(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002045
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】マンション、ホテル、ビルなどの堅固な建物室内に設置する津波等避難シェルター
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101001
(22)【出願日】2022-06-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】509270904
【氏名又は名称】冨田 穣
(72)【発明者】
【氏名】冨田 盟子
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA07
2E139AB25
(57)【要約】
【課題】
南海トラフ巨大地震による津波は、1~5分で到達し10m、20mの高さである。避難所まで逃げる時間猶予がない。死者も32万人以上で、それは真冬の真夜中とされ、その時、人は家の中で熟睡中である。
【解決手段】
マンション、ホテル、ビルは堅固な建物であり、波力でガラス窓が突破されると、むしろ建物の横力が抜け転倒しない。建物に浮力も働かない。その部屋は最短時間の最適避難場所といえる。壁を最大に利用する。生存必要空気量の体積の袋状の、天井高さの立筒をシェルターとする。筒材は防水性の強化プラスチックで、その4隅を縦枠材で保護した小型シェルターを部屋の角隅に設置すれば、アンカー不要で転倒せず、漂流物の直撃を回避できる。コンパクト化も可能。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンション、ホテル、ビルなどの堅固な建物室内に設置する少人数対応、小型の立筒形の津波等避難シェルターであって、筒体内部に人数分の水中での生存必要空気量を確保する空間を有し、筒材は、気密性、強度に優れたガラス繊維、炭素繊維等の強化プラスチック、不織布あるいは鋼板、板材等と内部側にポリ袋などのプラスチック袋などとの重ね合わせなどから成り、筒体は下部に出入り口となる開口部、またはまくり上げて出入りできる蛇腹式開口部を設け、上部は閉じた中空の袋状の構造とし、外枠として、高さが床から概天井までとする縦枠材を筒体のコーナー部に設け形状保持とし、津波による内部水位の上昇や漂流物の侵入に備え脚立、踏み台などを用意することとし、前記シェルターを部屋の壁面沿いや隅角部に設置することを特徴とするマンション、ホテル、ビルなどの室内設置の津波等避難シェルター。
【請求項2】
前記筒体コーナー部の縦枠材の頂点部および底辺部を連結する面材または水平材を設けることで、立筒形の形状保持、漂流物衝突の衝撃緩和を図り、壁にアンカーが取れなくても縦枠材と面材または水平材とでなる回転の長さとなる対角線長が、床と天井との空間高さを上回ること、すなわち回転時に部屋の天井壁につかえることを利用して転倒防止を図るとしたことを特徴とする請求項1に記載のマンション、ホテル、ビルなどの室内設置の津波等避難シェルター。
【請求項3】
前記シェルターの壁面からの突出量を減らしコンパクトにすることとし、壁面沿いの筒材の延長を増やし扁平として突出量を減らすか、または筒材を折りたたみ方式とし、折りたたみ方式では筒材の側面部は折りたたみ易さに優れ、筒材の頂点部は伸縮性に優れたものとし、折りたたむ側の縦枠材間の水平材は、折りたたみ部を拡張した後に水平材を縦枠材間に架け渡す後付け方式とし、折りたたまない側の対面の辺にはあらかじめ縦枠材を連結する水平材を設けることで、立筒形の形状保持、漂流物衝突の衝撃緩和を図り、転倒に対して、壁にアンカーが取れない場合はコンパクトとするにしても壁からの突出量を0.3m以上に確保し、アンカーが取れる場合は突出量を0.1mまでコンパクトにできるとしたことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のマンション、ホテル、ビルなどの室内設置の津波等避難シェルター。
【請求項4】
前記シェルターの断面内側に、空気漏れに対してさらなる安全として筒体と離隔して空気袋体を設置するもので、頂点部から出入り口頂点高さまたは床まで延長した長さの、上を閉じたポリ袋、ビニール袋、ゴム袋などの気密性、柔軟性に優れた薄い袋体を設置することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマンション、ホテル、ビルなどの室内津波等避難シェルター。
