(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020452
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】遺伝子治療のためのポリマーカプセル化されたウイルスベクター
(51)【国際特許分類】
C12N 15/88 20060101AFI20240206BHJP
C12N 15/867 20060101ALN20240206BHJP
C12N 7/01 20060101ALN20240206BHJP
C07K 5/00 20060101ALN20240206BHJP
【FI】
C12N15/88 Z
C12N15/867 Z ZNA
C12N7/01
C07K5/00
【審査請求】有
【請求項の数】48
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023195952
(22)【出願日】2023-11-17
(62)【分割の表示】P 2020560623の分割
【原出願日】2019-01-17
(31)【優先権主張番号】62/661,990
(32)【優先日】2018-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/618,156
(32)【優先日】2018-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/715,007
(32)【優先日】2018-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520265804
【氏名又は名称】アラティンガ・バイオ・ティーエヌピー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】バウシュ,セシル
(72)【発明者】
【氏名】バイヤン,ルノー
(72)【発明者】
【氏名】サリー,エメリン
(72)【発明者】
【氏名】ムルラーヌ,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ビショップ,フィリップ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】遺伝子物質を標的に送達するための、改善されたウイルスベクターベースのシステムを提供する。
【解決手段】本技術は、ナノ粒子を形成するためにポリマーまたはポリマーの混合物でコーティングされたレトロウイルスベクターを含む遺伝子送達手段に関する。レトロウイルスベクターは導入遺伝子を含み、特定の実施態様では外膜タンパク質を欠く。この技術には、遺伝子送達手段を作る方法、および遺伝子送達手段を投与することによって疾患を治療する方法が含まれる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーまたはポリマーの混合物でコーティングされたウイルスベクターを含むナノ粒子であって、前記ウイルスベクターは導入遺伝子を含み、前記ナノ粒子は、導入遺伝子を真核細胞に送達するための手段として機能する。
【請求項2】
前記ウイルスベクターが外膜タンパク質を欠く、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
前記ポリマーまたはポリマーの混合物が、式:
【化1】
を有するポリ(ベータ-アミノエステル)を含む、請求項1または請求項2に記載のナノ粒子であって、
ここで、各Pepはオリゴペプチドであり、RはOH、CH
3、またはコレステロールであり;mは1~20の範囲であり、nは1~100の範囲であり、oは1~10の範囲である。
【請求項4】
各オリゴペプチドが、アルギニン(R)、グルタミン酸(E)、リジン(K)、アスパラギン酸(D)、ヒスチジン(H)、およびシステイン(C)からなる群から選択される、少なくとも3つのアミノ酸残基を含む、請求項3に記載のナノ粒子。
【請求項5】
少なくとも1つの前記オリゴペプチドの前記アミノ酸配列が、CRRR(配列番号1)、またはCHHH(配列番号2)、またはCKKK(配列番号3)、またはCEEE(配列番号4)、またはCDDD(配列番号5)である、請求項3または請求項4に記載のナノ粒子。
【請求項6】
前記ポリマーまたはポリマーの混合物が、pH7で正味の正電荷または正味の負電荷を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項7】
前記ナノ粒子がベクターあたり108~1012個のポリマー分子を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項8】
前記ナノ粒子がベクターあたり約109~約1010個のポリマー分子を含有する、請求項7に記載のナノ粒子。
【請求項9】
前記ウイルスベクターがレトロウイルスベクターである、請求項1~8のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項10】
前記レトロウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、請求項9に記載のナノ粒子。
【請求項11】
1つまたは複数のポリマー分子に連結された1つまたは複数の標的部分をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項12】
前記標的部分が、抗体、抗体断片、scFv、抗体様タンパク質骨格、オリゴペプチド、アプタマー、L-RNAアプタマー、および細胞表面受容体のためのリガンドからなる
群から選択される、請求項11に記載のナノ粒子。
【請求項13】
前記標的部分が抗CD3抗体または抗CD3アプタマーである、請求項12に記載のナノ粒子。
【請求項14】
前記導入遺伝子がキメラ抗原受容体をコードする、請求項1~13のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項15】
約-15mV~約+15mVのゼータ電位を有する、請求項1~14のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項16】
VSV-G外膜タンパク質を欠いている、請求項1~15のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項17】
VSV-G外膜タンパク質を含む類似のナノ粒子と比較して、in vivo使用のた
めの改善された安全性プロファイルを有する、請求項16に記載のナノ粒子。
【請求項18】
前記ウイルスベクターがウイルス外膜タンパク質を欠き、そして前記ナノ粒子が、ベクターあたりのポリマー分子の閾値数を超える哺乳動物細胞のみを形質導入することができる、請求項1~17のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項19】
ベクターあたりのポリマー分子の前記閾値数未満では、前記ポリマーの量が前記ベクターを完全にコーティングするには不十分である、請求項18に記載のナノ粒子。
【請求項20】
ベクターあたりのポリマー分子の前記閾値数未満で、前記ナノ粒子が構造的に不安定であるか、または前記ナノ粒子からのポリマー分子の解離を受けやすい、請求項18または請求項19に記載のナノ粒子。
【請求項21】
前記閾値を欠くベクターまたはポリマーカプセル化ベクターと比較して、in viv
o使用のための改善された安全性プロファイルを有する、請求項18~20のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項に記載のナノ粒子を作る方法であって、当該方法は以下の工程を含む:
(a)導入遺伝子を含むウイルスベクターを提供すること;
(b)ポリマーまたはポリマーの混合物、および任意選択で1つまたは複数の標的部分を提供すること;そして
(c)前記ウイルスベクターとポリマーまたはポリマーの混合物、および任意選択で1つまたは複数の標的部分を接触させ、それにより前記ウイルスベクターと前記ポリマーまたはポリマーの混合物が結合して前記ナノ粒子を形成すること。
【請求項23】
前記ウイルスベクターが外膜タンパク質を欠く、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(c)が約5.0~約6.5のpHで行われる、請求項22または請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ステップ(c)が約5.5~6.0のpHで行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリマーまたはポリマーの混合物が、式:
【化2】
を有するポリ(ベータ-アミノエステル)からなる、請求項22~25のいずれか1項に記載の方法であって、
ここで、各Pepはオリゴペプチドであり、ここで、RはOH、CH
3、またはコレステロールであり;ここで、mは1~20の範囲であり、nは1~100の範囲であり、oは1~10の範囲である。
【請求項27】
各オリゴペプチドが、R、E、K、D、H、およびCからなる群から選択される少なくとも3つのアミノ酸残基からなる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記オリゴペプチドの少なくとも1つのアミノ酸配列が、CRRR(配列番号1)、またはCHHH(配列番号2)、またはCKKK(配列番号3)、またはCEEE(配列番号4)、またはCDDD(配列番号5)である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記ポリマーまたはポリマーの混合物が、pH7で正味の正電荷または正味の負電荷を有する、請求項22~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記ナノ粒子が108~1012個のポリマー分子を含む、請求項22~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記ナノ粒子が約109~約1010のポリマー分子を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記レトロウイルスベクターが1つのレトロウイルスベクターである、請求項22~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記レトロウイルスベクターが1つのレンチウイルスベクターである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ベクターを1つまたは複数の標的部分と接触させることをさらに含み、任意選択で前記標的部分が前記ポリマーまたは粒子の混合物に連結されている、請求項22~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記標的部分が、抗体、抗体断片、scFv、抗体様タンパク質骨格、オリゴペプチド、アプタマー、L-RNAアプタマー、および細胞表面受容体のリガンドからなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記標的部分が抗CD3抗体または抗CD3アプタマーである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記導入遺伝子がキメラ抗原受容体をコードする、請求項22~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記ウイルスベクターがVSV-G外膜タンパク質を欠く、請求項22~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
ステップ(c)が、前記ポリマーまたはポリマーの混合物が正味の正電荷を有し、前記レトロウイルスベクターが負の表面電位を有するpHで行われる、請求項22~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
疾患を治療する方法であって、請求項1~21のいずれか1項に記載の複数のナノ粒子を含む組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む方法であって、それによって、前記対象の細胞が前記レトロウイルスベクターによって形質導入され、前記導入遺伝子が形質導入された細胞で発現される前記方法。
【請求項41】
前記疾患が癌である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記対象がヒトである、請求項40または請求項41に記載の方法。
【請求項43】
in vitroで細胞を形質導入する方法であって、培養細胞を請求項1~21のい
ずれか1項に記載の複数のナノ粒子と接触させることを含み、前記培養細胞の少なくとも一部がレトロウイルスベクターによって形質導入され、前記導入遺伝子が形質導入された細胞で特異的に発現される前記方法。
【請求項44】
前記ナノ粒子がCD3陽性細胞を標的とし、前記導入遺伝子がCD3陽性細胞で特異的に発現される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記導入遺伝子がキメラ抗原受容体をコードする、請求項43または請求項44に記載の方法。
【請求項46】
遺伝子治療を実施する方法であって、in vitroまたは生体内の細胞を請求項1
~21のいずれか1項に記載の複数のナノ粒子と接触させることを含み、それにより前記導入遺伝子が前記細胞内で発現される前記方法。
【請求項47】
前記ポリマーまたはポリマーの混合物でコーティングされたウイルスベクターを含むナノ粒子であって、前記ウイルスベクターが低レベルの外膜タンパク質を含み、導入遺伝子を含み、前記ナノ粒子が前記導入遺伝子を真核細胞に送達するための手段として機能し、前記低レベルの外膜タンパク質は、前記ベクターの細胞侵入および前記ベクターによる細胞の形質導入を促進するには不十分である、前記ナノ粒子。
【請求項48】
前記外膜タンパク質の低下したレベルが、前記ベクターが由来する機能的ウイルスにおける外膜タンパク質の量の5%以下である、請求項47に記載のナノ粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件技術は、パッケージ化されたウイルスベクターナノ粒子合成組成物、およびそれらを使用して、遺伝子治療およびワクチン利用で使用する遺伝子物質を送達する方法に関する
【関連出願への相互参照】
【0002】
この出願は、2018年1月17日に出願され、「イン・ビトロおよびイン・ビボ細胞標的のためのウイルスベクターナノ粒子」と題された米国 仮出願第62/618,15
6号、2018年4月24日に出願され、「外膜タンパク質を欠くポリマーカプセル化ウイルスベクター」と題された米国 仮出願第62/6661,990号、ならびに201
8年8月6日に出願され、「外膜タンパク質を欠くポリマーカプセル化ウイルスベクター」と題された米国仮出願第62/715,007号の優先権を主張している。 これらの仮出願のそれぞれは、ここに参照によってその全体が組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
