(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020412
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】カテーテル組立体
(51)【国際特許分類】
A61M 25/06 20060101AFI20240206BHJP
A61M 39/06 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
A61M25/06 500
A61M39/06 110
A61M39/06 122
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023194416
(22)【出願日】2023-11-15
(62)【分割の表示】P 2021509012の分割
【原出願日】2020-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2019063152
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】山元 翔太
(72)【発明者】
【氏名】山下 真之介
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡素な装置構成で開通部材の移動による弁体の開通を防止できるカテーテル組立体を提供する。
【解決手段】カテーテル組立体は、カテーテルハブの内部に、弁体を開通させる開通部材26Aを有する。開通部材は、カテーテルハブと当接することにより摩擦力を生じる接触部として、胴部68の外径よりも外方に広がって形成された足部72A、又は、胴部の外径から外方に突出して形成された突出構造を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内に穿刺される内針と、
前記内針が挿通されるカテーテルと、
前記カテーテルの基端に設けられたカテーテルハブと、
前記カテーテルハブの内部空間に設けられる弁体と、
円筒状の胴部と、前記胴部の先端から縮径して延び出る首部と、前記胴部の基端側に延び出た足部と、を有し、前記弁体の基端側に配置され、前記カテーテルハブの前記内部空間に沿って先端側に移動することで前記首部により前記弁体を開通させる開通部材と、
前記開通部材の前記先端側への移動に抵抗力を発生する移動阻止機構と、を備え、
前記移動阻止機構は前記カテーテルハブ又は前記弁体との間で摩擦力を生じる接触部を備え、
前記接触部は、前記胴部の外径よりも外方に広がって形成された前記足部、又は、前記胴部の外径から外方に突出して形成された突出構造を有し、
前記接触部が前記カテーテルハブと当接することにより前記摩擦力を生じる、カテーテル組立体。
【請求項2】
請求項1記載のカテーテル組立体であって、前記突出構造は前記胴部の外周部に軸方向に平行に延びる線状のリブ構造よりなる、カテーテル組立体。
【請求項3】
請求項1記載のカテーテル組立体であって、前記突出構造は前記胴部又は前記足部に設けられた凸部よりなる、カテーテル組立体。
【請求項4】
請求項3記載のカテーテル組立体であって、前記カテーテルハブの内壁には、前記凸部に対応する部分に凹部が形成されている、カテーテル組立体。
【請求項5】
請求項3記載のカテーテル組立体であって、前記凸部は、前記胴部と前記足部との境界上に設けられている、カテーテル組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、輸液や輸血等を行う場合に使用されるカテーテル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
輸液や輸血の導入部を患者に構築する際には、例えば、特許文献1に開示されているようなカテーテル組立体(カテーテルアセンブリ)が使用される。このカテーテル組立体は、カテーテル(可撓性カテーテルチューブ)と、カテーテルに固定されたカテーテルハブと、カテーテル内に配置される内針(中空導入針)とを有する。
【0003】
カテーテル組立体の使用時には、ユーザがカテーテル及び内針を患者の体内に挿入する。そして、カテーテル及びカテーテルハブから内針を引き抜く。その後、ユーザが内針を引き抜いたカテーテルハブに各種医療器具を挿入したり、輸液チューブのコネクタを接続する等して、導入部として用いられる。
【0004】
