(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020552
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】複合時計及びその製作方法
(51)【国際特許分類】
G04B 17/06 20060101AFI20240206BHJP
G04D 7/10 20060101ALI20240206BHJP
G04B 18/00 20060101ALI20240206BHJP
G04B 17/20 20060101ALI20240206BHJP
G04D 7/08 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
G04B17/06 A
G04D7/10
G04B18/00 Z
G04B17/20
G04D7/08
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023200572
(22)【出願日】2023-11-28
(62)【分割の表示】P 2021132501の分割
【原出願日】2016-10-11
(31)【優先権主張番号】15200204.4
(32)【優先日】2015-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507308924
【氏名又は名称】セエスウエム サントル スイス デレクトロニクエ ドゥ ミクロテクニク ソシエテ アノニム-ルシェルシェ エ デブロップマン
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラニ、セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ピュジン、ラファエル
(57)【要約】
【課題】時計の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1種の第1の材料から少なくとも1種の第1の材料を微細製造又はマイクロフォーミングを実行するステップと、第1の部分(1)上に、成形することなく、少なくとも1種の第2の材料から作られた時計の少なくとも1つの第2の部分(3)を堆積させるステップと、第1の部分上で第2の部分(3)を連結させるために第2の材料を処理するステップと、少なくとも第2の材料のマイクロメートル、サブミクロン又は好ましくはナノメートル粒子の溶液又は懸濁液の形態でインクを霧状にするステップと、第2の部分(3)を形成するために時計の第1の部分(1)に霧状にしたインクを噴霧するステップと、第2の部分(3)を硬化させるステップと、を含み、第2の部分(3)は、時計の慣性を修正するように構成された機能要素を形成する製造方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バランスの慣性質量を補正する方法であって、
少なくとも第1の材料から前記バランスを微細製造またはマイクロフォーミングするステップと、
少なくとも第2の材料から作られた少なくとも第2の部品を、成形することなく、前記バランスに直接堆積させるステップと、
を含み、
前記第2の部品が、前記バランス上に堆積された前記慣性質量を形成し、
前記第2の部品を堆積させるステップが、
少なくとも前記第2の材料のサブミクロン粒子またはナノメートル粒子の溶液または懸濁液の形態のインクを霧状にするステップであって、当該霧状にするステップは噴霧チャンバ内で行われる、前記霧状にするステップと、
前記噴霧チャンバに接続されたノズルを使用して、霧状にされた前記インクを前記バランス(1)に噴霧して前記第2の部分(3)を形成するステップと、
前記第2の部品を硬化させて、前記第2の部品を前記バランスに接続するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第2の部品を硬化させるステップは、前記第2の部品に対して炉内での熱処理またはレーザによる局所焼結を行うことを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第2の部品が、金(Au)および/または白金(Pt)を含む材料から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記バランスが、シリコン、金属、セラミック、プラスチック、又はこれらの組み合わせから作られる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記バランスの自動釣り合いを可能にする測定システムを直接挿入するステップを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の部品が、堆積する表面と10°から89°の角度をなす側面を