(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020338
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】白斑を処置するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240206BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240206BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240206BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240206BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240206BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240206BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P17/00
A61K31/713
A61K39/395 N
A61K48/00
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023191609
(22)【出願日】2023-11-09
(62)【分割の表示】P 2020543895の分割
【原出願日】2019-02-15
(31)【優先権主張番号】18305161.4
(32)【優先日】2018-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(71)【出願人】
【識別番号】520306129
【氏名又は名称】サントル・オスピタリエ・ユニヴェルシテル・ドゥ・ニース
【氏名又は名称原語表記】CENTRE HOSPITALIER UNIVERSITAIRE DE NICE
(71)【出願人】
【識別番号】520100435
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・コート・ダジュール
【氏名又は名称原語表記】Universite Cote d’Azur
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】パスロン,ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】チュリ,メリ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】白斑を処置するための方法及び組成物を提供する。
【解決手段】CXCR3Bのアンタゴニストの治療的有効量を被験者に投与する工程を含む、それを必要とする被験者において白斑を処置するための方法による。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CXCR3Bのアンタゴニストの治療的有効量を被験者に投与する工程を含む、それを必要とする被験者において白斑を処置するための方法。
【請求項2】
CXCR3Bのアンタゴニストが有機小分子である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
CXCR3Bのアンタゴニストが抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
CXCR3B発現のアンタゴニストがsiRNAである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
i)試験化合物を提供すること、及びii)CXCR3Bの活性を阻害する前記試験化合物の能力を決定することを含む、ミトコンドリア遺伝性疾患の処置のために適切な薬物をスクリーニングする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
【0002】
本発明は皮膚科学の分野における。特に、本発明は、それを必要とする被験者において白斑を処置するための方法及び組成物に関する。
【0003】
発明の背景:
【0004】
白斑は、罹患した個人の生活の質の著しい変化を誘導する、皮膚の後天的な色素脱失である。この疾患は、主に皮膚において生じるメラノサイトの破壊により特徴付けられ、境界が明瞭な白色斑の出現をもたらす。2種類の白斑、即ち、身体の分節領域上の片側に位置づけられる分節白斑;及び全身性白斑があり、それは多かれ少なかれ左右対称の斑点を有し、長年にわたりますます重要になりうる。白斑におけるメラノサイトの破壊に導く病態生理学的機構は、主に自己免疫プロセスに関連する(Passeron T, Ortonne JP 2005;Spritz 2007)。
【0005】
白斑は一般的であり、一般集団の1%から2%に罹患する。白斑を伴う多くの患者について、疾患により起こされる外観の損傷は、患者らの生活の質に対して大きな影響を有する(Ongenae K et al. 2006)。疾患進行を止め、病変皮膚を再色素沈着させることは、白斑における治療上の課題の2つの面を表す。これまでに、それらのいずれも成功裏には対処されていない。遺伝的素因のある個人における酸化ストレス及び免疫系が、白斑の複雑な病態生理に関与する。現在、白斑の処置のために提案することができるいくつかの治療様式がある。処置、例えば狭帯域UVB(Nb-UVB)、エキシマライト、局所ステロイド、局所タクロリムス又はピメクロリムス、及び組み合わせ手法(光線療法及び局所ステロイド又はカルシニューリン阻害剤を用いる)などは、美容的に許容可能な再色素沈着(>75%)を提供することができる[Lepe, 2003;Ostovari, 2004;Passeron, 2004;Taieb, 2013, Dermatol Clin. 2017;35:163-170]。残念ながら、新たなメラノサイトの分化及び増殖における白斑皮膚からなる再色素沈着は、大半の場合において達成するのが困難なままである。一部の局在化(例えば手及び足など)は、現在の手法を用いて完全に再色素沈着させることはほとんど不可能である。また、異なる処置様式の有効性と、同じ処置に関する異なる試験の結果を比較することは依然として非常に困難である。なぜなら、(i)大半の公開された試験には対照がない;ならびに(ii)疾患の重症度及び処置への応答を評価するための一般的に受け入れられている生体認証ツールがない。最近、メラノサイト抗原に対する反応性T細胞を使用した動物モデルによって、白斑皮膚の色素脱失において潜在的に含まれる免疫反応に関する興味深いデータが提供されたが、しかし、このモデルは、白斑皮膚におけるメラノサイトの分化及び再色素沈着の機構を試験するように適応されていない[Mosenson, 2013][Rashighi, 2014]。
【0006】
限定された治療及び罹患した個人の生活の質に対する強い影響に照らして、白斑でのそれらの予防、減弱、又は処置を可能にする新たな治療標的を同定することについての明らかな必要性がある。
【0007】
発明の概要:
【0008】
本発明は、CXCR3Bのアンタゴニストの治療的有効量を被験者に投与する工程を含む、それを必要とする被験者において白斑を処置するための方法に関する。特に、本発明を特許請求の範囲により定義する。
【0009】
発明の詳細な説明:
【0010】
