(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020371
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】線維芽細胞の再生活性の増強
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20240206BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240206BHJP
【FI】
C12N5/071
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023193189
(22)【出願日】2023-11-13
(62)【分割の表示】P 2020534217の分割
【原出願日】2018-12-17
(31)【優先権主張番号】62/608,031
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516071686
【氏名又は名称】フィジーン、エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】FIGENE, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オヒーロン、ピート
(72)【発明者】
【氏名】イチム、トーマス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】線維芽細胞の再生活性を最適化する方法を提供する。
【解決手段】特定の実施形態において、調製された線維芽細胞は増強された再生を有し、1つ以上のサイトカイン及び/又は成長因子の分泌の増加を有し得る;抗アポトーシス活性の増加を有し得る;及び/又は調節された免疫原性を有し得る。特定の実施形態において、線維芽細胞は、低酸素及び/又は一酸化炭素への曝露によって調製される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維芽細胞におけるネイティブヘムオキシゲナーゼ(HO)-1発現の刺激、外因的に
提供されたHO-1への線維芽細胞の曝露、及び/又は線維芽細胞における外因的に提供
されたベクターからのHO-1の発現を含む、1つ以上の薬剤及び/又は条件の有効量を
線維芽細胞に提供する工程
を含む、複数の線維芽細胞の治療活性を増強する方法。
【請求項2】
治療活性が、線維芽細胞の再生活性を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
線維芽細胞が、1つ以上のサイトカイン及び/又は成長因子の分泌の増加を有する、請
求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
線維芽細胞が抗アポトーシス活性の増加を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項5】
線維芽細胞の免疫原性が調節される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
1つ以上の薬剤及び/又は状態が、低酸素、一酸化炭素、又はそれらの組み合わせを含
む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
一酸化炭素が、低酸素に続いて線維芽細胞に提供される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
一酸化炭素が低酸素と同時に線維芽細胞に提供される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
線維芽細胞及び/又はそこからの馴化培地の有効量が個体に提供される、請求項1~8
のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
個体が、自己免疫疾患、変性疾患、炎症性疾患、及び/又は線維性疾患を有する、請求
項9に記載の方法。
【請求項11】
馴化培地が、1つ以上の成長因子及び/又は1つ以上のサイトカインを含む、請求項9
又は10に記載の方法。
【請求項12】
低酸素が、0.1%~10%、0.1%~5%、0.1%~2.5%、又は0.1%~
1%の酸素である、請求項6~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
低酸素が、30分~3日の間以上又は以下などの期間にわたって起こる、請求項6~1
2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
線維芽細胞が、低酸素、一酸化炭素、又はそれらの組み合わせへの曝露の前に、1つ以
上の成長因子に曝露される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
線維芽細胞を、低酸素、一酸化炭素、又はその両方の有効量に曝露する工程を含む、線
維芽細胞を調製する方法。
【請求項16】
線維芽細胞が、低酸素及び一酸化炭素に同時に曝露される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
線維芽細胞が、異なる時点で低酸素及び一酸化炭素に曝露される、請求項15に記載の
方法。
【請求項18】
線維芽細胞が、一酸化炭素への曝露前に低酸素に曝露される、請求項17に記載の方法
。
【請求項19】
線維芽細胞及び/又はそこからの馴化培地が、それを必要とする個体に有効量で提供さ
れる、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
個体が、自己免疫疾患、変性疾患、炎症性疾患、及び/又は線維性疾患を有する、請求
項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、少なくとも細胞生物学、分子生物学、生物化学、細胞療法、及び
医学の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
線維芽細胞の主要な機能の1つは、細胞外マトリックスの前駆体を連続的に分泌するこ
とによって結合組織の構造的完全性を維持することである。線維芽細胞は、細胞外マトリ
ックスの全ての成分の前駆体、主に基質及び種々の繊維又は構造タンパク質を分泌する。
それらはまた、組織応答を増強するために、隣接する細胞の機能及び産物に影響を及ぼし
調整する、低分子量の拡散性因子を分泌する。細胞外マトリックスの組成は、結合組織の
物理的性質を顕著に決定する。線維芽細胞は体内の多くのプロセスに関与している。創傷
治癒は、線維芽細胞活性の調節を含む多数のプロセスの組み合わせの活性化を必要とする
複雑なプロセスである。皮膚線維芽細胞は、創傷治癒プロセス中に創傷床に移動し、そこ
で創傷細胞が分泌するトランスフォーミング増殖因子-1マトリックス分子(例えば、フ
ィブロネクチンスプライスバリアント)及び機械的な合図(すなわち、マトリックス張力
)が筋線維芽細胞へのそれらの分化を開始する。筋線維芽細胞は、平滑筋αアクチンを発
現し、収縮性ミクロフィラメントの束を含み、広範な細胞間接着部位を有することから、
皮膚線維芽細胞と区別することができる。筋線維芽細胞は、細胞外マトリックスを合成し
、蓄積、再構築して肉芽組織を形成し、それによって創傷を収縮させる。治癒過程で形成
される結合組織は、しばしば線維性であることが多く、一般的には線維化として知られる
過程によって結合組織瘢痕が形成される。自己線維芽細胞(すなわち、培養線維芽細胞の
レシピエントでもあるドナーから得られる線維芽細胞)を使用する治療方法は、当該分野
で公知である。このような線維芽細胞の公知の用途の中には、培養線維芽細胞を投与する
ことによって、上皮創傷又は瘻孔などの創傷の治癒を促進する方法;声帯欠損に亜隣接(
sub-adjacent)する組織の増強による矯正手術の方法;並びに声帯瘢痕の治療、及び、皮
膚及び軟組織欠損の修復の方法がある。再生医療における線維芽細胞の利用に関する多数
の可能性にもかかわらず、現在線維芽細胞治療的利用を制限している要因は、線維芽細胞
の再生活性を最適化する手段が欠如していることである。本開示は、この必要性に対する
解決策を提供する。
【発明の概要】
【0003】
本開示の実施形態は、線維芽細胞がそのように調製されていない線維芽細胞に欠けてい
る1つ以上の属性を有するような、線維芽細胞の調製に関する方法及び組成物を含む。特
定の実施形態において、線維芽細胞は、増強された再生特性を有するように調製される。
特定の実施形態において、線維芽細胞は1つ以上のサイトカイン及び/又は1つ以上の成
長因子の分泌が増加し、それらは、抗アポトーシス活性が増加し、及び/又は線維芽細胞
の免疫原性が調節される。特定の実施形態において、線維芽細胞は、低酸素及び/又は一
酸化炭素に同様に曝露されていない線維芽細胞と比較して線維芽細胞の再生能力が十分な
レベルで増強されるように、十分なレベルで低酸素及び/又は一酸化炭素に曝露される。
【0004】
いくつかの実施形態において、線維芽細胞及び/又はそれから調整された培地は、それ
を必要とする個体に提供される。特定の実施形態では、個体は、医学的状態に続いて、場
合によっては局所部位を含む、細胞又は組織の補充を必要とする医学的状態を有する。馴
化培地は、1つ以上の増殖因子、1つ以上のサイトカイン、1つ以上のペプチド、1つ以
上のタンパク質及び/又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0005】
本開示の実施形態は、線維芽細胞におけるネイティブヘムオキシゲナーゼ(HO)-1
発現の刺激、線維芽細胞の外因的に提供されるHO-1への曝露、及び/又は線維芽細胞
における外因的に提供されるベクターからのHO-1の発現を含む、有効量の1つ以上の
薬剤及び/又は1つ以上の条件を線維芽細胞に提供する工程を包含する、複数の線維芽細
胞の治療活性を増強する方法を包含する。特定の実施形態において、治療活性は、線維芽
細胞の再生活性を含む。線維芽細胞は、1つ以上のサイトカイン及び/又は1つ以上の成
長因子の分泌の増加を有し得る;線維芽細胞は、抗アポトーシス活性の増加を有し得る;
及び/又は線維芽細胞の免疫原性が、例えば、減少又は増加するように調節される。特定
の実施形態では、1つ以上の薬剤及び/又は状態は、低酸素、一酸化炭素、又はそれらの
組み合わせを含む。一酸化炭素は、低酸素に続いて線維芽細胞に提供され得る。一酸化炭
素は、低酸素と同時に線維芽細胞に供給されてもよい。
【0006】
特定の実施形態では、有効量の線維芽細胞及び/又はそこからの馴化培地が個体に提供
