(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020491
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】心房細動の評価における循環DKK3(Dickkopf関連タンパク質3)
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240206BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/53 D
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023197378
(22)【出願日】2023-11-21
(62)【分割の表示】P 2021505318の分割
【原出願日】2019-07-31
(31)【優先権主張番号】18186511.4
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(71)【出願人】
【識別番号】503285519
【氏名又は名称】ユニベルシテイト マーストリヒト
(71)【出願人】
【識別番号】517079054
【氏名又は名称】アカデミシュ ジーケンハウス マーストリヒト
【氏名又は名称原語表記】ACADEMISCH ZIEKENHUIS MAASTRICHT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【弁理士】
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】カール,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】カストナー,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ラティーニ,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ロルニー,ビンツェント
(72)【発明者】
【氏名】ビーンヒューズ-テレン,ウルスラ-ヘンリケ
(72)【発明者】
【氏名】ツィーグラー,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ディートリッヒ,マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】メーセン,ジェニファー
(72)【発明者】
【氏名】ショッテン,ウルリヒ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】対象における心房細動を評価するための方法を提供する。
【解決手段】対象からの試料中のDKK3の量を決定するステップと、DKK3の量を基準量と比較し、それにより、心不全および/または心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常が診断されることになるステップとを含む、方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における心不全および/または心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常を診断するための方法であって、
a)前記対象からの試料中のDKK3の量を決定するステップと、
b)DKK3の量を基準量と比較し、それにより、心不全および/または心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常が診断されることになるステップとを含む、方法。
【請求項2】
対象からの試料中の、
i)バイオマーカーDKK3;またはバイオマーカーDKK3ならびにナトリウム利尿ペプチドおよび/もしくはESM1、ならびに/あるいは
ii)DKK3に特異的に結合する少なくとも1種の検出剤;またはDKK3に特異的に結合する少なくとも1種の検出剤ならびにナトリウム利尿ペプチドおよび/もしくはESM1に特異的に結合する少なくとも1種の検出剤の使用であって、
心不全および/または心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常を診断するための、あるいは脳卒中の予測のための、使用。
【請求項3】
対象における脳卒中のリスクを予測するための方法であって、
a)前記対象からの試料中のDKK3の量を決定するステップと、
b)DKK3の量を基準量と比較し、それにより脳卒中のリスクが予測されることになるステップとを含む、方法。
【請求項4】
対象についての脳卒中の臨床リスクスコアの予測精度を改善するための方法であって、
c)既知の脳卒中の臨床リスクスコアを有する対象からの試料中のDKK3の量を決定することと、
a)DKK3の量を前記脳卒中の臨床リスクスコアと組み合わせ、それにより、前記脳卒中の臨床リスクスコアの予測精度が改善されるステップとを含む、方法。
【請求項5】
対象における脳卒中のリスクを予測するための方法であって、
a)既知の脳卒中の臨床リスクスコアを有する対象からの試料中のDKK3の量を決定するステップと、
b)DKK3の量を脳卒中の臨床リスクスコアと組み合わせ、それにより、前記対象の脳卒中のリスクが予測されることになるステップとを含む、方法。
【請求項6】
対象からの試料中の、i)バイオマーカーDKK3、および/またはii)DKK3に特異的に結合する少なくとも1種の検出剤の、脳卒中の臨床リスクスコアの予測精度を改善するための、使用。
【請求項7】
対象からの試料中の
i)バイオマーカーDKK3および/または
ii)DKK3に特異的に結合する少なくとも1種の検出剤の、
脳卒中の臨床リスクスコアとの組み合わせでの使用であって、
対象が脳卒中に罹患するリスクを予測するための、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象における心房細動を評価するための方法であって、対象からの試料中のDKK3の量を決定するステップと、DKK3の量を基準量と比較し、それにより心房細動が評価されることになるステップとを含む方法に関する。その上、本発明は、心不全および/または心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常を診断するための方法に関する。
【0002】
心房細動(AF)は、最も一般的なタイプの不整脈であり、高齢者の間で最も広範に行き渡っている容態の1つである。心房細動は、不規則な心拍を特徴とし、短時間の異常な拍動から始まることが多く、この拍動が経時的に増し、永続性の状態となる可能性がある。米国では推定270~610万人が、全世界でおよそ3300万人が心房細動を発症している(Chugh S.S.et al.,Circulation 2014;129:837-47)。AFの患者は、洞調律の患者と比較して脳卒中率が高く、うっ血性心不全を発症するリスクが高い。
【0003】
心房細動などの不整脈の診断には、通常、不整脈の原因の判定、および不整脈の分類が包含される。米国心臓病学会(ACC)、米国心臓協会(AHA)、および欧州心臓病学会(ESC)による心房細動の分類の指針は主として、単純性および臨床上の関連性に基づいている。第1の分類は、「最初に検出されたAF」と呼ばれる。この分類の人々は、最初にAFと診断され、これまで検出されていなかった発作が出たことがあってもなくてもよい。最初に検出された発作が1週間未満で自然に停止するが、それに続いて、別の発作が遅れて生じる場合、分類は「発作性AF」に変わる。この分類の患者は発作が最長7日間続くが、発作性AFのほとんどの症例では、発作は24時間未満で停止する。発作が1週間を超えて続く場合は、「持続性AF」に分類される。このような発作がすなわち電気的なまたは薬理学的な心臓除細動によって停止することができず、1年を超えて続く場合、分類は「永続性AF」に変わる。心房細動は、脳卒中および全身性塞栓症に対する重要なリスク因子であるので、心房細動の早期診断は非常に所望されている(Hart et al.,Ann Intern Med 2007,146(12):857-67、Go AS et al JAMA 2001;285(18):2370-5)。
【0004】
DKK3はまた、Dickkopf関連タンパク質3、REIC、RIG、dickkopf WNTシグナル伝達経路阻害因子3としても公知である。DKK3は、分泌タンパク質をコードするDKKファミリーに属しており、脊椎動物の4つの主要メンバー(Dkk1、2、3、4)で構成されている。DKKは、シグナル配列を含有しており、2つの保存された高システインドメインを共有しており、各ドメインは、システインと他の保存されたアミノ酸との特徴的な面間隔を示している。加えて、DKK3にはsgyドメインがあり、これはDKKL1(Soggy)においてのみ認められる。さまざまな研究により、DKKファミリーのメンバーがWntシグナル伝達を調節することがわかった。
【0005】
遺伝子DKK3遺伝子は、長さ350bpであり、9つのエキソンからなる染色体11p15.3に存在しており、2つのプロモーターを有している。主プロモーター領域のメチル化は、DKK3遺伝子の発現が低下したさまざまなヒト腫瘍由来の細胞株で検出された(Kobayashi,Gene,第282巻,第1~2号,2002年1月9日,151~158ページ)。
【0006】
DKK3遺伝子は、ヒトの正常組織に広く発現している複数の転写産物をコードしてい
る。DKK3遺伝子は、3つの異なるアイソフォームに転写され、すべての変異体は、エキソン2~8を共有しており、350aaの機能タンパク質をコードしている。(Katase et al.Atlas Genet Cytogenet Oncol Haematol.2013;17(10)p.678-686)。さらに、Leonard
et al.(PLOS,2017年7月24日号)は、DKK3遺伝子のイントロン2にある第2の転写開始部位に由来するDKK3のアイソフォームであるDKK3b転写産物の同定を示している。
【0007】
ノーザンブロット法による分析で、DKK3 mRNAは、脳、心臓、肺、肝臓、膵臓、脾臓、腎臓、小腸、結腸、骨格筋、および胎盤において発現していることが明らかである。中でも、DKK3の発現は、心臓および脳において特に高い(Katase et al.Atlas Genet Cytogenet Oncol Haematol.2013;17(10)p.678-686)。DKK3はまた、心臓を含む多くの組織において胚発生中にも発現する。この遺伝子の発現は、さまざまな癌細胞株において低下しており、腫瘍抑制遺伝子として機能している可能性がある。
【0008】
DKK3レベルは、高齢者の循環血中で高く、その発現は、前立腺基底上皮細胞の細胞老化中に上方調節され、DKK3が加齢関連障害における役割を有している可能性があることを示唆している(Zenzmaier et al.,Experimental Gerontology,第43巻,第9号,2008年9月,867~870ページ)。
【0009】
インビトロおよびインビボで実施されたマウスにおける機能喪失および機能獲得分析は、病的心肥大の発症から心臓を保護する上でのDKK3の調節的役割を示した。結果は、DKK3の喪失が圧力過負荷誘発性心肥大、線維症、および機能不全を誇張したのに対し、DKK3の過剰発現が、圧力過負荷誘発性心臓リモデリングから心臓を保護したことを実証した(Zhang et al.,Cardiovascular Research,2014,104,p.35-45)。DKK3ノックアウトマウスは、とりわけヘモグロビンおよびヘマトクリットのレベルならびに肺換気の変化をさらに示している。
【0010】
Bao et al(Basic Res Cardiol.2015 May;110(3)は、心筋梗塞(MI)後の心臓リモデリングにおけるDKK3の機能的役割を解析した。科学者たちは、心臓特異的DKK3を発現するトランスジェニックマウスおよびDKK3ノックアウト(KO)マウス、ならびにそれらの非トランスジェニックおよびDKK3(+/+)同腹仔において、外科的左前下行冠動脈結紮によってMIを誘発した。彼らの結果は、MI後、DKK3欠損症のマウスの死亡率が上昇し、梗塞の大きさが大きくなり、左心室(LV)機能障害が悪化したことを実証した。逆に、DKK3の過剰発現は、梗塞後に反対の表現型をもたらした。その著者らは、DKK3がMI後の心不全の処置に対する潜在的な治療標的を示しているのかもしれないことを示唆している。
【0011】
加えて、Yu et al(Circulation.2017;136:1022-1036)は、人口に基づく前向きBruneck試験において、DKK3のレベルが高い人は5年間の経過にわたって粥状硬化を発症する可能性が低いこと、およびまた心臓発作で死亡する可能性も低いことを発見した。この相関は、高い血圧およびコレステロール値など他の粥状硬化の危険因子とは独立していた。この試験は、内皮の移動および修復を包含する粥状硬化に対する保護におけるDKK3の役割についての証拠を提供する。この著者らは、DDK3を使用して動脈の内側での脂肪性材料の蓄積を停止することにより、粥状硬化に対する治療上の可能性の示唆を明らかにした。したがって、DKK3は、応答において分泌するパラメータとして、粥状硬化によって引き起こされる心臓発作から保護するのかもしれない。
【0012】
US8617877は、例えば、患者からの生物学的試料中のDDK3タンパク質を測定することによって、幹細胞療法の候補として心臓病患者をスクリーニングするための方法を説明しており、ベースライン値と比較して統計的に有意な量のタンパク質(複数可)は、患者が幹細胞療法から利益を得る可能性があることを示している。
【0013】
しかしながら、心房細動および脳卒中におけるDKK3の関与は、未知のままである。Latini R.et al.(J Intern Med.2011 Feb;269(2):160-71)は、心房細動患者のさまざまな循環バイオマーカー(hsTnT、NT-proBNP、MR-proANP、MR-proADM、コペプチン、およびCT-プロエンドセリン1)を測定した。
【0014】
心房細動の診断、心房細動患者のリスク層別化(脳卒中の発生など)、心房細動の重症度の評価、および心房細動患者における療法の評価を含む、心房細動の評価のための信頼できる方法についての必要性がある。
【0015】
本発明の根底にある技術的な課題は、上述のニーズに対応する方法の提供としてとらえることができる。この技術的な課題は、以下の特許請求の範囲および本明細書において特徴付けられる実施形態によって、解決される。
【発明の概要】
【0016】
有利な方法で、対象からの試料中のDKK3の量を決定することで、心房細動の改善された評価が可能であることが、本発明の研究との関連において発見された。本発明により、例えば、対象が心房細動に罹患しているかどうかを診断することができる。本発明はまた、脳卒中予測のための方法も提供する。さらに、例えば、心房細動に罹患している対象において、発作性心房細動と持続性心房細動とを識別することができる。
【0017】
そのため、本発明は、特に、対象における心房細動を評価するための方法であって、
a)対象からの試料中のDKK3の量を決定するステップと、
b)DKK3の量を基準量と比較し、それにより、心房細動が評価されることになるステップとを含む方法に関する。
【0018】
本発明の方法の一実施形態では、この方法は、ステップa)における対象からの試料中のナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量の決定と、ステップb)における基準量に対するナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量の比較とをさらに含む。
【0019】
そのため、本発明は、特に、対象における心房細動を評価するための方法であって、
a)対象からの試料中のDKK3の量ならびにナトリウム利尿ペプチドのおよび/またはESM1の量を決定するステップと、
b)該量を基準量と比較し、それにより心房細動が評価されることになるステップとを含む方法に関する。
【0020】
心房細動(AF)の評価は、比較ステップb)の結果に基づくものとする。
【0021】
そのため、本発明の方法は、好ましくは、
a)対象からの試料中のDKK3の量、ならびに場合によりナトリウム利尿ペプチドのおよび/またはESM1の量を決定するステップと、
b)DKK3の量を基準量と比較し、場合によりナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量を基準量と比較するステップと、
c)比較ステップb)の結果に基づいて心房細動を評価するステップとを含む。
【0022】
本発明に従って言及される方法は、上述のステップから本質的になる方法、またはさらなるステップを含む方法、を含む。その上、本発明の方法は、好ましくは、エクスビボ、より好ましくはインビトロの方法である。その上、該方法は、先に明示的に述べられたものに加えて、複数のステップを含んでもよい。例えば、さらなるステップは、さらなるマーカーの決定、および/または処置前の試料を採取すること、または該方法で得られた結果の評価に関してもよい。この方法は、手動で実行しても、自動化によって支援してもよい。好ましくは、ステップ(a)、(b)および/または(c)は、全体的または部分的に、自動化によって、例えば、ステップ(a)における測定またはステップ(b)におけるコンピュータを実装した計算に適したロボットおよび感覚的機器によって、支援されてもよい。
【0023】
本発明に従って、心房細動を評価するものとする。本明細書で使用される「心房細動を評価する」という用語は、好ましくは、心房細動の診断、発作性心房細動と持続性心房細動との区別、心房細動と関係する有害事象のリスクの予測、心電図検査(ECG)に供されるものとする対象の識別、または心房細動のための療法の評価を指す。
【0024】
