(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020393
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】新規なポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240206BHJP
C12N 11/06 20060101ALI20240206BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240206BHJP
C07G 99/00 20090101ALI20240206BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240206BHJP
A61K 38/21 20060101ALI20240206BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20240206BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20240206BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240206BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20240206BHJP
C12N 5/071 20100101ALN20240206BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20240206BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12N11/06
C12P21/08
C07G99/00 C
A61K39/395 D
A61K38/21
A61K38/19
A61K38/20
A61P43/00 111
C12N5/10
C12N5/071
C12N15/63 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023194056
(22)【出願日】2023-11-15
(62)【分割の表示】P 2022568561の分割
【原出願日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2021/048567
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021104094
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000181147
【氏名又は名称】持田製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【弁理士】
【氏名又は名称】星川 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【弁理士】
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】古迫 正司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勉
(72)【発明者】
【氏名】鳴海 智裕
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 愼吾
(57)【要約】 (修正有)
【課題】長期間に渡って細胞培養が可能となるアルギン酸ゲルファイバを提供する。
【解決手段】式(I)及び式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体を用いて架橋反応を行うことにより得られる架橋アルギン酸ゲルに包埋された抗体産生細胞又は生理活性物質産生細胞を含むコア層と、前記コア層を被覆するカチオン性ポリマー層を含む、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)及び式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体を用いて架橋反応を行うことにより得られる架橋アルギン酸ゲルに包埋された抗体産生細胞又は生理活性物質産生細胞を含むコア層と、前記コア層を被覆するカチオン性ポリマー層を含む、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ:
式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体は、下記式(I):
【化81】
[式(I)中、(ALG)は、アルギン酸を表わし;-NHCO-は、アルギン酸の任意のカルボキシル基を介したアミド結合を表わし;Akn-L
1-(Aknは環状アルキン基を表し;-L
1-は、環状アルキン基(Akn)と結合する2価のリンカーである)は、下記表:
【表72-1】
【表72-2】
に記載された部分構造式(各式中、破線右側は含まない)からなる群より選択される基である]で表される化学修飾アルギン酸誘導体であり;
式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体は、下記式(II):
【化82】
[式(II)中、(ALG)はアルギン酸を表わし;-NHCO-は、アルギン酸の任意のカルボキシル基を介したアミド結合を表わし;-L
2-は、下記表:
【表73】
に記載された部分構造式(各式中、両端の破線外側は含まない)からなる群より選択されるリンカーを表わす]で表される化学修飾アルギン酸誘導体。
【請求項2】
コア層に含まれる抗体産生細胞が、抗体を産生する遺伝子組換え動物細胞であって、その宿主細胞が、CHO細胞、CHO細胞亜株、COS細胞、Sp2/0細胞、NS0細胞、SP2細胞、PERC6細胞、YB2/0細胞、YE2/0細胞、1R983F細胞、Namalwa細胞、Wil-2細胞、Jurkat細胞、Vero細胞、Molt-4細胞、HEK293細胞、BHK細胞、HT-1080細胞、KGH6細胞、P3X63Ag8.653細胞、C127細胞、JC細胞、LA7細胞、ZR-45-30細胞、hTERT細胞、NM2C5細胞、及びUACC-812細胞からなる群から選択される細胞である、請求項1に記載のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ。
【請求項3】
コア層に含まれる生理活性物質産生細胞が、インスリン分泌細胞、膵島、膵島細胞、ドーパミン分泌細胞、脳下垂体細胞、成長ホルモン分泌細胞、副甲状腺細胞、神経成長因子分泌細胞、血液凝固因子分泌細胞、肝細胞、上皮小体細胞、エリスロポエチン分泌細胞、ノルエピネフリン分泌細胞及び生理活性物質発現ベクター(遺伝子組換え細胞)からなる群から選択される細胞である、請求項1に記載のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ。
【請求項4】
コア層に追加で含まれる成分が、アルギン酸溶液、アルギン酸ゲル、培地、培養液、コラーゲン溶液、メチルセルロース及びスクロース溶液からなる群から選択される成分である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ。
【請求項5】
カチオン性ポリマー層が、ポリアミノ酸、塩基性多糖類、及び塩基性ポリマーからなる群から選択されるカチオン性ポリマーである、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ。
【請求項6】
カチオン性ポリマー層が、ポリ-L-オルニチン(PLO)、ポリ-D-オルニチン(PDO)、ポリ-DL-オルニチン、ポリ-D-リジン(PDL)、ポリ-L-リジン(PLL)、ポリ-DL-リジン、ポリ-L-アルギニン(PLA)、ポリ-D-アルギニン(PDA)、ポリ-DL-アルギニン、ポリ-L-ホモアルギニン(PLHA)、ポリ-D-ホモアルギニン(PDHA)、ポリ-DL-ホモアルギニン、ポリ-L-ヒスチジン(PLH)、ポリ-D-ヒスチジン(PDH)、ポリ-DL-ヒスチジン、ポリメチレン-CO-グアニジン(PMCG)、ポリアリルアミン(PAA)、ポリビニルアミン(PVA)、ポリエチレンイミン、アリルアミン-ジアリルアミン共重合体、およびアリルアミン-マレイン酸共重合体からなる群から選択されるカチオン性ポリマーである、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造方法であって、
(1)抗体産生細胞又は生理活性物質産生細胞ならびに請求項1に記載の式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体が含まれる混合溶液を、2価金属イオンを含む溶液中に射出し、抗体又は生理活性物質を産生できる細胞を含む架橋アルギン酸ゲルファイバを得る工程、
(2)(1)で得られた抗体産生細胞又は生理活性物質産生細胞を含む架橋アルギン酸ゲルファイバを、カチオン性ポリマーを含む溶液に接触させることで、カチオン性ポリマー層で被覆されたポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを得る工程、
を含むことを特徴とする、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを用いる、抗体又は生理活性物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体、生理活性物質等の生産用のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ、当該ファイバの製造方法、及び当該ファイバを用いる抗体、生理活性物質等の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これ迄に、動物細胞を用いた培養による、抗体、生理活性物質(例えば、インターフェロン、エリスロポエチン、IL-2(インターロイキン-2)、CSF(コロニー刺激因子)、TNF(腫瘍壊死因子)、等)等の種々の生産方法が知られていた。
【0003】
抗体生産の場合、抗体産生細胞としては、CHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣由来)、Sp2/0細胞、NS0細胞等が宿主細胞として用いられ、とりわけ、CHO細胞は、浮遊培養が可能な細胞であり、又細胞の増殖速度が速く、CHO細胞の大量培養により、目的のタンパク質を大量生産することが容易なことから、抗体の製造に頻用されている。
【0004】
近年、抗体医薬品の開発・製造において、抗体医薬品の安定生産、低コスト化への取組みが求められており、それらを達成するべく、より生産性の高い効率的な生産システム(例えば、連続生産方法、小規模生産設備による必要な量の抗体産生の為の新規な培養技術、等)の開発が注目されている。
【0005】
抗体産生細胞の培養は、抗体産生細胞株をスピナーフラスコ等で細胞を起こした後に、培地組成・温度・攪拌条件・ガス交換・pH等の培養条件を制御しながら拡大培養を行い、最終的に数千から1万Lスケールの大規模な生産培養タンクにて培養が行われる。
【0006】
抗体産生細胞を高密度で連続培養する場合、(1)細胞と培養液の分離方法、(2)効果的な酸素の供給方法、等が問題になる場合がある。(1)および(2)について、種々の改善が図られているものの、抗体を効率的に生産させるためには、他の種々の問題を解決することが必要とされている。
【0007】
コア層に各種細胞が含まれ、シェル層がアルギン酸ゲルからなる、コア・シェル構造を有するアルギン酸ゲルファイバが知られている(特許文献1:国際公開第2011/046105号パンフレット、特許文献2:特開2016-77229号公報)。
【0008】
コア層に抗体産生細胞が含まれ、シェル層がアルギン酸ゲルからなる、コア・シェル構造を有するアルギン酸ゲルファイバが知られている(特許文献3:国際公開第2020/032221号パンフレット)。
【0009】
中空部に各種細胞が含まれ、外殻層がアルギン酸ゲルである、アルギン酸ゲル中空ファイバが知られている(特許文献4:国際公開第2015/178427号パンフレット、特許文献5:特許第6601931号公報、特許文献6:特開2014-236698号公報)。
【0010】
細胞(具体的には、ヒト皮膚線維芽細胞、HEK293T細胞)を含むアルギン酸ハイドロゲルファイバを、カチオン性水溶性ポリマーで表面が被覆されたナノ粒子を含む接着剤を用いて接着したバンドルが知られている(特許文献7:国際公開第2019/078251号パンフレット、特許文献8:国際公開第2019/123886号パンフレット)。
【0011】
神経幹細胞又は神経幹細胞を含むアルギン酸ハイドロゲルファイバを、キトサンを用いてバンドル化した移植用神経束が知られている(特許文献9:特開2014-136128号公報)。
【0012】
接着性細胞(具体的には、C2C12細胞)、マイクロキャリア、及びゲル状の多糖類(具体的には、アルギン酸ゲル)を含む混合物がポリアミノ酸で被覆されている細胞構造体(例えば、シート状(板状)、ファイバー状(繊維状)、球状等が挙げられる)が知られている(特許文献10:特開2019-075993号公報)。
【0013】
細胞(293/GFP細胞)が含まれるアルギン酸カルシウムマイクロファイバをポリ-L-リジンで被覆し、クエン酸ナトリウム溶液で溶解して得られた、管状ゲルが知られている(非特許文献1:PA-Lab Chip, 2008, 8, pp.1255-1257)。
【0014】
アルギン酸の任意の1つ以上のカルボキシル基に、アミド結合及び2価のリンカーを介して環状アルキン基又はアジド基が導入された化学修飾アルギン酸誘導体が知られている(特許文献11:国際公開第2019/240219号パンフレット、特許文献12:国際公開第2021/125255号パンフレット)。
【0015】
コア層に抗体産生細胞が含まれ、シェル層が化学修飾アルギン酸誘導体から形成される架橋アルギン酸ゲルからなる、コア・シェル構造を有するアルギン酸ゲルファイバが知られている(特許文献13:国際公開第2021/125279号パンフレット)。
【0016】
細胞(3T3およびHeLa細胞)が含まれるアルギン酸プロピレングリコール(propylene glycol alginate, PGA)およびアルギン酸ナトリウム溶液から形成されるコア層を、アルギン酸ナトリウム溶液から形成されるシェル層で挟み込みこんだ、異方性カルシウムアルギネートハイドロゲルファイバーを、ポリ-L-リジンで被覆したマイクロファイバーが知られている(非特許文献2:Soft Matter (2012), 8(11), pp.3122-3130)。
【0017】
特許文献1~13及び非特許文献1、2には、本発明の抗体、生理活性物質等の生産用のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ、当該ゲルファイバの製造方法、及び当該ゲルファイバを用いる抗体等の製造方法が開示されていないし、示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第2011/046105号パンフレット
【特許文献2】特開2016-77229号公報
【特許文献3】国際公開第2020/032221号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2015/178427号パンフレット
【特許文献5】特許第6601931号公報
【特許文献6】特開2014-236698号公報
【特許文献7】国際公開第2019/078251号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2019/123886号パンフレット
【特許文献9】特開2014-136128号公報
【特許文献10】特開2019-075993号公報
【特許文献11】国際公開第2019/240219号パンフレット
【特許文献12】国際公開第2021/125255号パンフレット
【特許文献13】国際公開第2021/125279号パンフレット
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】PA-Lab Chip, 2008, 8, pp.1255-1257
【非特許文献2】Soft Matter, (2012), 8(11), pp.3122-3130
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
抗体、生理活性物質等を産生できる細胞を含んだアルギン酸ゲルファイバ、とりわけ、ファイバが分解することなく、長期間(例えば、7日以上、14日以上、28日以上等)に渡って細胞培養が可能となる、より実用的なアルギン酸ゲルファイバが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞を含み、後述の態様[1]に記載の式(I)及び式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体を用いて架橋反応を行うことにより得られる架橋アルギン酸ゲルを、カチオン性ポリマーで被覆することにより形成される、抗体、生理活性物質等の生産用の新規なポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバおよびその製造方法を見出した。又、当該ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを用いて、抗体、生理活性物質等の産生細胞の培養を行ったところ、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバが分解することなく、抗体、生理活性物質等を長期間連続して産生できることを見出し本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、新規なポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ及び当該ゲルファイバを用いた、抗体、生理活性物質等の生産方法が提供される。いくつかの態様では、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞、後述の態様[1]に記載の式(I)及び式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体等が含まれる混合液を用いて作製される架橋アルギン酸ゲルを、カチオン性ポリマーで被覆することにより、長期間連続して抗体、生理活性物質等を産生できるポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバが提供される。
【0023】
後述の実施例から、抗体産生細胞(抗GPVI抗体産生CHO細胞、トシリズマブ産生CHO細胞)又は生理活性物質産生細胞(膵β細胞由来のMIN6細胞)、式(I)及び式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体等が含まれる混合液を用いて形成される架橋アルギン酸ゲル(コア層とも言う)を、ポリ-L-オルニチン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、又はポリメチレン-CO-グアニジン(PMCG)のカチオン性ポリマー(カチオン性ポリマー層とも言う)で被覆することで、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを作製することができ、当該ファイバを用いて培養したところ、長期間(後述の実施例において、最大47日間)連続して、抗体またはインスリンが産生できることが分かった。本発明のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞に適した環境を提供しており、当該ファイバのコア層で産生された抗体、生理活性物質等は、コア層、カチオン性ポリマー層を連続的に透過し、当該ファイバ外に放出される特徴を有する。
【0024】
本発明のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、抗体、生理活性物質等の生産に適した環境を提供する。コア層に封入されている抗体、生理活性物質等の産生細胞への物理的ストレスが少なく、封入した当該細胞が長期間に渡り抗体、生理活性物質等を産生し続けることが期待される。従って、このようなファイバを用いた抗体、生理活性物質等の製造方法は、抗体、生理活性物質等の生産効率を飛躍的に向上させることが期待できる。例えば、抗体生産の場合、大規模な培養タンクを要する抗体の浮遊培養とは異なり、小規模の生産設備にて抗体を製造することも期待される。少量・多種品目の抗体医薬品製造にも適した次世代型抗体医薬品の連続生産技術としても期待される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの断面図である。
【
図2】ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層とカチオン性ポリマー層との模式図である。
【
図3】ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造過程の1つの態様を説明する模式図である。
【
図4】ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの横断面である。コア層で産生された抗体、生理活性物質等、代謝物及び老廃物、並びに培養液(栄養源)及び酸素がカチオン性ポリマー層を透過することを説明する模式図である。
【
図5】(実施例F2-C)のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(FB2-A-5-c1)の培養前の写真である。
【
図6】(実施例F2-C)のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(FB2-A-5-c1)の培養後の写真である。
【
図7】(実施例F3)で作製されたポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの蛍光顕微鏡での写真である。
【
図8】(実施例F9)のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(FB9-3-c3)の培養前の写真である。
【
図9】(実施例F9)のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(FB9-3-c3)の培養後の写真である。
【
図10】(実施例F9)のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(FB9-2-c2)の培養前の写真である。
【
図11】(実施例F9)のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(FB9-2-c2)の培養後の写真である。
【
図12】(実施例F16-A)の架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA-16A)の写真である。
【
図13】(実施例FI-17)のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(FB17-1-c1)の培養後の写真である。
【
図14】(実施例FI-17)のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(FB17-2-c1)の培養前の写真である。
【
図15】(実施例FI-17)のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(FB17-2-c1)の培養後の写真である。
【
図16】(実施例FI-17)のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(FB17-3-c1)の培養後の写真である。
【
図17】(実施例FI-17)のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(FB17-4-c1)の培養前の写真である。
【
図18】(実施例FI-17)のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(FB17-4-c1)の培養後の写真である。
【
図19】(実施例FI-18)のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(FB18-1-c1)の培養前の写真である。
【
図20】(実施例FI-18)のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(FB18-1-c1)の培養後の写真である。
【
図21】(実施例FI-18)のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(FB18-2-c1)の培養後の写真である。
【
図22】(実施例FI-18)のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(FB18-3-c1)の培養後の写真である。
【
図23】(実施例FI-19)のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(CFB19-G19)の培養前の写真である。
【
図24】(実施例FI-19)のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(CFB19-G19)の培養後の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[具体的態様]
ここでは、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ、当該ファイバの製造方法、及び当該ファイバを用いる抗体、生理活性物質等の製造方法の具体的態様について説明する。より具体的には、以下の態様[1]~[7C-2]に記載の通りである。
【0027】
[1]第1の態様は、次の通りである。式(I)及び式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体を用いて架橋反応を行うことにより得られる架橋アルギン酸ゲルに包埋された抗体産生細胞又は生理活性物質産生細胞(本明細書中、「抗体、生理活性物質等を産生できる細胞」ともいう)を含むコア層と、前記コア層を被覆するカチオン性ポリマー層を含む、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ。又は、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞と、下記式(I)及び式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体を用いて架橋反応を行うことにより得られる架橋アルギン酸ゲルとを含むコア層を、カチオン性ポリマー(カチオン性ポリマー層)で被覆して得られる、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ。
【0028】
[式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体]
下記式(I):
【化1】
[式(I)中、(ALG)は、アルギン酸を表わし;-NHCO-は、アルギン酸の任意のカルボキシル基を介したアミド結合を表わし;Akn-L
1-(Aknは環状アルキン基を表し;-L
1-は、環状アルキン基(Akn)と結合する2価のリンカーである)は、下記表:
【表1-1】
【表1-2】
に記載された部分構造式(各式中、破線右側は含まない)からなる群より選択される基である]で表される化学修飾アルギン酸誘導体。
【0029】
[式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体]
下記式(II):
【化2】
[式(II)中、(ALG)はアルギン酸を表わし;-NHCO-は、アルギン酸の任意のカルボキシル基を介したアミド結合を表わし;-L
2-は、下記表:
【表2】
に記載された部分構造式(各式中、両端の破線外側は含まない)からなる群より選択されるリンカーを表わす]で表される化学修飾アルギン酸誘導体。
【0030】
[1A]第1Aの態様は、次の通りである。コア層と、前記コア層の外側に配置されるカチオン性ポリマー層を含む、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバであって、前記コア層は、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞と式(I)及び式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体を用いて架橋が形成された架橋アルギン酸ゲルとを含み、前記カチオン性ポリマー層は、カチオン性ポリマーである、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ。式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体は、前記態様[1]に定義されたものと同じである。
【0031】
[1-1-1]前記態様[1]又は[1A]において、式(I)で表される化学修飾アルギン酸誘導体のAkn-L
1-は、好ましくは、下記表:
【表3-1】
【表3-2】
に記載された部分構造式(各式中、破線右側は含まない)からなる群より選択される基である。
【0032】
[1-1-2]前記態様[1]又は[1A]において、式(I)で表される化学修飾アルギン酸誘導体のAkn-L
1-は、より好ましくは、下記表:
【表3-3】
【表3-4】
に記載された部分構造式(各式中、破線右側は含まない)からなる群より選択される基である。
【0033】
[1-1-3]前記態様[1]又は[1A]において、式(I)で表される化学修飾アルギン酸誘導体のAkn-L
1-は、更に好ましくは、下記部分構造式(各式中、破線右側は含まない):
【化3】
からなる群より選択される基である。
【0034】
[1-1-4]前記態様[1]又は[1A]において、式(I)で表される化学修飾アルギン酸誘導体のAkn-L
1-は、特に好ましくは、下記部分構造式(各式中、破線右側は含まない):
【化4】
から選択される基である。
【0035】
[1-1-5]前記態様[1]又は[1A]において、式(I)で表される化学修飾アルギン酸誘導体のAkn-L
1-は、下記表:
【表3-5】
に記載された部分構造式(各式中、破線右側は含まない)からなる群より選択される基であり;
好ましくは、下記表:
【表3-6】
に記載された部分構造式(各式中、破線右側は含まない)からなる群より選択される基であり;
より好ましくは、下記表:
【表3-7】
に記載された部分構造式(各式中、破線右側は含まない)からなる群より選択される基であり;
更に好ましくは、下記部分構造式(各式中、破線右側は含まない):
【化5】
から選択される基である。
【0036】
[1-2-1]前記態様[1]又は[1A]において、式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体の-L
2-は、好ましくは、下記表:
【表4-1】
に記載された部分構造式(各式中、両端の破線外側は含まない)からなる群より選択される基である。
【0037】
[1-2-2]前記態様[1]又は[1A]において、式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体の-L
2-は、より好ましくは、下記表:
【表4-2】
に記載された部分構造式(各式中、両端の破線外側は含まない)からなる群より選択される基である。
【0038】
[1-2-3]前記態様[1]又は[1A]において、式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体の-L
2-は、更に好ましくは、下記部分構造式(各式中、両端の破線外側は含まない):
【化6】
からなる群より選択される基である。
【0039】
[1-2-4]前記態様[1]又は[1A]において、式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体の-L
2-は、特に好ましくは、下記部分構造式(各式中、両端の破線外側は含まない):
【化7】
からなる群より選択される基である。
【0040】
[1-2-5]前記態様[1]又は[1A]において、式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体の-L
2-は、下記表:
【表4-3】
に記載された部分構造式(各式中、両端の破線外側は含まない)からなる群より選択される基であり;
好ましくは、下記部分構造式(各式中、破線右側は含まない):
【表4-4】
に記載された部分構造式(各式中、両端の破線外側は含まない)からなる群より選択される基であり;
より好ましくは、下記部分構造式(各式中、破線右側は含まない):
【表4-5】
に記載された部分構造式(各式中、両端の破線外側は含まない)からなる群より選択される基であり;
更に好ましくは、下記部分構造式(各式中、両端の破線外側は含まない):
【化8】
からなる群より選択される基である。
【0041】
[1-2A]前記態様[1]~[1-2-5]に記載されたAkn、-L1-、-L2-の定義を適宜組み合わせた式(I)および式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を用いることにより、本発明のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層における、架橋アルギン酸ゲルの好ましい態様を任意に形成し得る。
【0042】
[1X]第1Xの態様は、次の通りである。抗体、生理活性物質等を産生できる細胞と、下記式(I-A)で表される化学修飾アルギン酸誘導体及び下記式(II-A)で表される化学修飾アルギン酸誘導体を用いて架橋が形成された架橋アルギン酸ゲルとを含むコア層を、カチオン性ポリマー(カチオン性ポリマー層)で被覆して得られる、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ。
【0043】
[式(I-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体]
下記式(I-A):
【化9】
[式(I-A)中、(ALG)はアルギン酸を表わし;-NHCO-は、アルギン酸の任意のカルボキシル基を介したアミド結合を表わし;-L
1A-は、下記部分構造式:
【化10】
(式中、x=1~50であり;
式中の-CH
2-は、-C(=O)-、-O-、-NH-、-N(C
1-3アルキル基)-、-S-、C
3~8シクロアルキル環、ベンゼン環、5~6員芳香族複素環、又は5~6員非芳香族複素環等の基で1~15個、置換されていても良く;
式中の-CH
2-の水素原子は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、C
1-3アルキル基、-O-C
1-3アルキル基、-NH(C
1-3アルキル基)、-N(C
1-3アルキル基)
2、-COO-M(M=Na、K、1/2Ca、水素原子、C
1-3アルキル基)、ヒドロキシC
1-3アルキル基、C
2-4アルカノイル基、-S-C
1-3アルキル基、-SO
2-C
1-3アルキル基、フェニル基、ベンジル基、5~6員芳香族複素環、又は5~6員非芳香族複素環等の基で1~10個、置換されていても良く;
Akyは、環状アルキン基である)(式中、両端の破線外側は含まない)]で表される化学修飾アルギン酸誘導体。
【0044】
[式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体]
下記式(II-A):
【化11】
[式(II-A)中、(ALG)はアルギン酸を表わし;-NHCO-は、アルギン酸の任意のカルボキシル基を介したアミド結合を表わし;-L
2A-は、下記部分構造式:
【化12】
(式中、y=1~50であり;
式中の-CH
2-は、-C(=O)-、-O-、-NH-、-N(C
1-3アルキル基)-、-S-、C
3~8シクロアルキル環、ベンゼン環、5~6員芳香族複素環、又は5~6員非芳香族複素環等の基で1~15個、置換されていても良く;
式中の-CH
2-の水素原子は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、C
1-3アルキル基、-O-C
1-3アルキル基、-NH(C
1-3アルキル基)、-N(C
1-3アルキル基)
2、-COO-M(M=Na、K、1/2Ca、水素原子、C
1-3アルキル基)、ヒドロキシC
1-3アルキル基、C
2-4アルカノイル基、-S-C
1-3アルキル基、-SO
2-C
1-3アルキル基、フェニル基、ベンジル基、5~6員芳香族複素環、又は5~6員非芳香族複素環等の基で1~10個、置換されていても良い)(式中、両端の破線外側は含まない)]で表される化学修飾アルギン酸誘導体。
【0045】
[1Y]第1Yの態様は、次の通りである。コア層と、前記コア層の外側に配置されるカチオン性ポリマー層を含む、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバであって、前記コア層は、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞と式(I-A)で表される化学修飾アルギン酸誘導体及び式(II-A)で表される化学修飾アルギン酸誘導体を用いて架橋が形成された架橋アルギン酸ゲルとを含み、前記カチオン性ポリマー層は、カチオン性ポリマーである、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ。式(I-A)及び式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体は、前記態様[1X]に定義されたものと同じである。
【0046】
[1X-1]前記態様[1X]又は[1Y]において、式(I-A)で表される化学修飾アルギン酸誘導体において、-L
1A-は、
好ましくは、x=2~45であり、-L
1A-中の-CH
2-は、-C(=O)-、-O-、-NH-、-N(C
1-3アルキル基)-、シクロヘキサン環、6員芳香族複素環、6員非芳香族複素環、ベンゼン環等の基で1~15個、置換されていても良く、-L
1A-中の-CH
2-の水素原子は、水酸基、アミノ基、C
1-3アルキル基、-O-C
1-3アルキル基、-NH(C
1-3アルキル基)、-N(C
1-3アルキル基)
2、-COO-M(M=Na、K、1/2Ca、水素原子、C
1-3アルキル基)等の基で1~10個、置換されていても良く;
より好ましくは、x=2~45であり、-L
1A-中の-CH
2-は、-C(=O)-、-O-、-NH-、-N(C
1-3アルキル基)-、シクロヘキサン環、ベンゼン環等の基で1~15個、置換されていても良く;
更に好ましくは、x=2~45であり、-L
1A-中の-CH
2-は、-C(=O)-、-O-、-NH-、ベンゼン環等の基で1~15個、置換されていても良く;
特に好ましくは、x=3~25であり、-L
1A-中の-CH
2-は、-C(=O)-、-O-、-NH-、ベンゼン環等の基で1~15個、置換されていても良く;
最も好ましくは、x=3~15であり、-L
1A-中の-CH
2-は、-C(=O)-、-O-、-NH-、ベンゼン環等の基で1~10個、置換されていても良く;
具体的には、例えば、-L
1A-は、下記部分構造式:
【化13】
(各式中、両端の破線外側は含まない)から選ばれるリンカーであり;
より具体的には、-L
1A-は、下記部分構造式:
【化14】
(各式中、両端の破線外側は含まない)から選ばれるリンカーである。
【0047】
[1X-2]前記態様[1X]又は[1Y]において、式(I-A)で表される化学修飾アルギン酸誘導体において、Akyは、
好ましくは、7~9員環状アルキン基(環状アルキン基の-CH
2-の水素原子は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ケト基、C
1-3アルキル基、-O-C
1-3アルキル基、-NH(C
1-3アルキル基)、-N(C
1-3アルキル基)
2、-COO-M(M=Na、K、1/2Ca、水素原子、C
1-3アルキル基)等の基から選択される基で、1~5個置換されていても良く;環状アルキン基は、C
3~8シクロアルキル環、ベンゼン環、又は5~6員芳香族複素環が1~3個縮環していてもよい)であり;
より好ましくは、8員環状アルキン基(環状アルキン基の-CH
2-の水素原子は、ハロゲン原子、ケト基、C
1-3アルキル基、-O-C
1-3アルキル基等の基から選択される基で、1~5個置換されていても良く;環状アルキン基は、シクロプロパン環、ベンゼン環、又は5員芳香族複素環が1~3個縮環していてもよい)であり;
更に好ましくは、下記部分構造式:
【化15】
(式中、両端の破線右側は含まない)から選択される基であり;
特に好ましくは、下記部分構造式:
【化16】
(式中、両端の破線右側は含まない)から選択される基であり;
最も好ましくは、下記部分構造式:
【化17】
(式中、両端の破線右側は含まない)から選択される基である。
【0048】
[1X-3]前記態様[1X]又は[1Y]において、式(II-A)で表される化学修飾アルギン酸誘導体において、-L
2A-は、
好ましくは、y=5~40であり、-L
2A-中の-CH
2-は、-C(=O)-、-O-、-NH-、-N(C
1-3アルキル基)-、シクロヘキサン環、6員芳香族複素環、6員非芳香族複素環、ベンゼン環等の基で1~15個、置換されていても良く、
-L
2A-中の-CH
2-の水素原子は、水酸基、アミノ基、C
1-3アルキル基、-O-C
1-3アルキル基、-NH(C
1-3アルキル基)、-N(C
1-3アルキル基)
2、-COO-M(M=Na、K、1/2Ca、水素原子、C
1-3アルキル基)等の基で1~10個、置換されていても良く;
より好ましくは、y=5~40であり、-L
2A-中の-CH
2-は、-C(=O)-、-O-、-NH-、-N(C
1-3アルキル基)-、シクロヘキサン環、ベンゼン環等の基で1~10個、置換されていても良く;
更に好ましくは、y=5~40であり、-L
2A-中の-CH
2-は、-C(=O)-、-O-、-NH-、-N(C
1-3アルキル基)-、ベンゼン環等の基で1~10個、置換されていても良く;
特に好ましくは、y=5~20であり、-L
2A-中の-CH
2-は、-C(=O)-、-O-、-NH-、ベンゼン環等の基で1~10個、置換されていても良く;
最も好ましくは、y=5~15であり、-L
2A-中の-CH
2-は、-C(=O)-、-O-、-NH-、ベンゼン環等の基で1~10個、置換されていても良く;
具体的には、例えば、-L
2A-は、下記部分構造式:
【化18】
(式中、両端の破線外側は含まない)から選ばれるリンカーであり;
より具体的には、-L
2A-は、下記部分構造式:
【化19】
(式中、両端の破線外側は含まない)から選ばれるリンカーである。
【0049】
[1X-4]前記態様[1X]、[1Y]、[1X-1]~[1X-3]に記載されたAky、-L1A-、-L2A-の定義を適宜組み合わせた式(I-A)および式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を用いることにより、本発明のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層における、架橋アルギン酸ゲルの好ましい態様を任意に形成し得る。
【0050】
[1-3]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞は、例えば、抗体(ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、マウス抗体等の各種のモノクローナル抗体)産生細胞、生理活性物質産生細胞、及び医薬品原料、化学原料、食品原料等として有用な各種の有用物質を産生できる細胞からなる群より選択される細胞である。
【0051】
[1-3-1]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる、抗体を産生できる細胞(抗体産生細胞とも言う)は、ハイブリドーマまたは抗体発現ベクターにより形質転換された培養細胞であり、その宿主として用いられる培養細胞(宿主細胞)が、例えば、CHO細胞、CHO細胞亜株、COS細胞、Sp2/0細胞、NS0細胞、SP2細胞、PERC6細胞、YB2/0細胞、YE2/0細胞、1R983F細胞、Namalwa細胞、Wil-2細胞、Jurkat細胞、Vero細胞、Molt-4細胞、HEK293細胞、BHK細胞、HT-1080細胞、KGH6細胞、P3X63Ag8.653細胞、C127細胞、JC細胞、LA7細胞、ZR-45-30細胞、hTERT細胞、NM2C5細胞、UACC-812細胞等からなる群から選択される細胞である。
【0052】
[1-3-2]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる抗体産生細胞は、好ましくは、その宿主細胞が、CHO細胞、CHO細胞亜株、COS細胞、Sp2/0細胞、NS0細胞、SP2細胞、及びPERC6細胞からなる群から選択される細胞であり;より好ましくは、CHO細胞、CHO細胞亜株、Sp2/0細胞、及びNS0細胞からなる群から選択される細胞であり;更に好ましくは、CHO細胞またはCHO細胞亜株である。
【0053】
[1-3-2-1]前記態様[1-3-2]において、抗体産生細胞は、好ましくは、浮遊細胞または浮遊培養可能なように馴化された細胞または細胞亜株であり、このような細胞の好ましい例、より好ましい例、更に好ましい例は、前記態様[1-3-2]に記載の通りである。
【0054】
[1-3-3]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる抗体産生細胞は、例えば、その宿主細胞がCHO細胞である抗体産生CHO細胞であり、例えば、ムロモナブ-CD3産生CHO細胞、トラスツズマブ産生CHO細胞、リツキシマブ産生CHO細胞、パリビズマブ産生CHO細胞、インフリキシマブ産生CHO細胞、バシリキシマブ産生CHO細胞、トシリズマブ産生CHO細胞、ゲムツズマブ産生CHO細胞、ベバシズマブ産生CHO細胞、イブリツモマブ産生CHO細胞、アダリムマブ産生CHO細胞、セツキシマブ産生CHO細胞、ラニビズマブ産生CHO細胞、オマリズマブ産生CHO細胞、エクリズマブ産生CHO細胞、パニツムマブ産生CHO細胞、ウステキヌマブ産生CHO細胞、ゴリムマブ産生CHO細胞、カナキヌマブ産生CHO細胞、デノスマブ産生CHO細胞、モガムリズマブ産生CHO細胞、セルトリズマブ産生CHO細胞、オファツムマブ産生CHO細胞、ペルツズマブ産生CHO細胞、ブレンツキシマブ産生CHO細胞、ナタリズマブ産生CHO細胞、ニボルマブ産生CHO細胞、アレムツズマブ産生CHO細胞、セクキヌマブ産生CHO細胞、ラムシルマブ産生CHO細胞、イピリムマブ産生CHO細胞、エボロクマブ産生CHO細胞、メポリズマブ産生CHO細胞、アリロクマブ産生CHO細胞、イキセキズマブ産生CHO細胞、ブロダルマブ産生CHO細胞、イダルシズマブ産生CHO細胞、エロツズマブ産生CHO細胞、ペムブロリズマブ産生CHO細胞、サリルマブ産生CHO細胞、ベズロトクスマブ産生CHO細胞、ベリムマブ産生CHO細胞、ダラツムマブ産生CHO細胞、アベルマブ産生CHO細胞、デュピルマブ産生CHO細胞、アテゾリズマブ産生CHO細胞、ベンラリズマブ産生CHO細胞、イノツズマブ産生CHO細胞、エミシズマブ産生CHO細胞、グセルクマブ産生CHO細胞、デュルバルマブ産生CHO細胞、オビヌツズマブ産生CHO細胞、ベドリズマブ産生CHO細胞、抗GPVI抗体産生CHO細胞等からなる群から選択されるCHO細胞であり;例えば、トラスツズマブ産生CHO細胞、リツキシマブ産生CHO細胞、インフリキシマブ産生CHO細胞、トシリズマブ産生CHO細胞、アダリムマブ産生CHO細胞、ニボルマブ産生CHO細胞、及び抗GPVI抗体産生CHO細胞からなる群から選択されるCHO細胞であり;例えば、トシリズマブ産生CHO細胞又は抗GPVI抗体産生CHO細胞である。
【0055】
[1-3-4]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる生理活性物質を産生できる細胞(生理活性物質産生細胞とも言う)は、例えば、インスリン分泌細胞、膵島、膵島細胞、ドーパミン分泌細胞、脳下垂体細胞、成長ホルモン分泌細胞、副甲状腺細胞、神経成長因子分泌細胞、血液凝固因子分泌細胞、肝細胞、上皮小体細胞、エリスロポエチン分泌細胞、ノルエピネフリン分泌細胞、生理活性物質発現ベクター(遺伝子組換え細胞)等からなる群から選択される細胞である。
【0056】
[1-3-5]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる生理活性物質産生細胞は、好ましくは、インスリン分泌細胞、膵島、及び膵島細胞からなる群から選択される細胞であり;より好ましくは、膵β細胞由来のMIN6細胞である。
【0057】
[1-4]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に追加で含むことができる成分としては、例えば、アルギン酸溶液、アルギン酸ゲル、培地、培養液、コラーゲン溶液、メチルセルロース、スクロース溶液等からなる群から選択される成分である。
【0058】
[1-4-1]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に追加で含むことができる成分としては、好ましくは、アルギン酸溶液、アルギン酸ゲル、培地、及び培養液からなる群から選択される成分である。
【0059】
[1-5]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられる式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体のゲルろ過クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量は、例えば、約100,000Da~約3,000,000Daの範囲であり;好ましくは約300,000Da~約2,500,000Daの範囲であり、より好ましくは約500,000Da~約2,000,000Daの範囲である。
【0060】
[1-6]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられる式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体のゲルろ過クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量は、例えば、約100,000Da~約3,000,000Daの範囲であり;好ましくは約300,000Da~約2,500,000Daの範囲であり、より好ましくは約500,000Da~約2,000,000Daの範囲である。
【0061】
[1-7]前記態様[1]又は[1A]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられる式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の反応性基(Akn-L1-NH2基:Akn-L1-は、前記態様[1]中の定義と同じである)の導入率は、例えば、約0.1~約30mol%の範囲であり;好ましくは、約0.3~約20mol%の範囲であり;より好ましくは、約0.5~約10mol%の範囲である。
【0062】
[1-7X]前記態様[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられる式(I-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の反応性基(Aky-L1A-NH2基:Aky、-L1A-は、前記態様[1X]中の定義と同じである)の導入率は、例えば、約0.1~約30mol%の範囲であり;好ましくは、約0.3~約20mol%の範囲であり;より好ましくは、約0.5~約10mol%の範囲である。
【0063】
[1-8]前記態様[1]又は[1A]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられる式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の反応性基(N3-L2-NH2基:-L2-は、前記態様[1]中の定義と同じである)の導入率は、例えば、約0.1~約30mol%の範囲であり;好ましくは、約0.3~約20mol%の範囲であり;より好ましくは、約0.5~約15mol%の範囲である。
【0064】
[1-8X]前記態様[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられる式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の反応性基(N3-L2A-NH2基:-L2A-は、前記態様[1X]中の定義と同じである)の導入率は、例えば、約0.1~約30mol%の範囲であり;好ましくは、約0.3~約20mol%の範囲であり;より好ましくは、約0.5~約15mol%の範囲である。
【0065】
[1-9]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に追加で含むことができるアルギン酸溶液、又はアルギン酸ゲルの形成に用いられるアルギン酸溶液の調製に用いられるアルギン酸(例えば、アルギン酸ナトリウム、等)のゲルろ過クロマトグラフィー法(GPC法)により測定した重量平均分子量は、例えば、約150,000Da~約2,500,000Daの範囲であり;好ましくは約300,000Da~約2,000,000Daの範囲であり、より好ましくは約700,000Da~約2,000,000Daの範囲である。
【0066】
[1-9-1]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に追加で含むことができるアルギン酸溶液、又はアルギン酸ゲルの形成に用いられるアルギン酸溶液の調製に用いられるアルギン酸(例えば、アルギン酸ナトリウム、等)のゲルろ過クロマトグラフィー法(GPC法)により測定した重量平均分子量は、例えば、約150,000Da~約2,500,000Daの範囲であり;好ましくは、約300,000Da~約2,500,000Daの範囲;より好ましくは、約700,000Da~約1,400,000Da、約800,000Da~約1,500,000Da、約1,400,000~約2,000,000Da、または約1,500,000~約2,500,000から選ばれる範囲である。
【0067】
[1-9-2]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に追加で含むことができるアルギン酸溶液、又はアルギン酸ゲルの形成に用いられるアルギン酸溶液の調製に用いられるアルギン酸(例えば、アルギン酸ナトリウム、等)のゲルろ過クロマトグラフィー法(GPC法)により測定した重量平均分子量は、好ましくは、約1,400,000~約2,000,000、又は約700,000 ~約1,400,000、又は約800,000~約1,500,000から選ばれる範囲であり;より好ましくは、約1,400,000~約2,000,000の範囲である。
【0068】
[1-10-1]前記態様[1]又は[1A]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられる式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の濃度は、例えば、約0.01~約1.5重量%の範囲であり;好ましくは、約0.05~約1.0重量%の範囲であり;より好ましくは、約0.08~約0.75重量%の範囲である。
【0069】
[1-10-1X]前記態様[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられる式(I-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の濃度は、例えば、約0.01~約1.5重量%の範囲であり;好ましくは、約0.05~約1.0重量%の範囲であり;より好ましくは、約0.08~約0.75重量%の範囲である。
【0070】
[1-10-2]前記態様[1]又は[1A]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられる式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の濃度は、例えば、約0.01~約1.5重量%の範囲であり;好ましくは、約0.05~約1.0重量%の範囲であり;より好ましくは、約0.08~約0.75重量%の範囲である。
【0071】
[1-10-2X]前記態様[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられる式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の濃度は、例えば、約0.01~約1.5重量%の範囲であり;好ましくは、約0.05~約1.0重量%の範囲であり;より好ましくは、約0.08~約0.75重量%の範囲である。
【0072】
