(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020333
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】HIV感染症及びAIDSを治療するためのレジメン
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4985 20060101AFI20240206BHJP
A61K 31/505 20060101ALI20240206BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240206BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20240206BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240206BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20240206BHJP
A61K 31/52 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
A61K31/4985
A61K31/505
A61K45/00
A61P31/18
A61P43/00 121
A61K31/513
A61K31/52
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023191389
(22)【出願日】2023-11-09
(62)【分割の表示】P 2020502979の分割
【原出願日】2018-07-18
(31)【優先権主張番号】62/535,302
(32)【優先日】2017-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】317016589
【氏名又は名称】ヴィーブ ヘルスケア カンパニー
(71)【出願人】
【識別番号】510020022
【氏名又は名称】ヤンセン・サイエンシズ・アイルランド・アンリミテッド・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クラウウェルズ,ヘルタ
(72)【発明者】
【氏名】マーゴリス,デビッド
(72)【発明者】
【氏名】スプリーン,ウィリアム アール.
(72)【発明者】
【氏名】スパルテンスタイン,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,ピーター
(57)【要約】 (修正有)
【課題】HIVを治療する方法を提供する。
【解決手段】カボテグラビル又はその薬学的に許容される塩とリルピビリン又はその薬学的に許容される塩との組み合わせを、4週間以下の頻度で1回筋肉内投与することを含み、場合により、最初の経口抗レトロウイルスレジメンの投与を中止することと、カボテグラビルとリルピビリンとの前記組み合わせを4週間以下の頻度で筋肉内投与することを含む、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カボテグラビル又はその薬学的に許容される塩とリルピビリン又はその薬学的に許容される塩との組み合わせを、4週間に1回以下の頻度で筋肉内投与することを含む、HIVを治療する方法。
【請求項2】
治療は毎月又は4週間毎である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
治療は4週間毎である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
被験者のための抗レトロウイルス投薬レジメンを改変する方法であって、
被験者への最初の経口抗レトロウイルスレジメンの投与を中止すること;並びに
以下を含む製剤を、毎月又は4週間毎に1回、被験者に筋肉内投与することを含む、方法、
・リルピビリン又はその薬学的に許容される塩、及び、
・カボテグラビル又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
カボテグラビル400mgとリルピビリン600mgとが、2回の2mL注射で、4週間毎に投与される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
治療は8週間毎又は2か月毎である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
治療は8週間毎である、請求項1又は4に記載の方法。
【請求項8】
被験者のための抗レトロウイルス投薬レジメンを改変する方法であって、
被験者への最初の経口抗レトロウイルスレジメンの投与を中止すること;並びに
以下を含む製剤を2か月又は8週間毎に1回、被験者に筋肉内投与することを含む、方法、
・リルピビリン又はその薬学的に許容される塩、及び、
・カボテグラビル又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
カボテグラビル600mgとリルピビリン900mgとが、2回の3mL注射で、8週間毎にに投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
被験者は、治療の少なくとも96週間後に、血漿1mL当たり50コピー以下のHIV-1ウイルス粒子のウイルス量(≦50c/mL)を示す、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
最初の抗レトロウイルスレジメンが、以下を含む、請求項3、4、5、7、8又は9に記載の方法。
・カボテグラビル、及び
・2つのヌクレオシド逆転写酵素阻害剤。
【請求項12】
前記最初の抗レトロウイルスレジメンが、以下を含む、請求項11に記載の方法。
・カボテグラビル、及び
・アボカビルとラミブジン。
【請求項13】
被験者はHIV-1に感染している、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記被験者は、前記製剤の投与前に、血漿1mL当たり50コピー以下のHIV-1ウイルス粒子のウイルス量(≦50c/mL)を示す、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
被験者は、投与前の被験者の表面抗原分類(CD)4+細胞数と比較して、1か月毎若しくは4週間毎に1回、又は2か月毎若しくは8週間毎に1回の製剤の投与の少なくとも96週間後に、同一の又は改善されたCD4+細胞数を示す、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記被験者は、1か月毎若しくは4週間毎に1回、又は2か月毎若しくは8週間毎に1回の製剤の投与の少なくとも96週間後に、HIVウイルスの緊急性を有する薬剤耐性突然変異を示さない、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト被験者のヒト免疫不全ウイルス(HIV)又はAIDSを治療する方法及び組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
ヒト免疫不全ウイルス(「HIV」)感染症及び関連疾患は、世界規模の、主な公衆衛生問題である。2014年には、世界中で推計3700万人がHIVに罹患していた(Global summary of the AIDS epidemic. World Health Organization. http://www.who.int/hiv/data/epi_core_july2015.png?ua=1. Accessed on April 26, 2016)。
【0003】
ヒト免疫不全ウイルス1型(「HIV-1」)は、ウイルス複製に必要な、3種の酵素:逆転写酵素、プロテアーゼ、及びインテグラーゼをコードするレトロウイルスである。逆転写酵素及びプロテアーゼを標的とする薬剤が、広く使用されており、有効性を示しているが、特に併用される場合、毒性及び耐性株の発達によりその有用性が制限されている(Palellaら、1998 N. Engl. J. Med. 338:853~860; Richman, 2001 Nature 410: 995~1001)。
【0004】