当業者によって理解されるように、本発明の評価は、通常、検査されることになる対象の100%について正確であることを意図するものではない。この用語は、好ましくは、対象の統計的に有意な部分に対して、正確な評価(本明細書でいう診断、区別、予測、識別、または療法の評価)を行うことができること、を必要とする。部分が統計的に有意であるかどうかは、さまざまな周知の統計評価ツール、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントのt検定、マン・ホイットニー検定などを使用して、当業者がすぐさま決定することができる。詳細は、Dowdy and Wearden,Statistics for Research,John Wiley&Sons,New York 1983において認められる。好ましい信頼区間は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%である。p値は、好ましくは、0.4、0.1、0.05、0.01、0.005、または0.0001である。
【0025】
さまざまな疾患および障害においてバイオマーカーが増加または減少する可能性があることは、当技術分野において公知である。このことはまた、例えば、さまざまな癌細胞株で減少することが公知であり、腫瘍抑制因子遺伝子として機能する可能性がある、DKK3にも当てはまる。
【0026】
しかしながら、これは当業者により考慮される。そのため、「心房細動の評価」は、心房細動の評価における支援として、したがって心房細動を診断する上での支援、発作性心房細動と持続性心房細動とを区別する上での支援、心房細動と関係する有害事象のリスクの予測における支援、心電図検査(ECG)に供されるものとする対象の識別における支援、または心房細動ための療法の評価における支援として理解される。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、心房細動の評価とは、心房細動の診断である。そのため、対象が心房細動に罹患しているかどうかが診断される。
【0028】
そのため、本発明は、対象における心房細動を診断するための方法であって、
a)対象からの試料中のDKK3の量を決定するステップと、
b)DKK3の量を基準量と比較し、それにより、心房細動が評価されることになるステップとを含む方法を想定している。
【0029】
一実施形態では、上述の方法は、
a)対象からの試料中のDKK3の量ならびにナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量を測定するステップと、
b)DKK3ならびにナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量を基準量と比較し、それにより心房細動が診断されることになるステップとを含む。
【0030】
好ましくは、心房細動を診断するための方法に関連して検査されることになる対象とは、心房細動に罹患していることが疑われる対象である。しかしながら、また、対象がすでにAFに罹患していると以前に診断されたことがあり、以前の診断が本発明の方法を実施することによって確認されることも企図されている。
【0031】
本発明の別の好ましい実施形態では、心房細動の評価とは、発作性心房細動と持続性心房細動との区別である。そのため、対象が発作性または持続性の心房細動に罹患しているかどうかが判定される。
【0032】
そのため、本発明は、対象における発作性心房細動と持続性心房細動とを区別するための方法であって、
a)対象からの試料中のDKK3の量を決定するステップと、
b)DKK3の量を基準量と比較し、それにより、発作性心房細動と持続性心房細動とが区別されるステップとを含む方法を想定している。
【0033】
一実施形態では、上述の方法は、
a)対象からの試料中のDKK3の量ならびにナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量を測定するステップと、
b)DKK3ならびにナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量を基準量と比較し、それにより、発作性心房細動と持続性心房細動を区別するステップとを含む。
【0034】
本発明の別の好ましい実施形態では、心房細動の評価とは、心房細動と関係する有害事象(脳卒中など)のリスクの予測である。そのため、対象に該有害事象のリスクがあるかおよび/または対象が該有害事象のリスクとしてであるかが予測される。
【0035】
したがって、本発明は、対象における心房細動と関係する有害事象のリスクを予測するための方法であって、
a)対象からの試料中のDKK3の量を決定するステップと、
b)DKK3の量を基準量と比較し、それにより、心房細動と関係する有害事象のリスクが予測されるものとするステップとを含む、方法を想定している。
【0036】
一実施形態では、上述の方法は、
a)対象からの試料中のDKK3の量ならびにナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量を測定するステップと、
b)DKK3ならびにナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量を基準量と比較し、それにより心房細動と関係する有害事象のリスクが予測されるものとするステップとを含む。
【0037】
さまざまな有害事象を予測することができることが想定されている。予測されるべき好ましい有害事象は脳卒中である。
【0038】
そのため、本発明は、特に、対象における脳卒中のリスクを予測するための方法であって、
a)対象からの試料中のDKK3の量を決定するステップと、
b)DKK3の量を基準量と比較し、それにより、脳卒中のリスクが予測されることになるステップとを含む方法を企図している。
【0039】
上述の方法は、ステップb)の比較結果に基づいて脳卒中を予測するステップc)をさらに含んでもよい。したがって、ステップa)、b)、c)は、好ましくは以下の通りである。
a)対象からの試料中のDKK3の量を決定するステップと、
b)DKK3の量を基準量と比較すること、および
c)ステップb)の比較結果に基づいて脳卒中を予測すること
【0040】
本発明の別の好ましい実施形態では、心房細動の評価とは、心房細動のための療法の評価である。
【0041】
そのため、本発明は、対象における心房細動のための療法を評価するための方法であって、
a)対象からの試料中のDKK3の量を決定するステップと、
b)DKK3の量を基準量と比較し、それにより、心房細動のための療法が評価されるものとするステップとを含む方法を想定している。
【0042】
一実施形態では、上述の方法は、
a)対象からの試料中のDKK3の量ならびにナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量を測定するステップと、
b)DKK3ならびにナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量を基準量と比較し、それにより心房細動のための療法が評価されるものとするステップとを含む。
【0043】
好ましくは、上述の区別、上述の予測、および心房細動のための療法の評価に関連する対象とは、心房細動に罹患している、特に心房細動に罹患していることが(したがって、心房細動の既往歴があることが)わかっている対象である。しかしながら、上述の予測方法に関して、対象が心房細動の既往歴を有していないことも想定されている。
【0044】
本発明の別の好ましい実施形態では、心房細動の評価とは、心電図検査(ECG)に供されなければならない対象の識別である。そのため、心電図検査に供されなければならない対象が識別される。
【0045】
したがって、本発明は、心電図検査に供されなければならない対象を識別するための方法であって、
a)対象からの試料中のDKK3の量を決定するステップと、
b)DKK3の量を基準量と比較し、それにより、心電図検査に供されなければならない対象が識別されるステップとを含む方法を想定している。
【0046】
一実施形態では、上述の方法は、
a)対象からの試料中のDKK3の量ならびにナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量を測定するステップと、
b)DKK3ならびにナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量を基準量と比較し、それにより、心電図検査に供されなければならない対象が識別されるステップとを含む。
【0047】
好ましくは、心電図検査に供されなければならない対象を識別する上述の方法に関連する対象とは、心房細動の既往歴がない対象である。「心房細動の既往歴がない」という表現は、本明細書の他の箇所で定義されている。
【0048】
「心房細動」という用語(AFまたはAFibと略記)は、当技術分野において周知である。本明細書で使用される場合、この用語は、好ましくは、心房の機械的機能が結果として悪化する非協調的な心房活動を特徴とする上室頻脈性不整脈を指す。特に、この用語は、急速かつ不規則な心拍を特徴とする異常な心調律を指す。該用語には、心臓の2つの心房が関係している。正常な心調律では、洞房結節によって発生した興奮が心臓全体に広がり、心筋の収縮および血液の駆出を引き起こす。心房細動では、洞房結節の規則的な電気的興奮が、無秩序で急速な電気的興奮に置き換わり、結果として不規則な心拍をもたらす。心房細動の症状は、心臓の動悸、失神、息切れ、または胸痛である。しかしながら、ほとんどの発作には症状がない。心電図では、心房細動は、房室伝導が損なわれていないときに、心室応答が不規則で頻繁に急速になることと関係して振幅、形状、およびタイミングが変化する、急速な振動または細動波によって、均一なP波が置き換えられることを特徴とする。
【0049】
米国心臓病学会(ACC)、米国心臓協会(AHA)、および欧州心臓病学会(ESC)は、次の分類システム、すなわち、最初に検出されたAF、発作性AF、持続性AF、および永続性AFを提案している(本明細書とともに、その全体が参考として組み込まれるFuster V.et al.,Circulation 2006;114(7):e257-354を参照されたく、例えば、該文書中の
図3を参照されたい)。
【0050】
AFに罹患している人々は皆、初めは、最初に検出されたAFと呼ばれる区分にある。しかしながら、対象は、これまで検出されていなかった発作が出たことがあってもなくてもよい。心房細動が1年を超えて持続した場合、対象は永続性AFに罹患しており、特に洞調律へ戻る変換は生じない(または医学的介入がある場合のみ)。AFが7日を超えて続く場合、対象は持続性AFに罹患している。対象が、心房細動を終止させるには、薬理学的介入または電気的介入のいずれかを要することがある。好ましくは、持続性AFは発作に存在するが、不整脈は、洞調律へ戻るよう自然には(つまり、医学的介入なしでは)変換しない。発作性心房細動とは、好ましくは、最長7日間続く心房細動の間欠性発作を指す。発作性AFのほとんどの場合では、発作は24時間も続かない。心房細動の発作は、自然に、すなわち医学的介入なしで終止する。したがって、発作性心房細動の発作(複数可)は、好ましくは自然には終止するのに対し、持続性心房細動は、好ましくは自然には終止しない。好ましくは、持続性心房細動は、終止のための電気的もしくは薬理学的な心臓除細動、または切除手技などの他の手技を必要とする(Fuster V.et al.,Circulation 2006;114(7):e257-354)。持続性AFおよび発作性AFが両方、再発することがあり、その状況において、発作性AFと持続性AFの区別がECG記録によって提供される。患者に2回以上の発作があったとき、AFは再発と見なされる。不整脈が自然に終止する場合、AF、特に再発性AFは発作性と呼ばれる。AFは、7日を超えて持続する場合、永続性と呼ばれる。
【0051】
本発明の好ましい実施形態では、「発作性心房細動」という用語は、自然に終止するAFの発作として定義され、該発作は24時間も続かない。代替の実施形態では、自然に終止する発作は、最長7日間続く。
【0052】
本明細書でいう「対象」とは、好ましくは哺乳動物である。哺乳動物としては、飼い馴らされた動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒト、およびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、対象とは、ヒト対象である。
【0053】
好ましくは、検査される対象は、いずれかの齢であり、より好ましくは、検査される対
象は、50歳以上、より好ましくは60歳以上、最も好ましくは65歳以上である。さらに、検査される対象は、70歳以上であることが想定されている。
【0054】
その上、検査される対象は、75歳以上であることが想定されている。また、対象は、50歳から90歳の間であってよい。
【0055】
心房細動を評価する方法の好ましい実施形態では、検査される対象は、心房細動に罹患しているものとする。そのため、対象は、心房細動の既往歴を有するものとする。したがって、対象は、検査試料を入手することに先立って心房細動の発作があったものとし、心房細動の以前の発作の少なくとも1つが、例えば、ECGによって診断されているものとする。例えば、心房細動の評価が発作性心房細動と持続性心房細動との区別である場合、または心房細動の評価が心房細動と関係する有害事象のリスクの予測である場合、または心房細動の評価が心房細動のための療法の評価である場合、対象は心房細動に罹患していることが想定されている。
【0056】
心房細動を評価する方法の別の好ましい実施形態では、検査される対象は、例えば、心房細動の評価が心房細動の診断または心電図検査(ECG)に供されるものとする対象の識別である場合、心房細動に罹患していると疑われている。
【0057】
好ましくは、心房細動に罹患していることが疑われる対象とは、心房細動を評価するための方法を実施することに先立って、心房細動の少なくとも1つの症状を示した対象である。該症状は通常、一過性であり、数秒で発生することがあり、同じくらい迅速に消失することがある。心房細動の症状には、めまい、失神、息切れ、特に心臓の動悸が含まれる。好ましくは、対象は、試料を入手することに先立って6か月以内に心房細動の少なくとも1つの症状を示したことがある。
【0058】
あるいはまたはそれに加えて、心房細動に罹患していることが疑われる対象は、70歳以上の対象であるものとする。
【0059】
好ましくは、心房細動に罹患していることが疑われる対象は、心房細動の既往歴がないものとする。
【0060】
本発明に従って、心房細動の既往歴がない対象とは、好ましくは、以前に、すなわち本発明の方法を実施する前に(特に、対象から試料を入手する前に)心房細動に罹患していると診断されたことがない対象である。しかしながら、対象は、これまで診断されていなかった心房細動の発作が出たことがあってもなくてもよい。
【0061】
好ましくは、「心房細動」という用語は、すべての種類の心房細動を指す。そのため、この用語は、好ましくは、発作性、持続性、または永続性の心房細動を包含する。しかしながら、本発明の一実施形態では、検査される対象は、永続性心房細動に罹患していない。したがって、「心房細動」という用語は、発作性および持続性の心房細動のみを指すことが好まれる。
【0062】
先に明らかにしたように、バイオマーカーのDKK3は、心房細動以外のさまざまな疾患および障害において、高い可能性がある。本発明の一実施形態では、対象がこのような疾患および障害に罹患していないことが想定されている。例えば、対象は、慢性腎臓病、糖尿病、癌、冠動脈疾患、高血圧、および/または透析を必要とする腎不全に罹患していないものとすることが想定されている。一実施形態では、対象は脳卒中歴がないことが想定されている。
【0063】
心房細動の評価の一実施形態では、心房細動を評価する方法に従って検査される対象は、心不全に罹患していない。「心不全」という用語は、心不全を診断する方法に関連して定義される。この定義は適宜、適用される。
【0064】
心房細動の評価の代替の実施形態では、対象は心不全に罹患している可能性があるか、または罹患している。
【0065】
検査される対象は、試料が入手されたときに心房細動の発作を経験していてもしていなくてもよい。したがって、心房細動の評価の好ましい実施形態では(心房細動の診断などでは)、対象は、試料が入手されたときに心房細動の発作を経験しない。この実施形態では、対象は、試料を入手したときに、正常な洞調律を有するものとする(、およびそのため、洞調律にあるものとする)。したがって、心房細動の(一時的な)非存在下であってさえ、心房細動の診断が可能である。本発明の方法に従って、DKK3の上昇は、心房細動の発作後に保存されるものとし、したがって、心房細動に罹患してきた対象の診断を提供するものとする。好ましくは、本発明の方法を実施した後(またはより正確には、試料が入手された後)、約3日以内、約1か月以内、約3か月以内、または約6か月以内にAFの診断とする。好ましい実施形態では、発作後約6か月以内の心房細動の診断が実行可能である。好ましい実施形態では、発作後約6か月以内の心房細動の診断が実行可能である。そのため、本明細書でいう心房細動の評価、特に心房細動の評価に関連して本明細書でいう診断、リスクの予測または区別は、心房細動の最後の発作から好ましくは約3日後、より好ましくは約1か月後、さらにより好ましくは約3か月後、最も好ましくは約6か月後に行われる。結果として、検査される試料は好ましくは、心房細動の最後の発作から好ましくは約3日後、より好ましくは約1か月後、さらにより好ましくは約3か月後、最も好ましくは約6か月後に入手されることが想定される。そのため、心房細動の診断はまた、試料が入手される前の好ましくは約3日以内、より好ましくは約3か月以内、最も好ましくは約6か月以内に発生した心房細動の発作の診断も好ましく包含する。
【0066】
しかしながら、(例えば、脳卒中の予測に関して)試料を入手するときに、対象が心房細動の発作を経験することも想定される
【0067】
