(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020462
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】車両用天井材の製造方法及び車両用天井材の製造装置
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20240206BHJP
B29C 43/30 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
B60R13/02 A
B29C43/30
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023196339
(22)【出願日】2023-11-20
(62)【分割の表示】P 2020093292の分割
【原出願日】2020-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】稲吉 秀光
(57)【要約】 (修正有)
【課題】成形過程で、ホットメルトフィルムを介在させなくてもバインダが表皮材を汚すのを防ぐ車両用天井材の製造方法及び車両用天井材の製造装置を提供する。
【解決手段】基材ロール21Aから基材21を繰り出し、バインダ26を含浸させた軟質ポリウレタン発泡体の板状基材21が備わるベース材2と、表皮材ロール3Aから繰り出し、該ベース材2に一部が接触した場合はその部分を許容しつつ、該ベース材2の上面から離した表皮材3とを、それぞれ別々に金型4へ向けて連続的に供給し、該金型4の型開状態にある上型6と下型5間に該表皮材3と該ベース材2とを上下に離間させて導入後、該表皮材3が該ベース材2に重なる被成形素材にして型閉じし、その後、型閉じ下での熱プレスにより前記バインダ26を硬化させて天井材を成形する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材ロールから基材を繰り出し、バインダを含浸させた軟質ポリウレタン発泡体の板状基材が備わるベース材と、表皮材ロールから繰り出し、該ベース材に一部が接触した場合はその部分を許容しつつ、該ベース材の上面から離した表皮材とを、それぞれ別々に金型へ向けて連続的に供給し、該金型の型開状態にある上型と下型間に該表皮材と該ベース材とを上下に離間させて導入後、該表皮材が該ベース材に重なる被成形素材にして型閉じし、その後、型閉じ下での熱プレスにより前記バインダを硬化させて天井材を成形することを特徴とする車両用天井材の製造方法。
【請求項2】
前記上型に係る上流側の型側壁から上流側へ突き出す突出部材と、 該突出部材に基端部を係止し、前記表皮材の進行方向と平面視で先端板辺の辺長方向を交差させた先端板部が、前記金型へ略水平にして供給する該表皮材上に向けて、上方から垂下する突板部材と、 少なくとも前記金型の型開から型閉じに至るまで、その上型と下型間に配される前記表皮材に係る幅方向で型プレス面外になる両縁部分を掴む把持具と、を具備し、 前記型開から型閉じへの進行に伴い、前記先端板部が、該把持具よりも上流側に位置する前記表皮材に係る帯幅方向の中央部位に突っ込む請求項1記載の車両用天井材の製造方法。
【請求項3】
前記先端板部の先端板辺の長さが表皮材の幅方向長さよりも小さく、且つ該先端板辺のセンター部位を両側のサイド部位よりも突出形成し、前記型開から型閉じへの進行に伴い、前記先端板部に係る該先端板辺のセンター部位がサイド部位よりも前記表皮材へ先に突っ込む請求項2記載の車両用天井材の製造方法。
【請求項4】
前記突出部材が前記上型に係る上流側の型側壁から突出形成された軸状部材とその先端部に係止具を取着した係止具付き軸状部材からなり、且つ該突出部材が前記上型に係る上流側の型側壁に複数固着される一方、各突出部材の位置に合わせて上下方向に長い長孔を前記基端部に複数設けた前記突板部材が、該長孔に前記軸状部材を遊挿して前記係止具で各突出部材に位置調整し固定された後、前記型開から型閉じへの進行に伴い、前記先端板部が前記表皮材に突っ込む請求項2又は3に記載の車両用天井材の製造方法。
【請求項5】
基材ロールから軟質ポリウレタン発泡体の板状基材を繰り出し、バインダを含浸させた基材を備えるベース材にして、その上面を略水平に保って、金型へ向けて連続的に該ベース材を供給する第一供給手段と、 表皮材ロールから表皮材を繰り出し、前記ベース材に該表皮材の一部が接触した場合はその状態を許容しつつ離した状態にして、前記金型へ向けて連続的に表皮材を供給する第二供給手段と、を具備し、 該金型の型開状態にある上型と下型間に、前記表皮材と前記ベース材とを上下に離間させて導入後、型閉じにより、該表皮材の下面と該ベース材の上面とを重ね合わせて被成形素材にし、且つ熱プレスにより前記バインダを硬化させて天井材を成形することを特徴とする車両用天井材の製造装置。
【請求項6】
前記上型に係る上流側の型側壁から上流側へ突出する突出部材と、 該突出部材に基端部を係止し、前記表皮材の進行方向と平面視で先端板辺の辺長方向を交差させた先端板部が、前記金型へ略水平にして供給する該表皮材上に向けて、上方から垂下する突板部材と、 少なくとも前記金型の型開から型閉じに至るまで、その上型と下型間に配される前記表皮材に係る幅方向で型プレス面外になる両縁部分を掴む把持具と、をさらに具備し、 前記型開から型閉じへの進行に伴い、前記先端板部が、該把持具よりも上流側に位置する前記表皮材に係る帯幅方向の中央部位に突っ込んで該表皮材に凹みを形成する請求項5記載の車両用天井材の製造装置。
【請求項7】
