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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020404
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】水性の組成物-肆-
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/498 20060101AFI20240206BHJP
   A61K 31/551 20060101ALI20240206BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240206BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 31/5575 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 31/382 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 31/542 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
A61K31/498
A61K31/551
A61P27/02
A61K9/08
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/5575
A61K31/5377
A61K31/353
A61K31/382
A61K31/542
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023194188
(22)【出願日】2023-11-15
(62)【分割の表示】P 2022033657の分割
【原出願日】2017-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2016119087
(32)【優先日】2016-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久我 宏彰
(57)【要約】      (修正有)
【課題】水性組成物中の、ブリモニジンの安定性を向上させる技術を提供する。
【解決手段】次の成分(A)及び(B):
(A)ブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
(B)一般式(1)

[式中、Xはハロゲン原子を示す。]で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
を含有する、水性組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
ブリモニジン酒石酸塩(化学名:5-Bromo-N-(4,5-dihydro-1H-imidazol-2-yl)quinoxaline-6-amine mono-(2R,3R)-tartrate)等のブリモニジンは、アドレナリンα2受容体作動薬の一種であり、房水産生抑制作用及びぶどう膜強膜流出路からの房水流出促進作用等を有し、優れた眼圧下降効果を発揮することから、例えば高眼圧症・緑内障治療薬等の眼科用剤の有効成分として利用されている(非特許文献1)。眼科用剤は通常、水を含有する組成物(水性組成物)であり、ブリモニジンを含有する水性組成物について、種々検討がなされている(例えば、特許文献1、2等)。
【0003】
ところで、以下の構造式:
【0004】
【化1】
【0005】
で表されるリパスジル(化学名:4-フルオロ-5-{[(2S)-2-メチル-1,4-ジアゼパン-1-イル]スルホニル}イソキノリン)や、以下の構造式:
【0006】
【化2】
【0007】
で表される4-ブロモ-5-{[(2S)-2-メチル-1,4-ジアゼパン-1-イル]スルホニル}イソキノリンなどのハロゲン化イソキノリン誘導体は、Rhoキナーゼ阻害作用等の薬理作用(例えば、特許文献3、4)を有し、眼疾患の予防や治療に有用であることが知られている。具体的には例えば、高眼圧症や緑内障等の予防又は治療(例えば、特許文献5)に有用であることが報告されており、また、リパスジルを有効成分とする高眼圧症・緑内障治療剤として、グラナテック(登録商標)点眼液0.4%が日本において上市されるに至っている。
しかしながら、ブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と、ハロゲン化イソキノリン誘導体とを共に含有する水性組成物については、これまでに具体的に報告等されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2004-504279号公報
【特許文献2】特開2012-246304号公報
【特許文献3】特許第4212149号公報
【特許文献4】国際公開第2006/115244号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2006/068208号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】アイファガン(登録商標)点眼液0.1% 医薬品インタビューフォーム、千寿製薬株式会社 2013年5月(改訂第4版)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
水性組成物は、水を含有するため眼組織等の生体に優しく安全性に優れ、また、製造時や使用時においても取扱い易い、というメリットを有するものの、水を介した反応等により有効成分が不安定化し易い。ブリモニジンを含有する水性組成物においても、その安定性を向上させることにより、より品質に優れる医薬品等の提供が可能となる。
従って、本発明は、水性組成物中の、ブリモニジンの安定性を向上させる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討したところ、驚くべきことに、ブリモニジンを含有する水性組成物に、さらにリパスジルに代表されるハロゲン化イソキノリン誘導体を含有せしめることにより、水性組成物中のブリモニジンの含量低下が抑制されることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、次の成分(A)及び(B):
(A)ブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
(B)一般式(1)
【0013】
【化3】
【0014】
[式中、Xはハロゲン原子を示す。]
で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
を含有する、水性組成物を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、次の成分(A):
