(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020528
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】オゾン消去のための多層パッケージ構造
(51)【国際特許分類】
B65D 81/20 20060101AFI20240206BHJP
B65D 77/00 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
B65D81/20 G
B65D77/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023199604
(22)【出願日】2023-11-27
(62)【分割の表示】P 2022130333の分割
【原出願日】2017-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】517213094
【氏名又は名称】アドバンシックス・レジンズ・アンド・ケミカルズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ADVANSIX RESINS & CHEMICALS LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ハイミン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ミン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】エンドユーザーが消費する前に水のオゾン濃度を低下させることができる方法又は材料を提供する。
【解決手段】ポリマー材料から形成された外層、半芳香族ポリアミド複合材料から形成された1又は複数の内部層、及びポリマー材料から形成された内層、を含む複数の層によって形成された構造、並びに構造内に含有されたある量の水、を備えたパッケージ構成であって、水は、水の中に溶解されたある量のオゾンを含み、構造の内部層は、酸素を吸収し、オゾンの分解を誘導するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー材料から形成された外層、半芳香族ポリアミド複合材料から形成された1又は複数の内部層、及び、ポリエチレンまたはポリプロピレンから形成された内層、を含む複数の層によって形成されたパッケージ構造、及び
前記構造内に含有されたある量の水であって、前記水は、前記水の中に溶解されたある量のオゾンを含む、水、
を備え、前記構造の前記内部層は、酸素を吸収し、前記オゾンの分解を誘導するように構成されていて、
前記水は、その中に溶解された0.001~0.5mg/m3のオゾンを含む、
パッケージ構成。
【請求項2】
前記外層の前記ポリマー材料が、食品グレードのポリオレフィン、食品グレードのポリエステル、ナイロン、エチレンビニルアルコール、又はポリアミド系材料から形成されている、請求項1に記載のパッケージ構成。
【請求項3】
前記外層がポリエチレンテレフタレートから形成されている、請求項1に記載のパッケージ構成。
【請求項4】
前記複数の層が、さらに、前記複数の層のうちのいずれか2層の間に、少なくとも1つの結合層を含む、請求項1に記載のパッケージ構成。
【請求項5】
前記少なくとも1つの結合層が、前記内層と前記内部層との間に第一の結合材料を、前記内部層と前記外層との間に第二の結合材料を含む、請求項4に記載のパッケージ構成。
【請求項6】
前記外層及び前記内層が、各々独立して、ポリエチレン及びポリプロピレンのうちの1つから形成されている、請求項1に記載のパッケージ構成。
【請求項7】
前記複数の層が、さらに、前記内部層と前記第二の結合材料との間に第二の内部層を含み、前記第二の内部層は、エチレンビニルアルコール材料から形成されている、請求項5に記載のパッケージ構成。
【請求項8】
前記複数の層が、さらに、前記第二の内部層と前記第二の結合材料との間に第三の内部層を含み、前記第三の内部層は、ポリアミド材料から形成されている、請求項7に記載のパッケージ構成。
【請求項9】
前記外層が、ポリエチレン及びポリプロピレンのうちの1つから形成されている、請求項8に記載のパッケージ構成。
【請求項10】
前記第一及び第二の結合材料が、不飽和多塩基カルボン酸変性ポリオレフィン、不飽和多塩基カルボン酸無水物変性ポリオレフィン、及びオレフィンとアルキルエステルとのコポリマーのうちの1つから形成されている、請求項5に記載のパッケージ構成。
【請求項11】