前記先端板部の先端下辺の長さが前記表皮材の幅方向長さよりも小さく、且つ該先端下辺のセンター部位を両側のサイド部位よりも突出形成し、前記型開から型閉じへの進行に伴い、前記先端板部に係る該先端板辺のセンター部位がサイド部位よりも前記表皮材へ先に突っ込む請求項6記載の車両用天井材の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両に装備される車両用天井材の製造方法及び車両用天井材の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の天井には車体外板の内側に車両用天井材が取付けられる。該天井材は断熱性基材が備わる積層材を成形して得られるが、例えばバスやトラック、ワンボックスカーなどの車両天井材では、深絞り成形されることから、圧縮に対して柔らかい軟質ポリウレタン発泡体が通常用いられている。そして、該天井材の生産効率を上げる場合は、軟質ポリウレタン基材にバインダを含浸させた積層材が、金型の上型と下型間に向けて連続的に供給され、型閉じ下の熱プレスによってバインダを硬化させて天井材を成形する製法が採用されてきた(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、天井表皮材を含む積層材にして、圧着ロールを用いて圧縮するため、加飾用表皮材の意匠面を汚さぬよう、その内側にホットメルトフィルムが存在する。
【0005】
ところが、近年、車両用天井材の軟質ポリウレタン発泡体製基材に対し、断熱性、乗員保護だけでなく、車室内の吸音効果の要望があり、特許文献1は十分応えきれてなかった。従来品は表皮材からポリウレタン発泡体製基材への吸音通過をホットメルトフィルムが遮っており、吸音効果に応えようとすると、表皮材にバインダが染み出す問題を解決できなくなる。特許文献2018-122459のごとく、プレスローラ(圧着ロール)後の基材に表皮材を重ね置きしても、その内側のホットメルトフィルムをなしにすると、表皮材にバインダが染み出す場合があった。
【0006】
さらに、プレスローラ後の基材側ベース材91に表皮材92を重ね置きして天井材を成形する
図9の従来法は、天井材の寸法不良品ができ易かった。型閉じ時に表皮材92が型内へ引っ張られることになり、
図9の型閉じから
図10の型開に進むと、その反力により下型mの上流側エッジmEから離れる天井材箇所に鈍角化部分Rが発生した。脱型で、天井材の側壁端部分Eが、鎖線図示のごとく下型プレス面m0,上型プレス面n0に沿った形で起立しない。型開に伴い、ベース材91側はアキュームローラ(後述)の上昇によって型内へ引っ張られる力を緩和するが、表皮材92は張った状態が保たれるので、鈍角化部分Rができ易かった。型開から型閉じに至るまで、上型nと下型m間に配される表皮材92に係る幅方向で型外になる両縁部分を把持具が掴んでいると、特に表皮材の幅方向中央に鈍角化部分Rができ易かった。脱型後に、
図11の治具Jにセットし、孔開け作業を行うことになるが、天井材の寸法不良品PBで鈍角化部分Rがあると、該鈍角化部分Rが治具側面J1の先端に当たってしまい、うまくフィットしない。治具底面J2に天井材裏面Pbが浮いた状態となって、治具穴J3に合わせる孔開け作業に支障をきたし、製品歩留まり低下の問題をかかえている。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するもので、成形過程で、ホットメルトフィルムを介在させなくてもバインダが表皮材を汚すのを防ぐ車両用天井材の製造方法及び車両用天井材の製造装置を提供することを目的とする。さらに、突出部材,突板部材を備えれば、寸法変形による不良品の低減も可能な車両用天井材の製造方法及び車両用天井材の製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、基材ロールから基材を繰り出し、バインダを含浸させた軟質ポリウレタン発泡体の板状基材が備わるベース材と、表皮材ロールから繰り出し、該ベース材に一部が接触した場合はその部分を許容しつつ、該ベース材の上面から離した表皮材とを、それぞれ別々に金型へ向けて連続的に供給し、該金型の型開状態にある上型と下型間に該表皮材と該ベース材とを上下に離間させて導入後、該表皮材が該ベース材に重なる被成形素材にして型閉じし、その後、型閉じ下での熱プレスにより前記バインダを硬化させて天井材を成形することを特徴とする車両用天井材の製造方法にある。請求項2の発明たる車両用天井材の製造方法は、請求項1で、上型に係る上流側の型側壁から上流側へ突き出す突出部材と、該突出部材に基端部を係止し、前記表皮材の進行方向と平面視で先端板辺の辺長方向を交差させた先端板部が、前記金型へ略水平にして供給する該表皮材上に向けて、上方から垂下する突板部材と、少なくとも前記金型の型開から型閉じに至るまで、その上型と下型間に配される前記表皮材に係る幅方向で型プレス面外になる両縁部分を掴む把持具と、を具備し、前記型開から型閉じへの進行に伴い、前記先端板部が、該把持具よりも上流側に位置する前記表皮材に係る帯幅方向の中央部位に突っ込むことを特徴とする。請求項3の発明たる車両用天井材の製造方法は、請求項1又は2で、先端板部の先端板辺の長さが表皮材の幅方向長さよりも小さく、且つ該先端板辺のセンター部位を両側のサイド部位よりも突出形成し、前記型開から型閉じへの進行に伴い、前記先端板部に係る該先端板辺のセンター部位がサイド部位よりも前記表皮材へ先に突っ込むことを特徴とする。請求項4の発明たる車両用天井材の製造方法は、請求項2又は3で、突出部材が前記上型に係る上流側の型側壁から突出形成された軸状部材とその先端部に係止具を取着した係止具付き軸状部材からなり、且つ該突出部材が前記上型に係る上流側の型側壁に複数固着される一方、各突出部材の位置に合わせて上下方向に長い長孔を前記基端部に複数設けた前記突板部材が、該長孔に前記軸状部材を遊挿して前記係止具で各突出部材に位置調整し固定された後、前記型開から型閉じへの進行に伴い、前記先端板部が前記表皮材に突っ込むことを特徴とする。 