本発明者らは、白斑に苦しんでいる被験者から得られた皮膚サンプル及び血液サンプルにおいて、自然免疫系の集団(NK細胞及びILC1細胞)が増加していることを実証している。これらの細胞をストレス状態において培養する場合、それらはIFNγを産生し、それによって、CXCL産生、特にケラチノサイトによる、及び少ない程度でメラノサイトによるCXCL10産生が誘導される。CXCL10は、受容体としてCXCR3を有する。ヒトにおいて、CXCR3は3つのアイソフォームを有する。CXCR3Aは大半が免疫細胞上で発現され、その活性化によって分化及び増殖が誘導される。CXCR3Bは免疫細胞の表面でわずかにだけ発現され、その活性化によってアポトーシスが誘導される。初めて、本発明者らは、メラノサイトがCXCR3、特にCXCR3B(RNA発現及びタンパク質発現)を発現することを示している。彼らは、メラノサイト上でのCXCR3Bの発現がメラノサイトの最初の破壊に関与していることを示している。メラノサイトのこの最初のアポトーシスによって、残りのメラノサイトをさらに破壊する、メラノサイトに対する二次適応免疫が誘発される。本発明者らは、CXCR3BのsiRNAによって、CXCL10の存在においてメラノサイトのアポトーシスが阻害されることを初めて実証している。興味深いことに、CXCR3Bを特異的に標的化することは、汎CXCR3アンタゴニスト又は枯渇抗体もしくは遮断抗体と比較し、免疫細胞に影響を及ぼさず、このように、一般的な免疫応答を損なうことを伴わずにメラノサイトをアポトーシスから保護するという主な利点を有する。したがって、本発明者らは、白斑を予防及び処置するための新たな標的を見出している。
【0011】
本発明は、メラノサイトにより発現されるCXCR3のアンタゴニストの治療的有効量を被験者に投与する工程を含む、それを必要とする被験者において白斑を処置するための方法に関する。
【0012】
特に、本発明は、CXCR3Bのアンタゴニストの治療的有効量を被験者に投与する工程を含む、それを必要とする被験者において白斑を処置するための方法に関する。
【0013】
本明細書において使用するように、用語「処置する」又は「処置」は、予防的又は防止的処置ならびに治癒的又は疾患修飾処置(疾患に罹患するリスクのある被験者又は疾患に罹患していることが疑われる被験者、ならびに病気である又は疾患もしくは医学的状態に苦しんでいると診断されている被験者の処置を含む)の両方を指し、臨床的再発の抑制を含む。処置は、障害又は再発性障害の1つ又は複数の症状を予防する、治癒する、その発症を遅延する、その重症度を低下する、又は寛解するために、あるいは、そのような処置の非存在において予想されるものを超えて被験者の生存を延長するために、医学的障害を有する、又は最終的に障害を獲得しうる被験者に投与してもよい。「治療レジメン」により、病気の処置のパターン(例、治療の間に使用される投薬のパターン)を意味する。治療レジメンは、導入レジメン及び維持レジメンを含みうる。語句「導入レジメン」又は「導入期間」は、疾患の初期処置のために使用される治療レジメン(又は治療レジメンの一部)を指す。導入レジメンの一般的な目標は、処置レジメンの初期期間の間に高レベルの薬物を被験者に提供することである。導入レジメンは、(一部において又は全体において)「負荷レジメン」を用いてもよく、それは、医師が維持レジメンの間に用いうるよりも大きな用量の薬物を投与すること、医師が維持レジメンの間に薬物を投与しうるよりも頻繁に薬物を投与すること、又は両方を含みうる。語句「維持レジメン」又は「維持期間」は、例えば、被験者を寛解において長い期間(月又は年)にわたり保つために、病気の処置の間での被験者の維持のために使用される治療レジメン(又は治療レジメンの一部)を指す。維持レジメンは、継続的な治療(例、定期的な間隔、例、毎週、毎月、毎年などで薬物を投与すること)又は間欠的な治療(例、中断された処置、間欠的な処置、再発時の処置、又は特定の所定の基準[例、疼痛、疾患の発現など)の達成時での処置)を用いてもよい。
【0014】
本明細書において使用するように、用語「白斑」は、典型的には切片又は斑において皮膚の色素脱失を起こし、世界の人口の約1~2%に罹患する状態を指す。白斑は、皮膚において機能的なメラノサイト(メラニン産生細胞)の非存在がある場合に生じる。
【0015】
本明細書において使用するように、用語「被験者」は、任意の哺乳動物、例えばげっ歯類、ネコ、イヌ、及び霊長類などを指す。特に、本発明において、被験者は、白斑に罹患している又は罹患しやすいヒトである。
【0016】
本明細書において使用するように、用語「CXCR3」は、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)受容体3を指す。Gタンパク質共役受容体9(GPR9)、CD183、P-10受容体、及びMig受容体としても公知であるが、CXCR3は、様々な生理学的プロセス及び関連障害、例えば1型糖尿病(T1 D)などに関与している自己反応性T細胞上で発現されるケモカイン受容体である。CXCR3は、ナイーブT細胞にはほとんど存在しないが、しかし、抗原を用いた活性化時に上方制御され、活性化細胞を、その一次リガンド(CXCL9、CXCL10、及びCXCL11)に応答して炎症の部位に動員する。β細胞は、T1 Dのマウスモデルにおいて(Christen et al The Journal of Immunology, 2003, 171 : 8838-6845;Orimoto et al. J Immunol 2004; 173;7017-7024;Sarkar et al. Diabetes. 2012 Feb;81 (2):436-46);及び膵島炎を有するT1 D患者からの膵島において(Uno et al 2010;Roep et al Clinical and Experimental Immunology, 2003, 159: 338-343;Sarkar et al. Diabetes. 2012 Feb;61 (2):438-46)より低いレベルのCXCL9を伴い、主にCXCL10を発現することが示されている。また、膵臓に浸潤したT細胞は、T1 Dマウスモデル及び1型糖尿病患者の膵臓サンプルにおいてCXCR3を発現することが示されている(Christen et al, The Journal of Immunology, 2003, 171 : 8838-6845;Van Haiteren et al., Diabetologia 48:75-82 (2005);Uno et al 2010;Roep et al., Clinical and Experimental immunology, 2003, 159: 338-343;Sarkar et al., Diabetes. 2012 Feb;81 (2):436-46)。さらに、CXCR3において欠損したノックアウトマウスによって、疾患の発症における有意な遅延及びT1 Dの発生率における低下が実証されているが(Frigerio et al., Nature Medicine 8:1414-1420 (2002))、トランスジェニックマウスの膵島におけるCXCL10の過剰発現によって、T細胞浸潤が促進され、T1 Dの発症が加速される(Rhode et al., J. Immunol. 175(6): 3516-24 (2005))。CXCR3は、ヒトにおいて3つのアイソフォーム:CXCR3A、CXCR3B、及びCXCR3Altを有するが(Berchiche and Sakmar, 2016)、アイソフォームBはげっ歯類において存在しない。上に記載するように、アイソフォームCXCR3AはTリンパ球により発現され、適応免疫系において重要な役割を有する(Korniejewska et al., Immunology 2011)。CXCR3A活性化によって、分化及び増殖が誘導される。CXCR3Bは免疫細胞の表面でわずかだけ発現され、その活性化によってアポトーシスが誘導される。本発明の文脈において、本発明者らは、白斑の被験者から得られたメラノサイト上で発現されるCXCR3Bを標的化する。本明細書において使用するように、用語「アンタゴニスト」は、CXCR3Bの活性又は発現を阻害する生物学的効果を有する天然又は合成化合物を指す。CXCR3Bの活性又は発現の阻害によって、メラノサイトの破壊が阻害される。このように、そのようなアンタゴニストによって、白斑が予防及び処置される。特定の実施形態では、CXCR3Bのアンタゴニストは、ペプチド、ペプチド模倣物、有機小分子、抗体、アプタマー、siRNA、又はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0017】
特定の実施形態では、CXCR3Bのアンタゴニストは、ペプチド、ペプチド模倣物、有機小分子、抗体、アプタマー、siRNA、又はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。用語「ペプチド模倣物」は、ペプチドを模倣するように設計された小さなタンパク質様鎖を指す。特定の実施形態では、CXCR3Bのアンタゴニストはアプタマーである。アプタマーは、分子認識に関して抗体への代替物を表す分子のクラスである。アプタマーは、実質的に任意のクラスの標的分子を、高い親和性及び特異性を伴い認識する能力を伴うオリゴヌクレオチド配列又はオリゴペプチド配列である。
