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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020497
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】分析方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/86 20060101AFI20240206BHJP
   G01N 30/04 20060101ALI20240206BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20240206BHJP
   G01N 30/02 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
G01N30/86 J
G01N30/86 M
G01N30/04 P
G01N30/86 F
G01N30/72 A
G01N30/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023197812
(22)【出願日】2023-11-22
(62)【分割の表示】P 2020557597の分割
【原出願日】2019-11-20
(31)【優先権主張番号】P 2018220328
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】工藤 恭彦
(72)【発明者】
【氏名】杉本 真二
(57)【要約】      (修正有)
【課題】クロマトグラフを用いる従来の分析方法では、ピークの同定や切波形処理が不適切である場合に、これを検出対象成分と判断できずに、見逃す場合がある。
【解決手段】所定成分を所定量含有する基準試料を分析し、分析装置による所定量の所定成分の検出値である基準検出値を求めること、基準検出値に基づいて、測定対象試料中の検出対象成分の濃度が基準濃度以上であるか、または基準濃度以下であるかの判断基準である判断基準値を算出すること、分析装置で測定対象試料を分析し、検出対象成分に対応するピーク検出時間帯において判断基準値を超えた検出値が検出された場合に検出対象成分が検出されたと判断すること、とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフを用いる分析装置で所定成分を所定量含有する基準試料を分析し、前記分析装置による前記所定量の前記所定成分の検出値である基準検出値を求めること、
前記基準検出値に基づいて、測定対象試料中の検出対象成分の濃度が基準濃度以上であるか、または基準濃度以下であるかの判断基準である判断基準値を算出すること、
前記分析装置で前記測定対象試料を分析し、前記検出対象成分に対応するピーク検出時間帯において前記判断基準値を超えた検出値が検出された場合に、前記検出対象成分が検出されたと判断すること、とを備える、分析方法。
【請求項2】
請求項1に記載の分析方法において、
前記検出対象成分に対応するピーク検出時間帯において前記検出対象成分が検出されたこと、または前記検出対象成分が検出されなかったことを出力する、分析方法。
【請求項3】
請求項1に記載の分析方法において、
前記判断基準値の算出は、前記基準検出値に基づいて、数式を使って求める、分析方法。
【請求項4】
請求項3に記載の分析方法において、
前記数式は、前記判断基準値および前記検出対象成分に対する所定の基準濃度に基づいて前記判断基準を算出する数式である、分析方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の分析方法において、
前記基準試料には、複数の前記所定成分が含まれるとともに、
前記検出対象成分は、前記複数の前記所定成分の中の1つと同じ物質である、分析方法。
【請求項6】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の分析方法において、
前記検出対象成分は、前記基準試料に含まれる前記所定成分とは異なる物質であり、
前記判断基準値は、前記所定成分の前記基準検出値と、前記検出対象成分の前記基準濃度と、前記所定成分と前記検出対象成分との相対レスポンスファクタとに基づいて算出される、分析方法。
【請求項7】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の分析方法において、
前記検出値は、前記分析装置が検出する検出信号のピーク高さ値である、分析方法。
【請求項8】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の分析方法において、
前記検出値は、前記分析装置が検出する検出信号を、前記所定成分または前記検出対象成分の前記ピーク検出時間帯に渡って積分した積分値である、分析方法。
【請求項9】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の分析方法において、
前記分析装置は前記クロマトグラフの後段に質量分析装置を備え、
前記質量分析装置が検出する検出信号に基づいて、前記基準試料の分析、および前記測定対象試料の分析を行う、分析方法。
【請求項10】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の分析方法において、
前記基準試料の前記分析を行った時刻に関する時間情報を記憶装置に記憶する、分析方法。
