(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002031
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】基材フィルムの回収方法および回収装置、ならびに基材フィルムの検査方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100975
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中井 康博
(72)【発明者】
【氏名】谷野 聖
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 維允
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA27
4F401AC20
4F401AD07
4F401BA13
4F401BB09
4F401CA36
4F401CA39
4F401CA41
4F401EA46
4F401FA11X
(57)【要約】
【課題】被膜付き基材フィルムの表面から、被膜を除去する基材フィルムの回収方法、および基材フィルムの回収装置を提供する。
【解決手段】
本発明の基材フィルムの回収方法は、基材フィルムの少なくとも片面に付与された発光剤を含む被膜を剥離した後に、基材フィルムに光を照射し、発光剤由来の光を観察することで被膜が残っているかどうかを判定することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも片面に蛍光剤を含む被膜を有する被膜付きフィルムから前記基材フィルムを回収する方法であって、
前記被膜付きフィルムから前記被膜を剥離する剥離工程と、
前記剥離工程の後で、前記基材フィルムに紫外線を照射して、前記基材フィルムの前記紫外線が照射されている領域を観察し、前記蛍光剤に由来する発光が観察されるかどうかで、前記基材フィルムに前記被膜が残っているかどうかを検査する検査工程と、
を有する、基材フィルムの回収方法。
【請求項2】
基材フィルムの少なくとも片面に着色剤を含む被膜を有する被膜付きフィルムから前記基材フィルムを回収する方法であって、
前記被膜付きフィルムから前記被膜を剥離する剥離工程と、
前記剥離工程の後で、前記基材フィルムに可視光を照射して、前記基材フィルムの前記可視光が照射されている領域を観察し、前記着色剤に由来する色が観察されるかどうかで、前記基材フィルムに前記被膜が残っているかどうかを検査する検査工程と、
を有する、基材フィルムの回収方法。
【請求項3】
前記被膜が水溶性樹脂を含み、
前記被膜剥離工程の前で、前記被膜に洗浄液を接触させる洗浄液接触工程を有し、
前記剥離工程において、前記被膜付きフィルムから前記洗浄液を含む前記被膜を剥離する、
請求項1または2の基材フィルムの回収方法。
【請求項4】
基材フィルムの少なくとも片面に蛍光剤を含む被膜を有する被膜付きフィルムから前記基材フィルムを回収する装置であって、
前記被膜付きフィルムから前記被膜を剥離する剥離手段と、
前記剥離手段で前記被膜が剥離された前記基材フィルムに紫外線を照射する照射手段と、
前記基材フィルムの前記紫外線が照射されている領域を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像の中に、前記蛍光剤に由来する発光が観察されるかどうかで、前記基材フィルムに前記被膜が残っているかどうかを判定する判定手段と、
を有する、基材フィルムの回収装置。
【請求項5】
基材フィルムの少なくとも片面に着色剤を含む被膜を有する被膜付きフィルムから前 記基材フィルムを回収する装置であって、
前記被膜付きフィルムから前記被膜を剥離する剥離手段と、
前記剥離手段で前記被膜が剥離された前記基材フィルムに可視光を照射する照射手段と、
前記基材フィルムの前記可視光が照射されている領域を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像の中に、前記着色剤に由来する色が観察されるかどうかで、前記基材フィルムに前記被膜が残っているかどうかを判定する判定手段と、