【0018】
特定の実施形態では、CXCR3Bのアンタゴニストは有機小分子である。用語「有機小分子」は、医薬品において一般的に使用される有機分子と同等のサイズの分子を指す。この用語は、生物学的高分子(例、タンパク質、核酸など)を除外する。好ましい有機小分子は、サイズにおいて約5000Daまで、より好ましくは2000Daまで、及び最も好ましくは約1000Daまでの範囲である。
【0019】
Calbiochemは、AS612568(CXCR3Bアンタゴニストとして作用するアリールスルホンアミド誘導体)を開発している(EMD 1205395、4-シアノ-N-(3-フルオロ-4-(1H-テトラゾール-5-イル)ベンジル)-N-(2-フルオロベンジル)ベンゼンスルホンアミド )。
【0020】
一実施形態では、CXCR3Bのアンタゴニストは、有機小分子AS612568である。
【0021】
一部の実施形態では、CXCR3Bのアンタゴニストは抗体である。本明細書において使用するように、用語「抗体」は、最も広い意味において使用され、具体的には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される多重特異性抗体(例、二重特異性抗体)、及び抗体フラグメント(それらが所望の生物学的活性を示す限り)を包含する。この用語は、抗原結合ドメイン、例えばFab’、Fab、F(ab’)2、単一ドメイン抗体(DAB)、TandAb二量体、Fv、scFv(単鎖Fv)、dsFv、ds-scFv、Fd、線形抗体、ミニボディ、ダイアボディ、二重特異性抗体フラグメント、バイボディ、トリボディ(scFv-Fab融合体、それぞれ二重特異性又は三重特異性);sc-ダイアボディ;カッパ(ラムダ)ボディ(scFv-CL融合体);BiTE(二重特異性T細胞Engager、T細胞を誘引するためのscFv-scFvタンデム);DVD-Ig(二重可変ドメイン抗体、二重特異性フォーマット);SIP(小さな免疫タンパク質、ミニボディの一種);SMIP(「小さなモジュラー免疫医薬品」scFv-Fc二量体);DART(ds安定化ダイアボディ「二重親和性再標的化」);1つ又は複数のCDRなどを含む小さな抗体模倣物などを含む抗体フラグメントを含む。種々の抗体ベースの構築物及びフラグメントを調製及び使用するための技術は、当技術分野において周知である(Kabat et al., 1991を参照のこと。参照により本明細書中に具体的に組み入れる。)。ダイアボディは特に、EP 404、097及びWO 93/1 1 161においてさらに記載されているのに対し;線形抗体はZapata et al. (1995)においてさらに記載されている。抗体を、従来の技術を使用してフラグメント化することができる。例えば、F(ab’)2フラグメントは、抗体を、ペプシンを用いて処理することにより生成することができる。結果として得られたF(ab’)2フラグメントを処理し、ジスルフィド架橋を還元し、Fab’フラグメントを産生することができる。パパイン消化によって、Fabフラグメントの形成に導くことができる。Fab、Fab’及びF(ab’)2、scFv、Fv、dsFv、Fd、dAb、TandAb、ds-scFv、二量体、ミニボディ、ダイアボディ、二重特異性抗体フラグメント、及び他のフラグメントはまた、組換え技術により合成することができ、又は化学的に合成することができる。抗体フラグメントを産生するための技術は周知であり、当技術分野において記載されている。例えば、Beckman et al., 2006;Holliger & Hudson, 2005;Le Gall et al., 2004;Reff & Heard, 2001;Reiter et al., 1996;及びYoung et al., 1995の各々が、有効な抗体フラグメントの産生をさらに記載し、可能にする。一部の実施形態では、抗体は、米国特許第4,816,567号において記載されているような「キメラ」抗体である。一部の実施形態では、抗体は、米国特許第6,982,321号及び第7,087,409号において記載されているようなヒト化抗体である。一部の実施形態では、抗体はヒト抗体である。US 6,075,181及び6,150,584において記載されているような「ヒト抗体」。一部の実施形態では、抗体は、EP 0 368 684、WO 06/030220、及びWO 06/003388において記載されているような単一ドメイン抗体である。特定の実施形態では、阻害剤はモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、培養中での連続細胞株による抗体分子の産生を提供する任意の技術を使用して調製及び単離することができる。産生及び単離のための技術は、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、及びEBVハイブリドーマ技術を含むが、これらに限定しない。特定の実施形態では、抗体は、CXCR3のアイソフォームBに特異的である。一部の実施形態では、抗体は単一ドメイン抗体である。用語「単一ドメイン抗体」(sdAb)又は「VHH」は、軽鎖を天然に欠くラクダ科の哺乳動物において見出すことができる型の抗体の単一重鎖可変ドメインを指す。そのようなVHHはまた、「ナノボディ(登録商標)」と呼ぶ。本発明によれば、sdAbは特にラマsdAbでありうる。Sanofi-Genzymeは遮断及び枯渇抗体SAR440241を開発している。R&D Systemsは遮断抗体MAB-160を開発している。これらの抗体は、CXCR3A及びCXCR3Bの両方を標的化する。この種類の抗体は、大半が免疫細胞に、著しくは免疫適応系に影響を及ぼし、メラノサイトには及ぼさない。
【0022】
一実施形態では、CXCR3Bのアンタゴニストは抗体MAB-160である。
【0023】
一部の実施形態では、CXCR3Bのアンタゴニストは、CXCR3Bの発現を阻害するショートヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、又はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。特定の実施形態では、CXCR3B発現のアンタゴニストはsiRNAである。ショートヘアピンRNA(shRNA)は、RNA干渉を介して遺伝子発現を抑制するために使用することができる、堅固なヘアピンターンを作るRNAの配列である。shRNAは一般的に、細胞中に導入されたベクターを使用して発現され、それにおいて、ベクターはU6プロモーターを利用して、shRNAが常に発現されることを確実にする。このベクターは通常娘細胞に伝えられ、遺伝子サイレンシングが受け継がれることを可能にする。shRNAヘアピン構造は、細胞機構によりsiRNAに切断されて、それは次に、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に結合する。この複合体は、それが結合しているsiRNAと一致するmRNAに結合して切断する。低分子干渉RNA(siRNA)は、時折、低分子干渉RNA又はサイレンシングRNAとしても公知であり、生物学において多様な役割を果たす20~25ヌクレオチド長の二本鎖RNA分子のクラスである。最も著しくは、siRNAがRNA干渉(RNAi)経路中に含まれ、それによりsiRNAが特定の遺伝子の発現に干渉する。アンチセンスオリゴヌクレオチドはアンチセンスRNA分子及びアンチセンスDNA分子を含み、それに結合することにより標的mRNAの翻訳を直接的に遮断し、このように、タンパク質の翻訳を防止し、又はmRNA分解を増加させ、このように、細胞中での標的タンパク質のレベル、及び、このように、活性を減少させる。例えば、少なくとも約15塩基の、mRNA転写物配列の固有の領域に相補的であるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、従来のホスホジエステル技術により合成することができる。