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の部品を硬化させるステップが、光架橋および/または化学架橋による重合ステップを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計及び/又は時計セットの製造方法並びにこの方法により得られる時計に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、シリコンなどの第1の材料から得られる第1の部分と、例えば金属などの第2の材料から得られる第2の部分との2つの部分を有する複合時計の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
時計製造法の分野では、時計、例えばバランススプリング、ホイール又はバランスなどを例えばシリコンから作ることはよく知られている。
【0004】
実際、シリコンは、その軽量性、弾力性、非磁性性、及び深反応性イオンエッチング(DRIE)などの微細製造技術を用いた機械加工の可能性を含む多くの利点を有する。
【0005】
しかしながら、シリコンにもいくつかの欠点がある。シリコンは塑性領域を持たないため脆く、壊れやすく、シリコンのホイールを軸に固定することは困難である。さらに、シリコンの軽さは利点でもあるが、バランス又は振動質量などの十分な慣性又は不均衡を持たなければならない時計をシリコンのみから作ることを可能にしない。
【0006】
これらの欠点を解決するために、例えばシリコンなどで作られた第1の部分と金属で作られた第2の部分とを有する、いわゆる複合時計又はハイブリッド時計が既に考えられている。これは、例えば、国際公開第2008/135817号明細書、欧州特許第2,060,534号明細書及び欧州特許第2,104,005号明細書の場合に特に当てはまる。
【0007】
欧州特許第1,172,714A1号明細書には、インクジェット装置を用いた局所的なインク凸部によって時計のバランスの質量を調整する方法も記載されている。しかしながら、この明細書では、材料に基づいて適用能力及びその精度を決定付ける、使用するインクの性質を特定していない。インクジェット方式のシステムの印刷距離も大きく制限されており、時計用ムーブメントに組み込まれた時計にはあまり適していない。
【0008】
国際公開第2008/135817号明細書には、微細製造技術と、構造の周囲又は内部に形成された少なくとも1つの要素とを用いて、部品の機械的特性を変更するために構造の材料とは異なる材料から作ることができる構造を含む時計が記載されており、例えば、バランスの慣性/質量比を増加させるために使用されるか、又は振動質量の不均衡/質量比を増加させるために使用されるか、又は軸の駆動によって生じる制約の一部を局所的に吸収するために使用され、構造の製作に使用される材料の利点を保持しながら、所与の用途で軸を使用可能にするために使用される。より詳細には、この明細書には、電着によって充填されたキャビティを有する酸化シリコン基板から作られるこのような複合時計を製造する方法が記載されている。
【0009】
それにもかかわらず、この種の方法は、金型を製作することによってシリコンキャビティを製作する工程を必要とする欠点を有し、これは時計の製造コストを増大させる。したがって、この種の方法は、プロトタイプ及び/又は小シリーズの部品の製作には適していない。
【0010】
米国特許第2004/0146650A1号明細書には、部品の電気化学的表面処理の後、部品上にホットプレスされた粉末を堆積させて硬化を行うことによって三次元構造を形成する、微細構造金属部品の製造方法が記載されている。この熱間等方圧加圧(HIP)製造方法は、部品の事前の電気化学的処理を必要とするだけでなく、堆積粉末をホットプレスして微細構造を形成する工程を必要とする欠点を有し、金型を使用する必要があるだけでなく、不可能ではないにしても、シリコン部品に実施することはその脆弱性のため極めて困難である。
【0011】
欧州特許第2,060,534号明細書には、ドイツ語略語「Rontgenlithographie、Galvanoformung、Abformung」(リソグラフィ、亜鉛メッキ、成形)による、DRIE型とLIGA型のプロセスを組み合わせたシリコン-金属複合マイクロメカニカル部分の製造方法が記載されている。この発明はまた、複合型のマイクロメカニカル部分を形成するために、一部がシリコンから作られ別の部分が金属から作られた層を含むマイクロメカニカル部分に関する。より具体的には、この方法は、基板の上層のキャビティに選択的に刻みを付けて、その部分のシリコン部分のパターンを画定する工程と、基板の中間層のキャビティを彫刻する工程と、キャビティの一部から金属層を成長させて部品の厚さに沿って金属部品を形成する工程と、基板のマイクロメカニカル複合シリコン/金属部品を除去する工程とを含む。基板の上部を感光性樹脂で覆って金属層を形成した後、金属部分の予め定められたパターンに従って感光性樹脂のフォトリソグラフィ法を選択的に行い、次に基板の感光性樹脂を除去する。