本発明の方法はまた、対象のより多くの集団のスクリーニングにも使用することができる。それゆえ、少なくとも100人の対象、特に少なくとも1000人の対象が心房細動に関して評価されることが想定されている。したがって、バイオマーカーの量は、少なくとも100人の、または特に少なくとも1000人の対象からの試料で測定される。その上、少なくとも1万人の対象が評価されることが想定されている。
【0068】
「試料」という用語は、体液の試料、分離された細胞の試料、または組織もしくは器官からの試料を指す。体液の試料は、周知の技術によって入手することができ、血液、血漿、血清、尿、リンパ液、痰、腹水の試料、またはその他の体分泌物もしくはその派生物の試料を含む。組織または器官の試料は、例えば生検によって、いずれかの組織または器官から入手してもよい。分離された細胞は、体液または組織もしくは器官から、遠心分離または細胞選別などの分離技術によって入手してもよい。例えば、バイオマーカーを発現または産生する細胞、組織、または器官から、細胞、組織、または器官の試料を入手してもよい。試料は、凍結した、新鮮な、固定した(例:ホルマリン固定した)、遠心分離した、および/または包埋した(例:パラフィン包埋した)などであってよい。もちろん、細胞試料は、試料中のバイオマーカー(複数可)の量を評価することに先立って、さまざまな周知の収集後の調製技術および保存技術(例えば、核酸および/またはタンパク質の抽出、固定、保存、凍結、限外濾過、濃縮、蒸発、遠心分離など)に供することができる。
【0069】
本発明の好ましい一実施形態では、試料は、血液(すなわち、全血)、血清または血漿の試料である。血清とは、血液を凝血させた後に入手される全血の液体画分である。血清を入手するためには、遠心分離によって血餅を除去し、上清を収集する。血漿とは、血液の無細胞流体部分である。血漿試料を入手するために、抗凝血剤で処理されたチューブ(例えば、クエン酸塩処理またはEDTA処理されたチューブ)中に全血を収集する。遠心分離により細胞を試料から除去し、上清(すなわち、血漿試料)を入手する。
【0070】
先に明らかにしたように、対象は洞調律にあるか、または試料が入手された時点でAF調律の発作に苦しんでいる可能性がある。
【0071】
バイオマーカーであるDickkopf関連タンパク質3(略してDKK3)は、当技術分野で周知である。また、該バイオマーカーはよく、REIC、RIG、dickkopf WNTシグナル伝達経路阻害剤3とも呼ばれる。
【0072】
DKK3は、心臓、脳、網膜、血管、肺、肝臓、膵臓、脾臓、腎臓、骨格筋、および胎盤において発現する。このうち、DKK3の発現は、心筋、大脳皮質の脳、脊髄において特に高い。
【0073】
本発明の好ましい実施形態では、ヒトDKK3ポリペプチドの量は、対象からの試料において測定される。ヒトDKK3ポリペプチドの配列は当技術分野で周知であり、例えば、Uniprotデータベースを介して評価することができ、エントリーQ9UBP4(DKK3_HUMAN)を参照されたい。DKK3は、38,390Daポリペプチドの分泌タンパク質であり、選択的スプライシングにより、同じタンパク質をコードする複数の転写産物変異体が結果的に生じる。このタンパク質は、sgyドメインと、LRP5およびLRP6との相互作用を媒介する2つの高システイン領域を含有する。
【0074】
DKK3遺伝子は、長さ2650bpであり、12個のエキソンからなる染色体11p15.3に存在しており、少なくとも2つのプロモーターを有している。DKK3遺伝子は、ヒトの正常組織に広く発現している複数の転写産物をコードしている。DKK3遺伝子は、3つの異なるアイソフォーム(NM_015881,2650bp、NM_013253,2635bp、およびNM_001018057,2587bp)へと転写される。これらのうちの2つは、第1のエキソンの代用から結果的に生じる(すなわち、エキソン1aおよびエキソン1bだが、いずれも非コードである)。もう1つの変異体は、エキソン1がない。すべての変異体は、エキソン2~8を共有しており、350aaの機能タンパク質をコードしている。(Katase et al;Atlas Genet Cytogenet Oncol Haematol.2013;17(10)p.678-686)。さらに、Leonard et al.(PLOS,2017年7月24日号)は、DKK3遺伝子のイントロン2にある第2の転写開始部位に由来するDKK3のアイソフォームであるDKK3b転写産物の同定を示している。
【0075】
好ましい実施形態では、DKK3転写産物のアイソフォーム1の量が決定され、すなわち、アイソフォーム1は、RefSeq受入番号NM_015881の下に示されるような配列を有する。
【0076】
別の好ましい実施形態では、DKK3転写産物のアイソフォーム2の量が決定される、すなわち、アイソフォーム2は、RefSeq受入番号NM_013253の下に示されるような配列を有する。
【0077】
別の好ましい実施形態では、DKK3転写産物のアイソフォーム3の量が決定される、すなわち、アイソフォーム3は、RefSeq受入番号NM_001018057の下に
示されるような配列を有する。
【0078】
別の好ましい実施形態では、DKK3b転写産物のアイソフォーム4の量が決定される、すなわち、アイソフォーム4は、Leonard et al.(PLOS,2017年7月24日号)の下に示されるような配列を有する。
【0079】
別の好ましい実施形態では、DKK3転写産物のアイソフォーム-1、2、3およびアイソフォーム4の量、すなわち総DKK3が測定される。
【0080】
例えば、DKK3の量は、DKK3ポリペプチドのアミノ酸15~350に対するモノクローナル抗体(例えば、マウス抗体)を用いておよび/またはヤギポリクローナル抗体を用いて測定され得る。
【0081】
別の好ましい実施形態では、DKK3は、ナトリウム利尿ペプチドとのおよび/またはESM1との組み合わせで測定される。
【0082】
「ナトリウム利尿ペプチド」という用語は、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)型および脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)型のペプチドを含む。したがって、本発明によるナトリウム利尿ペプチドは、ANP型およびBNP型のペプチドならびにそれらの変異体を含む(例えば、Bonow RO.et al.,Circulation 1996;93:1946-1950を参照されたい)。
【0083】
ANP型のペプチドは、プレプロANP、プロANP、NT-プロANP、およびANPを含む。
【0084】
BNP型ペプチドは、プレプロBNP、プロBNP、NT-プロBNP、およびBNPを含む。
【0085】
プレプロペプチド(プレプロBNPの場合は134アミノ酸)は、短いシグナルペプチドを含み、該プレプロペプチドは、プロペプチド(プロBNPの場合は108アミノ酸)を放出するために酵素で切断される。プロペプチドはさらに、N末端プロペプチド(NT-プロペプチド、NT-プロBNPの場合は76アミノ酸)および活性ホルモン(BNPの場合は32アミノ酸、ANPの場合は28アミノ酸)へと切断される。
【0086】
本発明による好ましいナトリウム利尿ペプチドは、NT-プロANP、ANP、NT-プロBNP、BNPである。ANPおよびBNPは活性ホルモンであり、それぞれの不活性対応物であるNT-プロANPおよびNT-プロBNPよりも半減期が短い。BNPは血中で代謝されるのに対し、NT-プロBNPは損なわれていない分子として血中を循環し、このようなものとして、腎臓から放出される。
【0087】
解析前は、NT-プロBNPでより堅牢であり、試料を中央検査室へ容易に輸送することができる(Mueller T,Gegenhuber A,Dieplinger B,Poelz W,Haltmayer M.Long-term stability of endogenous B-type natriuretic peptide(BNP)and amino terminal proBNP(NT-proBNP)in frozen plasma samples.Clin Chem Lab Med 2004;42:942-4.)。血液試料は、室温で数日間保存することができるか、または回収喪失なく発送もしくは搬送することができる。対照的に、BNPを室温または4℃で48時間保存すると、少なくとも20%の濃度喪失が生じる(Mueller T,Gegenhuber A,et al.,Clin Chem Lab
Med 2004;42:942-4、Wu A H,Packer M,Smith
A,Bijou R,Fink D,Mair J,Wallentin L,Johnston N,Feldcamp C S,Haverstick D M,Ahnadi C E,Grant A,Despres N,Bluestein B,Ghani F.Analytical and clinical evaluation of the Bayer ADVIA Centaur automated B-type natriuretic peptide assay in patients with heart failure:a multisite study.Clin Chem 2004;50:867-73.)。それゆえ、関心対象の時間経過または特性に応じて、ナトリウム利尿ペプチドの活性型または不活性型のいずれかの測定が有利である可能性がある。
【0088】
本発明による最も好ましいナトリウム利尿ペプチドは、NT-プロBNPおよびBNP、特にNT-プロBNPである。先に簡単に論議したように、本発明に従っていうところのヒトNT-プロBNPは、好ましくは、ヒトNT-プロBNP分子のN末端部分に相当する長さ76アミノ酸を含むポリペプチドである。ヒトBNPおよびNT-プロBNPの構造は、先行技術、例えば、WO02/089657、WO02/083913、およびBonow RO.Et al.,New Insights into the cardiac natriuretic peptides.Circulation 1996;93:1946-1950においてすでに詳細に説明されている。好ましくは、本明細書で使用されるヒトNT-プロBNPは、欧州特許第0648228 B1号に開示されるヒトNT-プロBNPである。
【0089】
エンドカンとも名づけられている「ESM1」という用語は、20kDaの成熟ポリペプチドと30kDaのO結合型グリカン鎖およびその変異体とから構成されるプロテオグリカンを含むである(Bechard D et al.,J Biol Chem 2001;276(51):48341-48349)
【0090】
本発明の好ましい実施形態では、ヒトESM-1ポリペプチドの量は、対象からの試料において測定される。ヒトESM-1ポリペプチドの配列は当技術分野で周知であり(例えば、Lassale P.et al.,J.Biol.Chem.1996;271:20458-20464を参照されたい、例えば、Uniprotデータベースを介して評価することができ、エントリーQ9NQ30(ESM1_HUMAN)を参照されたい。ESM-1の2つのアイソフォームは、選択的スプライシングによって生成され、アイソフォーム1(Uniprot識別子Q9NQ30-1を有する)およびアイソフォーム2(Uniprot識別子Q9NQ30-2を有する)である。アイソフォーム1は、長さ184アミノ酸である。アイソフォーム2では、アイソフォーム1のアミノ酸101~150が欠損している。アミノ酸1~19は、シグナルペプチドを形成する(該シグナルペプチドは切断され得る)。
【0091】
好ましい実施形態では、ESM-1ポリペプチドのアイソフォーム1の量が決定され、すなわち、アイソフォーム1はUniProt受入番号Q9NQ30-1の下に示されるような配列を有する。
【0092】
別の好ましい実施形態では、ESM-1ポリペプチドのアイソフォーム2の量が決定され、すなわち、アイソフォーム2はUniProtアクセッション番号Q9NQ30-2の下に示されるような配列を有する。
【0093】
別の好ましい実施形態では、ESM-1ポリペプチドのアイソフォーム-1およびアイソフォーム2の量、すなわち総ESM-1が決定される。
【0094】
例えば、ESM-1の量は、ESM-1ポリペプチドのアミノ酸20~184に対するモノクローナル抗体(マウス抗体など)を用いておよび/またはヤギポリクローナル抗体を用いて決定され得る。
【0095】
例えば、ESM-1の量は、アイソフォーム1または2(残基101~150欠損)の両方を反映するESM-1ポリペプチドのアミノ酸20~184に対する2つのモノクローナル抗体(ウサギ抗体またはマウス抗体など)を用いて決定され得る。
【0096】
本明細書でいうバイオマーカー(DKK3またはナトリウム利尿ペプチドなど)の量「を決定すること」という用語は、バイオマーカーの定量を指し、例えば、本明細書の他の箇所に説明されている適切な検出方法を採用して、試料中のバイオマーカーのレベルを測定することを指す。「を測定すること」および「を決定すること」という用語は、本明細書では相互互換可能に使用されている。
【0097】
一実施形態では、バイオマーカーの量は、試料をバイオマーカーに特異的に結合する作用物質と接触させ、それにより作用物質と該バイオマーカーとの間に複合体を形成し、形成された複合体の量を検出し、それから該バイオマーカーの量を測定することによって、決定される。
【0098】
本明細書でいうバイオマーカー(DKK3など)は、当技術分野で概して公知の方法を使用して検出することができる。検出方法は概して、試料中のバイオマーカーの量を定量する方法(定量的方法)を包含する。以下の方法のいずれがバイオマーカーの定性的および/または定量的検出に適しているかは、当業者に概して公知である。試料は、例えば、ウエスタン法ならびにELISA、RIA、蛍光および発光に基づく免疫学的検定法のような免疫学的検定法、ならびに市販されている近接伸長法を使用して、タンパク質について簡便にアッセイすることができる。バイオマーカーを検出するためのさらに適切な方法は、ペプチドまたはポリペプチドに特異的な物理的または化学的特性、例えば、その正確な分子量またはNMRスペクトルなどを測定することを含む。該方法は、例えば、バイオセンサー、免疫学的検定法と連関した光学装置、バイオチップ、質量分析計、NMR分析機、またはクロマトグラフィー装置などの分析装置を含む。さらに、方法には、マイクロプレートELISAに基づく方法、完全自動化したまたはロボットによる免疫学的検定(Elecsys(商標)分析装置で利用可能)、CBA(酵素によるCobalt Binding Assay、例えば、Roche-Hitachi(商標)分析装置で利用可能)、およびラテックス凝集アッセイ(例えば、Roche-Hitachi(商標)分析装置で利用可能)が含まれる。
【0099】
本明細書でいうバイオマーカータンパク質の検出については、このようなアッセイ形式を使用する広範な免疫学的検定技術が利用可能であり、例えば、米国特許第4,016,043号明細書、第4,424,279号明細書、および第4,018,653号明細書を参照されたい。これらは、従来の競合結合アッセイはもちろん、非競合型の単一部位アッセイと2部位アッセイまたは「サンドイッチ」アッセイとの両方を含む。これらのアッセイはまた、標識された抗体の標的バイオマーカーへの直接結合も含む。
【0100】
電気化学発光標識を用いる方法は、周知である。このような方法は、特殊な金属錯体の能力を利用して、酸化によって、励起状態となり、該金属錯体は、励起状態から基底状態へ緩和して、電気化学発光を放出する。総説については、Richter,M.M.,Chem.Rev.2004;104:3003-3036を参照されたい。
【0101】
一実施形態において、バイオマーカーの量を測定するのに使用される検出抗体(または
その抗原結合フラグメント)は、ルテニウム化(ruthenylated)またはイリジウム化(iridinylated)されている。そのため、抗体(またはその抗原結合フラグメント)は、ルテニウム標識を含むものとする。一実施形態において、該ルテニウム標識は、ビピリジン-ルテニウム(II)錯体である。あるいは、抗体(またはその抗原結合フラグメント)は、イリジウム標識を含むものとする。一実施形態において、該イリジウム標識は、WO2012/107419において開示されているような錯体である。
【0102】
DKK3の決定のためのサンドイッチアッセイの実施形態では、アッセイは、(捕捉抗体として)DKK3を特異的に結合するビオチン化された第1のモノクローナル抗体と、検出抗体として)DKK3を特異的に結合する第2のモノクローナルのルテニウム化されたF(ab’)2-フラグメントとを含む。この2つの抗体は、試料中でDKK3とサンドイッチ免疫学的測定複合体を形成する。
【0103】
ナトリウム利尿ペプチドの決定のためのサンドイッチアッセイの実施形態では、アッセイは、(捕捉抗体として)ナトリウム利尿ペプチドを特異的に結合するビオチン化された第1のモノクローナル抗体と、検出抗体として)ナトリウム利尿ペプチドを特異的に結合する第2のモノクローナルのルテニウム化されたF(ab’)2-フラグメントとを含む。この2つの抗体は、試料中でナトリウム利尿ペプチドとサンドイッチ免疫学的測定複合体を形成する。
【0104】
ポリペプチド(DKK3またはナトリウム利尿ペプチドなど)の量を測定することは、好ましくは、(a)ポリペプチドを、該ポリペプチドを特異的に結合する作用物質と接触させるステップ、(b)結合していない作用物質を(場合により)除去するステップ、(c)結合した結合剤、すなわちステップ(a)で形成された作用物質の複合体の量を測定するステップを含んでよい。好ましい実施形態によれば、該接触させるステップ、除去するステップおよび測定するステップは、分析装置ユニットにより実施してもよい。一部の実施形態によれば、該ステップは、該システムの単一の分析装置ユニットによって、または互いに作動可能な通信状態にある複数の分析装置ユニットによって実施してもよい。例えば、具体的な実施形態によれば、本明細書で開示される該システムは、該接触させるステップおよび除去するステップを実施するための第1の分析装置ユニットと、該測定するステップを実施する、輸送ユニット(例えば、ロボットアーム)により、該第1の分析装置ユニットに作動可能に接続された第2の分析装置ユニットとを備えていてもよい。
