(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020436
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】HER2標的化剤
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240206BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20240206BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240206BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/30 ZNA
A61P35/00
A61K39/395 N
A61K39/395 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023195187
(22)【出願日】2023-11-16
(62)【分割の表示】P 2022565479の分割
【原出願日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2020198044
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021110912
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000185983
【氏名又は名称】小野薬品工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】加藤 幸成
(72)【発明者】
【氏名】金子 美華
(72)【発明者】
【氏名】中山 大介
(72)【発明者】
【氏名】黒木 雅礼
(57)【要約】
【課題】がん細胞に発現するHER2またはその断片に結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【解決手段】非がん細胞上に発現するHER2に対するよりも、がん細胞上に発現するHER2に対して強い結合反応性を有する、単離された抗体または抗体の抗原結合性断片。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:24のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:25のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:26のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:27のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:28のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:29のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する、HER2に特異的に結合する単離された抗体、または、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv(単鎖Fv)、ダイアボディー、scDb、タンデムscFv、ロイシンジッパー型、およびsc(Fv)2(単鎖(Fv)2)からなる群から選択される、その抗原結合性断片。
【請求項2】
scFvである、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項3】
請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合性断片を含むHER2標的化剤を有効成分として含む、医薬組成物。
【請求項4】
がんを処置することに用いるための、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合性断片を有効成分として含む、がんの処置剤。
【請求項6】
請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HER2標的化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
HER2は、受容体型チロシンキナーゼであり、上皮成長因子受容体(EGFR)と類似した構造を有し、EGFR2、ERBB2、CD340、またはNEUとも呼ばれる。HER2タンパク質は、正常細胞においても発現し、細胞の増殖および分化の調節に関与しているが、HER2遺伝子の増幅および/または変異により細胞の増殖の制御が不能になることにより細胞を悪性化させ、唾液腺がん、胃がん、乳がん、卵巣がんなどの多くのがんでHER2が発現していることが知られている。トラスツズマブは、がん細胞の表面に発現するHER2に特異的に結合する抗体医薬である。トラスツズマブは、がん細胞上のHER2に結合することによってがん細胞の増殖を刺激する信号を抑制したり、免疫の働きを誘導してがん細胞を破壊することができる。
【0003】
がん細胞特異的にこのような細胞増殖抑制作用や細胞傷害作用をもたらすためには、がん細胞のみに特異的に結合する抗体が求められる。がん細胞に特異的な抗体を作製する技術としてCasMab法が開発されている(非特許文献1~3)。CasMab法では、特異的な糖鎖プロファイルを有する神経膠芽腫細胞株のLN229細胞に発現させた抗原タンパク質を免疫原として抗体を作製する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Kato and Kaneko, 2014, Sci. Rep., 4: 5924
【非特許文献2】Yamada et al., 2017, Monoclon. Antib. Immunodiagn. Immunother., 36(2): 72
【非特許文献3】Kaneko et al., 2020, Biochem. Biophys. Rep., 24: 100826
【発明の概要】
【0005】
本発明は、HER2に結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。本発明は、好ましくは、HER2に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。本発明は、がん細胞上に発現するHER2に対して結合親和性を有する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。本発明は、より好ましくは、非がん細胞上に発現するHER2に対するよりも、がん細胞上に発現するHER2に対して強い結合親和性を有し得る抗体またはその抗原結合性断片を提供する。本発明は、さらに好ましくは、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的に反応し得る抗体またはその抗原結合性断片を提供する。また、本発明は、前記HER2に結合する抗体またはその抗原結合性断片を用い、患者においてがんを処置する方法を提供する。さらに、本発明は、患者が前記HER2に結合する抗体またはその抗原結合性断片を当該患者から得られたがん試料と接触させることを含む方法であって、HER2陽性のがん細胞を検出する方法を提供する。さらにまた、本発明は、患者が前記HER2に結合する抗体またはその抗原結合性断片を用いたHER2標的療法に応答性であるか否かを決定する方法を提供する。
【0006】
本発明者らは、がん細胞に発現するHER2を特異的に認識する抗体を作出した。本発明者らはまた、正常細胞に発現するHER2と、がん細胞に発現するHER2とが抗体により区別できることを見出し、それらを区別できる抗体を作出した。本発明はこのような知見に基づく発明である。
【0007】
本発明によれば以下の態様が提供される。
[0] がん細胞上に発現するHER2に対して結合反応性を有する、単離された抗体またはその抗原結合性断片。
[1] 非がん細胞上に発現するHER2に対するよりも、がん細胞上に発現するHER2に対して強い結合反応性を有する、単離された抗体またはその抗原結合性断片。
[2] (i)配列番号:31~37のアミノ酸配列(例えば、配列番号:31~36のアミノ酸配列)からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドに結合する、上記[0]または[1]に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
[3] (ii)配列番号:2に記載のHER2の細胞外ドメインの一部(アミノ酸番号603~622の領域)からなるペプチドにおいてW614A、K615A、およびF616Aからなる群から選択される1以上のアミノ酸変異を有するHER2の細胞外ドメインの変異体に対するよりも、配列番号:3に記載のHER2の細胞外ドメインからなるペプチドに対して強い結合親和性(または反応性)を有する、例えば、配列番号:2に記載のHER2の細胞外ドメインの一部(アミノ酸番号603~622の領域)からなるペプチドにおいてW614Aからなる点変異を有するペプチド、またはK615AもしくはF616Aからなる点変異を有するペプチドに対するよりも、配列番号:3に記載のHER2の細胞外ドメインからなるペプチドに対して強い反応性を有する、上記[0]、[1]または[2]に記載の抗体またはその抗原結合性断片{上記において、HER2の細胞外ドメインの一部は配列番号:2に記載のアミノ酸配列のアミノ酸番号613~622の領域であってもよい}。
[4] (iii)配列番号:18のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:19のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:20のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:21のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:22のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:23のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
(iv)配列番号:24のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:25のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:26のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:27のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:28のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:29のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;または
上記(iii)または(iv)の一つ以上のCDRにおいて少なくとも1個の置換、付加もしくは欠失を有する、上記[0]、および[1]~[3]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
[5] (vii)配列番号:14のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および、
配列番号:15のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する;
(viii)配列番号:16のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および、
配列番号:17のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する;もしくは
上記(vii)または(viii)の各可変領域において少なくとも1個の置換、付加もしくは欠失を有する、上記[0]、および[1]~[4]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
[6] 神経膠芽腫細胞株のLN229細胞により産生されるペプチドであって、配列番号:3に記載のHER2の細胞外ドメインからなるペプチドに対して結合する、上記[0]、および[1]~[5]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
[7] がん細胞が、乳がん細胞株のSK-BR-3細胞であり、非がん細胞が、正常ヒト表皮角化細胞株のHaCaT細胞である、上記[0]、および[1]~[6]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
[8] 上記[0]、および[1]~[7]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片を有するHER2標的化剤を有効成分として含む、医薬組成物。
[9] 細胞傷害剤がコンジュゲートされた上記[0]、および[1]~[7]のいずれかに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片。
[10] 上記[9]に記載の抗体またはその抗原結合性断片を有効成分として含む、医薬組成物。
[11] がんを処置することに用いるための、上記[8]または[10]に記載の医薬組成物。
[12] 上記[0]、および[1]~[7]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片を有効成分として含む、がんの処置剤。
[13] 上記[2]~[6]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸分子。
【0008】
[14] (iii)配列番号:18のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:19のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:20のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:21のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:22のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:23のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
(iv)配列番号:24のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:25のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:26のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:27のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:28のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:29のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;もしくは
上記(iii)または(iv)の一つ以上のCDRにおいて少なくとも1個の置換、付加もしくは欠失を有する、HER2の細胞外ドメインのエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片。
[15] 非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的に反応し得る抗体またはその抗原結合性断片。
【0009】
[16]抗体または抗体の抗原結合性断片を製造、選択または同定する方法であって、
HER2もしくはその断片に結合する抗体群または抗体の抗原結合性断片群から、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的に反応し得る抗体または抗体の抗原結合性断片を製造、選択または同定することを含む、方法。
[17]抗体または抗体の抗原結合性断片を製造、選択または同定する方法であって、
HER2もしくはその断片に結合する抗体群または抗体の抗原結合性断片群から下記(i)~(iii)からなる群から選択される少なくとも1つを満たす抗体または抗体の抗原結合性断片を製造、選択または同定することを含む、方法。
(i)配列番号:31~37のアミノ酸配列(例えば、配列番号:31~36のアミノ酸配列)からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドに結合する;および
(ii)配列番号:2に記載のHER2の細胞外ドメインの一部(アミノ酸番号603~622の領域)からなるペプチドにおいてW614A、K615A、およびF616Aからなる群から選択される1以上のアミノ酸変異を有するHER2の細胞外ドメインの変異体に対するよりも、配列番号:3に記載のHER2の細胞外ドメインからなるペプチドに対して強い結合親和性(または反応性)を有する、例えば、配列番号:2に記載のHER2の細胞外ドメインの一部(アミノ酸番号603~622の領域)からなるペプチドにおいてW614Aからなる点変異を有するペプチド、またはK615AもしくはF616Aからなる点変異を有するペプチドに対するよりも、配列番号:3に記載のHER2の細胞外ドメインからなるペプチドに対して強い反応性を有する;並びに
(iii)非がん細胞上に発現するHER2に対するよりも、がん細胞上に発現するHER2に対して強い結合反応性を有する。
[18]抗体または抗体の抗原結合性断片を製造、選択または同定する方法であって、
下記(i)~(ii)からなる群から選択される少なくとも1つを満たす抗体群または抗体の抗原結合性断片群から、HER2またはその断片に結合する抗体またはその抗原結合性断片を製造、選択または同定することを含む、方法。
(i)配列番号:31~37のアミノ酸配列(例えば、配列番号:31~36のアミノ酸配列)からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドに結合する;および
(ii)配列番号:2に記載のHER2の細胞外ドメインの一部(アミノ酸番号603~622の領域)からなるペプチドにおいてW614A、K615A、およびF616Aからなる群から選択される1以上のアミノ酸変異を有するペプチドに対するよりも、配列番号:3に記載のHER2の細胞外ドメインからなるペプチドに対して強い反応性を有する。
[19]得られた抗体または抗体の抗原結合性断片群から、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的に反応し得る抗体または抗体の抗原結合性断片を製造、選択または同定することをさらに含む、上記[17]または[18]に記載の方法。
[20]抗体または抗体の抗原結合性断片を製造、選択または同定する方法であって、
(iii)、(iv)、および(xii)のいずれかと少なくとも1つのCDRにおいて、置換、付加、挿入、および欠失からなる群から選択される少なくとも1以上のアミノ酸の変異(例えば、1個~10個、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個など)を有する抗体群または抗体の抗原結合性断片群から、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的に反応し得る抗体または抗体の抗原結合性断片を製造、選択または同定することを含む、方法。
【0010】
[20]選択または同定された抗体または抗体の抗原結合性断片を抗体産生細胞(例えば、CHO細胞)に産生させることを含む、上記[16]~[19]のいずれかに記載の方法。
[21]上記[20]の方法により得られた抗体。
[22]抗体がモノクローナル抗体(例えば、単離されたモノクローナル抗体)である、上記[16]~[20]のいずれかに記載の方法。
[23]上記[1]~[7]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片を有するHER2標的化剤を含む、医薬組成物。
[24]上記[9]に記載の抗体またはその抗原結合性断片を含む、医薬組成物。
[25]がんを処置することに用いるための、上記[23]または[24]に記載の医薬組成物。
【0011】
[101](xi)配列番号:37のアミノ酸配列からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドに結合する、上記[0]または[1]に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
[102](xii)上記[0]、[1]~[3]、および[101]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片であって、
配列番号:81に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:82に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:83に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:84に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:85に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:86に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:87に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:88に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:89に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:90に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:91に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:92に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:93に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:94に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:95に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:96に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:97に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:98に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:99に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:100に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:101に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:102に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:103に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:104に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:105に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:106に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:107に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:108に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:109に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:110に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:111に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:112に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:113に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:114に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:115に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:116に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:117に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:118に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:119に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:120に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:121に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:122に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:123に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:124に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:125に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:126に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:127に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:128に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:129に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:130に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:131に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