前記第一及び第二の結合材料が、不飽和多塩基カルボン酸無水物変性ポリオレフィンから形成され、前記不飽和多塩基カルボン酸無水物変性ポリオレフィンは、無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレンである、請求項10に記載のパッケージ構成。
【請求項12】
前記構造が、ボトルである、請求項1に記載のパッケージ構成。
【請求項13】
前記構造が、フィルム及びバッグのうちの1つである、請求項1に記載のパッケージ構
成。
【請求項14】
外層、半芳香族ポリアミド複合材料から形成された少なくとも1つの内部層、及び、ポリエチレンまたはポリプロピレンから形成された内層を含む複数の層から形成されたパッケージ構造に、オゾンを含有する水を充填すること、及び
前記パッケージ構造をシールすること、
を含み、前記パッケージ構造の前記内部層は、酸素を吸収して、前記水の中の前記オゾンの分解を誘導することによってオゾンを消去するように構成されていて、
前記水は、その中に溶解された0.001~0.5mg/m3のオゾンを含む、
オゾンを消去するための方法。
【請求項15】
前記複数の層が、さらに、前記複数の層のうちのいずれか2層の間に、少なくとも1つの結合層を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの結合層が、前記内層と前記内部層との間に第一の結合材料を、前記内部層と前記外層との間に第二の結合材料を含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層パッケージ構造に関し、詳細には、パッケージ構造内の内容物からオゾンを消去するように構成された多層構造に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾンは、水の殺菌、特に飲料水の殺菌に広く用いられている。一般的に、オゾンは、様々な材料から作られたバッグ又はボトルに、水と共に投入される。バッグ又はボトルに詰められた水の輸送中及び保存中に殺菌が有効であることを確保するために、多くの場合、過剰のオゾンがバッグ又はボトルにポンプ注入される。このため、通常は、エンドユーザーが水を飲む直前に、ある程度の残留オゾンが、場合によっては比較的高い濃度で存在し、このことは、水の味及び匂いに影響を与える可能性が高い。
【発明の概要】
【0003】
オゾンを除去するために、いくつかの製品製造業者は、オゾンの消失を促進するために、飲む前に水を加熱することをエンドユーザーに提案している。しかし、飲む前に水を加熱することは、飲む前のエンドユーザーにとって望ましくない場合が多い、又は実行不可能であり得る。このため、エンドユーザーが消費する前に水のオゾン濃度を低下させることができる方法又は材料を提供することが所望され、したがって、オゾンを消去することができる材料及び/又は方法が求められている。
【0004】
本開示の1つの実施形態では、パッケージ構成が提供される。パッケージ構成は、ポリマー材料から形成された外層、半芳香族ポリアミド複合材料から形成された1又は複数の内部層、ポリマー材料から形成された内層、を含む複数の層によって形成された構造、及び構造内に含有されたある量の水、を含み、水は、水の中に溶解されたある量のオゾンを含む。構造の内部層は、酸素を吸収し、オゾンの分解を誘導するように構成されている。
【0005】
パッケージ構成の1つの態様では、内層のポリマー材料は、食品グレードのポリオレフィン及び食品グレードのポリエステルのうちの1つから形成されている。
パッケージ構成の別の態様では、外層のポリマー材料は、食品グレードのポリオレフィン、食品グレードのポリエステル、ナイロン、エチレンビニルアルコール、又はポリアミド系材料から形成されている。
【0006】
パッケージ構成の別の態様では、外層及び内層は、いずれもポリエチレンテレフタレートから形成されている。
パッケージ構成のさらなる態様では、複数の層は、さらに、複数の層のうちのいずれか2層の間に、少なくとも1つの結合層(tie layer)を含む。
【0007】
パッケージ構成のさらなる態様では、少なくとも1つの結合層は、内層と内部層との間に第一の結合材料を、内部層と外層との間に第二の結合材料を含む。
パッケージ構成の別の態様では、外層及び内層は、各々独立して、ポリエチレン及びポリプロピレンのうちの1つから形成されている。
【0008】
パッケージ構成のさらなる態様では、複数の層は、さらに、内部層と第二の結合材料との間に第二の内部層を含み、第二の内部層は、エチレンビニルアルコール材料から形成されている。
【0009】
パッケージ構成の別の態様では、複数の層は、さらに、第二の内部層と第二の結合材料
との間に第三の内部層を含み、第三の内部層は、ポリアミド材料から形成されている。