また、特許文献1に開示のカテーテル組立体は、カテーテルハブ内に設けられた開閉可能な弁体(弾性セプタム)と、弁の基端側に配置される開通部材(弁アクチュエータ)とを備える。弁体は、内針の離脱時に、カテーテルハブ内の空間を閉塞することで、血液の漏れを防止する。開通部材は、医療器具の挿入に伴い弁体を貫通(開放)することで、薬液や血液を医療機器側からカテーテル側に流動可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のように医療機器の導入に伴って、開通部材が弁体を貫通する構成では、例えば落下する等の理由で衝撃力が作用した際に開通部材が動いて弁体を開通させてしまうおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の一観点は、簡素な装置構成で開通部材の移動による弁体の開通を防止できるカテーテル組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点は、生体内に穿刺される内針と、前記内針が挿通されるカテーテルと、前記カテーテルの基端に設けられたカテーテルハブと、前記カテーテルハブの内部空間に設けられる弁体と、円筒状の胴部と、前記胴部の先端から縮径して延び出る首部と、前記胴部の基端側に延び出た足部と、を有し、前記弁体の基端側に配置され、前記カテーテルハブの前記内部空間に沿って先端側に移動することで前記首部により前記弁体を開通させる開通部材と、前記開通部材の前記先端側への移動に抵抗力を発生する移動阻止機構と、を備え、前記移動阻止機構は前記カテーテルハブ又は前記弁体との間で摩擦力を生じる接触部を備え、前記接触部は、前記胴部の外径よりも外方に広がって形成された前記足部、又は、前記胴部の外径から外方に突出して形成された突出構造を有し、前記接触部が前記カテーテルハブと当接することにより前記摩擦力を生じる、カテーテル組立体にある。
【発明の効果】
【0009】
上記観点のカテーテル組立体によれば、簡素な装置構成で開通部材の移動による弁体の開通を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係るカテーテル組立体の斜視図である。
【
図2】
図1のカテーテル組立体の分解斜視図である。
【
図4】
図4Aは、
図1のカテーテルハブに開通部材を装着した状態を示す断面図であり、
図4Bは
図4Aのカテーテルハブの弁体が開通した状態を示す断面図である。
【
図5】第2実施形態に係る開通部材の側面図である。
【
図6】
図6Aは、第2実施形態に係るカテーテルハブに開通部材を挿入した状態で示す断面図であり、
図6Bは
図6Aのカテーテルハブの弁体が開通した状態を示す断面図である。
【
図7】
図7Aは、第2実施形態の変形例1に係る開通部材の側面図であり、
図7Bは、第2実施形態の変形例2に係る開通部材の側面及び基端面を示す図である。
【
図9】第3実施形態に係るカテーテルハブに
図8Aの開通部材を挿入した状態を示す断面図である。
【
図11】第4実施形態に係るカテーテルハブに
図10Aの開通部材を挿入した状態を示す断面図である。
【
図12】
図12Aは、第5実施形態に係るカテーテルハブの断面図であり、
図12Bは第5実施形態に係る開通部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
(第1実施形態)
本実施形態に係るカテーテル組立体10は、
図1に示すように、患者(生体)の体内に挿入及び留置されるカテーテル12を有し、輸液や輸血等において液体(薬液や血液)の入出部を構築するために用いられる。カテーテル12は、例えば、末梢静脈カテーテルに構成されている。なお、カテーテル12は、末梢静脈カテーテルよりも長いカテーテル(例えば、中心静脈カテーテル、PICC、ミッドラインカテーテル等)であってもよい。また、カテーテル12は、静脈用カテーテルに限らず、末梢動脈カテーテル等の動脈用カテーテルであってもよい。
【0013】
図示のように、カテーテル組立体10は、内針14と、内針14の基端に固定される針ハブ16とで構成される操作体18とを有する。また、カテーテル組立体10は、上記のカテーテル12と、カテーテル12の基端に固定されるカテーテルハブ20とで構成される、カテーテル留置体22を有する。
【0014】
カテーテル組立体10は、使用前の初期状態(製品提供状態)で、カテーテル留置体22の基端側から操作体18が組みつけられることにより、カテーテル12に内針14が挿通した多重構造針11を形成している。多重構造針11は、内針14の針先14aを突出させており、内針14及びカテーテル12を生体に一体的に穿刺することが可能である。さらに、
