(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020313
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】積層体、および樹脂フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240206BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20240206BHJP
B29C 63/02 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
B32B27/00 B
B32B7/022
B29C63/02
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023190514
(22)【出願日】2023-11-08
(62)【分割の表示】P 2019073442の分割
【原出願日】2019-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2018075168
(32)【優先日】2018-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018162718
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大橋 純平
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】石田 康之
(57)【要約】
【課題】
本発明は、樹脂フィルムから耐傷性や耐候性などのハードコート層の機能を損ないにくく、ムラや透明性などの外観品位を損なうこと無く、かつ面内均一に転写することが可能な積層体に関する。
【解決手段】
支持基材の少なくとも一方の面に離型層と樹脂層とを支持基材側からこの順に有する積層体であって、前記樹脂層の表面に、原子間力顕微鏡により観察され、弾性率が高い領域(領域Aとする)よりも弾性率が低い領域(領域Bとする)が存在し、以下の条件を満たすことを特徴とする積層体。
条件1: 領域Bの弾性率E
Bが1,500MPa以下
条件2: 5μm四方における領域Bの平均個数が、50個以上300個以下
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基材の少なくとも一方の面に離型層と樹脂層とを支持基材側からこの順に有する積層体であって、
前記樹脂層の表面に、原子間力顕微鏡により観察され、弾性率が高い領域(領域Aとする)よりも弾性率が低い領域(領域Bとする)が存在し、
前記樹脂層の表面から5nmの範囲において前記領域Aが化学式1で表される樹脂成分を含み、前記領域Bが化学式2で表される樹脂成分および/または化学式3で表される樹脂成分を含み、以下の条件を満たすことを特徴とする積層体。
条件1: 領域Bの弾性率E
Bが1,500MPa以下
条件2: 5μm四方における領域Bの平均個数が、50個以上300個以下
【化1】
【化2】
【化3】
R
1
は水素、またはメチル基、R
2
、R
3
、R
4
は、以下の(i)~(vi)のいずれかである。
(i)置換または無置換のアルキレン基
(ii)置換または無置換のアリーレン基
(iii)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアルキレン基
(iv)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアルキレン基
(v)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアリーレン基
(vi)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアリーレン基
【請求項2】
支持基材の少なくとも一方の面に離型層と樹脂層とを支持基材側からこの順に有する積層体であって、
前記樹脂層の表面に、原子間力顕微鏡により観察され、弾性率が高い領域(領域Aとする)よりも弾性率が低い領域(領域Bとする)が存在し、以下の条件を満たし、前記樹脂層を被着体に貼合し前記支持基材を樹脂層から剥離する用途に用いられる積層体。
条件1: 領域Bの弾性率E
B
が1,500MPa以下
条件2: 5μm四方における領域Bの平均個数が、50個以上300個以下
【請求項3】
以下の条件を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
条件3: 前記領域Aの弾性率EAと前記領域Bの弾性率EBとの差(EA-EB)が100MPa以上。
条件4: 前記領域Bの長軸半径が25nm以上、250nm以下
【請求項4】
前記樹脂層の表面から5nmの範囲において前記領域Aが化学式1で表される樹脂成分を含み、前記領域Bが化学式2で表される樹脂成分および/または化学式3で表される樹脂成分を含むことを特徴とする、請求項
2に記載の積層体。
【化4】
【化5】
【化6】
R
1は水素、またはメチル基、R
2、R
3、R
4は、以下の(i)~(vi)のいずれかである。
(i)置換または無置換のアルキレン基
(ii)置換または無置換のアリーレン基
(iii)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアルキレン基
(iv)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアルキレン基
(v)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアリーレン基
(vi)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアリーレン基
【請求項5】
表面に、原子間力顕微鏡により観察され、弾性率が高い領域(領域Aとする)よりも弾性率が低い領域(領域Bとする)が存在し、
前記樹脂フィルムの表面から5nmの範囲において、前記領域Aが化学式1で表される樹脂成分を含み、前記領域Bが化学式2で表される樹脂成分および/または化学式3で表される樹脂成分を含み、
以下の条件を満たすことを特徴とする樹脂フィルム。
条件1: 領域Bの弾性率E
Bが1,500MPa以下
条件2: 5μm四方における領域Bの平均個数が、50個以上300個以下
【化7】
【化8】
【化9】
R
1
は水素、またはメチル基、R
2
、R
3
、R
4
は、以下の(i)~(vi)のいずれかである。
(i)置換または無置換のアルキレン基
(ii)置換または無置換のアリーレン基
(iii)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアルキレン基
(iv)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアルキレン基
(v)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアリーレン基
(vi)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアリーレン基
【請求項6】
以下の条件を満たすことを特徴とする請求項5に記載の樹脂フィルム。
条件3: 前記領域Aの弾性率EAと前記領域Bの弾性率EBとの差(EA-EB)が100MPa以上。
条件4: 前記領域Bの長軸半径が25nm以上、250nm以下
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐傷性や様々な機能を他の物品に付与可能な樹脂フィルム、および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にプラスチックスや金属の表面は、ガラスに比べると傷が付きやすく、製品として使用される際には、表面の光沢感や透明性を維持することが要求される。そこでプラスチックスや金属の成形体においては、表面に耐傷性を付与する層を設けることがある。具体的には非特許文献1に挙げられるような「ハードコート」と呼ばれる高硬度の樹脂層で表面を被覆する方法が知られている。さらに、ハードコート層は耐傷性以外の機能、たとえば耐候性やガスバリア性、ブロッキング防止性などの機能を成形体に付与するために用いられることもある。
【0003】
前述のハードコート層は、一般には成形体を構成するプラスチックスや金属の表面に直接塗布、硬化させることで形成したり、あらかじめハードコート層を形成したプラスチックフィルムを貼り付けたり、成形体を構成するプラスチックスや金属と一体化に成形したりすることにより設けられる。また、成形体を構成する材料の耐熱性や加工温度、耐溶剤性から直接塗布が不可能な場合や、耐傷性以外の機能、たとえば光学機能層や、意匠層などと合わせて形成する点から、成形体を構成する材料とは別の支持基材上にハードコート層を形成し、それを成形体表面に転写する方法もある。
【0004】
また、たとえば電子機器の用途にて、製品の薄膜化、製品形態の自由度向上のために、ハードコートフィルムごと成型する代わりに、ハードコート層のみを成型体の表面に転写する工法も検討されている。
【0005】
このように、ハードコート層のみを成型体に転写する工法として、特許文献1には、「基材の一方の面に少なくとも剥離層、機能層、接着層を有する転写シートにおいて該剥離層にシリコン架橋を形成することにより強固な硬化膜となるシリコンアクリル樹脂を主材として用い、副材としてポリジメチルシロキサン系共重合体を用いることを特徴とする転写シート。」が提案されている。
【0006】
特許文献2には、「基材フィルムの一方の面に、少なくとも離型層、ハードコート層、接着層を順次積層してなる転写フィルムであって、前記離型層が、炭素数10以上30以下の長鎖アルキル基を有するアクリルウレタン樹脂であることを特徴とする転写フィルム。」が提案されている。
【0007】
特許文献3には、「プラスチックフイルム上に、少なくとも、離型層、及び紫外線硬化型樹脂からなるハードコート層が順次積層された、ハードコート転写フイルムであって、下記(A)~(C)の条件をすべて満足することを特徴とするハードコート転写フイルム
(A)離型層とハードコート層とが接するようにして積層されている
(B)離型層が熱硬化型樹脂と水酸基含有アクリレートとからなる層である。
【0008】
(C)熱硬化型樹脂に対する水酸基含有アクリレートの重量比率が3~10重量%である。」が提案されている。
【0009】
特許文献4には、「基材と、前記基材上に設けられた離型層と、前記離型層上に剥離可能に設けられた保護層とを、少なくとも備えた転写箔であって、前記離型層が、活性光線硬化樹脂と、熱硬化樹脂と、を含んでなり、前記保護層が、活性光線硬化樹脂を含んでなることを特徴とする、転写箔。」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004-034385号公報
【特許文献2】特開2014-104705号公報
【特許文献3】特開2014-180809号公報
【特許文献4】特開2017-65017号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】プラスチックハードコート応用技術 株式会社シーエムシー出版 2004年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、ハードコート層を成型体に転写する上での本質的な課題は、以下の2点である。
1.ハードコート層が、離型層上にハジキなどの欠陥を生じにくく、面内均一に形成できること。
2.ハードコート層が、成型体に転写する際に、破れやジッピングを生じにくく、離型層との界面で容易に剥離できること
これら2つの課題に対し、特許文献1の技術について本発明者らが確認したところ、明細書に記載の方法は、反射防止層の塗料組成物には有効かもしれないが、ハードコート用塗料組成物に対して適用すると、塗工時にハジキが発生し、品位良好な塗膜を得ることが困難であり、前記課題を達成できなかった。