:132に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:133に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:134に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:135に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:136に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:137に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:138に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:139に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:140に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:141に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:142に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:143に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:144に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:145に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:146に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:147に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:148に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:149に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:150に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:151に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:152に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:153に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:154に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:155に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:156に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:157に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:158に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:159に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:160に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:161に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:162に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:163に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:164に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:165に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:166に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:167に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:168に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:169に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:170に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:171に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:172に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:173に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:174に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:175に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:176に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:177に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:178に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:179に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:180に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:181に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:182に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:183に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:184に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:185に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:186に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:187に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:188に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:189に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:190に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:191に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:192に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:193に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:194に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:195に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:196に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:197に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:198に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:199に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:200に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:201に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:202に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:203に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:204に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:205に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:206に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する、抗体またはその抗原結合性断片。
[103](xiii)
(a)配列番号:39のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:40のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(b)配列番号:41のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:42のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(c)配列番号:43のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:44のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(d)配列番号:45のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:46のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(e)配列番号:47のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:48のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(f)配列番号:49のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:50のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(g)配列番号:51のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:52のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(h)配列番号:53のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:54のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(i)配列番号:55のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:56のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(j)配列番号:57のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:58のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(k)配列番号:59のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:60のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(l)配列番号:61のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:62のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(m)配列番号:63のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:64のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(n)配列番号:65のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:66のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(o)配列番号:67のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:68のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(p)配列番号:69のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:70のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(q)配列番号:71のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:72のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(r)配列番号:73のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:74のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(s)配列番号:75のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:76のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(t)配列番号:77のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:78のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(u)配列番号:79のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:80のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;もしくは
(xiv)上記(xiii)(a)~(u)のいずれかに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片の可変領域の少なくとも1以上においてそれぞれ少なくとも1個の置換、付加もしくは欠失を有する、上記[0]、[1]~[3]、[101]および[102]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
[104]抗体または抗体のその結合性断片を製造、選択または同定する方法であって、
HER2もしくはその断片に結合する抗体群またはその抗原結合性断片群から下記(xi)を満たす抗体またはその抗原結合性断片を製造、選択または同定することを含む、方法。
[105]抗体またはその抗原結合性断片を製造、選択または同定する方法であって、
HER2もしくはその断片に結合する抗体群またはその抗原結合性断片群から下記(xii)を満たす抗体またはその抗原結合性断片を製造、選択または同定することを含む、方法。
[106]抗体またはその抗原結合性断片を製造、選択または同定する方法であって、
HER2もしくはその断片に結合する抗体群またはその抗原結合性断片群から下記(xiii)を満たす抗体またはその抗原結合性断片を製造、選択または同定することを含む、方法。
[107]抗体またはその抗原結合性断片を製造、選択または同定する方法であって、
HER2もしくはその断片に結合する抗体群またはその抗原結合性断片群から下記(xiv)を満たす抗体またはその抗原結合性断片を製造、選択または同定することを含む、方法。
【0012】
[110]選択または同定された抗体またはその抗原結合性断片を抗体産生細胞(例えば、CHO細胞)に産生させることを含む、上記[101]~[103]のいずれかに記載の方法。
[111]上記[104]~[107]のいずれかの方法により得られた抗体。
[112]抗体がモノクローナル抗体(例えば、単離されたモノクローナル抗体)である、上記[104]~[107]のいずれかに記載の方法。
[113]上記[101]~[103]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片を有するHER2標的化剤を含む、医薬組成物。
[114]上記[101]~[103]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片を含む、医薬組成物。
[115]がんを処置することに用いるための、上記[113]または[114]に記載の医薬組成物。
【0013】
[120]前記HER2が、LN229細胞上に発現したHER2である、上記[104]~[107]のいずれかに記載の方法。
[121]HER2の断片が、配列番号:31~37に記載のアミノ酸配列(例えば、配列番号:31~36に記載のアミノ酸配列)からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドである、上記[104]~[107]のいずれかに記載の方法。
【0014】
本発明によれば、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、HER2標的化剤として用いることができる。本発明によれば、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、がん細胞の検出および/またはがんの処置に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】
図1Aは、実施例において用いたpCAG/PA-HER2-RAP-MAPのベクターマップである。
【
図1B】
図1Bは、実施例において用いたpCAG/PA-HER2ec-RAP-MAPのベクターマップである。
【
図2】
図2は、本発明の抗体の一例(H 2Mab-214およびH 2Mab-250)が、乳がん細胞株(SK-BR-3細胞)上に発現するHER2に結合する一方で、正常ヒト表皮角化細胞株(HaCaT細胞)上に発現するHER2には全く反応しないことを示す。
【
図3】
図3は、本発明の抗体の一例(H 2Mab-214およびH 2Mab-250)が、がん細胞のHER2発現状況を調べる従来の診断薬によってHER2陰性と診断されたがん細胞を染色することを示す免疫組織化学染色(IHC)の結果を示す。
【
図4】
図4は、H 2Mab-214およびH 2Mab-250と、様々なHER2の部分ペプチドとの結合性を示す。
【
図5】
図5は、様々なHER2のアラニン置換変異体(W614A、K615A、F616A)を発現させたCHO-K1細胞を用い、それぞれ、PAタグに対する抗体(NZ-1)、H 2Mab-214抗体、H 2Mab-250抗体、陽性対照抗体(トラスツズマブ)のフローサイトメトリー(FACS)解析結果を示す。一番左は、細胞の陽性対照として野生型HER2を発現させたCHO-K1細胞を用いた。
【
図6A】
図6Aは、実施例6で取得した抗体群のエピトープ解析結果を示す。
【
図6B】
図6Bは、実施例6で取得した抗体群のエピトープ解析結果を示す。
【
図6C】
図6Cは、実施例6で取得した抗体群のエピトープ解析結果を示す。
【
図6D】
図6Dは、実施例6で取得した抗体群のエピトープ解析結果を示す。
【
図6E】
図6Eは、実施例6で取得した抗体群のエピトープ解析結果を示す。
【
図7A】
図7Aは、実施例6で取得した抗体群のフローサイトメトリー(FACS)解析結果を示す。
【
図7B】
図7Bは、実施例6で取得した抗体群のフローサイトメトリー(FACS)解析結果を示す。
【
図7C】
図7Cは、実施例6で取得した抗体群のフローサイトメトリー(FACS)解析結果を示す。
【
図7D】
図7Dは、実施例6で取得した抗体群のフローサイトメトリー(FACS)解析結果を示す。
【
図7E】
図7Eは、実施例6で取得した抗体群のフローサイトメトリー(FACS)解析結果を示す。
【
図7F】
図7Fは、実施例6で取得した抗体群のフローサイトメトリー(FACS)解析結果を示す。
【
図7G】
図7Gは、実施例6で取得した抗体群のフローサイトメトリー(FACS)解析結果を示す。
【
図8A】
図8Aは、実施例6で取得した抗体群のがん細胞と正常細胞における免疫組織化学染色(IHC)の結果を示す。
【
図8B】
図8Bは、実施例6で取得した抗体群のがん細胞と正常細胞における免疫組織化学染色(IHC)の結果を示す。
【
図8C】
図8Cは、実施例6で取得した抗体群のがん細胞と正常細胞における免疫組織化学染色(IHC)の結果を示す。
【
図8D】
図8Dは、実施例6で取得した抗体群のがん細胞と正常細胞における免疫組織化学染色(IHC)の結果を示す。
【
図8E】
図8Eは、実施例6で取得した抗体群のがん細胞と正常細胞における免疫組織化学染色(IHC)の結果を示す。
【
図8F】
図8Fは、実施例6で取得した抗体群のがん細胞と正常細胞における免疫組織化学染色(IHC)の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<定義>
本明細書では、「対象」とは、哺乳動物であり得、好ましくは、ヒトを対象とする「患者」である。より好ましくは、腫瘍またはがんに罹患している、またはそのリスクがある「がん患者」であり得る。
【0017】
本明細書では、「抗体」とは、免疫グロブリンを意味し、ジスルフィド結合で安定化された2本の重鎖(H鎖)と2本の軽鎖(L鎖)が会合した構造をとるタンパク質をいう。重鎖は、重鎖可変領域VH、重鎖定常領域CH1、CH2、CH3、及びCH1とCH2の間に位置するヒンジ領域からなり、軽鎖は、軽鎖可変領域VLと軽鎖定常領域CLとからなる。この中で、VHとVLからなる可変領域断片(Fv)が、抗原結合に直接関与し、抗体に多様性を与える領域である。また、VL、CL、VH、CH1からなる抗原結合領域をFab領域と呼び、ヒンジ領域、CH2、CH3からなる領域をFc領域と呼ぶ。
可変領域のうち、直接抗原と接触する領域は特に変化が大きく、相補性決定領域(complementarity-determining region:CDR)と呼ばれる。CDR以外の比較的変異の少ない部分をフレームワーク(framework region:FR)と呼ぶ。軽鎖と重鎖の可変領域には、それぞれ3つのCDRが存在し、それぞれN末端側から順に、重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3と呼ばれる。抗体は、組換えタンパク質(組換え抗体)であってもよく、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)などの動物細胞に産生させることができる。抗体の由来は、特に限定されないが例えば、非ヒト動物の抗体、非ヒト哺乳動物の抗体(例えば、マウス抗体、ラット抗体、ラクダ抗体)、およびヒト抗体が挙げられる。また、抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、および完全ヒト型抗体であってもよい。抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であってもよく、好ましくはモノクローナル抗体である。「キメラ抗体」とは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域に異なる種の重鎖定常領域および軽鎖定常領域がそれぞれ連結した抗体である。ヒト化抗体は、非ヒト由来の抗体に特徴的なアミノ酸配列で、ヒト抗体の対応する位置を置換した抗体を意味し、例えば、マウス又はラットを免疫して作製した抗体の重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3を有し、重鎖及び軽鎖のそれぞれ4つのフレームワーク領域(FR)を含むその他のすべての領域がヒト抗体に由来するものが挙げられる。かかる抗体は、CDR移植抗体と呼ばれる場合もある。「ヒト化抗体」は、ヒトキメラ抗体を含む場合もある。「ヒトキメラ抗体」は、非ヒト由来の抗体において、非ヒト由来の抗体の定常領域がヒトの抗体の定常領域に置換されている抗体である。ヒトキメラ抗体では、ADCC活性を高める観点では、例えば、定常領域に用いるヒトの抗体のサブタイプはIgG1とすることができる。「完全ヒト型抗体」とは、FRおよびCDRからなる可変領域ならびに定常領域の両方ともにヒト抗体に由来する抗体を意味する。また、抗体の細胞傷害性を増強する目的で抗体を抗体-薬物複合体の形態とすることもできる。また、抗体は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体、または三重特異性抗体であってもよい。抗体は、単離された抗体、または精製された抗体であり得る。
【0018】
本明細書では、「抗原結合性断片」とは、抗原への結合性が維持された抗体の一部を意味する。抗原結合性断片は、本発明の抗体の重鎖可変領域若しくは軽鎖可変領域またはその両方を含みうる。抗原結合性断片は、キメラ化またはヒト化されていてもよい。抗原結合性断片としては、例えば、Fab、Fab’、F(ab’) 2、Fvが挙げられる。また、抗体結合性断片には、組換えにより生産された結合体または機能的等価物(例えば、scFv(単鎖Fv)、ダイアボディー、scDb、タンデムscFv、ロイシンジッパー型、sc(Fv) 2(単鎖(Fv) 2)等)の形態を有する、その他の抗体の一部)を含んでいてもよい。このような抗体の抗原結合性断片は、特に限定されないが例えば、抗体を酵素で処理して得ることができる。例えば、抗体をパパインで消化すると、Fabを得ることができる。あるいは、抗体をペプシンで消化すると、F(ab’) 2を得ることができ、これをさらに還元するとFab’を得ることができる。本明細書ではこのような抗体の抗原結合性断片を用いることができる。scFvにおいては、VL及びVHが人工のポリペプチドリンカーで連結され、元の抗体と同じ抗原特異性が維持され得る。VL及びVHは、N末端側からVH及びVLまたはVL及びVHの順番で連結され得る。リンカーは、10~25アミノ酸程度の長さを有し、グリシンを豊富に含み、水溶性を高める目的でセリンやトレオニンなどのアミノ酸を含んでいてもよい。
【0019】