[1-10-3]前記態様[1]又は[1A]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられる、式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体と式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の混合溶液の濃度は、例えば、約0.02~約2.0重量%の範囲であり;好ましくは、約0.1~約2.0重量%の範囲であり;より好ましくは約0.15~約1.5重量%の範囲である。
【0073】
[1-10-3X]前記態様[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられる、式(I-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体と式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の混合溶液の濃度は、例えば、約0.02~約2.0重量%の範囲であり;好ましくは、約0.1~約2.0重量%の範囲であり;より好ましくは約0.15~約1.5重量%の範囲である。
【0074】
[1-10-4]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に追加で含むことができるアルギン酸溶液、又はアルギン酸ゲルの形成に用いられるアルギン酸溶液の濃度は、例えば、0~約1.98重量%の範囲であり;好ましくは、0~約1.8重量%の範囲であり;より好ましくは、0~約1.7重量%の範囲である。
【0075】
[1-10-4-1]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に追加で含むことができるアルギン酸溶液、又はアルギン酸ゲルの形成に用いられるアルギン酸溶液の濃度(CALG)は、例えば、0<CALG≦約1.98重量%の範囲であり;好ましくは、0<CALG≦約1.8重量%の範囲であり;より好ましくは、0<CALG≦約1.7重量%の範囲である。
【0076】
[1-11-1]前記態様[1]又は[1A]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルに、アルギン酸溶液、又はアルギン酸溶液から形成されるアルギン酸ゲルが含まれる場合、コア層の形成に用いられる式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液の濃度とアルギン酸溶液の濃度の総濃度は、好ましくは約0.5~約2.0重量%であり;より好ましくは、約1.0重量%、約1.5重量%及び約2.0重量%から選ばれる濃度である。
【0077】
[1-11-1-1]前記態様[1]又は[1A]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルに、アルギン酸溶液、又はアルギン酸溶液から形成されるアルギン酸ゲルが含まれる場合、コア層の形成に用いられる式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液の濃度とアルギン酸溶液の濃度の総濃度(CTOL)は、例えば、0<CTOL≦約2.0重量%であり;好ましくは約0.5~約2.0重量%;より好ましくは約1.0~約2.0重量%であり;更に好ましくは、約1.0重量%、約1.5重量%及び約2.0重量%から選ばれる濃度である。
【0078】
[1-11-1-1X]前記態様[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルに、アルギン酸溶液、又はアルギン酸溶液から形成されるアルギン酸ゲルが含まれる場合、コア層の形成に用いられる式(I-A)及び式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液の濃度とアルギン酸溶液の濃度の総濃度(CTOL)は、例えば、0<CTOL≦約2.0重量%であり;好ましくは約0.5~約2.0重量%;より好ましくは約1.0~約2.0重量%であり;更に好ましくは、約1.0重量%、約1.5重量%及び約2.0重量%から選ばれる濃度である。
【0079】
[1-11-2]前記態様[1]又は[1A]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルに、アルギン酸溶液、又はアルギン酸溶液から形成されるアルギン酸ゲルが含まれる場合、コア層の形成に用いられる式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液の濃度(C1(重量%))とアルギン酸溶液の濃度(C2(重量%))の組合せは、好ましくは、(C1:C2)=(約0.2:約1.3)、(約0.5:約1.0)、(約1.0:約0.5)、(約0.66:約1.34)、および(約0.34:約0.66)からなる群から選ばれる組み合わせである。
【0080】
[1-11-2-1]前記態様[1]又は[1A]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルに、アルギン酸溶液、又はアルギン酸溶液から形成されるアルギン酸ゲルが含まれる場合、コア層の形成に用いられる式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液の濃度(C1(重量%))とアルギン酸溶液の濃度(C2(重量%))の組合せは、例えば、
0<C2(重量%)≦約1.98(重量%)、
0<C1(重量%)<約2.0(重量%)-C2(重量%)、
0<C1+C2(重量%)≦約2.0(重量%)
で表される式を満たす範囲の組合せであり;好ましくは、(C1:C2)=(約0.2:約1.3)、(約0.5:約1.0)、(約1.0:約0.5)、(約0.66:約1.34)、および(約0.34:約0.66)からなる群から選ばれる組み合わせである。
【0081】
[1-11-2-1X]前記態様[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルに、アルギン酸溶液、又はアルギン酸溶液から形成されるアルギン酸ゲルが含まれる場合、コア層の形成に用いられる式(I-A)及び式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液の濃度(C1x(重量%))とアルギン酸溶液の濃度(C2x(重量%))の組合せは、例えば、
0<C2x(重量%)≦約1.98(重量%)、
0<C1x(重量%)<約2.0(重量%)-C2x(重量%)、
0<C1x+C2x(重量%)≦約2.0(重量%)
で表される式を満たす範囲の組合せであり;好ましくは、(C1x:C2x)=(約0.2:約1.3)、(約0.5:約1.0)、(約1.0:約0.5)、(約0.66:約1.34)、および(約0.34:約0.66)からなる群から選ばれる組み合わせである。
【0082】
[1-11-3]前記態様[1]又は[1A]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルに、アルギン酸溶液、又はアルギン酸溶液から形成されるアルギン酸ゲルが含まれる場合、コア層の形成に用いられる式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の濃度(C1A(重量%))、式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の濃度(C1N(重量%))及びアルギン酸溶液の濃度(C2(重量%))の組合せは、好ましくは、(C1A:C1N:C2)=(約0.1:約0.1:約1.3)、(約0.25:約0.25:約1.0)、(約0.5:約0.5:約0.5)、(約0.33:約0.33:約1.34)、および(約0.17:約0.17:約0.66)からなる群から選ばれる組み合わせである。
【0083】
[1-11-3-1]前記態様[1]又は[1A]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルに、アルギン酸溶液、又はアルギン酸溶液から形成されるアルギン酸ゲルが含まれる場合、コア層の形成に用いられる式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の濃度(C1A(重量%))、式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の濃度(C1N(重量%))及びアルギン酸溶液の濃度(C2(重量%))の組合せは、例えば、
0<C2(重量%)≦約1.98(重量%)、
0<C1A(重量%)<約2.0(重量%)-C2(重量%)、
0<C1N(重量%)<約2.0(重量%)-C2(重量%)、
0<C1A+C1N+C2(重量%)≦約2.0(重量%)
で表される式を満たす範囲の組合せであり;好ましくは、(C1A:C1N:C2)=(約0.1:約0.1:約1.3)、(約0.25:約0.25:約1.0)、(約0.5:約0.5:約0.5)、(約0.33:約0.33:約1.34)、および(約0.17:約0.17:約0.66)からなる群から選ばれる組み合わせである。
【0084】
[1-11-3-1X]前記態様[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルに、アルギン酸溶液、又はアルギン酸溶液から形成されるアルギン酸ゲルが含まれる場合、コア層の形成に用いられる式(I-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の濃度(C1Ax(重量%))、式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の濃度(C1Nx(重量%))及びアルギン酸溶液の濃度(C2x(重量%))の組合せは、例えば、
0<C2x(重量%)≦約1.98(重量%)、
0<C1Ax(重量%)<約2.0(重量%)-C2x(重量%)、
0<C1Nx(重量%)<約2.0(重量%)-C2x(重量%)、
0<C1Ax+C1Nx+C2x(重量%)≦約2.0(重量%)
で表される式を満たす範囲の組合せであり;好ましくは、(C1Ax:C1Nx:C2x)=(約0.1:約0.1:約1.3)、(約0.25:約0.25:約1.0)、(約0.5:約0.5:約0.5)、(約0.33:約0.33:約1.34)、および(約0.17:約0.17:約0.66)からなる群から選ばれる組み合わせである。
【0085】
[1-11-4]前記態様[1]又は[1A]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられる、式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液および式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の混合溶液における、各誘導体の溶液の容量比(v1、v2)は、例えば、v1+v2=15の比率であり、例えば、(v1:v2)=(7.5:7.5)である。但し、v1+v2=15において、0<v1<15、0<v2<15である。
【0086】
[1-11-4X]前記態様[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられる、式(I-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液および式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の混合溶液における、各誘導体の溶液の容量比(v1x、v2x)は、例えば、v1x+v2x=15の比率であり、例えば、(v1x:v2x)=(7.5:7.5)である。但し、v1x+v2x=15において、0<v1x<15、0<v2x<15である。
【0087】
[1-11-5]前記態様[1]又は[1A]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルに、アルギン酸溶液、又はアルギン酸溶液から形成されるアルギン酸ゲルが含まれる場合、コア層の形成に用いられる式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液、式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液、およびアルギン酸溶液の混合溶液における、各々の溶液の容量(v1、v2、v3)の容量比は、例えば、v1+v2+v3=15の比率であり、例えば、(v1:v2:v3)=(5:5:5)、(2.5:2.5:10)、(1:1:13)等の組み合わせである。但し、v1+v2+v3=15において、0<v1<15、0<v2<15、0<v3<15である。
【0088】
[1-11-5X]前記態様[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルに、アルギン酸溶液、又はアルギン酸溶液から形成されるアルギン酸ゲルが含まれる場合、コア層の形成に用いられる式(I-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液、式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液、およびアルギン酸溶液の混合溶液における、各々の溶液の容量(v1x、v2x、v3x)の容量比は、例えば、v1x+v2x+v3x=15の比率であり、例えば、(v1x:v2x:v3x)=(5:5:5)、(2.5:2.5:10)、(1:1:13)等の組み合わせである。但し、v1x+v2x+v3x=15において、0<v1x<15、0<v2x<15、0<v3x<15である。
【0089】
[1-12]前記態様[1]又は[1A]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルが、下記式(III-L):
【化20】
[式(III-L)中、両端の-CONH-及び-NHCO-は、アルギン酸の任意のカルボキシル基を介したアミド結合を表わし;
-X-は、下記表:
【表5-1】
に記載された部分構造式の群から選択される環状基であり(各式中、両端の破線外側は含まない);
-L
1-は、-X-が、(CL-1)または(CL-1-r)の場合、下記表:
【表5-2】
に記載された部分構造式の群から選択される2価のリンカーであり(各式中、両端の破線外側は含まない);
-L
1-は、-X-が、(CL-2)または(CL-2-r)の場合、下記表:
【表5-3】
に記載された部分構造式の群から選択される2価のリンカーであり(各式中、両端の破線外側は含まない);
-L
2-は、前記態様[1]中の式(II)の定義と同じである]で表わされる基を介した化学架橋を含むものである。
【0090】
[1-12-1]前記態様[1-12]に記載の式(III-L)において、-L
1-は前記態様[1-12]であって、好ましくは、-X-が、(CL-1)または(CL-1-r)の場合、下記表:
【表6-1】
に記載された部分構造式の群から選択される2価のリンカーであり(各式中、両端の破線外側は含まない);
-X-が、(CL-2)または(CL-2-r)の場合、下記表:
【表6-2】
に記載された部分構造式の群から選択される2価のリンカーであり(各式中、両端の破線外側は含まない);
より好ましくは、-X-が、(CL-1)または(CL-1-r)の場合、下記表:
【表6-3】
に記載された部分構造式の群から選択される2価のリンカーであり(各式中、両端の破線外側は含まない);
-X-が、(CL-2)または(CL-2-r)の場合、下記表:
【表6-4】
に記載された部分構造式の群から選択される2価のリンカーであり(各式中、両端の破線外側は含まない);
更に好ましくは、-X-が、(CL-1)または(CL-1-r)の場合、下記部分構造式:
【化21】
の群から選択される2価のリンカーであり(各式中、両端の破線外側は含まない);
-X-が、(CL-2)または(CL-2-r)の場合、下記部分構造式:
【化22】
の群から選択される2価のリンカーであり(各式中、両端の破線外側は含まない);
特に好ましくは、-X-が、(CL-1)または(CL-1-r)の場合、下記部分構造式:
【化23】
の2価のリンカーであり(各式中、両端の破線外側は含まない);
-X-が、(CL-2)または(CL-2-r)の場合、下記部分構造式:
【化24】
の2価のリンカーである(各式中、両端の破線外側は含まない)。
【0091】
[1-12-2]前記態様[1-12]に記載の式(III-L)において、好ましい、より好ましい、更に好ましい、特に好ましい-L2-は、各々、前記態様[1-2-1]~[1-2-4]に記載された定義と同じである。
【0092】
[1-12-3]前記態様[1-12]において、式(III-L)で表わされる基の-L
2-X-L
1-の好ましい組み合わせは、下記表の式:
【表7-1】
の群から選択される部分構造で示される通りであり(表中の-L
1-は前記態様[1-12-1]に記載の好ましい-L
1-の定義と同じであり;-L
2-は前記態様[1-2-1]に記載の好ましい-L
2-の定義と同じであり;-X-は前記態様[1-12]に記載の通りである);
より好ましくは、-L
2-X-L
1-の組み合わせは、下記表の式:
【表7-2】
の群から選択される部分構造で示される通りであり(表中の-L
1-は前記態様[1-12-1]に記載のより好ましい-L
1-の定義と同じであり;-L
2-は前記態様[1-2-2]に記載のより好ましい-L
2-の定義と同じであり;-X-は前記態様[1-12]に記載の通りである);
【0093】
更に好ましくは、-L
2-X-L
1-の組み合わせは、下記表の式:
【表7-3】
の群から選択される部分構造で示される通りであり(表中の-L
1-は前記態様[1-12-1]に記載の更に好ましい-L
1-の定義と同じであり;-L
2-は前記態様[1-2-3]に記載の更に好ましい-L
2-の定義と同じであり;-X-は前記態様[1-12]に記載の通りである);
【0094】
特に好ましくは、-L
2-X-L
1-の組み合わせは、下記表の式:
【表7-4】
の群から選択される部分構造で示される通りである(表中の-L
1-は前記態様[1-12-1]に記載の特に好ましい-L
1-の定義と同じであり;-L
2-は前記態様[1-2-4]に記載の特に好ましい-L
2-の定義と同じであり;-X-は前記態様[1-12]に記載の通りである)。
【0095】
[1-12A]前記態様[1]又は[1A]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルが、前記態様[1-12]に記載の式(III-L)[式(III-L)中、両端の-CONH-及び-NHCO-、-X-は、前記態様[1-12]中の定義と同じであり;-L1-は、-X-が(CL-1)または(CL-1-r)の場合、前記態様[1-12]に記載の部分構造式(LK-1a)で表される基と同じであり;-X-が(CL-2)または(CL-2-r)の場合、前記態様[1-12]に記載の部分構造式(LK-2-1)で表される基と同じであり;-L2-は、前記態様[1]に記載の部分構造式(LN-1)、(LN-3)及び(LN-5)から選ばれる基と同じである]で表わされる基を介した化学架橋を含むものである。
【0096】
[1-12A-1]前記態様[1-12A]において、-X-が(CL-1)または(CL-1-r)の場合、好ましい、より好ましい、更に好ましい-L1-は、各々、前記態様[1-12-1]に記載の部分構造式(LK-1a-1)、(LK-1a-2)、(LK-1a-3a)、(LK-1a-3b)で表される基と同じであり;-X-が、(CL-2)または(CL-2-r)の場合、好ましい、より好ましい、更に好ましい-L1-は、各々、前記態様[1-12-1]に記載の部分構造式(LK-2-1)、(LK-2-2)、(LK-2-3)で表される基と同じであり;-L2-は、好ましくは前記態様[1-2-1]に記載の部分構造式(LN-1-1)、(LN-3-1)、(LN-5-1)で表される基と同じであり、より好ましくは前記態様[1-2-2]に記載の部分構造式(LN-1-2)、(LN-3-2)、(LN-5-2)で表される基と同じである、更に好ましくは前記態様[1-2-3]に記載の部分構造式(LN-1-3)、(LN-3-3a)、(LN-5-3a)で表される基と同じである。
【0097】
[1-12A-2]前記態様[1-12A]において、式(III-L)で表わされる基の-L
2-X-L
1-の好ましい、より好ましい、更に好ましい組み合わせは、下記表の式:
【表7-5】
の群から選択される部分構造で示される通りである(表中の-L
1-、-L
2-は、前記態様[1-12A-1]に記載の定義と同じであり;-X-は前記態様[1-12]に記載の通りである)。
【0098】
[1-12X]前記態様[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルが、下記式(III-Lx):
【化25】
[式(III-Lx)中、両端の-CONH-及び-NHCO-は、アルギン酸の任意のカルボキシル基を介したアミド結合を表わし;
-L
1A-は、前記態様[1X]中の定義と同じであり;
-L
2A-は、前記態様[1X]中の定義と同じであり;
-X
A-は、下記部分構造式:
【化26】
(式中、C
5-9シクロアルケン環中の-CH
2-は、-NH-、-S-、-O-、又は=C(=O)からなる群から選ばれる基で1~4個置換されていても良く;C
5-9シクロアルケン環中の-CH
2-の水素原子は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ケト基、C
1-3アルキル基、-O-C
1-3アルキル基、-NHC
1-3アルキル基、-N(C
1-3アルキル基)
2、-COO-M(M=Na、K、1/2Ca、水素原子、C
1-3アルキル基)等の基から選択される基で、1~5個置換されていても良く;C
5-9シクロアルケン環に、C
3-8シクロアルキル環、ベンゼン環、5~6員芳香族複素環が1~3個縮環していてもよく;C
5-9シクロアルケン環に、C
3-8シクロアルキル環、ベンゼン環、5~6員芳香族複素環が縮環している場合、-L
1A-は、当該C
3-8シクロアルキル環、ベンゼン環、5~6員芳香族複素環に置換しても良い)]で表される環状基(式中、両端の破線外側は含まない)を介して結合した架橋アルギン酸ゲル。
【0099】
[1-12X-1]前記態様[1-12X]において、好ましい、より好ましい、更に好ましい、特に好ましい、最も好ましい-L1A-は、前記前記態様[1X-1]に記載の、-L1A-の定義と同じである。
【0100】
[1-12X-2]前記態様[1-12X]において、好ましい、より好ましい、更に好ましい、特に好ましい、最も好ましい-L2A-は、前記前記態様[1X-3]に記載の、-L2A-の定義と同じである。
【0101】
[1-12X-3]前記態様[1-12X]において、-X
A-は好ましくは、下記部分構造式:
【化27】
の群から選択される環状基であり(各式中、両端の破線外側は含まない);
より好ましくは、下記部分構造式:
【化28】
の群から選択される環状基であり(各式中、両端の破線外側は含まない);
更に好ましくは、下記部分構造式:
【化29】
の群から選択される環状基である(各式中、両端の破線外側は含まない)。
【0102】
[1-12X-4]前記態様[1-12X]~[1-12X-3]に記載された、-L1A-、-L2A-、-XA-の定義を適宜組み合わせることで、架橋アルギン酸ゲルにおける式(III-Lx)の好ましい態様を任意に形成し得る。
【0103】
[1-13]前記態様[1]又は[1A]において、コア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルが、前記態様[1-12]の式(III-L)[式(III-L)中、各定義は、態様[1-12]の定義と同じである]又は前記態様[1-12A]の式(III-L)[式(III-L)中、各定義は、態様[1-12A]の定義と同じである]で表わされる基を介した化学架橋及び2価金属イオンを介したイオン架橋を含むものである。
【0104】
[1-13X]前記態様[1X]又は[1Y]において、コア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルが、前記態様[1-12X]の式(III-Lx)[式(III-Lx)中、各定義は、態様[1-12X]の定義と同じである]で表わされる基を介した化学架橋及び2価金属イオンを介したイオン架橋を含むものである。
【0105】
[1-13A]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルの、イオン架橋形成に用いられる2価金属イオンは、好ましくは、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン、ストロンチウムイオン及び亜鉛イオンの群から選択される2価金属イオンであり;より好ましくは、カルシウムイオン、バリウムイオン又はストロンチウムイオンであり;更に好ましくは、カルシウムイオン又はバリウムイオンである。
【0106】
[1-14]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルの、イオン架橋形成に用いられる2価金属イオンを含む水溶液は、塩化カルシウム水溶液、炭酸カルシウム水溶液、グルコン酸カルシウム水溶液、塩化バリウム水溶液、塩化ストロンチウム水溶液等からなる群から選択される2価金属イオンを含む水溶液を供給源とすることができ;好ましくは、塩化カルシウム水溶液又は塩化バリウム水溶液である。
【0107】
[1-15-1]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのカチオン性ポリマー層のカチオン性ポリマーは、ポリアミノ酸、塩基性多糖類、及び塩基性ポリマー等からなる群から選択されるカチオン性ポリマーである。
【0108】
[1-15-2]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのカチオン性ポリマー層のカチオン性ポリマーは、好ましくは、ポリアミノ酸である、ポリ-L-オルニチン(PLO)、ポリ-D-オルニチン(PDO)、ポリ-DL-オルニチン、ポリ-D-リジン(PDL)、ポリ-L-リジン(PLL)、ポリ-DL-リジン、ポリ-L-アルギニン(PLA)、ポリ-D-アルギニン(PDA)、ポリ-DL-アルギニン、ポリ-L-ホモアルギニン(PLHA)、ポリ-D-ホモアルギニン(PDHA)、ポリ-DL-ホモアルギニン、ポリ-L-ヒスチジン(PLH)、ポリ-D-ヒスチジン(PDH)およびポリ-DL-ヒスチジンからなる群から選択されるカチオン性ポリマーであり;より好ましくは、ポリ-L-オルニチンまたはポリ-L-リジンであり;更に好ましくは、ポリ-L-オルニチンである。
【0109】
[1-15-3]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのカチオン性ポリマー層のカチオン性ポリマーは、キトサンである。
【0110】
[1-15-4]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのカチオン性ポリマー層のカチオン性ポリマーは、ポリメチレン-CO-グアニジン(PMCG)、ポリアリルアミン(PAA)、ポリビニルアミン(PVA)、ポリエチレンイミン、アリルアミン-ジアリルアミン共重合体、およびアリルアミン-マレイン酸共重合体からなる群から選択されるカチオン性ポリマーであり;好ましくは、ポリアリルアミン(PAA)、ポリエチレンイミン、又はポリメチレン-CO-グアニジン(PMCG)であり;より好ましくは、ポリエチレンイミン又はポリメチレン-CO-グアニジン(PMCG)である。
【0111】
[1-16]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの外径は、例えば、約0.1~約2000μm、約0.2μm~約2000μm、約0.2~約1000μm、約0.5~約1000μm、約1~約1000μm、約10~約1000μm、約20~約1000μm等の範囲である。
【0112】
前記態様に記載されたAkn、-L1-、-L2-、Xの定義を適宜組み合わせた式(I)および式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を用いることにより、前記態様のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層における、架橋アルギン酸ゲルの好ましい態様を任意に形成し得る。
【0113】
前記態様に記載されたAky、-L1A-、-L2A-、XAの定義を適宜組み合わせた式(I-A)および式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を用いることにより、前記態様のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層における、架橋アルギン酸ゲルの好ましい態様を任意に形成し得る。
【0114】
[1-17-1]前記態様[1]又は[1A]のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、好ましくは、架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられる式(I)で表されるアルギン酸誘導体が前記態様[1-1-1]に記載のアルギン酸誘導体又は前記態様[1-1-5]の好ましいアルギン酸誘導体から選択され、式(II)で表されるアルギン酸誘導体が前記態様[1-2-1]に記載のアルギン酸誘導体又は前記態様[1-2-5]の好ましいアルギン酸誘導体から選択され;抗体産生細胞が、前記態様[1-3-1]~[1-3-3]に記載の細胞から選択され;カチオン性ポリマー層が、前記態様[1-15-1]に記載のカチオン性ポリマーから選択される、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバである。
【0115】
[1-17-1B]前記態様[1]又は[1A]のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、好ましくは、架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられる式(I)で表されるアルギン酸誘導体が前記態様[1-1-1]に記載のアルギン酸誘導体又は前記態様[1-1-5]の好ましいアルギン酸誘導体から選択され、式(II)で表されるアルギン酸誘導体が前記態様[1-2-1]に記載のアルギン酸誘導体又は前記態様[1-2-5]の好ましいアルギン酸誘導体から選択され;抗体産生細胞が、態様[1B-3-1]~[1B-3-9]に記載の細胞から選択され;カチオン性ポリマー層が、前記態様[1-15-1]に記載のカチオン性ポリマーから選択される、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバである。
【0116】
[1-17-2]前記態様[1]又は[1A]のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、より好ましくは、架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられる式(I)で表されるアルギン酸誘導体が前記態様[1-1-2]に記載のアルギン酸誘導体又は前記態様[1-1-5]のより好ましいアルギン酸誘導体から選択され、式(II)で表されるアルギン酸誘導体が前記態様[1-2-2]に記載のアルギン酸誘導体又は前記態様[1-2-5]のより好ましいアルギン酸誘導体から選択され;抗体産生細胞が前記態様[1-3-2]~[1-3-3]に記載の細胞から選択され;カチオン性ポリマー層が、前記態様[1-15-2]~[1-15-4]に記載のカチオン性ポリマーから選択される、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバである。
【0117】
[1-17-2B]前記態様[1]又は[1A]のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、より好ましくは、架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられる式(I)で表されるアルギン酸誘導体が前記態様[1-1-2]に記載のアルギン酸誘導体又は前記態様[1-1-5]のより好ましいアルギン酸誘導体から選択され、式(II)で表されるアルギン酸誘導体が前記態様[1-2-2]に記載のアルギン酸誘導体又は前記態様[1-2-5]のより好ましいアルギン酸誘導体から選択され;抗体産生細胞が態様[1B-3-2]~[1B-3-9]に記載の細胞から選択され;カチオン性ポリマー層が、前記態様[1-15-2]~[1-15-4]に記載のカチオン性ポリマーから選択される、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバである。
【0118】
[1-17-3]前記態様[1]又は[1A]のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、更に好ましくは、架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられる式(I)で表されるアルギン酸誘導体が前記態様[1-1-3]に記載のアルギン酸誘導体から選択され、式(II)で表されるアルギン酸誘導体が前記態様[1-2-3]に記載のアルギン酸誘導体から選択され;抗体産生細胞が前記態様[1-3-2]~[1-3-3]に記載の細胞から選択され;カチオン性ポリマー層が、前記態様[1-15-2]又は[1-15-4]に記載のカチオン性ポリマーから選択される、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバである。
【0119】
[1-17-3B]前記態様[1]又は[1A]のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、更に好ましくは、架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられる式(I)で表されるアルギン酸誘導体が前記態様[1-1-3]に記載のアルギン酸誘導体から選択され、式(II)で表されるアルギン酸誘導体が前記態様[1-2-3]に記載のアルギン酸誘導体から選択され;抗体産生細胞が態様[1B-3-3]又は[1B-3-9]に記載の細胞から選択され;カチオン性ポリマー層が、前記態様[1-15-2]又は[1-15-4]に記載のカチオン性ポリマーから選択される、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバである。
【0120】
[1-17-4]前記態様[1]又は[1A]のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、特に好ましくは、架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられる式(I)で表されるアルギン酸誘導体が前記態様[1-1-4]に記載のアルギン酸誘導体から選択され、式(II)で表されるアルギン酸誘導体が前記態様[1-2-4]に記載のアルギン酸誘導体から選択され;抗体産生細胞は抗体産生CHO細胞であり;カチオン性ポリマー層が、ポリ-L-オルニチン、ポリアリルアミン(PAA)、ポリエチレンイミン、又はポリメチレン-CO-グアニジン(PMCG)から選択される、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバである。
【0121】
[1-17-5]前記態様[1-17-1]~[1-17-4]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの架橋アルギン酸ゲルは、前記態様[1-4]~[1-4-1]に記載されたいずれかの添加できる成分を含むものである。
【0122】
前記態様に記載されたポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバにおける、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞、架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられる式(I)及び式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体、カチオン性ポリマー(カチオン性ポリマー層)の各要素を組み合わせることで、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの好ましい態様を任意に形成し得る。
【0123】
[1-17X-1]前記態様[1X]又は[1Y]のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、好ましくは、架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられるアルギン酸誘導体が、前記態様[1X-1]に記載の好ましい-L1A-および前記態様[1X-2]に記載の好ましいAkyを有する式(I-A)で表されるアルギン酸誘導体、前記態様[1X-3]に記載の好ましい-L2A-を有する式(II-A)で表されるアルギン酸誘導体から選択され;抗体産生細胞が、前記態様[1-3-1]~[1-3-3]に記載の細胞から選択され;カチオン性ポリマー層が、前記態様[1-15-1]に記載のカチオン性ポリマーから選択される、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバである。
【0124】
[1-17X-1B]前記態様[1X]又は[1Y]のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、好ましくは、架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられるアルギン酸誘導体が、前記態様[1X-1]に記載の好ましい-L1A-および前記態様[1X-2]に記載の好ましいAkyを有する式(I-A)で表されるアルギン酸誘導体、前記態様[1X-3]に記載の好ましい-L2A-を有する式(II-A)で表されるアルギン酸誘導体から選択され;抗体産生細胞が、態様[1B-3-1]~[1B-3-9]に記載の細胞から選択され;カチオン性ポリマー層が、前記態様[1-15-1]に記載のカチオン性ポリマーから選択される、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバである。
【0125】
[1-17X-2]前記態様[1X]又は[1Y]のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、より好ましくは、架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられるアルギン酸誘導体が、前記態様[1X-1]に記載のより好ましい-L1A-および前記態様[1X-2]に記載のより好ましいAkyを有する式(I-A)で表されるアルギン酸誘導体、前記態様[1X-3]に記載のより好ましい-L2A-を有する式(II-A)で表されるアルギン酸誘導体から選択され;抗体産生細胞が前記態様[1-3-2]~[1-3-3]に記載の細胞から選択され;カチオン性ポリマー層が、前記態様[1-15-2]~[1-15-4]に記載のカチオン性ポリマーから選択される、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバである。
【0126】
[1-17X-2B]前記態様[1X]又は[1Y]のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、より好ましくは、架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられるアルギン酸誘導体が、前記態様[1X-1]に記載のより好ましい-L1A-および前記態様[1X-2]に記載のより好ましいAkyを有する式(I-A)で表されるアルギン酸誘導体、前記態様[1X-3]に記載のより好ましい-L2A-を有する式(II-A)で表されるアルギン酸誘導体から選択され;抗体産生細胞が態様[1B-3-2]~[1B-3-9]に記載の細胞から選択され;カチオン性ポリマー層が、前記態様[1-15-2]~[1-15-4]に記載のカチオン性ポリマーから選択される、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバである。
【0127】
[1-17X-3]前記態様[1X]又は[1Y]のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、更に好ましくは、架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられるアルギン酸誘導体が、前記態様[1X-1]に記載の更に好ましい-L1A-および前記態様[1X-2]に記載の更に好ましいAkyを有する式(I-A)で表されるアルギン酸誘導体、前記態様[1X-3]に記載の更に好ましい-L2A-を有する式(II-A)で表されるアルギン酸誘導体から選択され;抗体産生細胞が前記態様[1-3-2]~[1-3-3]に記載の細胞から選択され;カチオン性ポリマー層が、前記態様[1-15-2]又は[1-15-4]に記載のカチオン性ポリマーから選択される、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバである。
【0128】
[1-17X-3B]前記態様[1X]又は[1Y]のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、更に好ましくは、架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられるアルギン酸誘導体が、前記態様[1X-1]に記載の更に好ましい-L1A-および前記態様[1X-2]に記載の更に好ましいAkyを有する式(I-A)で表されるアルギン酸誘導体、前記態様[1X-3]に記載の更に好ましい-L2A-を有する式(II-A)で表されるアルギン酸誘導体から選択され;抗体産生細胞が態様[1B-3-3]又は[1B-3-9]に記載の細胞から選択され;カチオン性ポリマー層が、前記態様[1-15-2]又は[1-15-4]に記載のカチオン性ポリマーから選択される、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバである。
【0129】
[1-17X-4]前記態様[1X]又は[1Y]のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、特に好ましくは、架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられるアルギン酸誘導体が、前記態様[1X-1]に記載の特に好ましい-L1A-および前記態様[1X-2]に記載の特に好ましいAkyを有する式(I-A)で表されるアルギン酸誘導体、前記態様[1X-3]に記載の特に好ましい-L2A-を有する式(II-A)で表されるアルギン酸誘導体から選択され;抗体産生細胞は抗体産生CHO細胞であり;カチオン性ポリマー層が、ポリ-L-オルニチン、ポリアリルアミン(PAA)、ポリエチレンイミン、又はポリメチレン-CO-グアニジン(PMCG)から選択される、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバである。
【0130】
[1-17X-5]前記態様[1X]又は[1Y]のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、最も好ましくは、架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられるアルギン酸誘導体が、前記態様[1X-1]に記載の最も好ましい-L1A-および前記態様[1X-2]に記載の最も好ましいAkyを有する式(I-A)で表されるアルギン酸誘導体、前記態様[1X-3]に記載の最も好ましい-L2A-を有する式(II-A)で表されるアルギン酸誘導体から選択され;抗体産生細胞は抗体産生CHO細胞であり;カチオン性ポリマー層が、ポリ-L-オルニチン、ポリアリルアミン(PAA)、ポリエチレンイミン、又はポリメチレン-CO-グアニジン(PMCG)から選択される、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバである。
【0131】
[1-17X-5-1]前記態様[1-17X-5]において、式(I-A)で表されるアルギン酸誘導体の-L
1A-は、具体的には、下記部分構造式:
【化30】
(各式中、両端の破線外側は含まない)から選択されるリンカーであり;
Akyは、具体的には、下記部分構造式:
【化31】
(式中、両端の破線右側は含まない)から選択される環状アルキン基であり;
式(II-A)で表されるアルギン酸誘導体の-L
2A-は、具体的には、下記部分構造式:
【化32】
(式中、両端の破線外側は含まない)から選択されるリンカーである。
【0132】
[1-17X-6]前記態様[1-17X-1]~[1-17X-5-1]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの架橋アルギン酸ゲルは、前記態様[1-4]~[1-4-1]に記載されたいずれかの添加できる成分を含むものである。
【0133】
前記態様に記載されたポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバにおける、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞、架橋アルギン酸ゲルの形成に用いられる式(I-A)及び式(II-A)で表される化学修飾アルギン酸誘導体、カチオン性ポリマー(カチオン性ポリマー層)の各要素を組み合わせることで、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの好ましい態様を任意に形成し得る。
【0134】
[1B-3]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞は、例えば、抗体(ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、マウス抗体等の各種のモノクローナル抗体又はそれらのバイスペシフィック抗体、低分子化抗体、糖鎖改変抗体等の各種の改変型抗体)産生細胞、生理活性物質(酵素、サイトカイン、ホルモン、血液凝固系因子、ワクチン等)産生細胞、医薬品原料、化学原料、食品原料等として有用な各種の有用物質を産生できる細胞が挙げられ;好ましくは、抗体産生細胞または生理活性物質産生細胞である。
【0135】
[1B-3-1]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に封入できる抗体産生細胞は、抗体を産生するB細胞から得られたハイブリドーマ(抗体産生ハイブリドーマ)又は抗体発現ベクターにより形質転換された培養細胞(抗体産生遺伝子組換え細胞)である。
【0136】
[1B-3-2]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に封入できる抗体産生細胞は、好ましくは、抗体を産生する遺伝子組換え動物細胞である。
【0137】
[1B-3-3]前記態様[1B-3-2]において、宿主として用いられる動物細胞は、CHO細胞、CHO細胞亜株(CHO-K1細胞、CHO-DG44細胞、CHO-DXB11細胞、又は糖鎖を改変させるように形質転換されたCHO細胞等)、COS細胞、Sp2/0細胞、NS0細胞、SP2細胞、PERC6細胞、YB2/0細胞、YE2/0細胞、1R983F細胞、Namalwa細胞、Wil-2細胞、Jurkat細胞、Vero細胞、Molt-4細胞、HEK293細胞、BHK細胞、HT-1080細胞、KGH6細胞、P3X63Ag8.653細胞、C127細胞、JC細胞、LA7細胞、ZR-45-30細胞、hTERT細胞、NM2C5細胞、又はUACC-812細胞から選択される細胞である。
【0138】
[1B-3-4]前記態様[1B-3-2]において、宿主として用いられる動物細胞は、好ましくは、CHO細胞、CHO細胞亜株、COS細胞、Sp2/0細胞、NS0細胞、SP2細胞、PERC6細胞、HEK293細胞、BHK細胞、HT-1080細胞、又はC127細胞から選択される細胞であり;より好ましくは、CHO細胞、CHO細胞亜株、Sp2/0細胞、NS0細胞、HEK293細胞、又はBHK細胞から選択される細胞であり;更に好ましくは、CHO細胞またはCHO細胞亜株である。
【0139】
[1B-3-5]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に封入できる抗体産生細胞は、好ましくは、その宿主細胞がCHO細胞、CHO細胞亜株、Sp2/0細胞、又はNS0細胞から選択される細胞であり;より好ましくは、CHO細胞又はCHO細胞亜株である。
【0140】
[1B-3-6]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に封入できる抗体産生細胞は、バイオ医薬品またはバイオ医薬品原料として用いられる抗体を産生する細胞である。
【0141】
本明細書中、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる抗体産生細胞は、好ましくは、浮遊細胞または浮遊培養可能なように馴化された細胞または亜株である。
【0142】
[1B-3-7]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に封入できる抗体産生細胞は、ムロモナブ-CD3、トラスツズマブ、リツキシマブ、パリビズマブ、インフリキシマブ、バシリキシマブ、トシリズマブ、ベバシズマブ、アダリムマブ、セツキシマブ、オマリズマブ、エクリズマブ、パニツムマブ、ウステキヌマブ、ゴリムマブ、カナキヌマブ、デノスマブ、オファツムマブ、ペルツズマブ、ナタリズマブ、ニボルマブ、アレムツズマブ、セクキヌマブ、ラムシルマブ、イピリムマブ、エボロクマブ、メポリズマブ、アリロクマブ、イキセキズマブ、ブロダルマブ、エロツズマブ、ペムブロリズマブ、サリルマブ、ベズロトクスマブ、ベリムマブ、ダラツムマブ、アベルマブ、デュピルマブ、アテゾリズマブ、エミシズマブ、グセルクマブ、デュルバルマブ、ベドリズマブ、ロモソズマブ、リサンキズマブ、ネシツムマブ、ラブリズマブ、ブロスマブ、イサツキシマブ、チルドラキズマブ、サトラリズマブ、ガルカネズマブ、ジヌツキシマブ、フレマネズマブ、エレヌマブ、カシリビマブ、イムデビマブ、アニフロルマブ、ソトロビマブ、オクレリズマブ、ナキシタマブ、アデュカヌマブ、タファシタマブ、マルジェツキシマブ、ガンテネルマブ、チラゴルマブ、クロバリマブ、ネモリズマブ、カツマクソマブ、プラモタマブ、ファリシマブ、ゲムツズマブ、イブリツモマブ、ブレンツキシマブ、イノツズマブ、ポラツズマブ、エンホルツマブ、サシツズマブ、ベランタマブ、ロンカスツキシマブ、チソツマブ、ダトポタマブ、パトリツマブ等の抗体を産生する細胞;モガムリズマブ、ベンラリズマブ、オビヌツズマブ、イネビリズマブ等の改変糖鎖を有する抗体を産生する細胞;ラニビズマブ、イダルシズマブ、ブリナツモマブ、ブロルシズマブ、アブシキシマブ、カプラシズマブ、セルトリズマブ等の抗体断片からなる低分子抗体を産生する細胞等から選択される細胞である。
【0143】
[1B-3-8]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に封入できる抗体産生細胞は、抗体産生動物細胞であり、好ましくは、抗体産生CHO細胞、抗体産生Sp2/0細胞又は抗体産生NS0細胞であり、より好ましくは、抗体産生CHO細胞である。
【0144】
[1B-3-9]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に封入できる抗体産生細胞は、好ましくは、その宿主細胞がCHO細胞である抗体産生CHO細胞あり、例えば、ムロモナブ-CD3産生CHO細胞、トラスツズマブ産生CHO細胞、リツキシマブ産生CHO細胞、パリビズマブ産生CHO細胞、インフリキシマブ産生CHO細胞、バシリキシマブ産生CHO細胞、トシリズマブ産生CHO細胞、ゲムツズマブ産生CHO細胞、ベバシズマブ産生CHO細胞、イブリツモマブ産生CHO細胞、アダリムマブ産生CHO細胞、セツキシマブ産生CHO細胞、ラニビズマブ産生CHO細胞、オマリズマブ産生CHO細胞、エクリズマブ産生CHO細胞、パニツムマブ産生CHO細胞、ウステキヌマブ産生CHO細胞、ゴリムマブ産生CHO細胞、カナキヌマブ産生CHO細胞、デノスマブ産生CHO細胞、モガムリズマブ産生CHO細胞、セルトリズマブ産生CHO細胞、オファツムマブ産生CHO細胞、ペルツズマブ産生CHO細胞、ブレンツキシマブ産生CHO細胞、ナタリズマブ産生CHO細胞、ニボルマブ産生CHO細胞、アレムツズマブ産生CHO細胞、セクキヌマブ産生CHO細胞、ラムシルマブ産生CHO細胞、イピリムマブ産生CHO細胞、エボロクマブ産生CHO細胞、メポリズマブ産生CHO細胞、アリロクマブ産生CHO細胞、イキセキズマブ産生CHO細胞、ブロダルマブ産生CHO細胞、イダルシズマブ産生CHO細胞、エロツズマブ産生CHO細胞、ペムブロリズマブ産生CHO細胞、サリルマブ産生CHO細胞、ベズロトクスマブ産生CHO細胞、ベリムマブ産生CHO細胞、ダラツムマブ産生CHO細胞、アベルマブ産生CHO細胞、デュピルマブ産生CHO細胞、アテゾリズマブ産生CHO細胞、ベンラリズマブ産生CHO細胞、イノツズマブ産生CHO細胞、エミシズマブ産生CHO細胞、グセルクマブ産生CHO細胞、デュルバルマブ産生CHO細胞、オビヌツズマブ産生CHO細胞、ベドリズマブ産生CHO細胞、ロモソズマブ産生CHO細胞、リサンキズマブ産生CHO細胞、ネシツムマブ産生CHO細胞、ラブリズマブ産生CHO細胞、ブロスマブ産生CHO細胞、イサツキシマブ産生CHO細胞、チルドラキズマブ産生CHO細胞、サトラリズマブ産生CHO細胞、ガルカネズマブ産生CHO細胞、ジヌツキシマブ産生CHO細胞、フレマネズマブ産生CHO細胞、エレヌマブ産生CHO細胞、カシリビマブ産生CHO細胞、イムデビマブ産生CHO細胞、アニフロルマブ産生CHO細胞、ソトロビマブ産生CHO細胞、オクレリズマブ産生CHO細胞、ナキシタマブ産生CHO細胞、アデュカヌマブ産生CHO細胞、タファシタマブ産生CHO細胞、マルジェツキシマブ産生CHO細胞、ポラツズマブ産生CHO細胞、エンホルツマブ産生CHO細胞、サシツズマブ産生CHO細胞、ベランタマブ産生CHO細胞、ロンカスツキシマブ産生CHO細胞、チソツマブ産生CHO細胞、イネビリズマブ産生CHO細胞、ブリナツモマブ産生CHO細胞、ブロルシズマブ産生CHO細胞、アブシキシマブ産生CHO細胞、カプラシズマブ産生CHO細胞、又は抗GPVI抗体産生CHO細胞から選択される細胞であり;トラスツズマブ産生CHO細胞、リツキシマブ産生CHO細胞、インフリキシマブ産生CHO細胞、トシリズマブ産生CHO細胞、アダリムマブ産生CHO細胞、ニボルマブ産生CHO細胞、又は抗GPVI抗体産生CHO細胞から選択される細胞である。
【0145】
[1B-3-10]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる生理活性物質産生細胞は、前記態様[1-3-4]に記載された、生理活性物質産生細胞と同じである。
【0146】
[1B-3-11]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる生理活性物質産生細胞は、インスリン分泌細胞、膵島、膵島細胞、又は膵β細胞由来のMIN6細胞からなる群から選択される細胞である。
【0147】
[1B-3-12]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に封入できる生理活性物質産生細胞は、生理活性物質発現ベクターにより形質転換された培養細胞(生理活性物質産生遺伝子組換え細胞)である。
【0148】
[1B-3-13]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に封入できる生理活性物質産生細胞は、生理活性物質を産生する遺伝子組換え動物細胞である。
【0149】
[1B-3-14]前記態様[1B-3-13]において、宿主として用いられる動物細胞としては、CHO細胞、CHO細胞亜株、COS細胞、Sp2/0細胞、NS0細胞、SP2細胞、又はPERC6細胞、HEK293細胞、BHK細胞、HT-1080細胞、又はC127細胞から選択される細胞であり;好ましくは、CHO細胞、CHO細胞亜株、Sp2/0細胞、及びNS0細胞、HEK293細胞、又はBHK細胞から選択される細胞であり;より好ましくは、CHO細胞、又はCHO細胞亜株である。
【0150】
[1B-3-15]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に封入できる生理活性物質産生細胞は、好ましくは、その宿主細胞がCHO細胞、CHO細胞亜株、HEK293細胞、又はBHK細胞から選択される細胞であり;より好ましくは、CHO細胞、又はCHO細胞亜株である。
【0151】
[1B-3-16]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に封入できる生理活性物質産生細胞は、バイオ医薬品又はバイオ医薬品原料として用いられる生理活性物質を産生する細胞である。
【0152】