【0013】
特許文献2~4の技術について本発明者らが確認したところ、明細書に記載の方法は、ハードコート用塗料組成物に対して確かに、厚いハードコート層とプライマー層、接着層が積層されている系では、成型物への転写性は良好であるが、樹脂層が薄くなると、面内均一に剥離することができず、前記課題を達成できなかった。
【0014】
以上の点から、従来技術では、機能層を含むハードコート層の転写における本質的な課題の解決は困難な状況にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで、前述の課題を解決するために本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下の発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
1.支持基材の少なくとも一方の面に離型層と樹脂層とを支持基材側からこの順に有する積層体であって、前記樹脂層の表面に、原子間力顕微鏡により観察され、弾性率が高い領域(領域Aとする)よりも弾性率が低い領域(領域Bとする)が存在し、以下の条件を満たすことを特徴とする積層体。
条件1: 領域Bの弾性率EBが1,500MPa以下
条件2: 5μm四方における領域Bの平均個数が、50個以上300個以下
2.以下の条件を満たすことを特徴とする1.に記載の積層体。
条件3: 前記領域Aの弾性率EAと前記領域Bの弾性率EBとの差(EA-EB)が100MPa以上。
条件4: 前記領域Bの長軸半径が25nm以上、250nm以下
3.前記樹脂層の表面から5nmの範囲において前記領域Aが化学式1で表される樹脂成分を含み、前記領域Bが化学式2で表される樹脂成分および/または化学式3で表される樹脂成分を含むことを特徴とする、1.または2.に記載の積層体。
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
R1は水素、またはメチル基、R2、R3、R4は、以下の(i)~(vi)のいずれかである。
(i)置換または無置換のアルキレン基
(ii)置換または無置換のアリーレン基
(iii)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアルキレン基
(iv)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアルキレン基
(v)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアリーレン基
(vi)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアリーレン基
4.表面に、原子間力顕微鏡により観察され、弾性率が高い領域(領域Aとする)よりも弾性率が低い領域(領域Bとする)が存在し、
以下の条件を満たすことを特徴とする樹脂フィルム。
条件1: 領域Bの弾性率EBが1,500MPa以下
条件2: 5μm四方における領域Bの平均個数が、50個以上300個以下
5.以下の条件を満たすことを特徴とする4.に記載の樹脂フィルム。
条件3: 前記領域Aの弾性率EAと前記領域Bの弾性率EBとの差(EA-EB)が100MPa以上。
条件4: 前記領域Bの長軸半径が25nm以上、250nm以下
6.前記樹脂フィルムの表面から5nmの範囲において、前記領域Aが化学式1で表される樹脂成分を含み、前記領域Bが化学式2で表される樹脂成分および/または化学式3で表される樹脂成分を含むことを特徴とする、4.または5.に記載の樹脂フィルム。
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
R1は水素、またはメチル基、R2、R3、R4は、以下の(i)~(vi)のいずれかである。
(i)置換または無置換のアルキレン基
(ii)置換または無置換のアリーレン基
(iii)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアルキレン基
(iv)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアルキレン基
(v)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアリーレン基
(vi)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアリーレン基
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、樹脂フィルムから耐傷性や耐候性などのハードコート層の機能を損ないにくく、さらにムラや透明性などの外観品位を損ないにくく、かつ面内均一に転写することが可能な積層体を得ることができる。
【0025】
本発明によれば、離型層の上に形成される樹脂層が薄膜であっても樹脂層にハジキなどの欠陥が発生しにくく、さらに、成型体に転写される際にも、破れやジッピングを生じにくく、容易に剥離できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の積層体の構成の例を表す断面図である。
【
図2】本発明の積層体の構成の例を表す断面図である。
【
図3】本発明の積層体の構成の例を表す断面図である。
【
図4】本発明の積層体の構成の例を表す断面図である。
【
図5】2種類の領域A、Bが作る形状の例を表す概念図である。
【
図6】2種類の領域A、Bが作る形状の例を表す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明者らは、前述の課題を解決するため、樹脂層表面が特定の条件を満たすことにより、前述の課題を解決できることを見出した。以下、詳細を述べる。
【0028】
まず、
図1に示すように、本発明の積層体1は、支持基材3の少なくとも一方の面に離型層4と、樹脂層5を、支持基材側からこの順に有する。離型層は、
図2のように支持基材8の両方の面にあってもよい。また
図3の積層体12のように、樹脂層16の離型層15と接している面と反対面に、粘着層18を有する保護フィルム17が貼合されていてもよいし、
図4の積層体20のように、樹脂層24の離型層23と接している面とは反対面に機能層25が積層されていてもよい。
【0029】
本発明の積層体は、この前記樹脂層の表面に、原子間力顕微鏡により観察され、弾性率が高い領域(領域Aとする)よりも弾性率が低い領域(領域Bとする)が存在し、さらに領域Bの弾性率を一定値以下、また5μm四方の視野内に存在する領域Bの平均個数を一定の範囲に設計することを特徴とする。
【0030】
ここで、原子間力顕微鏡を用いた弾性率測定とそこから見積もられる領域Aおよび領域Bについて説明する。この測定方法は、極微小部分の探針による圧縮試験であり、押し付け力による変形度合いを測定する。そのため、ばね定数が既知のカンチレバーを用いて、樹脂層の表面における弾性率の空間分布を測定することができる。具体的な測定および解析の手順など、詳細は実施例の項で記載するが、例えば下記に示す原子間力顕微鏡を用い、カンチレバー先端の探針を、樹脂層の表面に接触させ、55nNの押し付け力によりフォースカーブを測定して求めたカンチレバーの撓み量を測定することができる。
【0031】
原子間力顕微鏡:アサイラムテクノロジー社製 MFP-3DSA-J
カンチレバー:NANOSENSORS製のカンチレバー「R150-NCL-10(材質Si、ばね定数48N/m、先端の曲率半径150nm)。
【0032】
この時、面内方向の空間分解能については原子間力顕微鏡のスキャン範囲およびスキャンライン数に依存するが、現実的な測定条件では、概ね10nm程度が下限となる。すなわち大きさ10nmに満たない微小な領域についてはその弾性率が平均情報として検出されることになるが、本発明が達成しようとする物性との相関を検証した結果、物性に影響しないことを確認している。
【0033】
前述のようにして測定した弾性率の空間分布において、本発明の樹脂層表面は弾性率差を有する領域Aおよび領域Bを有することを特徴とする。この時、弾性率がより高い領域を領域A、より低い領域を領域Bと呼ぶ。
【0034】
ここで理想的な相構造について図を用いて説明する。異なる2種類の領域が作る形状には、一方のドメインが他方のドメインに内包された所謂「海島構造(
図5)」と、測定視野内で閉じた領域を有さない「ラメラ型構造(
図6)」に大別される。本発明の樹脂層の表面の弾性率分布は海島構造であり、かつ島側が弾性率の低い領域B31であることが好ましい。領域Bが連続した相構造を形成する状態では、領域Bのサイズが大きすぎるため、剥離の際に領域A32と領域Bの物性がばらばらに表れ、剥離力が不安定となる。具体的な領域Aおよび領域Bの解析手順、および2つの領域が存在しない場合の判断基準については実施例の項に後述する。なお後述する好ましい樹脂層用塗料組成物の組み合わせにより、3つ以上の弾性率が異なる領域を形成する場合には、最も弾性率が高い領域をA、その他の領域をBとし、その平均弾性率および総数が前述の条件を満たすことで、同様の効果を得ることが可能となる。
【0035】
前記樹脂層の表面に、前述の構造を設けることで、本発明の課題、すなわち樹脂層の品位を低下させにくく、剥離力を下げることができる理由は以下の通りである。樹脂層と離型層との間で剥離させる際の剥離力は、1)樹脂層と離型層間の剥離により増加した表面積に対応する表面自由エネルギーの増加と、2)剥離時の剥離界面の変形に要するエネルギーの2つから成り立っていると考えている。
【0036】
これに対し、特許文献1に記載の方法は、離型層(剥離層)に着目し、剥離層側にポリジメチルシロキサン共重合体を用いることで、剥離により生じる1)の表面エネルギー増加を低減し、柔軟化することで2)の剥離界面の変形に要するエネルギーを少なくすることで、剥離力を低減している。その一方で、ハードコート用塗料組成物に対して適用すると、1)にて表面自由エネルギーを低下させているため、前述のように塗工時にハジキを生じてしまい、本発明の課題を解決することができない。
【0037】
一方で、本発明は、樹脂層の形成過程で、品位を低下させてしまう恐れのある、離型層からのアプローチではなく、樹脂層側に着目し、前述の2)の観点で、剥離力を低減させることを見出した。さらに、本発明の積層体の目的である樹脂層としての機能(例えばハードコート層であれば耐傷性といったバルクの物性)を損なうことなく、剥離界面の変形エネルギーを小さくする方法として、本発明の形態を用いることに至った。本発明では、樹脂層表面に、領域Aと領域Bを設け、領域Aにて樹脂層の機能を確保し、領域Bを設けることで、剥離界面の変形に要するエネルギーを少なくすることを達成した。
【0038】
なお本発明で領域Aと領域Bは積層体の樹脂層の表面にて観察したものを定義しているが、この構造は樹脂層と離型層との間でも類似の構造が形成されて、機能が発現していると推察している。
【0039】
領域Bの弾性率EBが1,500MPa以下(条件1)を満たすことが必要であり、1,000MPa以下であることが好ましい。EBが1,500MPaを超える場合には、前述の剥離力を低減する効果が得られない場合がある。
【0040】
また、単位面積当たりに存在する領域Bの平均個数には、満たすべき範囲が存在する。具体的には前述の条件2のように、5μm四方の視野内に領域Bの平均個数が50個以上300個以下(条件2)であることが必要である。5μm四方の視野内存在する領域Bの数が、50個に満たない場合、本発明が課題とする剥離力を低減する効果が不十分になる場合がある。一方で、5μm四方の視野内存在する領域Bの数が、300個を超える場合には、樹脂層として必要な機能が低下する場合がある。弾性率EBの測定方法および5μm四方の視野内に存在する領域Bの個数の解析方法については実施例の項に後述する。
【0041】
[本発明の形態]
以下、本発明の実施の形態について具体的に述べる。
【0042】
[積層体、および樹脂層、樹脂フィルム]