配列が公知である遺伝子の遺伝子発現を特異的に阻害するためのアンチセンス技術を使用するための方法は、当技術分野において周知である(例、米国特許第6,566,135号;第6,566,131号;第6,365,354号;第6,410,323号;第6,107,091号;第6,046,321号;及び第5,981,732号を参照のこと)。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNAは、インビボで単独で、又はベクターとの関連において送達してもよい。その最も広い意味において、「ベクター」は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、又はリボザイム核酸の、細胞及び典型的にはマスト細胞への移行を促すことが可能な任意の媒体である。典型的には、ベクターによって、ベクターの非存在をもたらしうる分解の程度と比べて、低下した分解を伴う細胞に核酸が輸送される。一般的に、本発明において有用なベクターは、プラスミド、ファージミド、ウイルス、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、又はリボザイム核酸配列の挿入又は組み入れにより操作されたウイルス又は細菌の供給源から由来する他の媒体を含むが、これらに限定しない。ウイルスベクターは好ましい型のベクターであり、以下のウイルスからの核酸配列を含むが、これらに限定しない:レトロウイルス、例えばモロニーマウス白血病ウイルス、ハーベイマウス肉腫ウイルス、マウス乳房腫瘍ウイルス、及びラウス肉腫ウイルス;アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス;SV40型ウイルス;ポリオーマウイルス;エプスタインバーウイルス;パピローマウイルス;ヘルペスウイルス;ワクシニアウイルス;ポリオウイルス;及び RNAウイルス(例えばレトロウイルスなど)。命名されていないが、しかし、当技術分野において公知の他のベクターを容易に用いることができる。
【0024】
一部の実施形態では、CXCR3Bのアンタゴニストはエンドヌクレアーゼである。過去数年において、配列決定技術における驚異的な進歩によって、癌における複数の遺伝的異常のこれまでにないほど詳細な概要が提供されている。新たな潜在的な癌遺伝子及び腫瘍抑制遺伝子のリストを大幅に拡大することにより、これらの新たなデータによって、これらの遺伝子の正常及び病理学的な機能を特徴付け、特に発癌の間での駆動因子としてのそれらの役割を評価するための高速で信頼できる戦略の必要性が強く強調されている。より従来の手法、例えばcDNA過剰発現又はRNA干渉による下方制御などへの代替物として、新たな技術によって、ゲノムの直接的な操作を通じて、癌において観察された実際の変異を再現するための手段が提供される。実際に、天然及び操作ヌクレアーゼ酵素は、近年においてかなりの注目を集めてきた。エンドヌクレアーゼベースのゲノム不活性化の背後にある機構は、一般的には、DNA一本鎖又は二本鎖切断の最初の工程を要求し、それによって次に、DNA修復のための2つの異なる細胞機構を誘発することができ、それは、DNA不活性化のために利用することができる:エラープローン非相同末端結合(NHEJ)及び高忠実度相同性指向修復(HDR)。
【0025】
特定の実施形態では、エンドヌクレアーゼはCRISPR-casである。本明細書において使用するように、用語「CRISPR-cas」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、塩基配列の短い反復を含む原核生物DNAのセグメントである、関連付けられるクラスター化した規則的に間隔のあいた短いパリンドローム反復を指す。
【0026】
一部の実施形態では、エンドヌクレアーゼは、化膿性連鎖球菌からであるCRISPR-cas9である。CRISPR/Cas9系は、US 8697359 B1及びUS 2014/0068797において記載されている。本来は原核生物における適応免疫系(Barrangou and Marraffini, 2014)であったが、CRISPRは近年、ゲノム編集用の新たな強力なツールに操作されている。それは、多くの細胞株及び生物[ヒト(Mali et al., 2013, Science, Vol. 339 : 823-826)、細菌(Fabre et al., 2014, PLoS Negl. Trop. Dis., Vol. 8:e2671.)、ゼブラフィッシュ(Hwang et al., 2013, PLoS One, Vol. 8:e68708.)、線虫(Hai et al., 2014 Cell Res. doi: 10.1038/cr.2014.11.)、細菌(Fabre et al., 2014, PLoS Negl. Trop. Dis., Vol. 8:e2671.)、植物(Mali et al., 2013, Science, Vol. 339 : 823-826)、ゼノパス・トロピカリス(Guo et al., 2014, Development, Vol. 141 : 707-714.)、酵母(DiCarlo et al., 2013, Nucleic Acids Res., Vol. 41 : 4336-4343.)、ショウジョウバエ(Gratz et al., 2014 Genetics, doi:10.1534/genetics.113.160713)、サル(Niu et al., 2014, Cell, Vol. 156 : 836-843.)、ウサギ(Yang et al., 2014, J. Mol. Cell Biol., Vol. 6 : 97-99.)、ブタ(Hai et al., 2014, Cell Res. doi: 10.1038/cr.2014.11.)、ラット(Ma et al., 2014, Cell Res., Vol. 24 : 122-125.)、及びマウス(Mashiko et al., 2014, Dev. Growth Differ. Vol. 56 : 122-129.)を含む]において重要な遺伝子を標的化するために既に成功裏に使用されてきた。いくつかのグループが現在、この方法を利用して、単一のgRNAを介して、特定の標的遺伝子において単一の点変異(欠失又は挿入)を導入している。代わりにgRNA指向Cas9ヌクレアーゼの対を使用し、大きな欠失又はゲノム再構成(例えば逆位又は転座など)を誘導することも可能である。最近の興奮させる開発は、特定のゲノム遺伝子座の転写制御、エピジェネティック修飾、及び顕微鏡による視覚化のためにタンパク質ドメインを標的化するための、CRISPR/Cas9系のdCas9バージョンの使用である。
【0027】
一部の実施形態では、エンドヌクレアーゼは、Zetsche et al.(“Cpf1 is a Single RNA-guided Endonuclease of a Class 2 CRISPR-Cas System (2015); Cell; 163, 1-13)におけるプロボテラ及びフランシセラ1(Cpf1)からのより最近に特徴付けられたCRISPRである、CRISPR-Cpf1である。
【0028】
本明細書において使用するように、用語「投与する」又は「投与」は、例えば粘膜、皮内、静脈内、皮下、筋肉内送達及び/又は本明細書において記載する、もしくは当技術分野において公知である物理的送達の任意の他の方法などにより、物質を、それが体外に存在するため(例、CXCR3Bのアンタゴニスト)、被験者中に注射する又は他の方法で物理的に送達する行為を指す。疾患、又はその症状が処置されている場合、物質の投与は、典型的には、疾患又はその症状の発症後に生じる。疾患又はその症状が予防されている場合、物質の投与は、典型的には、疾患又はその症状の発症前に生じる。特定の実施形態では、CXCR3Bのアンタゴニストを局所的に投与する。
【0029】