請求項5に記載の発明の要旨は、基材ロールから軟質ポリウレタン発泡体の板状基材を繰り出し、バインダを含浸させた基材を備えるベース材にして、その上面を略水平に保って、金型へ向けて連続的に該ベース材を供給する第一供給手段と、表皮材ロールから表皮材を繰り出し、前記ベース材に該表皮材の一部が接触した場合はその状態を許容しつつ離した状態にして、前記金型へ向けて連続的に表皮材を供給する第二供給手段と、を具備し、該金型の型開状態にある上型と下型間に、前記表皮材と前記ベース材とを上下に離間させて導入後、型閉じにより、該表皮材の下面と該ベース材の上面とを重ね合わせて被成形素材にし、且つ熱プレスにより前記バインダを硬化させて天井材を成形することを特徴とする車両用天井材の製造装置にある。請求項6の発明たる車両用天井材の製造装置は、請求項5で、上型に係る上流側の型側壁から上流側へ突出する突出部材と、該突出部材に基端部を係止し、前記表皮材の進行方向と平面視で先端板辺の辺長方向を交差させた先端板部が、前記金型へ略水平にして供給する該表皮材上に向けて、上方から垂下する突板部材と、少なくとも前記金型の型開から型閉じに至るまで、その上型と下型間に配される前記表皮材に係る幅方向で型プレス面外になる両縁部分を掴む把持具と、をさらに具備し、前記型開から型閉じへの進行に伴い、前記先端板部が、該把持具よりも上流側に位置する前記表皮材に係る帯幅方向の中央部位に突っ込んで該表皮材に凹みを形成することを特徴とする。請求項7の発明たる車両用天井材の製造装置は、請求項6で、先端板部の先端下辺の長さが前記表皮材の幅方向長さよりも小さく、且つ該先端下辺のセンター部位を両側のサイド部位よりも突出形成し、前記型開から型閉じへの進行に伴い、前記先端板部に係る該先端板辺のセンター部位がサイド部位よりも前記表皮材へ先に突っ込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両用天井材の製造方法及び車両用天井材の製造装置は、バインダを含浸させた軟質ポリウレタン発泡体の基材が備わるベース材に表皮材を一体化させて天井材を成形するにあたり、表皮材が載り一体化する側にホットメルトフィルム等の吸音阻止材をなしにして天井材の成形が可能になるので、軟質ポリウレタン発泡体の吸音効果を発揮させることができる。型開状態にある上型と下型間に表皮材とベース材とを上下に離間させて導入した後、表皮材がベース材に重なる被成形素材にして型閉じし、その後の熱プレスによりバインダを硬化させて天井材に成形するので、バインダで装飾用表皮材を汚さないようにできる。 さらに、突出部材と突板部材を設けることによって、型閉じ時に表皮材が型内へ引っ張られることによる鈍角化部分の発生を、凹みがつくる余長部分によって解消し、寸法不良による不良品低減が可能になるなど多大な効を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の天井材の製造方法及び天井材の製造装置の一形態で、天井材の一製造方法を示す概略図である。
【
図3】(イ)は型開状態から上型の下降により、上型プレス面が表皮材に当接後も下降してベース材に近づく説明断面図、(ロ)はさらなる下降で、被成形素材になった説明断面図である。
【
図4】型閉じし、天井材の成形を終えた説明断面図である。
【
図5】天井材成形後の脱型に向かう説明断面図である。
【
図6】成形を終えた
図4の状態から上型を上動させ型開した直後の様子を示す説明断面図である。
【
図7】脱型した天井材の上流側部分の拡大断面図である。
【
図8】
図7の天井材を治具にセットした説明断面図である。
【
図9】従来技術の天井材を成形する様子の説明断面図である。
【
図10】従来技術で天井材の成形を終え、脱型に向け型開した説明断面図である。
【
図11】従来技術の天井材を治具にセットしようとした説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る車両用天井材(以下、単に「天井材」ともいう。)の製造方法及び車両用天井材の製造装置について詳述する。
図1~
図8は本発明の天井材の製造方法及び天井材の製造装置の一形態で、
図1はその一製造方法を示す概略説明図、
図2は
図1のII-II線矢視図、
図3の(イ)は型開状態から上型の下降により、上型プレス面に表皮材が当接後も、下降してベース材に近づく金型周りの断面図、(ロ)は(イ)の上型のさらなる下降で、被成形素材を形成する断面図、
図4は天井材の成形を終えた断面図、
図5は天井材の成形後の脱型に向かう断面図、
図6は
図4の状態から上型を上動させ型開した直後の断面図、
図7は脱型した天井材の上流側部分の断面図、
図8は
図7の天井材を治具にセットした断面図を示す。尚、各図は判り易くするため、簡略化し且つ発明要部を強調図示する。また本発明と直接関係しない部分を省略する。
図3~
図6の各図は、表皮材の幅方向中央を通る長手方向での縦断面図になっている。
【0012】
(1)車両用天井材の製造装置 車両用天井材の製造装置(以下、単に「製造装置」ともいう。)は、ベース材2とこれに積層される表皮材3とを、金型4の上型6と下型5間へ向けて別々に供給し、型閉じ下の熱プレスによって、ベース材2中のバインダ26を硬化させて天井材Pを成形する。ベース材2は、バインダ26を含浸させた軟質ポリウレタン発泡体の板状基材21、又はこれらを有して他素材を重ね合わせたものである。ベース材2を金型4へ供給する第一供給手段2Kと、該ベース材2とは別個に表皮材3だけを金型4へ供給する第二供給手段3Kと、を具備する天井材の製造装置になっている。
【0013】
第一供給手段2Kは、基材ロール21Aから軟質ポリウレタン発泡体の板状基材21を繰り出し、バインダ26を含浸させた基材21を備えるベース材2にして、その上面2aを略水平に保って、金型4へ向けて連続的に該ベース材2を供給する機構である。バインダ26を含浸させた板状基材21を備えたベース材2は、例えばバインダ26が含浸した基材21の両面に
