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特開2024-20564汚損物質量測定装置及び汚損物質量測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020564
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】汚損物質量測定装置及び汚損物質量測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 5/02 20060101AFI20240206BHJP
   G01N 19/00 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
G01N5/02 A
G01N19/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023200884
(22)【出願日】2023-11-28
(62)【分割の表示】P 2020050662の分割
【原出願日】2020-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茶円 豊
(72)【発明者】
【氏名】角本 雄一
(72)【発明者】
【氏名】長 広明
(72)【発明者】
【氏名】原口 智
(72)【発明者】
【氏名】水出 隆
(57)【要約】
【課題】汚損物質の付着量を精度よく測定することができる汚損物質検出センサ、汚損物質量測定装置および汚損物質量測定方法を提供することである。
【解決手段】実施形態の汚損物質検出センサは、互いに同一の環境に配置される第一水晶振動子と第二水晶振動子と、前記第一水晶振動子に接続する第一周波数発振部と第一周波数計測部、および前記第二水晶振動子に接続する第二周波数発振部と第二周波数計測部を持つ。前記第一水晶振動子は第一金属を含む第一電極を備える。前記第二水晶振動子は第二金属を含む第二電極を備える。前記第二金属は、前記第二電極に汚損物質が付着したときに、前記第二水晶振動子が出力する第二共振周波数を、前記第一水晶振動子が出力する第一共振周波数に対して変化させる作用を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに同一の環境に配置される第一水晶振動子と第二水晶振動子、前記第一水晶振動子に接続する第一周波数発振部と第一周波数計測部、および前記第二水晶振動子に接続する第二周波数発振部と第二周波数計測部を含み、
前記第一水晶振動子は第一金属を含む第一電極を備え、前記第二水晶振動子は第二金属を含む第二電極を備え、前記第二金属は、前記第二電極に汚損物質が付着したときに、前記第二水晶振動子が出力する第二共振周波数を、前記第一水晶振動子が出力する第一共振周波数に対して変化させる作用を有する汚損物質検出センサ。
【請求項2】
前記第一金属と前記第二金属とが、互いに異なる金属である請求項1に記載の汚損物質検出センサ。
【請求項3】
前記第一金属が、金、銀または白金のうちのいずれか一つである請求項1または請求項2に記載の汚損物質検出センサ。
【請求項4】
前記第二金属が、前記第一金属よりもイオン化傾向が低い金属である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の汚損物質検出センサ。
【請求項5】
前記第二金属が、銅またはアルミニウムである請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の汚損物質検出センサ。
【請求項6】
前記汚損物質が、イオン性物質である請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の汚損物質検出センサ。
【請求項7】
汚損物質検出センサと、汚損物質量算出装置とを有し、
前記汚損物質検出センサは、互いに同一の環境に配置される第一水晶振動子と第二水晶振動子、前記第一水晶振動子に接続する第一周波数発振部と第一周波数計測部、および前記第二水晶振動子に接続する第二周波数発振部と第二周波数計測部を含み、
前記第一水晶振動子は第一金属を含む第一電極を備え、前記第二水晶振動子は第二金属を含む第二電極を備え、前記第二金属は、前記第二電極に汚損物質が付着したときに、前記第二水晶振動子が出力する第二共振周波数を、前記第一水晶振動子が出力する第一共振周波数に対して変化させる作用を有し、
前記汚損物質量算出装置は、前記第二周波数計測部にて測定された第二共振周波数から前記第一周波数計測部にて測定された第一共振周波数を差し引いた差分周波数を取得する差分周波数取得部と、
差分周波数の微分量の変化量を取得する変化量取得部と、