【0105】
バイオマーカーを特異的に結合する作用物質(本明細書では「結合剤」ともいう)は、結合した作用物質の検出および測定を可能にする標識に、共有結合または非共有結合していてもよい。ラベリングは、直接的なまたは間接的な方法により行うことができる。直接的なラベリングは、標識を結合剤に直接的に(共有結合でまたは非共有結合で)結合させることを包含する。間接的なラベリングは、第2の結合剤を第1の結合剤に(共有結合でまたは非共有結合で)結合させることを包含する。第2の結合剤は、第1の結合剤に特異的に結合するものとする。該第2の結合剤は、適切な標識と結合することができ、および/または第2の結合剤に結合する第3の結合剤の標的(受容体)であってよい。適切な二次的なおよびより高次の結合剤は、抗体、二次抗体、および周知のストレプトアビジン-ビオチン系(Vector Laboratories,Inc.)を含むことができる。結合剤または基質はまた、当技術分野で公知の1つ以上のタグで「タグ付けされ」ていてもよい。そうすることで、このようなタグは、より高次の結合剤のための標的となることができる。適切なタグとしては、ビオチン、ジゴキシゲニン、Hisタグ、グルタチオン-S-転移酵素、FLAG、GFP、mycタグ、インフルエンザウイルスA型赤血球凝集素(HA)、マルトース結合タンパク質などが挙げられる。ペプチドまたはポリペプチドの場合、タグは、好ましくはN末端および/またはC末端にある。適切な標識は、適
切な検出方法によって検出可能ないずれかの標識である。典型的な標識としては、金粒子、ラテックスビーズ、アクリダンエステル、ルミノール、ルテニウム錯体、イリジウム錯体、酵素活性のある標識、放射性標識、磁気標識(「例えば磁気ビーズ」であって、常磁性のおよび超常磁性の標識を含む)、および蛍光標識が挙げられる。酵素活性のある標識としては、例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、およびこれらの誘導体が挙げられる。検出に適した基質としては、ジアミノベンジジン(DAB)、3,3’-5,5’-テトラメチルベンジジン、NBT-BCIP(Roche Diagnostics製の既成の保存溶液として入手可能な4-ニトロブルーテトラゾリウムクロリドおよび5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-ホスファート)、CDP-Star(商標)(Amersham Bio-sciences)、ECF(商標)(Amersham Biosciences)が挙げられる。適切な酵素-基質の組み合わせにより、着色された反応産物、蛍光または化学発光が生じてもよく、これは、当技術分野で公知の方法によって(例えば感光フィルムまたは適切なカメラシステムを使用して)、決定することができる。酵素反応を測定することに関しては、上述の基準が同様に適用される。典型的な蛍光標識としては、蛍光タンパク質(例えば、GFPおよびその誘導体)、Cy3、Cy5、テキサスレッド、フルオレセイン、およびAlexa色素(例えばAlexa568)が挙げられる。さらなる蛍光標識が、例えばMolecular Probes(オレゴン州)から入手可能である。また、蛍光標識としての量子ドットの使用も企図されている。放射性標識は、公知かつ好適ないずれかの方法、例えば感光フィルムまたはりん光体撮影装置によって検出することができる。
【0106】
ポリペプチドの量はまた、好ましくは、以下の通り測定することもできる:(a)本明細書の別の箇所で説明されるようなポリペプチド用の結合剤を含む固形支持体を、ペプチドまたはポリペプチドを含む試料と接触させること、および、(b)支持体に結合したペプチドまたはポリペプチドの量を測定すること。支持体を製造するための材料は、当技術分野で周知であり、とりわけ、市販のカラム材料、ポリスチレンビーズ、ラテックスビーズ、磁気ビーズ、コロイド金属粒子、ガラスおよび/またはシリコンのチップおよび表面、ニトロセルロースストリップ、メンブレン、シート、デュラサイト(duracyte)、反応トレイのウェルおよび壁、プラスチックチューブなどが挙げられる。
【0107】
さらなる一態様では、結合剤と少なくとも1種のマーカーとの間で形成された複合体から、形成された複合体の量の測定に先立って、試料が除去される。そのため、一態様では、結合剤は固形支持体上に固定されていてもよい。さらなる態様では、洗浄溶液を適用することによって、固形支持体上で形成された複合体から試料を除去することができる。
【0108】
「サンドイッチアッセイ」は、最も有用かつ一般に使用されるアッセイに含まれており、サンドイッチアッセイ技術のいくつかの変法を包含する。簡潔にいうと、典型的なアッセイでは、未標識の(捕捉)結合剤が固定されているかまたは固体基質上に固定することができ、かつ検査される試料を捕捉結合剤と接触させる。結合剤-バイオマーカー複合体を形成を可能にするのに十分な時間の、適切なインキュベート時間の後、検出可能なシグナルを生成できるレポーター分子で標識した第2の(検出)結合剤を添加し、結合剤-バイオマーカーで標識した結合剤という別の複合体の形成に十分な時間を許容してインキュベートする。いかなる未反応の物質も洗い流すことができ、バイオマーカーの存在は、検出結合剤に結合したレポーター分子により生成されるシグナルの観察によって決定される。その結果は、可視シグナルの単純な観察によって定性的であってもよいか、または既知量のバイオマーカーを含有する対照試料との比較によって定量されてもよいかのいずれかである。
【0109】
典型的なサンドイッチアッセイのインキュベーションステップは、必要に応じて適宜変
更することができる。このような変更には、例えば、結合剤およびバイオマーカーのうちの2つ以上が共インキュベートされる同時インキュベーションが含まれる。例えば、分析される試料および標識した結合剤の両方が同時に、固定した捕捉結合剤に添加される。また、分析される試料および標識した結合剤をまずインキュベートし、その後、固相に結合した抗体、または固相に結合することができる抗体を添加することもできる。
【0110】
特異的な結合剤とバイオマーカーとの間で形成される複合体は、試料中に存在するバイオマーカーの量に比例するものとする。適用される結合剤の特異性および/または感度が、試料中に含まれる、特異的に結合することができる少なくとも1種のマーカーの比率の程度を規定することは理解されるであろう。また、測定をどのように実行するかについてのさらなる詳細は、本明細書の他の箇所でも認められる。形成された複合体の量は、試料中に実際に存在する量を反映するバイオマーカーの量へと変換されるものとする。
【0111】
「結合剤」、「特異的な結合剤」、「分析対象特異結合剤」、「検出剤」および「バイオマーカーに特異的に結合する作用物質」という用語は、本明細書では相互互換可能に使用される。好ましくは、該用語は、相当するバイオマーカーを特異的に結合する結合部分を含む作用物質に関する。「結合剤」、「検出剤」、「作用物質」の例は、核酸プローブ、核酸プライマー、DNA分子、RNA分子、アプタマー、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、ペプチド核酸(PNA)または化合物である。好ましい作用物質は、決定されるバイオマーカーに特異的に結合する抗体である。本明細書の「抗体」という用語は、最も広い意味で使用されており、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、および所望の抗原結合活性を呈する限りの抗体フラグメント断片(すなわち、その抗原結合フラグメント)を含むが、これらに限定されない、さまざまな抗体構造を包含する。好ましくは、抗体はポリクローナル抗体(または、それに由来する抗原結合フラグメント)である。より好ましくは、抗体は、モノクローナル抗体(または抗原結合フラグメントであり、それゆえ、その上、本明細書の他の箇所で説明するように、(サンドイッチ免疫学的検定法において)DKK3の異なる位置で結合する2つのモノクローナル抗体が使用されることが想定されている。したがって、DKK3の量の決定に少なくとも1種の抗体が使用される。
【0112】
一実施形態では、少なくとも1つの抗体は、マウスモノクローナル抗体である。別の実施形態では、少なくとも1つの抗体は、ウサギモノクローナル抗体である。さらなる実施形態では、該抗体は、ヤギポリクローナル抗体である。なおもさらなる実施形態では、該抗体は、ヒツジポリクローナル抗体である。
【0113】
「特異的な結合」または「を特異的に結合する」という用語は、結合対の分子が、別の分子に有意に結合しない条件下で、互いへの結合を呈する結合反応を指す。「特異的な結合」または「を特異的に結合する」という用語は、バイオマーカーとしてのタンパク質またはペプチドに関するとき、好ましくは、結合剤が、相当のバイオマーカーに少なくとも107M-1の親和性(「会合定数」Ka)で結合する結合反応を指す。「特異的な結合」または「を特異的に結合する」という用語は好ましくは、標的分子に対して、少なくとも108M-1、またはさらにより好ましくは少なくとも109M-1の親和性を指す。「特異的な」または「特異的に」という用語は、試料中に存在するその他の分子が、標的分子に特異的な結合剤に、有意に結合しないことを示すために使用される。
【0114】
一実施形態では、本発明の方法は、ヒトDKK3および非ヒトまたはキメラDKK3特異的結合剤を含むタンパク質複合体を検出することに基づいている。このような実施形態では、本発明は、対象における心房細動を評価するための方法について読み取っており、該方法は、(a)該対象からの試料を非ヒトDKK3特異的結合剤とインキュベートするステップ(b)(a)において形成されたDKK3特異的結合剤とDKK3との間の複合
体を測定するステップ、および(c)測定された量の複合体を基準量と比較するステップを含む。基準量以上の複合体の量は、心房細動の診断(したがって存在)、持続性心房細動の存在、ECGに供されるものとする対象、または有害事象のリスクのある対象について示す。基準量を下回る複合体の量は、心房細動がないこと、発作性心房細動の存在、ECGに供されないものとする対象、または有害事象のリスクがない対象について示す。
【0115】
本明細書で使用される場合の「量」という用語は、本明細書でいうバイオマーカー(例えば、DKK3またはナトリウム利尿ペプチド)の絶対量、該バイオマーカーの相対的な量または濃度、およびそれらと相関するまたはそれらから導き出すことができる何らかの値またはパラメータを包含する。このような値またはパラメータは、直接的な測定により該ペプチドから得られる、具体的な物理的または化学的特性すべてに由来する強度シグナル値、例えば、質量スペクトルまたはNMRスペクトルにおける強度値を含む。その上、本明細書の別の箇所で明示される間接的な測定により得られる値またはパラメータすべて、例えば、特異的に結合したリガンドから得られるペプチドまたは強度シグナルに応じて生物学的読み出しシステムから決定される応答量、が包含される。上述の量またはパラメータと相関する値は、すべての標準的な数学演算によっても得ることができるということは理解されたい。
【0116】
本明細書で使用される場合の「を比較すること」という用語は、対象からの試料中のバイオマーカー(DKK3およびNT-プロBNPまたはBNPなどのナトリウム利尿ペプチド、および/またはESM1など)の量を、本明細書の別の箇所で明示されるバイオマーカーの基準量と比較することを指す。本明細書で使用する場合の比較することは、通常、相当するパラメータまたは値の比較を指す、例えば、絶対量は絶対基準量と比較されるのに対し、濃度は基準濃度と比較され、または試料中のバイオマーカーから得られた強度シグナルは基準試料から得られた同じ種類の強度シグナルと比較されることを理解されたい。比較は、手作業またはコンピュータを利用して実施してもよい。したがって、比較は、計算装置により実施してもよい。対象からの試料中のバイオマーカーの決定されたまたは検出された量の値、および基準量は、例えば、互いに比較することができ、該比較は、比較のためのアルゴリズムを実行するコンピュータプログラムにより自動的に実施することができる。該評価を実施するコンピュータプログラムは、適切な出力様式で、所望の評価を提供する。コンピュータを利用した比較のために、決定された量の値は、コンピュータプログラムにより、データベースに保存されている適切な基準に相当する値と比較されてもよい。コンピュータプログラムは、比較結果をさらに評価してもよく、すなわち、適切な出力様式で所望の評価を自動的に提供してもよい。コンピュータを利用した比較のために、決定された量の値は、コンピュータプログラムにより、データベースに保存されている適切な基準に相当する値と比較されてもよい。コンピュータプログラムは、比較結果をさらに評価してもよく、すなわち、適切な出力様式で所望の評価を自動的に提供する。
【0117】
本発明に従って、バイオマーカーDKK3の量、ならびに場合によりナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量を基準と比較するものとする。基準は、好ましくは基準量である。「基準量」という用語は、当業者によって十分に理解されている。
【0118】
基準量は、本明細書で説明する心房細動の評価を可能にするものとすることは理解されたい。例えば、心房細動を診断するための方法に関連して、基準量は、好ましくは、(i)心房細動に罹患している対象の群、または(ii)心房細動に罹患していない対象の群、のいずれかに、対象を割り当てることができる量を指す。適切な基準量は、検査試料と一緒に、すなわち同時にまたは続いて分析される基準試料から決定されてもよい。
DKK3の量はDKK3についての基準量と比較されるのに対し、ナトリウム利尿ペプチドの量はナトリウム利尿ペプチドの基準量と比較されることは理解されたい。2種のマーカーの量が決定される場合、DKK3およびナトリウム利尿ペプチドの量に基づいて、
併用スコアが計算されることもまた想定されている。その後のステップでは、このスコアが基準スコアと比較される。
【0119】
DKK3の量はESM1についての基準量と比較されるのに対し、ESM1の量はESM1の基準量と比較されることは理解されたい。2種のマーカーの量が決定される場合、DKK3およびESM1の量に基づいて、併用スコアが計算されることもまた想定されている。その後のステップでは、このスコアが基準スコアと比較される。
【0120】
基準量は、原則として、統計学の標準的な方法を適用することによって、所定のバイオマーカーの平均または平均値に基づいて、先に指定したような対象のコホートについて算出することができる。特に、事象を診断するかどうかを目的とする方法などの検査の精度は、受け手の作動特徴(ROC)により最良に説明されている(特に、Zweig MH.et al.,Clin.Chem.1993;39:561-577を参照されたい)。ROCグラフは、観察されたデータの全範囲にわたって決定閾値を継続的に変動させることにより生じる、すべての感度対特異性の対のプロットである。診断方法の臨床成績は、その正確性、すなわち対象をある特定の予後または診断に正確に割り当てる能力に依存する。ROCプロットは、区別を行うのに適した閾値の全範囲について、感度対1-特異性をプロットすることにより、2つの分布間の重なりを示す。y軸は、感度、または真陽性率であり、真陽性の検査結果の数および偽陰性の検査結果の数の積に対する、真陽性の検査結果の数の比率として定義される。y軸は、影響を受ける下位群からのみ計算される。x軸は、偽陽性率、または1-特異性であり、真陰性の結果の数および偽陽性の結果の数の積に対する、偽陽性結果の数の比率として定義される。x軸は、特異性の指標であり、影響を受けない下位群からのみ計算される。真陽性率および偽陽性率は、2つの異なる下位群からの検査結果を使用することによって完全に別個に計算されるので、ROCプロットはコホートにおける事象の有病率に非依存性である。ROCプロット上の各点は、特定の決定閾値に相当する感度/1-特異性の対を表す。完全な区別のある(結果の2つの分布に重なりがない)検査は、左上隅を通過するROCプロットを有しており、真陽性率は1.0、または100%(完全な感度)であり、偽陽性率は0(完全な特異性)となる。区別のない(2つの群についての結果の分布が同一である)検査についての理論上のプロットは、左下隅から右上隅への45°の対角線となる。ほとんどのプロットは、これらの2つの極値の間に収まる。ROCプロットが45°対角線を完全に下回って収まる場合、これは、「陽性率」についての基準を「より高い」から「より低い」に入れ替え、逆もまた同様にすることによって、容易に修正される。定性的には、プロットが左上隅に近いほど、検査の全体的な精度が高くなる。所望の信頼区間に応じて、ROC曲線から閾値を導くことができ、これにより、感度および特異性の適切な平衡状態をそれぞれ備えた所与の事象についての診断が可能になる。そのため、本発明の方法に使用される基準、すなわち心房細動を評価することを可能にする閾値は、好ましくは、上述のように該コホートのROCを確立することと、そこから閾値量を導くこととによって、生成することができる。診断方法についての所望の感度および特異性に応じて、ROCプロットは、適切な閾値を導くことができる。最適な感度は、例えば、心房細動に罹患していることから対象を除外する(すなわちルールアウト)ために所望であるのに対し、至適感度が、心房細動に罹患している対象に想定されることは理解される。一実施形態では、本発明の方法は、対象が、心房細動および/または脳卒中の発生または再発など、心房細動と関係する有害事象のリスクがあるという予測を可能にする。
【0121】