本発明の積層体は、支持基材の少なくとも一方の面に離型層と樹脂層とを支持基材側からこの順に有する。本発明における樹脂層とは、支持基材上に形成された層であって、支持基材上より剥離・転写可能な層を指す。支持基材上に形成された層であっても支持基材とは剥離不可能な層、例えば後述する離型層は、樹脂層に含まれないとする。この剥離可能、不可能の判断基準は、JIS K5600-5-6:1999に記載のクロスカット法にて評価を行い、分類4以上であるものを剥離可能、分類0から3であるものを剥離不可能とする。前記樹脂層および離型層、支持基材を含む全て統合したものを積層体とする。離型層上に層が1層のみ形成されている場合は、当該1層が樹脂層となり、離型層上に層が2層以上形成されている場合は、離型層を除いた当該2層以上の層を1つの樹脂層とする。また支持基材および離型層から剥離された樹脂層を、支持基材及び離型層を含まないことを明確化するために「樹脂フィルム」と記載する場合がある。
【0043】
ここで層とは、積層体の表面側から厚み方向に向かって、厚み方向に隣接する部位と境界面を有することにより区別でき、かつ有限の厚みを有する部位を指す。より具体的には、前記積層体の断面を電子顕微鏡(透過型、走査型)または光学顕微鏡にて断面観察した際、不連続な境界面の有無により区別されるものを指す。そのため、樹脂層の厚み方向に組成が変わっていても、その間に前述の境界面がない場合には、1つの層として取り扱う。
【0044】
本発明の積層体は、前述の物性を示す樹脂層を有していれば平面状態、または3次元形状のいずれであってもよい。前記樹脂層全体の厚みは、0.5μm以上20μm以下が好ましく、1μm以上、15μm以下がより好ましい。
【0045】
前記樹脂層は、光沢性、耐指紋性、成型性、意匠性、耐傷性、防汚性、耐溶剤性、反射防止、帯電防止、導電性、熱線反射、近赤外線吸収、電磁波遮蔽、易接着等の他の機能を有してもよい。
【0046】
また、前記樹脂層の上に、さらに1つ以上の層を形成してもよく、例えば前述の機能を有する機能層、粘着層、電子回路層、印刷層、光学調整層等や他の機能層を設けてもよい。
【0047】
本発明の樹脂フィルムは、例えば前途する積層体から離型層を含む支持基材を剥離することで得ることができる。
【0048】
[樹脂層の領域Aの弾性率EAと領域Bの弾性率EBとの差]
本発明の樹脂層及び樹脂フィルムが満たすべき弾性率分布の条件については前述したが、それ以外にも課題の達成に好ましい条件が存在する。具体的には領域Aの弾性率EAと領域Bの弾性率EBとの間に好ましい差の範囲が存在し、EA-EBが100MPa以上であることが好ましい。2つの領域に弾性率差が存在することは、前述した領域Aによる樹脂層及び樹脂フィルムの機能確保と、領域Bによる剥離界面の変形に要するエネルギー低減の両立のより好ましいパラメータとなる。弾性率差(EA-EB)が100MPaに満たない場合には前述の剥離力を低減する効果が不十分になる場合がある。弾性率EAと弾性率EBとの差は、大きい分には特に問題は無いが、現実的に使用できる材料では20,000MPa程度が限界である。なお各領域の弾性率の具体的な測定および解析方法については、実施例の項に後述する。
【0049】
[樹脂層及び樹脂フィルムの領域Bの長軸半径]
更に本発明の積層体及び樹脂フィルムの表面に形成された相対的に弾性率の低い領域Bの形状には好ましい形態が存在する。具体的には領域Bの長軸半径が25nm以上250nm以下であることが好ましい。ここで長軸半径とは、領域Bが樹脂層及び樹脂フィルム表面に形成する形状を、楕円近似して得られる楕円の、長軸側の半径を意味する。領域Bが剥離力や取り扱い性などのマクロな物性に寄与するためには、一定以上の大きさを有する必要があり、楕円近似の長軸を用いることで相関を評価することができる。長軸半径が250nmを超える場合には前述の樹脂層及び樹脂フィルムとして必要な機能が低下する場合があり、25nmに満たない場合には前述の剥離力を低減する効果が得られない場合がある。なお領域Bの長軸半径の具体的な測定および解析方法については、実施例の項に後述する。
【0050】
[樹脂層及び樹脂フィルムの表面組成]
更に樹脂層及び樹脂フィルムの表面組成、より詳しくは領域Aおよび領域Bの各領域にはそれぞれ好ましい構成成分が存在する。具体的には樹脂層及び樹脂フィルムの表面から5nmの深さの範囲にて領域Aは化学式1で表される樹脂成分を含むことが好ましく、領域Bは化学式2および/または化学式3で表される樹脂成分を含むことが好ましい。このとき領域Bは化学式1で表される樹脂成分を含んでもよいが、領域Aには化学式2および/または化学式3で表される樹脂成分を含まない、もしくは相対的に少ないことが特に好ましい。
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
R1は水素、またはメチル基、R2、R3、R4は、以下の(i)~(vi)のいずれかである。
(i)置換または無置換のアルキレン基
(ii)置換または無置換のアリーレン基
(iii)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアルキレン基
(iv)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアルキレン基
(v)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアリーレン基
(vi)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアリーレン基。
【0055】
ここで樹脂層及び樹脂フィルムの表面組成は、前述した領域Aによる樹脂層及び樹脂フィルムの機能確保と、領域Bによる剥離界面の変形に要するエネルギー低減の両立のより好ましいパラメータとなる。領域Bを構成する材料が効果的に剥離力に作用するためには、樹脂層及び樹脂フィルムの表面に近傍に存在することが好ましく、具体的には表面から深さ方向に5nmの範囲に存在することが好ましい。
【0056】
上記の各化学式を含む樹脂成分の評価・解析方法については実施例の項に後述するが、例えば飛行時間型2次イオン質量分析計(Time of flight-Secondary ion mass Spectrometry:TOF-SIMS)およびイオンスパッタリングを併用することで分析を行うことができる。イオンスパッタリングにより表面から深さ5nmまでのスパッタを実施しながら、TOF-SIMSの測定を実施し、その積算値により解析を実施する。
【0057】
化学式1で表される樹脂成分については質量数85の負イオン(化学式4)または質量数71の負イオン(化学式5)を用いて検出することができる。すなわち、質量数85の負イオン(化学式4)または質量数71の負イオン(化学式5)のいずれかが検出されれば化学式1で表される樹脂成分が含まれていることになる。
【0058】
【0059】
【0060】
一方、化学式2で表される樹脂成分については質量数69の正イオン(化学式6)および質量数169の正イオン(化学式7)を用いて検出することができ、これらの正イオンが同時に検出されることで、化学式2が含まれることを判別できる。
【0061】
【0062】
【0063】
また化学式3で表される樹脂成分については質量数45の正イオン(C2H5O+)や質量数59の正イオン(C3H7O+)を用いて検出することができる。すなわち、質量数45の正イオン(C2H5O+)または質量数59のいずれかが検出されれば化学式3で表される樹脂成分が含まれていることになる。
【0064】
また上記の各成分が各領域に含まれるかどうかを判定する場合には、TOF-SIMSマッピングを実施する。各化合物に特徴的なイオンに対してマッピングを行い、弾性率分布で得られた領域の形状と照合することで検証を実施する。なお相対的な含有量についてもマッピング時の信号強度の強弱から見積もることが可能である。具体的な測定手順については後述する。
【0065】
[支持基材]
本発明の積層体に用いられる支持基材を構成する樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよく、ホモ樹脂であってもよく、共重合または2種類以上のブレンドであってもよい。支持基材を構成する樹脂は、成形性が良好であれば好ましく、その点から熱可塑性樹脂がより好ましい。
【0066】
熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン・ポリプロピレン・ポリスチレン・ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、脂環族ポリオレフィン樹脂、ナイロン6・ナイロン66などのポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、4フッ化エチレン樹脂・3フッ化エチレン樹脂・3フッ化塩化エチレン樹脂・4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合体・フッ化ビニリデン樹脂などのフッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリ乳酸樹脂などを用いることができる。熱硬化性樹脂の例としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂などを用いることができる。熱可塑性樹脂は、十分な延伸性と追従性を備える樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、強度・耐熱性の観点から、特に、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、もしくはメタクリル樹脂であることがより好ましい。
【0067】
本発明におけるポリエステル樹脂とは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であって、酸成分およびそのエステルとジオール成分の重縮合によって得られる。具体例としてはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどを挙げることができる。またこれらに酸成分やジオール成分として他のジカルボン酸およびそのエステルやジオール成分を共重合したものであってもよい。これらの中で透明性、寸法安定性、耐熱性などの点でポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートが特に好ましい。
【0068】
一方、積層体の製造工程において光学特性を検査する目的には、透明支持体は透明で低複屈折の材料が好ましく、低複屈折性の観点からはセルロースエステルおよび環状オレフィンが好ましい。市販のノルボルネン系ポリマーとしては、アートン(JSR(株)製)、ゼオネックス、ゼオノア(以上、日本ゼオン(株)製)、TOPAS(ポリプラスチックス(株)製)などを用いることができる。
【0069】
また、支持基材には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、熱安定剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、屈折率調整のためのドープ剤などが添加されていてもよい。支持基材は、単層構成、積層構成のいずれであってもよい。
【0070】
前記樹脂層を形成する前に各種の表面処理を施すことも可能である。表面処理の例としては、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が挙げられる。これらの中でもグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。また、支持基材の表面は、易接着層、帯電防止層、アンダーコート層、紫外線吸収層などの複数の機能性層をあらかじめ設けることも可能である。
【0071】
支持基材としては、樹脂層の転写が可能であれば特に限定されないが、樹脂層と接する面に離型層を有する支持基材を用いることが好ましい。離型層の詳細については後述する。
