(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002037
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】バンド駒、時計バンド、時計及びバンド駒の製造方法
(51)【国際特許分類】
A44C 5/10 20060101AFI20231228BHJP
A44C 5/02 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A44C5/10 510E
A44C5/02 F
A44C5/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100987
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100209048
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 元嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】天野 正男
(57)【要約】
【課題】耐摩耗性、耐傷つき性及び加工性に優れたバンド駒、時計バンド、時計及びバンド駒の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の一形態にかかるバンド駒44は、第1の金属材料により形成され、連結部材が配置される孔部44d、44e、44fが形成される、ベース層51と、前記第1の金属材料と異なる第2の金属材料により形成され、ベース層51の一方側に積層されるカバー層52と、を一体に備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属材料により形成され、連結部材が配置される孔部が形成される、ベース層と、
前記第1の金属材料と異なる第2の金属材料により形成され、前記ベース層の一方側に積層されるカバー層と、
を一体に備える、バンド駒。
【請求項2】
前記第2の金属材料は、前記第1の金属材料よりも硬度が高い、請求項1に記載のバンド駒。
【請求項3】
前記第1の金属材料はTiであり、前記第2の金属材料はコバリオンである、請求項1に記載のバンド駒。
【請求項4】
請求項1に記載の複数のバンド駒と、
前記複数のバンド駒を、前記ベース層と前記カバー層が積層される積層方向と交差する連結方向に回動可能に連結する複数の連結部材と、
を備え、
前記ベース層は装着時に装着対象に対向する内側表面を形成し、
前記カバー層は装着時に外側に向く外側表面を形成する、時計バンド。
【請求項5】
複数の前記バンド駒は、前記連結方向における一方の端部に、前記連結方向の前記一方に突出するとともに前記孔部が形成される第1凸部と、前記連結方向の他方の端部に、前記連結方向の前記他方に突出するとともに前記孔部が形成される第2凸部と、を有し、
前記孔部は、前記連結方向及び前記積層方向に交差する幅方向に沿って形成され、
隣接する一対のバンド駒の前記第2凸部と第1凸部とが、隣接する他の前記バンド駒の前記第1凸部と前記連結方向に並んで配置され、前記一対のバンド駒の前記ベース層にそれぞれ形成される前記孔部が前記幅方向に並んで配置され、
複数の前記バンド駒は、前記幅方向に並ぶ前記第1凸部と前記第2凸部とに、連結部材が配置され、互いに回動可能に連結される、請求項4に記載の時計バンド。
【請求項6】
請求項4に記載の時計バンドと、
前記時計バンドが取付けられる時計ケースと、
前記時計ケース内の収容部に配置されるモジュールと、
を備える、時計。
【請求項7】
第1の金属材料及び前記第1の金属材料よりも硬度が高い第2の金属材料のうち、いずれか一方の金属材料から、コア部材を形成するコア形成工程と、
前記第1の金属材料及び前記第2の金属材料のうち、他方の金属材料の粉体と、前記コア部材とにHIP処理により加熱及び加圧するHIP工程と、
を含み、
前記第1の金属材料で構成されるベース層と前記第2の金属材料で構成されるカバー層とが積層されたクラッド材を作成する、一次工程を備える、
バンド駒の製造方法。
【請求項8】
前記コア形成工程において、3Dプリンタにより、前記第1の金属材料または前記第2の金属材料を造形する、請求項7に記載のバンド駒の製造方法。
【請求項9】
前記一次工程後に、前記クラッド材を切断して複数の駒部材に分離し、前記駒部材の前記ベース層を加工して孔部を形成する、二次工程を備える、
請求項7に記載のバンド駒の製造方法。
【請求項10】
