IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 深▲セン▼市光▲ゲイ▼科学技術有限公司の特許一覧

特開2024-20337エレクトロクロミック絞り、その製造方法、およびそれを含むレンズモジュール
<>
  • 特開-エレクトロクロミック絞り、その製造方法、およびそれを含むレンズモジュール 図1
  • 特開-エレクトロクロミック絞り、その製造方法、およびそれを含むレンズモジュール 図2
  • 特開-エレクトロクロミック絞り、その製造方法、およびそれを含むレンズモジュール 図3
  • 特開-エレクトロクロミック絞り、その製造方法、およびそれを含むレンズモジュール 図4
  • 特開-エレクトロクロミック絞り、その製造方法、およびそれを含むレンズモジュール 図5
  • 特開-エレクトロクロミック絞り、その製造方法、およびそれを含むレンズモジュール 図6
  • 特開-エレクトロクロミック絞り、その製造方法、およびそれを含むレンズモジュール 図7
  • 特開-エレクトロクロミック絞り、その製造方法、およびそれを含むレンズモジュール 図8
  • 特開-エレクトロクロミック絞り、その製造方法、およびそれを含むレンズモジュール 図9
  • 特開-エレクトロクロミック絞り、その製造方法、およびそれを含むレンズモジュール 図10
  • 特開-エレクトロクロミック絞り、その製造方法、およびそれを含むレンズモジュール 図11
  • 特開-エレクトロクロミック絞り、その製造方法、およびそれを含むレンズモジュール 図12
  • 特開-エレクトロクロミック絞り、その製造方法、およびそれを含むレンズモジュール 図13
  • 特開-エレクトロクロミック絞り、その製造方法、およびそれを含むレンズモジュール 図14
  • 特開-エレクトロクロミック絞り、その製造方法、およびそれを含むレンズモジュール 図15
  • 特開-エレクトロクロミック絞り、その製造方法、およびそれを含むレンズモジュール 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020337
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】エレクトロクロミック絞り、その製造方法、およびそれを含むレンズモジュール
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/02 20210101AFI20240206BHJP
   G03B 11/00 20210101ALI20240206BHJP
   G02F 1/15 20190101ALI20240206BHJP
【FI】
G03B9/02 Z
G03B9/02 E
G03B11/00
G02F1/15 504
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023191480
(22)【出願日】2023-11-09
(62)【分割の表示】P 2022531408の分割
【原出願日】2020-11-27
(31)【優先権主張番号】201911205739.5
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522208944
【氏名又は名称】深▲セン▼市光▲ゲイ▼科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100107216
【弁理士】
【氏名又は名称】伊與田 幸穂
(72)【発明者】
【氏名】王 坤
(72)【発明者】
【氏名】何 嘉智
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エレクトロクロミック絞り、その製造方法およびそれを含むレンズモジュールを提供する。
【解決手段】順に積層された第1の透明基底(11)、第1の透明導電層(12)、イオン貯蔵層(13)、イオン遷移層(14)、エレクトロクロミック層(15)、第2の透明導電層(16)および第2の透明基底(17)を含むエレクトロクロミック絞りであって、前記イオン遷移層(14)は、固体電解質層である。さらにエレクトロクロミック絞りの製造方法を提供する。該方法では、イオン貯蔵層(13)およびエレクトロクロミック層(15)の塗布が完了した後にエッチングを行う。エレクトロクロミック絞りを含むレンズモジュールをさらに提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
順に積層された第1の透明基底、第1の透明導電層、イオン貯蔵層、イオン遷移層、エレクトロクロミック層、第2の透明導電層および第2の透明基底を含むエレクトロクロミック絞りであって、
前記イオン遷移層は、固体電解質層であり、
前記エレクトロクロミック絞りは、明るくなり始める時の電圧が内から外に向かって徐々に増大するか、または暗くなり始める時の電圧が内から外に向かって徐々に低減する、エレクトロクロミック絞り。
【請求項2】
前記イオン遷移層は、架橋度が内から外に向かって徐々に増大する、或いは
前記エレクトロクロミック層は、内から外に向かったエレクトロクロミック材料の明るくなり始める時の電圧が徐々に増大するか、または暗くなり始める時の電圧が徐々に低減する、請求項1に記載のエレクトロクロミック絞り。
【請求項3】
前記エレクトロクロミック層の厚さは、内から外に向かって徐々に増大する、或いは
前記エレクトロクロミック層およびイオン貯蔵層の厚さは、内から外に向かって徐々に増大する、請求項1に記載のエレクトロクロミック絞り。
【請求項4】
前記イオン貯蔵層の厚さは、1~10000nmである、および/または、
前記イオン遷移層の厚さは、0.1~200μmである、および/または、
前記エレクトロクロミック層の厚さは、1~10000nmである、および/または、
前記エレクトロクロミック絞りの合計厚さは、5mm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック絞り。
【請求項5】
色消し用の凹レンズと凸レンズの組合せ、および前記凹レンズまたは凸レンズの表面に貼着された請求項1~4のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック絞りを含む、
或いは、
前記凹レンズまたは凸レンズが請求項1~4のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック絞りである色消し用の凹レンズと凸レンズの組合せを含む、絞りレンズ組合せ。
【請求項6】
前記エレクトロクロミック絞りは、曲面構造であり、曲率が前記凹レンズまたは前記凸レンズの表面の曲率と同様である、或いは前記エレクトロクロミック絞りの形状が前記凹レンズまたは前記凸レンズの形状と同様である、請求項5に記載の絞りレンズ組合せ。
【請求項7】
色消しレンズ組合せ、請求項1~4のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック絞り、露光コントローラ、画像センサー、パルス電圧コントローラ、光強度センサー、感光素子、配線基板およびチップを含み、
前記色消しレンズ組合せ、エレクトロクロミック絞り、露光コントローラおよび画像センサーの中心が同じ光軸に位置する、
或いは、
請求項5または6に記載の絞りレンズ組合せ、露光コントローラ、画像センサー、パルス電圧コントローラ、光強度センサー、感光素子、配線基板およびチップを含み、
前記絞りレンズ組合せ、エレクトロクロミック絞り、露光コントローラおよび画像センサーの中心が同じ光軸に位置する、レンズモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、フォトクロミック絞りの技術分野に属し、具体的には、エレクトロクロミック絞り、その製造方法およびそれを含むレンズモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、タブレットなどの移動端末の技術の発展に伴い、大部分の移動端末にレンズモジュールが設けられている。レンズモジュールは、絞り固定型および絞り調整可能型の2種に分けることができる。絞り調整可能型のレンズモジュールは、通常、機械的絞りであり、構造が複雑な絞り調節部材を配置する必要があるので、レンズモジュールの体積が大きく、製造および取付プロセスに対する要求が高くなる。絞り固定型のレンズモジュールは、構造がシンプルであるという利点を有するが、移動端末は、サイズの制限により、一般的に絞り固定型のレンズモジュールを採用している。しかし、絞り固定型のレンズモジュールは、光透過量が一定であり、強い光および弱い光での撮影解像度に悪影響を与えるとともに、奥行を効果的に制御できず、背景のぼやし効果を撮影することができない。
【0003】
CN104903788Aでは、フロント透明導体媒体、電解質媒体、アクティブエレクトロクロミック媒体およびリア透明導体媒体の積層を含み、且つフロント透明導体媒体およびリア透明導体媒体がイメージング経路に位置する導電セクターにより互いに直接連結する電気光学絞りが開示されている。CN108519657Aでは、レンズモジュールおよび移動端末が開示されている。そのうち、レンズモジュールは、電圧印加素子を含む。電圧印加素子は、エレクトロクロミック膜に電気的に接続されている。エレクトロクロミック膜は、光透過基底において順に設けられた第1の光透過導電層、イオン貯蔵層、イオン遷移層、エレクトロクロミック層および第2の光透過導電層を含む。上記電気光学絞りまたはエレクトロクロミック膜は、印加電界の相違によって光透過率の変化を実現し、光透過量の調節を実現することができる。また、その厚さが小さいので、レンズモジュールのZ軸の高さを大きく増やすことなく、携帯式消費電子機器の撮像モジュールに適用することができる。
【0004】
しかしながら、既存のエレクトロクロミック絞りには、依然として多くの欠陥が存在しており、例えば、多段階調整可能な絞りとしては、通常、その導電層に凹溝がエッチングされていることに起因して、導電層に塗布されたエレクトロクロミック層またはイオン貯蔵層が平坦ではなく、絞りの変色が均一ではないこと;凹溝領域が非変色領域であることに起因して、光が漏れるか、または光が透過せず、さらにイメージング品質に影響を及ぼす;内から外に向かった絞りの変色範囲が同様であり、絞りの調整可能な段階の数の相違も明らかではない;および絞りの厚さが大きいので、携帯型消費電子機器の撮像モジュールにおける適用が制限されているなど、さらに解決する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本願は、エレクトロクロミック絞り、その製造方法およびそれを含むレンズモジュールを提供する。本願に係る製造方法は、絞りの多段階調整の実現を確保しながら、従来のエッチング方法による変色が均一ではないなどの問題を効果的に回避することができる。本願に係る構造の異なるエレクトロクロミック絞りは、絞りの多段階調整を実現しながら、凹溝のエッチングによる光漏れまたは光不透過の問題を回避することができる、或いは段階の数の相違がより大きな絞りの調整を実現することができる。曲面構造のエレクトロクロミック絞りは、色消しレンズ組合せとの合併を実現し、レンズモジュールを薄くすることができる。