[1B-3-17]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に封入できる生理活性物質産生細胞は、アルテプラーゼ、モンテプラーゼ、イミグルセラーゼ、ベラグルセラーゼ、アガルシダーゼ、ラロニダーゼ、アルグルコシダーゼ、アバルグルコシダーゼ、イデュルスルファーゼ、ガルスルファーゼ、エロスルファーゼ、ラスブリカーゼ、ドルナーゼ、セルリポナーゼ、グルカルピダーゼ、ヒアルロニダーゼ、アスホターゼ等の酵素を産生する細胞;エプタコグ、オクトコグ、ルリオクトコグ、ツロクトコグ、ロノクトコグ、ダモクトコグ、シモクトコグ、ノナコグ、アルブトレペノナコグ、カトリデカコグ、エフラロクトコグ、エフトレノナコグ、トロンボモデュリン、アンチトロンビン、ボニコグ、アルブミン等の血液凝固系因子及び血液関連蛋白を産生する細胞;インスリン、インスリン リスプロ、インスリン アスパルト、インスリン グラルギン、インスリン デテミル、インスリン グルリジン、インスリン デグルデク、ソマトロピン、ソマプシタン、メカセルミン、カルペリチド、ボソリチド、グルカゴン、ホリトロピン、コリオゴナドトロピン、デュラグルチド、リラグルチド、セマグルチド、テデュグルチド、テリパラチド、メトレレプチン等のホルモンを産生する細胞;インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、インターフェロンベータ-1a、インターフェロンベータ-1b、インターフェロンガンマ-1a等のインターフェロンを産生する細胞;エポエチン、ダルベポエチン、ロミプロスチム等の造血因子を産生する細胞;フィルグラスチム、レノグラスチム、テセロイキン、トラフェルミン、ベルフェルミン、エタネルセプト、アフリベルセプト、デニロイキン ジフチトクス等のサイトカイン及びそれらの受容体を産生する細胞;アバタセプト等の細胞表面抗原、細胞表面受容体及びそれらのリガンドを産生する細胞から選択される細胞である。
【0153】
[1B-3-18]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に封入できる生理活性物質産生細胞は、生理活性物質産生動物細胞であり、好ましくは、生理活性物質産生CHO細胞、生理活性物質産生HEK293細胞又は生理活性物質産生BHK細胞であり、より好ましくは、生理活性物質産生CHO細胞である。
【0154】
[1B-3-19]前記態様[1]、[1A]、[1X]又は[1Y]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に封入できる生理活性物質産生細胞は、好ましくは、その宿主細胞がCHO細胞である生理活性物質産生細胞CHO細胞であり、例えば、アルテプラーゼ産生CHO細胞、アルグルコシダーゼ産生CHO細胞、ルリオクトコグ産生CHO細胞、デュラグルチド産生CHO細胞、インターフェロンベータ-1a産生CHO細胞、ダルベポエチン産生CHO細胞、エタネルセプト産生CHO細胞、アフリベルセプト産生CHO細胞又はアバタセプト産生CHO細胞から選択される細胞である。
【0155】
[2]第2の態様は、次の通りである。抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに前記態様[1]に記載の式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を用いて架橋反応を行うことで得られる架橋アルギン酸ゲルを含むコア層を、カチオン性ポリマーで被覆して形成されるポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造方法であって、
工程(1):抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに前記態様[1]に記載の式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体が含まれる混合溶液を、2価金属イオンを含む溶液中に射出し、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞をコア層に含む架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA)を得る工程、
工程(2):工程(1)で得られた抗体、生理活性物質等を産生できる細胞をコア層に含む架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA)を、カチオン性ポリマーを含む溶液に接触させることで、カチオン性ポリマー層で被覆されたポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(CFB)を得る工程、を含むことを特徴とする、製造方法である。
【0156】
[2A]前記態様[2]におけるポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、前記態様([1]~[1-17-5])のいずれかに記載のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバである。
【0157】
[2-1]前記態様[2]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造に用いられる抗体、生理活性物質等を産生できる細胞は、前記態様[1-3]~[1-3-5]のいずれか1項に記載の抗体、生理活性物質等を産生できる細胞と同じである。
【0158】
[2-1-1]前記態様[2]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造に用いられる抗体、生理活性物質等を産生できる細胞は、前記態様[1B-3]~[1B-3-19]のいずれか1項に記載の抗体、生理活性物質等を産生できる細胞と同じである。
【0159】
[2-2]前記態様[2]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造に用いられる式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体のゲルろ過クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量は、例えば、約100,000Da~約3,000,000Daの範囲であり;好ましくは約300,000Da~約2,500,000Daの範囲であり、より好ましくは約500,000Da~約2,000,000Daの範囲である。
【0160】
[2-3]前記態様[2]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造に用いられる式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体のゲルろ過クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量は、例えば、約100,000Da~約3,000,000Daの範囲であり;好ましくは約300,000Da~約2,500,000Daの範囲であり、より好ましくは約500,000Da~約2,000,000Daの範囲である。
【0161】
[2-4]前記態様[2]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造に用いられる式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の反応性基:Akn-L1-NH2基(Akn-L1-は、前記態様[1]~[1-1-4]中の定義と同じである)の導入率は、例えば、約0.1~約30mol%の範囲であり;好ましくは、約0.3~約20mol%の範囲であり;より好ましくは、約0.5~約10mol%の範囲である。
【0162】
[2-5]前記態様[2]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造に用いられる式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の反応性基:N3-L2-NH2基(-L2-は、前記態様[1]、[1-2-1]~[1-2-4]中の定義と同じである)の導入率が、例えば、約0.1~約30mol%の範囲であり;好ましくは、約0.3~約20mol%の範囲であり;より好ましくは、約0.5~約15mol%の範囲である。
【0163】
[2-6]前記態様[2]において、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液に添加できる成分としては、例えば、アルギン酸溶液、培地、培養液、コラーゲン溶液、メチルセルロース、スクロース溶液、又はそれらの混合物等からなる群から選択される成分であり;好ましくは、アルギン酸溶液、培地、培養液、又はそれらの混合物等からなる群から選択される成分である。
【0164】
[2-7]前記態様[2]において、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液に添加できるアルギン酸溶液の調製に用いられるアルギン酸(例えば、アルギン酸ナトリウム、等)のゲルろ過クロマトグラフィー法(GPC法)により測定した重量平均分子量が、例えば、約150,000Da~約2,500,000Daの範囲であり;好ましくは約300,000Da~約2,000,000Daの範囲であり、より好ましくは約700,000Da~約1,500,000Daの範囲である。
【0165】
[2-7A]前記態様[2]のファイバ製造の工程(1)で、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液に添加できるアルギン酸溶液の調製に用いられるアルギン酸(例えば、アルギン酸ナトリウム、等)のゲルろ過クロマトグラフィー法(GPC法)により測定した重量平均分子量が、例えば、約150,000Da~約2,500,000Daの範囲であり;好ましくは、約300,000Da~約2,500,000Daの範囲;より好ましくは、約700,000Da~約1,400,000Da、約800,000Da~約1,500,000Da、約1,400,000~約2,000,000Da、または約1,500,000~約2,500,000から選ばれる範囲である。
【0166】
[2-7B]前記態様[2]のファイバ製造の工程(1)で、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液に添加できるアルギン酸溶液の調製に用いられるアルギン酸(例えば、アルギン酸ナトリウム、等)のゲルろ過クロマトグラフィー法(GPC法)により測定した重量平均分子量は、好ましくは、約1,400,000~約2,000,000、又は約700,000 ~約1,400,000、又は約800,000~約1,500,000から選ばれる範囲であり;より好ましくは、約1,400,000~約2,000,000の範囲である。
【0167】
[2-8]前記態様[2]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造に用いられる式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の濃度は、例えば、約0.01~約1.5重量%の範囲であり;好ましくは、約0.05~約1.0重量%の範囲であり;より好ましくは、約0.08~約0.75重量%の範囲である。
【0168】
本明細書中、重量%と記載した場合、w/v%を意味するものとする。
【0169】
[2-9]前記態様[2]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造に用いられる式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の濃度は、例えば、約0.01~約1.5重量%の範囲であり;好ましくは、約0.05~約1.0重量%の範囲であり;より好ましくは、約0.08~約0.75重量%の範囲である。
【0170】
[2-10]前記態様[2]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造に用いられる式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体と式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の混合溶液の濃度は、例えば、約0.02~約2.0重量%の範囲であり;好ましくは、約0.1~約2.0重量%の範囲であり;より好ましくは約0.15~約1.5重量%の範囲である。
【0171】
[2-11]前記態様[2]において、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液に添加できるアルギン酸溶液の濃度は、例えば、0~約1.98重量%の範囲であり;好ましくは、0~約1.8重量%の範囲であり;より好ましくは、0~約1.7重量%の範囲である。
【0172】
[2-11-1]前記態様[2]において、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液に添加できるアルギン酸溶液の濃度(CALG)は、例えば、0<CALG≦約1.98重量%の範囲であり;好ましくは、0<CALG≦約1.8重量%の範囲であり;より好ましくは、0<CALG≦約1.7重量%の範囲である。
【0173】
[2-11-1]前記態様[2]において、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液にアルギン酸溶液を添加する場合、当該式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液の濃度とアルギン酸溶液の濃度の総濃度は、好ましくは約0.5~約2.0重量%であり;より好ましくは、約1.0重量%、約1.5重量%及び約2.0重量%から選ばれる濃度である。
【0174】
[2-11-1-1]前記態様[2]において、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液にアルギン酸溶液を添加する場合、当該式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液の濃度とアルギン酸溶液の濃度の総濃度(CTOL)は、例えば、0<CTOL≦約2.0重量%であり、
好ましくは約0.5~約2.0重量%;
より好ましくは約1.0~約2.0重量%であり;
更に好ましくは、約1.0重量%、約1.5重量%及び約2.0重量%から選ばれる濃度である。
【0175】
[2-11-2]前記態様[2]において、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液にアルギン酸溶液を添加する場合、当該式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液の濃度(C1(重量%))とアルギン酸溶液の濃度(C2(重量%))の組合せは、好ましくは、(C1:C2)=(約0.2:約1.3)、(約0.5:約1.0)、(約1.0:約0.5)、(約0.66:約1.34)、および(約0.34:約0.66)からなる群から選ばれる組み合わせである。
【0176】
[2-11-2-1]前記態様[2]において、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液にアルギン酸溶液を添加する場合、当該式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液の濃度(C1(重量%))とアルギン酸溶液の濃度(C2(重量%))の組合せは、例えば、
0<C2(重量%)≦約1.98(重量%)、
0<C1(重量%)<約2.0(重量%)-C2(重量%)、
0<C1+C2(重量%)≦約2.0(重量%)
で表される式を満たす範囲の組合せであり、好ましくは、(C1:C2)=(約0.2:約1.3)、(約0.5:約1.0)、(約1.0:約0.5)、(約0.66:約1.34)、および(約0.34:約0.66)からなる群から選ばれる組み合わせである。
【0177】
[2-11-3]前記態様[2]において、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液にアルギン酸溶液を添加する場合、当該式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の濃度(C1A(重量%))、式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の濃度(C1N(重量%))及びアルギン酸溶液の濃度(C2(重量%))の組合せは、好ましくは、(C1A:C1N:C2)=(約0.1:約0.1:約1.3)、(約0.25:約0.25:約1.0)、(約0.5:約0.5:約0.5)、(約0.33:約0.33:約1.34)、および(約0.17:約0.17:約0.66)からなる群から選ばれる組み合わせである。
【0178】
[2-11-3-1]前記態様[2]において、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液にアルギン酸溶液を添加する場合、当該式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の濃度(C1A(重量%))、式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の濃度(C1N(重量%))及びアルギン酸溶液の濃度(C2(重量%))の組合せは、例えば、
0<C2(重量%)≦約1.98(重量%)、
0<C1A(重量%)<約2.0(重量%)-C2(重量%)、
0<C1N(重量%)<約2.0(重量%)-C2(重量%)、
0<C1A+C1N+C2(重量%)≦約2.0(重量%)
で表される式を満たす範囲の組合せであり;好ましくは、(C1A:C1N:C2)=(約0.1:約0.1:約1.3)、(約0.25:約0.25:約1.0)、(約0.5:約0.5:約0.5)、(約0.33:約0.33:約1.34)、および(約0.17:約0.17:約0.66)からなる群から選ばれる組み合わせである。
【0179】
[2-12-1]前記態様[2]において、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液中の、式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液および式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の各容量比(v1、v2)は、例えば、v1+v2=15の比率であり、例えば、(v1:v2)=(7.5:7.5)である。但し、v1+v2=15において、0<v1<15、0<v2<15である。
【0180】
[2-12-2]前記態様[2]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層の形成に用いる、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液に、アルギン酸溶液を添加する場合、アルギン酸溶液を添加した混合溶液における、式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の容量(v1)、式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の容量(v2)およびアルギン酸溶液の容量(v3)の容量比は、例えば、v1+v2+v3=15の比率であり、例えば、(v1:v2:v3)=(5:5:5)、(2.5:2.5:10)、(1:1:13)等の組み合わせである。但し、v1+v2+v3=15において、0<v1<15、0<v2<15、0<v3<15である。
【0181】
[2-13]前記態様[2]において、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体が含まれる混合溶液を射出させる溶液中に含まれる2価金属イオンとしては、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン、ストロンチウムイオン、亜鉛イオン等の群から選択される2価金属イオンであり;好ましくは、カルシウムイオン、バリウムイオン又はストロンチウムイオンであり;より好ましくは、カルシウムイオン又はバリウムイオンである。
【0182】
[2-14]前記態様[2]において、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体が含まれる混合溶液を射出させる溶液は、塩化カルシウム水溶液、炭酸カルシウム水溶液、グルコン酸カルシウム水溶液、塩化バリウム水溶液、塩化ストロンチウム水溶液等からなる群から選択される2価金属イオンを含む水溶液であり;好ましくは、塩化カルシウム水溶液又は塩化バリウム水溶液である。
【0183】
[2-15]前記態様[2]または[2-14]において、2価金属イオンの濃度は、例えば、約1mM~約1Mの範囲、又は約10~約500mMの範囲であり;好ましくは、約10~約100mMである。
【0184】
[2-16-1]前記態様[2]において、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液は、例えば、
図3に示されるような、導入口1および排出口2が備わる装置XX等を用い、装置XXの導入口1から当該混合溶液を導入し、装置XXの排出口2から、射出することができる。
【0185】
[2-16-2]前記態様[2-16-1]において、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液は、例えば、
図3に示されるような、押出筒YY等を用いて、装置XXの排出口2から、射出することができる。
【0186】
[2-17]前記態様[2-16-2]において、装置XXと押出筒YYを合わせたものとして、例えば、注射筒を用いることができる。また、注射筒はガラス製またはプラスチック製の注射筒を用いることができる。
【0187】
[2-18]前記態様[2]、[2-16-1]および[2-16-2]において、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液の射出速度(流速)は、例えば、約100~約10000μL/分の範囲である。
【0188】
[2-19-1]前記態様[2]において、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞を含む架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA)を接触させるカチオン性ポリマーを含む溶液は、ポリアミノ酸(塩基性アミノ酸の重合体)、塩基性多糖類、塩基性ポリマー、それらの塩等からなる群から選択されるカチオン性ポリマーを含む溶液である。
【0189】
[2-19-2]前記態様[2]において、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞を含む架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA)を接触させるカチオン性ポリマーを含む溶液は好ましくは、ポリアミノ酸である、ポリ-L-オルニチン(PLO)、ポリ-D-オルニチン(PDO)、ポリ-DL-オルニチン、ポリ-D-リジン(PDL)、ポリ-L-リジン(PLL)、ポリ-DL-リジン、ポリ-L-アルギニン(PLA)、ポリ-D-アルギニン(PDA)、ポリ-DL-アルギニン、ポリ-L-ホモアルギニン(PLHA)、ポリ-D-ホモアルギニン(PDHA)、ポリ-DL-ホモアルギニン、ポリ-L-ヒスチジン(PLH)、ポリ-D-ヒスチジン(PDH)、ポリ-DL-ヒスチジンおよびそれらの塩からなる群から選択されるカチオン性ポリマーを含む溶液であり;より好ましくは、ポリ-L-オルニチン、ポリ-L-リジンおよびそれらの塩からなる群から選ばれるカチオン性ポリマーを含む溶液であり;更に好ましくは、ポリ-L-オルニチンまたはその塩から選択されるカチオン性ポリマーを含む溶液である。
【0190】
[2-19-3]前記態様[2]において、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞を含む架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA)を接触させるカチオン性ポリマーを含む溶液は、例えば、塩基性多糖類であるキトサンまたはその塩からなる群から選択されるカチオン性ポリマーを含む溶液である。
【0191】
[2-19-4]前記態様[2]において、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞を含む架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA)を接触させるカチオン性ポリマーを含む溶液は、例えば、塩基性ポリマーであるポリメチレン-CO-グアニジン(PMCG)、ポリアリルアミン(PAA)、ポリビニルアミン(PVA)、ポリエチレンイミン、アリルアミン-ジアリルアミン共重合体、アリルアミン-マレイン酸共重合体、およびそれらの塩からなる群から選択されるカチオン性ポリマーを含む溶液である。
【0192】
[2-19-4-1]前記態様[2-19-4]において、好ましくは、カチオン性ポリマーを含む溶液は、ポリアリルアミン(PAA)、ポリエチレンイミン、ポリメチレン-CO-グアニジン(PMCG)及びそれらの塩からなる群から選択されるカチオン性ポリマーを含む溶液であり;より好ましくは、ポリエチレンイミン、ポリメチレン-CO-グアニジン(PMCG)、またはその塩から選択されるカチオン性ポリマーを含む溶液である。
【0193】
[2-20]前記態様[2]において、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞を含む架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA)を接触させるカチオン性ポリマーを含む溶液は、2価金属イオンを含む水溶液(例えば、塩化カルシウム水溶液、塩化バリウム水溶液、等)、緩衝液等の成分を含むことができる。
【0194】
[2-21]前記態様[2]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造時の温度は、例えば、約4~約37℃の範囲である。
【0195】
前記態様に記載されたポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造方法および各要素を組み合わせることで、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造方法の好ましい態様を任意に形成し得る。
【0196】
[2-22]前記態様[2]~[2-21]において、式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を、各々、前記態様[1X]に記載の、式(I-A)及び式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体に置き換えることで、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造方法の好ましい態様を任意に形成し得る。
当該置き換えにより、式(I-A)又は式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の濃度、容量等に係る変数は、上記態様[1-11-2-1X]、[1-11-3-1X]、[1-11-4X]、[1-11-5X]中に記載された対応する変数に置き換わるものとする。
【0197】
[3]第3の態様は、次の通りである。抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに前記態様[1]に記載の式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を用いて架橋反応を行うことにより得られる架橋アルギン酸ゲルを含むコア層を、カチオン性ポリマーで被覆して形成されるポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを用いる抗体、生理活性物質等の製造方法である。一態様の前記製造方法は、前記ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを培養容器に入れ、培地を添加して前記ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを含浸させ、培養を行うことによる、抗体、生理活性物質等の製造方法である。
【0198】
[3A]前記態様[3]におけるポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、前記態様([1]~[1-17-5])のいずれかに記載のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバである。
【0199】
[3X]第3Xの態様は、次の通りである。抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに前記態様[1X]に記載の式(I-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体及び式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を用いて架橋反応を行うことにより得られる架橋アルギン酸ゲルを含むコア層を、カチオン性ポリマーで被覆して形成されるポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを用いる抗体、生理活性物質等の製造方法である。一態様の前記製造方法は、前記ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを培養容器に入れ、培地を添加して前記ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを含浸させ、培養を行うことによる、抗体、生理活性物質等の製造方法である。
【0200】
[3-1]前記態様[3]又は[3X]において、培養容器は、例えば、組織培養用プレート、三角フラスコ、T-フラスコ、スピナーフラスコ、培養バッグ、動物細胞培養槽等からなる群から選択される容器であり;好ましくは三角フラスコ又は動物細胞培養槽である。培養は、例えば、静置培養または振とう培養などのいずれの方法を選択してもよく、回分培養(バッチ培養)、流加培養(フェドバッチ培養)、連続培養などのいずれの方法を用いてもよいが、流加培養または連続培養が好ましい。
【0201】
[3-2]前記態様[3]~[3-1]のいずれか1つにおいて、培養時の温度は、例えば、約28℃~約39℃の範囲であり、例えば、約30℃~約37℃の範囲である。
【0202】
[3-3]前記態様[3]~[3-2]のいずれか1つにおいて、培養時の攪拌速度は、例えば、約50~約500rpm、約50~約350rpm、約50~約250rpm、約50~約150rpm、の範囲であり、例えば、約125rpmである。
【0203】
[3-4]前記態様[3]~[3-3]のいずれか1つにおいて、培養条件は、例えば、培養温度を約28℃~約39℃の範囲とし、5%CO2雰囲気下に培養装置で、約125rpmの攪拌速度で培養をする。
【0204】
[3-5]前記態様[3]~[3-4]のいずれか1つにおいて、培養する期間は、例えば、7日間であり、又は14日であり、又は28日であり、又は42日であり、又は56日であり、又は70日である。
【0205】
本明細書中、培養温度において、「約」と記載した場合、当該数値の±10%迄、ある態様では当該数値の±20%迄の値も含み得るものである。
【0206】
[3-6]前記態様[3]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる抗体、生理活性物質等を産生できる細胞は、前記態様[1-3]~[1-3-5]のいずれか1項に記載の抗体、生理活性物質等を産生できる細胞と同じである。
【0207】
[3-6-1]前記態様[3]において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる抗体、生理活性物質等を産生できる細胞は、前記態様[1B-3]~[1B-3-19]のいずれか1項に記載の抗体、生理活性物質等を産生できる細胞と同じである。
【0208】
[3-7]前記態様[3]~[3-6-1]のいずれか1つにおいて、細胞増殖抑制剤を添加することを含む、抗体、生理活性物質等の製造方法である。
【0209】
前記態様に記載されたポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを用いる抗体、生理活性物質等の製造方法及び各要素を組み合わせることで、抗体、生理活性物質等の製造方法の好ましい態様を任意に形成し得る。
【0210】
[4]第4の態様は、前記態様[3]~[3-7]のいずれか1つに記載の抗体の製造方法で得られるポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層で産生されたカチオン性ポリマー層を透過する抗体が、例えば、IgG、IgA、IgM、IgD、及びIgE等からなる群から選択されるアイソタイプを有する抗体である。
【0211】
[5]第5の態様は、前記態様[3]~[3-7]のいずれか1つに記載の抗体の製造方法で得られるポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層で産生されたカチオン性ポリマー層を透過する抗体の分子量が、例えば、約45,000~約1,000,000Da、約3,000~約1,000,000Da、約20,000~約1,000,000Da、約20,000~約400,000Da、約45,000~約400,000Da、約20,000~約200,000Da、約45,000~約200,000Daの範囲である抗体である。
【0212】
[6]第6の態様は、前記態様[3]~[3-7]のいずれか1つに記載の製造方法にて、MIN6細胞を用いて産生されたインスリンの分子量が、例えば、約5,000~10,000の範囲であるインスリンである。
【0213】
[6B]第6Bの態様は、前記態様[3]~[3-7]に記載の製造方法にて、生理活性物質産生細胞を用いて産生された生理活性物質の分子量が、例えば、例えば、約3,000~約1,000,000Da、約20,000~約1,000,000Da、約45,000~約1,000,000Da、約20,000~約400,000Da、約45,000~約400,000Da、約20,000~約200,000Da、約45,000~約200,000Daの範囲である生理活性物質である。
【0214】
[7]第7の態様は、前記態様[3]~[3-7]のいずれか1つに記載の抗体の製造方法において得られる抗体が、例えば、ムロモナブ-CD3産生CHO細胞を用いてムロモナブ-CD3、トラスツズマブ産生CHO細胞を用いてトラスツズマブ、リツキシマブ産生CHO細胞を用いてリツキシマブ、パリビズマブ産生CHO細胞を用いてパリビズマブ、インフリキシマブ産生CHO細胞を用いてインフリキシマブ、バシリキシマブ産生CHO細胞を用いてバシリキシマブ、トシリズマブ産生CHO細胞を用いてトシリズマブ、ゲムツズマブ産生CHO細胞を用いてゲムツズマブ、ベバシズマブ産生CHO細胞を用いてベバシズマブ、イブリツモマブ産生CHO細胞を用いてイブリツモマブ、アダリムマブ産生CHO細胞を用いてアダリムマブ、セツキシマブ産生CHO細胞を用いてセツキシマブ、ラニビズマブ産生CHO細胞を用いてラニビズマブ、オマリズマブ産生CHO細胞を用いてオマリズマブ、エクリズマブ産生CHO細胞を用いてエクリズマブ、パニツムマブ産生CHO細胞を用いてパニツムマブ、ウステキヌマブ産生CHO細胞を用いてウステキヌマブ、ゴリムマブ産生CHO細胞を用いてゴリムマブ、カナキヌマブ産生CHO細胞を用いてカナキヌマブ、デノスマブ産生CHO細胞を用いてデノスマブ、モガムリズマブ産生CHO細胞を用いてモガムリズマブ、セルトリズマブ産生CHO細胞を用いてセルトリズマブ、オファツムマブ産生CHO細胞を用いてオファツムマブ、ペルツズマブ産生CHO細胞を用いてペルツズマブ、ブレンツキシマブ産生CHO細胞を用いてブレンツキシマブ、ナタリズマブ産生CHO細胞を用いてナタリズマブ、ニボルマブ産生CHO細胞を用いてニボルマブ、アレムツズマブ産生CHO細胞を用いてアレムツズマブ、セクキヌマブ産生CHO細胞を用いてセクキヌマブ、ラムシルマブ産生CHO細胞を用いてラムシルマブ、イピリムマブ産生CHO細胞を用いてイピリムマブ、エボロクマブ産生CHO細胞を用いてエボロクマブ、メポリズマブ産生CHO細胞を用いてメポリズマブ、アリロクマブ産生CHO細胞を用いてアリロクマブ、イキセキズマブ産生CHO細胞を用いてイキセキズマブ、ブロダルマブ産生CHO細胞を用いてブロダルマブ、イダルシズマブ産生CHO細胞を用いてイダルシズマブ、エロツズマブ産生CHO細胞を用いてエロツズマブ、ペムブロリズマブ産生CHO細胞を用いてペムブロリズマブ、サリルマブ産生CHO細胞を用いてサリルマブ、ベズロトクスマブ産生CHO細胞を用いてベズロトクスマブ、ベリムマブ産生CHO細胞を用いてベリムマブ、ダラツムマブ産生CHO細胞を用いてダラツムマブ、アベルマブ産生CHO細胞を用いてアベルマブ、デュピルマブ産生CHO細胞を用いてデュピルマブ、アテゾリズマブ産生CHO細胞を用いてアテゾリズマブ、ベンラリズマブ産生CHO細胞を用いてベンラリズマブ、イノツズマブ産生CHO細胞を用いてイノツズマブ、エミシズマブ産生CHO細胞を用いてエミシズマブ、グセルクマブ産生CHO細胞を用いてグセルクマブ、デュルバルマブ産生CHO細胞を用いてデュルバルマブ、オビヌツズマブ産生CHO細胞を用いてオビヌツズマブ、ベドリズマブ産生CHO細胞、又は抗GPVI抗体産生CHO細胞を用いて抗GPVI抗体である。
【0215】
[7-1]前記態様[3]~[3-7]のいずれか1つに記載の抗体の製造方法において、産生可能な抗体としては、例えば、トラスツズマブ産生CHO細胞を用いてトラスツズマブ、リツキシマブ産生CHO細胞を用いてリツキシマブ、インフリキシマブ産生CHO細胞を用いてインフリキシマブ、トシリズマブ産生CHO細胞を用いてトシリズマブ、アダリムマブ産生CHO細胞を用いてアダリムマブ、ニボルマブ産生CHO細胞を用いてニボルマブ又は抗GPVI抗体産生CHO細胞を用いて抗GPVI抗体であり;例えば、トシリズマブ産生CHO細胞を用いてトシリズマブ、又は抗GPVI抗体産生CHO細胞を用いて抗GPVI抗体である。
【0216】
[7B]第7Bの態様は、前記態様[3]~[3-7]に記載の抗体の製造方法において得られる抗体が、ムロモナブ-CD3、トラスツズマブ、リツキシマブ、パリビズマブ、インフリキシマブ、バシリキシマブ、トシリズマブ、ベバシズマブ、アダリムマブ、セツキシマブ、オマリズマブ、エクリズマブ、パニツムマブ、ウステキヌマブ、ゴリムマブ、カナキヌマブ、デノスマブ、オファツムマブ、ペルツズマブ、ナタリズマブ、ニボルマブ、アレムツズマブ、セクキヌマブ、ラムシルマブ、イピリムマブ、エボロクマブ、メポリズマブ、アリロクマブ、イキセキズマブ、ブロダルマブ、エロツズマブ、ペムブロリズマブ、サリルマブ、ベズロトクスマブ、ベリムマブ、ダラツムマブ、アベルマブ、デュピルマブ、アテゾリズマブ、エミシズマブ、グセルクマブ、デュルバルマブ、ベドリズマブ、ロモソズマブ、リサンキズマブ、ネシツムマブ、ラブリズマブ、ブロスマブ、イサツキシマブ、チルドラキズマブ、サトラリズマブ、ガルカネズマブ、ジヌツキシマブ、フレマネズマブ、エレヌマブ、カシリビマブ、イムデビマブ、アニフロルマブ、ソトロビマブ、オクレリズマブ、ナキシタマブ、アデュカヌマブ、タファシタマブ、マルジェツキシマブ、ガンテネルマブ、チラゴルマブ、クロバリマブ、ネモリズマブ、カツマクソマブ、プラモタマブ、ファリシマブ、ゲムツズマブ、イブリツモマブ、ブレンツキシマブ、イノツズマブ、ポラツズマブ、エンホルツマブ、サシツズマブ、ベランタマブ、ロンカスツキシマブ、チソツマブ、ダトポタマブ、パトリツマブ等の抗体;モガムリズマブ、ベンラリズマブ、オビヌツズマブ、イネビリズマブ等の改変糖鎖を有する抗体;ラニビズマブ、イダルシズマブ、ブリナツモマブ、ブロルシズマブ、アブシキシマブ、カプラシズマブ、セルトリズマブ等の抗体断片からなる低分子抗体である。
【0217】
[7C]第7Cの態様は、前記態様[3]~[3-7]に記載の抗体の製造方法において得られる抗体が、ムロモナブ-CD3産生CHO細胞、トラスツズマブ産生CHO細胞、リツキシマブ産生CHO細胞、パリビズマブ産生NS0細胞、パリビズマブ産生CHO細胞、インフリキシマブ産生Sp2/0細胞、インフリキシマブ産生CHO細胞、バシリキシマブ産生Sp2/0細胞、バシリキシマブ産生CHO細胞、トシリズマブ産生CHO細胞、ベバシズマブ産生CHO細胞、アダリムマブ産生CHO細胞、セツキシマブ産生Sp2/0細胞、セツキシマブ産生CHO細胞、オマリズマブ産生CHO細胞、エクリズマブ産生NS0細胞、エクリズマブ産生CHO細胞、パニツムマブ産生CHO細胞、ウステキヌマブ産生Sp2/0細胞、ウステキヌマブ産生CHO細胞、ゴリムマブ産生Sp2/0細胞、ゴリムマブ産生CHO細胞、カナキヌマブ産生Sp2/0細胞、カナキヌマブ産生CHO細胞、デノスマブ産生CHO細胞、オファツムマブ産生NS0細胞、オファツムマブ産生CHO細胞、ペルツズマブ産生CHO細胞、ナタリズマブ産生NS0細胞、ナタリズマブ産生CHO細胞、ニボルマブ産生CHO細胞、アレムツズマブ産生CHO細胞、セクキヌマブ産生CHO細胞、ラムシルマブ産生NS0細胞、ラムシルマブ産生CHO細胞、イピリムマブ産生CHO細胞、エボロクマブ産生CHO細胞、メポリズマブ産生CHO細胞、アリロクマブ産生CHO細胞、イキセキズマブ産生CHO細胞、ブロダルマブ産生CHO細胞、エロツズマブ産生NS0細胞、エロツズマブ産生CHO細胞、ペムブロリズマブ産生CHO細胞、サリルマブ産生CHO細胞、ベズロトクスマブ産生CHO細胞、ベリムマブ産生NS0細胞、ベリムマブ産生CHO細胞、ダラツムマブ産生CHO細胞、アベルマブ産生CHO細胞、デュピルマブ産生CHO細胞、アテゾリズマブ産生CHO細胞、エミシズマブ産生CHO細胞、グセルクマブ産生CHO細胞、デュルバルマブ産生CHO細胞、ベドリズマブ産生CHO細胞、ロモソズマブ産生CHO細胞、リサンキズマブ産生CHO細胞、ネシツムマブ産生NS0細胞、ネシツムマブ産生CHO細胞、ラブリズマブ産生CHO細胞、ブロスマブ産生CHO細胞、イサツキシマブ産生CHO細胞、チルドラキズマブ産生CHO細胞、サトラリズマブ産生CHO細胞、ガルカネズマブ産生CHO細胞、ジヌツキシマブ産生Sp2/0細胞、ジヌツキシマブ産生CHO細胞、フレマネズマブ産生CHO細胞、エレヌマブ産生CHO細胞、カシリビマブ産生CHO細胞、イムデビマブ産生CHO細胞、アニフロルマブ産生NS0細胞、アニフロルマブ産生CHO細胞、ソトロビマブ産生CHO細胞、オクレリズマブ産生CHO細胞、ナキシタマブ産生CHO細胞、アデュカヌマブ産生CHO細胞、タファシタマブ産生CHO細胞、マルジェツキシマブ産生CHO細胞、ゲムツズマブ産生NS0細胞、ゲムツズマブ産生CHO細胞、イブリツモマブ産生CHO細胞、ブレンツキシマブ産生CHO細胞、イノツズマブ産生CHO細胞、ポラツズマブ産生CHO細胞、エンホルツマブ産生CHO細胞、サシツズマブ産生Sp2/0細胞、サシツズマブ産生CHO細胞、ベランタマブ産生CHO細胞、ロンカスツキシマブ産生CHO細胞、チソツマブ産生CHO細胞、モガムリズマブ産生CHO細胞、ベンラリズマブ産生CHO細胞、オビヌツズマブ産生CHO細胞、イネビリズマブ産生CHO細胞、ラニビズマブ産生CHO細胞、イダルシズマブ産生CHO細胞、ブリナツモマブ産生CHO細胞、ブロルシズマブ産生CHO細胞、アブシキシマブ産生CHO細胞、カプラシズマブ産生CHO細胞、セルトリズマブ産生CHO細胞、抗GPVI抗体産生CHO細胞等のCHO細胞から産生される抗体である。
【0218】
[7C-1]前記態様[3]~[3-7]に記載の抗体の製造方法において得られる抗体が、ムロモナブ-CD3産生CHO細胞、トラスツズマブ産生CHO細胞、リツキシマブ産生CHO細胞、パリビズマブ産生CHO細胞、インフリキシマブ産生CHO細胞、バシリキシマブ産生CHO細胞、トシリズマブ産生CHO細胞、ゲムツズマブ産生CHO細胞、ベバシズマブ産生CHO細胞、イブリツモマブ産生CHO細胞、アダリムマブ産生CHO細胞、セツキシマブ産生CHO細胞、ラニビズマブ産生CHO細胞、オマリズマブ産生CHO細胞、エクリズマブ産生CHO細胞、パニツムマブ産生CHO細胞、ウステキヌマブ産生CHO細胞、ゴリムマブ産生CHO細胞、カナキヌマブ産生CHO細胞、デノスマブ産生CHO細胞、モガムリズマブ産生CHO細胞、セルトリズマブ産生CHO細胞、オファツムマブ産生CHO細胞、ペルツズマブ産生CHO細胞、ブレンツキシマブ産生CHO細胞、ナタリズマブ産生CHO細胞、ニボルマブ産生CHO細胞、アレムツズマブ産生CHO細胞、セクキヌマブ産生CHO細胞、ラムシルマブ産生CHO細胞、イピリムマブ産生CHO細胞、エボロクマブ産生CHO細胞、メポリズマブ産生CHO細胞、アリロクマブ産生CHO細胞、イキセキズマブ産生CHO細胞、ブロダルマブ産生CHO細胞、イダルシズマブ産生CHO細胞、エロツズマブ産生CHO細胞、ペムブロリズマブ産生CHO細胞、サリルマブ産生CHO細胞、ベズロトクスマブ産生CHO細胞、ベリムマブ産生CHO細胞、ダラツムマブ産生CHO細胞、アベルマブ産生CHO細胞、デュピルマブ産生CHO細胞、アテゾリズマブ産生CHO細胞、ベンラリズマブ産生CHO細胞、イノツズマブ産生CHO細胞、エミシズマブ産生CHO細胞、グセルクマブ産生CHO細胞、デュルバルマブ産生CHO細胞、オビヌツズマブ産生CHO細胞、ベドリズマブ産生CHO細胞、ロモソズマブ産生CHO細胞、リサンキズマブ産生CHO細胞、ネシツムマブ産生CHO細胞、ラブリズマブ産生CHO細胞、ブロスマブ産生CHO細胞、イサツキシマブ産生CHO細胞、チルドラキズマブ産生CHO細胞、サトラリズマブ産生CHO細胞、ガルカネズマブ産生CHO細胞、ジヌツキシマブ産生CHO細胞、フレマネズマブ産生CHO細胞、エレヌマブ産生CHO細胞、カシリビマブ産生CHO細胞、イムデビマブ産生CHO細胞、アニフロルマブ産生CHO細胞、ソトロビマブ産生CHO細胞、オクレリズマブ産生CHO細胞、ナキシタマブ産生CHO細胞、アデュカヌマブ産生CHO細胞、タファシタマブ産生CHO細胞、マルジェツキシマブ産生CHO細胞、ポラツズマブ産生CHO細胞、エンホルツマブ産生CHO細胞、サシツズマブ産生CHO細胞、ベランタマブ産生CHO細胞、ロンカスツキシマブ産生CHO細胞、チソツマブ産生CHO細胞、イネビリズマブ産生CHO細胞、ブリナツモマブ産生CHO細胞、ブロルシズマブ産生CHO細胞、アブシキシマブ産生CHO細胞、カプラシズマブ産生CHO細胞、抗GPVI抗体産生CHO細胞等のCHO細胞から産生される抗体である。
【0219】
[7C-2]前記態様[3]~[3-7]に記載の抗体の製造方法において得られる抗体が、トラスツズマブ産生CHO細胞、リツキシマブ産生CHO細胞、インフリキシマブ産生CHO細胞、トシリズマブ産生CHO細胞、アダリムマブ産生CHO細胞、ニボルマブ産生CHO細胞、及び抗GPVI抗体産生CHO細胞等のCHO細胞から産生される抗体であり;又はトシリズマブ産生CHO細胞又は抗GPVI抗体産生CHO細胞から産生される抗体であり;又はトシリズマブ産生CHO細胞から産生される抗体である。
【0220】
以下、各態様についてより詳細に説明する。尚、式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体、式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体は、各々、式(I-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体、式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体へ置き換えることができる。
【0221】
1.アルギン酸(Alginic acid)
本明細書中の、式(I)、式(I-A)、式(II)及び式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の合成原料になるアルギン酸、及びコア層に含むことができるアルギン酸溶液又はアルギン酸ゲルの原料になるアルギン酸について、以下説明する。
本明細書中、アルギン酸と記載する場合、アルギン酸、アルギン酸エステル、及びそれらの塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)からなる群から選択される少なくとも1種のアルギン酸(「アルギン酸類」という場合がある)を意味する。用いられるアルギン酸は、天然由来でも合成物であってもよいが、天然由来であるのが好ましい。好ましく用いられるアルギン酸類は、レッソニア、マクロシスティス、ラミナリア、アスコフィラム、ダービリア、カジメ、アラメ、コンブなどの褐藻類から抽出される生体内吸収性の多糖類であって、D-マンヌロン酸(M)とL-グルロン酸(G)という2種類のウロン酸が直鎖状に重合したポリマーである。より具体的には、D-マンヌロン酸のホモポリマー画分(MM画分)、L-グルロン酸のホモポリマー画分(GG画分)、およびD-マンヌロン酸とL-グルロン酸がランダムに配列した画分(M/G画分)が任意に結合したブロック共重合体である。
【0222】
アルギン酸は、褐藻類の海藻から抽出し、精製して製造される天然多糖類の一種であり、D-マンヌロン酸(M)とL-グルロン酸(G)が重合したポリマーである。アルギン酸のD-マンヌロン酸とL-グルロン酸の構成比(M/G比)、すなわちゲル強度は、主に海藻等の由来となる生物の種類によって異なり、また、その生物の生育場所や季節による影響を受け、M/G比が約0.2の高G型からM/G比が約5の高M型まで高範囲にわたる。アルギン酸のM/G比、MとGの配列の仕方等によってアルギン酸の物理化学的性質が異なり、また好ましい用途が異なる場合がある。アルギン酸類のゲル化能力および生成したゲルの性質は、M/G比によって影響を受け、一般的に、G比率が高い場合にはゲル強度が高くなることが知られている。M/G比は、その他にも、ゲルの硬さ、もろさ、吸水性、柔軟性などにも影響を与える。したがって、本発明で使用するアルギン酸は、その最終使用用途に応じて、適切なM/G比や適切な粘度のものを用いるのがよい。
【0223】
アルギン酸の工業的な製造方法には、酸法とカルシウム法などがあるが、本発明ではいずれの製法で製造されたものも使用することができる。精製により、HPLC法による定量値が80~120質量%の範囲に含まれるものが好ましく、90~110質量%の範囲に含まれるものがより好ましく、95~105質量%の範囲に含まれるものがさらに好ましい。本発明においては、HPLC法による定量値が前記の範囲に含まれるものを高純度のアルギン酸と称する。本発明で使用するアルギン酸又はその塩は、高純度アルギン酸であることが好ましい。市販品としては、例えば、キミカアルギンシリーズとして、(株)キミカより販売されているもの、好ましくは、高純度食品・医薬品用グレードのものを購入して使用することができる。市販品を、さらに適宜精製して使用することも可能である。例えば、低エンドトキシン処理することが好ましい。精製法や低エンドトキシン処理方法は、例えば特開2007-75425号公報に記載されている方法を採用することができる。本明細書中、質量%と記載した場合、w/w%又はw/v%を意味するものとする。
【0224】
本発明で使用する「アルギン酸」におけるアルギン酸の塩としては、「アルギン酸の1価金属塩」であり、アルギン酸のD-マンヌロン酸またはL-グルロン酸のカルボン酸の水素イオンを、Na+やK+などの1価金属イオンとイオン交換することでつくられる塩である。アルギン酸の1価金属塩としては、具体的には、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウムなどを挙げることができるが、特に、アルギン酸ナトリウムが好ましい。
【0225】
本明細書中、アルギン酸は、アルギン酸を(ALG)として、アルギン酸の任意のカルボキシル基の1つを-COOHとして、(ALG)-COOHと表記する場合がある。
【0226】
本発明で使用するアルギン酸は、その最終使用用途に応じて、適切な重量平均分子量を有するものを用いる。本発明で使用するアルギン酸の重量平均分子量(GPC)は、例えば、1万~1,000万であり;好ましくは10万~500万であり;より好ましくは15万~300万である。
【0227】
いくつかの態様では、アルギン酸は、アルギン酸ナトリウムである。アルギン酸ナトリウムは、市販品のアルギン酸ナトリウムを用いることができる。ここで、後述の実施例で用いられるアルギン酸ナトリウムは、下表に記載したA-1、A-2、A-3、B-1、B-2、及びB-3のアルギン酸ナトリウム(発売元 持田製薬株式会社)から選択される。各アルギン酸ナトリウムの1w/w%の水溶液の粘度、重量平均分子量及びM/G比を下記の表に示す。
【0228】
【0229】
前記アルギン酸ナトリウムA-1、A-2、A-3、B-1、B-2、及びB-3の各物性値は、下記の各種方法により測定した。測定方法は、当該方法に限定されるものではないが、測定方法により各物性値が上記のものと異なる場合がある。
【0230】
[アルギン酸ナトリウムの粘度測定]
日本薬局方(第16版)の粘度測定法に従い、回転粘度計法(コーンプレート型回転粘度計)を用いて測定した。具体的な測定条件は以下のとおりである。試料溶液の調製は、MilliQ水を用いて行った。測定機器は、コーンプレート型回転粘度計(粘度粘弾性測定装置レオストレスRS600(Thermo Haake GmbH)センサー:35/1)を用いた。回転数は、1w/w%アルギン酸ナトリウム溶液測定時は1rpmとした。読み取り時間は、2分間測定し、開始1分から2分までの平均値とした。3回の測定の平均値を測定値とした。測定温度は20℃とした。
【0231】
[アルギン酸ナトリウムの重量平均分子量測定]
(1)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)と、(2)GPC-MALSの2種類の測定法で測定した。測定条件は以下のとおりである。
【0232】
[前処理方法]
試料に溶離液を加え溶解後、0.45μmメンブランフィルターろ過したものを測定溶液とした。
【0233】
(1)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定
[測定条件(相対分子量分布測定)]
カラム:TSKgel GMPW-XL×2+G2500PW-XL(7.8mm I.D.×300mm×3本)
溶離液:200mM硝酸ナトリウム水溶液
流量:1.0mL/min
濃度:0.05%
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:200μL
分子量標準:標準プルラン、グルコース
【0234】
(2)GPC-MALS測定
[屈折率増分(dn/dc)測定(測定条件)]
示差屈折率計:Optilab T-rEX
測定波長:658nm
測定温度:40℃
溶媒:200mM硝酸ナトリウム水溶液
試料濃度:0.5~2.5mg/mL(5濃度)
【0235】
[測定条件(絶対分子量分布測定)]
カラム:TSKgel GMPW-XL×2+G2500PW-XL(7.8mm I.D.×300mm×3本)
溶離液:200mM硝酸ナトリウム水溶液
流量:1.0mL/min
濃度:0.05%
検出器:RI検出器、光散乱検出器(MALS)
カラム温度:40℃
注入量:200μL
【0236】
本明細書中、アルギン酸、アルギン酸誘導体、架橋アルギン酸、及び架橋アルギン酸の分子量において、単位としてDa(ダルトン)を付記する場合がある。
【0237】
アルギン酸類のD-マンヌロン酸とL-グルロン酸の構成比(M/G比)は、主に海藻等の由来となる生物の種類によって異なり、また、その生物の生育場所や季節による影響を受け、M/G比が約0.2の高G型からM/G比が約5の高M型まで高範囲にわたる。アルギン酸類のゲル化能力および生成したゲルの性質は、M/G比によって影響を受け、一般的に、G比率が高い場合にはゲル強度が高くなることが知られている。M/G比は、その他にも、ゲルの硬さ、もろさ、吸水性、柔軟性などにも影響を与える。用いるアルギン酸類および/またはその塩のM/G比は、通常、0.1~4.0であり、ある態様では、0.1~3.0であり、ある態様では、0.1~2.0であり、ある態様では0.5~1.8であり、ある態様では0.8~1.2である。又、別の態様では、0.1~0.5である。
【0238】
また、本発明で使用するアルギン酸は、その最終使用用途に応じて、適切な粘度や、適切なM/G比のものを用いるのがよい。
【0239】
本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。
【0240】
本明細書中、用いられる「アルギン酸エステル」、「アルギン酸塩」とは、特に限定されないが、架橋剤と反応させるため、架橋反応を阻害する官能基を有していないことが必要である。アルギン酸エステルとしては、好ましくは、アルギン酸プロピレングリコール、等が挙げられる。
【0241】
アルギン酸は、例えば、アルギン酸の1価の塩、アルギン酸の2価の塩の形態をとることができる。アルギン酸の1価の塩としては、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、等が挙げられ、好ましくは、アルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸カリウムであり、より好ましくは、アルギン酸ナトリウムである。アルギン酸の2価の塩としては、例えば、アルギン酸カルシウム、アルギン酸マグネシウム、アルギン酸バリウム、アルギン酸ストロンチウム、等が挙げられる。
【0242】
アルギン酸は、高分子多糖類であり、分子量を正確に定めることは困難であるが、一般的に重量平均分子量で1,000~1000万、好ましくは1万~800万、より好ましくは2万~300万である。天然物由来の高分子物質の分子量測定では、測定方法により値に違いが生じうることが知られている。