、ガラス繊維22を積層し、その表面側に不織布28を積層したものが採用される。
図1では、基材ロール21Aから繰り出す基材21をバインダ26の溶液が入った槽81内に浸漬させた後、上方からガラス繊維22のチョップ221を散布し、下方から裏面材用ホットメルトフィルム23にガラス繊維22のチョップ221を散布すると共に裏面材25を供給して積層する。さらに上方から触媒27の溶液を噴霧し、上から不織布28を積層させてベース材2とする。該ベース材2がプレスローラ83,アキュームローラ84を経て、金型4へ向けて連続的に供給される。 ここで、本発明のベース材2は、バインダ26を含浸させた軟質ポリウレタン発泡体の所定厚みがある板状基材21が備わり、表皮材3が載り一体化する側に軟質ポリウレタン発泡体の吸音作用を遮断するフィルム等の部材(吸音阻止材)がなければ充足する。不織布28,ガラス繊維22,ホットメルトフィルム23,裏面材25等はなしでも構わない。
【0014】
第二供給手段3Kは、表皮材ロール3Aから帯状表皮材3を繰り出し、前記ベース材2に該表皮材3の一部が接触した場合はその状態を許容しつつ、該ベース材2の上面から離れる状態にして、金型4へ向けて連続的に表皮材3を供給する機構である。後述する凹み30の形成時等で、表皮材3の一部が該ベース材2と接触した場合はその状態を許容しつつも、該表皮材3を、その下面3bがベース材2の上面2aと離れた状態で、金型4へ向け連続的に供給する。表皮材3は、ベース材2と離れてその上方で双方の面が略平行になるよう配し、上型6と下型5間にベース材2と近接させて導入する。 ここで、前記「金型4へ向けて連続的に供給」は、
図1でいうと基材ロール21Aや表皮材ロール3Aの供給元から金型4へ向けて素材が切断されずに連続的に供給されればよい。そして、例えば型閉じ時はベース材2が上型6と下型5間に入り込むことなく、アキュームローラ84が下動して下降距離を増やし、この距離でベース材2の供給量を吸収させることで「連続的に供給」を充足させることができる。表皮材3側にはアキュームローラ84がないが、表皮材ロール3Aを間欠的に回転させ帯状の表皮材3を切断させることなく、金型4へ向け供給できれば「連続的に供給」を充足する。
【0015】
下型5は型プレス面50をトラック等の車両用天井材Pで、車体外板に合わせた外面を形成する深絞りの大きな凹部とし、上型6の型プレス面60は車両用天井材Pで車室側の天井面をつくる凸部にする。金型4は内部にヒータや熱媒管が配設されるなどした加熱プレス型になっている。 上型6と下型5間へ、離間状態にして導かれたベース材2と表皮材3は、型閉じによりベース材上面2aと表皮材下面3bとが重なり合う被成形素材1になり、且つ熱プレス(加熱圧縮)により前記バインダ26を硬化させて天井材Pを成形する。下型5と上型6間にベース材2と表皮材3を配して型閉じし、熱プレスによって、バインダ26の硬化と共にベース材2と表皮材3が結合し且つ剛性を高め、下型5,上型6による型プレス面50,60形状の天井材Pに賦形される。
【0016】
前記上型6には、上流側の型側壁61から突出部材65が上流側へ突き出す。また、該突出部材65に突板部材66の基端部67を係止し、平面視で、表皮材3の進行方向と先端板辺681の辺長方向とを交差させた先端板部68が、金型4へ略水平にして供給する表皮材3上に向けて、該表皮材3の上方から垂下する。「上流側の型側壁61」の「上流側」とは、天井材P用構成材になるベース材2,表皮材3の型入口側であり、いいかえれば金型4へ基材21,表皮材3が供給される供給元の基材ロール21A,表皮材ロール3Aが在る側をいい、
図1では金型4の紙面左側になる。 また、本製造装置は、上型6と下型5間に配される表皮材3に係る幅方向で型プレス面50,60の両側外方になる両縁部分32を掴む把持具7を備える。上型6と下型4間に表皮材3が導入されるが、その型プレス面50,60の領域に在る表皮材3の両縁部分32を、把持具7,7,…が間隔をおいて掴んで、該表皮材3を張設する。表皮材3の両縁部分32は、天井材Pに成形される表皮材3の本体主部31から外れた帯状表皮材3の両側縁部分である。該把持具7は、少なくとも金型4の型開から型閉じに至るまで、表皮材3の両縁部分32を掴んでいる。 そうして、型開から型閉じへの上型6の進行に伴い、前記先端板部68が、上流側の型側壁61よりも上流側地点の表皮材3に係る帯幅方向の中央部位へ突っ込んで、該表皮材3に凹み30を形成する(
図3,
図4)。尚、各図は描き易くするため、突板部材66,先端板部68を上流側の型側壁61からかなり離れた上流側地点に図示するが、実際は最上流側の把持具7がある地点より上流側で、且つ上流側の型側壁61から凹み30形成に必要な最小限距離の上流側地点に配置する。最上流側の把持具7(
図3でいえば紙面最左側の把持具7)も、判り易くするため、型プレス面50,60からかなり上流側に配したが、実際は型プレス面50,60よりも若干上流側に在る。
【0017】
本実施形態の突出部材65は、上型6に係る上流側の型側壁61から突出形成された雄ねじ部分が備わる軸状部材65aと、その先端部の雄ねじ部分に螺合する係止具65bと、を備えた係止具65b付き軸状部材65aである(
図1,
図2)。該突出部材65が上型6に係る上流側の型側壁61に複数立設される一方、各突出部材65の位置に合わせて上下方向に長い長孔670を基端部67に複数設けた突板部材66が、該長孔670に軸状部材65aを遊挿して、前記係止具65bで各突出部材65に位置調整し固定される。本発明の「上下方向」は、