パッケージ構成の別の態様では、第一及び第二の結合材料は、不飽和多塩基カルボン酸変性ポリオレフィン、不飽和多塩基カルボン酸無水物変性ポリオレフィン、及びオレフィンとアルキルエステルとのコポリマーのうちの1つから形成されている。
【0010】
パッケージ構成のさらなる態様では、第一及び第二の結合材料は、不飽和多塩基カルボン酸無水物変性ポリオレフィンから形成され、不飽和多塩基カルボン酸無水物変性ポリオレフィンは、無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレンである。
【0011】
パッケージ構成のさらなる態様では、構造は、剛性である。
パッケージ構成の別の態様では、構造は、可撓性である。
パッケージ構成のさらなる態様では、構造は、ボトルである。
【0012】
パッケージ構成の別の態様では、構造は、フィルム及びバッグのうちの1つである。
パッケージ構成のさらなる態様では、水は、その中に溶解された0.001~0.5mg/m3のオゾンを含む。
【0013】
本開示の別の実施形態では、オゾンを消去するための方法が提供される。この方法は、外層、半芳香族ポリアミド複合材料から形成された少なくとも1つの内部層、及びポリマー材料から形成された内層を含む複数の層から形成された構造に、オゾンで殺菌された水を充填すること、並びに構造をシールすること、を含む。構造の内部層は、酸素を吸収し、水中のオゾンの分解を誘導するように構成されている。
【0014】
方法の1つの態様では、複数の層は、さらに、複数の層のうちのいずれか2層の間に、少なくとも1つの結合層を含む。
方法のさらなる態様では、少なくとも1つの結合層は、内層と内部層との間に第一の結合材料を、内部層と外層との間に第二の結合材料を含む。
【0015】
方法の別の態様では、水は、その中に溶解された0.001~0.5mg/m3のオゾンを含む。
本発明の実施形態の以下の記述を添付の図面と合わせて参照することによって、本発明の上述の及び他の特徴、並びにそれらを実現する方法が、より明らかとなり、本発明自体が、より良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本開示の剛性パッケージ構成の実施形態を示す。
【
図2】
図2は、
図1のパッケージ構成の構造の一部分を通しての部分断面図を示す。
【
図3】
図3は、本開示の可撓性パッケージ構成の実施形態を示す。
【
図4】
図4は、
図3のパッケージ構成の構造の一部分を通しての部分断面図を示す。
【
図5】
図5は、本開示の半芳香族ポリアミド複合材料が酸素を消去する機構を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
複数の図を通して、対応する符号は、対応する部分を示す。図面は、本開示に従う様々な特徴及び構成部分の実施形態を表すが、図面は、必ずしも正しい寸法ではなく、ある特定の特徴は、本開示を例示し、説明する目的で、誇張されている場合がある。本明細書で示される実例は、本発明の1又は複数の実施形態を例証するものであり、そのような実例は、いかなる形であっても、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない
。
【0018】
構造内の水中に存在するオゾンを消去するように構成された構造を備えたパッケージ構成が開示される。本開示のパッケージ構成は、一般的に、オゾンで殺菌されたある量の水又はある量のオゾン水溶液を含有する多層フィルムから形成された構造を含む。構造の多層フィルムは、一般的に、異なるポリマーから形成された複数の層を含む。以下でさらに考察されるように、本開示は、ボトル又はバッグなどの様々な形状に形成されたフィルムを開示し、例えば、最外層、最内層、及びそれらの間にある1若しくは複数の層を含む1から多くは30、又はそれ以上の層を含む。様々な実施形態では、いずれの1つの層が、最内層として、最外層として、及び/又はそれらの間にある1若しくは複数の層として働いてもよい。
【0019】