【0243】
本明細書において本発明のアルギン酸誘導体またはアルギン酸又はその塩の分子量を特定する場合は、特段のことわりがない限り、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により算出される重量平均分子量である。本発明で使用するアルギン酸又はその塩としても、その最終使用用途に応じて、適切な分子量分布のものを用いることが望ましい。
【0244】
例えば、後記実施例に記載したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)又はゲルろ過クロマトグラフィー(これらを合わせてサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)ともいう)の測定条件にて、好ましくは、10万~500万であり、より好ましくは15万~300万である。また、ある態様では、50万~300万であり、より好ましくは、100万~250万であり、さらに好ましくは、100万~200万である。
【0245】
また、例えば、GPC-MALS(SEC-MALS)法によれば、絶対重量平均分子量を測定することができる。GPC-MALS法により測定した重量平均分子量(絶対分子量)は、好ましくは1万以上、より好ましくは5万以上、さらに好ましくは6万以上であり、また好ましくは、100万以下、より好ましくは80万以下、さらに好ましくは70万以下、とりわけ好ましくは50万以下である。その好ましい範囲は、1万~100万であり、より好ましくは5万~80万であり、さらに好ましくは6万~50万である。
【0246】
通常、高分子多糖類の分子量を上記のようなSEC、SEC-MALSを用いた手法で算出する場合、約10%~約30%の測定誤差を生じうる。例えば、50万であれば35万~65万、100万であれば70万~130万程度の範囲で値の変動が生じうる。本明細書中、分子量測定の記載において「約」と記載した場合、当該数値の±10%迄、ある態様では当該数値の±20%迄の値も含み得るものである。
【0247】
ここで、一般に天然物由来の高分子物質は、単一の分子量を持つのではなく、種々の分子量を持つ分子の集合体であるため、ある一定の幅を持った分子量分布として測定される。代表的な測定手法はゲルろ過クロマトグラフィーである。ゲルろ過クロマトグラフィーにより得られる分子量分布の代表的な情報としては、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分散比(Mw/Mn)があげられる。
【0248】
分子量の大きい高分子の平均分子量への寄与を重視したのが重量平均分子量であり、下記式で表される。
【0249】
Mw=Σ(WiMi)/W=Σ(HiMi)/Σ(Hi)
数平均分子量は、高分子の総重量を高分子の総数で除して算出される。
【0250】
Mn=W/ΣNi=Σ(MiNi)/ΣNi=Σ(Hi)/Σ(Hi/Mi)
ここで、Wは高分子の総重量、Wiはi番目の高分子の重量、Miはi番目の溶出時間における分子量、Niは分子量Miの個数、Hiはi番目の溶出時間における高さである。
【0251】
天然物由来の高分子物質の分子量測定では、測定方法により値に違いが生じうることが知られている(ヒアルロン酸の例:Chikako YOMOTA et.al. Bull.Natl.Health Sci., Vol.117, pp135-139(1999)、Chikako YOMOTA et.al. Bull.Natl.Inst. Health Sci., Vol.121, pp30-33(2003))。アルギン酸の分子量測定については、固有粘度(Intrinsic viscosity)から算出する方法、SEC-MALLS(Size Exclusion Chromatography with Multiple Angle Laser Light Scattering Detection)により算出する方法が記載された文献がある(ASTM F2064-00(2006),ASTM International発行)。本発明においては、重量平均分子量は、上記文献に示されるような常法にて、例えばサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分子量を測定し、プルランを標準物質として用いた較正曲線により算出した値とすることができる。
又、本発明においては、重量平均分子量は、上記文献に示されるような常法にて、例えばサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)―MALSにより測定した絶対分子量とすることができる。
【0252】
アルギン酸類の分子量の測定は、常法に従い測定することができる。
【0253】
本明細書中においてアルギン酸又はその塩の分子量を特定する場合は、特段のことわりがない限り、ゲルろ過クロマトグラフィーにより算出される重量平均分子量である。分子量測定にゲルろ過クロマトグラフィーを用いる場合の代表的な条件は、例えば、後述する本実施例の条件を採用することができる。カラムは、例えば、Superose6 Increase10/300 GLカラム(GEヘルスケアサイエンス社)を用いることができ、展開溶媒として、例えば、0.15mol/L NaClを含む10mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.4)を使用することができ、分子量標準としてブルーデキストラン、チログロブリン、フェリチン、アルドラーゼ、コンアルブミン、オブアルブミン、リボヌクレアーゼAおよびアプロチニンを用いることができる。
【0254】
本明細書中で用いられるアルギン酸の粘度は、特に限定されないが、1w/w%のアルギン酸類の水溶液として粘度を測定した場合、好ましくは、10mPa・s~1000mPa・s、より好ましくは、50mPa・s~800mPa・sである。
【0255】
アルギン酸の水溶液の粘度の測定は、常法に従い測定することができる。例えば、回転粘度計法の、共軸二重円筒形回転粘度計、単一円筒形回転粘度計(ブルックフィールド型粘度計)、円すい-平板形回転粘度計(コーンプレート型粘度計)等を用いて測定することができる。好ましくは、日本薬局方(第16版)の粘度測定法に従うことが望ましい。より好ましくは、コーンプレート型粘度計を用いる。
【0256】
アルギン酸類は、褐藻類から抽出された当初は、分子量が大きく、粘度が高めだが、熱による乾燥、精製などの過程で、分子量が小さくなり、粘度は低めとなる。製造工程の温度等の条件管理、原料とする褐藻類の選択、製造工程における分子量の分画などの手法により分子量の異なるアルギン酸類を製造することができる。さらに、異なる分子量あるいは粘度を持つ別ロットのアルギン酸類と混合することにより、目的とする分子量を有するアルギン酸類とすることも可能である。
【0257】
本明細書中で用いられるアルギン酸は、いくつかの態様においては、低エンドトキシン処理されていないアルギン酸であり、又は別のいくつかの態様においては、低エンドトキシン処理されたアルギン酸である。低エンドトキシンとは、実質的に炎症、または発熱を惹起しない程度にまでエンドトキシンレベルが低いことをいう。より好ましくは、低エンドトキシン処理されたアルギン酸類であることが望ましい。
【0258】
低エンドトキシン処理は、公知の方法またはそれに準じる方法によって行うことができる。例えば、ヒアルロン酸ナトリウムを精製する、菅らの方法(例えば、特開平9-324001号公報など参照)、β1,3-グルカンを精製する、吉田らの方法(例えば、特開平8-269102号公報など参照)、アルギネート、ゲランガム等の生体高分子塩を精製する、ウィリアムらの方法(例えば、特表2002-530440号公報など参照)、ポリサッカライドを精製する、ジェームスらの方法(例えば、国際公開第93/13136号パンフレットなど参照)、ルイスらの方法(例えば、米国特許第5589591号明細書など参照)、アルギネートを精製する、ハーマンフランクらの方法(例えば、ApplMicrobiol Biotechnol(1994)40:638-643など参照)等またはこれらに準じる方法によって実施することができる。低エンドトキシン処理は、それらに限らず、洗浄、フィルター(エンドトキシン除去フィルターや帯電したフィルターなど)によるろ過、限外ろ過、カラム(エンドトキシン吸着アフィニティーカラム、ゲルろ過カラム、イオン交換樹脂によるカラムなど)を用いた精製、疎水性物質、樹脂または活性炭などへの吸着、有機溶媒処理(有機溶媒による抽出、有機溶剤添加による析出・沈降など)、界面活性剤処理(例えば、特開2005-036036号公報など参照)など公知の方法によって、あるいはこれらを適宜組合せて実施することができる。これらの処理の工程に、遠心分離など公知の方法を適宜組み合わせてもよい。アルギン酸の種類に合わせて適宜選択するのが望ましい。
【0259】
エンドトキシンレベルは、公知の方法で確認することができ、例えば、リムルス試薬(LAL)による方法、エンドスペシー(登録商標)ES-24Sセット(生化学工業株式会社)を用いる方法などによって測定することができる。
【0260】
用いられるエンドトキシンの処理方法は特に限定されないが、その結果として、アルギン酸類のエンドトキシン含有量が、リムルス試薬(LAL)によるエンドトキシン測定を行った場合に、500エンドトキシン単位(EU)/g以下であることが好ましく、さらに好ましくは、100EU/g以下、とりわけ好ましくは、50EU/g以下、特に好ましくは、30EU/g以下である。本発明において、「実質的にエンドトキシンを含まない」とは、日局エンドトキシン試験により測定したエンドトキシン値が前記の数値範囲にあるものを意味する。低エンドトキシン処理されたアルギン酸ナトリウムは、例えば、Sea Matrix(登録商標)(持田製薬株式会社)、PRONOVATM UP LVG(FMCBioPolymer)など市販品により入手可能である。
【0261】
別のいくつかの態様において、本明細書中の、式(I)、式(I-A)、式(II)及び式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の合成原料になるアルギン酸ナトリウム、及びコア層に含むことができるアルギン酸溶液又はアルギン酸ゲルの原料になるアルギン酸ナトリウムは、特に限定されることは無いが、例えば、前記表8に記載のアルギン酸ナトリウムA-1、A-2、A-3、B-1、B-2、又はB-3から選択することが可能である。
【0262】
本明細書中、前記アルギン酸ナトリウムを用いて調製されたアルギン酸溶液(アルギン酸ナトリウム溶液ともいう)の濃度は、例えば、約0.1~約3.3重量%の範囲である。
【0263】
本明細書中、式(I)、式(I-A)、式(II)及び式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の合成原料になるアルギン酸ナトリウムは、好ましくは、前記表8に記載のA-2、A-3、B-2又はB-3であり、より好ましくは、A-2又はA-3である。又、式(I)、式(I-A)、式(II)及び式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の合成で用いられる当該アルギン酸ナトリウム溶液の濃度は、好ましくは、1.5~2.0重量%の範囲である。
【0264】
本明細書中、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含むことができるアルギン酸溶液、又はアルギン酸ゲルの形成に用いられるアルギン酸溶液の調製に用いられるアルギン酸ナトリウムは、好ましくは、前記表8に記載のA-2、A-3、B-2又はB-3であり、より好ましくは、A-2又はA-3であり、更に好ましくは、A-3である。又、当該アルギン酸ナトリウムを用いて調製したアルギン酸溶液の濃度は、好ましくは約0.3~約1.5重量%の範囲である。
【0265】
本明細書中、アルギン酸溶液とは、アルギン酸を溶媒に溶解させた溶液を意味する。当該溶媒としては、特に限定されないが、例えば、培地、細胞培養用培地、培養液、等張緩衝液、水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、及び生理食塩水等が挙げられる。アルギン酸ナトリウムを溶媒に溶解した場合、アルギン酸ナトリウム溶液と言う。
【0266】
いくつかの態様において、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層の形成に用いられる式(I)、式(I-A)、式(II)及び式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液、アルギン酸溶液は、特に限定されることは無いが、コラーゲン溶液、培地、培養液等を、混合することも可能である。尚、式(I)、式(I-A)、式(II)及び式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液、及びアルギン酸溶液の調製に用いられる溶媒は、後述の通りである。
【0267】
2.化学修飾アルギン酸誘導体
いくつかの態様において、本明細書中の化学修飾アルギン酸誘導体は、アルギン酸の任意の1つ以上のカルボキシル基にアミド結合及び2価のリンカーを介して、後述のHuisgen反応における反応性基、又は当該反応性基の相補的な反応性基が導入されたものである。より具体的には、下記式(I):
【化33】
[式(I)中、(ALG)、Akn-L
1-、及び-NH-CO-の定義は、前述の第1の態様中の定義と同じである]で表されるアルギン酸誘導体、及び下記式(II):
【化34】
[式(II)中、(ALG)、-L
2-、及び-NH-CO-の定義は、前述の第1の態様中の定義と同じである]で表されるアルギン酸誘導体である。
【0268】
2価のリンカー(-L1-又は-L2-)は、具体的には、前記態様中に記載される2価のリンカーから選択して用いることができる。
【0269】
より具体的には、下記式(I-A):
【化35】
[式(I-A)中、(ALG)、Aky-L
1A-、及び-NH-CO-の定義は、前述の第1Xの態様中の定義と同じである]で表されるアルギン酸誘導体、及び下記式(II-A):
【化36】
[式(II-A)中、(ALG)、-L
2A-、及び-NH-CO-の定義は、前述の第1Xの態様中の定義と同じである]で表されるアルギン酸誘導体である。
【0270】
2価のリンカー(-L1A-又は-L2A-)は、具体的には、前記態様[1X]中に記載される2価のリンカーから選択して用いることができる。
【0271】
本明細書中、特に断りのない限り、「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子等が挙げられる。
【0272】
本明細書中、特に断りのない限り、「C1-3アルキル基」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルの基が挙げられる。
【0273】
本明細書中、特に断りのない限り、「C2-4アルカノイル基」とは、前記「C1-3アルキル基」にカルボニル基が結合した、「C1-3アルキルカルボニル基」を意味し、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル等の基が挙げられる。
【0274】
本明細書中、特に断りのない限り、「C3-8シクロアルキル環」としては、炭素数3~8の単環式又は多環式の飽和又は不飽和のシクロアルキル環が挙げられ、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、又はシクロオクタン等の環が挙げられる。
【0275】
本明細書中、特に断りのない限り、「C5-9シクロアルケン環」としては、炭素数5~9の単環式のシクロアルケン環が挙げられ、例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロノネン等の環が挙げられる。
【0276】
本明細書中、特に断りのない限り、「5~6員芳香族複素環」とは、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1~4個含有する5~6員不飽和環を意味する。
本明細書中、特に断りのない限り、前記「5~6員芳香族複素環」としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、フラザン、チアジアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、チアジアジン等の基が挙げられる。
【0277】
本明細書中、特に断りのない限り、「5~6員非芳香族複素環」とは、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1~4個含有する5~6員の飽和複素環を意味する。
本明細書中、特に断りのない限り、前記「5~6員非芳香族複素環」としては、例えば、ピロリジン、テトラヒドロフラン、チオラン、ピペリジン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、ピペラジン、ジオキサン、モルホリン、チオモルホリン、又はキヌクリジン等の環が挙げられる。
【0278】
本明細書中、特に断りのない限り、「環状アルキン基」とは、「5~9員シクロアルキン基」を意味し、また「5~9員シクロアルキン基」の-CH2-が、-NH-、-S-、-O-、又は=C(=O)からなる群から選ばれる基で1~4個置換された、シクロアルキン基も含む。環状アルキン基は、その環上の-CH2-の水素原子が、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ケト基、C1-3アルキル基、-O-C1-3アルキル基、-NH(C1-3アルキル基)、-N(C1-3アルキル基)2、-COO-M(M=Na、K、1/2Ca、水素原子、C1-3アルキル基)等の基から選択される基で、1~5個置換されていても良く;また環状アルキン基は、C3-8シクロアルキル環、ベンゼン環、5~6員芳香族複素環から選択される環が1~3個縮環していてもよい。
【0279】
本明細書中、特に断りのない限り、「5~9員シクロアルキン基」は、炭素数5~9の単環式の飽和シクロアルキル基の、-CH2-CH2-が、-C≡C-に置き換えられた基を意味し、例えば、シクロペンチン基、シクロヘキシン基、シクロへプチン基、シクロオクチン基、シクロノニン基、等の基が挙げられる。また「5~9員シクロアルキン基」の-CH2-は、-NH-、-S-、-O-、又は=C(=O)からなる群から選ばれる基で1~4個置換することもできる。
【0280】
本明細書中、特に断りのない限り、環状アルキン基は、好ましくは7~9員環状アルキン基であり(7~9員シクロアルキン基の-CH
2-が、-NH-、-S-、-O-、又は=C(=O)からなる群から選ばれる基で1~4個置換されたシクロアルキン基も含み;7~9員環状アルキン基の環上の-CH
2-の水素原子が、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ケト基、C
1-3アルキル基、-O-C
1-3アルキル基、-NH(C
1-3アルキル基)、-N(C
1-3アルキル基)
2、-COO-M(M=Na、K、1/2Ca、水素原子、C
1-3アルキル基)等の基から選択される基で、1~5個置換されていても良く;また7~9員環状アルキン基は、C
3-8シクロアルキル環、ベンゼン環、5~6員芳香族複素環から選択される環が1~3個縮環していてもよく);
より好ましくはシクロオクチン基であり(シクロオクチン基の-CH
2-が、-NH-、-S-、-O-、又は=C(=O)からなる群から選ばれる基で1~4個置換されたシクロアルキン基も含み;シクロオクチン基の環上の-CH
2-の水素原子が、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ケト基、C
1-3アルキル基、-O-C
1-3アルキル基、-NH(C
1-3アルキル基)、-N(C
1-3アルキル基)
2、-COO-M(M=Na、K、1/2Ca、水素原子、C
1-3アルキル基)等の基から選択される基で、1~5個置換されていても良く;またシクロオクチン基は、C
3-8シクロアルキル環、ベンゼン環、5~6員芳香族複素環から選択される環が1~3個縮環していてもよく);
更に好ましくは、下記部分構造式:
【化37】
[式中、両端の破線右側は含まない]から選択される基であり;
特に好ましくは、下記部分構造式:
【化38】
[式中、両端の破線右側は含まない]から選択される基であり;
最も好ましくは、下記部分構造式:
【化39】
[式中、両端の破線右側は含まない]から選択される基である。
【0281】
いくつかの態様において、本明細書中の2価のリンカー(-L1-又は-L2-)は、環状アルキン基(Akn-)およびアジド基との反応(Huisgen反応)を阻害しない限り、任意のリンカーを使用することも可能である。具体的には、直鎖のアルキレン基(-(CH2)n-、n=1~30)[当該基中の-CH2-は、-C(=O)-、-CONH-、-O-、-NH-、-S-、炭素数が3~8のシクロアルキル環、ベンゼン環、複素環(ピリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、等の5~6員芳香族複素環又は5~6員非芳香族複素環)、等の基で複数個(例えば、1~10個、又は1~5個)置き換えられても良く;当該直鎖のアルキレン基(-CH2-)の水素原子は、オキソ基(=O)、C1-6アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、等の基)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、等)、水酸基(-OH)、等の基から選択される基で複数個(例えば、1~10個、又は1~5個)置換されていても良い]が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0282】
前記式(I)、式(I-A)、式(II)又は式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の-NH-CO-基における、イミノ基(-NH-)の水素原子をメチル基に置換し-N(Me)-CO-基することが可能である。
前記式(I)又は式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体における、リンカー(-L1-、-L2-)とアルギン酸の結合様式は、-NH-CO-結合、又は-N(Me)-CO-結合があり;好ましくは、-NH-CO-結合である。前記-NH-CO-結合、又は-N(Me)-CO-結合の-CO-はアルギン酸のカルボキシル基に由来するものである。
前記式(I-A)又は式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体における、リンカー(-L1A-、-L2A-)とアルギン酸の結合様式は、-NH-CO-結合、又は-N(Me)-CO-結合があり;好ましくは、-NH-CO-結合である。前記-NH-CO-結合、又は-N(Me)-CO-結合の-CO-はアルギン酸のカルボキシル基に由来するものである。
【0283】
本明細書中、式(I)、式(I-A)、式(II)又は式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体は、例えば、後述の化学修飾アルギン酸誘導体の合成方法により製造することが可能である
【0284】
本明細書の式(I)又は式(I-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体のゲルろ過クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量が、約10万Da~約300万Daの範囲であり;好ましくは約30万Da~約250万Daの範囲であり、より好ましくは約50万Da~約200万Daの範囲である。又、式(II)又は式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体のゲルろ過クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量が、約10万Da~約300万Daの範囲であり;好ましくは約30万Da~約250万Daの範囲であり、より好ましくは約50万Da~約200万Daの範囲である。
【0285】
本明細書中、式(I)のAkn-L1-NH-基は、アルギン酸構成単位の全てのカルボキシル基に結合している必要はなく、又、式(II)のN3-L2-NH-基は、アルギン酸構成単位の全てのカルボキシル基に結合している必要はない。
【0286】
本明細書中、式(I-A)のAky-L1A-NH-基は、アルギン酸構成単位の全てのカルボキシル基に結合している必要はなく、又、式(II-A)のN3-L2A-NH-基は、アルギン酸構成単位の全てのカルボキシル基に結合している必要はない。
【0287】
本明細書中、式(I)のAkn-L1-NH-基を反応性基と言う場合、式(II)のN3-L2-NH-基が相補的な反応性基となる。又、逆に式(II)のN3-L2-NH-基を反応性基と言う場合、式(I)のAkn-L1-NH-基が相補的な反応性基となる。
【0288】
本明細書中、式(I-A)のAky-L1A-NH-基を反応性基と言う場合、式(II-A)のN3-L2A-NH-基が相補的な反応性基となる。又、逆に式(II-A)のN3-L2A-NH-基を反応性基と言う場合、式(I-A)のAky-L1A-NH-基が相補的な反応性基となる。
【0289】
本明細書中、式(I)又は式(I-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の反応性基の導入率は、例えば、約0.1~約30mol%の範囲であり;好ましくは、約0.3~約20mol%の範囲であり;より好ましくは、約0.5~約10mol%の範囲である。又、式(II)又は式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の反応性基の導入率は、例えば、約0.1~約30mol%の範囲であり;好ましくは、約0.3~約20mol%の範囲であり;より好ましくは、約0.5~約15mol%の範囲である。
【0290】
前記反応性基又は相補的な反応性基の導入率は、アルギン酸の繰り返し単位であるウロン酸単糖単位のうち、各反応性基が導入されたウロン酸単糖単位の数を百分率で表した値である。各反応性基又は相補的な反応性基の導入率は、後述の実施例に記載の方法により求めることができる。
【0291】
本明細書中、式(I)中の環状アルキン基(Akn)及び式(II)中のアジド基が、Huisgen反応によりトリアゾール環を形成し、これにより架橋が形成される。
【0292】
本明細書中、式(I-A)中の環状アルキン基(Aky)及び式(II-A)中のアジド基が、Huisgen反応によりトリアゾール環を形成し、これにより架橋が形成される。
【0293】
本明細書中、式(I)、式(I-A)、式(II)又は式(II-A)で表される化学修飾アルギン酸誘導体は、その分子内の任意のカルボキシル基にて1価の塩(例えば、ナトリウム塩等)を形成しているものも、含まれる。
【0294】
3.Huisgen反応
Huisgen反応(1,3-双極子付加環化反応)は、下記式に示される様に末端アジド基及び末端アルキン基を有する化合物間の縮合反応である。反応の結果、二置換1,2,3-トリアゾール環が収率良く得られ、余計な副生成物が生じないという特徴を有している。当該反応は、1,4-又は1,5-二置換トリアゾール環が生成し得ると考えられるが、銅触媒(Cu catalyst)を用いることで位置選択的にトリアゾール環を得ることが可能である。
【0295】
【0296】
又、銅触媒を用いないHuisgen反応がWittigとKrebsにより報告がなされている。即ち、シクロオクチンとフェニルアジドを混合するだけで環化付加体が得られる反応である(下記式中、R3=フェニルである)。本反応は、シクロオクチンの三重結合が大きく歪んでいるため、フェニルアジドとの反応による歪みの解消が駆動力となり、反応が自発的に進行することにより、触媒が不要となった。
【0297】
【0298】
以上の様に、Huisgen反応は、置換された1級アジド、2級アジド、3級アジド、芳香族アジド、等を有するアジド化合物、及びアジド基の相補的な反応性基である末端又は環状アルキン基を有する化合物を用いることができる。又、Huisgen反応では、ほぼアジド基及びアルキン基のみが反応することから、反応基質中に種々の官能基(例えば、エステル基、カルボキシル基、アルケニル基、水酸基、アミノ基、等)を置換させることが可能である。
【0299】
いくつかの態様では、望ましくない副生成物を生じさせず、銅触媒による細胞毒性を回避させる為に銅触媒を用いずに、短時間、容易に、且つ効率的に1,2,3-トリアゾール環による架橋をアルギン酸分子間に形成させる為に、Huisgen反応のアルキン基としては、例えば、前記態様[1]に記載の環状アルキン基(シクロオクチル基)を用いる。
【0300】
好ましい態様の化学修飾アルギン酸誘導体の架橋方法においては、当該反応(Huisgen反応)にて望ましくない副反応は起こらず、副生成物がほとんど形成されない。したがって、本発明のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞を取込むことが可能となる。
【0301】
4.化学修飾アルギン酸誘導体の製造方法
本明細書中、式(I)又は式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体は、下記反応式に示される様に、式(AM-1)(Akn-L1-NH2:Akn-L1-は、前記態様[1]中の定義と同じである)で表わされるアミン、又は、式(AM-2)(N3-L2-NH2:-L2-は、前記態様[1]中の定義と同じである)で表わされるアミンを、アルギン酸の任意のカルボキシル基と、任意の縮合剤(condensing agent)を用いる縮合反応により製造することができる。各反応の詳細条件は、国際公開第2019/240219号パンフレットに記載された条件に準じる。
【0302】
【0303】
前記、式(I)又は式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の製造方法において、式(AM-1)又は式(AM-2)で表わされるアミンの導入率(前記態様中の式(I)又は式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の反応性基の導入率と同じ意味になる)は、当該アミンの性質等を考慮することで、下記(i)~(v)等の反応条件を適宜選択して組み合わせることにより調節が可能になる。(i)縮合剤の等量の増減、(ii)反応温度の上昇・下降、(iii)反応時間の延長・短縮、(iv)反応基質のアルギン酸の濃度の調整、(v)式(AM-1)又は式(AM-2)のアミンの溶解度を上げる為に水に混和する有機溶媒を添加する、等。
【0304】
また、前記縮合反応において、式(AM-1)、式(AM-2)で表わされるアミンを、各々、式(AM-1A)、式(AM-2A)で表わされるアミンに置き換えて、同様に縮合反応を行うことで、式(I-A)又は式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を製造することができる。各反応式中、Aky-L1A-NH2のAky-L1A-は、前記態様[1X]中の定義と同じであり、N3-L2A-NH2の-L2A-は、前記態様[1X]中の定義と同じである。
【0305】
【0306】
以下に、式(AM-1)又は式(AM-2)で表わされるアミンのうち、本明細書中で用いられる、より具体的なアミンの製造方法を示す。
【0307】
以下の各製造方法において、x1a、x1b、y1b、x2、y2、z2、x3a、y3a、z3a、x3b、y3b、z3b、x4、y4、x5a、y5a、z5a、x5b、y5b、z5b、x6、y6、z6、x7a、y7a、z7a、v7a、x7b、y7b、z7b、v7b、a1、b1、a2、b2、a3、b3、a4、b4、a5及びa6の定義は前記態様[1]中の記載と同じ定義であり;RA=メチル基、エチル基、等のC1~6アルキル基であり;P1は、-C(O)O-tertBu基、-C(O)O-Bn基、-C(O)CH3基、-C(O)CF3基、-SO2Ph、-SO2PhMe基、-SO2Ph(NO2)基、等から選択されるアミノ基の保護基であり;E=ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、等)、-OTs基、-OMs基、等の脱離基であり、X=ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、等)である。又、以下の各製造方法において、式(SM-A1)、式(SM-A2)、式(SM-B)、式(SM-C1)、式(SM-C2)、式(SM-D)、式(SM-E1)、式(SM-E2)、式(SM-F)、式(SM-G1)、式(SM-G2)、式(SM-H)、式(SM-J)、式(SM-K)、式(SM-L)、式(RG-A1)、式(RG-A2)、式(RG-B1)、式(RG-C1)、式(RG-C2)、式(RG-D1)、式(RG-E1)、式(RG-E2)、式(RG-F1)、式(RG-F2)、式(RG-F3)、式(RG-G1-1)、式(RG-G1-2)、式(RG-G1-3)、式(RG-G2-1)、式(RG-G2-2)、式(RG-G2-3)、式(RG-H1)、式(RG-H2)、式(RG-I1)、式(RG-J1)、式(RG-K)、式(RG-L1)及び式(RG-M)で表される化合物は市販化合物、又は市販化合物から文献公知の製造方法により製造できる化合物である。
【0308】
又、以下の各製造方法において、保護基P1の保護・脱保護は、文献公知の方法、例えば、『プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis 4thEdition) 第4版、2007年、ジョン ウィリー アンド サンズ(John Wiley & Sons)、グリーン(Greene)ら』の成書に記載された脱保護の方法に準じて、保護・脱保護を行うことができる。
【0309】
又、以下の各製造方法において、縮合反応と記載した場合、前記の縮合反応と同様の反応を意味する。
【0310】
[製造方法A]
式(AM-1-1A)及び式(AM-1-1B)で表されるアミンの製造方法:
【化44】
【0311】
<Step 1> 式(SM-A)の化合物及び式(RG-A1)の化合物を用いて、縮合反応を行うことで縮合体を得る。続いて、臭素を付加させた後、tert-BuOK等の塩基を用いて脱臭素化反応を行うことによりアルキン基を形成させる。続いて、保護基P1を脱保護することにより式(AM-1-1A)で表されるアミン、又はその塩を製造することができる。
【0312】
<Step 2> 前記[製造方法A]<Step 1>と同様な方法で得られる式(SM-A2)の化合物及び式(RG-A2)の化合物を用いて縮合反応を行い、続いて、保護基P1を脱保護することにより式(AM-1-1B)で表されるアミン、又はその塩を製造することができる。
【0313】
[製造方法B]
式(AM-1-2)で表されるアミンの製造方法:
【化45】
【0314】
式(SM-B)の化合物及び式(RG-B1)の化合物を用いて縮合反応を行うことで縮合体を得る。続いて、保護基P1を脱保護することにより式(AM-1-2)で表されるアミン、又はその塩を製造することができる。
【0315】
[製造方法C]式(AM-1-3A)及び式(AM-1-3B)で表されるアミンの製造方法:
【化46】
【0316】
式(SM-C1)の化合物及び式(RG-C1)の化合物を用いて、縮合反応を行い縮合体を得る。続いて、保護基P1を脱保護することにより式(AM-1-3A)で表されるアミン、又はその塩を製造することができる。
【0317】
式(SM-C2)の化合物及び式(RG-C2)の化合物を用いて、縮合反応を行い縮合体を得る。続いて、保護基P1を脱保護することにより式(AM-1-3B)で表されるアミン、又はその塩を製造することができる。
【0318】
[製造方法D]式(AM-1-D)で表されるアミンの製造方法:
【化47】
【0319】
式(SM-D)の化合物及び式(RG-D1)の化合物を用いて縮合反応を行い、縮合体を得る。続いて保護基P1を脱保護することにより式(AM-1-D)で表されるアミン、又はその塩を製造することができる。
【0320】
[製造方法E]式(AM-1-E1)及び式(AM-1-E2)で表されるアミンの製造方法:
【化48】
【0321】
式(SM-E1)の化合物及び式(RG-E1)の化合物を用いて、縮合反応を行い縮合体を得る。続いて、保護基P1を脱保護することにより式(AM-1-E1)で表されるアミン、又はその塩を製造することができる。
【0322】
式(SM-E2)の化合物及び式(RG-E2)の化合物を用いて、縮合反応を行い縮合体を得る。続いて、保護基P1を脱保護することにより式(AM-1-E2)で表されるアミン、又はその塩を製造することができる。
【0323】
[製造方法F]式(AM-1-F)で表されるアミンの製造方法:
【化49】
【0324】
<Step 1> 式(SM-F)の化合物及び式(RG-F1)の化合物を用いて、縮合反応を行い縮合体を得る。続いて、保護基P1を脱保護することにより式(AM-1-F)で表されるアミン、又はその塩を製造することができる。
<Step 2> 式(SM-F)の化合物及び式(RG-F2)の化合物を用いて、縮合反応を行い縮合体を得る。続いて、水酸化ナトリウム等の塩基存在下、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、水等の反応に関与しない溶媒若しくはそれらの混合溶媒中で、エステル基を加水分解することにより式(IM-F1)で表されるカルボン酸、又はその塩を製造することができる。
<Step 3> [製造方法F]<Step 2>で得られた式(IM-F1)の化合物及び式(RG-F3)の化合物を用いて、縮合反応を行い縮合体を得る。続いて、保護基P1を脱保護することにより式(AM-1-F)で表されるアミン、又はその塩を製造することができる。
【0325】
[製造方法G]式(AM-1-G1)及び式(AM-1-G2)で表されるアミンの製造方法:
【化50】
【0326】
<Step 1> 式(SM-G1)の化合物及び式(RG-G1-1)の化合物を用いて、縮合反応を行い縮合体を得る。続いて、保護基P1を脱保護することにより式(AM-1-G1)で表されるアミン、又はその塩を製造することができる。
<Step 2> 式(SM-G1)の化合物及び式(RG-G1-2)の化合物を用いて、縮合反応を行い縮合体を得る。続いて、エステル基を加水分解することにより式(IM-G1)で表されるカルボン酸、又はその塩を製造することができる。
【0327】
<Step 3> [製造方法G]<Step 2>で得られた式(IM-G1)の化合物及び式(RG-G1-3)の化合物を用いて、縮合反応を行い縮合体を得る。続いて、保護基P1を脱保護することにより式(AM-1-G1)で表されるアミン、又はその塩を製造することができる。
<Step 4> 式(SM-G2)の化合物及び式(RG-G2-1)の化合物を用いて、縮合反応を行い縮合体を得る。続いて、保護基P1を脱保護することにより式(AM-1-G2)で表されるアミン、又はその塩を製造することができる。
【0328】
<Step 5> 式(SM-G2)の化合物及び式(RG-G2-2)の化合物を用いて、縮合反応を行い縮合体を得る。続いて、エステル基を加水分解することにより式(IM-G2)で表されるカルボン酸、又はその塩(例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)を製造することができる。
<Step 6> [製造方法G]<Step 5>で得られた式(IM-G2)の化合物及び式(RG-G2-3)の化合物を用いて、縮合反応を行い縮合体を得る。続いて、保護基P1を脱保護することにより式(AM-1-G2)で表されるアミン、又はその塩を製造することができる。
【0329】
[製造方法H]
式(AM-2-H)で表されるアミンの製造方法:
【化51】
【0330】
<Step 1> 式(SM-H)の化合物及び式(RG-H1)の化合物を用いて、 文献公知の方法、例えば、『European Journal of Organic Chemistry, 2014(6), p1280-1286; 2014年』等に記載された方法に準じて、(i)PPh3、及びN2(CO2CHMe2)2の試薬存在下、テトラヒドロフラン等の反応に関与しない溶媒中、光延反応を行い、続いて[製造方法F]<Step 2>に記載の方法と同様に、加水分解を行うことにより、式(IM-H1)で表される化合物、又はその塩(例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)をを製造することができる。
【0331】
<Step 2> [製造方法H]<Step 1>で得られた式(IM-H1)の化合物及び式(RG-H2)の化合物を用いて縮合反応を行い縮合体を得る。続いて、保護基P1を脱保護することにより式(AM-2-H)で表されるアミン、又はその塩を製造することができる。
【0332】
[製造方法I]
式(AM-2-I)で表されるアミンの製造方法:
【化52】
【0333】
<Step 1A> [製造方法H]<Step 1>で得られた式(IM-H1)の化合物及び式(RG-I1)の化合物を用いて縮合反応を行い縮合体を得る。続いて、保護基P1を脱保護することにより式(AM-2-I)で表されるアミン、又はその塩を製造することができる。
【0334】
[製造方法J]
式(AM-2-J)で表されるアミンの製造方法:
【化53】
【0335】
<Step 1> 式(SM-J)の化合物及び式(RG-J1)の化合物を用いて、縮合反応を行うことにより式(IM-J1)を製造することができる。
<Step 2>[製造方法J]<Step 1>で得られる式(IM-J1)の化合物を用いて、文献公知の方法、例えば、『Organometallics,29(23),p6619-6622;2010年』等に記載された方法に準じて、ジメチルスルホキシド等の反応に関与しない溶媒中、NaN3を反応させアジド基を導入した後、保護基P1を脱保護することにより式(AM-2-J)で表されるアミン、又はその塩を製造することができる。
【0336】
[製造方法K]
式(AM-2-K)で表されるアミンの製造方法:
【化54】
【0337】
<Step 1> 式(SM-K)の化合物及び式(RG-K)の化合物を用いて縮合反応を行うことにより式(IM-K)を製造することができる。
<Step 2>[製造方法K]<Step 1>で得られる式(IM-K)の化合物を用いて、[製造方法J]<Step 2>と同様な反応、保護基P1の脱保護を行うことにより式(AM-2-K)で表されるアミン、又はその塩を製造することができる。
【0338】
[製造方法L]
式(AM-2-L)で表されるアミンの製造方法:
【化55】
【0339】
式(SM-L)の化合物及び式(RG-L1)の化合物を用いて、縮合反応を行い縮合体を得る。続いて、保護基P1を脱保護することにより式(AM-2-L)で表されるアミン、又はその塩を製造することができる。
【0340】
[製造方法M]
式(AM-2-M)で表されるアミンの製造方法:
【化56】
【0341】
式(SM-L)の化合物及び式(RG-M)の化合物を用いて、縮合反応を行い縮合体を得る。続いて、保護基P1を脱保護することにより式(AM-2-M)で表されるアミン、又はその塩を製造することができる。
【0342】
前記[製造方法A]~[製造方法M]で製造することができる式(AM-1)又は式(AM-2)で表わされるアミン以外のアミン、例えば、式(AM-1)のリンカー-L1-又は式(AM-2)のリンカー-L2-が、直鎖のアルキレン基(-(CH2)n-、n=1~30)[当該基中の-CH2-は、-C(=O)-、-CONH-、-O-、-NH-、-S-、炭素数が3~8のシクロアルキル環、ベンゼン環、複素環(ピリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、等の5~6員芳香族複素環又は5~6員非芳香族複素環)、等の基で複数個(例えば、1~10個、又は1~5個)置き換えられても良く;当該直鎖のアルキレン基(-CH2-)の水素原子は、オキソ基(=O)、C1-6アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、等の基)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、等)、水酸基(-OH)、等の基から選択される基で複数個(例えば、1~10個、又は1~5個)置換されていても良い]である場合、文献公知の方法、例えば、『実験化学講座 第5版、各本、2007年、丸善』、『Comprehensive Organic Transformations, A Guide to Functional GroupPreparations, 3rd Edition (Edited by Richard C. Larock),2018年』、『Strategic Applications of Named Reactions inOrganic Synthesis, (Edited by Laszlo Kurti, Barbara Czako), Academic Press,2005年』等に記載の合成方法を適宜組み合わせることにより、所望のアミンを製造することができる。
【0343】
式(AM-1A)又は式(AM-2A)[各式中の、Aky、-L
1A-、-L
2A-の定義は、前記態様[1X]中の定義と同じである]で表されるアミンは、市販化合物、又は市販化合物から文献公知の製造方法により製造できる化合物を用いて、文献公知の方法、例えば、国際公開第2019/240219号パンフレット、国際公開第2021/125255号パンフレット、『実験化学講座 第5版、各本、2007年、丸善』、『Comprehensive Organic Transformations, A Guide to Functional GroupPreparations, 3rd Edition (Edited by Richard C. Larock),2018年』、『Strategic Applications of Named Reactions inOrganic Synthesis, (Edited by Laszlo Kurti, Barbara Czako), Academic Press,2005年』等に記載の合成方法(酸化・還元反応、-O-CH
2-結合形成反応、ハロゲン化反応、アジド化反応、付加・脱離反応、縮合反応、保護・脱保護等)を適宜組み合わせることにより、所望のアミンを製造することができる。
【化57】
【0344】
本明細書中、式(AM-1)、式(AM-1A)、式(AM-2)、式(AM-2A)で表わされるアミン(各々の式の下位の式も含む)は、製薬学的に許容される塩(例えば、酸付加塩;例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等)を形成する場合がある。
【0345】
本明細書中の化合物は、塩を形成することができ、常法に従い、例えば、適量の酸もしくは塩基を含む溶液を混合することにより目的の塩を形成させた後に分別濾取するか、もしくは該混合溶媒を留去することにより得ることができる。塩に関する総説として、Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties, Selection, and Use、Stahl&Wermuth(Wiley-VCH、2002)が出版されており、本書に詳細な記載がなされている。
【0346】
本明細書中、式(AM-1)、式(AM-1A)、式(AM-2)、式(AM-2A)で表わされるアミン(各々の式の下位の式も含む)又はその塩は、水、エタノール、グリセロール等の溶媒と溶媒和物を形成し得る。
【0347】
本明細書中、特に断りのない限り、環状基に可変置換基が置換している場合、該可変置換基は環状基の特定の炭素原子に結合されていない事を意味する。例えば、下記式Aにおける可変置換基Rsは、該式Aにおける炭素原子i、ii、iii、iv又はvの何れかに置換する事ができる事を意味する。
【0348】
【0349】
5-1.架橋アルギン酸ゲル
本明細書中、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルは、前記「2.化学修飾アルギン酸誘導体」の項に記載の化学修飾アルギン酸誘導体を用いて形成される、(i)2価の金属イオン結合を介した架橋、(ii)化学結合を介した架橋、又は(iii)2価の金属イオン結合及び化学結合の両方を介した架橋を有する架橋アルギン酸ゲル(架橋アルギン酸または化学架橋アルギン酸と言うこともできる)がある。ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルは、架橋としてHuisgen反応(架橋反応)を行うことにより形成されるトリアゾール環による化学架橋、及び2価金属イオン(例えば、カルシウムイオン等)を共存させることにより形成されるイオン架橋の両方を含む架橋アルギン酸ゲルである。又、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルは、架橋としてHuisgen反応(架橋反応)を行うことにより形成されるトリアゾール環による化学架橋を含む、架橋アルギン酸ゲルである。
【0350】
下記の記載において、式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体、式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体は、各々、式(I-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体、式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体へ置き換えることができる。
【0351】
本明細書中、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルは、前記式(I)及び前記式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体を用いて、当該誘導体間に化学架橋を形成させるHuisgen反応(架橋反応)を行うことで得られる。又は、前記式(I)及び前記式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体に2価の金属イオンを共存させることにより、当該誘導体間にイオン架橋を形成させることで得られる。又は、前記式(I)及び前記式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体を用いて、Huisgen反応(架橋反応)を行い、当該誘導体間に化学架橋を形成させ、更に2価の金属イオンを共存させることにより、当該誘導体間にイオン架橋を形成させることでも得られる。
【0352】
本明細書中、「架橋が形成される」、「架橋が形成された」、又は「架橋反応を行う」とは、前記式(I)及び前記式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体を用いて、Huisgen反応を行うことにより、当該式(I)及び式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体間で化学架橋(化学結合)が形成されること、又は、前記式(I)及び前記式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体に2価の金属イオンを共存させることにより当該式(I)の化学修飾アルギン酸誘導体及び式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体の各誘導体間でイオン架橋(イオン結合)が形成されること、又は、前記Huisgen反応による化学架橋及び2価の金属イオンによるイオン架橋の両方が形成されることを意味する。また、アルギン酸(アルギン酸ナトリウム等)に2価の金属イオンを共存させることにより、アルギン酸にイオン架橋が形成されることも意味する。
【0353】
前記式(I)及び前記式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体に2価金属イオンを接触させることにより、イオン架橋が形成され、イオン架橋アルギン酸ゲルになる時間は、例えば、瞬時(例えば、1~5秒)~数時間(例えば、1~3時間)である。又、前記式(I)及び前記式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体間でHuisugen反応が進行して、化学架橋が形成され、化学架橋アルギン酸ゲルになる時間は、例えば、数秒~24時間、数秒~12時間、又は数秒~30分間である。
【0354】
前記架橋アルギン酸ゲルを得る為に用いられる2価金属イオンとしては、特に限定されないが、例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン、ストロンチウムイオン、亜鉛イオン等が挙げられ、好ましくはカルシウムイオン、バリウムイオン又はストロンチウムイオンであり、より好ましくはカルシウムイオン又はバリウムイオンである。
【0355】
2価金属イオンを含む溶液としては、特に限定されないが、例えば、カルシウムイオンを含む溶液(例えば、塩化カルシウム水溶液、炭酸カルシウム水溶液、グルコン酸カルシウム水溶液、等の水溶液)、バリウムイオンを含む溶液(例えば、塩化バリウム水溶液等の水溶液)、ストロンチウムイオンを含む溶液(例えば、塩化ストロンチウム水溶液等の水溶液)が挙げられ、好ましくはカルシウムイオンを含む溶液又はバリウムイオンを含む溶液であり、より好ましくは、塩化カルシウム水溶液又は塩化バリウム水溶液である。
【0356】
2価金属イオンを含む溶液の2価金属イオン濃度(例えば、カルシウムイオン又はバリウムイオン濃度)は、特に限定されないが、例えば、約1mM~約1Mの範囲、又は約10~約500mMの範囲であり;好ましくは、約10~約100mMである。
【0357】
2価金属イオンを含む溶液等を調製する際に用いる溶媒は、特に限定されないが、例えば、水道水、純水(例えば、蒸留水、イオン交換水、RO水、RO-EDI水、等)、超純水(MilliQ水)、培地、細胞培養用培地、培養液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、及び生理食塩水等が挙げられ;好ましくは生理食塩水又は超純水である。
【0358】
前記ファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルにおいて、イオン架橋及び化学架橋がある場合、イオン架橋の反応は瞬時かつ可逆的であるのに対して、化学架橋の反応は、比較的温和な条件でゆっくり反応が進行して得られ、非可逆的である。この性質を利用して、化学架橋とイオン架橋を適切に組み合わせることにより、本発明の架橋アルギン酸ゲルを効率的に作製することが可能となる。例えば、後述の「9.ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造方法」における装置XXを用いて、式(I)及び式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体の混合溶液を、2価金属イオンを含有する溶液の中に射出することにより、イオン架橋が形成され、瞬時にファイバ(繊維)形状の架橋アルギン酸ゲルを作製することができる。又、同時に式(I)及び式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体間でHuisgen反応(架橋反応)が進行し化学架橋が形成されることで、イオン架橋および化学架橋の両方を含むファイバ(繊維)形状の架橋アルギン酸ゲルが得られる。架橋アルギン酸ゲルの物性は、例えば、使用する2価金属イオンが含まれる水溶液(例えば、塩化カルシウム水溶液)の濃度、若しくは、化学修飾アルギン酸誘導体に導入される反応性基の導入率を変化させる等の方法で、調整が可能である。
【0359】
前記の架橋反応を利用し、式(I)及び(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を用いて、本発明のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルをファイバ(繊維)形状(「架橋アルギン酸ゲルファイバ」ともいう)として作製することができる。尚、当該架橋アルギン酸ゲルファイバを作製する際に、式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の混合溶液に、アルギン酸(例えば、アルギン酸ナトリウム)溶液を添加して、作製することができる。
【0360】
架橋アルギン酸ゲルファイバの長さは、例えば、後述の「9.ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造方法」において、装置XXの排出口2から、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液を射出する際に、射出される混合溶液を、ハサミ、カッター等の切断器具を用いて一定間隔で切断することで、所望の長さを有する架橋アルギン酸ゲルファイバを得ることが可能である。
【0361】
架橋アルギン酸ゲルファイバの長さは、特に限定はされないが、後述の「9.ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造方法」に記載された、長さのものが挙げられる。
【0362】