「治療的有効量」は、被験者に治療的利益を与えるために必要である活性薬剤の最小量について意図する。例えば、被験者への「治療的有効量」は、障害に屈することに関連付けられる病理学的症状、疾患進行、又は生理学的状態における改善、又はそれへの耐性を誘導させる、寛解させる、又は他の方法で起こす、そのような量である。本発明の化合物の1日の総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医により決定されうることが理解されるであろう。任意の特定の被験者についての特定の治療的に有効な用量レベルは、多様な因子(処置されている障害及び障害の重症度;用いられた特定の化合物の活性;用いられた特定の組成物、被験者の年齢、体重、全身的な健康、性別、及び食事;投与の時間、投与の経路、及び用いられた特定の化合物の排泄の速度;処置の期間;用いられた特定の化合物との組み合わせにおいて又はそれと同時に使用される薬物;ならびに医学技術分野において周知である同様の因子を含む)に依存しうる。例えば、所望の治療効果を達成するために要求されるレベルよりも低いレベルで化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることは、十分に当技術分野の範囲内である。しかし、産物の1日投与量は、成人1人当たり0.01から1,000mg/日の広い範囲にわたり変動しうる。典型的には、組成物は、処置される被験者への投与量の症候性の調整のために、0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、250、及び500mgの活性成分を含む。医薬品は、典型的には、約0.01mgから約500mgの活性成分、好ましくは1mgから約100mgの活性成分を含む。薬物の有効量は通常、0.0002mg/kgから約20mg/kg体重/日、特に約0.001mg/kgから7mg/kg体重/日の用量レベルで供給される。
【0030】
上に記載するCXCR3Bのアンタゴニストは、医薬的に許容可能な賦形剤、及び、場合により、徐放性マトリックス(例えば生分解性ポリマーなど)と組み合わせて、医薬組成物を形成しうる。「医薬的に」又は「医薬的に許容可能な」は、哺乳動物、特にヒトに適宜投与した場合に有害な、アレルギー性の、又は他の都合悪い反応を産生しない分子実体及び組成物を指す。医薬的に許容可能な担体又は賦形剤は、非毒性の固体、半固体、又は液体の充填剤、希釈剤、封入材料、又は任意の型の製剤補助剤を指す。経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、局所、又は直腸投与のための本発明の医薬組成物、有効成分(単独で又は別の有効成分との組み合わせにおいて)は、従来の医薬支持体との混合物として、動物及びヒトに単位投与形態において投与することができる。適切な単位投与形態は、経口経路形態(例えば錠剤、ゲルカプセル、粉末、顆粒、及び経口懸濁液又は溶液など)、舌下及びバッカル投与形態、エアロゾル、インプラント、皮下、経皮、局所、腹腔内、筋肉内、静脈内、皮下、経皮、くも膜下腔内及び鼻腔内投与形態、ならびに直腸投与形態を含む。典型的には、医薬組成物は、注射することが可能な製剤について医薬的に許容可能である媒体を含む。これらは、特に等張性の無菌生理食塩水(リン酸一ナトリウム又はリン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、もしくは塩化マグネシウムなど、又はそのような塩の混合物)、又は、場合に依存して、滅菌水もしくは生理食塩水の添加時に注射可能な溶液の構成を可能にする乾燥、特に凍結乾燥組成物でありうる。注射可能な使用のために適切な医薬形態は、滅菌水溶液又は分散液;ゴマ油、ピーナッツ油、又は水性プロピレングリコールを含む製剤;及び無菌注射溶液又は分散液の即時調製用の無菌粉末を含む。全ての場合において、形態は無菌でなければならず、簡単なシリンジ注入が存在する程度まで流動的でなければならない。それは、製造及び保存の条件下で安定でなければならず、微生物(例えば細菌及び真菌など)の汚染作用に対して保護されなければならない。遊離塩基又は薬理学的に許容可能な塩として本発明の化合物を含む溶液は、界面活性剤(例えばヒドロキシプロピルセルロースなど)と適切に混合された水中で調製することができる。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物中、ならびに油中で調製することができる。通常の保存及び使用の条件下では、これらの調製物は、微生物の成長を阻害するための防腐剤を含む。ポリペプチド(又はそれをコードする核酸)は、中性又は塩の形態において組成物に製剤化することができる。医薬的に許容可能な塩は、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基を伴い形成される)を含み、それは、無機酸(例えば、塩酸又はリン酸など)、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸を伴い形成される。遊離カルボキシル基を伴い形成される塩はまた、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、又は水酸化第二鉄など)、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から誘導することができる。担体はまた、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、及び植物油を含む溶媒又は分散媒であることができる。適した流動性は、例えば、コーティング(例えばレシチンなど)の使用により、分散液の場合において要求される粒子サイズの維持により、及び界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の阻害は、種々の抗菌薬剤及び抗真菌薬剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによりもたらすことができる。多くの場合において、等張薬剤、例えば、糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射可能な組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤の組成物(例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン)における使用によりもたらすことができる。無菌の注射可能溶液は、要求される量の活性ポリペプチドを、上に列挙する他の成分のいくつかを伴う適当な溶媒中に組み入れ、必要に応じて、その後の濾過滅菌により調製する。一般的に、分散液は、種々の滅菌された有効成分を、基本的な分散媒及び上に列挙するものからの、要求される他の成分を含む滅菌溶媒中に組み入れることにより調製する。無菌の注射可能溶液の調製用の無菌粉末の場合において、好ましい調製方法は、活性成分の粉末に加えて、以前に無菌濾過したその溶液からの任意の追加の所望の成分の粉末を生じる真空乾燥技術及び凍結乾燥技術である。製剤時に、溶液は、投与製剤に適合する様式において、治療的に有効であるような量において投与されうる。製剤は、多様な投与形態(例えば上に記載する注射可能溶液の型など)において簡単に投与されるが、しかし、薬物放出カプセルなども用いることができる。水溶液中での非経口投与のために、例えば、溶液を必要な場合に適切に緩衝化すべきであり、液体希釈剤を最初に、十分な生理食塩水又はグルコースを用いて等張にする。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、及び腹腔内投与のために特に適切である。これに関連して、用いることができる滅菌水性培地は、本開示に照らして当業者に公知であろう。例えば、1つの投与量を1mlの等張NaCl溶液中に溶解し、1000mlの皮下注射液に加えるか、又は提案された注入の部位に注射する。投与量における一部の変動が、処置されている被験者の状態に依存して、必然的に生じるであろう。投与について責任のある者は、任意の事象において、個々の被験者について適当な用量を決定するであろう。
【0031】
一実施形態では、CXCR3Bのアンタゴニストは、白斑の古典的な処置との組み合わせにおいて投与する。
【0032】
本明細書において使用するように、用語「古典的な処置」は、白斑の処置のために使用される任意の化合物(天然又は合成)及び光線療法を指す。
【0033】
特定の実施形態では、古典的な処置は、光線療法、例えば狭帯域UVB(Nb-UVB)、PUVA、エキシマレーザー又はランプ、及び局所処置などを指す。
【0034】
