(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020428
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】低GWPを有する不燃性冷媒、並びに冷蔵を提供するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
C09K 5/04 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
C09K5/04 F ZAB
C09K5/04 E
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023194849
(22)【出願日】2023-11-16
(62)【分割の表示】P 2021526813の分割
【原出願日】2019-11-21
(31)【優先権主張番号】62/770,522
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/690,030
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ヤナモッタ、サミュエル エフ.
(72)【発明者】
【氏名】フルス、リャン
(72)【発明者】
【氏名】クローズ、ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】セティ、アンキット
(72)【発明者】
【氏名】ポットカー、グスタホ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】物品(果物、野菜、及び水など)を水の氷点未満の温度に曝露することなく、それらの物品を冷却するためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】(a)約65%重量%~約90%重量のHFO-1234ze(E)と、(b)約10重量%~約35重量%のHFO-1336mzz(E)と、任意選択的に(c)約0重量%~約4.4重量%のHFC-227eaと、を含む冷媒組成物を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)蒸発器と、
(b)前記蒸発器内の冷媒であって、前記冷媒が、
(i)約65重量%~約90重量%のHFO-1234ze(E)と、
(ii)約10重量%~約35重量%のHFO-1336mzz(E)と、を含む冷媒と、を備える、熱伝達システム。
【請求項2】
前記冷媒が、前記HFO-1234ze(E)と、前記HFO-1336mzz(E)と、から本質的になる、請求項1に記載の熱伝達システム。
【請求項3】
前記冷媒が、前記HFO-1234ze(E)と、前記HFO-1336mzz(E)と、からなる、請求項1に記載の熱伝達システム。
【請求項4】
前記冷媒が、約65重量%~約78重量%のHFO-1234ze(E)と、約22重量%~約35重量%の前記HFO-1336mzz(E)と、からなる、請求項1に記載の熱伝達システム。
【請求項5】
前記冷媒が、0超~約4.4重量%のHFC-227eaを更に含む、請求項1に記載の熱伝達システム。
【請求項6】
前記冷媒が、前記HFO-1234ze(E)と、前記HFO-1336mzz(E)と、前記HFC-227eaと、から本質的になる、請求項5に記載の熱伝達システム。
【請求項7】
前記冷媒が、約74.6~約78.6重量%のHFO-1234ze(E)と、約17重量%~約21重量%の前記HFO-1336mzz(E)と、約4.4重量%のHFC-227eaと、からなる、請求項1に記載の熱伝達システム。
【請求項8】
(a)約74.6重量%~約78.6重量%のHFO-1234ze(E)と、
(b)約17重量%~約21重量%の前記HFO-1336mzz(E)と、を含む、冷媒。
【請求項9】
(a)約78.6重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)約17重量%のHFO-1336mzz(E)と、(c)約4.4重量%のHFC-227eaと、から本質的になる、請求項8に記載の冷媒。
【請求項10】
(a)約76.6重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)約19重量%のHFO-1336mzz(E)と、(c)約4.4重量%のHFC-227eaと、から本質的になる、請求項8に記載の冷媒。
【請求項11】
(a)約74.6重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)約21重量%のHFO-1336mzz(E)と、(c)約4.4重量%のHFC-227eaと、から本質的になる、請求項8に記載の冷媒。
【請求項12】
HFO-1234ze(E)と、HFO-1336mzz(E)と、HFC-227eaと、からなる、請求項9に記載の冷媒。
【請求項13】
HFO-1234ze(E)と、HFO-1336mzz(E)と、HFC-227eaと、からなる、請求項10に記載の冷媒。
【請求項14】
HFO-1234ze(E)と、HFO-1336mzz(E)と、HFC-227eaと、からなる、請求項11に記載の冷媒。
【請求項15】
(a)78.6重量%+0.5重量%/-2.0重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)17重量%+2.0重量%/-0.5重量%のHFO-1336mzz(E)と、(c)約4.4重量%+2.0重量%/-0.5重量%のHFC-227eaと、から本質的になる、請求項8に記載の冷媒。
【請求項16】
(a)76.6重量%+0.5重量%/-2.0重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)19重量%+2.0重量%/-0.5重量%のHFO-1336mzz(E)と、(c)約4.4重量%+2.0重量%/-0.5重量%のHFC-227eaと、から本質的になる、請求項8に記載の冷媒。
【請求項17】
(a)74.6重量%+0.5重量%/-2.0重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)21重量%+2.0重量%/-0.5重量%のHFO-1336mzz(E)と、(c)約4.4重量%+2.0重量%/-0.5重量%のHFC-227eaと、から本質的になる、請求項8に記載の冷媒。
【請求項18】
請求項12に記載の冷媒を含む熱伝達組成物。
【請求項19】
チラーシステムを含む、請求項18に記載の熱伝達システム。
【請求項20】
中温冷却システムを含む、請求項18に記載の熱伝達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高効率の低地球温暖化係数(「低GWP」)冷媒、並びに空気調節システム及び/又は冷蔵システム並びに安全かつ有効である冷却を提供するための方法に関し、特に、物品(果物、野菜、及び水など)を水の氷点未満の温度に曝露することなく、それらの物品を冷却するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の冷蔵用途では、物品を冷却するが、それらの物品を、水の氷点などの特定の温度未満の温度に曝露することなく冷却することが必要である。例えば、スーパーマーケット環境においては、特定の生産物を周囲に対して低い温度に保つことが一般的であるが、同時に、特に、冷却の好ましい方法は、湿り空気、周囲空気による間接的冷却を伴うため、水の氷点未満でその生産物を冷却することは不利である。これらの用途に関しては、霜の蓄積を引き起こし、結果として機器を除霜する必要が生じるため、蒸発器に沿って、水の氷点未満の冷媒温度を有することもまた不利である。霜の蓄積を回避することは、それらの用途において重要な一面である。同様に、水などを含む飲料の冷却はまた、そのような製品の凍結が販売時点で望ましくないため、そのような製品を水の氷点未満の温度に曝露することを回避する条件下で行われるべきである。利便性のために、出願人らは、本明細書において、そのような用途、方法、及びシステムを、「非凍結」用途、方法及びシステムと称する。
【0003】
クロロフルオロカーボン(「CFC」)、ハイドロクロロフルオロカーボン(「HCFC」)、及びハイドロフルオロオレフィン(hydrofluorolefins)(「HFO」)を含
む特定の単一成分フルオロカーボンは、霜がコイル表面に蓄積しないで、その結果、霜取装置が不要になるように、蒸発器に沿った冷媒温度が、水の氷点より高いままである必要がある「霜なし」用途で使用されてきた。このような冷蔵用途、システム及び方法においては、単一成分流体の使用は、かかる流体の飽和温度が一定圧力での流体の蒸発時に変化しないため、これまで特に望ましいと考えられてきた。単一成分流体の使用は、冷媒が蒸発器を通って流れるときに圧力低下がほとんど又は全くないと仮定して、蒸発プロセス中に本質的に一定のままであり、かつ水の氷点を超える、蒸発器に沿った冷媒温度を用いて、システム及び方法を設計することを可能にするため、非常に望ましい。加えて、生産物用途もまた、典型的には、空気の除湿及び結果として生じる水分含量の除去及び生産物の品質の損失を低減するために、空気と冷媒との間の小さな温度差を必要とする。蒸発器が出口で特定の正の過熱度を有する必要性と組み合わされた、小さな温度差の要件及び着霜回避の要件は、特定の冷媒を選択する際に重要である。ゼロ以下、すなわち冷媒が過熱されない過熱度は、冷却能力、効率、及び潜在的な圧縮機故障の低減につながり得る。用語「過熱度」又は単に「過熱」は、冷媒の飽和蒸気温度(又は露点温度)を超える蒸発器の出口における冷媒の温度上昇を意味する。
【0004】
これは、
図1で例として示されており、典型的なスーパーマーケットの生産物冷却ケースを概略的な形態で表す。典型的には、
図1に示されるように、冷却された湿気を有する空気は、ケース102の外側から及び再循環空気104からの両方の空気を、典型的には、製品ディスプレイゾーンとは別個である(又は少なくとも消費者の視界から隠されている)が近接している領域内でディスプレイケース内に配置された蒸発器コイル106の熱交換面上を通過させることによって、ディスプレイケースの製品ディスプレイゾーンに提供される。蒸発器106は、単一成分冷媒入口108及び単一成分冷媒出口110を有
する。循環ファン114も使用される。冷蔵システム内の冷却空間112が、常に又は実質的に常に一定のレベルを上回る冷媒温度を蒸発器に沿って有することは、上記例示の種類のシステムにおいて非常に望ましい。例えば、生産物の冷蔵などの多くの用途において、ディスプレイケース内の空気の最小吐出(出口)温度は、水の氷点未満の冷却空間又は冷却物品を有することを回避するための安全裕度を提供するために、設計によって約2℃~3℃に設定される。加えて、空気からの水分の除去、及び結果として生じる生産物の乾燥(品質の損失)を最小限に抑えるために、空気出口と冷媒との間の温度差は、小さくする、典型的には2℃~3℃である必要がある。このことは、これらの用途の蒸発器が約3~約5℃の過熱度を必要とするという事実と組み合わされると、蒸発温度が水の氷点を超えたままであり、結果として、霜が蓄積しないように、冷媒の許容蒸発器勾配に対する制約を課すであろう。これは、
図2及び
図3に示される。
【0005】
図2の例として、空気吐出温度が3℃であるとき、3℃の最大蒸発器勾配(冷媒A)が許容され、冷媒が3℃超、例えば冷媒Bで4℃の蒸発器勾配を有する場合、冷媒温度が水の氷点未満になり、霜が蓄積し得ることがわかる。
【0006】
図3では、空気吐出温度は2℃であり、蒸発器勾配を約2℃に制限し(冷媒C)、冷媒が2℃超、例えば冷媒Dで3℃の蒸発器勾配を有する場合、冷媒温度は氷点下に到達し、霜が蓄積し得る。要約すると、これらの用途における霜の蓄積を回避するには、4.5℃より小さい勾配が好ましく、3℃未満の勾配がより好ましく、2℃未満の勾配が最も好ましい。
【0007】
当業者であれば、これらの2つの望ましい結果は、異なる単一成分冷媒の多成分ブレンドである冷媒を提供することがこれまで非常に困難なことが多かったことを理解するであろう。
【0008】
本発明の前に、当業者は、上述したように、低温感受性を有するそのような用途において、HFC-134aなどの単一成分冷媒を主に利用してきており、ブレンドが一般に蒸発時の沸点温度の有意な変化を受けるため、冷媒ブレンドを回避してきた。冷媒ブレンドは、かかるシステムにおいて有用な正しい特性バランスを有するブレンドを特定する能力の主な障害として従来認識されてきた。
【0009】
一方、出願人らは、上記の種類の用途において特定の利点をもたらす特性一式を有する単一成分流体を特定することもまた、多くの用途において困難であることを理解するようになってきた。例えば、多くの重要な用途では、次のことを同時に行う冷媒を特定する必要がある。(1)有効な勾配、すなわち、4.5℃未満、好ましくは約3℃未満、更により好ましくは約2℃未満の勾配を有して、霜形成を回避し、典型的な過熱度、例えば約3℃~約5℃を維持することができること、(2)不燃性であること、(3)低毒性であるか又は実質的に毒性がないこと、(4)低い地球温暖化係数(GWP)(例えば、約150未満、更により好ましくは約75未満)を有すること、並びに(5)特に中温熱伝達システムにおいて、及び更により好ましくは霜なし又は低霜中温冷蔵システムにおいて、特定の用途の必要性と一致する熱伝達特性及び他の特性(化学的安定性など)を有すること。単一成分冷媒の使用は、多くの場合、項目(1)(2)及び(3)を満たすことが可能であるが、当業者は、項目(1)、(2)、及び(3)のみではなく、項目(4)~(5)のほとんど及び好ましくは全てを満たすことができる冷媒(単一の構成要素、又は他
のもの)を従来発見することは(不可能でない場合)困難であることを見出した。ここで、不燃性物質は、ASHRAEによってクラス「1」として分類され、低毒性物質は、ASHRAE Standard 34-2016によってクラス「A」として分類される。不燃性かつ低毒性である物質は、ASHRAE Standard 34-2016によって「A1」として分類される。