前記第1の金属材料はTiであり、前記第2の金属材料はコバリオンである、請求項7に記載のバンド駒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンド駒、時計バンド、時計及びバンド駒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腕時計に設けられる時計バンドにおいて、複数の金属性のバンド駒が連結される構成が知られている。例えば、時計バンドは、装着時に腕の周囲に沿う連結方向に並び互いに連結される複数のバンド駒を備える。各バンド駒は、ピン孔を有する凸部を一端部に有し、ピン孔を有する凹部を他端部に有する。例えば、一方のバンド駒の凸部を連結方向に並ぶ別のバンド駒の凹部に配して幅方向に並べ、凸部と凹部に金属製の連結ピンを通すことで、複数のバンド駒が回動可能に連結される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような時計バンドのバンド駒は、デザイン性に優れていることが望ましい。
【0005】
本発明は、デザイン性に優れたバンド駒、時計バンド、時計及びバンド駒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態にかかるバンド駒は、第1の金属材料により形成され、連結部材が配置される孔部が形成される、ベース層と、前記第1の金属材料と異なる第2の金属材料により形成され、前記ベース層の一方側に積層されるカバー層と、一体に備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐摩耗性、耐傷つき性及び加工性に優れたバンド駒、時計バンド、時計及びバンド駒の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る時計の構成を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の第1実施形態にかかる腕時計1、時計バンド40及びバンド駒44について、
図1乃至
図4を参照して説明する。
図1は腕時計1の構成を示す平面図であり、
図2は時計バンド40の一部の構成を示す説明図である。
図3はバンド駒44の断面図である。
図4はバンド駒44の製造方法の説明図であり、前工程で作成されるクラッド材を示す平面図である。なお、各図において、適宜構成を拡大、縮小、省略して概略的に示す。本実施形態において、例えば腕時計1は、一方向の一方側であってカバー30の外面が向く方を表側とし、一方向の他方側であって時計ケース10の底部を構成する裏蓋部の外面が向く方を裏側として、説明する。例えば腕時計1は、裏蓋部の外面が、装着対象である腕に対向する姿勢で装着される。
【0010】
図1に示すように、腕時計1は、外郭を構成する時計ケース10と、時計ケース10内に設けられるモジュール20と、モジュール20の表側を覆うカバー30と、時計ケース10の外周部の対向する2箇所にそれぞれ連結される一対のバンド部材を有する時計バンド40と、を備える。
【0011】
時計ケース10は、円形状に構成され、モジュール20の外周部に配されるケース体11と、モジュール20の裏側に配置される裏蓋部と、ケース体11の外周に配置される外装ケース13と、を備える。
【0012】
時計ケース10は、ケース体11及び裏蓋部によって、モジュール20が配置される収容部を構成する。ケース体11の表側の開口は、カバー30によって覆われる。
【0013】
ケース体11は、外周部において互いに対向する2箇所、例えば6時と12時の位置に、それぞれバンド部材41、42が取付けられるバンド取付部16を備える。例えばバンド取付部16は、ねじ、ピン、ばね棒などの連結部材によってバンド部材41、42に接続される接続孔(孔部)を有する接続構造を備える。なお、バンド取付部16は、時計ケース10に一体に構成されていてもよく、あるいは時計ケース10とは別体で構成され、時計ケース10に組付けられていてもよい。
【0014】
外装ケース13は、ケース体11の外周に設けられている。外装ケース13は、ビス等の接続部材によってケース体11に固定されている。
【0015】
モジュール20は、時刻や日付などの情報を表示する表示部、表示部を動作させるムーブメント、ICやアンテナ等の電子部品を搭載した回路基板、電池等、時計機能に必要な各種部品を備える。例えば表示部は、デジタル表示機能を備える液晶表示パネル等を有するデジタル方式の表示部であってもよく、文字板と指針等を備えるアナログ方式の表示部であってもよい。また複数の表示部を備えていてもよい。
【0016】