抗レトロウイルス療法(ART)は、HIVに感染したヒトのHIVウイルスを最大限に抑制し、HIV疾患の進行を止めようとするものである。さらに、ARTの一部は、高活性抗レトロウイルス療法(HAART)として知られる異なるウイルス標的に作用する複数の薬物の使用である。数多くの臨床データセットは、HIVウイルス負荷量(RNAレベル)が、ART開始後に減少し、HIVウイルス負荷量の減少が、AIDS進行及び/又はAIDS関連死のリスク低減と関連することを示している(Murray, et al. The use of plasma HIV RNA as a study endpoint in efficacy trials of antiretroviral drugs 1999 AIDS 13(7):797~804;Marschner, et al. Use of changes in plasma levels of human immunodeficiency virus type 1 RNA to assess the clinical benefit of antiretroviral therapy、1998 J Infect Dis. 177(1):40~47;Thiebaut, et al. Clinical progression of HIV-1 infection according to the viral response during the first year of antiretroviral treatment、2000 AIDS 14(8):971~978)。これらの知見を鑑みて、HIVウイルス量試験は、治療反応を決定するために確立された技術であり、特に、HIVウイルス量の減少は、認められた、肯定的な治療反応のマーカーである(HIV代用マーカー共同グループ(HIV Surrogate Marker Collaborative Group)、Human immunodeficiency virus type 1 RNA level and CD4 count as prognostic markers and surrogate end points:a meta-analysis、2000 AIDS Res Hum Retroviruses、16(12):1123~1133)。ウイルス量の、統計的に有意な変化は、3倍の変化であり、0.5log10コピー/mLの変化に等しい。用いられた研究又はアッセイに応じて、全般のウイルス抑制は、検出レベルより低いウイルス量として定義され、1ミリリットル当たり20~75コピー未満のHIV RNAコピー数(c/mL)である。ウイルス抑制は、1ミリリットル当たり50コピー未満のHIV RNAコピー数(<50c/mL)として定義されてもよい(Damond, et al. Human immunodeficiency virus type 1(HIV-1)plasma load discrepancies between the Roche COBAS AMPLICOR HIV-1 MONITOR Version 1.5 and the Roche COBAS AmpliPrep/COBAS TaqMan HIV-1 assays、2007 J. Clin. Microbiol.45(10):3436~3438)。
【0005】
米国保健社会福祉省によって出版された治療ガイドラインにより、ARTは、全てのHIVに感染した個体(CD4細胞数にかかわらず)に推奨され、ウイルス抑制を成し遂げることは、併用療法(少なくとも2種の薬物クラスからの2種以上の薬物)の使用を必要とすることが規定されている(http://aidsinfo.nih.gov/ContentFiles/AdultandAdolescentGL.pdf.で利用可能な、PANEL ON ANTIRETROVIRAL GUIDELINES FOR ADULTS AND ADOLESCENTS:GUIDELINES FOR THE USE OF ANTIRETROVIRAL AGENTS IN HIV-1-INFECTED ADULTS AND ADOLESCENTS。保健社会福祉省。セクションには、2017年4月19日にアクセスした)。実際、HIVに感染した又はAIDSと診断された患者のケアの標準コースは、3種以上の抗レトロウイルス(ARV)剤の組合せで治療すること(「併用抗レトロウイルス療法」(cART))である。しばしば、この治療は、HIV逆転写酵素をそれぞれ標的とする、2種の異なる抗レトロウイルス剤(「バックボーン」)、及びHIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素の非ヌクレオシド若しくは非ヌクレオチドのHIV阻害剤、逆転写酵素のヌクレオシド若しくはヌクレオチドのHIV阻害剤、HIVインテグラーゼ阻害剤、HIV非触媒部位(又はアロステリック)インテグラーゼ阻害剤、又はそれらの組合せに対して活性である、少なくとも1種の追加の抗レトロウイルス剤(「アンカー」)を用いる。
【0006】
高活性抗レトロウイルス療法(ART)の進歩はHIV患者の治療効果を改善し、患者の生存率及び生活の質を高めたが、生涯にわたる治療である(Blanc FX, Sok T, Laureillard D, et al. Earlyer vs later start of antiretroviral therapy in HIV-infected adults with tuberculosis. N. Engl. J. Med. 2011; 365(16): 1471-81.Walensky RP, Paltiel AD, Losina E, et al., The Survival Benefits of AIDS Treatment in the United States. Journal of Infectious Diseases 2006; 194(1): 11-9)。患者のノンコンプライアンスは、複雑なHIV治療レジメンに伴う周知の問題であり、治療の失敗及びHIVの多剤耐性株の出現につながり得ることから、重大な問題である。
【0007】
長時間作用注射用ARTは一部の患者に、HIV感染を管理するための便利で慎重なアプローチを提供し得る(Margolis DA, Boffito M. Long-acting antiviral agents for HIV treatment. Curr Opin HIV AIDS 2015; 10(4): 246-52.)。現在までのところ、HIV患者に使用可能な、長時間作用注射レジメンは存在しない。
【0008】
WO2006/116764は、HIV感染及びAIDSの治療に有用なインテグラーゼ阻害剤(integrase strand transfer inhibitors, INSTI)を開示している。開示される化合物の1つはカボテグラビル((3S,11aR)N-[(2,4-ジフルオロフェニル)メチル]-2,3,5,7,11a-ヘキサヒドロ-6-ヒドロキシ-3-メチル-5,7ジオキソオキサゾロ[3,2-a]ピリド[1,2-d]ピラジン-8-カルボキサミド)であり、化合物(I)とも称する、下記式(I)の化合物はヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対する抗ウイルス活性が証明されている。
【化1】
【0009】
カボテグラビルの1日1回の経口投与は、許容可能な安全性及び忍容性、長い半減期(40時間)、及び薬物-薬物相互作用の少なさを示した(Spreen W, Min S, Ford SL, et al. Pharmacokinetics, safety, and monotherapy antiviral activity of GSK1265744, an HIV integrase strand transfer inhibitor. HIV Clin. Trials 2013; 14(5): 192-203. Ford SL, Gould E, Chen S, et al. Lack of pharmacokinetic interaction between rilpivirine and integrase inhibitors dolutegravir and GSK1265744. Antimicrob Agents Chemother 2013; 57(11): 5472-7. Spreen WR, Margolis DA, Pottage JC, Jr. Long-acting injectable antiretrovirals for HIV treatment and prevention. Curr. Opin. HIV AIDS 2013; 8(6): 565-71)。
【0010】
リルピビリン(EDURANT)は、強力な非ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬(NNRTI)であり、HIV-1治療用として1日1回、25mgの経口薬として承認されており、以下の構造を有する:
【化2】
【0011】
カボテグラビル及びリルピビリン両方の長時間作用注射用ナノ懸濁製剤は、臨床開発中である。
【0012】
第IIb相LATTE試験(臨床試験 政府識別番号NCT01641809)において、予め、カボテグラビル及び2つのヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)を用いた治療によって、ウイルス量が<50 HIV-1 RNAコピー/mLに抑制されていた被験者において、カボテグラビル及びリルピビリンの1日1回経口製剤の2剤レジメンが、持続的なウイルス抑制を示し、これによりINSTI及びNNRTIを用いた2剤の維持レジメンの指針の根拠が示された(Margolis DA, Brinson CC, Smith GH, et al. Cabotegravir plus rilpivirine, once a day, after induction with cabotegravir plus nucleoside reverse transcriptase inhibitors in antiretroviral-naive adults with HIV-1 infection (LATTE): a randomised, phase 2b, dose-ranging trial. Lancet Infect. Dis. 2015; 15(10): 1145-55)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2006/116764号パンフレット