を有する、基材フィルムの回収装置。
【請求項6】
前記被膜が水溶性樹脂を含み、
前記被膜に洗浄液を接触させる洗浄液接触手段を有し、
前記剥離手段で、前記被膜付きフィルムから前記洗浄液を含む前記被膜を剥離する、
請求項4または5の基材フィルムの回収装置。
【請求項7】
基材フィルムの少なくとも片面に蛍光剤を含む被膜を有する被膜付きフィルムから、当該被膜を剥離する工程を経て得られた前記基材フィルムを検査する方法であって、
前記基材フィルムに紫外線を照射して、前記基材フィルムの前記紫外線が照射されている領域を観察し、前記蛍光剤に由来する発光が観察されるかどうかで、前記基材フィルムに前記被膜が残っているかどうかを検査する、基材フィルムの検査方法。
【請求項8】
基材フィルムの少なくとも片面に着色剤を含む被膜を有する被膜付きフィルムから、当該被膜を剥離する工程を経て得られた前記基材フィルムを検査する方法であって、
前記基材フィルムに可視光を照射して、前記基材フィルムの前記可視光が照射されている領域を観察し、前記着色剤に由来する色が観察されるかどうかで、前記基材フィルムに前記被膜が残っているかどうかを検査する、基材フィルムの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被膜付きフィルムから被膜を剥離し、その被膜が除去されているかどうかを確認したうえで基材フィルムを回収できる回収方法および回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは様々な分野に利用されている一方、マイクロプラスチックなど海洋汚染の原因物とされ、プラスチックによる環境負荷低減が急務となっている。
【0003】
また近年、IoT(Internet of Things)の進化により、コンピュータやスマートフォンに搭載されるCPUなどの電子デバイスが増加し、それに伴い、電子デバイスを駆動するために必要な積層セラミックコンデンサー(MLCC)の数も急激に増加している。このMLCCの一般的な製造方法は、プラスチックの基材フィルム上に離型層を形成した離型フィルムをキャリアシートとして使用し、該離型フィルム上にセラミックグリーンシート層を形成する工程と、該セラミックグリーンシート層を剥離してセラミックグリーンシートとする工程がある。この工程において、セラミックシートが剥離された離型フィルムは不要物として廃棄されることとなる。
【0004】
すなわち、近年のMLCC製造数量の急激な増加に伴う離型フィルムの廃棄物としての増大が環境問題になっており、基材フィルムの再利用に向けた取り組みが活発化してきている。離型フィルムに含まれる離型層の成分は、離型性の観点から、一般的には基材フィルムを構成する成分とは異なる組成であるため、離型層が付いた離型フィルムをそのまま再溶融して再生フィルムを製膜した場合、離型層の成分が異物として存在するため、安定製膜をすることができない。
【0005】
特許文献1では、離型フィルムから離型成分を除去する方法として、基材フィルムと離型層との間に水溶性樹脂層を形成した離型フィルムを使用して、温水槽に2秒以上浸漬させた後に、離型フィルム表面をブラシロールで擦過させることで離型層を剥離する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1には被膜の剥離の方法は開示されているが、被膜が確実に除去できているかを確認することまでは開示されていない。基材フィルムに被膜が残っていると、基材フィルムを再利用する際に被膜起因の異物が混入し、再生フィルムの品質が低下するという問題がある。
【0008】
そこで本発明は、使用後の被膜付きフィルムから再溶融しても安定して再生フィルムが製膜できる基材フィルムを得るために、被膜付きフィルムから被膜を剥離し、その被膜が除去されているかどうかを確認したうえで基材フィルムを回収できる回収方法、および回収装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1] 上記課題を解決する本発明の基材フィルムの回収方法は、基材フィルムの少なくとも片面に蛍光剤を含む被膜を有する被膜付きフィルムから上記基材フィルムを回収する方法であって、