本明細書では、「結合速度定数」(ka)および「解離速度定数」(kd)とは、2分子の結合解離反応における速度定数である。kaおよびkdは、当業者に周知の定数であり、適宜周知の技術、例えば、表面プラズモン共鳴法を用いて決定することができる。抗体の結合解離定数(K D)は、kd/kaで求められる。抗体は、標的分子に対して、例えば、10 -7M以下、10 -8M以下、10 -9M以下、10 -10M以下、10 -11M以下、または10 -12M以下のK D値を有し得る。
【0020】
本明細書では、結合親和性が強い(または高い)とは、抗原に強く結合することを意味し、例えば、K D値が相対的に小さいことを意味する。結合親和性が弱い(または低い)とは、抗原に弱く結合することを意味し、結合親和性の高低は、例えば、結合相手が細胞である場合には、フローサイトメトリーにより細胞に結合した標識抗体の標識量の高低であり得る。
【0021】
本明細書では、HER2(またはその断片)に結合する抗体は、HER2(またはその断片)に特異的に結合する抗体であり得る。ここで特異的とは、他の分子(他の種類の分子、変異体、他の修飾を受けた分子、または修飾を受けていない分子)に結合する際の結合親和性よりも、規定された分子(例えば、HER2)に結合する際の結合親和性が強いことを意味する。特異的に結合する抗体は、例えば、HER2に対して10 -7M以下、10 -8M以下、10 -9M以下、10 -10M以下、10 -11M以下、または10 -12M以下のK D値を有し得る。結合親和性の強度の観点では、HER2に対する結合親和性は、K D値において、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、100倍以上、1,000倍以上、10,000倍以上、または100,000倍以上、下記で特定する変異体のいずれかに対する結合親和性よりも強いものであり得る。結合親和性の強弱は、統計学的に有意な差であり得る(例えば、p<0.05、p<0.01、p<0.005、またはp<0.0001)。
【0022】
本明細書では、「抗体-薬物複合体」(ADC)とは、抗体と薬物とが連結(コンジュゲート)した物質を意味する。ADCでは、抗体としてはモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントが有利に用いられ得る。ADCでは、モノクローナル抗体と薬物とは適切なリンカーを介して連結させることができる。ADCは、細胞膜上の膜成分(例えば、受容体等の膜貫通タンパク質)に結合し、エンドサイトーシスやインターナライゼーションにより、細胞内に取り込まれ、抗体と切り離されて細胞内に放出される。細胞内で抗体と薬物との間に開裂性リンカーを導入しておくことで、細胞内、例えばエンドソーム内でリンカーを開裂させ薬物を抗体から乖離させて細胞質内に放出させることが可能である。薬物として、細胞傷害剤を用いると薬物が送達された細胞を死滅させることが可能である。細胞傷害剤としては、化学療法剤、放射性同位体、および毒素を用いることができる。
【0023】
本明細書では、「HER2標的化剤」とは、HER2またはその断片に対する結合分子(例えば、HER2もしくはその断片に結合する抗体またはその抗原結合性断片もしくは当該抗原結合性断片を含む融合タンパク質)を含み、HER2をその標的として、その薬効を生じる薬剤を意味する。HER2標的化剤としては、例えば、HER2またはその断片に結合する抗体もしくはその抗原結合性断片またはこれらのいずれかを含む薬剤が挙げられる。薬剤は、ADCC活性を有する抗体自体であり得る。薬剤は、例えば、細胞傷害剤であり得る。薬剤はまた、細胞障害活性を有する細胞(例えば、免疫細胞(例えば、T細胞、NK細胞等))であり得る。
【0024】
本明細書では、「核酸」とは、リボ核酸(RNA)およびデオキシリボ核酸(DNA)などのヌクレオチドが連なった高分子を意味する。タンパク質は、DNAによりコードされ、mRNAから翻訳される。タンパク質をコードするDNAは、制御配列(例えば、プロモータ)と作動可能に連結させることができる。また、制御配列と作動可能に連結したタンパク質をコードするDNAは、遺伝子発現ベクターに組込まれていてもよい。タンパク質をコードするDNAは、mRNAから逆転写により作製されたcDNAであってもよい。タンパク質をコードするmRNAは、5’末端にm7Gキャップを有していてよく、3’末端にポリ(A)鎖を有していてよい。タンパク質をコードするmRNAにはリボソームが結合し、mRNAからタンパク質が翻訳される。
【0025】
本明細書では、「がん」とは、細胞の制御不能な増殖を特徴とする疾患である。がん細胞には、局所的に広がるものと、血流またはリンパ系を通じて全身に広がるものとがある。がんの非限定的な例としては、例えば、固形腫瘍が挙げられる。がんの非限定的な例としては、例えば、造血器腫瘍が挙げられる。固形腫瘍としては、例えば、肺がん、膵臓がん、頭頸部がん、前立腺がん、膀胱がん、乳がん、食道がん、胃がん、大腸がん、子宮がん、卵巣がん、皮膚がん、甲状腺がん、胸腺がん、腎臓がん、精巣がん、陰茎がん、肝臓がん、胆道がん、脳腫瘍、骨軟部腫瘍、後腹膜腫瘍、血管・リンパ管肉腫、およびこれらの転移性のがん(例えば、転移性固形腫瘍)が挙げられる。また、造血器腫瘍としては、白血病、急性白血病、慢性白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(無症候型およびハイグレード型)、多発性骨髄腫、ワルデンストローム・マクログロブリン血症、重鎖病、骨髄異形成症候群、毛様細胞白血病および骨髄異形成が挙げられる。急性白血病としては、例えば、急性リンパ性白血病、急性骨髄急性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性の白血病および赤白血病が挙げられる。また、慢性白血病としては、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病および慢性リンパ性白血病が挙げられる。がんは特に、HER2陽性のがんであり得る。HER2陽性であるかは、当業者は周知の方法を用いて適宜決定することができる。本発明の抗体またはその抗原結合性断片を用いてHER2陽性か否かを決定してもよい。
【0026】
本明細書では、「処置」とは、予防的処置および治療的処置を含み、疾患を有する患者において、疾患の原因を軽減または除去すること、その進行を遅延または停止させること、その症状を軽減、緩和、改善または除去すること、および/または、その症状の悪化を抑制することを意味し、疾患が「がん」である場合には、がんの転移を抑制することも含む。
【0027】
本明細書では、「HER2」は、例えば、ヒトHER2であり得る。ヒトHER2は、例えば、Genebank受託番号:X03363で登録される塩基配列(配列番号:1)によってコードされ得る。ヒトHER2はまた、UniprotKB ID:P04626で登録されるアミノ酸配列(配列番号:2)を有し得る。ヒトHER2は、配列番号:2のアミノ酸配列において、アミノ酸番号1~22のアミノ酸領域がシグナルペプチドであり、アミノ酸番号23~652のアミノ酸領域が細胞外ドメイン(配列番号:3のアミノ酸配列を有し得る)であり、アミノ酸番号653~675のアミノ酸領域が膜貫通ドメインであり、アミノ酸番号676~1255のアミノ酸領域が細胞質ドメインである。HER2には、天然に見出されるHER2の変種が含まれ得る。HER2は、標的であるので、その機能を低下または喪失していてもよいが、機能を保持または増強していてもよい。エピトープとして認識され得るHER2としては、例えば、配列番号:2のアミノ酸配列のアミノ酸番号611~618のアミノ酸領域(MPIWKFPD:配列番号:34)を有するものであり得る。また、エピトープとして認識され得るHER2としては、例えば、配列番号:2のアミノ酸配列のアミノ酸番号612~618のアミノ酸領域(PIWKFPD:配列番号:35)を有するものであり得る。本明細書では、配列番号:2のアミノ酸配列のアミノ酸番号23~652のアミノ酸領域(配列番号:3)からなるペプチドを「HER2ec」と呼ぶ。
【0028】
HER2は、免疫組織化学(IHC)法または蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)法により、その発現または遺伝子増幅を検査することができる。
IHC法では、2018 ASCO/CAPガイドラインに基づいて発現量をスコア化することができる(Wolff AC, et al: J Clin Oncol 36 (20), 2018: 2105-2122参照)。2018 ASCO/CAPガイドラインでは、HER2の発現量を
3+:10%を超える腫瘍細胞に強い完全な全周性の膜染色がみられる、
2+:10%を超える腫瘍細胞に弱~中等度の全周性の膜染色がみられる、
1+:10%を超える腫瘍細胞にかすかな/かろうじて認識できる不完全な膜染色がみられる、
0:染色像がみられない、または、10%以下の腫瘍細胞に不完全なかすかな/かろうじて認識できる膜染色がみられる、
の4つの評点でスコア化することができる。
また、FISHでは、2007 ASCO/CAPガイドラインに基づいて遺伝子増幅の程度を評価することができる。HER2遺伝子は、17番染色体上に存在し、したがって、17番染色体のセントロメアの数に対するHER2遺伝子の比を測定することによって遺伝子増幅の程度を評価することができる。HER2の検査は、市販のキットを用いて実施することができる。
【0029】
本明細書では、「~に対応するアミノ酸配列」とは、アラインメントしたときに対応するアミノ酸配列であることを意味する。
【0030】
2つのアミノ酸配列のアラインメントは、例えば、CLUSTAL Wアルゴリズムを用いてデフォルトパラメータで2つまたは複数のアミノ酸配列のアラインメントを行うことができる。アラインメントアルゴリズムは、fastおよびslow、このましくはslowを用いることができる。デフォルトパラメータは例えば、GAP OPEN:10、GAP EXTENSION:0.1、KTUP:1、WINDOW LENGTH:5、TOPDIAG:5、およびPAIRGAP:3からなる群から選択される1以上またはすべてのパラメータを満たすものとすることができる。これにより、対応するアミノ酸配列を特定することができる。また、これによりアミノ酸配列の同一性を決定することができる。
【0031】
本明細書では、「抗体がHER2への結合に関して競合する」とは、抗体が、HER2上での結合部位(エピトープ)が重なり合い、HER2の結合部位を奪い合うなどの理由によって、両方の抗体が同時にHER2に結合できないことを意味する。抗体がHER2への結合に関して競合するか否かは、抗体の競合試験により決定することができる。
【0032】
本明細書では、「エピトープ」とは、抗体が結合する標的分子表面上の部位を意味する。
【0033】
<本発明の抗体またはその抗原結合性断片>
本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、HER2またはその断片に結合する抗体またはその抗原結合性断片である。本発明の抗体またはその抗原結合性断片には、1~数個のアミノ酸の挿入、欠失、付加および置換からなる群から選択される変異を有する抗体またはその抗原結合性断片が含まれ得る。ある実施態様において、本発明の抗体またはその抗原結合性断片における少なくとも1つのCDR、少なくとも2つ、少なくとも3つ、またはそれ以上のCDRと実質的に同一である、少なくとも1つのCDR、少なくとも2つ、少なくとも3つ、またはそれ以上のCDRを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。別の実施態様では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片における、または本発明の抗体またはその抗原結合性断片に由来する、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのCDRと実質的に同一である少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのCDRを有する抗体が含まれる。ある実施態様では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片における少なくとも1つ、2つ、または3つのCDRと、少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのCDRが含まれる。ある実施態様において、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのCDRは、本発明の抗体またはその抗原結合性断片における、または本発明の抗体またはその抗原結合性断片に由来する、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのCDRにおいて、少なくとも1つの挿入、欠失、付加または置換が含まれる。本発明の抗体またはその抗原結合性断片には、80%以上、85%以上、90%以上、または95%以上のアミノ酸配列の同一性を有し、抗体の抗原特異性を有する抗体またはその抗原結合性断片が含まれ得る。本発明の抗体またはその抗原結合性断片には、重鎖可変領域または軽鎖可変領域のフレームワーク(FR)領域において1~数個のアミノ酸の挿入、欠失、付加および置換からなる群から選択される変異を有する抗体またはその抗原結合性断片が含まれ得る。
本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、好ましくは、HER2に特異的に結合する抗体であり得る。本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、がん細胞上に発現するHER2に対して結合親和性(または反応性)を有する。したがって、がん細胞への標的化に用いることができる。本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、より好ましくは、非がん細胞上に発現するHER2に対するよりも、がん細胞上に発現するHER2に対して強い結合親和性(または反応性)を有し得る。したがって、がん細胞への特異的な標的化に用いることができる。本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、さらに好ましくは、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず(例えば、全く反応せず、または実質的な反応はなく)、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的に反応し得る。したがって、がん細胞への標的化(特に特異的な標的化)に用いることができる。
【0034】
本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、医薬成分として用いる観点で、好ましくは、モノクローナル抗体であり得る。本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、医薬成分として用いる観点で、好ましくは、単離されたモノクローナル抗体または単離されたモノクローナル抗体の抗原結合性断片である。本発明によれば、単離されたモノクローナル抗体または単離されたモノクローナル抗体の抗原結合性断片と医薬上許容可能な添加剤とを含む医薬組成物が提供され得る。
【0035】
本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、すなわち
(i)配列番号:31~37のアミノ酸配列(例えば、配列番号:31~36のアミノ酸配列)からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドに結合する、抗体もしくはその抗原結合性断片;または、
(ii)配列番号:2に記載のHER2の細胞外ドメインの一部(アミノ酸番号603~622の領域)からなるペプチドにおいてW614A、K615A、およびF616Aからなる群から選択される1以上のアミノ酸変異を有するHER2の細胞外ドメインの変異体に対するよりも、配列番号:3に記載のHER2の細胞外ドメインからなるペプチドに対して強い結合親和性(または反応性)を有する、例えば、配列番号:2に記載のHER2の細胞外ドメインの一部(アミノ酸番号603~622の領域)からなるペプチドにおいて、W614Aからなる点変異を有するHER2の細胞外ドメインの変異体、F616Aからなる点変異を有するHER2の細胞外ドメインの変異体、W614AとF616Aの2つの点変異からなる変異を有するHER2の細胞外ドメインの変異体、またはK615AとF616Aの2つの点変異からなる変異を有するHER2の細胞外ドメインの変異体に対するよりも、配列番号:3に記載のHER2の細胞外ドメインからなるペプチドに対して強い結合親和性(または反応性)を有する、抗体もしくはその抗原結合性断片{上記において、HER2の細胞外ドメインの一部は配列番号:2に記載のアミノ酸配列のアミノ酸番号613~622の領域であってもよい}。ここで、W614Aは、配列番号2に記載のHER2のアミノ酸配列においてアミノ酸番号614のトリプトファン(W)に対応するアミノ酸残基がアラニン(A)に置換されていることを意味し、K615Aは、配列番号2に記載のHER2のアミノ酸配列においてアミノ酸番号615のリジン(K)に対応するアミノ酸残基がアラニン(A)に置換されていることを意味し、F616Aは、配列番号2に記載のHER2のアミノ酸配列においてアミノ酸番号616のフェニルアラニン(F)に対応するアミノ酸残基がアラニン(A)に置換されていることを意味する。上記ペプチドは、合成ポリペプチドであり得る。上記ペプチドは、ある好ましい態様では糖鎖修飾を受けていない。
【0036】
HER2に対する結合反応性は、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)によって評価することもできる。ELISAでは、例えば、抗体に連結させた酵素の存在または量を当該酵素に対する基質の反応物の量によって評価することができる。例えば、酵素としてセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)を用い、基質として3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を用いると、TMBを酸化して370nmと652nmに最大吸収をもつ青色に発色する。硫酸を含む反応停止液をさらに接触させると450nmに最大吸収をもつ黄色に発色する。例えば、652nmの吸光を測定することにより、反応した抗体量を推定し、反応した抗体の量に基づいて抗体の抗原に対する反応性を評価することができる。そして、反応した抗体の量が多いほど、抗体の抗原に対する反応性が高いと評価できる。そして、結合反応性(反応した抗体量)において、1.5倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、100倍以上、1,000倍以上、10,000倍以上、または100,000倍以上、上記変異体に対する結合反応性よりも強いものであり得る。結合反応性の強弱は、統計学的に有意な差であり得る(例えば、p<0.05、p<0.01、p<0.005、またはp<0.0001)。
【0037】
以下、本発明の抗体またはその抗原結合性断片について詳述する。
本発明の抗体またはその抗原結合性断片はいずれも、がん細胞(例えば、LN229細胞)上に発現したHER2に結合する。本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、非がん細胞上に発現するHER2に対するよりも、がん細胞上に発現するHER2に対して強い結合反応性を有することが好ましい。本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、ある態様では、がん細胞(例えば、LN229細胞)上に発現したHER2に結合し、非がん細胞(例えば、正常細胞)上に発現したHER2には有意な結合を示さないことがより好ましい。
【0038】
本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、
(i)配列番号:31~37のアミノ酸配列(例えば、配列番号:31~36のアミノ酸配列)からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドに結合する、抗体もしくはその抗原結合性断片であり得る。配列番号:31~37のアミノ酸配列(例えば、配列番号:31~36のアミノ酸配列)からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドは、配列番号:2のアミノ酸配列の部分ペプチドであり得る。配列番号:31~37のアミノ酸配列(例えば、配列番号:31~36のアミノ酸配列)からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドは、配列番号:2のアミノ酸配列の部分ペプチドであり、10~20アミノ酸長、11~19アミノ酸長、12~18アミノ酸長、13~17アミノ酸長、14~16アミノ酸長、または約15アミノ酸長であり得る。配列番号:31~37のアミノ酸配列(例えば、配列番号:31~36のアミノ酸配列)からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドは、配列番号:31~37のアミノ酸配列(例えば、配列番号:31~36のアミノ酸配列)からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドであり得る。この領域は、がん細胞膜上に発現したHER2において抗体がアクセス可能な立体配置を有すると考えられ、したがって、この領域を標的とする抗体は、がん細胞に対して非がん細胞に対するよりも強い結合親和性(または反応性)を持って結合し得る。ある好ましい態様では、この領域を標的とする抗体は、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的に反応し得る。ペプチド自体が糖鎖修飾を有する必要は無く、ペプチドは、糖鎖修飾を有しなくてよい。
ここで、上記ペプチドは、特に限定されないが、好ましくは、合成ペプチドであり得る。
【0039】
本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、
(ii) 配列番号:2に記載のHER2の細胞外ドメインの一部(アミノ酸番号603~622の領域)からなるペプチドにおいてW614A、K615A、およびF616Aからなる群から選択される1以上のアミノ酸変異を有するHER2の細胞外ドメインの変異体に対するよりも、配列番号:3に記載のHER2の細胞外ドメインからなるペプチドに対して強い結合親和性(または反応性)を有する、抗体もしくはその抗原結合性断片であり得る、または、
配列番号:2に記載のHER2の細胞外ドメインの一部(アミノ酸番号603~622の領域)からなるペプチドにおいてW614Aからなる点変異を有するHER2の細胞外ドメインの変異体またはK615AとF616Aの2つの点変異からなる変異を有するHER2の細胞外ドメインの変異体に対するよりも、配列番号3に記載のHER2の細胞外ドメインからなるペプチドに対して強い結合親和性(または反応性)を有する、抗体もしくはその抗原結合性断片であり得る、もしくは
配列番号:2に記載のHER2の細胞外ドメインの一部(アミノ酸番号603~622の領域)からなるペプチドにおいてK615Aからなる点変異を有するHER2の細胞外ドメインの変異体ペプチド、もしくはF616Aからなる点変異を有するHER2の細胞外ドメインの変異体ペプチド、もしくはW614AとF616Aの2つの点変異からなる変異を有するHER2の細胞外ドメインの変異体ペプチドに対するよりも、配列番号3に記載のHER2の細胞外ドメインからなるペプチドに対して強い結合親和性(または反応性)を有する、抗体もしくはその抗原結合性断片であり得る。この領域またはその周辺に結合する抗体は、がん細胞に対して非がん細胞に対するよりも強い結合親和性(または反応性)を持って結合し得る。上記において、HER2の細胞外ドメインの一部は配列番号:2に記載のアミノ酸配列のアミノ酸番号613~622の領域であってもよい。
ここで、前記細胞外ドメインは、非がん細胞もしくはがん細胞に発現させたペプチドまたは合成ペプチドであってもよい。前記細胞外ドメインは、好ましくは、合成ペプチドであり得る。また、これらの抗体は、HER2の細胞外ドメインの一部(アミノ酸番号603~622の領域)からなるペプチドへの結合に関して相互に競合してもよい。また、これらの抗体は、がん細胞(例えば、LN229細胞)上に発現したHER2への結合に関して相互に競合してもよい。
【0040】
本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、
(iii)配列番号:18のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:19のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:20のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:21のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:22のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:23のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(iv)配列番号:24のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:25のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:26のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:27のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:28のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:29のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(v)上記(iii)の抗体とHER2との結合に関して競合する抗体もしくはその抗原結合性断片;または
(vi)上記(iv)の抗体とHER2との結合に関して競合する抗体もしくはその抗原結合性断片であり得る。本発明の抗体またはその抗原結合性断片はまた、上記(iii)または(iv)の少なくとも1つのCDRにおいて、置換、付加、挿入、および欠失からなる群から選択される少なくとも1以上(例えば、数個、例えば、2個、3個、4個、または5個)のアミノ酸の変異を有する本発明の抗体またはその抗原結合性断片であり得る。これらの抗体またはその抗原結合性断片は、がん細胞に対して非がん細胞に対するよりも強い結合親和性を持って結合し得る。これらの抗体またはその抗原結合性断片は、好ましくは、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的に反応し得る。本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、非ヒト動物抗体またはその抗原結合性断片であり得る。非ヒト動物は、例えば、齧歯類、例えば、マウスであり得る。本発明の抗体またはその抗原結合性断片はまた、好ましくは、キメラ抗体またはヒトキメラ抗体であり得る。本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、より好ましくは、ヒト化抗体またはヒト化抗体の抗原結合性断片であり得る。
【0041】
本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、