(A)ブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
を含有する水性組成物に、次の成分(B):
(B)前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
を含有せしめる、水性組成物中のブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の安定化方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、水性組成物中のブリモニジンの含量低下を抑制でき、安定性に優れる水性組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<ブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物>
本明細書において「ブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物」には、ブリモニジンのみならず、ブリモニジンの薬理学上許容される塩、さらにはブリモニジンやその薬理学上許容される塩と、水やアルコール等との溶媒和物も含まれる。薬理学上許容される塩としては、特に限定されないが、具体的には例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、フッ化水素酸塩、臭化水素酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、中でも、酒石酸塩が好ましい。
【0018】
ブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物としては、ブリモニジン、ブリモニジン酒石酸塩(ブリモニジン1酒石酸塩)(化学名:5-Bromo-N-(4,5-dihydro-1H-imidazol-2-yl)quinoxaline-6-amine mono-(2R,3R)-tartrate)が好ましい。
ブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は公知であり、公知の方法により製造しても良く、市販品を使用しても良い。
【0019】
水性組成物中のブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含有量は特に限定されず、適用疾患や患者の性別、年齢、症状等に応じて適宜検討して決定すればよいが、優れた薬理作用を得る観点から、水性組成物全容量に対して0.01~10w/v%含有するのが好ましく、0.02~1w/v%含有するのがより好ましく、0.06~0.5w/v%含有するのが特に好ましい。
【0020】
<一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物>
前記一般式(1)において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。前記一般式(1)において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、臭素原子が好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
また、前記一般式(1)において、メチル基の置換したホモピペラジン環を構成する炭素原子は不斉炭素である。そのため、立体異性が生じるが、一般式(1)で表される化合物にはいずれの立体異性体も包含され、単一の立体異性体でもよく、各種立体異性体の任意の割合の混合物でもよい。前記一般式(1)で表される化合物としては、絶対配置がS配置である化合物が好ましい。
【0021】
前記一般式(1)で表される化合物の塩としては、薬学上許容される塩であれば特に限定されず、具体的には例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、フッ化水素酸塩、臭化水素酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、塩酸塩が好ましい。
さらに、前記一般式(1)で表される化合物又はその塩は、水和物やアルコール和物等の溶媒和物であってもよく、水和物であるのが好ましい。
【0022】
前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物としては、具体的には例えば、
リパスジル(化学名:4-フルオロ-5-{[(2S)-2-メチル-1,4-ジアゼパン-1-イル]スルホニル}イソキノリン)若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
4-ブロモ-5-{[(2S)-2-メチル-1,4-ジアゼパン-1-イル]スルホニル}イソキノリン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
等が挙げられる。
【0023】
前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物としては、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、4-ブロモ-5-{[(2S)-2-メチル-1,4-ジアゼパン-1-イル]スルホニル}イソキノリン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物が好ましく、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物がより好ましく、リパスジル若しくはその塩酸塩又はそれらの水和物がさらに好ましく、以下の構造式:
【0024】
【化4】
【0025】
で表されるリパスジル塩酸塩水和物(リパスジル1塩酸塩2水和物)が特に好ましい。
【0026】
前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は公知であり、公知の方法により製造できる。具体的には例えば、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、国際公開第1999/020620号パンフレット、国際公開第2006/057397号パンフレット記載の方法等により製造することが出来る。また、4-ブロモ-5-{[(2S)-2-メチル-1,4-ジアゼパン-1-イル]スルホニル}イソキノリン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、国際公開第2006/115244号パンフレット記載の方法等により製造することが出来る。
【0027】