カバー30は、例えばSiO2ガラス等の無機ガラス等で形成された透明な部材である。例えばカバー30は透明な円板形状の時計ガラスであり、モジュール20の表側に配され、モジュール20を覆う。例えば、カバー30は、ケース体11の表側の開口の内周縁に支持される。カバー30の外周とケース体11の内周縁の間にはパッキンが介装される。
【0017】
時計バンド40は、時計ケース10の外周の対向する2箇所にそれぞれ接続される、第1のバンド部材41と、第2のバンド部材42と、バックル等の連結機構部43と、を備える。例えば各バンド部材41、42は、一端側が時計ケース10に連結され、他端側が連結機構部43によって互いに接続される。
【0018】
各バンド部材41、42は、それぞれ、連結方向に並び互い回動可能に連結される複数のバンド駒44と、連結ピン45と、緩衝部材46と、駒カバー47と、締結部48と、を備える。各バンド部材41、42において、複数のバンド駒44は連結ピン45によって回動可能に連結され、連結方向に並んで配置される。
【0019】
連結機構部43は一対のバンド部材41、42を接続する。例えば連結機構部43は手動の操作により複数の部材が重なり、あるいは展開することで接続長さを変化させて締付状態と解除状態とを切替え可能なバックル部材である。連結機構部43は、複数の部材が展開されるとバンド部材41、42の間の接続長さが伸びて腕を挿脱可能な解除状態となり、複数の部材が折り畳まれてロックされバンド部材41、42の間の接続長さが小さくなることで、装着対象である腕からの抜けが防止できるロック状態となる。
【0020】
なお、連結機構部43は、バンド部材41側とバンド部材42側にそれぞれ連結されるとともに分離可能な複数の部材を備え、バンド部材41とバンド部材42を分離可能に接続する構成であってもよい。
【0021】
複数のバンド駒44は、それぞれ、幅方向及び連結方向において所定の長さを有する。例えばバンド駒44は、連結方向における両端の外面が弓状に湾曲する曲面状に形成される。例えば複数のバンド駒44は、同じ構成であってもよく、一部が異なる形状であってもよい。例えば各バンド部材41、42の端部に設けられる、バンド駒44は、連結方向に隣接する連結機構部43、もしくはバンド取付部16に、連結され、バンド部材41、42における端部を除く他のバンド駒44は隣接する他のバンド駒44に、連結される。
【0022】
複数のバンド駒44は、隣接するバンド駒44、連結機構部43、もしくはバンド取付部16に、連結される連結構造を有する。一例として複数のバンド駒44は、連結方向の一端部の幅方向中央に、一端側に突出する第1凸部44aを有し、連結方向の他端部の幅方向両端に、他端側に突出する第2凸部44bを有する。第1凸部44a及び第2凸部44bは幅方向において互いに異なる位置に配置される。
【0023】
一例として、連結方向に隣合う複数のバンド駒44は、他端側の両端の第2凸部44bの間に形成される凹部44cに、隣接する他のバンド駒44の一端側の中央の凸部44aが配置される。
【0024】
一端側と他端側にそれぞれ形成される第1凸部44a及び第2凸部44bは、孔部としての第1ピン孔44d、第2ピン孔44eをそれぞれ有する。ピン孔44d、44eは、第1凸部44a、第2凸部44bをそれぞれ連結方向と直交または交差する幅方向に貫通する貫通孔である。例えば中央の第1凸部44aの第1ピン孔44dの内径は、両端の第2凸部44bの第2ピン孔44eの内径よりも小さく構成されている。
【0025】
また、バンド駒44の第1凸部44aと第2凸部44bの間の部位には、締結部48が配置される孔部としての締結孔44fが形成される。締結孔44fは、バンド駒44を幅方向に貫通する貫通孔である。
【0026】
例えば、連結方向に連なる複数のバンド駒44において、第1凸部44aは、連結方向に連なる他のバンド駒44の第2凸部44bと、幅方向に並んで配置される。すなわち、隣接する一対のバンド駒44のうち一方のバンド駒44において幅方向両側に形成された一対の第2凸部44bの間の退避部分である凹部44cに、他方のバンド駒44の第1凸部44aが配置されることで、一方のバンド駒の第2凸部44bと他方のバンド駒44の第1凸部44aとが幅方向に並んで配置される。
【0027】
一対のバンド駒44の第1凸部44aの第1ピン孔44dと他方のバンド駒44の一対の第2凸部44bの第2ピン孔44eは、幅方向に連続する。この連続するピン孔44d、44eを通って、連結ピン45が配置されることで、複数のバンド駒44が互いに回動可能に連結される。
【0028】