本発明によれば、白斑の処置のために使用される化合物は、局所コルチコステロイド(例えばプロピオン酸クロベタゾール、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、プレドニゾロン、又は酪酸ヒドロコルチゾンなど)、局所カルシニューリン阻害剤(例えばタクロリムス又はピメクロリムスなど)、局所JAK阻害剤、局所WNTアゴニスト、局所GSK3b阻害剤、フェニルアラニン、ソラレン(例えばオキソラレン又はトリソラレンなど)、及びビタミンD類似体(例えばカルシポトリオール又はタカルシトールなど)からなる群より選択してもよい。
【0035】
本明細書において使用するように、用語「GSK3b阻害剤」は、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3βの活性を阻害する際に有効である化学的化合物を指す。GSK3b阻害剤の例は、ヒメニアルジシン、ジブロモカンタレリン、デブロモヒメニアルジシン、チアジアゾリジン、チアゾール、ハロメチルケトン、アミノピリミジン、アリールインドールマレイミド、金属カチオン(例えばベリリウム、塩化リチウム、銅、亜鉛など)、インジルビン、マンザミン、メリジアニン、トリカントリン、及びパリヌリンを含む。
【0036】
本明細書において使用するように、用語「WNTアゴニスト」は、WNTシグナル伝達経路を活性化する際に有効である化学的化合物を指す。
【0037】
本明細書において使用するように、用語「JAK阻害剤」は、1つ又は複数のヤヌスキナーゼ酵素(JAK1、JAK2、JAK3、及びTYK2)の活性を阻害する際に有効である化学的化合物を指す。JAK阻害剤の例は、トファシチニブ、ルキソリチニブ、オクラシチニブ、バリシチニブ、フィルゴチニブ、セルドゥラチニブ、ガンドチニブ、レスタウルチニブ、モメロチニブ、パクリチニブ、ウパダシチニブ、ペフィシチニブ、フェドラチニブ、ククルビタシンIを含む。
【0038】
本発明のさらなる目的は、i)試験化合物を提供すること、及びii)CXCR3Bの活性を阻害する前記試験化合物の能力を決定することを含む、ミトコンドリア遺伝性疾患の処置のために適切な薬物をスクリーニングする方法に関する。
【0039】
当技術分野において周知の任意の生物学的アッセイは、CXCR3Bの活性を阻害する試験化合物の能力を決定するために適切でありうる。一部の実施形態では、アッセイは最初に、CXCR3Bに結合する試験化合物の能力を決定することを含む。一部の実施形態では、細胞の集団を次に接触させ、活性化して、CXCR3Bの活性を阻害する試験化合物の能力を決定する。特に、試験化合物により誘発される効果は、試験化合物の非存在において又は対照薬剤の存在において(それらのいずれかが陰性対照条件に類似している)、並列してインキュベートされた免疫細胞の集団の効果と比べて決定する。本明細書において使用する用語「対照物質」、「対照薬剤」、又は「対照化合物」は、不活性である、又は生物学的活性もしくは発現を調節する能力に関連する活性を有さない分子を指す。CXCR3Bの活性を阻害することが可能な試験化合物は、本明細書において記載するインビトロ方法を使用して決定されるように、インビボでの適用において類似の調節能力を示す可能性が高いと理解すべきである。典型的には、試験化合物は、ペプチド、ペプチド模倣物、有機小分子、アプタマー、又は核酸からなる群より選択される。例えば、本発明に従った試験化合物は、以前に合成された化合物のライブラリー、又は構造がデータベースにおいて決定されている化合物のライブラリーより、又は新たに合成された化合物のライブラリーより選択しうる。一部の実施形態では、試験化合物は、有機小分子より選択しうる。
【0040】
本発明を、以下の図及び実施例によりさらに例証する。しかし、これらの実施例及び図は、本発明の範囲を限定するものとして任意の方法において解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図:
【
図1】
図1.ヒトメラノサイトにおけるCXCR3Bの発現。24時間にわたるIFNγ(50ng/ml)への曝露前後の健常な及び白斑のメラノサイト(n=8)ならびに健常なケラチノサイト(n=5)における全CXCR3 mRNA(黒色バー+白色バー)及びCXCR3B mRNA(黒色バー)(A)。結果を、健常な対照患者からの無刺激のメラノサイトに対して標準化し、SEMを伴う平均値として表す。(B)刺激前後の健常な対照(白色丸、n=6~7)及び白斑患者(黒色丸、n=7)の皮膚におけるCXCR3B+細胞の半定量化。無刺激の対照に対する
*P<0.05、
**P<0.01、及び
***P<0.001。
【
図2】
図2:CXCL10誘導性のメラノサイトの死は、CXCR3Bを通じて駆動され、アポトーシスを誘導する。(A)CXCR3アンタゴニストAS612568(0.02μM、0.2μM、又は2μM)の存在又は非存在における白斑患者からの無刺激又はIFNγ刺激(48時間にわたる50ng/ml)メラノサイトにおける細胞生存率に対するCXCL10(5、20、100pg/ml)の効果(n=5~8)。細胞生存率を、IncuCyte(登録商標)生細胞蛍光イメージングシステムを使用してモニターした。(B)健常なメラノサイト(n=4~8)及び白斑のメラノサイト(n=4)のCXCL10(100pg/ml)誘導性の死に対するsiCXCR3又はsiCの効果。メラノサイトを、CellTracker(商標)Red CMPTX色素を用いて追跡し、死細胞を、IncuCyte(登録商標)Cytotox Green試薬を用いて追跡した。(C)健常な及び白斑のメラノサイト(n=6~12)を、注文設計のsiCXCR3B又はsiCを用いてトランスフェクトし、メラノサイト死を、CXCL10、CXCL9、又はCXCL11(100pg/ml)刺激後の24時間目に示した。(D)CXCR3遮断抗体(MAB-160、R&D Systems、米国、1又は10μg/ml)の存在又は非存在における、白斑患者からの未処理又はIFNγ前処理(48時間にわたる50ng/ml)メラノサイトにおける細胞生存率に対するCXCL10(100pg/ml)の効果(n=3)。細胞生存率を、IncuCyte(登録商標)生細胞蛍光イメージングシステムを使用してモニターした。メラノサイトを、CellTracker(商標)Red CMPTX色素を用いて追跡し、死細胞を、IncuCyte(登録商標)Cytotox Green試薬を用いて追跡した。結果を、SEMを伴う平均値として表す(
*P<0.05、
**P<0.01、及び
***P<0.001)。
【
図3】
図3:T細胞によって、適応免疫の誘導により、CXCL10誘導性メラノサイト死が増強される。(A)患者自身の自己T細胞の存在又は非存在における白斑メラノサイトのCXCL10誘導性の死。上記のように、IFNγで前処理したメラノサイトを、CXCR3アンタゴニストAS612568(2μM)の存在又は非存在においてCXCL10に曝露した。翌日、培地を交換し、3日後に患者自身のCD3+ T細胞を選別し、IncuCyteの開始の前にメラノサイト(n=3)に加えた。(B)IFNgで前処理したメラノサイトにおけるメラノサイト死のT細胞誘導性増強(未処理のメラノサイトと比較)は、同じサイトスピン切片におけるKi67+細胞の発現増加により裏付けられる、CD3+ T細胞の数における並列増加に関連付けられた。
【0042】
実施例:
【0043】
材料及び方法
【0044】
ヒトメラノサイト上でのCXCR3Bの検出
【0045】