本発明では、ファイバ構造を強化(例えば、長期安定性の獲得、等)する方法の1つとして、化学架橋(Huisugen反応)を利用している。前記の様に作製されたイオン架橋及び化学架橋の両方を有する架橋アルギン酸ゲルファイバを用いて、培養液中で培養を行う場合、イオン架橋を形成している2価金属イオンが徐々に可逆的に放出され、化学架橋のみが残った架橋アルギン酸ゲルファイバとなるが、非可逆的な化学架橋によりゲル構造が保たれ、安定に継続して培養することが可能である。
【0363】
本発明の、式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を用いて架橋反応を行うことにより形成される架橋アルギン酸ゲルは、特に限定されないが、例えば、コラーゲン溶液、コラーゲンゲル、培地、細胞培養用培地、培養液、メチルセルロース、スクロース溶液、アルギン酸溶液、アルギン酸ゲル、等の他の成分を含むことができる。
【0364】
本明細書中、単純に「アルギン酸ゲル」と記載する場合、アルギン酸(例えば、アルギン酸ナトリウム)又はその溶液に2価の金属イオンを共存させることで、イオン架橋が形成された、アルギン酸ゲルを意味する。
【0365】
5-2.架橋アルギン酸ゲルにおける化学架橋
本明細書中、架橋アルギン酸ゲルは、前記式(I)及び前記式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体を混合してHuisgen反応を行うことにより、得ることができる。また、前記式(I-A)及び前記式(II-A)で表される化学修飾アルギン酸誘導体を混合してHuisgen反応を行うことでも、得ることができる。
【0366】
本明細書中、架橋アルギン酸ゲルは、化学架橋(アルキン基及びアジド基から形成されるトリアゾール環による架橋)を介して三次元の網目構造を形成する。好ましい化学修飾アルギン酸誘導体は、架橋後の架橋アルギン酸ゲルの安定性を改善するものである。なお、架橋アルギン酸ゲルの物性は、例えば、原料である式(I)又は式(II)で表される化学修飾アルギン酸における各反応性基の導入率によって調整することが可能である。
【0367】
いくつかの態様の架橋アルギン酸ゲルは、下記式(III-L):
【化59】
[式(III-L)中、両端の-CONH-及び-NHCO-は、アルギン酸の任意のカルボキシル基を介したアミド結合を表わし;-L
1-、-L
2-、及び-X-は、前記態様[1-12]中の定義と同じである]で表わされる基を介して架橋された架橋アルギン酸ゲルである。
【0368】
本明細書中、架橋アルギン酸ゲルは、化学架橋(アルキン基及びアジド基から形成されるトリアゾール環による架橋)を介して三次元の網目構造を形成する。好ましい化学修飾アルギン酸誘導体は、架橋後の架橋アルギン酸ゲルの安定性を改善するものである。なお、架橋アルギン酸ゲルの物性は、例えば、原料である式(I-A)又は式(II-A)で表される化学修飾アルギン酸における各反応性基の導入率によって調整することが可能である。
【0369】
いくつかの態様の架橋アルギン酸ゲルは、下記式(III-Lx):
【化60】
[式(III-Lx)中、両端の-CONH-及び-NHCO-は、アルギン酸の任意のカルボキシル基を介したアミド結合を表わし;-L
1A-、-L
2A-、及び-X
A-は、前記態様[1-12X]中の定義と同じである]で表わされる基を介して架橋された架橋アルギン酸ゲルである。
【0370】
下記の記載において、式(I)及び式(II)は、各々、式(I-A)及び式(II-A)に置き換えることができる。
【0371】
いくつかの態様にて、架橋アルギン酸ゲルを作製する際の、式(I)で表される化学修飾アルギン酸誘導体と、式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体の混合比は、式(I)で表される化学修飾アルギン酸誘導体と式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体の重量比にて、例えば、1:1.0~4.0、又は1:1.0~3.0、又は1:1.0~2.0、又は1:1.0~1.5、又は1:1であり;好ましくは1:1.0~3.0である。
【0372】
いくつかの態様にて、架橋アルギン酸ゲルを作製する際の、式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体と、式(I)で表される化学修飾アルギン酸誘導体の混合比は、式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体と式(I)で表される化学修飾アルギン酸誘導体の重量比にて、例えば、1:1.0~4.0、又は1:1.0~3.0、又は1:1.0~2.0、又は1:1.0~1.5、又は1:1である。
【0373】
いくつかの態様にて、架橋アルギン酸ゲルを作製する際の、式(I)で表される化学修飾アルギン酸誘導体と、式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体の混合比は、より好ましくは式(I)で表される化学修飾アルギン酸誘導体と式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体の反応性基の導入率(mol%)比にて、例えば、1:1.0~4.0、又は1:1.0~3.0、又は1:1.0~2.0、又は1:1.0~1.5、又は1:1であり;好ましくは1:1.0~3.0である。
【0374】
いくつかの態様にて、架橋アルギン酸ゲルを作製する際の、式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体と、式(I)で表される化学修飾アルギン酸誘導体の混合比は、より好ましくは式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体と式(I)で表される化学修飾アルギン酸誘導体の反応性基の導入率(mol%)比にて、例えば、1:1.0~4.0、又は1:1.0~3.0、又は1:1.0~2.0、又は1:1.0~1.5、又は1:1である。
【0375】
架橋アルギン酸ゲルは、アルギン酸の構成単位の全てのカルボキシル基が上記式(III-L)の架橋を有している必要はない。架橋アルギン酸ゲルにおける、上記式(III-L)で表わされる架橋の導入率(架橋率とも言う)は、例えば、約0.1~約80%、約0.3~約60%、約0.5~約30%、または約1.0~約10%の範囲である。
【0376】
架橋アルギン酸ゲルは、アルギン酸の構成単位の全てのカルボキシル基が上記式(III-Lx)の架橋を有している必要はない。架橋アルギン酸ゲルにおける、上記式(III-Lx)で表わされる架橋の導入率(架橋率とも言う)は、例えば、約0.1~約80%、約0.3~約60%、約0.5~約30%、または約1.0~約10%の範囲である。
【0377】
本発明のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルを得るためのHuisgen反応における前記式(I)又は式(II)で表わされるアルギン酸誘導体の溶液の濃度は、例えば、約0.01~約1.5重量%の範囲であり;好ましくは、約0.05~約1.0重量%の範囲であり;より好ましくは、約0.08~約0.75重量%の範囲である。
【0378】
本発明のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルを得るためのHuisgen反応における前記式(I-A)又は式(II-A)で表わされるアルギン酸誘導体の溶液の濃度は、例えば、約0.01~約1.5重量%の範囲であり;好ましくは、約0.05~約1.0重量%の範囲であり;より好ましくは、約0.08~約0.75重量%の範囲である。
【0379】
本発明のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルを得るための前記式(I)及び式(II)で表わされるアルギン酸誘導体を用いたHuisgen反応において、前記式(I)及び式(II)で表わされるアルギン酸誘導体の混合溶液に、アルギン酸溶液を添加する場合、当該アルギン酸溶液の濃度(CALG)は、例えば、0<CALG≦約1.98重量%の範囲であり;好ましくは、0<CALG≦約1.8重量%の範囲であり;より好ましくは、0<CALG≦約1.7重量%の範囲である。
【0380】
本発明のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲルを得るための前記式(I-A)及び式(II-A)で表わされるアルギン酸誘導体を用いたHuisgen反応において、前記式(I-A)及び式(II-A)で表わされるアルギン酸誘導体の混合溶液に、アルギン酸溶液を添加する場合、当該アルギン酸溶液の濃度(CALG)は、例えば、0<CALG≦約1.98重量%の範囲であり;好ましくは、0<CALG≦約1.8重量%の範囲であり;より好ましくは、0<CALG≦約1.7重量%の範囲である。
【0381】
Huisgen反応の反応温度(架橋アルギン酸ゲル、架橋アルギン酸ゲルファイバを作製する際の温度)は、通常、外温約4~約60℃であり、好ましくは外温約15~約37℃の範囲である。
【0382】
6.ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ
下記の記載において、式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体、式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体は、各々、式(I-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体、式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体へ置き換えることができる。
本明細書中、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞と、前記式(I)及び式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体を用いて架橋反応を行うことにより得られる架橋アルギン酸ゲルとを含むコア層を、カチオン性ポリマー(カチオン性ポリマー層)で被覆して得られる、ファイバ状(繊維状)の構造体を意味する(ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造方法は後述する)。
【0383】
又、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、コア層とコア層の外側に配置されるカチオン性ポリマー層を含む、ファイバ状(繊維状)の構造体である。前記コア層は、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞と前記式(I)及び式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体を用いて架橋が形成された架橋アルギン酸ゲルとを含み、前記カチオン性ポリマー層は、カチオン性ポリマーである。
【0384】
又、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、コア層とコア層の外側に配置されるカチオン性ポリマー層を含む、ファイバ状(繊維状)の構造体である。前記コア層は、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞と、架橋アルギン酸ゲルとを含み、前記架橋アルギン酸ゲルは、前記式(I)及び式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体を用いて架橋反応を行うことにより得られる架橋を含み、前記カチオン性ポリマー層は、カチオン性ポリマーである。
【0385】
図1は、架橋アルギン酸ゲルファイバをカチオン性ポリマーで被覆することで形成されたポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの一例の断面図を示す。このポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、その外径がcであり、直径aのコア層5と厚さbのカチオン性ポリマー層4を含み、コア層5は、抗体、生理活性物質等を産生する細胞6が含まれた架橋アルギン酸ゲルを含んでいる。当該、コア層5の架橋アルギン酸ゲルは、式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を用いて架橋反応を行うことにより形成された架橋アルギン酸ゲルである。
【0386】
いくつかの態様のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層は、前記態様[1]に記載の式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を用いて架橋反応を行うことにより形成された架橋アルギン酸ゲルの他に、細胞毒性を有さないものであれば特に限定されないが、コラーゲン溶液、コラーゲンゲル、培地、細胞培養用培地、培養液、メチルセルロース、スクロース溶液、アルギン酸溶液、アルギン酸ゲル、等の他の成分を含むことができ;好ましくは、アルギン酸溶液、アルギン酸ゲル、培地、培養液からなる群から選択される成分を含むことができる。
【0387】
「ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ」は、ファイバの外径(
図1でのc)が、例えば、約0.1~約2000μm程度である繊維状の構造体であることから、「ポリマーコーティング架橋アルギン酸マイクロファイバ」と言うこともある。
【0388】
ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの中心軸に対する垂直方向の断面形状は、円形に限定されるものではなく、非対称構造や変形させた形状でも良く、例えば、断面形状は、円形、楕円系、又は多角形(例えば、三角形、四角形、五角形等)等の多様な形状であっても良く、好ましくは、
図1に示されるような円形の断面形状である。
【0389】
ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの外径(非円形の場合は、長径又は最大径を外径とみなす)は、例えば、約0.1~約2000μm、約0.2μm~約2000μm、約0.2~約1000μm、約0.5~約1000μm、約1~約1000μm、約10~約1000μm、約20~約1000μm等の範囲である。
【0390】
ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層の直径は、例えば、約0.1~約2000μm、約0.2μm~約2000μm、約1~約1000μm、約2~約500μm、約2~約200μm等の範囲である。又、例えば、約0.1~約2000μm、約0.2μm~約2000μm、約0.2~約1000μm、約0.5~約1000μm、約1~約1000μm、約10~約1000μm、約20~約1000μm等の範囲である。コア層の断面の直径は、ファイバ断面の直径未満であって50%以上であることが好ましい。
【0391】
ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのポリマー層(b)の厚さは、「(ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの外径-コア層の直径)/2(
図1でb=(c-a)/2)」により求めることができる。ポリマー層の厚さは、例えば、約0.1~約200μm、約1~約200μm、約5μm~約200μm等である。
【0392】
上記のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層の直径、外径、及びポリマー層の内径の値は、例えば、ポリマー層に蛍光発色するカチオン性ポリマーを用いてファイバを作製し、位相差光学顕微鏡による画像から計測することが可能である。当該ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの数カ所における計測値の平均値として表される。上記のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層及びポリマー層は、通常、実質的に均一な厚みを有しており、好ましくは、各層は、±10%の範囲内の厚さ均一性を有する。
【0393】
ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの長さは、特に限定はされないが、例えば、後述の「9.ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造方法」に記載された、約0.01m~約100m、約0.1m~約75m、約0.3~約50m等の長さが挙げられる。
【0394】
本明細書中、いくつかの態様のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層は、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞を含ませた、式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の混合溶液を用いて形成することができる。その場合、式(I)又は式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の濃度は、例えば、各々、約0.01~約1.5重量%の範囲であり;好ましくは、約0.05~約1.0重量%の範囲であり;より好ましくは、約0.08~約0.75重量%の範囲である。
又、式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の混合溶液の濃度は、例えば、約0.02~約2.0重量%の範囲であり;好ましくは、約0.1~約2.0重量%の範囲であり;より好ましくは約0.15~約1.5重量%の範囲である。
又、前記、式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の混合溶液に、アルギン酸溶液を添加する場合の、当該アルギン酸の濃度(CALG)は、例えば、0<CALG≦約1.98重量%の範囲であり;好ましくは、0<CALG≦約1.8重量%の範囲であり;より好ましくは、0<CALG≦約1.7重量%の範囲である。
【0395】
本明細書中、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層の形成に用いる、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞を含ませた、式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の混合溶液に、アルギン酸溶液を添加する場合、当該式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液の濃度(C1(重量%))とアルギン酸溶液の濃度(C2(重量%))の組合せは、特に限定されないが、例えば、0<C2(重量%)≦約1.98(重量%)、
0<C1(重量%)<約2.0(重量%)-C2(重量%)、
0<C1+C2(重量%)≦約2.0(重量%)
で表される式を満たす範囲の組合せであり;例えば、(C1:C2)=(約0.2:約1.3)、(約0.5:約1.0)、(約1.0:約0.5)、(約0.66:約1.34)、(約0.34:約0.66)、(約0.16:約0.34)等の組み合わせが挙げられる。これら濃度以外にも、C1およびC2の濃度を適宜組み合わせて調製することができる。
【0396】
本明細書中、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層の形成に用いる、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞を含ませた、式(I-A)及び式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の混合溶液に、アルギン酸溶液を添加する場合、当該式(I-A)及び式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液の濃度(C1x(重量%))とアルギン酸溶液の濃度(C2x(重量%))の組合せは、例えば、
0<C2x(重量%)≦約1.98(重量%)、
0<C1x(重量%)<約2.0(重量%)-C2x(重量%)、
0<C1x+C2x(重量%)≦約2.0(重量%)
で表される式を満たす範囲の組合せであり;
例えば、(C1x:C2x)=(約0.2:約1.3)、(約0.5:約1.0)、(約1.0:約0.5)、(約0.66:約1.34)、(約0.34:約0.66)、(約0.16:約0.34)等の組み合わせが挙げられる。これら濃度以外にも、C1xおよびC2xの濃度を適宜組み合わせて調製することができる。
【0397】
本明細書中、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層の形成に用いる、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞を含ませた、式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の混合溶液に、アルギン酸溶液を添加する場合、当該式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の濃度(C1A(重量%))、式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の濃度(C1N(重量%))及びアルギン酸溶液の濃度(C2(重量%))の組合せは、特に限定されないが、例えば、0<C1A≦約2.0-C2、0<C1N≦約2.0-C2、0<C2≦約1.98、0<C1A+C1N+C2≦約2.0で表される式を満たす範囲の組合せであり;例えば、(C1A:C1N:C2)=(約0.1:約0.1:約1.3)、(約0.25:約0.25:約1.0)、(約0.5:約0.5:約0.5)、(約0.33:約0.33:約1.34)、(約0.17:約0.17:約0.66)、(約0.08:約0.08:約0.34)等の組み合わせが挙げられる。これら濃度以外にも、C1A、C1N、C2の濃度を適宜組み合わせて調製することができる。
【0398】
本明細書中、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層の形成に用いる、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞を含ませた、式(I-A)及び式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の混合溶液に、アルギン酸溶液を添加する場合、当該式(I-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の濃度(C1Ax(重量%))、式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の濃度(C1Nx(重量%))及びアルギン酸溶液の濃度(C2x(重量%))の組合せは、特に限定されないが、例えば、
0<C2x(重量%)≦約1.98(重量%)、
0<C1Ax(重量%)<約2.0(重量%)-C2x(重量%)、
0<C1Nx(重量%)<約2.0(重量%)-C2x(重量%)、
0<C1Ax+C1Nx+C2x(重量%)≦約2.0(重量%)
で表される式を満たす範囲の組合せであり;
例えば、(C1Ax:C1Nx:C2x)=(約0.1:約0.1:約1.3)、(約0.25:約0.25:約1.0)、(約0.5:約0.5:約0.5)、(約0.33:約0.33:約1.34)、(約0.17:約0.17:約0.66)、(約0.08:約0.08:約0.34)等の組み合わせが挙げられる。これら濃度以外にも、C1Ax、C1Nx、C2xの濃度を適宜組み合わせて調製することができる。
【0399】
本明細書中、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層の形成に用いる、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液中の、式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液および式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の各容量比(v1、v2)は、例えば、v1+v2=15の比率であり、例えば、(v1:v2)=(7.5:7.5)である。但し、v1+v2=15において、0<v1<15、0<v2<15である。
【0400】
本明細書中、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層の形成に用いる、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I-A)及び式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液中の、式(I-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液および式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の各容量比(v1x、v2x)は、例えば、v1x+v2x=15の比率であり、例えば、(v1x:v2x)=(7.5:7.5)である。但し、v1x+v2x=15において、0<v1x<15、0<v2x<15である。
【0401】
本明細書中、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層の形成に用いる、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液に、アルギン酸溶液を添加する場合、アルギン酸溶液を添加した混合溶液における、式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の容量(v1)、式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の容量(v2)およびアルギン酸溶液の容量(v3)の容量比は、例えば、v1+v2+v3=15の比率であり、例えば、(v1:v2:v3)=(5:5:5)、(2.5:2.5:10)、(1:1:13)等の組み合わせである。但し、v1+v2+v3=15において、0<v1<15、0<v2<15、0<v3<15である。
【0402】
本明細書中、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層の形成に用いる、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I-A)及び式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液に、アルギン酸溶液を添加する場合、アルギン酸溶液を添加した混合溶液における、式(I-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の容量(v1x)、式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の容量(v2x)およびアルギン酸溶液の容量(v3x)の容量比は、例えば、v1x+v2x+v3x=15の比率であり、例えば、(v1x:v2x:v3x)=(5:5:5)、(2.5:2.5:10)、(1:1:13)等の組み合わせである。但し、v1x+v2x+v3x=15において、0<v1x<15、0<v2x<15、0<v3x<15である。
【0403】
本明細書中、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層の形成に用いる、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞を含ませた、式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の混合溶液、又は式(I-A)及び式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の混合溶液に、アルギン酸溶液を添加する場合、当該アルギン酸溶液の調製に用いられるアルギン酸(例えば、アルギン酸ナトリウム、等)の分子量は、特に限定はされないが、ゲルろ過クロマトグラフィー法(GPC法)により測定した重量平均分子量が、例えば、約150,000Da~約2,500,000Daの範囲、約300,000Da~約2,000,000Daの範囲、約700,000Da~約2,000,000Da等の範囲である。
【0404】
本明細書中、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層の形成に用いる、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞を含ませた、式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の混合溶液、又は式(I-A)及び式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の混合溶液に、アルギン酸溶液を添加する場合、当該アルギン酸溶液の調製に用いられるアルギン酸(例えば、アルギン酸ナトリウム、等)の分子量は、特に限定はされないが、ゲルろ過クロマトグラフィー法(GPC法)により測定した重量平均分子量が、例えば、約150,000Da~約2,500,000Daの範囲、約300,000Da~約2,500,000Daの範囲、約700,000Da~約1,400,000Da、約800,000Da~約1,500,000Da、約1,400,000~約2,000,000Da、約1,500,000~約2,500,000等の範囲である。
【0405】
ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層を作製する際に用いる、式(I)、式(I-A)、式(II)又は式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液、アルギン酸溶液等を調製する際に用いる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、培地、細胞培養用培地、培養液、等張緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、及び生理食塩水等が挙げられ;好ましくは、培地、細胞培養用培地、培養液、生理食塩水または等張緩衝液である。
【0406】
7.カチオン性ポリマー
ポリカチオンとは、1分子中に2個以上のカチオン性基を有する化合物をいい、カチオン性基とは、カチオン基又はカチオン基に誘導され得る基をいう。カチオン性基としては、例えば、アミノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基等のモノアルキルアミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;イミノ基;グアニジノ基、等の基が挙げられる。アミノ基はプロトンが配位結合した-NH3
+基であってもよい。
【0407】
本明細書中、カチオン性ポリマーとは、1分子中に2個以上のカチオン性基を有するポリマーをいう。カチオン性ポリマーとしては、カチオン性基を有するモノマーを重合させたものが挙げられる。また、カチオン性ポリマーは、水に溶解することが可能な親水性を有し、水中でカチオン性基が解離することにより正電荷を帯びるという特性を有するものが好ましい。カチオン性ポリマーとしては、特に1分子中に2個以上のアミノ基を有するポリマーが好ましい。
【0408】
本明細書中、カチオン性ポリマーとしては、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞を含む、式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を用いて架橋反応を行うことにより形成される架橋アルギン酸ゲルファイバ、又は抗体、生理活性物質等を産生できる細胞を含む、式(I-A)及び式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を用いて架橋反応を行うことにより形成される架橋アルギン酸ゲルファイバの表面において、当該架橋アルギン酸ゲルファイバが有するカルボキシル基とカチオン性ポリマーのカチオン性基とが静電的相互作用により、当該架橋アルギン酸ゲルファイバの表面がカチオン性ポリマーにて被覆される(
図2を参照)ことで、架橋アルギン酸ゲルファイバの強度を高めることができる物質であることが好ましい。また、カチオン性ポリマーは、コア層に含まれる、抗体、生理活性物質等を産生する細胞から産生された抗体、生理活性物質等が、コア層を被覆したカチオン性ポリマー(ポリマー層)を透過して、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの外に放出できる、物質であることが好ましい。
【0409】
本明細書中、カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリアミノ酸(塩基性アミノ酸の重合体)、塩基性多糖類(例えば、キトサン等)、塩基性ポリマー(ポリメチレン-CO-グアニジン(PMCG)、ポリアリルアミン(PAA)、ポリビニルアミン(PVA)、ポリエチレンイミン、アリルアミン-ジアリルアミン共重合体およびアリルアミン-マレイン酸共重合体等)のカチオン性ポリマーが挙げられ、好ましくは、ポリアミノ酸であるポリ-L-オルニチン(PLO)、ポリ-D-オルニチン(PDO)、ポリ-DL-オルニチン、ポリ-D-リジン(PDL)、ポリ-L-リジン(PLL)、ポリ-DL-リジン、ポリ-L-アルギニン(PLA)、ポリ-D-アルギニン(PDA)、ポリ-DL-アルギニン、ポリ-L-ホモアルギニン(PLHA)、ポリ-D-ホモアルギニン(PDHA)、ポリ-DL-ホモアルギニン、ポリ-L-ヒスチジン(PLH)、ポリ-D-ヒスチジン(PDH)、及びポリ-DL-ヒスチジン;塩基性ポリマーである、ポリメチレン-CO-グアニジン(PMCG)、ポリアリルアミン(PAA)及びポリエチレンイミンからなる群から選ばれるカチオン性ポリマーであり;より好ましくは、ポリ-L-オルニチン(PLO)、ポリ-L-リジン(PLL)、ポリメチレン-CO-グアニジン(PMCG)、ポリアリルアミン(PAA)又はポリエチレンイミンであり;更に好ましくは、ポリ-L-オルニチン(PLO)、ポリメチレン-CO-グアニジン(PMCG)又はポリエチレンイミンである。
【0410】
本明細書中、カチオン性ポリマーを含む溶液を調製する際に用いるカチオン性ポリマーとしては、例えば、前記ポリアミノ酸、塩基性多糖類、塩基性ポリマー及びそれらの塩(塩酸塩、臭化水素酸塩等)が挙げられる。前記、カチオン性ポリマーは市販品または市販品から調製されたものを使用することが可能である。
【0411】
本明細書中、カチオン性ポリマーの重合度は、特に限定されないが、例えば、50~6,000の重合度、50~2,000の重合度、100~1,500の重合度等が、挙げられる。ポリ-L-オルニチンの場合、例えば、130~1,300の重合度であり、ポリアリルアミンの場合、例えば、50~1,800の重合度であり、キトサンの場合、例えば、60~6,000の重合度である。
【0412】
本明細書中、カチオン性ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、例えば、500~1,000,000の範囲内、1,000~500,000の範囲内、3,000~300,000の範囲内、5,000~100,000の範囲内、10,000~50,000の範囲内、等が、挙げられる。カチオン性ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
【0413】
例えば、ポリ-L-オルニチンの場合、市販品のポリ-L-オルニチン臭化水素酸塩[例えば、分子量:70,000~150,000(富士フィルム-和光純薬製)、分子量:15,000~30,000、30,000~70,000、5,000~15,000(Sigma-Aldrich製)等]を使用することができ;例えば、ポリアリルアミンの場合、市販品のポリアリルアミン[例えば、分子量:1,600、3,000、5,000、8,000、15,000、25,000(日東紡製)、~15,000、~65,000(Sigma-Aldrich製)等]、市販品のポリアリルアミン塩酸塩[例えば、分子量:1,600、3,000、5,000、15,000、100,000(日東紡製)、~17,500、50,000(Sigma-Aldrich製)等]を使用することができ;例えば、キトサンの場合、市販品のキトサン[例えば、分子量:~15,000(富士フィルム-和光純薬製)、5,000、50,000、100,000、160,000、180,000(Sigma-Aldrich製)等]を使用することができる。
【0414】
カチオン性ポリマーの1つであるキトサンは、キチンの脱アセチル化物であり、その水溶性の観点より、その脱アセチル化度が、例えば、40~100%の範囲内、45~90%の範囲内、または50~80%の範囲内等のものを用いることができる。
【0415】
カチオン性ポリマーを含む溶液の濃度は、特に限定されないが、アルギン酸ゲルファイバの表面を均一にコーティングすることができる濃度であればよく、例えば、約0.01~約10.0重量%、約0.01~約5.0重量%、約0.02~約1.0重量%の濃度が挙げられ、好ましくは、約0.02~約5.0重量%、より好ましくは約0.05~約1.0重量%の濃度である。
【0416】
カチオン性ポリマーを含む溶液の粘度は、特に限定されないが、例えば、10.0~500.0mPa・sの範囲内、20.0~300.0mPa・s の範囲内、50.0~200.0mPa・sの範囲内等である。
【0417】
カチオン性ポリマーを含む溶液には、2種類以上のカチオン性ポリマーを併用することが可能である。
【0418】
カチオン性ポリマーを含む溶液の溶媒としては、カチオン性ポリマーを溶解できるものであれば、特に限定されないが、例えば、水(水道水、純水(例えば、蒸留水、イオン交換水、RO水、RO-EDI水、等)、超純水(MilliQ水))、無機塩類の水溶液(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、生理食塩水等)等が挙げられ、カチオン性ポリマーの電荷量をより多くできる、超純水、水又は生理食塩水が好ましい。
【0419】
8.コア層に含まれる細胞
本明細書中、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に封入できる細胞としては、特に制限されないが、例えば、抗体(ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、マウス抗体等の各種のモノクローナル抗体又はそれらのバイスペシフィック抗体、低分子化抗体、糖鎖改変抗体等の各種の改変型抗体)産生細胞、生理活性物質(酵素、サイトカイン、ホルモン、血液凝固系因子、ワクチン等)産生細胞、医薬品原料、化学原料、食品原料等として有用な各種の有用物質を産生できる細胞が挙げられる。好ましくは、抗体産生細胞または生理活性物質産生細胞である。
【0420】
本明細書中、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に封入できる抗体産生細胞としては、抗体を産生するB細胞から得られたハイブリドーマ(抗体産生ハイブリドーマ)、または抗体発現ベクターにより形質転換された培養細胞(抗体産生遺伝子組換え細胞)が挙げられる。
【0421】
本明細書中、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に封入できる生理活性物質産生細胞としては、生理活性物質発現ベクターにより形質転換された培養細胞(生理活性物質産生遺伝子組換え細胞)が挙げられる。
【0422】
これらの遺伝子組換えの宿主として用いられる培養細胞は、特に限定されることは無いが、細菌もしくは酵母等の微生物、植物細胞、昆虫細胞又は動物細胞が挙げられる。
【0423】
宿主として用いられる微生物としては、例えば、大腸菌、出芽酵母、分裂酵母又はピキア酵母等が挙げられ、宿主として用いられる昆虫細胞としては、例えば、Sf9細胞、Sf21細胞又はHigh five細胞等が挙げられる。
【0424】
宿主として用いられる動物細胞としては、例えば、CHO細胞、CHO細胞亜株(CHO-K1細胞、CHO-DG44細胞、CHO-DXB11細胞、又は糖鎖を改変させるように形質転換されたCHO細胞等)、COS細胞、Sp2/0細胞、NS0細胞、SP2細胞、PERC6細胞、YB2/0細胞、YE2/0細胞、1R983F細胞、Namalwa細胞、Wil-2細胞、Jurkat細胞、Vero細胞、Molt-4細胞、HEK293細胞、BHK細胞、HT-1080細胞、KGH6細胞、P3X63Ag8.653細胞、C127細胞、JC細胞、LA7細胞、ZR-45-30細胞、hTERT細胞、NM2C5細胞、又はUACC-812細胞等(これらの細胞は、American Type Culture Collectionから入手可能なATCC細胞系カタログに記載されているものもある)から、適宜選択することができる。なお、本明細書において、特に断りのない限り、「CHO細胞」と記した場合「CHO細胞亜株」も含めた細胞を意味し、他の細胞においても各々の細胞亜株を含めた細胞を意味する。
【0425】
本明細書中、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に封入できる抗体産生細胞としては、好ましくは、抗体発現ベクターにより形質転換された動物細胞であり、すなわち、抗体を産生する遺伝子組換え動物細胞である。又、コア層に封入できる生理活性物質産生細胞としては、好ましくは、生理活性物質発現ベクターにより形質転換された動物細胞であり、すなわち、生理活性物質を産生する遺伝子組換え動物細胞である。
【0426】
それらの宿主として用いられる動物細胞としては、具体的には、CHO細胞、CHO細胞亜株、COS細胞、Sp2/0細胞、NS0細胞、SP2細胞、又はPERC6細胞、HEK293細胞、BHK細胞、HT-1080細胞、又はC127細胞であり;より好ましくは、CHO細胞、CHO細胞亜株、Sp2/0細胞、及びNS0細胞、HEK293細胞、及びBHK細胞からなる群から選択される細胞であり;更に好ましくは、CHO細胞またはCHO細胞亜株である。また、ある態様では、抗体産生細胞の宿主細胞としては、好ましくは、CHO細胞、CHO細胞亜株、Sp2/0細胞、又はNS0細胞であり;より好ましくは、CHO細胞又はCHO細胞亜株である。また、生理活性物質産生細胞の宿主細胞としては、好ましくは、CHO細胞、CHO細胞亜株、HEK293細胞、又はBHK細胞であり;より好ましくは、CHO細胞又はCHO細胞亜株である。
【0427】
本明細書中、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含むことのできる抗体産生細胞としては、特に限定されることは無いが、バイオ医薬品またはバイオ医薬品原料として用いられる抗体を産生する細胞が挙げられる。また、生理活性物質産生細胞としては、特に限定されることは無いが、バイオ医薬品またはバイオ医薬品原料として用いられる生理活性物質を産生する細胞が挙げられる。
【0428】
バイオ医薬品としては、例えば、各種がん、自己免疫疾患・炎症性疾患、眼疾患、血液疾患、脳神経疾患、遺伝性希少疾患、内分泌代謝系疾患、循環器疾患、呼吸器疾患、消化器疾患、皮膚疾患、筋・骨疾患、感染症等の各種疾患に対する医薬品が挙げられる。
【0429】
バイオ医薬品のうち、抗体医薬品の具体的な標的としては、特に限定されることは無いが、C5(補体)、CD3、CD19、CD20、CD22、CD25、CD30、CD33、CD38、CD52、CD79、IL-1β、IL-4R、IL-5、IL-6、IL-6R、IL-12、IL-17、IL-17R、IL-23、IFNAR、PCSK9、CGRP、CGRPR、GD2(ガングリオシド)、HER2、HER3、TROP2、BCMA、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG-3、TIM-3、TIGIT、KIR、SLAMF7、RANKL、TNF-α、BLyS、EGFR、VEGF、VEGFR、FGF、ネクチン、インテグリン、EpCAM、CCR4、TfR、TF、FIXa、FX、GPVI、スクレロスチン、アミロイドβ、IgE、又は各種ウイルス等(これらのサブタイプ、サブユニット、断片も含む)が挙げられ、これら標的に対する抗体を産生する細胞をコア層に含むことができる。
【0430】
本明細書中、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含むことのできる抗体産生細胞としては、特に限定されることは無いが、具体的には、ムロモナブ-CD3、トラスツズマブ、リツキシマブ、パリビズマブ、インフリキシマブ、バシリキシマブ、トシリズマブ、ベバシズマブ、アダリムマブ、セツキシマブ、オマリズマブ、エクリズマブ、パニツムマブ、ウステキヌマブ、ゴリムマブ、カナキヌマブ、デノスマブ、オファツムマブ、ペルツズマブ、ナタリズマブ、ニボルマブ、アレムツズマブ、セクキヌマブ、ラムシルマブ、イピリムマブ、エボロクマブ、メポリズマブ、アリロクマブ、イキセキズマブ、ブロダルマブ、エロツズマブ、ペムブロリズマブ、サリルマブ、ベズロトクスマブ、ベリムマブ、ダラツムマブ、アベルマブ、デュピルマブ、アテゾリズマブ、エミシズマブ、グセルクマブ、デュルバルマブ、ベドリズマブ、ロモソズマブ、リサンキズマブ、ネシツムマブ、ラブリズマブ、ブロスマブ、イサツキシマブ、チルドラキズマブ、サトラリズマブ、ガルカネズマブ、ジヌツキシマブ、フレマネズマブ、エレヌマブ、カシリビマブ、イムデビマブ、アニフロルマブ、ソトロビマブ、オクレリズマブ、ナキシタマブ、アデュカヌマブ、タファシタマブ、マルジェツキシマブ、ガンテネルマブ、チラゴルマブ、クロバリマブ、ネモリズマブ、カツマクソマブ、プラモタマブ、ファリシマブ、ゲムツズマブ、イブリツモマブ、ブレンツキシマブ、イノツズマブ、ポラツズマブ、エンホルツマブ、サシツズマブ、ベランタマブ、ロンカスツキシマブ、チソツマブ、ダトポタマブ、パトリツマブ等の抗体を産生する細胞;モガムリズマブ、ベンラリズマブ、オビヌツズマブ、イネビリズマブ等の改変糖鎖を有する抗体を産生する細胞;ラニビズマブ、イダルシズマブ、ブリナツモマブ、ブロルシズマブ、アブシキシマブ、カプラシズマブ、セルトリズマブ等の抗体断片からなる低分子抗体を産生する細胞等が挙げられる。
【0431】
本明細書中、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含むことのできる抗体産生細胞としては、特に限定されることは無いが、具体的には、抗体産生動物細胞が挙げられ、好ましくは、抗体産生CHO細胞、抗体産生Sp2/0細胞又は抗体産生NS0細胞であり、より好ましくは、抗体産生CHO細胞である。
より具体的には、前記抗体産生動物細胞としては、特に限定されることは無いが、例えば、ムロモナブ-CD3産生CHO細胞、トラスツズマブ産生CHO細胞、リツキシマブ産生CHO細胞、パリビズマブ産生NS0細胞、パリビズマブ産生CHO細胞、インフリキシマブ産生Sp2/0細胞、インフリキシマブ産生CHO細胞、バシリキシマブ産生Sp2/0細胞、バシリキシマブ産生CHO細胞、トシリズマブ産生CHO細胞、ベバシズマブ産生CHO細胞、アダリムマブ産生CHO細胞、セツキシマブ産生Sp2/0細胞、セツキシマブ産生CHO細胞、オマリズマブ産生CHO細胞、エクリズマブ産生NS0細胞、エクリズマブ産生CHO細胞、パニツムマブ産生CHO細胞、ウステキヌマブ産生Sp2/0細胞、ウステキヌマブ産生CHO細胞、ゴリムマブ産生Sp2/0細胞、ゴリムマブ産生CHO細胞、カナキヌマブ産生Sp2/0細胞、カナキヌマブ産生CHO細胞、デノスマブ産生CHO細胞、オファツムマブ産生NS0細胞、オファツムマブ産生CHO細胞、ペルツズマブ産生CHO細胞、ナタリズマブ産生NS0細胞、ナタリズマブ産生CHO細胞、ニボルマブ産生CHO細胞、アレムツズマブ産生CHO細胞、セクキヌマブ産生CHO細胞、ラムシルマブ産生NS0細胞、ラムシルマブ産生CHO細胞、イピリムマブ産生CHO細胞、エボロクマブ産生CHO細胞、メポリズマブ産生CHO細胞、アリロクマブ産生CHO細胞、イキセキズマブ産生CHO細胞、ブロダルマブ産生CHO細胞、エロツズマブ産生NS0細胞、エロツズマブ産生CHO細胞、ペムブロリズマブ産生CHO細胞、サリルマブ産生CHO細胞、ベズロトクスマブ産生CHO細胞、ベリムマブ産生NS0細胞、ベリムマブ産生CHO細胞、ダラツムマブ産生CHO細胞、アベルマブ産生CHO細胞、デュピルマブ産生CHO細胞、アテゾリズマブ産生CHO細胞、エミシズマブ産生CHO細胞、グセルクマブ産生CHO細胞、デュルバルマブ産生CHO細胞、ベドリズマブ産生CHO細胞、ロモソズマブ産生CHO細胞、リサンキズマブ産生CHO細胞、ネシツムマブ産生NS0細胞、ネシツムマブ産生CHO細胞、ラブリズマブ産生CHO細胞、ブロスマブ産生CHO細胞、イサツキシマブ産生CHO細胞、チルドラキズマブ産生CHO細胞、サトラリズマブ産生CHO細胞、ガルカネズマブ産生CHO細胞、ジヌツキシマブ産生Sp2/0細胞、ジヌツキシマブ産生CHO細胞、フレマネズマブ産生CHO細胞、エレヌマブ産生CHO細胞、カシリビマブ産生CHO細胞、イムデビマブ産生CHO細胞、アニフロルマブ産生NS0細胞、アニフロルマブ産生CHO細胞、ソトロビマブ産生CHO細胞、オクレリズマブ産生CHO細胞、ナキシタマブ産生CHO細胞、アデュカヌマブ産生CHO細胞、タファシタマブ産生CHO細胞、マルジェツキシマブ産生CHO細胞、ゲムツズマブ産生NS0細胞、ゲムツズマブ産生CHO細胞、イブリツモマブ産生CHO細胞、ブレンツキシマブ産生CHO細胞、イノツズマブ産生CHO細胞、ポラツズマブ産生CHO細胞、エンホルツマブ産生CHO細胞、サシツズマブ産生Sp2/0細胞、サシツズマブ産生CHO細胞、ベランタマブ産生CHO細胞、ロンカスツキシマブ産生CHO細胞、チソツマブ産生CHO細胞、モガムリズマブ産生CHO細胞、ベンラリズマブ産生CHO細胞、オビヌツズマブ産生CHO細胞、イネビリズマブ産生CHO細胞、ラニビズマブ産生CHO細胞、イダルシズマブ産生CHO細胞、ブリナツモマブ産生CHO細胞、ブロルシズマブ産生CHO細胞、アブシキシマブ産生CHO細胞、カプラシズマブ産生CHO細胞、セルトリズマブ産生CHO細胞、抗GPVI抗体産生CHO細胞等が挙げられ;
【0432】
例えば、前記抗体産生CHO細胞としては、ムロモナブ-CD3産生CHO細胞、トラスツズマブ産生CHO細胞、リツキシマブ産生CHO細胞、パリビズマブ産生CHO細胞、インフリキシマブ産生CHO細胞、バシリキシマブ産生CHO細胞、トシリズマブ産生CHO細胞、ゲムツズマブ産生CHO細胞、ベバシズマブ産生CHO細胞、イブリツモマブ産生CHO細胞、アダリムマブ産生CHO細胞、セツキシマブ産生CHO細胞、ラニビズマブ産生CHO細胞、オマリズマブ産生CHO細胞、エクリズマブ産生CHO細胞、パニツムマブ産生CHO細胞、ウステキヌマブ産生CHO細胞、ゴリムマブ産生CHO細胞、カナキヌマブ産生CHO細胞、デノスマブ産生CHO細胞、モガムリズマブ産生CHO細胞、セルトリズマブ産生CHO細胞、オファツムマブ産生CHO細胞、ペルツズマブ産生CHO細胞、ブレンツキシマブ産生CHO細胞、ナタリズマブ産生CHO細胞、ニボルマブ産生CHO細胞、アレムツズマブ産生CHO細胞、セクキヌマブ産生CHO細胞、ラムシルマブ産生CHO細胞、イピリムマブ産生CHO細胞、エボロクマブ産生CHO細胞、メポリズマブ産生CHO細胞、アリロクマブ産生CHO細胞、イキセキズマブ産生CHO細胞、ブロダルマブ産生CHO細胞、イダルシズマブ産生CHO細胞、エロツズマブ産生CHO細胞、ペムブロリズマブ産生CHO細胞、サリルマブ産生CHO細胞、ベズロトクスマブ産生CHO細胞、ベリムマブ産生CHO細胞、ダラツムマブ産生CHO細胞、アベルマブ産生CHO細胞、デュピルマブ産生CHO細胞、アテゾリズマブ産生CHO細胞、ベンラリズマブ産生CHO細胞、イノツズマブ産生CHO細胞、エミシズマブ産生CHO細胞、グセルクマブ産生CHO細胞、デュルバルマブ産生CHO細胞、オビヌツズマブ産生CHO細胞、ベドリズマブ産生CHO細胞、ロモソズマブ産生CHO細胞、リサンキズマブ産生CHO細胞、ネシツムマブ産生CHO細胞、ラブリズマブ産生CHO細胞、ブロスマブ産生CHO細胞、イサツキシマブ産生CHO細胞、チルドラキズマブ産生CHO細胞、サトラリズマブ産生CHO細胞、ガルカネズマブ産生CHO細胞、ジヌツキシマブ産生CHO細胞、フレマネズマブ産生CHO細胞、エレヌマブ産生CHO細胞、カシリビマブ産生CHO細胞、イムデビマブ産生CHO細胞、アニフロルマブ産生CHO細胞、ソトロビマブ産生CHO細胞、オクレリズマブ産生CHO細胞、ナキシタマブ産生CHO細胞、アデュカヌマブ産生CHO細胞、タファシタマブ産生CHO細胞、マルジェツキシマブ産生CHO細胞、ポラツズマブ産生CHO細胞、エンホルツマブ産生CHO細胞、サシツズマブ産生CHO細胞、ベランタマブ産生CHO細胞、ロンカスツキシマブ産生CHO細胞、チソツマブ産生CHO細胞、イネビリズマブ産生CHO細胞、ブリナツモマブ産生CHO細胞、ブロルシズマブ産生CHO細胞、アブシキシマブ産生CHO細胞、カプラシズマブ産生CHO細胞、抗GPVI抗体産生CHO細胞等が挙げられ;
【0433】
例えば、トラスツズマブ産生CHO細胞、リツキシマブ産生CHO細胞、インフリキシマブ産生CHO細胞、トシリズマブ産生CHO細胞、アダリムマブ産生CHO細胞、ニボルマブ産生CHO細胞、及び抗GPVI抗体産生CHO細胞からなる群から選択されるCHO細胞であり;例えば、トシリズマブ産生CHO細胞である。
【0434】
このようにして産生した抗体を、産生後に修飾や改変することもでき、具体的には、PEG化、薬物の結合修飾、放射標識等が挙げられる。すなわち、PEG化抗体や抗体薬物複合体等の修飾抗体の生産において、原料となる抗体の産生に用いる細胞(原料抗体産生細胞)を、コア層に封入できる細胞として挙げることができる。当該原料抗体産生細胞としては、特に制限されないが、PEG化抗体の原料抗体産生細胞としては、例えば、セルトリズマブ ペゴルの原料抗体断片を産生する細胞、具体的には、セルトリズマブ産生CHO細胞等が挙げられ;抗体薬物複合体の原料抗体産生細胞としては、例えば、ゲムツズマブ オゾガマイシン、イブリツモマブ チウキセタン、トラスツズマブ エムタンシン、トラスツズマブ デルクステカン、ブレンツキシマブ ベドチン、イノツズマブ オゾガマイシン、セツキシマブ サロタロカンナトリウム、ポラツズマブ ベドチン、エンホルツマブベドチン、サシツズマブ ゴビテカン、ベランタマブ マホドチン、ロンカスツキシマブ テシリン、チソツマブ ベドチン、ダトポタマブ デルクステカン、パトリツマブ デルクステカン等の原料抗体を産生する細胞が挙げられ、具体的には、ゲムツズマブ産生NS0細胞、イブリツモマブ産生CHO細胞、トラスツズマブ産生CHO細胞、ブレンツキシマブ産生CHO細胞、イノツズマブ産生CHO細胞、セツキシマブ産生Sp2/0細胞、ポラツズマブ産生CHO細胞、エンホルツマブ産生CHO細胞、サシツズマブ産生Sp2/0細胞、ベランタマブ産生CHO細胞、ロンカスツキシマブ産生CHO細胞、チソツマブ産生CHO細胞等が挙げられる。
【0435】
また、抗体又は抗体断片と他の蛋白質又はペプチドとの融合蛋白質を産生する細胞を、コア層に含むこともでき、例えば、パビナフスプアルファ産生CHO細胞、ビントラフスプアルファ産生CHO細胞等が挙げられる。
「抗体」に関しては、「12.抗体の分類」及び「13.抗体・生理活性物質の産生及び精製法」にて詳述する。
【0436】
本明細書中、生理活性物質とは、生物に対して生理作用や薬理作用を発現する物質及び化合物群を意味する。生物に対して生理作用や薬理作用を発現する物質及び化合物群としては、例えば、酵素、インスリン、アルカロイド、サイトカイン(インターフェロン、インターロイキン、ケモカイン、腫瘍壊死因子等)、植物ホルモン、神経伝達物質、フェロモン、ホルモン(動物ホルモン)、成長因子、成長調節因子、成長阻害因子、活性化因子、造血因子、血液凝固系因子、ワクチン(弱毒化ワクチン、不活化ワクチン、蛋白ワクチン等)等が挙げられる。
【0437】
また、これら物質の受容体、細胞表面抗原、細胞表面受容体及びそれらのリガンドも、生理作用や薬理作用を発現する物質であり、生理活性物質に含まれる。さらに、生体が本来有する生理活性物質に加え、生理活性物質を修飾や改変した物質、生理活性を活性化又は阻害する物質、複数の生理活性物質又はその一部領域や断片を組合わせた融合蛋白質も、生理作用や薬理作用を発現する物質である限りは、生理活性物質に含まれ、本明細書においては、これらも含めて生理活性物質と称する。本明細書中、生理活性物質としては、好ましくは蛋白性の生理活性物質、すなわち蛋白質又はペプチドからなる生理活性物質である。
【0438】
本明細書中、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含むことのできる生理活性物質産生細胞としては、特に限定されることは無いが、前述の通り、バイオ医薬品またはバイオ医薬品原料として用いられる生理活性物質を産生する細胞が挙げられる。
【0439】