上記被膜付きフィルムから上記被膜を剥離する剥離工程と、
上記剥離工程の後で、上記基材フィルムに紫外線を照射して、上記基材フィルムの上記紫外線が照射されている領域を観察し、上記蛍光剤に由来する発光が観察されるかどうかで、上記基材フィルムに上記被膜が残っているかどうかを検査する検査工程と、を有する。
【0010】
[2] 上記課題を解決する本発明の基材フィルムの回収方法は、基材フィルムの少なくとも片面に着色剤を含む被膜を有する被膜付きフィルムから上記基材フィルムを回収する方法であって、
上記被膜付きフィルムから上記被膜を剥離する剥離工程と、
上記剥離工程の後で、上記基材フィルムに可視光を照射して、上記基材フィルムの上記可視光が照射されている領域を観察し、上記着色剤に由来する色が観察されるかどうかで、上記基材フィルムに上記被膜が残っているかどうかを検査する検査工程と、を有する。
【0011】
[3] 上記[1]または[2]の基材フィルムの回収方法は、上記被膜が水溶性樹脂を含み、上記被膜剥離工程の前で、上記被膜に洗浄液を接触させる洗浄液接触工程を有し、
上記剥離工程において、上記被膜付きフィルムから上記洗浄液を含む上記被膜を剥離してもよい。
【0012】
[4] 上記課題を解決する本発明の基材フィルムの回収装置は、基材フィルムの少なくとも片面に蛍光剤を含む被膜を有する被膜付きフィルムから上記基材フィルムを回収する装置であって、
上記被膜付きフィルムから上記被膜を剥離する剥離手段と、
上記剥離手段で上記被膜が剥離された上記基材フィルムに紫外線を照射する照射手段と、
上記基材フィルムの上記紫外線が照射されている領域を撮像する撮像手段と、
上記撮像手段により撮像された画像の中に、上記蛍光剤に由来する発光が観察されるかどうかで、上記基材フィルムに上記被膜が残っているかどうかを判定する判定手段と、を有する。
【0013】
[5] 上記課題を解決する本発明の別態様の基材フィルムの回収装置は、基材フィルムの少なくとも片面に着色剤を含む被膜を有する被膜付きフィルムから上記基材フィルムを回収する装置であって、
上記被膜付きフィルムから上記被膜を剥離する剥離手段と、
上記剥離手段で上記被膜が剥離された上記基材フィルムに可視光を照射する照射手段と、
上記基材フィルムの上記可視光が照射されている領域を撮像する撮像手段と、
上記撮像手段により撮像された画像の中に、上記着色剤に由来する色が観察されるかどうかで、上記基材フィルムに上記被膜が残っているかどうかを判定する判定手段と、を有する。
【0014】
[6] 上記[4]または[5]の基材フィルムの回収装置は、上記被膜が水溶性樹脂を含み、上記被膜に洗浄液を接触させる洗浄液接触手段を有し、上記剥離手段で、上記被膜付きフィルムから上記洗浄液を含む上記被膜を剥離してもよい。
【0015】
[7] 上記課題を解決する本発明の基材フィルムの検査方法は、基材フィルムの少なくとも片面に蛍光剤を含む被膜を有する被膜付きフィルムから、当該被膜を剥離する工程を経て得られた上記基材フィルムを検査する方法であって、
上記基材フィルムに紫外線を照射して、上記基材フィルムの上記紫外線が照射されている領域を観察し、上記蛍光剤に由来する発光が観察されるかどうかで、上記基材フィルムに上記被膜が残っているかどうかを検査する。
【0016】
[8] 上記課題を解決する本発明の別態様の基材フィルムの検査方法は、基材フィルムの少なくとも片面側に着色剤を含む被膜を有する被膜付きフィルムから、当該被膜を剥離する工程を経て得られた上記基材フィルムを検査する方法であって、
