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特開2024-20498コンクリート一体形成型のドーム状建築物の建築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020498
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】コンクリート一体形成型のドーム状建築物の建築方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/32 20060101AFI20240206BHJP
   E04G 9/00 20060101ALI20240206BHJP
   E04G 11/48 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
E04B1/32 102H
E04B1/32 102A
E04G9/00 101
E04G11/48
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023197861
(22)【出願日】2023-11-22
(62)【分割の表示】P 2019095004の分割
【原出願日】2019-05-21
(31)【優先権主張番号】P 2018096766
(32)【優先日】2018-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】391011711
【氏名又は名称】豊里 省司
(74)【代理人】
【識別番号】100152180
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 秀人
(72)【発明者】
【氏名】豊里 省司
(57)【要約】
【課題】
本発明は、コンクリート一体形成型のドーム状建築物の建築方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
居住空間として利用可能な屋根がドーム状の建築物を、支柱等を使用することなく、内部空間に間仕切壁等を配するのみで、基礎、壁、屋根を鉄筋コンクリートによって一体形成し、屋根支保工パイプ金具、クロスバー円形直径維持パイプ、クロスパイプ支保工固定金具、壁枠斜め支保工パイプを使用することで、外枠支保工を用いることなくコンクリート打設を可能にしたことを特徴とするドーム状建築物の建築方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎土間にコンクリートを打設した後、
建築物の壁面になる内壁型枠と外壁型枠からなる壁型枠を施工する工程と、
壁面コンクリートを打設した後、
屋根のドーム形状に合わせて建築物の中心から壁面まで所望の数に領域分割した、建築物の屋根になる屋根内型枠と屋根外型枠からなる屋根型枠を施工する工程と、
屋根コンクリートを打設した後、
壁型枠及び屋根型枠を脱枠する工程と、
からなるコンクリート一体形成型のドーム状建築物の建築方法であって、

建築物の壁面になる内壁型枠と外壁型枠からなる壁型枠を施工する工程は、
基礎コンクリートの円形の軌跡上に内壁型枠を立設し、
内壁型枠の内径の間隔を保持するため、内壁型枠の内側に十字状にクロスバー円形直径維持パイプを配設し、
基礎コンクリート上に立設した内壁型枠の倒壊を防ぐため、内壁型枠を壁型枠斜め支保工パイプで基礎コンクリートに固定し、
内壁型枠の外側にセパレーターで外壁型枠を設置し、
内壁型枠と外壁型枠の間にコンクリートを打設する工程からなり、

屋根のドーム形状に合わせて建築物の中心から壁面まで所望の数に領域分割した、建築物の屋根になる屋根内型枠と屋根外型枠からなる屋根型枠を施工する工程は、
壁型枠で囲まれた基礎コンクリートの中心に、複数の屋根支保工パイプ金具を立設し、
屋根支保工パイプ金具同士の間隔を保持するため、屋根支保工パイプ金具間にクロスパイプ支保工固定金具を配設し、
屋根内型枠の頭頂部にあたる屋根支保工パイプ金具の頂部に、屋根支保工パイプ金具で高さと中心位置を確認して、天窓型枠を設置し、
当該天窓型枠と前記壁型枠頂点の間に屋根型枠を設置し、
屋根内型枠の外側に、セパレーターで屋根外型枠を設置し、
屋根内型枠と屋根外型枠の間にコンクリートを打設する工程からなり、

壁型枠及び屋根型枠を脱枠する工程は、
打設したコンクリートの養生後、