される。個体は線維芽細胞及び/又はそこからの調整培地が治療的である医学的状態を有
し得、例えば、少なくとも1つの症状の改善を可能にする。特定の実施形態では、医学的
状態が自己免疫疾患、変性疾患、炎症性疾患、及び/又は線維性疾患である。馴化培地は
、1つ以上の増殖因子及び/又は1つ以上のサイトカインを含み得る。低酸素は、例えば
、0.1%~10%、0.1%~5%、0.1%~2.5%、又は0.1%~1%の酸素
であり得る。特定の実施形態では、低酸素は、30分~3日以上又は以下の間にわたって
起こるが、場合によっては30分未満又は3日を超えてもよい。線維芽細胞は低酸素、一
酸化炭素、又はそれらの組み合わせへの曝露の前及び/又は曝露中に、1つ以上の増殖因
子に曝露され得る。
【0007】
一実施形態として、線維芽細胞を有効量の低酸素、一酸化炭素、又はその両方に曝露す
る工程を含む、線維芽細胞を調製する方法が挙げられる。特定の実施形態において、線維
芽細胞は、低酸素及び一酸化炭素に同時に曝露される。特定の実施形態において、線維芽
細胞は、異なる時点で低酸素及び一酸化炭素に曝露される。場合によっては、線維芽細胞
が一酸化炭素に曝露される前に低酸素に曝露される。特定の場合において、線維芽細胞及
び/又はそれからの馴化培地は、それを必要とする個体に有効量で提供される。個体は、
自己免疫疾患、変性疾患、炎症性疾患、及び/又は線維性疾患を有していてもよい。
【0008】
上記は以下の詳細な説明がより良く理解され得るように、本開示の特徴及び技術的利点
をかなり広く概説した。本明細書の特許請求の範囲の主題を形成する追加の特徴及び利点
を以下に説明する。開示された概念及び特定の実施形態は本設計の同じ目的を実行するた
めに他の構造を修正又は設計するための基礎として容易に利用され得ることが、当業者に
よって理解されるべきである。また、そのような同等の構成は、添付の特許請求の範囲に
記載される精神及び範囲から逸脱しないことが当業者によって理解されるべきである。本
明細書に開示される設計の特徴であると考えられる新規な特徴はさらなる目的及び利点と
ともに、動作の構成及び方法の両方に関して、添付の図面と関連して考慮される場合、以
下の説明からより良く理解される。しかしながら、各図は、例示及び説明の目的のためだ
けに提供され、本開示の限定の定義として意図されないことが明確に理解されるべきであ
る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示をより完全に理解するために、添付の図面と併せて以下の説明を参照する:
【0010】
【
図1】
図1は、低酸素、一酸化炭素、又は一酸化炭素の後の低酸素による、線維芽細胞の培養によるVEGF産生の刺激を示す。
【0011】
【
図2】
図2は、低酸素、一酸化炭素、又は一酸化炭素と同時の低酸素による、線維芽細胞の培養によるVEGF産生の刺激を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において用いられているように、「a」又は「an」は1つ又はそれ以上のも
のを意味することがある。本明細書において用いられているように、「含む」という用語
とともに用いられている場合、「a」又は「an」という用語は1つ又は複数を意味する
こともある。本文中で用いられているように、「もう一つの」は、少なくとも第2又はそ
れ以上を意味し得る。特定の実施形態において、本開示の態様は、例えば、本開示の1つ
又はそれ以上の順序から「本質的になる」こともある。本開示のいくつかの実施形態は、
本開示の1つ以上の要素、方法ステップ、及び/又は方法から構成されてもよく、又はそ
れらから本質的になっていてもよい。本明細書中に記載されるいずれの方法又は組成物も
、本明細書中に記載される任意の他の方法又は組成物に関して使用され得ることが意図さ
れる。本開示の方法及び/又は組成物の文脈において議論される実施形態は、本明細書に
記載される任意の他の方法又は組成物に関して採用されてもよい。従って、1つの方法又
は組成物に関連する実施形態は、本開示の他の方法及び組成物にも適用され得る。
【0013】
本開示は少なくとも細胞療法の分野に関し、より具体的には、本開示が線維芽細胞自体
の再生活性を増強するための、特定の培養条件下での培養による線維芽細胞の再生活性の
増強に関する。本開示は、さらに、線維芽細胞の治療活性を増加させることができる細胞
プログラムを誘導するための、1つ以上の細胞培養条件の改変に関する。本明細書中で使
用される場合、用語「再生活性」は、いくつかの実施形態において、細胞及び組織を新た
に(de novo)生成する能力として定義される。
【0014】
特定の実施形態では、線維芽細胞に対する再生活性などの活性又は活性を増強する1つ
又は複数の薬剤又は条件の有効量を線維芽細胞に提供することによって、複数の線維芽細
胞の1つ又は複数の治療活性を増強する方法がある。次いで、改変されていない場合の活
性と比較してより大きな再生活性を有する改変された線維芽細胞は、種々の目的、例えば
、細胞(哺乳動物(例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシなど)内におけるものを含む
)の治療的使用のために利用され得る。
【0015】
I.線維芽細胞、その改変、及び産生方法
【0016】
再生能力における線維芽細胞の治療活性の増強に関する方法及び組成物を開示する。特
定の実施形態では、線維芽細胞が1つ以上の薬剤及び/又は状態によるヘムオキシゲナー
ゼ(HO)-1発現の刺激によって増強され、刺激は直接的であってもなくてもよい。こ
のような増強は、(1)HO-1の内在的発現を増加させる1つ以上の剤及び/又は条件
への線維芽細胞の曝露、(2)外来的に供給されたHO-1に対する線維芽細胞の曝露、
及び/又は(3)例えばHO-1を発現する線維芽細胞において外来的に提供されたベク
ターからHO-1が発現した場合における、線維芽細胞の外来性HO-1に対する曝露、
によって起こる可能性がある。特定の実施形態では、1つ以上の薬剤は、一酸化炭素(C
O)、低酸素、又はそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態において、CO及び低酸
素の両方が線維芽細胞に提供される場合、それらの曝露の順序は特定である。ある場合に
は、それらは同時に線維芽細胞に供給されるが、他の場合にはそれらは異なる時期に線維
芽細胞に供給され、そしてある場合には別々の時期にそれら両方が同時に細胞に供給され
る。ある場合には、COは低酸素の前に線維芽細胞に供給されるが、他の場合には、CO
は低酸素の後に線維芽細胞に供給される。
【0017】
いくつかの実施形態では、線維芽細胞を処理して、それらの再生活性を増強する方法が
あり、これは以下のステップを含む:a)任意選択で、線維芽細胞集団を得るステップ(
線維芽細胞は、別の者によって入手されてもよく、又は貯蔵したものから入手されてもよ
く、又は商業的に入手されてもよい)、b)例えば低酸素誘導因子(HIF)-1αのア
ップレギュレーションを誘導するために十分な時間低酸素に曝露することによって、線維
芽細胞集団をプライミングするステップ、及びc)任意選択で、低酸素に曝露した後、H
O-1のアップレギュレーションを誘導するために十分な濃度及び時間で、線維芽細胞を
COで処理するステップ。
【0018】
特定の実施形態において、線維芽細胞は、サイトカイン分泌、抗アポトーシス活性のア
ップレギュレーション、及び/又は免疫原性の調節についてのそれらの活性において、本
明細書中に包含される方法によって増強される。特定の実施形態において、再生活性は、
a)線維芽細胞増殖因子(FGF)-1;b)FGF-2;c)FGF-5;d)FGF
-12;e)IL-10;f)白血病阻害因子;f)インスリン成長因子;g)上皮成長
因子;h)血管内皮増殖因子(VEGF);及びi)それらの組み合わせからなる群より
選択されるサイトカインなどの、1つ以上のサイトカインの産生を増強することを含む。
【0019】
再生活性は任意の種類であり得るが、特定の実施形態において、再生活性は、線維芽細
胞が少なくとも軟骨細胞;脂肪細胞;及び/又は骨細胞を含む任意の他の型の細胞に分化
する能力を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、再生活性は、例えば、少なくとも線維芽細胞;間葉系幹細胞
;脊索細胞;及び/又は軟骨細胞前駆細胞を含む、任意のタイプの細胞に対して分裂促進
性である馴化培地を産生する線維芽細胞の能力を含む。
【0021】
特定の実施形態において、線維芽細胞は1つ以上の特定の条件(特定の期間の間の条件
の曝露又はその条件のための他の形態のパラメーターを含む)への曝露後に、増強された
再生活性を有する。特定の実施形態において、線維芽細胞は、低酸素環境に曝露される。
一例として、低酸素環境における線維芽細胞のインキュベーションは、0.1%~10%
酸素;0.1%~9%;0.1%~8%;0.1%~7%;0.1%~6%;0.1%~
5%;0.1%~4%;0.1~3%;0.1%~2%;0.1~1%;0.1%~0.
75%;0.1%~0.5%;0.25%~10%;0.25%~9%;0.25%~8
%;0.25%~7%;0.25%~6%;0.25%~5%;0.25%~4%;0.
25%~3%;0.25%~2%;0.25%~1%;0.25%~0.75%;0.2
5%~0.5%;0.5%~10%;0.5%~9%;0.5%~8%;0.5%~7%
;0.5%~6%;0.5%~5%;0.5%~4%;0.5%~3%;0.5%~2%
;0.5%~1%;0.5%~0.75%;0.75%~10%;0.75%~9%;0
.75%~8%;0.75%~7%;0.75%~6%;0.75%~5%;0.75%
~4%;0.75%~3%;0.75%~2%;0.75%~1%;1%~9%;1%~
8%;1%~7%;1%~6%;1%~5%;1%~4%;1%~3%;1%~2%;2
%~9%;2%~8%;2%~7%;2%~6%;2%~5%;2%~4%;2%~3%
;3%~9%;3%~8%;3%~7%;3%~6%;3%~5%;3%~4%;4%~
9%;4%~8%;4%~7%;4%~6%;4%~5%;5%~9%;5%~8%;5
%~7%;5%~6%;6%~9%;6%~8%;6%~7%;7%~9%;7%~8%
;又は8%~9%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0
.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.25%、1.5%、1.75%、2.0%
、2.25%、2.5%、2.75%、3%、3.25%、3.5%、3.75%、4.