【0010】
例えば、HFC-134aは、従来特定の非凍結用途に使用されてきたが、それにもかかわらず、HFC-134aが約1300のGWPを有するため、例えば、低GWP要件(上記の項目5)を満たしていない。
【0011】
出願人らは、一般常識に反する方法で進め、予想外かつ有利な結果を発見した。例えば、出願人らは、以下に詳細に記載されるように、慎重に選択された構成成分の組み合わせを含む特定のブレンドが、有利であるが予期せぬ不燃性の組み合わせを有することができつつ、同時にとりわけ、優れた熱伝達特性、低GWP(例えば、約150未満のGWP)、低毒性又は毒性がない、化学的安定性、及び潤滑剤の相溶性を有することを見出した。更に、出願人らは、中温冷蔵システムで、並びに特に、冷却されている物品を霜から保護するため、かつ/又は蒸発器コイルの着霜を防止するために、冷却された空気の温度を約0℃超に維持すること、及び冷却されている空気を約0℃未満の温度に曝露するのを回避することが望ましく、そのこと自体は、コイルをはさんだ除霜及び/又は一貫性のない冷却の必要性に起因して、かかるシステムの全体的な効率に悪影響を及ぼす恐れがある中温冷蔵システムで、使用するための特定の利点を本発明の冷媒組成物が有することを見出した。
【発明の概要】
【0012】
出願人らは、冷媒組成物、冷媒を含む熱伝達組成物、冷媒として本発明の組成物のうちの1つ以上を利用する上述の低温又は非凍結用途などの低温制約を有する材料を冷却するための方法及びシステムを含む、冷蔵方法及びシステムを発見した。
【0013】
したがって、本発明は、好ましくは、不燃性であり、低毒性であるか又は実質的に毒性がなく、地球温暖化係数が低く、かつ熱伝達性能に優れた組成物を、特に中温冷蔵システム及び方法において、更により好ましくは霜なし及び低霜中温冷蔵システムにおいて、提供する。
【0014】
中温冷蔵システム及び方法も、以下に詳細に記載されるように、本発明によって提供される。
【0015】
更に、出願人らは、直接膨張蒸発器などの多くの蒸発器において、冷媒が蒸発器を通って移動する際に圧力損失があり、多くの場合、その圧力低下は、約1℃~2℃の飽和温度低下をもたらす量であることを理解するようになった。
【0016】
したがって、本発明の冷媒は、GWPが約75超かつ約150未満であり、ASHRAEによってA1(不燃性かつ低毒性)として分類され、蒸発器勾配が約3℃未満、更により好ましくは約2℃未満である冷媒を含み、好ましくは蒸発器を含むシステムにおいて使用され、冷媒の圧力は、蒸発器の入口から出口へと、冷媒の飽和温度を約1℃~約3℃
、最も好ましくは約1℃~約2℃低下させる量で減圧する。これは、このような実施形態による本発明の冷媒が、蒸発器を通じた冷媒温度の予想外に小さい変化を実現することができることを意味する。例えば、圧力損失の結果としての蒸発器の入口と出口との間の冷媒温度の変化は、好ましくは(実質的に一定の蒸発器入口圧力で測定される)蒸発器勾配未満、及び更により好ましくは蒸発器勾配の約75%未満、及び更により好ましくは蒸発器勾配の約50%未満である。したがって、GWPが約75超かつ約150未満であり、ASHRAEによってA1(不燃性かつ低毒性)として分類される本発明のこのような好ましい冷媒組成物は、冷媒が蒸発器を通って移動するときに、冷媒の温度が約1℃未満の量で変化し得るものである(すなわち、圧力損失の結果として蒸発器の入口と出口との間の冷媒温度の変化は、好ましくは約1℃未満である)。この発見の結果として少なくとも部分的に、本発明の方法及びシステムは、特に、動作モード(冷却又は加熱)に応じて、熱交換器において冷媒流が方向を変える可逆熱ポンプのような用途のために、高効率の熱交換器設計を利用して達成することができる。
【0017】
本発明の冷媒はまた、GWPが約75未満であり、ASHRAEによってA1(不燃性かつ低毒性)として分類され、蒸発器勾配が約4.5℃未満である冷媒を含み、好ましくは蒸発器を含むシステムにおいて使用され、冷媒の圧力は、蒸発器の入口から出口へと、冷媒の飽和温度を約0.5℃~約2.0℃低下させる量で減圧する。
【0018】
したがって、好ましい実施形態では、本発明による冷媒は、勾配による冷媒温度の上昇にほぼ相当する飽和温度損失に相当する圧力低下を有する蒸発器において使用される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】典型的なスーパーマーケットの生産物冷却ケースからの概略図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
好ましい組成物の説明
本発明は、次のことを同時に行う冷媒を提供する。(1)4.5未満の勾配を有して、霜形成を低減又は回避するのを助け、典型的な過熱度、例えば約3℃~約5℃を維持することができること、(2)不燃性であること、(3)低毒性であるか又は実質的に毒性がないこと、(4)約150未満の地球温暖化係数(GWP)を有すること、並びに(5)特に中温熱伝達システムにおいて、及び更により好ましくは霜なし又は低霜中温冷蔵システムにおいて、特定の用途の必要性と一致する熱伝達特性及び他の物理的特性(化学的安定性など)を有すること。
【0021】
本発明はまた、次のことを同時に行う冷媒を提供する。(1)約3℃未満、好ましくは約2℃未満の勾配を有する(したがって、実質的に霜形成を回避し、典型的な過熱度、例えば、約3℃~約5℃を維持することができる)こと、(2)不燃性であること、(3)低毒性であるか又は実質的に毒性がないこと、(4)約75超かつ約150未満のGWPを有すること、並びに(5)特に中温熱伝達システムにおいて、及び更により好ましくは霜なし又は低霜中温冷蔵システムにおいて、特定の用途の必要性と一致する熱伝達特性及び他の物理的特性(化学的安定性など)を有すること。
【0022】
本発明はまた、次のことを同時に行う冷媒を提供する。(1)4.5℃未満の勾配を有すること、(2)不燃性であること、(3)低毒性であるか又は実質的に毒性がないこと、(4)約75未満のGWPを有すること、並びに(5)特に中温熱伝達システムにおいて、及び更により好ましくは霜なし又は低霜中温冷蔵システムにおいて、特定の用途の必要性と一致する熱伝達特性及び他の物理的特性(化学的安定性など)を有すること。
定義:
【0023】
「成績係数」という語句(以下「COP」)は、冷媒の蒸発又は凝縮を伴う特定の加熱又は冷却サイクルにおいて冷媒の相対的な熱力学的効率を表すのに特に有用な、広く受け入れられている冷媒性能の尺度である。冷蔵工学では、この用語は、蒸気の圧縮時に圧縮機によって印加されるエネルギーに対する有効な冷蔵又は冷却能力の比率を表し、したがって冷媒などの熱伝達流体の所与の体積流量に対する熱量を送出する所与の圧縮機の能力を表す。換言すれば、特定の圧縮機を考慮すると、より高いCOPを有する冷媒は、より多くの冷却又は加熱力を供給するであろう。特定の運転条件における冷媒のCOPを推定するための1つの手段は、標準的な冷蔵サイクル分析技術を用いた冷媒の熱力学的特性からのものである(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、R.C.Downing,FLUOROCARBON REFRIGERANTS HANDBOOK,Chapter 3,Prentice-Hall,1988を参照されたい)。
【0024】
「地球温暖化係数」(以下「GWP」)は、様々な気体の地球温暖化への影響を比較することを可能にするために開発された。これは、特定の質量の気体によって捕捉された熱量を、特定の時間期間にわたって、同様の質量の二酸化炭素によって捕捉された熱量と比較する。二酸化炭素は、標準気体として気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によって選択されたものであり、そのGWPを1とする。GWPが大きいほど、所与の気体は、CO2と比較して、その期間にわたって地球をより一層温めることになる。
【0025】
「不燃性」という用語は、ASTM Standard E-681-2009 Standard Test Method for Concentration Limits of Flammability of Chemicals(Vapors
and Gases)に従って、ASHRAE Standard 34-2016 Designation and Safety Classification of
Refrigerants、及びASHRAE Standard 34-2016のAppendix B1(各規格は本願の出願日時点で存在するとおり)に記載されている条件で判定される際、不燃性と判定される化合物又は組成物を指し、これらの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれている(「不燃性試験」)。燃焼性は、発火及び/又は炎を広げる組成物の能力として定義される。この試験下で、火炎角を測定することによって可燃性を判定する。不燃性物質は、ASHRAE Standard 34-2016 Designation and Safety Classification of Refrigerants(各規格は本願の出願日時点で存在するとおり)によってクラス「1」として分類される。
【0026】
本明細書で使用するとき、用語「蒸発器勾配」は、蒸発器出口における圧力が入口における圧力と同じであると仮定して、蒸発器の入口における冷媒の飽和温度と蒸発器の出口における冷媒の露点との間の差を意味する。本明細書で使用するとき、「飽和温度」という表現は、液体冷媒が所与の圧力で蒸気に沸騰する温度を意味する。
【0027】
本明細書で使用するとき、「毒性がないか又は低毒性」という表現は、組成物が、ASHRAE Standard 34-2016 Designation and Safety Classification of Refrigerantsによってクラス「A」として分類され、ASHRAE Standard 34-2016のAppendix B1(各規格は本願の出願日時点で存在するとおり)に記載されていることを示す。不燃性かつ低毒性である物質は、ASHRAE Standard 34-2016 Designation and Safety Classification of Refrigerantsによって「A1」として分類され、ASHRAE Standard 34-2016のAppendix B1(各規格は本願の出願日時点で存在するとおり)に記載されている。
【0028】
用語「過熱度」又は単に「過熱」は、冷媒の飽和蒸気温度(又は露点温度)を超える蒸発器の出口における冷媒の温度上昇を意味する。
【0029】
本明細書で使用するとき、用語、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンは、HFO-1234zeのトランス異性体を意味し、HFO-1234ze(E)と略記される。
【0030】
本明細書で使用するとき、用語、E-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-2-エンは、HFO-1336mzzのトランス異性体を意味し、HFO-1336mzz(E)と略記される。
【0031】
本明細書で使用するとき、用語、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパンは、HFC-227eaと略記される。
【0032】
本明細書で使用するとき、重量パーセントで表される量に関する「約」という用語は、成分の量が+/-2重量%の量で変化し得ることを意味する。
冷媒組成物
HFO-1234ze(E)及びHFO-1336mzz(E):
【0033】
本発明は、HFO-1234ze(E)及びHFO-1336mzz(E)を含み得るか、HFO-1234ze(E)及びHFO-1336mzz(E)から本質的になり得るか、又はHFO-1234ze(E)及びHFO-1336mzz(E)からなり得る。
【0034】
冷媒は、(a)65重量%~約90重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)約10重量%~約35重量%のHFO-1336mzz(E)と、を含み得る。冷媒は、上記の量でHFO-1234ze(E)及びHFO-1336mzz(E)から本質的になり得るか、又はHFO-1234ze(E)及びHFO-1336mzz(E)からなり得ることが理解されるであろう。本段落に記載する冷媒は場合により、便宜上「冷媒1」と呼ばれる。
【0035】
冷媒は、(a)約76重量%~約90重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)約10重量%~約24重量%のHFO-1336mzz(E)と、を含み得る。冷媒は、上記の量でHFO-1234ze(E)及びHFO-1336mzz(E)から本質的になり得るか、又はHFO-1234ze(E)及びHFO-1336mzz(E)からなり得ることが理解されるであろう。本段落に記載する冷媒は場合により、便宜上「冷媒1A」と呼ばれる。
【0036】
冷媒は、(a)約65重量%~約78重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)約22重量%~約35重量%のHFO-1336mzz(E)と、から本質的になり得る。冷媒は、上記の量でHFO-1234ze(E)及びHFO-1336mzz(E)からなり得ることが理解されるであろう。本段落に記載する冷媒は場合により、便宜上「冷媒1B」と呼ばれる。
【0037】
冷媒は、(a)約70重量%~約78重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)約22重量%~約30重量%のHFO-1336mzz(E)と、から本質的になり得る。冷媒は、上記の量でHFO-1234ze(E)及びHFO-1336mzz(E)からなり得ることが理解されるであろう。本段落に記載する冷媒は場合により、便宜上「冷媒1C」と呼ばれる。