【0006】
既存のエレクトロクロミック絞りとしては、通常、透明導電層において、環状凹溝がエッチングされているので、内から外に向かって複数の領域に区画され、独立して各領域に電圧を印加して制御することで、エレクトロクロミック絞りの多段階調整を実現することができ、透明導電層のエッチングが完了した後にイオン貯蔵層およびエレクトロクロミック層を塗布する。しかし、このようにすると、イオン貯蔵層およびエレクトロクロミック層が凹溝において平坦ではなく、絞りの変色が均一ではなく、イメージング品質に影響を及ぼす恐れがある。なお、本願における「内から外に向かう」とは、径方向に沿って膜層面の中心からエッジに向かうことを指す。
【0007】
第1の態様において、本願は、エレクトロクロミック絞りを提供する。該エレクトロクロミック絞りの構造は、順に積層された第1の透明基底、第1の透明導電層、イオン貯蔵層、イオン遷移層、エレクトロクロミック層、第2の透明導電層および第2の透明基底を含み、前記イオン遷移層は、固体電解質層である。
【0008】
1つの好適な実施形態において、前記イオン貯蔵層および第1の透明導電層において、および/または前記エレクトロクロミック層および第2の透明導電層において、前記エレクトロクロミック絞りの中心軸を中心とする環状凹溝が複数本エッチングされている。
【0009】
他の好適な実施形態において、前記第1の透明基底および第1の透明導電層の両層において、または第1の透明基底、第1の透明導電層およびイオン貯蔵層の三層において、前記エレクトロクロミック絞りの中心軸を中心とする環状凹溝が複数本エッチングされている、および/または、前記第2の透明基底および第2の透明導電層の両層において、または第2の透明基底、第2の透明導電層およびエレクトロクロミック層の三層において、前記エレクトロクロミック絞りの中心軸を中心とする環状凹溝が複数本エッチングされている。
【0010】
本願の具体的な実施形態において、前記第1の透明導電層およびイオン貯蔵層において前記エレクトロクロミック絞りの中心軸を中心とする環状凹溝が複数本エッチングされている。本願の他の具体的な実施形態において、前記第2の透明導電層およびエレクトロクロミック層において前記エレクトロクロミック絞りの中心軸を中心とする環状凹溝が複数本エッチングされている。本願の他の具体的な実施形態において、前記第1の透明基底および第1の透明導電層において前記エレクトロクロミック絞りの中心軸を中心とする環状凹溝が複数本エッチングされている。本願の他の具体的な実施形態において、前記第2の透明基底および第2の透明導電層において前記エレクトロクロミック絞りの中心軸を中心とする環状凹溝が複数本エッチングされている。本願の他の具体的な実施形態において、前記第1の透明基底、第1の透明導電層およびイオン貯蔵層において前記エレクトロクロミック絞りの中心軸を中心とする環状凹溝が複数本エッチングされている。本願の他の具体的な実施形態において、前記第2の透明基底、第2の透明導電層およびエレクトロクロミック層において前記エレクトロクロミック絞りの中心軸を中心とする環状凹溝が複数本エッチングされている。
【0011】
第2の態様において、本願は、
(1)第1の透明基底において第1の透明導電層を形成し、第2の透明基底において第2の透明導電層を形成するステップ、
(2)前記第1の透明導電層において形成イオン貯蔵層を形成し、前記第2の透明導電層においてエレクトロクロミック層を形成するステップ、
(3)前記イオン貯蔵層および第1の透明導電層において、および/または前記エレクトロクロミック層および第2の透明導電層において、前記エレクトロクロミック絞りの中心軸を中心とする環状凹溝を複数本エッチングするステップ、および
(4)前記イオン遷移層が前記イオン貯蔵層とエレクトロクロミック層との間に設けられるように、前記イオン貯蔵層とエレクトロクロミック層およびイオン遷移層とを複合して、前記エレクトロクロミック絞りを得るステップ、を含む、
或いは、
(1)第1の透明基底において第1の透明導電層を形成し、第2の透明基底において第2の透明導電層を形成するステップ、
(2)前記第1の透明導電層においてイオン貯蔵層を形成し、前記第2の透明導電層においてエレクトロクロミック層を形成するステップ、
(3)前記イオン遷移層が前記イオン貯蔵層とエレクトロクロミック層との間に設けられるように、前記イオン貯蔵層とエレクトロクロミック層およびイオン遷移層とを複合するステップ、および
(4)前記第1の透明基底側からエッチングし、前記第1の透明基底および第1の透明導電層の両層において、または第1の透明基底、第1の透明導電層およびイオン貯蔵層の三層において、前記エレクトロクロミック絞りの中心軸を中心とする環状凹溝を複数本エッチングする、および/または
前記第2の透明基底側からエッチングし、前記第2の透明基底および第2の透明導電層の両層において、または第2の透明基底、第2の透明導電層およびエレクトロクロミック層の三層において、前記エレクトロクロミック絞りの中心軸を中心とする環状凹溝を複数本エッチングするステップ、を含む第1の態様におけるエレクトロクロミック絞りの製造方法を提供する。
【0012】
本願では、エッチング方法は、特に限定されず、例示的に、レーザーエッチングが用いられてもよい。
【0013】
該方法では、イオン貯蔵層およびエレクトロクロミック層を塗布して完了した後にエッチングすることにより、絞りの多段階調整の実現を確保しながら、従来のエッチング方法による変色の不均一などの問題を効果的に回避することができる。
【0014】
第2の態様における製造方法は、従来のエッチング方法による変色の不均一などの問題を効果的に回避することができるが、凹溝をエッチングする方法を採用すると、エレクトロクロミック絞りの多段階変色を実現しながら、凹溝領域に非変色領域が生じて、光漏れまたは光不透過を引き起こし、さらにイメージング品質に影響を及ぼす。そのため、さらに改良する必要がある。
【0015】
該問題を解決するために、本願は、以下の第3の態様におけるエレクトロクロミック絞りを提供する。該エレクトロクロミック絞りは、異なるエレクトロクロミックユニットにおけるエレクトロクロミック層の、エレクトロクロミック絞りの中心軸に沿う方向における投影がシームレス連続するものであり、異なるエレクトロクロミックユニットの変色過程が独立して制御可能であるため、絞りの多段階調整を実現しながら、凹溝のエッチングによる光漏れまたは光不透過の問題を回避することができる。
【0016】
第3の態様において、本願は、エレクトロクロミック絞りを提供する。前記エレクトロクロミック絞りは、積層された、互いに独立したエレクトロクロミックユニットを少なくとも2つ含む。そのうち、各エレクトロクロミックユニットは、順に積層された第1の透明導電層、イオン貯蔵層、イオン遷移層、エレクトロクロミック層および第2の透明導電層を含む。隣り合う前記エレクトロクロミックユニット同士は、透明基底により隔てられる。
【0017】
前記エレクトロクロミック層およびイオン貯蔵層の形状は、前記エレクトロクロミック絞りの中心軸を中心とする円形または円環状であり、且つ、同一のエレクトロクロミックユニットにおけるイオン貯蔵層とエレクトロクロミック層とが互いに一致し、異なるエレクトロクロミックユニットにおけるエレクトロクロミック層の、前記エレクトロクロミック絞りの中心軸に沿う方向における投影が重複せず、境界が互いに一致する。
【0018】
なお、本願における「同一のエレクトロクロミックユニットにおけるイオン貯蔵層とエレクトロクロミック層とが互いに一致する」とは、同一のエレクトロクロミックユニットにおいて、イオン貯蔵層とエレクトロクロミック層との、エレクトロクロミック絞りの中心軸に沿う方向における投影が互いに重複することを指す。
【0019】
本願では、上記形状のイオン貯蔵層およびエレクトロクロミック層の製造方法は、特に限定されず、例示的に、以下の2種の方法が挙げられてもよい。
【0020】
1.まず、透かし彫り環状の遮蔽基材を用いて透明導電層を被覆し、透明導電層においてエレクトロクロミック層またはイオン貯蔵層を塗布し、遮蔽基材を外した後、環状のエレクトロクロミック層またはイオン貯蔵層を得る。
【0021】
2.エレクトロクロミック層またはイオン貯蔵層が塗布された透明導電層において、レーザーエッチングを行い、化学的腐食または物理的払拭により環状のエレクトロクロミック層またはイオン貯蔵層を得る。
【0022】
凹溝のエッチングによる光漏れまたは光不透過の問題を解決するために、本願は、以下の第4の態様におけるエレクトロクロミック絞りを提供する。エレクトロクロミック絞りが内から外に向かって3つの領域に区画され、それぞれの明るくなり始める時の電圧が0.4、0.8、1.2Vであることを例として、電圧が0.4~0.8Vの間にある場合には、最内周の領域のみが明るくなり始め、電圧が0.8-1.2Vの間にある場合には、最内周および中間の領域が明るくなり始め、電圧が1.2Vよりも大きい場合には、最内周、中間および最外周の領域がいずれも明るくなり始める。絞りの暗くなり始める時の電圧が内から外に向かって徐々に低減すると、逆方向電圧を印加することにより、絞りの外周が内周よりも暗くなる。絞りの内から外に向かった各領域が連続するため、絞りの多段階調整を実現しながら、凹溝のエッチングによる光漏れまたは光不透過の問題を回避することができる。
【0023】
第4の態様において、本願は、順に積層された第1の透明基底、第1の透明導電層、イオン貯蔵層、イオン遷移層、エレクトロクロミック層、第2の透明導電層および第2の透明基底を含むエレクトロクロミック絞りを提供する。
【0024】
そのうち、前記エレクトロクロミック絞りの明るくなり始める時の電圧が内から外に向かって徐々に増大するか、または暗くなり始める時の電圧が内から外に向かって徐々に低減する。
【0025】
本願では、「エレクトロクロミック絞りの明るくなり始める時の電圧が内から外に向かって徐々に増大するか、または暗くなり始める時の電圧が内から外に向かって徐々に低減する」ことを実現する方法は、特に限定されず、例示的に、以下の2種の方法が挙げられてもよい。
【0026】
1.イオン遷移層を紫外線で硬化させる前に、紫外線透過率の異なる物質で異なる領域を遮蔽することで、イオン遷移層の架橋度を内から外に向かって徐々に増大させる。
【0027】
2.透明導電層において明るくなり始めるまたは暗くなり始める時の電圧が異なるエレクトロクロミック材料を塗布することで、内から外に向かったエレクトロクロミック材料の明るくなり始める時の電圧を徐々に増大させるか、または暗くなり始める時の電圧が徐々に低減させる。
【0028】