遺伝子治療は、外因性遺伝物質を標的細胞に提供し、遺伝子異常を矯正したり、細胞機能を変化させることによって疾患の処置を提供する。この目的のために、ウイルス性および非ウイルス性の両方の遺伝子送達方法が使用されているが、どちらのアプローチも依然として重大な欠点を示している。
【0004】
遺伝子治療またはワクチン接種プロトコルのいずれかのために、多くのウイルスベクターアプリケーションがクリニックにすでに翻訳されている。それにもかかわらず、現在使用されているウイルスベクターにはいくつかの不都合がある。 例えば、ウイルスベクターを使用して特定の細胞を標的とすることは困難である。 一部の遺伝子治療プロトコルでは、標的細胞を精製して 生体外で形質導入し、in vitroで形質導入された細胞を拡張して患者に再インプラントすることで細胞標的化が達成される。 ワクチン接種プロトコルでは、ベクターの直接注入が行われ、非特異的な細胞形質導入は、ベクターによってコードされた遺伝子生成物に対する免疫応答を誘発するためにしばしば用いられる。
治療の有効性と安全性を高めるために、細胞標的化が必要になることがある。
遺伝子物質を標的に送達するために、改善されたウイルスベクターベースのシステムの必要性がある。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に記載された技術は、パッケージ化されたウイルスベクターナノ粒子合成組成物、およびそれらを使用して、遺伝子治療およびワクチン利用で使用する遺伝子物質の強化された送達を提供する方法を提供する。ベクター組成物および方法は、1つまたは複数の導入遺伝子を有する細胞の形質導入が有用であるあらゆる状況で使用することができる。 例えば、それらは癌、感染症、代謝疾患、神経疾患、または炎症状態の処置、または遺伝的欠陥の修正のために使用することができる。
【0006】
本技術のウイルスベクターナノ粒子組成物には、ポリマーまたはベクターをカプセル化するポリマー混合物を含む外殻(シェル)が含まれる。特定の実施態様において、ナノ粒子のポリマー外殻は、一般的な式
【化1】
を有するオリゴペプチド誘導体化ポリ(β-アミノエステル)の1または複数種を含み、ここで、Pepはオリゴペプチドなどのペプチドであり、RはOH、CH
3 、またはコ
レステロール基であり、mは1~20の範囲であり、nは1~100の範囲であり、oは1~10の範囲である。 好ましい実施態様において、ペプチドは、アルギニン(R)、
リシン(K)、ヒスチジン(H)、グルタミン酸(E)、アスパラギン酸(D)、システイン(C)からなる群から選択される少なくとも2つ、または少なくとも3つのアミノ酸を含む。 現在の技術で使えるオリゴペプチド誘導体化PBAEの記述についてはWO2
014/136100およびWO2016/116887も参照。されたい。 システイ
ンは、ペプチドのポリマーへの共有結合点を提供するために含めることができ、pH7でわずかな負の電荷を運ぶが、正に帯電したアミノ酸と一緒に使用しても電荷を著しく変化させない。 代表的なペプチドは、CRRR(配列番号1)、 CHHH(配列番号2)、CKKK(配列番号3)、CEEE(配列番号4)、CDDD(配列番号5)である 。
【0007】
他の実施態様において、天然に存在するアミノ酸は、Pep部分に含めることができる。ペプチドの配列は、ポリマーコーティングされたベクターの細胞取り込みおよび標的化を促進するように選択される。 ウイルス外膜タンパク質を利用する態様と欠けている態様において、目的の標的細胞内のポリマーでカプセル化された、ウイルスベクターの細胞取り込みおよび/またはエンドソーム取り込み、および/またはエンドソーム脱出を促進するように、オリゴペプチド配列および正味電荷が選択される。 通常、ポリマーの両端にあるペプチドは、特定のポリマー分子では同じであるが、異なる場合がある。 ベクターの被覆に用いられる混合物中の高分子分子は、同じものでも異なるものでもよい。異なる場合は、それらはポリマーバックボーンや末端ペプチドで異なる場合がある。 好ましい実施態様において、ポリマーの両端のペプチドは、アミノ酸配列CRRR(配列番号1)、CHHH(配列番号2)、またはCKKK(配列番号3)、またはCEEE(配列番号4)、またはCDDD(配列番号5) を有する 。 ポリマーまたはポリマー混合物は、正味正電荷または負電荷を有するか、または非電荷であり得る。 R、K、H、D、Eなど、単種類のアミノ酸のみの2個以上の残基を含むオリゴペプチドが使用できる。
【0008】
ポリマーは、ポリマーバックボーンに取り付けられた側鎖にグラフトされた糖または糖アルコールからなることができる。各ベクターナノ粒子をカプセル化する1つ以上のポリマー分子は、任意選択で、ポリマー分子上の任意の所望の位置 (R など)でポリマーにリンクされた標的化部分を構成することができる。ポリマー分子は、架橋または非架橋であり得る。 ポリマー分子は、ベクターの脂質二層に分離するか、または脂質二層内に埋
め込まれた、例えば、コレステロール、リン脂質、脂肪酸などの脂質分子に共有結合によるなどウイルスベクター表面に、非共有でまたは共有で結合させることができる。いくつかの実施態様において、ポリマーは単にベクターを被覆するだけだが非特異的に付着する、すなわち、特定の共有または非共有の相互作用によってではなく、正味電荷や疎水性、ファン・デル・ワールス相互作用などの非特異的な相互作用によってのみベクターに付着する。 特定の実施態様において、ポリマーまたはポリマー混合物のレトロウイルスベクターとの比は、重量で約1:100~ 約5:1、またはベクター粒子あたりのポリマー分子数は約106~約1012である。
【0009】
ウイルスベクターナノ粒子はウイルスベクターからなる。ウイルスベクターは、所望の特性(例えば、免疫原性、異なるサイズの構造物を収容する能力、積分および複製特性、
発現レベル、発現持続時間、組織指向性または標的特性、分裂および/または静止細胞に感染する能力など)に基づいて選択され得る。ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターなどのレトロウイルスベクターであり得る。好ましい実施態様において、ウイルスベクターはレトロウイルスベクターである。 しかしながら、本発明は、DNAまたはRN
Aウイルス由来のウイルスを含む、他のタイプのウイルスおよび/またはウイルスベクターを用いて実施することも可能である。
【0010】
ナノ粒子には、例えば、標的部分とポリマーコーティングの共有会合または非共有会合によって、カプセル化されたベクターナノ粒子の表面に露出する1つまたは複数の標的部分を含むことができる。1つの分子種を標的とする部分、または複数の異なる分子種を標的とする部分が、各ウイルスベクターナノ粒子上に存在し得る。 例えば、抗体、抗体断
片(Fab を含む)、SCFV、抗体様タンパク質骨格、オリゴペプチド、アプタマー
、L-RNAアプタマー、細胞表面受容体のリガンドなどが標的部分となる。 1つの実
施態様において、標的部分は、ナノ粒子をT細胞に標的とするための抗CD3抗体またはアプタマーである。 1つの実施態様において、導入遺伝子はキメラ抗原受容体をコード
する。 ナノ粒子は、手段が投与される被験者の in vivoで 細胞を形質導入するか、in vitro で細胞を形質導入することによって、遺伝子送達手段として作用することができる。
【0011】
特定の実施態様において、ナノ粒子は、通常、標的部分の作用および/またはポリマーまたはポリマー混合物の作用によって、特定のタイプの細胞または細胞クラスを形質導入することができる。幾つかの実施態様において、ポリマーコーティングされたベクター粒子のポリマーは、標的細胞表面への付着だけでなく、エンドサイトーシス、マイクロピノサイトーシス、食作用や、その他の機構、およびエンドソーム脱出(エンドソーム小胞でのpHの減少後の膜融合経由)などによるエンドソーム取り込みによって細胞の形質導入を促進し得る。 好ましい実施態様において、ポリマーに会合するオリゴペプチドのアミ
ノ酸配列は、エンドソーム経路を介して細胞形質導入を特異的に促進することができる。
【0012】
現在の技術のいくつかの実施態様において、ウイルスベクターは擬似型付けされていますが、他の実施態様では、そのベクターは特定のウイルスまたは擬似型外膜タンパク質を欠いている。 擬似型ベクターでは、HIV gp120-gp41複合体や水疱性口内炎ウイルス(VSV-G)糖タンパク質などの外膜タンパク質がウイルス外膜の外面にスパイク状の構造を形成し、宿主細胞へのベクター粒子の付着およびウイルスの宿主細胞への侵入を容易にする。VSV-Gなどの擬似型タンパク質は、精製中にベクターを保護または結合するために使用することもできる(例えば、超遠心分離中の保護、アフィニティカラムまたは他のアフィニティマトリックスへの結合、またはゲル精製)。しかし、ウイルスベクターのポリマーパッケージングの文脈では、そのような構造は、ベクター粒子外膜とポリマーとの間の密接な会合を妨げる可能性がある。
【0013】
ウイルス外膜タンパク質はまた、ポリマー、特に荷電ポリマーとの会合を制限または妨害するpH依存性の電荷を運ぶ。さらに、疑似型タンパク質を含むパッケージ型ウイルスベクターは、in vitroおよびin vivoでコーティングの不安定化および破壊を受ける可能性があり、それによって細胞を非特異的に形質導入することができるウイルスベクターを放出し、安全性プロファイルの低下に潜在的につながっている。外膜タンパク質を欠いているベクターは、ポリマーを用いてウイルスベクターのパッケージングを強化することができる。外膜タンパク質を欠いているコーティングされたベクターは、外膜タンパク質を有するベクターと比較して安全性プロファイルが改善されている。これは、コーティングの不安定化または破壊後、細胞をin vitroまたはin vivoで形質導入することができないためである。ウイルスベクターがウイルス外膜タンパク質を欠いている現在の技術のナノ粒子は、遺伝子治療や免疫療法に使用するための安全機構を内
蔵している。なぜなら、ナノ粒子は、ベクターあたりのポリマー分子の閾値数を超える哺乳類細胞を形質導入できるからです。 ベクターあたりのポリマー分子の閾値を下回る場
合、ポリマー量はベクターを完全にコーティングするには不十分であり、ナノ粒子が構造的に不安定になったり、ナノ粒子からポリマー分子が解離されたりする可能性があります。 外膜タンパク質を欠いたベクターが効果的なポリマーコーティングを失うと、ヒト細
胞を含む哺乳類細胞を形質導入できなくなる。 かかるナノ粒子は、閾値機能を持たない
ベクターまたはポリマーカプセル化ベクターと比較して、in vivo使用のための安
全性プロファイルが改善されている。
【0014】
いくつかの実施態様において、疑似型化に使用されないベクター生成タンパク質など、ウイルス外膜や融合タンパク質ではなく、それ以外では膜外面にスパイク状の構造を形成しないタンパク質など、いくつかの膜タンパク質がウイルスベクター粒子の脂質膜に存在することがある。 本技術の特定の実施態様において、ウイルス外膜タンパク質は、外膜
脂質二重層の外面から突出した有意な質量を有するもの、例えば、外側の外膜面から突出するそれらの質量の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%、ウイルスベクター粒子から除外される。
【0015】
ナノ粒子組成物は、任意に、脂質分子、界面活性剤、核酸、タンパク質分子、または低分子薬などの追加成分を含有することができる。また、この技術では、ナノ粒子を 1 つ以上の賦形剤、キャリア、バッファー、塩、または液体とともに含む医薬品製剤または組成物を、送達手段を経口投与、鼻腔内投与、または非経口投与(静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内または腫瘍内注射など)、または ex vivo 遺伝子転送プロトコル での細胞へのin vitro 投与のためにじっくり検討する。 このような組成物および処方物
は、貯蔵中にそれらを安定させるために凍結乾燥させることもできる。
【0016】
本技術のウイルスベクターナノ粒子は、遺伝子送達手段として役立つ。ナノ粒子は、ポリマーまたはポリマー混合物を含む層で外面にコーティングされたウイルスベクターを含む。いくつかの実施態様において、ウイルスベクターは擬似型であり、融合促進外膜タンパク質を有し、導入遺伝子を含む。他の実施態様において、ウイルスベクターは任意のネイティブまたは組換え外膜タンパク質を欠いており、導入遺伝子を含む。 特定の実施態
様において、レトロウイルスベクターは類似のレトロウイルスベクターの外膜に一般に含まれ得るウイルス外膜タンパク質を特異的に欠いている。 特定の実施態様において、ウ
イルスベクターは、野生型のまたは改変されたVSV-G、HIV gp120、HIV gp41、MMTV gp52、MMTV gp36、MLV gp71、シンシチン、野
生型または改変されたシンドビスウイルス外膜タンパク質、などの自然発生または改変されたウイルスベクター外膜タンパク質、麻疹ウイルスヘマグルチニン(H)および融合(F)糖タンパク質、およびHEMOを欠いている。 他の実施態様において、ベクターは
そのような外膜タンパク質の1つまたは複数を含む。
【0017】
この技術のもう一つの側面は、上記のナノ粒子/遺伝子送達手段(ウイルスベクターナノ粒子)を作る方法である。 この方法には、次のステップが含まれる。(a) 外膜タンパク質を有すかまたは欠損し、導入遺伝子を含むウイルスベクターを提供する;(b)
ポリマーまたはポリマー混合物を提供する;(c)ウイルスベクターとポリマーまたはポリマー混合物の接触により、ウイルスベクターとポリマーが結合してナノ粒子を形成し、ナノ粒子には、ポリマーまたはポリマーの混合物でコーティングされたウイルスベクターが含まれている。
【0018】
この技術のさらなる側面は、上記のウイルスベクターナノ粒子(遺伝子送達手段)を用いて疾患を処置する in vivo 法である。この方法では、ナノ粒子を含む組成物を
必要としている被験者に非経口投与し、被験者内の細胞をウイルスベクターによって伝達
し、伝達された細胞内に導入遺伝子を発現させる必要がある。 1つの実施態様において
、処置すべき疾患は癌である。in vivo投与では、VSV-Gなどのウイルス外膜
タンパク質が存在しない実施態様が好ましい。これは、宿主内の非標的細胞を形質導入する能力がないため、および外膜タンパク質によって提供される細胞取り込みおよび/またはエンドソーム取り込みおよび/またはエンドソーム脱出を回復するポリマーカプセル化の使用によって提供されるより特異的な標的化に起因する。
【0019】
この技術のもう一つの側面は、in vitroで 細胞を形質導入する方法である。
この方法には、単離された生細胞と上記のウイルスベクターナノ粒子との接触が含まれ、それによって少なくとも一部の細胞がレトロウイルスベクターによって伝達され、治療タンパク質またはマーカータンパク質が伝達された細胞内で発現される。
【0020】
この技術のもう一つの側面では、in vitroで培養中の細胞または生体内の細胞