上記基材フィルムに可視光を照射して、上記基材フィルムの上記可視光が照射されている領域を観察し、上記着色剤に由来する色が観察されるかどうかで、上記基材フィルムに上記被膜が残っているかどうかを検査する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の基材フィルムの回収方法および基材フィルムの回収装置によれば、被膜付きフィルムから被膜を剥離し、その被膜が除去されているかどうかを確認したうえで基材フィルムを回収できるので、使用後の被膜付きフィルムから再溶融しても安定して再生フィルムが製膜できる基材フィルムを回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の基材フィルムの回収装置の一実施形態の概略図である。
【
図2】本発明の基材フィルムの回収方法が対象とする被膜付きフィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[対象となる被膜付きフィルム]
本発明の基材フィルムの回収方法は、基材フィルムの少なくとも片面に被膜を有する被膜付きフィルムを対象として、この被膜付きフィルムから被膜を剥離し、基材フィルムを回収する方法である。
【0020】
本発明の基材フィルムの回収方法で対象とする被膜付きフィルムは、被膜に蛍光剤または着色剤の少なくとも一方を含まれていることが特徴である。被膜に蛍光剤または着色剤が含まれていることで、被膜付きフィルムから被膜を剥離した後で、後述する検査方法により蛍光剤に由来する発光や着色剤に由来する色が観察されない場合は、基材フィルムに被膜が残っていないと判断できる。
【0021】
蛍光剤としては、紫外線の照射によって蛍光を発するものであればいかなるものであってもよく、例えば、市販のローダミンやオーラミン等の中から色調や毒性等を考慮して、目的に応じて選定すればよい。
【0022】
着色剤としては、水溶性の染料や顔料など、光を照射すると特定の波長光を反射するものや、カーボン粒子のように光を吸収するものを用いることができ、目的に応じて選定すればよい。
【0023】
蛍光剤または着色剤を含む被膜は、蛍光剤または着色剤を含む単層体であっても、蛍光剤または着色剤を含む2つ以上の層の積層体であっても、蛍光剤または着色剤を含む層と蛍光剤も着色剤も含まない層の積層体であってもよい。
【0024】
図2に被膜付きフィルムの構成を例示する。
図2(a)の被膜付きフィルム2の被膜20は、被膜20の内部に蛍光剤21または着色剤21が均一に混ぜ込まれている。
図2(b)の被膜付きフィルム2の被膜20は、被膜20の基材フィルム22に近い側に蛍光剤21または着色剤21が偏って分布している。
図2(a)、(b)のどちらの構成であっても、蛍光剤21に由来する発光や着色剤21に由来する色が観察されなければ、基材フィルム22に被膜20が残っていないと判断できる。 また、
図2(a)、(b)に図示した構成以外にも、基材フィルムに残ったまま再溶解されても支障のない成分であれば、基材フィルムと被膜との間に、そのような成分からなる別の層があってもよい。蛍光剤に由来する発光や着色剤に由来する色が観察されなくても、基材フィルムにそのような層が残っている可能性はあるが、再溶解しても支障がないのであるから、残っていても問題はないからである。
【0025】
被膜には水溶性樹脂を含むことが好ましい。被膜に水溶性樹脂が含まれていると、被膜に洗浄液を接触させることで、被膜付きフィルムから被膜を効率的に剥離することができる。水溶性樹脂としては、水溶性のポリエステル系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エチレンアイオノマー系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、エチレン-ビニルアルコール系樹脂、でんぷんのうちの少なくとも1種を主たる成分とするものがより好ましい。
【0026】
被膜が水溶性樹脂を含んでいる場合、水溶性樹脂のほかに離型成分を含むことがさらに好ましい。離型成分も含むことで、より効率的に被膜を剥離する効果が発現する。ここでいう離型成分とは、被膜表面の洗浄液に対する接触角を大きく、すなわち、被膜の表面エネルギーを小さくする成分であり、例えば、ジメチルシロキサンを主骨格とする硬化型シリコーン樹脂化合物、長鎖アルキル基を有する化合物、フッ素を有する化合物が挙げられる。被膜は水溶性樹脂と離型成分とを含む層でもよいし、水溶性樹脂を含む層と離型成分を含む層が積層されていてもよい。積層された被膜の場合には、基材フィルムの直上に水溶性樹脂を含む層、ついで最表面に離型成分を含む層とが形成されていることが好ましく、離型成分には洗浄液として好適に使用することができる水の透過性が高いジメチルシロキサンを主骨格とする硬化型シリコーン樹脂化合物を用いるのが特に好ましい。