【0012】
この種の方法は、脆い部分を含むシリコン基板上にリソグラフィ工程を実行することを必要とする。さらに、この種の方法は、時計の製造コストを増加させる多数の工程を含み、プロトタイプ及び/又は小シリーズの部品の製作には不適当である。
【0013】
欧州特許第2,104,005号明細書には、シリコンベースの材料の層に形成され、少なくとも1つのアームによって外縁部に接続されるハブを含む複合材バランスが記載されている。外縁部は、シリコン系の材料よりも高い密度を有する実質的に小鈍鋸歯状リングの形態の少なくとも1つの追加部分を有し、バランスの慣性を増加させることを可能にする。また、この発明は、このようなバランスの製造方法に関し、この方法は、シリコン系の材料から作られた基板を備える工程と、バランスの少なくとも1つの金属部分のパターンを画定するために少なくとも1つの金属層を基板上に選択的に堆積させる工程であって、堆積が基板表面の少なくとも一部の連続する金属層に行われる工程と、少なくとも1つの金属層を含むバランスのパターンを画定するために基板の少なくとも1つのキャビティを選択的にエッチングする工程と、基板からバランスを外す工程とを含む。
【0014】
この種の方法は、熱補償を可能にするSilinvar(登録商標)の名称で知られている酸化シリコンではなく、シリコン部品の製作のみを可能にするという欠点を有する。さらに、この種の方法は、DRIEエッチングチャンバの汚染の危険性が高いという点を別としても、リソグラフィ法によって引き起こされる欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2008/135817号明細書
【特許文献2】欧州特許第2,060,534号明細書
【特許文献3】欧州特許第2,104,005号明細書
【特許文献4】欧州特許第1,172,714A1号明細書
【特許文献5】米国特許第2004/0146650A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の目的の1つは、単純で安価な設計で、リソグラフィ工程を含まず、プロトタイプ及び小シリーズを低価格で製作することを可能にし、特にLIGA型の方法に比べて製造期間が短縮される、複合時計又はハイブリッド時計の製造方法を提案することによってこれらの欠点を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
より具体的には、本発明は、少なくとも1種の第1の材料から微細製造法又はマイクロフォーミング法を用いて作られた少なくとも1つの第1の部分を含む時計の製作方法に関し、この方法は、
a.第1の部分上に、成形することなく、少なくとも1種の第2の材料から作られた時計の少なくとも1つの第2の部分を堆積させる工程と、
b.第1の部分上で構成要素を互いに連結させるために第2の材料を処理する工程と
を少なくとも含む。
【0018】
従来技術の方法とは異なり、本発明による方法は、第2の材料を堆積させる前のリソグラフィ工程、又は追加された時計のための成形工程、又は組立工程を必要としないため、製造コストを制限し、プロトタイプ及び/又は小シリーズを低コストで製作することを可能にすることが理解されよう。本発明による方法はさらに、エネルギーに関して、また時計に対して特に効率的であり、時計には第2の材料が、成型されることなく、したがって時計及びその第1の材料の過度の機械的応力を伴わずに堆積し、その実施を例えば脆いシリコン時計への堆積に適したものとする。
【0019】
第1の実施形態によれば、この方法は、
a.少なくとも1種の第2の材料のマイクロメートル、サブミクロン又は好ましくはナノメートル粒子の溶液又は懸濁液の形態でインクを霧状にする工程と、
b.第2の部分を形成するために時計の第1の部分に霧状にしたインクを噴霧する工程と、
c.第2の部分を硬化させる工程と
を少なくとも含む。
【0020】
硬化工程は、少なくとも1つの焼きなまし工程及び/又は局所焼結工程を含む熱処理を含む。
【0021】
或いは、硬化工程は、光架橋及び/又は化学架橋による重合工程から構成される。
【0022】
この方法は、いわゆるAJP(Aerosol Jet Printing)法に相当し、導電性材料から誘電性材料、半導体又は生物材料にわたる非常に多くの材料を平面の時計だけでなく柔軟で立体的な時計においてもマイクロメートルスケールで堆積させることを可能にする。
【0023】
好ましくは、局所焼結工程は、レーザを用いて第2の部分を照射することによって達成される。
【0024】
さらに、光架橋による重合工程は、第2の部分に紫外線を投射することによって達成することができる。
【0025】
第2の実施形態によれば、この方法は、