例えば、多層フィルムは、一般的に、包装具の構造内に含有された殺菌水又はオゾン水溶液と接触している内層を含む。内層の主な機能は、食品との安全な直接接触を可能とすること、シール可能とすること、及び良好な水分バリア性能を提供すると同時に、以下で詳細に述べる機構を介して酸素を消去する量の水分の透過も促進すること、を含む。内層は、ポリエチレン若しくはポリプロピレンなどの食品グレードのポリオレフィン、又はポリエチレンテレフタレートなどの食品グレードのポリエステルから形成されてよい。バッグなどの可撓性構造の場合、内層は、ポリエチレン又はポリプロピレンから形成されてよい。ポリエチレン及びポリプロピレンは、一般的に、良好な水分バリア性能を有し、ポリエチレンは、およそ120℃というその低い融点のために、多層フィルムにおけるシール層として用いられ得る。加えて、ポリエチレン及びポリプロピレンでは、一般的に、低いオリゴマー含有量、高い耐化学薬品及び溶剤性、高い透明性、並びに低いコストが得られる。ボトルなどの剛性構造の場合、内層は、ポリエチレンテレフタレートから形成されてよい。ポリエチレンテレフタレートは、一般的に、適度の水分バリア性能を有し、半剛性から剛性であり得る。しかし、ポリエチレンテレフタレートの水分バリア性能は、ポリエチレン及びポリプロピレンほど良好ではない。加えて、ポリエチレンテレフタレートは、ほとんどのナイロン材料と比較して高い純度を有し、一般的に、良好な耐化学薬品及び溶剤性、並びに高い透明性を提供する。
【0020】
さらに、多層フィルムは、一般的に、周囲環境に面し、構造の周囲にある大気と接触している外層も含む。外層は、ポリエチレン若しくはポリプロピレンなどの食品グレードのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどの食品グレードのポリエステル、ナイロン、エチレンビニルアルコール、又は半芳香族ポリアミド複合材料(すなわち、Aegis(登録商標)バリア材料、AdvanSix Resins&Chemicals LLCから入手可能)などのポリアミド系材料から形成されてよい。様々な実施形態では、外層は、外層が周囲環境の酸素及び/又は水分から他の層を保護するように、ポリエチレン若しくはポリプロピレンなどの食品グレードのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどの食品グレードのポリエステル、ナイロン、又はエチレンビニルアルコールから形成されている。
【0021】
可撓性構造の場合、内層と同様に、外層は、ポリエチレン又はポリプロピレンから形成されてよい。ポリエチレン及びポリプロピレンは、一般的に、良好な水分バリア性能を有し、ポリエチレンは、およそ120℃というその低い融点のために、多層フィルムにおけるシール層として用いられ得る。一般的に、ポリエチレン及びポリプロピレンは、それらが他の層に対する良好な保護、及び水の有効期間中にわたって構造内部にある水の良好な保護を提供するように、良好な透明性並びに良好な耐化学薬品及び溶剤性も提供し得る。剛性構造の場合、内層と同様に、外層は、ポリエチレンテレフタレートから形成されてよい。ポリエチレンテレフタレートは、一般的に、適度の水分バリア性能を有し、半剛性から剛性であり得る。加えて、ポリエチレンテレフタレートは、それが他の層及び構造内部
にある食品に対する良好な保護も提供することができるように、良好な透明性並びに良好な耐化学薬品及び溶剤性も提供し得る。
【0022】
多層フィルムは、内層と外層との間に配置された内部層も含む。一般的に、内部層は、ポリアミド系材料から形成され、これは、多層フィルムに強度及び耐穿刺性を提供する。ポリアミド系材料の層は、酸素及びオゾンを消去する能力も有する。より具体的には、ポリアミド系材料の層は、構成から酸素を除去する能力を有し、その酸素の除去が、その後除去することができる酸素へのオゾンの分解を推進し、その結果、間接的にオゾンが消去される。様々な実施形態では、ポリアミド系材料は、単一層として用いられてよく、又はそれは、ポリアミドとブレンドされて内部層を形成してもよい。
【0023】
オゾンは、比較的不安定な化合物であって、非常に短い半減期(30分未満)を有し、その後、オゾンは酸素に分解する。オゾンと酸素との間の反応は、以下の反応(I)に示されるように、温度、圧力、及び他の因子に影響され得る特定の反応平衡定数を有する。
【0024】
【0025】
したがって、オゾンは、酸素とオゾンとの間の平衡が達成されるように、酸素へとより速く分解し得る。オゾンの分解に対する1つの例示的な機構は、以下の通りの機構(I)であり:
初期反応 O3+H2O→O2+OH・
O3+OH-→O2
-+HO2・
伝搬反応 O3+OH・→O2+HO2・
O3+H2O・→2O2+OH・
停止反応 2HO2・→O2+H2O2、(I)
オゾンは、水と反応して酸素を生成する。オゾンの分解に対する別の例示的な機構は、以下の通りの機構(II)であり:
O3+OH-→O2+HO2・
O3+HO2
-→O2+O2
-+HO・
O3+OH・→O2+HO2・
HO2・+HO・→HO2・+OH-
OH-+HO・→O-+H2O
O3+O2
-→O3
-+O2
O3
-+H+→HO・+O2
O-+H2O→HO・+OH-、(II)
フリーラジカル連鎖反応が、水中で発生している。
