(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020432
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】炭素質材料の処理及び精製
(51)【国際特許分類】
C09C 1/48 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
C09C1/48
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023194931
(22)【出願日】2023-11-16
(62)【分割の表示】P 2021576292の分割
【原出願日】2020-07-08
(31)【優先権主張番号】102019210217.4
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】504415913
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツア フォルデルング デア アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】カイザー クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】トーメ フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】ザイフェルト ゼフェリン
(72)【発明者】
【氏名】ディトリヒ ゼバスティアン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い酸濃度又は有機溶媒の使用を必要としない、炭素質材料、特にカーボンブラックの処理及び精製法を提供する。
【解決手段】下記の工程を有する、炭素質固体を処理し及び/又は精製する方法である。a)炭素質固体及び少なくとも1種の無機化合物を有する混合物を供給する工程;b)窒素水素化物を有する水性流体を供給する工程;c)水酸化アルカリ及び/又はアルカリ金属を供給する工程;d)工程a)の混合物、工程b)の流体並びに工程c)のアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属を接触させる工程;e)工程d)で得られた組成物を降下させた若しくは上昇させた温度及び/又は降下させた若しくは上昇させた圧力に付す工程;f)工程e)で得られた組成物から炭素質固体を分離する工程。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程を有する、炭素質固体を処理し及び/又は精製する方法:
a) 炭素質固体及び少なくとも1種の無機化合物を有する混合物を供給する工程;
b) 窒素水素化物を有する水性流体を供給する工程;
c) 水酸化アルカリ及び/又はアルカリ金属を供給する工程;
d) 工程a)の前記混合物、工程b)の前記流体並びに工程c)の前記アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属を接触させる工程;
e) 工程d)で得られた組成物を降下させた若しくは上昇させた温度及び/又は降下させた若しくは上昇させた圧力に付す工程;
f) 工程e)で得られた組成物から炭素質固体を分離する工程。
【請求項2】
工程a)の前記混合物が、前記混合物の総重量に対して、50~99wt.%の、好ましくは70~99wt.%の、より好ましくは80~95wt.%の量の前記炭素質固体を有し;及び/又は、
工程a)の前記混合物が、前記混合物の総重量に対して、1~30wt.%の、好ましくは5~20wt.%の量の前記少なくとも1種の無機化合物を有する;
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)の前記混合物が固体混合物であり;及び/又は、
工程a)の前記混合物が、炭素質材料、好ましくはスクラップタイヤ又はバイオマスの熱分解により得られる;
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記炭素質固体が、80~99.8%の、好ましくは90~99.8%の、より好ましくは95~99.5%の炭素、好ましくはカーボンブラックからなり;及び/又は、
前記少なくとも1種の無機化合物が、少なくとも1種の無機物及び/又は塩、好ましくは、1又は2種以上の金属硫化物、1又は2種以上の金属酸化物、1又は2種以上のケイ酸塩及びこれらの混合物からなる群より選択される、少なくとも1種の無機物及び/又は塩である;
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程b)の前記流体が、アンモニア、無機アンモニウム塩、1級又は2級有機アミン及びそのアンモニウム塩並びにこれらの混合物からなる群より、好ましくは、アンモニア、水酸化アンモニウム、ハロゲン化アンモニウム、グアニジン、グアニジン誘導体及びそのアンモニウム塩並びにこれらの混合物からなる群より選択される窒素水素化物を有し、より好ましくは、上記窒素水素化物が、アンモニア及び/又は水酸化アンモニウムであり、最も好ましくは水酸化アンモニウムであり;及び/又は、
工程b)の前記流体が、さらに、アルコール、酸化剤、酸、硝酸塩及び炭酸塩からなる群より選択される、1又は2種以上の物質を有する;
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程c)において、前記水酸化アルカリ及び/又はアルカリ金属が、工程a)の混合物の前記無機化合物に対して、0.25:1~2:1の、好ましくは0.5:1~1.5:1の、より好ましくは0.75:1~1.25:1の、最も好ましくは0.95:1~1.05:1の範囲のモル比で供給され;及び/又は、
工程b)において、前記流体が、2L(流体)/1kg(工程a)の混合物)~200L(流体)/1kg(工程a)の混合物)、好ましくは5L(流体)/1kg(工程a)の混合物)~150L(流体)/1kg(工程a)の混合物)、より好ましくは10L(流体)/1kg(工程a)の混合物)~100L(流体)/1kg(工程a)の混合物)の範囲の量で供給される;
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程e)において、前記組成物が、-35℃~400℃、好ましくは25℃~300℃、より好ましくは80℃~240℃の温度に付され;及び/又は、
工程e)において、前記組成物が、0.001~200bar、好ましくは1~100bar、より好ましくは5~50barの圧力に付され;及び/又は、
工程e)において、前記組成物のpHが0~14、好ましくは7~14、より好ましくは9~13の値に調整される;
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程e)が、温度、圧力及び/又はpHに関する少なくとも2つの異なる条件の下で、好ましくは、温度及び圧力に関する少なくとも2つの異なる条件の下で、段階的に行われる;請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程f)の前記炭素質固体が、80~99.8%の、好ましくは90~99.8%の、より好ましくは95~99.5%の炭素、好ましくはカーボンブラックからなり;及び/又は、
工程f)の分離された炭素質固体が、上記分離された炭素質固体及び前記無機化合物の総重量に対して、0.001~5.0wt.%の、好ましくは0.001~2.0wt.%の、より好ましくは0.001~1.0wt.%の量の無機化合物とともに存在する;
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程f)で得られた水相を処理し及び/又は後処理する工程g)を有し;