【請求項5】
前記シェルターの内部空気が新鮮でなくなることの対策として、片端を筒体外側の部屋の天井部とし、反対側の片端を前記袋体、筒体の内側とし、中間の筒体下部端でU字型に折り返し、内部の前記袋体、筒体の頂点部近傍でさらに折り返し、下方に延長し口元に届くとしたゴムホース、チューブなどを配置することで、部屋天井部の新鮮な空気を吸引できるとしたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のマンション、ホテル、ビルなどの室内津波等避難シェルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンション、ホテル、ビルなどの堅固な建物室内に設置する小型の津波等避難シェルターに関する。
【背景技術】
【0002】
来る南海トラフ巨大地震では最大34.4mの津波が最短1~5分で到達する。死者数は32万人と予測され、真冬の真夜中深夜の時間帯が最大被害である。10m、20mの防潮堤ができるのはいつのことか。津波避難タワーまでは遠い。ともかく逃げ切ることとされるが、0.3mの津波でも足元をすくわれ、なすすべもない。人の口元高さの1.5mの、発生確率の高い小さな津波でも人は息ができず絶命する。何とかならないか。堅固なマンション、ホテルでは、夜間に津波の来襲を受けた場合に、そのままの室内の避難シェルターが有効である。昼間では、ビルなどの比較的小さい部屋割りの事業所で室内避難シェルターが有効である。壁際に設置する少人数の小型シェルターである。特許庁特許情報プラットホームで「津波シェルター」で検索したところ、2件であった。特許文献1は、生活空間の上又は下に上方が気密のシェルターを設けるものだが、吸気及び排気装置を有するので本発明とは異なる。特許文献2は、建物に津波シェルターを設けるものだが、新たに建てた建物内に気密性のシェルターを設置するもので、本発明の既設のマンション、ホテルの壁を利用して設置する非密閉構造のシェルターとは異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-178769
【特許文献2】実登3170840
【0004】
【非特許文献1】中川工業所安全資料
【非特許文献2】防波堤の耐津波設計ガイドライン:国土交通省港湾局、2013.9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
来る南海トラフ巨大地震では、最大34.4mの津波が最短1~5分で到達する。死者数は32万人とされ、真冬の真夜中の時間帯が最大被害である。すなわち、その時間帯では避難する時間余裕もなく当然就寝中であればなすすべもない。1~5分といえども、地震の揺れが収まるのが2~3分とされるので、揺れが収まったその後の避難では2分の猶予さえあるかないか。躊躇している時間はない。揺れている間に意を決して避難しなければならない。しかし、慌てて外への避難は、0.3mの津波でも足元をすくわれ、かえって命を落とす危険がある。巨大津波が注目されるが、それより発生確率の高いわずか1.5mの低い津波でも、人はその水中で呼吸ができないので絶望的である。何とかならないか。建物の各階ごとで、床から高さ1.5mの口元高さで空気が確保できればまずは一つ問題が解決する。幸いにしてマンションなどの建固な建物では、木端みじんとなる一般住宅とは異なり、構造物が頑丈なので津波の波力、漂流物の衝突にも耐えられる。寒い真冬にも外に出なくて済む。波力で転倒しそうだが逆に窓ガラスが破られ波が抜けることとなり、波力による転倒モーメントを受けず建物自体が転倒しない。窓が破れることで浸水し浮力が解消され建物が浮力で浮くことがない。すなわち、堅固な建物自体が津波に強いといえ、守られたその強さを十分に利用、生かすこととする。人が生存できるためには、急襲する津波による漂流物の衝撃を避けることができて、かつ津波の水中でも空気を保持できる必要がある。すなわち、衝撃から生身を守り、水中で空気を包む空気袋があればいいことが分かる。その空気袋の形成体としてシェルターということになる。本発明では、堅固な建物の部屋の壁際に沿って少人数対応の非密閉型小型避難シェルターを設置することで瞬時に避難することができ、水中でも継続して生存できる課題を解決できる。