0%、4.25%、4.5%、4.75%、5%、5.25%、5.5%、5.75%、
6%、6.25%、6.5%、6.75%、7.25%、7.5%、7.75%、8%、
8.25%、8.5%、8.75%、9%、又は10%以上又は以下の条件で行われる。
【0022】
場合によっては、線維芽細胞の低酸素環境への曝露は、特定の期間起こり、この時間は
継続的であっても、継続的でなくてもよい。特定の実施形態では、低酸素環境における線
維芽細胞のインキュベーションは、例えば、30分~3日;30分~2日;30分~1日
;30分~18時間;30分~12時間;30分~8時間;30分~6時間;30分~4
時間;30分~2時間;30分~1時間;45分~3日;45分~2日;45分~1日;
45分~18時間;45分~12時間;45分~8時間;45分~6時間;45分~4時
間;45分~2時間;45分~1時間;60分~3日;60分~2日;60分~1日;6
0分~18時間;60分~12時間;60分~8時間;60分~6時間;60分~4時間
;60分~2時間;60分~1時間;2時間~3日;2時間~2日;2時間~1日;2時
間~18時間;2時間~12時間;2時間~8時間;2時間~6時間;2時間~4時間;
2時間~3時間;6時間~3日;6時間~2日;6時間~1日;6時間~18時間;6時
間~12時間;6時間~8時間;8時間~3日;8時間~2日;8時間~1日;8時間~
18時間;8時間~12時間;8時間~10時間;12時間~3日;12時間~2日;1
2時間~1日;12時間~18時間;18時間~3日;18時間~2日;18時間~1日
;1日~3日;又は2日~3日、の期間以上又は以下で行われる。特定の実施形態では、
インキュベーションは、例えば、1~8;1~7;1~6;1~5;1~4;1~3;1
~2;2~8;2~7;2~6;2~5;2~4;2~3;3~8;3~7;3~6;3
~5;3~4;4~8;4~7;4~6;4~5;5~8;5~7;5~6;6~8;6
~7;又は7~8時間行われる。
【0023】
特定の実施態様において、繊維芽細胞は、特定のレベルのCOに曝露される。特定の実
施形態では、線維芽細胞のCOとのインキュベーションは、例えば、1~500ppm(
100万分の1);1~400ppm;1~300ppm;1~250ppm;1~20
0ppm;1~175ppm;1~150ppm;1~125ppm、1~100ppm
;1~75ppm;1~50ppm;1~25ppm;1~10ppm;10~500p
pm;10~400ppm;10~300ppm;10~250ppm;10~200p
pm;10~150ppm;10~125ppm;10~100ppm;10~75pp
m;10~50ppm;10~25ppm;25~500ppm;25~400ppm;
25~300ppm;25~250ppm;25~200ppm;25~175ppm;
25~150ppm;25~125ppm;25~100ppm;25~75ppm;2
5~50ppm;50~500ppm;50~400ppm;50~300ppm;50
~200ppm;50~175ppm;50~150ppm;50~125ppm;50
~100ppm;50~75ppm;75~500ppm;75~400ppm;75~
300ppm;75~250ppm;75~225ppm;75~200ppm;75~
175ppm;75~150ppm;75~125ppm;75~100ppm;100
~500ppm;100~400ppm;100~300ppm;100~200ppm
;100~150ppm;100~125pm;125~500ppm;125~400
ppm;125~300ppm;125~275ppm;125~200ppm;125
~175ppm;125~150ppm;150~500ppm;150~400ppm
;150~300ppm;150~200ppm;150~175ppm;175~50
0ppm;175~400ppm;175~300ppm;175~275ppm;17
5~250ppm;175~225ppm;175~200ppm;200~500pp
m;200~400ppm;200~300ppm;200~250ppm;250~5
00ppm;250~400ppm;250~300ppm;250~275ppm;3
00~500ppm;300~400ppm又は400~500ppmの濃度以上又は以
下で行われる。特定の場合において、線維芽細胞のCOとのインキュベーションは、75
、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325
ppm又はそれ以上のppm(100万分の1)の濃度で、1、2、3、4、5、6、7
、8、9、又は10時間又はそれ以上行われる。
【0024】
特定の実施形態において、線維芽細胞は上記のように特定の期間、例えば、30分~3
日;30分~2日;30分~1日;30分~18時間;30分~12時間;30分~8時
間;30分~6時間;30分~4時間;30分~2時間;30分~1時間;45分~3日
;45分~2日;45分~1日;45分~18時間;45分~12時間;45分~8時間
;45分~6時間;45分~4時間;45分~2時間;45分~1時間;60分~3日;
60分~2日;60分~1日;60分~18時間;60分~12時間;60分~8時間;
60分~6時間;60分~4時間;60分~2時間;60分~1時間;2時間~3日;2
時間~2日;2時間~1日;2時間~18時間;2時間~12時間;2時間~8時間;2
時間~6時間;2時間~4時間;2時間~3時間;6時間~3日;6時間~2日;6時間
~1日;6時間~18時間;6時間~12時間;6時間~8時間;8時間~3日;8時間
~2日;8時間~1日;8時間~18時間;8時間~12時間;8時間~10時間;12
時間~3日;12時間~2日;12時間~1日;12時間~18時間;18時間~3日;
18時間~2日;18時間~1日;1日~3日;又は2日~3日、の期間以上又は以下で
行われる。特定の実施形態では、インキュベーションは、例えば、1~8;1~7;1~
6;1~5;1~4;1~3;1~2;2~8;2~7;2~6;2~5;2~4;2~
3;3~8;3~7;3~6;3~5;3~4;4~8;4~7;4~6;4~5;5~
8;5~7;5~6;6~8;6~7;又は7~8時間行われる。
【0025】
特定の実施形態では、細胞は、COでの処置の前に低酸素で処置されるが、他の実施形
態では、細胞がCOでの処置の間及び/又は後に低酸素で処置される。特定の実施形態で
は、CO処理に続いて、低酸素に細胞を連続的に曝露すると、線維芽細胞に相乗効果(例
えば、線維芽細胞による相乗的な成長因子の産生)がある。
【0026】
特定の実施形態では、本開示は、線維芽細胞の培養条件の改変によって線維芽細胞の治
療活性を増大させる方法を提供する。特定の実施形態において、低濃度の一酸化炭素と共
に、低酸素下での線維芽細胞の培養による再生活性の刺激に関して以前には開示されてい
ない相乗効果が存在する。一実施形態において、線維芽細胞は、治療用途のための1つ以
上の因子及び/又は他の薬剤を含む馴化培地を産生する目的のために、1つ以上の薬剤及
び/又は1つ以上の培養条件に曝露される。
【0027】
特定の場合において、線維芽細胞(1つ以上の特定の剤及び/又は培養条件への曝露後
)は馴化培地の供給源として利用される;特定の場合において、馴化培地は1つ以上の特
定の成長因子又は他の薬剤を含む。特定の実施形態において、線維芽細胞によって産生さ
れた馴化培地は将来の使用のために保存されるか、又は培地は最初に保存されることなく
使用され得る。いくつかの場合において、線維芽細胞は馴化培地を産生し、そしてこの培
地は、線維芽細胞が得られた個体に提供される。他の場合において、線維芽細胞は馴化培
地を産生し、そしてこの培地は、線維芽細胞が得られたもの以外の個体に提供される。馴
化培地は、患者特異的コンテクスト(自己線維芽細胞を使用)又はユニバーサルドナーコ
ンテクスト(同種線維芽細胞を使用)で生成することができる。
【0028】
特定の実施形態では、線維芽細胞馴化培地は、例として、創傷治癒の促進、血管新生の
誘導を含む任意の適用のために、及び/又は美容手段のために利用されてもよい。特定の
実施形態において、線維芽細胞は、再生特性を増強する条件に曝露され、間葉系幹細胞を
含む幹細胞の補充物又は代替物として個体に投与される。一実施形態において、線維芽細
胞は、椎間板再生の刺激のために椎間板内を含む、個体の特定の部位に注射される。本明
細書中に開示されるような線維芽細胞再生活性の増強は、低酸素への最初の曝露に続いて
HO-1を刺激する条件(特定の場合において、例えば、CO)への曝露を含む2工程プ
ロセスによって達成され得る。
【0029】
本開示の一態様では、線維芽細胞からの馴化培地産物の力価を分析することができる。
特定の実施形態において、馴化培地は、例えば、タンパク質産生を評価するために分析さ
れ得る。このようなアッセイは、当業者に周知である。
【0030】
馴化培地は抗炎症活性について分析され得、例えば、馴化培地は抗炎症剤として、又は
1つ以上の他の抗炎症剤と共に使用され得るように、抗炎症活性を有し得る。抗炎症活性
の定量化のために、用語「炎症」は物理的外傷、感染、慢性疾患、及び/又は外部刺激に
対する化学的及び/又は生理学的反応(例えば、アレルギー応答の一部として)によって
誘発され得る、局所的又は全身的保護応答によって特徴付けられる任意の状態を含むこと
が、当業者によって理解される。傷害物質と傷害組織の両方を破壊、希釈又は隔離するの
に役立つ任意のそのような反応は、例えば、熱、腫脹、痛み、発赤、血管の拡張及び/又
は血流の増加、白血球による患部への侵入、機能の喪失及び/又は炎症状態と関連するこ