(vii)配列番号:14の重鎖可変領域のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:15の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(viii)配列番号:16の重鎖可変領域のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:17の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(ix)上記(vii)の抗体とHER2{例えば、HER2の細胞外ドメインの一部(アミノ酸番号603~622の領域)からなるペプチド、またはLN229細胞に発現したHER2}との結合に関して競合する抗体もしくはその抗原結合性断片;または
(x)上記(viii)の抗体とHER2{例えば、HER2の細胞外ドメインの一部(アミノ酸番号603~622の領域)からなるペプチド、またはLN229細胞に発現したHER2}との結合に関して競合する抗体もしくはその抗原結合性断片であり得る。
本発明の抗体またはその抗原結合性断片はまた、上記(vii)または(viii)の各可変領域において少なくとも1つの置換、付加、挿入、および欠失からなる群から選択される少なくとも1以上(例えば、数個)のアミノ酸の変異を有する本発明の抗体またはその抗原結合性断片であり得る。ある態様において、各可変領域における置換、付加、挿入、および欠失からなる群から選択される少なくとも1以上(例えば、数個)のアミノ酸の変異はCDR以外の変異であり得る。
本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、
(xi)配列番号:37のアミノ酸配列を含むペプチドに結合する、抗体もしくはその抗原結合性断片であり得る。
本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、
(xii)配列番号:81に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:82に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:83に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:84に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:85に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:86に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:87に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:88に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:89に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:90に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:91に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:92に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:93に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:94に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:95に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:96に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:97に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:98に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:99に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:100に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:101に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:102に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:103に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:104に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:105に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:106に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:107に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:108に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:109に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:110に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:111に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:112に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:113に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:114に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:115に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:116に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:117に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:118に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:119に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:120に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:121に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:122に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:123に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:124に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:125に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:126に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:127に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:128に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:129に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:130に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:131に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:132に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:133に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:134に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:135に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:136に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:137に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:138に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:139に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:140に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:141に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:142に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:143に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:144に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:145に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:146に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:147に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:148に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:149に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:150に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:151に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:152に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:153に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:154に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:155に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:156に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:157に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:158に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:159に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:160に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:161に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:162に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:163に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:164に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:165に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:166に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:167に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:168に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:169に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:170に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:171に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:172に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:173に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:174に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:175に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:176に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:177に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:178に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:179に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:180に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:181に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:182に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:183に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:184に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:185に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:186に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:187に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:188に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:189に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:190に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:191に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:192に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:193に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:194に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:195に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:196に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:197に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:198に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:199に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:200に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する;
配列番号:201に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
配列番号:202に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および
配列番号:203に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を有する重鎖可変領域、ならびに
配列番号:204に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
配列番号:205に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および
配列番号:206に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を有する軽鎖可変領域を有する、抗体またはその抗原結合性断片であり得る。
本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、
(xiii)(a)配列番号:39の重鎖可変領域のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:40の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(b)配列番号:41の重鎖可変領域のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:42の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(c)配列番号:43の重鎖可変領域のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:44の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(d)配列番号:45の重鎖可変領域のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:46の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(e)配列番号:47の重鎖可変領域のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:48の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(f)配列番号:49の重鎖可変領域のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:50の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(g)配列番号:51の重鎖可変領域のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:52の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(h)配列番号:53の重鎖可変領域のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:54の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(i)配列番号:55の重鎖可変領域のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:56の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(j)配列番号:57の重鎖可変領域のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:58の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(k)配列番号:59の重鎖可変領域のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:60の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(l)配列番号:61の重鎖可変領域のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:62の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(m)配列番号:63の重鎖可変領域のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:64の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(n)配列番号:65の重鎖可変領域のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:66の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(o)配列番号:67の重鎖可変領域のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:68の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(p)配列番号:69の重鎖可変領域のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:70の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(q)配列番号:71の重鎖可変領域のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:72の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(r)配列番号:73の重鎖可変領域のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:74の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(s)配列番号:75の重鎖可変領域のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:76の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(t)配列番号:77の重鎖可変領域のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:78の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;
(u)配列番号:79の重鎖可変領域のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:80の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体もしくはその抗原結合性断片;または
(xiv)上記(xii)(a)~(u)の各抗体とHER2{例えば、HER2の細胞外ドメインの一部(アミノ酸番号603~622の領域)からなるペプチド、またはLN229細胞に発現したHER2}との結合に関して競合する抗体もしくはその抗原結合性断片であり得る。
上記(xi)~(xiv)の抗体もしくはその抗原結合性断片には、当業者であれば明らかな通り、後記する本発明の抗体またはその抗原結合性断片の説明等を適用し得る。
【0042】
本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、非がん細胞上に発現するHER2に対するよりも、がん細胞上に発現するHER2に対して強い結合親和性(または反応性)を有する、単離されたモノクローナル抗体または抗体の抗原結合性断片であって、より好ましくは、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的に反応し得る、単離されたモノクローナル抗体または抗体の抗原結合性断片であって、
上記(i)~(xiv)のいずれか1以上を満たす、抗体またはその抗原結合性断片であり得る。
この態様では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、上記(i)または(ii)のいずれか1以上のプロファイルを有するものであってもよい。さらに、具体的には、上記(i)のみ、上記(ii)のみ、または上記(i)および(ii)のプロファイルを有するものであってもよい。
この態様では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、上記(v)、(vi)、(ix)、(x)、(xi)、(xii)、(xiii)、および(xiv)からなる群から選択される1以上と上記(i)を満たし得る。この態様では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、上記(v)、(vi)、(ix)、(x)、(xi)、(xii)、(xiii)、および(xiv)からなる群から選択される1以上と上記(ii)を満たし得る。この態様では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、上記(v)、(vi)、(ix)、(x)、(xi)、(xii)、(xiii)、および(xiv)からなる群から選択される1以上と上記(i)および(ii)を満たし得る。これらの抗体またはその抗原結合性断片は、がん細胞に対して非がん細胞に対するよりも強い結合親和性(または反応性)を持って結合し得る。これらの抗体またはその抗原結合性断片は、好ましくは、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的に反応し得る。
【0043】
本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、上記(i)~(xiv)のいずれか1以上を満たす、抗体またはその抗原結合性断片であり得る。