【0038】
冷媒は、(a)69.5重量%~80重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)20重量%~30.5重量%のHFO-1336mzz(E)と、から本質的になり得る。冷媒は、上記の量でHFO-1234ze(E)及びHFO-1336mzz(E)からなり得ることが理解されるであろう。本段落に記載する冷媒は場合により、便宜上「冷媒1D」と呼ばれる。
【0039】
冷媒は、(a)65重量%+0.5重量%/-2.0重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)35重量%+2.0重量%/-0.5重量%のHFO-1336mzz(E)と、から本質的になり得る。冷媒は、上記の量でHFO-1234ze(E)及びHFO-1336mzz(E)からなり得ることが理解されるであろう。本段落に記載する冷媒は場合により、便宜上「冷媒1E」と呼ばれる。
【0040】
冷媒は、(a)70重量%+0.5重量%/-2.0重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)30重量%+2.0重量%/-0.5重量%のHFO-1336mzz(E)と、から本質的になり得る。冷媒は、上記の量でHFO-1234ze(E)及びHFO-1336mzz(E)からなり得ることが理解されるであろう。本段落に記載する冷媒は場合により、便宜上「冷媒1F」と呼ばれる。
【0041】
冷媒は、(a)69.5重量%~80重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)20重量%~30.5重量%のHFO-1336mzz(E)と、から本質的になり得る。冷媒は、上記の量でHFO-1234ze(E)及びHFO-1336mzz(E)からなり得ることが理解されるであろう。本段落に記載する冷媒は場合により、便宜上「冷媒1D」と呼ばれる。
【0042】
冷媒は、(a)65重量%+0.5重量%/-2.0重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)35重量%+2.0重量%/-0.5重量%のHFO-1336mzz(E)と、から本質的になり得る。冷媒は、上記の量でHFO-1234ze(E)及びHFO-1336mzz(E)からなり得ることが理解されるであろう。本段落に記載する冷媒は場合により、便宜上「冷媒1E」と呼ばれる。
【0043】
冷媒は、(a)70重量%+0.5重量%/-2.0重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)30重量%+2.0重量%/-0.5重量%のHFO-1336mzz(E)と、から本質的になり得る。冷媒は、上記の量でHFO-1234ze(E)及びHFO-1336mzz(E)からなり得ることが理解されるであろう。本段落に記載する冷媒は場合により、便宜上「冷媒1F」と呼ばれる。
【0044】
冷媒は、(a)75重量%+0.5重量%/-2.0重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)25重量%+2.0重量%/-0.5重量%のHFO-1336mzz(E)と、から本質的になり得る。冷媒は、上記の量でHFO-1234ze(E)及びHFO-1336mzz(E)からなり得ることが理解されるであろう。本段落に記載する冷媒は場合により、便宜上「冷媒1G」と呼ばれる。
【0045】
冷媒は、(a)78重量%+0.5重量%/-2.0重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)20重量%+2.0重量%/-0.5重量%のHFO-1336mzz(E)と、から本質的になり得る。冷媒は、上記の量でHFO-1234ze(E)及びHFO-1336mzz(E)からなり得ることが理解されるであろう。本段落に記載する冷媒は場合により、便宜上「冷媒1H」と呼ばれる。
【0046】
冷媒は、(a)約76重量%~約80重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)約20重量%~約24重量%のHFO-1336mzz(E)と、を含み得る。冷媒は、上記の量でHFO-1234ze(E)及びHFO-1336mzz(E)から本質的になり得るか、又はHFO-1234ze(E)及びHFO-1336mzz(E)からなり得ることが理解されるであろう。本段落に記載する冷媒は場合により、便宜上「冷媒2」と呼ばれる。
【0047】
冷媒は、(a)約78重量%~約80重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)約20重量%~約22重量%のHFO-1336mzz(E)と、を含み得る。冷媒は、上記の量でHFO-1234ze(E)及びHFO-1336mzz(E)から本質的になり得るか、又はHFO-1234ze(E)及びHFO-1336mzz(E)からなり得ることが理解されるであろう。本段落に記載する冷媒は場合により、便宜上「冷媒3」と呼ばれる。
【0048】
冷媒は、(a)約76重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)約19重量%のHFO-1336mzz(E)と、を含み得る。冷媒は、上記の量でHFO-1234ze(E)及びHFO-1336mzz(E)から本質的になり得るか、又はHFO-1234ze(E)及びHFO-1336mzz(E)からなり得ることが理解されるであ
ろう。本段落に記載する冷媒は場合により、便宜上「冷媒4」と呼ばれる。
HFO-1234ze(E)、HFO-1336mzz(E)及びHFC-227ea:
【0049】
本発明は、HFO-1234ze(E)、HFO-1336mzz(E)、及びHFC-227eaを含み得るか、HFO-1234ze(E)、HFO-1336mzz(E)、及びHFC-227eaから本質的になり得るか、又はHFO-1234ze(E)、HFO-1336mzz(E)、及びHFC-227eaからなり得る。
【0050】
冷媒は、(a)約74.6重量%~約78.6重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)約17重量%~約21重量%のHFO-1336mzz(E)と、(c)0重量%超~約4.4重量%のHFC-227eaと、を含み得る。好ましくは、冷媒は、(a)74.6重量%~約78.6重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)約17重量%~約19重量%のHFO-1336mzz(E)と、(c)約4.4重量%のHFC-227eaと、を含む。例えば、冷媒は、約4.4重量%の量でHFC-227eaを含み得る。冷媒は、上記の量でHFO-1234ze(E)、HFO-1336mzz(E)、及びHFC-227eaから本質的になり得るか、又はHFO-1234ze(E)、HFO-1336mzz(E)、及びHFC-227eaからなり得ることが理解されるであろう。本段落に記載する冷媒は場合により、便宜上「冷媒5」と呼ばれる。
【0051】
冷媒は、(a)約78.6重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)約17重量%のHFO-1336mzz(E)と、(c)約4.4重量%のHFC-227eaと、を含み得る。冷媒は、上記の量でHFO-1234ze(E)、HFO-1336mzz(E)、及びHFC-227eaから本質的になり得るか、又はHFO-1234ze(E)、HFO-1336mzz(E)、及びHFC-227eaからなり得ることが理解されるであろう。本段落に記載する冷媒は場合により、便宜上「冷媒6A」と呼ばれる。
【0052】
冷媒は、(a)約76.6重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)約19重量%のHFO-1336mzz(E)と、(c)約4.4重量%のHFC-227eaと、を含み得る。冷媒は、上記の量でHFO-1234ze(E)、HFO-1336mzz(E)、及びHFC-227eaから本質的になり得るか、又はHFO-1234ze(E)、HFO-1336mzz(E)、及びHFC-227eaからなり得ることが理解されるであろう。本段落に記載する冷媒は場合により、便宜上「冷媒6B」と呼ばれる。
【0053】
冷媒は、(a)約74.6重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)約21重量%のHFO-1336mzz(E)と、(c)約4.4重量%のHFC-227eaと、を含み得る。冷媒は、上記の量でHFO-1234ze(E)、HFO-1336mzz(E)、及びHFC-227eaから本質的になり得るか、又はHFO-1234ze(E)、HFO-1336mzz(E)、及びHFC-227eaからなり得ることが理解されるであろう。本段落に記載する冷媒は場合により、便宜上「冷媒6C」と呼ばれる。
【0054】
冷媒は、(a)約78.6重量%+0.5重量%/-2.0重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)17重量%+2.0重量%/-0.5重量%のHFO-1336mzz(E)と、(c)4.4重量%+2.0重量%/-0.5重量%のHFC-227eaと、を含み得る。冷媒は、上記の量でHFO-1234ze(E)、HFO-1336mzz(E)、及びHFC-227eaから本質的になり得るか、又はHFO-1234ze(E)、HFO-1336mzz(E)、及びHFC-227eaからなり得ることが理解されるであろう。本段落に記載する冷媒は場合により、便宜上「冷媒6D」と呼ばれる。
【0055】
冷媒は、(a)約76.6重量%+0.5重量%/-2.0重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)19重量%+2.0重量%/-0.5重量%のHFO-1336mzz(E)と、(c)4.4重量%+2.0重量%/-0.5重量%のHFC-227eaと、を含み得る。冷媒は、上記の量でHFO-1234ze(E)、HFO-1336mzz(E)、及びHFC-227eaから本質的になり得るか、又はHFO-1234ze(E)、HFO-1336mzz(E)、及びHFC-227eaからなり得ることが理解されるであろう。本段落に記載する冷媒は場合により、便宜上「冷媒6E」と呼ばれる。
【0056】
冷媒は、(a)約74.6重量%+0.5重量%/-2.0重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)21重量%+2.0重量%/-0.5重量%のHFO-1336mzz(E)と、(c)4.4重量%+2.0重量%/-0.5重量%のHFC-227eaと、を含み得る。冷媒は、上記の量でHFO-1234ze(E)、HFO-1336mzz(E)、及びHFC-227eaから本質的になり得るか、又はHFO-1234ze(E)、HFO-1336mzz(E)、及びHFC-227eaからなり得ることが理解されるであろう。本段落に記載する冷媒は場合により、便宜上「冷媒6F」と呼ばれる。
【0057】
冷媒は、(a)78.6重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)17重量%のHFO-1336mzz(E)と、(c)4.4重量%のHFC-227eaと、を含み得る。冷媒は、上記の量でHFO-1234ze(E)、HFO-1336mzz(E)、及びHFC-227eaから本質的になり得るか、又はHFO-1234ze(E)、HFO-1336mzz(E)、及びHFC-227eaからなり得ることが理解されるであろう。本段落に記載する冷媒は場合により、便宜上「冷媒6G」と呼ばれる。
【0058】
冷媒は、(a)76.6重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)19重量%のHFO-1336mzz(E)と、(c)4.4重量%のHFC-227eaと、を含み得る。冷媒は、上記の量でHFO-1234ze(E)、HFO-1336mzz(E)、及びHFC-227eaから本質的になり得るか、又はHFO-1234ze(E)、HFO-1336mzz(E)、及びHFC-227eaからなり得ることが理解されるであろう。本段落に記載する冷媒は場合により、便宜上「冷媒6H」と呼ばれる。
【0059】
冷媒は、(a)74.6重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)21重量%のHFO-1336mzz(E)と、(c)4.4重量%のHFC-227eaと、を含み得る。冷媒は、上記の量でHFO-1234ze(E)、HFO-1336mzz(E)、及びHFC-227eaから本質的になり得るか、又はHFO-1234ze(E)
、HFO-1336mzz(E)、及びHFC-227eaからなり得ることが理解されるであろう。本段落に記載する冷媒は場合により、便宜上「冷媒6I」と呼ばれる。
【0060】
冷媒は、(a)約78.6重量%~約80.6重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)約15重量%~約17重量%のHFO-1336mzz(E)と、(c)約4.4重量%のHFC-227eaと、を含み得る。冷媒は、上記の量でHFO-1234ze(E)、HFO-1336mzz(E)、及びHFC-227eaから本質的になり得るか、又はHFO-1234ze(E)、HFO-1336mzz(E)、及びHFC-227eaからなり得ることが理解されるであろう。本段落に記載する冷媒は場合により、便宜上「冷媒7」と呼ばれる。
【0061】
冷媒1~7のそれぞれを含む冷媒は、約150未満のGWPを有する。本明細書で使用するとき、用語「冷媒1~7」は、別個にかつ独立して、冷媒1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H、2、3、4、5、6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G、6H、6I及び7のそれぞれを意味する。