とが知られている任意の他の症状によって発現され得る。従って、用語「炎症」はまた、
任意の炎症性疾患、障害又は状態自体、それに関連する炎症成分を有する任意の状態、及
び/又は症状として炎症を特徴とする任意の状態(とりわけ、急性、慢性、潰瘍性、特異
的、アレルギー性及び壊死性炎症、並びに当業者に公知の他の形態の炎症を含む)を含む
と理解される。従って、この用語はまた、本開示の目的のために、炎症性疼痛及び/又は
炎症によって引き起こされる発熱を含む。
【0031】
一実施形態では、馴化培地は、エクスビボ体外環境で生成される。具体的には、目的の
線維芽細胞は、体外で、(例えば、1つ以上の基質上及び/又は中)で増殖される。特定
の実施形態では、細胞は、例えば、連続体外システムに接続された中空繊維フィルターの
外側で増殖される。中空繊維系は、宿主細胞を線維芽細胞と交換することなく、循環血液
細胞と中空繊維の外側の培養細胞との間のタンパク質の交換を可能にするのに十分なサイ
ズの孔を中空繊維中に有する。一実施形態において、線維芽細胞馴化培地は、その活性を
増大させるために、1つ以上の免疫抑制剤と組み合わせて使用される。
【0032】
線維芽細胞馴化培地は疾患寛解の処置及び/又は維持のために単独で使用されてもされ
なくてもよいが、いくつかの実施形態において、1つ以上の免疫抑制剤の投与が特定の方
法において利用されてもよい。さらに、免疫抑制剤は、「誘導療法」に有用であり得る。
所望の疾患及び応答に依存して、種々の免疫抑制剤から選択することが当業者に公知であ
る。例えば、いくつかの免疫抑制剤(例えば、抗CD52抗体)は、T細胞及びB細胞の
全身的な枯渇が所望される場合に使用され得る。他の場合には、制御性T細胞活性を同時
に刺激する薬剤(例えば、ラパマイシン)が望ましい場合がある。当業者は、シクロスポ
リン、ラパマイシン、カンパス-1H、ATG、プログラフ、抗IL-2r、MMF、F
TY、LEA、シクロスポリンA、ジフチトックス、デニロイキン、レバミソール、アザ
チオプリン、ブレキナール、グスペリムス、6-メルカプトプリン、ミゾリビン、ラパマ
イシン、タクロリムス(FK-506)、葉酸類似体(例えば、デノプテリン、エダトレ
キサート、メトトレキサート、ピリトレキシム、プテロプテリン、トムデクス(登録商標
)、及びトリメトレキサート)、プリン類似体(例えば、クラドリビン、フルダラビン、
6-メルカプトプリン、チアミプリン、及びチアグアニン)、ピリミジン類似体(例えば
、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ドキシ
フルリジン、エミテフル、エノシタビン、フロクスウリジン、フルオロウラシル、ゲムシ
タビン、及びテガフール)、フルオシノロン、トリアミノロン、アネコルタブ酢酸塩、フ
ルオロメトロン、メドリゾン、プレドニゾロン等を含む、免疫抑制を引き起こすためのい
くつかの薬剤の例を導きうる。別の実施形態において、幹細胞馴化培地の使用は、既存の
抗炎症剤を増強するために使用され得る。抗炎症剤は、NSAID、インターロイキン-
1アンタゴニスト、ジヒドロオロテートシンターゼ阻害剤、p38 MAPキナーゼ阻害
剤、TNF-α阻害剤、TNF-α隔離剤、及びメトトレキサートを含む1以上の薬剤を
含み得る。より具体的には、抗炎症剤は、例えば、抗TNF-α、リゾフィリン、α1-
アンチトリプシン(AAT)、インターロイキン-10(IL-10)、ペントキシフィ
リン、COX-2阻害剤、21-アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン、アルゲ
ストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾ
ン、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステ
ロン、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコルト、デソニド、デソキシメタゾン、デ
キサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、エノキソロン、
フルアザコルト、フルオロクロニド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセ
トニド、フルプレドニデン酢酸塩、フルプレドニソロン、フルランドレノリド、フルチカ
ゾンプロピオン酸エステル、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロベタゾールプロピオン
酸エステル、ハロメタゾン、ハロプレドン酢酸エステル、ヒドロコルタメート、ヒドロコ
ルチゾン、ロテプレドノールエタボン酸エステル、マジプレドン、メドリゾン、メプレド
ニゾン、メチルプレドニソロン、モメタゾンフランカルボン酸エステル、パラメタゾン、
プレドニカルバート、プレドニゾロン、プレドニゾロン25-ジエチルアミノ-酢酸エス
テル、プレドニゾン、プレドニバール、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトー
ル、チアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド、トリ
アムシノロンヘキサアセトニド、アミノアリールカルボン酸誘導体(例えば、エンフェナ
ム酸、エトフェナマート、フルフェナム酸、イソニキシン、メクロフェナミン酸、メフェ
ナム酸、ニフルム酸、タルニフルマート、テロフェナマート、トルフェナム酸)、アリー
ル酢酸誘導体(例えば、アセクロフェナク、アセマタシン、アルクロフェナク、アムフェ
ナク、アムトルメチングアシル、ブロムフェナク、ブフェキサマク、シンメタシン、クロ
ピラク、ジクロフェナクナトリウム、エトドラク、フェルビナク、フェンクロジン酸、フ
ェンチアザック、グルカメタシン、イブフェナック、インドメタシン、イソフェゾラク、
イソクセパック、ロナゾラク、メチアジン酸、モフェゾラク、オキサメタシン、ピラゾラ
ク、プログルメタシン、スリンダク、チアラミド、トルメチン、トロペシン、ゾメピラク
)、アリール酪酸誘導体(例えば、ブマジゾン、ブチブフェン、フェンブフェン、ゼンブ
シン)、アリールカルボン酸(例えば、クリダナク、ケトロラク、チノリジン)、アリー
ルプロピオン酸誘導体(例えば、アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ベルモプロ
フェン、ブクロキシン酸、カルプロフェン、フェノプロフェン、フルノキサプロフェン、
フルビプロフェン、イブプロフェン、イブプロキサム、インドプロフェン、ケトプロフェ
ン、ロキソプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピケトプロフェン、ピルプロフ
ェン、プラノプロフェン、プロチジン酸、スプロフェン、チアプロフェン酸、キシモプロ
フェン、ザルトプロフェン)、ピラゾール(例えば、ジフェナミゾール、エピリゾール)
、ピラゾロン(例えば、アパゾン、ベンズピペリロン、フェプラゾン、モフェブタゾン、
モラゾン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、ピペブゾン、プロピフェナゾン、
ラミフェナゾン、スキシブゾン、チアゾリノブタゾン)、サリチル酸誘導体(例えば、ア
セトアミノサロール、アスピリン、ベノリラート、ブロモサリゲニン、アセチルサリチル
酸カルシウム、ジフルニサル、エテルサル酸、フェンドサール、ゲンチジン酸、サリチル
酸グリコール、サリチル酸イミダゾール、アセチルサリチル酸リジン、メサラミン、サリ
チル酸モルホリン、サリチル酸1-ナフチル、オルサラジン、パルサルミド、アセチルサ
リチル酸フェニル、サリチル酸フェニル、サラセタミド、サリチルアミド-O-酢酸、サ
リチル硫酸、サルサラート、スルファサラジン)、チアジンカルボキサミド(例えば、ア
ンピロキシカム、ドロキシカム、イソキシカム、ロルノキシカム、ピロキシカム、テノキ
シカム)、ε-アセトアミドカプロン酸、s-アデノシルメチオニン、3-アミノ-4-
ヒドロキシ酪酸、アミキセトリン、ベンダザック、ベンジダミン、α-ビサボロール、ブ
コローム、ジフェピラミド、ジタゾール、エモルファゾン、フェプラジノール、グアヤズ
レン、ナブメトン、ニメスリド、オキサセプロール、パラニリン、ペリソキサール、プロ
クアゾン、スーパーオキシドジスムターゼ、テニダップ、ジロイトン(zileuton
)、カンデリラワックス、αビサボロール、アロエベラ、マンジスタ、グッガル、コーラ
エキス、カモミール、シーホイップエキス、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、油溶
性甘草エキス、グリチルリチン酸一アンモニウム、グリチルリチン酸一カリウム、グリチ
ルリチン酸二カリウム、1-ベータ-グリチルリチン酸、ステアリルグリチルリチン酸、
及び、3-ステアリルオキシ-グリチルレチン酸、3-スクシニルオキシ-ベータ-グリ
チルレチン酸二ナトリウム、又はそれらの組み合わせを含みうる。
【0033】
本開示において利用される線維芽細胞は、一実施形態では、レシピエント自身の皮膚(
自己調製物の場合)、又は1人以上の健康なドナーの皮膚(同種調製物の場合)の生検か
らの増殖によって生成され得る。いくつかの実施形態において、線維芽細胞は、若いドナ
ーから使用されるが、ドナーは新生児、乳児、小児、青年、成人、又は高齢者を含む任意
の年齢であり得る。別の実施形態において、線維芽細胞は、1つ以上の遺伝子でトランス
フェクトされる。特定の例において、線維芽細胞は、増強された増殖及びヘイフリック限