【0026】
ポリアミド系材料の層が酸素を消去するに従って、ポリアミド系材料中への吸収による酸素の除去は、さらに、上記反応(I)の平衡を右側へシフトし、オゾンの酸素への分解が増加する。オゾンの酸素への分解を推進することによって、ポリアミド系材料の層は、本質的にオゾンを消去又は除去するように働く。
【0027】
ポリアミド系層における酸素消去は、水の存在によって活性化され、水は、フィルムの内層及び/又は外層を透過し、酸素及びオゾンの初期の迅速な進入を促進する。水の存在はまた、ポリマー全体への酸素の拡散も促進する。水は、ナイロン系材料の可塑剤として作用し、ナイロン系材料(すなわち、多層フィルムの層)の酸素透過率を高める。酸素は、以下に示されるように、開始剤(すなわち、水分又は水)及び触媒(すなわち、ステア
リン酸コバルト)の存在下で酸素と反応して酸化剤を生成するポリアミド系材料中のポリアミドによって消去又は除去され、したがって、水中のオゾンの分解を誘導する。
【0028】
【0029】
例示的な実施形態では、ポリアミド系材料は、半芳香族ポリアミド複合材料である。1つの適切な半芳香族ポリアミド複合材料は、AdvanSix Resins & Che
micals LLCから入手可能であるAegis(登録商標)バリア材料である。酸
素を消去するポリアミド系材料の機構は、
図5に示される。半芳香族ポリアミド複合層は、キャスト、インフレーション、又は二軸延伸プロセスによって形成された屈曲フィルム(flexural film)であってよい。
【0030】
酸素を消去することができる典型的なポリアミド系又はナイロン系材料は、被酸化性ポリマー、及び水による消去の開始に必要とされる活性化エネルギーを低下させる触媒を含む。被酸化性ポリマーは、酸素に対して特に敏感なパッケージ内容物の有効期間を延長する目的で、典型的には、構造安定性を提供するための結晶性ポリマー、及び半結晶性であり被酸化性であるアモルファスポリマー、及び所望に応じてさらに、スクアレン、脂肪酸、又はポリブタジエンなどの不飽和エチレン系炭化水素、のブレンドを含む。不飽和エチレン系炭化水素は、通常、包装材料と適合させるために、化学基によって末端官能化されている。
【0031】
酸素を消去することができるポリアミド系又はナイロン系材料は、典型的には、主成分(すなわち、材料全体の50重量%超)及び副成分(すなわち、材料の35重量%未満)を含有する。様々な実施形態では、主成分は、1若しくは複数の半芳香族ポリアミド及び/又はポリアミド6/66コポリマーによって形成されたアモルファスナイロンであってよく、副成分は、ポリアミド6であってよい。
【0032】
ポリアミド系又はナイロン系材料は、酸素の消去を加速するための触媒も含んでよい。様々な実施形態では、触媒は、ポリアミド複合材料の総重量の5重量%未満の量で存在してよい。触媒は、ステアリン酸コバルトを例とする遷移金属塩であってよい。所望に応じて、不飽和エチレン系炭化水素が、ポリアミド系又はナイロン系材料に添加されてもよい。不飽和エチレン系炭化水素は、末端官能化ポリブタジエンなどの不飽和エチレン系炭化水素を含んでよい。
【0033】
他の種類の酸素消去剤が用いられてもよい。例えば、ドライ食品の保存の場合、ある特定のポリ不飽和脂肪酸(PUFA)が用いられ得る。しかし、PUFAの使用は、水が存在しない場合に制限されており、なぜなら、少量の水分がPUFA消去剤を活性化し、そのことが、その消去効果を急速に失わせるからである。
【0034】
様々な実施形態では、多層フィルムは、内層と外層との間に配置されたさらなる内部層も含み得る。例えば、多層フィルムは、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6とポリアミド66とのコポリマー、ポリアミド12、ポリアミド6T、MXD6、及び/又は他の種類のポリアミドなどの材料から形成された1又は複数のポリアミド層、エチレンビニルアルコール(EVOH)から形成された1又は複数の層、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)から形成された1又は複数の層、1又は複数のエチレンアクリル酸(EVA)層、1又は複数のポリ塩化ビニル(PVC)層、1又は複数のポリ塩化ビニリデン(PV
DC)層、1又は複数のポリスチレン(PS)層、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンから形成された1又は複数の層、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルから形成された1又は複数の層、並びに/又は食品包装用多層フィルムに用いるのに適する1又は複数の他の種類のポリマー層、を含み得る。