【0062】
冷媒1E~1Hのそれぞれを含む、本発明の特定の好ましい冷媒は、約75未満のGWPを有する。
【0063】
冷媒1~7のそれぞれを含む冷媒は、有利には不燃性であり得る。換言すれば、冷媒は、クラス1冷媒であってもよい。
【0064】
冷媒1~7のそれぞれを含む冷媒は、毒性がないか又は低毒性である。すなわち、冷媒は、クラスA冷媒である。
【0065】
冷媒1~7のそれぞれを含む冷媒は、好ましくは4.5未満、より好ましくは約3℃未満、更により好ましくは約2℃未満の勾配を有する。
【0066】
好ましい実施形態における冷媒1~7のそれぞれを含む冷媒は、上記の特性のうちの1つ以上、最も好ましくは全ての組み合わせを有することが理解されるであろう。
熱伝達組成物:
【0067】
発明の冷媒は、熱伝達組成物中に提供され得る。したがって、本発明の熱伝達組成物は、本明細書に開示される好ましい冷媒組成物、及び特に冷媒1~7のそれぞれのうちのいずれかを含む本発明の冷媒を含む。好ましくは、発明は、冷媒を含む熱伝達組成物に関し、冷媒は、冷媒1~7のそれぞれを熱伝達組成物の少なくとも約80重量%、又は熱伝達組成物の少なくとも約90重量%、又は熱伝達組成物の少なくとも約97重量%、又は熱伝達組成物の少なくとも約99%重量の量で含む。熱伝達組成物は、冷媒から本質的になってもよいか、又は冷媒からなってもよい。
潤滑剤:
【0068】
好ましくは、熱伝達組成物は、潤滑剤を更に含んでもよい。潤滑剤は、冷媒を使用して冷媒圧縮機を潤滑する。好ましくは、潤滑剤は、熱伝達組成物の約1重量%~約50重量%の量で、より好ましくは熱伝達組成物の約10重量%~約50重量%の量で、最も好ましくは熱伝達組成物の約30重量%~約50重量%の量で、熱伝達組成物中に存在する。有用な潤滑剤としては、アルキルベンゼン、エステル、ポリオールエステル(「POE」)、ポリアルキレングリコール(「PAG」)、ポリビニルエーテル(「PVE」)、ポリ(α-オレフィン)(「PAO」)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。市販のアルキルベンゼン潤滑剤としては、Zerol 150(登録商標)が挙げられる。PAGは、GM Goodwrench Refrigeration Oil及びMOPAR-56として入手可能である。他の有用なエステルには、リン酸エステル、二塩基酸エステル、及びフルオロエステルが含まれる。
【0069】
市販のPOEとしては、Emery 2917(登録商標)及びHatcol 2370(登録商標)として入手可能なジペラルゴン酸ネオペンチルグリコール、並びにCPI Fluid Engineeringによって商品名Emkarate RL32-3MAF及びEmkarate RL68Hとして販売されているものなどのペンタエリスリトール誘導体が挙げられる。Emkarate RL32-3MAF及びEmkarate RL68Hは、以下の表で同定された特性を有する。
【表1】
【0070】
市販のPVEとしては、IdemitsuによるポリビニルエーテルFVC-32D(登録商標)及びFVC-68D(登録商標)が挙げられる。
【0071】
好ましい潤滑剤としては、POE及びPVE、より好ましくはPOEが挙げられる。当然ながら、異なる種類の潤滑剤の異なる混合物が使用されてもよい。
【0072】
本発明の熱伝達組成物は、冷媒1~7のそれぞれを含む冷媒、及び特に上記のような好ましい潤滑剤のそれぞれを含む潤滑剤から本質的になり得るか、又はこれらからなり得る。
【0073】
発明の好ましい熱伝達組成物は、冷媒1~7のうちのいずれか1つ及びPOE潤滑剤を含む。
【0074】
発明の好ましい熱伝達組成物は、冷媒6D及びPOE潤滑剤を含む。
【0075】
発明の好ましい熱伝達組成物は、40℃における粘度(ASTM D445)が約31~約67である冷媒6D及びPOE潤滑剤を含む。
【0076】
発明の好ましい熱伝達組成物は、100℃における粘度(ASTM D445)が約5~約10である冷媒6D及びPOE潤滑剤を含む。
【0077】
発明の好ましい熱伝達組成物は、冷媒6E及びPOE潤滑剤を含む。
【0078】
発明の好ましい熱伝達組成物は、40℃における粘度(ASTM D445)が約31~約67である冷媒6E及びPOE潤滑剤を含む。
【0079】
発明の好ましい熱伝達組成物は、100℃における粘度(ASTM D445)が約5~約10である冷媒6E及びPOE潤滑剤を含む。
【0080】
発明の好ましい熱伝達組成物は、冷媒6F及びPOE潤滑剤を含む。
【0081】
発明の好ましい熱伝達組成物は、40℃における粘度(ASTM D445)が約31~約67である冷媒6F及びPOE潤滑剤を含む。
【0082】
発明の好ましい熱伝達組成物は、100℃における粘度(ASTM D445)が約5~約10である冷媒6F及びPOE潤滑剤を含む。
【0083】
発明の好ましい熱伝達組成物は、冷媒6G及びPOE潤滑剤を含む。
【0084】
発明の好ましい熱伝達組成物は、40℃における粘度(ASTM D445)が約31~約67である冷媒6G及びPOE潤滑剤を含む。
【0085】
発明の好ましい熱伝達組成物は、100℃における粘度(ASTM D445)が約5~約10である冷媒6G及びPOE潤滑剤を含む。
【0086】
発明の好ましい熱伝達組成物は、冷媒6H及びPOE潤滑剤を含む。
【0087】
発明の好ましい熱伝達組成物は、40℃における粘度(ASTM D445)が約31~約67である冷媒6H及びPOE潤滑剤を含む。
【0088】
発明の好ましい熱伝達組成物は、100℃における粘度(ASTM D445)が約5~約10である冷媒6H及びPOE潤滑剤を含む。
【0089】
発明の好ましい熱伝達組成物は、冷媒6I及びPOE潤滑剤を含む。
【0090】
発明の好ましい熱伝達組成物は、40℃における粘度(ASTM D445)が約31~約67である冷媒6I及びPOE潤滑剤を含む。
【0091】
発明の好ましい熱伝達組成物は、100℃における粘度(ASTM D445)が約5~約10である冷媒6I及びPOE潤滑剤を含む。
【0092】
発明の好ましい熱伝達組成物は、冷媒1~7のうちのいずれか1つ及びPVE潤滑剤を含む。
【0093】
発明の好ましい熱伝達組成物は、冷媒6D及びPVE潤滑剤を含む。
【0094】
発明の好ましい熱伝達組成物は、冷媒6E及びPVE潤滑剤を含む。
【0095】
発明の好ましい熱伝達組成物は、冷媒6F及びPVE潤滑剤を含む。
【0096】
発明の好ましい熱伝達組成物は、冷媒6G及びPVE潤滑剤を含む。
【0097】
発明の好ましい熱伝達組成物は、冷媒6H及びPVE潤滑剤を含む。
【0098】
発明の好ましい熱伝達組成物は、冷媒6I及びPVE潤滑剤を含む。
使用
【0099】
本発明の方法及びシステムは、冷媒1~7のそれぞれを含む冷媒、又は冷媒1~7のそれぞれを含む、本発明の冷媒を含む熱伝達組成物を利用して、熱を吸収するか、又は熱を廃棄するか、又は熱の吸収及び廃棄を行う、任意の熱伝達システム及び/又は任意の熱伝達方法を含んでもよい。したがって、本発明は、冷媒1~7のそれぞれを含む冷媒を使用して、又は冷媒1~7のそれぞれを含む、本発明の冷媒を含む熱伝達組成物を使用して、流体又は物体を、加熱又は冷却する方法を提供する。発明はまた、冷媒1~7のそれぞれを含む冷媒、又は冷媒1~7のそれぞれを含む、本発明の冷媒を含む熱伝達組成物、を含む熱伝達システムも提供する。本明細書に記載の熱伝達システムは、流体連通している蒸発器、凝縮器、及び圧縮機を有する蒸気圧縮システムであってもよいことが理解されるであろう。
【0100】
出願人らは、例えば、生産物及び/若しくは他の冷凍食品を冷却するために生じ得る、又は特定の電子デバイスの冷却に関連して生じ得るなどの実質的な利点が、冷媒1~7のそれぞれを含む冷媒、又は本発明の冷媒、冷媒1~7を含む本発明の熱伝達組成物が、物品を取り囲む流体から熱を吸収するために、又は他の方法で物品自体と熱伝達するために使用される熱伝達システム及び熱伝達方法に関連して達成され得ることを見出した。そのような場合に、流体は、空気又は二次クーラント(例えば、水、グリコール、水/グリ
コール混合物、食塩水など)であってもよく、例えば、冷却される物品又は流体の温度が特定の限界未満の温度に曝露されないことを必要とするシステム及び方法において蒸発器に使用される冷媒の場合に生じるものである。
【0101】
したがって、一般的に、本発明の方法及びシステムは、本発明の冷媒又は熱伝達組成物が熱を吸収することを可能にする装置及び/又はプロセス、並びにその後、吸収された熱を冷媒から除去する装置及び/又はプロセスを利用する。
【0102】
本発明は、冷媒1~7のそれぞれを含む冷媒、又は冷媒1~7のそれぞれを含む、本発明の冷媒を含む熱伝達組成物、を含む、冷蔵システム、空気調節システム、又はヒートポンプシステムを提供する。
【0103】
本発明は、冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iのうちのいずれか1つによる冷媒、又は冷媒6D、6E、6F、6G、6H、及び6Iのそれぞれを含む本発明の冷媒を含む熱伝達組成物、を含む、冷蔵システム、空気調節システム、又はヒートポンプシステムを提供する。
【0104】
物品又は冷却されている流体から熱を吸収するために使用される蒸発器は、例えば冷却コイルなどの導管などを含み得、そのような導管が冷却されるべき物品又は流体(直接的又は間接的)に露出されている間に、冷媒1~7のそれぞれを含む冷媒は、導管を通って流れることが理解されるであろう。このようにして、冷却されている流体(例えば空気)及び/又は周辺に配置された物品(例えば、果物、野菜、及び花などの新鮮な生産物など)から、導管の金属又は他の熱伝導性材料を通って、冷媒1~7のそれぞれを含む、本発明の冷媒内へと熱が流れる。
【0105】
出願人らは、冷却された吐出空気が約2℃~約5℃の温度で制御されるシステムの場合、冷却された吐出空気が約2℃~約4℃の温度、より好ましくは特定の実施形態において(例えば、冷却した新鮮なカットフルーツ、野菜、及び花など)、冷却された吐出空気が約2℃~約3℃の温度であるとき、冷媒1~7のそれぞれを含む、本発明の冷媒組成物が、好ましくは約3℃未満、更により好ましくは約2℃未満である蒸発器勾配を有することを発見した。
【0106】
冷媒1~7のそれぞれを含む、本発明の好ましい冷媒組成物、及び本発明の熱交換器設計を利用した本発明の方法及びシステムに従って達成可能な、出願者によるこの効果の発見は、
図4に概略的に示されている。
【0107】
冷媒1~7のそれぞれを含む本発明による冷媒は、勾配による冷媒温度の上昇にほぼ相当する飽和温度損失に相当する圧力低下を有する蒸発器を有するシステムにおいて使用され得ることが理解されるであろう。
【0108】
本発明の特定のシステム及び方法を以下に説明する。
冷蔵システム
【0109】
本発明は、発明の冷媒又は熱伝達組成物を含む冷蔵システムを提供する。本発明はまた、冷蔵システムを使用して流体又は物体を冷却するための方法を提供し、この方法は、(a)冷却されるべき流体又は物体の周辺で、冷媒1~7のそれぞれを含む、発明の冷媒組成物を蒸発させる工程と、(b)冷媒を凝縮する工程と、を含む。
【0110】
発明の冷媒及び熱伝達組成物は、任意の冷蔵システムにおいて使用することができる。しかしながら、出願人らは、冷媒1~7のそれぞれを含む本冷媒、及び冷媒1~7のそれぞれを含む、本発明の冷媒を含む本熱伝達組成物は、中温冷蔵システム、特に、「霜なし」用途、例えば、蒸発器に沿った冷媒温度が、水の氷点超(すなわち、0℃超)を維持する必要がある用途などで使用される中温冷蔵システムにおいて特定の利点を提供することを見出した。これにより、蒸発器表面に霜が蓄積しないようになり、その結果、除霜サイクルは必要とされないか、又は必要な除霜サイクルの頻度が少なくてすむ。
【0111】
発明の冷媒及び熱伝達組成物は、任意の冷蔵システムにおいて使用することができる。しかしながら、出願人らは、冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iのそれぞれを含む本冷媒、又は冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iのそれぞれを含む本発明の冷媒を含む熱伝達組成物は、中温冷蔵システム、特に、「霜なし」用途、例えば、蒸発器に沿った冷媒温度が、水の氷点超(すなわち、0℃超)を維持する必要がある用途などで使用される中温冷蔵システムにおいて特定の利点を提供することを見出した。これにより、蒸発器表面に霜が蓄積しないようになり、その結果、除霜サイクルは必要とされないか、又は必要な除霜サイクルの頻度が少なくてすむ。
【0112】
したがって、本発明は、冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iのうちのいずれか1つを含む冷媒、又は冷媒6D、6E、6F、6G、6H、及び6Iのそれぞれを含む本発明の冷媒を含む熱伝達組成物、を含む、中温冷蔵システムに関する。本発明はまた、中温冷蔵システム内で流体又は物体を冷却するための方法を提供し、この方法は、(a)冷却されるべき流体又は物体の周辺で、冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iのそれぞれを含む、発明の冷媒組成物、又は冷却される流体若しくは物体の周辺で冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iのそれぞれを含む本発明の冷媒を含む熱伝達組成物を蒸発させる工程と、(b)冷媒を凝縮する工程と、を含む。好ましくは、蒸発器温度は、約-15℃~約5℃、より好ましくは約-10℃~約5℃である。
【0113】