この態様では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、上記(i)および(ii)のいずれか1以上のプロファイルを有するものであってもよい。さらに、具体的には、上記(i)のみ、上記(ii)のみ、または上記(i)および(ii)のプロファイルを有するものであってもよい。これらの抗体またはその抗原結合性断片は、がん細胞に対して非がん細胞に対するよりも強い結合親和性(または反応性)を持って結合し得る。これらの抗体またはその抗原結合性断片は、好ましくは、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的に反応し得る。
この態様では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、上記(v)、(vi)、(ix)、(x)、(xi)、(xii)、(xiii)、および(xiv)からなる群から選択される1以上と上記(i)を満たし得る。この態様では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、上記(v)、(vi)、(ix)、(x)、(xi)、(xii)、(xiii)、および(xiv)からなる群から選択される1以上と上記(ii)を満たし得る。この態様では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、上記(v)、(vi)、(ix)、(x)、(xi)、(xii)、(xiii)、および(xiv)からなる群から選択される1以上と上記(i)および(ii)を満たし得る。
【0044】
本発明の抗体は、抗体依存性細胞障害(ADCC)活性および/または補体依存性細胞障害(CDC)活性を有し得る。ADCC活性とは、標的細胞の細胞表面抗原に本発明の抗体が結合した際、そのFc部分にFcγ受容体保有細胞(エフェクター細胞)がFcγ受容体を介して結合し、標的細胞に障害を与える活性を意味する。
ADCC活性は、HER2を発現している標的細胞(がん細胞、例えば、LN229細胞やSK-BR-3細胞)とエフェクター細胞と本発明の抗体を混合し、ADCCの程度を測定することによって評価することができる。エフェクター細胞としては、例えば、マウス脾細胞、ヒト末梢血や骨髄から分離した単球核を利用することができる。標的細胞としては、例えばHER2陽性乳がん細胞を用いることができる。標的細胞をあらかじめ 51Cr等で標識し、これに本発明の抗体を加えてインキュベーションし、その後標的細胞に対して適切な比のエフェクター細胞(エフェクター細胞は活性化されていてもよい)を加えてインキュベーションを行う。インキュベーション後、上清を採取し、上清中の上記標識をカウントすることにより、測定することが可能である。CDC活性とは、補体系による細胞障害活性を意味する。CDC活性は、ADCC活性の試験において、エフェクター細胞に代えて補体を用いることにより測定することができる。
【0045】
本発明の抗体は、Fc領域に1以上のN-結合型糖鎖が結合し、該N-結合型糖鎖の還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合していない抗体であってもよい。例えばIgG抗体のFc領域には、N-結合型糖鎖の結合部位が2ヶ所存在し、この部位に複合型糖鎖が結合している。N-結合型糖鎖とは、Asn-X-Ser/Thr配列のAsnに結合する糖鎖をいい、共通した構造Man3GlcNAc2-Asnを有する。非還元末端の2つのマンノース(Man)に結合する糖鎖の種類により、高マンノース型、混成型、及び複合型等に分類される。N-結合型糖鎖の還元末端のN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)にはフコースが結合しうるが、このフコースが結合していない場合、結合している場合に比較してADCC活性が著しく上昇することが知られている。このことは例えば、国際公開第2002/031140号パンフレットに記載されており、その開示は全体として参照により本明細書に組み込まれる。ADCC活性が著しく向上することにより、抗体を医薬として用いる場合に投与量を少なくすることができるので、副作用を軽減させることが可能であると共に、治療費も低減させることができる。ADCC活性を高めるためには、抗体の定常領域に用いるヒトの抗体のサブタイプをIgG1とすることができる。
【0046】
<抗体-薬物複合体>
本発明によれば、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントと薬物との複合体(抗体-薬物複合体;ADC)が提供される。本発明のADCでは、抗体またはその抗原結合フラグメントと薬物(例えば、細胞を傷害する特性を有する成分であり、例えば、細胞傷害剤である)とはリンカーを介して連結し得る。本発明のADCでは、細胞傷害剤としては、化学療法剤(例えば、市販の抗がん剤などの抗がん剤、例えば、アウリスタチン(アウリスタチンE、アウリスタチンFフェニレンジアミン(AFP)、モノメチルアウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンFとそれらの誘導体)、メイタンシノイドDM1およびDM4とそれらの誘導体)、カンプトテシン(SN-38、トポテカンおよびエキソテカンとそれらの誘導体)、DNA副溝結合剤(エネジイン、レキシトロプシン、デュオカルマイシンとそれらの誘導体)、タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセルとそれらの誘導体)、ポリケチド(ディスコデルモライドとその誘導体)、アントラキノン系(ミトキサントロンとその誘導体)、ベンゾジアゼピン(ピロロベンゾジアゼピン、インドリノベンゾジアゼピン、およびオキサゾリジノベンゾジアゼピンとそれらの誘導体)、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、およびビノレルビンとそれらの誘導体)、ドキソルビシン類(ドキソルビシン、モルホリノ-ドキソルビシン、およびシアノモルホリノ-ドキソルビシンとそれらの誘導体)、強心配糖体(ジギトキシンやその誘導体)、カレキアマイシン、エポチロン、クリプトフィシン、セマドチン、セマドチン、リゾキシン、ネトロプシン、コンブレタスタチン、エリュテロビン、エトポシド、T67(チュラリク)、およびノコダゾール)、放射性同位体(例えば、 32P、 60C、 90Y、 111In、 131I、 125I、 153Sm、 186Re、 188Re、および 212Bi)、および毒素(例えば、ジフテリアトキシンA、シュードモナスエンドトキシン、リシン、サポリン等)が挙げられ、本発明のADCにおける細胞傷害剤として用いることができる。細胞傷害剤はいずれも、がんの処置に用いられるものを用いることができる。
【0047】
抗体は、がん細胞内にインターナライズする抗体であることが望ましいが、インターナライズしない抗体であっても用いることができる。がん周辺組織に抗がん剤を送達しさえすれば、バイスタンダー効果によってがんを殺傷することができるためである。
【0048】
本発明のある態様では、リンカーは非開裂性リンカーまたは開裂性リンカーであり得る。抗体とリンカーとの結合は、例えば抗体のスルフヒドリル基にマレイミド基を介して連結することができる。リンカーには必要に応じてポリエチレングリコールブロックが含まれていてもよい。
【0049】
例えば、開裂性リンカーとしては、バリン-シトルリン(Val-Cit)およびフェニルアラニン-リジン(Phe-lys)リンカーなどのペプチドリンカーや、pH依存的に開裂するヒドラゾンリンカーが挙げられる。開裂性リンカーとしてはまた、カルバメート結合またはエステル結合を含むリンカーが挙げられ、これらは酵素的に細胞内で分解されうる。これらのリンカーは組み合わせて用いてもよい。
本発明のある態様では、マレイミド基-PEG-Val-Citにより抗体と細胞傷害剤を連結することができる。本発明のある態様では、本願実施例で用いたリンカー(例えば、マレイミド基-PEG-Val-Cit-PABA-細胞傷害剤)を用いることができる。
また、リンカーと細胞傷害剤との間には、スペーサーを介在させてもよい。
【0050】
<本発明の抗体の製造方法>
本発明の抗体は、(i)配列番号:31~37のアミノ酸配列(例えば、配列番号:31~36のアミノ酸配列)からなる群から選択されるいずれか1以上のアミノ酸配列を含むペプチドを免疫原として動物に投与することによって得られ得る。ある態様では、本発明の抗体は、配列番号:31のアミノ酸配列からなるペプチドを免疫原として動物に投与することによって得られ得る。ある態様では、本発明の抗体は、配列番号:32のアミノ酸配列からなるペプチドを免疫原として動物に投与することによって得られ得る。ある態様では、本発明の抗体は、配列番号:33のアミノ酸配列からなるペプチドを免疫原として動物に投与することによって得られ得る。ある態様では、本発明の抗体は、配列番号:34のアミノ酸配列からなるペプチドを免疫原として動物に投与することによって得られ得る。ある態様では、本発明の抗体は、配列番号:35のアミノ酸配列からなるペプチドを免疫原として動物に投与することによって得られ得る。ある態様では、本発明の抗体は、配列番号:36のアミノ酸配列からなるペプチドを免疫原として動物に投与することによって得られ得る。またさらに、本発明の抗体は、配列番号:37のアミノ酸配列からなるペプチドを免疫原として動物に投与することによって得られ得る。ペプチドは、合成ペプチドであり得る。
【0051】
本発明の抗体はまた、HER2ec等のHER2の細胞外ドメイン部分を免疫原として動物に投与することによって得られ得る。本発明の抗体はまた、ファージディスプレイなどの当業者に周知の方法によっても得られ得る。HER2の細胞外ドメイン部分は、合成ペプチドであり得る。HER2の細胞外ドメイン部分は、細胞、例えば、非がん細胞またはがん細胞、例えば、がん細胞株(例えば、LN229細胞)に発現させたものであり得る。
【0052】
動物への免疫原の免疫は、当業者が周知の方法によって行うことができる。HER2またはその部分ペプチドに対する抗体が産生されたかどうかは、例えば、免疫した動物から得られる体液(例えば、血液、血漿、または血清)または免疫細胞(例えば、脾臓細胞)を用いて確認することができる。モノクローナル抗体は、当業者が、ハイブリドーマ法などの周知の方法により作製することができる。ハイブリドーマは、当業者に周知の方法により作製され得る。作製後、ハイブリドーマを限外希釈法により単一クローンにする。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ上清に分泌され得る。モノクローナル抗体が、所望の結合特性を有するものであるかは、当業者であれば、結合アッセイ(結合試験)によって確認することができる。
【0053】
例えば、抗体が、がん細胞に対して非がん細胞に対するよりも強い結合親和性を持って結合するか否か、すなわち、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的に反応し得るか否かは、当業者であれば容易に試験することができる。試験は、好ましくは、インビトロの試験であり得る。試験は、例えば、がん細胞としてがん細胞株、特にHER2陽性のがん細胞株(例えば、SK-BR-3細胞)を用いることができる。試験はまた、例えば、非がん細胞として、非がん細胞株または正常細胞株、特にHER2陽性の非がん細胞株または正常細胞株(例えば、HaCaT細胞)を用いることができる。例えば、細胞を単一細胞化して、フローサイトメトリーにより、標識抗体との相互作用を分析することによって、がん細胞に対して非がん細胞に対するよりも強い結合親和性を持って結合するか否かを決定することができる。標識は、蛍光標識等の当業者に周知の標識を用いることができる。また、HER2発現するがん細胞に対する結合反応性(反応した抗体量)は、1.5倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、100倍以上、1,000倍以上、10,000倍以上、または100,000倍以上、HER2を発現する正常細胞に対する結合反応性よりも強いものであり得る。結合反応性の強弱は、統計学的に有意な差であり得る(例えば、p<0.05、p<0.01、p<0.005、またはp<0.0001)。がん細胞に対する結合反応性は、例えば、フローサイトメトリーを用いて評価できる。結合親和性や反応性をフローサイトメトリーにより決定する場合には、例えば、ピーク値を比較することができる。抗体が、非がん細胞(例えば、正常細胞)に対して有意な結合を示さないことは、抗体が非がん細胞株(例えば正常細胞株、特にHER2陽性の非がん細胞株または正常細胞株(例えば、HaCaT細胞))に対して有意な結合を示すか否かを試験することにより決定することができる。
【0054】
例えば、本発明の抗体またはその抗原結合性断片が上記(i)を満たすか否かは、ハイブリドーマ上清と配列番号:31~37のアミノ酸配列(例えば、配列番号:31~36のアミノ酸配列)からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドのそれぞれとが結合するかをアッセイによって試験することができる。例えば、ペプチドを常法により固相化し、これに対してハイブリドーマ上清中の抗体が結合するかをアッセイし、ハイブリドーマが産生する抗体を特異的に反応する標識2次抗体を用いて検出することができる。表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて検出してもよい。同様に、本発明の抗体またはその抗原結合性断片が上記(ii)を満たすか否かは、ハイブリドーマ上清中の抗体と配列番号:2に記載のHER2の細胞外ドメインの一部(アミノ酸番号603~622の領域)からなるペプチドにおいてW614A、K615A、およびF616Aからなる群から選択される1以上のアミノ酸変異を有するペプチド(例えば、W614Aからなる点変異を有するHER2の細胞外ドメインの変異体;またはK615AとF616Aの2つの点変異からなる変異を有するHER2の細胞外ドメインの変異体;またはK615Aからなる点変異を有するHER2の細胞外ドメインの変異体、もしくはF616Aからなる点変異を有するHER2の細胞外ドメインの変異体、もしくはW614AとF616Aの2つの点変異からなる変異を有するHER2の細胞外ドメインの変異体)とが結合するかをアッセイによって試験することと、ハイブリドーマ上清中の抗体と配列番号3に記載のHER2の細胞外ドメインからなるペプチドとが結合するかをアッセイによって試験することによって決定することができる。例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)を用いると結合解離定数(K D)を求めることができ、K Dの大きさを指標として上記(ii)を満たすか否かを簡単に決定することができる。したがって、本発明によれば、抗体またはその抗原結合性断片を選択または同定する方法であって、抗体またはその抗原結合性断片群、例えば、HER2またはその断片に結合する抗体またはその抗原結合性断片群から上記(i)を満たす抗体またはその抗原結合性断片を選択または同定することを含む方法が提供され得る。本発明によればまた、抗体またはその抗原結合性断片を選択または同定する方法であって、抗体またはその抗原結合性断片群、例えば、HER2またはその断片に結合する抗体またはその抗原結合性断片群から上記(ii)を満たす抗体またはその抗原結合性断片を選択または同定することを含む方法が提供され得る。これらの方法は、これらの方法により選択または同定された抗体またはその抗原結合性断片群から非がん細胞上に発現するHER2に対するよりも、がん細胞上に発現するHER2に対して強い結合反応性を有する抗体またはその抗原結合性断片、すなわち、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的に反応し得る抗体またはその抗原結合性断片をさらに選択または同定することを含んでいてもよい。なお、上記において、HER2の細胞外ドメインの一部が配列番号:2に記載のアミノ酸配列のアミノ酸番号603~622の領域である場合には、当該ペプチドにおいて上記点変異を有する変異体を用いて同様のアッセイによって抗体またはその抗原結合性断片を試験することができる。
【0055】
抗体がHER2への結合に関して競合すること、および抗体が互いに類似した結合特性を有することは、競合アッセイにより検証することができる。ある抗体と抗原(例えば、HER2やその断片)との結合において競合する抗体は、当業者に周知の競合アッセイなどにより得ることができる。競合アッセイで、例えば、少なくとも20%、好ましくは少なくとも20~50%、さらに好ましくは少なくとも50%、より好ましくは60%、より好ましくは70%、より好ましくは80%、とりわけ好ましくは90%以上、所望の抗体の結合をブロックすることができるならば、同じ抗原に対する結合において競合する抗体とすることができる。競合する抗体は、交差ブロッキングアッセイ、フローサイトメトリー、蛍光エネルギー転移測定法(FRET)や蛍光微量測定(FMAT(登録商標))、好ましくは、競合ELISAアッセイにより確認することができる。交差ブロッキングアッセイでは、抗原を、例えばマイクロタイタープレート上にコーティングし、ここに候補となる競合抗体存在を添加してインキュベートし、抗原と候補抗体との結合を形成させる。その後、所望の抗体を標識した上でさらにウェルに添加してインキュベートし、洗浄して、所望の抗体の結合量を定量することにより、抗体が競合したか否かを判断することができる。競合する場合には、ウェル中に残存する標識量が少なくなるはずである。
【0056】
一般的に、競合アッセイにおいて、抗体Aが抗体Bと抗原との結合を解離させるからといって、抗体Bが抗体Aと抗原との結合を解離させるとは限らない。これは、抗体Aが抗体Bよりも極めて強い結合を抗原に対して示す場合を考えれば容易に理解できる。結合特性の近い抗体を得るためには、抗体Aが抗体Bと抗原との結合を解離させ、かつ、抗体Bが抗体Aと抗原との結合を解離させることを確認すればよく、本明細書では、このような競合状態を「抗体Aと抗体Bが抗原との結合において相互に競合する」という。
【0057】
したがって、本発明の抗体またはその抗原結合性断片が、上記(v)、(vi)、(ix)、および(x)のいずれかを満たすか否かは、それぞれ上記(iii)、(iv)、(vii)、(viii)および(xiii)のいずれかの抗体とHER2またはその断片(エピトープを含むペプチド等)との結合に関して競合するかを確認することによって決定することができる。したがって、本発明によれば、抗体またはその抗原結合性断片を選択または同定する方法であって、HER2またはその断片に結合する抗体またはその抗原結合性断片群から、上記(iii)、(iv)、(vii)、(viii)および(xiii)のいずれかの抗体とHER2またはその断片(エピトープを含むペプチド等)との結合に関して競合する抗体またはその抗原結合性断片を選択または同定することを含む方法が提供される。この方法は、これらの方法により選択または同定された抗体またはその抗原結合性断片群から非がん細胞上に発現するHER2に対するよりも、がん細胞上に発現するHER2に対して強い結合反応性を有する抗体またはその抗原結合性断片をさらに選択または同定することを含んでいてもよい。HER2の断片としては、配列番号:31~37のアミノ酸配列(例えば、配列番号:31~36のアミノ酸配列)からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドを用い得る。HER2の断片としては、HER2ecを用い得る。HER2としては、LN229細胞膜上に発現したHER2を用い得る。本発明によれば、このようにして、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を取得することができる。
【0058】
このようにして、本発明の抗体の結合特性を有するモノクローナル抗体を選択して、得ることができる。得られたモノクローナル抗体のアミノ酸配列は、抗体を得てから決定することができる。例えば、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマからRNAを抽出し、cDNAを合成して、免疫グロブリンをコードするcDNAの配列を決定することによって、得られたモノクローナル抗体をコードする遺伝子の塩基配列を決定することができる。塩基配列からは、モノクローナル抗体のアミノ酸配列を決定することができる。モノクローナル抗体のアミノ酸配列からは、重鎖CDR1~3のアミノ酸配列および軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列を推定することができる。CDRの推定には、例えば、Kabatの番号付けシステム(Kabat E.A.et al., (1991) Sequences of proteins of immunological interest. NIH Publication 91-3242))、Chothia(Al-lazikani et al., (1997) J. Mol. Biol. 273: 927-948)、Aho、IMGT、CCG等、またはこれら各手法の組み合わせにより行うことができる。また、番号付けシステムによっては推定されるCDR領域が変わりうることも周知の事実である。このようにして、重鎖CDR1~3のアミノ酸配列および軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列を有する抗体を設計する、または作製することができる。
【0059】
抗体の抗原結合性断片は、当業者に周知の方法により作製することができる。例えば、Fab断片は、抗体をパパインにより消化することにより作製することができる。例えば、F(ab’) 2は、抗体をペプシンにより消化することにより作製することができる。例えば、Fab’は、F(ab’) 2を還元剤で処理することにより作製することができる。例えば、scFvは、様々な方法で構築できる。例えば、重鎖可変領域のC末端を軽鎖可変領域のN末端に連結できる。通常、リンカー(例えば、(GGGGS) 4、配列番号:38)を重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間で配置する。しかし、鎖が連結され得る順序は、逆にすることができ、軽鎖可変領域のC末端を重鎖可変領域のN末端に連結できる。scFvの検出または精製を容易にするタグ(例えば、Mycタグ、HisタグまたはFLAGタグ)が含まれ得る。
【0060】
本発明によれば、抗体またはその抗原結合性断片の製造方法が提供される。本発明の製造方法は、HER2のペプチド(例えば、配列番号:31~37のアミノ酸配列のいずれかからなるペプチド、例えば、配列番号:31~36のアミノ酸配列からなるペプチド、例えば、配列番号:31に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、例えば、配列番号:32に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、例えば、配列番号:33に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、例えば、配列番号:34に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、例えば、配列番号:35に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、例えば、配列番号:36に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、例えば、配列番号37に記載のアミノ酸配列からなるペプチド)またはがん細胞に発現させたHER2(例えば、HER2の細胞外ドメイン)を免疫原として動物に投与することを含み得る。本発明の製造方法はまた、得られた抗体が、がん細胞に発現するHER2に対して、非がん細胞に発現するHER2よりも強い反応性を示すことを試験(または確認)することを含み得る。本発明の製造方法はまた、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的に反応し得ることを試験(または確認)することを含み得る。本発明の製造方法はまた、得られた抗体が、本発明の抗体である(本発明の抗体の結合特性を有する)ことを試験(または確認)することを含み得る。得られた抗体が、がん細胞に発現するHER2に対して、非がん細胞に発現するHER2よりも強い反応性を示すこと、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的に反応し得ることおよび/または、本発明の抗体である(本発明の抗体の結合特性を有する)ことを確認したら、当該抗体を選択することができる。抗体は、抗体をコードする核酸を含む組換え抗体産生細胞(例えば、CHO細胞など)を用いて産生させることができる。本発明の製造方法では、必要な場合には、産生された抗体を精製することができる。
【0061】
本発明によれば、抗体または抗体の抗原結合性断片を選択または同定する方法であって、HER2(例えば、LN229細胞に発現したHER2、配列番号:31~37のアミノ酸配列のいずれかからなるペプチド、例えば、配列番号:31~36のアミノ酸配列からなるペプチド)に結合する抗体群またはその抗原結合性断片群から、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的な反応性を有する抗体またはその抗原結合性断片を選択または同定することを含む方法が提供される。ある態様では、HER2またはその断片に結合する抗体またはその抗原結合性断片群は、LN229細胞により産生されたHER2ecタンパク質に結合することができる。ある態様では、HER2またはその断片に結合する抗体またはその抗原結合性断片群は、配列番号:31~37のアミノ酸配列(例えば、配列番号:31~36のアミノ酸配列)のいずれかからなるペプチドに結合することができる。
【0062】
本発明によれば、抗体または抗体の抗原結合性断片を選択または同定する方法であって、上記のいずれかの抗体または抗体の抗原結合性断片から、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞株(例えば、LN229細胞)上に発現するHER2に対して特異的な反応性を有する抗体または抗体の抗原結合性断片を選択または同定することを含む方法が提供される。
例えば、本発明によれば、抗体または抗体の抗原結合性断片を選択または同定する方法であって、LN229細胞により産生されたHER2ecタンパク質に結合することができる抗体群またはその抗原結合性断片群から、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的な反応性を有する抗体またはその抗原結合性断片を選択または同定することを含む方法が提供される。
本発明によればまた、抗体または抗体の抗原結合性断片を選択または同定する方法であって、配列番号:31~37のアミノ酸配列(例えば、配列番号:31~36のアミノ酸配列)のいずれかからなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドに結合することができる抗体群またはその抗原結合性断片群から、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的な反応性を有する抗体またはその抗原結合性断片を選択または同定することを含む方法が提供される。