【0035】
ポリアミド層又はナイロン層の主たる機能は、強度、耐穿刺性、耐曲げクラック性、熱安定性、低温耐久性、及び/又は耐紫外線性能を多層フィルムに提供することである。EVOHから形成された層の主たる機能は、酸素バリア及び/又は水分バリアとして作用することである。より具体的には、エチレンビニルアルコール層は、半芳香族ポリアミド複合材料層を、酸素への過剰な曝露から保護し、したがって、半芳香族ポリアミド複合材料層の有効期間を延長するように構成されている。しかし、水分を吸収すると、EVOH層の酸素バリア性能及び透明性は低下する可能性があり、一方EVOH層のヘイズは増加する可能性がある。
【0036】
様々な実施形態では、半芳香族ポリアミド複合材料層の含有量(load)は、パッケージタイプ、又は包装される食品の体積及び/若しくは保存期間に応じて、1%~60%であってよい。しかしながら、半芳香族ポリアミド複合材料層は、EVOHから形成された層なしで多層フィルム中に存在してもよい。
【0037】
多層フィルムは、フィルムの様々な層間の接着を促進するために、1又は複数の結合層を含んでもよい。いくつかの例示的な実施形態では、結合層は、強く可塑化又は粘着性付与(tacified)が成された結果として、アルコール基、アミン基、又は酸基によって官能化された部分官能化オレフィンとされた様々なポリオレフィンであってよい。ポリオレフィンは、アクリル接着剤、樹脂(例:樹脂及びその誘導体、テルペン及び変性テルペン、脂肪族、脂環式、及び芳香族樹脂(C5脂肪族樹脂、C9芳香族樹脂、及びC5/C9脂肪族/芳香族樹脂)、水素化炭化水素樹脂、並びにテルペン-フェノール樹脂を含む粘着性付与剤などの添加剤によって可塑化又は粘着性付与されてよい。例えば、結合層は、不飽和多塩基カルボン酸変性ポリオレフィン、不飽和多塩基カルボン酸無水物変性ポリオレフィン、及び/又はオレフィンとアルキルエステルとのコポリマーから形成されてよい。例示的な結合層は、無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン、すなわちLLDPE-g-MAH、Dupont製のグレード名Bynol 41E687、を含む。LLD
PE-g-MAHの融点は、およそ119℃であり、メルトフローインデックスは、ASTM D1238-04(190℃/2.16kg)に従って、およそ1.7g/10分
である。
【0038】
多層フィルムを構成する層に基づいて、構造は、多層フィルムがボトル、バッグ、又は他のいずれかの類似の構造若しくは製品/包装材に形成することができるように、剛性又は可撓性であってよい。様々な実施形態では、多層フィルムは、およそ9~1500μmの厚さであってよく、この場合、各半芳香族ポリアミド複合材料層は、およそ3~50μmの厚さであってよく、各EVOH層は、およそ3~50μmの厚さであってよく、各ポリアミド層は、およそ3~50μmの厚さであってよく、並びに/又は各外層及び/若しくは内層は、およそ5~700μmの厚さであってよい。1つの実施形態では、多層フィルムは、およそ100μmの厚さであってよく、この場合、半芳香族ポリアミド複合材料層は、およそ10μmの厚さであってよく、EVOH層は、およそ10μmの厚さであってよく、ポリアミド層は、およそ10μmの厚さであってよく、並びに外層及び/又は内層は、各々およそ35μmの厚さであってよい。
【0039】
多層フィルムから形成された構造は、ある量の飲料水、例えば水道水又は他の飲料用水が充填され、シールされる。構造内に含有された水は、オゾンで殺菌され、それによって、オゾンが水に溶解されてオゾン水溶液が作られる。オゾンは、気泡拡散、ベンチュリ注
入、及び/又は静的混合によって水に溶解されてよい。オゾン水溶液は、一般的に、およそ0.001~0.5mg/m3のオゾンを含む。
【0040】
図1を参照すると、オゾンで殺菌されたある量の水14が充填されたボトルの形状の構造12を含むパッケージ構成10の例示的な実施形態が示される。
図2を参照すると、構造12の例示的な多層フィルム16の断面が示される。一般的に、多層フィルム16は、パッケージ構成10内に含有された水14に隣接する第一のポリマー層20、大気18に隣接する第二のポリマー層24、及び第一のポリマー層20と第二のポリマー層24との間に配置された半芳香族ポリアミド複合層22を含む。様々な実施形態では、第一のポリマー層20及び第二のポリマー層24は、独立して、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアルコール、ポリアミド、又はポリエチレンテレフタレートから形成されていてよい。例示的な実施形態では、構造又はボトル12が剛性であるように、第一のポリマー層20及び第二のポリマー層24は、いずれもポリエチレンテレフタレート(PET)から形成されている。