本明細書で使用するとき、中温冷蔵システムは、1つ以上の圧縮機を利用し、以下の条件下又は条件内で動作する冷蔵システムを指す。(a)約15℃~約60℃、好ましくは約25℃~約45℃の凝縮器温度、(b)約-15℃~約5℃、好ましくは約-10℃~約5℃の蒸発器温度、任意に(c)約0℃~約10℃の蒸発器出口の過熱度、好ましくは約1℃~約6℃の蒸発器出口の過熱度、任意に(d)約5℃~約40℃の吸気ライン内の過熱度、好ましくは約15℃~約30℃の吸気ライン内の過熱度。吸気ラインに沿った過熱は、熱交換器によって生成されてもよい。
【0114】
中温冷蔵システムの例としては、小型冷蔵システム(自動販売機、製氷機、及び家庭用器具を含む)、商用冷蔵システム(スーパーマーケット冷蔵システム及びウォークインクーラーなど)、住宅用冷蔵システム、産業用冷蔵システム、及びスケートリンクが挙げ
られる。
【0115】
中温冷蔵システムにおける野菜及び果物などの腐敗しやすい生産物の貯蔵の場合、例えば、冷却されるべき流体は、約2℃~約5℃、好ましくは約2℃~約4℃、より好ましくは(例えば、新鮮なカットフルーツ、野菜、及び花の冷却など)、約2℃~約3℃の所望の冷却温度を有する空気である。更に、多くの用途において、蒸発器に沿った冷媒温度は、霜の形成を回避するために、約0℃(水の氷点)未満に達しないことが好ましい。好ましくは、同時に、蒸発器の出口における過熱は、約3℃~約5℃、好ましくは約4℃の典型的な値で維持されるべきである。
【0116】
したがって、発明は好ましくは、冷媒1~7のそれぞれを含む冷媒、又は冷媒1~7のそれぞれを含む、本発明の冷媒を含む熱伝達組成物、を含む、中温冷蔵システムを提供し、システムは約0℃~約5℃の蒸発器温度を有する。
【0117】
したがって、発明は、好ましくは、冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iのそれぞれを含む冷媒、又は冷媒6D、6E、6F、6G、6H、及び6Iのそれぞれを含む本発明の冷媒を含む熱伝達組成物、を含む、中温冷蔵システムを提供し、システムは約0℃~約5℃の蒸発器温度を有する。
【0118】
本発明はまた、中温冷蔵システム内で流体又は物体を冷却する方法を提供し、この方法は、(a)冷却されるべき流体又は物体の周辺で、冷媒1~7のそれぞれを含む、発明の冷媒組成物を蒸発させる工程と、(b)冷媒を凝縮する工程と、を含み、当該システムは約0℃~約5℃の蒸発器温度を有する。
【0119】
発明の冷媒及び熱伝達組成物はまた、他の冷蔵用途で使用することもできる。
【0120】
例えば、本発明は、冷媒1~7のそれぞれを含む冷媒、又は冷媒1~7のそれぞれを含む、本発明の冷媒を含む熱伝達組成物、を含む、低温冷蔵システムに関する。本発明はまた、低温冷蔵システム内で流体又は物体を冷却する方法を提供し、当該方法は、(a)冷却されるべき流体又は物体の周辺で、冷媒1~7のそれぞれを含む、発明の冷媒組成物を蒸発させる工程と、(b)当該冷媒を凝縮する工程と、を含む。好ましくは、蒸発器温度は、約-40℃~約-15℃未満、より好ましくは約-40℃~約-25℃である。
【0121】
例えば、本発明は、冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iのそれぞれを含む冷媒、又は冷媒6D、6E、6F、6G、6H、及び6Iのそれぞれを含む本発明の冷媒を含む熱伝達組成物、を含む、低温冷蔵システムに関する。本発明はまた、低温冷蔵システム内で流体又は物体を冷却するための方法を提供し、当該方法は、(a)冷却されるべき流体又は物体の周辺で、冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iのそれぞれを含む、発明の冷媒組成物、又は冷却される流体若しくは物体の周辺で冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iのそれぞれを含む本発明の冷媒を含む熱伝達組成物を蒸発させる工程と、(b)当該冷媒を凝縮する工程と、を含む。好ましくは、蒸発器温度は、約-40℃~約-15℃未満、より好ましくは約-40℃~約-25℃である。
【0122】
本明細書で使用するとき、低温冷蔵システムは、1つ以上の圧縮機を利用し、以下の条件下又は条件内で動作する冷蔵システムを指す。(a)約15℃~約50℃、好ましくは約25℃~約45℃の凝縮器温度、(b)約-40℃~約-15℃又は約-15℃未満、好ましくは約-40℃~約-25℃の蒸発器温度、任意に(c)約0℃~約10℃、好ましくは約1℃~約6℃の蒸発器出口の過熱度、任意に(d)約15℃~約40℃、好ましくは約20℃~約30℃の吸気ライン内の過熱度。
【0123】
低温冷蔵システムの例としては、スーパーマーケット冷蔵システム、商用冷蔵庫システム(スーパーマーケット冷蔵庫を含む)、住宅用冷蔵庫システム、及び産業用冷蔵庫システムが挙げられる。
【0124】
低温冷蔵システムは、冷凍品を冷却するために使用され得る。
【0125】
本発明は、発明の冷媒又は熱伝達組成物を含むカスケード冷蔵システムに関する。
【0126】
一般に、カスケードシステムは、2つ以上の段を有する。カスケードシステムが2つの段を有する場合、これらは一般に、上段及び下段と呼ばれる。冷媒1~7のそれぞれを含む、発明の冷媒、又は冷媒1~7のそれぞれを含む、本発明の冷媒を含む熱伝達組成物は、カスケード冷蔵システムの上段又は下段のいずれかで使用されてもよい。しかしながら、冷媒1~7のそれぞれを含む、発明の冷媒、又は冷媒1~7のそれぞれを含む、本発明の冷媒を含む熱伝達組成物は、カスケードシステムの上段に使用されることが好ましい。本明細書に含まれる教示を考慮すると、当業者は、カスケードシステムの下段で使用するのに好適な冷媒を決定することができ、例えばCO2、R1234yf、及びR455Aを含めることができる。R455Aは、75.5%のR1234yf、21.5%のR32、及び3%のCO2のブレンドである。カスケードシステムでは、本冷媒は、R404Aを置き換えることができる。
【0127】
一般に、カスケードシステムは、2つ以上の段を有する。カスケードシステムが2つの段を有する場合、これらは一般に、上段及び下段と呼ばれる。冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iのそれぞれを含む発明の冷媒、又は冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iのそれぞれを含む本発明の冷媒を含む熱伝達組成物は、カスケード冷蔵システムの上段又は下段のいずれかで使用されてもよい。しかしながら、冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iのそれぞれを含む発明の冷媒、又は冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iのそれぞれを含む本発明の冷媒を含む熱伝達組成物は、カスケードシステムの上段に使用されることが好ましい。本明細書に含まれる教示を考慮すると、当業者は、カスケードシステムの下段で使用するのに好適な冷媒を決定することができ、例えばCO2、R1234yf、及びR455Aを含めることができる。R455Aは、75.5%のR1234yf、21.5%のR32、及び3%のCO2のブレンドである。カスケードシステムでは、本冷媒は、R404Aを置き換えることができる。
【0128】
輸送用冷蔵は、正しい温度環境において冷凍又は冷却された生産物がエンドユーザに到達することを可能にする低温流通体系内のリンクを作成する。本発明は、冷媒1~7のそれぞれを含む、発明の冷媒、又は冷媒1~7のそれぞれを含む、本発明の冷媒を含む熱
伝達組成物、を含む、輸送用冷蔵システムに関する。
【0129】
輸送用冷蔵は、正しい温度環境において冷凍又は冷却された生産物がエンドユーザに到達することを可能にする低温流通体系内のリンクを作成する。本発明は、冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iのそれぞれを含む発明の冷媒、又は冷媒6D、6E、6F、6G、6H、及び6Iのそれぞれを含む本発明の冷媒を含む熱伝達組成物、を含む、輸送用冷蔵システムに関する。
【0130】
輸送用冷蔵の例としては、冷蔵道路車両(トラック及びバンなど)、列車貨車、並びに道路車両、列車、及び船舶/ボートによって輸送可能なコンテナが挙げられる。
二次ループシステム
【0131】
冷媒1~7のそれぞれを含む、本発明の冷媒、又は冷媒1~7のそれぞれを含む、本発明の冷媒を含む熱伝達組成物は、二次ループシステムにおいて二次流体として使用されてもよい。二次ループシステムは、一次冷媒を使用する一次蒸気圧縮システムループを含み、二次ループ流体を冷却する蒸発器を有する。次いで、二次流体は、用途のために必要な冷却を提供する。このようなループ内の冷媒は、冷却空間付近でヒトに曝露される可能性があるため、二次流体は不燃性であり、低毒性を有する必要がある。換言すれば、冷媒1~7のそれぞれを含む、本発明の冷媒は、「二次流体」として使用されてもよい。一次ループ(蒸気圧縮サイクル、ループの外部/屋外部品)で使用するための一次流体には、以下の冷媒、R404A、R507、R410A、R455A、R32、R466A、R44B、R290、R717、R452B、R448A、R1234ze(E)、R1234yf、及びR449Aが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0132】
各冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iを含む本発明の冷媒、又は冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iのそれぞれを含む本発明の冷媒を含む熱伝達組成物は、二次ループシステムにおける二次流体として使用することができる。二次ループシステムは、一次冷媒を使用する一次蒸気圧縮システムループを含み、二次ループ流体を冷却する蒸発器を有する。次いで、二次流体は、用途のために必要な冷却を提供する。このようなループ内の冷媒は、冷却空間付近でヒトに曝露される可能性があるため、二次流体は不燃性であり、低毒性を有する必要がある。換言すれば、冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iのそれぞれを含む本発明の冷媒は、「二次流体」として使用されてもよい。一次ループ(蒸気圧縮サイクル、ループの外部/屋外部品)で使用するための一次流体には、以下の冷媒、R404A、R507、R410A、R455A、R32、R466A、R44B、R290、R717、R452B、R448A、R1234ze(E)、R1234yf、及びR449Aが挙げられ得るが、これらに限定されない。
ヒートポンプシステム
【0133】
本発明は、冷媒1~7のそれぞれを含む、発明の冷媒、又は冷媒1~7のそれぞれを含む、本発明の冷媒を含む熱伝達組成物、を含む、ヒートポンプシステムに関する。
【0134】
本発明はまた、ヒートポンプを使用して流体又は物体を加熱する方法を提供し、この方法は、(a)加熱されるべき流体又は物体の周辺で、冷媒1~7のそれぞれを含む、発明の冷媒組成物を凝縮する工程と、(b)冷媒を蒸発させる工程と、を含む。
【0135】
本発明は、冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iのそれぞれを含む発明の冷媒、又は冷媒6D、6E、6F、6G、6H、及び6Iのそれぞれを含む本発明の冷媒を含む熱伝達組成物、を含む、ヒートポンプシステムに関する。
【0136】
本発明はまた、ヒートポンプを使用して流体又は物体を加熱する方法を提供し、この方法は、(a)加熱されるべき流体又は物体の周辺で、冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iのそれぞれを含む、発明の冷媒組成物を凝縮する工程と、(b)冷媒を蒸発させる工程と、を含む。
【0137】
ヒートポンプの例としては、ヒートポンプ回転式乾燥機、可逆ヒートポンプ、高温ヒートポンプ、及び空気対空気ヒートポンプが挙げられる。
空調システム
【0138】
本発明は、冷媒1~7のそれぞれを含む、冷媒若しくは発明の冷媒、又は冷媒1~7のそれぞれを含む、本発明の冷媒を含む熱伝達組成物、を含む、空調システムに関する。本発明はまた、空調システムを使用した空調の方法を提供し、当該方法は、(a)冷却されるべき物体の流体の周辺で、冷媒1~7のそれぞれを含む、発明の冷媒組成物を蒸発させる工程と、(b)当該冷媒を凝縮する工程と、を含む。空気は、冷媒1~7のそれぞれを含む、発明の冷媒によって直接又は間接的に調整されてもよい。
【0139】
本発明は、冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iのそれぞれを含む発明の冷媒、又は冷媒6D、6E、6F、6G、6H、及び6Iのそれぞれを含む本発明の冷媒を含む熱伝達組成物、を含む、空調システムに関する。本発明はまた、空調システムを使用した空調の方法を提供し、当該方法は、(a)冷却されるべき物体の流体の周辺で、冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iのそれぞれを含む、発明の冷媒組成物を蒸発させる工程と、(b)当該冷媒を凝縮する工程と、を含む。空気は、冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iのそれぞれを含む発明の冷媒によって直接又は間接的に調整されてもよい。
【0140】
空調システムの例としては、自動車、トラック及びバスなどの道路車両の空調、並びにボート及び列車の空調を含む、チラー、住宅用、産業用、商用、及び移動式の空調が挙げられる。
【0141】
本発明の好ましい冷蔵システムには、特に、冷媒1~7のそれぞれ、並びに更により具体的には冷媒4及び6A~6Iを含む、本発明の冷媒を含むチラーが挙げられる。
【0142】
本発明の好ましい冷蔵システムには、特に、冷媒1~7のそれぞれ、並びに更により具体的には冷媒4及び6A~6Iを含む、本発明の冷媒を含む住宅用空調システムが挙げられる。
【0143】