【0072】
[離型層・離型層の製造方法]
前述の支持基材は、少なくとも一方の、樹脂層と接する面に前述の条件を満たす離型層を有することが好ましい。離型層より支持基材側には、密着性や帯電防止性、耐溶剤性等を付与する観点から複数の層から構成されていてもよい。
【0073】
離型層の厚みは特に限定されないが、離型層の面内均一性、品位、剥離力の面から10~500nmであることが好ましく、20~200nmであることがより好ましい。
【0074】
離型層の材料は特に限定されないが、後述する離型層用樹脂組成物により形成されていることが好ましく、後述する離型層の製造方法により、塗布、乾燥、硬化することにより支持基材の表面に形成することが好ましい。
【0075】
離型層用樹脂組成物は、樹脂層と接する面が前述の特定の弾性率分布の標準偏差、および平均値を持つことができれば、その材料は特に限定されないが、アルキッド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、長鎖アルキル基含有樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、有機系とシリコーン系の混合もしくは共重合樹脂などが好ましい。
【0076】
離型層は、樹脂層と接する面が、前述の特定の弾性率分布の標準偏差、および平均値を持つことができれば、その製造方法は特に限定されないが、離型層用塗料組成物をディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許第2681294号明細書)などにより塗布することにより塗布層を形成することが好ましく、グラビアコート法またはダイコート法が好ましい。
【0077】
次いで、支持基材等の上に塗布された塗布層を乾燥する。得られる塗布層中から完全に溶媒を除去することに加え、塗膜の硬化を促進する観点からも、乾燥工程では塗膜の加熱を伴うことが好ましい。
【0078】
乾燥方法については、伝熱乾燥(高熱物体への密着)、対流伝熱(熱風)、輻射伝熱(赤外線)、その他(マイクロ波、誘導加熱)などが挙げられる。この中でも、本発明の製造方法では、精密に幅方向でも乾燥速度を均一にする必要から、対流伝熱または輻射伝熱を使用した方式が好ましい。
【0079】
さらに、熱またはエネルギー線を照射することによるさらなる硬化操作(硬化工程)を行ってもよい。硬化工程において、熱で硬化する場合には、室温から200℃であることが好ましく、硬化反応の活性化エネルギーの観点から、より好ましくは100℃以上200℃以下、さらに好ましくは130℃以上200℃以下である。
【0080】
また、エネルギー線により硬化する場合には汎用性の点から電子線(EB線)および/または紫外線(UV線)であることが好ましい。また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いて紫外線硬化させる場合、紫外線の照度が好ましくは100~3,000(mW/cm2)、より好ましくは200~2,000(mW/cm2)、さらに好ましくは300~1,500(mW/cm2)、となる条件で紫外線照射を行うことが良く、紫外線の積算光量が好ましくは100~3,000(mJ/cm2)、より好ましくは200~2,000(mJ/cm2)、さらに好ましくは300~1,500(mJ/cm2)となる条件で紫外線照射を行うことが良い。ここで、紫外線照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計及び被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
【0081】
上述のようにして、支持基材上に形成した塗布層を乾燥、硬化することにより支持基上に離型層を形成することが好ましい。
【0082】
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法は、前述の好ましい支持基材の離型層の上に、後述する好ましい樹脂層用塗料組成物を塗布し、次いで乾燥、硬化することで樹脂層を形成する、積層体の製造方法であることが好ましい。塗布方法は、特に限定されないが、ディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許第2681294号明細書)などから適宜、選択できる。
【0083】
ここで樹脂層の表面特性が前述の条件を満たすことが重要であり、樹脂組成が厚み方向に異なる樹脂層を形成できる製造方法であってもよい。樹脂組成が厚み方向に異なる樹脂層を形成する場合は、少なくとも2種類以上の樹脂層用塗料組成物を、逐次または同時に塗布し、次いで乾燥、硬化することで樹脂層を形成する、積層体の製造方法であることが好ましく、少なくとも2種類以上の樹脂層用塗料組成物を同時に塗布する積層体の製造方法の方がより好ましい。
【0084】
乾燥では、支持基材等の上に塗布された塗膜を乾燥する。得られる積層体中から完全に溶媒を除去することに加え、乾燥工程では塗膜の加熱を伴うことが好ましい。
【0085】
乾燥工程における加熱方法については、伝熱乾燥(高熱物体への密着)、対流伝熱(熱風)、輻射伝熱(赤外線)、その他(マイクロ波、誘導加熱)などの方法が挙げられる。この中でも、精密に幅方向も乾燥速度を均一にする必要から、対流伝熱、または輻射伝熱を使用した方法が好ましい。
【0086】
乾燥工程に続いて、熱または活性エネルギー線を照射することによる、さらなる硬化操作(硬化工程)を行ってもよい。
【0087】
活性エネルギー線としては、汎用性の点から電子線(EB線)および/または紫外線(UV線)が好ましい。紫外線により硬化する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度ができるだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化することがより好ましい。酸素濃度が高い場合には、最表面の硬化が阻害され、表面の硬化が弱くなり、靭性が低くなる場合がある。また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いる場合、紫外線の照度が好ましくは100~3,000mW/cm2、より好ましくは200~2,000mW/cm2、さらに好ましくは300~1,500mW/cm2となる条件で紫外線照射を行うことが良い。紫外線の積算光量は、好ましくは100~3,000mJ/cm2、より好ましくは200~2,000mJ/cm2、さらに好ましくは300~1,500mJ/cm2となる条件で紫外線照射を行うことが良い。ここで、紫外線の照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計および被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
【0088】
[樹脂層用塗料組成物]
本発明の積層体の製造方法は特に限定されないが、本発明の積層体は、前述の支持基材の離型層の上に、樹脂層用塗料組成物を塗布し、必要に応じて乾燥・硬化する工程を経て得ることができる。
【0089】
ここで「樹脂層用塗料組成物」とは、溶媒と溶質からなる液体であり、前述の支持基材上に塗布し、溶媒を乾燥する工程で揮発、除去、さらに必要に応じて硬化させることにより樹脂層を形成可能な材料を指す。ここで、樹脂層用塗料組成物の「種類」とは、樹脂層用塗料組成物を構成する溶質の種類が一部でも異なる液体を指す。この溶質は、樹脂もしくは塗布プロセス内でそれらを形成可能な材料(以降これを樹脂前駆体と呼ぶ)、粒子、および重合開始剤、硬化剤、触媒、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤からなる。
【0090】
[樹脂前駆体]
樹脂前駆体は、それ自身、もしくは溶媒に溶解することで樹脂層用塗料組成物を調製することができる。また特に、領域Aを形成する材料として樹脂前駆体を使用することが好ましい。樹脂前駆体は溶媒の揮発、およびそれ自身の重合、架橋反応により塗膜を硬化可能な材料を指す。すなわち、本発明の積層体の樹脂層、および積層体から離型フィルムを剥がしてなる樹脂フィルムは、樹脂前駆体を、架橋してなる硬化物を含む。
【0091】
また、前述の本発明の積層体の製造方法において、樹脂前駆体、活性エネルギー線により、それ自身もしくは活性エネルギー線により開裂可能な光重合開始剤を併用することで重合し、塗膜を硬化可能な材料が好ましい。
【0092】
具体的には、活性エネルギー線として紫外線を用い、光重合開始剤を併用する場合に好ましい樹脂前駆体は、多官能(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリル基を有するアルコキシシラン、(メタ)アクリル基を有するアルコキシシラン加水分解物、(メタ)アクリル基を有するアルコキシシランオリゴマー、(メタ)アクリル基を有するアクリル系ポリマー、(メタ)アクリル基を有するウレタン系ポリマー、(メタ)アクリル基を有するエポキシ系ポリマー、(メタ)アクリル基を有するシリコーン系ポリマーである。
【0093】
多官能アクリレートモノマーの例としては、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレートおよびその変性ポリマー、具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサンメチレンジイソシアネートウレタンポリマーなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0094】
また、市販されている多官能アクリル系組成物としては三菱レイヨン株式会社;(商品名“ダイヤビーム”(登録商標)シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名“デナコール”(登録商標)シリーズなど)、新中村化学株式会社;(商品名“NKエステル”シリーズなど)、DIC株式会社;(商品名“UNIDIC”(登録商標)など)、東亞合成株式会社;(“アロニックス”(登録商標)シリーズなど)、日油株式会社;(“ブレンマー”(登録商標)シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名“KAYARAD”(登録商標)シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名“ライトエステル”シリーズなど)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
【0095】
(メタ)アクリル基を有するアクリル系ポリマーとしては、多官能アクリレートモノマー(例、ポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート)の重合反応により合成することが好ましい。ウレタン系ポリマーの例には、メラミンポリウレタンが含まれる。シリコーン系ポリマーとしては、シラン化合物(例、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン)と反応性基(例、エポキシ、メタクリル)を有するシランカップリング剤との共加水分解物が好ましく用いられる。また、各種ポリマーは、不飽和基を含有せず、重量平均分子量が5,000~200,000で、ガラス転移温度が20~200℃のものを用いることができる。
【0096】
本発明の積層体の樹脂層、および樹脂フィルムは、2種類の樹脂前駆体を硬化させた硬化物を含むことが好ましく、さらに樹脂前駆体の組み合わせが特定の範囲であることがより好ましい。
具体的には、2種類の樹脂前駆体のうち、官能基当量が小さい方の樹脂前駆体(樹脂前駆体Aとする)と官能基当量が大きい方の樹脂前駆体(樹脂前駆体Bとする)が、以下の条件を満たすことが好ましい。
【0097】
樹脂前駆体Aの官能基当量(QA)と、樹脂前駆体Bの官能基当量(QB)が、以下の式を満たす。
【0098】
0.01< QA/QB <0.05
100(g/eq)< QA < 400(g/eq)