【請求項11】
請求項10に記載の分析方法において、
前記記憶装置に記憶された前記時間情報に基づいて、前記基準試料の前記分析から所定時間以上経過したか否かを判断する、分析方法。
【請求項12】
クロマトグラフを用いる分析装置をコンピュータで制御して、
所定成分を所定量含有する基準試料を分析し、
前記分析装置による前記所定量の前記所定成分の検出値である基準検出値を求め、
前記基準検出値に基づいて、測定対象試料中に検出対象成分が基準濃度以上存在するか否かの判断基準である判断基準値を算出し、
前記分析装置で前記測定対象試料を分析し、前記検出対象成分に対応するピーク検出時間帯において前記判断基準値を超えた検出値が検出された場合に、前記検出対象成分が検出されたと判断する、処理を行わせるためのプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のプログラムにおいて、
前記判断基準値を、前記所定成分の前記基準検出値と、前記検出対象成分の前記基準濃度と、前記所定成分と前記検出対象成分との相対レスポンスファクタとに基づいて算出させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
分析試料中に規制物質等が基準濃度以上含まれているかの分析には、ガスクロマトグラフ、液体クロマトグラフ、またはそれらのクロマトグラフと質量分析装置を組み合わせた、いわゆるGC/MSまたはLC/MS分析装置が広く用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2003-057220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クロマトグラフにおいては、同量の検出対象成分を分析した場合であっても、測定時のクロマトグラフの状態(経時変化)により、検出対象成分の測定量が変化してしまう恐れがある。
従って、クロマトグラフの状態によっては、例えば規制対象物質が基準量(基準濃度)以上存在することを検出できずに、見逃してしまう恐れがある。
また、ガスクロマトグラフを使用する従来の分析方法では、検出されたピークの同定や切波形処理が不適切である場合に、検出対象成分を高濃度に含む場合であっても、これを検出対象成分と判断できずに、見逃してしてしまう場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様による分析方法は、クロマトグラフを用いる分析装置で所定成分を所定量含有する基準試料を分析し、前記分析装置による前記所定量の前記所定成分の検出値である基準検出値を求めること、前記基準検出値に基づいて、測定対象試料中の検出対象成分の濃度が基準濃度以上であるか、または基準濃度以下であるかの判断基準である判断基準値を算出すること、前記分析装置で前記測定対象試料を分析し、前記検出対象成分に対応するピーク検出時間帯において前記判断基準値を超えた検出値が検出された場合に、前記検出対象成分が検出されたと判断すること、とを備える。
第2の態様によるプログラムは、クロマトグラフを用いる分析装置をコンピュータで制御して、所定成分を所定量含有する基準試料を分析し、前記分析装置による前記所定量の前記所定成分の検出値である基準検出値を求め、前記基準検出値に基づいて、測定対象試料中に検出対象成分が基準濃度以上存在するか否かの判断基準である判断基準値を算出し、前記分析装置で前記測定対象試料を分析し、前記検出対象成分に対応するピーク検出時間帯において前記判断基準値を超えた検出値が検出された場合に、前記検出対象成分が検出されたと判断する、処理を行わせる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、クロマトグラフの経時変化を補正して検出対象成分が基準量(たとえば基準濃度)以上存在するか否かを正確に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態の分析方法による分析を行うための、分析装置の一例を示す図。
図2図2は、一実施形態の分析方法の処理の流れを示すフローチャートを示す図。
図3図3は、基準試料の分析結果、基準検出値、判断基準値、および測定対象試料の分析結果の概要を示す図であり、図3(a)は基準試料の分析結果および基準検出値の概要を示す図、図3(b)および図3(c)は判断基準値および測定対象試料の分析結果の概要を示す図。
図4図4は、基準検出値の決定方法の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(分析方法の第1実施形態)
図1は、第1実施形態の分析方法による分析を行うための分析装置100の一例を示す図である。分析装置100は、クロマトグラフ10、および質量分析部40と、これらを制御する制御部20とを備えている。
クロマトグラフ10は、一例としてガスクロマトグラフであり、分離用のカラム14と、そのカラム14を内装するカラムオーブン15と、カラム14の入口に設けられた試料注入部11および試料気化室12とを含む。さらに、カラム14の出口に設けられた分岐弁16と、FID検出器等の検出器17と、これら各部を制御するGC制御部18とを含む。
【0009】
質量分析部40は、一例として四重極型の質量分析装置であり、イオンをm/zに応じて分離する四重極マスフィルタ45と、イオン検出器46とを含む。質量分析部40は、さらに、分岐弁16から輸送管19を介して試料ガスの供給を受ける試料導入部41、イオン化部42、イオン光学系44、およびこれら各部を制御するMS制御部49とを含む。イオン化部42、イオン光学系44、および四重極マスフィルタ45は、真空容器47内に格納され、真空容器47は真空ポンプ48により減圧される。