を、上記のナノ粒子/遺伝子送達手段と接触させ、細胞内で導入遺伝子を発現させる、遺伝子治療法が提供されている。 導入遺伝子は欠乏遺伝子を置換または修正したり、欠損
遺伝子を置換することができる。
【0021】
現在の技術は、以下の実施態様のリストでさらに要約することができる。
1.ポリマーまたはポリマー混合物で被覆されたウイルスベクターからなるナノ粒子で、ウイルスベクターは導入遺伝子を含み、そのナノ粒子は真核細胞に導入遺伝子を送達する手段として機能する。
2.実施態様1のナノ粒子で、ウイルスベクターが外膜タンパク質を欠いている。
3.実施態様1または実施態様2のナノ粒子で、このポリマーまたはポリマーの混合物は、式
【化2】
を有するポリ(β-アミノエステル)からなり、
ここで、各Pepはオリゴペプチドであり、ここで、RはOHであり、CH
3、 または
コレステロール;そして、mは1~20の範囲、nは1~100の範囲、そして、Oは1~10の範囲である。
【0022】
4. 各オリゴペプチドは、アルギニン(R)、グルタミン酸(E)、リジン(K)、ア
スパラギン酸(D)、ヒスチジン(H)、システイン(C)からなる群から選択される少なくとも3つのアミノ酸残基からなる、実施態様3のナノ粒子。
5. 少なくとも1つのオリゴペプチドのアミノ酸配列がCRRR(配列番号1)、また
はCHHH(配列番号2)、またはCKKK(配列番号3)、またはCEEE(配列番号4)、またはCDDD(配列番号5)である、実施態様3または4のナノ粒子。
6. ポリマーまたはポリマー混合物は、正味正電荷または正味負電荷をpH 7で有する、上記のいずれかの態様のナノ粒子。
7. ナノ粒子がベクターあたり108 ~1012個のポリマー分子を含有する、上記のいずれかの実施態様のナノ粒子。
【0023】
8.ナノ粒子がベクターあたり約109個の ポリマー分子を含有する、実施態様7のナ
ノ粒子。
9.ウイルスベクターがレトロウイルスベクターである、上記いずれかの態様のナノ粒子。
10.レトロウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、実施態様9のナノ粒子。
11.さらに、1つまたは複数のポリマー分子にリンクされた1つまたは複数の標的部分からなる、上記いずれかの態様のナノ粒子。
12.標的部分が、抗体、抗体断片、SCFV、抗体様タンパク質骨格、オリゴペプチド、アプタマー、L--RNAアプタマー、細胞表面受容体のためのリガンドからなる群か
ら選択される、実施態様11のナノ粒子。
13.標的部分が抗CD3抗体または抗CD3アプタマーである、実施態様12のナノ粒子。
【0024】
14.導入遺伝子がキメラ抗原受容体をコードする、上記いずれかの実施態様のナノ粒子。
15.約-15mVから約+15mVまでのゼータ電位を有する、上記いずれかの実施態様のナノ粒子。
16.VSV-G外膜タンパク質を欠いた、上記いずれかの実施態様のナノ粒子。
17.VSV-G外膜タンパク質を含む同様のナノ粒子と比較して、in vivo使用
のための安全性が改善されたプロファイルを有する、実施態様16のナノ粒子。
【0025】
18.ウイルスベクターにはウイルス外膜タンパク質がなく、ナノ粒子はベクターあたりのポリマー分子の閾値数を超える哺乳類細胞を形質導入できるだけである、上記いずれかの実施態様のナノ粒子。
19.以下のベクター当たりのポリマー分子の閾値数、ポリマー量は完全にベクターをコーティングするには不十分である、実施態様18のナノ粒子。
20.以下の前記ベクター当たりのポリマー分子の閾値数、ナノ粒子が、構造的に不安定であるか、またはナノ粒子からのポリマー分子の解離を受ける、実施態様18または実施態様19のナノ粒子。
21.前記閾値を欠いたベクターまたはポリマーカプセル化ベクターと比較して、in
vivo使用のための安全性プロファイルが改善された、実施態様18~20のいずれかのナノ粒子。
【0026】
22.上記のいずれかの実施態様のナノ粒子を作る方法で、以下のステップからなる方法:
(a)導入遺伝子を含むウイルスベクターを提供すること;
(b)ポリマーまたはポリマー混合物の提供、および任意で1つまたは複数の標的部分を提供すること;および
(c)ウイルスベクターとポリマーまたはポリマーの混合物とを接触させ、任意に1つまたは複数の標的部分と接触させ、これによって、ウイルスベクターとポリマーまたはポリマーの混合物が結合し、前記ナノ粒子を形成すること。
23.ウイルスベクターは、外膜タンパク質を欠いている、実施態様22の方法。
24.ステップ(c)が 約5.0~6.5のpHで行われる、実施様態22または実施
態様23の方法。
【0027】
25.ステップ (c)が 約5.5~6.0のpHで行われる、実施態様24の方法 。
26.ポリマーまたはポリマーの混合物が、式
【化3】
を有するポリ(β-アミノエステル)からなる、実施態様22~25のいずれかの方法;ここで、各Pepはオリゴペプチドであります; RはOH、CH
3 、またはコレステロ
ール;そして、mは1~20、nは1~100、およびOは1~10である。
【0028】
27.各オリゴペプチドが、R、E、K、D、HおよびCからなる群から選択される、少なくとも3つのアミノ酸残基からなる、実施態様26の方法。
28.少なくとも1つのオリゴペプチドのアミノ酸配列が、CRRR(配列番号1)、またはCHHH(配列番号2)、またはCKKK(配列番号3)、またはCEEE(配列番号4)、またはCDDD(配列番号5)である。
29.ポリマーまたはポリマーの混合物が、pH 7で正味正電荷または正味負電荷を有
する、実施態様22~28のいずれかの方法。
30.ナノ粒子が、108~1012 のポリマー分子を含む、実施態様22~29のいずれかの方法。
【0029】
31.ナノ粒子が約109 ~1010 のポリマー分子を含む、実施態様30の方法。
32.前記レトロウイルスベクターは、レトロウイルスベクターである、実施態様22~31のいずれかの方法。
33.前記レトロウイルスベクターがレンチベクターである、実施態様32の方法。
34.さらに、前記ベクターを1つまたは複数の標的部分と接触させ、任意で標的部分が、ポリマーまたは粒子の混合物と結合されていることを含む、実施態様22~33の方法。
【0030】
35.標的部分が、抗体、抗体断片、SCFV、抗体様タンパク質骨格、オリゴペプチド、アプタマー、L-RNAアプタマー、細胞表面受容体に対するリガンドからなる群から選択される実施態様34の方法。
36.標的部分が、抗CD3抗体または抗CD3アプタマーである、実施態様35の方法。
37.導入遺伝子が、キメラ抗原受容体をコードする、実施態様22~36のいずれかの方法。
38.ウイルスベクターが、VSV-G外膜タンパク質を欠いている、実施態様22~37のいずれかの。
【0031】
39.ステップ(c)が、ポリマーまたはポリマーの混合物が正味正電荷を有し、レトロウイルスベクターが負の表面電位を有するpHで行われる、実施態様22~38のいずれかの方法。
40.疾患の処置法であり、実施態様1~21のいずれかの複数のナノ粒子からなる組成物をその必要としている対象に投与し、その対象の細胞をレトロウイルスベクターによって伝達し、伝達された細胞内に導入遺伝子を発現させる方法。
41.疾患が癌である、実施態様40の方法。
42.対象が人間である、実施態様40または実施態様41の方法。
43.in vitroで細胞を伝達する方法であって、その方法は培養細胞を実施態様
1~21の複数のナノ粒子と接触させることからなり、それによって培養細胞のうち少なくとも一部がレトロウイルスベクターによって形質導入され、導入遺伝子が特異的に形質導入された細胞に発現される前記方法。
【0032】
44.ナノ粒子をCD3陽性細胞を標的とし、導入遺伝子がCD3陽性細胞で特異的に発現される、実施態様43の方法。
45.導入遺伝子がキメラ抗原受容体をコードする、実施態様43または実施態様44の方法。
46.遺伝子治療を行う方法で、in vitro または生体内で実施態様1~21のい
ずれかの複数のナノ粒子と細胞を接触させることからなり、それによって導入遺伝子が細胞内に発現される前記方法。
47.ポリマーまたはポリマー混合物で被覆されたウイルスベクターからなるナノ粒子で、ウイルスベクターはレベルが低下した外膜タンパク質からなり、導入遺伝子を含み、そのナノ粒子は真核細胞に導入遺伝子を送達する手段として機能し、低下した外膜タンパク質のレベルは、ベクターの細胞侵入およびベクターによる細胞の形質導入を促進するのに不十分である前記ナノ粒子。
48.外膜タンパク質のレベル低下は、ベクターが導出された機能性ウイルスにおける外膜タンパク質の量の5%以下である、実施態様47のナノ粒子。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1A】
図1Aは、遺伝子送達のためのナノ粒子の実施態様の概略図を示している。 ナノ粒子は、外膜タンパク質を欠いたポリマーカプセル化ウイルスベクター粒子を含有する。
【
図1B】
図1Bは、ウイルスベクターが外膜タンパク質を有する遺伝子送達のためのナノ粒子の別の実施態様の概略図を示している。
【
図2】
図2は、ウイルスベクターが複数のポリマー層にカプセル化されている、遺伝子送達のためのナノ粒子の実施態様の概略図を示している。 ウイルスベクター外膜タンパク質は、描かれていないが、いくつかの実施態様に存在することがある。
【
図3】
図3は、遺伝子送達のためのナノ粒子の実施態様の概略図を示したもので、ナノ粒子はポリマー層(ポリマー多層を使用する場合は外側ポリマー層)に付着した標的部分を含む。
【
図4A】
図4A~4Cは、GFP導入遺伝子を含むレンチウイルスベクターで細胞を形質導入するプロセスの概略図(
図4A)で、抗VSV-G抗体を使用して形質導入を阻害し(
図4B)、 ベクター粒子のポリマーカプセル化による抗体媒介阻害を防止する(
図4C)。
【
図4B】
図4A~4Cは、GFP導入遺伝子を含むレンチウイルスベクターで細胞を形質導入するプロセスの概略図(
図4A)で、抗VSV-G抗体を使用して形質導入を阻害し(
図4B)、 ベクター粒子のポリマーカプセル化による抗体媒介阻害を防止する(
図4C)。
【
図4C】
図4A~4Cは、GFP導入遺伝子を含むレンチウイルスベクターで細胞を形質導入するプロセスの概略図(
図4A)で、抗VSV-G抗体を使用して形質導入を阻害し(
図4B)、 ベクター粒子のポリマーカプセル化による抗体媒介阻害を防止する(
図4C)。
【
図5A】
図5A~5Cは、
図4A~4Cに描かれているようなプロセウイルスベクターを使用する。
【
図5B】
図5A~5Cは、
図4A~4Cに描かれているようなプロセウイルスベクターを使用する。
【
図5C】
図5A~5Cは、
図4A~4Cに描かれているようなプロセウイルスベクターを使用する。
【
図6A-1】
図6A~6Fは、示されたPBAEポリマーでカプセル化されたハゲレンチウイルスベクター上のゼータ電位測定結果を示している。
【
図6A-2】
図6A~6Fは、示されたPBAEポリマーでカプセル化されたハゲレンチウイルスベクター上のゼータ電位測定結果を示している。
【
図6A-3】
図6A~6Fは、示されたPBAEポリマーでカプセル化されたハゲレンチウイルスベクター上のゼータ電位測定結果を示している。
【
図6A-4】
図6A~6Fは、示されたPBAEポリマーでカプセル化されたハゲレンチウイルスベクター上のゼータ電位測定結果を示している。
【
図6A-5】
図6A~6Fは、示されたPBAEポリマーでカプセル化されたハゲレンチウイルスベクター上のゼータ電位測定結果を示している。
【
図6A-6】
図6A~6Fは、示されたPBAEポリマーでカプセル化されたハゲレンチウイルスベクター上のゼータ電位測定結果を示している。
【
図6A】
図6A~6Fは、示されたPBAEポリマーでカプセル化されたハゲレンチウイルスベクター上のゼータ電位測定結果を示している。
【
図6B】
図6A~6Fは、示されたPBAEポリマーでカプセル化されたハゲレンチウイルスベクター上のゼータ電位測定結果を示している。
【
図6C】
図6A~6Fは、示されたPBAEポリマーでカプセル化されたハゲレンチウイルスベクター上のゼータ電位測定結果を示している。
【
図6D】
図6A~6Fは、示されたPBAEポリマーでカプセル化されたハゲレンチウイルスベクター上のゼータ電位測定結果を示している。
【
図6E】
図6A~6Fは、示されたPBAEポリマーでカプセル化されたハゲレンチウイルスベクター上のゼータ電位測定結果を示している。
【
図6F】
図6A~6Fは、示されたPBAEポリマーでカプセル化されたハゲレンチウイルスベクター上のゼータ電位測定結果を示している。
【
図7】
図7は、組成およびpHが異なる処方物バッファーにおけるインキュベーション時間の関数として、GFP導入遺伝子を含むレンチウイルスベクターを用いたHEK293T細胞の形質導入の結果を示している。
【
図8A】
図8A~8Hは、組成およびpHが変化する示された処方物バッファーにおけるインキュベーション時間(時間)を増加させた後に放出される遊離p24の関数としてのVSV-Gタンパク質を欠いたレンチウイルスベクターの物理的安定性を示している。
図8A~8DはLV解離のp24を示し、
図8E~8HはLVから解放された遊離のp24を示している。
【
図8B】
図8A~8Hは、組成およびpHが変化する示された処方物バッファーにおけるインキュベーション時間(時間)を増加させた後に放出される遊離p24の関数としてのVSV-Gタンパク質を欠いたレンチウイルスベクターの物理的安定性を示している。
図8A~8DはLV解離のp24を示し、
図8E~8HはLVから解放された遊離のp24を示している。
【
図8C】
図8A~8Hは、組成およびpHが変化する示された処方物バッファーにおけるインキュベーション時間(時間)を増加させた後に放出される遊離p24の関数としてのVSV-Gタンパク質を欠いたレンチウイルスベクターの物理的安定性を示している。
図8A~8DはLV解離のp24を示し、
図8E~8HはLVから解放された遊離のp24を示している。
【
図8D】
図8A~8Hは、組成およびpHが変化する示された処方物バッファーにおけるインキュベーション時間(時間)を増加させた後に放出される遊離p24の関数としてのVSV-Gタンパク質を欠いたレンチウイルスベクターの物理的安定性を示している。
図8A~8DはLV解離のp24を示し、
図8E~8HはLVから解放された遊離のp24を示している。
【
図8E】
図8A~8Hは、組成およびpHが変化する示された処方物バッファーにおけるインキュベーション時間(時間)を増加させた後に放出される遊離p24の関数としてのVSV-Gタンパク質を欠いたレンチウイルスベクターの物理的安定性を示している。
図8A~8DはLV解離のp24を示し、
図8E~8HはLVから解放された遊離のp24を示している。
【
図8F】
図8A~8Hは、組成およびpHが変化する示された処方物バッファーにおけるインキュベーション時間(時間)を増加させた後に放出される遊離p24の関数としてのVSV-Gタンパク質を欠いたレンチウイルスベクターの物理的安定性を示している。