室内で避難できるので、建物の部屋内が瞬時の最短距離の避難場所となる。建物の壁、床、天井などの鉄筋コンクリート部位は強度があり、波力や突入する漂流物に十分耐えることができる。これらで仕切られ守られた部屋も堅固であり、その壁は十分に利用できる。水中となっても空気さえ確保できれば助かる。そこで、生存空気量を確保する避難シェルターを、漂流物の直撃を避ける位置となるよう、かつ水流の影響の少ない位置に、すなわち、窓ガラスのある壁に隠れた位置や突入する津波の流れを平行に受け流す隣家との戸境壁沿いに設置する。避難シェルターの筒材は、防水性、空気遮断性など気密性に優れ、強度のあるガラス繊維、炭素繊維などの強化プラスチック、不織布からなる。あるいは、鋼材、板材とその内側にポリ袋、プラ袋、ゴム袋との重ね合わせなども有効である。津波に襲われた水中では空気を含んだ筒に浮力が働くので、立ち居の形状保持がむつかしいと思われるが、パスカルの原理で、筒内外の空気圧と水圧とは等しいので、膨らむことはない。ただ、水流で揺らぐと考えられるので、この場合は裾から大きな空気の塊が逸脱する。また、浮力と津波の横力により変形すると転倒しやすくなるので、鋼材をシェルター4隅に配置するなどで剛性を向上し転倒防止を図る必要がある。小型のシェルターであるので、建物の天井壁は浮力による貫通に耐えると考えるが、また一時的な荷重であり最終耐力として鉄筋の範囲の天井壁全面で受けると考えられるものの、天井壁の耐力は建物により異なるので確認しておく必要がある。また、窓からの漂流物衝突の衝撃を緩和する必要がある。室内のタンスなどの家具が回流して衝突する可能性もある。水中の空気は、アルキメデスの原理で上昇して抜けるので、シェルターは津波の水中で生存空気量を確保する形状、すなわち上部を閉じた袋状の立筒形状となる。できるだけ多くの空気量を確保するためには、四角柱の囲む空気体積
が同じとすると、床から天井までの高さを生かすことが望ましい。天井高さから逆算して平面積を求める。例えば、必要空気量、空間量は1m3/人・時間とし、天井までの高さを一般建物の平均的高さの2.4mとし、筒の下部の入り口高さを0.7mとすれば、水中で空気が溜まる有効高さは、入り口頂点高さより上の、2.4-0.7=1.7mである。必要とする平面積は1/(2.4-0.7)=0.59m2である。幼児は同じシェルター内とすることができるが大人2人分は2倍の体積となるので、別々としてもよい。
図1に、部屋に設置する各形状のシェルターを掲げる。0.59m2に対して立筒を四角柱aとすれば1辺が0.77m≒0.8m、半円柱bとすれば半径0.62mである。部屋の角隅部の壁際に設置するのも漂流物を避けるのに有効である。四角柱はそのままであるが、角隅の直角3角形cとすれば1辺が1.09mとなる。角隅設置の1/4の円柱dとすれば、半径は0.87mである。また壁沿いに1.0mの四角柱eとすれば突出量は0.6mと扁平となる。ここで、浮力を緩和するために、平面を1m*1mとすると高さは、1mとなり、出入り口高さは1.4mとなる。窓の頂点高さと天井との高さの差を1mとすれば、部屋空間の空気がありシェルターには浮力はかからない。このように、浮力の観点から工夫することも必要だ。すなわち、耐震性のあるマンションで天井強度の余裕や寸法に余裕がある場合は選択肢となる。
幅0.8mを標準として
図2にシェルターの側面図、
図3に頂点部平面図、
図4に断面平面図を示す。空気をはらんだ立筒が、漂流物の直撃を受け破損したのでは生存空気が抜け、元も子もない。室内のタンスなどの家具が回流して衝突するかもしれない。通過する波流、波圧で揺らぎやすいので、例えば四角柱ではその4隅のコーナーをL形鋼やメタルラック鋼などの縦枠材で保護することで漂流物や家具の直接的衝突や波圧の揺らぎ、変形に耐える課題が解決できる。部屋の角隅の1/4の円柱、直角3角形柱では少なくとも角隅を含めて3本の縦枠材となる。筒材表面はパンチィングメタルでカバーすれば、先の鋭利な漂流物からの保護に役立つ。シェルターは、津波の前の巨大地震のみならずその後の津波波力で転倒の危険性もあるので、その縦枠材を壁に固定した方が望ましいが手続きが容易でない。アンカー位置は、建物の構造的な影響とならないよう壁の鉄筋位置は避けなければならない。壁に穴を明けるとなると、ホテル、ビルのオーナー所有は別としてマンションでは、管理規定で壁は共用部分であり、管理組合や隣人の合意が必要で厄介、面倒である。接着剤で壁に接着する方法もあるが壁に穴を明けない分、合意は得やすいかもしれないが強度不足の問題がある。そこで、