【0027】
[基材フィルムの回収方法]
本発明の基材フィルムの回収方法は、被膜付き基材フィルムから被膜を剥離し、基材フィルムから被膜が除去できているかどうかを観察して基材フィルムを回収する方法である。
【0028】
被膜の剥離方法としては、薬液による被膜の溶解や、ブラシやブレード、サンドブラスト等で被膜を掻き落とす方法などを用いることができる。
【0029】
被膜が水溶性樹脂を含んでいるのであれば、洗浄液を溜めた槽に被膜付きフィルムを浸漬させた後に、被膜をブラシロールで擦過することで被膜を剥離する方法を用いることもできる。
【0030】
一例として、水溶性樹脂を含む被膜を有する被膜付きフィルムの表面から、ごく少量の洗浄液を用いて、効率的に被膜を剥離する方法を示す。
【0031】
洗浄液を被膜に接触させる方法としては、洗浄液を液滴の状態で被膜に離散的に付与することで、洗浄液の表面張力よりも被膜の表面張力が小さい被膜付きフィルムに対しても、被膜表面に付与した洗浄液が流動せずに、液滴の状態を保持するので被膜の略全面に洗浄液を付与することができる。付与された洗浄液は被膜中の水溶性樹脂を溶解しながら周囲に拡散して、被膜の全面に洗浄液が行き渡るので、被膜の全面で水溶性樹脂の成分が溶解し、基材フィルムから洗浄液を含んだ被膜を容易に剥離することができる。また被膜の最表面に離型成分を含んだ層が積層されていたとしても、離型成分に上記ジメチルクロキサンを主骨格とする硬化型シリコーン樹脂化合物を用いていれば、洗浄液が被膜表面から透過して、水溶性樹脂を含む層に到達するので、同様の洗浄効果が発現し、被膜を剥離することができる。
【0032】
剥離方法における洗浄液は、水溶性樹脂を溶解しうる溶媒であれば、いかなる溶媒でもその効果を発現するが、環境負荷を低減するためには、水を使用することが好ましい。また、被膜付きフィルムとの濡れ性を向上させて、被膜表面に洗浄液を行き渡らせやすくするために、洗浄液に界面活性剤等を添加してもよい。
【0033】
被膜を剥離した後に、基材フィルムに被膜が残っていないかどうか検査する方法を説明する。
【0034】
被膜が蛍光剤を含んでいる場合、基材フィルムに紫外線を照射すればよい。紫外線を照射する方向は、基材フィルムの被膜を有していた面からでも、その反対の面からでもよいが、基材フィルムが紫外線を吸収するのであれば、被膜を有していた面から照射することが好ましい。照射する紫外線の波長は365nm付近が好ましい。基材フィルムに被膜が残っていれば、被膜中の蛍光剤が紫外線を吸収し可視光を発光する。基材フィルムの紫外線が照射されている領域を撮像手段で撮像し、この可視光が観察されるかどうかで、基材フィルムに被膜が残っているかどうかを検査できる。
【0035】
被膜が発光剤を含んでいる場合、基材フィルムに任意の波長帯の光を照射すればよい。光を照射する方向は、基材フィルムの被膜を有していた面からでも、その反対の面からでもよいが、基材フィルムが光を吸収あるいは遮光するのであれば、被膜を有していた面から照射することが好ましい。基材フィルムに被膜が残っていれば、被膜中の着色剤が特定の波長光を反射するか、あるいは光を吸収する。基材フィルムの光が照射されている領域を撮像手段で撮像し、この特定の波長光が観察されるか、あるいは光が吸収されて観察されないかどうかで、基材フィルムに被膜が残っているかどうかを検査できる。
【0036】
本発明において、被膜付きフィルムの形態は、裁断された枚葉状でもよいが、ロール状に巻かれた被膜付きフィルムであることが特に好ましい。ロール状に巻かれた被膜付きフィルムを巻き出して、被膜付きフィルムから被膜を剥離し、被膜を剥離した後の基材フィルムを検査し、最後に基材フィルムを巻き取ることで、連続して効率的に被膜剥離の処理をすることができる。