界の克服を可能にするために、1つ以上の遺伝子でトランスフェクトされる。このような
遺伝子の例には、テロメラーゼ、hTERT、及び/又はRAS、c-myc、RAF、
若しくはbcr-ableなどの1つ以上の癌遺伝子が含まれる。細胞の誘導に続いて、
線維芽細胞は、標準的な細胞培養技術を使用して培養物中で増殖され得る。皮膚組織(真
皮及び表皮層)は、いくつかの場合において、被験体の耳介後領域から生検され得る。一
実施形態では、出発材料が標準的な無菌実施を使用して収集された複数の3mmパンチ皮
膚生検からなる。生検は、医師によって収集され、滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)
を含むバイアルなどの適切な緩衝液を含む容器に配置され得る。生検材料は使用前に輸送
することができ、例えば、適切な温度(例えば、2~8℃)で輸送することができる。生
検材料は、製造施設に適切に輸送することができる。一実施形態では、製造施設に到着し
た後、生検材料を検査し、受け入れられると、製造エリアに直接移送することができる。
【0034】
細胞を調製するプロセスの開始時に、生検組織は酵素消化の前に洗浄され得る(例えば
、洗浄され得る)。洗浄後、コラゲナーゼ及び/又は中性プロテアーゼ酵素の混合物(例
えば、LiberaseTM Digestive Enzyme Solution(Lonza Walkersville, Inc.(Walkersvil
le,Md)又はRoche Diagnostics Corp.((Indianapolis, Ind.))を、細切かどうかを問
わず、組織に添加し、次いで、生検組織を、適切な温度及び持続時間(例えば、37.0
±2℃)で1時間インキュベートし得る。生検組織消化の時間は、培養中の細胞の生存率
及び増殖速度に影響を及ぼし得るプロセスパラメータである。LiberaseTMの代わりに、Se
rva Collagenase NB6(ハイデルベルク,ドイツ)のような他の市販のコラゲナーゼを使
用してもよい。消化後、酵素を中和するために添加され得る、開始増殖培地(IMDM、
GA、10%ウシ胎仔血清(FBS))などの適切な培地が、消化された材料に提供され
得る。細胞は遠心分離などによってペレット化され、5.0mLの開始増殖培地に再懸濁
することができる。あるいは、遠心分離は行われず、酵素の完全な不活性化は、培地(例
えば、開始増殖培地)のみの添加によっても生じる。細胞増殖及び増殖の開始のために、
細胞懸濁液を適切な容器(例えば、T-175細胞培養フラスコ)に播種する前に、増殖
開始培地を添加し得る。場合によっては、T-75フラスコの代わりにT-75フラスコ
、T-150フラスコ、T-185フラスコ又はT-225フラスコを使用することがで
きる。細胞を37±2.0℃で5.0±1.0%CO2と共にインキュベートし、3~5
日毎などの適当な間隔で完全増殖培地などの新鮮な培地を供給する。プロセスにおける供
給は培地(完全増殖培地など)の一部(約半分など)を除去し、同じ容量の新鮮な培地で
置き換えることによって行うことができる。あるいは、完全なフィードを行うことができ
る。一実施形態において、細胞は、継代前の特定の日数(例えば、約30日)を超えてフ
ラスコ中に残されず、そして継代の少なくとも24時間前に残され得る。プロセス全体を
通して、培養分裂の間の適切な播種密度を確実にするために、コンフルエンスがモニター
される。細胞コンフルエンスが容器中の特定のパーセンテージ(約40%~約70%など
)以上である場合、使用済み培地を除去し、細胞を洗浄し、トリプシン-EDTAで処理
して、フラスコ中の接着細胞を溶液中に放出させることによって、細胞を継代することが
できる。次いで、細胞をトリプシン処理し、適切な容器(例えば、T-500フラスコ)
に播種して、細胞増殖を続けることができる。あるいは、1つ又は2つのT-300フラ
スコ、1層セルスタック(1CS)、1層セルファクトリ(1CF)又は2層セルスタッ
ク(2CS)を、T-500フラスコの代わりに使用することができる。形態は、各継代
において、及び採取の前に評価されて、プロセス全体を通して培養物純度をモニターし得
る。形態は、例えば、観察された検体を、細胞培養物の形態学的試験のための視覚的標準
と比較することによって評価され得る。細胞は、培養単層中で増殖する場合、典型的な線
維芽細胞形態を示す。細胞は、細長い延長部を有する細長い紡錘形又は紡錘形の外観を示
すか、又は細胞質の前縁を有し得る、より大きく平坦な星状細胞として現れ得る。これら
の形態の混合物も観察され得る。よりコンフルエントでない領域の線維芽細胞は同様の形
状であり得るが、ランダムに配向し得る。細胞培養物中のケラチノサイトの存在も評価す
ることができる。ケラチノサイトは丸く不規則な形状に見え、そしてより高いコンフルエ
ンスでは、それらは玉石のフォーメーションで組織化されて見える。より低いコンフルエ
ンスでは、ケラチノサイトが小さなコロニーで観察され得る。細胞を37±2.0℃で5
.0±1.0%CO2と共にインキュベートし、T-500フラスコ中では3~5日毎に
、10層セルスタック(10CS)では5~7日毎に継代する。いくつかの実施形態では
、細胞は、継代前に10日を超えてT-500フラスコ中に留まるべきではない。原薬の
安全性に関する品質管理(QC)放出試験には、無菌試験及びエンドトキシン試験が含ま
れる。T-500フラスコ中の細胞コンフルエンスが約95%になると、細胞は、10C
S培養容器に継代される。あるいは、2つの5層セルスタック(5CS)又は10層セル
ファクトリ(10CF)が10CSの代わりに使用され得る。10CSへの継代は、使用
済み培地を除去し、細胞を洗浄し、トリプシン-EDTAで処理して、フラスコ中の接着
細胞を溶液中にリリースことによって行われる。その後、細胞を10CSに移す。追加の
完全増殖培地を加えてトリプシンを中和し、T-500フラスコからの細胞を、新鮮な完
全増殖培地を含む2Lボトルにピペットで移す。2Lボトルの内容物を10CSに移し、
全ての層に播種する。次に、細胞を37±2.0℃で5.0±1.0%CO2と共にイン
キュベートし、5~7日毎に新鮮な完全増殖培地を供給する。特定の実施形態において、
細胞は、継代の前に20日を超えて10CS中に留まるべきではない。一実施形態では、
継代された皮膚線維芽細胞は、タンパク質を含まない培地であるPrimary har
vestに増殖した線維芽細胞を一定期間インキュベートすることによって、培養培地中
に存在する免疫原性タンパク質を実質的に含まないようにされる。10CS中の細胞集密
度が95%以上である場合、細胞が収穫される。回収は使用済み培地を除去し、細胞を洗
浄し、トリプシン-EDTAで処理して接着細胞を溶液中にリリースさせ、追加の完全増
殖培地を添加してトリプシンを中和することによって行うことができる。細胞は、遠心分
離によって収集され、再懸濁され、そしてインプロセスQC試験を実施して、全生存細胞
数及び細胞生存率が決定される。
【0035】
いくつかの実施形態では、一次10CS採取からの細胞計数結果を受け取った後に多数
の細胞が必要とされる場合、複数の細胞スタック(最大4つの10CS)へのさらなる継
代が行われてもよい。さらなる継代のために、初代採取物からの細胞を、新鮮な完全増殖
培地を含有する2L培地ボトルに添加する。再懸濁した細胞を多重細胞スタックに添加し
、5.0±1.0%CO2と共に37±2.0℃でインキュベートする。特定の実施形態
において、細胞コンフルエンスが細胞採取の前に80%以上であることを除いて、細胞ス
タックは、上記のように供給され、そして採取される。採取手順は、上記の一次採取につ
いて記載したものと同じであってもよい。細胞及び使用済み培地からのマイコプラズマ試
料を採取し、細胞計数及び生存率を、上記の一次採取について記載したように実施する。
この方法は、動物由来の試薬からの免疫原性タンパク質の導入を回避することによって、
免疫原性タンパク質を減少又は排除する。工程残留物を減らすために、細胞は、タンパク
質を含まない凍結培地中に凍結保存し、次いで解凍し、洗浄してから、残留物をさらに減
らすために、最終注入の前処理を行う。さらなる継代からの細胞の採取及び凍結保存が完
了した後に、さらなる薬物物質が必要な場合、凍結薬物物質のアリコート凍結バイアルを
解凍し、5CS又は10CS培養容器に播種するために使用する。あるいは、5CS又は
10CSの代わりに、4層セルファクトリ(4CF)、2つの4CF、又は2つの5CS
を使用することができる。細胞の凍結した凍結バイアルを解凍し、洗浄し、新鮮な完全増
殖培地を含有する2L培地ボトルに添加し、上記のように培養し、回収し、凍結保存する
。細胞懸濁液は、細胞コンフルエンスが細胞採取前に80%以上になるよう添加される。
【0036】
培養増殖の完了時に、細胞を回収し、洗浄し、次いで、2.2×107細胞/mLを目
標に、1.0~2.7×107細胞/mLを含有するように処方する。あるいは、目標は
、異なる適応用量を調節して、製剤範囲内で調整される。原薬は、Iscove社のModified D
ulbecco’s Medium(IMDM)及びProfreeze-CDM.TM(Lonza, Walkerville,Md)+7.5%ジ
メチルスルホキシド(DMSO)からなる凍結保存培地のような適切な培地中に懸濁され
た、生存可能な自家繊維芽細胞の集団を含む。あるいは、7.5%の代わりにより低いD
MSO濃度を使用してもよく、又はCryoStorTMCS5又はCryoStorTMCS10(BioLife Solutio
ns, Bothell, WA)を、IMDM/Profreeze/DMSOの代わりに使用してもよい。細胞数及び生存
