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特開2024-20460硫酸コンドロイチン多糖類、その半合成調製方法および使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020460
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】硫酸コンドロイチン多糖類、その半合成調製方法および使用
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/08 20060101AFI20240206BHJP
   A61K 31/737 20060101ALI20240206BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240206BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240206BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
C08B37/08 Z
A61K31/737
A61P1/04
A61P19/02
A61P29/00
A61P29/00 101
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023196288
(22)【出願日】2023-11-17
(62)【分割の表示】P 2021552974の分割
【原出願日】2020-03-05
(31)【優先権主張番号】201910163208.8
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】518416551
【氏名又は名称】中国医学科学院薬物研究所
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE OF MATERIA MEDICA, CHINESE ACADEMY OF MEDICAL SCIENCES
【住所又は居所原語表記】ZHANG XUBIN, NO.A2, NAN WEI ROAD, XICHENG DISTRICT, BEIJING 100050, PEOPLE’S REPUBLIC OF CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100166729
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】チャオ チェーフイ
(72)【発明者】
【氏名】レイ ピンシェン
(72)【発明者】
【氏名】ウー リアンチウ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン シュアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ウェンジエ
(72)【発明者】
【氏名】チャン ハイジン
(72)【発明者】
【氏名】リー シャン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】抗炎症効果を有し、抗炎症疾患薬物の調製に使用できる薬理学的に活性の高い硫酸コンドロイチン多糖類、および異なる硫酸化度の硫酸コンドロイチン多糖類金属塩を得ることができ、かつ方法の操作は簡単であり、スケール生産に適しているその半合成調製方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で表される硫酸コンドロイチン多糖類金属塩であって、下記構造一般式を有し、

全体としては電気的中性であり、硫酸コンドロイチン多糖類アニオンと金属カチオンを含み、硫酸コンドロイチン多糖類アニオンの平均分子量は1000~15000Daであり、硫酸コンドロイチン多糖類アニオン中-SO3と-COOのモル比は1.46~2.73であり、硫酸コンドロイチン多糖類アニオンnの範囲は2≦n≦45である、硫酸コンドロイチン多糖類金属塩。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される硫酸コンドロイチン多糖類金属塩であって、下記構造一般式を有し、
【化1】
全体としては電気的中性であり、硫酸コンドロイチン多糖類アニオンと金属カチオンを含み、
前記硫酸コンドロイチン多糖類アニオンの平均分子量は1000~15000Daであり、
前記硫酸コンドロイチン多糖類アニオン中-SO と-COOのモル比は1.46~2.73であり、
前記硫酸コンドロイチン多糖類アニオンnの範囲は2≦n≦45である、硫酸コンドロイチン多糖類金属塩。
【請求項2】
前記硫酸コンドロイチン多糖類アニオンの平均分子量は4000~15000Daであり、前記硫酸コンドロイチン多糖類アニオン中-SO と-COOのモル比は1.9~2.5であることを特徴とする、請求項1に記載の硫酸コンドロイチン多糖類金属塩。
【請求項3】
前記金属カチオンは、ナトリウムイオンおよび/またはカルシウムイオンおよび/またはカリウムイオンを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の硫酸コンドロイチン多糖類金属塩。
【請求項4】
多糖類硫酸コンドロイチン原料、硫酸化試薬と有機溶剤を混合して硫酸化反応を行い、硫酸化生成物系を得る工程と、
前記硫酸化生成物系に対し、順次に第一沈降処理、塩形成処理、透析、第二沈降処理とカラム精製を行い、硫酸コンドロイチン多糖類金属塩を得る工程と、を含み、
前記塩形成処理に使用される塩形成試薬は金属水酸化物水溶液であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の硫酸コンドロイチン多糖類金属塩の調製方法。
【請求項5】
前記多糖類硫酸コンドロイチン原料には、硫酸コンドロイチン多糖類Aと硫酸コンドロイチン多糖類Cを含み、そのうち、前記硫酸コンドロイチン多糖類Aの重量含有量は70~90%であり、硫酸コンドロイチン多糖類Cの重量含有量は10~30%であり、
前記多糖類硫酸コンドロイチン原料の平均分子量は20000~23000Daであり、