a.時計の第1の部分に少なくとも1種の第2の材料の粉末を堆積させる工程と、
b.第2の部分上を局所レーザ焼結する工程と
を少なくとも含む。
【0026】
この方法は、いわゆるLS(Laser Sintering)又はSLS(Selective Laser Sintering)法にそれぞれ相当し、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのポリマー、及び任意選択でガラス繊維、ガラスビーズ又はアルミニウム粉末に付随するPA12ナイロン、及び/又はスチール、チタン、金などの金属、及びそれらの合金を含む、非常に広範囲の異なる材料の粉末の使用を可能にする。
【0027】
第2の部分は、装飾構造、マーキング構造、又は機能要素(例えば、慣性質量又はいわゆるインターフェース要素又は別の時計との機械的協働機能を有するように意図された器官)のいずれかを形成する。
【0028】
さらに、時計の第1の部分は、シリコン及び/又は金属及び/又はセラミック及び/又はプラスチックから得られる。
【0029】
さらに、時計の第2の部分は、1つの層又は複数の層を有することができ、各層は1種の材料から得られる。
【0030】
好ましくは、時計の第2の部分又は第2の部分の各層は、銀(Ag)及び/又はアルミニウム(Al)及び/又は金(Au)及び/又はチタン(Ti)及び/又は銅(Cu)及び/又はニッケル(Ni)及び/又は白金(Pt)及び/又は鉄(Fe)及び/又はそれらの酸化物の1種及び/又は少なくとも1種のポリマーを含む材料から得られる。
【0031】
本発明の別の目的は、少なくとも1種の第1の材料における微細製造法又はマイクロフォーミング法によって作られた少なくとも1つの第1の部分を含む時計に関し、少なくとも1種の第2の多孔質材料から得られ第1の部分の全部又は一部の上に堆積する少なくとも1つの第2の部分を含む点で顕著である。なお、本発明による第2の部分を製造する方法に基づいて、第2の部分はミクロ多孔性又はメソ多孔性又はマクロ多孔性を有することができる。
【0032】
好ましくは、時計の第1の部分は、シリコン及び/又は金属及び/又はセラミック及び/又はプラスチックから得られる。
【0033】
さらに、時計の第2の部分は、1つ又は複数の層を含むことができ、各層は1種の材料から得られる。
【0034】
好ましくは、時計の第2の部分又は第2の部分の各層は、銀(Ag)及び/又はアルミニウム(Al)及び/又は金(Au)及び/又はチタン(Ti)及び/又は銅(Cu)及び/又はニッケル(Ni)及び/又は白金(Pt)及び/又は鉄(Fe)及び/又はそれらの酸化物及び/又は少なくとも1種のポリマーを含む材料から得られる。
【0035】
本発明の別の目的は、少なくとも1種の第1の材料から微細製造法又はマイクロフォーミング法を用いて作られた少なくとも1つの第1の部分を含む時計に関し、少なくとも1種の第2の材料から得られる少なくとも1つの第2の部分を含み、少なくとも1種の第2の材料がマイクロメートル、サブミクロン又は好ましくはナノメートル粒子から作られ、粒子は相互に接続され、第1の部分の全部又は一部の上に堆積する点で顕著である。
【0036】
上記と同じ方法で、時計の第1の部分は好ましくはシリコン及び/又は金属及び/又はセラミック及び/又はプラスチックから得られる。
【0037】
さらに、時計の第2の部分は、1つの層又は複数の層を有することができ、各層は1種の材料から得られる。
【0038】
好ましくは、時計の第2の部分又は第2の部分の各層は、銀(Ag)及び/又はアルミニウム(Al)及び/又は金(Au)及び/又はチタン(Ti)及び/又は銅(Cu)及び/又はニッケル(Ni)及び/又は白金(Pt)及び/又は鉄(Fe)及び/又はそれらの酸化物及び/又は少なくとも1種のポリマーを含む材料から得られる。
【0039】
本発明の別の目的は、少なくとも1種の第1の材料における微細製造法又はマイクロフォーミング法から作られた少なくとも1つの第1の部分を含む時計に関し、少なくとも1種の第2の多孔質材料から得られた少なくとも1つの第2の部分を含み、第2の部分が、堆積する表面と10°~89°の角度をなす側面を含むように第1の部分の全部又は一部の上に堆積する点で顕著である。
【0040】
同じ材料又は異なる材料の連続する層による第2の部分の堆積は、従来技術の方法とは異なり、10°~89°の角度で傾斜した側面を有する第2の部分の製作を可能にすることが観察されるであろう。従来技術の方法は、直線状の側面を有する時計の製作を可能にせず、すなわち、第1の部分の表面に対して90°の角度を有する。このようにして、時計の空気力学を改善することができるだけでなく、部分の質量分布を最適化することも可能である。
【0041】
上記と同じ方法で、時計の第1の部分は好ましくはシリコン及び/又は金属及び/又はセラミック及び/又はプラスチックから得られる。
【0042】