率に加えて、薬物物質の純度/同一性が実施され、懸濁液が98%以上の線維芽細胞を含
有することを確認しなければならない。通常の細胞汚染物質には、ケラチノサイトが含ま
れる。純度/同定アッセイは、線維芽細胞集団のパーセント純度を定量するために、CD
90及びCD104(それぞれ、線維芽細胞及びケラチノサイト細胞についての細胞表面
マーカー)に対する蛍光タグ化抗体を使用する。CD90(Thy-1)は、35kDa
の細胞表面糖タンパク質である。CD90タンパク質に対する抗体は、ヒト線維芽細胞に
対して高い特異性を示すことが示されている。CD104、インテグリンβ4鎖は、イン
テグリンα6鎖(CD49f)と会合してアルファ6/ベータ4複合体を形成する205
kDa膜貫通糖タンパク質である。この複合体は、ケラチノサイト細胞の分子マーカーと
して作用することが示されている(Adams and Watt 1991)。
【0037】
CD104タンパク質に対する抗体は、ヒト線維芽細胞の100%に結合する。細胞数
及び生存率はViacount Dye Reagentと共に検体をインキュベートし、Guava PCAシステム
を使用して検体を分析することによって決定される。この試薬は2つの色素、すなわち、
全ての有核細胞を染色する膜透過性色素、及び損傷細胞又は死細胞のみを染色する膜不透
過性色素から構成される。この色素組み合わせを使用することで、Guava PCAシステムで
サンプル中に存在する細胞の総数を推定すること、及びどの細胞が生存可能であるか、ア
ポトーシス性であるか、又は死んでいるかを決定することができる。この方法は、自家培
養線維芽細胞の純度/同一性を決定する際に使用するために特別にカスタム開発された。
あるいは、細胞がT-175フラスコ(又は代替品)又はT-500フラスコ(又は代替
品)のいずれかから、細胞増殖表面としてマイクロキャリアを含むスピナーフラスコに継
代され得る。マイクロキャリアは、懸濁培養における足場依存性細胞の増殖表面として使
用される小さなビーズ様構造である。それらは、小さな体積で大きな細胞収率を生じるよ
うに設計される。この装置において、50mL~300mLの範囲の体積の完全増殖培地
を、500mL、IL又は2Lの滅菌使い捨てスピナーフラスコに添加する。滅菌マイク
ロキャリアをスピナーフラスコに添加する。培養物を静置させるか、又は5.0±1.0
%CO2インキュベーターを用いて37±2.0℃で短時間(1~24時間)低回転数(
15~30RRM)の撹拌プレート上に置き、細胞を担体に接着させる。アタッチメント
期間が終了すると、スピンプレートの速度が上がる(30~120RPM)。細胞には、
1~5日毎に、又は色の変化によって培地が消費されたように見える場合に、新鮮な完全
増殖培地を供給する。マイクロキャリアをサンプリングし、細胞を単離し、そして細胞計
数及び生存率分析を行うことによって、規則的な間隔で細胞を収集する。キャリア当たり
の細胞濃度を用いて、培養物をスケールアップする時期を決定する。十分な細胞が産生さ
れたら、細胞をPBSで洗浄し、トリプシン-EDTAを用いてマイクロキャリアから回
収し、より多量のマイクロキャリア及びより多量の完全増殖培地(300mL~2L)中
のスピナーフラスコに播種して戻す。あるいは、既存のマイクロキャリア培養物を含むス
ピナーフラスコに、追加のマイクロキャリア及び完全増殖培地を直接添加して、トリプシ
ン処理及び再播種を使用することなく、細胞の直接的なビーズ間移動を可能にすることが
できる。あるいは最初のT-175又はT-500フラスコから十分な細胞が産生される
場合、細胞はスケールアップした量のマイクロキャリアに直接播種され得る。アタッチメ
ント期間が終了すると、スピンプレートの速度を上げる(30 ~120RPM)。細胞
には、1~5日毎に、又は色の変化によって培地が消費されたように見える場合に、新鮮
な完全増殖培地を供給する。濃度が意図された指示のための所望の細胞数に達したとき、
細胞をPBSで洗浄し、トリプシン-EDTAを使用して回収する。使い捨てスピナーフ
ラスコ内で使用されるマイクロキャリアは、BioNOC II(商標)(Cesco Bioengineering,
distributed by Bellco Biotechnology, Vineland, N.J.)及びFibraCel(商標)(New
Brunswick Scientific, Edison, N.J.)、Cultispher-G(Percell Biolytica, Astrop, S
weden)等のゼラチン,、CytoporeTM(GE Healthcare, Piscataway, N.J.)等のセルロー
ス、又は2D MicroHexTM(Nunc, Weisbaden, Germany)、Cytodex(商標)(GE Healthcare
, Piscataway, NJ)又はHy-QSphereTM(Thermo Scientific Hyclone, Logan,UT)等のコ
ーティングされた/コーティングされていないポリスチレンから作られる。
【0038】
別の実施形態では、細胞がスピナーフラスコ器具の代わりに、FibraStageTM(New Brun
swick Scientific, Edison, N.J.)又はBelloCell(商標)(Cesco Bioengineering, dis
tributed by Bellco Biotechnology, Vineland, N.J.)などの自動ベローズシステムを使
用して、BioNOC II(商標)及びFibraCel(商標)などのポリブレンド2Dマイクロキャ
リア上で処理することができる。T-175(又は代替品)又はT-500フラスコ(又
は代替品)からの細胞を、適切な量の完全増殖培地を有するマイクロキャリアを含有する
ベローズボトルに継代し、システムに入れてもよい。そして反復的な固定サイクルにおい
て、このシステムは細胞に供給するためにマイクロキャリア上に培地をポンピングし、酸
素化を可能にするために培地を引き出す。細胞を上記と同じ順序でモニターし、給餌し、
洗浄し、そして回収する。あるいは、細胞が自動化システムを使用して処理され得る。生
検組織の消化後、又は最初の継代が完了した後(T-175フラスコ又は代替品)、細胞
を自動装置に播種することができる。1つの方法は、自動細胞増殖(ACE)システムで
あり、これは、細胞がヒトの介入なしに増殖され得る細胞増殖プラットフォームを形成す
るために、一緒に連結された一連の商業的に入手可能な、又はカスタムの製作コンポーネ
ントである。細胞は、足場依存性細胞付着を支持することができるディスクのスタックか
らなるセルタワー中で増殖される。システムは、自動的に培地を循環させ、細胞増殖段階
の完了時に採取のためにトリプシン処理を行う。
【0039】
あるいは、ACEシステムは、細胞増殖表面、送達チューブ、培地及び試薬からなるデ
ィスポーザブルコンポーネント、並びに加熱/冷却、培地移動及び自動プログラミングサ
イクルの実行のための機構及びコンピュータ処理能力を収容する永久ベースからなる、ス
ケールダウンした単一ロットユニットバージョンであり得る。受領後、各滅菌照射済みA
CE使い捨てユニットは、その包装から開封され、プレフィルドバッグを吊り下げ、バッ
グを無菌コネクタを介して既存のチューブに接続することによって、培地及び試薬が装填
される。プロセスは次のように続く:
a)生物学的安全キャビネット(BSC)内で、酵素的に消化された生検からの細胞の
懸濁液がすでに抗生物質を含む開始増殖培地で満たされている「前増殖チャンバー」(セ
ルタワーの上部の小ユニット)に導入される。BSCから、使い捨て部品はすでに定位置
にある恒久的なACEユニットに移される;
b)約3日後に、前増殖チャンバー内の細胞は、トリプシン処理され、完全増殖培地で
予め満たされているセルタワー自体に導入される。ここで、CO2注入によって引き起こ
される「気泡作用」は細胞が下方に螺旋状に移動し、均一に分布した様式でディスクの面
上に定着するような速度で培地を循環させる;
c)約7日間、細胞は増殖させる。このとき、コンフルエンスを確認し(記載時の方法
は不明)、培養物が増殖していることを確認する。また、この時点で、完全増殖培地は、
新鮮な完全増殖培地と置き換えられる。CGMは適切な間隔で、例えば、7日毎に3~4
週間、交換され得る。培養期間の終わりに、コンフルエンスをもう一度チェックして、意
図した処理のために所望の量の細胞をおそらく産生するのに十分な増殖があることを確認
する;
d)培養物が十分にコンフルエントである場合、それを回収する。使用済み培地(上清
)を容器から排出する。次いで、PBSは(培地を洗浄するために、細胞からFBSを)
容器にポンプ輸送され、ほぼ直ちに排出される。トリプシン-EDTAは、成長表面から
細胞を切り離すために容器に吸入される。トリプシン/細胞混合物は、容器から排出され
、スピンセパレーターに入る。凍結保存剤を容器にポンプで送り込んで、ディスクの表面
から残留細胞をリンスし、スピンセパレータにも送る。スピンセパレーターは細胞を収集
し、次いで、輸送/注入培地中に細胞を均一に再懸濁する。スピンセパレーターから、細
胞は、インライン自動化細胞計数デバイス、又は実験室分析による細胞計数及び生存率試
験のために収集されたサンプルを通って送られる。特定の数の細胞がカウントされ、適切
な細胞濃度に達したら、採取された細胞は、低温凍結のために試料をアリコートするため
に除去することができる、収集バイアルに送達される。
【0040】
別の実施形態では、自動化ロボットシステムを使用して、プロセスの全長又は一部の間
、細胞供給、継代、及び採取を行ってもよい。細胞は、消化の直後にロボットデバイスに
導入されてT-175フラスコ(又は代替)に播種されてもよい。このデバイスは、細胞