バイオ医薬品として用いられる生理活性物質としては、特に限定されることは無いが、例えば、t-PA、グルコセレブロシダーゼ、ガラクトシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、イズロニダーゼ、グルコシダーゼ、スルファターゼ、尿酸オキシダーゼ、DNA分解酵素、アデノシンデアミナーゼ、トリペプチジルペプチダーゼ、ヒアルロニダーゼ、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ、アルカリホスファターゼ等の酵素;FVIIa、FVIII、FIX、FXIII、トロンボモジュリン、アンチトロンビン、アルブミン等の血液凝固系因子及び血液関連蛋白;インスリン、成長ホルモン、利尿ペプチド、性腺刺激ホルモン、GLP-1、GLP-2、副甲状腺ホルモン、レプチン等のホルモン;IFN-α、IFN-β、IFN-γ等のインターフェロン;エリスロポエチン、トロンボポエチン等の造血因子;G-CSF、IL-2、IL-10、IL-2R、IL-4R、IL-5R、IL-6R、IL-17R、TNFR、EGF、EGFR、FGF、VEGF、VEGFR、PDGF、PDGFR、TGF-β等のサイトカイン及びそれらの受容体;CTLA-4等の細胞表面抗原、細胞表面受容体及びそれらのリガンド;B型肝炎ウイルス由来抗原、パピローマウイルス由来抗原、水痘帯状疱疹ウイルス由来抗原、SARS-CoV-2由来抗原等のワクチン用蛋白・ペプチド等が挙げられ、これらのサブタイプ、サブユニット、活性断片も挙げられ、これら生理活性物質を産生する細胞をコア層に含むことができる。
【0440】
本明細書中、生理活性物質としては構造改変された物質も含むが、例えば、物質の活性を変化させるようなアミノ酸配列の改変を加えた物質が挙げられ、具体的には、インスリンアナログ、GLP-1アナログ、エリスロポエチンアナログ等が挙げられる。また、本来の物質の一部領域や断片のアミノ酸配列からなる物質も含まれ、それら一部領域や断片のアミノ酸配列を複数配列組合せた物質であっても良く;具体的には、インスリンアナログ、FVIIIアナログ、副甲状腺ホルモンアナログ等が挙げられる。さらに、二種類以上の物質やその一部領域や断片を組合わせた融合蛋白質も含まれ、例えば、酵素と抗体の融合蛋白質、サイトカイン受容体と抗体Fc部分の融合蛋白質、細胞表面抗原細胞外ドメインと抗体Fc部分の融合蛋白質、血液凝固系因子と抗体Fc部分の融合蛋白質、血液凝固系因子と血漿タンパクの融合蛋白質等が挙げられる。これら構造改変された生理活性物質を産生する細胞をコア層に含むことができる。
【0441】
このようにして産生した生理活性物質を、産生後に修飾や改変することもでき、具体的には、PEG化、糖鎖修飾、薬物の結合修飾、放射標識等が挙げられる。すなわち、PEG化蛋白質、脂肪酸付加ペプチド等の修飾蛋白質・ペプチドの生産において、原料となる蛋白質・ペプチドの生産に用いることができ、具体的には、PEG化FVIII、PEG化エリスロポエチン、脂肪酸付加インスリンアナログ等の原料蛋白質・ペプチドを産生する細胞が挙げられ、これら原料となる生理活性物質を産生する細胞(原料生理活性物質産生細胞)をコア層に含むことができる。
【0442】
本明細書中、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含むことのできる生理活性物質産生細胞としては、特に限定されることは無いが、具体的には、アルテプラーゼ、モンテプラーゼ、イミグルセラーゼ、ベラグルセラーゼ、アガルシダーゼ、ラロニダーゼ、アルグルコシダーゼ、アバルグルコシダーゼ、イデュルスルファーゼ、ガルスルファーゼ、エロスルファーゼ、ラスブリカーゼ、ドルナーゼ、セルリポナーゼ、グルカルピダーゼ、ヒアルロニダーゼ、アスホターゼ等の酵素を産生する細胞;エプタコグ、オクトコグ、ルリオクトコグ、ツロクトコグ、ロノクトコグ、ダモクトコグ、シモクトコグ、ノナコグ、アルブトレペノナコグ、カトリデカコグ、エフラロクトコグ、エフトレノナコグ、トロンボモデュリン、アンチトロンビン、ボニコグ、アルブミン等の血液凝固系因子及び血液関連蛋白を産生する細胞;インスリン、インスリン リスプロ、インスリン アスパルト、インスリン グラルギン、インスリン デテミル、インスリン グルリジン、インスリン デグルデク、ソマトロピン、ソマプシタン、メカセルミン、カルペリチド、ボソリチド、グルカゴン、ホリトロピン、コリオゴナドトロピン、デュラグルチド、リラグルチド、セマグルチド、テデュグルチド、テリパラチド、メトレレプチン等のホルモンを産生する細胞;インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、インターフェロンベータ-1a、インターフェロンベータ-1b、インターフェロンガンマ-1a等のインターフェロンを産生する細胞;エポエチン、ダルベポエチン、ロミプロスチム等の造血因子を産生する細胞;フィルグラスチム、レノグラスチム、テセロイキン、トラフェルミン、ベルフェルミン、エタネルセプト、アフリベルセプト、デニロイキン ジフチトクス等のサイトカイン及びそれらの受容体を産生する細胞;アバタセプト等の細胞表面抗原、細胞表面受容体及びそれらのリガンドを産生する細胞が挙げられ;これらのサブタイプ、サブユニット、活性断片を産生する細胞も挙げられる。
【0443】
本明細書中、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含むことのできる生理活性物質産生細胞としては、特に限定されることは無いが、具体的には、生理活性物質産生動物細胞が挙げられ、好ましくは、生理活性物質産生CHO細胞、生理活性物質産生HEK293細胞又は生理活性物質産生BHK細胞であり、より好ましくは、生理活性物質産生CHO細胞である。
より具体的には、前記生理活性物質産生動物細胞としては、特に限定されることは無いが、例えば、アルテプラーゼ産生CHO細胞、イミグルセラーゼ産生CHO細胞、アガルシダーゼ産生CHO細胞、ラロニダーゼ産生CHO細胞、アルグルコシダーゼ産生CHO細胞、アバルグルコシダーゼ産生CHO細胞、イデュルスルファーゼ産生CHO細胞、ガルスルファーゼ産生CHO細胞、エロスルファーゼ産生CHO細胞、ドルナーゼ産生CHO細胞、セルリポナーゼ産生CHO細胞、ヒアルロニダーゼ産生CHO細胞、アスホターゼ産生CHO細胞、ルリオクトコグ産生CHO細胞、ツロクトコグ産生CHO細胞、ロノクトコグ産生CHO細胞、ノナコグ産生CHO細胞、アルブトレペノナコグ産生CHO細胞、トロンボモデュリン産生CHO細胞、アンチトロンビン産生CHO細胞、ボニコグ産生CHO細胞、ホリトロピン産生CHO細胞、コリオゴナドトロピン産生CHO細胞、デュラグルチド産生CHO細胞、インターフェロンベータ-1a産生CHO細胞、エポエチン産生CHO細胞、ダルベポエチン産生CHO細胞、レノグラスチム産生CHO細胞、エタネルセプト産生CHO細胞、アフリベルセプト産生CHO細胞、アバタセプト産生CHO細胞等の生理活性物質産生CHO細胞;シモクトコグ産生HEK293細胞、エフラロクトコグ産生HEK293細胞、エフトレノナコグ産生HEK293細胞等の生理活性物質産生HEK293細胞;モンテプラーゼ産生BHK細胞、エプタコグ産生BHK細胞、オクトコグ産生BHK細胞、ダモクトコグ産生BHK細胞等の生理活性物質産生BHK細胞;ベラグルセラーゼ産生HT-1080細胞、アガルシダーゼ産生HT-1080細胞、イデュルスルファーゼ産生HT-1080細胞等の生理活性物質産生HT-1080細胞;ホリトロピン産生PERC6細胞等の生理活性物質産生PERC6細胞等が挙げられ;
【0444】
例えば、前記生理活性物質産生CHO細胞としては、アルテプラーゼ産生CHO細胞、アルグルコシダーゼ産生CHO細胞、ルリオクトコグ産生CHO細胞、デュラグルチド産生CHO細胞、インターフェロンベータ-1a産生CHO細胞、ダルベポエチン産生CHO細胞、エタネルセプト産生CHO細胞、アフリベルセプト産生CHO細胞及びアバタセプト産生CHO細胞等が挙げられる。
【0445】
なお、ここに挙げた生理活性物質は、前述のように産生後に修飾や改変を加えられた物質名を記している場合があるが、それらはその原料となる生理活性物質を産生する細胞をコア層に含むことができる。例えば、エラペグアデマーゼ、ペグバリアーゼ、ルリオクトコグ アルファ ペゴル、ツロクトコグ アルファ ペゴル、ダモクトコグ アルファ ペゴル、ノナコグ ベータ ペゴル、ペグビソマント、ペグインターフェロン アルファ-2a、ペグインターフェロン アルファ-2b、エポエチン ベータ ペゴル、ペグフィルグラスチム、ペグベルフェルミン等のPEG化された生理活性物質においては、それらの原料となる生理活性物質を産生する細胞をコア層に含むことができる。
【0446】
生理活性物質を産生できる細胞としては、前述の生理活性物質産生遺伝子組換え細胞に加え、天然の細胞や、人工的な改変操作を施された細胞も含まれ、複数個の細胞からなる細胞塊も含まれ、例えば、インスリン分泌細胞、膵島、膵島細胞、ドーパミン分泌細胞、脳下垂体細胞、成長ホルモン分泌細胞、副甲状腺細胞、神経成長因子分泌細胞、血液凝固因子分泌細胞、肝細胞、上皮小体細胞、エリスロポエチン分泌細胞、ノルエピネフリン分泌細胞等が挙げられる。本明細書中、生理活性物質を産生する細胞としては、ある態様においては、インスリン分泌細胞、膵島又は膵島細胞、又は膵β細胞由来のMIN6細胞である。
【0447】
「インスリン分泌細胞」とは、インスリンを分泌する機能を有する細胞を意味し、例えば、膵島を構成する細胞においては、インスリンを分泌するβ細胞を意味する。また、「インスリン分泌細胞」は、分化、成熟や改変などによってインスリン分泌機能を有するようになった細胞であってもよく、例えば、iPS細胞、ES細胞、又は体性幹細胞(例えば、間葉系幹細胞)等の幹細胞を分化させて得られたインスリン分泌機能を有する細胞、幼若細胞や前駆細胞を成熟させて得られたインスリン分泌機能を有する細胞、及び、遺伝子組み換えによりインスリン分泌機能を付与された細胞も含み得る。ここで、当該細胞を分化や成熟させることには、当該細胞を培養させることが含まれ、すなわち、分化又は成熟させて得られた細胞とは、培養されて得られた細胞を含み得る。
「膵島」とは、別名ランゲルハンス氏島とも呼ばれる、平均約2000個の膵島細胞より構成される細胞塊である。膵島は、グルカゴンを分泌するα細胞、インスリンを分泌するβ細胞、ソマトスタチンを分泌するδ細胞、グレリンを分泌するε細胞、及び膵ポリペプチドを分泌するPP(pancreatic polypeptide;膵ポリペプチド)細胞の5種の細胞から構成される。
【0448】
本明細書において、「膵島細胞」とは、上記の膵島を構成する5種類の細胞うちの少なくとも1種類の細胞を含むものであればよいが、少なくともβ細胞を含むことが好ましい。いくつかの態様では、膵島細胞としては、α細胞、β細胞、δ細胞、ε細胞、及びPP細胞の全てを含む混合物でもよく、膵島に含まれた状態のものでもよい。
【0449】
また、「膵島細胞」は、分化、成熟や改変などにより膵島細胞になったものであってもよい。この場合、「膵島細胞」には、例えば、iPS細胞、ES細胞、及び体性幹細胞(例えば、間葉系幹細胞)等の幹細胞を分化させて得られた膵島細胞、及び幼若細胞や前駆細胞を成熟させて得られた膵島細胞も含み得る。
【0450】
「インスリン分泌細胞」又は「膵島(膵島細胞を含む)」としては、移植用途として用いる場合は、患者に移植した際に、患者の病的状態を回復することができる程度の生存性と機能とを有することが好ましい。インスリン分泌細胞、膵島又は膵島細胞の機能としては、例えば、インスリンを分泌することが挙げられ、移植後においてもグルコース応答性が維持されていることが好ましい。
【0451】
「インスリン分泌細胞」、「膵島」又は「膵島細胞」のドナーは、動物、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳類であり、具体的にはヒト、ブタ、サル、ラット又はマウスなどが挙げられ、更に好ましくはヒト又はブタである。「インスリン分泌細胞」、「膵島」又は「膵島細胞」のドナーは、いくつかの態様では、ドナー不足解消の観点からブタである。「インスリン分泌細胞」、「膵島」又は「膵島細胞」としては、ドナーである動物から得られた膵島又は膵島細胞、あるいはドナー由来細胞から得られたインスリン分泌細胞又は膵島細胞のいずれかでもよく、例えば、ヒト由来のES細胞またはiPS細胞から分化したインスリン分泌細胞又は膵島細胞でもよい。
【0452】
「インスリン分泌細胞」、「膵島」又は「膵島細胞」がブタ由来である場合には、成体のブタ膵島、又は、胎生期、新生児期、もしくは周産期のブタ膵島、又は当該膵島から得られたインスリン分泌細胞もしくは膵島細胞が挙げられる。当該膵島は適宜培養してから使用するようにしてもよく、胎生期、新生児期、もしくは周産期のブタ膵島を成熟させた膵島を使用してもよい。
【0453】
血液凝固因子分泌細胞としては、例えば、第VIII因子分泌細胞及び第IX因子分泌細胞を挙げることができる。
【0454】
9.ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造方法
下記の記載において、式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体、式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体は、各々、式(I-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体、式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体へ置き換えることができる。
ここでは、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞を含み、式(I)及び式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体を用いて架橋反応を行うことにより形成される架橋アルギン酸ゲル(コア層)がカチオン性ポリマー(カチオン性ポリマー層)で被覆された、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造方法が提供される。例えば、
図3に示される装置XXを用いることを含む当該ファイバの製造方法が提供される。
【0455】
以下に、前記ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造方法について説明する。
【0456】
前記ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造方法は、特に限定されないが、例えば、
図3に示される装置XXを用いて行う。ここでの装置XXは、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを作製するのに好ましく用いられる装置である。
【0457】
装置XXは、例えば、
図3に示されるように、導入口を1つ、排出口を1つ備える微細流路を作ることが可能な装置であり、導入口から溶液を導入し、適当な速さで流すことで、排出口から溶液がファイバ状(繊維状)となり排出される。
【0458】
装置XXは、例えば、
図3に示されるような押出筒YY等を用いて、装置XXの導入口から導入した、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液を、押し出すことで装置XXの排出口から、当該混合溶液を射出することができる。
【0459】
装置XXと押出筒YYを備えるものとして、例えば、注射筒を用いることができる。注射筒の場合、装置XXが外筒となり、装置XXに導入された溶液を排出口から押し出すための押出筒YYが内筒になる。注射筒を用いる場合、ガラス製またはプラスチック製の注射筒を用いることができる。
【0460】
図3に示すように、装置XXの排出口2より排出されるファイバ状物質を受ける容器として、2価金属イオンを含む溶液を含むビーカー等の容器DDが用いられる。又、架橋アルギン酸ゲルファイバCLAの表面を、カチオン性ポリマーで被覆するための容器として、カチオン性ポリマーを含む溶液を含むビーカー等の容器EEが用いられる。
【0461】
図3は、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造過程の1つの態様を説明する模式図である。一例として、細胞(抗体、生理活性物質等を産生できる細胞)を含み、式(I)及び式(II)で表される化学修飾アルギン酸誘導体の混合溶液を用いる作製方法について説明する。
【0462】
ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、例えば下記工程(S)~(2)を含む方法により製造することができる。
工程(S):装置XXの導入口1から、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液を導入する工程、
工程(1):装置XXの排出口2から、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体が含まれる混合溶液を、2価金属イオンを含む溶液中に射出し、2価金属イオンに接触させ、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞を含む架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA)を得る工程、
工程(2):工程(1)で得られた抗体、生理活性物質等を産生できる細胞を含む架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA)を、カチオン性ポリマーを含む溶液に接触させることで、カチオン性ポリマー層で被覆して形成されるポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(CFB)を得る工程。
【0463】
工程(S)では、前述のコア層に含まれる細胞で説明される、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞を、式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む溶液に懸濁または溶解させる。この際、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞以外に、アルギン酸溶液、培地、培養液、コラーゲン溶液、メチルセルロース、スクロース溶液等の成分を添加することも可能である。
工程(1)では、工程(S)で調製した抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液(または懸濁液)を、2価金属イオンを含む溶液へゆっくりと放出することで、放出された溶液が順次、ゲル化していくことにより、ファイバー状(繊維状)の構造物を製造することができる。2価金属イオンを含む溶液と接触させることにより、式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の間でイオン架橋が進むのと同時にHuisgen反応による化学架橋も進み、ゲルが作製できる。
工程(2)では、工程(1)で得られた抗体、生理活性物質等を産生できる細胞を含む架橋アルギン酸ゲルファイバを、カチオン性ポリマーを含む溶液に接触させることにより、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞を含む架橋アルギン酸ゲルファイバの表面がカチオン性ポリマー層で被覆される。
前記(S)~(2)の工程を行うことにより、本発明のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(CFB)を製造することができる。
【0464】
本明細書において、「接触」とは、ある溶液(例えば、化学修飾アルギン酸誘導体の溶液)またはゲル(例えば、架橋アルギン酸ゲル)を別の溶液(例えば、2価金属イオンを含む溶液、カチオン性ポリマーを含む溶液)に浸漬または添加すること等を意味する。
【0465】
装置XXの排出口2から射出される抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液の流速(射出速度)は、例えば、約100~約10000μL/分程度であってもよい。例えば、抗GPVI抗体産生CHO細胞又はトシリズマブ産生CHO細胞をコア層に含む、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを作製する場合の流速は、例えば、250μL/分、4mL/分、10mL/分等であり、MIN6細胞をコア層に含む、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを作製する場合の流速は、例えば、125μL/分である。流速(射出速度)はシリンジポンプ等を用いて調整することが可能であり、様々なサイズのファイバーを製造することが可能になる。又、装置XXの排出口2の大きさ(径)を変化させることにより、コア層の直径を調整できたファイバーを製造することも可能となる。
【0466】
装置XXの排出口2には、ルアーロック用ニードル(金属製等の材質)、シリコンチューブ、ガラスキャピラリ等を適宜組み合わせて接続して、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液を2価金属イオンを含む溶液へ放出することができる。
【0467】
装置XXの導入口1から導入される抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液は、例えば、前記態様[1]に記載の式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を用いて、溶媒(例えば、培地、細胞培養用培地、培養液、等張緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、及び生理食塩水等)を添加して、所定の濃度(例えば、各化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の濃度が約0.01~約1.5重量%、式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の混合溶液の濃度が約0.02~約2.0重量%)の式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の混合溶液を調製する。
【0468】
装置XXの導入口1から導入される抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液にアルギン酸溶液を添加する場合、当該式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液の濃度とアルギン酸溶液の濃度の総濃度は、例えば、約0.5~約2.0重量%の範囲に調整される。
【0469】
装置XXの導入口1から導入される、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液にアルギン酸溶液を添加する場合、当該式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液の濃度(C1(重量%))とアルギン酸溶液の濃度(C2(重量%))の組合せは、特に限定されないが、
例えば、0<C2(重量%)≦約1.98(重量%)、
0<C1(重量%)<約2.0(重量%)-C2(重量%)、
0<C1+C2(重量%)≦約2.0(重量%)
で表される式を満たす範囲の組合せであり、
例えば、(C1:C2)=(約0.2:約1.3)、(約0.5:約1.0)、(約1.0:約0.5)、(約0.66:約1.34)、(約0.34:約0.66)、(約0.16:約0.34)等の組み合わせが挙げられる。これら濃度以外にも、C1およびC2の濃度を適宜組み合わせて調製することができる。
【0470】
装置XXの導入口1から導入される、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I-A)及び式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液にアルギン酸溶液を添加する場合、当該式(I-A)及び式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液の濃度(C1x(重量%))とアルギン酸溶液の濃度(C2x(重量%))の組合せは、特に限定されないが、
例えば、0<C2x(重量%)≦約1.98(重量%)、
0<C1x(重量%)<約2.0(重量%)-C2x(重量%)、
0<C1x+C2x(重量%)≦約2.0(重量%)
で表される式を満たす範囲の組合せであり;
例えば、(C1x:C2x)=(約0.2:約1.3)、(約0.5:約1.0)、(約1.0:約0.5)、(約0.66:約1.34)、(約0.34:約0.66)、(約0.16:約0.34)等の組み合わせが挙げられる。これら濃度以外にも、C1およびC2の濃度を適宜組み合わせて調製することができる。
【0471】
装置XXの導入口1から導入される、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液にアルギン酸溶液を添加する場合、当該式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の濃度(C1A(重量%))、式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の濃度(C1N(重量%))及びアルギン酸溶液の濃度(C2(重量%))の組合せは、特に限定されないが、例えば、
0<C2(重量%)≦約1.98(重量%)、
0<C1A(重量%)<約2.0(重量%)-C2(重量%)、
0<C1N(重量%)<約2.0(重量%)-C2(重量%)、
0<C1A+C1N+C2(重量%)≦約2.0(重量%)
で表される式を満たす範囲の組合せであり;
例えば、(C1A:C1N:C2)=(約0.1:約0.1:約1.3)、(約0.25:約0.25:約1.0)、(約0.5:約0.5:約0.5)、(約0.33:約0.33:約1.34)、(約0.17:約0.17:約0.66)、(約0.08:約0.08:約0.34)等の組み合わせが挙げられる。これら濃度以外にも、C1A、C1N、C2の濃度を適宜組み合わせて調製することができる。
【0472】
装置XXの導入口1から導入される、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I-A)及び式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液にアルギン酸溶液を添加する場合、当該式(I-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の濃度(C1Ax(重量%))、式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の濃度(C1Nx(重量%))及びアルギン酸溶液の濃度(C2x(重量%))の組合せは、特に限定されないが、例えば、
0<C2x(重量%)≦約1.98(重量%)、
0<C1Ax(重量%)<約2.0(重量%)-C2x(重量%)、
0<C1Nx(重量%)<約2.0(重量%)-C2x(重量%)、
0<C1Ax+C1Nx+C2x(重量%)≦約2.0(重量%)
で表される式を満たす範囲の組合せであり;
例えば、(C1Ax:C1Nx:C2x)=(約0.1:約0.1:約1.3)、(約0.25:約0.25:約1.0)、(約0.5:約0.5:約0.5)、(約0.33:約0.33:約1.34)、(約0.17:約0.17:約0.66)、(約0.08:約0.08:約0.34)等の組み合わせが挙げられる。これら濃度以外にも、C1Ax、C1Nx、C2xの濃度を適宜組み合わせて調製することができる。
【0473】
装置XXの導入口1から導入される、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液中の、式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液および式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の各容量比(v1、v2)は、例えば、v1+v2=15の比率であり、例えば、(v1:v2)=(7.5:7.5)である。但し、v1+v2=15において、0<v1<15、0<v2<15である。
【0474】
装置XXの導入口1から導入される、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I-A)及び式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液中の、式(I-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液および式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の各容量比(v1x、v2x)は、例えば、v1x+v2x=15の比率であり、例えば、(v1x:v2x)=(7.5:7.5)である。但し、v1x+v2x=15において、0<V1x<15、0<V2x<15である。
【0475】
装置XXの導入口1から導入される、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液にアルギン酸溶液を添加する場合、アルギン酸溶液を添加した混合溶液における、式(I)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の容量(v1)、式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の容量(v2)およびアルギン酸溶液の容量(v3)の容量比は、例えば、v1+v2+v3=15の比率であり、例えば、(v1:v2:v3)=(5:5:5)、(2.5:2.5:10)、(1:1:13)等の組み合わせである。但し、v1+v2+v3=15において、0<v1<15、0<v2<15、0<v3<15である。
【0476】
装置XXの導入口1から導入される、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I-A)及び式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液にアルギン酸溶液を添加する場合、アルギン酸溶液を添加した混合溶液における、式(I-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の容量(v1x)、式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体の溶液の容量(v2x)およびアルギン酸溶液の容量(v3x)の容量比は、例えば、v1x+v2x+v3x=15の比率であり、例えば、(v1x:v2x:v3x)=(5:5:5)、(2.5:2.5:10)、(1:1:13)等の組み合わせである。但し、v1x+v2x+v3x=15において、0<v1x<15、0<v2x<15、0<v3x<15である。
【0477】
装置XXの排出口2から、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液を射出する際に、射出される混合溶液を、ハサミ、カッター等の切断器具を用いて一定間隔で切断することで、所望の長さを有する架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA)を得ることが可能である。架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA)の長さは、特に限定はされないが、例えば、約0.01m~約100m、約0.1m~約75m、約0.3m~約50m、約0.5m~約30m、約1.0m~約10m、約1.0m~約2.0m、約2.0m~約3.0m、約3.0m~約4.0m、約4.0m~約5.0m、約5.0m~約6.0m、約6.0m~約7.0m、約7.0m~約8.0m、約8.0m~約9.0m、約9.0m~約10m、約1cm~約5cm、約5cm~約10cm、約10cm~約20cm、約20cm~約30cm、約30cm~約40cm、約40cm~約50cm、約50cm~約60cm、約60cm~約70cm、約70cm~約80cm、約80cm~約90cm、約90cm~約1.0m、約90cm~約1.0m等が挙げられる。
【0478】
装置XXの排出口2から、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I-A)及び式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液を射出する際に、射出される混合溶液を、ハサミ、カッター等の切断器具を用いて一定間隔で切断することで、所望の長さを有する架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA)を得ることが可能である。架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA)の長さは、特に限定はされないが、上記と同様の長さが挙げられる。
【0479】
作製されるポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(CFB)の外径は、特に限定されないが、前述の通りであり、例えば、約0.1~約2000μm、約0.2μm~約2000μm、約0.2~約1000μm、約0.5~約1000μm、約1~約1000μm、約10~約1000μm、約20~約1000μm等の範囲である。
【0480】
ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(CFB)の長さは特に限定されず、前述の通りであり、例えば、約0.3~約50m程度であってもよい。また、前述の架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA)の長さを調整して得ることで、例えば、約0.01m~約100m、約0.1m~約75m、約0.3m~約50m、約0.5m~約30m、約1.0m~約10m、約1.0m~約2.0m、約2.0m~約3.0m、約3.0m~約4.0m、約4.0m~約5.0m、約5.0m~約6.0m、約6.0m~約7.0m、約7.0m~約8.0m、約8.0m~約9.0m、約9.0m~約10m、約1cm~約5cm、約5cm~約10cm、約10cm~約20cm、約20cm~約30cm、約30cm~約40cm、約40cm~約50cm、約50cm~約60cm、約60cm~約70cm、約70cm~約80cm、約80cm~約90cm、約90cm~約1.0m、約90cm~約1.0m等の長さの、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(CFB)が得られることが可能となる。
【0481】
ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(CFB)の断面形状としては、前述の通りであり、例えば、円形、楕円系、四角形や五角形等の多角形等が挙げられる。
【0482】
装置XXの排出口2から射出される抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液、又は生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I-A)及び式(II-A)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液、を接触させる、2価金属イオンを含む溶液は、前述の「5-1.架橋アルギン酸ゲル」に記載の通りであり、例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン、ストロンチウムイオン、亜鉛イオン等が含まれる溶液があげられる。
【0483】
2価金属イオンを含む溶液の2価金属イオン濃度は、例えば、約1mM~約1Mの範囲、又は約10~約500mMの範囲であり;好ましくは、約10~約100mMである。
【0484】
2価金属イオンを含む溶液を調製する際に用いる溶媒は、前述の「5-1.架橋アルギン酸ゲル」に記載の通りであり、例えば、水、及び生理食塩水等が挙げられる。
【0485】
装置XXの排出口2から射出される抗体、生理活性物質等を産生できる細胞ならびに式(I)及び式(II)で表わされる化学修飾アルギン酸誘導体を含む混合溶液を2価金属イオンを含む溶液に接触させる時間は、例えば、約1分~60分、1分~30分等である。
【0486】
前記ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製造方法の工程(2)で得られる架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA)を接触させる、カチオン性ポリマーを含む溶液は、前述の「7.カチオン性ポリマー」に記載されるカチオン性ポリマーを含む溶液であり、例えば、ポリアミノ酸、塩基性多糖、塩基性ポリマー等を含む溶液が挙げられる。
【0487】
前記架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA)を接触させる、カチオン性ポリマーを含む溶液の濃度は、前述の「7.カチオン性ポリマー」に記載される通りであり、例えば、約0.02~約0.2重量%、約0.05~約0.1重量%等である。
【0488】
前記架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA)を接触させる、カチオン性ポリマーを含む溶液は、2価金属イオンを含む水溶液(例えば、塩化カルシウム水溶液、塩化バリウム水溶液、等)、塩化ナトリウム水溶液、溶液のpH調整のための緩衝液(酢酸、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、ヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸等の水溶液)等の成分を含むことができる。
【0489】
前記架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA)をカチオン性ポリマーを含む溶液に接触させる時間は、例えば、約1分~60分、1分~30分等である。
【0490】
いくつかの態様では、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの製法時の温度は、例えば、約4~約37℃の範囲である。
【0491】
前記製造方法により、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞がある一定数含まれたコア層を有するポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを容易に得ることができる。
【0492】
いくつかの態様では、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを培養液中で培養することにより、抗体産生細胞、生理活性物質産生細胞等が培養され、抗体、生理活性物質等を産生することができる。ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、培養液を適切に交換することにより、抗体産生細胞、生理活性物質産生細胞等を数週間~数か月の間連続培養することが可能となる。
【0493】
前記ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの強度については、当業者に周知の方法に従って、振盪崩壊試験、引張強度試験等により測定することができる。
【0494】
本明細書中の記載において「約」と記載した場合、特に断りが無い場合には、当該数値の±20%迄、好ましくは当該数値の±10%迄の値も含み得るものである。
【0495】
10.抗体産生細胞、生理活性物質産生細胞等の培養方法
ここでは、前記製造方法にて作製される抗体、生理活性物質等を産生できる細胞をコア層に含むポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを用いた、抗体、生理活性物質等の製造方法が提供される。例えば、前記ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを培養容器に入れ、培地を添加して前記ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを含浸させ、培養を行うことにより、抗体、生理活性物質等を製造することができる。以下、「抗体、生理活性物質等の製造方法」を「抗体産生細胞、生理活性物質産生細胞等の培養方法」という場合がある。
【0496】
好ましい態様の抗体産生細胞、生理活性物質産生細胞等の培養方法によれば、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞をコア層に含むポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを前記製造方法にて作製した後の早い段階で、培養液に浸潤させ抗体産生細胞、生理活性物質産生細胞等の培養を開始することができる。これにより、
図4に示すように、コア層への培養液(栄養源)及び酸素の供給をすぐに行うことができ、すなわち、コア層に含まれる、抗体産生細胞、生理活性物質産生細胞等を壊死させることなく、培養が可能となる。特に好ましい態様では、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層での抗体産生細胞、生理活性物質産生細胞等の壊死を十分に防ぎつつ、抗体、生理活性物質等を産生することができる。
【0497】
本発明の抗体、生理活性物質等を産生できる細胞をコア層に含むポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、培養時にファイバ外に存在している培養液(栄養源)及び酸素等の成分に対して十分な透過性を有しているものである。
【0498】
以下に、抗体産生細胞の培養方法の一例について、具体的に説明するが、これに限定されない。ベントキャップ付三角フラスコ(Corning社、 Cat.431143)に、前述の製造方法にて作製された、コア層に抗体産生細胞を含む、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを入れ、後述する表31の組成である培地(30 mL)を添加し、ゲルファイバを含浸させた後、37℃、5%CO2雰囲気下にインキュベータ内で振盪器(パナソニックヘルスケア(株)MIR-S100C)を用いた125 rpmの条件で振とうしながら培養を行う。培養期間中、2~3日に一回、培地1.8 mLを抜き取り、Feed液(Irvine社製、JX Feed 003)または表31の組成である培地1.8mLを添加し、培地の総量を30 mLに保つ。また、培養期間中、週に一度培地の半量交換をおこなう。
【0499】
また、以下に、生理活性物質産生細胞の培養方法の一例について、具体的に説明するが、これに限定されない。前述の製造方法にて作製された、コア層に生理活性物質産生細胞を含む、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを低接着表面ディッシュに入れ、後述する表35の組成である培地(5 mL)を添加し、37℃、5%CO2雰囲気下、インキュベータ内で静置して培養をおこなう。
【0500】
ある態様のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを用いる抗体、生理活性物質等の製造技術は、コア層に含まれる抗体産生細胞、生理活性物質産生細胞等がある一定数以上には増殖しないことにより、細胞への物理的ストレスが少ないため、封入した抗体産生細胞、生理活性物質産生細胞等が長期間に渡り抗体、生理活性物質等を産生し続ける可能性を有している点で優れている。
【0501】
特に好ましい態様では、抗体の生産・精製効率を飛躍的に向上させる可能性があり(例えば、好ましい態様のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを用いることで、大規模な培養タンクを要する浮遊培養とは異なり、小規模の生産設備にて抗体を培養することも可能となる)、少量・多種品目の抗体医薬品の製造にも適した次世代型抗体医薬品の連続生産技術として期待できる。
【0502】
培養により産生された抗体(例えば、抗GPVI抗体、トシリズマブ)または生理活性物質(例えば、インスリン)は、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に貯留されても良く、好ましくは、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層およびカチオン性ポリマー層を透過しポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ外の培養液中に貯留される。
【0503】
尚、抗体、生理活性物質等の回収・精製は、後述の記載を参照し、行うことが可能である。
【0504】
好ましい態様では、
図4に示すように、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層内で産生された抗体、生理活性物質等が、コア層及びカチオン性ポリマー層を透過して当該ファイバ外へ順次放出されることとなり、抗体、生理活性物質等の連続培養が可能なサイクルが形成可能である。尚、このとき、代謝物及び老廃物も当該ファイバ外へ放出されてもよい。
【0505】
実際に、後述の実施例では、コア層に含める細胞として、抗GPVI抗体産生CHO細胞、トシリズマブ産生CHO細胞またはMIN6細胞から選択される細胞を用い、コア層の架橋アルギン酸ゲルの形成に用いる式(I)の化学修飾アルギン酸誘導体として、下記式:
【化61】
[式中、(ALG)は、アルギン酸を表わし;-NHCO-は、アルギン酸の任意のカルボキシル基を介したアミド結合を表わす]から選択される化学修飾アルギン酸誘導体を、式(II)の化学修飾アルギン酸誘導体として、下記式:
【化62】
[式中、(ALG)は、アルギン酸を表わし;-NHCO-は、アルギン酸の任意のカルボキシル基を介したアミド結合を表わす]から選択される化学修飾アルギン酸誘導体を用い、カチオン性ポリマー層のカチオン性ポリマーとして、ポリ-L-オルニチン、ポリアリルアミン(PAA)、ポリエチレンイミン又はポリメチレン-CO-グアニジン(PMCG)を用いて、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを作製した。
【0506】
また、前記で得られたポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを培養した処、産生された抗体(抗GPVI抗体、トシリズマブ)又は生理活性物質(インスリン)が、コア層及びカチオン性ポリマー層を透過して培養液中に貯留された事が確認できた。
【0507】
抗体、生理活性物質等を産生できる細胞をコア層に含むポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを培養する、培養容器としては、例えば、組織培養用プレート、三角フラスコ、T-フラスコ、スピナーフラスコ、培養バッグ、動物細胞培養槽等からなる群から選択される容器であり;好ましくは三角フラスコ又は動物細胞培養槽である。培養は、静置培養、振とう・揺動培養などのいずれの方法を選択してもよい。
【0508】
抗体、生理活性物質等の生産性向上には、培養当たりの抗体産生細胞、生理活性物質産生細胞等の細胞数の増大化が有効であるが、一方で過剰な増殖が起こり、培養環境が悪化し、培養期間の短縮が起こりうる。いくつかの態様の抗体、生理活性物質等の製造方法にて、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる、抗体産生細胞、生理活性物質産生細胞等の過剰増殖に起因する細胞への物理的ストレスを少なくする為の方法として、例えば、コア層に含まれる抗体産生細胞、生理活性物質産生細胞等がある一定数以上に増殖しない方法としては、培養中の培養温度のコントロール、培養液中に細胞増殖抑制剤を添加する、等の方法が挙げられる。
【0509】
いくつかの態様の抗体、生理活性物質等の製造方法にて、培養温度は、例えば、約28℃~約39℃の範囲であり、例えば、約30℃~約37℃の範囲である。
【0510】
いくつかの態様の抗体、生理活性物質等の製造方法にて、培養開始から終了時までの培養温度は、適時、変化させることも可能である。例えば、培養開始時の温度を約37℃として、ある一定時間培養した段階で、約30℃に変化させることが可能である。
【0511】
いくつかの態様の抗体、生理活性物質等の製造方法にて、培養期間は、例えば、7日以上であり、又は10日以上であり、又は20日以上であり、又は30日以上であり、又は40日以上であり、又は50日以上であり、又は60日以上であり、又は70日以上である。
【0512】
いくつかの態様の抗体、生理活性物質等の製造方法にて、培養期間は、例えば、7日であり、又は14日であり、又は28日であり、又は35日であり、又は42日であり、又は49日であり、又は56日であり、又は63日であり、又は70日である。
【0513】
いくつかの態様の抗体の製造方法にて、培養液中に細胞増殖抑制剤を添加することもできる。細胞増殖抑制剤とは、培養期間中、過剰な細胞増殖を抑制することが可能な剤であり、例えば、ジメチルスルホキシド、酪酸ナトリウム、バルプロ酸、塩化リチウム、吉草酸、メトトレキサート(MTX)等の添加剤が挙げられる。細胞増殖抑制剤を培養液に添加するタイミングは、培養開始時点、又は培養期間中(必要な細胞数まで増殖できた時点)のいずれでも可能である。本明細書にて、抗GPVI抗体産生細胞を用いて培養を行う場合、メトトレキサート(MTX)を添加している。
【0514】
本明細書中、細胞培養用培地には、市販の培地基材又は調製済み培地、若しくは自製した培地を使用することができる。又、天然培地(例えば、ソイビーン-カゼインダイジェスト培地(SCD培地)等がある)又は合成培地(増殖に必要な各種栄養素を全て化学薬品にて補う培地である)を使用することもできる。又、当該培地は、特に限定されることは無いが、細胞の生存増殖に必要な成分(無機塩、炭水化物、ホルモン、必須アミノ酸、非必須アミノ酸、ビタミン等)が含まれる基本培地であれば良く、例えば、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM)、Minimum Essential Medium(MEM)、RPMI-1640、Basal Medium Eagle(BME)、Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium:Nutrient Mixture F-12(DMEM/F-12)、Glasgow Minimum Essential Medium(GlasgowMEM)、G016培地、DMEM(High Glucose)等が挙げられる。
【0515】
又、前記培地には、更に血清が含まれていても良い。前記血清としては、特に限定されることは無いが、例えば、FBS/FCS(Fetal Bovine/Calf Serum)、NCS(Newborn Calf serum)、CS(Calf Serum)、HS(Horse Serum)等が挙げられる。培地に含まれる血清の濃度は、例えば、2重量%以上10重量%以下である。
【0516】
本発明のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、そのコア層の架橋アルギン酸ゲルファイバの両端がカチオン性ポリマーで被覆されていることから、培養期間中にコア層に含まれる抗体産生細胞、生理活性物質産生細胞等の細胞が、多量に(例えば、1×105個/mL以上)ファイバ外へ漏れだすことの防止、抑制又は低減に繋がる。
【0517】
11.コア層における生細胞数の算出方法
以下に、培養開始時、培養期間中または培養後における、抗体産生細胞を含有するポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層に含まれる抗体産生細胞の生細胞数の測定方法の一例について、具体的に説明するが、これに限定されるものではない。
抗体産生細胞を含有する架橋アルギン酸ゲルファイバ、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(0.2mL)を15mLチューブ(遠沈管(印刷目盛付・バルク),型式:2325-015-MYP)に移し、チューブの目盛で約4.5mLまで後述する表31の組成であるG016培地(4.5 mL)を添加する。続いて、1 mg/mL Alginate lyase (Poly α-guluronate lyase Recombinant Zobellia galactanivorans) (Creative Enzymes, Cat#NATE-1563)を30μL添加し、30 ℃、125 rpmで1時間以上振盪撹拌した。振盪撹拌の間、架橋アルギン酸ゲルファイバが均一に溶解するまで、適宜、溶液のピペッティングあるいは前記Alginate lyaseを添加した。前記架橋アルギン酸ゲルファイバが均一に溶解したことを確認後、液量を確認し、前記G016培地を追加して5mLとする。前記溶液の一部を採取し、細胞数をカウントする。2回測定の平均値を用いて、架橋アルギン酸ゲルファイバ中の生細胞数とする。
【0518】
12.抗体の分類
抗体は、作製時の免疫動物種によって、マウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体、ヒト抗体等と称される。ヒトで使用する際の免疫原性を減じるために、異なる種由来の抗体の部分領域をヒト配列に変換させた改変抗体として、キメラ抗体とヒト化抗体があり、バイオ医薬品として用いられる。また、ヒト抗体遺伝子を組込まれたマウスなどを用いて、ヒト抗体遺伝子から産生された抗体もあり、ヒト型抗体、あるいは単にヒト抗体と称され、バイオ医薬品として用いられる。
【0519】
上記の各種抗体に加え、次世代抗体と言われる様々な改変抗体も開発されており、本明細書においては、改変抗体も「抗体」に含まれる。例えば、2以上の抗原に対して特異性を示す抗体である多価抗体があり、特に二重特異性を示すものをバイスペシフィック抗体と言い、高機能化抗体の一つである。抗体のFc部位を除去し低分子化した抗体である低分子化抗体もあり、Fab、F(ab’)2、scFv(単鎖Fv)、VHH等が挙げられ、バイオ医薬品として用いられている。さらに、バイスペシフィック低分子化抗体も作製されており、例えばscFv-scFvがバイオ医薬品として用いられている。糖鎖を改変させるようにFc領域等に変異を入れた抗体も、改変抗体の一例である。糖鎖を改変させるように宿主細胞を予め形質転換させることで、糖鎖改変抗体を産生させることもでき、例えば、フコース除去抗体が挙げられる。なお、本明細書において、抗体又は抗体断片と他の蛋白質又はペプチドとの融合蛋白質も、改変抗体、すなわち抗体の一例として挙げられるが、前記の生理活性物質との融合蛋白質である場合は、生理活性物質にも含まれる。
【0520】
抗体は、定常領域の構造上の違いにより、下記表に示されるようなクラス(アイソタイプ)やサブクラスに分類される。
【0521】
【0522】
13.抗体・生理活性物質の産生及び精製法
いくつかの態様の抗体の製造方法にて、抗体産生細胞を培養することよってポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層で産生されポリマー層を透過し得る抗体としては、特に限定されることは無いが、例えば、IgG、IgA、IgM、IgD、IgE等からなる群から選択されるクラス(アイソタイプ)を有する抗体が挙げられる。産生抗体をバイオ医薬品として用いる場合には、好ましくは、IgG抗体である。
【0523】
いくつかの態様の抗体の製造方法にて、抗体産生細胞を培養することによって、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層で産生されカチオン性ポリマー層を透過し得る抗体の分子量は、特に限定されることは無いが、例えば、約45,000~約1,000,000Daの範囲にある抗体である。また、カチオン性ポリマー層を透過し得る抗体の分子量は例えば、約3,000~約1,000,000Da、約20,000~約1,000,000Da、約20,000~約400,000Da、約45,000~約400,000Da、約20,000~約200,000Da、約45,000~約200,000Daの範囲にある抗体である。
【0524】
いくつかの態様の生理活性物質の製造方法にて、生理活性物質産生細胞を培養することによって、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバのコア層で産生されカチオン性ポリマー層を透過し得る生理活性物質の分子量は、特に限定されることは無いが、例えば、約3,000~約1,000,000Da、約20,000~約1,000,000Da、約45,000~約1,000,000Da、約20,000~約400,000Da、約45,000~約400,000Da、約20,000~約200,000Da、約45,000~約200,000Daの範囲にある生理活性物質である。
【0525】
本明細書中、前記の各抗体産生細胞を用いて前記の抗体の製造方法にて培養を行う場合、用いた抗体産生細胞に対応する抗体が産生される。例えば、ムロモナブ-CD3産生CHO細胞を用いる場合、抗体としてムロモナブ-CD3が産生される。
【0526】
本明細書中、前記の各生理活性物質産生細胞を用いて前記の生理活性物質の製造方法にて培養を行う場合、用いた生理活性物質産生細胞に対応する生理活性物質が産生される。
【0527】