凹溝のエッチングによる光漏れまたは光不透過の問題を解決するために、本願は、以下の第5の態様におけるエレクトロクロミック絞りを提供する。第5の態様に係るエレクトロクロミック絞りを用いて、その中心に高い電圧を印加し、エッジに低い電圧を印加することにより、絞りにおける電圧が内から外に向かって徐々に低減することができる。絞りにおいて凹溝がエッチングされておらず、絞りにおける任意の点の透過率がこの点の電圧に関連付けられているため、絞りの電圧が内から外に向かって徐々に低減すると、その透過率が内から外に向かって徐々に低減する。そのため、電圧を変更することにより、絞りの異なる透過率の変化を制御することができることで、絞りの多段階調整を実現しながら、凹溝のエッチングによる光漏れまたは光不透過の問題を回避することができる。
【0029】
第5の態様において、本願は、順に積層された第1の透明基底、第1の透明導電層、イオン貯蔵層、イオン遷移層、エレクトロクロミック層、第2の透明導電層および第2の透明基底を含むエレクトロクロミック絞りを提供する。
【0030】
そのうち、前記エレクトロクロミック絞りの材質が内から外に向かって同様であり、前記エレクトロクロミック絞りにおいて凹溝がない。
【0031】
第6の態様において、本願は、第5の態様に係るエレクトロクロミック絞りに対して多段階調整を行う方法を提供する。前記方法は、第5の態様に係るエレクトロクロミック絞りを用いて、前記エレクトロクロミック絞りの中心およエッジに異なる電圧を印加することにより、中心の電圧がエッジの電圧よりも大きいことで、多段階調整を実現する。
【0032】
なお、本願では、絞りに印加する電圧とは、エレクトロクロミック層とイオン貯蔵層との間の電位差を指す。該電位差が正のものである場合、印加した電圧が正の電圧であり、該電位差が負のものである場合、印加した電圧が負の電圧である。前記「中心の電圧がエッジの電圧よりも大きい」とは、中心の電圧値がエッジの電圧値よりも大きいことを指し、たとえば、中心が正の電圧であり、エッジが負の電圧であってもよいし、中心およびエッジがいずれも正の電圧であり、且つ中心の電圧の絶対値がエッジの電圧の絶対値よりも大きくてもよいし、中心およびエッジがいずれも負の電圧であり、且つ中心の電圧の絶対値がエッジの電圧の絶対値よりも小さくてもよい。
【0033】
絞りの厚さが大き過ぎることは、常に絞りが携帯式消費電子機器の撮像モジュールに適用されることを制限する原因である。本願の第7および第8の態様に係るエレクトロクロミック絞りは、各層の材料を選択することにより、フレキシブルで湾曲可能な特徴を有し、絞りを、色消しレンズ組合せにおける凸レンズまたは凹レンズの曲率と同じ曲面構造として設計することができ、絞りを色消しレンズ組合せにおける凹レンズまたは凸レンズの表面に貼着することにより、レンズモジュールにおける絞りとレンズの合併を実現し、さらにレンズモジュールを薄くすることができる。或いは、絞りを色消しレンズ組合せにおける凹レンズまたは凸レンズの形状と同様な構造として設計することで、凹レンズまたは凸レンズを代替し、レンズモジュールにおける絞りとレンズの合併を実現し、さらにレンズモジュールを薄くすることができる。エレクトロクロミック絞りは、変色過程で屈折率の変化が極めて小さいため、色消し機能に影響を与えない。
【0034】
第7の態様において、本願は、順に積層された第1の透明基底、第1の透明導電層、イオン貯蔵層、イオン遷移層、エレクトロクロミック層、第2の透明導電層および第2の透明基底を含むエレクトロクロミック絞りを提供する。
【0035】
そのうち、前記エレクトロクロミック絞りは、曲面構造であり、且つ曲率が色消しレンズ組合せにおける凹レンズまたは凸レンズの表面の曲率と同様である。
【0036】
第8態様において、本願は、順に積層された第1の透明基底、第1の透明導電層、イオン貯蔵層、イオン遷移層、エレクトロクロミック層、第2の透明導電層および第2の透明基底を含むエレクトロクロミック絞りを提供する。
【0037】
そのうち、前記エレクトロクロミック絞りは、形状が色消しレンズ組合せにおける凹レンズまたは凸レンズの形状と同様である。
【0038】
既存のエレクトロクロミック絞りは、基本的に2段階調整であり、すなわち、2つだけの絞りの段階の数が変化する。3段階が出来ても、3周の変色の範囲が一致すれば(各周の変色範囲が20~90%であると仮定し)、その最小瞳の全体透過率が依然として大きいので、イメージング効果に影響を与えるだけでなく、絞りの調整可能な段階の数の相違も明らかにならない。すなわち、最大瞳透過率と最小瞳透過率の比が小さく、改良する必要がある。
【0039】
この問題に対して、本願は、以下の第9の態様におけるエレクトロクロミック絞りを提供する。異なる領域のエレクトロクロミック層の厚さを変更することにより、各領域の変色範囲を変更する(たとえば、内から外に向かってエレクトロクロミック層が3つの領域に分割され、各領域における変色範囲は順に20~90%、10~80%、5~70%である)ことで、最大瞳透過率と最小瞳透過率の比を大幅に増加させ、段階の数の相違がより大きな絞りの調節を実現し、複数種の撮影シーンのニーズを満たすことができる。
【0040】
第9の態様において、本願は、本願の第1、3、4、5、7、8の態様に係るエレクトロクロミック絞りを基に、前記エレクトロクロミック層、または前記エレクトロクロミック層およびイオン貯蔵層の厚さが内から外に向かって徐々に増大するように構成される、エレクトロクロミック絞りを提供する。
【0041】
そのエッジと中心の厚さの比は、1.1~10:1であってもよく、たとえば1.1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1などであってもよい。
【0042】
なお、イオン遷移層の厚さはミクロンオーダーであり、エレクトロクロミック層の厚さの変化はナノメートルオーダーであるため、実際に引き起こしたイオン遷移層の厚さの変化は考慮しなくても良い。
【0043】
本願は、エレクトロクロミック層の厚さが、内から外に向かって徐々に増大するように構成されることにより、絞りが内から外に向かって異なる変色範囲を有することで、段階の数の相違がより大きな絞りの調節を実現し、複数種の撮影シーンのニーズを満たすことができる。
【0044】
本願では、上記厚さの変化を実現する方法は、特に限定されず、例示的に、まず、厚さが均一の膜層を製造してから、レーザーエッチングを行い、或いは膜層を製造する時に、膜層の厚さを制御する(たとえば、層毎に塗布する形態で制御する)。
【0045】
本願の一実施形態において、前記第1の透明導電層および前記第2の透明導電層の材料は、それぞれ独立してITO(indium-tin oxide、酸化インジウムスズ)、AZO(aluminum zinc oxide、酸化亜鉛アルミニウム)、FTO(fluorine doped tin oxide、フッ素ドープ酸化スズ)、銀ナノワイヤ、グラフェン、カーボンナノチューブ、金属グリッドまたは銀ナノ粒子からなる。
【0046】
本願の一実施形態において、前記第1の透明導電層および前記第2の透明導電層の厚さは、それぞれ独立して1~1000nmであり、たとえば1nm、3nm、5nm、10nm、20nm、50nm、80nm、100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、800nmまたは1000nmなどであってもよい。
【0047】
第1の透明導電層および第2の透明導電層は、エレクトロクロミック絞りの電極である。実際の適用では、リード線を接続して電極を引出してもよい。
【0048】
本願の一実施形態において、前記イオン貯蔵層の材料は、第IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、VIII、IBおよびIIB属における金属元素からなる、電気化学反応時にイオンを貯蔵可能な酸化物または錯体のうちの1種または少なくとも2種の組合せである。たとえば、ある金属酸化物、或いは2種以上の金属酸化物の組合せ、或いはある金属錯体、或いは2種以上の金属錯体の組合せ、或いは金属錯体と金属酸化物の組合せであってもよい。2種以上の金属酸化物を選択する場合、ドープ形態、たとえばNbに5wt%のTiOをドーピングすることを指す。
【0049】
好ましくは、前記金属は、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ir、Ni、CuおよびZnから選ばれる。
【0050】
好ましくは、前記錯体は、プルシアングリーン、プルシアンホワイト、プルシアンブラウン、プルシアンブルー、KFeFe(CN)、FeNiHCF、FeHCF、NiHCFまたは鉄化合物X{Fe(CN)}から選ばれる1種または少なくとも2種の組合せであり、ただし、Xは、NaまたはKまたは他の文献に言及された金属イオンであり、Yは、Fe3+、Co3+、Ni、Mn2+、Zn2+またはCu2+、または他の文献に言及された金属イオンである。
【0051】
好ましくは、前記イオン貯蔵層の材料は、酸化還元活性を有する高分子をさらに含む。
【0052】
前記酸化還元活性を有する高分子は、ピロール及びピロール誘導体からなるポリマー、チオフェン及びチオフェン誘導体からなるポリマー、TEMPO(テトラメチルピペリジン窒素酸化物)およびその誘導体を含むポリマー、バイオレットおよびその誘導体を含むポリマーなどであってもよい。
【0053】
本願の一実施形態において、イオン貯蔵層は、遷移金属錯体と金属酸化物の混合系、遷移金属錯体と酸化還元活性を有する高分子の混合系であってもよいし、金属酸化物と酸化還元活性を有する高分子の混合系などであってもよい。
【0054】
本願の一実施形態において、前記イオン貯蔵層の厚さは、1~10000nmであり、たとえば1nm、3nm、5nm、10nm、20nm、50nm、80nm、100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、800nm、1000nm、2000nm、5000nm、8000nmまたは10000nmなどであってもよい。
【0055】
イオン貯蔵層は、主にイオンを貯蔵するために用いられる。通電時にイオン貯蔵層のイオンがエレクトロクロミック層へ遷移し、エレクトロクロミック層は、これらのイオンを吸収して変色する。
【0056】
本願の一実施形態において、前記イオン遷移層は、フレキシブル固体電解質層である。
【0057】
本願の一実施形態において、前記イオン遷移層に含有した中性有機小分子の重量パーセント含有量は、30wt%以下、たとえば25wt%、20wt%、15wt%、10wt%、5wt%などであり、前記中性有機小分子の分子量は3000以下であり、たとえば2500、2000、1500、1000、500などである。
【0058】
本願の一実施形態において、前記固体電解質層におけるポリマーは、共有結合で連結した可塑化基を有する固体電解質ポリマーである。
【0059】
本願の一実施形態において、前記固体電解質ポリマーは、モノマーまたはオリゴマーとイオン導電性ポリマーのコポリマーであり、前記モノマーまたはオリゴマーの側鎖に可塑化基を有する。更に、前記固体電解質層の組成は、側鎖に架橋基を有するモノマーまたはオリゴマーセグメントを含む。