図5に示す壁に穴を明けずに、すなわち、アンカーを設けない転倒防止方法を考えることで、容易に進まない面倒な課題を解決できる。筒に設けた縦枠材の対角の長さを利用する。筒が転倒するとした場合、水平な床と天井があることで、床が踏ん張り、支点となり、高さより長い筒対角線長が天井につかえて回転できないようにする。対角線長は高さと水平幅から計算されピタゴラスの定理から求まる。すなわち、筒の対角線長は√(2.4*2.4+0.8*0.8)=√6.4=2.53mで、天井高さ2.4mより13cmほど長い。このことは、転倒するには筒の対角線長以上の長さ、天井との空間が必要なので、筒の頂点部分の断面部を天井に密着、くっつけておけば物体、筒は回転しづらい、回転しない。すなわち、筒の縦枠材の高さや天井高さより筒が傾斜した対角線長が大なので転倒する空間がないことを利用する。結果、天井高さまでの縦枠材と天井までの余裕、隙間は5cm程度まで可能とすれば、筒は天井高さより大の対角線長による回転抵抗で転倒しない。具体的には、筒が変形しないように剛とする。筒の4コーナーの縦枠材の頂点部、途中部、下部などをそれぞれで連結する水平材の配置が有効である。こうすることで、剛となり形状保持に役立つ。多少横滑りするとしても転倒する心配はない。すなわち、隣家との壁にはアンカーが不要となり、マンションでは管理組合との調整が不要で個人個人での室内設置が可能となる。揺らぎによる水平移動も、床から天井までの密着に近い高さをキープしたままの状態なので、小刻みに揺れるもののほぼ移動することはないといえる。多少の水平移動は空気保持に特別な支障もないので許容の範囲である。
つぎに、シェルターの室内搬送と立ち上げる据え付け時の問題も解決する必要がある。
図6に示すように天井高さは、マンション毎により異なるため縦枠材長さを調整する必要がある。丁度に計測して製作すればよいが販売現場となるとそうはいかない。そこで、例えば、工場で2mの縦枠材を基準としてその下端0.2mに縦長孔を設け、室内現場で台座を使い持ち上げて0.6mの短尺ものをボルトで継ぎ足すこととすれば、重ね長を0.2mとして高さが2.4mになる。0.7mの短尺ものを継ぎ足すこととすれば、2.5mとなり天井高さ変化に適応出来る。筒体の長さも、同様に調整できれば望ましい。空気保持には出入り口高さより上部だけでよいが、漂流物の衝突保護から床まで垂らしたほうが良い。縦枠材と同様に、2.0mのところでファスナー、ホックなどで継ぎ足すとよい。また、筒体の出入り口にファスナーをつけてもよい。出入り口に同材料の垂面材をつければ漂流物突入防止ともなる。ただし、それでもファスナー部では空気が漏れるので空気量保持の設計上の有効高さはその上部となる。
また、縦長の筒といえども狭い住宅事情の日本では空間占用部が大となり、邪魔な抵抗感がある。壁からの0.8m幅の突出量をできるだけ小さくしたい。
図7に示すようにコンパクトとしたい。そうすれば違和感も少なくなる。方法は2つ。壁沿いの長さを長くする横長の扁平形状とするか、折りたたみできないか考える。できれば突出量として
図7aの0.8mから、
図7eで0.6m、
図7hで0.5m、
図7iで0.4m、
図7jで0.3m、
図7fで0.2m、
図7gで0.1mの可能性を考える。さらに、浮力、天井壁の耐力の関係から逆に広くすることも検討する。部屋の角隅に設置する
図7kで、平面幅1m*1mで、出入口高さを1.4mとし、有効空気保存高さをその上の1.0mとする例を示す。扁平とする前者の方法では、内部の人の腹部周りが支障となるので個人差にもよるが0.3m=3.14*0.3=94cmの人が限界として考えられ、その場合の壁沿いの長さは0.59/0.3≒2.0mとなる。それ以上の扁平、薄型は難しいといえる。そこで当初から、壁面からの突出量を0.4m、0.5mで我慢すると、壁面沿いの長さは、
図7iの0.59m2/0.4≒1.5m、
図7hの0.59m2/0.5≒1.2m、すなわち、概1.5*0.4m、または概1.2*0.5mの長方形断面となる。さらに突出量を小さくするには、後者の折りたたみの方法による。
図7f、g、