産生される抗体としては、例えば、ムロモナブ-CD3産生CHO細胞を用いてムロモナブ-CD3(IgG;150,000)、トラスツズマブ産生CHO細胞を用いてトラスツズマブ(IgG;148,000)、リツキシマブ産生CHO細胞を用いてリツキシマブ(IgG;144,510)、パリビズマブ産生NS0細胞を用いてパリビズマブ(IgG;147,700)、インフリキシマブ産生Sp2/0細胞又はインフリキシマブ産生CHO細胞を用いてインフリキシマブ(IgG;149,000)、バシリキシマブ産生Sp2/0細胞を用いてバシリキシマブ(IgG;147,000)、トシリズマブ産生CHO細胞を用いてトシリズマブ(IgG;148,000)、ゲムツズマブ産生CHO細胞を用いてゲムツズマブ(IgG;150,000)、ベバシズマブ産生CHO細胞を用いてベバシズマブ(IgG;149,000)、イブリツモマブ産生CHO細胞を用いてイブリツモマブ(IgG;148,000)、アダリムマブ産生CHO細胞を用いてアダリムマブ(IgG;148,000)、セツキシマブ産生Sp2/0細胞を用いてセツキシマブ(IgG;151,800)、ラニビズマブ産生CHO細胞を用いてラニビズマブ(IgG(Fab);48,000)、オマリズマブ産生CHO細胞を用いてオマリズマブ(IgG;149,000)、エクリズマブ産生NS0細胞を用いてエクリズマブ(IgG;145,235)、パニツムマブ産生CHO細胞を用いてパニツムマブ(IgG;147,000)、ウステキヌマブ産生Sp2/0細胞を用いてウステキヌマブ(IgG;148,079~149,690)、ゴリムマブ産生Sp2/0細胞を用いてゴリムマブ(IgG;149,802~151,064)、カナキヌマブ産生Sp2/0細胞を用いてカナキヌマブ(IgG;148,000)、デノスマブ産生CHO細胞を用いてデノスマブ(IgG;150,000)、モガムリズマブ産生CHO細胞を用いてモガムリズマブ(IgG;149,000)、セルトリズマブ産生CHO細胞を用いてセルトリズマブ(IgG(Fab’);50,000)、オファツムマブ産生NS0細胞を用いてオファツムマブ(IgG;149,000)、ペルツズマブ産生CHO細胞を用いてペルツズマブ(IgG;148,000)、ブレンツキシマブ産生CHO細胞を用いてブレンツキシマブ(IgG;148,000)、ナタリズマブ産生NS0細胞を用いてナタリズマブ(IgG;146,178)、ニボルマブ産生CHO細胞を用いてニボルマブ(IgG;145,000)、アレムツズマブ産生CHO細胞を用いてアレムツズマブ(IgG;150,000)、セクキヌマブ産生CHO細胞を用いてセクキヌマブ(IgG;151,000)、ラムシルマブ産生NS0細胞を用いてラムシルマブ(IgG;147,000)、イピリムマブ産生CHO細胞を用いてイピリムマブ(IgG;148,000)、エボロクマブ産生CHO細胞を用いてエボロクマブ(IgG;141,789)、メポリズマブ産生CHO細胞を用いてメポリズマブ(IgG;149,000)、アリロクマブ産生CHO細胞を用いてアリロクマブ(IgG;145892.049.)、イキセキズマブ産生CHO細胞を用いてイキセキズマブ(IgG;149,000)、ブロダルマブ産生CHO細胞を用いてブロダルマブ(IgG;147,000)、イダルシズマブ産生CHO細胞を用いてイダルシズマブ(IgG(Fab);47,782)、エロツズマブ産生NS0細胞を用いてエロツズマブ(IgG;148,000)、ペムブロリズマブ産生CHO細胞を用いてペムブロリズマブ(IgG;149,000)、サリルマブ産生CHO細胞を用いてサリルマブ(IgG;150,000)、ベズロトクスマブ産生CHO細胞を用いてベズロトクスマブ(IgG;148,000)、ベリムマブ産生NS0細胞を用いてベリムマブ(IgG;147,000)、ダラツムマブ産生CHO細胞を用いてダラツムマブ(IgG;148,000)、アベルマブ産生CHO細胞を用いてアベルマブ(IgG;147,000)、デュピルマブ産生CHO細胞を用いてデュピルマブ(IgG;152,000)、アテゾリズマブ産生CHO細胞を用いてアテゾリズマブ(IgG;144,611)、ベンラリズマブ産生CHO細胞を用いてベンラリズマブ(IgG;148,000)、イノツズマブ産生CHO細胞を用いてイノツズマブ(IgG;149,000)、エミシズマブ産生CHO細胞を用いてエミシズマブ(IgG;148,000)、グセルクマブ産生CHO細胞を用いてグセルクマブ(IgG;146,000)、デュルバルマブ産生CHO細胞を用いてデュルバルマブ(IgG;149,000)、オビヌツズマブ産生CHO細胞を用いてオビヌツズマブ(IgG;148,000~150,000)、ベドリズマブ産生CHO細胞を用いてベドリズマブ(IgG;150,000)又は抗GPVI抗体産生CHO細胞を用いて抗GPVI抗体(IgG;150,000)が挙げられる(抗体名後のカッコ内は、当該抗体のクラス(アイソタイプ)及び分子量を示す)。尚、本発明の抗体の製造方法で得ることができる抗体は、前記クラス(アイソタイプ)やサブクラスに、特に限定されるものではない。
【0528】
産生された抗体は、例えば、下記の3工程を経て精製が行われる。
〔工程1〕培地中に含まれる、抗体以外のタンパク質及び固形物をほぼ取り除く為に、遠心分離法又はフィルターによる濾過等を行う。
〔工程2〕例えば、アフィニティークロマトグラフィー(抗体の場合は、Protein A又はProtein Gを用いたアフィニティークロマトグラフィー)、又はイオン交換クロマトグラフィー等のクロマトグラフィーにて目的とする抗体を取り出す。
〔工程3〕工程2で混入してきた夾雑物を除去する為に、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー又はヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー等を行い、目的とする抗体を高純度精製する。
【0529】
産生された生理活性物質は、例えば、前記工程と同様な方法を経て精製が行われる。
【0530】
Protein A又はProtein Gを用いたアフィニティークロマトグラフィー:
IgGの精製法としては、例えば、Protein A又はProtein Gを用いた抗体の精製方法が知られている。Protein Aを用いた抗体の精製法として、下記方法が1例として挙げられる。(1)Protein Aが固定されたビーズが充填されたカラムを用いて、前記〔ステップ1〕の方法で得られてくる溶液に血清を添加した溶液をろ過することで、IgGがカラム中のビーズに結合して、他の血清成分がカラム外へ流出がされる。(2)その後、カラムに酸性溶液を通過させることにより、ビーズに結合していたIgGが切れて、カラム外へ溶出されてIgGが得られる。尚、IgのProtein AとProtein Gへの結合力が、動物種やサブクラスによって違うことから、目的によって、Protein A又はProtein Gを使い分けることができる。
【0531】
イオン交換クロマトグラフィー:
タンパク質が有する電気的な性質(電荷)を利用してタンパク質を分離する方法である。正電荷を示す塩基性タンパク質は、負電荷をもつ陽イオン交換体(担体)にイオン結合し、負電荷を示す酸性タンパク質は正電荷を持つ陰イオン交換体に結合することから、タンパク質が含まれる試料をイオン交換体が充填されたカラムを通すことで、タンパク質がイオン交換体に結合する。その後、カラムを通す溶媒の塩濃度を高濃度にすることで、タンパク質とイオン交換体とのイオン結合が弱くなり、結合力の弱いタンパク質から順番に、イオン交換体から外れて、カラム外へ流出してくる。陽イオン交換体又は陰イオン交換体の選択は、試料として用いるタンパク質の電荷から選択するものとする。
【0532】
ゲルろ過クロマトグラフィー:
タンパク質の分子量の違いを利用してタンパク質を分離する方法である。小孔が付いている担体が充填されたカラムに試料を流すことで、分子量の小さいタンパク質は、前記小孔に入り込みながら流出していき、分子量の大きいタンパク質は前記小孔に入らずに流出してくる為、カラムを通過する時間が分子量の小さいタンパク質は遅く、分子量の大きいタンパク質は早くなることから、時間差的にタンパク質を分離することが可能となる。
【0533】
ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー:
リン酸カルシウムの1種であるヒドロキシアパタイトを用いたクロマトグラフィーである。主にカルシウムイオンによる金属アフィニティーとリン酸基による陽イオン交換に基づく、複数の相互作用を利用してタンパク質を分離する方法である。アミノ酸のカルボキシル基及びアミノ基がそれぞれ担体と相互作用することで吸着し、高濃度リン酸または高塩濃度の溶媒を流すことで目的物と不純物の分離を行う。
【0534】
14.ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの物性
[ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの安定性の確認法]
本明細書中、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの安定性は、例えば、以下の試験法により確認することができる。より具体的には、後記実施例に記載の方法で確認することができる。
【0535】
<振盪崩壊試験>:上記の製造方法で得られるポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバをリン酸緩衝生理食塩水中(PBS)に懸濁させ、これを一定時間、振盪させたのち、ファイバの崩壊し易さ(振盪崩壊度)を確認することにより、その物理的な強度を測定することができる。具体的な試験方法としては、例えば、後述の実施例に記載の方法が挙げられる。
【0536】
<引張強度試験>:上記の製造方法で得られるポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを用いて、引張強度測定装置を用いて、その破断値(mN)を確認することにより、その物理的な強度を測定することができる。具体的な試験方法としては、例えば、後述の実施例に記載の方法が挙げられる。
【0537】
本発明のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの強度は、これを構成するコア層に含まれる架橋アルギン酸ゲル、およびコア層とカチオン性ポリマー層の間で形成されている架橋アルギン酸ゲルとカチオン性ポリマーの静電的作用が、本発明のファイバーの強度にとって最適な性質を有していることに起因する。
【0538】
本発明のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、高い物理的安定性を有するとともに、コア層で産生された抗体、生理活性物質等がコア層から放出され、更にポリマー層を透過することができることから、適切な透過性も有しており、抗体、生理活性物質等を生産するのに適した構造体でもある。
【0539】
15.化学修飾アルギン酸誘導体の反応性基(相補的な反応性基)の導入率測定
反応性基又は相補的な反応性基導入率は、アルギン酸の繰り返し単位であるウロン酸単糖単位あたりに導入された反応性基又は相補的な反応性基の数を百分率で表した値を意味する。
後記実施例においては、反応性基又は相補的な反応性基導入率(mol%)は、1H-NMRの積分比により計算した。又、導入率の算出に必要なアルギン酸の量は、検量線を利用したカルバゾール硫酸法により測定し、反応性基又は相補的な反応性基の量は、検量線を利用した吸光度測定法により測定することもできる。
【0540】
16.化学修飾アルギン酸誘導体の分子量の測定
後記実施例で得られた化学修飾アルギン酸誘導体の固体を0.15 mol/LのNaClを含む10 mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解し0.1%又は0.2%溶液を調製し、孔径0.22μmのポリエーテルスルフォン製ろ過フィルター(Minisart High Flow Filter、Sartorius社)を通し不溶物を除いた後、ゲルろ過用サンプルとした。各サンプルのスペクトルを分光光度計DU-800(Beckman-Coulter社)により測定し、各化合物のゲルろ過における測定波長を決定した。特異的な吸収波長を持たない化合物に関しては、示差屈折計を用いた。
【0541】
ゲルろ過用サンプルの200μLをSuperose6 Increase10/300 GLカラム(GEヘルスケアサイエンス社)に供した。ゲルろ過は、クロマトグラフ装置としてAKTA Explorer 10Sを、展開溶媒として0.15 mol/L NaClを含む10 mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.4)を使用し、室温で流速0.8 mL/minの条件で実施した。サンプルの溶出プロファイルは、各化合物で決定した波長の吸収をモニターし作製した。得られたクロマトグラムは、Unicorn5.31ソフトウエア(GEヘルスケアサイエンス社)にて解析し、ピーク範囲を決定した。
【0542】
反応性基又は相補的な反応性基が導入されたアルギン酸の分子量は、ブルーデキストラン(分子量200万Da、SIGMA社)、チログロブリン(分子量66.9万Da、GEヘルスケアサイエンス社)、フェリチン(分子量44万Da、GEヘルスケアサイエンス社)、アルドラーゼ(分子量15.8万Da、GEヘルスケアサイエンス社)、コンアルブミン(分子量7.5万Da、GEヘルスケアサイエンス社)、オブアルブミン(分子量4.4万Da、GEヘルスケアサイエンス社)、リボヌクレアーゼA(分子量1.37万Da、GEヘルスケアサイエンス社)及びアプロチニン(分子量6500Da、GEヘルスケアサイエンス社)を標準品として用い、反応性基又は相補的な反応性基が導入されたアルギン酸と同じ条件でゲルろ過を行い、各成分の溶出液量をUnicornソフトウエアにて決定した。この各成分の溶出液量を横軸に、分子量の対数値を縦軸にそれぞれプロットし、直線回帰し、検量線を作成した。検量線は、ブルーデキストランからフェリチンまで、フェリチンからアプロチニンまでの2種類を作成した。
【0543】
この検量線を用いて、先に得られたクロマトグラムの溶出時間iにおける分子量(Mi)を計算した。次いで、溶出時間iにおける吸光度を読み取りHiとした。これらのデータから重量平均分子量(Mw)を以下の式から求めた。
【0544】
【0545】
尚、本明細書において引用した全ての文献、及び公開公報、特許公報、その他の特許文献は、その目的にかかわらず参照として本明細書に組み込むものとする。
【0546】
また、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、本発明を実施できる。発明を実施するための最良の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図ならびに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々に修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【実施例0547】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[化学修飾アルギン酸誘導体の合成法]
核磁気共鳴スペクトル(NMR)の測定には、JEOL JNM-ECX400 FT-NMR(日本電子)を用いた。液体クロマトグラフィー-質量分析スペクトル(LC-Mass)は以下の方法で測定した。[UPLC]Waters ACQUITY UPLCシステムおよびBEH C18カラム(2.1mm×50mm、1.7μm)(Waters)を用い、アセトニトリル:0.05%トリフルオロ酢酸水溶液=5:95(0分)~95:5(1.0分)~95:5(1.6分)~5:95(2.0分)の移動相およびグラジエント条件を用いた。
【0548】
1H-NMRデータ中、NMRシグナルのパターンで、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、mはマルチプレット、brはブロード、Jはカップリング定数、Hzはヘルツ、CDCl3は重クロロホルム、DMSO-d6は重ジメチルスルホキシド、D2Oは重水を意味する。1H-NMRデータ中、水酸基(OH)、アミノ基(NH2)、カルボキシル基(COOH)のプロトン等、ブロードバンドであるため確認ができないシグナルについては、データに記載していない。
【0549】
LC-Massデータ中、Mは分子量、RTは保持時間、[M+H]+,[M+Na]+は分子イオンピークを意味する。
【0550】
実施例中の「室温」又は「r.t.」は、通常約0℃から約35℃の温度を示すものとする。実施例中の「DMT-MM」は、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(CAS REGISTRY NO.:3945-69-5)を意味し、市販品または文献公知の方法で合成したものを使用することができる。
実施例中の反応性基導入率(mol%)は、1H-NMR(D2O)の積分比から算出されたアルギン酸を構成する単糖(グルロン酸およびマンヌロン酸)単位のモル数に対する導入された反応性基のモル数の割合を示すものとする。
【0551】
実施例中、アルギン酸ナトリウムは、前記表8に記される物性値を示すアルギン酸ナトリウム(A-1~A-3またはB-2~B-3)を用いた。また、アルギン酸ナトリウムあるいは各種アルギン酸誘導体は、必要に応じてろ過滅菌を実施した。
【0552】
表24-1~表24-2には、(実施例1)~(実施例18)で得られた、反応性基が導入されたアルギン酸誘導体の物性値(具体的には、反応性基導入率(mol%)、分子量、及び重量平均分子量(Da))を示す。
表25-1~表25-3には、実施例中の各中間体の1H-NMR、LC-Massのデータを示す。
【0553】
(実施例1a~i)ジベンゾシクロオクチン-アミノ基導入アルギン酸(1-A2、1-A1、1-A3、1-B2、1-B2b、1-B2c、1-A2b、1-A2cおよび1-A2d)の合成:
【化63】
【0554】
下記の合成方法および反応条件にて、1-A2、1-A1、1-A3、1-B2、1-B2b、1-B2c、1-A2b、1-A2cおよび1-A2dの化合物を合成した。
[合成方法]
1重量%または2重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製)水溶液に、4-(4、6-ジメトキシ-1、3、5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)、1モル濃度-重曹水を加えた。この溶液に、市販のジベンゾシクロオクチン-アミン(3-アミノ-1-(11,12-ジデヒドロジベンズ[b,f]アゾシン-5(6H)-イル)-1-プロパノン)[CAS REGISTRY NO.:1255942-06-3](SM1)のエタノール(EtOH 1)溶液を滴下し、室温で攪拌した。塩化ナトリウムを加えた後、エタノール(EtOH 2)を加え、室温で攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物を得た。実施例1g、1hおよび1iは、先の操作で得られた固体を水に溶かし、凍結乾燥することで標記化合物を得た。
[反応条件・結果]
【表10】
【表11】
【0555】
(実施例2)5-アミノ-1-(11,12-ジデヒドロジベンズ[b,f]アゾシン-5(6H)-イル)-1-ペンタノン基(ADIBO-C5-アミン)導入アルギン酸(2-B2)の合成:
【化64】
【0556】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:B-2)水溶液(28.5 mL)に、DMT-MM(60 mg)、文献公知の方法で得られたADIBO-C5-アミン[CAS REGISTRY NO.:2401876-29-5 ](SM2)(22 mg)のエタノール(2.9 mL)溶液、1モル濃度-重曹水(72 μL)を加え、30℃で3時間攪拌した。塩化ナトリウム(285 mg)を加えた後、エタノール(57 mL)を加え、30分間室温で攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物(277 mg)を白色固体として得た。
【0557】
(実施例3)2-アミノ-N-[3-(11,12-ジデヒドロジベンズ[b,f]アゾシン-5(6H)-イル)-3-オキソプロピル]アセタミド基導入アルギン酸(3-A2)の合成:
【化65】
【0558】
<Step1> (9H-フルオレン-9-イル)メチル-N-[3-(11,12-ジデヒドロジベンズ[b,f]アゾシン-5(6H)-イル)-3-オキソプロピル]アセタミド-2-カルバメート(IM3-1)の合成:
式SM1の化合物(50 mg)、N-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル]グリシン[CAS REGISTRY NO.:29022-11-5](54 mg)をアセトニトリル(1.5 mL)に溶解した。O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(76 mg)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(70 μL)を加え、室温で4.5時間撹拌した。反応液に、酢酸エチル(15 mL)、水(5 mL)を加え、分液後、有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、標記化合物(63 mg)を薄いベージュアモルファスとして得た。
【0559】
<Step2> 2-アミノ-N-[3-(11,12-ジデヒドロジベンズ[b,f]アゾシン-5(6H)-イル)-3-オキソプロピル]アセタミド(IM3-2)の合成:
(実施例3)<Step1>で得られた式IM3-1の化合物(63 mg)に、ピぺリジン(56 μL)のN,N-ジメチルホルムアミド(315 μL)溶液を加え、室温で30分間攪拌した。反応液に、酢酸エチル(15 mL)、水(5 mL)を加え、分液後、有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた固体に、tert-ブチルメチルエーテル(5 mL)を加え、トリチュレートした後、ろ取し、標記化合物(10 mg)を薄いベージュ固体として得た。また、ろ液から回収し、追加で、標記化合物(11 mg)を淡黄色ガム状物として得た。
【0560】
<Step3> 2-アミノ-N-[3-(11,12-ジデヒドロジベンズ[b,f]アゾシン-5(6H)-イル)-3-オキソプロピル]アセタミド基導入アルギン酸(3-A2)の合成:
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:A-2)水溶液(19 mL)に、DMT-MM(106 mg)、(実施例3)<Step2>で得られた式IM3-2の化合物(21 mg)のエタノール(1.9 mL)溶液、1モル濃度-重曹水(48 μL)を加えた。30℃で3時間攪拌した後、塩化ナトリウム(0.19 g)、エタノール(38 mL)を順次加え、30分間室温で攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥した。得られた固体を水に溶解後凍結乾燥して、標記化合物(188 mg)を白色固体として得た。
【0561】
(実施例4a~g)N-(4-(アミノメチル)ベンジル)-2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミド基導入アルギン酸(4-B2、4-A2、4-B2b、4-A2b、4-A2c、4-A2dおよび4-A3)の合成:
【化66】
【0562】
下記の合成方法および反応条件にて、4-B2、4-A2、4-B2b、4-A2b、4-A2c、4-A2dおよび4-A3の化合物を合成した。
[合成方法]
1重量%または2重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製)水溶液に、室温撹拌下、DMT-MMを加えた。続いて、文献公知の方法で得られたN-[[4-(アミノメチル)ベンジル]-2-(2-シクロオクチン-1-イロキシ)-アセタミド[CAS REGISTRY NO.:2401876-33-1](SM4)のエタノール(EtOH 1)溶液を室温で滴下し、攪拌した。室温に冷却後、塩化ナトリウムを加えた後、エタノール(EtOH 2)を加え、攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノール(2mL)で3回洗浄後、減圧下乾燥し、標記化合物を得た。実施例4b、4c、4d、4e、4fおよび4gは、先の操作で得られた固体を水に溶かし、凍結乾燥することで標記化合物を得た。
[反応条件・結果]
【表12】
【表13】
【0563】
(実施例5a、b)N-(4-(2-アミノエトキシ)ベンジル)-2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミド基導入アルギン酸(5-A2および5-B2)の合成:
【化67】
【0564】
<Step1> tert-ブチル (4-(2-(2,2,2-トリフルオロアセタミド)エトキシ)ベンジル)カルバメート(IM-5-1)の合成:
市販のtert-ブチル (4-ヒドロキシベンジル)カルバメート(式RG5-1、CAS REGISTRY NO.:149505-94-2)(0.36g)、市販または文献公知の方法にて合成して得られたN-(2-ブロモエチル)-2,2,2-トリフルオロアセタミド(式SM5、CAS REGISTRY NO.:75915-38-7)(0.46 g)、ヨウ化カリウム(0.35 g)およびN-メチルピロリドン(3.6 mL)の混合物に対し、室温で炭酸カリウム(0.45 g)を加え、140℃で5時間攪拌した。反応終了後、室温まで冷却し、水(10 mL)で希釈した。メチルtert-ブチルエーテル(10 mL)で3回抽出し、有機層を1規定-水酸化ナトリウム水溶液(5 mL)で2回、水(5 mL)、飽和食塩水(5 mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機層をろ過後、減圧下で濃縮することで、粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)で精製し、標記化合物(0.202 g)を白色アモルファスとして得た。
【0565】
<Step2> N-(2-(4-(アミノメチル)フェノキシ)エチル)-2,2,2-トリフルオロアセタミド 塩酸塩(IM5-2)の合成:
(実施例5)<Step1>で得られた式IM5-1の化合物(0.2 g)および1,4-ジオキサン(1.4 mL)の混合物に対し、水冷攪拌下、4規定-塩化水素/1,4-ジオキサン(1.4 mL)を加えた後、室温で7時間撹拌した。反応液に、ジイソプロピルエーテル(20 mL)を加え、懸濁液を室温で1日攪拌した。析出物をろ過し、回収した固体を減圧乾燥して、標記化合物(0.15 g)を白色固体として得た。
【0566】
<Step3> N-(2-(4-((2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミド)メチル)フェノキシ)エチル)-2,2,2-トリフルオロアセタミド(IM5-3)の合成:
文献公知の方法(Org. Process Res. Dev.(2018)22:108-110)に従い合成した2-(2-シクロオクチン-1-イロキシ)-酢酸(式RG5-2)[CAS REGISTRY NO.:917756-42-4](50 mg)、(実施例5)<Step2>で合成した式IM5-2の化合物(81.96 mg)およびエタノール(1 mL)の混合物に対し、氷冷攪拌下、DMT-MM(137.22 mg)およびトリエチルアミン(38.25 μL)を加え、室温で1時間30分攪拌した。反応終了後、水(2 mL)を加え、懸濁液を攪拌し、メチル tert-ブチルエーテル(0.5 mL)を加えた。分離した水層をメチル tert-ブチルエーテル(5 mL)で2回抽出し、水(5 mL)、飽和食塩水(5 mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥した有機層をろ過し、減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-へプタン/酢酸エチル)で精製し、標記化合物(99 mg)を白色アモルファスとして得た。
【0567】
<Step4> N-(4-(2-アミノエトキシ)ベンジル-2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミド(IM5-4)の合成:
(実施例5)<Step3>で得られた式IM5-3の化合物(99 mg)およびメタノール(1485 μL)の混合物に対し、水冷攪拌下、炭酸カリウム(64.17 mg)及び水(495 μL)を加え、室温で15時間攪拌した。反応終了後、メタノールを減圧下で濃縮し、生じた水層を酢酸エチル(5 mL)で3回抽出した。有機層を水(5 mL)及び飽和食塩水(5 mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥させた有機層をろ過後、減圧下で濃縮することで、標記化合物(68 mg)の粗生成物を黄色油状物として得た。
【0568】
<Step5> N-(4-(2-アミノエトキシ)ベンジル)-2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミド基導入アルギン酸(5-A2および5-B2)の合成:
下記の合成方法および反応条件にて、式5-A2および5-B2の化合物を合成した。
[合成方法]
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製)水溶液に、室温撹拌下、DMT-MMを加えた。続いて(実施例5)<Step4>で得られた式IM5-4の化合物の水(1 mL)およびエタノール(EtOH 1)溶液を室温で滴下し、同温で攪拌した後、塩化ナトリウム、エタノール(EtOH 2)を順次加え、室温で攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥した。得られた固体を水に溶解後凍結乾燥して、標記化合物を得た。
[反応条件・結果]
【表14】
【0569】
(実施例6a、6b、6c)N-(2-アミノエチル)-2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミド基導入アルギン酸(6-A2、6-B2および6-B2b)の合成:
【化68】
【0570】
下記の合成方法および反応条件にて、6-A2、6-B2および6-B2bの化合物を合成した。
[合成方法]
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製)水溶液に、室温撹拌下、DMT-MM、文献公知の方法で得られたN-(2-アミノエチル)-2-(2-シクロオクチン-1-イロキシ)-アセタミド[CAS REGISTRY NO.:1809789-76-1](SM6)のエタノール(EtOH 1)溶液、1モル濃度重曹水を順次加え、攪拌した。反応液に、塩化ナトリウムを加えた後、エタノール(EtOH 2)を加え、攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物を得た。先の操作で得られた固体を水に溶かし、凍結乾燥することで標記化合物を得た。
[反応条件・結果]
【表15】
【0571】
(実施例7)N-(2-(2-アミノエトキシ)エチル)-2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミド基導入アルギン酸(7-A2)の合成:
【化69】
【0572】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製、A-2)水溶液(40 mL)に、室温撹拌下、DMT-MM(112 mg)、文献公知の方法で得られたN-[2-(2-アミノエトキシ)エチル]-2-(2-シクロオクチン-1-イロキシ)-アセタミド[CAS REGISTRY NO.:2401876-51-3](SM7)(30 mg)のエタノール(4.0 mL)溶液、1モル濃度重曹水(101 μL)を順次加え、30℃で3時間攪拌した。反応液に、塩化ナトリウム(0.4 g)を加えた後、エタノール(80 mL)を加え、30分間攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥した。得られた固体を水に溶かし、凍結乾燥して、標記化合物(410 mg)を白色固体として得た。
【0573】
(実施例8a、8b)N-(2-アミノエチル)-2-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミド)アセタミド基導入アルギン酸(8-A2、8-B2)の合成:
【化70】
【0574】
<Step1> tert-ブチル (2-オキソ-2-((2-(2,2,2-トリフルオロアセタミド)エチル)アミノ)エチル)カルバメート(IM8-1)の合成:
文献公知の方法で得られたN-(2-アミノエチル)-2,2,2-トリフルオロアセタミド 塩酸塩(式SM8)[CAS REGISTRY NO.:496946-73-7](100 mg)およびN-(tert-ブトキシカルボニル)グリシン(式RG8-1)[CAS REGISTRY NO.:4530-20-5](91 mg)をアセトニトリル(3.0 mL)に溶解した。O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(217 mg)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(281 μL)を加え、室温で3.5時間撹拌した。反応液に、酢酸エチル(15 mL)、水(5 mL)を加え、分液後、有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:40%酢酸エチル/n-ヘプタン→酢酸エチル)で精製し、標記化合物(180 mg)を薄いベージュアモルファスとして得た。
【0575】
<Step2> N-(2-(2-アミノアセタミド)エチル)-2,2,2-トリフルオロアセタミド 塩酸塩(IM8-2)の合成:
(実施例8)<Step1>で得られた式IM8-1の化合物(180 mg)に、氷水冷下4規定-塩化水素/1,4-ジオキサン(1.2 mL)を加えた後、室温で0.8時間撹拌した。反応液に、ジイソプロピルエーテル(3.6 mL)を加え、30分間撹拌した。得られた固体をろ過して、標記化合物(114 mg)を白色固体として得た。
【0576】
<Step3> N-(2-(2-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミド)アセタミド)エチル)-2,2,2-トリフルオロアセタミド(IM8-3)の合成:
文献公知の方法で得られた2-(2-シクロオクチン-1-イロキシ)-酢酸(式RG5-2)[CAS REGISTRY NO.:917756-42-4](80 mg)、(実施例8)<Step2>で得られた式IM8-2の化合物(110 mg)に、エタノール(1.6 mL)、DMT-MM(219 mg)、トリエチルアミン(67 μL)を加え、室温で3時間撹拌した。反応液に、水(3.2 mL)を加え、室温で30分間撹拌した後、固体をろ過し、水で洗浄した。得られた固体に、酢酸エチル/エタノール(1/1、10 mL)を加え、不溶物をろ去した。ろ液を減圧濃縮して、標記化合物(101 mg)を白色固体として得た。
【0577】
<Step4> N-(2-(アミノエチル)-2-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミド)アセタミド(IM8-4)の合成:
(実施例8)<Step3>で得られた式IM8-3の化合物(60 mg)のメタノール(1.8 mL)溶液に、炭酸カリウム(59 mg)の水(0.3 mL)溶液を加え、室温で4時間撹拌した。反応液を減圧濃縮した後、水(2mL)を加え、塩化ナトリウムで飽和させた。酢酸エチル(15mL,10 mL×4)で抽出し、有機層を減圧濃縮した。残渣に酢酸エチル(10 mL)、エタノール(1mL)を加え、不溶物をろ去した。得られたろ液を減圧濃縮して、標記化合物(49 mg)を無色ガム状物として得た。
【0578】
<Step5> N-(2-アミノエチル)-2-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミド)アセタミド基導入アルギン酸(8-A2および8-B2)の合成:
下記の合成方法および反応条件にて、式8-A2および8-B2の化合物を合成した。
[合成方法]
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製)水溶液に、DMT-MM、式IM8-4の化合物のエタノール(EtOH 1)溶液、1モル濃度-重曹水を加え、攪拌した後、塩化ナトリウム、エタノール(EtOH 2)を順次加え、室温で攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥した。得られた固体を水に溶解後凍結乾燥して、標記化合物を白色固体として得た。先の操作で得られた固体を水に溶かし、凍結乾燥することで標記化合物を得た。
[反応条件・結果]
【表16】
【0579】
(実施例9) N-(2-アミノエチル)-3-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミド)プロパンアミド基導入アルギン酸(9-A2)の合成:
【化71】
【0580】
<Step1>tert-ブチル (3-オキソ-3-((2-(2,2,2-トリフルオロアセタミド)エチル)アミノ)プロピル)カルバメート(IM9-1)の合成:
文献公知の方法で得られたN-(2-アミノエチル)-2,2,2-トリフルオロアセタミド 塩酸塩(式SM8)(110 mg)及びN-(tert-ブトキシカルボニル)-β-アラニン(式RG9-1)[CAS REGISTRY NO.:3303-84-2](113.5 mg)をアセトニトリル(3.3 mL)に溶解し、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(261 mg)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(319 μL)を加え、室温で3時間撹拌した。反応液に、酢酸エチル(15 mL)、水(5 mL)を加え、分液後、有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、メチルtert-ブチルエーテル(20 mL)でトリチュレートした。固体をろ取し、酢酸エチル(20 mL)に溶解した。有機層を、1規定-クエン酸、水、飽和食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をメチルtert-ブチルエーテル(10 mL)でトリチュレートした後、固体をろ取し、標記化合物(80 mg)を白色固体として得た。
【0581】
<Step2> 3-アミノ-N-(2-(2,2,2-トリフルオロアセタミド)エチル)プロパンアミド 塩酸塩(IM9-2)の合成:
(実施例9)<Step1>で得られた式IM9-1の化合物(80 mg)に、氷水冷下4規定-塩化水素/1,4-ジオキサン(1.1 mL)を加えた後、室温で2時間撹拌した。反応液に、ジイソプロピルエーテル(3.4 mL)を加え、1.5時間撹拌した。得られた固体をろ過して、標記化合物(61 mg)を白色固体として得た。
【0582】
<Step3> 3-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミド)-N-(2-(2,2,2-トリフルオロアセタミド)エチル)プロパンアミド(IM9-3)の合成:
文献公知の方法で得られた式RG5-2の化合物(44 mg)、(実施例9)<Step2>で得られた式IM9-2の化合物(61 mg)に、エタノール(1.2 mL)、DMT-MM(115 mg)、トリエチルアミン(39 μL)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液に、水(3.7 mL)を加え、酢酸エチル(15 mL, 5 mL)で抽出した。有機層を、水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウム乾燥後、減圧濃縮した。得られた固体に、tert-ブチルメチルエーテル(10 mL)を加え、トリチュレートし、ろ過した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(80%酢酸エチル/n-ヘプタン→酢酸エチル→20%メタノール/酢酸エチル)で精製して、標記化合物(60 mg)を淡黄色固体として得た。
【0583】
<Step4> N-(2-アミノエチル-3-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミド)プロパンアミド(IM9-4)の合成:
(実施例9)<Step3>で得られた式IM9-3の化合物(60 mg)のメタノール(3.0 mL)溶液に、炭酸カリウム(42 mg)の水(0.3 mL)溶液を加え、室温で3時間撹拌後、さらに、炭酸カリウム(42 mg)の水(0.3 mL)溶液を加え、室温で16.5時間撹拌した。反応液を減圧濃縮した後、飽和食塩水(2mL)を加え、さらに塩化ナトリウムで飽和させた。酢酸エチル(15mL,10 mL×4)で抽出し、抽出層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣に酢酸エチル(5 mL)と数滴のメタノールを加え、不溶物をろ去した。得られたろ液を減圧濃縮して、標記化合物(31 mg)を無色油状物として得た。
【0584】
<Step5> N-(2-アミノエチル)-3-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミド)プロパンアミド基導入アルギン酸(9-A2)の合成:
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:A-2)水溶液(41 mL)に、DMT-MM(114 mg)、(実施例9)<Step4>で得られた式IM9-4の化合物(30.5 mg)のエタノール(4.1 mL)溶液、1モル濃度-重曹水(103 μL)を加えた。30℃で3時間攪拌した後、塩化ナトリウム(0.41 g)、エタノール(82 mL)を順次加え、30分間室温で攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥した。得られた固体を水に溶解後凍結乾燥して、標記化合物(406 mg)を白色固体として得た。
【0585】
(実施例10) 3-アミノ-N-(2-(2-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミド)エトキシ)エチル)プロパンアミド基導入アルギン酸(10-A2)の合成:
【化72】
【0586】
<Step1> tert-ブチル (2-(2-(3-(2,2,2-トリフルオロアセタミド)プロパンアミド)エトキシ)エチル)カルバメート(IM10-1)の合成:
文献公知の方法で得られた式SM10の化合物[CAS REGISTRY NO.:50632-82-1](400 mg)、および市販品または文献公知の方法で得られる式RG10-1の化合物(tert-ブチル (2-(2-アミノエトキシ)エチル)カルバメート、CAS REGISTRY NO.:127828-22-2)(441 mg)のエタノール(4.0 mL)溶液に、DMT-MM(897 mg)を加え、3.5時間撹拌した。反応液に、水(5 mL)を加え、酢酸エチル(20 mL、10 mL)で抽出後、有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー([溶出溶媒・比率%]酢酸エチル:n-ヘプタン=30:70→酢酸エチル:n-ヘプタン=100:0)で精製して、標記化合物(451 mg)を無色油状物として得た。
【0587】
<Step2> N-(2-(2-アミノエトキシ)エチル)-3-(2,2,2-トリフルオロアセタミド)プロパンアミド 塩酸塩(IM10-2)の合成:
(実施例10)<Step1>で得られた式IM10-1の化合物(451 mg)に、氷水冷下4規定-塩化水素/1,4-ジオキサン(3.16 mL)を加え、室温で3時間撹拌した。反応液に、ジイソプロピルエーテル(6.4 mL)を加え、減圧濃縮して、標記化合物(433 mg)を無色ガム状物として得た。
【0588】
<Step3> N-(2-(2-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミド)エトキシ)エチル-3-(2,2,2-トリフルオロアセタミド)プロパンアミド(IM10-3)の合成:
文献公知の方法で得られた式RG5-2の化合物(111 mg)、および(実施例10)<Step2>で得られた式IM10-2の化合物(215 mg)に、エタノール(1.7 mL)、DMT-MM(253 mg)、トリエチルアミン(102 μL)を加え、室温で21時間撹拌した。反応液に、水(5 mL)を加え、酢酸エチル(15 mL)で抽出した。有機層を、水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー([溶出溶媒・比率%]酢酸エチル:n-ヘプタン=30:70→酢酸エチル:n-ヘプタン=100:0→メタノール:酢酸エチル=15:85)で精製して、標記化合物(35 mg)を無色油状物として得た。
【0589】
<Step4> 3-アミノ-N-(2-(2-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミド)エトキシ)エチル)プロパンアミド(IM10-4)の合成:
(実施例10)<Step3>で得られた式IM10-3の化合物(35 mg)のメタノール(700 μL)溶液に、炭酸カリウム(33 mg)の水(175 μL)溶液を加え、室温で16.5時間撹拌した。反応液を減圧濃縮した後、水(2 mL)を加え、塩化ナトリウムで飽和させた。酢酸エチル(10 mL×5)で抽出し、抽出層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣に酢酸エチル(10 mL)と数滴のメタノールを加え、不溶物をろ去した。得られたろ液を減圧濃縮して、標記化合物(24 mg)を無色ガム状物として得た。
【0590】
<Step5> 3-アミノ-N-(2-(2-(2-(シクロオクト-2-イン-1-イロキシ)アセタミド)エトキシ)エチル)プロパンアミド基導入アルギン酸(10-A2)の合成:
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:A-2)水溶液(28 mL)に、DMT-MM(78 mg)、(実施例10)<Step4>で得られた式IM10-4の化合物(24 mg)のエタノール(2.8 mL)溶液、1モル濃度-重曹水(71 μL)を加えた。30℃で3.5時間攪拌した後、塩化ナトリウム(0.28 g)、エタノール(56 mL)を順次加え、30分間室温で攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥した。得られた固体を水に溶解後凍結乾燥して、標記化合物(272 mg)を白色固体として得た。
【0591】
(実施例11a~m)4-(2-アミノエトキシ)-N-(3-アジドプロピル)ベンズアミド基導入アルギン酸(11-A2、11-A1、11-A3、11-B2、11-B2b、11-B2c、11-A2b、11-A2c、11-B2d、11-A2d、11-A2e、11-A3および11-A2f)の合成:
【化73】
【0592】
下記の合成方法および反応条件にて、11-A2、11-A1、11-A3、11-B2、11-B2b、11-B2c、11-A2b、11-A2c、11-B2d、11-A2d、11-A2e、11-A3および11-A2fの化合物を合成した。
[合成方法]
1重量%または2重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製)水溶液に、DMT-MM、文献公知の方法にて合成した式SM11の化合物(4-(2-アミノエトキシ)-N-(3-アジドプロピル)ベンズアミド 塩酸塩;CAS REGISTRY NO.:2401876-19-3)、1モル濃度-重曹水を加え攪拌した。塩化ナトリウムを加えた後、エタノール(EtOH 2)を加え、室温で攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物を固体として得た。実施例11g、11h、11i、11j、11k、11lおよび11mは、先の操作で得られた固体を水に溶かし、凍結乾燥することで標記化合物を得た。
[反応条件・結果]
【表17】
【表18】
【表19】
【0593】
(実施例12) 4-(3-アミノプロポキシ)-N-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エチル)ベンズアミド基導入アルギン酸(12-A2)の合成:
【化74】
【0594】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:A-2)水溶液(19.6 mL)に、氷冷撹拌下、DMT-MM(50.19 mg)、文献公知の方法にて合成した式SM12の化合物(4-(3-アミノプロポキシ)-N-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エチル)ベンズアミド 塩酸塩;CAS REGISTRY NO.:2401876-22-8)(70.35 mg)、1モル濃度-重曹水(181.4 μL)を加え、室温で5時間攪拌した。塩化ナトリウム(200 mg)を加えた後、エタノール(39.2 mL)を加え、30分間室温で攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物(199 mg)を白色固体として得た。
【0595】
(実施例13a、b) N-(2-(2-アミノエトキシ)エチル)-4-(アジドメチル)ベンズアミド基導入アルギン酸(13-A2および13-A2b)の合成:
【化75】
【0596】
下記の合成方法および反応条件にて、13-A2および13-A2bの化合物を合成した。
[合成方法]
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製)水溶液に、DMT-MM、文献公知の方法にて合成した式SM13の化合物(N-(2-(2-アミノエトキシ)エチル)-4-(アジドメチル)ベンズアミド 塩酸塩;CAS REGISTRY NO.:2401876-38-6)、1モル濃度-重曹水を加え攪拌した。塩化ナトリウムを加えた後、エタノール(EtOH 2)を加え、室温で攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物を固体として得た。先の操作で得られた固体を水に溶かし、凍結乾燥することで標記化合物を得た。
[反応条件・結果]
【表20】
【0597】
(実施例14a~c) N-(2-アミノエチル)-4-(アジドメチル)ベンズアミド基導入アルギン酸(14-A2、14-B2および14-A2b)の合成:
【化76】
【0598】
下記の合成方法および反応条件にて、14-A2、14-B2および14-A2bの化合物を合成した。
[合成方法]
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製)水溶液に、DMT-MM、文献公知の方法にて合成した式SM14の化合物(N-(2-アミノエチル)-4-(アジドメチル)ベンズアミド 塩酸塩;CAS REGISTRY NO.:2401876-25-1)、1モル濃度-重曹水を加え攪拌した。塩化ナトリウムを加えた後、エタノール(EtOH 2)を加え、室温で攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物を固体として得た。実施例14cbは、先の操作で得られた固体を水に溶かし、凍結乾燥することで標記化合物を得た。
[反応条件・結果]
【表21】
【0599】
(実施例15) N-(2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)エチル)-4-(アジドメチル)ベンズアミド基導入アルギン酸(15-A2)の合成:
【化77】
【0600】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:A-2)水溶液(40 mL)に、DMT-MM(112 mg)、文献公知の方法にて合成した式SM15の化合物(N-(2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)エチル)-4-(アジドメチル)ベンズアミド 塩酸塩;CAS REGISTRY NO.:2401876-41-1)(38 mg)のエタノール(4.0 mL)溶液、1モル濃度-重曹水(151 μL)を加え、30℃で3時間攪拌した。塩化ナトリウム(0.4 g)を加えた後、エタノール(80 mL)を加え、30分間室温で攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥した。先の操作で得られた固体を水に溶かし、凍結乾燥することで標記化合物(416 mg)を白色固体として得た。
【0601】
(実施例16a,b) N-(2-(2-アミノエトキシ)エチル)-4-アジドベンズアミド基導入アルギン酸(化合物:16-A2、16-A2b)の合成:
【化78】
【0602】
下記の合成方法および反応条件にて、16-A2および16-A2bの化合物を合成した。
[合成方法]
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製)水溶液に、DMT-MM、文献公知の方法にて合成した式SM16の化合物(N-(2-(2-アミノエトキシ)エチル)-4-アジドベンズアミド 塩酸塩;CAS REGISTRY NO.:2401876-47-7)、1モル濃度-重曹水を加え攪拌した。塩化ナトリウムを加えた後、エタノール(EtOH 2)を加え、室温で攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物を固体として得た。先の操作で得られた固体を水に溶かし、凍結乾燥することで標記化合物を得た。
[反応条件・結果]
【表22】
【0603】
(実施例17a~c) N-(2-アミノエチル)-4-アジドベンズアミド基導入アルギン酸(17-B2、17-B2bおよび17-A2)の合成:
【化79】
【0604】
下記の合成方法および反応条件にて、17-B2、17-B2bおよび17-A2の化合物を合成した。
[合成方法]
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製)水溶液に、DMT-MM、文献公知の方法にて合成した式SM17の化合物(N-(2-アミノエチル)-4-アジドベンズアミド 塩酸塩;CAS REGISTRY NO.:164013-00-7)、1モル濃度-重曹水を加え攪拌した。塩化ナトリウムを加えた後、エタノール(EtOH 2)を加え、室温で攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物を固体として得た。実施例17cは、先の操作で得られた固体を水に溶かし、凍結乾燥することで標記化合物を得た。
[反応条件・結果]
【表23】
【0605】
(実施例18) N-(2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)エチル)-4-アジドベンズアミド基導入アルギン酸(18-A2)の合成:
【化80】
【0606】
1重量%に調製したアルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社製:A-2)水溶液(40 mL)に、DMT-MM(112 mg)、文献公知の方法にて合成した式SM18の化合物(N-(2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)エチル)-4-アジドベンズアミド 塩酸塩;CAS REGISTRY NO.:2401876-48-8)(45 mg)のエタノール(4.0 mL)溶液、1モル濃度-重曹水(151 μL)を加え、30℃で3時間攪拌した。塩化ナトリウム(0.4 g)を加えた後、エタノール(80 mL)を加え、30分間室温で攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥した。先の操作で得られた固体を水に溶かし、凍結乾燥することで標記化合物(408 mg)を白色固体として得た。
【表24-1】
【表24-2】
【表25-1】
【表25-2】
【表25-3】
【0607】
(実施例F1-A)架橋アルギン酸ゲルファイバの作製(1)
化合物4-A2dまたは化合物1-A2dから調製される3重量%アルキン水溶液(アルキン溶液)および化合物11-A2d、化合物13-A2bまたは化合物16-A2bから調製される3重量%のアジド水溶液(アジド溶液)を用いて、表26に示す組合せにて、前記アルキン溶液およびアジド溶液を等容量混合し、化学修飾アルギン酸混合溶液(F1A-M1)を調製した。混合溶液F1A-M1およびアルギン酸ナトリウム(B-2)から調製された3重量%アルギン酸水溶液(ALGS)を表26に示す比率にて混合し、アルギン酸混合溶液(F1A-M2)とした。続いて、混合溶液F1A-M2および20mg/mLのブルーデキストラン(cytiva製、Blue Dextran 2000、コード番号17036001)含有の1.8重量%食塩水を等容量混合し、アルギン酸混合溶液(F1A-M3)とした。混合溶液F1A-M3をハミルトンシリンジに充填し、シリンジに金属ニードル(武蔵エンジニアリング, SNA-19G-B)、シリコンチューブ(アズワン,φ1×φ2)及びガラスキャピラリ(ナリシゲ,G-1)を順次接続し、シリンジポンプにセットした。前記ガラスキャピラリの先端を100 mmol/Lの塩化カルシウム水溶液が含まれるビーカーに浸漬し、流速250μL/minで当該塩化カルシウム水溶液中に1分間射出した。前記塩化カルシウム水溶液中に射出された繊維状形態の物質は、30分以上静置することにより、架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA-1A)として得られた(表26中 CLA-1ANo.参照)。