好ましい実施形態では、本明細書の「基準量」という用語は、所定の値を指す。該所定の値は、心房細動を評価すること、したがって心房細動を診断すること、発作性心房細動と持続性心房細動とを区別すること、心房細動と関係する有害事象のリスクを予測すること、心電図検査(ECG)に供されるものとする対象を識別すること、または心房細動のための療法の評価を可能にするものとする。基準量は、評価の種類に基づいて異なること
があることは理解されたい。例えば、AFの区別のためのDKK3の基準量は、通常、AFの診断のための基準量よりも高くなる。しかしながら、このことは当業者により考慮される。
【0122】
先に明らかにしたように、「心房細動を評価すること」という用語は、好ましくは、心房細動の診断、発作性心房細動と持続性心房細動との区別、心房細動と関係する有害事象のリスクの予測、心電図検査(ECG)に供されるものとする対象の識別、または心房細動のための療法の評価を指す。以下では、本発明の方法のこれらの実施形態をより詳細に説明する。先の定義は適宜、適用される。
【0123】
心房細動を診断するための方法
本明細書で使用される「診断すること」という用語は、本発明の方法に従っていう対象が、心房細動(AF)に罹患しているかどうかを評価することを意味する。一実施形態では、対象がAFに罹患していると診断される。好ましい実施形態では、対象が発作性AFに罹患していると診断される。代替の実施形態では、対象がAFに罹患していないと診断される。
【0124】
本発明に従って、すべての種類のAFを診断することができる。したがって、心房細動は発作性、持続性、または永続性のAFであってよい。好ましくは、発作性または心房細動は、特に永続性AFに罹患していない対象において診断される。
【0125】
対象がAFに罹患しているかどうかの実際の診断は、診断の確認(例えば、Holter-ECGなどのECGによる)などのさらなるステップを含んでもよい。したがって、本発明は、患者が心房細動に罹患している尤度を評価することを可能にする。基準量を上回るDKK3の量を有する対象は、心房細動に罹患していそうであるのに対し、基準量を下回るDKK3の量を有する対象は、心房細動に罹患していなさそうである。適宜、本発明の文脈における「診断すること」という用語はまた、対象が心房細動に罹患しているかどうかを医師が評価するのを支援することも包含する。
【0126】
好ましくは、1つ(または複数)の基準量と比較して多い、検査対象からの試料中のDKK3の量(および場合によりナトリウム利尿ペプチドの量)は、心房細動に罹患している対象を示し、および/または1つ(または複数)の基準量と比較して少ない、対象からの試料中のDKK3の量(および場合によりナトリウム利尿ペプチドの量)は、心房細動に罹患していない対象を示す。
【0127】
好ましい実施形態では、基準量、すなわち基準量DKK3、およびナトリウム利尿ペプチドが決定される場合、ナトリウム利尿ペプチドについての参照量は、心房細動に罹患している対象と心房細動に罹患していない対象とを区別することを可能にするものとする。好ましくは、該基準量は所定の値である。
【0128】
さらに好ましい実施形態では、基準量、すなわち基準量DKK3、およびESM1が決定される場合、ESM1についての基準量は、心房細動に罹患している対象と心房細動に罹患していない対象とを区別することを可能にするものとする。好ましくは、該基準量は所定の値である。
【0129】
一実施形態では、本発明は、心房細動に罹患している対象の診断を可能にする。好ましくは、DKK3の量(および場合によりナトリウム利尿ペプチドの量)が基準量を上回っている場合、対象はAFに罹患している。一実施形態では、DKK3の量が基準量のある特定の百分位数(例えば、第99百分位数)の上限基準限界(URL)を超える場合、対象はAFに罹患している。
【0130】
別の好ましい実施形態では、本発明の方法は、対象が心房細動に罹患していないという診断を可能にする。好ましくは、DKK3の量(および場合によりナトリウム利尿ペプチドの量)が基準量(ある特定の百分位数URLなど)を下回る場合、対象はAFに罹患していない。したがって、一実施形態では、「心房細動を診断すること」という用語は、「心房細動を除外すること」を指す。
【0131】
心房細動を除外することは、ECG検査などの心房細動の診断のためのさらなる診断検査を回避できるので、特に関心対象である。したがって、本発明のおかげで、不必要な医療費を回避することができる。
【0132】
適宜、本発明はまた、心房細動を除外するための方法であって、
a)対象からの試料中のDKK3の量を決定するステップと、
b)DKK3の量を、心房細動が除外される基準量と比較するステップと、を含む方法にも関する。
【0133】
好ましくは、基準量(心房細動を除外するための基準など)と比較して少ない、対象の試料中のバイオマーカーDKK3の量は、心房細動に罹患していない対象を、したがって、対象における心房細動を除外することを示す。例えば。DKK3についての基準量は、AFに罹患していない対象からの試料において、またはその群の試料において決定されてもよい。
【0134】
バイオマーカーDKK3とナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1とを組み合わせで決定する場合、さらに信頼性の高い除外を実現することができる。適宜、ステップa)およびステップb)は、好ましくは以下の通りである。
a)対象からの試料中のDKK3の量とナトリウム利尿ペプチドのおよび/またはESM1の量とを決定すること、ならびに
b)DKK3ならびにナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量を、心房細動が除外される基準量と比較すること。
【0135】
好ましくは、両方のバイオマーカーの量、すなわち、バイオマーカーDKK3の量およびナトリウム利尿ペプチドの量、
【0136】
または両方のバイオマーカーの量、すなわち、バイオマーカーDKK3の量とESM1の量、
【0137】
または、3つのバイオマーカーの量、すなわち、バイオマーカーDKK3の量、ナトリウム利尿ペプチドの量、およびESM1の量、
【0138】
それぞれの基準量(心房細動を除外するための基準量など)と比較して少ない、対象の試料におけるものでは、心房細動に罹患していない対象を、したがって対象における心房細動を除外することを示す。例えば。ナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1のための基準量は、AFに罹患していない対象からの試料において、またはその群の試料において決定してもよい。
【0139】
心房細動を診断する方法の一実施形態では、該方法は、診断の結果に基づいて心房細動のための療法を推奨および/または開始するステップをさらに含む。好ましくは、対象がAFに罹患していると診断された場合、治療が推奨または開始される。心房細動についての好ましい療法は、本明細書の他の箇所に開示されている。
【0140】
発作性心房細動と持続性心房細動とを区別するための方法
本明細書で使用される「区別すること」という用語は、対象における発作性心房細動と持続性心房細動とを差別することを意味する。本明細書で使用される用語は、好ましくは、対象における発作性心房細動および持続性心房細動を区別して診断することを含む。したがって、本発明の方法は、心房細動に罹患している対象が発作性心房細動に罹患しているかまたは持続性心房細動に罹患しているかを評価することを可能にする。実際の区別は、区別の確認などのさらなるステップを含んでもよい。したがって、本発明の文脈における「区別」という用語はまた、発作性AFと持続性AFとを医師が区別するのを支援することも包含する。
【0141】
好ましくは、1つ(または複数)の基準量と比較して多い、対象からの試料中のDKK3の量(および場合によりナトリウム利尿ペプチドの量)は、持続性心房細動に罹患している対象を示し、および/または1つ(または複数)の基準量と比較して少ないか、対象からの試料中のDKK3の量(および場合によりナトリウム利尿ペプチドの量)は、発作性心房細動に罹患している対象を示す。両方のAFの種類(発作性および持続性)では、DKK3の量は非AF対象の基準量と比較して上昇している。
【0142】
好ましい実施形態では、基準量(複数可)は、発作性心房細動に罹患している対象と持続性心房細動に罹患している対象とを区別することを可能にするものとする。好ましくは、該基準量は所定の値である。
【0143】
発作性心房細動と持続性心房細動を区別する先の方法の実施形態では、対象は永続性心房細動に罹患していない。
【0144】
心房細動と関係する有害事象のリスクリスクを予測するための方法
本発明の方法はまた、有害事象のリスクを予測するための方法を企図している。
【0145】
一実施形態では、本明細書で明らかにされた有害事象のリスクは、心房細動と関係するいずれかの有害事象の予測であることができる。好ましくは、該有害事象は、心房細動の再発(心臓除細動後の心房細動の再発など)および脳卒中から選択される。適宜、(心房細動に罹患している)対象が将来、有害事象(脳卒中または心房細動の再発など)に罹患するリスクが予測されるものとする。
【0146】
さらに、心房細動と関係する該有害事象が、心房細動の既往歴を有していない対象における心房細動の発生であることが想定されている。
【0147】
特に好ましい実施形態では、脳卒中のリスクが予測される。
【0148】
適宜、対象における脳卒中のリスクを予測するための本発明の方法は、
a)対象からの試料中のDKK3の量を決定するステップと、
b)DKK3の量を基準量と比較し、それにより、脳卒中のリスクが予測されることになるステップとを含む方法を企図している。
【0149】
好ましくは、本明細書で使用される「リスクを予測すること」という用語は、対象が本明細書でいう有害事象に罹患することになる尤度を評価することを指す。通常、対象が該有害事象に罹患するリスクがある(およびしたがってリスクが上昇している)かまたはない(およびしたがってリスクが低減している)かが予測される適宜、本発明の方法は、該有害事象に罹患するリスクのある対象とリスクのない対象とを区別することを可能にする。さらに、本発明の方法は、リスクが低減した、平均の、および上昇した対象を区別することを可能にすることが想定されている。
【0150】
先に明らかにされたように、ある特定の時間枠内に該有害事象に罹患するリスク(および尤度)が予測されるものとする。本発明の一実施形態では、予測枠は、約3か月、約6か月、または約1年の期間である。別の好ましい一実施形態では、予測枠は、約5年の期間である(例えば、脳卒中の予測のため)。さらに、予測枠は、約6年の期間であることがある(例えば、脳卒中の予測のため)。あるいは、予測枠は約10年であることもある。また、予測枠は、1~10年の期間であることが想定されている。
【0151】
好ましくは、該予測枠は、本発明の方法の完了から計算される。より好ましくは、該予測枠は、検査される試料が入手された時点から計算される。当業者によって理解されるように、リスクの予測は、通常、対象の100%について正しいことを意図していない。しかしながら、この用語では、予測が、対象の統計的に有意な部分を適切かつ正確な様式で行われることができることが必要である。部分が統計的に有意であるかどうかは、さまざまな周知の統計評価ツール、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントのt検定、マン・ホイットニー検定などを使用して、当業者がすぐさま決定することができる。詳細は、Dowdy and Wearden,Statistics for Research,John Wiley&Sons,New York 1983において認められる。好ましい信頼区間は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%である。p値は、好ましくは、0.1、0.05、0.01、0.005、または0.0001である。
【0152】
好ましい実施形態では、「該有害事象に罹患するリスクを予測すること」という表現は、本発明の方法によって分析される対象が、該有害事象に罹患するリスクがある対象の群、または該有害事象(脳卒中など)に罹患するリスクがない対象の群のいずれかに割り当てられることを意味する。したがって、対象が該有害事象に罹患するリスクがあるかないかが予測される。本明細書で使用される場合、「該有害事象に罹患するリスクがある対象」は好ましくは、(好ましくは予測枠内の)該有害事象に罹患するリスクが上昇している。好ましくは、該リスクは、対象のコホートにおける平均リスクと比較して上昇している。本明細書で使用される場合、「該有害事象に罹患するリスクがない対象」は好ましくは、(好ましくは予測枠内の)該有害事象に罹患するリスクが低減している。好ましくは、該リスクは、対象のコホートにおける平均リスクと比較して低減している。該有害事象に罹患するリスクがある対象は好ましくは、約1年の予測枠内で、好ましくは少なくとも20%、またはより好ましくは少なくとも30%の心房細動の再発または発生などの該有害事象に罹患するリスクを有する。該有害事象に罹患するリスクがない対象は好ましくは、1年の予測枠内で、該有害事象に罹患する好ましくは12%未満、より好ましくは10%未満のリスクを有する。
【0153】
脳卒中の予測に関して、該有害事象に罹患するリスクがある対象は好ましくは、約5年の、または特に6年の予測枠内で、好ましくは少なくとも10%またはより好ましくは少なくとも13%の該有害事象に罹患するリスクを有する。該有害事象に罹患するリスクがない対象は好ましくは、約5年の、特に約6年の予測枠内で、好ましくは該有害事象に罹患する10%未満、より好ましくは8%未満、または最も好ましくは5%未満のリスクを有する。対象が抗凝固療法を受けていない場合、リスクがより高いことがある。これは当業者により考慮される。
【0154】
好ましくは、1つ(または複数)の基準量と比較して多い、対象からの試料中のDKK3の量(および場合によりナトリウム利尿ペプチドの量)は、心房細動と関係した有害事象のリスクのある対象を示す。および/または基準量と比較して少ない、対象からの試料中のDKK3(および場合によりナトリウム利尿ペプチドの量)は、心房細動と関係する有害事象のリスクがない対象を示す。
【0155】
好ましい実施形態では、基準量は、本明細書でいうような有害事象のリスクがある対象と、該有害事象のリスクがない対象とを区別することを可能にするものとする。好ましくは、該基準量は所定の値である。
【0156】
上述の方法の好ましい実施形態では、脳卒中のリスクが予測される。好ましくは、該脳卒中は心房細動と関係しているものとする。より好ましくは、脳卒中は心房細動によって引き起こされるものとする。
【0157】
好ましくは、脳卒中と心房細動の発作との間に時間的な関連性がある場合、脳卒中は心房細動と関係している。より好ましくは、脳卒中が心房細動によって引き起こされる場合、脳卒中は心房細動と関係している。最も好ましくは、脳卒中が心房細動によって引き起こされる可能性がある場合、脳卒中は心房細動と関係している。例えば、心塞栓性脳卒中(しばしば塞栓性脳卒中または血栓塞栓性脳卒中ともいう)は、心房細動によって引き起こされる可能性がある。好ましくは、AFと関係する脳卒中は、経口抗凝固によって予防することができる。
【0158】
したがって、予測される脳卒中は、好ましくは心塞栓性脳卒中である。
【0159】
また好ましくは、検査される対象が心房細動に罹患している、および/またはその既往歴を有する場合、脳卒中は心房細動と関係していると見なされる。また、一実施形態では、対象が心房細動に罹患していると疑われる場合、脳卒中は心房細動と関係していると見なすことができる。
【0160】
「比較すること」、「量」、「対象」、および「決定すること」などの用語は、本明細書の他の箇所で定義されている。定義は、適宜適用される。例えば、試料は、好ましくは、血液、血清または血漿の試料である。
【0161】
有害事象(脳卒中など)を予測する上述の方法の好ましい一実施形態では、検査される対象は、心房細動に罹患している。より好ましくは、対象は、心房細動の既往歴を有する。有害事象を予測するための方法に従って、対象は好ましくは、永続性心房細動に、より好ましくは持続性心房細動に、および最も好ましくは発作性心房細動に罹患している。
【0162】
有害事象を予測する方法の一実施形態では、心房細動に罹患している対象は、試料が入手されたとき、心房細動の発作を経験している。有害事象を予測する方法の別の実施形態では、心房細動に罹患している対象は、試料が入手されたときに心房細動の発作を経験していない(したがって、正常な洞調律を有するものとする)。さらに、リスクが予測される対象は、抗凝固療法中であることがある。
【0163】
有害事象を予測する方法の別の実施形態では、検査される対象は、心房細動の既往歴を有していない。特に、対象は心房細動に罹患していないことが想定されている。
【0164】
本発明の基礎となる研究では、DKK3の決定により、対象についての脳卒中の臨床リスクスコアの予測精度を改善することができることがさらに示されている。したがって、脳卒中の臨床リスクスコアの決定とDKK3の決定との組み合わせにより、DKK3の決定または脳卒中の臨床リスクスコアの決定単独と比較して、脳卒中のさらにより信頼性の高い予測が可能となる。
【0165】
適宜、脳卒中のリスクを予測するための方法は、DKK3の量を脳卒中の臨床リスクスコアと組み合わせることをさらに含んでもよい。DKK3の量と臨床的リスクスコアとの
組み合わせに基づいて、検査対象の脳卒中のリスクが予測される。
【0166】
上述の方法の一実施形態では、この方法は、DKK3の量と基準量との比較をさらに含む。この場合、比較の結果は、脳卒中の臨床リスクスコアと組み合わされる。
【0167】
適宜、本発明は、特に、対象における脳卒中のリスクを予測するための方法であって、
a)対象からの試料中のDKK3の量を決定するステップと、
b)DKK3の量を脳卒中の臨床リスクスコアと組み合わせることにより、該対象の脳卒中のリスクが予測されることになるステップとを含む。
【0168】
本発明の方法に従って、対象は、既知の脳卒中の臨床リスクスコアを有する対象であることが想定されている。適宜、脳卒中の臨床リスクスコアについての値は、対象について既知である。