【0041】
いくつかの実施形態では、多層フィルムは、外層と内部層との間に、及び/又は内層と内部層との間に、追加のポリマー層を含んでよい。例えば、
図3を参照すると、オゾンで殺菌されたある量の水14が充填され、シールされたバッグの形状の構造112を含むパッケージ構成110の第二の例示的な実施形態が示される。
図4を参照すると、構造112の例示的な多層フィルム116が示される。一般的に、多層フィルム116は、水14に隣接する第一のポリマー層120、大気18に隣接する第二のポリマー層124、及び第一のポリマー層120と第二のポリマー層124との間に配置された半芳香族ポリアミド複合層122を含む。様々な実施形態では、第一のポリマー層120及び第二のポリマー層124は、独立して、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアルコール、ポリアミド、又はポリエチレンテレフタレートから形成されていてよい。例示的な実施形態では、構造又はバッグ112が可撓性であるように、第一のポリマー層120及び第二のポリマー層124は、いずれもポリエチレン又はポリプロピレンから形成されている。様々な実施形態では、第一のポリマー層120及び第二のポリマー層124は、いずれもポリエチレンであってよく、又は第一のポリマー層120は、ポリエチレンであってよく、第二のポリマー層124は、ポリプロピレンであってよく、若しくはその逆であってもよい。加えて、多層フィルム116は、さらに、第一のポリマー層120と半芳香族ポリアミド複合層122との間に配置された第一の結合材料層126、第二のポリマー層124と半芳香族ポリアミド複合層122との間に配置された第二の結合材料層128、及び第一の結合材料層126と半芳香族ポリアミド複合層122との間に配置されたエチレンビニルアルコールから形成された層130を含む。エチレンビニルアルコールから形成された層130は、例示的に、第一の結合材料層126によって第一のポリマー層120と結合されており、半芳香族ポリアミド複合層122は、例示的に、第二の結合材料層128によって第二のポリマー層124と結合されている。
【0042】
別の例示的な多層フィルムは、構造112と同様に、層120、122、124、126、128、及び130を、エチレンビニルアルコールから形成された層130と第二の結合材料層128との間に配置されたポリアミド層と共に含む。
【0043】
なお別の例示的な多層フィルムは、構造112と同様に、層120、122、124、126、及び128を、エチレンビニルアルコールから形成された層130なしで含む。
実施例
比較実施例1
以下の構造の2つの多層フィルムを、製造し、分析した。
【0044】
フィルム構造1は、半芳香族ポリアミド複合層を有する以下の構造の多層フィルムを含
み:
(内側)PE/結合層/半芳香族ポリアミド複合層/EVOH/PA6,66コポリマー/結合層/PE(外側)
合計厚さは、およそ100μmであり、半芳香族ポリアミド複合層の厚さは、およそ10μmであり、EVOH層の厚さは、およそ10μmであり、ポリアミド6,66コポリマー層の厚さは、およそ10μmであり、ポリエチレン層の厚さは、およそ35μmであった。
【0045】
フィルム構造2は、基準として、半芳香族ポリアミド複合層なしの多層フィルムを含み、多層フィルムは、以下の構造を有し:
PE/結合層/PA6,66コポリマー/EVOH/PA6,66コポリマー/結合層/PE
合計厚さは、およそ100μmであり、EVOH層の厚さは、およそ10μmであり、ポリアミド6,66コポリマー層の厚さは、およそ10μmであり、ポリエチレン層の厚さは、およそ35μmであった。
【0046】
各々の多層フィルムを用いて、約7.5リットルの容量の可撓性バッグを作製した。続いて、各バッグに、バッグに入れる前にオゾン殺菌した水を充填した。水を充填したバッグを、3ヶ月間保存し、水の匂いを嗅ぎ、水を試飲することによって、各バッグ中の水の状態、品質、匂い、及び異臭を比較した。試験結果から、半芳香族ポリアミド複合層を含有するフィルム構造1で作製したバッグ中の水は、半芳香族ポリアミド複合層を含んでいなかったフィルム構造2で作製したバッグ中の水と比較して異臭が少なかったことが示された。オゾン殺菌水の異臭が、オゾン殺菌からの過剰なオゾンに起因することは公知である。このように、フィルム構造2がフィルム構造1よりも強い臭気を有していたことから、半芳香族ポリアミド複合層が、直接又は間接的にオゾンを消去したに違いないと結論づけることができる。