水性組成物中の前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含有量は特に限定されないが、ブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含量低下の抑制作用の観点から、水性組成物全容量に対して、一般式(1)で表される化合物のフリー体に換算して0.01~10w/v%含有するのが好ましく、0.1~8w/v%含有するのがより好ましく、0.25~6w/v%含有するのが特に好ましい。中でも、一般式(1)で表される化合物としてリパスジルを用いる場合においては、ブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含量低下の抑制作用の観点から、水性組成物全容量に対して、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を、フリー体に換算して0.05~5w/v%含有するのが好ましく、0.1~3w/v%含有するのがより好ましく、0.1~2w/v%含有するのがさらにより好ましく、0.25~1w/v%含有するのが特に好ましい。
【0028】
また、水性組成物中のブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物との含有質量比率は特に限定されないが、ブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含量低下の抑制作用の観点から、一般式(1)で表される化合物のフリー体に換算した1質量部に対し、ブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を0.01~1.5質量部含有するのが好ましく、0.04~0.8質量部含有するのがより好ましく、0.08~0.4質量部含有するのが特に好ましい。中でも、一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物がリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である場合においては、ブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含量低下の抑制作用の観点から、リパスジルのフリー体に換算して1質量部に対し、ブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を0.02~1質量部含有するのが好ましく、0.06~0.5質量部含有するのがより好ましく、0.1~0.3質量部含有するのが特に好ましい。
【0029】
本明細書において「水性組成物」とは、少なくとも水を含有する組成物を意味し、その性状としては、液状(溶液又は懸濁液)、半固形状(軟膏)が挙げられ、液状が好ましい。なお、組成物中の水としては例えば、精製水、注射用水、滅菌精製水等を用いることができる。
水性組成物に含まれる水の含有量は特に限定されないが、5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がさらにより好ましく、90~99.8質量%が特に好ましい。
【0030】
水性組成物は、例えば、第十六改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法に従って、種々の剤形とすることができる。剤形としては、例えば、注射剤、吸入液剤、点眼剤、眼軟膏剤、点耳剤、点鼻液剤、注腸剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、ゲル剤、経口液剤、シロップ剤等が挙げられる。剤形としては、ブリモニジンや一般式(1)で表される化合物の有する薬理作用を有利に利用する観点から、眼科用剤、具体的には点眼剤、眼軟膏剤が好ましく、点眼剤が特に好ましい。
【0031】
水性組成物には、剤形に応じて、医薬品や医薬部外品等で利用される添加物を含んでいても良い。このような添加物としては、例えば、無機塩類、等張化剤、キレート剤、安定化剤、pH調節剤、防腐剤、抗酸化剤、粘稠化剤、界面活性剤、可溶化剤、懸濁化剤、清涼化剤、分散剤、保存剤、油性基剤、乳剤性基剤、水溶性基剤等が挙げられる。
こうした添加物としては、具体的には例えば、アスコルビン酸、アスパラギン酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アルギン酸、安息香酸ナトリウム、安息香酸ベンジル、イプシロン-アミノカプロン酸、ウイキョウ油、エタノール、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エデト酸ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム水和物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩酸、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液、カルボキシビニルポリマー、乾燥亜硫酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、d-カンフル、dl-カンフル、キシリトール、クエン酸水和物、クエン酸ナトリウム水和物、グリセリン、グルコン酸、L-グルタミン酸、L-グルタミン酸ナトリウム、クレアチニン、クロルヘキシジングルコン酸塩液、クロロブタノール、結晶リン酸二水素ナトリウム、ゲラニオール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム水和物、酸化チタン、ジェランガム、ジブチルヒドロキシトルエン、臭化カリウム、臭化ベンゾドデシニウム、酒石酸、水酸化ナトリウム、ステアリン酸ポリオキシル45、精製ラノリン、D-ソルビトール、ソルビトール液、タウリン、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム水和物、チオ硫酸ナトリウム水和物、チメロサール、チロキサポール、デヒドロ酢酸ナトリウム、トロメタモール、濃グリセリン、濃縮混合トコフェロール、白色ワセリン、ハッカ水、ハッカ油、濃ベンザルコニウム塩化物液50、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、ヒアルロン酸ナトリウム、人血清アルブミン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、氷酢酸、ピロ亜硫酸ナトリウム、フェニルエチルアルコール、ブドウ糖、プロピレングリコール、ベルガモット油、ベンザルコニウム塩化物、ベンザルコニウム塩化物液、ベンジルアルコール、ベンゼトニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物液、ホウ砂、ホウ酸、ポビドン、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレングリコール(70)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、d-ボルネオール、マクロゴール4000、マクロゴール6000、D-マンニトール、無水クエン酸、無水リン酸一水素ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、メタンスルホン酸、メチルセルロース、l-メントール、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ユーカリ油、ヨウ化カリウム、硫酸、硫酸オキシキノリン、流動パラフィン、リュウノウ、リン酸、リン酸水素ナトリウム水和物、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物、リンゴ酸、ワセリン等が例示される。