前記変化量と、予め測定した第二電極の汚損物質の付着量および差分周波数の時間変化曲線の相関を規定するデータベースと、に基づいて、前記第二電極の汚損物質の付着量を判定する判定部と、を含む汚損物質量測定装置。
【請求項8】
前記変化量と、予め測定した第二電極の汚損物質の付着量および差分周波数の時間変化曲線の相関を規定するデータベースと、に基づいて、差分周波数の微分量の変化予測値を算出する変化予測値算出部と、
前記変化予測値と、前記第二電極の汚損物質の付着量を判定した後に取得された差分周波数の微分量との予測差分量を取得する予測差分量取得部をさらに含み、
前記判定部は、前記予測差分量と、予め測定した第二電極の汚損物質の付着量および差分周波数の時間変化曲線の相関を規定するデータベースと、に基づいて、前記第二電極の汚損物質の付着量を判定する請求項7に記載の汚損物質量測定装置。
【請求項9】
さらに、前記汚損物質検出センサは、前記第二水晶振動子の周囲に配置された温度・湿度計を有し、
前記温度・湿度計で測定された温度と湿度と、予め測定した温度ならびに湿度および汚損物質が付着した第二電極の共振周波数の相関を規定するデータベースと、に基づいて、第二電極の温度・湿度補正値を算出する補正値算出部と、
前記第二電極の温度・湿度補正値を算出した後に取得された差分周波数の微分量を前記第二電極の温度・湿度補正値に基づいて補正する補正部と、を含む請求項7又は請求項8に記載の汚損物質量測定装置。
【請求項10】
互いに同一の環境に配置される第一水晶振動子と第二水晶振動子、前記第一水晶振動子に接続する第一周波数発振部と第一周波数計測部、および前記第二水晶振動子に接続する第二周波数発振部と第二周波数計測部を含み、
前記第一水晶振動子は第一金属を含む第一電極を備え、前記第二水晶振動子は第二金属を含む第二電極を備え、前記第二金属は、前記第二電極に汚損物質が付着したときに、前記第二水晶振動子が出力する第二共振周波数を、前記第一水晶振動子が出力する第一共振周波数に対して変化させる作用を有する汚損物質検出センサを用い、
前記第二周波数計測部にて測定された第二共振周波数から前記第一周波数計測部にて測定された第一共振周波数を差し引いた差分周波数を取得する工程と、
差分周波数の微分量の変化量を取得する工程と、
前記変化量と、予め測定した第二電極の汚損物質の付着量とおよび差分周波数の時間変化曲線の相関を規定するデータベースと、に基づいて、前記第二電極の汚損物質の付着量を判定する工程と、を含む汚損物質量測定方法。
【請求項11】
さらに、前記変化量と、予め測定した第二電極の汚損物質の付着量および差分周波数の時間変化曲線の相関を規定するデータベースと、に基づいて、差分周波数の微分量の変化予測値を算出する工程と、
前記変化予測値と、前記第二電極の汚損物質の付着量を判定した後に取得された差分周波数の微分量との予測差分量を取得する工程と、
前記予測差分量と、予め測定した第二電極の汚損物質の付着量および差分周波数の時間変化曲線の相関を規定するデータベースと、に基づいて、前記第二電極の汚損物質の付着量を判定する工程と、を含む請求項10に記載の汚損物質量測定方法。
【請求項12】
さらに、前記第二水晶振動子の周囲の温度と湿度を測定する工程と、
前記温度と前記湿度と、予め測定した温度ならびに湿度および汚損物質が付着した第二電極の共振周波数の相関を規定するデータベースと、に基づいて、第二電極の温度・湿度補正値を算出する工程と、
前記第二電極の温度・湿度補正値を算出した後に取得された差分周波数の微分量を前記第二電極の温度・湿度補正値に基づいて補正する工程と、を含む請求項10又は請求項11に記載の汚損物質量測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、汚損物質検出センサ、汚損物質量測定装置および汚損物質量測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力設備は社会インフラストラクチャを支える重要な設備であり、長期にわたり安定して稼動できることを求められる。安定稼動のためには、電力設備の劣化状態を把握し、保全・更新を計画的に実施する必要がある。電力設備の導体支持またはバリヤなどに用いられる絶縁材料は材料自体の経年劣化や、設置環境に浮遊する塵埃または水分の付着などで絶縁特性が低下する。絶縁特性が低下すると放電やトラッキングを生じて設備停止に至る虞もあることから、絶縁材料の状態は電力設備の劣化を診断するためのバロメータになる。
【0003】
設置環境が絶縁材料の劣化に及ぼす影響は、塵埃や水分の付着だけとは限らない。絶縁材料の成分と化学反応する環境因子が存在する環境では、通常の経年劣化を上回る速度で、絶縁材料が劣化する場合がある。例えば炭酸カルシウムは、絶縁材料の無機充填材として多く使用される。炭酸カルシウムが塩素系ガスや窒素酸化物ガスなどと反応すると、絶縁材料表面に塩化カルシウムまたは硝酸カルシウムが形成される。これらの物質は湿度40%RH以下の低湿度であっても大気中の水分を吸入して潮解するので、低湿度条件であっても絶縁材料の表面が結露し、絶縁材料の表面を漏れ電流が流れることがある。これが甚だしくなると絶縁が破壊され、最悪の場合には設備停止に至ることもある。