図2でいえば紙面の上下方向になる。位置調整された突板部材66の先端板部68が、型開から型閉じへの進行に伴い、金型4よりも上流側で、該金型4へ送り込まれる帯状表皮材3に突っ込むようにしている。 さらに詳しく述べると、水平に配された表皮材3が金型4手前の上流側から型開状態の上型6,下型5間に送り込まれるが、
図2のごとく、先端板部68の先端板辺681の長さが表皮材3の幅方向長さよりも小さく、且つ該先端板辺681のセンター部位681aを両側のサイド部位681bよりも突出形成する。そのため、
図1,
図2の型開から
図3,
図4の型閉じへの進行に伴い、先端板部68に係る先端板辺681のセンター部位681aがサイド部位681bよりも表皮材3へ先に突っ込んでいく構成である。
【0018】
前記突出部材65,突板部材66,把持具7を備えて、型開時の上下型5,6間へ、表皮材3を上方にして、ベース材2とが互いに略水平に送り込まれる。
図1,
図2のように離間配設された表皮材3とベース材2は、型閉じ進行に伴う上型6の下降で、突板部材66が表皮材3に突き当たり、表皮材3の幅方向中央に凹み30をつくる(
図3のイ)。符号310は表皮材3の幅方向中央にできた該表皮材3の浮き部分を示す。 さらなる上型6の下降で、表皮材3がベース材2に重なって被成形素材1となり(
図3のロ)、また下型5の上昇も加わって型閉じ状態になる。この型閉じ下、加熱圧縮し、バインダ26を硬化させて天井材Pを圧縮成形する(
図4)。 ここで、天井材Pへの立体成形に伴い、上流側の側壁部P10をつくっている表皮材3には型内へ引っ張る力が働く。よって、天井材Pの成形を終えた型開,脱型時に従来は該引っ張る力の反力により
図10の鈍角化部分Rができていたが、該鈍角化部分Rの発生を、上流側のプレス側面601から僅かに上流側地点で表皮材3に形成した凹み30が解消する。型閉じ進行でできた凹み30が表皮材3に余長部分35をつくり、天井材P成形後の型開に伴う上型6の上動(又は下型5の下動)で、表皮材3に
図6の矢印方向の動きが生まれ、天井材Pの成形によって型外へ引っ張る力(反力)を緩和し、鈍角化部分Rを消失できる所望の製造装置となっている。 図中、符号59,69は型合せ面を示す。
【0019】
(2)車両用天井材の製造方法 車両用天井材の製造方法は、(1)の天井材の製造装置を使用して、例えば次のようにして造られる。 基材ロール21Aから繰り出し、バインダ26を含浸させた軟質ポリウレタン発泡体の板状基材21を具備するベース材2と、表皮材ロール3Aから繰り出したシート状表皮材3とを、それぞれ個別に金型4へ向けて連続的に供給する。そして、
図1のごとく該金型4の型開状態にある上型6と下型5間に、該表皮材3を上にして該ベース材2とは上下に離間させて導入後、該ベース材2に該表皮材3が重なる被成形素材1にして型閉じし、その後、型閉じ下での熱プレスにより前記バインダ26を硬化させて天井材Pを成形する製法である(
図3,
図4)。
【0020】
本製造装置は、既述のごとく突出部材65と突板部材66と把持具7とを具備する。突出部材65は、上型6に係る上流側の型側壁61から
図1,
図2のように上流側へ突き出す。突板部材66は突出部材65に基端部67を係止し、表皮材3の進行方向と平面視で先端板辺681の辺長方向を交差させた先端板部68が、金型4へ略水平にして供給する該表皮材3上に向けて、上方から垂下する。前記辺長方向は、
図2でいえば紙面左右方向になり、金型4へ向かう帯状表皮材3を横切る形である。 また、把持具7が、少なくとも金型4の型開から型閉じに至るまで、その上型6と下型5間に配される表皮材3に係る幅方向で型プレス面50,60外になる両縁部分32を掴んでいる。そうして、型開から型閉じへの進行に伴い、前記先端板部68が、該把持具7よりも上流側に位置する帯状表皮材3に係る帯幅方向の中央部位に突っ込む構成になっている(
図2)。 天井材の製造は、予め突出部材65の軸状部材65aを突板部材66の長孔670に遊挿し、次に、係止具65bで該突板部材66の上下方向レベル及び上流側の型側壁61からの上流設定位置を調整し、該突板部材66を固定した後、スタートする。
【0021】
天井材の製造は、突板部材66の位置調整後、まず金型4を型開状態にする。そして、基材ロール21Aから基材21を繰り出し、バインダ26を含浸させた軟質ポリウレタン発泡体の板状基材21が備わるベース材2を金型4に向けて連続的に供給し、型開状態にある上型6と下型5間へ該ベース材2を導入する(
図1,
図2)。 本ベース材2に関しては、先に簡略説明したが、具体的には、
図1に示すように軟質ポリウレタン発泡体の帯状基材21を基材ロール21Aから繰り出し、これをポリメリックMDI(液状イソシアネート)等からなるバインダ26の溶液が入った槽81内に浸漬させる。浸漬後、バインダ26付き基材21を含浸ローラ82で余剰バインダ26を絞り、次いで、上方からガラス繊維22のチョップ221を散布し、バインダ26付き基材21上にガラス繊維層22を載せた積層品にする。一方、基材ロール21Aの下方に配した下フィルムロール23Bから繰り出した裏面材用ホットメルトフィルム23上にガラス繊維22のチョップ221を散布し、該ホットメルトフィルム23上にガラス繊維層22を設けたものを、基材21の下方から前記積層品に積層し、さらにこの積層品の下面側に裏面材ロール25Bから繰り出す裏面材25を加えて、合体品にする。 続いて、該合体品に上方から前記ポリメリックMDIの反応硬化を促進させるジメチルエタノールアミン等の触媒27の溶液を噴霧し、さらに上から不織布28を積層させてベース材2にする。該ベース材2がプレスローラ83,アキュームローラ84を経て金
型4へ向かう。
【0022】
また、アキュームローラ84を過ぎた地点で、ベース材2の上方に配した表皮材ロール3Aから表皮材3が繰り出す。供給ローラ86を過ぎた表皮材3は、途中で該ベース材2の上面2aに下面3bの一部が接触した場合、その部分を許容しつつも、下面3bが該ベース材2の上面2aから離れた表皮材3を、ベース材2とは別に金型4へ向けて連続的に供給する。型開状態にある上型6と下型5間に表皮材3とベース材2とを上下に離間させて導入する(