本発明の好ましい冷蔵システムには、特に、冷媒1~7のそれぞれ、並びに更により具体的には冷媒4及び6A~6Iを含む、本発明の冷媒を含む産業用空調システムが挙げられる。
【0144】
本発明の好ましい冷蔵システムには、特に、冷媒1~7のそれぞれ、並びに更により具体的には冷媒4及び6A~6Iを含む、本発明の冷媒を含む商用空調システムが挙げられる。
【0145】
本発明の好ましい冷蔵システムには、特に、冷媒1~7のそれぞれ、並びに更により具体的には冷媒4及び6A~6Iを含む、本発明の冷媒を含む移動式空調システムが挙げられる。
【0146】
冷媒1~7のそれぞれを含む、発明の冷媒、又は冷媒1~7のそれぞれを含む、本発明の冷媒を含む熱伝達組成物、を使用する上記の冷蔵システム、空調システム、又はヒートポンプシステムのうちのいずれかが、吸気ライン/液体ライン熱交換器(SL-LL HX)を含んでもよいことが理解されるであろう。
【0147】
冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iのそれぞれを含む発明の冷媒、又は冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iのそれぞれを含む本発明の冷媒を含む熱伝達組成物、を使用する上記の冷蔵システム、空調システム、又はヒートポンプシステムのうちのいずれかが、吸気ライン/液体ライン熱交換器(SL-LL HX)を含んでもよいことが理解されるであろう。
有機ランキンサイクルシステム
【0148】
冷媒1~7のそれぞれを含む、発明の冷媒組成物、又は冷媒1~7のそれぞれを含む、本発明の冷媒を含む熱伝達組成物は、有機ランキンサイクル(ORC)で使用されてもよい。ORCの文脈において、これらのシステムで使用される冷媒はまた、「作動流体」として分類されてもよい。
【0149】
冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iのそれぞれを含む発明の冷媒組成物、又は冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iのそれぞれを含む本発明の冷媒を含む熱伝達組成物は、有機ランキンサイクル(ORC)で使用されてもよい。ORCの文脈において、これらのシステムで使用される冷媒はまた、「作動流体」として分類されてもよい。
【0150】
ランキンサイクルシステムは、熱エネルギーを機械的軸動力に変換するための単純かつ信頼性の高い手段であることが知られている。
【0151】
工業環境では、特に工業環境が既に現場で作業中又は保管中の大量の可燃物を有する場合に、トルエン及びペンタンなどの可燃性作動流体を使用することが可能であり得る。しかしながら、人口の多い地域又は建物付近での発電など、可燃性かつ/又は有毒な作動流体の使用に関連するリスクが許容されない場合、作動流体として不燃性かつ/又は非毒性冷媒を使用する必要がある。また、GWPの観点から業界内にはこれらの材料を環境的
に許容可能なものにする動きもある。
【0152】
有機ランキンサイクルシステムで廃熱を回収するためのプロセスは、プロセスストリームなどの外部(廃)熱源が、作動流体を加熱し飽和蒸気又は過熱蒸気中に蒸発させる熱交換器(ボイラー)を通じて液相作動流体をポンピングすることを伴う。この蒸気はタービンを通って膨張し、廃熱エネルギーは機械エネルギーに変換される。続いて、気相作動流体を液体に凝縮し、熱抽出サイクルを繰り返すためにボイラーにポンプバックする。
【0153】
したがって、本発明は、有機ランキンサイクルにおいて冷媒1~7のそれぞれを含む、発明の冷媒、又は冷媒1~7のそれぞれを含む、本発明の冷媒を含む熱伝達組成物、の使用に関する。
【0154】
したがって、本発明は、ランキンサイクルにおいて熱エネルギーを機械エネルギーに変換するためのプロセスを提供し、この方法は、i)作動流体を熱源で気化させ、得られた蒸気を膨張させる工程、又は作動流体を熱源で気化させ、得られた蒸気を膨張させる工程と、次いで、ii)作動流体をヒートシンクで冷却して蒸気を凝縮させる工程であって、作動流体が冷媒1~7のそれぞれを含む、冷媒若しくは発明の冷媒、又は冷媒1~7のそれぞれを含む、本発明の冷媒を含む熱伝達組成物、冷媒である、工程と、を含む。
【0155】
機械仕事は、発電機などの電気装置に送信されて電力を生成することができる。
【0156】
熱源は、産業廃熱、太陽エネルギー、地熱温水、低圧蒸気、燃料電池を利用する分散発電装置、内燃機関エンジン、又は原動機から選択される熱エネルギー源によって提供されてもよい。好ましくは、低圧蒸気は、低圧の地熱蒸気であるか、又は化石燃料動力発電プラントによって提供される。
【0157】
熱源温度は、例えば、約90℃~800℃超など、広範に変化し得、特定の燃焼ガス及びいくつかの燃料電池のための地理、時期などを含む無数の要因に依存し得ることが理解されるであろう。例えばプラスチック製造プラント、及び/又は化学若しくは他の工業プラント、石油製油所などからの廃水若しくは低圧蒸気などの供給源、並びに地熱に基づくシステムは、約100℃以下、場合によっては約90℃程度に低い、又は更には約80℃程度に低い供給源温度を有し得る。微粒子及び/又は腐食種を除去するための後続の処理が低温につながる燃焼プロセス又は任意の熱源からの排気ガスなどのガス状熱源は、約130℃以下、約120℃以下、約100℃以下、約100℃以下、場合によっては約90℃程度に低い、又は更には約80℃程度に低い温度の源温度も有し得る。
電子冷却
【0158】
冷媒1~7のうちのいずれか1つを含む、発明の冷媒組成物は、チップ、電子基板、電池(自動車、トラック、バス、及び他の電子輸送車両に使用される電池を含む)、コンピュータなどの冷却など電子冷却のシステム及び方法に関連して使用され得る。
【0159】
冷媒6D、6E、6F、6G、6H及び6Iのうちのいずれか1つを含む、発明の冷
媒組成物は、チップ、電子基板、電池(自動車、トラック、バス、及び他の電子輸送車両に使用される電池を含む)、コンピュータなどの冷却など電子冷却のシステム及び方法に関連して使用され得る。
熱伝達組成物
【0160】
熱伝達組成物は、以下のとおり、低温冷蔵システムにおいて、冷媒1~7のうちのいずれか1つ、及び潤滑剤を含む。
【表2】
【0161】
熱伝達組成物は、以下のとおり、中温冷蔵システムにおいて、冷媒1~7のうちのいずれか1つ、及び潤滑剤を含む。
【表3】
【0162】
熱伝達組成物は、以下のとおり、小売食品冷蔵システムにおいて、冷媒1~7のうちのいずれか1つ、及び潤滑剤を含む。
【表4】
【0163】
熱伝達組成物は、以下のとおり、輸送コンテナ冷蔵システムにおいて、冷媒1~7のうちのいずれか1つ、及び潤滑剤を含む。
【表5】
【実施例0164】
以下の実施例では、対象冷媒組成物は、以下の表1の組成物A1~A8として特定される。冷媒A1、A2、A3、A4、A4’、A4’’、A5、A6、A7及びA8とし
て以下の表1で特定される冷媒組成物は、本明細書に記載されるような本発明の範囲内の冷媒である。冷媒の各々を熱力学的分析に供して、様々な冷蔵システムにおいてR-134aの動作特性と一致するための能力を判定した。冷媒中に使用されている成分の様々な二成分対及び三成分対の特性について収集した実験データを使用して分析を実施した。実験評価において各組の組成を一連の相対百分率にわたって変化させ、各組の混合パラメータを実験的に得られたデータに回帰させた。実施例では、National Institute of Science and Technology(NIST)Reference Fluid Thermodynamic and Transport Properties Databaseソフトウェア(Refprop 9.1 NIST Standard Database 23 from April 2016)で入手可能な、既知の蒸気/液体平衡挙動データを使用した。分析を行うために選択したパラメータは、全ての冷媒について同じ圧縮機容積、全ての冷媒について同じ動作条件、全ての冷媒について同じ圧縮機断熱効率及び容積効率であった。各実施例では、測定された気液平衡データを使用してシミュレーションを行った。各実施例についてシミュレーション結果を報告する。
【表6】
表1:性能実施例のために評価した冷媒
実施例1:吸気ライン(SL)/液体ライン(LL)熱交換器(HX)が有る場合と無い場合の中温冷蔵システムの性能
【0165】
吸気ライン/液体ライン熱交換器(SL/LL HX)が有る場合と無い場合の中温冷蔵システムで、冷媒A1~A8について性能試験を行った。この分析を実施して、以下の条件下におけるSL-LL HXの異なる有効性レベルでの、本システムにおける冷媒A1~A8の効率(COP)を評価した。
【0166】
動作条件は以下のとおりであった:
・凝縮温度=45℃
・凝縮温度-周囲温度=10℃
・凝縮器過冷却=0.0℃(受容器を有するシステム)
・蒸発温度=-8℃
・蒸発器過熱=5.5℃
・圧縮機断熱効率=65%
・容積効率=100%
・吸気ラインでの温度上昇=10℃
・吸気ライン/液体ライン熱交換器熱交換率:0%、35%、55%、75%
【表7】
表2.SL/LL HXを有する中温冷蔵システムにおける性能
【0167】
表2は、中温冷蔵システムにおける冷媒の性能を示す。SL-LL HXに対する「0%」効率を有するカラム下の結果は、SL-LL HXを有しないシステムを表し、また、冷媒A1~A8は、SL/LL熱交換器が使用されるとき、効率(COP)という点でR134aよりも改善された性能を示し、組成物A4、A4’及びA4’’は、全ての関連する性能因子が考慮されるときに優れた性能を示すことが理解されよう。
実施例2:吸気ライン/液体ライン熱交換器が有る場合と無い場合の低温冷蔵システムにおける性能
【0168】
吸気ライン/液体ライン熱交換器(SL/LL HX)が有る場合と無い場合の低温冷蔵システムで、冷媒A1~A8について性能試験を行った。この分析を実施して、以下の条件下におけるSL-LL HXの異なる有効性レベルでの、本システムにおける冷媒A1~A8の効率(COP)を評価した。
【0169】
動作条件は以下のとおりであった:
・凝縮温度=45℃
・凝縮温度-周囲温度=10℃
・凝縮器過冷却=0.0℃(受容器を有するシステム)
・蒸発温度=-35℃、対応する庫内温度=-25℃
・蒸発器過熱=5.5℃
・圧縮機断熱効率=65%
・容積効率=100%
・吸気ライン中の温度上昇=10℃
・吸気ライン/液体ライン熱交換器熱交換率:0%、35%、55%、75%
【表8】
表3.SL/LL HXを有する低温冷蔵システム冷蔵システムにおける性能
【0170】
表3は、低温冷蔵システムにおける冷媒の性能を示す。
【0171】
SL-LL HXに対する「0%」効率を有するカラム下の結果は、SL-LL HXを有しないシステムを表し、また、冷媒A1~A8は、SL/LL熱交換器が使用されるとき、効率(COP)という点でR134aよりも改善された性能を示し、組成物A4、A4’及びA4’’は、全ての関連する性能因子が考慮されるときに優れた性能を示すことが理解されよう。
実施例3:2段蒸気注入圧縮(Two-Stage Vapor Injected Compression)を有する中温冷蔵システムにおける性能
【0172】
2段蒸気注入圧縮を有する中温冷蔵システムにおいて、冷媒A1~A8について性能試験を行った。この分析を実施して、以下の条件下で本システムにおける冷媒A1~A8の効率(COP)を評価した。
【0173】
動作条件は以下のとおりであった:
・凝縮温度=45℃
・凝縮温度-周囲温度=10℃
・凝縮器過冷却=5.0℃
・蒸発温度=-8℃、対応する庫内温度=1.7℃
・蒸発器過熱=5.5℃
・圧縮機断熱効率=70%
・容積効率=100%
・吸気ライン中の温度上昇=10℃
・蒸気注入熱交換器(HX)効果:15%、35%、55%、75%
【表9】
表4.蒸気注入による2段圧縮を用いた中温冷蔵システムにおける性能
【0174】
表4は、中温冷蔵システムにおける冷媒の性能を示す。組成物A2~A8は、蒸気注入による2段圧縮において効率(COP)という観点からR134aよりも改善された性能を示し、組成物A4、A4’及びA4’’は、全ての関連する性能因子が考慮されるときに優れた性能を示す。
実施例4:CO2カスケード冷蔵システムにおける性能
【0175】
カスケードシステムは、一般に、周囲温度と庫内温度との間に大きな温度差(約60~70℃など、例えば、約50~80℃)が存在する用途において使用される(例えば、高段における凝縮器の空気側と低段における蒸発器の空気側との間の温度差)。例えば、カスケードシステムは、スーパーマーケットにおいて製品を凍らせるために使用されてよい。以下の実施例では、発明の例示的な組成物をカスケード冷蔵システムの高段の冷媒として試験した。システムの低段で使用される冷媒は、二酸化炭素であった。
【0176】
動作条件は以下のとおりであった:
・凝縮温度=45℃
・高段凝縮温度-周囲温度=10℃
・高段凝縮器の過冷却=0.0℃(レシーバを備えるシステム)
・蒸発温度=-30℃、対応する庫内温度=-18℃
・低段蒸発器過熱=3.3℃
・高段及び低段圧縮機断熱効率=65%
・容積効率=100%
・吸気ライン低段での温度上昇=15℃
・吸気ライン高段での温度上昇=10℃
・中間熱交換器CO
2凝縮温度=0℃、5℃及び10℃
・中間熱交換器過熱=3.3℃
・中間熱交換器での温度差=8℃
【表10】
表5.CO2カスケード冷蔵システムにおける性能
【0177】
表5は、カスケード冷蔵システムの高段における冷媒の性能を示す。冷媒A1~A8は、低段サイクルの異なる凝縮温度に対してR134aの効率と一致し、組成物A4、A4’及びA4’’は、全ての関連する性能因子が考慮されるときに優れた性能を示す。
実施例5:吸気ライン/液体ライン熱交換器を有する自動販売機における性能
【0178】
吸気ライン/液体ライン熱交換器(SL/LL HX)が有る場合と無い場合の自動販売機冷蔵システムで、冷媒A1~A8について性能試験を行った。この分析を実施して、以下の条件下におけるSL-LL HXの異なる有効性レベルでの、本システムにおける冷媒A1~A8の効率(COP)を評価した。