さらに、時計の第2の部分は、1つの層又は複数の層を有することができ、各層は1種の材料から得られる。
【0043】
好ましくは、時計の第2の部分又は第2の部分の各層は、銀(Ag)及び/又はアルミニウム(Al)及び/又は金(Au)及び/又はチタン(Ti)及び/又は銅(Cu)及び/又はニッケル(Ni)及び/又は白金(Pt)及び/又は鉄(Fe)及び/又はそれらの酸化物及び/又は少なくとも1種のポリマーを含む材料から得られる。
【0044】
本発明の他の詳細は、添付の図面を参照して以下の説明を読むことにより、より明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1A】本発明による時計の製造方法の異なる工程の概略断面図である。
【
図1B】本発明による時計の製造方法の異なる工程の概略断面図である。
【
図1C】本発明による時計の製造方法の異なる工程の概略断面図である。
【
図1D】本発明による時計の製造方法の異なる工程の概略断面図である。
【
図2】本発明による方法の実施形態のJP型印刷による概略図である。
【
図3】本発明による方法の実施形態のLS型又はSLS型の堆積による概略図である。
【
図4】本発明による方法によって得られたマーキングを有する脱進ホイールの部分上面図である。
【
図5】慣性を修正するために本発明による方法を用いて得られたブロムスタッドを含むバランスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1A~
図1Dを参照すると、時計の製造方法は、例えばシリコンなどの第1の材料から、
図1Aを参照して当業者に周知の微細製造法又はマイクロフォーミング法によって製造される第1の部分1を製造する第1の工程を含む。第1の材料は、任意の他の材料、例えば金属、セラミック、プラスチック、ダイヤモンド、石英、ガラス、炭化ケイ素又はこれらの組み合わせから構成することができる。さらに、第1の部分は、脱進ホイール、バランスなど、当業者に周知の任意の時計から構成される。
【0047】
第2のステップでは、
図1Bを参照すると、第1の部分1の全部又は一部に第2の材料2が堆積し、次いで
図1Cを参照すると、第2の材料に処理ステップが実行されて第2の部分3の構成要素を相互に連結させ、第2の部分3を第1の部分1に連結させ、多孔質の第2の部分3を形成する。なお、第2の部分3の硬化を得るために適用され、明細書の続きで概説される処理のタイプに応じて、第2の部分3の細孔は、2ナノメートルより小さい直径(ミクロ多孔度)、又は50ナノメートルを超える直径(マクロ多孔度)について、2~50ナノメートルを含む直径(メソ多孔度)を有してもよい。第2の材料は、任意の適切な材料、例えば銀(Ag)及び/又はアルミニウム(Al)及び/又は金(Au)及び/又はチタン(Ti)及び/又は銅(Cu)及び/又はニッケル(Ni)及び/又は白金(Pt)及び/又は鉄(Fe)及び/又はその酸化物及び/又は少なくとも1種のポリマーを含む金属材料で構成され得る。
【0048】
第1の実施形態によれば、
図2を参照すると、本方法は、少なくとも1種の第2の材料のマイクロメートル、サブミクロン又は好ましくはナノメートル粒子の溶液又は懸濁液の形態でインクを霧状化する工程であって、霧状化が噴霧チャンバ4で行われる工程と、次いで第2の部分3を形成するために、噴霧チャンバ4に接続されたノズル5を使用して霧状化したインクを時計の第1の部分1に噴霧する工程と、最後に、第2の部分3に対する炉内の熱処理によって又は例えば赤外線レーザなどのレーザ6による局所焼結によって、第2の部分3を硬化させる工程とを少なくとも含む。「硬化」とは、マイクロメートル、サブミクロン又はナノメートル粒子をそれらの凝集力を得るために直接的又は間接的に連結させるプロセスを指す。
【0049】
この方法は、いわゆるAJP(Aerosol Jet Printing)法に相当し、導電性材料から誘電性材料、樹脂、接着剤、半導体又は生物材料にわたる非常に多くの材料を平面の時計だけでなく柔軟で立体的な時計においてもマイクロメートルスケールで堆積させることを可能にする。
【0050】
なお、炉内での熱処理による、又はレーザによる局所焼結による硬化工程は、任意の他の処理工程、例えば重合で置き換えることができる。この重合は、例えば、本発明の範囲を逸脱することなく、第2の部分3に紫外線を投射することによって得られる光架橋、又は化学架橋を含む。
【0051】
第2の実施形態によれば、
図3を参照すると、本方法は、時計の第1の部分1の上に少なくとも1種の第2の材料の粉末を堆積させる工程であって、この粉末がピストン8を備えるリザーバ7に当初収容されている工程と、ローラ9を用いて第1の部分1に堆積させる工程と、第2の部分3をパワーレーザ10によって局所焼結する工程と、過剰の粉末をローラ9で取り除く工程とを少なくとも含む。
【0052】