健常な及び白斑の被験者からのメラノサイトを、50ng/mlのIFNγを用いて24時間にわたり刺激し、細胞ペレットをRNA抽出用に採取した。リアルタイムqPCRを、CXCR3全体に対して又はCXCR3Bに対して向けられた特定のプライマーを使用して実施し、結果をハウスキーピング遺伝子に対して標準化した。mRNAレベルを、IFNγを用いて刺激した、又はしていない健常なヒトケラチノサイトと比較した。別の実験では、メラノサイトを12ウェルプレート中のカバースライド上で成長させ、上記のようにIFNγを用いて刺激した。24時間後、それらを、1%パラホルムアルデヒドを用いてRTで固定し、3%ヤギ血清を含むPBS 3%BSA中で1時間にわたり飽和させ、CXCR3Bに対して向けられた一次抗体(1:200)(Proteintech、USA)を用いて4℃で一晩インキュベートした。翌日、スライドを、二次抗体(ヤギ抗マウスAF594、RTで1:1000)を用いた1時間にわたるインキュベーションの前に、PBS 3%BSA 0.1% Tween20を用いて3回洗浄し、DAPI(Thermofisher)を伴うProlong Gold Antifade試薬を用いてマウントした。CXCR3B+免疫反応性細胞(赤色)の数を、10の重複しない視野にわたりカウントし、mm2当たりの免疫蛍光として表した。ヒト皮膚におけるCXCR3B+メラノサイトのin situ検出のために、OCT凍結切片を、PBS 5%BSA 10%正常ヤギ血清及び0.05% Triton(商標)X-100を用いたRTで2時間にわたる飽和の前に、PBS 0.3% Triton(商標)X-100(Abcam、フランス)を用いて10分間にわたり透過処理した。スライドを次に、スライドをマウントして共焦点顕微鏡(60×対物レンズを使用したNikon A1R)下で視覚化する前に、一次抗体(ポリクローナル抗MITF、1:50、Sigma Aldrich及びモノクローナル抗CXCR3B、1:50、Proteintech)を用いて4℃で一晩、及び、翌日は、二次抗体(抗マウスAF594及び抗 ウサギAF488、両方とも1:1000)を用いて1時間インキュベートした。各々のスライド(群当たり5名の被験者)について、MITF+CXCR3B+細胞(黄色の免疫染色)の数をカウントし、6つの重複しない視野にわたり平均化した。メラノサイトにおけるCXCR3B染色を、別のメラノサイトマーカーgp100(PMEL、プレメラノソームタンパク質、1:200、Abcam)を使用して確認した。
【0046】
メラノサイトの生存及び増殖のライブイメージング
【0047】
メラノサイトを96ウェルプレート(10,000/ウェル)中に播種し、optiMEM培地(Invitrogen)中のLipofectamine(登録商標)RNAiMAX試薬(Invitrogen、フランス)を使用した50又は80nMのsiCXCR3又はsiC(SmartPoolスクランブル配列siRNA、Dharmacon、フランス)あるいは80nM注文設計siCXCR3B又はsiC(ThermoFisher、フランス)を用いたトランスフェクションの前に、50ng/mlのIFNγを用いて48時間にわたり刺激した。翌日、培地を交換し、メラノサイトを、メラノサイトへの100pg/mlの組換えヒトCXCL9、CXCL10、又はCXCL11(PeproTech)の添加前に、CellTracker(登録商標)Red CMPTX色素を用いて20分間にわたり37℃で染色した(1μM、Molecular Probes、USA)。最後に、Incucyte(登録商標)グリーンCytotox試薬(100nM、Essen Bioscience、米国ミシガン)を全てのウェルに加え、メラノサイト死を、IncuCyte(登録商標)Zoom生細胞イメージングシステム(Essen Biosciences)(その内部が、2時間毎にプレートをスキャンする37℃の加湿CO2インキュベーターである)を使用してリアルタイムにおいてモニターした。複数の画像をウェル毎に収集し、死んだメラノサイト(黄色の共局在細胞)の定量化を、統合Zoom(登録商標)ソフトウェアを使用して分析した。別の実験では、非トランスフェクト細胞を、IFNγを用いてプレインキュベートし、48時間後にCXCR3アンタゴニストAS612568(0.02、0.2、2μM、Calbiochem、中国)を用いて処理し、Cytotox(登録商標)試薬をライブイメージングの直前に加えた。他の別の実験では、非トランスフェクト細胞を、IFNγを用いてプレインキュベートし、48時間後にCXCR3遮断抗体MAB-160(1又は10μg/ml、R&D Systems、USA)を用いて処理し、Cytotox(登録商標)試薬をライブイメージングの直前に加えた。インビボの状況を模倣するために、白斑メラノサイトを、IFNγを用いて刺激し(それらのCD40及びCXCR3B発現を上方制御するため)、48時間後にCXCL10(100pg/ml)を用いて刺激した。翌日、上清を除去し、新鮮な培地を用いて交換した。別の実験では、CXCL10刺激の24時間後、全ての培地を交換し、メラノサイトを、IncuCyteライブイメージングの前に同種PBMC(陽性対照実験)又は自家非刺激及び選別CD3+ T細胞(1×106個/ml)のいずれかを加える前に、さらに72時間にわたり培養中に放置した。実験の終了時(約40時間後)、残りのメラノサイトをトリプシン処理し、メラノサイト上の同時刺激細胞マーカー(CD40、HLA-DR、CD80)及び接着細胞マーカー(ICAM-1)、ならびに増殖中のT細胞(CD3+及びKi67+)を、サイトスピン切片の免疫蛍光染色により検証した。ヒトCD40(G28.5、1:100)、HLA-DR(TU36、1:200)、CD80(L307.4、1:50)、及びICAM-1(HA58、1:400)に対して向けられたモノクローナル抗体を、BD Biosciences(米国カリフォルニア州サンディエゴ)から購入した。Ki67ウサギモノクローナル抗体(SP6、1:200)を、Abcam(英国ケンブリッジ)から購入した。IncuCyte中のCD3+ T細胞の数を、マクロを使用したFijiソフトウェアを用いて、タイムラプス画像からカウントし、それにより、中央値フィルターを、「Find Maxima」機能の適用の前に最初に適用し、画像中の全ての非染色ダークスポットを同定及びカウントした。増殖の定量化を、フローサイトメトリー及びCellTrace CFSE細胞増殖キット(Thermo Fisher Scientific、フランス、イルキルシュ)を使用して実施した。簡単には、1×106個細胞を、96ウェルプレート中の5μMのCFSEを用いて標識し、72時間後に細胞を収集し、APCに結合した抗CD3(BD Biosciences、1:100)を用いて染色し、蛍光を、MACSQuantアナライザー(Miltenyi、フランス、パリ)を用いて測定した。時間0での標識細胞を陰性参照として使用し、非刺激細胞を、対照として標識前に72時間にわたり培養中に放置し、細胞を、陽性対照として、PHA(フィトヘマグルチニン、5μg/ml)を用いて72時間にわたり刺激した。
【0048】
健常な及び白斑のメラノサイトにおけるCXCL10誘導性シグナル伝達。
【0049】
IFNγ(50ng/ml)を用いて前刺激し、CXCL9、CXCL10、又はCXCL11(100pg/ml)を用いて24又は48時間にわたりインキュベートした初代メラノサイトからのタンパク質サンプルを、50mmol/L Tris-HCL(pH 7.5)、15mmol/L NaCl、1% Triton X-100、ならびに1×プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤を含む緩衝液中で抽出した。細胞溶解物(30mg)をSDS-ポリアクリルアミドゲル上で泳動し、ポリフッ化ビニリデン膜(Millipore Corp)に移した。膜を、抗カスパーゼ3、抗ホスホ-p38、抗ホスホ-ERK、抗切断型ポリADP-リボースポリメラーゼ(PARP)、又は抗HSP90(Cell Signaling Technology、1:1000)、続いてペルオキシダーゼ連結二次抗体を用いてインキュベートした。反応性バンドを、化学発光基質(Pierce)を使用して検出した。スタウロスポリン(6時間にわたる1mg/ml)を陽性対照として使用した。
【0050】
統計分析:
【0051】
統計分析を、GraphpadPrism(登録商標)6ソフトウェアを用いて実施した。マンホイットニーのノンパラメトリック分析を使用し、群間の対応のない差を検定し、対応のある差についてはウィルコクソン順位検定を使用した。差は、P<0.05で有意であると見なした。
【0052】
結果
【0053】
CXCR3Bはヒトメラノサイト上で発現され、IFNγにより制御される。
【0054】
CXCR3、ケモカインCXCL9、CXCL10、及びCXCL11受容体は、典型的にはT細胞上で見出される。ヒトメラノサイト上でのそれらの発現は不明である。ここでは、本発明者らは、健常なヒトメラノサイトがCXCR3Bを発現していることを実証する(