前記多糖類硫酸コンドロイチン原料中-SO と-COOのモル比は0.9~1.1であることを特徴とする、請求項4に記載の調製方法。
【請求項6】
前記硫酸化試薬は、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体、三酸化硫黄ピリジン錯体および三酸化硫黄トリエチルアミン錯体中の1種または複数種を含み、
前記硫酸化試薬と多糖類硫酸コンドロイチン原料の中の繰り返し二糖フラグメントの当量比は(1~10):1であることを特徴とする、請求項4または5に記載の調製方法。
【請求項7】
前記硫酸化反応の温度は40~120℃であり、時間は2~36時間であり、前記硫酸化試薬と多糖類硫酸コンドロイチン原料の中の繰り返し二糖フラグメントの当量比は(3-8):1であることを特徴とする、請求項6に記載の調製方法。
【請求項8】
前記塩形成試薬は水酸化ナトリウム水溶液および/または水酸化カリウム水溶液であり、前記塩形成試薬の濃度は1~4mol/Lであることを特徴とする、請求項4に記載の調製方法。
【請求項9】
前記第一沈降処理で使用した第一沈降試薬は体積分率が90~95%的エタノール水溶液であり、
前記第二沈降処理で使用した第二沈降試薬はエタノールであり、
前記透析で使用した透析バッグのカットオフ分子量は3000~12000Daであることを特徴とする、請求項4に記載の調製方法。
【請求項10】
請求項1~3のいずれかに記載の硫酸コンドロイチン多糖類金属塩および薬学的に許容される担体または賦形剤を含むことを特徴とする、薬物組成物。
【請求項11】
請求項1~3のいずれかに記載の硫酸コンドロイチン多糖類金属塩の抗炎症疾患薬物の調製における使用。
【請求項12】
前記炎症疾患は潰瘍性結腸炎、骨関節炎とリウマチ性関節炎を含むことを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬分野に関するものであり、具体的には、硫酸コンドロイチン多糖類金属塩およびその調製方法と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
硫酸コンドロイチン多糖類(CS)は直鎖型かつ硫酸化されたグリコサミノグリカンであり、ブドウ糖とガラクトサミンとがβ(1→3)とβ(1→4)グリコシド結合を交互に形成してなるものである。さらに、グルクロン酸の2位と3位およびガラクトサミンの4位と6位で、程度の異なる硫酸化が起きることにより、11種類の天然サブタイプに派生し、具体的な構造は下記の通りである。
【化1】
【0003】
硫酸コンドロイチン多糖類は動物体内に広く存在しており、ヒト内因性物質の一つでもあり、複数の酵素、因子の発現レベルを調節することにより、神経系、がん、炎症などの生理学的および病理学的プロセスにおいて重要な役割を果たしている。
【0004】
現在市販されている硫酸コンドロイチン医薬品とサプリメントはすべて陸生動物の軟骨組織抽出物に由来し、A型と少量のC型のものからなる。一方、海洋動物由来の硫酸コンドロイチン多糖類はこれとは異なり、その主成分はC型(サメ軟骨抽出物)やE型(ダイオウイカ軟骨抽出物)などのサブタイプであることが多い。研究によれば、組成の異なる硫酸コンドロイチン多糖類の間では薬理活性に大きな違いを示すことが多く、薬理学的に活性の高い硫酸コンドロイチン多糖類薬物の開発には依然として大きな空白が存在する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、硫酸コンドロイチン多糖金属塩とその調製方法および使用を提供することを課題しており、本発明により提供される硫酸コンドロイチン多糖金属塩は、優れた薬理活性を有する。
【0006】
上記発明の課題を解決するために、本発明では下記の技術手段を提供する。
【0007】
本発明の第一の態様は硫酸コンドロイチン多糖類金属塩(式I)であって、その全体が電気的中性であり、硫酸コンドロイチン多糖類アニオンと金属カチオンからなる硫酸コンドロイチン多糖類金属塩を提供する。
【化2】
【0008】
前記硫酸コンドロイチン多糖類アニオンの平均分子量は1000~15000Daである。
【0009】
前記硫酸コンドロイチン多糖類アニオン中の-SO と-COOのモル比は1.46~2.73;好ましくは硫酸コンドロイチン多糖類アニオン中の-SO と-COOのモル比は1.9~2.5である。
【0010】
前記硫酸コンドロイチン多糖類アニオンnの範囲は2≦n≦45である。
【0011】
好ましくは、前記硫酸コンドロイチン多糖類アニオンの平均分子量は4000~15000Daである。
【0012】
好ましくは、前記金属カチオンはナトリウムイオンおよび/またはカルシウムイオンおよび/またはカリウムイオンを含む。
【0013】
好ましくは、前記硫酸コンドロイチン多糖類アニオンのnの範囲は6≦n≦20である。
【0014】
本発明において、前記硫酸コンドロイチン多糖類アニオンに対応する硫酸コンドロイチン多糖類において、主に硫酸コンドロイチン多糖類C、硫酸コンドロイチン多糖類Eおよび硫酸コンドロイチン多糖類Aを含有し、残部にはさらにその他のサブタイプの硫酸コンドロイチン多糖類も含有する。前記硫酸コンドロイチン多糖類の重量含有量を100%としたとき、前記硫酸コンドロイチン多糖類C、硫酸コンドロイチン多糖類Eおよび硫酸コンドロイチン多糖類Aの全重量含有量について、好ましくは60~92%である;前記硫酸コンドロイチン多糖類Cの重量含有量について、好ましくは0~30%であり、より好ましくは10~25%である;前記硫酸コンドロイチン多糖類Eの重量含有量について、好ましくは0~80%であり、より好ましくは10~60%である;前記硫酸コンドロイチン多糖類Aの重量含有量について、好ましくは0~90%であり、より好ましくは0~70%である。
【0015】
本発明において、前記硫酸コンドロイチン多糖類アニオン中の-SO の重量含有量について、好ましくは14~27%である。
【0016】
本発明において、硫酸コンドロイチン多糖類アニオン中のアルデュロン酸の重量含有量について、好ましくは20~35%であり、ヘキソサミンの重量含有量について、好ましくは22~32%である。
【0017】
本発明において、前記金属カチオンはナトリウムイオンおよび/またはカルシウムイオンおよび/またはカリウムイオンを含むことが好ましく、ナトリウムイオンまたはカルシウムイオンであることがより好ましい。