【0060】
本願に記載される「さらに」とは、上記の限定において、前記固体電解質層の組成に、モノマーまたはオリゴマーとイオン導電性ポリマーのコポリマーが含まれることに加えて、前記コポリマーに、側鎖に架橋基を有するモノマーまたはオリゴマーセグメントがさらに含まれることが好ましいことを指す。以下の「さらに」についても、同様に解釈する。
【0061】
前記塑化基および可塑化基とは、高分子間の相互作用を弱め、高分子結晶性を低下することができる基を指す。
【0062】
本願の一実施形態において、前記固体電解質ポリマーは、化学結合で連結した可塑化リニアポリマーおよびイオン導電性ポリマーである。前記可塑化リニアポリマーのガラス転移温度が-20℃を下回る。さらに、前記固体電解質層の組成は、側鎖に架橋基を有するモノマーまたはポリマーをさらに含む。前記側鎖に架橋基を有するモノマーまたはポリマー、前記可塑化リニアポリマーおよびイオン導電性ポリマーの三者は、化学結合で連結する。
【0063】
本願の一実施形態において、前記固体電解質ポリマーは、側鎖に可塑化基を有し且つガラス転移温度が-20℃を下回るポリマーおよびイオン導電性ポリマーであり、両者が化学結合で連結する。さらに、前記固体電解質層の組成は、側鎖に架橋基を有するモノマーまたはポリマーをさらに含み、前記側鎖に架橋基を有するモノマーまたはポリマー、前記側鎖に可塑化基を有し且つガラス転移温度が-20℃を下回るポリマーおよびイオン導電性ポリマーの三者は、化学結合で連結する。
【0064】
本願の一実施形態において、前記固体電解質ポリマーは、フレキシブルポリマー主鎖、イオン導電性側鎖および非混合相側鎖を有するブラシ状ポリマーである。さらに、前記固体電解質層の組成は、側鎖に架橋基を有するモノマーまたはオリゴマーをさらに含む。前記側鎖に架橋基を有するモノマーまたはオリゴマーは、ブロック共重合の形態で前記ブラシ状ポリマーと化学結合で連結する。
【0065】
本願に係る非混合相側鎖とは、他の側鎖または高分子の性質との相違が大きく、効果的にブレンドすることができない側鎖を指すが、本願に係るブラシ状ポリマーとは、高分子の主鎖がフレキシブルポリマーであることを指す。側鎖は、2種類あり、1種の側鎖は、イオンを伝導するために用いられるものであり、他の1種の側鎖は、イオン伝導側鎖の性能との相違が大きく、効果的にブレンドすることができない他のタイプの側鎖である。本願では、このようなブレンド不可能な側鎖を導入することにより、高分子の結晶度を低下させ、高分子が不規則な状態となり、さらに高分子全体のイオン伝導能力および透明度を向上させる。
【0066】
本願の一実施形態において、前記イオン遷移層は、フレキシブル固体電解質層である。前記フレキシブル固体電解質層のポリマーは、以下の4種類のポリマーから選ばれてもよい。
【0067】
1つの具体的な実施形態において、x、y、およびzは、それぞれ独立して0以上の整数から選ばれる。式に示す矩形は、イオン伝導作用を有するポリマーブロック(イオン導電性ポリマーブロック)を代表し、楕円形は、PR(可塑化基)、またはCL(架橋基)、またはNM(非混合相基)、またはIC(イオン導電基)のこれらの側鎖を有するモノマーまたはポリマーを代表する。
【化1】
【0068】
イオン伝導作用を有するポリマーブロックy(たとえば、ポリエチレングリコール、または他の文献で報道された材料)、側鎖に可塑化基(PR)を有するモノマーまたはポリマーブロックx、および側鎖に架橋基(CL)を有するモノマーまたはポリマーブロックzが共重合により生成したブロックコポリマー(PEGPRCLで表される)。或いは、イオン伝導作用を有するポリマーブロックy(たとえば、ポリエチレングリコール、または他の文献で報道された材料)および側鎖に可塑化基(PR)を有するモノマーまたはポリマーブロックxが共重合により生成したブロックコポリマー(PEGPRで表される)。
【化2】
【0069】
イオン伝導作用を有するポリマーブロックy(たとえば、ポリエチレングリコール、または他の文献で報道された材料)、ガラス転移温度が-20℃を下回るリニア可塑化ポリマー(SP)ブロックx(たとえば、ポリエチレン、ポリブテン、ポリイソブテン、シロキサン、または他の文献で報道された材料など)、および側鎖に架橋基(CL)を有するモノマーまたはポリマーブロックzが共重合により生成したブロックコポリマー(PEGSPCLで表される)。或いは、イオン伝導作用を有するポリマーブロックy(たとえば、ポリエチレングリコール、または他の文献で報道された材料)およびガラス転移温度が-20℃を下回るリニア可塑化ポリマー(SP)ブロックx(たとえば、ポリエチレン、ポリブテン、ポリイソブテン、シロキサン、または他の文献で報道された材料など)が化学反応により連結したブロックコポリマー(PEGSPで表される)。
【化3】
【0070】
イオン伝導性を有する高分子ブロックy(たとえば、ポリエチレングリコール、または他の文献で報道された材料)および可塑化側鎖を有する可塑化高分子(SP-PR)ブロックxが化学反応により連結して、側鎖に架橋基を有するモノマーまたはオリゴマー(CL)ブロックzと共重合したブロックコポリマー(PEGSP-PRCLで表される)。或いは、イオン伝導性を有する高分子ブロックy(たとえば、ポリエチレングリコール、または他の文献で報道された材料)および可塑化側鎖を有する可塑化高分子(SP-PR)ブロックxが化学反応により連結したブロックコポリマー(PEGSP-PRで表される)。
【化4】
【0071】
イオン伝導作用を有するオリゴマーまたは高分子(たとえば、ポリエチレングリコール、または他の文献で報道された材料)を側鎖とするフレキシブル高分子ブロックx、およびイオン伝導高分子とブレンドしない側鎖(たとえば、アルキル系、芳香族系またはアルキルおよび芳香族の混合系側鎖)を有するフレキシブル高分子ブロックyが化学反応により連結して、側鎖に架橋基を有するモノマーまたはオリゴマー(CL)ブロックzと共重合した櫛形ブロックコポリマー(ICNMCL)。或いは、イオン伝導作用を有するオリゴマーまたは高分子(たとえば、ポリエチレングリコールまたは他の文献で報道された材料)を側鎖とするフレキシブル高分子ブロックx、およびイオン伝導高分子とブレンドしない側鎖(たとえば、アルキル系、芳香族系またはアルキルおよび芳香族の混合系側鎖)を有するフレキシブル高分子ブロックyが化学反応により連結した櫛形ブロックコポリマー(ICNM)。
【0072】
上記のイオン遷移層に用いられる高分子材料は、さらに一定量の有機塩および/または無機塩とブレンドして電解質前駆体を形成する必要がある。前記無機塩は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩を含むがこれに限定されず、前記有機塩は、イオン液体、たとえばEMITFSI、EMIOTFを含むがこれに限定されない。開始剤を導入することにより、ブレンドして電解質前駆体を形成する必要もある。電解質前駆体は、加熱、光開始などの方法により架橋して最終的な全固体電解質を形成する。
【0073】
本願において、可塑化基(PR)は、以下の構造を含むがこれに限定されない。
【化5】
【0074】
架橋基(CL)は、以下の構造を含むがこれに限定されない。
【化6】
【0075】
櫛形ブロックコポリマーの主鎖は、以下の構造を含むがこれに限定されない。
【化7】
【0076】
イオン導電基(IC)は、以下の構造を含むがこれに限定されない。
【化8】
【0077】
本願の一実施形態において、前記イオン遷移層の厚さは、0.1~200μmであり、たとえば0.1μm、0.2μm、0.5μm、0.8μm、1μm、2μm、5μm、8μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、110μm、120μm、130μm、150μm、160μm、180μmまたは200μmなどであってもよい。イオン遷移層は、イオンの遷移通路である。
【0078】
本願の一実施形態において、前記エレクトロクロミック層の材料は、酸化タングステンなどのエレクトロクロミック金属酸化物、ポリデシルビオロゲンおよびその誘導体、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリピロールおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)およびその誘導体、ポリチエノ[3,4-b][1,4]ジオキサヘプタンおよびその誘導体、ポリフランおよびその誘導体、ポリフルオレンおよびその誘導体、ポリカルバゾールおよびその誘導体のうちの1種または少なくとも2種の組合せ、および/または、上記ポリマーのモノマーまたはオリゴマーおよび電子欠乏モノマーからなるコポリマーから選ばれる。
【0079】
本願の一実施形態において、電子欠乏モノマーは、ベンゾチアジアゾール、ベンゾセレナジアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、キノキサリンおよびジケトピロロピロールから選ばれる1種または少なくとも2種の組合せを含むがこれに限定されない。
【0080】
エレクトロクロミック層の色の変化は、エレクトロクロミック材料の種類によれば調節することができ、たとえば黒色と透明の間の変化、黒色と赤色の間の変化、黒色と黄色の間の変化などであってもよい。
【0081】
本願の一実施形態において、前記エレクトロクロミック層の厚さは、1~10000nmであり、たとえば、1nm、3nm、5nm、10nm、20nm、50nm、80nm、100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、800nm、1000nm、2000nm、5000nm、8000nmまたは10000nmなどであってもよい。
【0082】
本願の一実施形態において、前記第1の透明基底および第2の透明基底の材料は、それぞれ独立してガラスまたはフレキシブル基底材料である。
【0083】
前記フレキシブル基底材料は、PET、シクロオレフィンコポリマー、トリアセチルセルロースなどを含むがこれに限定されない。
【0084】
本願の一実施形態において、前記エレクトロクロミック絞りの合計厚さは、1mm以下である。
【0085】
本願に係るエレクトロクロミック絞りの合計厚さは、5mm以下に制御することができる。低い厚さ(またはZ軸の高さとも呼ばれる)は、ズームおよび調節に寄与する。
【0086】
第10の態様において、本願は、
色消し用の凹レンズと凸レンズの組合せ、および前記凹レンズまたは凸レンズの表面に貼着された第7の態様に係るエレクトロクロミック絞りを含む、
或いは
前記凹レンズが第8態様に係るエレクトロクロミック絞りである色消し用の凹レンズと凸レンズの組合せを含む、絞りレンズ組合せを提供する。
【0087】
第11の態様において、本願は、