【0169】
あるいは、この方法は、脳卒中の臨床リスクスコアについての値を入手することまたは提供することを含んでもよい。好ましくは、この値は数値である。一実施形態では、脳卒中の臨床リスクスコアは、医師が利用可能な臨床に基づくツールの1つによって生成される。好ましくは、この値は、対象についての脳卒中の臨床リスクスコアについての値を決定することによって提供されたものである。
【0170】
より好ましくは、この値は、患者記録データベースおよび対象の病歴から入手される。それゆえ、スコアについての値はまた、対象の病歴または公開データを使用して決定することもできる。
【0171】
本発明に従って、DKK3の量は、脳卒中の臨床リスクスコアと組み合わされる。これは、好ましくは、DKK3の量についての値が、脳卒中の臨床リスクスコアと組み合わされることを意味する。適宜、これらの値は、対象が脳卒中に罹患するリスクを予測するために機能的に組み合わされる。値を組み合わせることにより、単一の値を計算することができ、それ自体を予測に使用することができる。
【0172】
脳卒中の臨床リスクスコアは、当技術分野において周知である。例えば、該スコアは、その全体的な開示内容に関して参照により本明細書とともに組み込まれるKirchhof P.et al.,(European Heart Journal 2016;37:2893-2962)において説明されている。一実施形態では、スコアは、CHA2DS2-VASc-Scoreである。別の実施形態では、スコアは、CHADS2Scoreである。(Gage BF.Et al.,JAMA,285(22)(2001),pp.2864-2870)およびABCスコア(Hijazi Z.et al.,Lancet 2016;387(10035):2302-2311)
【0173】
脳卒中の臨床リスクスコアの予測精度を改善するための方法
本発明はさらに、対象についての脳卒中の臨床リスクスコアの予測精度を改善するための方法であって、
a)試料中のDKK3の量を決定するステップと、
b)DKK3の量の値を脳卒中の臨床リスクスコアと組み合わせ、それにより、該脳卒中の臨床リスクスコアの予測精度が改善されるステップとを含む方法に関する。
【0174】
この方法は、c)ステップb)の結果に基づいて、該脳卒中の臨床リスクスコアの予測精度を改善するさらなるステップを含んでもよい。
【0175】
先に心房細動を評価する、特に有害事象(脳卒中など)のリスクを予測する方法に関連
して本明細書に付与された定義および説明は好ましくは、上述の方法に同様に当てはまり、例えば、対象は、既知の脳卒中の臨床リスクスコアを有する対象であることが想定されている。あるいは、この方法は、脳卒中の臨床リスクスコアについての値を入手することまたは提供することを含んでもよい。
【0176】
本発明に従って、DKK3の量は、脳卒中の臨床リスクスコアと組み合わされる。これは、好ましくは、DKK3の量についての値が、脳卒中の臨床リスクスコアと組み合わされることを意味する。適宜、値を機能的に組み合わせて、該脳卒中の臨床リスクスコアの予測精度を改善する。
【0177】
心電図検査(ECG)に供されるものとする対象を識別するための方法
本発明の方法のこの実施形態に従って、バイオマーカーで検査される対象が心電図検査(ECG)、すなわち心電図検査評価に供されるものとするかどうかが評価されるものとする。該評価は、該対象において、診断のために、すなわち、AFの存在または非存在を検出するために実施されるものとする。
【0178】
本明細書で使用される「対象を識別すること」という用語は好ましくは、ECGへ供されるものとする対象を識別するために対象の試料中のDKK3の量に関して生成された情報またはデータを使用することを指す。識別された対象は、AFに罹患している尤度が上昇している。ECG評価は確認として行われる。
【0179】
心電図検査(略してECG)は、適切なECGによって心臓の電気的活動を記録するプロセスである。ECG装置は、心臓によって生成され、体全体から皮膚に広がる電気信号を記録する。記録は、検査対象の皮膚をECG装置によって備えられている電極と接触させることによって達成された電気信号のものである。記録を入手するプロセスは、非侵襲的でありかつリスクがない。ECGは、心房細動の診断のために、すなわち、検査対象における心房細動の存在または非存在の評価のために行われる。本発明の方法の実施形態では、ECG装置は、リードが1本の装置(リードが1本の携帯式ECG装置など)である。別の好ましい実施形態では、ECG装置は、Holterモニターなど、リードが12本のECG装置である。
【0180】
好ましくは、1つ(または複数)の基準量と比較して多い、検査対象からの試料中のDKK3の量(および場合によりナトリウム利尿ペプチドの量)は、ECGへ供されるものとする対象について示しており、および/または1つ(または複数)の基準量と比較して少ない、対象からの試料中のDKK3の量(および場合によりナトリウム利尿ペプチドの量)は、ECGに供されないものとする対象について示す。
【0181】
好ましい実施形態では、基準量は、ECGに供されるものとする対象と、ECGに供されないものとする対象とを区別することを可能にするものとする。好ましくは、該基準量は所定の値である。
【0182】
心房細動のための療法の評価のための方法
本明細書で使用される場合、「心房細動のための療法を評価すること」という用語は、好ましくは、心房細動を処置することを目的とする療法の評価を指す。
【0183】
評価される療法は、心房細動を処置することを目的とするいずれかの療法であることができる。好ましくは、該療法は、少なくとも1つの抗凝固薬の投与、調律制御、速度制御、心臓除細動および切除からなる群から選択される。該療法は当技術分野で周知であり、例えば、その全体が参照により本明細書とともに組み込まれるFuster V et al.Circulation 2011;123:e269-e367において総説さ
れている。
【0184】
一実施形態では、この療法は、少なくとも1種の抗凝固薬の投与である。少なくとも1種の抗凝固薬を投与することは、血液の凝固および関連する脳卒中を低減または予防することを目的とするものとする。一実施形態では、少なくとも1種の抗凝固薬は、ヘパリン、ワルファリンまたはジクマロールなどのクマリン誘導体、特にワルファリンまたはジクマロール、組織因子経路阻害薬(TFPI)、抗トロンビンIII、第IXa因子阻害薬、第Xa因子阻害薬、第Va因子および第VIIIa因子の阻害薬、ならびにトロンビン阻害薬(抗IIa型)からなる群から選択される。
【0185】
好ましい実施形態では、心房細動のための療法の評価は、該療法の監視である。この実施形態では、基準量は、好ましくは、早期に入手された試料中の(すなわち、ステップa)における検査試料に先立って入手された試料中の)DKK3についての量である。
【0186】
場合により、DKK3の量に加えて、ナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量が決定される。
【0187】
適宜、本発明は、対象における心房細動のための療法をモニターするための方法に関するものであり、該対象は好ましくは心房細動に罹患しており、該方法は、
a)対象からの試料中のDKK3の量(および場合によりナトリウム利尿ペプチドの量)を決定するステップと、
b)DKK3の量を基準量と比較するステップであって、該基準量が、ステップa)における試料に先立って該対象から入手された試料中のDKK3の量であるステップと、場合により、ナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量を基準量と比較するステップであって、該基準量が、ステップa)における試料に先立って、該対象から入手された試料中のナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量であるステップとを含む。
【0188】
ステップa)における試料はまた、本明細書では「検査試料」ともいい、ステップb)における試料は、本明細書では「基準試料」ともいう。
【0189】
本明細書で使用される「監視」という用語は、好ましくは、本明細書の他の箇所でいうところの療法の効果を評価することに関する。したがって、療法(抗凝固療法など)の有効性が監視される。
【0190】
上述の方法は、ステップc)において実施した比較ステップの結果に基づいて療法を監視するさらなるステップを含んでもよい。当業者によって理解されるように、リスクの予測は、通常、対象の100%について正しいことを意図していない。しかしながら、この用語では、予測が、対象の統計的に有意な部分を適切かつ正確な様式で行われることができることが必要である。したがって、実際の監視は、確認などのさらなるステップを含んでもよい。
【0191】
好ましくは、本発明の方法を実施することによって、対象が該療法に応答するかどうかを評価することができる。対象の容態が第1の試料を入手することと第2の試料を入手することの間に状態が改善する場合、対象は療法に反応している。好ましくは、容態が、第1の試料を入手することと第2の試料を入手することとの間に容態が悪化した場合、対象は療法に応答していない。
【0192】
好ましくは、基準試料は、該療法の開始に先だって入手される。より好ましくは、試料は、該療法の開始に先立って1週間以内に、特に2週間以内に入手される。しかしながら
、また、基準試料が、該療法の開始後(だが、検査試料が得られる前)に入手されてもよい入手されることも企図されている。この場合、進行中の療法は監視される。
【0193】
したがって、検査試料は、基準試料の後に入手されるものとする。検査試料が、該療法の開始後に入手されるものとすることは理解されることになる。
【0194】
その上、検査試料は、基準試料を入手した後の妥当な期間の後に入手されることが特に企図されている。本明細書でいうバイオマーカーの量は、即座に変化しない(例えば、1分以内または1時間以内)ことが理解されることになるそれゆえ、この文脈における「妥当な」は、その間隔がバイオマーカー(複数可)を調整することを可能にする、第1の試料を入手することと検査試料を入手することとの間隔を指す。それゆえ、検査試料は、好ましくは、該基準試料の少なくとも1か月後、少なくとも3か月、または特に、該基準試料の少なくとも6か月後に入手される。
【0195】
好ましくは、基準試料中のバイオマーカー(複数可)の量(複数可)と比較して、検査試料中のバイオマーカー(複数可)の、すなわちDKK3ならびに場合によりナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量が増加すること、より好ましくは有意に増加すること、および最も好ましくは統計的に有意に増加することは、療法に応答する対象を示している。したがって、療法は効率的である。また、好ましくは、基準試料中のバイオマーカー(複数可)の量(複数可)と比較した、検査試料中のバイオマーカー(複数可)の量(複数可)が減少すること、より好ましくは有意に減少すること、および最も好ましくは統計的に有意に減少することは、療法に応答しない対象を示している。したがって、療法は効率的ではない。
【0196】
療法が心房細動の再発のリスクを低減する場合、対象は療法に応答すると見なされる。療法が心房細動の再発の対象のリスクを低減しない場合、対象は療法に応答していないものと見なされる。
【0197】
一実施形態では、対象が療法に応答していない場合、療法の強度は上昇している。その上、対象が療法に応答している場合、療法の強度が低下していることが想定されている。例えば、療法の強度は、投与される薬剤の薬用量を増加させることによって上昇させることができる。例えば、療法の強度は、投与される薬剤の薬用量を減少させることによって低下させることができる。
【0198】
別の好ましい実施形態では、心房細動のための療法の評価は、心房細動のための療法の誘導案内となる。本明細書で使用される「誘導案内」という用語は、好ましくは、療法中のバイオマーカー、すなわちDKK3の決定に基づいて、経口抗凝固の用量を増加させることまたは減少させることなど、療法の強度を調整することに関する。
【0199】
さらに好ましい実施形態では、心房細動についての療法の評価は、心房細動についての療法の層別である。したがって、心房細動のためのある特定の療法に対して適格である対象が識別されるものとする。本明細書で使用される「層別」という用語は、好ましくは、特定の薬物または手順の特定のリスク、識別された分子経路、および/または予想される有効性に基づいて適切な療法を選択することに関する。検出されるリスクに応じて、特に不整脈に関する症状が最小限またはまったくない患者は、心室拍数、心臓除細動または切除の制御に適格となり、さもなくば抗血栓症療法のみを受けるであろう。
【0200】
「有意な」および「統計的に有意な」という用語は、当業者に公知である。したがって、増加または減少が有意であるか統計的に有意であるかは、さまざまな周知の統計評価ツールを使用して当業者によってすぐさま決定することができる。例えば、有意な増加また
は減少とは、少なくとも10%の、特に少なくとも20%の増加または減少である。
【0201】
本発明はさらに、心房細動の評価を支援する方法であって、
a)心房細動を評価する方法に関連して、本明細書でいう対象から試料を入手するステップと、
b)該試料中のバイオマーカーDKK3の量、ならびに場合によりナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量を決定するステップと、
c)バイオマーカーDKK3の決定された量、ならびに場合によりナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の決定された量に関する情報を対象の主治医に提供し、それにより該対象における心房細動の評価を支援するステップとを含む方法に関する。
【0202】
主治医は、バイオマーカー(複数可)の決定を依頼した医師であるものとする。上述の方法は、心房細動の評価において主治医を支援するものとする。したがって、この方法は、心房細動を評価する方法に関連して先にいう診断、予測、監視、区別、識別を包含していない。
【0203】
試料を入手する上述の方法のステップa)は、対象からの試料の引抜きを包含していない。好ましくは、試料は、該対象からの試料を受け取ることによって入手される。したがって、試料サンプルは、送達された可能性がある。
【0204】
一実施形態では、先の方法は、脳卒中の予測を支援する方法であって、
a)心房細動を評価する方法に関連して、特に心房細動を予測する方法に関連して、本明細書でいう対象からの試料を入手するステップと、
b)該試料中のバイオマーカーDKK3の量、ならびに場合によりナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量を決定するステップと、
c)バイオマーカーDKK3の決定された量に関する、場合によりナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の決定された量に関する情報を対象の主治医に提供し、それにより、脳卒中の予測を支援するステップとを含む方法である。
【0205】
本発明はさらに、
a)バイオマーカーDKK3についての検査、ならびに場合によりナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1についての検査を提供することと、
b)心房細動の評価における該検査によって入手されるまたは入手可能な検査結果の使用に対する説明書を提供することと、を含む方法に関する。
【0206】
上述の方法の目的は、好ましくは、心房細動の評価を支援することである。
【0207】
この説明書は、本明細書に説明する心房細動を評価する方法を実行するためのプロトコルを含むものとする。さらに、説明書は、DKK3についての基準量についての少なくとも1つの値と、場合によりナトリウム利尿ペプチドについての基準量についての少なくとも1つの値とを含むものとする。
【0208】
「検査」とは、好ましくは、心房細動を評価する方法を実行するように適合したキットである。「キット」という用語については、本明細書で後に説明する。例えば、該キットは、バイオマーカーDKK3についての少なくとも1種の検出剤と、場合によりナトリウム利尿ペプチドについての少なくとも1種の検出剤とを含むものとする。この2種のバイオマーカーについての検出剤は、単一のキットにおいてまたは2つの別個のキットにおいて提供することができる。
【0209】
該検査によって入手されたまたは入手可能な検査結果は、バイオマーカー(複数可)の
量についての値である。
【0210】
一実施形態では、ステップb)は、(本明細書の他の箇所で説明されるように)脳卒中の予測における該検査によって入手されるまたは入手可能な検査結果を使用するための説明書を提供することを含む。
【0211】
その上、本発明は、心房細動を評価するための、対象からの試料中の
i)バイオマーカーDKK3ならびに場合によりナトリウム利尿ペプチドおよび/もしくはESM1ならびに/または
ii)DKK3に特異的に結合する少なくとも1種の検出剤、および場合によりナトリウム利尿ペプチドに特異的に結合する少なくとも1種の検出剤の使用に関する。
【0212】
一実施形態では、本発明は、脳卒中を予測するための、対象からの試料中の
i)バイオマーカーDKK3ならびに場合によりナトリウム利尿ペプチドおよび/もしくはESM1ならびに/または
ii)DKK3に特異的に結合する少なくとも1種の検出剤、および場合によりナトリウム利尿ペプチドに特異的に結合する少なくとも1種の検出剤の使用に関する。
【0213】
本発明はさらに、対象からの試料中の
i)バイオマーカーDKK3および/または
ii)DKK3に特異的に結合する少なくとも1種の検出剤の、
脳卒中の臨床リスクスコアとの組み合わせでの使用であって、
対象が脳卒中に罹患しているリスクを予測するための、使用に関する。
【0214】
また、本発明は、脳卒中の臨床リスクスコアの予測精度を改善するための、i)バイオマーカーDKK3および/またはii)対象からの試料中のDKK3に特異的に結合する少なくとも1種の検出剤の使用に関する。