図2に示すように、カテーテルハブ20の内部には、弁体24と、開通部材26と、固定部材28とが収容されている。
【0015】
医師や看護師等のユーザは、
図1に示すカテーテル組立体10を使用する際に、針ハブ16を把持して操作することにより、患者の体内に多重構造針11を穿刺し、針先14aを血管に到達させた穿刺状態とする。さらに、ユーザが穿刺状態を維持しつつ、カテーテル12を内針14に対して相対的に進出させることで、カテーテル12を血管内に挿入してゆく。その後、ユーザは、カテーテル12から内針14を抜去することにより、カテーテル12を血管内に留置する。血管内に留置されたカテーテル12には、カテーテルハブ20を介してコネクタ95(
図4B参照)等が接続される。このコネクタ95を通じて、薬液や血液の投与や、採血等の処置が行われる。以下、カテーテル組立体10の各構成についてさらに説明する。
【0016】
図2に示すように、カテーテル組立体10(操作体18)の内針14は、生体の皮膚を穿刺可能な剛性を有する中空管に構成され、その先端に鋭利な針先14aを備える。内針14の内部には、軸方向に沿って中空部15が設けられている。針先14aは、内針14の軸方向に対して所定角度で傾斜した刃面の先端に形成されている。内針14の外周面には、血管の穿刺時に血液を基端側に導くフラッシュバック用の溝又は中空部15に連通した孔が形成されていてもよい。
【0017】
内針14の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金、チタン又はチタン合金のような金属材料、あるいは、硬質樹脂やセラミックス等があげられる。内針14は、融着、接着、嵌合等の固定手段により、針ハブ16に強固に固定されている。
【0018】
針ハブ16は、カテーテル留置体22と操作体18とが組みつけられた初期状態で、ユーザが把持するグリップ部分を構成している。針ハブ16は、ユーザが直接把持するハブ本体34と、ハブ本体34の先端に一体的に成形された内針支持部36とを備える。
【0019】
ハブ本体34は、多重構造針11を安定的に操作可能な形状及びサイズに形成されている。ハブ本体34は、基端側が円筒状に形成される一方で、先端側に向かって徐々に楕円状に変形しており、その内部に空洞部34aが形成されている。
【0020】
内針支持部36は、ハブ本体34から先端方向に突出する円柱状に形成されており、その中心部において内針14の基端部を保持している。内針支持部36の両側部には、カテーテルハブ20のフランジ54を保持する一対のアーム38が設けられている。アーム38は、アーム38の外側方向への変位を規制するアーム収容部37内に収容されている。アーム収容部37は、アーム38に対して後退移動可能に組付けられており、アーム収容部37がアーム38よりも後退すると、アーム38の先端が外側方向に開いて、カテーテルハブ20との係合を解除するように構成されている。
【0021】
針ハブ16の構成材料は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、メタクリレート-ブチレン-スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂を適用することができる。
【0022】
一方、カテーテル12は、ルーメン13が内側に形成された可撓性を有する中空体として形成されている。カテーテル12の外径及びルーメン13は、軸方向に直交する断面視で、正円形状に形成され、カテーテル12の軸方向に沿って延在している。ルーメン13は、カテーテル12の先端に形成された先端開口13aと、カテーテル12の基端に形成された基端開口13b(
図4A参照)とに連通している。
【0023】
カテーテル12を構成する材料は、特に限定されるものではないが、透明性を有する軟質樹脂材料を適用するとよい。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂又はこれらの混合物、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルナイロン樹脂、オレフィン系樹脂とエチレン・酢酸ビニル共重合体との混合物等があげられる。
【0024】
カテーテル12の長さは、特に限定されず用途や諸条件等に応じて適宜設計可能であり、例えば、14~500mm程度に設定される。カテーテル12の基端は、カテーテルハブ20の内部に挿入されて固着されている。
【0025】