色消しレンズ組合せ、本願における第2、3、4、5、7、8または9の態様に係るエレクトロクロミック絞り、露光コントローラ、画像センサー、パルス電圧コントローラ、光強度センサー、感光素子、配線基板およびチップを含み、
そのうち、前記色消しレンズ組合せ、エレクトロクロミック絞り、露光コントローラおよび画像センサーの中心が同じ光軸に位置し、
或いは、
第10の態様に係る絞りレンズ組合せ、露光コントローラ、画像センサー、パルス電圧コントローラ、光強度センサー、感光素子、配線基板およびチップを含み、
そのうち、前記絞りレンズ組合せ、エレクトロクロミック絞り、露光コントローラおよび画像センサーの中心が同じ光軸に位置する、レンズモジュールを提供する。
【0088】
1つの具体的な実施形態において、色消しレンズ組合せは、フロントレンズおよびリアレンズを含む。フロントレンズおよびリアレンズは、それぞれ独立して1つまたは複数のレンズを含む。レンズ材料の例は、紫外線硬化、熱硬化または常温硬化などの形態で加工可能な1種または複数種の樹脂であり、たとえばポリカーボネート、ポリエステルまたはポリウレタンなどである。フロントレンズおよびリアレンズの組合せは、主に色消しに用いられる。
【0089】
エレクトロクロミック絞りは、主に、光の通過可能なダイヤフラム(diaphragm)のサイズを調節してレンズモジュールの光量を調節するために用いられる。
【0090】
パルス電圧コントローラは、主に、パルス電圧を印加することにより、エレクトロクロミック絞りに作用して、エレクトロクロミック絞りの光透過率を変更するために用いられる。パルス電圧コントローラは、光強度センサー、露光コントローラ、レンズ移動ボタンなどによる影響を受ける。
【0091】
画像センサーは、環境パラメータによってパルス電圧コントローラを制御し、エレクトロクロミック絞りのダイヤフラムを調節するとともに、露光コントローラが露光パラメータおよび露光時間を制御するように制御する。環境パラメータは、画素積分時間、環境照度、フラッシュランプ、およびフラッシュランプの使用可否などの要素を含む。画像センサーは、たとえば、相補型金属酸化物半導体(CMOS)センサーチップなどの、集束した光学画像を捕捉可能なあらゆる通常のソリッドステートイメージングセンサーである。
【0092】
感光素子は、光線を電荷に変換し、アナログディジタルコンバータチップによってデジタル信号に変換することができる。デジタル信号は、圧縮された後、カメラ内部のフラッシュメモリまたは内蔵ハードディスクカード(電荷結合(CCD)、相補型金属酸化物半導体(CMOS)を含む)に記憶される。
【0093】
本願では、光量および撮像効果を調整するためのレンズモジュールの製造過程全体は、以下のステップを含んでもよい。
【0094】
(1)エレクトロクロミック絞りを製造する。
【0095】
(2)色消しレンズ組合せを成型および硬化し、エレクトロクロミック絞りとともにエレクトロクロミック絞りレンズを構成する。
【0096】
(3)画像センサー、パルス電圧コントローラ、感光素子に対してデバッグおよび装着を行う。
【0097】
精密なデバッグで、エレクトロクロミック絞り、色消しレンズ組合せおよび画像センサーが同じ光軸に位置するように制御し、画像センサーにより環境の光照度を検出し、電気信号に変換してコントロールチップに出力し、さらにパルス電圧コントローラが対応する電流を出力するように制御してエレクトロクロミック絞りの光透過率を変更しながら、ボイスコイルモーターにより対応する焦点距離を最も好適な撮像パラメータに変更し、そして、露光コントローラにより露光を制御して、画像信号をCCDから電気信号に変換した後に処理して画像として出力する。
【0098】
(4)エレクトロクロミック絞りレンズと他の部材を組み合わせることにより、レンズモジュールを形成する。
【0099】
精密なデバッグで、エレクトロクロミック絞りレンズおよび他の部材、たとえば露光コントローラ、CCD、ボイスコイルモーターなどを装着して、レンズモジュールを構成する。
【発明の効果】
【0100】
従来技術と比べ、本願は、以下の有益な効果を有する。
【0101】
本願における第1の態様に係るエレクトロクロミック絞りの製造方法は、絞りの多段階調整を実現できることを確保しながら、従来のエッチング方法による変色の不均一などの問題を効果的に回避することができる。
【0102】
本願における第3、4の態様に係るエレクトロクロミック絞りは、絞りの多段階調整を実現しながら、凹溝のエッチングによる光漏れまたは光不透過の問題を回避することができる。
【0103】
本願における第5の態様に係るエレクトロクロミック絞りおよび第6の態様に係るエレクトロクロミック絞りに対して多段階調整を行う方法は、絞りの多段階調整を実現しながら、凹溝のエッチングによる光漏れまたは光不透過の問題を回避することができる。
【0104】
本願における第7の態様に係るエレクトロクロミック絞りは、曲面構造であり、且つ曲率が色消しレンズ組合せにおける凹レンズまたは凸レンズの表面の曲率と同様であり、色消しレンズ組合せにおける凹レンズまたは凸レンズの表面に貼着することができることで、レンズモジュールにおける絞りとレンズの合併を実現し、さらにレンズモジュールを薄くすることができる。
【0105】
本願における第8の態様に係るエレクトロクロミック絞りは、曲面構造であり、且つ形状が色消しレンズ組合せにおける凹レンズまたは凸レンズの形状と同様であり、色消しレンズ組合せにおける凹レンズまたは凸レンズを代替することができることで、レンズモジュールにおける絞りとレンズの合併を実現し、さらにレンズモジュールを薄くすることができる。
【0106】
本願における第9の態様に係るエレクトロクロミック絞りは、内から外に向かって異なる変色範囲を有し、段階の数の相違がより大きな絞りの調節を実現し、複数種の撮影シーンのニーズを満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
図1】本願の実施例1-1に係るエレクトロクロミック絞りの断面構造模式図である。
図2】本願の実施例1-2に係るエレクトロクロミック絞りの断面構造模式図である。
図3】本願の実施例1-3に係るエレクトロクロミック絞りの断面構造模式図である。
図4】本願の実施例1-4に係るエレクトロクロミック絞りの断面構造模式図である。
図5】本願の実施例1-5に係るエレクトロクロミック絞りの断面構造模式図である。
図6】本願の実施例2に係るエレクトロクロミック絞りの断面構造模式図である。
図7】本願の実施例3-1に係るエレクトロクロミック絞りの断面構造模式図である。
図8】本願の実施例3-2に係るエレクトロクロミック絞りの断面構造模式図である。
図9】本願の実施例4におけるエレクトロクロミック絞りに対して多段階調整を行う方法の模式図である。
図10】本願の実施例5-1に係るエレクトロクロミック絞りの断面構造模式図である。
図11】本願の実施例5-2に係るエレクトロクロミック絞りの断面構造模式図である。
図12】本願の実施例6-1に係る曲面エレクトロクロミック絞りの断面構造模式図である。
図13】本願の実施例6-1に係る絞りレンズ組合せの構造模式図である。
図14】本願の実施例6-2に係る絞りレンズ組合せの構造模式図である。
図15】本願の実施例6-3に係る絞りレンズ組合せの構造模式図である。
図16】本願の実施例6-4に係る絞りレンズ組合せの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0108】
以下、図面および具体的な実施形態を結び付けて、本願の技術案についてさらに説明する。当業者は、前記具体的な実施形態が本願を理解するためのものに過ぎず、本願を具体的に限定するものと見なすべきではないことを理解すべきである。
【0109】
本願の実施例において、高分子A(PEGPRCLに所属する1種の固体電解質ポリマー)の調製方法は、以下の通りである。
【化9】
【0110】
適当な有機溶剤に、ブロモイソ酪酸封止のPEG(ポリエチレングリコール)、可塑化基を有するアクリレート、2つのアクリル酸を有する架橋基、1価の銅触媒、PMDETA(N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン)配位子を添加した。該混合溶液(溶剤が添加されていない該混合物は、電解質前駆体として直接ディバイスの製造に用いられてもよい)を100℃の条件下で12時間反応させ、珪藻土で濾過し、減圧により溶剤を除去して高分子Aを得た。
【0111】
高分子B(PEGPRに所属する1種の固体電解質ポリマー)の調製方法は以下の通りである。
【化10】
【0112】
適当な有機溶剤に、PEGジアミン(ポリエチレングリコールジアミン)、およびフタロイルクロリドを添加した。アルカリ性の条件下で、直接重合して高分子電解質を得た(溶剤が添加されていない該混合物は、電解質前駆体として直接ディバイスの製造に用いられてもよい)。水洗、分離および乾燥した後、溶剤を除去して高分子Bを得た。
【0113】
高分子C(PEGSPCLに所属する1種の固体電解質ポリマー)の調製方法は以下の通りである。
【化11】
【0114】
適当な有機溶剤に、PEG(ポリエチレングリコール)、ポリシロキサンジアミン、架橋剤であるテトラミン、凝縮剤であるCDI(カルボニルジイミダゾール)を添加した(溶剤が添加されていない該混合物は、電解質前駆体として直接ディバイスの製造に用いられてもよい)。90℃で反応してポリマーを得た。水洗、分離および乾燥した後、溶剤を除去して高分子Cを得た。
【0115】
高分子D(PEGSPに所属する1種の固体電解質ポリマー)の調製方法は以下の通りである。
【化12】
【0116】
適当な有機溶剤に、PEG(ポリエチレングリコール)、ポリシロキサンジアミン、凝縮剤であるCDI(カルボニルジイミダゾール)を添加した(溶剤が添加されていない該混合物は、電解質前駆体として直接ディバイスの製造に用いられてもよい)。120℃で反応してポリマーを得た。水洗、分離および乾燥した後、溶剤を除去して高分子Dを得た。
【0117】
高分子E(PEGSP-PRCLに所属する1種の固体電解質ポリマー)の調製方法は以下の通りである。
【化13】
【0118】
適当な有機溶剤に、PEG(ポリエチレングリコール)、ポリシロキサンジオール、架橋剤であるテトラオール、凝縮剤であるCDI(カルボニルジイミダゾール)を添加した(溶剤が添加されていない該混合物は、電解質前駆体として直接ディバイスの製造に用いられてもよい)。100℃で反応してポリマーを得た。水洗、分離および乾燥した後、溶剤を除去して高分子Eを得た。
【0119】
高分子F(PEGSP-PRに所属する1種の固体電解質ポリマー)の調製方法は以下の通りである。
【化14】
【0120】
適当な有機溶剤に、PEG(ポリエチレングリコール)、ポリシロキサンジオール、凝縮剤であるCDI(カルボニルジイミダゾール)を添加した(溶剤が添加されていない該混合物は、電解質前駆体として直接ディバイスの製造に用いられてもよい)。100℃で反応してポリマーを得た。水洗、分離および乾燥した後、溶剤を除去して高分子Fを得た。