なお、各バンド部材41、42に設けられる複数のバンド駒44のうち、例えば連結方向の端部に配されるバンド駒44においては、第1凸部44aまたは第2凸部44bは、ピン孔44d、44eに配される連結部材によって、バンド取付部16あるいは連結機構部43に連結される。
【0029】
バンド駒44は、異なる材料で構成された複数の層51、52を積層して備える多層構造である。例えばバンド駒44は、第1の金属材料で構成されるベース層51と、第2の金属材料で構成されるカバー層52と、を有する2層構造である。
【0030】
ベース層51は、装着時に肌に対向して接触する内側表面を構成する。ベース層51は、第1の金属材料を含む。第1の金属材料は、例えばTiである。ベース層51は、好ましくは純チタンで形成される。例えばTiの密度4.43g/cm3であり、ベース層51は、カバー層52よりも密度が小さく、すなわち比重が重い材料で構成される。ベース層51には、ピン孔44d、44eや締結孔44fが形成される。また、端部に配置されるバンド駒44において、バンド取付部16あるいは連結機構部43に接続される各種孔部も、ベース層51に形成される。言い換えると、バンド駒44において、ピン孔44d、44eや締結孔44fや接続用の孔部が設けられる領域は、ベース層51で構成される。ベース層51は、例えば積層方向に沿う厚さ寸法が、バンド駒44の厚さ寸法の1/2よりも大きい。すなわち、ベース層51とカバー層52の境界は、バンド駒44の厚さ方向における中央よりも、表側に位置する。例えばベース層51とカバー層52との境界、すなわちベース層51のカバー層52と対向する表面は、平滑面を構成する。
【0031】
カバー層52は、ベース層51の表側に積層される。カバー層52は、第2の金属材料を含み、装着時に表側、すなわち腕とは反対側に配置される外側表面を構成する。カバー層52は、ベース層51よりも硬度が高く構成されている。例えばカバー層52を構成する第2の金属材料は、ベース層51を構成する第1の金属材料よりもビッカース硬度が高い。また、第2の金属材料は、第1の金属材料よりも密度が大きく、比重が大きい。第2の金属材料は例えば、コバルトにクロムとモリブデンを配合した、コバリオン(登録商標)であり、密度は8.4g/cm3である。例えばカバー層52は、バンド駒44の厚さの1/2よりも小さい厚さ寸法であり、一例として1/10以上、1/2以下に設定される。
【0032】
緩衝部材46は、シリコンゴムなどの弾力性を有する軟質の剛性樹脂材でチューブ状に構成される。緩衝部材46は、複数のバンド駒44の幅方向の両端部にそれぞれ設けられる。すなわち1本の連結ピン45の両端部の外周にそれぞれ緩衝部材46が介装される。緩衝部材46は、軸方向に沿う筒孔46dを有する筒状に構成される。緩衝部材46は、軸方向の一方に配される大径部46aと他方に配される小径部46bとを有し、大径部46aと小径部46bとの間に段差部46cが形成される。緩衝部材46は、軸方向がバンド駒44の幅方向に沿って配置され、大径部46aが両側の第2凸部44bのピン孔44eに配置され、小径部46bが中央の凸部44aのピン孔44dの端部に配置され、段差部46cが凸部44aのピン孔44dの周縁に係止される。すなわち緩衝部材46は、幅方向に隣合う一対のバンド駒44の第1凸部44aと第2凸部44bとの間に介装され、第1凸部44aと第2凸部44bの位置を規制する。
【0033】
駒カバー47は、連結ピン45が挿入されて連結されたバンド駒44の幅方向両端にそれぞれ設けられる。駒カバー47は、バンド駒44から幅方向に突出する連結ピン45及び緩衝部材46が配置される凹みである座繰部47aを有し、バンド駒44の端部と、連結ピン45及び緩衝部材46の端部を覆う。また、駒カバー47は、幅方向両端の外面に、締結部48の頭部を係止する段差47cを有するとともに締結部48の軸部が通るカバー締結孔47bを有し、締結部48によって、両端の駒カバー47がバンド駒44を挟んで締結される。
【0034】
締結部48は、幅方向一方側に配置される雄ねじ部48aと幅方向他方側に配置される雌ねじ部48bとを有する。例えば雄ねじ部48a及び雌ねじ部48bはそれぞれ、幅方向に延びるとともにねじが形成される軸部と、軸部の端部に設けられる頭部と、を有する。雌ねじ部48bの軸部に、雄ねじ部48aの軸部が螺合される。締結部48は、雄ねじ部48a及び雌ねじ部48bの頭部がそれぞれ駒カバー47のカバー締結孔47bに形成される段差47cに係止されるとともに、軸部が互いに螺合されることで、バンド駒44を挟んで設けられる一対の駒カバー47を締結する。
【0035】
以下、本実施形態におけるバンド駒44の製造方法について説明する。バンド駒44の製造方法は、