カテーテルハブ20は、カテーテル12が患者の血管内に挿入された状態で、患者の皮膚の上に配置され、テープ等により皮膚の上に固定されることで、カテーテル12とともに留置される。カテーテルハブ20を構成する材料は、特に限定されず、例えば、針ハブ16であげた材料を適宜採用することができる。
【0026】
カテーテルハブ20は、先端方向に先細りの筒状に形成されている。カテーテルハブ20の内側には内部空間50が設けられ、この内部空間50は、先端側において、カテーテル12のルーメン13の基端開口13b(
図4A参照)に連通する。また、内部空間50の基端側は、カテーテルハブ20の基端開放部52に連通する。内部空間50には、上記の弁体24、開通部材26及び固定部材28が収容される。また、カテーテルハブ20の基端側の外周面には周方向に沿って延在するフランジ54が設けられている。
【0027】
カテーテル12とカテーテルハブ20とは、例えばかしめ、融着、接着及び嵌合等の固着手段によって固定される。なお、
図4Aの例では、かしめピン56を挿入して、カテーテルハブ20の内壁20aとかしめピン56との間にカテーテル12を挟み込んで、カテーテル12を固定している。
【0028】
図2に示すように、弁体24は、カテーテルハブ20の内部空間50に配置され、カテーテル12のルーメン13から内部空間50に流入する血液が基端開放部52側に漏出するのを阻止する止血弁を構成する。特に限定されるものではないが、弁体24は、ダックビル弁として構成することができる。また、弁体24は、ディスク弁であってもよい。
【0029】
弁体24は、カテーテルハブ20の内壁20aに固定される円環部58と、円環部58から先端方向に向かって突出する弁本体60とを有する。
図4Aに示すように、カテーテルハブ20の内壁20aには、弁体24を装着するべく、内方に突出した段差部21aと、段差部21aの基端側に離間して設けられた係止凸部21bとが設けられている。弁体24は、円環部58が段差部21aと係止凸部21bとに挟まれることで、移動不能に固定される。
【0030】
弁本体60は、円環部58側が円筒形状に形成されるとともに、先端方向に向かって接近し合う一対の傾斜部62を有する筒状に形成される。弁体24の内側には先端方向に向かって狭くなる弁空間25が形成されている。
【0031】
また、一対の傾斜部62の先端には、幅方向に延在する端面63が形成されている。端面63には、スリット64が形成されている。スリット64は、端面63の長手方向に沿って延びるとともに、一対の傾斜部62の間に沿って弁本体60の側部にまで延び、円環部58の先端まで延在する。スリット64は、内針14を挿通させるとともに、内針14を抜去した後は弾性復元力により復元する。
【0032】
また、弁本体60の一対の傾斜部62は、基端側に配置された開通部材26が挿入されることで、
図4Bに示すように、相互に大きく離間してスリット64が開放(開通)するように構成されている。これにより、開通部材26が弁体24を挿通する力を小さくできる。また、弁体24が一対の傾斜部62とスリット64とを含む構成により、開通部材26を基端側へ押し戻す力が弱くなるため、弁体24の開通部材26による開通状態を維持しやすい。
【0033】
図3に示すように開通部材26は、円筒状の胴部68と、胴部68の先端に連なり胴部68よりも縮径されて先端方向に突出する首部70と、胴部68の基端に連なり、基端方向に突出する一対の足部72とを有する。
図4Aに示すように、胴部68及び首部70の内部には、空間部74が形成されている。
【0034】
胴部68は、カテーテルハブ20の内部空間50の内径よりも若干小さい外径に形成され、空間部74の一部である胴部側空間74aを内側に備える。胴部68の外周面は、開通部材26の軸方向に直交する断面視で円形状に形成されている。胴部側空間74aは、胴部68の基端に設けられた基端開口68aに連通している。
【0035】
首部70は、弁体24の円環部58の内側に挿入可能な径に形成されている。首部70は、開通部材26が先端方向に移動した際に、
図4Bに示すように、弁体24のスリット64を突き抜けて、一対の傾斜部62を押し広げて、弁本体60を大きく開通させるように構成されている。弁空間25の基端部側入口に対し、首部70は挿通可能な幅である一方、胴部68と首部70の間の段差である肩部は弁空間25の基端部側入口より幅が広く、肩部は円環部58と突き当たる。そのため、開通部材26は突き当たった位置よりも先端側の移動が規制される。従って、首部70に設けられた一対の側孔80と弁体24のスリット64との血液滞留を抑制する良好な位置関係が維持できる。なお、肩部は係止凸部21bと接触しないような形状、例えば、肩部の端面を面取りした形状を有する。
