただ落下させ、他の排出口32から魚を排出するときには、エア噴射器4を使用して、魚Fを選別する構成も考えられる。
【符号の説明】
【0066】
1 魚選別機
11 分流槽
15 ユーザインターフェース
2 流路
20 配管
200 分流穴
3 ケーシング
30 選別空間
31 導入口
32 排出口
33 上面部
34 側面部
35 下面部
351 ガイド底面
37 分水出口
38 隙間
4 エア噴射器
5 撮像装置
60 画像処理部
600 サイズ測定部
601 形状判定部
602 分類部
63 設定変更部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-11-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚選別機であって、
水および魚が流れる流路と、
前記流路を流れる魚を撮像して画像データを得る撮像装置と、
前記画像データを画像処理して撮像された魚のサイズ及び/又は形状に関する情報を得て、当該撮像された魚が、魚のサイズ及び/又は形状に基づいて規定された複数のグループのうち、どのグループに属するのかを判定する画像処理部と、
選別空間と、水および魚を共に前記流路から前記選別空間に導入し落下させるための導入口と、前記選別空間を落下した魚を前記選別空間から排出するための複数の排出口と、を規定するケーシングと、
魚が前記選別空間を落下している際に当該魚に向けてエアを噴射して、当該魚を、当該魚が属する前記グループに割り当てられた前記排出口へ誘導するための少なくとも1つのエア噴射器と、を備え
前記ケーシングは、
前記導入口を有する上面部と、
筒状の側面部と、
前記排出口を有する下面部と、を備え、
前記流路を規定する配管が、前記導入口に上方から接続されており、
水の一部を前記流路の外部に流すための分流穴が、前記配管に、前記導入口から上方に離れたところに形成されており、
前記撮像装置は、前記分流穴から前記導入口までの前記配管内の区間を流れている魚を撮像するように構成されている、
魚選別機。
【請求項2】
分流槽が、前記上面部上に形成されて、当該上面部が前記分流槽の底となっており、
前記配管が、前記分流槽を通って前記導入口に上方から接続され、前記分流穴は、前記分流槽より上側に位置し、水の一部は、前記流路から前記分流穴を通って前記分流槽に流れ、
水を前記分流槽から前記選別空間へ排出するための分流出口が前記上面部に複数形成され、それぞれ、前記排出口の真上に位置している、
請求項に記載の魚選別機。
【請求項3】
前記下面部は、前記排出口のそれぞれに対して設けられて、対応する前記排出口に向かって下向き凹状に形成されたガイド底面を有しており、
隙間が、前記上面部と前記側面部との間に形成されており、
前記分流槽を溢れ出た水が、前記隙間を通って前記選別空間に入り、前記側面部の内面を伝って前記ガイド底面に流れ落ちる、
請求項に記載の魚選別機。
【請求項4】
複数の前記エア噴射器が、前記排出口のそれぞれに対して設けられており、
魚が前記選別空間を落下している際に、当該魚を、当該魚が属するグループに割り当てられた前記排出口へ誘導するために、当該排出口に対応する前記エア噴射器がエアを噴射する、
請求項1に記載の魚選別機。
【請求項5】
ユーザインターフェースと、
前記ユーザインターフェースを通じた入力に応じて、前記グループの数、前記グループの内容、及び/又は、前記グループに対する前記エア噴射器の割当てを含む選別内容を変更するための設定変更部と、をさらに備える、
請求項1に記載の魚選別機。