図8A~8DはLV解離のp24を示し、
図8E~8HはLVから解放された遊離のp24を示している。
【
図8G】
図8A~8Hは、組成およびpHが変化する示された処方物バッファーにおけるインキュベーション時間(時間)を増加させた後に放出される遊離p24の関数としてのVSV-Gタンパク質を欠いたレンチウイルスベクターの物理的安定性を示している。
図8A~8DはLV解離のp24を示し、
図8E~8HはLVから解放された遊離のp24を示している。
【
図8H】
図8A~8Hは、組成およびpHが変化する示された処方物バッファーにおけるインキュベーション時間(時間)を増加させた後に放出される遊離p24の関数としてのVSV-Gタンパク質を欠いたレンチウイルスベクターの物理的安定性を示している。
図8A~8DはLV解離のp24を示し、
図8E~8HはLVから解放された遊離のp24を示している。
【
図9】
図9は、VSV-Gタンパク質を欠き、Rポリマー/ベクター粒子比、処方物バッファー組成およびpHの関数としてGFP導入遺伝子を含む、レンチウイルスベクターでのHEK293T細胞の形質導入の結果を示している。
【
図10】
図10は、
図9のような実験結果でを示すが、両ポリマーがコレステロールと共役または共役していないR/Hポリマーミックスを用いた結果を示している。
【
図11】
図11は、
図9と同様であるが、GFP導入遺伝子を含む擬似型レンチウイルスベクターを用いた実験結果を示している。
【
図12】
図12は、VSV-G抗体の有無にかかわらず、示されたPBAEポリマーをポリマー分子/細胞比で使用してカプセル化したVSV-G+レンチベクターを使用した形質導入後のGFP発現および細胞生存率の結果を示している。 データは正規化され、抗体が存在しない場合の形質導入を100%にする。
【
図13A】
図13A~13Dは、示されたPBAEポリマーおよびポリマー分子/細胞比を使用してカプセル化したVSV-G
-(禿げた)レンチベクターを使用した形質導入後のmCherryの発現と細胞生存率の結果を示している。
【
図13B】
図13A~13Dは、示されたPBAEポリマーおよびポリマー分子/細胞比を使用してカプセル化したVSV-G
-(禿げた)レンチベクターを使用した形質導入後のmCherryの発現と細胞生存率の結果を示している。
【
図13C】
図13A~13Dは、示されたPBAEポリマーおよびポリマー分子/細胞比を使用してカプセル化したVSV-G
-(禿げた)レンチベクターを使用した形質導入後のmCherryの発現と細胞生存率の結果を示している。
【
図13D】
図13A~13Dは、示されたPBAEポリマーおよびポリマー分子/細胞比を使用してカプセル化したVSV-G
-(禿げた)レンチベクターを使用した形質導入後のmCherryの発現と細胞生存率の結果を示している。
【
図14A】
図14A~14Fは、ヒトリンパ球の非カプセル化VSV-G
+レンチウイルスベクター(14A)、非カプセル化禿げたLV(14B)、PBAEカプセル化禿げたLV(14C)、およびモデル標的部分PGA-抗-CD3ファブでPBAEカプセル化した禿げたLVの形質導入の結果を示し、これらはすべて、蛍光活性化細胞選別によって分析される(CD3抗体ラベリングおよびGFP発現の比較)。
図14Eでは、リンパ球もCD19専用のCARで形質導入され、CD19のCAR発現に対してCD3を発現する細胞がプロットされている。
図14Fでは、
図9Eと同じリンパ球がヒトCD19+がん細胞(ラモス細胞)と接触させて、4時間後にCD19+細胞の喪失によってがん細胞に対する細胞毒性が評価された。
【
図14B】
図14A~14Fは、ヒトリンパ球の非カプセル化VSV-G
+レンチウイルスベクター(14A)、非カプセル化禿げたLV(14B)、PBAEカプセル化禿げたLV(14C)、およびモデル標的部分PGA-抗-CD3ファブでPBAEカプセル化した禿げたLVの形質導入の結果を示し、これらはすべて、蛍光活性化細胞選別によって分析される(CD3抗体ラベリングおよびGFP発現の比較)。
図14Eでは、リンパ球もCD19専用のCARで形質導入され、CD19のCAR発現に対してCD3を発現する細胞がプロットされている。
図14Fでは、
図9Eと同じリンパ球がヒトCD19+がん細胞(ラモス細胞)と接触させて、4時間後にCD19+細胞の喪失によってがん細胞に対する細胞毒性が評価された。
【
図14C】
図14A~14Fは、ヒトリンパ球の非カプセル化VSV-G
+レンチウイルスベクター(14A)、非カプセル化禿げたLV(14B)、PBAEカプセル化禿げたLV(14C)、およびモデル標的部分PGA-抗-CD3ファブでPBAEカプセル化した禿げたLVの形質導入の結果を示し、これらはすべて、蛍光活性化細胞選別によって分析される(CD3抗体ラベリングおよびGFP発現の比較)。
図14Eでは、リンパ球もCD19専用のCARで形質導入され、CD19のCAR発現に対してCD3を発現する細胞がプロットされている。
図14Fでは、
図9Eと同じリンパ球がヒトCD19+がん細胞(ラモス細胞)と接触させて、4時間後にCD19+細胞の喪失によってがん細胞に対する細胞毒性が評価された。
【
図14D】
図14A~14Fは、ヒトリンパ球の非カプセル化VSV-G
+レンチウイルスベクター(14A)、非カプセル化禿げたLV(14B)、PBAEカプセル化禿げたLV(14C)、およびモデル標的部分PGA-抗-CD3ファブでPBAEカプセル化した禿げたLVの形質導入の結果を示し、これらはすべて、蛍光活性化細胞選別によって分析される(CD3抗体ラベリングおよびGFP発現の比較)。
図14Eでは、リンパ球もCD19専用のCARで形質導入され、CD19のCAR発現に対してCD3を発現する細胞がプロットされている。
図14Fでは、
図9Eと同じリンパ球がヒトCD19+がん細胞(ラモス細胞)と接触させて、4時間後にCD19+細胞の喪失によってがん細胞に対する細胞毒性が評価された。
【
図14E】
図14A~14Fは、ヒトリンパ球の非カプセル化VSV-G
+レンチウイルスベクター(14A)、非カプセル化禿げたLV(14B)、PBAEカプセル化禿げたLV(14C)、およびモデル標的部分PGA-抗-CD3ファブでPBAEカプセル化した禿げたLVの形質導入の結果を示し、これらはすべて、蛍光活性化細胞選別によって分析される(CD3抗体ラベリングおよびGFP発現の比較)。
図14Eでは、リンパ球もCD19専用のCARで形質導入され、CD19のCAR発現に対してCD3を発現する細胞がプロットされている。
図14Fでは、
図9Eと同じリンパ球がヒトCD19+がん細胞(ラモス細胞)と接触させて、4時間後にCD19+細胞の喪失によってがん細胞に対する細胞毒性が評価された。
【
図14F】
図14A~14Fは、ヒトリンパ球の非カプセル化VSV-G
+レンチウイルスベクター(14A)、非カプセル化禿げたLV(14B)、PBAEカプセル化禿げたLV(14C)、およびモデル標的部分PGA-抗-CD3ファブでPBAEカプセル化した禿げたLVの形質導入の結果を示し、これらはすべて、蛍光活性化細胞選別によって分析される(CD3抗体ラベリングおよびGFP発現の比較)。
図14Eでは、リンパ球もCD19専用のCARで形質導入され、CD19のCAR発現に対してCD3を発現する細胞がプロットされている。
図14Fでは、
図9Eと同じリンパ球がヒトCD19+がん細胞(ラモス細胞)と接触させて、4時間後にCD19+細胞の喪失によってがん細胞に対する細胞毒性が評価された。
【
図15】
図15は、示された各ベクターと力価で処理した後、マウスPBMC集団における形質導入(GFP発現)の結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【発明の詳細な説明】
【0034】
パッケージ化されたウイルスベクターナノ粒子組成物により、遺伝子治療やワクチン使用に遺伝子物質の送達を充実させることができます。 これらの組成物は、ポリマーまた
はポリマーの混合物によってカプセル化されたウイルスベクターを含む。 ポリマーシェ
ルは、対象に非経口投与された後の血流および組織内のウイルスベクター粒子を保護し、一部の実施態で様では標的細胞へのベクター送達を支援することができる。
【0035】
図1Aと1Bは、現在の技術によれば、ウイルスベクターナノ粒子の2つの実施態様を示し、本明細書では遺伝子送達手段とも呼ばれる。この手段の基本構造は、ポリマーシェル11によってカプセル化されたレトロウイルスベクターを含む、ナノ粒子10である。
レトロウイルスベクターには、膜エンベロープ12、外膜内に配置されたタンパク質キ
ャプシド(外殻)13、およびキャプシド内に配置された1つ以上の核酸分子14が含ま
れる。ウイルス外皮は、脂質二層ベースの構造であり、
図1Bに示す実施態様において、1つまたは複数の種類のウイルス外皮または融合タンパク質20が二層膜内に埋め込まれ、または結合され;そのような外皮または融合タンパク質は、
図1Aに示す実施態様に欠けている。 外膜タンパク質の有無にかかわらず、ウイルスベクター外皮は、ポリマーマ
トリックス11によって、機能的にも本質的にも完全にカプセル化される。 ベクター粒
子は、複数のポリマーシェルつまり、多層ポリマーシェルによってカプセル化することができる(
図2参照)。
図3は、標的部分40がポリマーシェルと会合している実施態様
を示している。
【0036】
いくつかの実施態様において、本技術は、ウイルスベクター粒子がウイルス外膜タンパク質を欠いている合成ウイルスベクター、特にレンチウイルスベクターの新規生成を提供する。この新しいプラットフォーム技術は、外膜タンパク質を含有するウイルスベクター粒子を使用する場合と比べて、一過性形質導入によるウイルスベクター粒子の安価な生成など、いくつかの利点をもたらす。
1)ウイルス外膜タンパク質のプラスミドコーディングの除去と、ベクターが生産中に産生細胞を伝達しないという事実のために、外膜タンパク質を削除すると有用な生産時間、したがって生成されたベクターの収量が増加する。
2)外膜タンパク質を欠いているベクターは、ウイルス外膜タンパク質を欠いているコーティングされていないベクターは細胞を形質導入できず、免疫原性が低下しているため、
in vivo遺伝子治療に用いる方が安全である。
3) 外膜タンパク質を欠いているベクターは、特定のポリマー媒介ターゲティングの使
用により、より高い精度と効率の形質導入を提供する。
4)ポリマーカプセル化ウイルスベクター、特にレンチウイルスベクターは、通常の(コーティングされていない)ウイルスベクターよりも低pHで安定であり、特にエンドソームの取り込み機構が関与している場合に、その安定性と使用効率が改善される。
【0037】
ウイルスベクター粒子からのウイルス外膜タンパク質の除去は、ポリマーコーティングされたウイルスベクター粒子の使用と特に両立し得る。なぜなら、それは本質的に細胞を形質導入するコーティングされていないベクター粒子の能力を排除し、ポリマーコーティングが特定の標的化を提供することができるからであり、したがって、非標的細胞を形質導入するリスクが大幅に低減される。 さらに、ウイルス外膜タンパク質の除去は、ポリ
マー分子とベクター外皮表面との密接な会合を促進し、ウイルス外膜タンパク質を含むポリマーコーティングされたウイルスベクター粒子と比較して、より高い安定性とより信頼性の高い標的化を提供する。
【0038】
ベクターのナノ粒子形を生成するには、高分子分子がベクター粒子にしっかりと付着する必要があります。その結果、より堅牢なナノ粒子構造とより安定したベクターが得られ、静脈内投与などによって患者に投与すると、より良好な活性およびより長い半減期を示す。
【0039】
ポリ (β-アミノエステル)ナノ粒子
現在の技術では、ウイルスベクターが「外膜タンパク質の欠如」とは、ベクター外皮の外皮、特に脂質二層膜は、外膜ウイルスの表面に典型的に見られる如何なるタンパク質をも欠いていることを意味します。それらは、例えば、Envタンパク質複合体、またはHIV gp120-gp41複合体によって例示される複合体またはウイルスエンベロープ
糖タンパク質、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSV-G)、インフルエンザウイルスヘマグルチニン、麻疹ウイルスHおよびFタンパク質、および野生型または修飾シンドビスウイルス外膜タンパク質などの自然発生のまたは修飾した形態におけるものである。このようなタンパク質は、現在の技術のベクターナノ粒子が欠けている場合、もしあれば、ベクター外皮の脂質二層から外側に向かって投影し、外側のポリマー層と脂質二層の
間に必要な安定した接触を妨げます。
【0040】
異なる実施態様において、現在の技術のウイルスベクターナノ粒子は、i)外膜タンパク質が完全に欠けている、ii)外膜タンパク質が本質的に欠けている(すなわち、典型的なウイルスベクター粒子の0.1%以下の微量しか含まれていない)、またはiii)外膜タンパク質が少量、例えば典型量の10%未満、5%未満、3%未満、2%未満、1%未満である。 外膜タンパク質の典型的な量は、外膜タンパク質に依存するウイルスベ
クター粒子中に存在する量、または無傷の機能性ウイルス粒子の外皮中に存在する量である。ウイルスベクターの外皮は、例えば、ベクターを生成する細胞内で発現中に外膜タンパク質をコードする遺伝子を排除することによって、エンベロープタンパク質を完全に欠くように設計することができる。 しかし、エンベロープの外面にスパイク状の構造を形
成しない膜埋め込まれたタンパク質または膜付着タンパク質は、特定の実施態様において、ウイルスベクターナノ粒子の脂質二層に存在することがある。
【0041】
1つの実施態様において、ウイルスベクターナノ粒子を形成するために使用されるポリマーには、1種以上の式
【化4】
を有するポリ(β-アミノエステル)(PBAE)が含まれる;
ここで、Pepはオリゴペプチドであり、RはOH、CH
3 、またはコレステロール、
リン脂質分子、または脂肪酸またはアシル鎖であり、mは好ましくは1~20の範囲であり、nは好ましくは1~100の範囲であり、oは1~10の範囲である。 他のポリマ
ーおよびその互いのおよびPBAEとの混合物は、ウイルスベクター粒子をカプセル化するために使用することができる。単層または多重層脂質リポソームまたは界面活性剤および/または脂質分子を含むミセル様構造のような形態におけるなどの脂質を用いたさらなるコーティング機構も同様に利用することができる。 このようなコーティングは、エン
ベロープタンパク質を欠いているウイルスベクター粒子(「はげた」ベクター)をカプセル化するのに特に有用である。
【0042】
PBAEはDNAとRNAの両方を凝縮して離散的なナノ粒子を送達する非ウイルス性ポリヌクレオチドとして記載されている(Green, J.J. et al. Acc. Chem. Res. 41, 749-759 (2008))。しかし、それらは低い形質導入効率と高い毒性を示している。PBAEはジ(アクリレートエステル)モノマーとアミンモノマーとの反応から形成でき、末端のアクリレート基を持つポリマーが得られ、末端修飾で機能化できる。末端基は、高分子またはオリゴマーの端部にある機能性または構成単位である。PBAEを末端修飾することで、生物学的特性の改善が可能になる。例えば、一次アミンでのPBAEの末端での化学修飾は、アクリレート停止ポリマーよりも高いトランスフェクション効果を生み出す。 あ