ここで官能基当量とは、樹脂前駆体の重量平均分子量を官能基の数で割った値を指す。ここでいう官能基は架橋反応を起こす官能基を指す。
【0099】
2種類の樹脂前駆体が、前述の条件を満たすことにより、樹脂層や樹脂フィルムの、耐クラック性が向上する。
【0100】
さらに、樹脂前駆体A及び樹脂前駆体Bは、化学式8および化学式9のセグメントを含むことが好ましい。化学式8および9のセグメントを含むことにより、それぞれのセグメントの相互作用をもたらすことができるため、強靭さを付与することができる。
【0101】
【0102】
【0103】
ここで、R6は、水素、またはメチル基であり、R5は、以下の(i)~(vi)のいずれかである。
(i)置換または無置換のアルキレン基
(ii)置換または無置換のアリーレン基
(iii)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアルキレン基
(iv)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアルキレン基
(v)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する置換のアリーレン基
(vi)内部にエーテル基、エステル基またはアミド基を有する無置換のアリーレン基
[レベリング剤]
本発明の樹脂層を形成するために用いる好ましい樹脂層用塗料組成物は、レベリング剤を含むことが好ましい。レベリング剤によって領域Bを構成することが特に好ましく、これによって樹脂層の機能を維持しながら剥離力を好適な範囲に設計することができる。レベリング剤の例としては、アクリル共重合体またはシリコーン系、フッ素系のレベリング剤が挙げられる。このうち特に好ましいレベリング剤はヘキサフルオロプロピレン基、もしくはポリエーテル基を含むレベリング剤である。上記の官能基を含むレベリング剤であれば、塗膜品位と剥離力を好適に設計することができる。
【0104】
[粒子材料、粒子成分]
本発明の積層体の樹脂層は、粒子成分を含んでもよい。ここで、粒子とは無機粒子、有機粒子のいずれでもよいが、耐傷性の観点から無機粒子が好ましい。
【0105】
無機粒子の種類数としては、1種類以上20種類以下が好ましい。無機粒子の種類数は1種類以上10種類以下がさらに好ましく、1種類以上4種類以下が特に好ましい。ここで、「無機粒子」とは表面処理を施したものも含む。この表面処理とは、粒子表面に化合物を化学結合(共有結合、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス結合、疎水結合等を含む)や吸着(物理吸着、化学吸着を含む)によって導入することを指す。
【0106】
ここで無機粒子の種類とは、無機粒子を構成する元素の種類によって決まり、何らかの表面処理を行う場合には、表面処理される前の粒子を構成する元素の種類によって決まる。例えば、酸化チタン(TiO2)と酸化チタンの酸素の一部をアニオンである窒素で置換した窒素ドープ酸化チタン(TiO2-xNx)とでは、無機粒子を構成する元素が異なるために、異なる種類の無機粒子である。また、同一の元素、例えばZnおよびOのみからなる粒子(ZnO)であれば、その数平均粒子径が異なる粒子が複数存在しても、またZnとOとの組成比が異なっていても、これらは同一種類の粒子である。また酸化数の異なるZn粒子が複数存在しても、粒子を構成する元素が同一である限りは(この例ではZn以外の元素が全て同一である限りは)、これらは同一種類の粒子である。
【0107】
ここで、本発明にて用いられる樹脂層用塗料組成物中に存在する粒子を「粒子材料」、前記樹脂層用塗料組成物を塗工、乾燥、硬化処理もしくは蒸着等の処理により形成された前記樹脂層に存在する粒子を「粒子成分」という。
【0108】
無機粒子は特に限定されないが、金属や半金属の酸化物、窒化物、ホウ素化物、塩化物、炭酸塩、硫酸塩であることが好ましく、2種類の金属、半金属を含む複合酸化物や、格子間に異元素が導入されたり、格子点が異種元素で置換されたり、格子欠陥が導入されていてもよい。
【0109】
無機粒子はSi、Al、Ca、Zn、Ga、Mg、Zr、Ti、In、Sb、Sn、BaおよびCeよりなる群から選ばれる少なくとも一つの金属や半金属が酸化された酸化物粒子であることがさらに好ましい。
【0110】
具体的にはシリカ(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化アンチモン(Sb2O3)およびインジウムスズ酸化物(In2O3)からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属酸化物や半金属酸化物である。
【0111】
[溶媒]
本発明の積層体の製造方法に用いる樹脂層用塗料組成物は溶媒を含んでもよく、塗膜を面内に均一に形成し、また1つの層のなかで徐々に組成をかえていくためには、溶媒を含む方が好ましい。溶媒の種類数としては1種類以上20種類以下が好ましく、より好ましくは1種類以上10種類以下、さらに好ましくは1種類以上6種類以下、特に好ましくは1種類以上4種類以下である。
【0112】
ここで「溶媒」とは、塗布後の乾燥工程にてほぼ全量を蒸発させることが可能な、常温、常圧で液体である物質を指す。
【0113】
ここで、溶媒の種類とは溶媒を構成する分子構造によって決まる。すなわち、同一の元素組成で、かつ官能基の種類と数が同一であっても結合関係が異なるもの(構造異性体)、前記構造異性体ではないが、3次元空間内ではどのような配座をとらせてもぴったりとは重ならないもの(立体異性体)は、種類の異なる溶媒として取り扱う。例えば、2-プロパノールと、n-プロパノールは異なる溶媒として取り扱う。
【0114】
[樹脂層用塗料組成物中のその他の成分]
また、樹脂層用塗料組成物は、重合開始剤や硬化剤や触媒を含むことが好ましい。重合開始剤および触媒は、樹脂層の硬化を促進するために用いられる。重合開始剤としては、樹脂層用塗料組成物に含まれる成分をアニオン、カチオン、ラジカル重合反応等による重合、縮合または架橋反応を開始あるいは促進できるものが好ましい。
【0115】
重合開始剤、硬化剤および触媒は種々のものを使用できる。また、重合開始剤、硬化剤および触媒はそれぞれ単独で用いてもよく、複数の重合開始剤、硬化剤および触媒を同時に用いてもよい。さらに、酸性触媒や、熱重合開始剤を併用してもよい。酸性触媒の例としては、塩酸水溶液、蟻酸、酢酸などが挙げられる。熱重合開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。また、光重合開始剤の例としては、アルキルフェノン系化合物、含硫黄系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アミン系化合物などが挙げられる。また、ウレタン結合の形成反応を促進させる架橋触媒の例としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエートなどが挙げられる。
【0116】
また、前記樹脂層用塗料組成物は、アルコキシメチロールメラミンなどのメラミン架橋剤、3-メチル-ヘキサヒドロ無水フタル酸などの酸無水物系架橋剤、ジエチルアミノプロピルアミンなどのアミン系架橋剤などの他の架橋剤を含むことも可能である。
【0117】
光重合開始剤としては、硬化性の点から、アルキルフェノン系化合物が好ましい。アルキルフェノン形化合物の具体例としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-フェニル)-1-ブタン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-(4-フェニル)-1-ブタン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタン、1-シクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-エトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、ビス(2-フェニル-2-オキソ酢酸)オキシビスエチレン、およびこれらの材料を高分子量化したものなどが挙げられる。
【0118】
本発明の効果を阻害しない範囲であれば、樹脂層を形成するために用いる樹脂層用塗料組成物に、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等を加えてもよい。これにより、樹脂層は、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等を含有することができる。紫外線吸収剤の具体例としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シュウ酸アニリド系、トリアジン系およびヒンダードアミン系の紫外線吸収剤が挙げられる。帯電防止剤の例としてはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの金属塩が挙げられる。
【0119】
上述のようにして、離型層上に形成した塗布層を乾燥、硬化することにより樹脂層を形成することが好ましい。
【0120】
[用途]
本発明の積層体は耐傷性、表面形状への追従性等を活かし、例えばプラスチックスや金属で構成された成型体の表面保護に好適に用いることができる。さらに、本発明の積層体から支持基材および離型層を剥離してなる樹脂フィルムは、例えば成型体の保護フィルムとして好適に用いることができる。
【0121】
〔樹脂フィルム〕
支持基材及び離型層を有さない樹脂層のことを、樹脂フィルムと記載することは前述のとおりであるが、本発明の樹脂フィルムは、表面に、原子間力顕微鏡により観察され、弾性率が高い領域(領域Aとする)よりも弾性率が低い領域(領域Bとする)が存在し、以下の条件1及び2を満たすことを特徴とする。
条件1: 領域Bの弾性率EBが1,500MPa以下
条件2: 5μm四方における領域Bの平均個数が、50個以上300個以下
ここで領域A、領域B、条件1、及び条件2の詳細については、前述の本発明の積層体の樹脂層の項に記したとおりである。
【0122】
また本発明の樹脂フィルムは、以下の条件3及び4を満たすことが好ましい。
条件3: 前記領域Aの弾性率EAと前記領域Bの弾性率EBとの差(EA-EB)が100MPa以上。
条件4: 前記領域Bの長軸半径が25nm以上、250nm以下
ここで条件3及び条件4の詳細については、前述の本発明の積層体の樹脂層の項に記したとおりである。
【0123】
さらに本発明の樹脂フィルムは、その表面から5nmの範囲において、前記領域Aが化学式1で表される樹脂成分を含み、前記領域Bが化学式2で表される樹脂成分および/または化学式3で表される樹脂成分を含むことが好ましい。ここで化学式1、2、及び3の樹脂成分の詳細については、前述の本発明の積層体の樹脂層の項に記したとおりである。
【0124】
なお本発明の樹脂フィルムの製造方法は特に限定されないが、例えば、本発明の積層体を製造した後に、その積層体から樹脂層のみを剥離することにより、本発明の樹脂フィルムを製造することができる。
【0125】
このような本発明の樹脂フィルムの用途は、前述のとおり、例えば成型体の保護フィルムとして好適に用いることができる。
【実施例0126】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0127】
[離型層用塗料組成物1]
下記材料を混合し、メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール混合溶媒(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度5質量%の離型層用塗料組成物1を得た。
・側鎖型カルビノール変性反応型シリコーンオイル
(X-22-4015信越化学工業(株) 固形分濃度 100質量%):5質量部
・両末端型ポリエーテル変性反応型シリコーンオイル