本発明によればさらに、抗体または抗体の抗原結合性断片を選択または同定する方法であって、配列番号:2に記載のHER2の細胞外ドメインの一部(アミノ酸番号603~622の領域)からなるペプチドにおいてW614A、K615A、およびF616Aからなる群から選択される1以上のアミノ酸変異を有するHER2の細胞外ドメインの変異体に対するよりも、配列番号:2に記載のHER2の細胞外ドメインの一部(アミノ酸番号603~622の領域)からなるペプチドに対して強い結合親和性(または反応性)を有する、抗体群またはその抗原結合性断片群から、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的な反応性を有する抗体またはその抗原結合性断片を選択または同定することを含む方法が提供される。
本発明によればさらにまた、抗体または抗体の抗原結合性断片を選択または同定する方法であって、配列番号:2に記載のHER2の細胞外ドメインの一部(アミノ酸番号603~622の領域)からなるペプチドにおいてW614Aからなる点変異を有するペプチド、またはK615AもしくはF616Aからなる点変異を有するペプチドに対するよりも、配列番号:2に記載のHER2の細胞外ドメインの一部(アミノ酸番号603~622の領域)からなるペプチドに対して強い反応性を有する抗体群またはその抗原結合性断片群から、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的な反応性を有する抗体またはその抗原結合性断片を選択または同定することを含む方法が提供される。
本発明によればさらにまた、抗体または抗体の抗原結合性断片を選択または同定する方法であって、配列番号:2に記載のHER2の細胞外ドメインの一部(アミノ酸番号603~622の領域)からなるペプチドにおいてF616Aからなる点変異を有するHER2の細胞外ドメインの変異体、W614AとF616Aの2つの点変異からなる変異を有するペプチドに対するよりも、配列番号:2に記載のHER2の細胞外ドメインの一部(アミノ酸番号603~622の領域)からなるペプチドに対して強い反応性を有する抗体群またはその抗原結合性断片群から、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的な反応性を有する抗体またはその抗原結合性断片を選択または同定することを含む方法が提供される。
【0063】
また、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、上記(iii)、(iv)、および(xii)のいずれかと少なくとも1つのCDRにおいて、置換、付加、挿入、および欠失からなる群から選択される少なくとも1以上(例えば、数個)のアミノ酸の変異を有する抗体またはその抗原結合性断片群から、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的な反応性を有する抗体またはその抗原結合性断片を選択することにより得られ得る。したがって、本発明によれば、抗体またはその抗原結合性断片を選択または同定する方法であって、上記(iii)、(iv)、および(xii)のいずれかと少なくとも1つのCDRにおいて、置換、付加、挿入、および欠失からなる群から選択される少なくとも1以上(例えば、数個)のアミノ酸の変異を有する抗体またはその抗原結合性断片群から、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的な反応性を有する抗体またはその抗原結合性断片を選択または同定することを含む方法が提供される。
【0064】
また、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、上記(vii)、(viii)、および(xiii)のいずれかと少なくとも1つの可変領域において、置換、付加、挿入、および欠失からなる群から選択される少なくとも1以上(例えば、数個)のアミノ酸の変異を有する抗体またはその抗原結合性断片群から、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的な反応性を有する抗体またはその抗原結合性断片を選択することにより得られ得る。したがって、本発明によれば、抗体またはその抗原結合性断片を選択または同定する方法であって、上記(vii)、(viii)、および(xiii)のいずれかと少なくとも1つの可変領域において、置換、付加、挿入、および欠失からなる群から選択される少なくとも1以上(例えば、数個)のアミノ酸の変異を有する抗体またはその抗原結合性断片群から、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的な反応性を有する抗体またはその抗原結合性断片を選択または同定することを含む方法が提供される。
【0065】
このようにして、本発明の抗体または抗体の抗原結合性断片を選択または同定することができる。本発明の抗体または抗体の抗原結合性断片を選択または同定した後には、これらをコードする遺伝子を抗体産生細胞(例えば、CHO細胞等)に導入して、抗体産生細胞からこれらの抗体または抗体の抗原結合性断片を回収することができる。本発明の抗体または抗体の抗原結合性断片は、必要に応じてヒト化され得る。本発明の抗体または抗体の抗原結合性断片は、単離され、例えば、プロテインAまたはGカラムを用いて単離され得る。さらには、単離された本発明の抗体または抗体の抗原結合性断片は、薬学的に許容可能な賦形剤と混合され得る。あるいは、単離された本発明の抗体または抗体の抗原結合性断片は、薬物(例えば、細胞傷害剤)とコンジュゲートされ得る。これにより、本発明の抗体または抗体の抗原結合性断片は、HER2を発現するがん細胞に薬物を標的化することができるようになる。
【0066】
本発明によれば、抗体または抗体の抗原結合性断片を選択または同定する方法であって、
HER2(例えば、LN229細胞に発現したHER2)またはその断片に結合することができる抗体群または抗体の抗原結合性断片群から、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的な反応性を有する抗体または抗体の抗原結合性断片を選択または同定することを含む、方法が提供され得る。
【0067】
本発明によればまた、抗体または抗体の抗原結合性断片を選択または同定する方法であって、
HER2またはその断片に結合する抗体群または抗体の抗原結合性断片群から上記(i)または(ii)から選択される少なくとも1つを満たす抗体または抗体の抗原結合性断片を選択または同定することを含む、方法が提供される:
(i)配列番号:31~37のアミノ酸配列(例えば、配列番号:31~36のアミノ酸配列)からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドに結合する;または
(ii)配列番号:2に記載のHER2の細胞外ドメインの一部(アミノ酸番号603~622の領域)からなるペプチドにおいてW614A、K615A、およびF616Aからなる群から選択される1以上のアミノ酸変異を有するHER2の細胞外ドメインの変異体に対するよりも、配列番号:3に記載のHER2の細胞外ドメインからなるペプチドに対して強い結合親和性(または反応性)を有する、もしくは
配列番号:2に記載のHER2の細胞外ドメインの一部(アミノ酸番号603~622の領域)からなるペプチドにおいてW614Aからなる点変異を有するペプチド、またはK615AもしくはF616Aからなる点変異を有するペプチドに対するよりも、配列番号:3に記載のHER2の細胞外ドメインからなるペプチドに対して強い反応性を有する。
本発明によればさらに、抗体または抗体の抗原結合性断片を選択または同定する方法であって、
上記(i)または(ii)から選択される少なくとも1つを満たす抗体群または抗体の抗原結合性断片群から、HER2またはその断片に結合する抗体またはその抗原結合性断片を選択または同定することを含む、方法が提供される:
(i)配列番号:31~37のアミノ酸配列(例えば、配列番号:31~36のアミノ酸配列)からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドに結合する;または
(ii)配列番号:2に記載のHER2の細胞外ドメインの一部(アミノ酸番号603~622の領域)からなるペプチドにおいてW614A、K615A、およびF616Aからなる群から選択される1以上のアミノ酸変異を有するHER2の細胞外ドメインの変異体に対するよりも、配列番号:3に記載のHER2の細胞外ドメインからなるペプチドに対して強い結合親和性(または反応性)を有する、もしくは
配列番号:2に記載のHER2の細胞外ドメインの一部(アミノ酸番号603~622の領域)からなるペプチドにおいてW614Aからなる点変異を有するペプチド、またはK615AもしくはF616Aからなる点変異を有するペプチドに対するよりも、配列番号:3に記載のHER2の細胞外ドメインからなるペプチドに対して強い反応性を有する。
これらの態様において、本発明は、得られた抗体または抗体の抗原結合性断片群から、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的な反応性を有する抗体または抗体の抗原結合性断片を選択または同定することをさらに含んでいてもよい。
【0068】
本発明によればまた、
抗体または抗体の抗原結合性断片を選択または同定する方法であって、
上記(iii)または(iv)のいずれかと少なくとも1つのCDRにおいて、置換、付加、挿入、および欠失からなる群から選択される少なくとも1以上のアミノ酸の変異を有する抗体群または抗体の抗原結合性断片群から、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的な反応性を有する抗体または抗体の抗原結合性断片を選択または同定することを含む、方法が提供される。
【0069】
本発明によればまた、
抗体または抗体の抗原結合性断片を選択または同定する方法であって、
上記(vii)または(viii)のいずれかと少なくとも1つの可変領域において、置換、付加、挿入、および欠失からなる群から選択される少なくとも1以上のアミノ酸の変異を有する抗体群または抗体の抗原結合性断片群から、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的な反応性を有する抗体または抗体の抗原結合性断片を選択または同定することを含む、方法が提供される。
【0070】
本発明によればまた、
抗体または抗体の抗原結合性断片を選択または同定する方法であって、
上記(xii)または(xiii)のいずれかと少なくとも1つのCDRまたは可変領域において、置換、付加、挿入、および欠失からなる群から選択される少なくとも1以上のアミノ酸の変異を有する抗体群または抗体の抗原結合性断片群から、非がん細胞上に発現するHER2には有意には反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的な反応性を有する抗体または抗体の抗原結合性断片を選択または同定することを含む、方法が提供される。
【0071】
本発明の抗体または抗体の抗原結合性断片を選択または同定する方法は、ヒト化された抗体もしくは抗体の抗原結合性断片、またはヒト抗体もしくはヒト抗体の抗体結合性断片を選択または同定する方法であってもよい。本発明の抗体または抗体の抗原結合性断片を選択または同定する方法は、単離および/または精製された抗体または抗体の抗原結合性断片選択または同定する方法であってもよい。
【0072】
本発明によれば、上記の本発明の抗体または抗体の抗原結合性断片を選択または同定することを含む、抗体または抗体の抗原結合性断片の製造方法が提供される。この製造方法においては、抗体または抗体の抗原結合性断片は、これをコードする遺伝子を抗体産生細胞に導入して、抗体産生細胞から産生させることができる。抗体または抗体の抗原結合性断片は、ヒト化して、ヒト化抗体またはヒト化抗体の抗原結合性断片とすることもできる。抗体または抗体の抗原結合性は、単離および/または精製して、応用に用いることができる。例えば、抗体または抗体の抗原結合性断片は、薬学的に許容可能な賦形剤と混合して、製剤化し、医薬組成物としてもよい。
【0073】
<本発明の医薬組成物>
本発明によれば、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬組成物が提供される。本発明の医薬組成物は、本発明の抗体またはその抗原結合性断片と薬学的に許容できる担体や添加物を含んでいてもよい。担体及び添加物の例としては、水、食塩水、リン酸緩衝液、デキストロース、グリセロール、エタノール等薬学的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ぺクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、界面活性剤等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0074】
本発明によれば、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を含むHER2標的化剤(HER2標的化療法薬ともいう)を含む医薬組成物が提供され得る。本発明の医薬組成物は、がんを処置することに用いることができる。
【0075】
本発明によれば、本発明の抗体若しくはその抗原結合性断片を含む標的化剤、および当該標的化剤を含む、医薬組成物が提供される。例えば、本発明によれば、本発明の抗体若しくはその抗原結合性断片と薬物(例えば、細胞傷害剤)との抗体薬物複合体(ADC)を含む医薬組成物が提供される。本発明の医薬組成物は、がんを処置することに用いることができる。
【0076】
<その他>
本発明によれば、対象から得られたがん試料中でHER2陽性のがん細胞を検出する方法であって、前記がん試料と本発明の抗体または抗体またはその抗原結合性断片とを接触させることを含む、方法が提供される。この方法では、生体試料中のHER2と抗HER2抗体またはその抗原結合性断片とが複合体を形成したときには、HER2陽性のがん細胞が検出されたと決定することができる。本発明によればまた、本発明の抗体または抗体またはその抗原結合性断片を含むHER2標的化剤によるHER2標的化療法の有効性を決定する方法であって、対象から得られた生体試料と抗HER2抗体またはその抗原結合性断片(好ましくは、本発明の抗体またはその抗原結合性断片)とを接触させることと、生体試料中のHER2と抗HER2抗体またはその抗原結合性断片とが複合体を形成したときには、当該対象に対してはHER2標的化療法が有効であると決定することとを含む、方法が提供され得る。本発明によればまた、本発明の抗体または抗体またはその抗原結合性断片を含むHER2標的化剤によるHER2標的化療法の有効性を決定する方法であって、対象から得られた生体試料と抗HER2抗体またはその抗原結合性断片(好ましくは、本発明の抗体またはその抗原結合性断片)とを接触させ、生体試料中のHER2と抗HER2抗体またはその抗原結合性断片との複合体を形成させることと、当該複合体を検出することとを含み、当該複合体の検出は、当該対象に対してはHER2標的化療法が有効であることを示す、方法が提供される。ここで、複合体形成は、生体試料が生検である場合には、生体試料が生検試料に結合したことに基づいて検出でき、生体試料が液体試料である場合には、ELISAなどの当業者に周知の方法により決定することができる。この態様では、方法は、インビトロの方法であり得る。また、この態様では、方法は、産業上利用可能な方法である。この態様では、方法は、診断の工程を含まないことができる。本発明によれば、この方法において用いるための、本発明のHER2抗体またはその抗原結合性断片を含む診断薬、または診断キットが提供され得る。本発明のHER2抗体またはその抗原結合性断片は標識され、これにより本発明のHER2抗体またはその抗原結合性断片を検出してもよいし、または、本発明のHER2抗体またはその抗原結合性断片を認識する標識二次抗体により、本発明のHER2抗体またはその抗原結合性断片を検出してもよい。したがって、診断キットは、本発明のHER2抗体またはその抗原結合性断片を認識する標識二次抗体をさらに含み得る。標識は、アルカリフォスファターゼや西洋ワサビペルオキシダーゼ等の酵素標識法において用いられる標識であり得、これらに対する発色基質を用いて標識の存在を検出することができる。したがって、診断キットは、発色基質をさらに含んでいてもよい。
【0077】
本発明によれば、上記方法でHER2標的化療法が有効であると決定された対象においてがんを処置することに用いるための、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を含むHER2標的化剤を含む医薬組成物が提供され得る。本発明によればまた、本発明の抗体または抗体またはその抗原結合性断片と反応性であるHER2陽性腫瘍を有する対象においてがんを処置することに用いるための、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を含むHER2標的化剤を含む医薬組成物が提供され得る。本発明のHER2標的化剤は、他の抗がん剤等と併用することができる。
【0078】
本発明によれば、対象においてがんを処置する方法であって、当該対象に本発明の抗体またはその抗原結合性断片を含むHER2標的化剤の治療上有効量を投与することを含む、方法が提供される。本発明によればまた、対象においてがんを処置する方法に用いるための当該対象に本発明の抗体またはその抗原結合性断片を含むHER2標的化剤が提供される。本発明によればさらに、対象においてがんを処置する方法に用いるための医薬の製造における当該対象に本発明の抗体またはその抗原結合性断片を含むHER2標的化剤の使用が提供される。これらの態様において、対象は、上記方法でHER2標的化療法が有効であると決定された対象であり得る。対象はまた、本発明の抗体または抗体またはその抗原結合性断片と反応性であるHER2陽性腫瘍を有する対象であり得る。治療上有効量は、医学的に有意な利益をもたらす医薬成分の量である。
【0079】
本発明によれば、HER2陽性のがんを有する対象において当該がん細胞に抗体またはその抗原結合性断片を結合させる方法であって、当該対象に本発明の抗体またはその抗原結合性断片の有効量を投与することを含む、方法が提供される。本発明によればまた、HER2陽性のがんを有する対象において当該がん細胞に抗体またはその抗原結合性断片を含むHER2標的化剤を結合させる方法であって、当該対象に本発明の抗体またはその抗原結合性断片を含むHER2標的化剤の有効量を投与することを含む、方法が提供される。
【実施例0080】
以下に実施例を記載する。以下の実施例で用いる試薬類は、具体的には実施例中に記載した製品を使用したが、他メーカー(Sigma-Aldrich、富士フィルム和光純薬株式会社、ナカライテスク株式会社、R&D Systems、USCN Life Science INC等)の同等品でも代用可能である。
【0081】
実施例1:CasMab 抗HER2抗体の産生
(1)細胞
ヒト膠芽腫細胞株LN229、ヒト乳がん細胞株SK-BR-3、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)-K1、およびマウス骨髄腫細胞株P3U1はAmerican type culture collection(ATCC)から購入した。正常ヒト表皮角化細胞株HaCaTはコスモバイオから購入した。HER2としては、配列番号:2のアミノ酸配列を有するヒトHER2を用いた。HER2ecとしては、配列番号:3のアミノ酸配列を有するヒトHER2の細胞外ドメイン(分泌型HER2)を用いた。CHO-K1にLipofectamineLTX(Thermo Fisher Scientific, Inc.)を用いてN末にPAタグ(Protein Expr Purif., 95, 240-247, 2014)、C末にRAPタグ(Fujii et al., Monoclon. Antib. Immunodiagn. Immunother. Apr;36(2):68-71, 2017)、およびMAPタグ(Fujii et al., Monoclon. Antib. Immunodiagn. Immunother., 35(6), 293-299. 2016)を付加したHER2タンパク質の発現プラスミド(pCAG/PA-HER2-RAP-MAP;上記のFujii et al.,2016;
図1A参照)をトランスフェクションし、HER2発現細胞を抗PAタグ抗体(Protein Expr Purif., 95, 240-247, 2014)でソーティングした後に薬剤選択下で安定発現細胞株CHO/HER2を樹立した。また、LN229にはNeon transfection system(Thermo Fisher Scientific, Inc.)を用いてN末にPAタグ、C末にRAPタグ、およびMAPタグを付加したHER2タンパク質(PA-HER2-RAP-MAP)またはN末にPAタグ、C末にRAPタグ、およびMAPタグを付加したHER2ec(PA-HER2ec-RAP-MAP;上記のFujii et al.,2016;
図1B参照)の発現プラスミド(pCAG/PA-HER2-RAP-MAPまたはpCAG/PA-HER2ec-RAP-MAP)をそれぞれ導入した。PA-HER2-RAP-MAP発現細胞を抗PAタグ抗体でソーティングした後に薬剤選択下で安定発現細胞株LN229/HER2を作製した。また、HER2ecの高発現細胞株については、RAPタグに対する抗体(PMab-2)とPAタグに対する抗体(NZ-1)のサンドイッチELISAにより、培養上清のスクリーニングを行い、LN229/HER2ec(分泌型)を作製した。CHO-K1、CHO/HER2およびP3U1は基礎培地としてRPMI 1640培地(ナカライテスク株式会社)を使用した。LN229、LN229/HER2ec、LN229/HER2、SK-BR-3およびHaCaTは基礎培地としてダルベッコ改変イーグル培地(ナカライテスク株式会社)を用いた。培地には10%ウシ胎子血清(Thermo Fisher Scientific, Inc.)、ペニシリン(100units/mL)、ストレプトマイシン(100units/mL)およびアンホテリシンB(0.25mg/mL)を添加し、37℃、5%CO 2下で培養した。
【0082】
(2)モノクローナル抗体の作製
免疫動物として使用したBALB/cマウス(4週齢、メス)は、日本クレアから購入した。抗体はCasMab法(Kato and Kaneko, Sci. Rep., 4: 5924, 2014)を用いて作製した。LN229細胞により産生されたHER2ecタンパク質を抗MAPタグ抗体(上記のFujii et al., 2016)でアフィニティ精製した。その後、BALB/cマウスに100μgのHER2ecタンパク質をImject TM Alum(Thermo Fisher Scientific, Inc.)と混合し、初回免疫を行なった。追加免疫(合計3回)として、LN229/HER2ecから精製した100μgのHER2ecタンパク質を毎週腹腔内投与した。その後、脾臓摘出の2日前に最終免疫として100μgのHER2ecを投与した。摘出した脾臓から調製した脾細胞を、PEG1500(Roche Diagnostics)を用いてP3U1と細胞融合させた。細胞融合後はヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン(Thermo Fisher Scientific, Inc.)添加RPMI 1640で培養し、HER2ecを用いて後記するELISA法で培養上清の1次スクリーニングを行った。1次スクリーニングで陽性となったハイブリドーマは限界希釈法によってクローニングを実施した。モノクローナル抗体の調製には無血清培地(Hybridoma-SFM; Thermo Fisher Scientific, Inc.)で培養したハイブリドーマ上清を用い、Protein G Sepharose 4 Fast Flow(GE Healthcare UK Ltd)を使用して精製した。また次いで後記の通り、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット、および免疫組織化学染色を実施した。結果として対照抗体のH 2Mab-119抗体を含む約250個のクローンから、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット、および免疫組織化学染色による絞り込みを経て、がん特異的なHER2を認識すると考えられるがん特異的抗体のクローンが複数得られた。以下、2つのクローンについて、それぞれ、H 2Mab-214、およびH 2Mab-250(以下、合わせて本発明の抗体と略記することがある。)と命名した。当該クローンから得られた抗体をそれぞれH 2Mab-214抗体およびH 2Mab-250抗体と呼ぶ。
【0083】
(3)ELISA
HER2ec(リン酸緩衝食塩水(PBS)で希釈)を96wellプレートに、1μg/mlの濃度で、37℃で30分、固相化した。1%ウシ血清アルブミン(BSA)/0.05% Tween20 in PBS(PBST)を37℃で30分反応させ、ブロッキングを行った。その後、培養上清を、37℃で30分反応させた後、0.05% PBSTを使用して3回の洗浄を行った。さらに、二次抗体(1/2000希釈;Agilent Technologies, Inc.)を37℃で30分反応させ、0.05%PBSTを使用して3回の洗浄を行った。最後に1-Step Ultra TMB-ELISA(Thermo Fisher Scientific, Inc.)で発色させ、マイクロプレートリーダーのOD655nmで吸光度の測定を行った。
【0084】
(4)フローサイトメトリー
0.25% トリプシン/1mM EDTA(ナカライテスク株式会社)を用いて各種接着細胞を回収し、0.1%BSA/PBSで洗浄後、4℃下、上記(2)で作製した抗体(1μg/mL)と反応させた。細胞を0.1% BSA/PBSで洗浄後、オレゴングリーン標識抗マウスIgG抗体(1000倍希釈;Thermo Fisher Scientific, Inc.)と30分反応させた。蛍光強度はEC800 cell Analyzer(Sony Corp.)で測定した。
【0085】
(5)ウェスタンブロット
2-メルカプトエタノールを含むSDSサンプルバッファー(ナカライテスク株式会社)で調整した細胞可溶化液を5-20%ポリアクリルアミドゲル(富士フィルム和光純薬株式会社)で電気泳動し、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜(Merck KGaA)上に転写した。4%スキムミルク加PBSTで、ポリフッ化ビニリデンPDVF膜をブロッキング後、上記(2)で作製した抗体(5μg/mL)または抗b-アクチン抗体(clone AC-15;Sigma-Aldrich Corp.)と反応させた。その後、ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体(1000希釈;Agilent Technologies, Inc.)と反応させた。検出には化学発光試薬 (ImmunoStar LD;富士フィルム和光純薬株式会社)を使用し、Sayaca-Imager(DRC株式会社)でシグナルを検出した。
【0086】
(6)免疫組織化学染色
BioChain社から購入した乳がん組織(カタログ番号:B904111)とBioChain Institute, Inc.から購入した正常乳腺組織(カタログ番号:B803077)を用いた。組織切片をキシレンで脱パラフィン、脱水しクエン酸緩衝液(pH 6.0;Agilent Technologies, Inc.)に浸漬して20分間オートクレーブ処理を行った。次いで上記(2)で作製した抗体(1μg/mL)で室温下において1時間反応させ、その後Envision+ kit,mouse(Agilent Technologies, Inc.)で30分処理した。3,3’-ジアミノベンジジン四塩酸塩で2分処理し発色させ、ヘマトキシリンで対比染色を行なった。染色強度は、上記した2018 ASCO/CAPガイドラインに基づいて0、1+、2+、および3+で評価した。