イオン化部42は、例示したフィラメント43からの電子(e-)によりイオン化を行う電子イオン化装置に限らず、他の方式のイオン化装置を用いることもできる。
【0010】
制御部20は、ネットワークケーブルNWを介して、クロマトグラフ10および質量分析部40を制御すると共に、クロマトグラフ10および質量分析部40から測定データを取得し、取得したデータを解析及び処理する。
【0011】
制御部20は、中央演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)22、メモリ23、LCD(Liquid Crystal Display)等から成る表示装置(表示部)24、キーボードやマウス等から成る入力部25、ハードディスクやSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置から成る記憶部30を備えている。
記憶部30には、OS(Operating System)35、クロマトグラフ10および質量分析部40を制御し測定されたデータを処理する制御プログラム31、化合物ライブラリ32、設定記憶部33、及び測定データ記憶部34が設けられている。
【0012】
化合物ライブラリ32には、様々な化合物の分析に必要な情報として、化合物の名称等の識別情報、構造式、各種カラムに対する保持時間、マススペクトルなどが収録されている。制御部20は、更に、外部装置との直接的な接続や、外部装置等とのLAN(Local Area Network)などのネットワークを介した接続を司るためのインターフェース(I/F)21を備えている。そして制御部20は、I/F21によりネットワークケーブルNWを介してGC制御部18およびMS制御部49に接続されている。
【0013】
CPU22、メモリ23、記憶部30、およびインターフェース21は、コンピュータを構成している。メモリ23は、制御プログラム31により制御されたCPU22を通じて、後述する各種の情報を記憶する。
制御プログラム31は、CPU22を含む制御部20を制御して、ネットワークケーブルNWを介して外部のサーバ29に分析データを送信して保存させることができる。
【0014】
図2は、CPU22が制御プログラム31にしたがって、制御部20を制御して第1実施形態の分析方法を実行する際のフローチャートを示す。以下、図2に示したフローチャートに沿って、第1実施形態の分析方法について説明する。
なお、制御プログラム31により制御部20に含まれるCPU22が各部を制御するが、以下の各ステップでの説明では実行主体であるCPU22は省略する。
【0015】
(分析装置の較正)
ステップS101において、制御部20は、表示部24に、ユーザがクロマトグラフ10の試料注入部11に基準試料を注入することを促すメッセージを表示させる。ユーザが試料注入部11への基準試料の注入を行い、かつ基準試料の注入を行った旨の情報を入力部25に入力すると、ステップS102において制御プログラム31は試料が注入されたと判断して、ステップS103に進む。
【0016】
基準試料とは、1種類以上の既知の所定成分をそれぞれ既知の所定量含有する試料であり、ステップS103において分析装置100が基準試料の分析を行うことにより、所定量の所定成分ごとに対する分析装置100の検出感度を確認(較正)することができる。
所定成分を既知の所定量含有する試料とは、例えば、所定成分が既知の濃度で含まれる試料を既知の量だけ採取した試料であり、所定量は、量(質量または体積)に濃度(質量濃度または体積濃度)を掛け合わせることにより求まる。
【0017】
ステップS103において、クロマトグラフ10の試料注入部11に注入された基準試料は、試料気化室12で気化され、キャリアガスとともに、カラム14内を移動する。そして、基準試料は、カラム14により成分毎に時間的に分離され、所定の保持時間の経過後に分岐弁16に至る。そして、第1実施形態においては、基準試料は分岐弁16から検出器17に至り検出器17で検出される。検出器17で検出された検出量はGC制御部18に送られ、さらに制御部20に送られる。
【0018】
図3(a)は、ステップS103における基準試料の分析結果の一例のグラフを示す図である。グラフの横軸は、クロマトグラフ10の試料注入部11に基準試料を注入してから(または、カラムオーブン15の加熱を開始してから)の経過時間(秒)を表し、グラフの縦軸は、検出器17による検出量を表している。
図3(a)に示した例においては、基準試料には、既知の2つの成分(成分A、成分B)が含まれており、図3(a)の検出結果には、成分Aに対応する検出ピーク曲線Caと、成分Bに対応する検出ピーク曲線Cbとが表れている。
【0019】
ステップS104において、制御部20は、検出ピーク曲線Ca、および検出ピーク曲線Cbのピーク高さ値を算出させ、これをそれぞれ成分Aに対する基準検出値Da、および成分Bに対する基準検出値Dbとして、記憶させる。
換言すると、基準検出値Da、および基準検出値Dbは、クロマトグラフ10にそれぞれ既知の量の成分Aおよび成分Bが注入された際に検出器17で検出される検出量のピーク高さ値である。従って、今後、未知の量の成分Aを含む試料を分析する場合には、検出器17で検出される検出量のピーク高さ値の基準検出値Daに対する比率、および基準検出値Daを決定した際の成分Aの量から、分析した試料中の成分Aの量が正確に算出できることになる。これは、成分Bについても同様である。