【0037】
[基材フィルムの回収装置]
本発明の基材フィルムの回収装置の望ましい実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は本発明に係る実施形態の1つを例示するものであり、これに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0038】
図1は、本発明の一実施形態の基材フィルムの回収装置101の概略図である。基材フィルムの回収装置101には、被膜付きフィルム2を巻き出す巻出装置4と被膜を剥離した後の基材フィルム3を巻き取る巻取装置5が備えられている。巻出装置4と巻取装置5との間には、被膜付きフィルム2を搬送するための駆動装置9、洗浄液11を被膜付きフィルム2の被膜に付与するための吐出ヘッド6、洗浄液11と被膜付きフィルム2の被膜をともに剥離するための剥離機器7、被膜を剥離した後の基材フィルム3を搬送するための駆動装置10が備えられている。吐出ヘッド6、剥離機器7、後述するノズル14はブース8で囲まれている。駆動装置10と巻取装置5との間には、被膜が剥離された基材フィルム3に被膜が残っていないかどうかを検査するための、照明手段40、撮像手段50が備えられている。
【0039】
さらに洗浄液付与機構として、吐出ヘッド6に加えて、吐出ヘッド6に洗浄液11を送液するための送液ポンプ12、洗浄液を貯留しておくタンク(図示しない)を備えている。
【0040】
吐出ヘッド6は、洗浄液11を液滴の状態で吐出して、被膜付きフィルム2の被膜表面に付与できればよく、例えばスプレーノズルなどが例示されるがその限りではない。
【0041】
吐出ヘッド6と剥離機器7は被膜付きフィルム2の被膜表面に対向して設置してあればよく、
図1のように下面側の設置には限定されない。またロール状に巻かれた被膜付きフィルム2の被膜がロールの内側、外側のいずれの面であっても対応できるように、被膜付きフィルム2の巻出方向を切り替えて、被膜付きフィルム2の被膜表面が吐出ヘッド6と剥離機器7とに対向して搬送できるよう、巻出装置4が上出しと下出しのいずれにも対応できる機構であることがより好ましい。
【0042】
また基材フィルムの回収装置101は、被膜付きフィルム2の加熱手段として、熱風発生器13と、熱風発生器13に接続されるノズル14を備えている。熱風によって、被膜付きフィルム2の温度を40℃以上にすることで、被膜表面に付与した洗浄液11が被膜に含まれる水溶性樹脂を早く溶解して、より効率的に被膜の剥離をすることができる。被膜付きフィルム2の加熱手段は、いかなる手段でもよく、例えば加熱ロールに被膜付きフィルム2を直接接触させてもよいし、ブース8内に赤外線ヒーターを設置して加熱してもよく、これらには限定されない。
【0043】
基材フィルムの回収装置101のブース8は、液滴の状態の洗浄液11が周囲に飛散するのを防止して、かつ加温した洗浄液および/または被膜付きフィルム2の温度が低下するのを防止するために、吐出ヘッド6から剥離機器7までを囲うように具備されている。ブース8の材質は、ブース8の内部が高温になるため耐熱性を有していることが好ましく、金属あるいは、ガラス等が好適に用いられる。
【0044】
本実施形態の基材フィルムの回収装置101では、剥離機器7として、搬送される被膜付きフィルム2に直接接触する先端が鋭利な金属プレートを設けたが、これに限定されず、先端が鋭利な樹脂製のプレートを設けてもよいし、ブレードのように被膜付きフィルム2に押し当ててしなるような薄い金属製のプレートを設けてもよい。あるいは、金属や樹脂からなるブラシロールを搬送方向と同方向、あるいは逆方向に回転させる機構を備えて、被膜付きフィルム2の被膜表面に直接接触させてもよいし、ウエスや布帛を用いて被膜付きフィルム2に押し当てて被膜を拭き取るように剥離してもよい。
【0045】