(X-22-4952信越化学工業(株) 固形分濃度 100質量%):5質量部
・アクリル変性アルキド樹脂
(ハリフタール KV-905 ハリマ化成株式会社 固形分濃度 53質量%) 100質量部
・イソブチルアルコール変性メラミン樹脂
(メラン2650L 日立化成株式会社 固形分濃度 60質量%):20質量部
・パラトルエンスルホン酸: 5質量部。
【0128】
[離型層用塗料組成物2]
下記材料を混合し、トルエン/ヘプタン混合溶媒(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の離型層用塗料組成物3を得た。
・メチルビニルポリシロキサンおよびメチル水素化ポリシロキサンのトルエン溶液
(LTC752 Coating 東レ・ダウコーニング(株)製 固形分濃度 30質量%) :85質量部
・剥離添加剤
(BY24-4980 東レ・ダウコーニング(株)製 固形分濃度 30質量%):5質量部
・メチルビニルポリシロキサンと白金の錯体溶液
(PL-50T 信越化学工業(株)製) :0.1質量部。
【0129】
[離型層用塗料組成物3]
下記材料を混合し、メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール混合溶媒(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度5質量%の離型層用塗料組成物5を得た。
・長鎖アルキル基含有アミノアルキド樹脂のトルエン/キシレン/イソブタノール/メタノール混合溶液
(日立化成(株)社製、テスファインR305、固形分濃度 50質量%)。
【0130】
[離型層用塗料組成物4]
下記材料を混合し、メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール混合溶媒(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度5質量%の離型層用塗料組成物5を得た。
・片末端型カルビノール変性反応型シリコーンオイル
(X-22-170DX信越化学工業(株) 固形分濃度 100質量%):1質量部
・両末端型ポリエーテル変性反応型シリコーンオイル
(X-22-4952信越化学工業(株) 固形分濃度 100質量%):5質量部
・アクリル変性アルキド樹脂
(ハリフタール KV-905 ハリマ化成株式会社 固形分濃度 53質量%) 100質量部
・イソブチルアルコール変性メラミン樹脂
(メラン2650L 日立化成株式会社 固形分濃度 60質量%):20質量部
・パラトルエンスルホン酸: 5質量部。
【0131】
[樹脂層用塗料組成物の作成]
[樹脂層用塗料組成物1]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物1を得た。
・樹脂前駆体A: ポリマーアクリレート樹脂の酢酸ブチル/酢酸エチル溶液 160質量部
(“ユニディック” V-6850 DIC株式会社 固形分濃度50質量%)
・樹脂前駆体B: ウレタンアクリレートオリゴマー
(“紫光” UV3200B 日本合成化学工業(株)製 固形分濃度100質量%) 20質量部
・レベリング剤
(“フタージェント”212M (株)ネオス製 固形分濃度100質量%) 1質量部
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0132】
[樹脂層用塗料組成物2]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物2を得た。
・樹脂前駆体A: ポリマーアクリレート樹脂の酢酸ブチル/酢酸エチル溶液 190質量部
(“ユニディック” V-6850 DIC株式会社 固形分濃度50質量%)
・樹脂前駆体B: ウレタンアクリレートオリゴマー
(“紫光” UV3200B 日本合成化学工業(株)製 固形分濃度100質量%) 5質量部
・レベリング剤
(“フタージェント”602A (株)ネオス製 固形分濃度50質量%) 1質量部
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0133】
[樹脂層用塗料組成物3]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物3を得た。
・樹脂前駆体A: ポリマーアクリレート樹脂の酢酸ブチル/酢酸エチル溶液 160質量部
(“ユニディック” V-6850 DIC株式会社 固形分濃度50質量%)
・樹脂前駆体B: ウレタンアクリレートオリゴマー
(“紫光” UV3200B 日本合成化学工業(株)製 固形分濃度100質量%) 20質量部
・レベリング剤
(“BYK”(登録商標)-UV3535 ビックケミ-・ジャパン(株)製 固形分濃度100質量%) 1質量部
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0134】
[樹脂層用塗料組成物4]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物4を得た。
・樹脂前駆体A: ポリマーアクリレート樹脂の酢酸ブチル/酢酸エチル溶液 160質量部
(“ユニディック” V-6850 DIC株式会社 固形分濃度50質量%)
・樹脂前駆体B: ウレタンアクリレートオリゴマー
(“紫光” UV3200B 日本合成化学工業(株)製 固形分濃度100質量%) 20質量部
・レベリング剤
(“フタージェント”212M 株式会社ネオス 固形分濃度100質量%) 3質量部
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0135】
[樹脂層用塗料組成物5]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物5を得た。
・樹脂前駆体A: ポリマーアクリレート樹脂の酢酸ブチル/酢酸エチル溶液 160質量部
(“ユニディック” V-6850 DIC株式会社 固形分濃度50質量%)
・樹脂前駆体B: ウレタンアクリレートオリゴマー
(“紫光” UV3200B 日本合成化学工業(株)製 固形分濃度100質量%) 20質量部
・レベリング剤
(“フタージェント”212M (株)ネオス製 固形分濃度100質量%) 0.3質量部
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0136】
[樹脂層用塗料組成物6]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物6を得た。
・樹脂前駆体A: ポリマーアクリレート樹脂の酢酸ブチル/酢酸エチル溶液 190質量部
(“ユニディック” V-6850 DIC株式会社 固形分濃度50質量%)
・樹脂前駆体B: ウレタンアクリレートオリゴマー
(“紫光” UV3200B 日本合成化学工業(株)製 固形分濃度100質量%) 5質量部
・レベリング剤
(LINC-3A 共栄社化学株式会社 固形分濃度100質量%) 1質量部
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0137】
[樹脂層用塗料組成物7]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物7を得た。
・ ポリマーアクリレート樹脂の酢酸ブチル/酢酸エチル溶液 200質量部
(“ユニディック” V-6850 DIC株式会社 固形分濃度50質量%)
・レベリング剤
(“BYK”(登録商標)-UV3535 ビックケミ-・ジャパン(株)製 固形分濃度100質量%) 1質量部
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0138】
[樹脂層用塗料組成物8]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物3を得た。
・樹脂前駆体A: ポリマーアクリレート樹脂の酢酸ブチル/酢酸エチル溶液 160質量部
(“ユニディック” V-6850 DIC株式会社 固形分濃度50質量%)
・樹脂前駆体B: ウレタンアクリレートオリゴマー
(“紫光” UV3200B 日本合成化学工業(株)製 固形分濃度100質量%) 20質量部
・レベリング剤
(“BYK”(登録商標)-UV3535 ビックケミ-・ジャパン(株)製 固形分濃度100質量%) 3質量部
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0139】
[樹脂層用塗料組成物9]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物9を得た。
・樹脂前駆体A: ポリマーアクリレート樹脂の酢酸ブチル/酢酸エチル溶液 160質量部
(“ユニディック” V-6850 DIC株式会社 固形分濃度50質量%)
・樹脂前駆体B: ウレタンアクリレートオリゴマー
(“紫光” UV3200B 日本合成化学工業(株)製 固形分濃度100質量%) 20質量部
・レベリング剤
(“BYK”(登録商標)-UV3535 ビックケミ-・ジャパン(株)製 固形分濃度100質量%) 0.5質量部
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0140】
[樹脂層用塗料組成物10]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物10を得た。
・多官能アクリレートモノマー 100質量部
(“KAYARAD” (登録商標) PET30 日本化薬株式会社製 固形分濃度100質量%)
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0141】
[樹脂層用塗料組成物11]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物11を得た。
・樹脂前駆体A: ポリマーアクリレート樹脂の酢酸ブチル/酢酸エチル溶液 160質量部
(“ユニディック” V-6850 DIC株式会社 固形分濃度50質量%)
(“ユニディック” V-6850 DIC株式会社 固形分濃度50質量%)
・樹脂前駆体B: ウレタンアクリレートオリゴマー
(“紫光” UV3200B 日本合成化学工業(株)製 固形分濃度100質量%) 20質量部
・レベリング剤
(“フタージェント”212M (株)ネオス製 固形分濃度100質量%) 0.1質量部
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0142】
[樹脂層用塗料組成物12]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物12を得た。
・樹脂前駆体A:ポリマーアクリレート樹脂の酢酸ブチル/酢酸エチル溶液 160質量部
(“ユニディック” V-6850 DIC株式会社 固形分濃度50質量%)
(“ユニディック” V-6850 DIC株式会社 固形分濃度50質量%)
・樹脂前駆体B: ウレタンアクリレートオリゴマー
(“紫光” UV3200B 日本合成化学工業(株)製 固形分濃度100質量%) 20質量部
・レベリング剤
(“フタージェント”212M (株)ネオス製 固形分濃度100質量%) 5質量部
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0143】
[樹脂層用塗料組成物13]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物13を得た。
・多官能アクリレートモノマー 100質量部
(“KAYARAD” (登録商標) PET30 日本化薬株式会社製 固形分濃度100質量%)
・レベリング剤
(LINC-5A 共栄社化学(株)製 固形分濃度100質量%) 1質量部
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0144】