図4に示す一次加工品として複数のバンド駒44に分割される前の棒状のクラッド材44Aを形成する一次工程と、クラッド材44Aを複数に分割し、表面処理や孔加工により複数のバンド駒44を形成する二次工程と、を有する。一次工程は、コア形成工程と、HIP工程とを有する。例えばクラッド材44Aは、一方向に長く形成され、一方の縁に所定のピッチで第1凸部44aとなる突起44gが複数形成されるとともに、他方の縁に所定のピッチで第2凸部44bとなる突起44hが複数形成される形状である。
【0036】
コア形成工程として、例えば3Dプリンタにより、第1の金属材料から、ベース層51となるベース部51Aを造形する。ベース部51Aは、所定の厚さ及び幅を有する長い板状である。
【0037】
続いて、HIP工程として、HIP処理(HIP(Hot Isostatic Pressing:熱間等方圧加圧)により、高温・高圧(ガス圧)にて処理材料を加圧加工することで、第2の金属材料の粉体から、カバー層52となるカバー部52Aを作成する。
【0038】
例えば、成形したいクラッド材44Aの形状に対応するHIP処理用の型を準備し、型内にコア部材としてベース部51Aを配するとともに第2の金属材料の粉体を充填する。そして、型をHIP処理用のチャンバ内に配置し、高圧高温で加熱加圧することでカバー部52Aを造形するとともに、ベース部51Aとカバー部52Aとを焼結させて一体に形成する。焼結後、型を取り除くことで2層構造のクラッド材44Aが形成される。例えばHIP処理の条件は、2000気圧、900℃~1000℃とする。
【0039】
そして、二次工程として、クラッド材44Aを切断して複数の駒部材に分割し、さらにピン孔44d、44eや締結孔44fを形成する切削加工や表面処理等を経て、複数のバンド駒44が完成する。このとき、ピン孔44d、44eや締結孔44fは、ベース層51において幅方向に沿って形成される。つまりピン孔44d、44eはカバー層52を通らない配置となる。
【0040】
以上のように構成されたバンド駒44、時計バンド40、及び時計1によれば、デザイン性を向上することができる。また、耐摩耗性、耐傷つき性と加工性とを両立できる。すなわち、装着時に表側の面を構成するカバー層52を硬く鏡面性に優れた材料で構成し、裏側のベース層51を柔軟、軽量で、加工性の良い材料で構成したため、カバー層52により、耐傷付性や対磨耗性、鏡面性を確保しながら、ベース層51により、安全性に、加工性、に優れた軽量なバンド駒を構成することができる。また、ピン孔44d、44eや締結孔44fなどの加工を容易に行うことができるため、形状の自由度が高い。
【0041】
また、上記実施形態によれば、HIP処理によって金属材料の粉体を焼結することで、カバー層52の造形と、ベース層51及びカバー層52の接合とを行うことができる。例えば加工が難しいコバリオンについても、粉体を用いてHIP処理で造形することにより、容易に所望の形状を得ることができる。
【0042】
なお、上述した実施形態は例示であり、発明の範囲を限定するものではない。
【0043】
例えば複数のバンド駒のうち、一部のバンド駒のみに上記2層構造のバンド駒を用いてもよい。
【0044】
また、バンドを構成する複数のバンド駒間で構成が異なってもよい。例えばバンド駒の位置によってベース層51とカバー層52の比率を異ならせてもよく、時計ケース本体から離間したバンド取付部16に近い程、密度の大きいコバリオンの比率を大きくすることにより、バンド駒の重さを調整することも可能である。例えば連結機構部43側のバンド駒44が重くなるように設置した場合には、時計1を置いた時や腕に装着した時に、文字板の向きが安定するという効果が得られる。
【0045】
また、境界部、すなわちベース層51のカバー層52と対向する表面は、平滑面に限られるものではない。例えば凹凸部や波状部を有する構成であってもよい。例えば凹凸部や波状部を有することで、カバー層52との接合強度を向上することができる。
【0046】
また、上記実施形態においては駒カバー47を備える構成を例示したが、これに限られるものではなく、駒カバー47を備えない構成であってもよい。この場合、締結部48や締結孔44fを省略することもできる。
【0047】
また、上記実施形態では、ベース層51を3Dプリンタで造形し、カバー層52をHIP処理にて形成した例を示したが、これに限られるものではない。例えばコア形成工程として、3Dプリンタで第2の金属材料からカバー部52Aを造形し、HIP工程として第1の金属材料の粉体からベース層51を形成しても良い。この場合、カバー部52Aを、コア部材として、HIP処理の型内に第1の金属材料の粉体とともに配置し、HIP処理を行うことで第1の金属部材からなる粉体を焼結させてベース部51Aを形成し、同時に、第2の金属材料からなるコア部材としてのカバー部52Aとベース部51Aとを接合する。