【表26】
【0608】
(実施例F1-B)架橋アルギン酸ゲルファイバの作製(2)
化合物4-A2dから調製された3重量%化合物4-A2d水溶液および化合物11-A2dから調製された3重量%化合物11-A2d水溶液を等容量混合し、化学修飾アルギン酸の混合溶液(F1B-M1)を調製した。混合溶液F1B-M1およびアルギン酸ナトリウム(B-2)から調製された3重量%アルギン酸ナトリウム水溶液(ALGS)を1:2の容量比率にて混合し、3重量%アルギン酸混合溶液(F1B-M1B)とした。混合溶液F1B-M1Bを表27に示す濃度に調製し(表27中;F1B-M2の濃度)、別途調製したブルーデキストラン(cytiva製、Blue Dextran 2000、コード番号17036001)を含有する食塩水(F1B-BS:ブルーデキストランの濃度と塩化ナトリウムの濃度は表27の通り)とを、表27に示す容量比率にて混合し、アルギン酸混合溶液(F1B-M3)とした。混合溶液F1B-M3中のブルーデキストラン濃度(mg/mL)と塩化ナトリウム濃度(mg/mL)は、ブルーデキストランが10 mg/mL、塩化ナトリウムが9 mg/mLとなる様に調製した。混合溶液F1B-M3を、ハミルトンシリンジに充填した。続いて、シリンジに金属ニードル(武蔵エンジニアリング, SNA-19G-B)、シリコンチューブ(アズワン,φ1×φ2)及びガラスキャピラリ(ナリシゲ,G-1)を順次接続し、シリンジポンプにセットした。前記ガラスキャピラリの先端を、100 mmol/Lの塩化カルシウム水溶液が含まれるビーカーに浸漬し、流速250μL/minで1分間射出した。前記塩化カルシウム水溶液中に射出された繊維状形態の物質は、30分以上静置することにより、架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA-1B)として得られた(表27中 CLA-1BNo.参照)。
【表27】
【0609】
(実施例F1-C)ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの作製(1)
前記(実施例F1-A)または(実施例F1-B)で得られた、塩化カルシウム水溶液中の架橋アルギン酸ゲルファイバをセルストレーナーを用いてろ過、分取した。分取した架橋アルギン酸ゲルファイバを、表28に示す各組成のカチオン性ポリマーが含まれる水溶液に添加し、37℃、125 rpmで20分間振とう攪拌し、架橋アルギン酸ゲルファイバをポリマーコーティングした。水溶液中のファイバを、セルストレーナーを用いてろ過、分取し、生理食塩液5mLを使用して2回洗浄して、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(CFB-1)(表29中 CFB-1No.参照)を得た。
【表28】
【表29】
【0610】
(実施例F1-D)ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの安定性
(1)ファイバのEDTA処理
前記(実施例F1-C)で得られたポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(CFB-1)を20mM EDTA・2Na/生理食塩液(5mL)に添加し、37℃、125 rpmで20分間振とう攪拌した。前記キレート処理したポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは、再度セルストレーナーを用いてろ過、分取し、生理食塩液5mLを使用して2回洗浄した。得られたポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバは安定性評価試験の実施まで5mL生理食塩液中に浸漬した。
【0611】
(2)振盪崩壊試験
前記EDTA処理したポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバをセルストレーナーを用いて分離した後、10mLのPBS溶液を加えた25mL遠沈管に添加し、37℃で24時間振盪した。
【0612】
前記、EDTA処理後、振盪後のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの安定性は、以下の指標に基づき評価した。
安定性評価(スコア):
3:ファイバの崩壊/溶解/変形/ブルーデキストランの溶出等が全く認められない
2:ファイバの一部に崩壊/溶解/変形/ブルーデキストランの溶出(累積で100μg/mL未満)等が認められる
1:ファイバに明らかな崩壊/溶解/変形/ブルーデキストランの溶出(累積で100μg/mL以上)等が認められる
【表30】
【0613】
(実施例F2-A)抗体産生細胞含有架橋アルギン酸ゲルファイバの作製
下記表31の組成を有するG016培地を調製した。続いて、メトトレキサート(以下、MTXとする)を1 mmol/LになるようにD-PBSに溶解させ、MTX溶液を調製した。前記MTX溶液を終濃度1 μmol/LになるようにG016培地で希釈し、抗体産生培地溶液を調製した。
【表31】
【0614】
下記表32および表33の処方で調製されたアルキン水溶液およびアジド水溶液を用いて、表34に示す組合せで等容量混合し、アルギン酸混合溶液(F2A-M1)を調製した。
【表32】
【表33】
【0615】
混合溶液F2A-M1およびアルギン酸ナトリウム(B-2)と0.9重量%塩化ナトリウム水溶液から調製された3重量%アルギン酸水溶液(0.9%塩化ナトリウム含有)(ALGS2)またはアルギン酸ナトリウム(A-2)と0.9重量%塩化ナトリウム水溶液から調製された3重量%アルギン酸水溶液(0.9%塩化ナトリウム含有)(ALGS2A)を表34に示す比率にて混合し、アルギン酸混合溶液(F2A-M2)とした。続いて、混合溶液F2A-M2および抗GPVI抗体産生細胞(2×10
7細胞/mL)を含む抗体産生培地溶液を等容量混合し、混合溶液(F2A-M3)とした。混合溶液F2A-M3をハミルトンシリンジに充填し、シリンジにルアーロック用ニードル(関東化学株式会社, 15/23 NL-F)を接続し、シリンジポンプにセットした。前記ニードルの先端を100 mmol/Lの塩化カルシウム水溶液が含まれるビーカーに浸漬し、流速250μL/minで当該塩化カルシウム水溶液中に2分間射出した。前記塩化カルシウム水溶液中に射出された繊維状形態の物質は、30分以上静置することにより、抗GPVI抗体産生細胞含有の架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA-G)を得た(表34中 CLA-G No.参照)。
【表34】
【0616】
(実施例F2-B)生理活性物質産生細胞含有架橋アルギン酸ゲルファイバの作製
下記表35の組成を有する完全培地を調製した。
【表35】
【0617】
(実施例F2-A)の表32および33に記載された、F2A1のアルキン水溶液およびF2N2のアジド水溶液を等容量混合し、化学修飾アルギン酸混合溶液(F2B-M1)を調製した。混合溶液F2B-M1およびアルギン酸ナトリウム(B-2)と0.9重量%塩化ナトリウム水溶液から調製された3重量%アルギン酸水溶液(0.9%塩化ナトリウム含有)を1:2の比率にて混合し、アルギン酸混合溶液(F2B-M2)とした。続いて、混合溶液F2B-M2とMIN6細胞(1×107細胞/mL)を含む表35の完全培地を等容量を混合し、混合溶液F2B-M3とした。混合溶液F2B-M3をハミルトンシリンジに充填し、シリンジにルアーロック用ニードル(関東化学株式会社, 15/23 NL-F)を接続し、シリンジポンプにセットした。ニードルの先端を100 mmol/Lの塩化カルシウム水溶液が含まれるビーカーに浸漬し、流速125μL/minで当該塩化カルシウム水溶液中に2分間射出した。前記塩化カルシウム水溶液中に射出された繊維状形態の物質は、30分以上静置することにより、MIN6細胞含有の架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA-M)(FB2-B-1)として得られた。
【0618】
(実施例F2-C)細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの作製
前記(実施例F2-A)または(実施例F2-B)で得られた各種細胞含有架橋アルギン酸ゲルファイバを、表36に示す各組成のカチオン性ポリマーが含まれる溶液を用いて、前記(実施例F1-C)に記載される方法と同様にして(振とう攪拌時間は30分)、コーティングを行うことで、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(CFB-S)(表37中 CFB-S No.参照)を得た。
【表36】
【表37】
【0619】
(実施例F3)カチオン性ポリマーによる架橋アルギン酸ゲルファイバのコーティング確認
(実施例F1-A)のNo.F1-A-6に示す条件で作製した架橋アルギン酸ゲルファイバ(FB1-A-6)を用いて、0.1% ポリ-L-リシン-FITCラベル/100mM 塩化カルシウムが含有される水溶液に浸漬した。(実施例F1-C)と同様の操作をした後、得られたファイバの表面を蛍光顕微鏡を使用して観察した。
【0620】
観察結果を
図7に示す。ゲルファイバの表面にポリ-L-リシン-FITCがコーティングされていることが確認された(
図7の背景(黒色)に反転した色の部分がポリ-L-リシン-FITCである)。この結果は、架橋アルギン酸ゲルファイバがカチオン性ポリマーによってコーティングされていることを示唆するものであった。
【0621】
(実施例F4-A)架橋アルギン酸ゲルファイバの作製(3)
アルギン酸ナトリウム(B-2)と注射用生理食塩水(大塚製薬工場製)(INs)から3重量%アルギン酸水溶液(0.9重量%塩化ナトリウム含有)(ALGS2)を調製した。続いて、下記表38および表39の処方でアルキン水溶液およびアジド水溶液を調製した。
【表38】
【表39】
【0622】
前記アルキン水溶液(F4A1、F4A2)及びアジド水溶液(F4N1、F4N2及びF4N3)を下記表の組合せにて等容量混合し、化学修飾アルギン酸混合溶液(F4A-M1)とした。混合溶液F4A-M1及びALGS2を1:2の比率にて混合し、アルギン酸混合溶液(F4A-M2)とした。続いて、下表40の処方で、アルギン酸混合溶液(F4A-M2)、9.9重量%塩化ナトリウム水溶液及び注射用生理食塩水(大塚製薬工場製)(INs)で調製し、混合溶液(F4A-M3)とした。尚、F4A-M3に含まれる全アルギン酸濃度は約1.5重量%である。続いて、混合溶液F4A-M3をハミルトンシリンジに充填し、シリンジに金属ニードル(武蔵エンジニアリング, SNA-19G-B)、シリコンチューブ(アズワン,φ1×φ2)及びガラスキャピラリ(ナリシゲ,G-1)を順次接続し、シリンジポンプにセットした。前記ガラスキャピラリの先端を100 mmol/Lの塩化カルシウム水溶液が含まれるビーカーに浸漬し、流速250μL/minで当該塩化カルシウム水溶液中に1分間射出した。前記塩化カルシウム水溶液中に射出された繊維状形態の物質は、30分以上静置することにより、架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA-X1)(表40中 CLA-X1 No.参照)を得た。
【表40】
(実施例F4-A2)架橋アルギン酸ゲルファイバの作製(3a)
化合物4-A2dあるいは化合物11-A2dに対して、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液(塩化ナトリウムおよび水で調製)を加え、3重量%アルキン水溶液およびアジド水溶液(0.9重量%塩化ナトリウム含有)を調製した(アルキンをF4A3、アジドをF4N4とする)。続いて、下表41の処方で各種アルギン酸ナトリウムと0.9重量%塩化ナトリウム水溶液から3重量%アルギン酸ナトリウム水溶液(0.9重量%塩化ナトリウム含有)を調製した。
【表41】
前記アルキン水溶液(F4A3)及びアジド水溶液(F4N4)を等容量混合し、化学修飾アルギン酸混合溶液(F4A2-M1)とした。続いて、下表42に記載の組み合わせで混合溶液F4A2-M1及び3重量%アルギン酸ナトリウム水溶液(0.9重量%塩化ナトリウム含有)を5:10の比率で混合し、アルギン酸混合溶液(F4A2-M2)とした。混合溶液F4A2-M2と注射用生理食塩水(大塚製薬工場製)(INs)を等容量混合し、混合溶液(F4A2-M3)とした。尚、F4A-M3に含まれる全アルギン酸濃度は1.5重量%である。続いて、混合溶液F4A2-M3をハミルトンシリンジに充填し、シリンジにルアーロック用ニードル(関東化学株式会社, 15/23 NL-F)を接続し、シリンジポンプにセットした。前記ニードルの先端を0.9%塩化ナトリウム含有20 mmol/Lの塩化バリウム水溶液が含まれるビーカーに浸漬し、流速250μL/minで当該塩化バリウム水溶液中に0.8分間射出した。前記水溶液中に射出された繊維状形態の物質は、30分以上静置することにより、架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA-X1A)を得た(表42中 CLA-X1A No.参照)。
【表42】
【0623】
(実施例F4-B)架橋アルギン酸ゲルファイバの作製(4)
前記(実施例F4-A)記載のアルキン水溶液(F4A1)及びアジド水溶液(F4N1)を等容量混合し、化学修飾アルギン酸混合溶液(F4B-M1)とした。混合溶液F4B-M1及び前記ALGS2を下表43の処方で調製し、アルギン酸混合溶液(F4B-M2)とした。続いて、下表43に示すアルギン酸混合溶液F4B-M2及びINsの混合比率で混合溶液(F4B-M3)を調製した。続いて、混合溶液F4B-M3をハミルトンシリンジに充填し、シリンジに金属ニードル(武蔵エンジニアリング, SNA-19G-B)、シリコンチューブ(アズワン,φ1×φ2)及びガラスキャピラリ(ナリシゲ,G-1)を順次接続し、シリンジポンプにセットした。前記ガラスキャピラリの先端を100 mmol/Lの塩化カルシウム水溶液が含まれるビーカーに浸漬し、流速250μL/minで当該塩化カルシウム水溶液中に1分間射出した。前記塩化カルシウム水溶液中に射出された繊維状形態の物質は、30分以上静置することにより、架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA-X2)(表43中 CLA-X2 No.参照)を得た。
【表43】
【0624】
(実施例F4-C)ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの作製(2a)
前記(実施例F4-A)あるいは(実施例F4-B)で得られた、塩化カルシウム水溶液中の架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA-X1およびCLA-X2)をセルストレーナーを用いてろ過、分取した。分取した架橋アルギン酸ゲルファイバを、0.1% ポリ-L-オルニチン臭化水素酸塩/100mM 塩化カルシウムの水溶液に添加し、37℃、125 rpmで30分間振とう攪拌し、架橋アルギン酸ゲルファイバをポリマーコーティングした。水溶液中のファイバを、セルストレーナーを用いてろ過、分取し、生理食塩液5mLを使用して2回洗浄して、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(CFB-X)(表44中 CFB-XNo.参照)を得た。
【表44】
【0625】
(実施例F4-C2)ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの作製(2)
1% ポリ-L-オルニチン臭化水素酸塩、9.2mmol/L ヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸、154mmol/L 塩化ナトリウムが含まれる1%ポリ-L-オルニチン水溶液を調製した。前記1%ポリ-L-オルニチン水溶液を、0.9% 塩化ナトリウム及び20mmol/L 塩化バリウムが含まれる水溶液を用いて希釈し、0.1%ポリ-L-オルニチン水溶液とした。続いて、前記(実施例F4-A2)で得られた塩化バリウム水溶液中の架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA-X1A)をセルストレーナーを用いてろ過、分取した。分取した架橋アルギン酸ゲルファイバを、前記0.1%ポリ-L-オルニチン水溶液に添加し、37℃、125 rpmで30分間振とう撹拌し、架橋アルギン酸ゲルファイバをポリマーコーティングした。水溶液中のファイバを、セルストレーナーを用いてろ過、分取し、生理食塩液10mLを使用して1回洗浄して、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(CFB-X2)(表45中 CFB-X2No.参照)を得た。
【表45】
【0626】
(実施例F4-D)ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの引張試験
前記(実施例F4-C)及び(実施例F4-C2)で得られたポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(CFB-XあるいはCFB-X2)の引張試験は、小型卓上ゲル強度測定機EZ-SX 5NC1(島津、No.I308256D0592)、ロードセルSMT1-5N(S/N=913193)を用い、注射用生理食塩水(大塚製薬工場製)中で、ファイバを治具にセットし測定した。測定値は、ファイバが破断したところの応力をMPa、および歪みを%で、表46に示す。
【表46】
【0627】
表46中、No.F4-D-1~F4-D-10およびF4-D-12~F4-D-15において、0.1MPa以上の引張強度、および100%以上の歪み(伸び率)を示す、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバであることが確認された。
【0628】
(実施例FI-1)抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの培養
【0629】
125 mLポリカーボネート製三角フラスコに、(実施例F2-C)で得られた抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(FB2-A-1-c1、FB2-A-2-c1、FB2-A-3-c1、FB2-A-4-c1、FB2-A-5-c1、FB2-A-6-c1、FB2-A-7-c1、FB2-A-8-c1、FB2-A-9-c1、およびFB2-A-10-c1)を入れ、(実施例F2-A)に記載の抗体産生培地溶液(30 mL)を添加し、37℃、5%CO
2雰囲気下、インキュベータ内で125 rpmで振とうしながら培養を14日または20日間実施した。2~3日に一回、培養液1.8 mLを抜き取り、前記抗体産生培地溶液1.8mLまたはFeed液(Irvine社製、カタログ番号JX F003)1.8mLを添加し、培地の総量を30 mLに保った。また、週に一度培養液の半量交換を実施した。培養期間において、培養液のIgG濃度をCedex Bioアナライザー(ロシュ・ダイアグノスティクス社)によりヒトIgG濃度として測定した。前記細胞封入ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを用いた培養において、培養期間中の累積抗体量および培養液に検出される抗GPVI抗体生産CHO細胞の濃度は表47の通りであった。
【表47】
【0630】
(実施例FI-2)生理活性物質産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの培養
【0631】
<工程1> MIN6細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの培養
(実施例F2-C)で得られたポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(FB2-B-1-c1)を60mm超低接着表面ディッシュ(Corning社製、製品番号:3261)に入れ、(実施例F2-B)に記載の完全培地(5 mL)を添加し、37℃、5%CO2雰囲気下、インキュベータ内で静置して3日あるいは14日間培養した。
【0632】
<工程2>インスリン分泌能評価
(実施例FI-2)<工程1>で3日間あるいは14日間培養した、MIN6細胞封入ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ中のMIN6細胞のインスリン分泌能を評価した。MIN6細胞封入ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを低グルコース溶液(2 mM glucose/KRBH/0.1% BSA)10mL中で2時間培養し、高グルコース溶液(20 mM glucose/KRBH/0.1% BSA)10mLへ溶液交換したのちにさらに2時間培養した。その後再び低グルコース溶液10mLへ溶液交換して2時間培養した。各工程の終了時の溶液中インスリン濃度を超高感度マウスインスリン測定キット(森永生科学研究所製)を使用して測定した。グルコース濃度に依存して、インスリンを放出することが確認できた。
【表48】
【0633】
(実施例F5-A)抗体産生細胞含有架橋アルギン酸ゲルファイバの作製
(実施例F2-A)に記載の表32および表33の処方と同様にして、化合物4-A2dおよび化合物11-A2dの3重量%水溶液(0.9重量%塩化ナトリウム含有)を調製した後、各水溶液を等容量混合して、化学修飾アルギン酸混合溶液(F5A-M1)を調製した。前記混合溶液F5A-M1、アルギン酸ナトリウム(B-2)と注射用生理食塩水(大塚製薬工場製)(INs)から調製された3重量%アルギン酸水溶液(0.9%塩化ナトリウム含有)(ALGS2)をF5A-M1:ALGS2=5:10の比率にて混合して、アルギン酸混合溶液(F5A-M2)とした。続いて、混合溶液F5A-M2およびトシリズマブ産生CHO細胞(1×10
8細胞/mL)を含む(実施例F2-A)に記載の組成を有するG016培地を等容量混合し、細胞含有アルギン酸混合溶液(F5A-M3)とした。前記混合溶液F5A-M3をハミルトンシリンジに充填し、シリンジにルアーロック用ニードル(関東化学株式会社, 15/23 NL-F)を接続し、シリンジポンプにセットした。前記ニードルの先端を100 mmol/Lの塩化カルシウム水溶液あるいは0.9%塩化ナトリウム含有20 mmol/Lの塩化バリウム水溶液が含まれるビーカーに浸漬し、流速250μL/minで当該塩化カルシウムあるいは塩化バリウム水溶液中に0.8分間射出した。前記水溶液中に射出された繊維状形態の物質は、30分以上静置することにより、トシリズマブ産生CHO細胞含有の架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA-G5)を得た(表49中 CLA-G5 No.参照)。
【表49】
【0634】
(実施例F5-B)抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの作製
(実施例F5-A)で得られた抗体産生細胞含有架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA-G5)を表50に示す各組成のカチオン性ポリマー含有水溶液に添加し、37℃、125 rpmで30分間振とう撹拌し、細胞含有架橋アルギン酸ゲルファイバをポリマーコーティングした。尚、ポリマーコーティングに使用した水溶液はコーティングするファイバ量の10倍量使用した。水溶液中のファイバを、セルストレーナーを用いてろ過、分取し、生理食塩水5mLを使用して2回洗浄して、抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(CFB-S2)(表51中 CFB-S2 No.参照)を得た。
【表50】
【表51】
【0635】
(実施例FI-3)抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの培養
125 mLポリカーボネート製三角フラスコに、(実施例F5-B)で得られた抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(FB5-A-1-c1又はFB5-A-2-c2)を1本入れ、(実施例F2-A)に記載のG016培地(30 mL)を添加し、37℃、5%CO
2雰囲気下、インキュベータ内で125 rpmで振とうしながら培養を開始し、5日後に培養温度を30℃とし、同温度にて培養を継続した。この間、2~3日に一回、培養液1.8 mLを抜き取り、前記G016培地1.8mLまたはFeed液(Irvine社製、カタログ番号JX F003)1.8mLを添加し、培地の総量を30 mLに保った。また、週に一度培養液の半量交換を実施した。培養期間において、培養液のIgG濃度をCedex Bioアナライザー(ロシュ・ダイアグノスティクス社)によりヒトIgG濃度として測定した。前記抗体産生細胞封入ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを用いた培養において、各測定日における累積抗体濃度および培養液に検出されるトシリズマブ産生CHO細胞の濃度は表52の通りであった。培養結果より、各ファイバの培養において、抗体の産生量が経時的に増加していることが確認できた。
【表52】
【0636】
(実施例F6)抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの作製
トシリズマブ産生CHO細胞(3×10
7細胞/mLあるいは1×10
8細胞/mL)を含む(実施例F2-A)に記載の組成を有するG016培地および前記(実施例F5-A)で調製された混合溶液F5A-M2を等容量混合し、細胞含有アルギン酸混合溶液(F6A-M3)とした。尚、混合溶液F6A-M3中には、アルキン化合物およびアジド化合物の終濃度が0.5重量%に、トシリズマブ産生CHO細胞を表53に示す濃度で含有させた。前記混合溶液F6A-M3をハミルトンシリンジに充填し、シリンジにルアーロック用ニードル(関東化学株式会社, 15/23 NL-F)を接続し、シリンジポンプにセットした。前記ニードルの先端を0.9%塩化ナトリウム含有20 mmol/Lの塩化バリウム水溶液が含まれるビーカーに浸漬し、流速250μL/minで当該水溶液中に表53に記載した時間射出した。前記水溶液中に射出された繊維状形態の物質は、30分以上静置することにより、トシリズマブ産生CHO細胞含有の架橋アルギン酸ゲルファイバとして得た。続いて、0.1% ポリ-L-オルニチン臭化水素酸塩、0.9% 塩化ナトリウム及び20mmmol/L 塩化バリウムが含まれる水溶液を用いて、前記(実施例F5-B)に記載される方法と同様にしてコーティングを行うことで、抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(CFB-S3)(表53中 CFB-S3 No.参照)を得た。
【表53】
【0637】
(実施例FI-4)抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの培養
125 mLポリカーボネート製三角フラスコに、(実施例F6)で得られた抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(FB6-1-c1、FB6-2-c1又はFB6-4-c1は1本、FB6-3-c1は2本)を入れ、(実施例F2-A)に記載の組成を有するG016培地を添加し、ゲルファイバ及びG016培地の総量を30mLとし、37℃、5%CO
2雰囲気下、インキュベータ内で125 pmで振とうしながら培養を開始し、5日後に培養温度を30℃とし、同温度にて培養を継続した。培養開始2日後に、培養液1.8 mLを抜き取り、Feed液(Irvine社製、カタログ番号JX F003)1.8mLを添加し、培地の総量を30 mLに保った。以降、2~3日に一回、培養液の半量交換を実施した。培養期間において、培養液のIgG濃度をCedex Bioアナライザー(ロシュ・ダイアグノスティクス社)によりヒトIgG濃度として測定した。前記抗体産生細胞封入ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを用いた培養において、各測定日における累積抗体濃度および培養液に検出されるトシリズマブ産生CHO細胞の濃度は表54の通りであった。培養結果より、各ファイバの培養において、抗体の産生量が経時的に増加していることが確認できた。
【表54】
【0638】
(実施例F7)抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの作製
抗GPVI抗体産生細胞(2×10
7細胞/mL)を含む(実施例F2-A)に記載の抗体産生培地溶液および前記(実施例F5-A)で調製された混合溶液F5A-M2を等容量混合し、細胞含有アルギン酸混合溶液(F7A-M3)とした。尚、混合溶液F7A-M3中には、アルキン化合物およびアジド化合物を終濃度0.5重量%で含有させた。前記混合溶液F7A-M3をハミルトンシリンジに充填し、シリンジにルアーロック用ニードル(関東化学株式会社, 15/23 NL-F)を接続し、シリンジポンプにセットした。前記ニードルの先端を0.9%塩化ナトリウム含有20 mmol/Lの塩化バリウム水溶液が含まれるビーカーに浸漬し、流速250μL/minで当該水溶液中に表55に記載した時間射出した。前記水溶液中に射出された繊維状形態の物質は、30分以上静置することにより、抗GPVI抗体産生細胞含有の架橋アルギン酸ゲルファイバとして得た。続いて、0.1% ポリ-L-オルニチン臭化水素酸塩、0.9% 塩化ナトリウム及び20mmol/L 塩化バリウムが含まれる水溶液を用いて、前記(実施例F5-B)に記載される方法と同様にしてコーティングを行うことで、抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(CFB-S4)(表55中 CFB-S4 No.参照)を得た。
【表55】
【0639】
(実施例FI-5)抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの培養
125 mLポリカーボネート製三角フラスコに、(実施例F7)で得られた抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(FB7-1-c1又はFB7-2-c1は1本、FB7-3-c1は2本)を入れ、(実施例F2-A)に記載の抗体産生培地溶液を添加し、ゲルファイバ及び抗体産生培地溶液の総量を30mLとし、37℃、5%CO
2雰囲気下、インキュベータ内で125 rpmで振とうしながら培養した。培養開始2日後に、培養液1.8 mLを抜き取り、Feed液(Irvine社製、カタログ番号JX F003)1.8mLを添加し、培地の総量を30 mLに保った。以降、2~3日に一回、抗体産生培地溶液を使用して培養液の半量交換を実施した。培養期間において、培養液のIgG濃度をCedex Bioアナライザー(ロシュ・ダイアグノスティクス社)によりヒトIgG濃度として測定した。前記抗体産生細胞封入ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを用いた培養において、各測定日における累積抗体濃度および培養液に検出される抗GPVI抗体産生細胞の濃度は表56の通りであった。培養結果より、各ファイバの培養において、抗体の産生量が経時的に増加していることが確認できた。
【表56】
【0640】
(実施例F8)抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの作製
下表57の処方で各種アルギン酸ナトリウムと注射用生理食塩水(大塚製薬工場製)(INs)から3重量%アルギン酸水溶液(0.9重量%塩化ナトリウム含有)を調製した。続いて、下表58の処方で3重量%アルキン水溶液およびアジド水溶液(0.9重量%塩化ナトリウム含有)を調製した。
【表57】
【表58】
【0641】
前記表58に記載の3重量%アルキン水溶液及びアジド水溶液(0.9重量%塩化ナトリウム含有)を下表59に示す処方にて等容量混合し、化学修飾アルギン酸混合溶液(F8A-M1)を調製した。混合溶液F8A-M1、前記3重量%アルギン酸ナトリウム水溶液(0.9重量%塩化ナトリウム含有)を下表59に記載された組み合わせで5:10になるように混合し、アルギン酸混合溶液(F8A-M2)を調製した。続いて、トシリズマブ産生CHO細胞(1×10
8細胞/mL)を含む(実施例F2-A)に記載の組成を有するG016培地および混合溶液F8A-M2を等容量混合し、細胞含有アルギン酸混合溶液(F8A-M3)とした。尚、混合溶液F8A-M3中には、アルキン化合物およびアジド化合物を終濃度0.5重量%で含有させた。
混合溶液F8A-M3をハミルトンシリンジに充填し、シリンジにルアーロック用ニードル(関東化学株式会社, 15/23 NL-F)を接続し、シリンジポンプにセットした。前記ニードルの先端を0.9%塩化ナトリウム含有20 mmol/Lの塩化バリウム水溶液が含まれるビーカーに浸漬し、流速250μL/minで0.8分間射出した。前記水溶液中に射出された繊維状形態の物質は、30分以上静置することにより、トシリズマブ産生CHO細胞含有の架橋アルギン酸ゲルファイバとして得た。続いて、得られたトシリズマブ産生CHO細胞含有の架橋アルギン酸ゲルファイバおよび、0.1% ポリ-L-オルニチン臭化水素酸塩、0.9% 塩化ナトリウム及び20mmmol/L 塩化バリウムが含まれる水溶液を用いて、前記(実施例F5-B)に記載される方法と同様にしてコーティングを行うことで、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(CFB-S5)(表59中 CFB-S5 No.参照)を得た。
【表59】
【0642】
(実施例FI-6)抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの培養
125 mLポリカーボネート製三角フラスコに、(実施例F8)で得られた抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(FB8-1-c1、FB8-2-c1、FB8-3-c1、FB8-4-c1又はFB8-5-c1)を1本入れ、(実施例F2-A)に記載の組成を有するG016培地(30 mL)を添加し、37℃、5%CO
2雰囲気下、インキュベータ内で125 rpmで振とうしながら培養を開始し、5日後に培養温度を30℃とし、同温度にて培養を継続した。この間、2~3日に一回、培養液1.8 mLを抜き取り、前記G016培地1.8mLまたはFeed液(Irvine社製、カタログ番号JX F003)1.8mLを添加し、培地の総量を30 mLに保った。また、週に一度培養液の半量交換を実施した。培養期間において、培養液のIgG濃度をCedex Bioアナライザー(ロシュ・ダイアグノスティクス社)によりヒトIgG濃度として測定した。前記抗体産生細胞封入ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを用いた培養において、各測定日における累積抗体濃度および培養液に検出されるトシリズマブ産生CHO細胞の濃度は表60の通りであった。培養結果より、各ファイバの培養において、抗体の産生量が経時的に増加していることが確認できた。本培養結果において、ファイバの伸縮性((実施例F4-D)における引張試験の結果)に応じて、より高い抗体産生となった。
【表60】
【0643】
(実施例F9)抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの作製
トシリズマブ産生CHO細胞(1×10
8細胞/mL)を含む(実施例F2-A)に記載の組成を有するG016培地および前記(実施例F5-A)で調製されたアルギン酸混合溶液F5A-M2を等容量混合し、細胞含有アルギン酸混合溶液(F9A-M3)とした。尚、混合溶液F9A-M3中には、アルキン化合物およびアジド化合物の終濃度を0.5重量%で含有させた。前記混合溶液F9A-M3をハミルトンシリンジに充填し、シリンジにルアーロック用ニードル(関東化学株式会社, 15/23 NL-F)を接続し、シリンジポンプにセットした。前記ニードルの先端を0.9%塩化ナトリウム含有20 mmol/Lの塩化バリウム水溶液が含まれるビーカーに浸漬し、流速250μL/minで当該水溶液中に0.8分間射出した。前記水溶液中に射出された繊維状形態の物質は、30分以上静置することにより、トシリズマブ産生CHO細胞含有の架橋アルギン酸ゲルファイバとして得た。得られた前記細胞含有架橋アルギン酸ゲルファイバを、表61に示す各組成のカチオン性ポリマー含有水溶液を用いて、前記(実施例F5-B)に記載される方法と同様にしてコーティングを行うことで、抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(CFB-S6)(表62中 CFB-S6 No.参照)を得た。
【表61】
【表62】
【0644】
(実施例FI-7)抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの培養
125 mLポリカーボネート製三角フラスコに、前記(実施例F9)で得られた抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(FB9-1-c1、FB9-2-c2又はFB9-3-c3)を1本入れ、(実施例F2-A)に記載のG016培地(30 mL)を添加し、37℃、5%CO
2雰囲気下、インキュベータ内で125 pmで振とうしながら培養を開始し、5日後に培養温度を30℃とし、同温度にて培養を継続した。この間、2~3日に一回、培養液1.8 mLを抜き取り、前記G016培地1.8mLまたはFeed液(Irvine社製、カタログ番号JX F003)1.8mLを添加、あるいは培養液の半量交換を実施した。培養期間において、培養液のIgG濃度をCedex Bioアナライザー(ロシュ・ダイアグノスティクス社)によりヒトIgG濃度として測定した。前記抗体産生細胞封入ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを用いた培養において、各測定日における累積抗体濃度および培養液に検出されるトシリズマブ産生CHO細胞の濃度は表63の通りであった。培養結果より、FB9-1-c1及びFB9-1-c3のファイバの培養において、抗体の産生量が経時的に増加していることが確認できた。
【表63】
【0645】
(実施例F16-A)架橋アルギン酸ゲルファイバの作製
下表64の処方で3重量%アルギン酸ナトリウム水溶液、アルキン水溶液およびアジド水溶液(0.9重量%塩化ナトリウム含有)を調製した。
【表64】
【0646】
前記アルキン水溶液(F16A1)およびアジド水溶液(F16N1)を等容量混合し、化学修飾アルギン酸混合溶液(F16A-M1)を調製した。混合溶液F16A-M1およびALGS2BをF16A-M1:ALGS2B=5:10の比率で混合して、アルギン酸混合溶液(F16A-M2)とした。続いて、混合溶液F16A-M2およびビーズ懸濁液(Spheretech製、Fluorescent UV Particles、コード番号FP-10040-2)を等容量混合し、ビーズ含有アルギン酸混合溶液(F16A-M3)とした。混合溶液F16A-M3をハミルトンシリンジに充填し、シリンジにルアーロック用ニードル(関東化学株式会社, 15/23 NL-F)を接続し、シリンジポンプにセットした。前記ニードルの先端を0.9%塩化ナトリウム含有20 mmol/Lの塩化バリウム水溶液が含まれるビーカーに浸漬し、流速250μL/minで1分間射出した。尚、3秒毎に解剖ハサミを使用して、射出直後の繊維状形態の物質を切断した。切断した繊維状形態の物質は、前記塩化バリウム水溶液中で30分以上静置することにより、長さ約5cmの架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA-16A)として得た。
【0647】
(実施例F16-B)ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの作製
前記(実施例F16-A)で得られた、塩化バリウム水溶液中の架橋アルギン酸ゲルファイバをセルストレーナーを用いてろ過、分取し、分取した架橋アルギン酸ゲルファイバを、カチオン性ポリマーが含まれる水溶液に添加し、37℃、125 rpmで30分間振とう撹拌し、架橋アルギン酸ゲルファイバをポリマーコーティングし、水溶液中のファイバを、セルストレーナーを用いてろ過、分取し、生理食塩液5mLを使用して2回洗浄して、ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(CFB-16)を得る。
【0648】
(実施例F17-A)抗体産生細胞含有架橋アルギン酸ゲルファイバの作製
下表65の処方で3重量%アルキン水溶液およびアジド水溶液(0.9重量%塩化ナトリウム含有)を調製した。
【表65】
【0649】
前記表65に記載の化合物4-A2d、化合物11-A2dおよび化合物11-A2fの3重量%水溶液(0.9重量%塩化ナトリウム含有)を調製した後、下表66に記載の組み合わせにて、アルキンおよびアジド水溶液を等容量混合して、化学修飾アルギン酸混合溶液(F17A-M1)を調製した。前記混合溶液F17A-M1、アルギン酸ナトリウム(B-2)と注射用生理食塩水(大塚製薬工場製)(INs)から調製された3重量%アルギン酸水溶液(0.9%塩化ナトリウム含有)(ALGS2)をF17A-M1:ALGS2=5:10の比率にて混合して、アルギン酸混合溶液(F17A-M2)とした。続いて、混合溶液F17A-M2およびトシリズマブ産生CHO細胞(3×10
7細胞/mL)を含む(実施例F2-A)に記載の組成を有するG016培地を等容量混合し、細胞含有アルギン酸混合溶液(F17A-M3)とした。前記混合溶液F17A-M3を用いて、以下の操作方法(操作方法A、B)に準じて、操作を実施することで、抗体産生細胞含有架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA-G17)(表66中 CLA-G17 No.参照)を得た。
(操作方法A)(実施例F16-A)に記載の操作方法
(操作方法B)前記ニードルの先端を0.9%塩化ナトリウム含有20 mmol/Lの塩化バリウム水溶液が含まれるビーカーに浸漬し、流速250μL/minで当該塩化バリウム水溶液中に射出した。前記水溶液中に射出された繊維状形態の物質は、30分以上静置する。
尚、FB17-3およびFB17-4のファイバ長は、約2-4cmである。
【表66】
【0650】
(実施例F17-B)抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの作製
(実施例F17-A)で得られた抗体産生細胞含有架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA-G17)を、0.1% ポリ-L-オルニチン臭化水素酸塩、0.9% 塩化ナトリウム及び20mmmol/L 塩化バリウムが含まれる水溶液を用いて、前記(実施例F5-B)に記載される方法と同様にしてコーティングを行うことで、抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(CFB-G17)を得た。尚、コーティングに使用したファイバ量は下表67に示す通りである(表67中 CFB-G17 No.参照)。
【表67】
【0651】
(実施例FI-17)抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの培養
前記(実施例F-17B)で得られたポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(CFB-G17)を用いて、以下の操作方法(操作方法1、2)に準じて、操作を実施することで抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの培養を行った。
(実施操作1)
磁気撹拌子を備えたガラス製培養槽(全容500mL培養槽)に、0.01%の消泡剤(Sigma製、AntiformC Emulsion、カタログ番号A8011)を添加した前記(実施例F2-A)に記載のG016培地及び前記(実施例F17-B)で得られた抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(FB17-1-c1あるいはFB17-3-c1)を入れ、培養系の総量を300mLとた。前記抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを含む培養槽を、フィルター滅菌した空気を常時通気しながら、pHが約7になるようにCO
2を適宜通気させ、37℃、下表68に示す速度で撹拌しながら培養を開始し、5日後に培養温度を30℃とし、同温度にて培養を継続した。培養開始日から下表68に記載の培地交換速度(vessel volume/day、以下vvdと記載)にて培養液を連続的に入れ替えた。尚、培養液の交換には、前記G016培地に0.01%の消泡剤を添加して使用した。
(実施操作2)
125 mLポリカーボネート製三角フラスコに、前記(実施例F17-B)で得られた抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(FB17-2-c1あるいはFB17-4-c1)を入れ、(実施例F2-A)に記載のG016培地を添加し、培養系の総量を30mLとした。37℃、5%CO
2雰囲気下、インキュベータ内で下表68に記載の撹拌速度で振とうしながら培養を開始し、5日後に培養温度を30℃とし、同温度にて培養を継続した。この間、2~3日に一回、培養液1.8 mLを抜き取り、前記G016培地1.8mLまたはFeed液(Irvine社製、カタログ番号JX F003)1.8mLを添加、あるいは培養液の半量交換を実施した。
培養期間において、培養液のIgG濃度をCedex Bioアナライザー(ロシュ・ダイアグノスティクス社)によりヒトIgG濃度として測定した。前記抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを用いた培養において、培養最終日における培養液に検出されるトシリズマブ産生CHO細胞の濃度および累積抗体濃度は下表68の通りであった。
【表68】
【0652】
表68の結果は、ファイバ長を短くすることで、リアクター培養における抗体産生量がフラスコ培養と比較して向上することを示唆するものであった。
【0653】
(実施例F18-A)抗体産生細胞含有架橋アルギン酸ゲルファイバの作製
(実施例F2-A)に記載の表32および表33の処方と同様にして、化合物4-A2dおよび化合物11-A2dの3重量%水溶液(0.9重量%塩化ナトリウム含有)を調製した後、各水溶液を等容量混合して、化学修飾アルギン酸混合溶液(F18A-M1)を調製した。前記混合溶液F18A-M1、アルギン酸ナトリウム(A-3)と注射用生理食塩水(大塚製薬工場製)(INs)から調製された3重量%アルギン酸水溶液(0.9%塩化ナトリウム含有)(ALGS3A)をF18A-M1:ALGS3A=5:10の比率にて混合して、アルギン酸混合溶液(F18A-M2)とした。続いて、混合溶液F18A-M2および抗GPVI抗体産生細胞(2×107細胞/mL)を含む前記(実施例F2-A)に記載の抗体産生培地溶液を等容量混合し、細胞含有アルギン酸混合溶液(F18A-M3)とした。前記混合溶液F18A-M3を用いて、(実施例F17-A)に記載の(操作方法B)と同様の操作を実施することで、抗体産生細胞含有架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA-G18)を得た。
【0654】
(実施例F18-B)抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの作製
(実施例F18-A)で得られた抗体産生細胞含有架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA-G18)を、0.1% ポリ-L-オルニチン臭化水素酸塩、0.9% 塩化ナトリウム及び20mmmol/L 塩化バリウムが含まれる水溶液を用いて、前記(実施例F5-B)に記載される方法と同様にしてコーティングを行うことで、抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(CFB-G18)を得た。尚、コーティングに使用したファイバ量は下表69に示す通りである(表69中 CFB-G18 No.参照)。
【表69】
【0655】
(実施例FI-18)抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの培養
125 mLポリカーボネート製三角フラスコに、前記(実施例F18-B)で得られた抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(FB18-1-c1、FB18-2-c1又はFB18-3-c1)を入れ、前記(実施例F2-A)に記載の抗体産生培地溶液を添加し、培養系の総量を30mLとした。前記三角フラスコを37℃、5%CO
2雰囲気下、インキュベータ内で125 pmで振とうしながら培養を開始し、同温度にて培養を継続した。この間、2~3日に一回、培養液1.8 mLを抜き取り、Feed液(Irvine社製、カタログ番号JX F003)1.8mLを添加、あるいは培養液の半量交換を実施した。尚、培養液の半量交換には、前記(実施例F2-A)に記載の抗体産生培地溶液の他、前記抗体産生培地溶液に対して、45%D-(+)グルコース溶液(SIGMA製、カタログ番号G8769)を1/100あるいは1/50容量添加したグルコース追加抗体産生培地溶液を使用した。培養期間において、培養液のIgG濃度をCedex Bioアナライザー(ロシュ・ダイアグノスティクス社)によりヒトIgG濃度として測定した。前記抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを用いた培養において、各測定日における累積抗体濃度および培養液に検出される抗GPVI抗体産生細胞の濃度は表70の通りであった。培養結果より、FB18-1-c1、FB18-2-c1又はFB18-3-c1のファイバ培養において、抗体の産生量が経時的に増加していることが確認できた。
【表70】
【0656】
(実施例F19-A)抗体産生細胞含有架橋アルギン酸ゲルファイバの作製
(実施例F16-A)に記載の表64の処方と同様にして、化合物4-A2dおよび化合物11-A2fの3重量%水溶液(0.9重量%塩化ナトリウム含有)を調製した後、各水溶液を等容量混合して、化学修飾アルギン酸混合溶液(F19A-M1)を調製した。前記混合溶液F19A-M1、アルギン酸ナトリウム(A-3)と注射用生理食塩水(大塚製薬工場製)(INs)から調製された3重量%アルギン酸水溶液(0.9%塩化ナトリウム含有)(ALGS3A)をF19A-M1:ALGS3A=5:10の比率にて混合して、アルギン酸混合溶液(F19A-M2)とした。続いて、混合溶液F19A-M2および抗GPVI抗体産生細胞(2×107細胞/mL)を含む前記(実施例F2-A)に記載の抗体産生培地溶液を等容量混合し、細胞含有アルギン酸混合溶液(F19A-M3)とした。前記混合溶液F19A-M3を用いて、(実施例F16-A)に準じた操作を実施することで、ファイバ長が約2-4cmの抗体産生細胞含有架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA-19A)を60mL得た。
【0657】
(実施例F19-B)抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの作製
(実施例F19-A)で得られた抗体産生細胞含有架橋アルギン酸ゲルファイバ(CLA-G19)を、0.1% ポリ-L-オルニチン臭化水素酸塩、0.9% 塩化ナトリウム及び20mmmol/L 塩化バリウムが含まれる水溶液を用いて、前記(実施例F5-B)に記載される方法と同様にしてコーティングを行うことで、抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(CFB-G19)を得た。
【0658】
(実施例FI-19)抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバの培養
磁気撹拌子を備えたガラス製培養槽(全容500mL培養槽)に、前記(実施例F2-A)に記載の抗体産生培地溶液及び前記(実施例F19-B)で得られた抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ(CFB-G19)を入れ、培養系の総量を300mLとた。前記抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを含む培養槽を、フィルター滅菌した空気を常時通気しながら、pHが約7になるようにCO
2を適宜通気させ、37℃、350 rpmで撹拌しながら培養を開始した。1日後に撹拌速度を210 rpmとし、37℃、同速度にて培養を継続した。培養開始1日後から、(実施例FI-17)と同様に約0.5vvdにて培養液を連続的に入れ替えた。尚、培養液の交換には、前記(実施例F2-A)に記載の抗体産生培地溶液あるいは0.01%の消泡剤(Sigma製、AntiformC Emulsion、カタログ番号A8011)を添加した前記抗体産生培地溶液を使用した。培養期間において、培養液のIgG濃度をCedex Bioアナライザー(ロシュ・ダイアグノスティクス社)によりヒトIgG濃度として測定した。前記抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを用いた培養において、各測定日における累積抗体濃度および培養液に検出される抗GPVI抗体産生細胞の濃度は表71の通りであった。
【表71】
【0659】
前記(実施例FI-19)の結果は、抗体産生細胞含有ポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバを用いたリアクター培養において、抗GPVI抗体産生細胞が抗体産生していることを示唆するものであった。
ここでは、抗体、生理活性物質等を産生できる細胞及び架橋アルギン酸ゲルを含むコア層が、カチオン性ポリマー(カチオン性ポリマー層)で被覆されたポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバが提供される。また、当該ファイバの製造方法、及び当該ファイバを用いた抗体、生理活性物質等の培養方法を提供することができる。
コア層に含まれる抗体産生細胞が、抗体を産生する遺伝子組換え動物細胞であって、その宿主細胞が、CHO細胞、CHO細胞亜株、COS細胞、Sp2/0細胞、NS0細胞、SP2細胞、PERC6細胞、YB2/0細胞、YE2/0細胞、1R983F細胞、Namalwa細胞、Wil-2細胞、Jurkat細胞、Vero細胞、Molt-4細胞、HEK293細胞、BHK細胞、HT-1080細胞、KGH6細胞、P3X63Ag8.653細胞、C127細胞、JC細胞、LA7細胞、ZR-45-30細胞、hTERT細胞、NM2C5細胞、及びUACC-812細胞からなる群から選択される細胞である、請求項1に記載のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ。
コア層に含まれる生理活性物質産生細胞が、インスリン分泌細胞、膵島、膵島細胞、ドーパミン分泌細胞、脳下垂体細胞、成長ホルモン分泌細胞、副甲状腺細胞、神経成長因子分泌細胞、血液凝固因子分泌細胞、肝細胞、上皮小体細胞、エリスロポエチン分泌細胞、ノルエピネフリン分泌細胞及び生理活性物質発現ベクターにより形質転換された細胞(遺伝子組換え細胞)からなる群から選択される細胞である、請求項1に記載のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ。
カチオン性ポリマー層が、ポリアミノ酸、塩基性多糖類、及び塩基性ポリマーからなる群から選択されるカチオン性ポリマーである、請求項1に記載のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ。
カチオン性ポリマー層が、ポリ-L-オルニチン(PLO)、ポリ-D-オルニチン(PDO)、ポリ-DL-オルニチン、ポリ-D-リジン(PDL)、ポリ-L-リジン(PLL)、ポリ-DL-リジン、ポリ-L-アルギニン(PLA)、ポリ-D-アルギニン(PDA)、ポリ-DL-アルギニン、ポリ-L-ホモアルギニン(PLHA)、ポリ-D-ホモアルギニン(PDHA)、ポリ-DL-ホモアルギニン、ポリ-L-ヒスチジン(PLH)、ポリ-D-ヒスチジン(PDH)、ポリ-DL-ヒスチジン、ポリメチレン-CO-グアニジン(PMCG)、ポリアリルアミン(PAA)、ポリビニルアミン(PVA)、ポリエチレンイミン、アリルアミン-ジアリルアミン共重合体、およびアリルアミン-マレイン酸共重合体からなる群から選択されるカチオン性ポリマーである、請求項1に記載のポリマーコーティング架橋アルギン酸ゲルファイバ。