【0179】
動作条件:
・凝縮温度=45℃
・凝縮温度-周囲温度=10℃
・凝縮器過冷却=5.5℃
・蒸発温度=-8℃
・蒸発器過熱=3.5℃
・圧縮機断熱効率=60%
・容積効率=100%
・吸気ライン中の温度上昇=5℃
・吸気ライン/液体ライン熱交換器熱交換率:0%、35%、55%、75%
【表11】
表6.SL/LL HXを有する自動販売機における性能
【0180】
表6は、SL/LL HXが有る場合と無い場合の自動販売機システムにおける冷媒の性能を示す。SL-LL HXに対する「0%」効率を有するカラム下の結果は、SL-LL HXを有しないシステムを表し、また、冷媒A1~A8は、SL/LL熱交換器が使用されるとき、効率(COP)という点でR134aよりも改善された性能を示し、組成物A4、A4’及びA4’’は、全ての関連する性能因子が考慮されるときに優れた性能を示すことが理解されよう。
実施例6:空気熱源ヒートポンプ温水ヒータにおける性能
【0181】
空気熱源ヒートポンプ温水ヒータシステムにおいて、冷媒A1~A8について性能試験を行った。この分析を実施して、以下の条件下で本システムにおける冷媒A1~A8の効率(COP)を評価した。
【0182】
動作条件は以下のとおりであった:
・凝縮温度=55℃
・水入口温度=45℃、水出口温度=50℃
・凝縮器過冷却=5.0℃
・蒸発温度=-5℃、対応する周囲温度=10℃
・蒸発器過熱=3.5℃
・圧縮機断熱効率=65%
・容積効率=100%
・吸気ライン中の温度上昇=5℃
・吸気ライン/液体ライン熱交換器熱交換率:0%、35%、55%、75%
【表12】
表7.ヒートポンプ温水ヒータにおける性能
【0183】
表7は、ヒートポンプ温水ヒータにおける冷媒の性能を示す。冷媒A1~A8は、R134aと同様の効率を示し、組成物A4、A4’及びA4’’は、全ての関連する性能因子が考慮される場合に優れた性能を示す。冷媒A1~A8は、圧縮機の信頼性がより良好であることを示す、R134aよりも低い吐出温度を示す。
実施例7:吸気ライン/液体ライン熱交換器を有する空気熱源ヒートポンプ温水ヒータにおける性能
【0184】
吸気ライン/液体ライン熱交換器(SL/LL HX)が有る場合と無い場合の空気熱源ヒートポンプ温水ヒータシステムで、冷媒A1~A8について性能試験を行った。この分析を実施して、以下の条件下におけるSL-LL HXの異なる有効性レベルでの、
本システムにおける冷媒A1~A8の効率(COP)を評価した。
【0185】
動作条件は以下のとおりであった:
・凝縮温度=55℃
・水入口温度=45℃、水出口温度=50℃
・凝縮器過冷却=5.0℃
・蒸発温度=-5℃、対応する周囲温度=10℃
・蒸発器過熱=3.5℃
・圧縮機断熱効率=65%
・容積効率=100%
・吸気ライン中の温度上昇=5℃
・吸気ライン/液体ライン熱交換器熱交換率:0%、35%、55%、75%
【表13】
表8.SL/LL HXを有するヒートポンプ温水ヒータにおける性能
【0186】
表8は、SL/LL HXを有するヒートポンプ温水ヒータにおける冷媒の性能を示す。冷媒A1~A8は、SL/LL熱交換器が使用されるとき、R134aよりも高い効率を示し、組成物A4、A4’及びA4’’は、全ての関連する性能因子が考慮されるときに優れた性能を示す。冷媒A1~A8は、圧縮機の信頼性がより良好であることを示す、R134aよりも低い吐出温度を示す。
実施例8:移動式空調システム(バス、列車、車)における性能
【0187】
様々な凝縮器温度条件下で、移動式空調システムにおいて冷媒A1~A8について性能試験を行った。この分析を実施して、以下の条件下で本システムにおける冷媒A1~A8の効率(COP)を評価した
【0188】
動作条件:
・凝縮温度=45℃~75℃
・凝縮器過冷却=5.0℃
・蒸発温度=4℃、対応する室内温度=35℃
・蒸発器過熱=5.0℃
・圧縮機断熱効率=65%
・容積効率=100%
・吸気ライン中の温度上昇=0℃
【表14】
表9.移動式ACシステムにおける性能
【0189】
表9では、冷媒A1~A8は、異なる周囲温度に対応する凝縮温度の範囲にわたってR134aと同様の効率を示し、組成物A4、A4’及びA4’’は、全ての関連する性能因子が考慮される場合に優れた性能を示す。
実施例9:マイクロカスケード冷蔵システム
【0190】
マイクロカスケードシステムは、流体発明で動作する吸気ライン液体ライン熱交換器(SLHX)を有する又は有しない従来の中温DX冷蔵システムを、上段が流体発明を使用し、いくつかの小さな低温段に接続されている低温カスケード冷蔵と、限定するものではないが、CO2、R1234yf、及びR455Aなどの流体を使用して、自己完結型の形態で組み合わせる。本明細書で使用するとき、用語「中温DX冷蔵システム」は、蒸発器が乾燥蒸発器である中温システムを指す。
【0191】
有用なマイクロカスケードシステムは、係属中の2018年6月21日出願の米国特許出願第16/014,863号及び2018年6月21日出願の同第16/015,145号に開示され、それらは2017年6月21日出願の同第62/522386号、2017年6月21日出願の同第62/522846号、2017年6月21日出願の同第62/522851号、及び2017年6月21日出願の同第62/522860号に対する優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0192】
動作条件:
ベースラインR404Aは、MTシステムとLTシステムとを組み合わせた
●冷蔵容量
○低温:33,000W
○中温:67,000W
●容積効率:MT及びLTのいずれも95%
●圧縮機断熱効率
○中温=70%及び低温=67%
●凝縮温度=105°F
●中温蒸発温度:20°F
●低温蒸発温度:-20°F
●蒸発器過熱:10°F(中温及び低温の両方)
●吸気ライン温度上昇(周囲への熱伝達による)
○ベースライン:中温:25°F、低温:50°F
○カスケード/SLHXなしの自己完結型:中温:10°F、低温:25°F
○カスケード/SLHXありの自己完結型:中温:10°F、低温:15°F
使用時のSLHX効率:65%
【表15】
表10-R404Aとマイクロカスケードシステムとの比較
【0193】
上記の表は、マイクロカスケードシステムが、R404Aを用いたベースライン中温DXシステムよりも約126%高いCOPを有することを示している。
実施例10:気圧を超える圧力を有する不燃性二次冷媒
【0194】
冷媒1~7のそれぞれを含む、本発明の冷媒、又は冷媒1~7のそれぞれを含む、本発明の冷媒を含む熱伝達組成物は、二次流体として機能し得る。冷媒1~7のそれぞれを含む、発明の冷媒は、冷媒の動作圧が所定の蒸発器温度で大気圧を下回らないことを確実にするために必要な特性を有し、そのため、空気はシステムに入らず、同時に有意な漏れを防止するのに十分低い。
・表11は、空調用途の様々な動作条件を網羅する、-5℃~10℃の範囲の温度を蒸発させるための冷媒の圧力を示す。
・全ての冷媒が大気圧より高い圧力を維持することが表から観察され得る。
・蒸気圧縮ループで使用される一次冷媒は、R404A、R507、R410A、R455A、R32、R466A、R44B、R290、R717、R452B、R448A、R1234ze(E)、R1234yf、及びR449Aからなる群から選択されてもよい。
・冷却されるべき空気(又は物体)の温度は、約25℃~約0℃であってよい。
【表16】
表11:二次流体
実施例11:固定式空調システムにおける性能
【0195】
様々な凝縮器温度条件下で、固定式空調システムにおいて冷媒A1~A8について性能試験を行った。この分析を実施して、以下の条件下で本システムにおける冷媒A1~A8の効率(COP)を評価した。
【0196】
動作条件:
・凝縮温度=45℃~65℃
・凝縮器過冷却=5.0℃
・蒸発温度=10℃、対応する室内温度=35℃
・蒸発器過熱=5.0℃
・圧縮機断熱効率=72%
・容積効率=100%
【表17】
表12.固定式ACシステムにおける性能
【0197】
冷媒A1~A8は、異なる周囲温度に対応する凝縮温度の範囲にわたってR134aと同様の効率を示し、組成物A4、A4’及びA4’’は、全ての関連する性能因子が考慮される場合に優れた性能を示す。
実施例12:商用空調システムにおける性能
【0198】
様々な凝縮器温度条件下で、商用空調システムにおいて冷媒A1~A8について性能試験を行った。この分析を実施して、以下の条件下で本システムにおける冷媒A1~A8の効率(COP)を評価した。
【0199】
動作条件:
・凝縮温度=45℃~65℃
・凝縮器過冷却=5.0℃
・蒸発温度=10℃
・蒸発器過熱=5.0℃
・圧縮機断熱効率=72%
・容積効率=100%
【表18】
表13.固定式ACシステムにおける性能
【0200】
冷媒A1~A8は、異なる周囲温度に対応する凝縮温度の範囲にわたってR134aと同様の効率を示し、組成物A4、A4’及びA4’’は、全ての関連する性能因子が考慮される場合に優れた性能を示す。
実施例13:吸気ライン(SL)/液体ライン(LL)熱交換器(HX)が有る場合と無い場合の輸送用(冷蔵トラック、コンテナ)冷蔵用途における性能
【0201】
中温冷蔵条件で、吸気ライン/液体ライン熱交換器(SL/LL HX)が有る場合と無い場合の輸送用冷蔵システムで、冷媒A1~A8について性能試験を行った。この分析を実施して、以下の条件下におけるSL-LL HXの異なる有効性レベルでの、本システムにおける冷媒A1~A8の効率(COP)を評価した。
【0202】
動作条件は以下のとおりであった:
・凝縮温度=45℃
・凝縮温度-周囲温度=10℃
・凝縮器過冷却=0.0℃(受容器を有するシステム)
・蒸発温度=-8℃
・蒸発器過熱=5.5℃
・圧縮機断熱効率=65%
・容積効率=100%
・吸気ラインでの温度上昇=15℃
・吸気ライン/液体ライン熱交換器熱交換率:0%、35%、55%、75%
【表19】
表14.SL/LL HXを有する中温冷蔵システムにおける性能
【0203】
表14は、輸送用冷蔵システムにおける冷媒A1~A8の性能を示す。SL-LL HXに対する「0%」効率を有するカラム下の結果は、SL-LL HXを有しないシステムを表し、また、冷媒A1~A8は、SL/LL熱交換器が使用されるとき、効率(COP)という点でR134aよりも改善された性能を示し、組成物A4、A4’及びA4’’は、全ての関連する性能因子が考慮されるときに優れた性能を示すことが理解されよう。
実施例14:吸気ライン/液体ライン熱交換器が有る場合と無い場合の輸送用(冷蔵トラック、コンテナ)冷蔵用途における性能
【0204】
低温冷蔵条件で、吸気ライン/液体ライン熱交換器(SL/LL HX)が有る場合と無い場合の輸送用冷蔵システムで、冷媒A1~A8について性能試験を行った。この分析を実施して、以下の条件下におけるSL-LL HXの異なる有効性レベルでの、本システムにおける冷媒A1~A8の効率(COP)を評価した。
【0205】
動作条件は以下のとおりであった:
・凝縮温度=45℃
・凝縮温度-周囲温度=10℃
・凝縮器過冷却=0.0℃(受容器を有するシステム)
・蒸発温度=-35℃、対応する庫内温度=-25℃
・蒸発器過熱=5.5℃
・圧縮機断熱効率=65%
・容積効率=100%
・吸気ライン中の温度上昇=15℃
・吸気ライン/液体ライン熱交換器熱交換率:0%、35%、55%、75%
【表20】
表15.SL/LL HXを有する低温冷蔵システム冷蔵システムにおける性能
【0206】
表15は、低温冷蔵システムにおける冷媒の性能を示す。SL-LL HXに対する「0%」効率を有するカラム下の結果は、SL-LL HXを有しないシステムを表し、また、冷媒A1~A8は、SL/LL熱交換器が使用されるとき、効率(COP)という点でR134aよりも改善された性能を示し、組成物A4、A4’及びA4’’は、全ての関連する性能因子が考慮されるときに優れた性能を示すことが理解されよう。
実施例15:電子冷却
【0207】
冷媒A1~A8の性能試験を行って、ヒートパイプ、熱サイフォンなどの形態、並びに蒸気圧縮冷却を含む電子機器の冷却(チップ、電子基板、電池(自動車、トラック、バス、及び他の電子輸送車両に使用される電池を含む)、コンピュータなどの冷却を含む)を評価する。分析は、これらの用途における冷媒A1~A8の性能を評価するために実行される。
【0208】
冷媒A1~A8は、R134aと同様の性能を示し、組成物A4、A4’及びA4’’は、全ての関連する性能因子が考慮される場合に優れた性能を示す
番号付けした実施形態
【0209】
本発明は、以下の番号付けした実施形態によって更に例示される。番号付けした実施形態の主題は、本明細書又は特許請求の範囲の1つ以上の主題と更に組み合わされてもよい。
1.(a)約65重量%~約90重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)約10重量%~約35重量%のHFO-1336mzz(E)と、を含む冷媒。
2.(a)約76重量%~約90重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)約10重量%~約24重量%のHFO-1336mzz(E)と、を含む、番号付けされた実施形態1に記載の冷媒。
3.(a)約74重量%~約80重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)約20重量%~約26重量%のHFO-1336mzz(E)と、を含む、番号付けされた実施形態1又は2に記載の冷媒。
4.(a)約76.6重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)約19重量%のHFO-1336mzz(E)と、を含む、番号付けされた実施形態1~3に記載の冷媒。
5.HFO-1234ze(E)及びHFO-1336mzz(E)から本質的になる、番号付けされた実施形態1~4のいずれかに記載の冷媒。
6.HFO-1234ze(E)及びHFO-1336mzz(E)からなる、番号付けされた実施形態1~5のいずれかに記載の冷媒。