【0121】
高分子G(ICNMCLに所属する1種の固体電解質ポリマー)の調製方法は以下の通りである。
【化15】
【0122】
適当な有機溶剤に、アクリル酸アルキルエステル、ポリエチレングリコールアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、AIBN(アゾビスイソブチルシアニド)を添加した(溶剤が添加されていない該混合物は、電解質前駆体として直接ディバイスの製造に用いられてもよい)。照射により反応してポリマーを得た。水洗、分離および乾燥した後、溶剤を除去して高分子Gを得た。
【0123】
高分子H(ICNMに所属する1種の固体電解質ポリマー)の調製方法は以下の通りである。
【化16】
【0124】
適当な有機溶剤に、アクリル酸アルキルエステル、ポリエチレングリコールアクリレート、AIBN(アゾビスイソブチルシアニド)を添加した(溶剤が添加されていない該混合物は、電解質前駆体として直接ディバイスの製造に用いられてもよい)。照射により反応してポリマーを得た。水洗、分離および乾燥した後、溶剤を除去して高分子Hを得た。
【0125】
実施例1-1
【0126】
本実施例は、遮蔽によって多段階制御を実現するエレクトロクロミック絞りおよびその製造方法を提供する。
【0127】
エレクトロクロミック絞りの構造は、図1に示すように、順に積層された第1の透明基底11、第1の透明導電層12、イオン貯蔵層13、イオン遷移層14、エレクトロクロミック層15、第2の透明導電層16および第2の透明基底17を含む。
【0128】
そのうち、エレクトロクロミック層15および第2の透明導電層16において、前記エレクトロクロミック絞りの中心軸を中心とする環状凹溝が複数本エッチングされている。
【0129】
本実施例において、エレクトロクロミック絞りの製造方法は、以下の通りである。
【0130】
(1)エレクトロクロミック層15の製造
500mgのポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)を10mLのo-キシレンに溶解させ、マグネチックスターラーで10h撹拌した後、得た溶液をガラス基板(第2の透明基底17)にメッキされたITO層(第2の透明導電層16)に滴下した。スピンコートによってP3HTコーティングを形成した。図1に示す構造の通り、P3HTコーティングおよび第2の透明導電層において複数本の環状凹溝がレーザーエッチングして、エレクトロクロミック層15を得た。
【0131】
(2)イオン貯蔵層13の製造
500mgの三酸化タングステンを20mLの脱イオン水に溶解させた。撹拌および濾過した後、得た溶液をガラス基板(第1の透明基底11)にメッキされたITO層(第1の透明導電層12)に滴下し、スピンコートによって三酸化タングステンコーティングを形成して、イオン貯蔵層13を得た。
【0132】
(3)エレクトロクロミック絞りの製造
10wt%の過塩素酸リチウム、89.9wt%の高分子Hの前駆体、および0.1wt%のペルアゾビスイソブチロニトリル0.1wt%を混合し、上記イオン貯蔵層13に塗布して、電解質コーティングを形成した。そして、上記エレクトロクロミック層15を(ITO層およびガラス基板と共に)電解質コーティングに被覆し、紫外線硬化で電解質コーティングが全固体高分子電解質層(イオン遷移層14)を形成するようにして、エレクトロクロミック絞りを得た。
【0133】
実施例1-2
【0134】
本実施例は、遮蔽によって多段階制御を実現するエレクトロクロミック絞りおよびその製造方法を提供する。
【0135】
エレクトロクロミック絞りの構造は、図2に示すように、順に積層された第1の透明基底21、第1の透明導電層22、イオン貯蔵層23、イオン遷移層24、エレクトロクロミック層25、第2の透明導電層26および第2の透明基底27を含む。
【0136】
そのうち、イオン貯蔵層23および第1の透明導電層22において、同時に前記エレクトロクロミック絞りの中心軸を中心とする環状凹溝が複数本エッチングされている。
【0137】
本実施例において、エレクトロクロミック絞りの製造方法は、イオン貯蔵層23の塗布が完了した後、イオン貯蔵層23および第1の透明導電層22をレーザーエッチングする以外、実施例1-1と同様である。
【0138】
実施例1-3
【0139】
本実施例は、遮蔽によって多段階制御を実現するエレクトロクロミック絞りおよびその製造方法を提供する。
【0140】
エレクトロクロミック絞りの構造は、図3に示すように順に積層された第1の透明基底31、第1の透明導電層32、イオン貯蔵層33、イオン遷移層34、エレクトロクロミック層35、第2の透明導電層36および第2の透明基底37を含む。
【0141】
そのうち、第2の透明基底37、第2の透明導電層36およびエレクトロクロミック層35において、前記エレクトロクロミック絞りの中心軸を中心とする環状凹溝が複数本エッチングされている。
【0142】
本実施例において、エレクトロクロミック絞りの製造方法は、ステップ(3)においてイオン遷移層の紫外線硬化が完了した後にレーザーエッチングを行い、第2の透明基底37側からエッチングし、第2の透明基底37、第2の透明導電層36およびエレクトロクロミック層35の3層において同時に環状凹溝をエッチングする以外、実施例1-1と同様である。
【0143】
実施例1-4
【0144】
本実施例は、遮蔽によって多段階制御を実現するエレクトロクロミック絞りおよびその製造方法を提供する。
【0145】
エレクトロクロミック絞りの構造は、図4に示すように、順に積層された第1の透明基底41、第1の透明導電層42、イオン貯蔵層43、イオン遷移層44、エレクトロクロミック層45、第2の透明導電層46および第2の透明基底47を含む。
【0146】
そのうち、第1の透明基底41、第1の透明導電層42およびイオン貯蔵層43において、前記エレクトロクロミック絞りの中心軸を中心とする環状凹溝が複数本エッチングされている。
【0147】
本実施例において、エレクトロクロミック絞りの製造方法は、ステップ(3)においてイオン遷移層の紫外線硬化が完了した後にレーザーエッチングを行い、第1の透明基底41側からエッチングし、第1の透明基底41、第1の透明導電層42およびイオン貯蔵層43の3層において同時に環状凹溝をエッチングする以外、実施例1-1と同様である。
【0148】
実施例1-5
【0149】
本実施例は、遮蔽によって多段階制御を実現するエレクトロクロミック絞りおよびその製造方法を提供する。
【0150】
エレクトロクロミック絞りの構造は、図5に示すように、順に積層された第1の透明基底51、第1の透明導電層52、イオン貯蔵層53、イオン遷移層54、エレクトロクロミック層55、第2の透明導電層56および第2の透明基底57を含む。
【0151】
そのうち、第2の透明基底57および第2の透明導電層56において、前記エレクトロクロミック絞りの中心軸を中心とする環状凹溝が複数本エッチングされている。
【0152】
本実施例において、エレクトロクロミック絞りの製造方法は、ステップ(3)においてイオン遷移層の紫外線硬化が完了した後にレーザーエッチングを行い、第2の透明基底57側からエッチングし、第2の透明基底57および第2の透明導電層56の2層において同時に環状凹溝をエッチングする以外、実施例1-1と同様である。
【0153】
実施例1-1~実施例1-5に用いられる製造方法は、イオン貯蔵層およびエレクトロクロミック層の塗布が完了した後にエッチングを行うため、絞りの多段階調整を実現できることを確保しながら、従来のエッチング方法による変色の不均一などの問題を効果的に回避することができる。
【0154】
実施例2
【0155】
本実施例は、複数のエレクトロクロミックユニットを積層することにより、多段階制御を実現するエレクトロクロミック絞りを提供する。図6に示すように、前記エレクトロクロミック絞りは、2つの独立したエレクトロクロミックユニットにより積層され、順に積層された透明基底61、透明導電層61-1、イオン貯蔵層61-2、イオン遷移層61-3、エレクトロクロミック層61-4、透明導電層61-5、透明基底62、透明導電層62-1、イオン貯蔵層62-2、イオン遷移層62-3、エレクトロクロミック層62-4、透明導電層62-5および透明基底63を含む。
【0156】
そのうち、イオン貯蔵層61-2、62-2およびエレクトロクロミック層61-4、62-4の形状は、エレクトロクロミック絞りの中心軸を中心とする円環状である。イオン貯蔵層61-2とエレクトロクロミック層61-4の形状は、同様であり、互いに整列する。イオン貯蔵層62-2とエレクトロクロミック層62-4の形状は、同様であり、互いに整列する。そして、エレクトロクロミック層61-4の外径は、エレクトロクロミック層62-4の内径と同様である。
【0157】
本実施例において、エレクトロクロミック層61-4およびエレクトロクロミック層62-4のエレクトロクロミック絞りの中心軸に沿う方向における投影がシームレス連続するため、絞りの多段階調整を実現しながら、凹溝のエッチングによる光漏れまたは光不透過の問題を回避することができる。
【0158】
本実施例において、環状のエレクトロクロミック層および環状のイオン貯蔵層の製造方法は、以下の2種類がある。1、まず、透かし彫り環状の遮蔽基材を用いて透明導電層に被覆し、透明導電層においてエレクトロクロミック層またはイオン貯蔵層を塗布し、遮蔽基材を外した後、環状のエレクトロクロミック層またはイオン貯蔵層を得る。2、エレクトロクロミック層またはイオン貯蔵層が塗布された透明導電層において、レーザーエッチング、化学的腐食または物理的払拭によって環状のエレクトロクロミック層およびイオン貯蔵層を得る。
【0159】
各層の積層方法は、以下の通りである。まず、3つの透明基底において対応する透明導電層を塗布した後、透明導電層に被覆された環状のエレクトロクロミック層および環状のイオン貯蔵層を製造する。そして、イオン遷移層材料を塗布し、複合した後に紫外線硬化する。そのうち、各層の材料は、実施例1と同様である。
【0160】
実施例3-1
【0161】
本実施例は、変色し始める電圧を制御することにより、多段階調整を実現するエレクトロクロミック絞りを提供し、図7に示すように、順に積層された第1の透明基底71、第1の透明導電層72、イオン貯蔵層73、架橋度の異なるイオン遷移層74、エレクトロクロミック層75、第2の透明導電層76および第2の透明基底77を含む。
【0162】
そのうち、イオン遷移層74は、内から外に向かってエレクトロクロミック絞りの中心軸を中心とする3つの円形または円環状の領域に区画され、イオン遷移層74の架橋度が内から外に向かって徐々に増大する。
【0163】
具体的な実現方法は以下の通りである。イオン遷移層の紫外線硬化前に、紫外線透過率の異なる物質で異なる領域を遮蔽することにより、異なる領域におけるイオン遷移層の材料の架橋度が一致しないことで、異なる層における明るくなり始めるまたは暗くなり始める時の電圧が異なることを実現する。具体的なステップは、以下の通りである。