【0215】
「試料」、「対象」、「検出剤」、「DKK3」、「特異的に結合すること」、「心房細動」、および「心房細動を評価すること」など、上述の使用に関連していう用語は、心房細動を評価するための方法に関連して定義されている。定義および説明は、適宜、適用される。
【0216】
好ましくは、上述の使用は、インビトロでの使用である。その上、検出剤は、好ましくは、モノクローナル抗体(またはその抗原結合フラグメント)などの抗体である。
【0217】
さらに、本発明の研究において、対象からの試料中のDKK3の量の決定が、心不全のおよび心不全と関係する心臓の構造的または機能的な異常の診断を可能にすることが示されている。そのため、本発明はまた、バイオマーカーDKK3に基づいて、心不全および/または心不全と関係する少なくとも1つの構造的または機能的な異常を診断するための方法も企図している。
【0218】
本明細書で先に付与した定義は、以下に対して必要な変更を加えて適用される(別段に述べられている場合を除く)。
【0219】
そのため、本発明はさらに、対象における心不全および/または心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常を診断するための方法であって、
a)対象からの試料中のDKK3の量を決定するステップと、
b)DKK3の量を基準量と比較し、それにより、心不全および/または心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常が診断されることになるステッ
プとを含む方法に関する。
【0220】
本明細書で使用される「診断すること」という用語は、本発明の方法に従っていうところの対象が、心不全および/または心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常に罹患しているかどうかを評価することを意味する。一実施形態では、対象は、心不全および/または心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常に罹患していることが診断される。代替の実施形態では、対象は、心不全および/または心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常(心不全ならびに/または心臓の少なくとも1つの構造的なおよびもしくは機能の異常の除外)に罹患していないことが診断される。
【0221】
対象が心不全および/または該少なくとも1つの異常に罹患しているかどうかの実際の診断は、診断の確認などのさらなるステップを含んでもよい。したがって、心不全および/または心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常の診断は、心不全のおよび/または少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常の診断の支援として理解される。そのため、本発明の文脈における「診断すること」という用語はまた、対象が心不全および/または該少なくとも1つの異常に罹患しているかどうかを医師が評価するのを支援することも包含する。
【0222】
「心不全」(略して「HF」)という用語は、当業者に周知である。本明細書で使用される場合、この用語は、好ましくは、当業者に公知の心不全の明白な兆候を伴う、心臓の収縮期性機能および/または拡張期性機能の障害に関する。好ましくは、本明細書でいう心不全はまた、慢性心不全でもある。本発明による心不全は、顕性心不全および/または進行性心不全を含む。顕性心不全では、対象は、当業者に公知の心不全の症状を示す。
【0223】
本発明の一実施形態では、「心不全」という用語は、左室駆出率(HFrEF)が低減した心不全を指す。
【0224】
本発明の別の実施形態では、「心不全」という用語は、左室駆出率(HFpEF)が保存された心不全を指す。
【0225】
HFはさまざまな重症度に分類することができる。
【0226】
NYHA(ニューヨーク心臓協会)の分類によると、心不全患者は、NYHAクラスI、II、III、およびIVに属するものとして分類される。心不全に罹患している患者は、心膜、心筋、冠循環、または心臓弁の構造的および機能的な変化をすでに経験している。この患者は、健康状態を完全に回復することができないことになっているので、処置を必要としている。NYHAクラスIの患者には、心血管疾患の明らかな症状はないが、機能障害の客観的な証拠がすでにある。NYHAクラスIIの患者は、身体活動のわずかな制限がある。NYHAクラスIIIの患者は、身体活動の著しい制限を示している。NYHAクラスIVの患者は、不快感なしでいかなる身体活動も行うことができない。これらの患者は、安静時に心不全の症状を示す。
【0227】
この機能分類は、米国心臓病学会および米国心臓協会によるさらに最近の分類によって補完されている(J.Am.Coll.Cardiol.2001;38;2101-2113を参照されたく、2005年に更新されたJ.Am.Coll.Cardiol.2005;46;e1-e82を参照されたい)。4つの病期A、B、C、およびDが定義されている。病期AおよびBはHFではないが、「真に」HFを発症する前に患者を早期に識別するのに役立つと考えられている。病期AおよびBの患者は、HFの発症についての危険因子を持つ患者として最もよく定義される。例えば、左心室(LV)機能の障害
、肥大、または幾何学的形状についての心腔の歪みをまだ実証していない冠状動脈疾患、高血圧、または真性糖尿病の患者は、病期Aと見なされるであろうのに対し、無症候性であるがLV肥大および/またはLVの機能障害のある患者は、病期Bといわれるであろう。次に、病期Cは、基礎となる構造的心疾患と関係するHFの現在または過去の症状のある患者(HFの患者の大部分)を示しており、病期Dは、真に難治性のHF患者をいう。
【0228】
本明細書で使用される場合、「心不全」という用語は、好ましくは、先にいったACC/AHA分類の病期A、B、CおよびDを含む。また、この用語には、NYHAクラスI、II、III、およびIVが含まれる。したがって、対象は、心不全の典型的な症状を示すことがあったりなかったりする。
【0229】
好ましい実施形態では、「心不全」という用語は、先にいったACC/AHA分類による心不全病期A、または特に心不全病期Bを指す。これらの早期の病期、特に病期Aの識別は、不可逆的な損傷が発生する前に処置が開始され得るので、有利である。
【0230】
心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的または機能的な異常は、好ましくは、心筋、心外膜、弁、または冠循環の機能的および/もしくは構造的な損傷、駆出能もしくは充填能の障害、多くの場合、収縮期性もしくは拡張期性の障害、左心室の幾何学的形状の変化、幾何学的形状上の心腔のひずみと関係する高血圧、左心室肥大、左心室肥大随伴性もしくは非随伴性の左心室構造変化、中隔径の増大、後壁径の増大、心筋肥大の求心性増大、心筋肥大の遠心性増大、拡張期左心室機能障害から選択される。
【0231】
本発明の一実施形態では、心不全と関係する心臓の構造的または機能的な異常は、左心室肥大である。
【0232】
本明細書の他の箇所で明らかにしたように、バイオマーカーのDKK3は、心房細動以外のさまざまな疾患および障害において、上昇する可能性がある。本発明の一実施形態では、対象がこのような疾患および障害に罹患していないことが想定されている。例えば、対象は、慢性腎臓病、糖尿病、癌、冠動脈疾患、高血圧、および/または透析を必要とする腎不全に罹患していないものとすることが想定されている。さらに、対象は脳卒中の病歴を有していないことが想定されている。
【0233】
心不全および/または心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常を診断する方法に従って検査されることになる対象は、好ましくは心房細動に罹患していない。しかしながら、また、対象が心房細動に罹患していることも想定されている。「心房細動」という用語は、心不全を評価する方法に関連して定義される。
【0234】
好ましくは、検査されることになる対象は、心不全および/または心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常に罹患していることが疑われる。
【0235】
「基準量」という用語は、心房細動を評価する方法に関連して定義されている。心不全を診断するための方法において適用される基準量、および/または心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的または機能的な異常から適用される基準量は、原則として、先に説明したように決定することができる。
【0236】
好ましくは、基準量と比較して高い、対象からの試料中のDKK3の量は、心不全におよび/または心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常に罹患している対象を示し、ならびに/あるいは、この中で、基準量と比較して低い、対象からの試料中のDKK3の量が、心不全におよび/または心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常に罹患していない対象を示す。
【0237】
対象における心不全および/または心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常を診断するための方法の実施形態では、ステップa)は、対象からの試料中のナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量の決定をさらに含む。この方法のステップb)では、このように決定されたこのマーカーの量を基準量と比較する。
【0238】
好ましくは、NT-プロBNP/DKK3の比は、本明細書で以下に明らかにされるように、心房細動由来の心不全に罹患している対象を区別することを示す。
【0239】
その上、本発明は、心不全ならびに/または心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常を診断するための、対象からの試料中の
i)バイオマーカーDKK3ならびに場合によりナトリウム利尿ペプチドおよび/もしくはESM1ならびに/または
ii)DKK3に特異的に結合する少なくとも1種の検出剤、および場合によりナトリウム利尿ペプチドに特異的に結合する少なくとも1種の検出剤の使用に関する。
【0240】
本発明はさらに、対象における心不全ならびに/または心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常の診断を支援する方法であって、
a)対象における心不全ならびに/または心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常を診断する方法に関連して本明細書でいう対象から試料を入手することと、
b)該試料中のバイオマーカーDKK3の量、ならびに場合によりナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量を決定するステップと、
c)バイオマーカーDKK3の決定された量、ならびに場合によりナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の決定された量に関する情報を対象の主治医に提供し、それにより該対象における心不全ならびに/または心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常の診断を支援するステップとを含む方法に関する。
【0241】
主治医とは、バイオマーカー(複数可)の決定を依頼した医師である。上述の方法は、心房細動の評価において主治医を支援するものとする。したがって、この方法は、心不全および/または心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常を診断する方法に関連して先にいった診断、予測、監視、区別、識別を包含していない。
【0242】
試料を入手する上述の方法のステップa)は、対象からの試料の引抜きを包含していない。好ましくは、試料は、該対象からの試料を受け取ることによって入手される。したがって、試料は、送達されたものとする。
【0243】
本発明はさらに、心不全および/または心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常の診断において、
a)バイオマーカーDKK3についての検査、および場合によりナトリウム利尿ペプチドの検査を提供することと、
b)該検査(複数可)によって入手されたまたは入手可能な検査結果を使用するための説明書を提供することとを含む方法に関する。
【0244】
上述の方法の目的は、好ましくは、心不全および/または心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常の診断を支援することである。
【0245】
説明書には、本明細書で先に説明したような心不全および/または心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常を診断する方法を実行するためのプロトコルが含まれているものとするさらに、説明書は、DKK3についての基準量についての少なくとも1つ
の値と、場合によりナトリウム利尿ペプチドについての基準量についての少なくとも1つの値とを含むものとする。
【0246】
「検査」とは、好ましくは、心不全および/または心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常を診断する方法を実行するように適合したキットである。「キット」という用語については、本明細書で後に説明する。例えば、該キットは、バイオマーカーDKK3についての少なくとも1種の検出剤と、場合によりナトリウム利尿ペプチドについての少なくとも1種の検出剤とを含むものとする。この2種のバイオマーカーについての検出剤は、単一のキットにおいてまたは2つの別個のキットにおいて提供することができる。
【0247】
該検査によって入手されたまたは入手可能な検査結果は、バイオマーカー(複数可)の量についての値である。
【0248】
本発明はまた、キットにも関する。好ましくは、該キットは、本発明の方法、すなわち心房細動を評価するための方法、あるいは心不全および/または心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常を診断するための方法を実施するために適合している。該キットは、DKK3を特異的に結合する少なくとも1つの作用物質を含むものとする。好ましい実施形態では、該キットはさらに、ナトリウム利尿ペプチド(NT-プロBNPなど)および/またはESM1に特異的に結合する作用物質を含むものとする。場合により、該キットは、該方法を実行するための説明書を含む。
【0249】
本明細書で使用される「キット」という用語は、好ましくは、別個にまたは単一の容器内に提供される、上述の構成要素の集合を指す。容器はまた、本発明の方法を実施するための説明書も含む。これらの説明書は、マニュアルの形式であってもよく、または本発明の方法でいう計算および比較を実行して、コンピュータまたはデータ処理装置に実装されるときに適宜、評価または診断を確立することができるコンピュータプログラムコードによって提供されてもよい。コンピュータプログラムコードは、光学記憶媒体(例えば、コンパクトディスク)などのデータ記憶媒体もしくはデータ記憶装置上で、またはコンピュータもしくはデータ処理装置上で直接、提供されてもよい。その上、キットは、好ましくは、較正目的のためのバイオマーカーDKK3についての標準量を含んでもよい。好ましい実施形態では、キットはさらに、較正目的のためのナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1についての標準量を含む。
【0250】
一実施形態では、該キットは、インビトロで心房細動を評価するために使用される。
【0251】
別の実施形態では、該キットは、心不全および/または心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常をインビトロで診断するために使用される。
【0252】
DKK3とナトリウム利尿ペプチドとの比の計算。
心房細動および心不全は、冠動脈疾患などの疾患の発症の素因となる共通の危険因子を共有している。また、心不全の患者はしばしば心房細動を発症し、逆もまた同様であるということも確立された知識である。
【0253】
実施例は、DKK3が心房細動および心不全の両方についてのマーカーであることを示している(
図6を参照されたい)。したがって、バイオマーカーは、心不全の診断のために、および心房細動の評価のために使用することができる。例えば、心不全または心房細動の存在は、(先に説明したように)DKK3の決定に基づいて対象において除外することができる。
【0254】
DKK3のレベルが基準量と比較して高い場合、対象は原則として心房細動もしくは心不全、またはその両方に罹患している可能性がある。この場合、心不全と心房細動とを区別することが有利であろう。この区別は、対象からの試料中のDKK3の量に対する、対象からの試料中のナトリウム利尿ペプチド(例えば、NT-プロBNPまたはBNP)および/またはESM1の量の比を計算することによってなされ得る。
【0255】
心房細動に罹患している対象からの試料中ではナトリウム利尿ペプチドの量は多いが、心不全患者からの試料中のナトリウム利尿ペプチドの量は、概して、心房細動の患者におけるよりも非常に多い。例えば、心不全ではなく心房細動に罹患している対象からの試料中では、本発明の基礎となる研究において、最大3000pg/mlのNT-プロBNPのレベルが観察された。対照的に、心不全に罹患している対象は、最大15000pg/mlのNT-プロBNPレベルを有していた。
【0256】