【0020】
成分A、Bと検出ピーク曲線Ca、Cbとの同定は、各ピーク曲線が出現する経過時間に基づいて行なう。図3に破線で示した時間Ta1は、成分Aの検出ピーク曲線Caの出現開始が予想される時刻である、成分Aのピーク検出開始予測時間Ta1を表す。また、破線で示した時間Ta2は、成分Aの検出ピーク曲線Caの出現終了が予想される時刻である、成分Aのピーク検出終了予測時間Ta2を表す。成分Aのピーク検出開始予測時間Ta1およびピーク検出終了予測時間Ta2は、成分Aの保持時間(ピークが最大値となる経過時間)に対して、それぞれ所定の時間差だけ前および後の時間であり、この時間差は、例えばユーザが指定する。成分Bのピーク検出開始予測時間Tb1、ピーク検出終了予測時間Tb2についても、成分Aの各時間と同様に決定すればよい。
成分Aのピーク検出開始予測時間Ta1、ピーク検出終了予測時間Ta2、および成分Bのピーク検出開始予測時間Tb1、ピーク検出終了予測時間Tb2は、例えばステップS101においてユーザが入力部25に予め入力しておくことが好ましい。あるいは、ステップS101において、ユーザは各成分の保持時間と上述の時間差を入力し、制御部20が、保持時間と時間差からピーク検出開始予測時間およびピーク検出終了予測時間を算出するようにしても良い。あるいは、ユーザは入力部25に成分A、および成分Bの名称等の識別情報を入力し、制御部20が化合物ライブラリ32から成分A、および成分Bに対するピーク検出開始予測時間およびピーク検出終了予測時間を読み出しても良い。本明細書では、ピーク検出開始予測時間Ta1、Tb1とピーク検出終了予測時間Ta2、Tb2のそれぞれの間の時間帯を、ピーク検出時間帯Ta,Tbと呼ぶ。
【0021】
なお、基準試料には、成分Aまたは成分Bのうちの一方の成分のみを含むものであっても良く、この場合には検出ピーク曲線も1つになるので、検出ピーク曲線の同定は不要である。
基準試料には、3種類以上の既知の所定成分を含んでいてもよい。
分析工程は、ステップS104において、基準検出値Daおよび基準検出値Dbが算出され記憶されると、ステップS105に進む。この際にステップS104において、制御プログラム31は制御部20に対して、基準試料の分析を行った日時等の時間情報を、記憶部30内の測定データ記憶部34あるいはメモリ23に記憶させる。この時間情報は、日時に限られるものではなく、分析装置100の稼働後の経過時間や、分析装置100のメンテナンスからの経過時間等であってもよい。
【0022】
(前回の較正からの経過時間の確認)
ステップS105では、制御プログラム31は制御部20に、ステップS104において記憶部30内の測定データ記憶部34あるいはメモリ23に記憶させた上述の時間情報に基づいて、ステップS101からステップS104における基準試料の分析から、所定時間以上経過しているか否かを判断させる。
そして、所定時間以上経過している場合には、ステップS101に戻り、制御部20は、再度、基準試料の分析および基準検出値Da、Dbの算出を行わせる。
所定時間以上経過しない場合には、ステップS106に進む。
【0023】
ステップS106において、制御部20は、表示部24に、測定対象の試料を分析するかの入力を促すメッセージを表示させる。
ユーザが、分析する旨(Yes)の入力を行うと、ステップS107に進む。
一方、ユーザが、分析する旨(Yes)の入力を行なわない場合には、ステップS105に戻る。
【0024】
(判断基準値の算出)
ステップS107において制御部20は、測定対象試料に含まれることが想定される成分が、実際に測定対象試料に含まれているか否かの判断基準である判断基準値を算出する。
判断基準値は、例えば、法律等で定められた環境基準等に基づいて決定する。
例えば、成分Aの環境基準がSa[g/L]、測定する対象試料の体積がV[L]、ステップS104で基準検出値Daを算出した際の成分Aの質量がMa[g]である場合、判断基準値Jaは、
Ja = Da×(Sa×V)/ Ma ・・・(1)
で表される。
【0025】
成分Bについても同様に、成分Bの環境基準がSb[g/L]、ステップS104で基準検出値Dbを算出した際の成分Bの質量がMb[g]である場合、判断基準値Jbは、
Jb = Db×(Sb×V)/ Mb ・・・(2)
で表される。なお、測定する対象試料の体積V[L]は、成分Aと成分Bで共通である。
なお、判断基準値JaおよびJbの算出は、上記のように環境基準Sa、Sbの値そのものに基づいて行う必要はなく、環境基準Sa、Sbよりも厳しい値(小さい値)に基づいて算出しても良い。
【0026】
判断基準値JaおよびJbの算出に際し、測定する対象試料の体積V、および成分A、Bの環境基準Sa、Sbは、ユーザが入力部25に入力しても良い。なお、測定する対象試料の体積を常に一定量に設定する場合には、ユーザによる体積Vの入力は省略することができる。また、成分A、Bの環境基準Sa、Sbについては、制御プログラム31が制御部20を制御して、既に入力されている成分Aおよび成分Bの識別情報に基づいて化合物ライブラリ32から読み出すこともできる。
なお、測定する対象試料が固体である場合には、上述の体積Vに代えて、対象試料の質量Mv[g]を使用し、環境基準についても単位質量あたりの含有質量であるSm[g/g]を使用して、上述の判断基準値Ja、Jbを算出する。具体的には、式(1)および式(2)のSa、S、Vに代えて、Mv[g]およびSm[g/g]を用いて、判断基準値Ja、Jbを算出する。