図8f、gに示すように壁面からの突出量は2*0.1=0.2m、2*0.05=0.1mでスマートである。筒材の側面部は、縦枠材のコーナーからの2つ折りならば0.8/2=0.4mほどが筒内部に折り込まれ、その両先端間に隙間がなく、互いにずらすことができればよいが、天板部材に余裕がない。そこで、0.1mの縦枠材の部材端から折り込むと2つ折りで0.8/2―0.1=0.3m、0.05mの縦枠材で0.8/2―0.05=0.35mほどが筒内部に折り込まれ両先端間に余裕が生まれる。最小の突出幅0.1mとするには、外枠の縦枠材の幅は、半分の0.05mで、メタルラックの細い板柱やL形鋼が考えられる。ところが、突出量が0.1mの場合の対角線長は、√2.4*2.4+0.1*0.1=2.4005cmでほとんど長くならず、これでは転倒する。突出量を0.2mとしても、√2.4*2.4+0.2*0.2=2.4083cmで転倒する。突出量を0.3mとすれば、√2.4*2.4+0.2*0.2=2.4187cmで、床に下敷きを入れるなどの工夫で、天井と密着させれば何とか転倒しないといえる。突出量を0.2mとか0.1mとかの薄厚のコンパクトとするには、多くの住民の賛同を得て壁側に穴を明けアンカーボルトで定着するか、壁側の縦枠材を接着剤で接着するか、壁、床、天井に小さいアンカーをとって、ひも、ロープでシェルターを縛るか囲むかなどの転倒防止策をとることで突出量を少なくでき、コンパクトにする課題を解決できる。立筒のシェルターの筒材は、内部で2つ折りにたたむことになる。側面を折りたたむので、筒体の側面部は、板面の折り返し部となり、筒体内部で360度に折り返すことになる折れ面では遮水の気密性、柔軟性が求められる。さらに、筒体の天板部は、極端に折り込まれることになり、折りたたみ易さ、折り目の伸ばしやすさ、追従性などが求められ、別材料となる可能性も考慮する必要がある。立筒の天板部と建物の天井との隙間は密着、あるいはわずかなので、漂流物が入り込むこともないといえ天板部は柔軟性、気密性があれば比較的弱い材料でも可能である。筒体の底辺部では特に空気保持には有効でなく、出入り口の面材もなければ折り返しがスムーズでないことからも、省略することもできる。ただし、筒体の縦本体部との上部の接合は、ボタン穴のようでは空気が抜けると元も子もないので密接、密着でなければならないことは言うまでもない。津波来襲時前には、すでに人が中に入って避難できた状態にするために、素早く折りたたみ部を引き延ばし元の0.8mとなるよう成型しなければならない。引き出すために壁から遠い側のシェルターの縦枠材には、
図6に示す取手等が必要である。壁側の縦枠材は壁と固定していることが望ましいが、壁と接着剤で接着しても反力を受け持つ効果はある。引っ張りやすさから、取っ手は、壁とは対面側の2本の外縦枠を水平に結ぶひも、帯が作業性に優れる。対面側の縦外枠の頂点部、底辺部に滑りやすいように滑車、リールを配置する工夫も考えられる。折りたたんだ時点では対面側には水平材が配置できているものの、側面側には水平材は配置できてないので、拡張した後の形状保持のための水平材の取り付け作業は大切で、急がなくてはならない。当然後付けになる。例えば、壁側の縦枠材の表面に突出ボルトを設け、そこに仮に垂らして縦置きとする水平材を設け、地震後に下端を引き出し90度回転し、対面の縦枠材の突出ボルトに橋渡しする。あるいは単に、両側の縦枠材に突出ボルトを設け、外に準備した脚立に上がり、用意した穴あきの水平材を嵌合し橋渡しする。シェルターは、特に膨らませる必要はなく、筒材を所定長さになるまで引き出すことで拡張され、内部に所定空気量を確保することができる。ここで、逆にコンパクトでなく壁からの突出を我慢できるとすれば、1m*1m*1mの立方体形状では入り口高さが1.4mと高く避難しやすい。この場合も当然縦枠材が必要である。
津波の高さが10m、20m、30mとなるとそれに伴い筒体内部の水位が上がる。1階の人に比べ、2階、3階と上層階の人は床高さに応じて、津波水圧の負担が少なくなる。1階の人のその時の内部水位の変化を
図9に示す。空気体積がボイルの法則で、1/2、1/3、1/4に圧縮されるので、内部水位は1.7*(1/2、1/3、1/4)で天井頂点部から0.85m、0.57m、0.425mと呼吸する余裕空間高さが少なくなる。その分呼吸する口の高さを確保しなければならないので、筒の内部には、脚立、組み立て脚立が役に立つ。筒を折りたたむと中に脚立を挿入できないので、折り畳み式脚立の事前挿入とするか、製品脚立の後挿入とするかである。安全を見て個人の頭頂部が天井に届く高さの脚立が良い。内部の脚立は、漂流物の侵入、衝突防止にも役立つ。中に閉じ込めた空気で筒体全体に浮力が生じるが、部屋の天井壁で受け止めることになる。頂点部には、面材で覆うとすることで浮力を広く分散できる。