天窓型枠に溶接設置したアイボルトにチェーンブロックを設置し、屋根内型枠のボルト穴にフックをかけて天窓型枠を脱枠し、
屋根型枠である屋根外型枠と屋根内型枠を外し、
壁型枠である外壁型枠と内壁型枠を外す工程からなる、

ことを特徴とするコンクリート一体形成型のドーム状建築物の建築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート造によるドーム状の構築物の建築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート造の屋根がドーム状の建築物は、従来の陸屋根スラブのような水平な屋根の建築物のように簡単に施工することができない。
例えば、特許文献1及び2にドーム状の建築物が開示されているが、屋根がドーム状の建築物は、屋根全体がドーム状の半球形をしていることから、最初にドーム屋根の下端に木製合板かFRPで成形した型枠でドーム状に組み立ててから、その上に鉄筋を配筋してコンクリートを流し込んで打設し、鉄筋コンクリート造のドーム屋根を建築する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-61014
【特許文献2】特開2007-239291
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の鉄筋コンクリート造による屋根がドーム状の構築物を建築するには、次の問題点がある。
(イ)木製の平面合板等を立体的に曲面上に構成することは、正確で精度の高い型枠を確保する必要があり、長い経験と高い施工技術が必要になる。
(ロ)木製やFRP製の型枠でドームの曲面上の支保工を多く配置する必要があり、ドーム内部での作業性が極端に落ちるため、人工数が嵩み、その結果、施工単価が高くなる。
(ハ)ドーム状の屋根は、勾配が緩やかに傾斜しているので、コンクリートの打設時には、バイブレーターの使用に多くの制約を受ける。
(ニ)ドーム屋根の型枠間の狭い空間にコンクリート打設をする際に多くの人工を必要とする。また、コンクリートの充填状態が型枠外からは把握しにくいため、密実なコンクリートを打設するには、打設時に多くの人員を配置する必要がある。
(ホ)木製型枠やFRP製の型枠で水平、垂直を確保する場合には、それぞれの部位での水平垂直の確認が逐一必要であり、作業が煩雑になり、施工に多くの時間を要する。
(ヘ)例えば、木製型枠でドーム状の屋根をコンクリート一体形成する場合、型枠が木製であることから軽量で作業性は良いが、打設したコンクリートの重量で木製の型枠が圧縮されて型枠同士が強く締め付けられた状態になり、コンクリート面に強く付着してしまい、脱枠をする際に型枠がバラバラになる可能性が高い。そのため、木製の型枠は再利用が難しく、その結果、コスト面で高くなる。同様の理由で、FRP製の型枠も脱枠時に破壊されてしまうことが多い。また、FRP製の型枠を木製型枠同様の強度を確保するためには、FRP自体に厚みが必要であり、その結果、コスト面でも高くなり重量も大きくなる。
【0005】
本発明は、上記した問題点を解決するためになされたもので、コンクリート一体形成型のドーム状建築物の建築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、居住空間を構成する円形型をなした屋根がドーム状の建築物であり、内部に居住快適性や利便性の間仕切壁等を便宜的に配するが強度補強等構造上の支柱等は皆無である。
建築物の基礎、壁、屋根は鉄筋コンクリートによる一体形成型で強度的に安全、安心で快適に生活することが可能である。
居住空間を基本として出入口、窓開口の採光を備えた開放型居住空間を提供し、リゾート宿泊施設、カフェ、レストラン、各種管理棟、はなれ、研究室、住宅等として活用できる廉価普及型建築物を提供できる。
ドーム屋根頂部には、採光を取るための天窓や、換気装置を設置できるため、快適性を高めることができる。
天窓や換気装置を取り付けるための、ドーム頂部の型枠及び支保工用具は、型枠組立と解体の際に使用し、安全に、しかも確実に重量のある屋根内型枠を解体する重要な働きをする。
前記の円形の壁面及び屋根の半球状をコンクリートで一体形成するにあたり、型枠を木材、FRP、鋼材等のいずれも選択可能であり、内壁型枠及び型枠保持機能と脱枠が容易な、屋根支保工パイプ金具、クロスバー円形直径維持パイプ、クロスパイプ支保工固定金具、壁枠斜め支保工パイプを使用することで、外枠に支保工を用いることなくコンクリート打設が可能で、施工の確実性を高めるとともに、省力化、後期の短縮化を可能にできる。