【0018】
本発明の第二の態様は、下記の工程を含む、第一の態様の前記硫酸コンドロイチン多糖類金属塩の調製方法を提供する。
【0019】
多糖類硫酸コンドロイチン原料、硫酸化試薬および有機溶剤を混合し、硫酸化反応を行って、硫酸化生成物系を得る工程;
前記硫酸化生成物系に対し、順次第一沈降処理、塩形成処理、透析、第二沈降処理およびカラム精製を行い、硫酸コンドロイチン多糖類金属塩を得る工程;前記塩形成処理にて使用する塩形成試薬は金属水酸化物水溶液である。
【0020】
前記多糖類硫酸コンドロイチン原料は硫酸コンドロイチン多糖類Aと硫酸コンドロイチン多糖類Cを含み、そのうち、前記硫酸コンドロイチン多糖類Aの重量含有量は70~90%であり、硫酸コンドロイチン多糖類Cの重量含有量は10~30%である;本発明において、使用した多糖類硫酸コンドロイチン原料は煙台東誠薬業グループ株式有限公司より購入した。前記多糖類硫酸コンドロイチン原料は、その平均分子量は20000~23000Daであり、-SO と-COOのモル比は1であり、硫酸コンドロイチン多糖類Aの重量含有量が70~90%であり、硫酸コンドロイチン多糖類Cの重量含有量が10~30%であり、「中国薬典」2015年版規格の関連要求を満たすものである。
【0021】
前記多糖類硫酸コンドロイチン原料の平均分子量は20000~23000Daである;
前記多糖類硫酸コンドロイチン原料中、-SO と-COOのモル比は0.9~1.1である。
【0022】
前記硫酸化試薬は、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体、三酸化硫黄ピリジン錯体および三酸化硫黄トリエチルアミン錯体中の1種または複数種を含む;
前記硫酸化試薬と多糖類硫酸コンドロイチン原料中の繰り返し二糖フラグメントの当量比は(1~10):1である。より好ましくは(3~8):1である。
【0023】
前記硫酸化反応の温度は40~120℃であり、時間は2~36時間である;より好ましくは6~24時間である。本発明において、前記硫酸化反応は撹拌される条件下で行われることが好ましく;本発明では前記撹拌の速度に対し特に限定はなく、当業者がよく知っている撹拌速度であればよい。
【0024】
前記塩形成試薬は水酸化ナトリウム水溶液および/または水酸化カリウム水溶液である;前記塩形成試薬の濃度は1~4mol/Lである。
【0025】
前記第一沈降処理で使用した第一沈降試薬は体積分率が90~95%のエタノール水溶液である;
前記第二沈降処理で使用した第二沈降試薬はエタノールである;
前記透析で使用した透析バッグのカットオフ分子量は3000~12000Daである。
【0026】
本発明では、前記第一沈降試薬の添加方式、添加速度および使用量について特に限定はないが、前記硫酸化生成物系中の硫酸化生成物を完全に沈降させればよい。本発明において、前記第一沈降処理の時間は、好ましくは25~35分であり、前記第一沈降処理は好ましくは、室温、撹拌の条件下で行われる。
【0027】
前記第一沈降処理完了後、本発明は、得られた系を濾過することが好ましく、得られた固形物に水を加えて溶解して、得られた溶解物と塩形成試薬を混合して塩形成処理を行う。本発明において、前記溶解に用いられる水と前記固形物の使用量の比について、好ましくは(0.8~1.2)mL:1gであり、より好ましくは1mL:1gである。本発明において、前記塩形成試薬について、好ましくは水酸化ナトリウム水溶液および/または水酸化カリウム水溶液であり、より好ましくは水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液である;前記塩形成試薬の濃度について、好ましくは1~4mol/Lであり、より好ましくは2~3mol/Lである;前記塩形成試薬が水酸化ナトリウム水溶液と水酸化カリウム水溶液であるとき、前記塩形成試薬の濃度とは水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの濃度の合計である。本発明では、前記塩形成試薬の添加量について特に限定はないが、好ましくは、前記溶解物質と塩形成試薬を混合後、得られた系のpH値が中性になり、相応のナトリウム塩および/またはカリウム塩を得ることを保証できればよい。
【0028】
前記塩形成処理完了後、本発明では、得られた溶液に対し透析を行い、前記透析で使用した透析バッグのカットオフ分子量について、好ましくは3000~12000Daであり、より好ましくは8000~12000Daである。本発明において、前記透析の時間について、好ましくは2~3日であり、より好ましくは2日である;前記透析の過程において、12時間置きに水を替えることが望ましい。
【0029】
前記透析完了後、本発明は、得られた系をエバポレーションし、得られた残留物に酢酸ナトリウム水溶液(NaOAc水溶液)を加えて溶解させ、その後、得られた溶解物質とエタノールを混合し、第二沈降処理を行うことが好ましい。本発明において、前記NaOAc水溶液の質量濃度について、好ましくは2~5%であり、より好ましくは2~3%である。本発明で、NaOAc水溶液を使用して前記残留物を溶解したのは、前記残留物がよりエタノールに溶けやすくなることを保証するためであり、その後に行われる第二沈降処理をしやすくするためである。本発明において、前記残留物、NaOAc水溶液とエタノールの使用量の比について、好ましくは1g:(8~12)mL:(3.5~4.5)mLであり、より好ましくは1g:10mL:4mLである。
【0030】
前記第二沈降処理完了後、本発明では、得られた系を遠心分離することが好ましく、得られた固形物が硫酸コンドロイチン多糖類金属塩の粗製品である;最終的に得られる硫酸コンドロイチン多糖類金属塩が高い純度を有することを保証するために、本発明では、前記硫酸コンドロイチン多糖類金属塩粗製品に対し、繰り返し上記第一沈降処理、塩形成処理、透析と第二沈降処理をして、得られた粗製品に対し後続のカラム精製を行うことが好ましい。本発明において、前記カラム精製で使用したゲルカラムについて、好ましくはG25ゲルカラムであり、前記カラム精製で使用した溶出溶媒について、好ましくは水である。
【0031】