るいは、PBAEをオリゴペプチドで末端修飾することもでき、オリゴペプチドは、特定のオリゴペプチド配列に応じて、特定の細胞タイプにベクターを標的とすることができる。 本明細書で定義される「オリゴペプチド」は、ペプチド結合によって結合されたアミ
ノ酸を少なくとも2つまたはいくつかの実施態様において、少なくとも3つのアミノ酸の列からなるものである。 適切に修飾されたPBAEの例については、WO2014/1
36100号およびWO2016/116887号に記載されており、これらは参照により本明細書に組み入れられる。
【0043】
いくつかの実施態様において、オリゴペプチドペプチドは、アルギニン(R)、グルタ
ミン酸(E)、リシン(K)、アスパラギン酸(D)、ヒスチジン(H)、システイン(C)からなる群から選択された1つ、2つ、3つ、4つ、5つ以上のアミノ酸からなる。いくつかの実施態様において、オリゴペプチドは、生理的条件下で正に帯電する(R、K、またはHなど)、または少なくとも部分的に正に帯電する、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のアミノ酸を含有する。 他の実施態様では、オリゴペプチドは、正に帯電した
アミノ酸が存在しない場合か、正に帯電したアミノ酸と混合されたいずれか1つまたは複数の負に帯電したアミノ酸(DまたはEなど)を含有する。 実施例に示されたデータは
、負に帯電したアミノ酸を含めると、おそらくエンドソーム脱出を改善することによって、はげたレンチウイルスベクターの性能が向上することが明らかである。ポリマーの両端にあるオリゴペプチドまたはポリマーの混合物からなるポリマーは、好ましくは同一である。
【0044】
PBAEナノ粒子は、患者の循環を通過する間、ベクターがそのまま維持されることを保証する。ナノ粒子は、ウイルスベクターを宿主の免疫系から遮蔽するのを助けることができる。例えば、請求項に記載のナノ粒子は、抗ウイルス外皮中和抗体の存在下でも高い導入効率を維持することができる。 さらに、この粒子は、ベクターが所望の免疫細胞の
みを核酸導入することを保証することができる。ナノ粒子の修飾および/または標的部分の存在により、ナノ粒子を対象組織に特異的に誘導することができる。
【0045】
好ましくは、現在の技術で採用されているPBAEは、1,000~100,000g/mol、より好ましくは2,000~50,000g/mol、さらに好ましくは5,000~40,000g/molの分子量を有する。
【0046】
ウイルスベクター外皮をコーティングするポリマー層またはシェルは、単一の均一なポリマー層を形成するか、同じまたは異なるポリマーの2つ以上の重なり合う層、または異なる正味電荷または架橋度を有するポリマーを形成することができる。 他の非PBAE
ポリマーは、PBAEと混合したり、PBAE層の上または下に添加してポリマーシェルを形成することができる。
【0047】
ナノ粒子の表面電荷(または表面電位またはゼータ電位)は、組織標的および細胞伝達において重要であり、ポリマー修飾によって微調整することができる。 好ましくは、使
用の生理的条件下でのナノ粒子のゼータ電位は、約-30mV~約+30mVの範囲にあるか、より好ましくは約-15mV~約+15mVの範囲にある。 ポリマーナノ粒子は
、1種類のポリマーまたは複数種類のポリマーを含むことができる。 いくつかの実施態
様において、ポリマーコーティングは、単層コーティング、二層コーティング、または多層コーティングを形成する。
図2は、レトロウイルスベクターをカプセル化した異なるポリマーコーティングの第1層30、第2層31、第3層32を含むベクターナノ粒子の実施態様を示している。 いくつかの実施態様において、多層コーティングは、陰イオン性
および陽イオン性ポリマーを含む。
【0048】
いくつかの実施態様において、陽イオン性ポリマーは1つまたは複数のPBAEを含む。 いくつかの実施態様において、陰イオン性ポリマーは、ポリグルタミン酸(PGA)
、硫酸コンドロイチンおよび/またはヒアルロン酸である。 ある実施態様では、ウイル
スベクターは、交互正味電荷を有する交互層のようなポリマーの2つ以上の層内にカプセル化される。すなわち、正に帯電した層の後に負に帯電した層が続き、次に正に帯電した層が続く。
【0049】
いくつかの実施態様では、ナノ粒子の正味電荷はpH7で正である。いくつかの実施態様では、ナノ粒子の正味電荷はpH7で負である。 いくつかの実施態様では、ナノ粒子
の正味電荷は組織に依存する。 いくつかの実施態様では、粒子は負に帯電するが、腫瘍
微小環境では正に帯電する。いくつかの実施態様では、粒子は特定の化学結合の崩壊または切断によって弱酸性の腫瘍微小環境およびエンド/リソソームに応答し、これにより、下のPBAE層が露出し、「プロトンスポンジ」効果を発揮する。
【0050】
本明細書で使用されているように、「ナノ粒子」という用語は、直径約1~1000nmの固体粒子をいう。 現在の技術のナノ粒子の平均直径は、公知技術で知られている方
法、好ましくは動的光散乱によって決定することができる。 特に、本技術は、フィルタ
ーPBSで適切に希釈した試料と、Malvern Instruments (UK)のZETASIZER instrumentの1つなどの適切な機器を用いて、散乱角90°、温度25℃の動的光散乱で分析した場合、直径約1~約1000nmの固体粒子であるナノ粒子に関する。粒子の直径がx nm
であると言われる場合、一般的にこの平均値に関する粒子の分布が存在するが、粒子の少なくとも数で50%(例:>60%、>70%,>80%、>90%、またはそれ以上)
は、x±20%の範囲内の直径を持つことになる。
【0051】
ナノ粒子の直径は5nm程度~999nm程度とすることができ、好ましくは50nm程度~400nm程度、より好ましくは100nm程度~300nm程度である。あるいは、ナノ粒子の直径は約10~100nmであり得る。 ある実施態様において、ナノ粒
子は10%未満、好ましくは5%未満、好ましくは1%未満の凝集度を示す。 好ましく
は、ナノ粒子は、透過電子顕微鏡または他の方法によって決定されるように、実質的に非凝集である。
【0052】
レトロウイルスベクター
レトロウイルスは、宿主ゲノムに安定した方法で統合する能力を有するRNAウイルスである。 好ましい実施態様において、遺伝子送達手段におけるレトロウイルスベクター
はレンチウイルスベクターである。 レンチウイルスベクターは、レトロウイルス科の遅
いウイルスの属を表すレンチウスに由来する。レンチウスは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、シミアン免疫不全ウイルス(SIV)、ウマ感染性脳炎ウイルス(EIAV)、カプリン関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)などを含む。レンチウイルスは、分裂細胞と非分裂細胞のゲノムに統合することができる。さらに、ホストに無期限に保持され、継続的に複製される。本明細書に記載されているいくつかの実施態様では、レンチウイルスベクターはカプシドを有するが、外膜タンパク質を欠いている。 好ましくは、ベクターは、意図された宿主ま
たは処置対象の細胞において非複製である。好ましくは、ベクターは、非標的細胞の遺伝子発現を伝達または変化させない。 ましくは、ベクターは病原性を引き起こす遺伝子、
特に標的でない細胞の意図しない細胞死を誘発するものとして現れる病原性を欠いている。
【0053】
レンチウイルスベクターは、免疫療法のツールとしていくつかの利点を示す。 それら
は他のベクターと比較して毒性が少なく、樹状細胞を含む非分裂細胞を伝達することができる (He et al.2007年、Expert Rev Vaccines, 6 (6): 913-24)。 しかし、レンチウイ
ルスは、in vivoでの複製に必要とされる付属遺伝子(例:vif、vpr、vp
u、nef、tat、rev)の存在により、他のレトロウイルスよりも複雑である。
【0054】
統合的だが複製欠陥のあるレンチウイルスベクターの生物生産は、レンチウイルスのシスおよびトランス作用配列の分離に基づいている。 非分裂細胞における形質導入には、
レンチチウイルスゲノム内に2つのシス作用配列、中心ポリ尿管(CPpT)および中心停止配列(CTS)が存在することが必要である。 これは三本鎖DNA「フラップ」の
形成につながり、樹状細胞(DC)を含む非分裂細胞の核への遺伝子輸入の効率を最大化する(Zennou et al., 2000, Cell, 101 (2) 173-85; Arhel et al., 2007, EMBO J, 26 (12): 3025-25 37)。さらに、LTR U3配列の除去により、ウイルスプロモータおよび
エンハンサー配列が全くなく、より安全な「自己不活性化」ベクターが得られた。
【0055】
レンチウイルスベクターを含むレンチウイルス粒子は、DNAプラスミドの組み合わせを用いて、HEK 293細胞(T抗原の有無に関わらず、懸濁液中で付着または成長す
る)の一過性トランスフェクションによって生成することができる。前記DNAプラスミドの組み合わせは、例えば、(i) Gag、Pol、Rev、Tat、を発現するパッ
ケージングプラスミドおよび任意に構造的プラスミド転写構造物のパッケージングに必要なタンパク質または酵素;(ii)包装、逆転写および統合に必要な発現カセットおよびHIVシス作用因子を含むプロウイルス転写プラスミド;(iii)外膜タンパク質、多種多様な細胞、特に樹状細胞(DC)やマクロファージを含む、抗原提示細胞(APC)を形質導入できる、混合粒子(疑似型)の形成を可能にするタンパク質をコードするプラスミド水疱性口内炎ウイルス(VSV-G)である。
【0056】
現在の技術では、外膜タンパク質をコードするプラスミドは、特定の実施態様では完全に省略され、他の実施態様では含まれているが、その発現は低いレベルで維持される。
また、細胞ゲノムにパッケージング遺伝子やプロウイルスコードDNAを安定的に挿入することで、レンチウイルス粒子ベクターを連続的に生成することもできる。 内蔵プラス
ミドと過渡トランスフェクションの組み合わせも使用し得る。 しかしながら、特定の実
施態様において、本明細書に記載された遺伝子送達手段での使用に適したレンチウイルスベクターには外膜タンパク質がないことに留意すべきである。
【0057】
外膜タンパク質を欠いた非積分レンチウイルスベクターは、遺伝子移動手段にも使用できる。非積分レンチウイルスベクターの例は、Coutant et al., PLOS ONE 7 (11): e48644 (2102); Karwacz et al., J. Virol. 83 (7): 3094-3103 (2009); Negri et al., Molecular Therapy 15 (9): 1716-1723 (2007); and Hu et al., Waccine 28:6675-6683 (2010)に見受けられる。
【0058】
プロウイルス配列の5’LTRにはU3がないので、導入遺伝子の発現は内部プロモータによって駆動される。CMVプロモータなどのウイルスプロモータは、好ましくは強力なエンハンサーの存在のために使用されない。 ユビキタスプロモータは、ユビキチン、
PGK、β-アクチン、GAPDH、β-キネシンなどをコードするヒト遺伝子のプロモ
ータとして使用することができます。あるいは、ヒトMHCクラスI遺伝子のプロモータなど、T細胞やAPCにおいて活性なプロモータを使用することもできる。 すべての場
合において、プロモータは好ましくはエンハンサーを含有しない。 プロモータは、好ま
しくは標的細胞における導入遺伝子の治療的発現レベルを達成するように選択される。
一部の実施態様では、プロモータは標的細胞に特異的である。すなわち、標的細胞における導入遺伝子の治療的発現レベルを可能にし、好ましくは非標的細胞よりも標的細胞においてより高いレベルの導入遺伝子発現を可能にする。特定の実施態様では、プロモータは非標的細胞における導入遺伝子の発現をほとんど、あるいは全く許容しない。
【0059】
ウイルスベクターのポリマーカプセル化
トランスフェクト細胞にポリマーカプセル化された手段を使用する以前の技術は、PBAEなどのポリマーで直接コーティングされたプラスミドまたは他の核酸分子に関与していた。ここのような技術の中には、核酸分子を用いてトランスフェクションを達成しているものもある (US2016/0145348A1, Mangraviti et al.2015, Anderson et al.2004,WO2016/116887)。pH7におけるPBAEポリマーの安定性の低下が報告されている (Lynn et al. 2000)。このような処方物は、細胞毒性を引き起こし、ポリマーコーティングプラスミドまたは他の核酸分子に曝露すると細胞死を引き起こすことがある。 したがって、
in vivoまたはin vitro細胞に投与されるPBAEカプセル化ベクターの用量は、毒性作用を避けるために、有用な形質導入に必要な最小限にとどめるべきである。
しかしながら、PBAEカプセル化ウイルスベクターは、低pHでの分解に有利に抵抗する。
【0060】
現在の発明者の知る限り、LVのようなウイルスベクターのポリマーカプセル化はこれまで達成されていない。 本発明者らは、LVやその他のウイルスベクターをポリマーカ
プセル化する方法を開発し、形質導入細胞において毒性が低く、有効性が高い安定したポリマーカプセル化LV粒子をもたらした。 生きているカプセル化ベクターを生成する重
要な要因には、使用されるポリマーの種類(電荷と電荷の分布など)、ポリマー分子とベクター粒子の比、カプセル化に使用されるpHなどがある。これらのパラメータの影響を調査し、以下の実施例1 および2で記載する。
【0061】
PBAEポリマーとLVを使用することで、カプセル化に成功し、標的細胞の効率的な形質導入が可能な粒子が得られ、ベクター粒子あたり約108~1011個のポリマー分子が必要となり、高い比率で毒性を生み出し得る。 さらに、カプセル化に成功するため
の最適pHは、LVにVSV-G+ (VSV-G- または「はげた」LV)が含まれているかどうかによって異なります。VSV-G+LVの場合、PBAEによる最適なカプセル化は、pH5における高レベルのVSV-G抗体耐性形質導入が示すように、pH5程度で発生するが、pH値が高い場合はほとんどまたはまったくカプセル化が発生しない。 一方、VSV-G- LVの場合、PBAEカプセル化効率は、約5.0、5.5、6.0、6.5、または5.0~6.5、5.0~6.0、5.5~6.5、5.5~6.5など、より広く、より低いpH範囲で最適化される。他方、VSV-G-LVの場合、PBAEカプセル化効率は、5.0、5.5、6.0、または6.5、または5.0~6.5、または5.0~6.0、または5.5~6.0、または5.5~6.5などの低いpH範囲で最適化される。実施例2を参照されたい。最後に、形質導入された細胞の生存率に影響を与えないカプセル化に成功するための最適なpHは、LVにVSV-G+が含まれているかどうかにかかわらず、5.0または5.5のように同じである。