図1)。そして、表皮材ロール3Aから繰り出された帯状表皮材3のうち、上型6と下型5間に配される表皮材3の区域では、その幅方向で型プレス面50,60外になる表皮材両縁部分32が把持具7で係止保持されるようにする(
図1,
図2)。
【0023】
次いで、型閉じに移行する。型閉じが開始し、上型6が下降すると、両縁部分32は把持具7でその位置が保たれたまま、上型プレス面60が表皮材3に当たって、該表皮材3の本体主部31を、機械工作法に係る絞り加工のごとく上型プレス面60に沿うよう皿状に変形させていく(
図3のイ,ロ)。この上型6の下降で、突板部材66も下降して表皮材3に当たって凹み30をつくる。 かくして、天井材Pの成形が進んでいくが、表皮材3の幅方向で上流側の側壁部P10を造る箇所では、とりわけその中央部位が、凸状に出っ張る上型6の型プレス面60によって引っ張られる。表皮材3は延びが小さいので、上流側のプレス側面601周りにある表皮材3の幅方向中央部分では、引っ張り応力が発生したまま、天井材Pに成形されていく。尚、下流側のプレス側面周りにある表皮材3の幅方向中央部分には、上流側ほどの引っ張り応力が発生しない。金型4出口側の表皮材3はフリーで自由端になっているからである。一方、上流側の表皮材3は、表皮材ロール3Aによって該表皮材3に弛みが生じないよう張った状態に保たれ、固定端のような状態にあり、これが上型6の下降、型閉じで、表皮材3が引っ張られて残留応力を発生させる。
【0024】
さらなる型閉じに伴う上型6の下降で、表皮材3がベース材2に重なって被成形素材1になる(
図3のロ)。この上型6の下降に連動して、突板部材66が下降して表皮材3に突っ込む度合いが増し、凹み30が大きくなる。
【0025】
また、上記上型6の下降と相前後して、下型5が上昇しており、最終的に
図4ごとくの型閉じ工程へと進む。
図4に示す本実施形態の型閉じでは、突板部材66が表皮材3に突っ込んで、該表皮材3がベース材2と接触するが、表皮材3はベース材2に接触させなくてよい。ちなみに、この表皮材3とベース材2との接触部分はごく一部であり、本発明は許容するが、できれば接触はない方がより好ましい。ベース材2に浸み込ませたバインダ26が、天井材Pの成形前の早い段階で装飾用表皮材3に付着し、ファブリック等の表皮材3にあっては、その表皮材3の意匠面3aにまで浸透し汚す虞があるからである。先に述べた「該ベース材2の上面2aに下面3bの一部が接触した場合、その部分を許容しつつも、該下面3bが該ベース材2の上面2aから離れた表皮材3」に係る「下面3bの一部が接触した場合、その部分を許容」も、許容できるが、接触がなければより好ましいとする意である。
【0026】
前記凹み30に関しては、突板部材66の先端板部68が、表皮材3の進行方向と平面視で先端板辺681の辺長方向を交差(ここでは直交)させて、金型4へ略水平にして供給する表皮材3上に向けて上方から垂下しており、把持具7よりも上流側に位置する表皮材3に係る帯幅方向の中央部位に突っ込んで凹み30を形成する。しかも、先端板部68の先端板辺681の長さが表皮材3の幅方向長さよりも小さく、且つ該先端板辺681のセンター部位681aを両側のサイド部位681bよりも突出形成させている(
図2)。よって、型開から型閉じへの進行に伴い、先端板部68に係る該先端板辺681のセンター部位681aがサイド部位681bよりも表皮材3へ先に突っ込み、表皮材3の帯幅方向中央部の方に大きな凹み30が形成される。
【0027】
型閉じ後、この状態下で、熱プレスを所定時間かけてバインダ26を硬化させ、天井材Pを成形する(
図4)。型閉じ下の熱プレスによって、バインダ26の反応硬化を促すと共に、加熱圧縮されたベース材2と表皮材3の接着結合且つ剛性を高めて、型プレス面50,60形状の所望の天井材Pに賦形する。
【0028】
その後、
図5のように型開し脱型する。
図5は上型6が上動し、さらに下型5が下動した状態を示す。天井材Pに触れない両脇外のバリ部分になる表皮材両縁部分32を把持具7で掴んで、型開,脱型する。 上型6が上動した型開直後の様子を
図6に示す。型閉じ下での天井材Pの成形で、既述のごとく表皮材3に係る上流側の天井材側壁部P10には、成形に伴って表皮材3の部分に型内へ引っ張る力が発生する。そしてこの引っ張る力に対して表皮材3に発生するテンションにより、天井材側壁部P10に該引っ張る力に対する反力も発生している。しかるに、本発明では、型開に連動して突板部材66も凹み30の場所から離れ、該凹み30をつくる余長部分35が
図6の矢印のごとく型内側へと移動し、成形を終えた天井材Pに係る表皮材3の部分で型外へ引っ張っていた力(反力)を打ち消す。本実施形態は、特に寸法不具合を起こし易い表皮材3の幅方向中央部に大きな凹み30を形成しており、上流側の天井材側壁部P10で表皮材3側に発生していた型外への引っ張り力(反力)を効果的に消失させる。尚、上流側の天井材側壁部P10で、表皮材3の部分に型外へ引っ張られる力(反力)が発生するのに対して、ベース材2側に発生しないのは、上型6が上動する型開に合わせてアキュームローラ84が上昇するので、凹み30の余長部分35に相当するベース材2の余裕部分が該上昇によって生まれるからと考えられる。
【0029】
型開後、成形された天井材Pを
図5の右方へと払い出し、型下流側に取り出す。脱型した天井材P,凹み30の形成部跡,表皮材両縁部分32の一体品からカッター等で切り離して、所望の車両用天井材Pを得る。
図7の型下流側に取り出された天井材Pは、天井材側壁P1が起立して角部Eをつくり、従来の鈍角化部分Rがある寸法変形製品PBとならない。