駆動装置9、10は、被膜付きフィルム2、および被膜を剥離した基材フィルム3を安定して搬送させるために、張力カットできる構成であることが好ましいが、サクションロールでテンションカットした場合には、被膜付きフィルム2の被膜の一部が吸引されたりして、トラブルの原因となることがあるため、金属製の駆動ロールとゴムロールでニップされた構成がより好適に用いられる。また駆動装置9,10は、洗浄液11が付着する可能性が高いため、防錆対策として、ステンレス鋼や表面処理を施したものが好適に用いられる。
【0046】
巻取装置5で巻き取った被膜を剥離した後の基材フィルム3は、再溶融した後に安定して再生フィルムとして製膜するために洗浄液11を完全に取り除いておくことがより好ましく、剥離装置7と巻取装置5との間に乾燥装置(図示しない)を設けてもよい。乾燥装置は巻取前に設けておけばよく、駆動装置10の前後いずれでもよい。
【0047】
被膜を剥離した後の基材フィルム3に被膜が残っているかどうかを検査するために、基材フィルム3に照明手段40から紫外線または任意の波長帯の光を照査し、撮像手段50で照射された領域を撮像する。
【0048】
照明手段40は、被膜が蛍光剤を含んでいる場合、紫外線を照射する照明を用いればよい。照明手段40を設置する場所は、基材フィルムの被膜を有していた面の側でも、その反対側でもよいが、基材フィルムが紫外線を吸収するのであれば、被膜を有していた面の側に設置することが好ましい。
【0049】
また、照明手段40は、被膜が蛍光剤を含んでいる場合、紫外線を照射する照明を用いればよい。照明手段40を設置する場所は、基材フィルムの被膜を有していた面の側でも、その反対側でもよいが、基材フィルムが光を吸収あるいは遮光するのであれば、被膜を有していた面の側に設置することが好ましい。 撮像手段50はCCDやCMOSなどの受光素子を1次元または2次元に配列したラインセンサカメラやエリアセンサカメラを用いることができる。撮像手段50を設置する場所は、基材フィルムの被膜を有していた面の側でも、その反対側でもよく、照明手段40により照射される領域を適切に撮像できるように設置すればよい。
【0050】
撮像手段50で得られた画像は判定手段60に入力される。判定手段60は画像の濃淡値に基づいて基材フィルム3に被膜が残っているかどうかを判定する。
【0051】
判定手段60で検出した被膜20の残渣の位置を記録するためのマーキング装置(図示しない)を、判定手段60と巻取装置5との間に設けてもよい。マーキング装置によるマーキングの方式は、ペンやシール、あるいはレーザーなど、検出対象の位置がマーキングできれば、いかなる方式でもよい。被膜20の残渣位置をマーキングしておくことで、再溶融をする前にその箇所を除去することが可能となるため、より安定して再生フィルムを製膜することができ、再生フィルムの品質低下を防ぐこともできる。また、被膜の残差が多いと判定した場合は、剥離工程の剥離条件を改善することができる。
【0052】
[基材フィルムの検査方法、検査装置]
上記の基材フィルムの回収方法や回収装置では、ロール状に巻かれた被膜付きフィルムを巻き出して、被膜付きフィルムから被膜を剥離し、被膜を剥離した後の基材フィルムを検査し、最後に基材フィルムを巻き取る工程で説明をしたが、基材フィルムを検査する前にいったん基材フィルムを巻取り、基材フィルムを再度巻き出して検査してもよい。つまり、被膜付きフィルムから被膜を剥離する工程を経て得られた基材フィルムを検査する工程のみを行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の基材フィルムの回収方法および回収装置は、離型層を有するフィルムの再利用に好適に用いることができる。本発明の回収方法および回収装置に適用できる基材フィルムは、再生可能な樹脂フィルムに限定されず、紙フィルム、金属フィルムなど再生できるフィルムであればよい。
【符号の説明】
【0054】
2 被膜付きフィルム
3 基材フィルム
4 巻出装置
5 巻取装置
6 吐出ヘッド
7 剥離機器
8 ブース
9,10 駆動装置
11 洗浄液
12 送液ポンプ
13 熱風発生器
14 ノズル
20 被膜
21 蛍光剤または着色剤
22 基材フィルム
30 剥離手段
40 照明手段
50 撮像手段
60 判定手段
101 回収装置