図1)。これは、mRNA(
図1A)及びタンパク質(
図1B)レベルで検出される。白斑患者からのメラノサイトは、健常対照と比較し、ベースラインでこの受容体の有意に上昇した発現を有する(P<0.05)。IFNγによって、健常な患者(P<0.01)及び白斑の患者(P<0.01)の両方において、CXCR3B mRNA発現が有意に上方制御される(
図1A)。しかし、CXCR3B+免疫反応性細胞の半定量分析によって、健常な皮膚において、IFNγによって、この発現が既に高い白斑患者においてCXCR3B+細胞の数が増加し(P<0.05、
図1B)、IFNγによってCXCR3B数はさらに増加しなかった(
図1B)。健常なヒトケラチノサイトにおけるCXCR3B mRNAの発現は、健常なメラノサイトにおける発現よりも有意に低く(P<0.01)、それらの発現はIFNγ処置により影響されない(
図1A)。健常な皮膚と比較し、白斑患者の非病変皮膚においてCXCR3B+メラノサイト数の増加があった(データは示さず)。
【0055】
メラノサイト上のCXCR3BのCXCL10媒介性活性化によって、それらのアポトーシスが駆動される。
【0056】
ヒト白斑メラノサイトの生存率に対するCXCR3の機能を検証するために、メラノサイト死のリアルタイム検出を、IncuCyte(登録商標)生細胞イメージングシステムを使用し、CXCL10への曝露の前後にモニターした。CXCL10を用いた刺激によって、非刺激メラノサイトと比較し、メラノサイト死が用量依存的な様式において有意に増加した(P=0.006、
図2A)。IFNγを用いた前処置が、このCXCL10誘導性の死のために要求された。本発明者らの結果は、IFNγで前処理されたsiControlトランスフェクト細胞において、CXCL10によってメラノサイトの死が有意に増加したことを示している(データは示さず)。この死は、健常な皮膚(P=0.008)及びNL白斑皮膚(P=0.03)の両方から抽出されたメラノサイトにおいて見られた(
図2B)。白斑メラノサイトは、健常なメラノサイト(P=0.004)と比較し、CXCL10誘導性の死に対して有意により感受性であり、メラノサイト死の速度において約2倍の差を誘導した(
図2B)。CXCL10刺激の前のsiCXCR3を用いたメラノサイトのトランスフェクションによって、CXCL10誘導性の死が完全に阻害され、健常なメラノサイト(P=0.004)及び白斑のメラノサイト(P=0.03)の両方においてベースライン応答が回復した(データは示さず)。CXCR3Bの寄与する役割をより具体的に検証するために、本発明者らは、CXCR3Bアイソフォームに対して向けられた注文設計の特定のサイレンサーRNAを使用し、健常のメラノサイト及び白斑のメラノサイトの両方においてこの実験を繰り返した。CXCL10刺激の前でのsiCXCR3Bを用いたメラノサイトのトランスフェクションによって、健常なメラノサイト(P=0.002)及び白斑のメラノサイト(P=0.001)の両方において、CXCL10誘導性の死が有意に低下した(
図2C)。CXCL10に加えて、本発明者らは、CXCL9及びCXCL11への応答を検証した。CXCL9及びCXCL11を用いた処置によって、また、健常なメラノサイト(それぞれP=0.034及びP=0.007)及び白斑のメラノサイト(P=P<0.001及びP=0.01)の両方において有意なメラノサイト死が誘導され、それは、SiCXCR3Bの使用によりほぼ完全に阻害された(
図2C)。興味深いことに、CXCL9誘導性のメラノサイト死は、CXCL10誘導性の死と比較し、健常な患者(P<0.001)及び白斑の患者(P=0.0035)の両方において有意に低かった。差は、CXCL11を用いてさらにより顕著であったが、それは、CXCL10と比較してずっと低い細胞死を誘導した(健常及び白斑の両方についてP<0.001)。
【0057】
本発明者らは、健常な患者から抽出され、IFNγを用いて前処理されていないメラノサイトにおいて、p38のわずかな活性化(PARP切断ではない)だけが、ケモカイン刺激後に見られたことを示している(データは示さず)。これは、本発明者らがp38の増加した活性化及びPARP切断を観察した白斑患者とは対照的であった。ケモカイン誘導性のCXCR3B活性化において含まれるシグナル伝達経路を試験することによって、p38、ERK、及びPARPが、健常な対照と比較し、CXCL10(CXCL9又はCXCL11ではない)により特異的に活性化され、応答は、スタウロスポリン1μg/mlを用いた刺激後に見られるもの(陽性対照)と類似の大きさであった。応答は24時間目に増加し、刺激後48時間まで維持された。全p38及び全ERKの発現は不変のままであった。興味深いことに、IFNγ前処理を伴わない正常なヒトメラノサイトにおけるCXCL10誘導性アポトーシスの非存在は(データは示さず)[有意なアポトーシスが、それらがIFNγを用いて前処理される場合に観察される(
図2B)]、正常なヒトメラノサイトにおけるCXCR3Bの低い基礎発現及びIFNγ刺激後のその増加発現と一致している(
図1B)。
【0058】
CXCR3B誘導性メラノサイト死によって、最初の適応メラノサイト自己免疫及びその後のT細胞増殖が誘発される。
【0059】
ライブイメージングIncucyte(登録商標)システムにおいて、白斑患者から抽出され、siCベクターを用いてトランスフェクトされたメラノサイトは、siCを用いてトランスフェクトされた健常な被験者から抽出されたメラノサイトと比較し、死亡に対して有意により感受性であった(P<0.01、
図2B)。本発明者らのIncuCyte(登録商標)での結果は、T細胞がCXCL10刺激メラノサイトと存在した場合、CXCL10刺激単独(P=0.02)又はT細胞単独の添加(P=0.02)を用いて見られるメラノサイト死と比較し、有意により高いメラノサイト死があったことを示している(
図3A)。興味深いことに、CXCL10を用いた24時間にわたるT細胞のプレインキュベーションによって、IFNγ初回刺激メラノサイトへのそれらの添加の前に、メラノサイト死は誘導されなかったが、CXCL10を用いて処理されたIFNγ初回刺激メラノサイトに加えられた同じT細胞によって誘導され、T細胞に対するCXCL10の直接的な効果の欠如を示唆する(データは示さず)。IFNγ初回刺激メラノサイトにおけるT細胞増強性メラノサイト死は、同時刺激分子(CD40、CD80、HLA-DR)及び接着分子(ICAM-1)分子の増加したメラノサイト発現(データは示さず)ならびにIncuCyte共培養における、経時的なCD3+ T細胞の絶対数における並列増加を伴った(P=0.03)(
図3B)。これらのCD3+ T細胞は、実際にKi67+増殖細胞であることが示された(データは示さず)。これらのデータは、CXCL10を用いて刺激されたIFNγ初回刺激NHMと共培養され、応答がPHA刺激後に見られたものと類似している場合、増加した分裂T細胞の数を示したT細胞増殖のフローサイトメトリー定量により裏付けられる(データは示さず)。この増殖の程度は、T細胞が、CXCL10に曝露された非初回刺激NHMと共培養された場合には見られなかった。CXCR3アンタゴニストAS612568を用いた処置によって、CXCL10誘導性のメラノサイト死(P=0.008)(
図3A)、T細胞数の増大(P=0.04)(
図3B)、及びT細胞増殖(データは示さず)に対するT細胞の増強効果が阻害された。
【0060】
健常なメラノサイト及び白斑メラノサイトの両方において、CXCL10によって、死んだメラノサイトの数が有意に増加したが(
図2B)、CXCL10刺激の前でのsiCXCR3Bを用いたこれらの細胞のトランスフェクションによって、CXCL10誘導性細胞死が有意に阻害され、ベースラインへの応答が回復される。CXCR3アンタゴニストAS612568及びCXCR3遮断抗体CXCR3bAbによって、CXCL10により誘導されるメラノサイト死が用量依存的な様式において阻害された(
図2A及び
図2D)。
【0061】
参考文献:
【0062】
本願全体を通して、種々の参考文献によって、本発明が関係する最新技術が記載されている。これらの参考文献の開示を、本明細書により、参照により本開示中に組み入れる。
【表1】
【外国語明細書】