【0036】
図3に示すように、首部70の外周部には、径方向外方に突出するようにリブ構造が形成されている。リブ構造は一対の首リブ73(接触部としての移動阻止機構)にて構成される。なお、首リブ73は、一対に限定されるものではなく、1つ又は複数配置されていてもよいが、ここでは首リブ73を一対設ける場合を例に説明する。一対の首リブ73は、周方向に180°離間して、対向配置されている。首リブ73は、胴部68と首部70との境界部分から、首部70の軸方向先端側の途中までの軸方向に沿って所定の長さに形成されている。
図4Aに示すように、首リブ73は、円環部58の内径よりも外方に突出して形成されており、首リブ73が円環部58の基端部に当接するように構成されている。首リブ73は、落下等による衝撃荷重が開通部材26に作用した際に、円環部58に引っ掛かることで、開通部材26の先端方向への移動を規制するように構成されている。当該リブ構造は、開通部材26の先端方向への移動を規制する規制手段とも呼べる。
【0037】
首リブ73の軸方向の長さは、首リブ73が円環部58の基端部に当接した際に、首部70の先端が弁本体60から離間するように設定されている。なお、首リブ73は、所定の荷重以上の力で開通部材26を先端側に押圧すると、円環部58の内径部に入り込んで、開通部材26の先端方向への移動を妨げないサイズに形成されている。
【0038】
開通部材26は、初期状態において、弁体24の弁本体60よりも基端側に配置されている。この状態では、開通部材26の先端の首部70が、弁本体60と離間された状態に保たれ、弁体24の開放を防ぐように構成されている。
【0039】
図4Aに示すように、首部70の内部には、空間部74の一部である首部側空間74bが形成されている。首部側空間74bは、首部70の軸方向に沿って延在し、その先端が首部70の先端に形成された先端開口78に連通し、その基端が胴部側空間74aに連通する。また、首部70の先端側は、開通部材26の先端方向に向かって径が徐々に小さくなるテーパー状に形成されている。
【0040】
首部70の先端のテーパー状に形成された部分には、一対の側孔80が形成されている。一対の側孔80は、首部側空間74bを挟んで相互に対向している。各側孔80は、先端開口78に対して所定間隔離れた位置に設けられ、首部70を厚さ方向に貫通して、首部側空間74bと首部70の外部とを連通している。
【0041】
開通部材26は、初期状態で弁体24のスリット64と、一対の側孔80とが同じ位相(周方向の位置)となるように、位置決めされている。このように位置決めすることで、各側孔80は、
図4Bに示すように、コネクタ95の挿入にともなって開通部材26が弁本体60を開通させた際に、弁体24のスリット64が開いている箇所に露出する。すなわち、一対の側孔80は、開通部材26が弁体24を開通した状態で、スリット64の最も基端側の部位よりも先端側に位置する。
【0042】
開通部材26の首リブ73が円環部58の基端部に当接するときに、開通部材26の先端開口78が弁本体60の一対の傾斜部62の内面に接触しないように位置している。すなわち、開通部材26の先端開口78は、開通部材26の先端開口78が先端側に移動する経路上に位置する傾斜部62の内面部よりも基端側に位置している。これにより、使用前において開通部材26が不用意に弁本体60を開通させることを抑制できる。
【0043】
図3に示すように、胴部68の基端側には、一対の足部72が、互いに対向して設けられている。足部72は、基端方向に向かって所定長さの長方形の片として形成されている。各々の足部72は、軸方向基端側から見ると胴部68の外径形状に応じた円弧状に形成されている。
図4Bに示すように、足部72の基端が固定部材28の内周面よりも内側に突出している。コネクタ95をカテーテルハブ20に挿入すると、コネクタ95の先端部が足部72の基端と当接する。そのため、開通部材26は、コネクタ95の押圧力を受けて先端方向に移動する。
【0044】
図2に示すように、固定部材28は、カテーテルハブ20の内部空間50に配置され、開通部材26の脱落を防止するインナー部材である。固定部材28は、カテーテルハブ20に対する開通部材26の周方向の回転を規制する機能を発揮する。固定部材28は、開通部材26を内部空間50に収容した状態で、カテーテルハブ20の内壁20aに嵌合することで、カテーテルハブ20に固定される。なお、カテーテルハブ20と固定部材28の固定手段は特に限定されず、嵌合、接着、融着等であってもよい。