【0164】
(1)エレクトロクロミック層75の製造
500mgのポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)を10mLのo-キシレンに溶解させ、マグネチックスターラーで10h撹拌した後、得た溶液をガラス基板(第2の透明基底77)にメッキされたITO層(第2の透明導電層76)に滴下した。スピンコートによってP3HTコーティングを形成してエレクトロクロミック層を得た。
【0165】
(2)イオン貯蔵層73の製造
500mgの三酸化タングステンを20mLの脱イオン水に溶解させ、撹拌および濾過した後、得た溶液をガラス基板(第1の透明基底71)にメッキされたITO層(第1の透明導電層72)に滴下した。スピンコートによって三酸化タングステンコーティングを形成してイオン貯蔵層73を得た。
【0166】
(3)エレクトロクロミック絞りの製造
10wt%のリチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド、89.9wt%の高分子Gの前駆体および0.1wt%のペルアゾビスイソブチロニトリルを混合し、上記イオン貯蔵層に塗布して電解質コーティングを形成した。そして、上記エレクトロクロミック層75(ITO層およびガラス基板とともに)を電解質コーティングに被覆し、透明基底の外側において、イオン遷移層74の最外環の形状と一致する、紫外線透過率10%の表面コーティングされたPET薄膜を用いて、イオン遷移層74の最外環を被覆し遮蔽した。中間環の形状と一致する、紫外線透過率50%の表面コーティングされたPET薄膜を用いてイオン遷移層74の中間環を被覆し遮蔽した。最内環の形状と一致する、紫外線透過率90%のPET薄膜を用いて、イオン遷移層74の最内環を被覆し遮蔽した。加熱硬化した後、エレクトロクロミック絞りを得た。
【0167】
イオン遷移層の材料の架橋度が内から外に向かって徐々に増大し、明るくなり始める時の電圧が内から外に向かって徐々に増大するため、順方向電圧を印加する場合、絞りの内周が外周よりも明るくなる。内から外に向かった絞りの各領域が連続するため、絞りの多段階調整を実現しながら、凹溝のエッチングによる光漏れまたは光不透過の問題を回避することができる。
【0168】
実施例3-2
【0169】
本実施例は、変色し始める電圧を制御することにより、多段階調整を実現するエレクトロクロミック絞りを提供し、図8に示すように、順に積層された第1の透明基底81、第1の透明導電層82、イオン貯蔵層83、イオン遷移層84、エレクトロクロミック層85、第2の透明導電層86および第2の透明基底87を含む。
【0170】
そのうち、エレクトロクロミック層85は、内から外に向かってエレクトロクロミック絞りの中心軸を中心とする3つの円形または円環状の領域に区画され、各領域におけるエレクトロクロミック材料が異なり、内から外に向かったエレクトロクロミック材料の明るくなり始める時の電圧が徐々に増大し、暗くなり始める時の電圧が徐々に低減する。
【0171】
具体的な実現方法は、以下の通りである。明るくなり始めるまたは暗くなり始める時の電圧が異なるエレクトロクロミック材料、たとえばWO、ポリデシルビオロゲンおよびその誘導体、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)およびその誘導体、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)およびその誘導体、ポリチエノ[3,4-b][1,4]ジオキサヘプタンおよびその誘導体を透明導電層において塗布することにより、異なる層に明るくなり始めるまたは暗くなり始める時の電圧が異なることを実現する。具体的なステップは、以下の通りである。
【0172】
(1)エレクトロクロミック層85の製造
500mgのアルキル側鎖エチルヘキシルを有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)を10mlのクロロホルムに溶解させ、マグネチックスターラーで10h撹拌した。500mgのアルキル側鎖エチルヘキシルを有するポリチエノ[3,4-b][1,4]ジオキサヘプタンをクロロベンゼンに溶解させ、マグネチックスターラーで10h撹拌した。500mgのポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)を10mLのo-キシレンに溶解させ、マグネチックスターラーで10h撹拌した。インクジェット印刷でポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)の溶液をガラス基板(第2の透明基底87)にメッキされたITO層(第2の透明導電層86)に印刷して、最内周のポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)コーティングを形成した。インクジェット印刷でポリチエノ[3,4-b][1,4]ジオキサヘプタンの溶液をガラス基板(第2の透明基底87)にメッキされたITO層(第2の透明導電層86)に印刷して、2周目のポリチエノ[3,4-b][1,4]ジオキサヘプタンコーティングを形成した。インクジェット印刷でポリ(3-ヘキシルチオフェン)溶液をガラス基板(第2の透明基底87)にメッキされたITO層(第2の透明導電層86)に印刷して最外周のポリ(3-ヘキシルチオフェン)コーティングを形成して、エレクトロクロミック層85の製造を完了した。
【0173】
(2)イオン貯蔵層83の製造
500mgの三酸化タングステンを20mLの脱イオン水に溶解させ、撹拌および濾過した後、得た溶液をガラス基板(第1の透明基底81)にメッキされたITO層(第1の透明導電層82)に滴下した。スピンコートによって三酸化タングステンコーティングを形成してイオン貯蔵層83を得た。
【0174】
(3)エレクトロクロミック絞りの製造
10wt%の過塩素酸リチウム、79.9wt%の高分子Gの前駆体および0.1wt%のペルアゾビスイソブチロニトリルを混合し、上記イオン貯蔵層に塗布して、電解質コーティングを形成した。そして、上記エレクトロクロミック層85(ITO層およびガラス基板とともに)を電解質コーティングに被覆し、80℃で加熱硬化した後、エレクトロクロミック絞りを得た。
【0175】
上記エレクトロクロミック層85の3層の材料は、明るくなり始める時の電圧が内から外に向かって徐々に増大するが、暗くなり始める時の電圧も徐々に増大するものである。順方向電圧を印加する場合、絞りの内周が外周よりも明るくなる。内から外に向かった絞りの各領域が連続するため、絞りの明るくなる多段階調整を実現しながら、凹溝のエッチングによる光漏れまたは光不透過の問題を回避することができる。そのうち、暗くなる場合、2層の透明導電層を短絡するか、または絶対値が2Vよりも小さい逆方向電圧を印加するだけにより、3層の材料が同時に暗状態に回復することができ、暗くなる多段階調整はないが、絞りのニーズを満たすことができる。
【0176】
実施例4
【0177】
本実施例は、エレクトロクロミック絞りが該エレクトロクロミック絞りに対して多段階調整を行う方法を提供する。
【0178】
そのうち、エレクトロクロミック絞りは、順に積層された第1の透明基底、第1の透明導電層、イオン貯蔵層、イオン遷移層、エレクトロクロミック層、第2の透明導電層および第2の透明基底を含む。
【0179】
前記エレクトロクロミック絞りの材質が内から外に向かって同様であり、且つ前記エレクトロクロミック絞りに凹溝がない。
【0180】
多段階調整の方法は以下の通りである。本実施例に係るエレクトロクロミック絞りを用いて、その中心およびエッジに異なる電圧を印加することにより、中心の電圧がエッジの電圧よりも大きいことで、多段階調整を実現する。
【0181】
図9は、本実施例におけるエレクトロクロミック絞りに対して多段階調整を行う方法の模式図である(エレクトロクロミック層が上、イオン貯蔵層が下に位置する)。図9に示すように、中心の電圧が+2Vであり、エッジの電圧が-2Vであり、該電圧の作用下で、中心からエッジまでの電圧は、自発的、次第に変化して分布し、電圧が内から外に向かって徐々に低減する分布を形成する。中心およびエッジにおける電圧を変更することにより、絞りの異なる透過率の変化制御を実現することができる。絞りが内から外に向かって連続するため、絞りの多段階調整を実現しながら、凹溝のエッチングによる光漏れまたは光不透過の問題を回避することができる。
【0182】
実施例5-1
【0183】
本実施例は、厚さが変化するエレクトロクロミック層によって多段階調整を実現するエレクトロクロミック絞りを提供し、図10に示すように、順に積層された第1の透明基底101、第1の透明導電層102、イオン貯蔵層103、イオン遷移層104、エレクトロクロミック層105、第2の透明導電層106および第2の透明基底107を含む。
【0184】
そのうち、第2の透明導電層106においてエレクトロクロミック絞りの中心軸を中心とする環状凹溝が複数本エッチングされている。エレクトロクロミック層105およびイオン貯蔵層103の厚さは、内から外に向かって徐々に増大する(エッジと中心の厚さの比が1.1:1である)。
【0185】
本実施例に係るエレクトロクロミック絞りは、エレクトロクロミック層の厚さが内から外に向かって徐々に増大するため、絞りは、内から外に向かって異なる変色範囲を有する。エレクトロクロミック層の厚さが内から外に向かってそのまま維持する絞りに対して、本実施例に係るエレクトロクロミック絞りは、段階の数の相違がより大きな絞りの調節を実現し、複数種の撮影シーンのニーズを満たすことができる。
【0186】
製造方法:
【0187】
実施例1-1との相違点は、以下の通りである。エレクトロクロミック層の塗布が完了した後、エレクトロクロミック層をレーザーエッチングすることで、厚さが内から外に向かって徐々に増大させる。そして、第2の透明導電層においてエレクトロクロミック絞りの中心軸を中心とする環状凹溝を複数本エッチングする。イオン貯蔵層の塗布が完了した後、イオン貯蔵層をレーザーエッチングする(イオン遷移層の厚さがミクロンオーダーであり、エレクトロクロミック層およびイオン貯蔵層の厚さの変化がナノメートルオーダーであるため、実際に引き起こしたイオン遷移層の厚さの変化が無視可能である)ことで、厚さが内から外に向かって徐々に増大させる。
【0188】
実施例5-2
【0189】
本実施例は、厚さが変化するエレクトロクロミック層によって多段階調整を実現するエレクトロクロミック絞りを提供し、図11に示すように、順に積層された第1の透明基底111、第1の透明導電層112、イオン貯蔵層113、イオン遷移層114、エレクトロクロミック層115、第2の透明導電層116および第2の透明基底117を含む。
【0190】
そのうち、第2の透明導電層116においてエレクトロクロミック絞りの中心軸を中心とする環状凹溝が複数本エッチングされている。エレクトロクロミック層115の厚さは、内から外に向かって徐々に増大する(エッジと中心の厚さの比が1.1:1である)。