7.(a)約74.6重量%~約78.6重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)約17重量%~約21重量%のHFO-1336mzz(E)と、(c)0重量%超~約4.4重量%のHFC-227eaと、を含む冷媒。
8.(a)74.6重量%~78.6重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)17重量%~21重量%のHFO-1336mzz(E)と、(c)約4.4重量%のHFC-227eaと、を含む、番号付けされた実施形態7に記載の冷媒。
9.(a)約78.6重量%のHFO-1234ze(E)と、(b)約17重量%のHFO-1336mzz(E)と、(c)約4.4重量%のHFC-227eaと、を含む、番号付けされた実施形態8に記載の冷媒。
10.約4.4重量%のHFC-227eaを含む、番号付けされた実施形態1~9
のいずれかに記載の冷媒。
11.HFO-1234ze(E)、HFO-1336mzz(E)及びHFC-227eaから本質的になる、番号付けされた実施形態1~10のいずれかに記載の冷媒。
12.HFO-1234ze(E)、HFO-1336mzz(E)及びHFC-227eaからなる、番号付けされた実施形態1~10のいずれかに記載の冷媒。
13.地球温暖化係数が約150以下である、番号付けされた実施形態1~12のいずれかに記載の冷媒。
14.当該冷媒は不燃性である、番号付けされた実施形態1~13のいずれかに記載の冷媒。
15.当該冷媒は毒性がないか又は低毒性である、番号付けされた実施形態1~14のいずれかに記載の冷媒。
16.当該冷媒が約3℃未満、好ましくは約2℃未満の勾配を有する、番号付けされた実施形態1~15のいずれかに記載の冷媒。
17.番号付けされた実施形態1~16のいずれかによる冷媒を含む、熱伝達組成物。
18.熱伝達組成物の少なくとも約80重量%、好ましくは熱伝達組成物の少なくとも約90重量%、より好ましくは熱伝達組成物の少なくとも約97重量%、より好ましくは熱伝達組成物の少なくとも約99重量%の量で、冷媒を含む、番号付けされた実施形態17の熱伝達組成物。
19.潤滑剤を更に含む、番号付けされた実施形態17又は18に記載の熱伝達組成物。
20.潤滑剤は、熱伝達組成物の約1重量%~約50重量%の量で、より好ましくは熱伝達組成物の約10重量%~約50重量%の量で、最も好ましくは熱伝達組成物の約30重量%~約50重量%の量で、熱伝達組成物中に存在する、番号付けされた実施形態19に記載の熱伝達組成物。
21.潤滑剤が、ポリオールエステル(POE)、ポリアルキレングリコール(PAG)、PAG油、ポリビニルエーテル(PVE)、ポリ(α-オレフィン)(PAO)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、番号付けされた実施形態19又は20に記載の熱伝達組成物。
22.潤滑剤がPOE又はPVEであり、好ましくは潤滑剤がPOEである、番号付けされた実施形態19又は20に記載の熱伝達組成物。
23.番号付けされた実施形態1~16のいずれかに定義される冷媒、又は番号付けされた実施形態17~22のいずれかに定義される熱伝達組成物、を使用して、流体又は物体を加熱又は冷却する方法。
24.流体連通している蒸発器、凝縮器、及び圧縮機を有する蒸気圧縮システムであって、番号付けされた実施形態1~16のいずれかに定義される冷媒、又は番号付けされた実施形態17~23のいずれかに定義される熱伝達組成物、を含む、蒸気圧縮システム。
25.番号付けされた実施形態1~16のいずれかに定義される冷媒、又は番号付けされた実施形態17~23のいずれかに定義される熱伝達組成物、を含む、冷蔵システム。
26.当該システムが中温冷蔵システムである、番号付けされた実施形態25に記載の冷蔵システム。
27.当該中温冷蔵システムが、約-15℃~約5℃、好ましくは約-10℃~約5℃の蒸発器温度を有する、番号付けされた実施形態26に記載の冷蔵システム。
28.当該中温冷蔵システムが、小型冷蔵システム(自動販売機、製氷機、及び家庭用器具を含む)、商用冷蔵システム(スーパーマーケット冷蔵システム及びウォークインクーラーなど)、住宅用冷蔵システム、及び産業用冷蔵システムから選択される、番号付けされた実施形態26又は27に記載の冷蔵システム。
29.当該中温冷蔵システムが、約0℃~約5℃の蒸発器温度を有する、番号付けさ
れた実施形態28に記載の冷蔵システム。
30.当該中温冷蔵システムが、野菜及び/又は果物を含む、腐敗しやすい生産物を冷却するために使用されるか、又は飲料を冷却するために使用される、番号付けされた実施形態26~29に記載の冷蔵システム。
31.当該中温システムが、約15℃~約60℃、好ましくは約25℃~約45℃の凝縮器温度を有する、番号付けされた実施形態26~30に記載の冷蔵システム。
32.当該中温システムが、蒸発器出口において約0℃~約10℃の過熱度を有し、好ましくは蒸発器出口において約1℃~約6℃の過熱度を有する、番号付けされた実施形態26~31に記載の冷蔵システム。
33.当該中温システムシステムが、蒸発器出口において約3℃~約5℃の過熱度を有し、好ましくは蒸発器出口において約4℃の過熱度を有する、番号付けされた実施形態26~32に記載の冷蔵システム。
34.当該システムが低温冷蔵システムである、番号付けされた実施形態25に記載の冷蔵システム。
35.当該低温冷蔵システムが、約-45℃~約-15℃未満、好ましくは約-40℃~約-25℃の蒸発器温度を有する、番号付けされた実施形態34に記載の冷蔵システム。
36.当該低温冷蔵システムが、スケートリンク、商用冷蔵庫システム(スーパーマーケット冷蔵庫を含む)、住宅冷蔵庫システム及び産業用冷蔵庫システムから選択される、番号付けされた実施形態34又は35に記載の冷蔵システム。
37.当該低温冷蔵システムが冷蔵された生産物を冷却するために使用される、番号付けされた実施形態34~36に記載の冷蔵システム。
38.当該低温システムが、約15℃~約50℃、好ましくは約25℃~約45℃の凝縮器温度を有する、番号付けされた実施形態34~37に記載の冷蔵システム。
39.当該低温システムが、蒸発器出口において約0℃~約10℃、好ましくは約1℃~約6℃の過熱度を有する、番号付けされた実施形態34~38に記載の冷蔵システム。
40.当該システムが輸送用冷蔵システムである、番号付けした実施形態25に記載の方法。
41.当該輸送用冷蔵システムが、船舶、ボート、貨車、又は道路車両(例えばトラック)によって輸送可能なコンテナである、番号付けされた実施形態40に記載の冷蔵システム。
42.当該システムがカスケード冷蔵システムである、番号付けされた実施形態25に記載の冷蔵システム。
43.当該カスケード冷蔵システムが上段及び下段を有し、番号付けされた実施形態1~16のいずれかに定義される当該冷媒、又は番号付けされた実施形態17~22のいずれかに定義される熱伝達組成物が、上段で使用される、番号付けされた実施形態42に記載の冷蔵システム。
44.CO2、1234yf又はR455Aが、カスケード冷蔵システムの下段で使用される、番号付けされた実施形態43に記載の冷蔵システム。
45.番号付けされた実施形態1~16のいずれかに定義される冷媒、又は番号付けされた実施形態17~22のいずれかに定義される熱伝達組成物、を含む、二次ループシステム。
46.当該二次ループシステムが、一次冷媒を使用し、蒸発器が二次ループ流体を冷却する一次蒸気圧縮システムループを含み、番号付けされた実施形態1~16のいずれかに定義される当該冷媒、又は番号付けされた実施形態17~22のいずれかに定義される熱伝達組成物が、二次ループ流体として使用される、番号付けされた実施形態45に記載の二次ループシステム。
47.当該一次冷媒が、R404A、R507、R410A、R455A、R32、R466A、R44B、R290、R717、R452B、R448A、R1234ze
(E)、R1234yf及びR449Aからなる群から選択される、番号付けされた実施形態46に記載の二次ループシステム。
48.番号付けされた実施形態1~16のいずれかに定義される冷媒、又は番号付けされた実施形態17~22のいずれかに定義される熱伝達組成物、を含む、ヒートポンプシステム。
49.当該ヒートポンプが、ヒートポンプ回転式乾燥機、可逆ヒートポンプ、高温ヒートポンプ、又は空気対空気ヒートポンプである、番号付けされた実施形態48に記載のヒートポンプシステム。
50.番号付けされた実施形態1~16のいずれかに定義される冷媒、又は番号付けされた実施形態17~22のいずれかに定義される熱伝達組成物、を含む、空調システム。
51.当該システムが、チラー、住宅用、産業用、商用、及び移動式の空調から選択される、番号付けされた実施形態50に記載の空調システム。
52.当該移動式空調システムが、自動車、トラック及びバスなどの道路車両の空調、並びにボート、及び列車の空調を含む、番号付けされた実施形態51に記載の空調システム。
53.当該システムが、吸気ライン、液体ライン熱交換器を含む、番号付けされた実施形態24~52のいずれかに記載のシステム。
54.番号付けされた実施形態1~16のいずれかに定義される冷媒、又は番号付けされた実施形態17~22のいずれかに定義される熱伝達組成物、を含む、有機ランキンサイクルシステム。
55.冷蔵システムを使用して流体又は物体を冷却するための方法であって、当該方法は、(a)冷却されるべき物体の流体の周辺で、番号付けされた実施形態1~16のいずれかに定義される冷媒を蒸発させる工程と、(b)当該冷媒を凝縮する工程と、を含む、方法。
56.当該冷蔵システムが、中温冷蔵システムである、番号付けされた実施形態55に記載の方法。
57.当該中温冷蔵システムが、番号付けされた実施形態26~33のいずれかに定義されるとおりである、番号付けされた実施形態56の方法。
58.当該冷蔵システムが、低温冷蔵システムである、番号付けされた実施形態55に記載の方法。
59.当該中温冷蔵システムが、番号付けされた実施形態34~39のいずれかに定義されるとおりである、番号付けされた実施形態58に記載の方法。
60.当該冷蔵システムが輸送用冷蔵システムである、番号付けした実施形態55に記載の方法。
61.当該輸送用冷蔵システムが番号付けされた実施形態40で定義されるものである、番号付けされた実施形態60に記載の方法。
62.当該冷蔵システムがカスケード冷蔵システムである、番号付けした実施形態55に記載の方法。
63.当該カスケード冷蔵システムが、番号付けされた実施形態42~44のいずれかに定義されるとおりである、番号付けされた実施形態62に記載の方法。
64.二次ループシステムを使用して流体又は物体を冷却するための方法であって、当該方法は、(a)二次ループ流体の周辺で一次冷媒を蒸発させて、当該二次ループ流体から当該一次冷媒に熱を伝達する工程と、(b)当該一次冷媒を凝縮する工程と、(c)二次ループを通って当該二次ループ流体を循環させ、それによって、冷却されるべき流体又は物体から熱を吸収する工程であって、二次ループ流体は、番号付けされた実施形態1~16のいずれかに定義される冷媒、又は番号付けされた実施形態17~22のいずれかに定義される熱伝達組成物である、工程と、含む、方法。
65.当該一次冷媒が、R404A、R507、R410A、R455A、R32、R466A、R44B、R290、R717、R452B、R448A、R1234ze
(E)、R1234yf及びR449Aからなる群から選択される、番号付けされた実施形態64に記載の方法。
66.ヒートポンプを使用して流体又は物体を加熱する方法であって、当該方法は、(a)加熱されるべき物体の流体の周辺で、番号付けされた実施形態1~16のいずれかに定義される冷媒を凝縮する工程と、(b)当該冷媒を蒸発させる工程と、を含む、方法。
67.当該ヒートポンプが、ヒートポンプ回転式乾燥機、可逆ヒートポンプ、高温ヒートポンプ、又は空気対空気ヒートポンプである、番号付けされた実施形態66に記載の方法。
68.空調システムを使用した空調の方法であって、当該方法は、(a)冷却されるべき物体の流体の周辺で、番号付けされた実施形態1~16のいずれかに定義される冷媒を蒸発させる工程と、(b)当該冷媒を凝縮する工程と、を含む、方法。
69.当該システムが、番号付けされた実施形態50~52のいずれかに定義されるとおりである、番号付けされた実施形態68に記載の方法。
70.ランキンサイクルにおいて熱エネルギーを機械エネルギーに変換するためのプロセスであって、当該方法は、i)作動流体を熱源で気化させ、得られた蒸気を膨張させる工程、又は作動流体を熱源で気化させる工程と、次いで、ii)作動流体をヒートシンクで冷却して蒸気を凝縮させ、作動流体は、番号付けされた実施形態1~16のいずれかに定義される冷媒、又は番号付きの実施形態17~22のいずれかに定義される熱伝達組成物である、工程と、を含む、プロセス。
71.当該熱源が、産業廃熱、太陽エネルギー、地熱温水、低圧蒸気、燃料電池を利用する分散発電装置、又は原動機から選択される低グレードの熱エネルギー源によって提供される、番号付けされた実施形態70に記載のプロセス。
72.熱源が、タービン、マイクロタービン、又は内燃機関エンジンによって提供される、番号付けされた実施形態70又は71に記載のプロセス。
73.低圧蒸気が低圧の地熱蒸気であるか、又は化石燃料動力発電プラントによって提供される、番号付けされた実施形態72に記載のプロセス。
74.当該熱源温度が、約80℃~約800℃以上である、番号付けされた実施形態70~73に記載のプロセス。
75.番号付けされた実施形態1~16のいずれかに定義される冷媒、又は番号付けされた実施形態17~23のいずれかに定義される熱伝達組成物、を含む電子機器を冷却するための熱伝達システム。
76.電子チップ、電子基板、電池(自動車、トラック、バス、及び他の電子輸送車両に使用される電池を含む)、コンピュータなどのうちの1つ以上を冷却するために使用される、請求項75に記載の熱伝達システム。
77.ヒートパイプ又は熱サイフォンの形態を含む、請求項75及び請求項76のいずれか一項に記載の熱伝達システム。