工程g)が下記の工程:
g1) 工程b)の前記窒素水素化物及び/又はその反応生成物を分離する工程;及び/又は、
g2) 工程a)の1又は2種以上の無機化合物及び/又はその反応生成物を分離する工程;及び/又は、
g3) プロセス水を回収する工程;
を有する;請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程a)の前記少なくとも1種の無機化合物が、2又は3種以上の無機化合物を有し、上記2又は3種以上の無機化合物が、少なくとも難水溶性であり、好ましくは極難水溶性であり、最も好ましくは水に不溶である;請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程b)の前記水性流体の窒素水素化物の濃度が、0.001~16.5mol/L、好ましくは0.05~5mol/L、より好ましくは0.09~0.9mol/Lの範囲である;請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程g1)が、1又は2種以上のアンモニウム塩を分離する工程を有し;
工程g2)が、工程g1)で得られた組成物から1又は2種以上のケイ酸ナトリウムを分離する工程を有し;
工程g3)が、工程g2)で得られた組成物から前記プロセス水を回収する工程を有する;
請求項10に記載の方法。
【請求項14】
工程a)の前記炭素質固体が、90~99.8%の、好ましくは95~99.8%の炭素、好ましくはカーボンブラックからなり;
工程a)の前記少なくとも1種の無機化合物が、1又は2種以上の金属硫化物、1又は2種以上の金属酸化物、1又は2種以上のケイ酸塩及びこれらの混合物からなる群より選択される、2又は3種以上の無機化合物を有し;
工程b)の前記水性流体が、アンモニア、水酸化アンモニウム、ハロゲン化アンモニウム、グアニジン、グアニジン誘導体及びそのアンモニウム塩並びにこれらの混合物からなる群より選択される窒素水素化物を有し、好ましくは、アンモニア、水酸化アンモニウム及びこれらの混合物からなり;
工程c)において、水酸化アルカリ、好ましくはNaOH及び/又はKOH、が供給され;
工程d)において、工程a)の前記混合物、工程b)の前記流体及び工程c)の前記水酸化アルカリが混合され;
工程e)において、工程d)で得られた組成物が、高温及び高圧、好ましくは80℃~240℃の範囲の温度及び2~100barの範囲の圧力に付され;
工程f)において、炭素質固体が分離され、上記炭素質固体が、90~99.8%、好ましくは95~99.8%の炭素、好ましくはカーボンブラックからなる;
請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
炭素質固体及び少なくとも1種の無機化合物を有する水性懸濁液を製造し及び/又は安定化させるための分散剤としての窒素水素化物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素質固体を処理し及び/又は精製する方法、並びに、水性懸濁液の製造及び/又は安定化のための分散剤としての窒素水素化物(nitrogen hydride)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
すす(soot)、活性炭、特定の熱分解生成物、黒鉛電極及び膨大な他の黒鉛系物質等の炭素に富む材料(カーボンリッチ材料)は工業的に非常に重要である。
【0003】
カーボンリッチ材料で重要なものは、例えば、カーボンブラックとしても知られる工業的すす(industrial soot)である。従来のすすとは対照的に、カーボンブラックは炭素質材料を特定の生成物を意図して熱分解することにより製造される。これらの特異的な製造プロセスは、その一次粒子径及び表面構造が各用途範囲に適合したナノメーターレベルのカーボンブラック粒子の合成を可能にする。1996年のカーボンブラックの年間の生産量は約800万トンであり、2022までに1500万トン超に増えることが見込まれる。カーボンブラックは、主に、膨大なゴム製品の添加剤(ラバーブラック(Rubber Black))、並びに、プラスチック、塗料、被覆剤及びインクの着色剤(ピグメント ブラック(Pigment Black))として使用される。その大部分はタイヤ産業において使用され、全世界の年間生産量のほぼ85%に相当する。新たに製造されるカーボンブラック(バージンカーボンブラック(virgin carbon black))の生産にはかなりの量の原料とエネルギーが必要であり、相当量の二酸化炭素が生成される。同時に、例えば、欧州連合では年間約320万トンのスクラップタイヤが発生、アメリカ合衆国では年間のスクラップタイヤの発生は440万トンにのぼる。スクラップタイヤ等の古い材料からカーボンブラックをリサイクルする努力は既になされてきた。通常、既知のリサイクルプロセスは、廃棄物の熱分解、それに続く得られた熱分解残渣の処理に基づくものである。しかしながら、このようにして得られたカーボンブラック(回収カーボンブラック(recovered carbon black))は、新たに製造されたカーボンブラックの約80%の炭素含量しか有さず、未だ適切な代替物ではない。特に、回収カーボンブラックは、硫化亜鉛、酸化亜鉛、二酸化ケイ素及び/又は酸化アルミニウムから通常なる灰分を高い割合で含むことが多い。この高灰分含量は可能な用途の範囲を限定し、従ってリサイクルされた生成物の価値を低下させる。タイヤの製造に再使用する場合、回収カーボンブラック中の灰成分は、例えばゴムの強度及び耐久性の低下を招く。プラスチック、塗料、ラッカー(lacquers)又はインクの着色剤として使用する場合、回収カーボンブラックの色彩又は黒色の低い品質は限定要因である。
【0004】
例えば、スクラップタイヤから灰分を除く方法は、米国特許出願US20150307714A1により知られている。中国特許出願CN109266376は、高温及び高圧で過酸化物及び有機溶媒を用いてスクラップタイヤをリサイクルし、分解する方法に関する。中国特許出願CN108384287もまたスクラップタイヤをリサイクルし、分解する方法に関する。米国特許出願US2018320082A1は、マイクロ波照射を用いてスクラップタイヤをリサイクルする方法に関する。国際特許出願WO2013175488A2により、硫黄含量の低いカーボンブラックを提供する方法が知られている。
【0005】
既知の方法の欠点の1つは、例えば、高い酸濃度又は有機溶媒を用いることであり、これは、健康、環境又は取り扱いの観点から問題となる。加えて、先行技術の方法では、抽出時間が長かったり、及び/又は、構造的及び形態学的に変質した低品質のカーボンブラックの回収のみが可能であることが多い。
【0006】