図8のごとく治具Jの底面J2,側面J1に該天井材Pを当接セットでき、不要部分P8を除去し且つライト用などの孔開け作業を円滑に行い、所望の天井材良品PGを提供できる。符号P3は孔開け作業による孔を示す。 一方、前記型下流側への天井材Pの取り出しに、上流側の表皮材3,ベース材2がつながっていることから、該脱型によって、凹み30の形成跡よりも上流側にあった表皮材3,ベース材2が下型5と上型6間に導入されて、
図1の状態になる。後は、上述した操作を繰り返し、天井材Pを順次製造していく。 他の構成は(1)で述べたのと同様で、その説明を省く。(1)と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0030】
(3)効果 このように構成した車両用天井材の製造方法及び車両用天井材の製造装置は、表皮材3と軟質ポリウレタン発泡体の基材21との間にホットメルトフィルム等の遮断部材を設けなくて済むので、該基材21の多孔質構造が生きて吸音効果を発揮できる。 遮断部材を設けなくても、金型4の型開状態にある上型6と下型5間に表皮材3とベース材2とを上下に離間させて導入し、ベース材2に含浸させたバインダ26が、型閉じを行って天井材Pを成形する直前まで装飾用表皮材3に触れないので、表皮材3の意匠面3a側にバインダ26が染み出て不具合を起こす事態を避ける。本実施形態のごとく、ホットメルトフィルムを吸音通過性の不織布28に置き換えても、バインダ26の表皮材意匠面3a側への浸み出しは発生しない。バインダ26による品質トラブルを抑える。 さらにいえば、突板部材66による凹み30の形成によって、表皮材3がベース材2に接触した場合でも、
図5の天井材Pの成形後、その接触箇所を型外に天井材Pと共に取り出せば、上型6と下型5間に互いに接触箇所のない良好な表皮材3とベース材2とを上下に離間させて配することができる。凹み30の形成箇所は上流側の型側壁61から近い距離に設けるので、表皮材3の大きな材料ロスにならずして、品質向上,歩留まり向上させる天井材の製法及び装置となる。
【0031】
また、被成形素材1から皿形の天井材Pを成形する場合、型閉じ,成形によって、上流側の天井材側壁部P10に係る表皮材3の部分に型外への引っ張り応力(反力)が発生し、鈍角化部分Rがある寸法不良品PBになり易かったが、上記凹み30を上流側の型側壁61から近い距離に設けるので、該凹み30の余長部分35が成形後の型開時に上流側の天井材側壁部P10に係る表皮材3に流れて、そこに発生していた型外への引っ張り応力(反力)を消失させる。 これまで、少しの寸法狂いがあっても照明ライト用などの孔開け後加工作業では治具Jから浮いてしまい(
図11)、不良品PBとなり歩留まり低下を招いていたが、本発明の天井材Pは型外への引っ張り力(反力)を解消し寸法に狂いのない良品PGとなって、生産性向上,歩留まり向上に貢献できる。 加えて、天井材Pで表皮材3の幅方向中央にあたる部位に、許容値から外れた不良品PBが特にでき易かったが、先端板部68の先端板辺681のセンター部位681aを両側のサイド部位681bよりも突出形成することで、その不良品PBを激減させている。型開から型閉じへの進行に伴い、先端板部68に係る該先端板辺681のセンター部位681aがサイド部位681bよりも表皮材3へ先に突っ込むことで、表皮材3の幅方向中央にあたる部位には大きな凹み30による長い余長部分35を形成し、該不良品PBをなくす効果を一段と高めている。
【0032】
そして、上記寸法品質向上,生産性向上に寄与する凹み30形成用の機構が、突出部材65と突板部材66だけの簡便な構成物で、これらを上型6に取付けるだけで済み、寸法変形の対策設備を低コストで実現できる。 さらに、突出部材65と突板部材66が上型6に取付け一体化させているので、これらを動かす稼働手段を別途要しない。上型6の上下動で、凹み30の形成ができる。凹み30が必要なときに上型6の下降に合わせて形成し、該凹み30の余長部分35を、タイムリーに上流側の天井材側壁部P10に係る表皮材3の部分に与えて、そこに発生していた型外への引っ張り応力(反力)を効率良くなくすことができる。
【0033】
さらにいえば、突出部材65を既述のごとくの係止具65b付き軸状部材65aとし、且つ上下方向に長い長孔670を基端部67に設けた突板部材66とすることによって、各突出部材65に上下方向レベルや上流側の型側壁61からの張り出し距離を簡便且つ精度よく調整でき、ベース材2,表皮材3の種類等に応じて臨機応変に対応できるなど数々の優れた効果を発揮する。
【0034】
尚、本発明は前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。天井材P,被成形素材1,ベース材2,表皮材3,金型4,突出部材65,突板部材66,把持具7等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。実施形態では、裏面側にホットメルトフィルム23を配したが、これをなくして、吸音効果を一層高めることもできる。また、実施形態の型閉めでは、上型6の下動した後、下型5が上動したが、同時進行でもよい。また、下型5が上動した後、上型6が下動してもよいし、一方の上型6又は下型5だけが動いて型閉じするのでもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 被成形素材
2 ベース材 2K 第一供給手段 21 基材 21A 基材ロール 3 表皮材 3K 第二供給手段 31 表皮材 3A 表皮材ロール 30 凹み 35 余長部分 4 金型 5 下型 50 型プレス面(下型の型プレス面) 6 上型 60 型プレス面(上型の型プレス面) 61 上流側の型側壁(上型の上流側の型側壁) 65 突出部材 68 先端板部 7 把持具 P 天井材(車両用天井材)
【手続補正書】