ナトリウム利尿ペプチド、特にNT-プロBNPのレベルの差により、心房細動に罹患している対象では、および心不全に罹患している対象では、DKK3レベルの高い対象において(すなわち、基準量と比較して多い、試料中のDKK3量を有する対象において)、心不全と心房細動とを区別することができる。
【0257】
好ましくは、心不全または心房細動の診断は、先に説明した心房細動を評価する方法のステップa)において決定したような、あるいは心不全および/または心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常を診断する方法のステップa)において決定したようなDKK3の量に対する、ナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量の比を計算するさらなるステップを実行することによって、さらに支援または検証される。さらなるステップでは、該計算された比は、(ナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量とDKK3の量との)基準比と比較される。該基準比は、心不全と心房細動との区別を可能にするものとする(特に、DKK3の量が多い対象)。
【0258】
したがって、心房細動を評価する方法(心房細動を診断する方法など)ならびに心不全および/または心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常を診断する方法はいずれも、
-ステップa)において決定されたDKK3の量に対する、ステップにおいて決定されたナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量の比を計算するさらなるステップと、
-該計算された比を基準比と比較するさらなるステップとを含むことができる。
【0259】
計算ステップは好ましくは、ステップc)であり、比較ステップは好ましくは、ステップd)である。
【0260】
ステップc)およびステップd)が実行される場合、バイオマーカーDKK3ならびにナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量は、心房細動を評価するための方法ならびに心不全を診断するための方法のステップa)において決定される。しかしながら、この場合、ステップb)で、ナトリウム利尿ペプチドおよび/またはESM1の量を基準量と比較することは必要とされない。本発明の方法は、ステップb)において、この比較を用いておよび用いることなく実行することができる。
【0261】
それにより、心房細動の診断あるいは心不全および/または心不全と関係する心臓の少なくとも1つの構造的もしくは機能的な異常の診断が検証、確認、または支持される。特に、この比により、偽陽性の数を低減させることができる。
【0262】
先に述べた計算および比較のステップは、好ましくは、ステップa)において決定した
ような試料中のDKK3の量が基準量と比較して多い対象において実施される。
【0263】
心房細動を評価する方法に関して、特に心房細動の診断に関して、以下が適用される。好ましくは、基準比と比較して低い比は、指標であり、すなわち、心房細動に罹患している対象をさらに示す。そのため、このような比は、ステップa)およびb)に基づく心房細動の診断を確認する。基準比と比較して高い比は、心不全を示している。したがって、このような比は、対象が心房細動に罹患していない可能性があることを示している。したがって、心房細動の診断のためのECGなどのさらなる診断方法が推奨または開始されるものとする。
【0264】
心不全を診断する方法に関しては、以下が適用される。好ましくは、基準比と比較して高い比は、心不全に罹患している対象を示している。したがって、高い比は、ステップa))およびb)に基づく心不全の診断を確認している。基準比と比較して低い比は、対象が心不全ではないという診断を示している。したがって、このような比は、対象が心房細動に罹患していないことを示している。
【0265】
したがって、本発明は、対象からの試料中のDKK3およびNT-プロBNPの量を決定するステップと、DKK3およびNT-プロBNPの量を比と比較するステップとを含む、対象において両方の疾患を診断し、該危険因子を検出するための方法を報告する。心不全に罹患していると疑われる対象は、心房細動に罹患している対象と比較して、NT-プロBNP/DKK3の比が高いものとする。
【0266】
本明細書で引用されたすべての参考文献は、その全体の開示内容および本明細書で具体的に言及された開示内容に関して、参照により本明細書で組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0267】
図面は以下を示す。
【
図1】ベースラインDKK3測定値≦28NPX対>28NPXによって定義された、2つの群についての重みつきカプラン・マイヤー生存推定値。
【
図2】個人におけるDKK3の差次的発現。マッピングコホートのRNA配列によって評価されたAFib対SRの組織試料。持続性AFにおけるDKK3は、個人において1.496倍高く発現している。SRと比較したAF(FDR=0,0001)。
【
図3】予測因子AFib下位パネルにおけるDKK3の診断値、AUC=0.66。AFの診断。
【
図4】GISSI AF AFib下位パネルの診断値、曲線下面積(24週間)=0.64、曲線下面積(52週間)=0,65。AFの診断。
【実施例0268】
本発明は、以下の実施例によって単に説明される。該実施例は、いかなる場合でも、本発明の範囲を制限する様式で解釈されないものとする。
【0269】
実施例1:AF患者の心臓組織におけるDKK3の差次的発現
差次的DKK3発現レベルは、n=40の試料の右心房付属器からの心筋組織試料において決定した。
【0270】
RNA配列分析
CABGまたは弁手術のために、心房組織を開胸手術中に採取した。AFまたはSR(対照)の証拠を、同時心内膜心外膜高密度活性化マッピングを使用して手術中に生成した。AF患者および対照は、性別、年齢、共存疾患に関して一致していた。
【0271】
心房組織試料を
・ AF患者、n=11個の試料
・ SRにおける対照患者、n=29個の試料
について調製した
【0272】
DKK3の差次的発現は、アルゴリズムRSEMおよびDESEQ2を適用したRNA配列分析において決定した。
【0273】
図2に示すように、DKK3の発現は、
29人の洞調律対照に対して、持続性AFの11人の患者
の分析された心房組織において上方調節されていることが認められた。
【0274】
発現の倍数変化(FC)は、1.496であった。FDR(偽陽性率)は、0.00001であった。
DKK3の発現の変化は、損傷した末端器官である心房組織において決定した。DKK3mRNAレベルを、心房組織の高密度マッピングの結果と比較した。DKK3mRNAレベルの上昇は、電気的マッピングを特徴とするような伝導障害を用いて心房組織試料において検出した。伝導障害は、脂肪浸潤によってまたは間質性線維症によって引き起こされることがある。心房細動に罹患している患者の心房組織において観察されたDKK3の差次的発現は、FABPが心筋、特に右心房付属器から循環中に放出され、血清/血漿力価の上昇がAFの発作の検出を支援することを支持している。
【0275】
DKK3は、心臓から血中に放出されており、AF発作の検出を支援することができ、AF関連の脳卒中を発症するリスクを予測することができると結論付けられる。
【0276】
実施例2 予測因子コホートにおける心房細動の検出-特に高齢者の一般集団における心房細動の患者をスクリーニングおよび識別する
予測因子試験は、高齢者(65歳以上)の、明らかに健常な被験者(n=2001)における集団に基づく治験とした。参加者は、臨床試験ならびに包括的なドップラー心エコー検査および心電図測定のために心臓病センターに紹介された。患者は主として、心不全の病期Bに罹患していた。しかしながら、一部の患者は心不全の病期AまたはCに罹患していた。心房細動部分コホートは、訪問中に心房細動の発作が進行中である29人の被験者と、83人の対応する対照とを含む。
【0277】
DKK3は、予測因子試験から選択された心房細動部分コホートにおいて決定した。高い循環DKK3レベルは、進行中の心房細動のある被験者からの試料と対照からの試料とにおいて観察した。
【0278】
実施例3 発作性心房細動の検出
GISSI-AF治験のバイオマーカー部分試験では、血液試料は、試験の登録時、ならびに経過観察6か月後および12か月後に収集した。GISSI-AF治験に関するさらなる詳細については、主要公表物:GISSI-AF Investigators,New Engl J Med 2009;360:1606-17を参照されたい。バイオマーカーの部分試験に関するさらなる詳細については、Latini R et al.,J Intern Med 2011;269:160-71を参照されたい。
382人の患者について、血漿試料からのDKK3値をベースラインで入手した。24週間後、360人の患者のうち38人が発作性心房細動を発症した。52週間後、357人中48人が心房細動を発症した。
【0279】
DKK3は、GISSI AF試験から選択された心房細動部分コホートにおいて決定した。対照からの試料に対して高い循環DKK3レベルは、進行中の心房細動のある被験者からの試料において観察した。
【0280】
実施例4:脳卒中の予測
分析アプローチ
循環DKK3が脳卒中の発症についてのリスクを予測する能力を、心房細動が確認された患者の前向きな多施設登録において評価した(Conen D.,Forum Med
Suisse 2012;12:860-862)。DKK3は、Borgan(2000)において説明された層別症例コホート設計を使用して測定した。
【0281】
経過観察(「事象」)中に脳卒中を経験した70人の患者の各々について、1人の対応した対照を選択した。対照は、年齢、性別、高血圧の病歴、心房細動の種類、および心不全の病歴(CHFの病歴)の人口統計学的情報および臨床情報に基づいて対応していた。
【0282】
DKK3の結果は、事象のある69人の患者および事象のない69人の患者について入手可能であった。
【0283】
DKK3は、Olinkプラットフォームを使用して測定されたので、絶対濃度の値は入手不可能であり、報告することができない。結果は任意の信号尺度(NPX)で報告される。
【0284】
DKK3の単変量予後値を定量するために、比例ハザードモデルを転帰脳卒中で使用した。
【0285】
DKK3の単変量予後成績を、DKK3によって付与される予後情報の2つの異なる組込みによって評価した。
【0286】
第1の比例ハザードモデルは、中央値(28NPX)で2値化されたDKK3を含んでおり、それゆえ、DKK3が中央値以下の患者のリスクを、DKK3が中央値を上回る患者と比較した。
【0287】
第2の比例ハザードモデルは、元のDKK3レベルを含んでいたが、log2尺度に変換した。log2変換は、より良好なモデル較正を可能にするために実行した。
【0288】
症例対照コホートのナイーブ比例ハザードモデルからの推定値には(対照に対する症例の変化した割合のため)バイアスがかかるであろうことから、重みつき比例ハザードモデルを使用した。重みは、Mark(2006)において説明されているように、各患者が症例対照コホートに選択される間接帰納確率に基づいている。
【0289】
二分されたベースラインのDKK3測定(≦28NPX対>28NPX)に基づいて2つの群における絶対生存率についての推定値を取得するために、Mark(2006)において説明されているようにカプラン・マイヤープロットの重みつき版を作成した。
【0290】
DKK3の予後値が、既知の臨床的危険因子および人口統計学的危険因子から独立しているかどうかを評価するために、さらに年齢、性別、CHF病歴、高血圧の病歴、脳卒中/TIA/血栓塞栓症の病歴、血管疾患の病歴、糖尿病の病歴という変数を含む、重みつき比例コックスモデルを計算した。
【0291】
DKK3が脳卒中の予後についての既存のリスクスコアを改善する能力を評価するために、CHADS2、CHA2DS2-VAScおよびABCスコアを、(log2変換された)DKK3によって拡張した。拡張は、DKK3とそれぞれのリスクスコアを独立変
数として含む部分ハザードモデルを作成することによって行った。
【0292】
CHADS2、CHA2DS2-VAScおよびABCスコアのc指数を、これらの拡張したモデルのc指数と比較した。症例コホート設定におけるc指標の計算のために、Ganna(2011)において提案されているようにc指数の重みつき版を使用した。
【0293】
結果
表1は、2値化またはlog2変換されたDKK3を含む、2つの単変量重みつき比例ハザードモデルの結果を示す。
【0294】
脳卒中を経験することについてのリスクとDKK3のベースライン値との関係は、両モデルにおいて非常に有意である。
【0295】
2値化されたDKK3のハザード比は、ベースラインDKK3>28NPXの患者群対ベースラインDKK3≦28NPXの患者群において、脳卒中についてのリスクが1.8倍高いことを含意している。しかしながら、信頼区間には1が含まれ、このことは、中央値が最適なカットオフではないか、2値化がDKK3にとって適切ではないかのいずれかであることを含意している。
【0296】
log2変換線形リスク予報因子としてDKK3を含む比例ハザードモデルの結果は、log2変換値DKK3が、脳卒中を経験することについてのリスクと正の相関があることを示唆している。2.8というハザード比は、DKK3の2倍増が、脳卒中についてのリスクの2.8倍増と関係しているように解釈することができる。
【表1】
【0297】
図1は、DKK3のベースライン測定値(≦28NPX対>28NPX)を有する2つの患者群についての重みつきカプラン・マイヤー曲線を示す。
【0298】
表2は、臨床変数および人口統計学的変数との組み合わせにおける(log2変換された)DKK3を含む、比例ハザードモデルの結果を示す。DKK3についてのハザード比の点推定量が1を上回ることはなおも注目に値するが、p値は今や0.05を上回る。
しかしながら、ハザード比が依然として高いこと、および表2に示す臨床変数のみを含むモデルのc指数が、DKK3の加算により、0.0055ほど改善することを考慮すると、DKK3の効果は、より多くの観察された事象でより大きなコホートについて有意であろうと予測することができる。
【表2】
【0299】
表3は、CHADS2スコアを、(log2変換された)DKK3と組み合わせた、重みつき比例ハザードモデルの結果を示す。また、このモデルでは、DKK3は、予後情報をCHADS2スコアに追加することができる。表2と同様に、DKK3のハザード比は依然として1を上回るが、ここでもp値は0.05に達していない。また、本明細書では、比較的少数の事象を考慮する必要がある。
【表3】
【0300】
表4は、CHA2DS2-VAScスコアを、(log2変換された)DKK3と組み合わせた、重みつき比例ハザードモデルの結果を示す。表2と同様に、DKK3のハザード比は依然として1を上回るが、ここでもp値は0.05に達していない。また、本明細書では、比較的少数の事象を考慮する必要がある。
【表4】
【0301】
表5は、ABCスコアを(log2変換された)DKK3と組み合わせた、重みつき比例ハザードモデルの結果を示す。表2と同様に、DKK3のハザード比は依然として1を上回るが、ここでもp値は0.05に達していない。また、本明細書では、比較的少数の事象を考慮する必要がある。
【表5】
【0302】
表6は、DKK3のみの推定c指数、CHADS2、CHA2DS2-VAScおよびABCスコアの推定c指数、ならびにCHADS2、CHA2DS2-VAScおよびABCスコアをDKK3(log2)と組み合わせた重みつき比例ハザードモデルの推定c指数を示す。
【0303】
DKK3をCHA2DS2-VAScスコアにDKK3に追加すると、c指数が0.0028ほど改善され、これは、依然としてリスク予測の臨床上意味のある改善と見なすことができる。
【0304】
CHADS2スコアについては、c指数の改善は0.0090でより高く、ABCスコアについては、0.0163で最も高い。
【表6】
【0305】
この結果は、DKK3が、新たな患者についての将来の脳卒中についてのリスクを単独で、または組み合わせとして予測して、脳卒中リスク(CHADS2およびCHA2DS2-VAScなど)を予測する上で臨床スコアをかなり改善するために、複数の方法で使用することができることいる。
【0306】
新たな患者については、DKK3を測定し、あらかじめ定義しておいたカットオフと比較し得る。新たな患者についての測定値が、あらかじめ定義しておいたカットオフを上回る場合、患者は、脳卒中の経験に対してリスクが高いと見なされ、適切な臨床方法を開始され得る。
【0307】
また、カットオフのセットを増加させることに基づいて、2つを超えるリスク群を定義することもできる。次に、患者は、DKK3の測定値に基づいて、リスク群の1つに割り当てられるであろう。脳卒中についてのリスクは、さまざまなリスク群にわたって増大すると予想される。
あるいは、あらかじめ定義しておいた適切な変換関数に基づいて、DKK3の結果を連続的なリスクスコアに直接的に変換することもできるであろう。
【0308】
加えて、DKK3の値を、臨床変数および人口統計学的変数(例えば、CHA2DS2-VAScスコア)に基づくリスクスコアと組み合わせて使用し、それにより、リスク予測の精度を改善することができる。
【0309】
新たな患者については、リスクスコアについての値は、例えば、リスクスコアの結果と、適切なあらかじめ定義しておいた重みのついたDKK3値との重みつき合計を作成すること(例えば、表3に示されるような)によって、適切な方法で評価され、測定されたDKK3値(log2変換されたものであり得る)と組み合わされるであろう。
【0310】
実施例3 バイオマーカーの測定
DKK3は、Dickkopf関連タンパク質3(DKK3)のための市販のOリンク製多重マーカーパネル、Oリンク(スウェーデン)製の近接伸長アッセイにおいて測定した。