図10に示すように、0.8m角で長さ2.4mのポリ袋、ビニール袋などの気密性の袋体を事前に内蔵することとすれば2重の安心となる。長さ2.4mのポリ袋は、当初は、出入り口の頂点高さの0.7mに蛇腹式に巻き上げて、そのままでもよいが、内部に避難後、それを床面までおろせば生存必要空気量は2.4/1.7=1.4倍確保できるので安心度が増すといえる。また水位上昇とともに体が濡れ、特に冬場では耐えがたいほど寒い。そこで足元から肩口までのビニール袋サックを用意しておけば身を包むことができる。幼児、子供、あるいは夫婦と複数の同時避難するシェルターの拡大にも別途対応が可能である。さらにシェルターに穴が開き空気が逸脱する最悪のケースでは、ごみ収集用のビニール袋を用意しておけば頭からかぶれるのでシェルター内の空気が逸脱する場合の最後の砦、賢者の備えとなる。
また、狭い筒の中の空気量は限定的であるが、筒の外の部屋の天井空間の空気は、津波水中でも上に凸の広い面積の天井空間に空気が溜まっている。空気層圧を0.1mとしても新鮮で大容量である。そこで筒内部の新鮮な酸素量が減ってきたときに空気を補充できないかと考える。幸いにして垂直壁で囲まれた天井空間には、水平な水位上昇とともに閉塞空間が生まれ空気が外に逃げずに残っている。筒内部空気と筒外部の天井空間の空気を、筒の出入り口を迂回して、すなわち、
図11に示すようにゴムホースのチューブをU型に折り返すように設置すれば、内部が息苦しくなってもチューブ口から広い天井空間の外部の新鮮な空気を吸引できる。外の片側のホース端は部屋の天井高さとすると水位が上がった場合でも水が入ってこない。埃の溜まらないよう先端は水平に曲げておく。下方の出入り口部で折り返して筒内部側へは補助棒で立ち上げ頂点部まで伸ばした後に、下に折り返し、例えば0.5m以上延長とすれば口元に届き、筒の外の天井の新鮮な空気を吸い込みやすい。
津波以外に、近年多発する河川の氾濫時や集中豪雨の洪水時の大浸水、大水害にも本発明のシェルターは有効である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、本発明のマンション、ホテル、ビルなどの室内設置の津波等避難シェルターは、マンション、ホテル、ビルなどの堅固な建物室内に設置する少人数対応、小型の立筒形の津波等避難シェルターであって、筒体内部に人数分の水中での生存必要空気量を確保する空間を有し、筒材は、気密性、強度に優れたガラス繊維、炭素繊維等の強化プラスチック、不織布あるいは鋼板、板材等と内部側にポリ袋などのプラスチック袋などとの重ね合わせなどから成り、筒体は下部に出入り口となる開口部、またはまくり上げて出入りできる蛇腹式開口部を設け、上部は閉じた中空の袋状の構造とし、外枠として、高さが床から概天井までとする縦枠材を筒体のコーナー部に設け形状保持とし、津波による内部水位の上昇や漂流物の侵入に備え脚立、踏み台などを用意することとし、前記シェルターを部屋の壁面沿いや隅角部に設置することを特徴とする。
【0007】
また、本発明のマンション、ホテル、ビルなどの室内設置の津波等避難シェルターは、前記筒体コーナー部の縦枠材の頂点部および底辺部を連結する面材または水平材を設けることで、立筒形の形状保持、漂流物衝突の衝撃緩和を図り、壁にアンカーが取れなくても縦枠材と面材または水平材とでなる回転の長さとなる対角線長が、床と天井との空間高さを上回ること、すなわち回転時に部屋の天井壁につかえることを利用して転倒防止を図るとしたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明のマンション、ホテル、ビルなどの室内設置の津波等避難シェルターは、前記シェルターの壁面からの突出量を減らしコンパクトにすることとし、壁面沿いの筒材の延長を増やし扁平として突出量を減らすか、または筒材を折りたたみ方式とし、折りたたみ方式では筒材の側面部は折りたたみ易さに優れ、筒材の頂点部は伸縮性に優れたものとし、折りたたむ側の縦枠材間の水平材は、折りたたみ部を拡張した後に水平材を縦枠材間に架け渡す後付け方式とし、折りたたまない側の対面の辺にはあらかじめ縦枠材を連結する水平材を設けることで、立筒形の形状保持、漂流物衝突の衝撃緩和を図り、転倒に対して、壁にアンカーが取れない場合はコンパクトとするにしても壁からの突出量を0.3m以上に確保し、アンカーが取れる場合は突出量を0.1mまでコンパクトにできるとしたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明のマンション、ホテル、ビルなどの室内設置の津波等避難シェルターは、前記シェルターの断面内側に、空気漏れに対してさらなる安全として筒体と離隔して空気袋体を設置するもので、頂点部から出入り口頂点高さまたは床まで延長した長さの、上を閉じたポリ袋、ビニール袋、ゴム袋などの気密性、柔軟性に優れた薄い袋体を設置することを特徴とする。
【0010】
また、本発明のマンション、ホテル、ビルなどの室内設置の津波等避難シェルターは、前記シェルターの内部空気が新鮮でなくなることの対策として、片端を筒体外側の部屋の天井部とし、反対側の片端を前記袋体、筒体の内部とし、中間の筒体下部端でU字型に折り返し、内部の前記袋体、筒体の頂点部近傍でさらに折り返し、下方に延長し口元に届くとしたゴムホース、チューブなどを配置することで、部屋天井部の新鮮な空気を吸引できるとしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
巨大津波にあきらめていた命が容易に助かる。堅固な建物を利用しない方はない。外に出ないで瞬時に避難できる。水中で持続して空気が吸える。確実な光明が見えてきた。最短1~5分で急襲するとされる津波では、外に出て避難する時間余裕がない。地震の揺れが収まるのが2.5分とされ、残りの時間は2分程度しかない。幸いにして建固な建物は、漂流物の直撃は外壁で受けるので影響力は比較的緩和され、ガラス窓が突破されることで波力の横力が抜けて建物の転倒の心配もなくむしろ安全な囲いの中といえ、室内シェルターであれば最短時間、2分で避難できる。真冬の寒い真夜中でも、迅速に避難できる。入浴中でも、泥酔中でも、熟睡中でも。安心して酒が飲めることは何よりうれしい。日々不安なく睡眠できることはなんと幸せなことか。
また、マンションの上層階になればなるほど同じ津波高さに対して負担が軽減される。助かる確率が高くなる。この有利な条件を活かさない方はない。屋上が高ければ上に逃げるのがベストだが、時間もかかる、避難の途中が最も危ない。想定外の津波高さが襲うかもしれないので水中となれば生身では呼吸できない。先の2022年1月のトンガの津波では、命がかかっているといえど、また注意報が出ているにもかかわらず、人は真冬で寒ければ外に逃げるのも億劫、行動しないこと、簡単にあきらめてしまうことが立証された。高齢者はなおさらである。ここでは条件の悪い1階の住民を対象としている。2階、3階と上層階になるほど助かる確率は高く住民の間で差が出るのはやむを得ない。最大高さの津波は確率が低いが、それでも最低、各階で口元高さの床からの高さ1.5mが必要である。本発明のシェルターで全住民が助かる可能性が飛躍的に高くなる。もともと一般住宅の人よりはるかに助かる確率が高いことをかみしめて、あと少しの努力。常日頃からどのように避難するかを考えておくことがとっさの判断、行動となり生死を分ける。本発明は津波弱者に最適の解を提供して、明確に生きる希望を与えるものである。
オーナーのいるホテル、ビル以外のマンションでは、壁にアンカーを打つ場合は、壁は共用部になるので管理組合や隣人の同意が必要である。いきなり集会を開いて同意を得る労苦を避けたい。特に、最初にシェルターを設置する人は面倒なことを避けたい。それとは別にさらに建築法や耐震確認など難題の壁がある。命の方が大事であるにもかかわらず法律の壁がある。壁に穴を明けない方法があるならば気を遣わずベストといえる。本発明では穴を明けないで済むので気苦労は不要である。壁の鉄筋位置を確認しないで済むので個人で設置できる。しばらくして、話題となりある程度の住民がシェルターを設置希望すれば全体でも賛同を得やすい。すなわち、実態として壁のアンカーは、クーラーの取り付けアンカーが可能ならば、同程度の壁へのアンカーは可能、許容されていくものと考えられる。先行して設置した住民も、マンション全体で賛同者が増えれば、すでに設置済みのシェルターに後打ちでアンカーをとることができる。