【0032】
添加物としては、例えば、塩化カリウム、塩化カルシウム水和物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、グリセリン、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム水和物、酒石酸、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム水和物、濃グリセリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ホウ砂、ホウ酸、ポビドン、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、マクロゴール4000、マクロゴール6000、D-マンニトール、無水クエン酸、無水リン酸一水素ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、メチルセルロース、モノエタノールアミン、リン酸、リン酸水素ナトリウム水和物、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物、ヒアルロン酸ナトリウム、ブドウ糖、l-メントール等が好ましい。
【0033】
水性組成物は、さらに、上記した以外に、適用疾患等に応じて、他の薬効成分を含んでいても良い。このような薬効成分としては、例えば、ブナゾシン塩酸塩などのブナゾシン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むα1受容体遮断薬;アプラクロニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むα2受容体作動薬;カルテオロール塩酸塩などのカルテオロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ニプラジロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、チモロールマレイン酸塩などのチモロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ベタキソロール塩酸塩などのベタキソロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、レボブノロール塩酸塩などのレボブノロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ベフノロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、メチプラノロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むβ遮断薬;ドルゾラミド塩酸塩などのドルゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ブリンゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、アセタゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ジクロルフェナミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、メタゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含む炭酸脱水酵素阻害剤;イソプロピルウノプロストン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、タフルプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、トラボプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ビマトプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ラタノプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、クロプロステノール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、フルプロステノール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むプロスタグランジン類;ジピベフリン塩酸塩などのジピベフリン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、エピネフリン、エピネフリンホウ酸塩、エピネフリン塩酸塩などのエピネフリン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含む交感神経作動薬;ジスチグミン臭化物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ピロカルピン、ピロカルピン塩酸塩、ピロカルピン硝酸塩などのピロカルピン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、カルバコール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含む副交感神経作動薬;ロメリジン塩酸塩などのロメリジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むカルシウム拮抗薬;デメカリウム若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、エコチオフェート若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、フィゾスチグミン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むコリンエステラーゼ阻害剤などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を配合できる。