【0004】
電力設備に使われている絶縁材料の絶縁抵抗値を、フィールドで直接測定することは可能である。しかしながらその測定値は測定場所の雰囲気、具体的には湿度に大きく影響される。例えば乾燥した環境下では絶縁抵抗値は現状よりも高くなることが多く、絶縁材料の劣化が見逃されるケースがある。また、電力設備が絶縁不良で停止するのは、ほとんど梅雨時の高温多湿の時期である。このように抵抗値を直接測定することは実地の運用には向いているといえない。
【0005】
そこで、多変量解析などの数値的な演算により絶縁材料の絶縁抵抗を推定する方法が提案されている。つまり、絶縁抵抗と相関を持ち測定場所の雰囲気に影響されない項目を測定し、その項目の値に基づいて絶縁抵抗値を算出する方法である。この方法ではフィールドで使用されている絶縁材料、および強制劣化させた絶縁材料について、絶縁抵抗と相関のあるデータを取得し、多変量解析により診断指標である絶縁抵抗の推定式を策定する。絶縁診断では、推定式を策定した項目を測定し、絶縁抵抗推定式から、任意の温度や湿度の絶縁抵抗を推定するようにする。
【0006】
絶縁抵抗と相関のあるデータとして、大きく分類すると、材料そのものの特性、及び設置個所周囲の大気環境による因子が挙げられる。これらの項目の測定に関しては、従来は検査員が実際に対象機器そのものを測定し、対象機器からサンプリング作業を実施する必要がある。そのため、連続的な材料特性及び環境因子の監視は不可能であり、離散的な評価となってしまうという課題があった。近年の計測技術の進歩により、材料特性、大気環境因子を連続的に測定することが可能となってきており、例えば材料特性を絶縁材料の分光反射率から推定する技術や、大気環境に含まれるイオン性の汚損物質を計測する技術を適用することで、連続的な絶縁性能の監視を実現可能となってきている。そこで、塵埃や水分などによる通常の経年劣化を上回る速度で絶縁材料を劣化させる汚損物質の量を精度よく測定することができる技術が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5951299号公報
【特許文献2】特許第5836904号公報
【特許文献3】特許第5872643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、汚損物質の付着量を精度よく測定することができる汚損物質検出センサ、汚損物質量測定装置および汚損物質量測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の汚損物質検出センサは、互いに同一の環境に配置される第一水晶振動子と第二水晶振動子と、前記第一水晶振動子に接続する第一周波数発振部と第一周波数計測部、および前記第二水晶振動子に接続する第二周波数発振部と第二周波数計測部を持つ。前記第一水晶振動子は第一金属を含む第一電極を備える。前記第二水晶振動子は第二金属を含む第二電極を備える。前記第二金属は、前記第二電極に汚損物質が付着したときに、前記第二水晶振動子が出力する第二共振周波数を、前記第一水晶振動子が出力する第一共振周波数に対して変化させる作用を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の汚損物質量測定装置を示すブロック図。
図2】実施形態の汚損物質量測定装置の第一水晶振動子及び第二水晶振動子に汚損物質と非汚損物質が付着した直後の状態を示す断面図。
図3】実施形態の汚損物質量測定装置の第一水晶振動子及び第二水晶振動子に汚損物質と非汚損物質が付着してから時間が経過した後の状態を示す断面図。
図4】汚損物質量測定装置の第一水晶振動子及び第二水晶振動子に汚損物質が付着したときの共振周波数の変化を示すグラフ。
図5図4に示す第一水晶振動子の共振周波数と第二水晶振動子の共振周波数と差分である差分周波数を示すグラフ。
図6図5に示す差分周波数の最初のピークの差分周波数の微分量の変化量を示すグラフ。
図7】実施形態の汚損物質量測定装置の第一水晶振動子及び第二水晶振動子に汚損物質が付着したときの差分周波数の時間変化曲線を示すグラフ。
図8図5に示す差分周波数の最初のピークの差分周波数の微分量の変化量から算出される差分周波数の微分量の変化予測値を示すグラフ。
図9図8に示す差分周波数の微分量の変化予測値と、本実施形態の汚損物質量測定装置10で取得された差分周波数の微分量との関係を示すグラフ。
図10】実施形態の汚損物質量測定装置の第二水晶振動子の第二電極に付着した汚損物質の量を示すグラフ。