前記カラム精製完了後、本発明で、好ましくは溶出液を乾燥して、硫酸コンドロイチン多糖類金属塩を得る。本発明において、前記干燥として、好ましくは冷凍干燥である、本発明では、前記冷凍干燥の温度と時間について特に限定はないが、物質を十分に乾燥できればよい。
【0032】
本発明の第三の態様は薬物組成物を提供する。当該組成物は第一の態様の前記的硫酸コンドロイチン多糖類金属塩および薬学的に許容される担体を含む。当該薬物組成物は当分野公知の方法により調製することが可能である。本発明化合物を一種または複数種の薬学的に許容される固体または液体賦形剤および/または助剤により結合することで、ヒトまたは動物への使用に適するいかなる剤形とすることもできる。本発明化合物がその薬物組成物中の重量含有量について、通常は0.1-95%である。
【0033】
本発明化合物またはそれを含む薬物組成物は単位投与量の形式で投与することができ、投与の方式は消化道または非消化道であってよく、例えば経口、静脈注射、筋肉注射、皮下注射、鼻腔、口腔粘膜、目、肺臓および気道、皮膚、膣、直腸などであってよい。
【0034】
投薬剤形として、液体製剤、固形製剤または半固形製剤であってよい。液体製剤として、溶液剤(真の溶液およびコロイド溶液を含む)、エマルジョン剤(o/wタイプ、w/oタイプおよびダブルエマルジョンを含む)、懸濁液剤、注射剤(液注射剤、粉末注射剤および点滴剤を含む)、点眼薬剤、点鼻薬剤、ローションと塗布剤などであってよい;固形製剤は錠剤(包括一般錠剤、腸溶性錠剤、トローチ、分散性錠剤、チュアブル錠、発泡性錠剤、経口崩壊錠剤)、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル、腸溶性カプセルを含む)、顆粒剤、散剤、微丸剤、丸剤、坐剤、膜剤、パッチ剤、エアゾール(粉)剤、スプレー剤などであってよい;半固形製剤は軟膏剤、ゲル剤、ペースト剤などであってよい。
【0035】
本発明の化合物は、一般な製剤としてもよく、徐放性製剤や放出制御剤、ターゲティング製剤および各種微粒子ドラッグデリバリーシステムとしてもよい。
【0036】
本発明化合物を錠剤にするため、当分野で一般的に公知されている各種賦形剤を使用してもよく、具体的に、希釈剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤、流動助剤であってよい。希釈剤は、デンプン、デキストリン、ショ糖、ブドウ糖、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、微結晶性セルロース、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウムなどであってよい;湿潤剤は水、エタノール、イソプロパノールなどであってよい;結合剤はデンプンペースト、デキストリン、シロップ、はちみつ、ブドウ糖溶液、微結晶性セルロース、アラビアガムスラリー、ゼラチンペースト、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、アクリル樹脂、カルボマー、ポリビニルピロリドン、ポリグリコールなどであってよい;崩壊剤は乾燥デンプン、微結晶性セルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、架橋ポリビニルピロリドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルデンプンナトリウム、炭酸水素ナトリウムとクエン酸、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ドデシルスルホン酸ナトリウムなどであってよい;潤滑剤と流動助剤は、タルク粉、シリカ、ステアリン酸塩、酒石酸、流動パラフィン、ポリグリコールなどであってよい。
【0037】
さらに、錠剤をコーティング錠としてもよく、例えば、シュガーコーティング錠、薄膜コーティング錠、腸溶性コーティング錠、または二層錠剤および多層錠剤が挙げられる。
【0038】
投薬ユニットをカプセル剤とするために、有効成分である本発明化合物と希釈剤、流動助剤とを混合し、混合物を直接ハードカプセルまたはソフトカプセル中に配置してもよい。また、有効成分の本発明化合物を先に希釈剤、結合剤、崩壊剤を顆粒またはマイクロ丸剤としてから、ハードカプセルまたはソフトカプセル中に配置してもよい。本発明化合物錠剤の調製に使用される各希釈剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、流動助剤の種類も、本発明化合物のカプセル剤の調製に適用してもよい。
【0039】
本発明化合物を注射剤とするために、水、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールまたはこれらの混合物を溶剤として、さらに適量の当分野で一般の使用される可溶化剤、溶解助剤、pH調整剤、浸透圧調整剤を加えても良い。可溶化剤または溶解助剤は、ポロキサマー、レシチン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなどであってよい;pH調整剤は、リン酸塩、酢酸塩、塩酸、水酸化ナトリウムなどであってよい;浸透圧調整剤は、塩化ナトリウム、マンニトール、ブドウ糖、リン酸塩、酢酸塩などであってよい。冷凍乾燥粉注射剤を調製する場合、さらにマンニトール、ブドウ糖などをプロパントとして加えても良い。
【0040】
また、必要に応じて、さらに薬品製剤中に着色剤、防腐剤、香料、矯味剤またはその他の添加剤を添加してもよい。
【0041】
投薬の目的、治療効果の増強を達成するために、本発明の薬物または薬物組成物はいかなる公知の投与方法により投与されてもよい。
【0042】
本発明化合物薬物組成物の投与量は、予防または治療する疾患の性質および進行度、患者または動物の個体状況、投薬経路および剤形などに応じて、大きい範囲で変化してもよい。一般的に、本発明化合物の毎日の好適投与量の範囲が0.001-150mg/Kg体重であってよく、好ましくは0.1-100mg/Kg体重であり、より好ましくは1-60mg/Kg体重であり、最も好ましくは2-30mg/Kg体重である。上記投与量は一つの投与量単位または複数の投薬量単位に分けて投与してもよく、その際に、医者の臨床経験および他の治療手段を含む投薬計画に従って適宜決めれば良い。