ステップS107で判断基準値を算出した後、ステップS108に進む。
【0027】
(測定対象試料の分析)
ステップS108において、制御部20は、表示部24に、ユーザがクロマトグラフ10の試料注入部11に測定対象試料を注入することを促すメッセージを表示させる。ユーザが試料注入部11への測定対象試料の注入を行い、かつ測定対象試料の注入を行った旨の情報を入力部25に入力すると、ステップS109において制御プログラム31は試料が注入されたと判断して、ステップS110に進む。
ステップS110における測定対象試料の分析の工程は、上述のステップS103における基準試料の分析の工程と同様であるので、説明を省略する。
【0028】
図3(b)は、ステップS110における測定対象試料の分析結果の一例のグラフを示す図である。グラフの横軸、縦軸は、上述の図3(a)と同様である。
図3(b)の例においては、測定対象試料にも、検出すべき対象成分(検出対象成分)として、上述の基準試料に含まれていた成分Aおよび成分Bが含まれている。
ステップS111において、制御部20は制御プログラム31の指示のもとで、検出対象成分である成分Aの基準検出値としての検出ピーク曲線Gaのピーク高さ値、および検出対象成分である成分Bの基準検出値としての検出ピーク曲線Gbのピーク高さ値を算出する。
そして、ステップS112において、制御部20は制御プログラム31の指示のもとで、検出ピーク曲線Gaのピーク高さ値が上述の判断基準値Jaより大きいか否かを判断する。
【0029】
検出ピーク曲線Ga,Gbが複数ある場合には、どのピークが成分Aまたは成分Bに対応するピークであるかの同定は、前述のピーク検出時間帯に基づいて行う。すなわち、検出ピーク曲線Gaが、成分Aのピーク検出開始予測時間Ta1からピーク検出終了予測時間Ta2までの間に、すなわち成分Aのピーク検出時間帯Taの中に、あるいはその近傍にあれば、検出ピーク曲線Gaは、成分Aのピークであると判断する。成分Bについても同様である。
【0030】
図3(b)に示すとおり、検出ピーク曲線Gaのピーク高さ値は判断基準値Jaより大きいため、ステップS113に進み、測定対象試料から成分Aが検出されたことを出力する。一方、検出ピーク曲線Gaのピーク高さ値が判断基準値Jaより小さい場合には、ステップS114に進み、測定対象試料から成分Aが非検出であったことを出力する。これらの場合の出力先は、表示部24、メモリ23、測定データ記憶部34、あるいは外部のサーバ29のいずれかの1つ以上である。
【0031】
なお、本例では2種類の検出対象成分(成分A、成分B)について検出を行うため、上述のステップS112からステップS114は、成分Aおよび成分Bに対して繰り返して行われることが好ましい。図3(b)に示すとおり、検出ピーク曲線Gbのピーク高さ値は判断基準値Jbより小さいため、成分Bについては、ステップS112からステップS114に進み、測定対象試料から成分Bが非検出であったことが出力される。
【0032】
ステップS113およびステップS114が終了した後は、ステップS115に進み、制御部20は、表示部24に、分析を継続するか否かの入力をユーザに促すメッセージを表示させる。
ユーザがYes(分析する旨)の入力を行った場合には、ステップS105に移動して、制御部20は各部に指示を出力して測定対象試料の分析を繰り返す。
一方、ユーザがNo(分析しない旨)の入力を行った場合には、処理を終了する。
【0033】
上述の第1実施形態において、ステップS105の所定時間は、要求される分析(検出)の精度によって異なる。より高精度な検出を行うためには、分析装置100の経時変化を最小に抑えるために、所定時間を数時間程度の時間とする必要がある。一方、ある程度の経時変化を許容するのであれば、1ヵ月程度、あるいは分析装置100の定期メンテナンスの周期程度としても良い。経時変化とは、装置の汚染、経年劣化、装置起動からの経過時間の違いによる装置の安定状態の変化、装置較正状態の違い等をいう。
【0034】
また、ステップS105においては、基準試料の分析後の経過時間によって判断するだけではなく、その時点の時刻と曜日または日付に基づいて、あるいは、時刻と曜日または日付と、経過時間との双方に基づく判断を行なわせても良い。
一例として、毎日所定時刻においてYesと判断させることもでき、あるいは、毎月の所定日または所定の曜日の所定時刻においてYesと判断させることもできる。この場合において、所定時刻であっても、その所定時間以内に基準試料の分析を行っていればNoと判断させることもできる。
【0035】
(分析方法の変形例)
以上の第1実施形態においては、成分Aと成分Bが含まれる基準試料を用いて分析(較正)を行い、成分Aと成分Bが含まれることが予想される測定対象試料の分析を行っている。一方、本変形例は、較正に使用した成分以外の検出対象成分に対して、分析装置100の経時変化を補正した高精度の分析を行うものである。本変形例の構成は多くの部分が上述の第1実施形態と共通するため、以下では、第1実施形態と共通する部分についての説明は適宜省略する。
【0036】
図3(c)は、基準試料に含まれている成分Aと成分B以外の成分Cが含まれている測定対象試料に対する分析結果の一例のグラフを示す図である。グラフの横軸、縦軸は、上述の図3(a)と同様である。図3(c)には、横軸上の成分Cのピーク検出時間帯Tc~(ピーク検出開始予測時間Tc1とピーク検出終了予測時間Tc2の間)に相当する位置に、成分Cの検出ピーク曲線Gcが示されている。なお、成分Cのピーク検出開始予測時間Tc1、ピーク検出終了予測時間Tc2についても、上述の成分Aのピーク検出開始予測時間Ta1、ピーク検出終了予測時間Ta2と同様に決定したものである。