【0047】
本発明を、例示的な設計に関して記載してきたが、本発明は、本開示の趣旨及び範囲内で、さらに改変することができる。さらに、本出願は、本開示からのそのような逸脱を、本発明が属する技術分野における公知の又は従来の実践の範囲内に含まれるとして包含することを意図している。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー材料から形成された外層、半芳香族ポリアミド複合材料から形成された1又は複数の内部層、及びポリマー材料から形成された内層、を含む複数の層によって形成された構造、及び
前記構造内に含有されたある量の水であって、前記水の中に溶解された0.001~0.5mg/m3のオゾンを含む、水、
を備え、
前記1又は複数の内部層の半芳香族ポリアミドは被酸化性ポリマー及び触媒を含み、
前記構造の前記内部層は、酸素を吸収し、前記オゾンの分解を誘導するように構成されている、パッケージ構成。
【請求項2】
前記外層の前記ポリマー材料が、食品グレードのポリオレフィン、食品グレードのポリエステル、ナイロン、エチレンビニルアルコール、又はポリアミド系材料から形成されている、請求項1に記載のパッケージ構成。
【請求項3】
前記外層がポリエチレンテレフタレートから形成されている、請求項1に記載のパッケージ構成。
【請求項4】
前記複数の層が、さらに、前記複数の層のうちのいずれか2層の間に、少なくとも1つの結合層を含む、請求項1に記載のパッケージ構成。
【請求項5】
前記少なくとも1つの結合層が、前記内層と前記内部層との間に第一の結合材料を、前記内部層と前記外層との間に第二の結合材料を含む、請求項4に記載のパッケージ構成。
【請求項6】
前記外層及び前記内層が、各々独立して、ポリエチレン及びポリプロピレンのうちの1つから形成されている、請求項1に記載のパッケージ構成。
【請求項7】
前記複数の層が、さらに、前記内部層と前記第二の結合材料との間に第二の内部層を含み、前記第二の内部層は、エチレンビニルアルコール材料から形成されている、請求項5に記載のパッケージ構成。
【請求項8】
前記複数の層が、さらに、前記第二の内部層と前記第二の結合材料との間に第三の内部層を含み、前記第三の内部層は、ポリアミド材料から形成されている、請求項7に記載のパッケージ構成。
【請求項9】
前記外層が、ポリエチレン及びポリプロピレンのうちの1つから形成されている、請求項8に記載のパッケージ構成。
【請求項10】
前記第一及び第二の結合材料が、不飽和多塩基カルボン酸変性ポリオレフィン、不飽和多塩基カルボン酸無水物変性ポリオレフィン、及びオレフィンとアルキルエステルとのコポリマーのうちの1つから形成されている、請求項5に記載のパッケージ構成。
【請求項11】
前記第一及び第二の結合材料が、不飽和多塩基カルボン酸無水物変性ポリオレフィンから形成され、前記不飽和多塩基カルボン酸無水物変性ポリオレフィンは、無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレンである、請求項10に記載のパッケージ構成。
【請求項12】
前記構造が、ボトルである、請求項1に記載のパッケージ構成。
【請求項13】
前記構造が、フィルム及びバッグのうちの1つである、請求項1に記載のパッケージ構成。
【請求項14】
外層、半芳香族ポリアミド複合材料から形成された少なくとも1つの内部層、及び、ポリマー材料から形成された内層を含む複数の層から形成されたパッケージ構造に、オゾンを含有する水を充填すること、及び
前記パッケージ構造をシールすること、
を含み、
前記1又は複数の内部層の半芳香族ポリアミドは被酸化性ポリマー及び触媒を含み、
前記パッケージ構造の前記内部層は、酸素を吸収して、前記水の中の前記オゾンの分解を誘導することによってオゾンを消去するように構成されていて、
前記水は、その中に溶解された0.001~0.5mg/m3のオゾンを含む、
オゾンを消去するための方法。
【請求項15】
前記複数の層が、さらに、前記複数の層のうちのいずれか2層の間に、少なくとも1つの結合層を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの結合層が、前記内層と前記内部層との間に第一の結合材料を、前記内部層と前記外層との間に第二の結合材料を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記内層の前記ポリマー材料が、食品グレードのポリオレフィン及び食品グレードのポリエステルの一つから形成されている、請求項1に記載のパッケージ構成。