【0043】
本発明の化合物または組成物は単独で服用してもよく、または他の治療薬物、症状対応薬物と併用してもよい。本発明の化合物がその他の治療薬物と相乗効果を有するとき、実際の状況に応じて投与量を調製すればよい。
【0044】
本発明の第四の態様は、本発明の第一の態様の前記硫酸コンドロイチン多糖類金属塩が、抗炎症疾患薬の調製における使用である。前記炎症疾患は、骨関節炎、リウマチ性関節炎を含む。
【0045】
本発明は、硫酸コンドロイチン多糖類金属塩を提供している。本発明が提供する硫酸コンドロイチン多糖類金属塩はNF-κBシグナルパスを抑制し、同時に炎症と関連する因子と酵素の発現及び機能を抑制することで、抗炎症作用を発揮するものである。実施例の結果からわかるように、本発明が提供する硫酸コンドロイチン多糖類金属塩は抗炎症作用を有し、抗炎症疾患薬物の調製に使用できる。
【0046】
本発明は硫酸コンドロイチン多糖類金属塩を提供している。本発明が提供する硫酸コンドロイチン多糖類金属塩は抗炎症活性を有するだけでなく、さらに骨密度を高める効果も有する。実施例の結果からわかるように、本発明が提供する硫酸コンドロイチン多糖類金属塩は抗炎症、骨の保護の効果を有し、抗リウマチ性関節炎疾患薬物の調製に使用できる。
【0047】
本発明は種硫酸コンドロイチン多糖類金属塩を提供している。本発明が提供する硫酸コンドロイチン多糖類金属塩は、軟骨の含水量を高めることができ、軟骨を保護する効果を有する。実施例の結果からわかるように、本発明が提供する硫酸コンドロイチン多糖類金属塩は抗炎症、軟骨の保護の効果を有し、抗骨関節炎疾患薬物の調製に使用できる。
【0048】
有益な技術的効果:本発明における化合物の硫酸化度が高いとき(硫酸イオンとカルボン酸イオンの比率は特定の範囲内である)、突出したin vivoの抗炎症活性を有し、天然由来のCS-Eの抗炎症活性を超える。本発明における化合物の硫酸化度とin vivoの抗炎症活性とは、明らかな構造活性相関を有する。急性潰瘍性直腸炎の動物モデルにおいて、本発明の化合物も突出した生物活性を発現しており、顕著な治療作用を有している。天然由来のCS-AとCS-Eと比べて、本発明の化合物は抗I型コラーゲン誘発マウス足指腫脹(RA)動物モデル、パパイン誘発ラット関節炎(OA)モデルにおいて、いずれも突出した生物活性を発現し、顕著な治療作用を有する。
【0049】
本発明は、前記硫酸コンドロイチン多糖類金属塩の調製方法を提供しており、本発明では半合成の手段から、異なる硫酸化度の硫酸コンドロイチン多糖類金属塩を製造でき、その方法の操作は簡単で、スケール生産に適している。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】実施例1にて調製した多糖類1のHPLCスペクトルである;
図2】実施例2にて調製した多糖類2のHPLCスペクトルである;
図3】実施例3にて調製した多糖類3のHPLCスペクトルである;
図4】実施例4にて調製した多糖類4のHPLCスペクトルである;
図5】実験例3における異なる群のUCマウスの体重変化の対比図である。ここで、##p<0.01vs.Con;*p<0.05vs.Mod;
図6】実験例3における異なる群のUCマウス結腸長さの対比図である。ここで、##p<0.01vs.Con;*p<0.05vs.Mod;
図7】実験例3における異なる群のマウスのDAIスコアの対比図である。ここで、##p<0.01vs.Con;**p<0.01、*p<0.05vs.Mod。
図8】試験例5における異なる群のラット膝関節のMRI画像である。ここで、図8から、CON群では、関節隙間が正常で、関節軟骨面が破損がなく完全であり、軟骨下骨が正常で、軟骨の厚みも正常であり、適度な膝蓋下脂肪を有し、関節の滑膜および少量の関節滑液が見られた;MOD群では、関節隙間が狭まり、関節軟骨面が破損により欠失し、軟骨外縁が不完全で、軟骨形状が不明瞭、軟骨厚みの低下が見られた;5H群では、関節形状が明瞭であり、関節隙間が正常に回復しており、少々の関節滑液を有することが見られた。
図9】試験例5における異なる群のラット膝関節CT図である。ここで、図9から、CON群では、ラット膝関節形状が見られた;MODモデル群では、膝関節軟骨の下骨に骨質破壊が現れたことが見られ、著しく侵食され、関節に明らかな空洞が形成され、骨関節に変形があることが見られた;POS陽性薬群と5L群では、モデル群と比べて、骨質破壊および侵食現象は比較的軽く見える;5M群および5H群と、モデル群と比較して、骨質破壊および侵食現象の明らかな改善が見られた。
【発明を実施するための形態】
【0051】
実施例1
(1)商業化された多糖類硫酸コンドロイチンA(煙台東誠薬業グループ株式有限公司、NO.CSJ1170701)26.8gをジメチルスルホキシド360mL中に溶解して、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体24g(3eq.)を加え、撹拌、50℃の条件下で6時間反応させた;
【0052】
(2)得られた反応系を室温まで冷却し、体積分率95%のエタノール水溶液400mLを加え、30min撹拌後、濾過して、固形物に水を加えて溶解させて(水と固形物の使用量比は1mL:1gである)、2mol/LのNaOH水溶液によりpH値を7.0に調整し、得られた溶液を透析バッグ(カットオフ分子量は12000Da)に入れて、2日の透析後、エバポレーションにより固体を得た;
【0053】
(3)得られた固体を質量濃度2%のNaOAc水溶液中に溶解して、その後、無水エタノールを加え、十分沈殿させた後に遠心分離して、粗製品を得た;なお、前記固体、NaOAc水溶液と無水エタノールの使用量比は1g:10mL:40mLである;
【0054】
(4)得られた粗製品を繰り返し工程(2)と工程(3)に供し、その後、得られた物質をG25ゲルカラムで精製し(使用した溶出剤はHOである)、最後に得られた溶出液を冷凍乾燥して、21.3gの硫酸コンドロイチン多糖類ナトリウム塩(多糖類1と記す)を得た。
【0055】
実施例2