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Spreen W, Min S, Ford SL, et al. Pharmacokinetics, safety, and monotherapy antiviral activity of GSK1265744, an HIV integrase strand transfer inhibitor. HIV Clin Trials 2013; 14(5): 192-203
【非特許文献2】Ford SL, Gould E, Chen S, et al. Lack of pharmacokinetic interaction between rilpivirine and integrase inhibitors dolutegravir and GSK1265744. Antimicrob. Agents Chemothe.r 2013; 57(11): 5472-7
【非特許文献3】Spreen WR, Margolis DA, Pottage JC, Jr. Long-acting injectable antiretrovirals for HIV treatment and prevention. Curr Opin HIV AIDS 2013; 8(6): 565-71
【非特許文献4】Margolis DA, Brinson CC, Smith GH, et al. Cabotegravir plus rilpivirine, once a day, after induction with cabotegravir plus nucleoside reverse transcriptase inhibitors in antiretroviral-naive adults with HIV-1 infection (LATTE): a randomised, phase 2b, dose-ranging trial. Lancet Infect Dis 2015; 15(10): 1145-55
【発明の概要】
【0015】
必要な投与頻度がより少なく、それにより、抗ウイルス薬を確実に受けることが困難な患者に利益を提供するレジメンを有することが望まれる。
【0016】
本発明は、4週間以上の投薬間隔のための方法及び組成物を提供し、それにより、患者のノンコンプライアンスの問題を解決する。
【0017】
発明の概要
本発明は、ヒト免疫不全ウイルスに感染した被験者を、カボテグラビル若しくはその薬学的に許容される塩と、リルピビリン若しくはその薬学的に許容される塩との、長時間作用する組合せで治療するための方法及び組成物を提供する。
【0018】
第1の態様において、本発明は、4週間又はそれ以上の期間毎に1回の筋肉内投与による、HIVの治療に使用するための、カボテグラビル又はその薬学的に許容されると、リルピビリン又はその薬学的に許容されるとの組み合わせを提供する。
【0019】
本発明のさらなる態様において、カボテグラビル又はその薬学的に許容される塩と、リルピビリン又はその薬学的に許容される塩との組み合わせを含む、4週間毎に1回又はそれより少ない頻度の筋肉内投与による、HIVの治療に使用するための薬学的組成物が提供される。
【0020】
本発明のさらなる態様において、カボテグラビル又はその薬学的に許容される塩と、リルピビリン又はその薬学的に許容される塩との組み合わせの、4週間又はそれ以上の期間毎に1回の筋肉内投与を含む、HIVを治療する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】LATTE-2試験プロファイル。IM:筋肉内;LA:長時間作用;PDVF:プロトコールで定義したウイルス学的障害;Q4W:4週間毎;Q8W:8週間毎。*2人の被験者について、複数のスクリーニング脱落理由が報告された。†総計310症例の被験者が登録されたが、1症例の被験者は、ベースライン来院時の手続を行い、研究前治療を開始した後に、同意を撤回した。‡2症例は導入期間を完了した(1日目の評価を受けた)が、維持期間に入らず、ランダム化されなかった(研究員の判断及び効果欠如のため)。§治験離脱時にPDVFが疑われた被験者は、その後確認された。
【
図2】維持治療集団における、来院毎のHIV-1 RNA濃度が<50コピー/mLの被験者の割合(FDAスナップショットアルゴリズム)及び48週目におけるスナップショット結果。AE:有害事象;BL:ベースライン;D:日;FDA:米国食品医薬品局;IM:筋肉内;ME:維持治療;LA:長時間作用;PDVF:プロトコールで定義したウイルス学的障害;Q4W:4週間毎;Q8W:8週間毎;W:週。
【
図3】48週目までの(A)カボテグラビルLA及び(B)リルピビリンLAのQ4W及びQ8W投与後の平均濃度-時間プロファイル。C
T:投与間隔終了時の濃度;IM:筋肉内;LA:長時間作用;PA-IC
90:タンパク質-調整90%阻害濃度;PO:経口;Q4W:4週間毎;Q8W:8週間毎;SD:標準偏差。
【
図4】(A)48週目(維持治療)及び(B)96週目の被験者-報告結果の概要。データは、48週目及び96週目にアンケートを完了した被験者の調査された症例データセット(HIV治療満足度アンケート状況バージョン)に基づく。IM:筋肉内;LA:長時間作用;Q4W:4週間毎;Q8W:8週間毎。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
「HIV」又は「ヒト免疫不全ウイルス」は、それぞれ、HIV-1若しくはHIV-2、又はその任意の突然変異体、群、臨床分離株、亜型若しくは分岐群を意味する。
【0023】
本明細書で使用する場合、「成体(成人)」は、少なくとも18歳を意味する。したがって、用語「成体」は、少なくとも18歳である被験者を表するのに用いることができる。
【0024】
本明細書において「被験者(複数可)」又は「ヒト」又は「ヒト被験者(複数可)」又は「人(複数可)」は、ホモ・サピエンス(Homo sapiens)を指すのに用いられる。
【0025】
本明細書中で使用される「抗レトロウイルス薬」又は「ARV薬」は、逆転写酵素、プロテアーゼ、及び/又はインテグラーゼの阻害剤として分類される分子又は化合物を意味する。
【0026】
本明細書中で使用される「薬学的に許容される」とは、望ましくない生理学的効果なしに被験者に投与することができることを意味する。例えば、「その薬学的に許容される塩」は、参照される化合物の溶媒和物、多形体、及び/又は塩を包含する。
【0027】
本明細書で使用される「連続投与」又は「隣接投与」は、2つ以上の参照される分子、化合物、薬物、薬剤等のうちの少なくとも2つが、同時投与されず、連続して(次々に)投与されることを意味する。本発明のある実施形態では2つのARV薬物が1時間以内に連続的に投与される。本発明のある実施形態では、2つのARV薬物が0.5時間(すなわち、30分)以内に連続的に投与される。本明細書で使用される「以内」は、例えば、「1時間以内」が1時間及び1時間未満の時間を含むように、包含的である。
【0028】
本明細書で使用される「同時投与」は2つ以上の参照される分子、化合物、薬物、薬剤などが同時に投与されることを意味するが、必ずしも1つの組成物中で一緒に投与される必要はない。例えば、本発明のある実施形態では、2つのARV薬物が同時に投与されるが、それぞれが別個の(分離された)医薬組成物内(すなわち、一緒ではない)にある。本発明のある実施形態では、「同時」が0分の時間間隔として定義される。
【0029】
本発明は、経口カボテグラビルベースの治療でウイルス学的に抑制され、カボテグラビルとリルピビリンの長時間作用併用治療に切り替えた被験者について、4週間又は8週間の注射投与後96週まで、毎日の経口カボテグラビルベースの治療を続けた場合に匹敵する、全患者の90%でウイルス学的抑制が維持され、これにより、慢性的な毎日の投与の負担を回避することによって、HIV治療の展望におけるパラダイムシフトを表すことを実証する。
【0030】
本発明のある態様では、カボテグラビル又はその薬学的に許容される塩とリルピビリン又はその薬学的に許容される塩との組み合わせを、4週間又はそれ以上の期間毎に1回筋肉内投与することを含む、HIVを治療する方法が提供される。
【0031】
ある実施形態において、治療は毎月又は4週間毎である。
【0032】
ある実施形態において、治療は2か月毎又は8週間毎である。
【0033】
本発明のさらなる態様において、被験者は未治療である。
【0034】
本発明のさらなる態様において、被験者は既に経口抗ウイルス療法を受けている。
【0035】
本発明のさらなる態様において、下記を含む、被験者のための抗レトロウイルス投薬レジメンを改変する方法が提供される:
被験者への最初の経口抗レトロウイルスレジメンの投与を中止すること;並びに
4週間又はそれ以上の期間毎に1回、被験者に下記を含む組み合わせを筋肉内投与すること:
・リルピビリン又はその薬学的に許容される塩;及び
・カボテグラビル又はその薬学的に許容される塩。
【0036】
経口抗ウイルスレジメンから切り替えられる被験者は、特に、3剤レジメン中であり得る。ある実施形態においては、最初の抗レトロウイルスレジメンが下記を含む;
・カボテグラビル;及び
・2つのヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、特にアバカビル及びラミブジン。
【0037】
本発明のさらなる態様において、本発明のレジメンでの治療を開始する時点で、未治療の被験者又は経口薬物レジメンから切り替えられる被験者のいずれであっても、被験者は、血漿1mLあたり50コピー以下のHIV-1ウイルス粒子(≦50c/mL)のウイルス量を示す。
【0038】
本発明のさらなる態様において、投与後、被験者はウイルス学的に抑制される。ある実施形態では、ウイルス学的に抑制されることは、被験者の血漿1ミリリットルあたり50コピー以下(<50c/mL)のHIV RNAのウイルス量で構成される。
【0039】
さらなる実施形態において、被験者は、好ましくは、製剤の毎月又は4週間以上の期間毎に1回の投与の少なくとも96週間後に、血漿1mLあたり50コピー以下のHIV-1ウイルス粒子(≦50c/mL)のウイルス量を示す。
【0040】
ある実施形態において、治療は4週間毎又は1か月毎であり、より詳細には、治療は4週間毎である。この実施形態において、用量は400mgのカボテグラビル及び600mgのリルピビリンであり、4週間毎に投与される。さらなる実施形態において、400mgのカボテグラビル及び600mgのリルピビリンは、4週間毎に2回の2mL注射で別々に投与される。
【0041】
ある実施形態において、治療は8週間毎又は2か月毎であり、より詳細には、治療は8週間毎である。この実施形態において、用量は、600mgのカボテグラビル及び900mgのリルピビリンであり、8週間毎に投与される。さらなる実施形態において、600mgのカボテグラビル及び900mgのリルピビリンは、8週間毎に2回の3mL注射で別々に投与される。
【0042】
本発明による、特定の治療方法は以下を含む。
【0043】
被験者のための抗レトロウイルス投薬レジメンを改変する方法であって、被験者への最初の経口抗レトロウイルスレジメンの投与を中止すること;並びに、以下を含む製剤(調剤)を、毎月又は4週間毎に1回、被験者に筋肉内投与することを含み、
リルピビリン又はその薬学的に許容される塩、及び、
カボテグラビル又はその薬学的に許容される塩
被験者は製剤の毎月又は4週間毎に1回の投与の少なくとも96週間後に、血漿1mL当たり50コピー以下のHIV-1ウイルス粒子(≦50c/mL)のウイルス量を示す、方法。
【0044】
被験者のための抗レトロウイルス投薬レジメンを改変する方法であって、被験者への最初の経口抗レトロウイルスレジメンの投与を中止すること;並びに、以下を含む製剤(用量)を、2か月毎又は8週間毎に1回、被験者に筋肉内投与することを含み、
リルピビリン又はその薬学的に許容される塩、及び、
カボテグラビル又はその薬学的に許容される塩
被験者は製剤の2か月毎又は8週間毎に1回の投与の少なくとも96週間後に、血漿1mL当たり50コピー以下のHIV-1ウイルス粒子(≦50c/mL)のウイルス量を示す、方法。
【0045】
さらなる態様において、本発明は、上記の方法によるHIVの治療に使用するための、カボテグラビル又はその薬学的に許容される塩と、リルピビリン又はその薬学的に許容される塩との組み合わせを提供する。
【0046】
本発明のさらなる態様において、上記の方法によるHIVの治療に使用するための、カボテグラビル又はその薬学的に許容される塩と、リルピビリン又はその薬学的に許容される塩との組み合わせを含む、医薬組成物が提供される。
【0047】
ある実施形態では、医薬組成物は、リルピビリン又はその薬学的に許容される塩と、カボテグラビル又はその薬学的に許容される塩との別々の組成物を含む。ある実施形態では、リルピビリン又はその薬学的に許容される塩の医薬組成物は、1mL当たり300mg(の遊離化合物としてのリルピビリン)を含む。ある実施形態では、カボテグラビル又はその薬学的に許容される塩の医薬組成物は、1mL当たり200mg(の遊離化合物としてのカボテグラビル)を含む。ある実施形態では、両方の製剤が筋肉内投与用である。
【0048】
本発明のある実施形態では、被験者は、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)に感染している。
【0049】
式(I)の化合物は、塩の形態であってもよい。
【0050】
通常は、本発明の塩は薬学的に許容できる塩である。「薬学的に許容できる塩」の用語に包含される塩とは、本発明の化合物の非毒性の塩をいう。適した塩についての総説については、Berge et al, J. Pharm. Sci. 1977, 66, 1-19を参照のこと。
【0051】
治療に使用するために、本発明の化合物を化学物質の状態のまま投与してもよいが、医薬組成物の有効成分として本発明の化合物を提示することが可能である。このような組成物は、医薬分野で周知の様式で調製することができ、少なくとも1つの活性化合物を含む。したがって、本発明はさらに、カボテグラビル又はその薬学的に許容される塩と、リルピビリン又はその薬学的に許容される塩と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤との組み合わせを含む医薬組成物を提供する。賦形剤は、組成物の他の成分に適合するものであり、その受容者にとって有害ではない、という意味で許容されるものでなければならない。本発明の別の態様によれば、薬剤又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と共に調製するための方法も提供される。医薬組成物は、本明細書に記載の病態のいずれかの治療及び/又は予防に使用することができる。カボテグラビル又はその薬学的に許容される塩とリルピビリン又はその薬学的に許容される塩との組み合わせは、1つの組成物中に一緒に処方されてもよく、あるいは、活性成分の各々がそれ自体の薬学的組成物中に存在してもよい。
【0052】
一般に、組み合わせは、薬学的に有効な量で投与される。実際に投与される化合物の量は、通常は、治療すべき病態、選択された投与経路、投与される実際の化合物、個々の患者の年齢、体重、及び応答性、患者の重症度などを含む、関連する状況に照らして、医師によって決定される。本発明の治療に適した量は、上記に詳述されている。
【0053】
医薬組成物は、好ましくは、非経口、特に筋肉内投与に適している。
【0054】
非経口投与に適合した医薬組成物は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び意図する受容者の血液と組成物を等張にする溶質を含み得る、水性及び非水性の無菌注射溶液;並びに懸濁化剤及び増粘剤を含み得る、水性及び非水性無菌懸濁液を含む。組成物は、単位用量又は複数用量の容器、例えば、密封アンプル及びバイアル中に提供され得る。また、使用の直前に、滅菌液体キャリア、例えば、注射用水の添加のみを必要とする凍結乾燥状態で保存され得る。無菌の粉末、顆粒及び錠剤から、即時の注射溶液及び懸濁液が調製されてもよい。
【0055】
本発明の方法における使用のための活性成分は、両方の化合物を含む単一の医薬組成物中で同時に投与することによる、組み合わせとして使用することができる。あるいは、組み合わせは、連続的にそれぞれ1つの化合物を含む、別々の医薬組成物中で別々に同時に投与されてもよい。例えば、各組成物は、カボテグラビル又はその薬学的に許容される塩が最初に投与され、リルピビリン又はその薬学的に許容される塩が2番目に投与され、その逆もまた同様である。適切には、両方の化合物は筋肉内投与される。
【0056】
組合せは、組合せキットとして提示してもよい。本明細書で使用する用語「組み合わせキット」又は「パーツのキット」とは、本発明による組み合わせを投与するために使用される医薬組成物又は組成物群を意味する。組合せキットは、両方の化合物を単一の医薬組成物中に、又は別々の医薬組成物中に、単一のパッケージ中に、又は別々のパッケージ中の別々の医薬組成物中に含むことができる。
【0057】
組合せキットはまた、用量及び投与指示などの説明書によって提供され得る。このような用量及び投与指示は、医師に提供される種類の指示(例えば、薬剤製品のラベルによる)であっても、医師によって提供される種類の指示(例えば、患者への指示)であってもよい。
【0058】
組み合わせが、一方が最初に投与され、他方が2番目に投与される、又はその逆で、連続的に別々に投与される場合、このような連続的な投与は、時間的に近くても、又は時間的に離れていてもよい。例えば、他の薬剤の投与は、最初の薬剤の投与の数分~数十分後である。便宜的には、それらは同時に投与される。
【0059】
方法