ドーム外部の壁と屋根は、断熱用塗料等を塗布することで、灼熱や風雪環境でも快適に生活ができる。
また、内部の壁と屋根は、漆喰壁を使用することで、調湿効果と防音効果を得られる。
また、本発明にかかる構築物は、暴風時には暴風シエルターとして活用することができる。
ドーム屋根左官補修や塗装及び完成後の屋根・保守点検回収塗装などでは、階段梯子で材質はパイプで手すりを設けた円形の周囲を可動できる装置を使うことで、安全に確実に施工時間を短縮できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の鉄筋コンクリート造ドームの構築方法は、以上説明してきた通り次のような効果を得ることが可能となる。
(イ)従来の工事現場で型枠を組み立てて鉄筋コンクリート造ドームを構築する方法では、円滑な局面を形成するには豊富な経験と多大な労力及び高度な技術を必要としたが、本発明は、同一形状の幅小壁型枠や、幅小屋根鋼製型枠を工場で大量作成し、これを現場で順次組み立ててドームを構築する方法である。その結果、精度性、品質性、正確性、施工性、経済性が高く円滑なドーム曲面施工を容易に構築することが可能である。
(ロ)鉄筋コンクリート造のドーム鋼製型枠を採用することで強度が強く、円形屋根頂部の天窓型枠を「屋根支保工パイプ金具」と「クロスパイプ支保工固定金具」でコンクリート重量を支えることで多くの支保工が不要となり、ドーム内部での作業性が非常によくなりスムーズな施工ができる。
(ハ)ドーム屋根の緩やかな傾斜や、急な傾斜角度の困難なコンクリート打設の問題点であるが、屋根外型枠を屋根内型枠の半分程度の長さにすることで、運搬、組み立て施工が容易になることや、コンクリート打設時のバイブレーター作業も容易にすることが可能となる。屋根外型枠上のコンクリート打設後は、左官で仕上げを行う。このように密実なコンクリートを打設する施工方法として有効である。
(ニ)コンクリート型枠の水平、垂直を正確に保持するために多くの労力を必要とするが、「クロスバー円形直径維持パイプ」と「壁枠斜め支保工パイプ」方式でそれぞれの部位での水平、垂直確認作業が容易にできて、煩雑な確認作業を省略することが出来て、素早く内壁型枠を組み立てることが可能となる。
(ホ)木製型枠やFRP製型枠によるドーム状の屋根の構築物を建築する方法では、脱枠時に型枠が破壊されることが多く、型枠転用ができないので経済合理性がない。しかし、鋼製型枠を工場生産することにより幅小鋼製型枠で軽量化を図り、工事現場で組み立てることができる本発明では、転用が可能で経済性も高くなり、木製型枠やFRP製型枠の欠点を克服できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ドーム状建築物のドーム状の屋根に鋼製型枠を配した状態を示した平面図
図2】ドーム状建築物の支保工等の配置位置を示した平面図
図3】ドーム状建築物の支保工等の配置位置を示した断面図
図4】ドーム状建築物の別の実施例の建築物内部を示した平面図
図5】ドーム状建築物の別の実施例の建築物外部を示した平面図
図6】ドーム状建築物の別の実施例の建築物外部を入口の左側から示した側面図
図7】ドーム状建築物の別の実施例の建築物外部を入口正面から示した側面図
図8】ドーム状建築物の別の実施例の建築物外部を入口の右側から示した側面図
図9】ドーム状建築物の別の実施例の建築物外部を入口の背面から示した側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、ドーム頂点の中心から均等に分割した数の鋼製型枠を配した様子を示した平面図である。
内壁型枠、外壁型枠、屋根内型枠、屋根外型枠ともに施工性を考慮した。
鋼製型枠は、幅600mm程度に小さくすることで運搬移動や組立が容易で、人力でも可能になる。
天窓部分の型枠底面にはアイボルトを溶接して、土間中心のアイボルトとチェーンで緊結して固定する。
また、アイボルトは屋根内型枠の脱枠時にチェーンブロックを取り付けることで、屋根内型枠のボルト穴にフックを掛けて脱枠することができる。
同様に4か所の屋根支保工パイプ金具の受平鉄板を溶接してあり、支保工先端に設けた平鉄板をボルトナット或いはUクリップで固結する。
【0010】