実施例1の工程の通り、硫酸コンドロイチン多糖類を調製した。異なる点は、工程(1)において、商業化された多糖類硫酸コンドロイチンA6.7gをジメチルスルホキシド90mL中に溶解させて、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体8g(4eq.)を加えて;撹拌、60℃の条件下で、24時間反応させたことである。最終的に4.4gの硫酸コンドロイチン多糖類ナトリウム塩(多糖類2と記す)を得た。
【0056】
実施例3
実施例1の工程の通り、硫酸コンドロイチン多糖類を調製した。異なる点は、工程(1)において、商業化された多糖類硫酸コンドロイチンA6.7gをジメチルスルホキシド90mL中に溶解させて、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体10g(5eq.)を加えて;撹拌、60℃の条件下で、24時間反応させ、透析バッグのカットオフ分子量は7000Daであることである。最終的に4.1g硫酸コンドロイチン多糖類ナトリウム塩(多糖類3と記す)を得た。
【0057】
実施例4
実施例1の工程の通り、硫酸コンドロイチン多糖類を調製した。異なる点は、工程(1)において、商業化された多糖類硫酸コンドロイチンA6.7gをジメチルスルホキシド90mL中に溶解させて、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体12g(6eq.)を加えて;撹拌、70℃の条件下で、20時間反応させ、透析バッグのカットオフ分子量は5000Daであることである。最終的に3.9g硫酸コンドロイチン多糖類ナトリウム塩(多糖類4と記す)を得た。
【0058】
実施例5
実施例1の工程の通り、硫酸コンドロイチン多糖類を調製した。異なる点は、工程(1)において、商業化された多糖類硫酸コンドロイチンA1.0gをジメチルスルホキシド13mL中に溶解させて、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体2.4g(8eq.)を加えて;撹拌、100℃の条件下で、36時間反応させ、透析バッグのカットオフ分子量は3500Daであることである。最終的に1.0g硫酸コンドロイチン多糖類ナトリウム塩(多糖類5と記す)を得た。
【0059】
薬理実験
実験例1
実施例1~5で調製した多糖類1~5の組成について分析した。具体的には平均分子量(Da)、-SO /-COO(モル比値)、-SO 含有量、アルデュロン酸含有量、ヘキソサミン含有量、抗凝固能(IU)、分解性多糖類含有量と各サブタイプ成分の割合(硫酸コンドロイチンABC酵素で実施例1~5調製の多糖類1~5を分解し、そして、HPLC測定を使用して、含まれる各サブタイプ成分、具体的には、多糖類硫酸コンドロイチンA、多糖類硫酸コンドロイチンCと多糖類硫酸コンドロイチンEの割合を測定した。なお、前記多糖類1~5中では、さらに余分のその他のサブタイプの硫酸コンドロイチン多糖類を含むため、ここではさらに限定しない;多糖類1~4のHPLCスペクトルは図1~4に示すとおりである)を含み、具体的な結果は表1の通りである。
【0060】
【表1】
【0061】
実験例2
実施例1~5で調製した多糖類1~5について抗炎症効果を評価した、詳細は下記の通りである:
【0062】
(1)試験方法:ハズ油誘発マウス耳の急性腫脹炎症モデルにおけるCS化合物の薬力学的活性の評価実験
動物:Balb/cマウス、オス(20~22g);8匹/群。
【0063】
群分け:モデル群、陽性薬インドメタシン群(5mg/kg)、天然抽出CS-E群(200mg/kg)、多糖類群(200mg/kg、100mg/kg、50mg/kg)に分けた。陽性薬とCS系化合物はいずれも質量濃度0.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウムで調製し、4℃の冷蔵庫で保存した。
【0064】
投与と計測:毎日1回、投与は3日間であった。最後の投与後、計算化合物によって誘発したマウス耳腫れ率(%)および薬が耳腫れに対する抑制率(%)を計算した。
【0065】
統計分析:実験結果を「平均値±標準偏差」で表示する。両群間の統計学的差異はt鑑定により計算分析を行った。*はp<0.05を示し、**はp<0.01を示す。
【0066】
(2)多糖類の抗炎症効果は表2~4の通りである。
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
表2~4から分かるように、多糖類1-5の硫酸化度と抗炎症活性には構造活性相関が存在する。多糖類2~5は、マウス耳腫れモデルでは優れた抗炎症効果を発現し、天然由来のCS-E多糖類より優れている。特に多糖類3は、50~200mg/kg範囲内でいずれも顕著な抗炎症作用を発現し、明確な用量反応関係を有する。
【0070】
実験例3
実施例3で調製した多糖類3(SEMI5と表記する)について、抗DSSモデルの薬力学評価を行った、詳細は下記の通りである:
【0071】
一、材料と方法
1、実験動物
C57BL/6Jマウス、オス(18~20g)、6匹/群。北京華阜康生物科技株式有限公司より購入;許可証番号:SCXK(京)2014-0004。
【0072】
2、実験群分け
(1)正常対照群(control群):質量濃度0.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウムを強制経口投与した。
【0073】
(2)UC(Ulcerative Colitis、潰瘍性結腸炎)モデル群(model群):質量濃度0.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウムを強制経口投与した。
【0074】
(3)SASP(陽性薬サラゾスルファピリジン)群:上海信誼薬厂廠有限公司(ロット番号:036151102);500mg/kg、質量濃度0.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウムで調製し、4℃で保存して、毎日一回強制経口投与した。
【0075】
(4)SEMI5-50群:50mg/kg、蒸留水で調製した。4℃で保存して、毎日一回強制経口投与した。
【0076】
(5)SEMI5-150群:150mg/kg、蒸留水で調製した。4℃で保存して、毎日一回強制経口投与した。
【0077】
3、実験方法