他の薬効成分としては、ラタノプロスト、チモロール、ニプラジロール、ドルゾラミド、及びブリンゾラミド並びにそれらの塩よりなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0034】
水性組成物のpH(25℃)は特に限定されないが、4~8.5が好ましく、5~8がより好ましく、6~7.5が特に好ましい。また、生理食塩水に対する浸透圧比は特に限定されないが、0.6~3が好ましく、0.6~2がより好ましい。
【0035】
水性組成物は、保存安定性、携帯性等の観点から、容器に収容されるのが好ましい。容器の形態は、水性組成物を収容可能であることを限度として特に限定されず、剤形等に応じて適宜選択、設定すればよい。このような容器の形態としては、具体的には例えば、注射剤用容器、吸入剤用容器、スプレー剤用容器、ボトル状容器、チューブ状容器、点眼剤用容器、点鼻剤用容器、点耳剤用容器、バッグ容器等が挙げられる。また、これらの容器はさらに箱、袋等によって包装されていてもよい。
【0036】
容器の材質(材料)は特に限定されず、容器の形態に応じて適宜選択すればよい。具体的には例えば、ガラス、プラスチック、セルロース、パルプ、ゴム、金属等が挙げられる。加工性、スクイズ性や耐久性の観点から、プラスチック製であるのが好ましい。プラスチック製容器の樹脂としては、熱可塑性樹脂であるのが好ましく、例えば、低密度ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレンを含む)、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレナフタレート)等のポリエステル系樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;スチレン系樹脂などが挙げられ、これらの混合体(ポリマーアロイ)であってもよい。
【0037】
水性組成物の適用疾患は特に限定されず、ブリモニジンや前記一般式(1)で表される化合物の有する薬理作用等に応じて適宜選択すればよい。
具体的には例えば、ブリモニジンの有するアドレナリンα2受容体活性化作用や眼圧低下作用に基づき、また、一般式(1)で表される化合物の有するRhoキナーゼ阻害作用や眼圧低下作用に基づき、高眼圧症や緑内障の予防又は治療剤として利用できる。この場合、ブリモニジンの有する眼圧低下作用と一般式(1)で表される化合物の有する眼圧低下作用とにより優れた眼圧低下作用が奏され、優れた高眼圧症、緑内障の予防及び/又は治療作用が得られるため、好ましい。ここで、緑内障としては、より詳細には例えば、原発性開放隅角緑内障、正常眼圧緑内障、房水産生過多緑内障、急性閉塞隅角緑内障、慢性閉塞隅角緑内障、plateau iris syndrome、混合型緑内障、ステロイド緑内障、水晶体の嚢性緑内障、色素緑内障、アミロイド緑内障、血管新生緑内障、悪性緑内障などが挙げられる。
【0038】
また、日本国特許第5557408号公報に開示されるように、一般式(1)で表される化合物の有する作用に基づき、眼底疾患(主として網膜及び/又は脈絡膜に発現する病変。具体的には例えば、高血圧と動脈硬化による眼底変化、網膜中心動脈閉塞症、網膜中心静脈閉塞症(central retinal vein occlusion)や網膜静脈分枝閉塞症(branch retinal vein occlusion)等の網膜静脈閉塞症、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、糖尿病黄斑症、イールズ病(Eales disease)、コーツ病(Coats disease)等の網膜血管先天異常、ヒッペル病(von Hippel disease)、脈なし病(pulseless disease)、黄斑疾患(中心性網脈絡膜症(central serous chorioretinopathy)、嚢胞様黄斑浮腫(cystoid macular edema)、加齢黄斑変性(age-related macular degeneration)、黄斑円孔(macular hole)、近視性黄斑萎縮(myopic macular degeneration)、網膜硝子体界面黄斑変性症、薬物毒性黄斑変性症、遺伝性黄斑変性等)、(裂孔原性、牽引性、滲出性等の)網膜剥離、網膜色素変性症、未熟児網膜症等が挙げられる。)の予防又は治療剤、より好適には糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫又は加齢黄斑変性の予防又は治療剤としても利用してもよい。さらに、後発白内障や前嚢収縮等の白内障術後合併症の治療剤、あるいは角膜浮腫の予防又は治療剤として利用してもよい。
【0039】
なお、水性組成物を眼疾患(好適には、高眼圧症、緑内障及び眼底疾患から選ばれる疾患:特に好適には、高眼圧症、及び緑内障から選ばれる疾患)の予防及び/又は治療剤として利用する場合においては、期待する薬効の程度に応じて、適量(例えば、点眼剤であれば1滴程度)を、1日1~3回程度、好適には1日1~2回程度投与すればよい。
【0040】
なお、本明細書は、これらに何ら限定されるものではないが、例えば以下の態様の発明を開示する。
[1] 次の成分(A)及び(B):
(A)ブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
(B)一般式(1)
【0041】
【化5】
【0042】
[式中、Xはハロゲン原子を示す。]
で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
を含有する、水性組成物。
[2] 前記一般式(1)で表される化合物が、リパスジルである、[1]記載の水性組成物。
[3] 成分(A)が、ブリモニジン酒石酸塩である、[1]又は[2]記載の水性組成物。
[4] 成分(B)が、リパスジル塩酸塩水和物(リパスジル1塩酸塩2水和物)である、[1]~[3]のいずれか記載の水性組成物。
[5] 成分(A)の含有量が、水性組成物全容量に対して、0.01~10(好適には0.02~1、特に好適には0.06~0.5)w/v%である、[1]~[4]のいずれか記載の水性組成物。
[6] 成分(B)の含有量が、水性組成物全容量に対して、一般式(1)で表される化合物のフリー体に換算して0.01~10(好適には0.1~8、特に好適には0.25~6)w/v%である、[1]~[5]のいずれか記載の水性組成物。
[7] 眼科用剤である、[1]~[6]のいずれか記載の水性組成物。
[8] 点眼剤である、[7]記載の水性組成物。
[9] 高眼圧症、及び緑内障よりなる群から選ばれる疾患の予防及び/又は治療剤である、[1]~[8]のいずれか記載の水性組成物。
【0043】