【0048】
また第1の金属材料、第2の金属材料として用いる材料は上記実施形態の例示に限られるものではない。例えばベース層51を構成する第1の金属材料チタンとして、カバー層52を構成する第2の金属材料を64チタンとしてもよい。あるいはベース層51を構成する第1の金属材料をSUSとし、カバー層52を構成する第2の金属材料を64チタンとしてもよい。
【0049】
また、バンド駒44だけでなく、時計ケース10や連結機構部43等の他の時計用部品についても、第1金属材料で構成されるベース層51と第2金属材料で構成されるカバー層52を有する積層構造としてもよい。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明は特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記]
[1]
第1の金属材料により形成され、連結部材が配置される孔部が形成される、ベース層と、
前記第1の金属材料と異なる第2の金属材料により形成され、前記ベース層の一方側に積層されるカバー層と、
を一体に備える、バンド駒。
[2]
前記第2の金属材料は、前記第1の金属材料よりも硬度が高い、[1]に記載のバンド駒。
[3]
前記第1の金属材料はTiであり、前記第2の金属材料はコバリオンである、[1]に記載のバンド駒。
[4]
[1]に記載の複数のバンド駒と、
前記複数のバンド駒を、前記ベース層と前記カバー層が積層される積層方向と交差する連結方向に回動可能に連結する複数の連結部材と、
を備え、
前記ベース層は装着時に装着対象に対向する内側表面を形成し、
前記カバー層は装着時に外側に向く外側表面を形成する、時計バンド。
[5]
複数の前記バンド駒は、前記連結方向における一方の端部に、前記連結方向の前記一方に突出するとともに前記孔部が形成される第1凸部と、前記連結方向の他方の端部に、前記連結方向の前記他方に突出するとともに前記孔部が形成される第2凸部と、を有し、
前記孔部は、前記連結方向及び前記積層方向に交差する幅方向に沿って形成され、
隣接する一対のバンド駒の前記第2凸部と第1凸部とが、隣接する他の前記バンド駒の前記第1凸部と前記連結方向に並んで配置され、前記一対のバンド駒の前記ベース層にそれぞれ形成される前記孔部が前記幅方向に並んで配置され、
複数の前記バンド駒は、前記幅方向に並ぶ前記第1凸部と前記第2凸部とに、連結部材が配置され、互いに回動可能に連結される、[4]に記載の時計バンド。
[6]
[4]に記載の時計バンドと、
前記時計バンドが取付けられる時計ケースと、
前記時計ケース内の収容部に配置されるモジュールと、
を備える、時計。
[7]
第1の金属材料及び前記第1の金属材料よりも硬度が高い第2の金属材料のうち、いずれか一方の金属材料から、コア部材を形成するコア形成工程と、
前記第1の金属材料及び前記第2の金属材料のうち、他方の金属材料の粉体と、前記コア部材とにHIP処理により加熱及び加圧するHIP工程と、
を含み、
前記第1の金属材料で構成されるベース層と前記第2の金属材料で構成されるカバー層とが積層されたクラッド材を作成する、一次工程を備える、
バンド駒の製造方法。
[8]
前記コア形成工程において、3Dプリンタにより、前記第1の金属材料または前記第2の金属材料を造形する、[7]に記載のバンド駒の製造方法。
[9]
前記一次工程後に、前記クラッド材を切断して複数の駒部材に分離し、前記駒部材の前記ベース層を加工して孔部を形成する、二次工程を備える、
[7]に記載のバンド駒の製造方法。
[10]
前記第1の金属材料はTiであり、前記第2の金属材料はコバリオンである、[7]に記載のバンド駒の製造方法。
【符号の説明】
【0051】
1…腕時計
10…時計ケース
11…ケース体
13…外装ケース
16…バンド取付部
20…モジュール
30…カバー
40…時計バンド
41…第1のバンド部材
42…第2のバンド部材
43…連結機構部
44…バンド駒
44A…クラッド材
44a…第1凸部
44b…第2凸部
44c…凹部
44d…第1ピン孔
44e…第2ピン孔
44f…締結孔
44g…突起
44h…突起
45…連結ピン
46…緩衝部材
46a…大径部
46b…小径部
46c…段差部
46d…筒孔
47…駒カバー
47a…座繰部
47b…カバー締結孔
47c…段差
48…締結部
48a…雄ねじ部
48b…雌ねじ部
51…ベース層
51A…ベース部
52…カバー層
52A…カバー部。