[樹脂層用塗料組成物14]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物14を得た。
・樹脂前駆体A:ウレタンアクリレートオリゴマーA1 80質量部
・樹脂前駆体B:ウレタンアクリレートオリゴマーB1 20質量部
・レベリング剤
(“フタージェント”212M (株)ネオス製 固形分濃度100質量%) 1質量部
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0145】
ウレタンアクリレートオリゴマーA1の合成方法は、以下の通りである。 ビスフェノールA型ジエポキシ樹脂(YD-8125 新日鐵化学株式会社製)108質量部、(メタ)アクリル酸誘導体として,アクリル酸45質量部、重合禁止剤としてヒドロキノンモノメチルエーテル0.2質量部、触媒としてジメチルアミノエチルメタアクリレート0.8質量部を入れ、攪拌しながら95℃まで昇温させ、95℃に保持した状態で14時間反応を続けた。酸価が1mgKOH/g以下になったところで一段目の反応を終了し、2個の水酸基を有するエポキシアクリレートを得た。
【0146】
次に、60℃まで降温した後、希釈溶剤として酢酸エチルを添加し、触媒としてジラウリン酸ジ-n-ブチル錫0.03質量部を添加し、攪拌しながら、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート83質量部を、2時間に渡って滴下し、続いてペンタエリスリトールトリアクリレート 94質量部を1時間かけて滴下した。滴下後5時間反応を続行し、5官能、重量平均分子量の1200のウレタンアクリレートオリゴマーA1を得た。
【0147】
ウレタンアクリレートオリゴマーB1の合成方法は以下の通りである。ポリテトラメチレングリコール(PTMG1000 三菱ケミカル株式会社製)70質量部、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル(ニューポールBPE-40 三洋化成株式会社製)33質量部、酢酸エチルを入れ、内温60℃になるように加温した。合成触媒としてジラウリン酸ジ-n-ブチル錫0.03質量部を添加し、攪拌しながら、イソホロンジイソシアネート31質量部を1時間かけて滴下、滴下終了後2時間反応を続行した。
【0148】
続いて、2-ヒドロキシエチルアクリレート2.4質量部を、1時間かけて滴下した。滴下後5時間反応を続行し、2官能の重量平均分子量14000のウレタンアクリレートオリゴマーB1を得た。
【0149】
[樹脂層用塗料組成物15]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物15を得た。
・樹脂前駆体A:ウレタンアクリレートオリゴマーA1 60質量部
・樹脂前駆体B:ウレタンアクリレートオリゴマーB1 40質量部
・レベリング剤
(“フタージェント”212M (株)ネオス製 固形分濃度100質量%) 1質量部
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0150】
[樹脂層用塗料組成物16]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物16を得た。
・樹脂前駆体A:ウレタンアクリレートオリゴマーA1 80質量部
・樹脂前駆体B: ウレタンアクリレートオリゴマーB2 20質量部
・レベリング剤
(“フタージェント”212M (株)ネオス製 固形分濃度100質量%) 1質量部
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0151】
樹脂前駆体B2の合成方法は、以下の通りである。ポリテトラメチレングリコール(PTMG1000 三菱ケミカル株式会社製)70質量部、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル(ニューポールBPE-40 三洋化成株式会社製)33質量部、酢酸エチルを入れ、内温60℃になるように加温した。合成触媒としてジラウリン酸ジ-n-ブチル錫0.03質量部を添加し、攪拌しながら、イソホロンジイソシアネート31質量部を1時間かけて滴下、滴下終了後2時間反応を続行した。
【0152】
続いて、2-ヒドロキシエチルアクリレート1.2質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート3.0質量部、を1時間かけて滴下した。滴下後5時間反応を続行し、樹脂前駆体Bとして、4官能の重量平均分子量15000のウレタンアクリレートオリゴマーB2溶液を得た。
【0153】
[樹脂層用塗料組成物17]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度20質量%の樹脂層用塗料組成物17を得た。
・樹脂前駆体A: ウレタンアクリレートオリゴマー 80質量部
(EBCRYL3701 ダイセルオルネクス株式会社)
・樹脂前駆体B: ウレタンアクリレートオリゴマー B1 20質量部
・レベリング剤
(“フタージェント”212M (株)ネオス製 固形分濃度100質量%) 1質量部
・αヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤 3.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
【0154】
[離型層付き支持基材1~4の作成]
前述の離型層用塗料組成物と支持基材を用いて、以下の方法を用いて離型層を形成し、離型層付き支持基材を作成した。使用する離型層用塗料組成物と離型層の形成方法、離型層厚みの組み合わせは、表1に記載の通りである。
【0155】
[離型層の形成方法1]
小径グラビアコーターを有する塗布装置を用い、厚み50μmのポリエステルフィルム(東レ(株)製商品名“ルミラー”(登録商標)R75X)に、離型層用塗料組成物を表1に記載の離型層厚みになるように、グラビア線数、周速、固形分濃度を調整して塗布し、次いで熱風温度140℃にて30秒保持することで、乾燥と硬化を行い離型層付き支持基材1を得た。
【0156】
[離型層の形成方法2]
小径グラビアコーターを有する塗布装置を用い、厚み50μmのポリエステルフィルム(東レ(株)製商品名“ルミラー”(登録商標)R75X)に、離型層用塗料組成物2、3および4を、それぞれ表1に記載の離型層厚みになるように、グラビア線数、周速、固形分濃度を調整して塗布し、次いで熱風温度120℃にて30秒保持することで、乾燥と硬化を行い離型層付き支持基材2~4を得た。
【0157】
[離型層の形成方法3]
小径グラビアコーターを有する塗布装置を用い、厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム(株)製TD40UL)に、離型層用塗料組成物を表1に記載の離型層厚みになるように、グラビア線数、周速、固形分濃度を調整して塗布し、次いで熱風温度140℃にて30秒保持することで、乾燥と硬化を行い離型層付き支持基材5を得た。
【0158】
[積層体の作成]
前述の樹脂層用塗料組成物と離型層付き支持基材を用いて、樹脂層を形成し、積層体を作成した。使用する樹脂層用塗料組成物と樹脂層の形成方法、樹脂層厚みの組み合わせは、表1に記載の通りである。
【0159】
[樹脂層の形成方法]
単層スロットダイコーターを有する連続塗布装置を用い、前述の離型層付き支持基材に、前述の樹脂層用塗料組成物を、表1に記載の樹脂層厚みになるように、スロットからの吐出流量を調整して塗布し、次いで熱風温度80℃にて30秒保持することで乾燥し、次いで、酸素分圧0.1体積%以下、照射出力400W/cm2、照射強度が120mJ/cm2になる条件下で高圧水銀灯を照射することにより硬化を行い、樹脂層を形成した。
【0160】
以上の方法により実施例1~17、比較例1~4の積層体を作成した。各実施例、比較例に対応する上記積層体の作成方法、および樹脂層の厚みは、表1に記載した。
【0161】
【0162】
[樹脂フィルムの形成1]
実施例1で作成した積層体から、離型層付き支持基材を剥離し、樹脂フィルム1を得た。
【0163】
[樹脂フィルムの形成2]
実施例2で作成した積層体から、離型層付き支持基材を剥離し、樹脂フィルム2を得た。
【0164】
[樹脂フィルムの形成3]
実施例3で作成した積層体から、離型層付き支持基材を剥離し、樹脂フィルム3を得た。
【0165】
[樹脂フィルムの形成4]
実施例4で作成した積層体から、離型層付き支持基材を剥離し、樹脂フィルム4を得た。
【0166】
[樹脂フィルムの形成5]
実施例5で作成した積層体から、離型層付き支持基材を剥離し、樹脂フィルム5を得た。
【0167】
[樹脂フィルムの形成6]
実施例6で作成した積層体から、離型層付き支持基材を剥離し、樹脂フィルム6を得た。
【0168】
[樹脂フィルムの形成7]
実施例7で作成した積層体から、離型層付き支持基材を剥離し、樹脂フィルム7を得た。
【0169】
[樹脂フィルムの形成8]
実施例8で作成した積層体から、離型層付き支持基材を剥離し、樹脂フィルム8を得た。
【0170】
[樹脂フィルムの形成9]
実施例9で作成した積層体から、離型層付き支持基材を剥離し、樹脂フィルム9を得た。
【0171】
[樹脂フィルムの形成10]
実施例10で作成した積層体から、離型層付き支持基材を剥離し、樹脂フィルム10を得た。
【0172】
[樹脂フィルムの形成11]
実施例11で作成した積層体から、離型層付き支持基材を剥離し、樹脂フィルム11を得た。
【0173】
[樹脂フィルムの形成12]
実施例12で作成した積層体から、離型層付き支持基材を剥離し、樹脂フィルム12を得た。
【0174】
[樹脂フィルムの形成13]
実施例13で作成した積層体から、離型層付き支持基材を剥離し、樹脂フィルム13を得た。
【0175】
[樹脂フィルムの形成14]
実施例14で作成した積層体から、離型層付き支持基材を剥離し、樹脂フィルム14を得た。
【0176】
[樹脂フィルムの形成15]
実施例15で作成した積層体から、離型層付き支持基材を剥離し、樹脂フィルム15を得た。
【0177】
[樹脂フィルムの形成16]
実施例16で作成した積層体から、離型層付き支持基材を剥離し、樹脂フィルム16を得た。
【0178】
[樹脂フィルムの形成17]
実施例17で作成した積層体から、離型層付き支持基材を剥離し、樹脂フィルム17を得た。
【0179】
以上の方法により実施例18~2634の樹脂フィルムを作成した。各実施例に対応する上記樹脂フィルムの形成方法、および樹脂フィルムの厚みは、表2に記載した。
【0180】
【0181】
[積層体及び樹脂フィルムの物性評価]
実施例1~17および比較例1~4で作製した積層体及び実施例18~34で作製した樹脂フィルムについて、以下に示す物性評価を実施し、得られた結果を表3及び表4にまとめた。特に断らない場合を除き、測定は各実施例・比較例において1つのサンプルについて場所を変えて3回測定を行い、その平均値を用いた。さらに物性評価結果に基づき、算出された化学式1~3で表される樹脂成分の有無について表3及び表4に記載した。
【0182】
【0183】
【0184】
[樹脂層及び樹脂フィルム表面の弾性率分布]
樹脂層及び樹脂フィルム表面の弾性率分布の測定は、AFM(Burker Corporation製 DimensionIcon)を用い、PeakForceQNMモードにて測定を実施した。得られたフォースカーブから付属の解析ソフト「NanoScopeAnalysis V1.40」を用いて、JKR接触理論に基づいた解析を行い、弾性率分布を求めた。
【0185】
具体的にはPeakForceQNMモードのマニュアルに従い、カンチレバーの反り感度、バネ定数、先端曲率の構成を行った後、下記の条件にて測定を実施し、得られたDMT ModulusチャンネルのデータをB面の弾性率として採用した。なお、バネ定数および先端曲率は個々のカンチレバーによってバラつきを有するが、測定に影響しない範囲として、バネ定数0.3(N/m)以上0.5(N/m)以下、先端曲率半径15(nm)以下の条件を満たすカンチレバーを採用し、測定に使用した。測定条件は下記に示す。