【0191】
本実施例に係るエレクトロクロミック絞りは、エレクトロクロミック層の厚さが内から外に向かって徐々に増大するため、絞りは、内から外に向かって異なる変色範囲を有する。エレクトロクロミック層の厚さが内から外に向かってそのまま維持する絞りに対して、本実施例に係るエレクトロクロミック絞りは、段階の数の相違がより大きな絞りの調節を実現し、複数種の撮影シーンのニーズを満たすことができる。
【0192】
製造方法:
【0193】
実施例1-1との相違点は、以下の通りである。エレクトロクロミック層の塗布が完了した後、エレクトロクロミック層をレーザーエッチングすることで、厚さが内から外に向かって徐々に増大させる。そして、第2の透明導電層においてエレクトロクロミック絞りの中心軸を中心とする環状凹溝を複数本エッチングする。(イオン遷移層の厚さはミクロンオーダーであり、エレクトロクロミック層の厚さの変化はナノメートルオーダーであるため、実際に引き起こしたイオン遷移層の厚さの変化は考慮しなくてもよい)。
【0194】
実施例6-1
【0195】
本実施例は、曲面エレクトロクロミック絞りおよび絞りレンズ組合せを提供する。
【0196】
そのうち、曲面エレクトロクロミック絞りの構造は、図12に示すように、順に積層された第1の透明基底121、第1の透明導電層122、イオン貯蔵層123、イオン遷移層124、エレクトロクロミック層125、第2の透明導電層126および第2の透明基底127を含む。
【0197】
該エレクトロクロミック絞りの曲率は、色消しレンズ組合せにおける凸レンズの表面の曲率と同様である。第2の透明導電層126においてエレクトロクロミック絞りの中心軸を中心とする環状凹溝が複数本エッチングされている。エレクトロクロミック層125の厚さは、内から外に向かって徐々に増大する。
【0198】
絞りレンズ組合せの構造は、図13に示すように、色消しレンズ組合せ、および本実施例に係る曲面エレクトロクロミック絞り132を含む。色消しレンズ組合せは、凸レンズ131および凹レンズ133を含み、曲面エレクトロクロミック絞り132は、OCA、LOCAなどの光学接着剤によって凸レンズ131の表面に貼着される。
【0199】
本実施例において、曲面エレクトロクロミック絞りの製造方法は以下の通りである。
【0200】
(1)エレクトロクロミック層125の製造
500mgのポリ(3-ドデシル)チオフェン(PDT)を10mLのo-キシレンに溶解させ、マグネチックスターラーで10h撹拌した後、得た溶液をPET基底第2の透明基底127)にメッキされたITO層(第2の透明導電層126)に滴下した。スピンコートによってPDTコーティング(エレクトロクロミック層125)を形成した。レーザでエレクトロクロミック層125をエッチングし、エッチング程度が内から外に向かって徐々に低減し、厚さが内から外に向かって徐々に増大するような構造を形成した。その後、エレクトロクロミック層125および第2の透明導電層126においてエレクトロクロミック絞りの中心軸を中心とする環状凹溝を9本レーザーエッチングした。
【0201】
(2)イオン貯蔵層123の製造
500mgの三酸化タングステンを20mLの脱イオン水に溶解させ、撹拌および濾過した後、得た溶液をPET(第1の透明基底121)にメッキされたITO層(第1の透明導電層122)に滴下した。スピンコートによって三酸化タングステンコーティングであるイオン貯蔵層123を形成した。
【0202】
(3)エレクトロクロミック絞りの製造
5wt%の過塩素酸リチウム、94.9wt%の高分子Gおよび0.1wt%のペルオキシネオデカン酸tert-ブチルを混合し、上記イオン貯蔵層13に塗布して、電解質コーティングを形成した。その後、上記エレクトロクロミック層125(ITO層およびガラス基板とともに)を電解質コーティングに被覆し、紫外線硬化で電解質コーティングが全固体高分子電解質(イオン遷移層124)を形成するようにして、エレクトロクロミック絞りを得た。
【0203】
(4)曲面エレクトロクロミック絞りの製造
凸レンズの表面に1層のOCAを貼着した後、エレクトロクロミック絞りをOCAに貼着し固定して、曲面エレクトロクロミック絞りを得た。
【0204】
本実施例に係るエレクトロクロミック絞りは、フレキシブルで屈曲可能である特徴を有するため、曲率が色消しレンズ組合せにおける凸レンズと同様である曲面構造として設計することができることで、レンズモジュールにおける絞りとレンズの合併を実現し、レンズモジュールを薄くすることができる。
【0205】
実施例6-2
【0206】
本実施例は、曲面エレクトロクロミック絞りおよび絞りレンズ組合せを提供する。
【0207】
そのうち、曲面エレクトロクロミック絞りは、曲率が色消しレンズ組合せにおける凹レンズの表面の曲率と同様である以外、実施例6-1と同様であり、製造方法は、ステップ(4)においてエレクトロクロミック絞りをOCAがある凹レンズの表面に貼着して、曲面エレクトロクロミック絞りを得る以外、実施例6-1と同様である。
【0208】
絞りレンズ組合せの構造は、図14に示すように、色消しレンズ組合せ、および本実施例に係る曲面エレクトロクロミック絞り142を含む。色消しレンズ組合せは、凸レンズ141および凹レンズ143を含む。曲面エレクトロクロミック絞り142は、OCA光学接着剤で凹レンズ143の表面に貼着される。
【0209】
本実施例に係るエレクトロクロミック絞りは、フレキシブルで屈曲可能である特徴を有するため、曲率が色消しレンズ組合せにおける凸レンズと同様である曲面構造として設計することができることで、レンズモジュールにおける絞りとレンズの合併を実現し、レンズモジュールを薄くすることができる。
【0210】
実施例6-3
【0211】
本実施例は、曲面エレクトロクロミック絞りおよび絞りレンズ組合せを提供する。
【0212】
そのうち、曲面エレクトロクロミック絞りは、形状が色消しレンズ組合せにおける凹レンズの形状と同様である以外、実施例6-1と同様である。
【0213】
絞りレンズ組合せの構造は、図15に示すように、色消し用の凸レンズ151と凹レンズ152の組合せ、およびホルダ153を含み、凹レンズ152がホルダ153に介在されている。凹レンズ152は、本実施例に係る曲面エレクトロクロミック絞りである。
【0214】
本実施例に係るエレクトロクロミック絞りは、フレキシブルで屈曲可能である特徴を有するため、形状が色消しレンズ組合せにおける凹レンズと同様であるように設計して、色消しレンズ組合せにおける凹レンズを代替することができることで、レンズモジュールにおける絞りとレンズの合併を実現し、レンズモジュールを薄くすることができる。
【0215】
実施例6-4
【0216】
本実施例は、曲面エレクトロクロミック絞りおよび絞りレンズ組合せを提供する。
【0217】
そのうち、曲面エレクトロクロミック絞りは、形状が色消しレンズ組合せにおける凸レンズの形状と同様である以外、実施例6-1と同様である。
【0218】
絞りレンズ組合せの構造は、図15に示すように、色消し用の凸レンズ162と凹レンズ163の組合せ、およびホルダ161を含み、凸レンズ162がホルダ161に挟んで設けられている。凸レンズ162は、本実施例に係る曲面エレクトロクロミック絞りである。
【0219】
本実施例に係るエレクトロクロミック絞りは、フレキシブルで屈曲可能である特徴を有するため、形状が色消しレンズ組合せにおける凸レンズと同様であるように設計して、色消しレンズ組合せにおける凸レンズを代替することができることで、レンズモジュールにおける絞りとレンズの合併を実現し、レンズモジュールを薄くすることができる。
【0220】
なお、本願の図面における電圧ドライバは、駆動電圧を提供するために用いられ、エレクトロクロミック絞りの動作原理を容易に説明するためのものに過ぎず、エレクトロクロミック絞りの構成部分であると理解されるべきではない。
【0221】
以上は、本願の具体的な実施形態にすぎないが、本願の保護範囲は、これに限定されるものではないことを出願人より声明する。当業者にとっては、本願に開示している技術範囲内において容易に想到できるあらゆる変化または置換は、いずれも本願の保護範囲および開示範囲内に含まれることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0222】
11…第1の透明基底、12…第1の透明導電層、13…イオン貯蔵層、14…イオン遷移層、15…エレクトロクロミック層、16…第2の透明導電層、17…第2の透明基底、21…第1の透明基底、22…第1の透明導電層、23…イオン貯蔵層、24…イオン遷移層、25…エレクトロクロミック層、26…第2の透明導電層、27…第2の透明基底、31…第1の透明基底、32…第1の透明導電層、33…イオン貯蔵層、34…イオン遷移層、35…エレクトロクロミック層、36…第2の透明導電層、37…第2の透明基底、41…第1の透明基底、42…第1の透明導電層、43…イオン貯蔵層、44…イオン遷移層、45…エレクトロクロミック層、46…第2の透明導電層、47…第2の透明基底、51…第1の透明基底、52…第1の透明導電層、53…イオン貯蔵層、54…イオン遷移層、55…エレクトロクロミック層、56…第2の透明導電層、57…第2の透明基底、61,62,63…透明基底、61-1,61-5,62-1,62-5…透明導電層、61-2,62-2…イオン貯蔵層、61-3,62-3…イオン遷移層、61-4,62-4…エレクトロクロミック層、71…第1の透明基底、72…第1の透明導電層、73…イオン貯蔵層、74…イオン遷移層、75…エレクトロクロミック層、76…第2の透明導電層、77…第2の透明基底、81…第1の透明基底、82…第1の透明導電層、83…イオン貯蔵層、84…イオン遷移層、85…エレクトロクロミック層、86…第2の透明導電層、87…第2の透明基底、101…第1の透明基底、102…第1の透明導電層、103…イオン貯蔵層、104…イオン遷移層、105…エレクトロクロミック層、106…第2の透明導電層、107…第2の透明基底、111…第1の透明基底、112…第1の透明導電層、113…イオン貯蔵層、114…イオン遷移層、115…エレクトロクロミック層、116…第2の透明導電層、117…第2の透明基底、121…第1の透明基底、122…第1の透明導電層、123…イオン貯蔵層、124…イオン遷移層、125…エレクトロクロミック層、126…第2の透明導電層、127…第2の透明基底、131…凸レンズ、132…実施例6-1に係る曲面エレクトロクロミック絞り、133…凹レンズ、141…凸レンズ、142…実施例6-2に係る曲面エレクトロクロミック絞り、143…凹レンズ、151…凸レンズ、152…実施例6-3に係る曲面エレクトロクロミック絞り、153…ホルダ、161…ホルダ、162…実施例6-4に係る曲面エレクトロクロミック絞り、163…凹レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16