【0062】
ナノ粒子は、必要な材料からなる溶液を混合し、その後溶液を培養することによって形成することができる。例えば、ナノ粒子は、PBAEを含む溶液とウイルスベクターからなる溶液を混合し、その溶液を培養することによって形成することができる。 いくつか
の実施態様において、溶液はグルコースなどの砂糖を含む。いくつかの実施態様において、溶液は5%グルコースを含有する。いくつかの実施態様において、溶液は緩衝液を含有する。いくつかの実施態様において、緩衝液は酢酸ナトリウムであり、酢酸ナトリウム緩衝液の最終濃度は2~50mM、10~30mM、または約25mMである。いくつかの実施態様において、緩衝液はTris-HCl緩衝液であり、Tris-HCl緩衝液の
最終濃度は2~40mM、5~30mM、または15~25mMである。いくつかの実施態様において、溶液を少なくとも5分間培養される。 いくつかの実施態様において、溶
液は少なくとも30分間培養される。いくつかの実施態様において、溶液は一晩培養される。 溶液は4~40℃で、または17~25℃で培養することができ、好ましくは、溶
液は4℃で培養される。
【0063】
いくつかの実施態様では、ナノ粒子は、イオン性ポリマーをレトロウイルス粒子上に層ごとに堆積させることによって形成され、多層コーティングされたウイルスベクターを形成する。 いくつかの実施態様では、イオン性ポリマーを含有する溶液は、ウイルスベク
ター粒子を含有する溶液に接触させる。 ポリマーとウイルスベクター粒子の比は、重量
で 1:100 程度から 5:1 程度までの範囲とすることができる。 この比は、ポリ
マーコーティングされたナノ粒子あたり平均で単一のウイルスベクター粒子を含有するように変化させることができる。 例えば、すべてのポリマーのウイルスベクターに対する
重量比は、1:100 程度~1:1程度、1:50程度~1:1程度、または1:20
程度~1:1程度、または1:10程度~2:1程度、または1:1程度~5:1程度ま
でとすることができる。いくつかの実施態様では、グルコースまたは凍結乾燥と互換性のある別の砂糖中のレトロウイルス粒子の懸濁液に1つまたは複数のポリマーを添加し、ヒトまたは他の対象に再構成した後に直接注射する。 いくつかの実施態様では、負に帯電
したポリマーと正に帯電したポリマーが順次添加され、交互帯電したポリマー層が形成される。 いくつかの実施態様では、ポリマーは30分間隔で添加される。 いくつかの実施態様では、ポリマーの5層が存在する。いくつかの実施態様において、多層コーティングされたウイルスベクターは、pH7において正味負電荷を有する。いくつかの実施態様において、多層コーティングされたウイルスベクターは、pH7で正味正電荷を有する。
対象となる特定の細胞タイプの形質導入効率を最適化するように、層の数と極性を選択できる。
【0064】
好ましくは、ウイルスベクター粒子の表面電荷、表面電位、またはゼータ電位が、ウイルスベクター粒子の周囲にポリマー殻を形成する1つまたは複数のポリマーのそれとは反対のpHにおいて形成される。いくつかの実施態様では、pHは、1つまたは複数のレトロウイルス外膜タンパク質、または外皮全体の等電点のpHよりも上回っている。例えば、pHは4.0、4.5、5.0、5.4、5.5、5.6、5.8、6.0、6.2、6.4、6.5、6.8、7.0程度またはそれ以上であることができる。いくつかの実施態様では、ナノ粒子は約5のpHを有する溶液中に形成される。
【0065】
標的部分
ナノ粒子ベクター送達手段は、治療を必要とする特定の標的細胞や組織、またはベクターによるタンパク質発現が望まれる標的をターゲットにすることができる。標的部分の別の実施態様を
図3に示す。この中で、送達手段は、ポリマー表面に共有または非共有的に結合された標的部分ーを含有する。標的部分は、in vivoまたはin vitro
のいずれかの特定の細胞または細胞クラスを標的とすることができる。標的部分の例としては、タンパク質(例えば、ヒト抗体、マウス抗体、ラクダ類抗体、サメ抗体を含む抗体、単鎖抗体、ナノボディ、ジアボディ、抗体の抗原結合フラグメント)、ペプチド、アプタマーやオリゴヌクレオチドなどの核酸、細胞表面受容体または細胞外マトリックスの成分に結合するリガンドなどを含み得る。
【0066】
1つの実施態様において、送達手段は、キメラ受容体が結合する細胞(例えば、腫瘍細胞または病原体細胞)の殺傷を促進するために、キメラ抗原受容体(CAR)タンパク質のような1つ以上の治療タンパク質の発現のために特にT細胞を標的としている。 好ま
しい実施態様では、ベクターの標的細胞はT細胞(CD3+T細胞など)またはNK細胞である。 標的細胞表面にあるタンパク質の特異性を有する1つまたは複数のDNAアプ
タマーまたは抗体を用いて標的化を成し遂げ得る。 アプタマーまたは抗体は、ナノ粒子
に統合され、ナノ粒子の表面に露出すると、標的部分として働く。 例えば、標的部分は
、CD3またはCD8、またはCD3とCD8の組み合わせを具体的に結合することができる。 あるいは、またはそれに加えて、標的部分は、CD45RA、CCR7、CD6
2L、CD27、CD28、IL7-Ra、DC-SIGNなどの未投薬のT細胞にのみ見られる表面タンパク質に特異的に結合し得る。 これらの標的部分の組み合わせも使用
できる。
【0067】
しかし、標的化はCAR技術や血液細胞に限られるものではない。 任意の細胞タイプ
を標的にすることができる。 例えば、特定の遺伝子治療適用においては、欠陥機能を修
復または置換する必要性に応じて、特定の組織または細胞タイプ(例えば、造血細胞、筋細胞、島細胞など)を標的とすることがある。他の適用においては、組換え事象のリスクを低減するために、静止細胞が分裂細胞より標的にされることがある。それでも他の適用においては、がん細胞などの分裂細胞が、例えば、がんワクチンにおいて標的とされる場合がある。
【0068】
導入遺伝子とその発現生成物
本願明細書に記載された遺伝子送達手段のウイルスベクターには、細胞に入った後に細胞内で発現し、発現生成物を生成する1つ以上の導入遺伝子を含有する。 ウイルスベク
ターは、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の導入遺伝子を含有し得る。 導入遺伝子は
、治療タンパク質またはマーカータンパク質を含む、自然発生または人工的な(すなわち、組換えの)タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをコードする核酸分子である。このようなベクター発現タンパク質は、好ましくは、それらが発現される対象において治療的価値を有し、したがって治療タンパク質である。 治療タンパク質の1つのタイプは
、キメラ抗原受容体(CAR)である。本願明細書において説明する技術で使用するCARは、T細胞受容体などの組換え抗原受容体であり、結合するためにペプチドプロセシングやHLA発現を必要としない細胞表面抗原に対する結合特異性を持つ。 抗原結合部は
、抗体に由来するscFV、ライブラリーから選択されたFabに由来するscFV、または細胞表面受容体の天然に存在するリガンドであり得る。 それは、ナノボディ(VH
H)でもあり得る。CAR分子の残りの部分は、抗原結合ドメインを細胞内信号導入ドメインと結合する。具体的には、この技術のCARは、細胞外抗原結合ドメイン、ヒンジおよび膜貫通ドメイン、および細胞内信号伝達ドメイン(CD3zeta、および/またはCD28または41-BB/OX40)の各ドメインの1つ以上を含む。 遺伝子送達手
段での使用に適したCARの詳細およびそれらをレンチウイルスベクターにコードする配列は、WO2016/012623A1に記載されている。
【0069】
現在の技術の遺伝子送達手段を用いて送達できる他の遺伝子としては、インターロイキンとサイトカインがあり、それらは、インターロイキン1(IL-1)、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、GM-CSF、G-CSFなどを含む。 ウイルス抗原、細菌抗
原、真菌抗原、寄生抗原などの抗原をコードする遺伝子も送達することができる。 抗原
を発現させることができるウイルスには、ピコルナウイルス、コロナウイルス、トガウイルス、フラビルウイルス、ラブドウイルス、パラミクソウイルス、オルトミクソウイルス、ブニャウイルス、アレンウイルス、レオウイルス、レトロウイルス、パポヴァウイルス、パルボウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、ヘパドナウイルス、および海綿状ウイルスが含まれる。 好ましいウイルス標的には、インフルエンザ、単純ヘルペス
ウイルス1および2、麻疹、小痘、ポリオまたはHIVが含まれる。 病原体には、トリ
パノソーム、サナダムシ、回虫、蠕虫が含まれる。 胎児抗原や前立腺特異抗原などの腫
瘍抗原もこの方法で標的とすることができる。 ワクチン接種目的のための現在の技術に
従ったベクターの投与は、既知のワクチン接種戦略に従って行うことができる。 個人の
ワクチン接種は、任意の所望のスケジュールに従って実施することができる。好ましくは、予防接種は、毎年または隔年など、まれにしか必要とされず、感染因子に対する長期的な免疫学的保護を提供する。
【0070】
ウイルスベクター導入遺伝子はまた、抗チェックポイントタンパク質をコードすることができる。導入遺伝子によってコードできる抗チェックポイントタンパク質の例としては、CTLA-4、PD1、PDL1、LAG-3、TIM 3、B7-H3、ICOS、
IDO、4-1BB、CD47、およびそれらの組み合わせの阻害剤が挙げられる。
【0071】
遺伝子送達手段の使用
本技術の遺伝子送達手段は、レンチウイルスベクターなどのレトロウイルスベクターによって、哺乳類細胞やヒト細胞などの関心のある細胞に遺伝子物質を効果的に形質導入する必要があるあらゆる適用に使用できる。 送達手段は高効率で細胞を形質導入し、低毒
性と、低免疫原性を示す。 それらは、宿主細胞のゲノムに遺伝物質を永続的に統合する
ことができ、該システムを細胞とその子孫の永続的なラベリングに特に適するようにする
。 この手段は in vivo でも高い特異性、低い毒性、および高い形質導入能力を発揮するため、ヒトおよび動物における治療および動物モデルの両方における遺伝子移動および遺伝子治療適用に特に適しており、異なる生物学的機能の根底にある分子機構の調査とその治療への翻訳を可能にする。 しかし、ポリマーカプセル化ウイルスベクターナノ
粒子の一部の調製は、分割細胞を優先的に形質導入し、非分割細胞を形質導入しないなど、特定の細胞タイプを形質導入することに限定される場合がある。
【0072】
本技術の送達手段は、バイオ医薬品製造や畜産、植物の改良などのバイオテクノロジー適用に細胞を遺伝子工学的に利用することができる。
これらの活動には、関心のある遺伝子や複数の遺伝子を正確かつ安定的に挿入することが不可欠であり、この技術の手段によって一貫して達成することができる。 この手段は
、変換細胞(チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HEK293細胞)や原発細胞などの、製造目的に使用される細胞に元々存在しない遺伝子を挿入するために使用し得る。 あるいは、これらの細胞に存在する特定の遺伝子(免疫原性の一般的な原因である
タンパク質糖化に関与する遺伝子など)を「ノックアウト」するために使用することもできる。これらの手段は、例えば、家畜に影響を及ぼす疾病の予防、処置、治癒するために、あるいは成長と成熟を加速させることにより、経済的価値を向上させるために使用し得る。
【0073】
遺伝子送達手段は、in vitro または in vivo 遺伝子治療の一部として
遺伝物質を送達するために使用することができる。 遺伝子送達手段は、遺伝子の疾患を
引き起こす突然変異バージョンを遺伝子の健全なコピーに置き換え、適切に機能していない遺伝子を不活性化または「ノックアウト」して、疾患と戦うなど細胞内に新しい遺伝子を導入するために遺伝子治療に使用することができる。 レトロウイルスベクターの使用
は、一般に、興味のある細胞に遺伝物質を永続的に挿入することを可能にする。 特に、
レンチウイルスベクターの使用は、非分裂細胞にも遺伝物質を永続的に挿入することを可能にする。
【0074】
遺伝子送達手段は、 in vivoで細胞を形質導入することができ、導入遺伝子の機能発現につなげ、したがって遺伝子治療を行うために使用することができる。 ベクター
送達手段は、静脈内、筋肉内、腫瘍内など、非経口投与することができる。 あるいは、
ベクター送達手段は、経口または鼻内など、外部から投与することもできる。 遺伝子送
達手段は、脳内および肺を含む他の適切な経路によって投与することができる。
【0075】
現行技術の遺伝子送達手段はまた、in vitroで細胞を形質導入することができ
、導入遺伝子の機能発現につながり、したがって、in vitroおよびex vivoで 遺伝子治療を行うことができる。 患者の細胞は(例えば、血液または骨髄サンプル、または生検を介して)得られ、実験室で記載されたベクター送達手段の1つと接触させることができる。 その後、形質導入された細胞を患者に戻し、病気の処置に役立てること
ができる。
【0076】
この技術の遺伝子送達手段を用いて遺伝子治療で処置できる疾患には、重症複合免疫不全(SCID)、慢性肉芽腫性疾患(CGD)、Wiscott-Aldrich症候群(WAS)、再
燃急性30リンパ芽球性白血病(ALL)、副腎白質ジストロフィー(ALD)、血友病B、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠乏症、嚢胞性線維症(CF)、β-サラセミア、鎌状赤血球症、デュシェンヌ筋ジストロフィー、家族性高コレステロール血症、遺伝性失明などが含まれる。処置可能な疾患には、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンティントン病などの神経変性疾患も含まれる。 さらに、心臓病、糖尿病、骨関節疾患、感
染症(例えば、インフルエンザ、HIV、肝炎など)などの後天性疾患が含まれる。 さ
らに処置可能な疾患には、前立腺、膵臓、脳、皮膚、肝臓、結腸、乳房、腎臓などのがん
が含まれる。
【0077】
実施例1 ポリマーコーティングされたレンチウイルスベクターの製造
細胞形質導入研究に用いるポリマー被覆レンチウイルスベクターは、以下の材料と方法を用いて作られた。
材料
伝達ベクタープラスミドは、pARA-CMV-GFPまたはpARA-CMV-mCherryまたはpARAまたはpAra-hUBC-CD19であった。
プロウイルス用にコードされたカナマイシン耐性プラスミド(HIV-1、株NL4-3由来の非病原性および非複製的組換えプロウイルスDNA)であり、そこで発現カセットがクローンされた。 挿入物は、導入遺伝子、導入遺伝子発現のためのプロモータ、お