[10] さらに、α1受容体遮断薬、α2受容体作動薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害剤、プロスタグランジン類、交感神経作動薬、副交感神経作動薬、カルシウム拮抗剤及びコリンエステラーゼ阻害剤よりなる群から選ばれる1種以上を含有する、[1]~[9]のいずれか記載の水性組成物。
[11] さらに、ラタノプロスト、チモロール、ニプラジロール、ドルゾラミド、ブリンゾラミド及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を含有する、[1]~[9]のいずれか記載の水性組成物。
【0044】
[12] 次の成分(A):
(A)ブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
を含有する水性組成物に、次の成分(B):
(B)前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
を含有せしめる、水性組成物中のブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の安定化方法(好適には、含量低下の抑制方法)。
[13] 前記一般式(1)で表される化合物が、リパスジルである、[12]記載の方法。
[14] 成分(A)が、ブリモニジン酒石酸塩である、[12]又は[13]記載の方法。
[15] 成分(B)が、リパスジル塩酸塩水和物(リパスジル1塩酸塩2水和物)である、[12]~[14]のいずれか記載の方法。
[16] 水性組成物における成分(A)の含有量が、水性組成物全容量に対して、0.01~10(好適には0.02~1、特に好適には0.06~0.5)w/v%である、[12]~[15]のいずれか記載の方法。
[17] 水性組成物における成分(B)の含有量が、水性組成物全容量に対して、一般式(1)で表される化合物のフリー体に換算して0.01~10(好適には0.1~8、特に好適には0.25~6)w/v%である、[12]~[16]のいずれか記載の方法。
[18] 前記水性組成物が、眼科用剤である、[12]~[17]のいずれか記載の方法。
[19] 前記眼科用剤が、点眼剤である、[18]記載の方法。
[20] 前記水性組成物が、高眼圧症、及び緑内障よりなる群から選ばれる疾患の予防及び/又は治療剤である、[12]~[19]のいずれか記載の方法。
【0045】
[21] 前記水性組成物が、さらにα1受容体遮断薬、α2受容体作動薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害剤、プロスタグランジン類、交感神経作動薬、副交感神経作動薬、カルシウム拮抗剤及びコリンエステラーゼ阻害剤よりなる群から選ばれる1種以上を含有する、[12]~[20]のいずれか記載の方法。
[22] 前記水性組成物が、さらにラタノプロスト、チモロール、ニプラジロール、ドルゾラミド、ブリンゾラミド及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を含有する、[12]~[20]のいずれか記載の方法。
【実施例0046】
次に、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
なお、以下の試験例において、リパスジル1塩酸塩2水和物は、例えば国際公開第2006/057397号パンフレット記載の方法により製造することが出来る。
【0047】
[試験例1]保存試験(ブリモニジンの安定性評価)
水性組成物中のブリモニジンの安定性を評価するため、表1に示す成分及び分量を100mL当たりに含有する、実施例1及び比較例1の水性組成物を常法により調製した。
得られた各水性組成物を80℃で1日間保存し、保存後のブリモニジンの残存率を、以下の通り測定した。
すなわち、保存開始前、及び1日間保存後の各水性組成物について、HPLC装置を用いてピーク高さを測定し、以下の式に従い、ブリモニジンの残存率(%)を算出し、含量低下の指標とした。
【0048】
ブリモニジンの残存率(%)=保存後のブリモニジンのピーク高さ/保存開始前のブリモニジンのピーク高さ×100
【0049】
結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1記載の結果より、ブリモニジンのみ含有する水性組成物(比較例1)では、80℃で1日間保存するとブリモニジンの残存率が96.5%程度となり、含量低下が生じた。一方、ブリモニジンに加えてさらにリパスジルを含有する水性組成物(実施例1)では、80℃で1日間保存後においても、実質的にブリモニジンの含量低下は認められなかった。
【0052】
[試験例2]保存試験(ブリモニジンの安定性評価 その2)
眼科用剤において汎用される添加物を加えた系におけるブリモニジンの安定性を確認するため、表2に示す成分及び分量を100mL当たりに含有する実施例2及び比較例2の水性組成物を常法により調製した。
得られた各種水性組成物を80℃で1日間保存し、保存後のブリモニジンの残存率を、試験例1と同様の方法により測定した。
結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表2記載の結果より、眼科用剤において汎用される添加物を加えた系においてはブリモニジンの含量低下が大きく、ブリモニジンのみ含有する水性組成物(比較例2)では80℃で1日間保存するとブリモニジンの残存率が92.3%と大きく低下し、含量低下が生じた。一方、ブリモニジンに加えてさらにリパスジルを含有する水性組成物(実施例2)では、80℃で1日間保存後においてもブリモニジンの残存率は97.3%と大きく、試験例1と同様に、ブリモニジンの含量低下の抑制が確認された。
【0055】
以上の試験例1、2の結果から、ブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物に、さらにリパスジルに代表される一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有せしめることにより、ブリモニジンの含量低下を抑制できることが明らかとなった。
【0056】
[製造例1~27]
表3~表5に記載の成分及び分量(水性組成物100mL当たりの量(g))を含有する水性組成物を常法により製造できる。
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【0060】
[製造例28~54]
製造例1~27において、リパスジル1塩酸塩2水和物の代わりに同量の4-ブロモ-5-{[(2S)-2-メチル-1,4-ジアゼパン-1-イル]スルホニル}イソキノリンを用いたものを、製造例28~54の水性組成物として、常法により製造できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、安定性に優れた水性組成物を提供でき、医薬品産業等において好適に利用できる。