上記の欠点を有さない炭素質材料の新規な処理及び精製法の開発が望まれている。炭素質材料、特にカーボンブラックの効率的な処理及び精製法が必要とされている。また、高い酸濃度又は有機溶媒を必要としない、炭素質材料、特にカーボンブラックの処理及び精製法が必要とされている。また、長い抽出時間を要さず、及び/又は、構造的及び形態学的にほとんど変質していないカーボンリッチ材料、特にカーボンブラックの回収を可能にする、炭素質材料、特にカーボンブラックの処理及び精製法が必要とされている。さらに、高純度及び/又は低灰分含量の生成物を提供する、炭素質材料、特にカーボンブラックの処理及び精製法が必要とされている。特に、スクラップタイヤからカーボンブラックを回収及び精製する方法であって、新たに製造されたカーボンブラックと同様又は理想的には同一の質を有し、特に灰分及び/又は硫黄含量が低く、初めに使用されたカーボンブラックと物理的特性がほとんど変化していない回収カーボンブラックを提供する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、前記の欠点を有さない炭素質材料の処理及び精製法を提供することである。さらなる目的は、炭素質材料、特にカーボンブラックの効率的な処理及び精製法を提供することである。さらなる目的は、高い酸濃度又は有機溶媒の使用を必要としない、炭素質材料、特にカーボンブラックの処理及び精製法を提供することである。別の目的は、長い抽出時間を要さず、及び/又は、構造的及び形態学的にほとんど変質していないカーボンブラックの回収を可能にする、炭素質材料、特にカーボンブラックの処理及び精製法を提供することである。さらなる目的は、高純度及び/又は低灰分含量の生成物を提供する、炭素質材料、特にカーボンブラックの処理及び精製法を提供することである。特に、本発明の目的の1つは、使用済みタイヤからカーボンブラックを回収及び精製する方法であって、新たに製造されたカーボンブラックと同様又は理想的には同一の質を有し、特に灰分及び/又は硫黄含量が低く、並びに、初めに使用されたカーボンブラックと物理的特性がほとんど変化していない回収カーボンブラックを提供する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の炭素質固体の処理及び/又は精製法により前記の目的の1又は2以上が解決される。本発明の炭素質固体の処理及び/又は精製法は下記の工程を有する:
a) 炭素質固体及び少なくとも1種の無機化合物を有する混合物を供給する工程、
b) 窒素水素化物を有する水性流体を供給する工程、
c) 水酸化アルカリ及び/又はアルカリ金属を供給する工程、
d) 工程a)の混合物、工程b)の流体並びに工程c)の水酸化アルカリ及び/又はアルカリ金属を接触させる工程、
e) 工程d)で得られた組成物を降下させた若しくは上昇させた温度及び/又は降下させた若しくは上昇させた圧力に付す工程、
f) 工程e)で得られた組成物から炭素質固体を分離する工程。
【0009】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明の方法を、カーボンリッチ固体混合物(carbon-rich solid mixture)又はその懸濁液から、無機物及び/又は塩等の無機化合物を選択的に除くために使用することができることを見出した。さらに、本発明者らは、本発明の方法を行うことにより、当初の混合物中に存在する炭素の物理的特性が変化しないこと、又は、大きく変化しないことを見出した。従って、本発明の方法は、後の段階におけるさらなる加工又は使用に適した、非常に高い炭素含量及び高い機能性を有する固体の提供を可能にする。
【0010】
工程a)
本発明の方法の工程a)において、炭素質固体及び少なくとも1種の無機化合物を有する混合物が供給される。
【0011】
本発明の目的から、「無機化合物」は炭素-水素結合を有さない化合物であり、好ましくは炭素を有さない。
【0012】
本発明の目的から、炭素質「固体」は、水に難溶であり、好ましくは水に極めて難溶であり、より好ましくは水に不溶である炭素質材料と理解される。本明細書で使用される「難水溶性」は、25℃において1~10g/L(H2O)の溶解性を有する物質を意味する。本明細書で使用される「極難水溶性」は、25℃において0.1~1g/L(H2O)の溶解性を有する物質を意味し、本明細書で使用される「非水溶性」は、25℃において0.1g/L(H2O)未満(例えば0.0001~0.1g/L(H2O)の範囲)の溶解性を有する物質を意味する。
【0013】
前記炭素質固体は、少なくとも80%(例えば80.0~99.8%の範囲)、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%(例えば95.0~99.8%の範囲)の炭素からなることができる。本発明の態様の1つにおいて、炭素含有固体は黒鉛の結晶性変態で存在する。
【0014】
前記炭素質固体は、カーボンブラックを有し、又は、カーボンブラックからなることが特に好ましい。例えば、前記炭素質固体は、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のカーボンブラックからなるものであってよい。カーボンブラックの一次粒子は、1~600nm、好ましくは10~300nmの範囲の粒子径を有することができる。一次粒子の粒径は、例えばレーザー回折により測定することができる。カーボンブラックの一次粒子は結合して、80~800nmの範囲の直径を有するカーボンブラックアグリゲートを形成できる。これらのカーボンブラックアグリゲートは、さらにカーボンブラックアグロメレートの形態の高次構造(superstructures)を形成することができる。さらに、カーボンブラックは、BET法に従って測定される、5~1500m2/g、好ましくは15~600m2/gの比表面積を有することができる。本発明の態様の1つにおいて、工程a)の炭素質固体は、90.0~99.7%のC、0.1~0.6%のH、0.01~0.8%のS及び0.2~3.5%のOの元素組成を有するカーボンブラックからなる。
【0015】
前記少なくとも1種の無機化合物は、好ましくは2又は3種以上の無機化合物である。前記少なくとも1種の無機化合物は、無機物及び/又は塩であってよく、好ましくは無機物及び/又は塩の混合物である。本発明の態様の1つにおいて、前記少なくとも1種の無機化合物は、1又は2種以上の金属硫化物、1又は2種以上の金属酸化物、1又は2種以上のケイ酸塩及びこれらの混合物からなる群より選択される。例えば、前記少なくとも1種の無機化合物は、硫化亜鉛、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、ケイ酸塩、酸化アルミニウム又はこれらの混合物を有し、又は、硫化亜鉛、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、ケイ酸塩、酸化アルミニウム又はこれらの混合物からなるものであってよい。
【0016】
前記少なくとも1種の無機化合物は、水に難溶であり、好ましくは水に極めて難溶であり、最も好ましくは水に不溶であってよい。「水に難溶」、「水に極めて難溶」及び「水に不溶」についての前記の定義が適用される。
【0017】
前記少なくとも1種の無機化合物は、好ましくは、1又は2種以上の金属硫化物、1又は2種以上の金属酸化物、1又は2種以上のケイ酸塩及びこれらの混合物からなる群より選択される無機化合物であり、前記少なくとも1種の無機化合物は、少なくとも難水溶性であり、より好ましくは少なくとも極難水溶性であり、最も好ましくは水に不溶である。
【0018】
前記混合物は固体混合物又は懸濁液の形態であることができる。態様の1つにおいて、前記混合物は、懸濁液、好ましくは水性懸濁液として存在する。別の態様において、前記混合物は固体混合物として存在する。
【0019】
本発明の態様の1つによれば、工程a)の混合物は、前記炭素質固体を、上記混合物の総モル量に対して、50%を超える(例えば50~99%の範囲の)、好ましくは70%を超える、より好ましくは80%を超える(例えば80~95%の範囲の)モル分率で有し、及び/又は、工程a)の混合物は、前記少なくとも1種の無機化合物を、上記混合物の総モル量に対して、1~30%の、好ましくは5~20%のモル分率で有する。
【0020】
本発明の態様の1つにおいて、工程a)の混合物は、前記炭素質固体を、上記混合物の総モル量に対して、50%を超える(例えば50~99%の範囲の)、好ましくは70%を超える、より好ましくは80%を超える(例えば80~95%の範囲の)モル分率で有し、前記少なくとも1種の無機化合物を、上記混合物の総モル量に対して、1~30%の、好ましくは5~20%のモル分率で有する。
【0021】