カボテグラビル及びリルピビリンは、長時間作用注射製剤として開発されている抗レトロウイルス薬である。LATTE-2試験では、96週間にわたるHIV-1ウイルス抑制の維持について、長時間作用カボテグラビル+リルピビリンを評価した。
【0060】
方法
このランダム化第IIb相非盲検試験(臨床試験 政府識別番号NCT01641809)では、HIV-1に感染した未治療の成人に、最初に、カボテグラビル30mg +アバカビル/ラミブジン600/300mgを1日1回経口投与した。20週間後、血漿HIV-1 RNA<50コピー/mLの被験者について、4週間隔若しくは8週間隔の筋肉内持続性カボテグラビル+リルピビリン投与、又は経口カボテグラビル+アバカビル/ラミブジン継続に、2:2:1となるようにランダムに割り付けた。評価項目には、維持治療集団における、96週間にわたる、血漿HIV-1 RNA<50コピー/mLの被験者の割合、プロトコールで定義されたウイルス学的障害及び安全性事象が含まれた。
【0061】
結果
309症例の登録被験者のうち、286症例を維持期間にランダムに割り付けた。ランダム化の32週間後、ウイルス抑制(HIV-1 RNA<50コピー/mL)は、経口カボテグラビル+アバカビル/ラミブジンを投与された被験者の91%(n=51)で維持され、4週間筋肉内投与群では94%(n=108)(+2.8%対カボテグラビル+アバカビル/ラミブジン、95% CI、-5.8~11.5)で維持され、8週間筋肉内投与群では95%(n=109)(+3.7%対カボテグラビル+アバカビル/ラミブジン; 95% CI、-4.8~12.2)で維持された。96週目まで、ウイルス抑制は、それぞれ、被験者の84%、87%、及び94%で維持された。3症例(1%)がプロトコールで定義されたウイルス学的障害を経験した(8週間筋肉内投与:n=2;経口投与:n=1)。注射部位反応は、軽度(84%)又は中等度(15%)であり、中止に至る症例はまれであり(<1%);注射部位の痛みが最も多く報告された(96%)。重篤な有害事象は、筋肉内投与群及び経口カボテグラビル+アバカビル/ラミブジン群で、それぞれ11%及び16%に認められ、いずれも薬物との関連性は認められなかった。
【0062】
試験設定
LATTE-2は、20週間の導入期間、96週間の維持期間、延長期間、及び長期追跡期間からなる、進行中の第IIb相ランダム化多施設非盲検並行群間試験である。本研究は、米国、カナダ、スペイン、フランス及びドイツの50の施設で実施した。最初の被験者は、2014年4月にスクリーニングされ、最後の被験者の96週目の来院は2016年11月であった。
【0063】
試験はヘルシンキ宣言の原則に従って実施した。すべての参加者から書面による同意(インフォームドコンセント)を得て、プロトコールは各試験施設の治験審査委員会によって承認された(臨床試験 政府識別番号 NCT02120352)。
【0064】
試験参加者
HIV-1陽性、18歳以上、事前ART治療が10日間未満、HIV-1 RNA≧1000コピー/mL及びCD4+ T細胞数≧200細胞/mm3の基準でスクリーニングした被験者を、組み入れに適格な被験者とした。重要な除外基準には、主要な抗レトロウイルス耐性変異、妊娠、中等度又は重度の肝障害、臨床的に重要な肝炎、B型肝炎感染、臨床的に重要な臨床検査値、クレアチニンクリアランス<50mL/分、及び慢性抗凝固薬の必要性、が含まれた。
【0065】
試験治療
試験適格の被験者には、カボテグラビル30mg+アバカビル/ラミブジン600mg/300mgを1日1回20週間経口投与する導入期間レジメンを適用した。1日1回のリルピビリン25mgを、ランダム化の4週間前(-4週目[導入期間の16週目])に追加し、これを最初の注射来院(1日目)まで続けた。導入期間レジメンに耐え、-4週目に血漿HIV-1 RNA<50コピー/mLを達成した被験者について、1日目の維持期間に入れるのに適格とした。適格な被験者を2:2:1にランダム化して、14日間の投与期間を備えた、4週間毎の筋肉注射(長時間作用カボテグラビル400mg+リルピビリン600mg、2mL注射)若しくは8週間毎の筋肉注射(長時間作用カボテグラビル600mg+リルピビリン900mg、2回の3mL注射)、又はカボテグラビル30mg + アバカビル/ラミブジンの経口投与を96週間にわたって継続した。長時間作用注射製剤は、各投与来院時に中臀筋への2回の別々の筋肉内注射として投与するために、1mL当たり200mgのカボテグラビル及び1mL当たり300mgのリルピビリンを含有した。4週及び8週の投与レジメンはいずれも、カボテグラビル800mgの初回導入用量(2回の2mL注射)であった。被験者のランダム化は、HIV-1 RNAによる層別化(≧又は<50コピー/mL)を含み、-8週目(すなわち、誘導治療の12週目)前に、有効なランダム化ソフトウェアRandALL(Version 2.10; GlaxoSmithKline, Research Triangle Park, NC, USA)を利用して実行した。
【0066】
試験評価
計画された分析は、すべての被験者が維持期間の32、48、及び96週目を完了した(又は早期に中止した)後に実施した。
【0067】
一次評価項目は、維持治療集団(維持治療期間中に治験薬の投与を少なくとも1回受けた、ランダム化された被験者からなる)における、32週目にHIV-1 RNA<50 コピー/mLであった被験者の割合(米国食品医薬品局[FDA]スナップショットアルゴリズムを用いて)、プロトコールで定義されたウイルス学的障害を有する被験者の割合、有害事象及び臨床検査異常値の発生率及び重症度を包含した。
【0068】
主要な二次評価項目には、維持期間48週目及び96週目のHIV-1 RNA <50コピー/mLの被験者の割合(FDAスナップショットアルゴリズム)、維持期間中のカボテグラビル及びリルピビリンの血漿PKパラメータ、並びに被験者が報告した結果によるレジメン受容性の評価が含まれた。ランダム化後のプロトコールで定義されたウイルス学的障害は、2回連続して血漿HIV-1 RNA測定値≧200コピー/mLとなったものとして定義した。カボテグラビル+リルピビリン注射を受ける前に、プロトコールで定義されたウイルス学的障害の定義を満たした被験者は試験を中止し、1回以上の注射を受けた被験者については52週間の長期追跡期間を適用した。
【0069】
有害事象は、Division of AIDS Table for Grading the Severity of Adverse and Pediatric (2019))17に従って等級分けした。アラニンアミノトランスフェラーゼ値が、14日間で正常値の上限の8倍若しくは5倍、又はビリルビン(>35%直接)が2倍以上の場合は3倍であるか、あるいはそれを超えると、肝臓関連の停止基準を満たすものとした。カボテグラビル及びリルピビリンの薬物動態試料を、1日目、並びに1、4、8、12、16、20、24、25、28、32、36、40、41、44、及び48週目に収集した。
【0070】
治療満足度は、HIV治療満足度アンケート(HIVTSQ)を用いて算出した。HIVTSQ状態バージョン(HIVTSQ[s])は、導入期間の-16週目及び-4週目、並びに維持期間の1日目(長時間作用投与前)及び8週目、32週目、48週目、及び96週目、又は中止時に被験者によって完成された。
【0071】
統計解析
一次解析では、ベイズ確率モデルを用いて、32週目(及び48週目に反復)の抗ウイルス応答(HIV-1 RNA<50コピー/mL)の比較可能性を評価した。有効性の一次判定基準は、事後確率>90%(筋肉内の応答率が、経口の応答率と比較して10%未満の低下)であった。事前の信頼性を組み込むために、経口群応答率(平均92%; 2.5/97.5百分位数、78%/99%)についてβ(23, 2)分布を仮定し、筋肉内応答率について、無情報事前分布を仮定した。カボテグラビル+アバカビル/ラミブジン経口投与群45症例及び筋肉内投与群各90症例の被験者の試料数は、1日1回のカボテグラビル+アバカビル/ラミブジン経口投与群と比較して、応答不良な2剤長時間作用レジメンが同定される確率が高いことが確保されるよう選択した。治療群あたりの被験者症例数を選択し、長時間作用カボテグラビル+リルピビリンの真の応答率を、カボテグラビル+アバカビル/ラミブジンの92%に対して82%と仮定すると、長時間作用カボテグラビル+リルピビリンは、経口カボテグラビル+アバカビル/ラミブジンと同等であると誤って結論づける可能性は低かった(模擬確率=0.064)。一次解析では、各長時間作用レジメンを、経口カボテグラビル+アバカビル/ラミブジン群に対して評価した。2つの筋肉内レジメン間の抗ウイルス応答率の比較可能性を、事前に特定された主要な二次比較として評価した。維持治療期間と導入+維持治療期間とを合わせたデータを、維持治療集団を用いたランダム化群別にまとめ、導入期間のデータと試験集団の特性とを予備治療(intent-to-treat)集団(導入期間[-20週目~1日目]中に少なくとも1回の試験投与を受けた被験者)を用いてまとめる。
【0072】
CD4+細胞数のベースラインからの変化及び被験者が報告した結果評価項目について、欠落データの補完をすることなく、取得された観察データを用いてまとめる。臨床検査値異常は、維持期間治療の初回投与日まで(当日を含む)の最後に記録された毒性と比較して、維持期間中の治療で発現又は強度が増加した段階的毒性をいい、維持期間治療の緊急性を有する問題として提示される。