【提出日】2023-11-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮材とベース材とを、それぞれ別々に金型へ向けて連続的に供給し、該金型の型開状態にある上型と下型間に該表皮材と該ベース材とを上下に離間させて導入後、型閉じし、熱プレスにより天井材を成形する車両用天井材の製造方法であって、
先端板部が前記金型へ供給される該表皮材に向けて、上方から垂下する突板部材と、
少なくとも前記金型の型開から型閉じに至るまで、その上型と下型間に配される前記表皮材に係る幅方向で型プレス面外になる両縁部分を掴む把持具と、を具備し、
前記型開から型閉じへの進行に伴い、前記先端板部が、該把持具よりも上流側に位置する前記表皮材に係る帯幅方向の中央部位に突っ込む車両用天井材の製造方法。
【請求項2】
金型と、
前記金型へ向けて連続的にベース材を供給する第一供給手段と、
前記金型へ向けて連続的に表皮材を供給する第二供給手段と、を具備し、
該金型の型開状態にある上型と下型間に、前記表皮材と前記ベース材とを上下に離間させて導入後、型閉じ且つ熱プレスにより天井材を成形する車両用天井材の製造装置であって、
先端板部が前記金型へ供給される該表皮材に向けて、上方から垂下する突板部材と、
少なくとも前記金型の型開から型閉じに至るまで、その上型と下型間に配される前記表皮材に係る幅方向で型プレス面外になる両縁部分を掴む把持具と、をさらに具備し、
前記型開から型閉じへの進行に伴い、前記先端板部が、該把持具よりも上流側に位置する前記表皮材に係る帯幅方向の中央部位に突っ込むように前記突板部材が係止されている車両用天井材の製造装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上記目的を達成すべく、第1の発明の要旨は、基材ロールから基材を繰り出し、バインダを含浸させた軟質ポリウレタン発泡体の板状基材が備わるベース材と、表皮材ロールから繰り出し、該ベース材に一部が接触した場合はその部分を許容しつつ、該ベース材の上面から離した表皮材とを、それぞれ別々に金型へ向けて連続的に供給し、該金型の型開状態にある上型と下型間に該表皮材と該ベース材とを上下に離間させて導入後、該表皮材が該ベース材に重なる被成形素材にして型閉じし、その後、型閉じ下での熱プレスにより前記バインダを硬化させて天井材を成形することを特徴とする車両用天井材の製造方法にある。第2の発明たる車両用天井材の製造方法は、第1の発明で、上型に係る上流側の型側壁から上流側へ突き出す突出部材と、該突出部材に基端部を係止し、前記表皮材の進行方向と平面視で先端板辺の辺長方向を交差させた先端板部が、前記金型へ略水平にして供給する該表皮材上に向けて、上方から垂下する突板部材と、少なくとも前記金型の型開から型閉じに至るまで、その上型と下型間に配される前記表皮材に係る幅方向で型プレス面外になる両縁部分を掴む把持具と、を具備し、前記型開から型閉じへの進行に伴い、前記先端板部が、該把持具よりも上流側に位置する前記表皮材に係る帯幅方向の中央部位に突っ込むことを特徴とする。第3の発明たる車両用天井材の製造方法は、第1又は2の発明で、先端板部の先端板辺の長さが表皮材の幅方向長さよりも小さく、且つ該先端板辺のセンター部位を両側のサイド部位よりも突出形成し、前記型開から型閉じへの進行に伴い、前記先端板部に係る該先端板辺のセンター部位がサイド部位よりも前記表皮材へ先に突っ込むことを特徴とする。第4の発明たる車両用天井材の製造方法は、第2又は3の発明で、突出部材が前記上型に係る上流側の型側壁から突出形成された軸状部材とその先端部に係止具を取着した係止具付き軸状部材からなり、且つ該突出部材が前記上型に係る上流側の型側壁に複数固着される一方、各突出部材の位置に合わせて上下方向に長い長孔を前記基端部に複数設けた前記突板部材が、該長孔に前記軸状部材を遊挿して前記係止具で各突出部材に位置調整し固定された後、前記型開から型閉じへの進行に伴い、前記先端板部が前記表皮材に突っ込むことを特徴とする。 第5の発明の要旨は、基材ロールから軟質ポリウレタン発泡体の板状基材を繰り出し、バインダを含浸させた基材を備えるベース材にして、その上面を略水平に保って、金型へ向けて連続的に該ベース材を供給する第一供給手段と、表皮材ロールから表皮材を繰り出し、前記ベース材に該表皮材の一部が接触した場合はその状態を許容しつつ離した状態にして、前記金型へ向けて連続的に表皮材を供給する第二供給手段と、を具備し、該金型の型開状態にある上型と下型間に、前記表皮材と前記ベース材とを上下に離間させて導入後、型閉じにより、該表皮材の下面と該ベース材の上面とを重ね合わせて被成形素材にし、且つ熱プレスにより前記バインダを硬化させて天井材を成形することを特徴とする車両用天井材の製造装置にある。第6の発明たる車両用天井材の製造装置は、第5の発明で、上型に係る上流側の型側壁から上流側へ突出する突出部材と、該突出部材に基端部を係止し、前記表皮材の進行方向と平面視で先端板辺の辺長方向を交差させた先端板部が、前記金型へ略水平にして供給する該表皮材上に向けて、上方から垂下する突板部材と、少なくとも前記金型の型開から型閉じに至るまで、その上型と下型間に配される前記表皮材に係る幅方向で型プレス面外になる両縁部分を掴む把持具と、をさらに具備し、前記型開から型閉じへの進行に伴い、前記先端板部が、該把持具よりも上流側に位置する前記表皮材に係る帯幅方向の中央部位に突っ込んで該表皮材に凹みを形成することを特徴とする。第7の発明の発明たる車両用天井材の製造装置は、第6の発明で、先端板部の先端下辺の長さが前記表皮材の幅方向長さよりも小さく、且つ該先端下辺のセンター部位を両側のサイド部位よりも突出形成し、前記型開から型閉じへの進行に伴い、前記先端板部に係る該先端板辺のセンター部位がサイド部位よりも前記表皮材へ先に突っ込むことを特徴とする。