本発明のさらなる態様において、工程a)の混合物は、上記混合物の総重量に対して、50wt.%を超える(例えば50~99%の範囲の)、好ましくは70wt.%を超える、より好ましくは80wt.%を超える(例えば80~95%の範囲の)前記炭素質固体を有し、及び/又は、工程a)の混合物は、上記混合物の総重量に対して、1~30wt.%の、好ましくは5~20wt.%の前記少なくとも1種の無機化合物を有する。
【0022】
本発明の態様の1つにおいて、工程a)の混合物は、上記混合物の総重量に対して、50wt.%を超える(例えば50~99%の範囲の)、好ましくは70wt.%を超える、より好ましくは80wt.%を超える(例えば80~95%の範囲の)量の前記炭素質固体を有し、上記混合物の総重量に対して、1~30wt.%、好ましくは5~20wt.%の量の前記少なくとも1種の無機化合物を有する。
【0023】
本発明の態様の1つにおいて、工程a)の混合物は、前記炭素質固体及び前記少なくとも1種の無機化合物の総重量に対して、70~99wt.%、より好ましくは80~98wt.%の量の前記炭素質固体を有し、及び/又は、工程a)の混合物は、前記炭素質固体及び前記少なくとも1種の無機化合物の総重量に対して、1~30wt.%、好ましくは2~20wt.%の量の前記少なくとも1種の無機化合物を有する。
【0024】
本発明の態様の1つにおいて、工程a)の混合物は、前記炭素質固体及び前記少なくとも1種の無機化合物の総重量に対して、70~99wt.%、より好ましくは80~98wt.%の量の前記炭素質固体を有し、前記炭素質固体及び前記少なくとも1種の無機化合物の総重量に対して、1~30wt.%、好ましくは2~20wt.%の量の前記少なくとも1種の無機化合物を有する。
【0025】
工程(a)の混合物中の前記炭素質固体、及び/又は、工程(a)の混合物中の前記少なくとも1種の無機化合物の重量百分率は、標準法である「ASTM D150615-;Standard Test Methods for Carbon Black Ash-Content」に従って測定してよい。
【0026】
本発明の態様の1つにおいて、工程a)の混合物は炭素質材料の熱分解により得られる。好ましくは、工程a)の混合物は、スクラップタイヤ又はバイオマス、好ましくはスクラップタイヤの熱分解により得られる。従って、好ましい態様によれば、工程a)の混合物はスクラップタイヤの熱分解により得られる。別の態様によれば、工程a)の混合物はバイオマスの熱分解により得られる。
【0027】
別の好ましい態様によれば、工程a)の混合物は、スクラップタイヤの熱分解から得られ、炭素質固体及び少なくとも1種の無機化合物を有し、前記炭素質固体はカーボンブラックを有し、前記少なくとも1種の無機化合物は、1又は2種以上の金属硫化物、1又は2種以上の金属酸化物、1又は2種以上のケイ酸塩及びこれらの混合物からなる群より選択される無機化合物である。
【0028】
別の好ましい態様によれば、工程a)の混合物は、スクラップタイヤの熱分解から得られ、炭素質固体及び少なくとも1種の無機化合物を有し、前記炭素質固体はカーボンブラックを有し、前記少なくとも1種の無機化合物は、1又は2種以上の金属硫化物、1又は2種以上の金属酸化物、1又は2種以上のケイ酸塩及びこれらの混合物からなる群より選択される無機化合物を有し、前記少なくとも1種の無機化合物は、少なくとも難水溶性、より好ましくは少なくとも極難水溶性、最も好ましくは水に不溶である。
【0029】
別の好ましい態様によれば、工程a)の混合物は、スクラップタイヤの熱分解から得られ、炭素質固体及び少なくとも1種の無機化合物を有し、前記炭素質固体は90%を超える(例えば90~99.8%の範囲の)炭素からなり、前記少なくとも1種の無機化合物は、1又は2種以上の金属硫化物、1又は2種以上の金属酸化物、1又は2種以上のケイ酸塩及びこれらの混合物からなる群より選択される無機化合物であり、上記混合物は、上記混合物の総モル量に対して、前記炭素質固体を70%を超えるモル分率で、前記少なくとも1種の無機化合物を5~20%のモル分率で有する。
【0030】
別の好ましい態様によれば、工程a)の混合物は、スクラップタイヤの熱分解から得られ、炭素質固体及び少なくとも1種の無機化合物を有し、前記炭素質固体は90%を超える(例えば90~99.8%の範囲の)カーボンブラックからなり、前記少なくとも1種の無機化合物は、1又は2種以上の金属硫化物、1又は2種以上の金属酸化物、1又は2種以上のケイ酸塩及びこれらの混合物からなる群より選択される無機化合物であり、上記混合物は、上記混合物の総モル量に対して、前記炭素質固体を70%を超える(例えば70~95%の範囲の)モル分率で、前記少なくとも1種の無機化合物を5~20%のモル分率で有する。
【0031】
別の好ましい態様によれば、工程a)の混合物は、スクラップタイヤの熱分解から得られ、炭素質固体及び少なくとも1種の無機化合物を有し、前記炭素質固体は90%を超える(例えば90~99.8%の範囲の)炭素からなり、前記少なくとも1種の無機化合物は、1又は2種以上の金属硫化物、1又は2種以上の金属酸化物、1又は2種以上のケイ酸塩及びこれらの混合物からなる群より選択される無機化合物であり、上記混合物は、上記混合物の総重量に対して、前記炭素質固体を70wt.%を超える(例えば70~95%の範囲の)量で、前記少なくとも1種の無機化合物を5~20wt.%の量で有する。
【0032】
別の好ましい態様によれば、工程a)の混合物は、スクラップタイヤの熱分解から得られ、炭素質固体及び少なくとも1種の無機化合物を有し、前記炭素質固体は90%を超える(例えば90~99.8%の範囲の)カーボンブラックからなり、前記少なくとも1種の無機化合物は、1又は2種以上の金属硫化物、1又は2種以上の金属酸化物、1又は2種以上のケイ酸塩及びこれらの混合物からなる群より選択される無機化合物であり、上記混合物は、上記混合物の総重量に対して、前記炭素質固体を70wt.%を超える(例えば70~95%の範囲の)量で、前記少なくとも1種の無機化合物を5~20wt.%の量で有する。
【0033】
工程b)
本発明の方法の工程b)において、窒素水素化物を有する水性流体が供給される。本発明において、「窒素水素化物」は、少なくとも1つの窒素-水素結合を有する化学物質である。本発明において、水性「流体」は、水性懸濁液、乳濁液、溶液又は分散液であり、好ましくは水溶液である。本発明において、水性「流体」は、好ましくは、上記流体の総重量に対して、少なくとも50重量%の(例えば50~95wt.%の範囲の)、より好ましくは75重量%の水からなる水系流体である。
【0034】
本発明者らは、驚くべきことに、窒素水素化物を有する水性流体の使用が、炭素質出発物質及びプロセス試薬の懸濁液の安定性に有益であることを見出した。さらに、本発明者らは、驚くべきことに、本明細書に記載した流体の使用が、炭素質出発物質からの無機化合物の抽出を向上させることを見出した。
【0035】
本発明の態様の1つによれば、工程b)の流体は、アンモニア、無機アンモニウム塩、1級又は2級有機アミン及びそのアンモニウム塩並びにこれらの混合物からなる群より選択される窒素水素化物を有する。
【0036】
好ましくは、前記流体は、アンモニア、水酸化アンモニウム、ハロゲン化アンモニウム、グアニジン、グアニジン誘導体及びそのアンモニウム塩並びにこれらの混合物からなる群より選択される窒素水素化物を有する。より好ましくは、前記流体は、窒素水素化物である、アンモニア及び/又は水酸化アンモニウムを、最も好ましくは水酸化アンモニウムを有する。
【0037】
態様の1つにおいて、前記水性流体は、前記窒素水素化物を、0.001~16.5mol/L、好ましくは0.05~5mol/L、より好ましくは0.09~0.9mol/Lの濃度で有する。例えば、前記水性流体は、前記窒素水素化物を0.05~0.25mol/Lの濃度で有してよい。