【0073】
長時間作用カボテグラビル+リルピビリン投与後の薬物動態血漿中濃度は、投与ミス(用量間違い)又は経口ブリッジングの影響を受けた試料を除いて、試料収集期間基準を満たした評価可能なデータを用いてまとめる。筋肉内投与のための試料収集期間は、事前の注射に対して、以下のように設定した:投与後2時間の試料については±0.5時間;注射後1週間の来院については±1日;4週群の投与前試料、8週群の4週目及び8週目のカボテグラビル試料、及び8週群の投与後4週間のサイクル中期濃度については、±2日、8週群(ただし、4及び8週目のカボテグラビル試料を除く)の投与前試料については±4日。
【0074】
結果
被験者
スクリーニングされた386症例の被験者のうち、309症例が試験に登録された(
図1)。被験者の大部分(91%)は男性であり、被験者の平均年齢は36.6歳であった。被験者の約4分の1(23%)がCD4+細胞数≦350細胞/mm
3であり、被験者の19%のベースラインHIV-1 RNAが10万コピー/mL以上であった。20週間の導入期間(予備治療(intent-to-treat))を完了した被験者は288症例(93%)であった。導入期間中に投与を中止した被験者は、合計21症例(7%)であった(同意撤回:n=5;有効性の欠如;n=5;有害事象:n=3;肝臓関連の中止基準を満たした:n=3;プロトコール逸脱:n=2;追跡不能:n=2;研究者の判断:n=1)。合計286名の被験者が適格と判断され、維持期間に組み入れられた。被験者をランダム化(2:2:1)して、4週間毎(n=115)若しくは8週間毎(n=115)に長時間作用カボテグラビル+リルピビリンを筋肉内注射するか、又は経口カボテグラビル+アバカビル/ラミブジンレジメンを継続した(n=56;表1)。
【0075】
【0076】
維持期間では、4週、8週及び経口カボテグラビル+アバカビル/ラミブジン群の、それぞれ14症例(12%)、5症例(4%)、9症例(16%)が試験から離脱した(
図1)。維持期間中の中止で最も一般的な理由は、有害事象(n=10[3%])及び同意の撤回(n=10[3%])であった。有害事象により維持期間中に離脱した10症例中8症例は4週であった。
【0077】
有効性
20週間の誘導期間中、経口カボテグラビル30mg+アバカビル/ラミブジンは、1日目(誘導期間の20週目)に91%の被験者においてウイルス抑制(HIV-1 RNA<50コピー/mL)を誘導し、90%の被験者は、治療の最初の8週間以内にHIV-1 RNA<50コピー/mLを達成した。1症例の被験者は、治療中に発生する耐性を経験することなく、服薬コンプライアンス不良の結果として、プロトコールで定義されたウイルス学的障害(2回連続して血漿HIV-1 RNA測定値≧200コピー/mL)の基準を満たした。
【0078】
ランダム化後、32週目に一次有効性評価項目(血漿HIV-1 RNA<50コピー/mL;FDAスナップショットアルゴリズム)を達成した被験者の割合は、4週群で94%、8週群で95%、経口カボテグラビル+アバカビル/ラミブジン群で91%であり(
図2;表S1)、比較可能性を主張するための所定の基準を満たした(非劣性の事後確率>90%、表S2)。
【0079】
【0080】
【0081】
カボテグラビル+アバカビル/ラミブジンの経口投与と比較した、長時間作用注射を受けた各群の32週目の治療群間差は、4週群で3.7%(95% CI、-4.8~12.2)、8週群で2.8%(95% CI、-5.8~11.5)であった。48週目に、レジメン間の同等性が確認され(表S2)、4週、8週、及び経口カボテグラビル+アバカビル/ラミブジン群で、それぞれ91%、92%、及び89%の被験者にウイルス学的抑制が見られた(
図2;表S1)。96週間の維持治療を通して、4週、8週及び経口カボテグラビル+アバカビル/ラミブジン群の被験者の87%、94%及び84%がそれぞれウイルス学的抑制を維持した(
図2;表S1)。6人の被験者で、FDAスナップショットアルゴリズムによって定義されるウイルス学的不応答が生じた(8週群:n=5;経口カボテグラビル+アバカビル/ラミブジン群:n=1;
図2)。96週間を通した場合、4週群の被験者には、ウイルス学的な理由による失敗例はなかった。これと比較して、48週目に、10人の被験者がウイルス学的不応答の基準を満たした(4週群:n=1;8週群:n=8;経口カボテグラビル+アバカビル/ラミブジン群:n=1)。8週群では、48週目にウイルス学的不反応を示した4症例(HIV-1 RNA>50コピー/mL)が、治療法の変更なく、96週目にHIV-1 RNA<50コピー/mLとなり、再抑制が見られた。96週目にウイルス学的不応答を示した8週群の被験者5症例のうち、96週目に2症例がHIV-1 RNA≧50コピー/mLであり(うち1症例は48週目にHIV-1≧50コピー/mLであった)、1症例が4週目にプロトコールに定義されたウイルス学的障害により中止され、1症例が8週目に注射不耐性により同意を撤回し、1症例が48週目に研究者の裁量により中止されたが抑制されなかった(その後、プロトコールに定義されたウイルス学的障害と確認された1症例)。96週目にHIV-1 RNA>50コピー/mLであった2症例の被験者のうちの1症例は試験を続行し、次の予定された来院時にHIV-1レベルが50コピー/mL未満であった。48週目にウイルス学的不応答を示した4週群の被験者(HIV-1 RNA, 59コピー/mL)は、48週目以降も試験を続行し、96週目にはHIV-1<50コピー/mLとな
り、ウイルスの再抑制が認められた。経口カボテグラビル+アバカビル/ラミブジン群のウイルス学的不応答者は、8週目にプロトコールで定義されたウイルス学的障害の結果として試験が中止された。
【0082】
ランダム化された3症例(8週群:n=2(4週目及び48週目);経口カボテグラビル+アバカビル/ラミブジン群:n=1(8週目))は、96週目までにプロトコールで定義されたウイルス学的障害の基準を満たした。経口カボテグラビル+アバカビル/ラミブジン群の被験者のウイルス遺伝子型解析では、ウイルス逆転写酵素、プロテアーゼ、又はインテグラーゼをコードする遺伝子に治療に誘発された耐性変異は認められなかった。8週群の2症例の被験者のうち1症例に、インテグラーゼのコドン269の1つの変異に由来する混合物が出現したが(R269R/G)、これはカボテグラビル感受性を低下させるものではなかった。2症例目の被験者は、エファビレンツ、リルピビリン、及びネビラピンに対する表現型耐性を有する、治療に誘発された逆転写酵素のK103N、E138G、及びK238T変異、並びにラルテグラビル、エルビテグラビル、及びカボテグラビルに対する表現型耐性を有し、ドルテグラビルに対する感受性を保持する、インテグラーゼのQ148R変異を有するウイルスを保有していた。
【0083】
CD4+細胞数は、維持期間の96週目に、4週(n=100)、8週(n=109)、及び経口カボテグラビル+アバカビル/ラミブジン(n=47)群の被験者において、誘導期間の始めから、中央値(四分位範囲)で、それぞれ226(145-393)細胞/mm3、239(111-359)細胞/mm3、及び317(214-505)細胞/mm3だけ増加した。
【0084】
安全性
有害事象
導入期間及び維持期間の間、維持治療集団では、4週、8週、及び経口カボテグラビル+アバカビル/ラミブジン群で、それぞれ100%、100%、及び96%の被験者に、いずれかの等級及び属性の総有害事象が発現した(表2)。
【0085】
【0086】
注射部位の痛み(最も一般的な注射部位反応(ISR))は、筋肉内群で最も頻繁に報告された有害事象であった(4週群:97%;8週群:96%)。ほとんどのISRは軽度(84%)又は中等度(15%)の強度であり、症状持続期間の中央値は3日であった(表S3)。
【0087】
【0088】
最も多く報告された非ISR有害事象は、鼻咽頭炎(4週群34%、8週群30%、経口カボテグラビル+ラミブジン群39%)、下痢(4週群28%、8週群23%、経口カボテグラビル+ラミブジン群20%)、及び頭痛(4週群23%、8週群25%、経口カボテグラビル+ラミブジン群25%)であった。重篤な有害事象は、各筋肉内投与群で11%、カボテグラビル+アバカビル/ラミブジン経口投与群で16%に認められ、このうち1症例のみ薬物関連性であった(片頭痛、試験開始時の経口の誘導期間に発現)。維持期間中、各筋肉内投与群の10%に重篤な有害事象が発現したのに対し、カボテグラビル+アバカビル/ラミブジン経口投与群では13%であった。しかしながら、試験治療に関連すると考えられるものはなかった。維持期間中に11症例(4%)(4週群8症例(7%)、8週群2症例(2%)、経口カボテグラビル+アバカビル/ラミブジン投与群1症例(2%))に有害事象が発生し、中止に至った。2症例(いずれも8週群)にISRが認められ、投与開始後8週間以内に中止に至った。試験中に2症例の死亡が生じた:1症例は試験の最初の経口誘導期間に起こった自動車事故によるものであり、2症例目は、カボテグラビル投与を48週間、及びリルピビリン投与を32週間受けた、4週間筋肉内投与群の被験者における、てんかん発作によるものであった。いずれの死亡も、試験治療との因果関係は否定された。