【0037】
図3(c)中の破線Jcは、成分Cが測定対象試料に含まれているか否かの判断の基準となる判断基準値Jcである。本変形例においては、判断基準値Jcを、成分A、成分B、成分Cの、分析装置100に対する相対レスポンスファクタRa、Rb、Rcを用いて算出する。相対レスポンスファクタは、一定量の各成分を分析装置100で分析した際の検出量の相対値を表すものである。従って、成分CについてはステップS101~S104での基準試料の分析(較正)を行うことなく、成分Aまたは成分Bでの較正の結果に基づいて、分析装置100の経時変化を補正することができる。
【0038】
一例として、成分Cの判断基準値Jcは、上述の測定対象試料の体積V[L]、較正時の成分Aの質量Ma[g]、成分Bの質量Mb[g]、成分Aの基準検出値Da、成分Bの基準検出値Db、および成分Cの環境基準Sc[g/L]を用いて、式(3)または式(4)により決定する。
Jc = Da×(Sc×V)×(Rc/Ra)/ Ma ・・・(3)
Jc = Db×(Sc×V)×(Rc/Rb)/ Mb ・・・(4)
成分Cについても、判断基準値Jcの算出は、上記のように環境基準Scの値そのものに基づいて行う必要はなく、環境基準Scよりも厳しい値(小さい値)に基づいて算出しても良い。
なお、測定する対象試料が固体である場合には、上述の式(1)、式(2)での場合と同様に、式(3)および式(4)の、V[L]、Sc[g/L]に代えて、対象試料の質量Mv[g]、単位質量あたりの含有質量で表した環境基準Sm[g/g]を用いて、判断基準値Jcを算出する。
【0039】
本変形例においては、図2に示したフローチャート中のステップS107において、制御部は表示部24に対して、成分Cの識別情報、ピーク検出時間帯Tcおよび環境基準Scの値の入力をユーザに促す表示を行わせ、この警告表示に応じてユーザがそれらの値を入力部25に入力することができる。あるいは、ユーザが、成分Cの識別情報を入力部25に入力すると、制御プログラム31が制御部20に指令して、化合物ライブラリ32から成分Cのピーク検出時間帯Tc、および環境基準Scの値を読み出させることもできる。
【0040】
本変形例においても、ステップS112において、検出ピーク曲線Gcのピーク高さ値が判断基準値Jcより大きいか否かを判断し、大きい場合にはステップS113に進み、大きくない場合にはステップS114に進む。
なお、以上の説明では、本変形例における測定対象試料には、成分Cのみが含まれているものとして説明したが、測定対象試料には、成分C以外にも1つ以上の検出対象成分が含まれていても良い。その場合、各検出対象成分のピーク検出時間帯や環境基準についても、上述の成分Cでの値と同様に、ユーザが入力部に入力するか、ユーザが入力した識別情報に基づいて、制御部20が化合物ライブラリ32内に格納されている情報を読み出す。
【0041】
また、本変形例における測定対象試料には、ステップS101からS104で較正した際の成分Aまたは成分Bが含まれていても良く、その場合、成分Aまたは成分Bに対する判断基準値Ja、Jbは、上述の第1実施形態で述べた方法で決定すればよい。
【0042】
以上の、第1実施形態および変形例のいずれにおいても、所定の成分の基準検出値Da、Dbは、上述のピーク高さ値の代わりに、いわゆる面積値(積分値)を使用してもよい。面積値とは、図3(a)の検出ピーク曲線Caのような検出ピーク曲線に対して、その検出量をピーク検出時間帯Taの範囲(Ta1からTa2の範囲)で積分したものである。
この場合には、判断基準値Ja、Jb、Jcも、面積値を使用した基準検出値Da、Dbにより算出されるとともに、測定対象試料中の検出対象成分の検出量についても、ピーク高さ値ではなく面積値を使用して、判断基準値Ja、Jb、Jcとの比較を行う。
【0043】
検出ピーク曲線の基準検出値として面積値を採用することにより、検出量の信号に含まれるノイズ成分の影響を受けにくい、より正確な判断を行うことができる。
一方、検出ピーク曲線の基準検出値としてピーク高さ値を採用することにより、よりシンプルな処理系を使用して基準検出値を算出することができる。
また、上述の式(1)から式(4)等では、各成分の質量Ma、Mbを用いて、判断基準値Ja、Jb、Jcの算出を行うとしたが、質量に限らず、モル数を用いて算出を行うこともできる。
【0044】
また、基準試料の分析時に、基準試料中の成分Aまたは成分Bが実際に検出される経過時間が、入力等され記憶されていたピーク検出時間帯と異なった場合には、実際に検出されたピークから実測されたピーク検出時間帯を、新たに成分Aまたは成分Bのピーク検出時間帯Ta、Tbとして記憶し直すことが好ましい。分析装置100の経時変化等により、保持時間も変動する恐れがあり、これを補正するためである。
ただし、記憶されていたピーク検出時間帯と検出される経過時間が大きく異なる(例えば10%以上)場合には、ピーク検出時間帯Ta、Tbとして記憶し直すことはせず、制御プログラム31は、表示部24にエラーメッセージを表示して、ユーザにエラーの可能性を警告することが好ましい。
【0045】
なお、図4に示したように、検出量の測定値には、バックグラウンドBGが加算されている場合がある。この場合には、検出ピーク曲線Ca2の基準検出値としてピーク高さ値と面積値のいずれを採用する場合であっても、バックグラウンドBGを除去して基準検出値の算出を行うことが望ましい。