【0087】
実施例2:CasMab 抗HER2抗体の配列決定
(1)H 2Mab-214抗体、およびH 2Mab-250抗体のアミノ酸配列及び塩基配列の決定
H 2Mab-214ハイブリドーマ細胞およびH 2Mab-250ハイブリドーマ細胞1×10 6からRNeasy Plus mini kit(QIAGEN)を使用してトータルRNAを抽出した。トータルRNA5μgから、SuperScript IV cDNA Syntheses System(Thermo Fisher Scientific, Inc.)を使用してcDNA合成を行った。以下の実験にcDNAを鋳型として使用した。
重鎖(H鎖)の増幅に以下のプライマーを使用した。
InF.HindIII-H2-214H(配列番号4)
InF.HindIII-H2-250H(配列番号5)
InFr.IgG1terNotI(配列番号6)
【0088】
PCR反応にはHotStar HiFidelity DNA polymerase(QIAGEN)を使用した。温度条件は、最初に95℃5分、次に94℃15秒、50℃1分、72℃1分を35サイクル、最後に72℃10分とした。増幅したPCR産物はFastGene Gel/PCR Extraction(日本ジェネティクス株式会社)にて精製した。
【0089】
H 2Mab-214抗体H鎖のPCR産物は、制限酵素HindIIIおよびNotIにて37℃で1時間処理しFastGene Gel/PCR Extraction kit(日本ジェネティクス株式会社)にて精製したpCAG vectorにInFusion-HD cloning kit(タカラバイオ株式会社)を用いてサブクローニングし、ベクタープライマーから塩基配列の確認を行った。
【0090】
H 2Mab-250抗体H鎖のPCR産物は、制限酵素HindIIIおよびNotIにて37℃で1時間処理しFastGene Gel/PCR Extraction kit(日本ジェネティクス株式会社)にて精製したpCAG vectorにInFusion-HD cloning kit(タカラバイオ株式会社)を用いてサブクローニングし、ベクタープライマーから塩基配列の確認を行った。
【0091】
軽鎖(L鎖)の増幅に以下のプライマーを使用した。
InF.HindIII-H2-214L(配列番号7)
InF.HindIII-H2-250L(配列番号8)
InF.mIgCKterNotI(配列番号9)
【0092】
PCR反応にはHotStar HiFidelity DNA polymerase(QIAGEN)を使用した。温度条件は、最初に95℃5分、次に94℃15秒、50℃1分、72℃1分を35サイクル、最後に72℃10分とした。増幅したPCR産物はFastGene Gel/PCR Extraction(日本ジェネティクス株式会社)にて精製した。
【0093】
H 2Mab-214抗体L鎖のPCR産物は、制限酵素HindIIIおよびNotIにて37℃で1時間処理しFastGene Gel/PCR Extraction kit(日本ジェネティクス株式会社)にて精製したpCAG vectorにInFusion-HD cloning kit(タカラバイオ株式会社)を用いてサブクローニングし、ベクタープライマーから塩基配列の確認を行った。
【0094】
H 2Mab-250抗体L鎖のPCR産物は、制限酵素HindIIIおよびNotIにて37℃で1時間処理しFastGene Gel/PCR Extraction kit(日本ジェネティクス株式会社)にて精製したpCAG vectorにInFusion-HD cloning kit(タカラバイオ株式会社)を用いてサブクローニングし、ベクタープライマーから塩基配列の確認を行った。
その結果、H 2Mab-214抗体のH鎖をコードするDNAの塩基配列は配列番号:10に、H 2Mab-214抗体のL鎖をコードするDNAの塩基配列は配列番号:11に示すとおりであった。同様に、H 2Mab-250抗体のH鎖をコードするDNAの塩基配列は配列番号:12に、H 2Mab-250抗体のL鎖をコードするDNAの塩基配列は配列番号:13に示すとおりであった。
【0095】
H 2Mab-214抗体の各塩基配列からアミノ酸配列を予測した。H 2Mab-214抗体のH鎖アミノ酸配列は配列番号:14に、H 2Mab-214抗体のL鎖アミノ酸配列は配列番号:15に示すとおりであった。同様に、H 2Mab-250抗体の各塩基配列からアミノ酸配列を予測した。H 2Mab-250抗体のH鎖アミノ酸配列は配列番号:16に、H 2Mab-250抗体のL鎖アミノ酸配列は配列番号:17に示すとおりであった。
【0096】
(2)H 2Mab-214抗体、H 2Mab-250抗体のCDR(相補性決定領域)の決定
上記(1)で決定した塩基配列より以下のURLのホームページ(abYsis; http://www.abysis.org/abysis/index.html)に提供されているイムノグロブリンの配列予測ソフト(Kabatナンバリング)にてCDRの部位を特定した。
【0097】
その結果、H 2Mab-214抗体の重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号:18~20及び配列番号:21~23に示されるように特定された。同様に、H 2Mab-250抗体の重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号:24~26及び配列番号:27~29に示されるように特定された。
【0098】
実施例3:CasMab 抗HER2抗体の評価
(1)フローサイトメトリー
正常ヒト表皮角化細胞株HaCaT(コスモバイオ)、および乳がん細胞株SK-BR-3(ATCC)に対し、以下の方法でフローサイトメトリー解析を行った。
0.25%トリプシン/1mM EDTA(ナカライテスク株式会社)を用いて各種接着細胞を回収し、0.1%BSA/PBSで洗浄後、4℃下で各種抗HER2モノクローナル抗体(対照抗体(H 2Mab-119抗体;Monoclon. Antib. Immunodiagn. Immunother., vol.36(6), 287-290, 2017参照)、H 2Mab-214抗体、およびH 2Mab-250抗体、各培養上清)と反応させた。細胞を0.1%BSA/PBSで洗浄後、オレゴングリーン標識抗マウスIgG抗体(1000倍希釈;Thermo Fisher Scientific, Inc.)と30分反応させた。蛍光強度はEC800 cell Analyzer(Sony Corp.)で測定した。
その結果、
図2で示すように、対照抗体(H 2Mab-119抗体)は、がん細胞株であるSK-BR-3に反応するだけでなく、正常細胞株であるHaCaTに中程度の反応性を示した。一方、本発明の抗体は、がん細胞株であるSK-BR-3には中程度の反応性を示したが、正常細胞株であるHaCaTには全く反応しなかった。このことから、本発明の抗体は、がん特異性があることが示された。
【0099】
(2)免疫組織化学染色
BioChain社より入手したHER2陰性乳がんの組織マイクロアレイ(カタログ番号:B904111)に対し、以下の方法で免疫組織化学染色を行った。
組織切片をキシレンで脱パラフィン、脱水しクエン酸緩衝液(pH 6.0; Agilent Technologies, Inc.)に浸漬して20分間オートクレーブ処理を行った。次いで本発明の抗体(1μg/mL)で室温下において1時間反応させ、その後Envision+kit(Agilent Technologies, Inc.)で30分処理した。3,3’-ジアミノベンジジン四塩酸塩で2分処理し発色させ、ヘマトキシリンで対比染色を行なった。染色強度は、上述の通りに0、1+、2+、3+で評価した。
その結果、下記
図3に示すように、対照抗体(H 2Mab-119抗体)は、免疫組織化学染色法(IHC)を用いてがん細胞のHER2発現状況を調べる診断薬にてHER2陰性と判定された乳がん(HER2陰性乳がん)組織に対し、陰性を示す一方、本発明の抗体は、HER2陰性乳がん組織に対し、1+~3+の陽性像を示すコアが存在した。このことから、本発明の抗体は、免疫組織染色において高い感度を示すことがわかった。
【0100】
実施例4:CasMab 抗HER2抗体のエピトープ解析(1)
本発明の抗体は常法により作製した欠失変異体(WT-dN23(ヒトHER2(配列番号:2)のN末からアミノ酸番号22までの領域を欠失させた変異体)、dN200(ヒトHER2(配列番号:2)のN末からアミノ酸番号199までの領域を欠失させた変異体)、dN300(ヒトHER2(配列番号:2)のN末からアミノ酸番号299までの領域を欠失させた変異体)、dN400(ヒトHER2(配列番号:2)のN末からアミノ酸番号399までの領域を欠失させた変異体)、dN500(ヒトHER2(配列番号:2)のN末からアミノ酸番号499までの領域を欠失させた変異体)およびdN600(ヒトHER2(配列番号:2)のN末からアミノ酸番号599までの領域を欠失させた変異体))のすべてに反応したことから、ヒトHER2(配列番号:2)のアミノ酸番号600-652のアミノ酸配列(配列番号:30)を認識しているものと予想された。一方、対照抗体(H 2Mab-119抗体)はWT-dN23には反応し、dN200、dN300、dN400、dN500およびdN600には反応しなかったことから、ヒトHER2のアミノ酸番号23-199までのアミノ酸領域を認識しているものと予想された。なお、本実施例および以降の実施例におけるアミノ酸番号は、配列番号2のアミノ酸配列におけるアミノ酸の位置として示される。
【0101】
次に、HER2ec(23-652)と、HER2ecのそれぞれ、23-42、33-52、43-62、53-72、63-82、73-92、83-102、93-112、103-122、113-132、123-142、133-152、143-162、153-172、163-182、173-192、183-202、193-212、203-222、213-232、223-242、233-252、243-262、253-272、263-282、273-292、283-302、293-312、303-322、313-332、323-342、333-352、343-362、353-372、363-382、373-392、383-402、393-412、403-422、413-432、423-442、433-452、443-462、453-472、463-482、473-492、483-502、493-512、503-522、513-532、523-542、533-552、543-562、553-572、563-582、573-592、583-602、593-612、603-622、613-632、623-642、633-652のアミノ酸領域からなる合成ペプチドに対する本発明の抗体の反応性をELISA法で確認した(ここで上記アミノ酸番号は、配列番号2のアミノ酸配列におけるアミノ酸番号を示す)。すなわち、各ペプチドを96ウェルプレートに、10μg/mlの濃度で、37℃で30分、固相化した。1% BSA/0.05% PBSTを37℃で30分反応させ、ブロッキングを行った。その後、10μg/mlの本発明の抗体を、37℃で30分反応させた後、0.05%PBSTを使用して3回の洗浄を行った。さらに、二次抗体(1/2000希釈;Agilent Technologies, Inc.)を37℃で30分反応させ、0.05%PBSTを使用して3回の洗浄を行った。最後に1-Step Ultra TMB-ELISA(Thermo Fisher Scientific, Inc.)で15分間発色させ、マイクロプレートリーダー(Bio-Rad)のOD655nmで吸光度の測定を行った。
【0102】
その結果、H 2Mab-214抗体およびH 2Mab-250抗体は603~622ペプチドと613~632ペプチドに強く反応したことから、本発明の抗体のエピトープはヒトHER2の603-622のアミノ酸領域(配列番号:31)、ヒトHER2の613~632のアミノ酸領域(配列番号:32)、特に613~622のアミノ酸領域(配列番号:33)であると考えられた。
【0103】
そこで、HER2ecをポジティブコントロールとし、ヒトHER2の603~622ペプチドの20個のアミノ酸それぞれを1つずつアラニンに置換した20種類の変異型ペプチドに対する本発明の抗体の反応性をELISA法で確認した。
【0104】
その結果、H 2Mab-214抗体に関して、ヒトHER2の603~622のアミノ酸においてK615とF616をそれぞれアラニンに置換したK615AペプチドとF616Aペプチドに対する反応性が野生型HER2ペプチド(ヒトHER2の603~622のアミノ酸)に対する反応性よりも弱かったことから、K615とF616の2つのアミノ酸およびその周辺がH 2Mab-214抗体のエピトープであることがわかった。
また、H 2Mab-250抗体に関して、ヒトHER2のW614をアラニンに置換したW614Aペプチド対する反応性が野生型HER2ペプチドに対する反応性よりも弱かったことから、W614のアミノ酸およびその周辺がH 2Mab-250抗体のエピトープであることがわかった。
【0105】
H 2Mab-214抗体およびH 2Mab-250抗体のエピトープについてさらに詳細に調べた。614-619、614-620、614-621、614-622、613-618、613-619、613-620、613-621、613-622、612-618、612-619、612-620、612-621、612-622、611-618、611-619、611-620、611-621、611-622、610-618、610-619、610-620、610-621、610-622、609-618、609-619、609-620、609-621、および609-622のヒトHER2のアミノ酸領域からなる合成ペプチド(各種deletion mutant)に対する本発明の抗体の反応性をELISA法で確認した(ここで上記アミノ酸番号は、配列番号2のアミノ酸配列におけるアミノ酸番号を示す)。ELISAは上記と同様に行った。一次抗体としては、本発明の抗体をそれぞれ50μL/ウェルで用い、二次抗体としては、ウサギ抗マウスIgG/HRP(Agilent Technologies, Inc.、1%BSA/PBS-T、1/2,000希釈、50μL/ウェル)を用いた。検出は、ELISA POD基質TMBキット(ナカライテスク株式会社)を用いた。iMark Microplate Readerを用いてOD655nmの吸光度を測定した。結果は、
図4に示される通りであった。
図4では、アミノ酸番号の前に「p」が付されている。
図4中、P.C.は陽性対照を示し、N.C.は陰性対照を示す。
【0106】
図4に示されるように、H 2Mab-214抗体は、612~618のアミノ酸領域(配列番号:35)からなるペプチドに対しては、強い反応性を示し、612~618のアミノ酸領域を含むより長いペプチドと同等の反応性を示した。また、
図4に示されるように、H 2Mab-250抗体は、611~618のアミノ酸領域(配列番号:34)からなるペプチドに対しては、強い反応性を示し、611~618のアミノ酸領域を含むより長いペプチドと同等の反応性を示した。
【0107】
さらに、
図4に示されるように、OD値が0.1を超えるものについて、反応性があると評価すると、H 2Mab-214抗体およびH 2Mab-250抗体のいずれも613~619のアミノ酸領域(配列番号:36)からなるペプチドに対して反応性を示した。しかし、その反応性は、612~618のアミノ酸領域(配列番号:35)からなるペプチドや、611~618のアミノ酸領域(配列番号:34)からなるペプチドに対する反応性よりも弱いものであることから、本発明の抗体のHER2の部分ペプチドへの反応性には、612番目のアミノ酸(および/または611番目のアミノ酸)の影響が強いことが明らかになった。
【0108】
実施例5:CasMab 抗HER2抗体のエピトープ解析(2)
(1)フローサイトメトリー
アラニン置換変異体を用いたフローサイトメトリー(FACS)解析にて、H 2Mab-214抗体またはH 2Mab-250抗体のエピトープ解析を行った。目的の位置のアミノ酸をアラニンに置換したHER2(配列番号:2のアミノ酸配列を有するヒトHER2)遺伝子は、QuikChange Lightning Site-Directed Mutagenesis Kit(Agilent Technologies, Inc.)を使用して作製し、塩基配列の決定により変異導入の確認を行った。目的のアラニン置換変異の入ったHER2遺伝子は、野生型HER2遺伝子と同様に、N末にPAタグ、C末にRAPタグおよびMAPタグを付加し、発現ベクターに組み込んだ(実施例1参照)。このプラスミドをNeon Transfection system(Thermo Fisher Scientific, Inc.)を用いてCHO-K1細胞に遺伝子導入し、抗PA抗体によるセルソーティング(セルソーターSA3800、Sony Corp.)と、その後、ゼオシン(0.5 mg/mL、InVivogen社)による薬剤選択により安定発現細胞株を樹立した。
【0109】
目的の位置のアミノ酸をアラニンに置換したHER2遺伝子を強制的に安定発現したCHO-K1細胞を、0.25%トリプシン/1mM EDTA溶液(ナカライテスク株式会社)を用いて、培養皿より回収し、0.1%BSA(ナカライテスク株式会社)/PBSにて洗浄した。1次抗体(H 2Mab-214抗体またはH 2Mab-250抗体)を0.1%BSA/PBSにて10 μg/mLに調整し、回収した細胞に加え、混合、氷上で30分間反応させた。その後、0.1% BSA/PBSにて洗浄した。引き続き、蛍光標識2次抗体(1/1000希釈、anti-Mouse IgG Alexa Fluor 488,Thermo Fisher Scientific, Inc.)を0.1% BSA/PBSにて調整し、氷上で30分間、反応させた。再び0.1%BSA/PBSにて洗浄した。抗体の反応性をセルアナライザーEC800(Sony Corp.)にて検出した。
【0110】
図5に、PAタグに対する抗体(NZ-1)、H 2Mab-214抗体、H 2Mab-250抗体、陽性対照抗体(トラスツズマブ)のフローサイトメトリー(FACS解析)の結果を示す。
【0111】
その結果、
図5に示されるように、H 2Mab-214は、HER2-K615AおよびHER2-F616Aに対しては有意な結合を示さず、H 2Mab-250は、HER2-W614Aに対しては有意な結合を示さなかった。これに対して、NZ-1抗体ではいずれのHER2の点変異体も検出したことから、各点変異体の発現量は十分であったことが明らかである。このことから、当該エピトープ(W614、K615、F616)を認識する本発明の抗体は、非がん細胞上に発現するHER2には全く反応せず、がん細胞上に発現するHER2に対して特異的に反応し得ることが示唆された。また、
図5に示されるように、トラスツズマブはいずれの点変異体に対しても有意な結合を示した。このことは、トラスツズマブは、本発明の抗体と同様に、HER2のドメインIVを認識する抗体であるにもかかわらず、当該ドメインIVのうち、本発明の抗体が認識するエピトープ(W614、K615、F616)を認識しないことを示唆する。したがって、トラスツズマブとは異なり、当該エピトープ(W614、K615、F616)を認識する特性が、がん細胞上のHER2の特異的な認識に関与していることが明らかである。
【0112】
(2)Biacore測定
Biacore X100 (Cytiva)を用いて、H 2Mab-214抗体またはH 2Mab-250抗体と各種ペプチドとの相互作用解析を行った。ペプチドはヒトHER2の603~622番目のアミノ酸配列(p603-622)、p603-622の1アミノ酸をアラニンに置換したもの(G603A、V604A、K605A、P606A、D607A、L608A、S609A、Y610A、M611A、P612A、I613A、W614A、K615A、F616A、P617A、D618A、E619A、E620A、G621A)、p603-622の1アミノ酸をグリシンに置換したもの(A622G)、p603-622のアミノ酸の一部分を欠損したHER2の部分ペプチド(p614-619、p614-620、p614-621、p614-622、p613-618、p613-619、p613-620、p613-621、p613-622、p612-618、p612-619、p612-620、p612-621、p612-622、p611-618、p611-619、p611-620、p611-621、p611-622、p610-618、p610-619、p610-620、p610-621、p610-622、p609-618、p609-619、p609-620、p609-621、p609-622)を用いた。上記ペプチドそれぞれをH 2Mab-214抗体またH 2Mab-250抗体を酢酸バッファー(pH4.0)で希釈し、アミンカップリング法によってCM5チップに固定化した。未反応のNHSエステルはエタノールアミンによってブロッキングした。H 2Mab-214抗体またはH 2Mab-250抗体を固定化したCM5チップに各種ペプチドを添加することで相互作用を測定した。ランニングバッファーは0.005% (v/v) Tween 20を含むPBS、または0.005% (v/v) Tween 20および1.19% DMSOを含むPBS、再生バッファーはグリシン-HCl(pH1.5)を用いた。すべての測定は25℃で行った。測定データはBIAevaluation software (Cytiva)の1:1 bindingモデルを用いて解析を行い、結合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)および解離定数(K D)を求めた。kaまたはkdが決定できなかったものに関してはBIAevaluation software (Cytiva)の平衡値解析法を用いてKDを求めた。
【0113】
結果を表1および表2にH 2Mab-214抗体、表3および表4にH 2Mab-250抗体の、それぞれBiocore測定による結合親和性を示す。なお、表2および4中のアミノ酸番号は、使用したアミノ酸領域を示す。
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
実施例4および実施例5の結果から、各種アラニン置換変異体と各種deletion mutantにおける本発明の抗体の結合親和性が相関したことから、K615とF616の2つのアミノ酸およびその周辺(I613、W614)がH 2Mab-214抗体のエピトープであることがわかった。
【0119】
また、W614のアミノ酸およびその周辺(I613、K615、F616、P617)がH 2Mab-250抗体のエピトープであることがわかった。
【0120】
実施例6:更なる抗体群
本実施例では、更なる抗HER2抗体の取得を試みた。
マウス
6週齢のBALB/cマウスを日本クレアから購入した。
【0121】
免疫原
免疫原として、HER2の604-622アミノ酸(19アミノ酸)のC末にCysを加えた20アミノ酸(HER2_604-622C; NH2-VKPDLSYMPIWKFPDEEGAC- COOH;配列番号37)を合成し(ユーロフィン)、常法によりKLHを付加した。ペプチドの精製純度は90%以上とした。
【0122】
免疫法
HER2_604-622Cを100 μg/mouse(100 μl)とImjectAlum (Thermo Fisher Scientific, Inc.)100 μlを混ぜ、1回目の免疫を行なった。その後、2回目、3回目、4回目、5回目の免疫として、100 μg/マウス(100 μl)を毎週実施した(ImjectAlumなし)。5回目の免疫の2日後に、マウスから摘出した脾臓から脾細胞を常法により分離し、脾細胞:マウスミエローマ細胞(P3U1)=10:1の割合で細胞融合を行なった。細胞融合については、常法によりPEG1500(Roche Diagnostics)を用いて行なった。
【0123】
ハイブリドーマの培養
HAT(Thermo Fisher Scientific, Inc.)を入れた10% FBS(Thermo Fisher Scientific, Inc.) in RPMI(ナカライテスク株式会社)を用い、96 well plateにハイブリドーマを播種した。
【0124】
スクリーニング
6日後、ELISAによりスクリーニングを行なった。ELISAは以下の通りに実施した。HER2p604-622CはDMSOで10 mg/mLに溶解した後、PBSで希釈した(1 μg/ml)。ペプチドの固相化は、HER2p604-622Cを50 ng/well (50 μL/well)をプレートに加え、30分、37℃でインキュベートした。ブロッキングは、1% BSA/PBS-Tween(0.05%)を100 μL/wellで加え、30分、37℃でインキュベートした。ハイブリドーマの培養上清を50 μlずつ加え、30分、37℃でインキュベートした。2次抗体は、anti-mouse Immunoglobulins/HRP (Agilent, 1% BSA/PBS-0.05% Tweenで1/2000希釈)を50 μlずつ加え、30分、37℃でインキュベートした。発色は、ELISA POD基質TMBキット(ナカライテスク株式会社)を50 μlずつ加え、10分、室温でインキュベートした。測定は、15分、iMarkMicroplate Reader (OD 655 nm)で行なった。
【0125】
シングルセルクローニング
陽性wellについて、シングルセルクローニングを行なった。目視によりクローンを確認し、ELISAにより陽性クローンを樹立した。クローン名をH 2Mab-279~299と命名した。
【0126】
サブクラスの決定
常法によりサブクラスを決定した(H 2Mab-214,250と同様)。
【0127】
【0128】
実施例1(1)の通りに、各抗体の精製を行なった。精製カラムには、Ab-Capcher TM(プロテノバ)を使用した。精製した抗体をエピトープ解析、FACS、および免疫組織化学染色に供した。FACSは、実施例1(4)に記載の通りに行い、免疫組織化学染色は、実施例1(6)に記載の通りに行った。エピトープ解析は、実施例4に記載の通り、ELISA法で行った。
【0129】
エピトープ解析では、アラニンスキャンによりアラニンに変化させたペプチドに対して試験した抗体が結合親和性を低下させるか消失させた場合に、当該アラニンに変化させたアミノ酸を抗体の推定エピトープと決定した。エピトープ解析の結果は、
図6A~6Eに示される通りであった。なお、
図6A~6Eでは、推定エピトープを下線で示した。
図6A~6Eに示されるように、上記抗体クローンの推定エピトープは、いずれもW614、K615、およびF616の領域に認められた。
【0130】
FACS解析では、図中に示される生細胞と各抗体クローンとの結合性を試験した。中皮腫細胞株としてMet5A細胞を用い、ヒト表皮角化細胞株としてHaCaT細胞を用い、非腫瘍上皮細胞株としてMCF10A-IIIを用い、ヒト類表皮がん細胞株としてA431を用い、乳がん細胞株としてSK-BR-3を用いた。結果は、
図7A~7Gに示される通りであった。
図7A~7Gに示されるように、配列番号:37のアミノ酸を免疫原としたほとんどの細胞クローンで、正常細胞に対しては結合せず、陽性のがん細胞に対しては結合性を示した。
【0131】
免疫組織化学染色の結果は、
図8A~8Fに示される通りであった。
図8A~8Fに示されるように、配列番号:37のアミノ酸を免疫原としたいずれの抗体クローンもがん組織には強く反応したが、正常組織に対して反応はほとんど認められなかった。
【0132】
抗体遺伝子クローニング
実施例2に記載されるように抗体遺伝子クローニング、重鎖可変領域および軽鎖可変領域の推定、およびCDR推定を実施した。リコンビナント抗体の活性はFACSにより確認できた。