【0089】
臨床検査値異常
維持治療期間中に等級3以上の臨床検査値異常が発現したのは、4週群で29%、8週群で19%、経口カボテグラビル+アバカビル/ラミブジン投与群で21%であった。維持期間治療中に発現した等級3以上のALT上昇は、4週及び8週の筋肉内投与群の両方で被験者の3%に認められ、カボテグラビル+アバカビル/ラミブジン経口投与群の被験者の5%に認められた。所定の肝臓関連の中止基準を満たす被験者のうち、薬剤性肝障害の可能性が2症例(いずれもカボテグラビル+アバカビル/ラミブジン経口投与群;導入期間[ランダム化前]に1症例、維持期間に1症例)に認められた。両症例とも、肝臓検査値異常は治療中止後に消失し、被験者は臨床的に無症候性のままであった。
【0090】
薬物動態
4週、8週、及び経口カボテグラビル+アバカビル/ラミブジン群について、48週目のカボテグラビルのトラフ濃度の幾何平均値(C
0;95%信頼区間[CI])は、それぞれ2.58μg/mL(2.4~2.8μg/mL)、1.46μg/mL(1.3~1.6μg/mL)、及び4.47μg/mL(3.9~5.2μg/mL)であり、これらは野生型HIV-1に対するインビトロのタンパク質で調整した90%阻害濃度(PA-IC
90)である0.166μg/mLの16倍、9倍、及び27倍高い値であった。リルピビリンについて、48週目のC
0の幾何平均値(95%信頼区間)が、4週及び8週のレジメンについて、それぞれ94.64ng/mL(86.6~103.4ng/mL)及び64.48ng/mL(60.0~69.3ng/mL)であり(
図3)、これは野生型HIV-1に対するインビトロPA-IC
90 12ng/mLより8倍及び5倍高い値であった。リルピビリンの蓄積は、48週間の投与を通して観察され、最も低いリルピビリンのトラフ濃度は、両条件において、初回の筋肉内注射後に観察された(
図3)。48週目では、カボテグラビル濃度とウイルス学的不反応との間に関連性は認められなかった。48週目にウイルス学的不反応(FDAスナップショットアルゴリズム)を示した8週レジメンの9症例中7症例では、48週目のリルピビリンのトラフ濃度(又は48週目以前で利用可能な最後のトラフ濃度)が、すべてのリルピビリン試料の中で最低25分位にあったが、カボテグラビルのトラフ濃度は分位範囲全体に分布していた。48週目までの維持期間中にプロトコールで定義されたウイルス学的障害を呈した8週レジメンの2症例のうち1症例は、注射4週間後に、治療時に出現した耐性は見られなかったにも関わらず、リルピビン濃度が定量不能となり(偶発的に一部が静脈内に投与されたと示唆される)、もう一方の症例ではウイルス再増殖時にカボテグラビル濃度又はリルピビリン濃度との明確な関連性は認められなかった。48週目以降及び96週目までに得られたスパースなPKサンプリングは、通常の問題として測定されなかったため、ここでは報告しない。
【0091】
被験者が報告した健康上の結果
すべての治療群を通して、高いレベルの治療満足度が見られた(
図4)。96週目に、被験者はHIVTSQを介して、4週、8週、及び経口カボテグラビル+アバカビル/ラミブジンの3群すべてについて、非常に高いレベルの満足度を報告し、これらの被験者の95%が、6点満点の満足度スケールで5又は6のスコアを選択した。同等の割合(≧99%)の各筋肉内群の被験者は、現在の長時間作用レジメンを継続することに非常に満足していると報告したが、経口投与を継続することを選択すると報告した割合は、これより低かった(78%)。96週目より前に何らかの理由で中止した被験者は、この時点でアンケートに記入せず、これらの結果には、わずかな程度ではあるが、選択的なバイアスがかかっていた。
【0092】
考察
LATTE-2は、HIV-1感染被験者における、完全注射型2剤長時間作用ARTレジメンの有効性及び安全性を解析した最初の研究であった。長時間作用注射の4週及び8週のレジメンはいずれも、毎日の経口3剤ARTに匹敵する速度でウイルス学的抑制を維持し、96週間の維持期間中に長時間作用治療を受けた230症例の被験者中に生じたプロトコールで定義されたウイルス学的障害は2症例であった。長期間作用カボテグラビル+リルピビリンレジメンは一般に忍容性が良好であり、薬物関連の重篤な有害事象はなく、有害事象関連の中止はほとんど見られなかった。注射部位反応は一般的であったが、本質的に一過性であり、軽度又は中等度であり、高いレベルの被験者報告満足度を損なうようには思われなかった。患者に慢性IM注射を投与することの長期許容性もLATTE-2で実証され、注射部位反応から生じる中止は、96週を通して2人の被験者(<1%)と、ほとんど見られなかった。
【0093】
4週及び8週のレジメンによる治療は、それぞれ87%及び94%の被験者でウイルス学的抑制を維持したのに対し、経口カボテグラビル+アバカビル/ラミブジンで治療した被験者では84%であった。これらの割合は、初期レジメンに対するウイルス抑制を有する被験者における、経口スイッチレジメンの有効性を試験した複数の他の研究と一致する18-20。厳密なFDAスナップショットアルゴリズムによって決定されたウイルス学的不応答は、LATTE-2試験ではいずれの長時間作用レジメンでもほとんど観察されなかったが、4週群(n=0)よりも8週群(n=5[4%])で不応答率が高かった。プロトコールで定義されたウイルス学的障害の基準を満たした被験者は、8週群で2症例のみであり、4週群では1症例もなかった。そのうち1症例では、感受性を低下させる、よく知られたNNRTI及びINSTI突然変異が出現した。2症例目では、リルピビン濃度が検出不能であり、NNRTI突然変異は観察されず、INSTI耐性と関連しないインテグラーゼコドンで混合物が出現し21、カボテグラビル感受性に変化はなかった。4週のレジメンにおける、有効性を示す評価と、ウイルス学的障害の不発生より、進行中の第III相臨床試験においては、最適化された4週の投薬レジメンが選択された。一方、8週のレジメンはLATTE-2研究内で長期評価下にある。
【0094】
注射可能な長時間作用薬剤の潜在的な課題の1つは、薬剤への曝露を抑制できず、重篤な全身性有害事象を生じる可能性があることである。LATTE-2試験では、長時間作用注射剤を投与する前に、早期発症する急性の安全性課題を確認するための戦略として、長時間作用カボテグラビル又はリルピビリンを経口投与する期間を設定した。LATTE-2試験では薬物過敏反応は観察されなかった。第III相HIV治験では、経口導入を継続して使用する必要性の有無を判定するため、経口導入(lead-in)戦略が実施されている。注射部位反応は筋肉内治療でよくみられたが、ほとんどは持続期間が短く、重症度が軽度であり、治療中止に至ることはまれであった。これは、既報の健康成人を被験者とした研究と一致していた(Spreen W, Williams P, Margolis D, et al. Pharmacokinetics, safety, and tolerability with repeat doses of GSK1265744 and rilpivirine (TMC278) long-acting nanosuspensions in healthy adults. J Acquir Immune Defic Syndr 2014; 67(5): 487-92)。
【0095】
LATTE-2試験で被験者が報告した高い満足度は、長時間作用レジメンが、HIV感染患者の毎日の経口療法に代わる選択肢となりうることを示唆している23。注射可能な薬剤という選択肢の許容性及び忍容性は、長期的な治療を成功させるために重要な要素であり、高い治療満足度は、生涯にわたる毎日の経口投薬コンプライアンスに負担がかかる患者にとって、この選択を行うために有効であろう。
【0096】
LATTE-2試験の結果は、ウイルス学的に抑制されたHIV患者における注射可能な2剤維持治療としての長時間作用カボテグラビル+リルピビリンの有効率が高く、安全性評価が許容できることを示している。これらの結果は、初めての注射可能なARTレジメンとして、毎月の長時間作用カボテグラビル+リルピビリンのさらなる評価を支持する。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるHIV感染症の治療に使用するためのカボテグラビル又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物であって、
前記組成物は、リルピビリン又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物との組み合わせとして投与されるための組成物であり、
a. 前記カボテグラビル又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物が2mLの2回注射として、毎月又は4週間毎に対象に筋肉内投与されるカボテグラビル又はその薬学的に許容される塩400mgを含み、前記リルピビリン又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は2mLの2回注射として、毎月又は4週間毎に対象に筋肉内投与されるリルピビリン又はその薬学的に許容される塩600mgを含む;又は