【0038】
本発明の態様の1つによれば、工程b)において、前記水性流体は、2L(流体)/1kg(工程a)の混合物)~200L(流体)/1kg(工程a)の混合物)、好ましくは5L(流体)/1kg(工程a)の混合物)~150L(流体)/1kg(工程a)の混合物)、より好ましくは10L(流体)/1kg(工程a)の混合物)~100L(流体)/1kg(工程a)の混合物)の範囲の量で供給される。
【0039】
本発明の態様の1つによれば、工程b)において、前記流体は、2L(流体)/1kg(工程a)の混合物)~200L(流体)/1kg(工程a)の混合物)、好ましくは5L(流体)/1kg(工程a)の混合物)~150L(流体)/1kg(工程a)の混合物)、より好ましくは10L(流体)/1kg(工程a)の混合物)~100L(流体)/1kg(工程a)の混合物)範囲の量で供給され、上記水性流体は、前記窒素水素化物を、0.001~16.5mol/L、好ましくは0.05~5mol/L、より好ましくは0.09~0.9mol/Lの濃度で含有する。
【0040】
工程b)の流体は、前記窒素水素化物に加えて、1又は2種以上の物質を含んでよい。これらの物質は、工程a)の混合物中の無機化合物の性質及び/又は無機化合物の量に適合させてよい。
【0041】
本発明の態様によれば、前記流体は、アルコール、酸化剤、酸、硝酸塩及び炭酸塩からなる群より選択される1又は2種以上の物質を有する。
【0042】
例えば、前記流体は1又は2種以上のアルコールを含有してよい。エタノール等の水混和性アルコールが適切なアルコールである。
【0043】
前記流体は1又は2種以上の酸化剤を含有してもよい。適切な酸化剤は、例えば、オゾン、ヨウ素酸塩、過マンガン酸塩、過酸化物又は二クロム酸塩である。
【0044】
前記流体は1又は2種以上の酸を含有してもよい。適切な酸は、例えば、酢酸及び/又はシュウ酸等の有機酸、又は、塩酸、硫酸及び/又はリン酸等の無機酸である。しかしながら、好ましい態様において、前記流体に塩は加えない。
【0045】
工程c)
本発明の方法の工程c)において、水酸化アルカリ及び/又はアルカリ金属が供給される。
【0046】
好ましくは、水酸化アルカリが工程(c)において供給される。前記水酸化アルカリは、固体又は溶液若しくは懸濁液の形態で供給することができる。前記水酸化アルカリは固体として供給されることが好ましい。原則として、前記水酸化アルカリは任意の既知の水酸化アルカリであることができる。しかしながら、前記水酸化アルカリは、LiOH、NaOH、KOH又はそれらの混合物からなる群より、より好ましくはNaOH、KOH又はそれらの混合物からなる群より選択されることが好ましい。最も好ましくは、NaOHを前記水酸化アルカリとして使用する。
【0047】
別の態様において、アルカリ金属、好ましくはナトリウムが工程c)で供給される。
【0048】
本発明の態様の1つによれば、工程c)において、前記水酸化アルカリ及び/又はアルカリ金属は、工程a)の混合物の無機化合物に対して、0.25:1~2:1の、好ましくは0.5:1~1.5:1の、より好ましくは0.75:1~1.25:1の、最も好ましくは0.95:1~1.05:1の範囲のモル比で供給される。
【0049】
本発明の態様の1つによれば、前記水酸化アルカリ、好ましくはNaOHは、工程c)において、工程a)の混合物の無機化合物に対して、0.25:1~2:1、好ましくは0.5:1~1.5:1、より好ましくは0.75:1~1.25:1、最も好ましくは0.95:1~1.05:1の範囲のモル比で供給される。
【0050】
本発明の態様の1つによれば、前記水酸化アルカリ、好ましくはNaOHは、工程c)において、工程a)の混合物中に存在するケイ酸塩に対して、0.25:1~2:1、好ましくは0.5:1~1.5:1、より好ましくは0.75:1~1.25:1、最も好ましくは0.95:1~1.05:1の範囲のモル比で供給される。
【0051】
別の態様によれば、前記水酸化アルカリ、好ましくはNaOHは、工程c)において、工程a)の混合物の無機化合物に対して、化学量論的量(stoichiometric amounts)で供給される。別の態様によれば、前記水酸化アルカリ、好ましくはNaOHは、工程c)において、工程a)の混合物中に存在するケイ酸塩に対して、化学量論的量で供給される。
【0052】
工程d)
本発明の方法の工程d)において、工程a)の混合物、工程b)の水性流体並びに工程c)の水酸化アルカリ及び/又はアルカリ金属を接触させる。
【0053】
工程a)の混合物、工程b)の水性流体並びに工程c)の水酸化アルカリ及び/又はアルカリ金属の可能でありかつ好ましい態様に関しては、上記の項の説明が参照される。
【0054】
供給された物質は、積極的に混合することなく、例えば撹拌ユニットを用いることなく、工程(d)において接触させることができる。しかしながら、供給された物質を工程(d)において撹拌してもよい。好ましい態様において、工程a)の混合物、工程b)の流体並びに工程c)の水酸化アルカリ及び/又はアルカリ金属は本発明の工程d)において混合される。
【0055】
供給された物質の接触は、いかなる順序で行っても、又は、同時に行ってもよい。態様の1つにおいて、工程a)の混合物をまず工程b)の水性流体と接触させ、次いで、工程c)の水酸化アルカリ及び/又はアルカリ金属と接触させる。さらなる態様において、工程b)の水性流体をまず工程c)の水酸化アルカリ及び/又はアルカリ金属と接触させ、次いで工程a)の混合物と接触させる。態様の1つにおいて、工程a)の混合物を、工程b)の水性流体並びに工程c)の水酸化アルカリ及び/又はアルカリ金属と同時に接触させる。
【0056】
まず工程a)の混合物を工程b)の水性流体と接触させ、次いで工程c)の水酸化アルカリ及び/又はアルカリ金属を加えることが有利であるかもしれない。従って、工程d)の好ましい態様によれば、まず工程a)の混合物を工程b)の水性流体と接触させ、次いで工程c)の水酸化アルカリ及び/又はアルカリ金属と接触させる。工程d)のより好ましい態様によれば、まず工程a)の混合物を工程b)の水性流体と混合し、次いで工程c)の水酸化アルカリ及び/又はアルカリ金属と混合する。
【0057】
供給された物質は1又は2以上の反応器内で接触させることができる。例えば、供給された物質は混合ユニット内で混合することができる。上記物質を2つの異なる混合ユニット内で順次混合することも可能である。当業者は対応する反応器及び装置に精通している。本発明の態様の1つによれば、工程a)の混合物をまず工程b)の水性流体と第1の混合ユニット内で混合し、次いで、第2の混合ユニット内で、得られた組成物を工程c)の水酸化アルカリ及び/又はアルカリ金属と混合する。
【0058】
好ましくは、反応器は撹拌装置を備える。さらに、反応器は、1又は2以上のポンプ装置及び/又は固体添加用装置を備えてよい。当業者はそのような反応器及び装置に精通している。
【0059】
供給された物質を反応器内で直接接触させることも可能であり、次いで、当該反応器は工程e)の条件下で使用することもできる。これは例えば圧力反応器(pressure reactor)又は水熱反応器(hydrothermal reactor)であってよい。
【0060】
工程d)で得られた組成物を加熱して、工程d)で得られた組成物の均質性及び/又は前記加えた固体の溶解性を増大させることも有利であるかもしれない。結果的に、態様の1つによれば、工程d)は前記得られた組成物を加熱する工程を有する。例えば、前記得られた組成物は25℃~100℃の範囲の温度に加熱することができる。
【0061】
工程e)
本発明の方法の工程e)において、工程d)で得られた組成物を、降下させた若しくは上昇させた温度及び/又は降下させた若しくは上昇させた圧力に付す。「降下させた」又は「上昇させた」という表現は、20℃の温度及び/又は1.013barの圧力を基準点とするものとする。