【0046】
一例として、図4に示すように、バックグラウンドBGが時間とともに増大する場合には、検出ピーク曲線Ca2の位置(時間)において、バックグラウンドBGを内挿した関数BGaに基づいて、基準検出値の算出を行う。
ピーク高さ値を採用する場合には、ピーク高さ値は、検出ピーク曲線Ca2の見かけのピーク高さ値Da2から、その時間における関数BGaの値を引いた、真のピーク高さ値Da3とすればよい。
また、面積値を採用する場合には、検出ピーク曲線Ca2の値から関数BGaの値を引いた値を、ピーク検出時間帯Ta(Ta1からTa2)の間で積分した値を、検出ピーク曲線Ca2の面積値とすればよい。
以上の、第1実施形態および変形例のいずれにおいても、クロマトグラフ10は、上述のガスクロマトグラフに限らず、液体クロマトグラフであってもよい。
【0047】
(第1実施形態および変形例の効果)
(1)以上の第1実施形態および変形例の分析方法は、クロマトグラフを用いる分析装置100で所定成分A、Bを所定量Ma、Mb含有する基準試料を分析し、分析装置100による所定量Ma、Mbの所定成分A、Bの検出値である基準検出値Da、Dbを求めること、基準検出値Da、Dbに基づいて、測定対象試料中の検出対象成分A、B、Cの濃度が基準濃度以上であるか、または基準濃度以下であるかの判断基準である判断基準値Ja、Jb、Jcを算出すること、分析装置100で測定対象試料を分析し、検出対象成分A、B、Cに対応するピーク検出時間帯Ta、Tb、Tcにおいて判断基準値Ja、Jb、Jcを超えた検出値が検出された場合に、検出対象成分A、B、Cが検出されたと判断すること、とを備える構成を有している。
この構成により、基準試料の分析により分析装置100の較正を行ない、分析装置100の経時変化を補正することができるので、検出対象成分A、B、Cが基準量(基準濃度)以上存在するか否かを正確に判断することができる。
【0048】
なお、ガスクロマトグラフを使用する従来の分析方法では、検出されたピークの同定や波形処理が不適切である場合に、検出対象成分を高濃度に含む場合であっても、これを検出対象成分と判断できずに、見逃してしてしまう場合があった。
一方、第1実施形態および変形例の分析方法では、ピーク検出時間帯において検出対象成分が基準濃度以上か、または基準濃度以下であるかに基づいて、検出対象成分が検出されたか、検出されなかったかを判断する。従って、第1実施形態および変形例の分析方法では、ピーク同定の処理や波形処理にかかわらず、検出対象成分の検出または非検出を判断することができる。
【0049】
(2)検出対象成分に対応するピーク検出時間帯において、検出対象成分が検出されたこと、または検出対象成分が検出されなかったことを出力することにより、検出対象成分が検出されたことのみでなく、検出対象成分が検出されなかったことも、明確にすることができる。
(3)基準試料には複数の所定成分A、Bが含まれるとともに、検出対象成分A、Bを、複数の所定成分の中の1つと同じ物質とすることにより、測定対象試料中の検出対象成分A、Bと同じ成分を使用しての較正を行うことができ、より正確な判断を行うことができる。
【0050】
(4)検出対象成分Cは、基準試料に含まれる所定成分A、Bとは異なる物質であり、判断基準値Jcは、所定成分A、Bの基準検出値Da、Dbと、検出対象成分Cの基準濃度と、所定成分A、Bと検出対象成分Cとの相対レスポンスファクタRa、Rb、Rcとに基づいて算出されるとすることにより、較正時に使用した基準試料に含まれる所定成分A、Bとは異なる成分Cに対しても、分析装置100の経時変化が補正された正確な判断を行うことができる。
(5)基準試料の分析を行った時刻に関する時間情報を記憶装置に記憶することで、以降の分析において、基準試料の分析すなわち較正を行った時間に関する情報を、使用することができる。
(6)記憶装置に記憶された時間情報に基づいて、基準試料の分析から所定時間以上経過したか否かを判断することにより、所定時間以上経過している場合には、再度基準試料の分析を行うことで、測定対象試料の分析の精度を一層向上させることができる。
【0051】
(分析方法の第2実施形態)
以上の第1実施形態および変形例の分析方法では、基準試料の分析および測定対象試料の分析は、クロマトグラフ10の検出器17により得られる検出量に基づいて行うものとした。一方、以下で説明する第2実施形態の分析方法では、質量分析部40のイオン検出器46により得られる検出量に基づいて基準試料の分析および測定対象試料の分析を行う。すなわち、イオン検出器46で検出された検出量はMS制御部49に送られ、さらに制御部20に送られる。
第2実施形態のそれ以外の構成については、上述の第1実施形態および変形例の分析方法と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0052】
第2実施形態の分析方法では、カラム14から出力される試料が、質量分析部40の試料導入部41に供給されるように、分岐弁16を設定する。試料導入部41に供給された試料は、上述のようにイオン化部42でイオン化され、イオン光学系44を経てイオンをm/zに応じて分離する四重極マスフィルタ45に至る。そして、四重極マスフィルタ45により所定のm/zを持つイオンのみが選択的に透過され、イオン検出器46により検出される。
【0053】