をインキュベートし、細胞計数及び生存率分析を行い、そして供給及びより大きな培養容
器への移送を行う能力を有し得る。システムはまた、個々のロットを追跡するためのコン
ピュータ化されたカタログ機能を有する可能性がある。既存の技術又はカスタマイズされ
たシステムが、ロボットオプションのために使用されてもよい。
【0041】
一実施形態では、線維芽細胞は、成長因子含有混合物を含む混合物などの1つ又は複数
の成長因子と接触させることによって、低酸素/一酸化炭素に曝露する前に予備活性化さ
れる。混合物は、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、線維芽細胞増殖因子(FG
F)、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮成長因子(EGF)、血管内皮増殖因子(
VEGF)、インスリン様成長因子(IGF)、血小板由来内皮増殖因子(PDEGF)
、血小板由来血管新生因子(PDAF)、血小板因子4(PF-4)、肝細胞増殖因子(
HGF)、及びこれらの混合物からなる群から選択される成長因子を含み得る。特定の実
施形態では、成長因子がトランスフォーミング増殖因子(TGF)、血小板由来増殖因子
(PDGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、又はそれらの混合物である。特定の実施
形態では、成長因子は、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)、血小板由来増
殖因子BB(PDGF-BB)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、及びそれらの
混合物からなる群より選択される。本開示の別の実施形態では、成長因子含有組成物は、
線維芽細胞の送達と同時に、又はその後に提供され、そのいずれか又は両方が注射され得
る。線維芽細胞は、自己、同種、又は異種であり得る。いくつかの実施形態において、血
小板血漿組成物は、線維芽細胞と一緒に、又は線維芽細胞とは別個に、例えば、線維芽細
胞の投与後に投与される。血小板血漿組成物は、血小板及び血漿を含むか、本質的にそれ
らからなるか、又はこれらからなり得、そして例えば、骨髄又は末梢血に由来し得る。本
開示はこれらの供給源のいずれか又は両方からの血小板血漿組成物を使用し得、そしてい
ずれかの血小板血漿組成物が、それを必要とする核(nucleus)又は輪部(annulus)のい
ずれかを再生するために使用され得る。さらに、血小板血漿組成物は、濃縮骨髄(BMA
C)を伴って、又は伴わずに使用され得る。例として、輪部に挿入される場合、0.05
~2.0ccの血小板血漿組成物が使用され得、そして核に挿入される場合、0.05~
3.0ccの血小板血漿組成物が使用され得る。血小板は、前述のように骨髄及び末梢血
中に認められる非有核の血液細胞である。それらは、出血や組織治癒をコントロールする
など、いくつかの重要な機能を有する。当業者が知っているように、組織治癒を促進する
能力は、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-
β)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、インスリン様成長因子-1(IGF-1)、結合
組織成長因子(CTGF)及び/又は血管内皮増殖因子(VEGF)を含む、それらが産
生する多くの成長因子による。
【0042】
II.線維芽細胞の使用方法
【0043】
本開示の実施形態は個体の治療目的のために調製された線維芽細胞を含み、いくつかの
場合には、線維芽細胞からの馴化培地は、調製された線維芽細胞に加えて、又はその代わ
りに個体に提供される。
【0044】
再生活性が増強されるような本明細書に包含される線維芽細胞の調製に続いて、適切な
数の線維芽細胞が、必要な場合には複数の送達を含む、それを必要とする1つ以上の個体
に提供される。本開示は、液体培地中での線維芽細胞集団の増殖を介して治療産物を生成
し、それを必要とする1つ以上の個体にそれを提供する方法を含む。一実施形態では、少
なくとも炎症性、自己免疫性、及び/又は変性状態を含む、少なくとも1つの医学的状態
の処置に有用な、調製された線維芽細胞及び/又は馴化培地を含む薬剤を生成する方法が
ある。特定の実施形態において、線維芽細胞は、線維芽細胞が適切なレベル及び適切な曝
露で低酸素及び/又はCOに曝露されるように、線維芽細胞の培養を通して調製される。
いくつかの場合において、例えば、特定の場合においてHIF-1α及びヘムオキシゲナ
ーゼをそれぞれ刺激するのに十分な曝露の濃度及び時間の両方で、低酸素が最初に線維芽
細胞に提供され、その後、続いて一酸化炭素が提供され得る。
【0045】
馴化培地を調製するために、多くのタイプの培地が当業者によって使用され得る。一実
施形態では、培地は、アルファMEM、DMEM、RPMI、Opti-MEM、IME
M、及びAIM-Vを含む群から選択される。細胞はウシ胎仔血清又は他の増殖因子を含
んでも含まなくてもよい増殖のための種々の培地中で培養され得る;しかし、治療用上清
の収集のために、特定の実施形態において、細胞は、実質的に血清を欠く培地に移される
。いくつかの実施形態において、馴化培地は、処置を必要とする個体に直接提供され得る
。投与前の馴化培地の調製は様々な手段によって行うことができ、例えば、馴化培地を濾
過滅菌することができ、又はいくつかの条件で濃縮することができることは、当技術分野
で周知である。特定の実施形態において、馴化培地は、単独で、又は再生特性を有する細
胞と組み合わせて、再生活性の誘導のために投与される。
【0046】
いくつかの実施形態において、調製された細胞及び/又は馴化培地は、培養された線維
芽細胞及び/又はそこからの馴化培地を投与することによって創傷の治癒を促進する方法
のために利用される。創傷の例には、上皮創傷及び/又は瘻孔が含まれる。特定の実施形
態では、培養線維芽細胞及び/又はそこからの馴化培地を投与することによって、個体の
声帯欠損に亜隣接する組織を増強する方法が存在する。特定の実施形態では、調製された
細胞及び/又は馴化培地は、声帯瘢痕の治療、並びに/又は線維性損傷、炎症損傷、萎縮
、及び/又は熱傷損傷などの皮膚及び軟組織欠損の修復の方法に利用される。
【0047】
調製された線維芽細胞は、特定の実施形態ではHO-1が増強されており、間葉系幹細
胞を含む幹細胞が有用であろう多くの状況において、様々な治療適応症に有用である。個
体に提供され得る細胞の量の例としては、10,000/kg~3億/kgの範囲が挙げ
られる。
【0048】
いくつかの実施形態では、調整培地は、単独で、又は線維芽細胞と共に、医薬製剤のた
めの活性成分として使用される。これは低酸素/一酸化炭素線維芽細胞馴化培地治療剤単
独の投与を含み得るが、いくつかの場合には、経口投与のための錠剤、カプセル又はエリ
キシル、直腸投与のための座薬、非経口又は筋肉内投与のための滅菌溶液又は懸濁液、リ
ポソーム又はカプセル化製剤、治療剤が単独であるか又は送達剤又はビヒクルに結合され
た製剤などを含む、公知の医薬製剤による投与を含む。本開示の治療実体(調製された線
維芽細胞を含む)は、適切なキャリア、賦形剤、及び/又は改善された送達、耐性などを
提供するために製剤に組み込まれる他の薬剤と共に投与され得ることが理解される。多く
の適切な製剤が、すべての製剤化学者に知られている処方に見出される:Remington's Ph
armaceutical Sciences (15th ed, Mack Publishing Company, Easton, Pa. (1975)),特
にChapter 87 by Blaug, Seymourの中。これらの製剤には、例えば、粉末、ペースト、軟
膏、ゼリー、ワックス、オイル、脂質、脂質(カチオン性又はアニオン性)含有小胞(例
えば、リポフェクチンTM)、DNA結合体、無水吸着ペースト、油中水型及び水中油型
エマルジョン、エマルジョンカルボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)
、半固体ゲル、及びカルボワックスを含有する半固体混合物が含まれる。製剤中の活性成
分が製剤によって不活性化されず、製剤が投与経路と生理学的に適合性であり、許容可能
であるという条件で、前述の混合物のいずれも、本開示による治療及び治療において適切
であり得る。Powell et al. "Compendium of excipients for parenteral formulations"
PDA J Pharm Sci Technol 52:238-311 (1998)及び医薬化学者に周知の賦形剤及び担体
に関するさらなる情報についてのその中の引用も参照されたい。本開示の一実施形態では
、本開示の1つ以上の薬剤は、送達のためにナノ粒子にナノカプセル化される。ナノカプ
セル化材料は、生分解性であっても非分解性であってもよい。ナノカプセル化材料は、合
成ポリマー、天然ポリマー、オリゴマー、又はモノマーから作製され得る。合成ポリマー
、オリゴマー、及びモノマーには、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(エチレ
ングリコール)(PEG)、並びにポリ(プロピレンオキシド)(PEG-co-PPO
)とのコポリマーなどのポリアルキレンオキシド前駆体分子から誘導されるもの、ポリ(
ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(エチルオ