【0045】
固定部材28は、貫通孔82aを有する固定筒体82と、固定筒体82の基端に設けられた環状凸部84とを備える。固定筒体82の基端は、カテーテルハブ20の基端開放部52を構成している。固定筒体82には、開通部材26の一対の足部72が挿入される一対の切欠部86が形成されている。一対の切欠部86は、貫通孔82aを挟んだ対向位置に設けられ、固定筒体82の先端から基端方向に向かって延在している。環状凸部84は、
図4Aに示すように、カテーテルハブ20の基端に形成されたフランジ54の内部の管状溝部54aに配置されることで、固定部材28の先端方向への変位を阻止する。
【0046】
本実施形態に係るカテーテル組立体10は、以上のように構成されるものであり、以下その作用について説明する。
【0047】
カテーテル組立体10は、患者への輸液、輸血及び採血等の入出部を構築する際に使用される。ユーザは、
図1に示す初期状態のカテーテル組立体10の針ハブ16を把持して操作を行うことにより、多重構造針11を患者に穿刺する。
【0048】
内針14の針先14aが血管に到達すると、血液がカテーテル12のルーメン13に流入する。これにより、ユーザは、血液のフラッシュバックを視認してルーメン13が血管を確保したことを確認することができる。この血液は、カテーテル12のルーメン13を基端方向に流れ、基端開口13b(
図4A参照)からカテーテルハブ20の内部空間50に流入する。内部空間50では、弁体24が内針14を挿通しているものの、内針14の周囲を密閉するため、弁体24よりも基端側への血液の流出を抑制できる。
【0049】
穿刺状態において、ユーザはカテーテル12を内針14から相対的に進出させて、カテーテル12を血管に挿入する。カテーテル12が血管にある程度挿入された段階で、カテーテル留置体22に対して操作体18を後退させる。これにより、カテーテル12に対して内針14が離脱する。
【0050】
カテーテルハブ20内では、弁体24から内針14の針先14aが抜けることにともなって、弁本体60が弾性復元してスリット64が閉塞する。これにより、血液が弁体24によって阻止され、基端側に血液が流出することが阻止される。さらに、内針14及び針ハブ16を後退させると、カテーテルハブ20の基端開口13bから内針14が離脱する。すなわち、カテーテルハブ20内が
図4Aに示す状態となる。この状態のカテーテル留置体22が患者に留置される。
【0051】
図4Aに示すように、カテーテル留置体22の留置状態において、開通部材26は首リブ73が円環部58に引っ掛かることで、開通部材26の先端側への移動が阻止される。これにより、意図せぬ弁体24の開通を防ぐことができる。
【0052】
カテーテル留置体22の留置状態において、ユーザは、
図4Bに示すように、輸液ラインのチューブやシリンジ等と連通したコネクタ95をカテーテルハブ20の基端開口から内部空間50に挿入することができる。コネクタ95は、固定部材28の内側に挿入される。開通部材26の足部72の基端は、固定部材28よりも内方に突出しているため、コネクタ95の先端と当接する。これにより、ユーザはコネクタ95の接続時に開通部材26を先端方向に押し込むことができる。開通部材26を押込む際に、一対の足部72が固定部材28の切欠部86(
図2参照)に案内されて移動することで、周方向に回転することなく前進する。
【0053】
開通部材26は、コネクタ95を介して押圧されることに伴って、首リブ73が円環部58を押し広げつつ、弁体24の内側を移動する。そして、
図4Bに示すように、首部70が、一対の傾斜部62を相互に離間させることで、スリット64を開放する。コネクタ95がカテーテルハブ20に嵌合する挿入完了状態では、開通部材26の首部70が一対の傾斜部62を大きく離間させる。そして、弁体24のスリット64が大きく開いた部分には、首部70の一対の側孔80が配置される。
【0054】
本実施形態のカテーテル組立体10は、以下の効果を奏する。
【0055】
本実施形態のカテーテル組立体10は、生体内に穿刺される内針14と、内針14が挿通されるカテーテル12と、カテーテル12の基端に設けられたカテーテルハブ20と、カテーテルハブ20の内部空間50に設けられる弁体24と、円筒状の胴部68と、胴部68の先端から縮径して延び出る首部70と、胴部68の基端側に延び出た足部72と、を有し、弁体24の基端側に配置され、カテーテルハブ20の内部空間50に沿って先端側に移動することで首部70により弁体24を開通させる開通部材26と、開通部材26の先端側への移動に抵抗力を発生する移動阻止機構と、を備え、移動阻止機構はカテーテルハブ20又は弁体24との間で摩擦力を生じる接触部を備える。