【0062】
工程(e)は、浸出(leaching)プロセス、すなわち、より可溶な画分、すなわち無機化合物を、前記炭素質固体が存在する不溶性透過性固体相から完全に又は部分的に除く1種の液-固抽出と記述することができる。このプロセスに使用する出発物質及び試薬に応じて、そのようなプロセスに対して異なる条件を用いてよい。
【0063】
本発明の態様の1つによれば、前記組成物は、工程e)において、-35℃~400℃、好ましくは25℃~300℃、より好ましくは80℃~240℃の温度に付され、及び/又は、前記組成物は、工程e)において、0.001~200bar、好ましくは1~100bar、より好ましくは5~50barの圧力に付され、及び/又は、前記組成物のpHは、工程e)において、0~14、好ましくは7~14、より好ましくは9~13の値に調整される。
【0064】
本発明の別の態様によれば、工程e)において、前記組成物は、-35℃~400℃、好ましくは25℃~300℃、より好ましくは80℃~240℃の温度、及び、0.001~200bar、好ましくは1~100bar、より好ましくは5~50barの圧力に付され、前記組成物のpHは、0~14、好ましくは7~14、より好ましくは9~13の値に調整される。
【0065】
好ましい態様によれば、工程d)で得られた組成物は高温及び/又は高圧に付される。本発明の好ましい態様によれば、前記組成物は、工程e)において、50℃~400℃の温度及び2~200barの圧力に付される。本発明の好ましい態様によれば、前記組成物は、工程e)において、80℃~400℃の温度及び5~200barの圧力に付される。
【0066】
本発明の好ましい態様によれば、前記組成物は、工程e)において、80℃~240℃の温度及び5~50barの圧力に付され、前記組成物のpHは9~13の値に調整される。
【0067】
工程e)に従う、前記組成物の完全な処理のための時間は、当業者により決定されることができる。電導率測定、pH測定、質量分析、粉体回折等の通常の定量的及び定性的分析法をこの目的のために使用することができる。
【0068】
態様の1つにおいて、工程e)は、1min~24hの範囲の、好ましくは5min及び10hの範囲の、より好ましくは15min及び2hの範囲の時間にわたって行われる。
【0069】
本発明の工程の工程e)は段階的に行うこともよい。これは、工程d)で得られた組成物を、まず温度及び/又は圧力の第1の条件に付し、次いで、異なる温度及び/又は圧力の第2の条件に付すことができることを意味する。このような段階的プロセスは2段階に限定されるものではなく、3段階又はより多くの段階を有してもよいものとする。本発明者らは、驚くべきことに、2段階又はより多くの段階のプロセスが、処理の対象である前記組成物からの特定の無機化合物の抽出を向上させることができことを見出した。例えば、非晶質シリカは前記組成物から1つの段階で抽出することができ、結晶性シリカは上記プロセスの別の段階で抽出することができる。
【0070】
本発明の態様の1つにおいて、工程e)は、温度、圧力及び/又はpHに関する少なくとも2つの異なる条件の下で、好ましくは、温度及び圧力に関する少なくとも2つの異なる条件の下で、段階的に行われる。
【0071】
本発明の態様の1つにおいて、工程e)は2段階又はより多くの段階で行われ、各段階は異なる温度及び/又は圧力を有する。例えば、工程e)は2段階プロセスであってよく、第1の段階で、工程d)で得られた組成物は、100~200℃の範囲の、好ましくは160~180℃の範囲の温度、及び、0.01~50barの範囲の(例えば2~50barの範囲の)、好ましくは0.1~15barの(例えば2~15barの範囲の)圧力に付され、次に、150~300℃の範囲の、好ましくは180~200℃の範囲の温度、及び、0.01~50barの範囲の(例えば2~50barの範囲の)、好ましくは10~20barの範囲の圧力における第2段階が続く。
【0072】
追加の工程b)の水性流体並びに/又は追加の工程c)の水酸化アルカリ及び/若しくはアルカリ金属を、工程e)において、前記組成物に加えることもできる。態様の1つによれば、工程e)には、追加の工程b)の水性流体並びに/又は追加の工程c)の水酸化アルカリ及び/若しくはアルカリ金属を加えることが含まれる。
【0073】
水相を除いた後に、追加の工程b)の水性流体並びに/又は追加の工程c)の水酸化アルカリ及び/若しくはアルカリ金属を加えることもできる。態様の1つによれば、工程e)には、水相を除き、次いで、追加の工程b)の水性流体並びに/又は追加の工程c)の水酸化アルカリ及び/若しくはアルカリ金属を加えることが含まれる。
【0074】
工程e)は、-35℃~400℃の温度及び0.001~200barの圧力用に設計された反応器内で行うことができる。そのような反応器は当業者に既知である。例えば、工程e)は、圧力反応器又は水熱反応器内で行うことができる。さらに、工程e)は、バッチ反応器、セミバッチ反応器又はフロスルー反応器(flow-through reactor)、好ましくはバッチ反応器又はセミバッチ反応器内で行うことができる。
【0075】
工程f)
本発明の方法の工程f)において、炭素質固体は工程e)で得られた組成物から分離される。
【0076】
前記炭素質固体はろ過により分離することができる。好ましい態様によれば、工程f)には、前記炭素質固体のろ過が含まれる。その場合、炭素質固体は残渣として得られ、水性のろ液が得られる。
【0077】
ろ過の適切な手段は当業者により選択される。例えば、炭素質固体は、ろ過膜による機械的ろ過により分離することができる。適切なろ過膜は、例えば精密ろ過膜(microfiltration membranes)である。態様の1つにおいて、1μmを超える、好ましくは1~100μm、より好ましくは1~50μm、最も好ましくは1~20μmの平均孔径を有するろ過膜が使用される。
【0078】
本発明の本発明者らは、驚くべきことに、工程f)の炭素質固体が、工程a)の混合物中に存在する炭素質固体と同じ物理的特性又はわずかにのみ異なる物理的特性を有することを見出した。結果として、工程(a)の混合物中に存在する炭素質固体を、工程(f)において、変化していない又はわずかにのみ変質した形態で得ることができる。
【0079】
態様の1つによれば、工程(f)の炭素質固体は、工程(a)の混合物中に存在する炭素質固体と同じ物理的性質又はわずかにのみ異なる物理的性質を有する。態様の1つによれば、工程f)の炭素質固体は、工程a)の混合物中に存在する炭素質固体と同じ又はわずかにのみ異なる形態を有する。本発明において、前記炭素質固体の「形態(morphology)」は、前記材料の構造及び/又は形を意味する。前記材料の構造及び/又は形は、例えば、走査型電子顕微鏡(形態)、レーザー回折(粒子径)又はRaman分光法(構造)により測定することができる。
【0080】
本発明の態様の1つによれば、工程f)の炭素質固体は、少なくとも80%の(例えば80~99.8%の範囲の)、好ましくは少なくとも90%の、より好ましくは少なくとも95%の(例えば95~99.8%の範囲の)炭素、好ましくはカーボンブラックからなり、及び/又は、工程f)の分離された炭素質固体は、上記分離された炭素質固体及び無機化合物の総重量に対して、5.0wt.%未満の(例えば0.01以上5.0wt.%未満の範囲の)、好ましくは2.0wt.%未満の、より好ましくは1.0wt.%未満の量の無機化合物とともに存在する。
【0081】
本発明の態様の1つによれば、工程f)の炭素質固体は、少なくとも80%の(例えば80~99.8%の範囲の)、好ましくは少なくとも90%の、より好ましくは少なくとも95%の(例えば95~99.8%の範囲の)炭素からなる。
【0082】