キサゾリン)(PEOX)、ポリアミノ酸、及び擬似ポリアミノ酸、並びにこれらのポリ
マーのコポリマーなどが含まれる。Sawhney et al., Macromolecules 26:581-587 (1993)
。共重合体はまた、コンジュゲートが水溶性であるという条件で、他の水溶性ポリマー又
は水不溶性ポリマーで形成されてもよい。水溶性コンジュゲートの一例は、ポリエチレン
グリコールとポリプロピレンオキシドとのブロック共重合体であり、PluronicTM界面活性
剤(BASF)として市販されている。天然ポリマー、オリゴマー及びモノマーとしては
、天然又は組換え供給源から生成されるかにかかわらず、タンパク質(例えば、フィブリ
ノーゲン、フィブリン、ゼラチン、コラーゲン、エラスチン、ゼイン、及びアルブミン、
並びに多糖(例えば、アガロース、アルギン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デ
キストラン、デキストラン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、キトサン、ゲ
ランガム、キサンタンガム、グアーガム、水溶性セルロース誘導体、及びカラギーエン(
carrageen))が挙げられる。これらのポリマーは利用可能なナノカプセル化材料のタイ
プの単なる例示であり、カプセル化可能なナノカプセル化材料の全てを表すことを意図す
るものではない。一実施形態では、治療剤が局所製剤で投与される。局所製剤は、皮膚疾
患に関連する状態の治療に有用である。例えば、線維芽細胞馴化培地及び/又は調製され
た線維芽細胞の局所投与は、乾癬、強皮症、又は座瘡の処置のために行われ得る。局所投
与形態は、例えば、水性及び非水性ゲル、クリーム、多重エマルジョン、マイクロエマル
ジョン、リポソーム、軟膏、水性及び非水性溶液、ローション、エアロゾル、皮膚パッチ
、炭化水素基剤及び粉末からなり得、可溶化剤、浸透増強剤(例えば、脂肪酸、脂肪酸エ
ステル、脂肪アルコール及びアミノ酸)、並びに親水性ポリマー(例えば、ポリカルボフ
ィル及びポリビニルピロリドン)などの賦形剤を含有し得る。一実施形態において、薬学
的に受容可能な担体は、リポソーム又は経皮エンハンサーである。本発明の局所製剤は、
皮膚科学的に許容される担体、例えば、製剤の他の成分を皮膚に送達することができ、皮
膚によるこれらの成分の許容される適用又は吸収を可能にする物質を含むことができる。
担体は、典型的には治療薬を溶解又は分散させるための溶媒、及び任意選択で1つ又は複
数の賦形剤又は他のビヒクル成分を含む。本発明の局所製剤に従って有用な担体は、非限
定的な例として、水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコー
ル、ブタン-1,3-ジオール、アクリレートコポリマー、ミリスチン酸イソプロピル、
パルミチン酸イソプロピル、ミネラルオイル、バター、アロエ、タルク、植物油、植物ジ
ュース、植物抽出物、植物粉末、他の植物誘導体、ラノリン、尿素、石油製剤、タール製
剤、植物又は動物脂肪、植物又は動物油、石鹸、トリグリセリド、及びケラチンを含み得
る。本発明の局所製剤は当技術分野で周知の方法、例えば、Remington: The Science and
Practice of Pharmacy, 1577-1591, 1672-1673, 866-885 (Alfonso R. Gennaro ed. 19t
h ed. 1995); and Ghosh et al., Transdermal and Topical Drug Delivery Systems (19
97)によって提供される方法に従って、本発明の化合物を局所担体と混合することによっ
て調製される。他の実施形態において、保湿剤又は保湿剤、日焼け止め剤、香料、染料、
及び/又は増粘剤、例えばパラフィン、ホホバ、PABA、及びワックス、界面活性剤、
閉塞剤、吸湿剤、乳化剤、皮膚軟化剤、無脂質クレンザー、抗酸化剤及び親油性剤を、所
望であれば、本発明の局所製剤に添加してもよい。本開示の媒体及び/又は細胞の局所処
方物は、皮膚上に残留し、適用後すぐに洗浄されないように設計され得る。あるいは、局
所製剤が適用後、所与の時間内にすすぎ落とされるように設計されてもよい。
【0049】
一実施形態において、1つ以上の免疫学的疾患の処置は、低酸素/一酸化炭素線維芽細
胞処置馴化培地及び/又は調製された線維芽細胞を、多くの免疫疾患の場合にはリンパ節
にある治療活性のその部位に直接投与することによって行われる。例えば、治療剤は、リ
ンパ節に直接注射され得る。T細胞依存性活性化阻害剤のリンパ節内注入に好まれるリン
パ節は、鼠径部、わきの下及び頸部の領域に位置する主要なリンパ節である。別の実施形
態では、治療剤がその治療活性の部位の遠位に投与される。
【0050】
特定の実施形態では、調製された線維芽細胞及び/又はそれからの馴化培地で治療され
る医学的状態には、自己免疫疾患、変性疾患、炎症性疾患、及び線維性疾患が含まれる。
自己免疫疾患の例は、グレーブス病、ループス、I型糖尿病、多発性硬化症、関節リウマ
チなどである。変性疾患の例は、変性椎間板疾患、アルツハイマー病、癌、シャルコー-
マリー-トゥース病、II型糖尿病、心疾患、筋ジストロフィー、パーキンソン病、ハン
チントン病、黄斑変性症、脊髄性筋萎縮症、炎症性腸疾患、骨粗鬆症、変形性関節症、テ
イ-サックス病、原発性肺高血圧症などである。炎症性疾患(慢性又は急性の可能性があ
る)の例としては、喘息、結核、潰瘍性大腸炎、慢性消化性潰瘍、歯周炎、クローン病、
副鼻腔炎などが挙げられる。線維性疾患の例としては、肺線維症、放射線誘発性肺損傷、
肝硬変、心房線維症、心内膜心筋線維症、グリア瘢痕、ケロイド、骨髄線維症、強皮症な
どが含まれる。
【0051】
以下の実施例は本発明の好ましい具体例を示すために含める。以下の実施例に開示され
る技術は本発明の実施において良好に機能することが本発明者らによって発見された技術
を表し、従って、本発明の実施のための好ましい形態を構成すると考えることができるこ
とを、当業者には理解されたい。しかしながら、当業者であれば、本発明の開示を考慮し
て、開示されかつ同様の結果を得られる特定の実施例において、本発明の精神及び範囲か
ら逸脱することなく、多くの変更が可能であることは理解できるのであろう。
【実施例0052】
[実施例1:低酸素、一酸化炭素、又は一酸化炭素に続く低酸素、における線維芽細胞
の培養によるVEGF産生の相乗的刺激]
ATCCから購入した包皮線維芽細胞を、ATCCの線維芽細胞基礎培地を用いてT-
75フラスコ中で培養した。細胞が75%コンフルエンスに達したとき、以下に曝露した
:a)正常酸素;b)低酸素(2%酸素で4時間);c)一酸化炭素(250ppm)4
時間;又はd)低酸素、続いて一酸化炭素。細胞を、トリプシン処理によって、平底の9
6ウェルプレート上に再度プレーティングした。再度プレーティングした細胞の濃度は、
ウェル当たり0、10,000、20,000及び40,000細胞であった。培養24
時間後に培養培地を抽出し、ELISA(R&D Systems)を用いてVEGF産
生について分析した。
図1に見られるように、VEGF産生の相乗的増加が、組み合わせ
た処理によって観察された。正常酸素コントロールの線維芽細胞からはVEGF産生は認
められなかった。
【0053】
[実施例2:低酸素、一酸化炭素、又は一酸化炭素と同時に低酸素、の場合における線
維芽細胞の培養によるVEGF産生の刺激]
ATCCから購入した包皮線維芽細胞を、ATCCの線維芽細胞基礎培地を用いてT-
75フラスコ中で培養した。細胞が75%コンフルエンスに達したとき、以下に曝露した
;a)正常酸素;b)低酸素(2%酸素で4時間);c)一酸化炭素(250ppm)で
4時間;又はd)一酸化炭素と同時に低酸素。トリプシン処理によって平底の96ウェル
プレート上に細胞を再度プレーティングした。再度プレーティングした細胞の濃度は、ウ
ェル当たり0、10,000、20,000及び40,000細胞であった。培養24時
間後に培養培地を抽出し、ELISA(R&D Systems)を用いてVEGF産生
について分析した。
図2に見られるように、VEGF産生の相乗的増加が、組み合わせた
処理によって観察された。正常酸素コントロールの線維芽細胞からはVEGF産生は認め
られなかった。これらのデータは、一酸化炭素曝露がVEGF産生の増強のために低酸素
と相乗作用することを示唆する。
【0054】
本開示及びその利点を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義され
る設計の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更、置換、及び変更を本明細書で
行うことができることを理解されたい。さらに、本出願の範囲は、本明細書に記載された
プロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、及びステップの特定の実施形態に限定され
ることを意図していない。当業者であれば、本開示から容易に理解するように、本明細書
で説明される対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行するか、又は実質的に同じ結果
を達成する、現在存在するか又は後に開発されるプロセス、機械、製造、物質の組成、手
段、方法、又はステップを、本開示に従って利用することができる。従って、添付の特許
請求の範囲はその範囲内に、そのようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、又
はステップを含むことが意図される。