【0056】
上記のカテーテル組立体10によれば、接触部によって、衝撃等による開通部材26の先端側への移動を阻止できるため、弁体24の意図せぬ開通を防ぐことができる。
【0057】
上記のカテーテル組立体10において、接触部は、首部70の外周側に突出して弁体24と当接する首リブ73を備えてもよい。このように構成することにより、首リブ73が開通部材26の先端への移動を規制することで、意図せぬ弁体24の開通を防ぐことができる。また首リブ73の細部について、例えばリブ幅の両側は、外周方向においてテーパー状に縮径することにより摩擦力を適宜調整し、開通部材26を先端方向へ押し込むことができる。さらに、接触部と側面の角は丸みを帯びているのが好ましい。
【0058】
開通部材26は、円筒状の胴部68と、胴部68の先端から縮径して延び出る首部70と、胴部68の基端側に延び出た足部72とを備えた実施形態にて説明したが、胴部68と、胴部68の先端から延び出る首部70から構成される態様であってもよい。このような態様であっても、開通部材26の先端側への移動に抵抗力を発生する移動阻止機構を備え、移動阻止機構はカテーテルハブ20又は弁体24との間で摩擦力を生じる接触部を備えることにより、前記した効果を奏することができる。
【0059】
以下、本発明の他の実施形態について説明する。なお、以降の説明において、第1実施形態と同じ構成又は同じ機能を有する要素には、同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0060】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る開通部材26Aは、
図5に示すように、首部70に首リブ73(
図3参照)が設けられておらず、代わりに、一対の足部72Aが基端側に向けて徐々に外方に広がるように形成されている。足部72Aは、基端部において幅ΔWだけ、外方に広がるように傾斜して形成されている。一対の足部72Aの外表面の距離は、カテーテルハブ20の内壁20aの内径よりも大きくなっている。
【0061】
図6Aに示すように、開通部材26Aは、カテーテルハブ20の内部空間50に挿入されると、足部72Aが内方に弾性変形する。その際に足部72Aが弾性復元力によって、カテーテルハブ20の内壁20aを押圧しつつ当接することで摩擦力を発揮して、開通部材26Aの先端方向への移動を規制する。すなわち、本実施形態では、足部72Aが開通部材26Aの先端側への移動に抵抗力を発生する移動阻止機構を構成する。
【0062】
本実施形態の開通部材26Aは、
図6Bに示すように、コネクタ95の挿入により、先端方向に移動して弁体24を開通させる。なお、足部72Aの外表面に発生する摩擦力は、カテーテルハブ20へのコネクタ95の装着を困難にしない範囲で適宜設定される。足部72Aの外表面に発生する摩擦力は、足部72Aの傾き及び足部72Aの剛性によって適宜調整することができる。
【0063】
(第2実施形態の変形例1)
本変形例に係る開通部材26Bは、
図7Aに示すように、基端部に向かうにつれて肉厚が増大する足部72Bを備えている。足部72Bは、先端側から基端側に向けて肉厚T1が肉厚T2に徐々に増大するように形成されている。足部72Bの内周面は、開通部材26Bの軸方向と平行な方向に延びており、足部72Bの外周面は基端部に向かうにつれて徐々に外方に広がるように形成されている。
【0064】
このような足部72Bを備えた開通部材26Bによれば、足部72Aを外方に広がるように形成した開通部材26Aと同様の効果が得られる。
【0065】
(第2実施形態の変形例2)
本変形例に係る開通部材26Cは、
図7Bに示すように、基端側に向かうにつれて、肉厚が徐々に増大する足部72Cを備えている。本変形例の開通部材26Cの足部72Cは、肉厚に関しては、
図7Aの開通部材26Bの足部72Bと同様である。ただし、足部72Cの一部を溝状に切り欠いた切欠部72aが形成されている。図示のように、各々の足部72Cには、基端側から見てT字状となるように一対の切欠部72aが形成されている。このように構成することにより、足部72Cの剛性を適切な範囲に調整して、摩擦力を調節することができる。
【0066】
(第3実施形態)
本実施形態に係る開通部材26Dは、
図8Aに示すように、胴部68の外周から足部72の外周にかけての部分に、薄いリブ構造75(突出構造)が形成されている。リブ構造75は、足部72に対応して一対設けられている。リブ構造75は、