C57BL/6JマウスをSPF級動物ハウス(実験動物使用許可証番号:SYXK(京)2014-0023)で適応給餌を一週間行った後、無作為に上記プロトコルの通り5群に分けた。UCモデル群および投与群マウスに対し、毎日DSS(MP、CA9011-18-1、US)により、実験室で確立済みの潰瘍性結腸炎症モデリング方法でモデル化を行った。正常対照群(control群)およびUCモデル群(model群)は、質量濃度0.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウムを強制経口投与を毎日一回行った。SASP群、SEMI5-50群およびSEMI5-150群は「実験群分け」部分における実験プロトコルに従って強制経口投与を毎日一回行った。モデリング7日後、UCモデル群動物は倦怠感、活動の低下、体重減少、軟便、血便など典型的なUC病変を示した。実験を終了し、各群動物を安楽死させ、各種結腸炎症に関する各種パラメータを測定し(実験結果部分に示すとおり)、各化合物の抗UC薬力学的活性を総合評価した。
【0078】
二、実験結果
1、SEMI5各濃度がDSS誘発UCモデルマウスの体重に与える影響(表5および図5)。
【0079】
【表5】
【0080】
表5と図5から分かるように、正常対照群と比べて、UCモデル群マウスの体重は顕著に低下し、統計学的に有意差があることから、UCモデリングに成功したことを示唆した。SASP群とSEMI5-150群では、DSS誘発の急性UCを効果的に緩和できず、C57 BL/6Jマウスの体重は低下した、一方、SEMI5-50群とUCモデル群で比較すると、効果的に体重減少を緩和しており、統計学鑑定では有意に異なることがわかった。
【0081】
2、SEMI5各濃度がUCマウス結腸拘縮に与える影響(表6および図6)。
【0082】
【表6】
【0083】
表6と図6から分かるように、DSS誘発C57 BL/6Jマウス急性UC動物モデルでは、正常対照群と比較して、UCモデル群マウス結腸の拘縮が明らかに短くなり、統計学的に非常に顕著な差異があった。SASP群ではモデル動物の結腸拘縮を効果的に改善できなかった。一方、SEMI5-50群、SEMI5-150群をUCモデル群と比較した場合、その結腸拘縮の改善は効果的であり、統計学的に有意差があった。
【0084】
3、SEMI5各濃度がUCマウス疾患総合指数DAIスコアに与える影響(表7および図7)。
【0085】
【表7】
【0086】
表7と図7から分かるように、正常対照群と比較して、UCモデル群動物の疾患総合指数DAIは明らかに増加し、統計学的に非常に顕著な差異があり、モデリング成功を示唆した。UCモデル群と比較して、SEMI5-50群とSEMI5-150群は実験動物疾患総合指数DAIのスコアを顕著に低下させることができ、統計学上で非常に顕著な差異があった。SASP群では一定程度の改善があったが、統計学鑑定で有意差があった。なお、DAIスコアは動物の体重減少の度合い、大便性状、便血などを指標から評価した、DAIスコアが低いほど、動物がより正常な生理状態に近いことを示唆している。DAIスコア基準は表8の通りである。
【0087】
【表8】
【0088】
実験例4
実施例3で調製した多糖類3(SEMI5と表記する)で抗I型コラーゲン誘発マウス足指腫脹モデル評価を行った、詳細は下記の通りである:
【0089】
一 、材料と方法
1動物:DBAIマウス、オス(20-22g);7匹/群。
【0090】
2群分け:空白対照群、モデル群、陽性薬インドメタシン群(5mg/kg)、CSA群(200mg/kg)、CSE群(200mg/kg)、CS-E-semi3群(200mg/kg)およびCS-Semi-5群(200mg/kg)。陽性薬とCS系化合物はいずれも0.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウムで調製し、4℃の冷蔵庫で保存した。
【0091】
3投与回数:毎日1回、投与3日。
【0092】
4実験方法:実験室で確立済みの方法に従い、初回免疫後、マウスの体重を週ごとに測定した。実験21日に二回目のショック免疫後、各群マウスの関節腫脹の度合いを毎週観察し、関節腫脹度指数スコアを評価した。
【0093】
5 統計分析:実験結果を「平均値±標準偏差」で表示した。両群間の統計学的差異はt検定を使用した方法で計算分析した。*はp〈0.05、**はp<0.01を表す。
【0094】
二 実験結果
【表9】
【0095】
【表10】
【0096】
【表11】
【0097】
表9のマウス終了時体重結果の比較からわかるように、SEMI5薬物はマウスの体重減少に対し明らかな回復作用を有する。表10から、マウス関節は通常4w時に腫脹が現れ、つま先から足の裏へ、さらにかかと踝関節まで発展し、5w-6w時に病変がピークとなり、モデリング成功率は100%に達した。SEMI5薬物は関節腫脹に対し明らかな改善作用を有した。表11では、SEMI5薬物は骨密度に対し明らかな改善作用を有することを示唆しており、且つ、陽性薬の改善作用より優れたことがわかった。以上の結果から、半合成SEMI5薬物は抗RA活性を有することが示唆された。
【0098】
実験例5
実施例3で調製した多糖類3(SEMI5と表記する)で抗パパイン誘発のOAモデルに対し評価を行った、詳細は下記の通りである:
【0099】
一 材料と方法:
1動物:
SDラット、オス(180-220g);6匹/群;北京維通利華実験動物技術有限公司より購入;許可証番号:SCXK(京)2012-0001。
【0100】
2群分け:
(1)正常対照群(Con群):DDW強制経口投与。
【0101】
(2)モデル群(Mod群):DDW強制経口投与。
【0102】
(3)陽性薬セレコキシブ群(Pos群):ファイザー社より購入した(W47055);DDWで調製し、4℃で保存して、毎日一回強制経口投与した。
【0103】
(4)化合物semi5低投与量群(5L群):50mg/kg、DDWで調製し、4℃で保存して、毎日一回強制経口投与した。
【0104】
(5)化合物semi5中投与量群(5M群):100mg/kg、DDWで調製し、4℃で保存して、毎日一回強制経口投与した。
【0105】
(6)化合物semi5高投与量群(5H群):200mg/kg、DDWで調製し、4℃で保存して,毎日一回強制経口投与した。