本発明の態様の1つによれば、工程f)の炭素質固体は、少なくとも80%の(例えば80~99.8%の範囲の)、好ましくは少なくとも90%の、より好ましくは少なくとも95%の(例えば95~99.8%の範囲の)炭素、好ましくはカーボンブラックからなり、前記分離された炭素質固体及び無機化合物の総重量に対して、5.0wt.%未満の(例えば0.01以上5.0wt.%未満の範囲の)、好ましくは2.0wt.%未満の、より好ましくは1.0wt.%未満の無機化合物とともに存在する。
【0083】
本発明の態様の1つによれば、工程f)の炭素質固体は、少なくとも80%の(例えば80~99.8%の範囲の)、好ましくは少なくとも90%の、より好ましくは少なくとも95%の(例えば95~99.8%の範囲の)カーボンブラックからなる。
【0084】
本発明の態様の1つによれば、工程f)の炭素質固体は、少なくとも80%の、好ましくは少なくとも90%の(例えば80~99.8%の範囲の)、より好ましくは少なくとも95%の(例えば95~99.8%の範囲の)炭素、好ましくはカーボンブラックからなり、前記分離された炭素質固体及び無機化合物の総重量に対して、5.0wt.%未満の(例えば0.01以上5.0wt.%未満の範囲の)、好ましくは2.0wt.%未満の、より好ましくは1.0wt.%未満の無機化合物とともに存在する。
【0085】
本発明の態様の1つによれば、工程f)の炭素質固体は、少なくとも80%の(例えば80~99.8%の範囲の)、好ましくは少なくとも90%の、より好ましくは少なくとも95%の(例えば95~99.8%の範囲の)炭素、好ましくはカーボンブラックからなり、前記分離された炭素質固体及び無機化合物の総重量に対して、5.0重量%未満の(例えば0.01以上5.0wt.%の範囲の)、好ましくは2.0重量%未満の、より好ましくは1.0重量%未満の無機化合物とともに存在し、上記無機化合物は、1又は2種以上の金属硫化物、1又は2種以上の金属酸化物、1又は2種以上のケイ酸塩及びこれらの混合物からなる群より選択される。
【0086】
工程f)において分離された炭素質固体は、カーボンブラックを有し、又は、カーボンブラックからなることが特に好ましい。例えば、前記炭素質固体は、少なくとも90%の、好ましくは少なくとも95%の(例えば95~99.8%の範囲の)カーボンブラックからなるものであってよい。カーボンブラックの物理的及び化学的特性は当業者に既知である。例えば、カーボンブラックの一次粒子は、1~600nm、好ましくは10~300nmの範囲の粒子径を持つことができる。一次粒子の粒径はレーザー回折により測定することができる。カーボンブラックの一次粒子は結合して、80~800nmの範囲の直径を持つことができるカーボンブラックアグリゲートを形成することができる。これらのカーボンブラックアグリゲートは、さらにカーボンブラックアグロメレートの形態の高次構造を形成することができる。さらに、上記カーボンブラックは、BET法に従って測定される、5~1500m2/g、好ましくは15~600m2/gの比表面積を有することができる。本発明の態様の1つにおいて、工程f)の炭素質固体は、90.0~99.7%のC、0.1~0.6%のH、0.01~0.8%のS及び0.2~3.5%のOの元素組成を有するカーボンブラックからなる。
【0087】
任意のプロセス工程
工程a)~工程f)に加えて、本発明の方法はさらなるプロセス工程を有してよい。
【0088】
本発明の工程f)において、前記炭素質固体の分離後に水相が形成される。本方法は上記水相の後処理を行う追加の工程を有してよい。それにより、さらなる価値のある原料を得ることができ及び/又は回収することができる。通常、工程f)で得られるこの水相は、少なくとも前記窒素水素化物及び/又はその反応生成物、水酸化物並びに無機化合物及び/又はその反応生成物を含有する。前記水性流体にいかなる組成物を選択するかによって、工程f)で得られる水相は他の物質をも含有するかもしれない。環境及び/又は経済的理由から、窒素水素化物及び/又はその反応生成物、水酸化物並びに無機化合物及び/又はその反応生成物を得られた水相から分離することが適切であろう。
【0089】
態様の1つによれば、本方法はさらに、工程f)で得られた水相を処理し及び/又はリサイクルする工程g)を有する。
【0090】
態様の1つによれば、工程g)は下記の工程を有する:
g1) 工程b)の窒素水素化物及び/又はその反応生成物を分離する工程、及び/又は、
g2) 工程a)の1又は2種以上の無機化合物及び/又はその反応生成物を分離する工程、及び/又は、
g3) プロセス水を回収する工程。
【0091】
態様の1つによれば、工程g)は下記の工程を有する:
g1) 工程b)の窒素水素化物及び/又はその反応生成物を分離する工程、及び、
g2) 工程a)の1又は2種以上の無機化合物及び/又はその反応生成物を分離する工程、及び、
g3) プロセス水を回収する工程。
【0092】
態様の1つによれば、工程g)は下記の工程を有する:
g1) 工程b)の窒素水素化物及び/又はその反応生成物を分離する工程、及び、
g2) 工程g1)で得られた組成物から、工程a)の1又は2種以上の無機化合物及び/又はその反応生成物を分離する工程、及び、
g3) 工程g2)で得られた組成物からプロセス水を回収する工程。
【0093】
別の態様によれば、工程g)は下記の工程を有する:
g1) 前記窒素水素化物及び/又は反応生成物、すなわち1又は2種以上のアンモニウム塩を分離する工程、及び、
g2) 工程g1)で得られた組成物から、工程a)の1又は2種以上の無機化合物及び/又はその反応生成物、すなわち1又は2種以上のケイ酸ナトリウムを分離する工程、及び、
g3) 工程g2)で得られた組成物からプロセス水を回収する工程。
【0094】
工程g1)、g2)及び/又はg3)は当業者に既知の技術及び装置を用いて行うことができる。
【0095】
使用
本発明の別の側面は、炭素質固体及び少なくとも1種の無機化合物を有する水性懸濁液を製造し及び/又は安定化させるための分散剤としての窒素水素化物の使用に関する。
【0096】
「水性懸濁液の生成及び/又は安定化」という用語は、本発明において、沈殿、より高次の凝集体の形成及び/又は沈降を起こすことなく、固相を分散媒中に混合させることができる固液相の混合物が生成され得ることを意味する。
【0097】
本発明者らは、驚くべきことに、炭素質固体及び少なくとも1種の無機化合物を有する混合物を含有する水性分散液又は懸濁液を安定化させるために、窒素水素化物を使用することができることを見出した。
【0098】
水性流体並びに炭素質固体及び少なくとも1種の無機化合物を有する混合物の好ましい態様は、本発明の方法の工程a)及び工程b)についての先の記述において記載されている。
【0099】
態様の1つにおいて、前記窒素水素化物は、炭素質固体及び少なくとも1種の無機化合物を有する水性懸濁液を形成し及び/又は安定化させるための分散剤として使用され、前記炭素質固体は少なくとも90%の(例えば90~99.5%の範囲の)カーボンブラックであり、前記少なくとも1種の無機化合物は、1又は2種以上の金属硫化物、1又は2種以上の金属酸化物、1又は2種以上のケイ酸塩及びこれらの混合物からなる群より選択される複数の無機化合物を意味する。
【0100】
態様の1つにおいて、前記窒素水素化物は、炭素質固体及び少なくとも1種の無機化合物を有する水性懸濁液を製造し及び/又は安定化させるための分散剤として使用され、前記炭素質固体は少なくとも90%の(例えば90~99.5%の範囲の)カーボンブラックであり、前記少なくとも1種の無機化合物は、1又は2種以上の金属硫化物、1又は2種以上の金属酸化物、1又は2種以上のケイ酸塩及びこれらの混合物からなる群より選択される複数の無機化合物を意味し、前記窒素水素化物は、アンモニア、無機アンモニウム塩、1級又は2級有機アミン及びそのアンモニウム塩並びにこれらの混合物からなる群より、好ましくはアンモニア、水酸化アンモニウム、ハロゲン化アンモニウム、グアニジン、グアニジン誘導体及びそのアンモニウム塩並びにこれらの混合物からなる群より選択され、より好ましくは1種の窒素水素化物、アンモニア及び/又は水酸化アンモニウムであり、最も好ましくは水酸化アンモニウムである。