この方法は、いわゆるLS(Laser Sintering)又はSLS(Selective Laser Sintering)法にそれぞれ相当し、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのポリマー、及び任意選択でガラス繊維、ガラスビーズ又はアルミニウム粉末に付随するPA12ナイロン、及び/又はスチール、チタン、金などの金属、及びそれらの合金を含む、非常に広範囲の異なる材料の粉末の使用を可能にする。
【0053】
従来技術の方法とは異なり、本発明による方法は、第2の材料を堆積させる前のリソグラフィ工程、又は追加された時計のための成形工程、又は組立工程を必要としないため、製造コストを制限し、プロトタイプ及び/又は小シリーズの製作を低コストで可能にすることが理解されよう。
【0054】
さらに、本発明による方法は、第2の部分が10°~89°の角度で傾斜した側面を有するように同じ材料又は異なる材料で連続する層を堆積させることによって、第2の部分3を製作することを可能にする。このようにして、時計の空気力学を改善することができるだけでなく、時計の質量の分布を最適化することも可能である。
【0055】
第2の部分3は、装飾構造、マーキング構造、又は機能要素(例えば慣性質量又はいわゆるインターフェース要素又は別の時計との機械的協働機能を有するように意図された器官)のいずれかを形成する。
【0056】
したがって、本発明による方法は、第1の用途において、例えばシリコン、金属、プラスチック、セラミック(又は時計製造法で使用される任意の他の材料)から作られた時計上に、テキスト又はデザインなどの装飾要素を印刷することを可能にする。追加される材料は、基板に対するその色に基づいて選ばれる。本発明による相加法を使用すると、時計の損傷を回避したり、時計の性能を変更したりすることができる。
【0057】
図4を参照すると、第2の部分3は、第1の部分1を形成する脱進ホイールに印刷された名称CSEMの形をとる装飾要素を含む。
【0058】
さらに、第2の部分3は、本発明の方法に従ってシリコン、金属、プラスチック、セラミック(又は時計製造法で使用される任意の他の材料)から作られた時計上に、シリアルナンバー、バーコード、ホログラムなどの識別要素を含むことができる。これまでのように、相加法を使用すると、時計の損傷を回避したり、時計の性能を変更したりすることができる。印刷される材料は、時計とのコントラストで選ばれ、例えば、シリコン時計上での目に見える識別のために金(Au)が選ばれる。
【0059】
図5を参照すると、第2の部分3は、第1の部分1を形成するバランス上に堆積した慣性質量などの機能要素を含むことができる。このようにして、第2の部分3は、シリコン、金属、プラスチック、セラミック(又は時計製造法で使用される任意の他の材料)から作られる時計の慣性を増加させることを可能にする。第2の部分3の材料は密度に対して選ばれ、例えば金(Au)又は白金(Pt)などが挙げられる。なお、本発明による方法、より詳細には前述のAJP法は、質量を生成するための非常に良好な精度と非常に良好な再現性をもたらす。例えば、8つの同一の堆積のうち、約0.33mgが、使用されたマイクロスケールの分解能に対応する0.03mgの標準偏差で堆積した。
【0060】
さらに、第2の部分3は、金属、シリコン、セラミック、プラスチック又はこれらの材料の組み合わせから作られる慣性の変更を必要とするバランス、ホイール又は任意の他の時計の慣性を修正する機能要素から構成されてもよい。したがって、第2の部分3は、予め定められた質量を有するバランスの釣り合いをとることを可能にする。第2に、バランス又は任意の時計の自動的な平衡を可能にする測定システムを第1の部分に直接挿入することが可能である。
【0061】
別の実施形態では、第2の部分3は、インターフェース要素を形成することができる。シリコンは壊れやすいが、インターフェース要素はシリコン時計又は塑性変形領域を有さない材料に印刷することができる。インターフェース材料は最初に時計上に堆積されその外面又は駆動軸上に第1の部分1形成し、次いで適切な熱処理が施される。軸は次に時計に挿入され、インターフェース金属のみが変形を受ける。
【0062】
別の実施形態では、第2の部分3は、別の時計との機械的協働機能を有するように意図された器官を形成することができる。この器官は、例えば、時計の方法に従って追加されるフィンガー又はピニオンから構成されてもよい。
【0063】
なお、約数マイクロメートルから数百マイクロメートルまでの第2の部分3の厚さは、第2の部分3に使用される材料の性質、及び特に選択された用途(装飾要素又は機能要素)に基づいて当業者によって適合され得る。
【0064】
さらに、本発明はシリコン時計用に記載されているが、本発明の範囲を逸脱することなく、微細製造技術及び/又はマイクロフォーミング技術を使用して機械加工可能な任意の他の材料にも適用することができる。