【0106】
二 実験結果
1 膝関節実幅(Net width)
ノギスで皮と脂肪を除去した膝関節幅を測定し、直感的に関節の腫脹の度合いを鑑定する。
【0107】
【表12】
【0108】
2 核磁気共鳴結果
核磁気共鳴によりラット膝関節軟骨の損傷度合いを鑑定し(図8の通り)、同時に、計算相応条件下で測定された軟骨石灰化度値の変化データを計算し、各群関節軟骨の含水量を反映させた、含水量が高いほど、関節軟骨が正常な生理状態により近いことを示唆している(表13参照)。
【0109】
【表13】
【0110】
表13からわかるように、モデル群(Mod)動物の石灰化度値は正常対照群(Con)と比較して、統計学的の差異が非常に顕著であり、軟骨破壊のモデリングの成功を強く示唆した;高投与量群動物の石灰化度値はモデル群(Mod)と比較して、統計学上で非常に顕著な差異があった。以上の結果から、モデル群の軟骨が著しく破壊された一方で、投与群は明らかな改善効果を有することが示唆された。**p<0.01vsCon;##p<0.01vsMod。
【0111】
3 CT鑑定結果
CTからラット膝関節の軟骨下骨を鑑定することができ、軟骨下骨の再構築状況を判断できる。
【0112】
三、実験結論
1、抗DSS誘発急性潰瘍性結腸炎モデルの薬力学評価
1)、UCモデル群動物では明らかな体重減少、便血、下痢、結腸拘縮、DAI総合指数スコアと結腸群織病理スコアの高まりが見られ、DSS誘発マウス潰瘍性結腸炎モデルのモデリング成功を示唆しており、信頼できる体系であることが分かり、抗UC化合物の活性評価に適していることがわかった。
【0113】
2)、SASP群の実験では、効果的にUCモデル動物の体重減少を低減できなかったが、UCモデル動物の下痢、便血、結腸拘縮などの現象を改善でき、SASPが一定の抗UC活性を有することを示唆した。
【0114】
3)、SEMI5-50群は効果的にモデル動物の体重減少を低減させ、且つ、UCモデル動物の下痢、便血およびDAIスコアの低減などの面でも一定の抗UC活性を発現させ、統計学上では有意差があった。以上の結果から、本計測体系下では、SEMI5-50はDSS誘発のUC動物モデルに対し、明らかな治療作用を有することがわかった。
【0115】
4)、SEMI5-150群はUCモデル動物の体重減少を低減させることができず、統計学上では有意差はなかったが、結腸拘縮を改善することができ、統計学上では有意差があった、且つ、UCモデル動物の下痢、便血およびDAIの低下と組織スコアなどの面のいずれにも抗UC活性を発現させ、統計学上では有意差があった。以上の結果から、本計測体系下では、SEMI5-150はDSS誘発のUC動物モデルに対し、一定の治療作用を有することがわかった。
【0116】
2、抗I型タンパク誘発マウス足指腫脹モデルの薬力学評価
1)、マウスの終了時体重結果の比較からわかるように、SEMI5は関節炎マウスの体重減少に対して、明らかな回復作用を有することがわかった。
【0117】
2)、SEMI5は関節腫脹に対して、明らかな改善作用を有する。
【0118】
3)、SEMI5は関節骨密度に対して明らかな改善作用があり、且つ、陽性薬と比較して、改善作用が優れている。以上の結果は、半合成SEMI5は抗RA活性を有することを示唆している。
【0119】
3、抗パパイン誘発ラット骨関節炎モデルの薬力学評価
1)、モデル群(Mod)動物の膝関節実幅は正常対照群(Con)と比較して明らかに増加し、統計学上で非常に顕著な差異があり、モデル群動物関節に明らかな腫脹が現れていることを示唆している;陽性薬群(Pos)はモデル群と比較して、統計学的差異はなかった;各投与群動物の膝関節実幅はモデル群(Mod)と比較して、統計学的差異があり、SEMI5が比較的優れた抗炎症活性を有することを示唆した。
【0120】
2)、CON群では、関節隙間が正常で、関節軟骨面が破損がなく完全であり、軟骨下骨が正常で、軟骨の厚みも正常であり、適度な膝蓋下脂肪を有し、関節の滑膜および少量の関節滑液が見られた;MOD群では、関節隙間が狭まり、関節軟骨面が破損により欠失し、軟骨外縁が不完全で、軟骨形状が不明瞭、軟骨厚みの低下が見られた;SEMI5H群では、関節形状が明瞭であり、関節隙間が正常に回復しており、少々の関節滑液を有することが見られた。
【0121】
3)、モデル群(Mod)動物の石灰化度値は正常対照群(Con)と比較して、統計学上の差異は非常に顕著であり、軟骨破壊が顕著なモデリングに成功したことを示唆している;SEMI5の高投与量群動物の石灰化度値はモデル群(Mod)と比較して、統計学上で非常に顕著な差異があった。以上の結果から、モデル群の軟骨破壊が著しい一方で、投与群では明らかな改善効果が見られた。
【0122】
4)、CON群の正常なラットの膝関節形状と比べて、MODモデル群では、膝関節軟骨の下骨に骨質破壊が現れたことが見られ、著しく侵食され、関節に明らかな空洞が形成され、骨関節に変形があることが見られた;POS陽性薬群とSEMI5L群では、モデル群と比べて、骨質破壊および侵食現象は比較的軽く見える;SEMI5M群とSEMI5H群では、モデル群と比較して、骨質破壊および侵食現象の明らかな改善が見られた。
【0123】
以上の結果は、半合成SEMI5は抗OA活性を有することを示唆している。
【0124】
以上は単に本発明の好ましい実施態様であり、当業者にとって本発明の原理から逸脱しない前提で、各種改善と変更をしたとしても、これら改善や変更も本発明の保護範囲とみなすべきであることは言うまでもない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-12-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される硫酸コンドロイチン多糖類金属塩であって、下記構造一般式を有し、
【化1】
全体としては電気的中性であり、硫酸コンドロイチン多糖類アニオンと金属カチオンを含み、
前記硫酸コンドロイチン多糖類アニオンの平均分子量は1000~15000Daであり、
前記硫酸コンドロイチン多糖類アニオン中-SO と-COOのモル比は1.9~2.5であり、
前記硫酸コンドロイチン多糖類アニオンnの範囲は2≦n≦45である、硫酸コンドロイチン多糖類金属塩。