図2は、ドーム平面図上にドーム組み立ての際に使用する支保工等の配置位置を示すものである。
クロスパイプ支保工固定金具の配置位置、屋根支保工パイプ金具の配置、クロスバー円形直径維持パイプ、壁枠斜め支保工パイプ等の配置地を示す。
【0011】
図3は、ドーム断面図にドーム組み立て時に使用する支保工等の配置状況を示したものである。
【0012】
図4乃至9は、図1のドーム屋根を図1の中央縦方向に切断し、図1のドーム屋根を左右方向に長くした状態の建築物を示すものである。
図4乃至9は、図1のドーム屋根を左右方向に長くしているが、図1のドーム屋根を図1の中央横方向に切断し、図1のドーム屋根を上下方向に長くした状態の建築物にすることもできる。
【0013】
本発明にかかるコンクリート一体形成型のドーム状建築物は、
鋼製型枠を使用してドーム頂点の中心から均等に分割した型枠部品で構成した壁用曲面の幅小型枠部品で制作した各型枠をボルトナットやUクリップなどで緊結固定して施工する。
【0014】
まず、基礎土間を施工後に内壁型枠をコンクリート基礎土間面に設置した台木に乗せ、固着させて円形状に内壁型枠を確保する。
次に、壁頂点付近に「クロスバー円形直径維持パイプ」を直交に配置し、壁円形直径を確保する。
その後に、「壁枠斜め支保工パイプ」の、一方の端部を内壁型枠の頂部付近に固着させ、他方の端部を土間に固着する。
これにより(ホ)の問題点を解決できる。
【0015】
鋼製型枠は、既成定尺の鋼製品で加工できるように工夫してあり、(イ)の問題点を解決できる。
【0016】
次に、ドーム土間の円形中心点の垂直線上に天窓用の天窓型枠を所定位置に設置し、「屋根支保工パイプ金具」で高さと中心位置を確認し設置する。
この「屋根支保工パイプ金具」の垂直方向の上、中,下段の3か所に「クロスパイプ支保工固定金具」で支保工間の間隔を維持するとともに支保工の座屈を防止する目的で設置してコンクリート重量を支える。
これにより、(ロ)の問題点を解決できる。
【0017】
次にドーム内部に設置した足場に、屋根内型枠を移動させて、天窓型枠と内壁型枠頂点の間に、分割製作した屋根内型枠をボルトナットやUクリップ等の緊結材で固着する。
外壁型枠は、コンクリート基礎土間に台木を設置し、そこに乗せ順次円形状に並べ立て、内壁型枠に設置したセパレーターで固結する。
屋根外型枠は、屋根曲面半分ほどの長さで加工してあり、屋根内型枠とセパレーターで固結する。
屋根外型枠を屋根内型枠と同じ長さにすると、コンクリート打設の際に、コンクリートが確実に充填されているか判断が困難であるが、屋根外型枠の長さを半分にすることでコンクリート打設を容易にするとともに、バイブレーターの使用もスムーズに出来て密実な高品質のコンクリート打設を行うことができる。
これにより(ハ)及び(ニ)の問題点を解決できる。
【0018】
鋼製型枠を使用した、鉄筋コンクリート造のドーム構築物は、型枠重量が重くなるので型枠脱枠時に危険性が木製型枠等に比べて高くなる。
内壁型枠、外壁型枠、屋根外型枠は、養生期間後に容易に脱枠が可能である。
しかし、屋根内型枠の脱枠は高い位置から脱枠するので困難になる。
その際にドーム内に足場を組み、ドーム頂部の天窓型枠に溶接設置したアイボルトにチェーンブロックを設置し、屋根内型枠のボルト穴にフックをかけて脱枠時に急激に型枠が落ちないようにすることで安全に脱枠施工できるように工夫した。
【0019】
以上のように、本発明の鋼製型枠を使用した鉄筋コンクリート造ドーム状建築物の構築方法は、鋼製型枠工法の欠点である重量が大きい点を、型枠の幅を小さくすることで軽くし、人力で運搬組み立て施工ができるようにしたものである。鋼製型枠の持つ強度と脱枠が容易に可能で、木製やFRP製型枠の持つ弱点を克服することができる。
【0020】
鋼製型枠は工場で製作し、各工事現場に運搬移動することが容易で現場で鉄筋コンクリート造の一体成型型ドーム構築物を構築可能である。
鋼製型枠は,規格寸法,定尺鋼材を使用して工場生産することで安全性、正確性、快適性、強度的、経済性の高い廉価普及型の鉄筋コンクリート造のドーム状構築物の構築法である。
【0021】
一旦製作した鋼製型枠は、補修点検をすることで転用が可能であり、転用回数を増やすことができることで、木製型枠やFRP製型枠等と比較しても経済的効果が大きく木材等を浪費することもなくなる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9