よび導入遺伝子発現を増加させ、レンチウイルスベクターが非有糸分裂を含むすべての細胞型を形質導入できるようにするために追加された配列を含んでいた。コード配列は、緑色蛍光タンパク質(GFP)またはmCherry(赤色蛍光タンパク質)またはCD19をコードする遺伝子に対応していた。 プロモータはヒトユビキチンプロモータまたは
CMVプロモータであった。エンハンサー配列がなく、ユビキタスな方法で高いレベルで遺伝子発現を促進した。 非符号化シーケンスおよび発現信号は、5’LTR(U3-R
-U5)のためのシスアクティブ素子全体と3’LTRのために削除された素子とを有するロング端末リピート配列(LTR)に対応し、それ故にプロモータ領域(ΔU3-R-U5)を欠いていた。 転写および統合実験では、エンカプシデイション配列(SDおよ
び5’Gag)、ベクターの核転座のための中央ポリ尿トラクト/中央終端サイト、およびBGHポリアデニル化サイトが追加された。
【0078】
パッケージングプラスミドは、pARA-パックであった。カナマイシン耐性プラスミドが、レンチウイルスプロウイルスのエンカプシド化のためにトランスで使用される構造レンチウイルスタンパク質(GAG、POL、TATおよびREV)をコードした。コード化配列は、ポリシストロン遺伝子gag-pol-tat-revに対応し、構造的(マトリックスMA、カプシドCAおよびヌクレオカプシドNC)、酵素的(プロテアーゼPR、インテグラーゼINおよび逆転写酵素RT)および調節(TATおよびREV)タンパク質をコードする。非コード化配列および発現信号は、転写開始のためのCMVからの最小限のプロモータ、転写終了のためのインスリン遺伝子からのポリアデニル化信号、およびパッケージングRNAの核輸出に関与するHIV-1 Rev応答要素(RRE)
に対応する。
【0079】
外膜プラスミドを使用した場合、PENv1であった。カナマイシン耐性プラスミドは、水疱性口内炎ウイルス(VSV-G)インディアナ株から糖タンパク質Gをコードし、いくつかのレンチウイルスベクターの疑似タイピングに使用された。VSV-G遺伝子は、ヒト細胞での発現に最適化されたコドンであり、その遺伝子はpVAX1プラスミド(Invitrogen)にクローンされた。 コード化配列はコドン最適化VSV-G遺
伝子に対応し、非コード化配列と発現信号は、転写開始のためのCMVからの最小プロモータに対応し、RNAを安定化するためのBGHポリアデニル化部位に対応していた。
【0080】
VSV-G-(「はげた」)レンチウイルスベクター粒子の製造
LV293細胞は、LVmax生産培地 (Gibco, A3583401) 1000mL中の2x3
000mLのエルレンマイヤーフラスコ (Corning, 431252) 中、5x105細胞/mL
で播種された。2つのエルレンマイヤーフラスコは、加湿8%CO2の下で37℃、65rpmで培養された。播種の翌日、過渡トランスフェクションが実施された。PEIPro核酸導入試薬(PolyPlus、115-010)は、転送ベクタープラスミド(pARA-CMV-GFPまたはpARA-CMV-mCherryまたはpARAまたはpAra-HubC-CD19)およびパッケージングプラスミド(pARA-Pack)と混合された。室温で培養した後、混合したPEIPro
/プラスミドを細胞株に一滴ずつ添加し、加湿8%CO2の下で37℃、65rpmで培養した。3日目に、レンチベクター産生は5mM最終濃度で酪酸ナトリウムによって刺激された。バルク混合物は、加湿された8%CO2の下で37℃、65rpmで24時間培養した。5および0,5μm(Pall、609-122U)の深層ろ過による清澄化後、DNase処理のために室温で1時間培養した。
【0081】
レンチベクター精製はクロマトグラフィー(Qマスタング膜)で行い、NaCl勾配により溶出した。100kDa HYDROSORT膜(Sautorius、3M81446802E-SW)で接線流ろ過を実施し、これにより、容積を減らし、pH7で特定の緩衝液に処方することができ、少なくとも2年間の安定性が確保された。0.22 μm(Millipore,SLGVM33RS
)で滅菌ろ過した後、バルク医薬品を2mLのガラスバイアルに1ml未満のアリクォートを充填した後、ラベルを付け、凍結し、-70℃未満で保存した。
【0082】
はげたLV数は物理力価定量化によって評価された。アッセイは、レンチウイルス会合HIV-1 p24コアタンパク質のみ(P24 ELISA細胞バイオラボQUICK TITERレンチウ
イルス力価キット)の検出と定量によって実施された。
【0083】
5PBAEポリマーの製造、精製、定量
ポリ(β-アミノエステル)ポリマーは、Dostaらと同様の2段階手順に従って合成された。5-アミノ-1-ペンタノール(Sigma-Aldrich 3.9 g, 38 mmol)と1-ヘキシルアミン(Sigma-Aldrich 3.9 g, 38 mmol)を丸底フラスコで混合し、ジアクリレートとアミンモノマーとの2.1:1モル比で1,4-ブタンジオールジアクリレート(Aldrich 18 g, 82 mmol)と結合させた。混合物を20時間撹拌しながら90℃に加熱した。その後、室温まで冷却して淡黄色の粘性固体油を形成し、さらなる使用まで-20℃で貯蔵した。
【0084】
合成構造は1H-NMR分光法によって確認された。NMRスペクトルは400MHzのバリアン(Varian NMR Instruments, Claredon Hills, IL)に記録され、メタノール-d4が溶媒として使用された。分子量測定は、GPC SHODEX KF-603カラム(6.0x約1
50mm)を搭載したHPLC Elite LaCromシステム(VWR-Hitachi)にて、移動相としてTHFで行われた。分子量は、ポリスチレン標準の保持時間と比較して計算された。 重量
平均分子量(Mw)は4400で、数値平均分子量(Mn)は2900であった。
【0085】
オリゴペプチド修飾PBAEはジメチルスルホキシド (DMSO)で1:2.5モル
比でチオール終端オリゴペプチドとアクリレート終端ポリマーC6を末端修飾することによって得られた。トリアルギニン末端修飾PBAEポリマー、C6-CR3を得るための以下の合成手順が例示されている。DMSO(1.1mL)に溶解したC6(113mg、0.054mmol)の溶液と塩酸H-Cys-Arg-Arg-Arg-NH2(CR3-95%純度-O
ntoresから購入)(99mg、0.13mmol)をテフロン(登録商標)ライニングスクリューキャップバイアル中で混合し、20℃の温度制御された水浴中で20時間撹拌した。キャップされたポリマーを5倍体積のジエチルエーテルで沈殿させた。遠心分離後(3000gで10分)、ポリマーをジエチルエーテルとアセトンの2体積の新鮮な混合物(7:3v/v)で洗浄した後、残渣を真空下で乾燥させ、DMSO中100mg/mLのストックに形成し、-20 ℃で貯蔵した。
【0086】
さらなる例では、トリリジン末端修飾PBAEポリマー、C6-CK3は、DMSO(1.1mL) に溶解したC6(100mg,0.048mmol)の溶液とDMSO(
1.8mL)に溶かした塩酸塩H-Cys-Lys-Lys-Lys-NH2(CK3)(78mg,0.12
mmol) の溶液を混合して得られ、以前にC6-CR3に対して記載したようにカッ
プリング反応を施した。トリヒスチジン末端修飾PBAEポリマー、C6-CH3につい
ては、C6溶液(65mg、0.031mmol)が、DMSO(1.2mL)中で塩酸塩H-Cys-His-His-His-NH2(CH3)(53mg、0.078mmol)の溶液と混合したDMSO(1.1mL)中に溶解した。トリアスパラギン酸エステル末端修飾PBAEポリマー、C6-CD3は、 DMSO(1.1mL)中に溶解した、C6(96mg,0.
046mmol)溶液で、DMSO(1.7mL)中に溶解した塩酸塩H-Cys-ASP-ASP-NH2(CD3)(96mg,0.046mmol)の溶液と混合された。最後に、トリグル
タミン酸エステル末端修飾PBAEポリマー、C6(280mg,0.13mmol)溶液は、塩酸塩H-Cys-Glu-Glu-Glu-NH2(CE3)の溶液(184mg,0.34mmol
)とDMSO(1.1mmL)中で混合してDMSO(1.1mL)中に溶解された。
【0087】
オリゴペプチド修飾PBAEの化学構造は1H-NMR分光法により、アクリレート信号の消失とアミノ酸部分に典型的に関連する信号の存在によって確認された。アセトニトリル勾配を用いてBEH C18カラム(130A、1.7μm、2.1x50mm、温
度35℃)を搭載したUPLC ACQUITYシステム(Waters)による分離後、UV
検出(波長220nm)により残留遊離ペプチド含有量を定量した。
【0088】
Fab-PGAの生産
15kDaのポリグルタミン酸(PGA)(Alamanda Polymers)をMES緩衝液pH
6.0に20mg・ml-1になるように溶解した後、浴超音波装置で10分間超音波照射した。PGA溶液1.8mLをエチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド-HCl(4mg・ml-1,16 equiv.)および0.9mlのスルホ
-NHS(2,75w/w EDC)の両方ともMES緩衝液中pH6.0に添加し、溶
液を室温で15分間混合した。得られた活性化PGAをリン酸塩バッファ生理食塩水 (
PBS) 中抗マウスCD3εF(ab’)2フラグメント(InVivoMAb)の溶
液に4:1モル比で添加し、室温で2時間混合した。過剰試薬と非連結PGAをろ過(30,000MWCO ビバスピンカラム)で除去し、緩衝液をPBSに対して7回交換し
た。抗体濃度はナノドロップ2000分光光度計(Thermo Scientific製)を用いて決定
された。
【0089】
pH関数としてのVSV-G+ LVの 安定性動力学
10μLの薬物製品擬似型レンチベクターまたははげたレンチベクターを10μLの異なる緩衝液(pH5~7)で+4℃で異なる時間(0、15、30、60、90、120分)で希釈した。
擬似型レンチベクターに対する滴定は、フローサイトメトリーによって以下のように実施された。 HEK293T細胞(8x105細胞/ウェル)を24ウェルプレートに播
種し、5%CO2 加湿雰囲気で37℃で培養した。 4時間後、培地を除去し、各ウェルに10%のFBS、1%のPSおよび10μLを含有する300μLの新鮮なDMEMを添加した。2時間後、各ウェルに0.5mLの新鮮培地を補充した。感染から3日後、各ウェル内のHEK293T細胞をトリプシナイズし、固定(BD CellFix solution #340181)し、フローサイトメトリー (AttunenXT; Invitrogen, Inc.)を用いて蛍光陽性細胞の数を決定した。
【0090】
TUへの特定の希釈のためのGFP発現細胞の割合を変換するために以下の式が使用された。
TU/mL=(eGFPを発現する細胞の割合/100)x添加ウイルスストック感染/体積時のHEK293T細胞の総数(mL)。
はげたレンチベクターの滴定は、物理的力価定量によって行われた。アッセイは、レンチウイルス関連HIV-1 p24コア蛋白質のみの検出と定量によって行われた(P24 ELISA Cell Biolabs' QUICK TITER Lenus Titer Kit)。前処理サンプルは、遊離p24と破壊されたレンチベクターを区別することを可能にする。
【0091】
オリゴペプチド修飾PBAEを用いたVSV-G+ LVおよびはげたLVの カプセル化
レンチウイルスベクターのカプセル化は以下のように行われた。レンチウイルスベクターを25mMクエン酸緩衝液pH5.0(または異なる定義のpHの適切な緩衝液システム)中で希釈し、反復ごとに75μLの最終容積を調製した。PBAEポリマーは、レンチウイルスベクター(1反復あたり75μL)と同じ緩衝液で希釈し、均質化のために2秒をボルテクスした。希釈したポリマーを希釈したベクターに1:1 の比(v/v) で添加し、混合物を10秒間静かにボルテックスし、+4℃で30分間培養した。最後に、カプセル化反応に同じ容積の培地(150μL)を添加して細胞に移送した。
【0092】
PGA-FabによるPBAEカプセル化VSV-G+ LVおよびはげたLVのコーテ
ィング
前述のカプセル化方法を以下のように修飾した。レンチウイルスベクターを25mMクエン酸緩衝液pH5.0(または定義されたpHの適切な緩衝液系)中で希釈し、反復ごとに75μLの最終容積に調製した。PBAEをレンチウイルスベクター(反復ごとに75μL)と同じ緩衝液で希釈し、均質化のために2秒をボルテックスした。希釈したポリマーを希釈したベクターに1:1の比(v/v) で添加した。混合物は、10秒間穏や
かにボルテックスし、+4℃で30分間培養した。 25mMのクエン酸塩緩衝液pH5
.0(または定義されたpHで適切な緩衝液系)中で希釈したPGA-FaBポリマーをカプセル化混合物に添加し、均質化のために10秒を穏やかにボルテックスした。コーティング反応ミックスを+4℃で30分培養し、培地で最大300μLまで容積を完成させ、細胞に移した。
【0093】
実施例2
PBAEカプセル化レンチウイルスルベクターのゼータ電位測定
LV/PBAE/PGA-Fab錯体の粒子表面電荷測定は、波長633nmを用いたゼータサイザーナノZS(英国Malvern Instruments Ltd、4-mWレーザー)を用いた
室温での動的光散乱(DLS)によって決定された。測定は、200μLの錯体を800μLのD-PBS 1x緩衝液(pH7.1)と混合することによって実施した。結果は
、強度によって分析された3つの測定値の平均と標準偏差としてプロットされ、
図6A~6Fに示されている。 結果は、ポリマーの電荷に応じてベクター粒子をポリマーでカプ
セル化することによって表面電位変化を示し、ポリマーによるカプセル化に成功したことを示した。
【0094】
実施例3 ポリマーコーティングされたレンチウイルスベクターによるHEK293T細
胞の形質導入
レンチウイルスベクターの形質導入能力に対するポリマーコーティングの効果をテストするために、ペプチド共役ポリ(β-アミノエステル)ポリマーを調製し、レンチウイルスベクターのコーティングとHEK293T細胞の形質導入試験に使用した。 レンチウ
イルスベクターは緑色蛍光タンパク質(GFP)導入遺伝子を運び、形質導入された宿主細胞におけるGFP発現により形質導入を定量した(
図4A)。 異なる帯電アミノ酸基
を有するペプチドがポリマー骨格に結合させて、電荷の効果を調べた。外膜にVSV-Gタンパク質を含有するか、含有してないベクター粒子をポリマーコーティングした。ポリマーカプセル化の有効性は、VSV-Gに対する抗体存在下でのベクターの形質導入能力を決定することによって評価され、VSV-Gは、曝露されたVSV-Gタンパク質に依存する形質導入をブロックする能力を有する(図 4B参照)が、効果的にポリマーカプ
セル化されているベクターによる形質導入をブロックすることはなく、形質導入のために露出したVSV-Gに依存していない(
図4C参照)。VSV-Gを欠いたLVでも同様の実験が行われ、この戦略は