【0133】
配列番号:14~17および39~80のアミノ酸配列における重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸番号はそれぞれ以下表の通りである。推定されたCDRの配列は、配列番号:81~206にそれぞれ示されている。
【表6】
【0134】
配列番号1:ヒトc-erb-B-2(HER2)塩基配列(Genebank受託番号:X03363)
配列番号2:ヒトc-erb-B-2(HER2)アミノ酸配列(UniprotKB ID:P04626)
配列番号3:ヒトc-erb-B-2(HER2)ec(細胞外ドメイン分泌型)アミノ酸配列(23-652aa)
配列番号4:プライマー(InF.HindIII-H2-214H)
配列番号5:プライマー(InF.HindIII-H2-250H)
配列番号6:プライマー(InFr.IgG1terNotI)
配列番号7:プライマー(InF.HindIII-H2-214L)
配列番号8:プライマー(InF.HindIII-H2-250L)
配列番号9:プライマー(InF.mIgCKterNotI)
配列番号10:H 2Mab-214抗体のH鎖をコードするDNAの塩基配列
配列番号11:H 2Mab-214抗体のL鎖をコードするDNAの塩基配列
配列番号12:H 2Mab-250抗体のH鎖をコードするDNAの塩基配列
配列番号13:H 2Mab-250抗体のL鎖をコードするDNAの塩基配列
配列番号14:H 2Mab-214抗体のH鎖アミノ酸配列
配列番号15:H 2Mab-214抗体のL鎖アミノ酸配列
配列番号16:H 2Mab-250抗体のH鎖アミノ酸配列
配列番号17:H 2Mab-250抗体のL鎖アミノ酸配列
配列番号18:H 2Mab-214抗体のH鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号19:H 2Mab-214抗体のH鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号20:H 2Mab-214抗体のH鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号21:H 2Mab-214抗体のL鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号22:H 2Mab-214抗体のL鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号23:H 2Mab-214抗体のL鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号24:H 2Mab-250抗体のH鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号25:H 2Mab-250抗体のH鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号26:H 2Mab-250抗体のH鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号27:H 2Mab-250抗体のL鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号28:H 2Mab-250抗体のL鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号29:H 2Mab-250抗体のL鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号30:配列番号2のヒトHER2のアミノ酸番号600~652のアミノ酸配列
配列番号31:配列番号2のヒトHER2のアミノ酸番号603~622のアミノ酸配列
配列番号32:配列番号2のヒトHER2のアミノ酸番号613~632のアミノ酸配列
配列番号33:配列番号2のヒトHER2のアミノ酸番号613~622のアミノ酸配列
配列番号34:配列番号2のヒトHER2のアミノ酸番号611~618のアミノ酸配列
配列番号35:配列番号2のヒトHER2のアミノ酸番号612~618のアミノ酸配列
配列番号36:配列番号2のヒトHER2のアミノ酸番号613~619のアミノ酸配列
配列番号37:HER2p604-622Cのアミノ酸配列
配列番号38:scFvで用いられるリンカーの一例
配列番号39:H 2Mab-279抗体のH鎖アミノ酸配列
配列番号40:H 2Mab-279抗体のL鎖アミノ酸配列
配列番号41:H 2Mab-280抗体のH鎖アミノ酸配列
配列番号42:H 2Mab-280抗体のL鎖アミノ酸配列
配列番号43:H 2Mab-281抗体のH鎖アミノ酸配列
配列番号44:H 2Mab-281抗体のL鎖アミノ酸配列
配列番号45:H 2Mab-282抗体のH鎖アミノ酸配列
配列番号46:H 2Mab-282抗体のL鎖アミノ酸配列
配列番号47:H 2Mab-283抗体のH鎖アミノ酸配列
配列番号48:H 2Mab-283抗体のL鎖アミノ酸配列
配列番号49:H 2Mab-284抗体のH鎖アミノ酸配列
配列番号50:H 2Mab-284抗体のL鎖アミノ酸配列
配列番号51:H 2Mab-285抗体のH鎖アミノ酸配列
配列番号52:H 2Mab-285抗体のL鎖アミノ酸配列
配列番号53:H 2Mab-286抗体のH鎖アミノ酸配列
配列番号54:H 2Mab-286抗体のL鎖アミノ酸配列
配列番号55:H 2Mab-287抗体のH鎖アミノ酸配列
配列番号56:H 2Mab-287抗体のL鎖アミノ酸配列
配列番号57:H 2Mab-288抗体のH鎖アミノ酸配列
配列番号58:H 2Mab-288抗体のL鎖アミノ酸配列
配列番号59:H 2Mab-289抗体のH鎖アミノ酸配列
配列番号60:H 2Mab-289抗体のL鎖アミノ酸配列
配列番号61:H 2Mab-290抗体のH鎖アミノ酸配列
配列番号62:H 2Mab-290抗体のL鎖アミノ酸配列
配列番号63:H 2Mab-291抗体のH鎖アミノ酸配列
配列番号64:H 2Mab-291抗体のL鎖アミノ酸配列
配列番号65:H 2Mab-292抗体のH鎖アミノ酸配列
配列番号66:H 2Mab-292抗体のL鎖アミノ酸配列
配列番号67:H 2Mab-293抗体のH鎖アミノ酸配列
配列番号68:H 2Mab-293抗体のL鎖アミノ酸配列
配列番号69:H 2Mab-294抗体のH鎖アミノ酸配列
配列番号70:H 2Mab-294抗体のL鎖アミノ酸配列
配列番号71:H 2Mab-295抗体のH鎖アミノ酸配列
配列番号72:H 2Mab-295抗体のL鎖アミノ酸配列
配列番号73:H 2Mab-296抗体のH鎖アミノ酸配列
配列番号74:H 2Mab-296抗体のL鎖アミノ酸配列
配列番号75:H 2Mab-297抗体のH鎖アミノ酸配列
配列番号76:H 2Mab-297抗体のL鎖アミノ酸配列
配列番号77:H 2Mab-298抗体のH鎖アミノ酸配列
配列番号78:H 2Mab-298抗体のL鎖アミノ酸配列
配列番号79:H 2Mab-299抗体のH鎖アミノ酸配列
配列番号80:H 2Mab-299抗体のL鎖アミノ酸配列
配列番号81:H 2Mab-279抗体のH鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号82:H 2Mab-279抗体のH鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号83:H 2Mab-279抗体のH鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号84:H 2Mab-279抗体のL鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号85:H 2Mab-279抗体のL鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号86:H 2Mab-279抗体のL鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号87:H 2Mab-280抗体のH鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号88:H 2Mab-280抗体のH鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号89:H 2Mab-280抗体のH鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号90:H 2Mab-280抗体のL鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号91:H 2Mab-280抗体のL鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号92:H 2Mab-280抗体のL鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号93:H 2Mab-281抗体のH鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号94:H 2Mab-281抗体のH鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号95:H 2Mab-281抗体のH鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号96:H 2Mab-281抗体のL鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号97:H 2Mab-281抗体のL鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号98:H 2Mab-281抗体のL鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号99:H 2Mab-282抗体のH鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号100:H 2Mab-282抗体のH鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号101:H 2Mab-282抗体のH鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号102:H 2Mab-282抗体のL鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号103:H 2Mab-282抗体のL鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号104:H 2Mab-282抗体のL鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号105:H 2Mab-283抗体のH鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号106:H 2Mab-283抗体のH鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号107:H 2Mab-283抗体のH鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号108:H 2Mab-283抗体のL鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号109:H 2Mab-283抗体のL鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号110:H 2Mab-283抗体のL鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号111:H 2Mab-284抗体のH鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号112:H 2Mab-284抗体のH鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号113:H 2Mab-284抗体のH鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号114:H 2Mab-284抗体のL鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号115:H 2Mab-284抗体のL鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号116:H 2Mab-284抗体のL鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号117:H 2Mab-285抗体のH鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号118:H 2Mab-285抗体のH鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号119:H 2Mab-285抗体のH鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号120:H 2Mab-285抗体のL鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号121:H 2Mab-285抗体のL鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号122:H 2Mab-285抗体のL鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号123:H 2Mab-286抗体のH鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号124:H 2Mab-286抗体のH鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号125:H 2Mab-286抗体のH鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号126:H 2Mab-286抗体のL鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号127:H 2Mab-286抗体のL鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号128:H 2Mab-286抗体のL鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号129:H 2Mab-287抗体のH鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号130:H 2Mab-287抗体のH鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号131:H 2Mab-287抗体のH鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号132:H 2Mab-287抗体のL鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号133:H 2Mab-287抗体のL鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号134:H 2Mab-287抗体のL鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号135:H 2Mab-288抗体のH鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号136:H 2Mab-288抗体のH鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号137:H 2Mab-288抗体のH鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号138:H 2Mab-288抗体のL鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号139:H 2Mab-288抗体のL鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号140:H 2Mab-288抗体のL鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号141:H 2Mab-289抗体のH鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号142:H 2Mab-289抗体のH鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号143:H 2Mab-289抗体のH鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号144:H 2Mab-289抗体のL鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号145:H 2Mab-289抗体のL鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号146:H 2Mab-289抗体のL鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号147:H 2Mab-290抗体のH鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号148:H 2Mab-290抗体のH鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号149:H 2Mab-290抗体のH鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号150:H 2Mab-290抗体のL鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号151:H 2Mab-290抗体のL鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号152:H 2Mab-290抗体のL鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号153:H 2Mab-291抗体のH鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号154:H 2Mab-291抗体のH鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号155:H 2Mab-291抗体のH鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号156:H 2Mab-291抗体のL鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号157:H 2Mab-291抗体のL鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号158:H 2Mab-291抗体のL鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号159:H 2Mab-292抗体のH鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号160:H 2Mab-292抗体のH鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号161:H 2Mab-292抗体のH鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号162:H 2Mab-292抗体のL鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号163:H 2Mab-292抗体のL鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号164:H 2Mab-292抗体のL鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号165:H 2Mab-293抗体のH鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号166:H 2Mab-293抗体のH鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号167:H 2Mab-293抗体のH鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号168:H 2Mab-293抗体のL鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号169:H 2Mab-293抗体のL鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号170:H 2Mab-293抗体のL鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号171:H 2Mab-294抗体のH鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号172:H 2Mab-294抗体のH鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号173:H 2Mab-294抗体のH鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号174:H 2Mab-294抗体のL鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号175:H 2Mab-294抗体のL鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号176:H 2Mab-294抗体のL鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号177:H 2Mab-295抗体のH鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号178:H 2Mab-295抗体のH鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号179:H 2Mab-295抗体のH鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号180:H 2Mab-295抗体のL鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号181:H 2Mab-295抗体のL鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号182:H 2Mab-295抗体のL鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号183:H 2Mab-296抗体のH鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号184:H 2Mab-296抗体のH鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号185:H 2Mab-296抗体のH鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号186:H 2Mab-296抗体のL鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号187:H 2Mab-296抗体のL鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号188:H 2Mab-296抗体のL鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号189:H 2Mab-297抗体のH鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号190:H 2Mab-297抗体のH鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号191:H 2Mab-297抗体のH鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号192:H 2Mab-297抗体のL鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号193:H 2Mab-297抗体のL鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号194:H 2Mab-297抗体のL鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号195:H 2Mab-298抗体のH鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号196:H 2Mab-298抗体のH鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号197:H 2Mab-298抗体のH鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号198:H 2Mab-298抗体のL鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号199:H 2Mab-298抗体のL鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号200:H 2Mab-298抗体のL鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号201:H 2Mab-299抗体のH鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号202:H 2Mab-299抗体のH鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号203:H 2Mab-299抗体のH鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号204:H 2Mab-299抗体のL鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号205:H 2Mab-299抗体のL鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号206:H 2Mab-299抗体のL鎖CDR3のアミノ酸配列
産業上の利用可能性
【0135】
本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、がんの検出および/または処置に有用である。