制御プログラム31にしたがってCPU22は、ステップS103の基準試料の分析、およびステップS103の測定対象試料の分析に際し、検出対象成分A、B、Cに対応するm/zのイオンが選択的に検出されるように、MS制御部49を介して質量分析部40を制御する。具体的には、各検出対象成分A、B、Cの各ピーク検出時間帯Ta、Tb、Tcにおいて、四重極マスフィルタ45が、検出対象成分A、B、Cに対応するm/zのイオンを選択的に透過するように、四重極マスフィルタ45に印加するRF電圧の条件を設定する。
検出対象成分A、B、Cに対応するイオンは、各成分に対する、いわゆる定量イオンまたは確認イオンであってもよい。
【0054】
(第2実施形態の分析方法の効果)
(7)第2実施形態の分析方法は、第1実施形態の分析方法および変形例の分析方法に加えて、クロマトグラフ10の後段に質量分析部40を備える分析装置100を使用し、質量分析部40が検出する検出信号に基づいて、基準試料の分析、および測定対象試料の分析を行う。
この構成により、所定のm/z(質量電荷比)のみのイオンが選択されて検出された検出量を使用するので、測定対象試料中に検出対象成分A、B、C以外の成分が含まれる場合であっても、より高精度に検出対象成分A、B、Cの検出量を測定することができる。これにより、検出対象成分A、B、Cが基準量(基準濃度)以上存在するか否かを、より正確に判断することができる。
【0055】
(プログラムの実施形態)
上述のとおり、上記の各実施形態および各変形例において、分析装置100を使用した上記の分析は、上記の機能を実現するためのプログラム(制御プログラム31)をコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行させてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(OperatingSystem)や周辺機器のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、光ディスク、メモリカード等の可搬型記録媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持するものを含んでもよい。また上記のプログラムは、前述した制御プログラム31の機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせにより実現するものであってもよい。
【0056】
また、上述したプログラムは、CD-ROM等の記録媒体やインターネット等のデータ信号を通じて提供することができる。例えば、図1中のCPU22、メモリ23および記憶部30を備える制御部20は、ディスクドライブ26に挿入されたCD-ROMを介してプログラムの提供を受ける。また、制御部20はネットワークケーブルNWとの接続機能を有している。ネットワークに接続されているサーバ29は上記プログラムを提供するサーバコンピュータとしても機能し、記憶部30等の記録媒体にプログラムを転送する。すなわち、プログラムをデータ信号として搬送波により搬送して、ネットワークケーブルNWを介して送信する。このように、プログラムは、記録媒体や搬送波などの種々の形態のコンピュータ読み込み可能なコンピュータプログラム製品として供給できる。
なお、図2に示したフローチャートの各ステップは、必ずしもその全ての実行が必要とされるものではない。
【0057】
(プログラムの実施形態の効果)
(8)実施形態のプログラム31は、クロマトグラフ10を用いる分析装置100を制御部(コンピュータ)20で制御して、所定成分を所定量含有する基準試料を分析し、分析装置による所定量の所定成分の検出値である基準検出値を求め、基準検出値に基づいて、測定対象試料中に検出対象成分が基準濃度以上存在するか否かの判断基準である判断基準値を算出し、分析装置100で測定対象試料を分析し、検出対象成分に対応するピーク検出時間帯において判断基準値を超えた検出値が検出された場合に、検出対象成分が検出されたと判断する、処理を行わせる。
この構成により、分析装置100に対して、基準試料の分析により分析装置100の較正を行なわせ、分析装置100の経時変化を補正させることができるので、分析装置100に検出対象成分A、B、Cが基準量(基準濃度)以上存在するか否かを正確に判断させることができる。
(9)判断基準値を、所定成分の基準検出値と、検出対象成分の基準濃度と、所定成分と検出対象成分との相対レスポンスファクタとに基づいて算出させる構成とすることで、較正時に使用した基準試料に含まれる所定成分A、Bとは異なる成分Cに対しても、分析装置100の経時変化が補正された正確な判断を行うことができる。
【0058】
上記では、種々の実施形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、各実施形態は、それぞれ単独で適用しても良いし、組み合わせて用いても良い。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【0059】
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特願2018-220328号(2018年11月26日出願)
【符号の説明】
【0060】
100…分析装置、10…クロマトグラフ、11…試料注入部、14…カラム、16…分岐弁、17…検出器、18…GC制御部、20…制御部、30…記憶部、31…制御プログラム、40…質量分析部、45…四重極マスフィルタ、46…イオン検出器、49…MS制御部、Da,Db…基準検出値、Ja,Jb,Jc…判断基準値
図1
図2
図3
図4