【0101】
さらなる態様
好ましい態様において、本発明の炭素質固体の処理及び/又は精製法は下記の工程を有する:
a) 炭素質固体、好ましくはカーボンブラック、及び少なくとも1種の無機化合物を有する混合物を供給する工程であって、前記混合物が、前記炭素質固体及び前記少なくとも1種の無機化合物の総重量に対して、70~99wt.%、より好ましくは80~98wt.%の量の前記炭素質固体を有し、前記炭素質固体及び前記少なくとも1種の無機化合物の総重量に対して、1~30wt.%、好ましくは2~20wt.%の量の前記少なくとも1種の無機化合物を有する、工程;
b) 窒素水素化物を有する水性流体を供給する工程;
c) 水酸化アルカリ、好ましくはNaOHを供給する工程;
d) 工程a)の混合物、工程b)の流体並びに工程c)のアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属を接触させる工程;
e) 工程d)で得られた組成物を、80~240℃の範囲の高温及び5~50barの範囲の高圧に付す工程;
f) 工程e)で得られた組成物から炭素質固体を分離する工程であって、工程f)の炭素質固体が、少なくとも80%の、好ましくは少なくとも90%の、より好ましくは少なくとも95%の(例えば95~99.5%の範囲の)炭素、好ましくはカーボンブラックからなり、前記分離された炭素質固体及び無機化合物の総重量に対して、5.0wt.%未満の(例えば0.01~5wt.%の範囲の)、好ましくは2.0wt.%未満の、より好ましくは1.0wt.%未満の無機化合物とともに存在する、工程。
【0102】
本発明のさらなる側面及び態様は下記の通りである:
【0103】
[1] 下記の工程を有する、炭素質固体を処理し及び/又は精製する方法:
a) 炭素質固体及び少なくとも1種の無機化合物を有する混合物を供給する工程、
b) 窒素水素化物を有する水性流体を供給する工程、
c) 水酸化アルカリ及び/又はアルカリ金属を供給する工程、
d) 工程a)の混合物、工程b)の流体並びに工程c)のアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属を接触させる工程、
e) 工程d)で得られた組成物を降下させた若しくは上昇させた温度及び/又は降下させた若しくは上昇させた圧力に付す工程、
f) 工程e)で得られた組成物から炭素質固体を分離する工程。
【0104】
[2] 工程a)の混合物が、前記混合物の総重量に対して、50wt.%を超える、好ましくは70wt.%を超える、より好ましくは80wt.%を超える量の前記炭素質固体を有し;及び/又は、
工程a)の混合物が、上記混合物の総重量に対して、1~30wt.%、好ましくは5~20wt.%の量の前記少なくとも1種の無機化合物を有する;
段落[1]に従う方法。
【0105】
[3] 工程a)の混合物が固体混合物であり;及び/又は、
工程a)の混合物が、炭素質材料、好ましくはスクラップタイヤ又はバイオマスの熱分解により得られる;段落[1]又は[2]に従う方法。
【0106】
[4] 前記炭素質固体が、少なくとも80%の、好ましくは少なくとも90%の、より好ましくは少なくとも95%の炭素、好ましくはカーボンブラックからなり;及び/又は、
前記少なくとも1種の無機化合物が、少なくとも1種の無機物及び/又は塩、好ましくは、1又は2種以上の金属硫化物、1又は2種以上の金属酸化物、1又は2種以上のケイ酸塩及びこれらの混合物からなる群より選択される、少なくとも1種の無機物及び/又は塩である;前記段落[1]~[3]のいずれかに従う方法。
【0107】
[5] 工程b)の流体が、アンモニア、無機アンモニウム塩、1級又は2級有機アミン及びそのアンモニウム塩並びにこれらの混合物からなる群より、好ましくは、アンモニア、水酸化アンモニウム、ハロゲン化アンモニウム、グアニジン、グアニジン誘導体及びそのアンモニウム塩並びにこれらの混合物からなる群より選択される窒素水素化物を有し、より好ましくは上記窒素水素化物が、アンモニア及び/又は水酸化アンモニウムであり、最も好ましくは水酸化アンモニウムであり;及び/又は、
工程b)の流体が、さらに、アルコール、酸化剤、酸、硝酸塩及び炭酸塩からなる群より選択される、1又は2種以上の物質を有する;
前記段落[1]~[4]のいずれかに従う方法。
【0108】
[6] 工程c)において、前記水酸化アルカリ及び/又はアルカリ金属が、工程a)の混合物の無機化合物に対して、0.25:1~2:1の、好ましくは0.5:1~1.5:1の、より好ましくは0.75:1~1.25:1の、最も好ましくは0.95:1~1.05:1の範囲のモル比で供給され;及び/又は、
工程b)において、前記流体が、2L(流体)/1kg(工程a)の混合物)~200L(流体)/1kg(工程a)の混合物)、好ましくは5L(流体)/1kg(工程a)の混合物)~150L(流体)/1kg(工程a)の混合物)、より好ましくは10L(流体)/1kg(工程a)の混合物)~100L(流体)/1kg(工程a)の混合物)の範囲の量で供給される;
前記段落[1]~[5]の1つに従う方法。
【0109】
[7] 工程e)において、前記組成物が、-35℃~400℃、好ましくは25℃~300℃、より好ましくは80℃~240℃の温度に付され;及び/又は、
工程e)において、前記組成物が、0.001~200bar、好ましくは1~100bar、より好ましくは5~50barの圧力に付され;及び/又は、
工程e)において、前記組成物のpHが0~14、好ましくは7~14、より好ましくは9~13の値に調整される;
前記段落[1]~[6]の1つに従う方法。
【0110】
[8] 工程e)が、温度、圧力及び/又はpHに関する少なくとも2つの異なる条件の下で、好ましくは、温度及び圧力に関する少なくとも2つの異なる条件の下で、段階的に行われ;及び/又は、
工程f)が前記炭素質固体のろ過を含む;
前記段落[1]~[7]の1つに従う方法。
【0111】
[9] 工程f)の炭素質固体が、少なくとも80%の、好ましくは少なくとも90%の、より好ましくは少なくとも95%の炭素、好ましくはカーボンブラックからなり;及び/又は、
工程f)の分離された炭素質固体が、上記分離された炭素質固体及び前記無機化合物の総重量に対して、5.0wt.%未満の、好ましくは2.0wt.%未満の、より好ましくは1.0wt.%未満の無機化合物とともに存在する;
前記段落[1]~[8]の1つに従う方法。
【0112】
[10] 炭素質固体及び少なくとも1種の無機化合物を有する水性懸濁液を製造し及び/又は安定化させるための分散剤としての窒素水素化物の使用。
【実施例0113】
本発明を以下の実施例によりさらに記述する:
【表1】
【0114】
工程a)の混合物は、スクラップタイヤの熱分解により得られた混合物であった。
工程b)の前記流体が、アンモニア、無機アンモニウム塩、1級又は2級有機アミン及びそのアンモニウム塩並びにこれらの混合物からなる群より、好ましくは、アンモニア、水酸化アンモニウム、ハロゲン化アンモニウム、グアニジン、グアニジン誘導体及びそのアンモニウム塩並びにこれらの混合物からなる群より選択される窒素水素化物を有し、より好ましくは、上記窒素水素化物が、アンモニア及び/又は水酸化アンモニウムであり、最も好ましくは水酸化アンモニウムである;請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。