測定装置 : Burker Corporation製原子間力顕微鏡(AFM)
測定モード : PeakForceQNM(フォースカーブ法)
カンチレバー: ブルカーAXS社製SCANASYST-AIR
(材質:Si、バネ定数K:0.4(N/m)、先端曲率半径R:2(nm))
測定雰囲気 : 23℃・大気中
測定範囲 : 5(μm)四方
分解能 : 512×512
カンチレバー移動速度: 10(μm/s)
最大押し込み荷重 : 10(nN)。
【0186】
[領域Aの弾性率EA、領域Bの弾性率EBおよびその差(EA-EB)]
次いで得られたDMT Modulusチャンネルのデータを解析ソフト「NanoScopeAnalysis V1.40」にて解析した。まずDepthモードでNumber Histogram Bins(階級の個数)を3,000点に設定し、弾性率の頻度ヒストグラム(横軸-弾性率(MPa)、縦軸-頻度(%))を算出した。次いで得られた弾性率の頻度ヒストグラムについて以下の方法でピークの数を判断した。ここでピークとは、頻度の極大値を意味し、弾性率の頻度ヒストグラムが極大値を1つのみ有する場合には、その極大値がピークであり、また、体積基準頻度分布が極大値を2つ以上有する場合には、対象とする極大値の間に存在する最小値に対して頻度の差が2%以上ある極大値をピークとして扱う。そこで得られた弾性率の頻度ヒストグラムについて、この基準に基づいてピークの数を判断した。
【0187】
次いで、弾性率の頻度ヒストグラムから上記で判定したピークに対応する弾性率を読み取り、最大のものを領域Aの弾性率EAとし、残るピークの各点で弾性率xと頻度F(x)の積を算出し、その総和ΣxF(x)を頻度の総和ΣF(x)で除することで、頻度で重み付けされた平均値とし、この値を領域Bの弾性率EBとして採用した。なお該当するピークが一つしか存在しない場合には、領域Bが存在しないとし、領域Bの物性を該当なしとした。
【0188】
[領域Bの平均個数]
上記にて得られた弾性率分布を用いて領域Bの個数の算出を実施した。まず得られた画像を解析ソフト「NanoScopeAnalysis V1.40」内でPlane Fit(XY、3rd)の条件で平滑化し、次いでImage Color Scale Adjust(Autoscale)にてコントラストを調整した。次いで画像処理ソフトEasyAccess Ver6.7.1.23にて画像をグレースケールに変換し、ホワイトバランスを最明部と最暗部が8bitのトーンカーブに収まるように調整し、さらに領域の境界が明確に見分けられるようにコントラストを調節した。次いで画像解析ソフトImageJ 1.45s(開発元:アメリカ国立衛生研究所(NIH))を用いて前述の境界を境に画素の2値化を行い、個々の領域をParticle Analyze(Include holes:あり、Size:0-Infinty)によって解析した。Resultsウィンドウに表示されるデータの総数を5μm×5μmの範囲に含まれる領域Bの個数とした。同様の測定および解析を5か所で繰り返し実施し、その平均値を領域Bの平均個数とした。
【0189】
[領域Bの長軸半径]
続いて画像解析ソフトImageJ 1.45s(開発元:アメリカ国立衛生研究所(NIH))を用いて、Particle Analyze(Include holes:あり、Size:0-Infinty)により、長軸半径の解析を実施した。具体的にはSet MeasurementsよりFit Ellipse(楕円近似)を選択し、Resultsウィンドウに表示されるMajorの平均値を長軸半径として採用した。
【0190】
[樹脂層及び樹脂フィルムの表面組成]
ION TOF社製、飛行時間型2次イオン質量分析計TOF-SIMS Vおよび同社測定ソフトSURFACE LAB 6を用い、樹脂層及び樹脂フィルムの最表面から5nmの範囲について、2次イオン質量分析法によって正イオンと負イオンの質量分布を以下の条件で測定した。
・測定条件
一次イオン種 :Bi3
++
一次イオン電流:1.000pA
加速電圧 :25kV
測定範囲 :100μm×100μm
分解能 :128×128
スキャン回数 :36回。
【0191】
まず初めに得られたデータの質量分布解析を実施した。質量分布中に質量数85の負イオンまたは質量数71の負イオンを含む場合には化学式1で表される樹脂成分が、質量数69の正イオン(化学式4)および質量数169の正イオン(化学式5)を同時に含む場合には化学式2で表される樹脂成分が、質量数45の正イオンまたは質量数59の正イオンを含む場合には化学式3で表される樹脂成分が含まれると判断した。
【0192】
この時、深さ方向の切削にはArガスクラスタースパッタ銃を使用した。スパッタ速度については、事前に積層体の樹脂層及び樹脂フィルムの厚みを測定しておく。そして樹脂層厚みが既知の当該サンプルを支持基材側まで切削し、単位時間辺りの切削速度を換算した。そこから5nmの切削に要する時間を算出し、当該時間の積算結果を樹脂層及び樹脂フィルムの最表面から5nmの範囲の分析結果として採用した。
【0193】
続いて、空間分布の解析を実施した。上記にて測定したデータから最表面の空間分布像を再構成した。この時、質量数85の負イオンもしくは質量数71の負イオン、質量数150の正イオン(化学式4)、質量数393の正イオン(化学式5)、質量数45の正イオン、質量数59の正イオンが検出された場合には、それぞれ着目するイオンの極性および質量に分析条件を合わせ、解析を実施した。
【0194】
具体的には、まず2次イオン質量分析計に内蔵されているソフトウェアを用いて、前記樹脂層の最表面における2次元の位置情報、および対応する位置での各フラグメントイオンの2次イオン強度の情報を抽出した。
【0195】
2次イオン強度の標準偏差については、抽出した2次イオン強度の値を元に算出することができる。得られた空間分布について弾性率分布と同様にして解析を行い、平均個数を算出し、弾性率分布との差が±5%未満の場合には、同一のドメインを構成すると判断した。
【0196】
[積層体および樹脂層の特性評価]
積層体および樹脂層について、次に示す特性評価を実施し、得られた結果を表5に示す。特に断らない場合を除き、測定は各実施例・比較例において1つのサンプルについて場所を変えて3回評価し、その平均値を求め、少数第一位を四捨五入した。
【0197】
【0198】
[樹脂層表面の耐擦傷性の評価]
実施例1~17および比較例1~4で作製した積層体について、#0000のスチールウールを用い、平面摩耗試験機(株式会社大栄科学精器製作所製 PA-300A)を用いて、荷重250kg/cm2にて、樹脂層の表面を10往復摩擦し、傷の発生の有無を目視により観察し、以下の基準に則り判定を行い、4点以上を合格とした。
10点:0本
7点:1本以上、5本未満
4点:5本以上、10本未満
1点:10本以上。
[樹脂層の剥離性の評価]
実施例1~17および比較例1~4で作製した積層体について、積層体の樹脂層の表面に、粘着フィルム(パナック株式会社 パナクリーンPD-S1 25μm品)の一方のセパレーターを剥がした面を気泡が入らないように貼合し、次いで粘着フィルムのセパレーターを剥がして、PETフィルム(188μm 東レ(株)“ルミラー”(登録商標) T60)に貼り付けた。
【0199】
支持基材と樹脂層を予め端部から少し剥離しておき、剥離した樹脂層を180度方向に剥離し、以下の基準に則り判定を行い、平均点4点以上を合格とした。
10点:剥離速度10,000mm/minでも面内均一に剥がすことができる。
7点:剥離速度10,000mm/minでは面内均一に剥がすことができず、1,000mm/minでは面内均一にはがすことができる。
4点:剥離速度1,000mm/minでは面内均一に剥がすことができず、300mm/minでは面内均一にはがすことができる。
1点:300mm/minで面内均一に剥がすことができない。
【0200】
[樹脂層の品位の評価]
実施例1~17および比較例1~4で作製した積層体について、光源を樹脂層表面に映り込ませた状態で、100m2を目視にて検査し、そのうち直径1mm以上の変形(ハジキ、異物)が観察された個数について、以下の基準に則り判定を行い、平均点4点以上を合格とした。
10点:1個以下
7点:2個以上5個以下
4点:6個以上10個以下
1点:11個以上。
【0201】
[樹脂層の形状追随性の評価]
実施例1~17および比較例1~4で作製した積層体について、積層体の樹脂層の表面に、粘着フィルム(パナック株式会社 パナクリーンPD-S1 25μm品)の一方のセパレーター剥がした面を気泡が入らないように貼合し、次いで、90mm幅×90mm長の矩形に、端部にクラックが入らない方法で切り出し、もう一方の面のセパレーターを剥がして、直径30mmの円筒に貼り付け、このときの樹脂層の状態を観察し、以下の基準に則り判定を行い、平均点4点以上を合格とした。
10点:樹脂層をクラックや浮きが発生せず、均一に貼り付けることができる
7点:樹脂層の端部に微細なクラックが見られるが、それ以外は均一に貼り付けることができる
4点:樹脂層の端部や中央部に微細なクラックが見られるが、それ以外は均一に貼り付けることができる
1点:樹脂層の中央部にクラックや浮きが入り、均一に貼り付けることができない。
【0202】
[樹脂層の耐クラック性]
実施例1~17および比較例1~4で作製した積層体について、積層体の樹脂層の表面に、粘着フィルム(パナック株式会社 パナクリーンPD-S1 25μm品)の一方のセパレーター剥がした面を気泡が入らないように貼合し、直径6mmの書類用穴開けパンチで、穴を開けた。そして、粘着層のもう一方の面のセパレーターを剥がして、ガラスに貼合した。
【0203】
23℃50%の環境で48時間放置後、穴の周辺部について観察を行い、以下の基準に則り判定を行い、平均点4点以上を合格とした。
10点: 樹脂層の穴の周辺部に、クラック、欠けが見られない
7点: 樹脂層の穴の周辺部に、欠けはあるが、クラックはない
4点: 樹脂層の穴の周辺部に、穴の端部から0.5mm未満のクラックが見られる
1点: 樹脂層の穴の周辺部に、穴の端部から0.5mm以上のクラックが見られる
[樹脂層の浮きの評価]
実施例1~17および比較例1~4で作製した積層体を、100×200mm角にカッターナイフで切断し、直径30mmの円筒に巻き付けた時に切断部の端部を観察し、以下の基準に則り判定を行い、平均点4点以上を合格とした。
10点:カッターナイフで切断した時の端部、および円筒に巻き付けたときの端部のいずれも、浮きが発生しない。
7点:カッターナイフで切断した時の端部は浮きが発生せず、円筒に巻き付けたときにわずかに端部に浮きが発生する。
4点:カッターナイフで切断した時の端部はわずかに浮きが発生し、円筒に巻き付けたときにわずかに端部に浮きが発生する。
1点:カッターナイフで切断した時の端部に浮きが発生し、円筒に巻き付けたときには、端部全体に浮きが発生する。
本発明の樹脂フィルムおよび積層体は、耐傷性、薄膜での搬送性、表面形状への追従性に優れ、また、たとえば耐候性やガスバリア性、ブロッキング防止性などの機能を有する層を転写するといった利点を活かし、プラスチックスや金属を始めとする成型体に好適に用いることができる。
一例を挙げると、メガネ・サングラス、化粧箱、食品容器などのプラスチック成形品、水槽、展示用などのショーケース、スマートフォンの筐体、タッチパネル、カラーフィルター、フラットパネルディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、フレキシブルデバイス、ウェアラブルデバイス、センサー、回路用材料、電気電子用途、キーボード、テレビ・エアコンのリモコンなどの家電製品、ミラー、窓ガラス、建築物、ダッシュボード、カーナビ・タッチパネル、ルームミラーやウインドウなどの車両部品、および種々の印刷物、医療用フィルム、衛生材料用フィルム、医療用フィルム、農業用フィルム、建材用フィルム等、それぞれの表面材料や内部材料や構成材料や製造工程用材料に好適に用いることができる。