本発明は、煩わしいこととなるアンカーが取れなくても転倒しない。また、命が助かるといえど、壁から突出、嵩張るのは狭い住宅事情から望まれない。折りたためてコンパクトになると平素の生活空間の安寧が保たれる。防潮堤ができるのがいつのことか。津波避難タワーも遠い。真冬に外に出なくて済む本発明のマンション、ホテル、ビル対応のシェルターは、どんなに想定外の大きさの津波にも命が助かる。それよりも頻発しそうな1.5m程度の低い津波、息ができない程度の高さにも備えが必要で、身近に空気筒タイプのシェルターがあるだけで日々安心だ。金額負担も命の対価としては、非常に安価な優れものといえる。これで32万人の命の一部、設置希望者の全員の命、簡単に奪われる命が確実に助かる。早く設置すればするほど、いつ襲われるかという不安が解消され、それだけ早く日々安心して暮らせることか。枕を高くして寝れる。たとえ24時間の半分の夜間だけとしても。精神的にも健康にもよい。命は一つしかない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
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図8】
図8は折りたたみ、コンパクトとした断面平面図
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図9】
図9は津波高10m、20m、30mのときの内部水位変化
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面及び詳細な説明の全体を通じて同じ要素を示すために共通の参照符号が用いられる。
【0014】
図1に各種シェルターの配置例図を示す、シェルターの形状は好みによる。津波の突入の影響を避ける位置を選ぶのが基本である。ガラス窓のある外壁内側、壁の交差する部屋の角隅、隣家との戸境壁沿いが望ましい。窓ガラスに正対する部屋の間仕切板壁、ふすまなどは強度が弱く漂流物の突入に耐えられないので避ける。
【実施例0015】
立筒のシェルターの必要空気量、空間量は1m3/人・時間とし、天井までの高さを平均的高さとして2.4m、筒の下部の出入り口高さを0.7mとすれば、水中で空気が溜まる有効高さは、それより上の部分の2.4-0.7=1.7mである。必要とする平面積は1/(2.4-0.7)=0.59m2である。0.59m2に対して立筒を四角柱とすれば1辺が0.77m≒0.8m、円柱とすれば直径0.87mである。部屋の角隅の壁際に設置するのが漂流物を避けるのに有効である。円形の1/4の円の、角隅設置の1/4円柱とすれば、半径は0.87mである。角隅の直角3角形状とすれば1辺が1.09mとなる。筒体の底辺部は、筒材を設けずとも、面材、水平材で形状保持ができるので空気保持には不要な部位である。ただ、設けた方が、筒材への漂流物衝突などには形状保持に優れていてしっかりしている。 空気をはらんだ立筒が、漂流物の直撃を受け破損したのでは生存空気が抜け、元も子もない。通過する波流、波圧で揺らぎやすく、例えば四角柱では4隅のコーナーをL形鋼、ラック鋼の縦枠材で保護することで漂流物の直接的衝突や波圧の揺らぎに耐える。角隅の4分の1の円柱、直角3角形柱では少なくとも3本の縦枠材となる。筒材表面はパンチィングメタルでカバーすれば、先の鋭い漂流物からの保護に役立つ。
津波高さが10m、20m、30mの状況に対して、筒内部の空気量は、1.7mの空気高さが1/2、1/3、1/4に圧縮される。すなわち、シェルター内の水面は、頂点から0.85m、0.57m、0.43mまでの距離に縮小する。逆に床から1.55m、1.83m、1.97mに水位が上がるので背丈の低い人では口元で息ができなくなる。当然、この時に息継ぎができなくてはならないので、頭が頂点につくとして身長1.5mの女性は0.9mの3階段式の脚立、1.4mの高齢者は1.0mの4階段式の脚立を筒内部に用意する。すなわち、背丈に見合った脚立、踏み台を必要とする。この場合、バランスを崩しやすいので、筒体に寄り掛からなくて済むように1.5m程度の棒をつっかえ棒として用意しておくとよい。実施例7の補助棒と兼用できる。この脚立で内部への漂流物突入を防ぐことができるので脚立は必須条件といえる。中に閉じ込めた空気で筒体全体に浮力が生じるが、耐荷重のある部屋の天井壁全体で受け止めることができる。頂点部には、面材で覆うほうが浮力を分散できる。