図5A~5Cに描かれている。これらの「はげたLV」は、VSV-Gタンパク質の欠如のために形質導入を行うことができなかったが、PBAEポリマーによるカプセル化後に形質導入が可能となった。ポリマー有効化トランスフェクシ
ョンは、抗VSV-G Abによってブロックされることは予想されなかった。
【0095】
カプセル化ベクターを以下のように調製した。 ベクター希釈は、複製当たり150μ
Lの最終容積の1.5mLマイクロチューブの最初のセットにおいて調製され、ポリマー希釈は、同じ最終容積の1.5mLマイクロチューブの2番目のセットにおいて調製された。 その後、希釈したポリマーを希釈したベクターに加え、泡やフォームを避けるため
に穏やかにピペッティングして混合物を均質化した。カプセル化ミックスを+4℃で30分培養した。
【0096】
形質導入の定量化のために、細胞は、10%のFBSを含む完全な培地中のウェル当たり8x104の密度で24ウェルプレートに播種し、4時間間培養して付着させた。 抗
VSV-G抗体による形質導入の中和をテストするために、300μLのカプセル化ベクターを300μLの完全な細胞培地または300μLのポリクローナル抗VSVgウサギ血清を完全な細胞培地中で100倍に希釈し、37℃で30分間、5%CO2中で培養した。 その後、培地を抗体中和培地または抗体を欠く培地中の300μLのベクターで置
き換えて細胞を形質導入し、37℃で培養し、2h、5%CO2中で培養した。 吸着後
、各ウェルに1mLの完全な媒体を添加した。 72時間の後形質導入で、細胞はCel
lfix 1Xの200μL中でトリプシン化され、再懸濁され、GFPを発現する細胞
の割合は、BL1チャネルを用いたAttune Nxtフローサイトメータで測定され
た。
【0097】
カプセル化実験で用いられたポリマーは、下記の式に示すようにポリ(β-アミノエステル)ポリマー(PBAE)であり、荷電ペプチド(Pep)と任意選択でコレステロール(R)に結合させた。 ポリマーRとは、ペプチドCRRR(両端で同じペプチド)に
結合したPBAEを指す。Hポリマーは、ペプチドCHHHに結合させたPBAEを指す。 Eポリマーとは、ペプチドCEEEに結合させたPBAEを指す。 Dポリマーとは
、ペプチドCDDDに結合させたPBAEを指す。 ペプチドの混合物は、以下の表に示
す異なる比率で試験された。 R/Hは、ポリマーRとHの60/40の混合物を指す。
「chol」 で示されたポリマーは、また以下の構造に示されたR基としてコレステロール
に結合している。 「m」の値は3で、「o」の値は1であった。
【化5】
【0098】
次の表は、カプセル化に使用され、形質導入能力をテストされたLV粒子あたりのポリマー混合物とポリマー分子の比率を示している。
【表1】
【0099】
【0100】
【0101】
ウイルス外膜タンパク質を欠いたポリマー被覆レンチウイルスベクターの形質導入に対するポリマーコーティングの効果を試験するために、異なる荷電アミノ酸を有するペプチドをポリマー骨格に結合させ、得られたポリマーをレンチウイルスベクターに被覆し、試験HEK293T細胞の形質導入に使用した。
【0102】
GFP発現データは、レンチウイルスベクター粒子(LV)あたりのポリマー分子の比率を示したベクターを用いた形質導入後のフローサイトメータの結果として得られた。
各条件の下で、ポリクローナル抗VSV-Gウサギ血清を添加すると、109の比で形質導入速度が低下したが、Abは1010~1011の比で形質導入の減少に失敗し、少なくともLV粒子あたり1010程度のポリマーが効果的なカプセル化には必要であった。
また、このデータでは、ポリマーカプセル化LVが効果的に形質導入を実行できること
、陽性荷電したポリマーが最も効果的であり、ポリマーに負電荷を導入するにつれて形質導入の有効性が低下していることが確認された。
【0103】
コレステロール結合PBAEポリマーを用いて同様の実験が行われた。 結果は、Rポ
リマーとEポリマーの両方でコレステロールに結合していないポリマーと同様であった。
VSV-G外膜タンパク質(「はげたLV」)を欠いたLVを用いて同様の実験が行われた。 その結果、被覆されていないはげたLVは形質導入を誘発できないことが示され
た。しかし、ポリマーカプセル化されたはげたLVは、109、1010、1011のポリマー分子/LV比で細胞を効果的に形質導入することができた。 予想通り、抗VSV-G Abの追加は効果がなかった。 正に荷電したポリマーは、中性または負に荷電したポリマーよりもはるかに効果的であった。同様の結果は、コレステロール結合ポリマーを用いて得られ、また、コレステロールの有無にかかわらず、ペプチドR+HおよびDを含有するポリマー混合物に対して得られた。
【0104】
実施例4 レンチウイルスベクター±VSV-Gのポリマーコーティング時のpHの効果
VSV-GまたはVSV-Gを発現していないPBAE被覆LVを調製し、実施例3で説明したようにJurkat細胞の形質導入を行ったが、細胞が懸濁液で増殖し、コーティング溶液のpHが変化した点を除く。 アセテート緩衝液は4.5~6の間のpHで、
クエン酸塩緩衝液は4.5~6の間のpHで、ヒスチジン緩衝液は6~7の間のpHで、トリス緩衝液は7~8の間のpHとして使用された。 各pH条件において、LV粒子当
たりのポリマー分子数は、10
6~10
10まで変化した。VSV-G+ LVの安定性
を
図7に示す。 ベクターは4.5~8.0のpH範囲にわたって安定しており、最大1
20分までそれらのpH範囲で維持することができた。
【0105】
図8A~8Hは、ポリマーカプセル化のない異なるpH緩衝液内のはげたLV粒子の安定性を試験する実験結果を示している。 VSV-G+ LVについては、HEK293T細胞を形質導入し、GFP発現(FACSで検出)を引き起こす能力を測定することによって完全性を評価した。 VSV-G-(はげた)LVでは、非ポリマーコーティングの
はげたLVを使用して形質導入ができなかったので、p24タンパク質(ベクター粒子の溶解の指標;p24はELISAによって上澄みで測定された)の放出を測定することによって完全性を評価した。 物理的完全性は、異なるpH緩衝液で15、30、60、9
0、120分後に測定された。 この結果は、いずれのタイプのLVでも120分までの
完全性の低下はないことを示したが、高いpH条件は低いpH条件よりもLV生存率に対してわずかに良好でなかった。 はげたLV p24の保持と放出のための生データを
図8A~8Hに示す。
【0106】
図9は、異なるpH値でのはげたLVのカプセル化、続いてHEK293T細胞の形質導入、FACSによるGFP発現の結果を示している。 実施例1で説明した他の実験か
ら予想されるように、はげたLVの完全なポリマーコーティングは、生存可能な粒子を得るために、LV粒子あたり少なくとも約10
9個のPBAE分子を必要とする。 コーテ
ィング工程において明確なpH依存性が観察された。 pHが高い(pH7)と感染性L
Vは事実上発生しないが、pHが約5.0~約6.5の範囲でコーティングすると良好な形質導入結果が得られた。 この実験では、R/H PBAE誘導体(PBAE-CHHHと60/40vol/volの比率で混合したCRRRペプチドに結合したPBAE、実施例1参照)がコーティングに使用された。 また、
図9では、ポリマーによる部分カプ
セル化によって形質導入能力がないことが示されており、外膜タンパク質を欠いたウイルスベクターの使用により安全性プロフィールが向上することが示されている。 この特徴
がなければ、ポリマーコーティングが部分的にまたは完全に失われるか、部分的に劣化するベクター粒子、または製造中に不完全にコーティングされたベクター粒子は、非標的細胞が形質導入される可能性があるため、安全上の懸念を示す可能性がある。
【0107】
図10は、
図9示すような実験の結果を示しているが、R-コレステロール-PBAEおよびH-コレレステロール-PBAEポリマーの混合物(60/40)を使用する。コレステロールを添加することで、低pHではげたLVを完全にカプセル化するために必要なポリマー/LV粒子比が低下させた。
【0108】
異なるpH値でのVSV-G+LVのコーティングを試験する実験を
図11に示す。
カプセル化にはR-PBAEポリマーを使用し、抗VSV-G+抗体に対する感受性も試験した。 この結果は、全体的な形質導入速度に対するpH感受性はほとんど示されてい
ないが、抗体感受性(不完全なポリマーコーティングを示す)は、pH値が低い場合よりもpH6.5の方が大きかった。 pH5における抗VSV-G抗体の存在下では、より
低いpHでより競合するコーティングのさらなる適応は、より高いベースラインの形質導入と見られる。
【0109】
実施例4 カプセル化レンチウイルスベクター±VSV-Gを用いたリンパ球の形質導入
Jurkat細胞とヒトリンパ球の形質導入
形質導入の定量のために、Jurkat細胞は、10%のFBSおよび1%のペニシリン/ストレプトマイシンを含有する完全な培地中のウェルあたり8x104細胞の密度で24ウェルプレートに播種した。細胞に300μLのカプセル化ベクターを添加した。37℃で2時間の培養後、5%CO2、500μLの新鮮な完全培地を各ウェルに添加した。GFPまたはmCherry導入遺伝子を発現する細胞の割合は、それぞれBL1またはYL1チャネルを用いたAttune Nxtフローサイトメータ(Thermo Fisher社製)を用いて72時間の後形質導入によって決定された。GFP導入遺伝子を発現する形質導入された細胞の表現型は、製造者(BD Biosciences)の指示に従って以下の細胞タイプに特異的な異なる抗体を以ってフローサイトメトリー染色によって決定された。CD3(Tリンパ球)およびCD19(Bリンパ球)。
ヒトリンパ球の形質導入は、105個の細胞/ウェルが播種されたことを除いて、同じ方法で行われた。
【0110】
細胞毒性
ヒトリンパ球は、10%のFBSおよび1%のペニシリン/ストレプトマイシンを含有する完全な培地において、ウェルあたり5x105個の細胞の密度で24ウェルプレートに播種した。カプセル化されたCAR CD19表現ベクターを細胞に300μL添加した。2時間の培養後、500μLの新鮮な完全培地を各ウェルに添加した。37℃、5%CO2で48時間培養した後、CD19陽性のラモス腫瘍細胞がリンパ球/腫瘍細胞比50:1 または1:1で添加された。37℃、5%CO2 での4時間の培養後、CAR
CD19を発現する細胞をプロテインLで染色し、YL1チャネルを用いたATTUNE
NXTフローサイトメータ(Thermo Fisher社製)で検出した。CD19陽性細胞および
リンパ球は、製造者(BD Biosciences)の指示に従ってCD19またはCD3特異的抗体によるフローサイトメトリー染色により定量された。
【0111】
マウスPBMC処方物および形質導入
新たに調製したマウスの末梢血単核細胞(PBMC)は、FICOLL-PAQUE PREMIUM 1.084(GEヘルスケア)を充填したLEUCOSEPチューブ(グライナーバイオワン製)を用いてヘパリン化全血から単離された。DPBSで血液希釈した後、PBMCをFICOLL密度勾配で分離し、DPBSで2回洗浄し、培地中の所望の細胞密度まで再懸濁した。
【0112】
細胞は、10%のFBSおよび1%のペニシリン/ストレプトマイシンを含有するRPMI培地において、ウェルあたり2x105細胞の密度で24ウェルプレート内に播種した。細胞に300μLのカプセル化ベクターを添加した。37℃で2時間の培養後、5%CO2、500μLの新鮮な完全培地を各ウェルに添加した。GFPを発現する細胞の割合は、BL1チャネルを用いたAttune NxTフローサイトメータを用いて48時
間後形質導入により決定された。GFP導入遺伝子を発現する形質導入された細胞の表現型は、製造者(BD Biosciences)の指示に従って以下の細胞タイプに特異的な異なる抗体を以ってフローサイトメトリー染色によって決定された。CD4(ヘルパーTリンパ球)、CD8(細胞傷害性リンパ球)、CD19(Bリンパ球)、Ly-6G(顆粒球)、CD11b(マクロファージ)、CD11c(樹状細胞)およびF4/80(単球)。
【0113】
図12は、抗VSV-G抗体の有無において、示されたPBAEカプセル化LVで形質導入されたJurkat細胞のGFP発現と細胞生存率を示している。結果は、マイナス抗体条件に100%として正規化される。 多種多様なカプセル化ポリマーおよびポリマ
ー/ベクター比は、抗体による阻害を阻止することができず、これは、VSV-Gタンパク質がすべての条件下でポリマーコーティングを通して突き出し、形質導入を仲介したことを示している。
【0114】
図13A~13Dにおいては、mCherry発現が、示されたPBAEポリマーによってカプセル化されたはげたLVによるJurkat細胞の形質導入の尺度として、コレステロール結合の有無にかかわらず、さまざまなポリマー/ベクター比およびポリマー正味電荷で示されている。
【0115】
異なるベクターを用いたヒトリンパ球の形質導入の結果を
図14A~14Dに示す。
リンパ球あたりのベクター粒子の数は、各図の左から右に増加する。
図14Aは、典型的なVSV-G
+ LVで得られた結果を示している。
図14Bに示されたカプセル化され
ていないVSV-G
-(はげた)LVの場合と同様に、ほとんど形質導入が観察されなかった。 しかしながら、10E+4 PGA-Fabの有無にかかわらず、LVあたりR/H(60/40vol/vol)、比1.10e+9 PBAEを用いてはげたLVをカ
プセル化することで、
図14Cに示すように成功した用量依存性の形質導入が導かれた。
【0116】
図14Dに示す実験では、PBAEカプセル化したはげたLVに標的部分(PGA F
ab)を加えた後、強力な形質導入も得られた。 その結果を
図14Eに示した実験では
、CD19に特異的なCARを用いたヒトリンパ球のさらなる形質導入が、LV導入遺伝子の強力な形質導入と適合していたことが示された。さらに、
図14Fの結果から、CD19に特異的なCARが形質導入されたヒトリンパ球は、CD19陽性がん細胞に対して細胞傷害作用を有することが明らかにされた。
【0117】
図15は、マウスPBMCがVSV-G
+非カプセル化LV(左側に2本の棒)またはPBAEカプセル化したはげたLV(右側に2本の棒)で核酸を導入された実験結果を示している。 カプセル化されたはげたLVは、PBMC処方物中に存在する各細胞タイプ
のVSV-G
+ベクターよりもはるかに強力な形質導入を示した。
【0118】
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【0119】
本明細書において使用されているように、「本質的に構成される」ことで、請求の範囲の基本的特性と新規の特性に重大な影響を与えない材料または手順を含めることができる。「からなる」用語の記述は、特に組成物の構成要素の記載または装置の要素の記載において、「本質的に構成される」または「構成される」と交換することができる。
本件技術は、特定の好ましい実施態様と併せて記載されているが、当業者の一人は、前述の明細書を読んだ後、本明細書に記載された組成および方法に、様々な変更、同等物の代替、およびその他の変更をもたらすことができる。
【外国語明細書】