図8Bに示すように、足部72の基端部から胴部68の先端付近にまで軸方向に直線状(線状)に延在して形成されている。またリブ構造75は、胴部68のみに設けてもよい。
【0067】
なお、リブ構造75は、足部72にて基端側へ向かって徐々に厚みを増加させる構造を備えることで、第2実施形態と同様な効果を得られる。
【0068】
図9に示すように、カテーテルハブ20の内部空間50に開通部材26Dを挿入すると、胴部68及び足部72から外方に突出したリブ構造75が内壁20aに当接して摩擦力を発揮する。これにより、衝撃等による開通部材26Dの先端方向への移動が規制される。すなわち、本実施形態では、リブ構造75が開通部材26Dの先端側への移動に抵抗力を発生する移動阻止機構を構成する。
【0069】
なお、リブ構造75の摩擦力は、カテーテルハブ20へのコネクタ95の接続を妨げない範囲で適宜設定される。これにより、開通部材26Dは、コネクタ95により押圧されて、弁体24を開通させることができる。
【0070】
(第4実施形態)
本実施形態に係る開通部材26Eは、
図10A及び
図10Bに示すように、胴部68と足部72との境界部分に、胴部68の外径よりも外方に突出して形成された島状の凸部77(突出構造)が設けられている。凸部77は、足部72と同様に一対設けられているが、これに限定されるものではなく、1つのみ、又は複数設けられていてもよい。また、凸部77の設置位置は、胴部68と足部72との境界部分に限定されるものではなく、胴部68又は足部72の外周上の任意の位置に設けられていてもよい。また、凸部77の形状は島状に限定されるものではなく、例えば胴部68の外周に沿って円形リング状に形成されていてもよい。
【0071】
図11に示すように、本実施形態のカテーテルハブ20Aは、開通部材26Eの凸部77に対応する部分の内壁20aに、凸部77を受け入れる凹部23が形成されている。開通部材26Eをカテーテルハブ20Aの内部空間50に挿入すると、開通部材26Eの凸部77がカテーテルハブ20の凹部23に嵌合することで、開通部材26Eの先端方向への移動を規制する摩擦力を発揮する。すなわち、本実施形態においては、開通部材26Eの凸部77及びカテーテルハブ20の凹部23が、開通部材26Eの先端側への移動に抵抗力を発生する移動阻止機構を構成する。
【0072】
なお、凸部77及び凹部23による摩擦力は、カテーテルハブ20Aへのコネクタ95の接続を妨げない範囲で適宜設定される。これにより、開通部材26Eは、コネクタ95により押圧されて、弁体24を開通させることができる。また、移動阻止機構は凸部のみでもよい。
【0073】
(第5実施形態)
本実施形態に係る開通部材26Fは、
図12Bに示すように、胴部68と足部72との境界部分に、胴部68の外径よりも内方に窪んで形成された島状の凹部79が設けられている。凹部79は、足部72と同様に一対設けられているが、これに限定されるものではなく、1つのみ、又は複数設けられていてもよい。また、凹部79の設置位置は、胴部68と足部72との境界部分に限定されるものではなく、胴部68又は足部72の外周上の任意の位置に設けられていてもよい。また、凹部79の形状は島状に限定されるものではなく、例えば胴部68の外周に沿って円形リング状に形成されていてもよい。
【0074】
図12Aに示すように、本実施形態のカテーテルハブ20Bは、開通部材26Fの凹部79に対応する部分の内壁20aに、内方に突出した凸部27が形成されている。凸部27の形状は、凹部79の形状に応じて島状に形成されている。なお、凹部79を円形リング状に形成した場合には、凸部27は円形リング状に形成されていてもよい。
【0075】
図13に示すように、開通部材26Fをカテーテルハブ20Bの内部空間50に挿入すると、開通部材26Fの凹部79がカテーテルハブ20Bの凸部27に嵌合することで、開通部材26Fの先端方向への移動を規制する摩擦力を発揮する。すなわち、本実施形態においては、開通部材26Fの凹部79及びカテーテルハブ20Bの凸部27が、開通部材26Fの先端側への移動に抵抗力を発生する移動阻止機構を構成する。
【0076】
なお、凹部79及び凸部27による摩擦力は、カテーテルハブ20Bへのコネクタ95の接続を妨げない範囲で適宜設定される。これにより、開通部材26Fは、コネクタ95により押圧されて、弁体24を開通させることができる。また、移動阻止機構は凸部のみでもよい。
【0077】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。