b. 前記カボテグラビル又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物が3mLの2回注射として、8週間毎又は2ヶ月毎に対象に筋肉内投与されるカボテグラビル又はその薬学的に許容される塩600mgを含み、前記リルピビリン又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は3mLの2回注射として、8週間毎又は2ヶ月毎に対象に筋肉内投与されるリルピビリン又はその薬学的に許容される塩900mgを含む;
医薬組成物。
【請求項2】
対象におけるHIV感染症の治療に使用するためのリルピビリン又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物であって、
前記組成物は、カボテグラビル又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物との組み合わせとして投与されるための組成物であり、
a. 前記リルピビリン又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物が2mLの2回注射として、毎月又は4週間毎に対象に筋肉内投与されるリルピビリン又はその薬学的に許容される塩600mgを含み、前記リルピビリン又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は2mLの2回注射として、毎月又は4週間毎に対象に筋肉内投与されるリルピビリン又はその薬学的に許容される塩400mgを含む;又は
b. 前記リルピビリン又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物が3mLの2回注射として、8週間毎又は2ヶ月毎に対象に筋肉内投与されるリルピビリン又はその薬学的に許容される塩900mgを含み、前記カボテグラビル又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は3mLの2回注射として、8週間毎又は2ヶ月毎に対象に筋肉内投与されるカボテグラビル又はその薬学的に許容される塩600mgを含む;
医薬組成物。
【請求項3】
治療は毎月又は4週間毎である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
治療は4週間毎である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
治療は毎月である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
治療は8週間毎又は2か月毎である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
治療は8週間毎である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
治療は2か月毎である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
対象は、少なくとも96週間の治療後に、血漿1mL当たり50コピー以下のHIV-1ウイルス粒子のウイルス量(≦50c/mL)を示す、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記治療が、前記医薬組成物の投与の前に、経口抗レトロウイルスレジメンの投与を中止することを含む、医薬組成物。
【請求項11】
前記経口抗レトロウイルスレジメンが、以下を含む、請求項10に記載の医薬組成物:
・カボテグラビル;及び
・2つのヌクレオシド逆転写酵素阻害剤。
【請求項12】
前記経口抗レトロウイルスレジメンが、以下を含む、請求項11に記載の医薬組成物:
・カボテグラビル;及び
・アバカビルとラミブジン。
【請求項13】
対象はHIV-1に感染している、請求項1~12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記対象は、前記医薬組成物の組み合わせの投与前に、血漿1mL当たり50コピー以下のHIV-1ウイルス粒子のウイルス量(≦50c/mL)を示す、請求項1~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
対象は、投与前の対象の表面抗原分類(CD)4+細胞数と比較して、1か月毎若しくは4週間毎に1回、又は2か月毎若しくは8週間毎に1回の製剤の投与の少なくとも96週間後に、同一の又は改善されたCD4+細胞数を示す、請求項1~14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記対象は、1か月毎若しくは4週間毎に1回、又は2か月毎若しくは8週間毎に1回の製剤の少なくとも96週間の投与後に、HIVウイルスの緊急性を有する薬剤耐性突然変異を示さない、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
投与が、中殿筋への筋肉内注射である、請求項1~16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
リルピビリンが遊離塩基の形態である、請求項1~17のいずれか1項に記載のキット。
【請求項19】
カボテグラビルが遊離酸の形態である、請求項1~18のいずれか1項に記載のキット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0096
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0096】
LATTE-2試験の結果は、ウイルス学的に抑制されたHIV患者における注射可能な2剤維持治療としての長時間作用カボテグラビル+リルピビリンの有効率が高く、安全性評価が許容できることを示している。これらの結果は、初めての注射可能なARTレジメンとして、毎月の長時間作用カボテグラビル+リルピビリンのさらなる評価を支持する。
本明細書は、以下の実施形態を包含する。
[1]カボテグラビル又はその薬学的に許容される塩とリルピビリン又はその薬学的に許容される塩との組み合わせを、4週間に1回以下の頻度で筋肉内投与することを含む、HIVを治療する方法。
[2]治療は毎月又は4週間毎である、[1]に記載の方法。
[3]治療は4週間毎である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]被験者のための抗レトロウイルス投薬レジメンを改変する方法であって、
被験者への最初の経口抗レトロウイルスレジメンの投与を中止すること;並びに
以下を含む製剤を、毎月又は4週間毎に1回、被験者に筋肉内投与することを含む、方法、
・リルピビリン又はその薬学的に許容される塩、及び、
・カボテグラビル又はその薬学的に許容される塩。
[5]カボテグラビル400mgとリルピビリン600mgとが、2回の2mL注射で、4週間毎に投与される、[3]又は[4]に記載の方法。
[6]治療は8週間毎又は2か月毎である、[1]に記載の方法。
[7]治療は8週間毎である、[1]又は[4]に記載の方法。
[8]被験者のための抗レトロウイルス投薬レジメンを改変する方法であって、
被験者への最初の経口抗レトロウイルスレジメンの投与を中止すること;並びに
以下を含む製剤を2か月又は8週間毎に1回、被験者に筋肉内投与することを含む、方法、
・リルピビリン又はその薬学的に許容される塩、及び、
・カボテグラビル又はその薬学的に許容される塩。
[9]カボテグラビル600mgとリルピビリン900mgとが、2回の3mL注射で、8週間毎に投与される、[2]に記載の方法。
[10]被験者は、治療の少なくとも96週間後に、血漿1mL当たり50コピー以下のHIV-1ウイルス粒子のウイルス量(≦50c/mL)を示す、[1]~[9]のいずれか1項に記載の方法。
[11]最初の抗レトロウイルスレジメンが、以下を含む、[3]、[4]、[5]、[7]、[8]又は[9]に記載の方法。
・カボテグラビル、及び
・2つのヌクレオシド逆転写酵素阻害剤。
[12]前記最初の抗レトロウイルスレジメンが、以下を含む、[11]に記載の方法。
・カボテグラビル、及び
・アボカビルとラミブジン。
[13]被験者はHIV-1に感染している、[1]~[12]のいずれか1項に記載の方法。
[14]前記被験者は、前記製剤の投与前に、血漿1mL当たり50コピー以下のHIV-1ウイルス粒子のウイルス量(≦50c/mL)を示す、[1]~[13]のいずれか1項に記載の方法。
[15]被験者は、投与前の被験者の表面抗原分類(CD)4+細胞数と比較して、1か月毎若しくは4週間毎に1回、又は2か月毎若しくは8週間毎に1回の製剤の投与の少なくとも96週間後に、同一の又は改善されたCD4+細胞数を示す、[1]~[14]のいずれか1項に記載の方法。
[16]前記被験者は、1か月毎若しくは4週間毎に1回、又は2か月毎若しくは8週間毎に1回の製剤の投与の少なくとも96週間後に、HIVウイルスの緊急性を有する薬剤耐性突然変異を示さない、[1]~[15]のいずれか1項に記載の方法。