図11】実施形態の汚損物質量測定装置の第二水晶振動子の第二電極に付着した汚損物質の量の積算値を示すグラフ。
図12】対象機器に対する実施形態の汚損物質量測定装置の配置の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態の汚損物質検出センサ、汚損物質量測定装置および汚損物質量測定方法を、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態の汚損物質量測定装置を示すブロック図である。
汚損物質量測定装置10は、汚損物質検出センサ20と、汚損物質量算出装置30とを有する。なお、本実施形態の汚損物質量測定装置10では、汚損物質検出センサ20と汚損物質量算出装置30が有線で接続している。なお、汚損物質検出センサ20と汚損物質量算出装置30とは無線で接続していてもよいし、インターネットを介して接続していてもよい。
【0012】
汚損物質検出センサ20は、第一水晶振動子21aと第二水晶振動子21b、第一水晶振動子21aに接続する第一周波数発振部25aと第一周波数計測部26a、および第二水晶振動子21bに接続する第二周波数発振部25bと第二周波数計測部26bを含む。第一水晶振動子21aと第二水晶振動子21bは、互いに隣接していて、同一の環境に配置される。
【0013】
第一水晶振動子21aは、第一周波数発振部25aから送られた電流により所定の周波数を出力し、その周波数(第一共振周波数)は第一周波数計測部26aにて計測される。第二水晶振動子21bは、第二周波数発振部25bから送られた電流により所定の周波数を出力し、その周波数(第二共振周波数)は第二周波数計測部26bにて計測される。
【0014】
第一水晶振動子21aは、水晶板23と、水晶板23の両面に備えられた一対の第一金属を含む第一電極22a、24aとからなる。第二水晶振動子21bは、水晶板23と、水晶板23の両面に備えられた一対の第二金属を含む第二電極22b、24bとからなる。第一水晶振動子21aおよび第二水晶振動子21bは、例えば、QCM(水晶振動子マイクロバランス)である。第一水晶振動子21aおよび第二水晶振動子21bは、初期状態において、電極の質量変化が同じである場合、周波数の変動が等しくなるように予め校正されている。
【0015】
第一電極22a、24aに含まれる第一金属と、第二電極22b、24bに含まれる第二金属とは互いに異なる金属であることが好ましい。第一金属と第二金属は互いにイオン化傾向(標準電極電位)が異なる金属であることが好ましい。第二金属は、第一金属よりもイオン化傾向(標準電極電位)が低い金属であることが好ましい。すなわち、第二金属は、第一金属と比較して、イオン性の汚損物質によって腐食が起こりやすい金属であることが好ましい。この場合、第一水晶振動子21aの第一電極22a、24aと、第二水晶振動子21bの第二電極22b、24bの両者にイオン性の汚損物質が付着したときは、第二電極22b、24bに腐食生成物が生成しやすくなる。そして、その腐食生成物の生成量による第二電極22b、24bの質量の変化に応じて第二共振周波数が第一共振周波数に対して変化する。よって、第二金属は、第二電極22b、24bにイオン性の汚損物質が付着したときに、第二水晶振動子21bが出力する第二共振周波数を、第一水晶振動子21aが出力する第一共振周波数に対して変化させる作用を有する。
【0016】
第一金属は、金(標準電極電位:+1.52V)、銀(標準電極電位:+0.799V)及び白金(標準電極電位:+1.188V)のうちのいずれ一つであることが好ましい。第二金属は、銅(標準電極電位:+0.34V)またはアルミニウム(標準電極電位:-1.68V)であることが好ましい。ただし、第一金属及び第二金属は、上記の例に限定されるものではなく、測定対象の汚損物質に応じて適宜選定することができる。
【0017】
ここで、第一水晶振動子21aと第二水晶振動子21bに、汚損物質及び非汚損物質が付着したときの挙動を、図2図3を用いて説明する。
本実施形態の汚損物質量測定装置10の第一水晶振動子21a及び第二水晶振動子21bに汚損物質と非汚損物質が付着した直後の状態を示す断面図である。図2の(a)は、第一水晶振動子21aの第一電極22aに汚損物質Aと非汚損物質Bが付着した直後の状態である。図2の(b)は、第二水晶振動子21bの第二電極22bに汚損物質Aと非汚損物質Bが付着した直後の状態である。汚損物質Aは、イオン性物質である。イオン性物質は、例えば、塩素系ガスや窒素酸化物ガスである。非汚損物質Bは、例えば、塵埃や水である。図2(a)と(b)に示すように、汚損物質Aと非汚損物質Bが付着することによって、第一電極22aと第二電極22bの質量が変化する。このため、第一水晶振動子21aの第一共振周波数と第二水晶振動子21bの第二共振周波数は、それぞれ変動する。ただし、汚損物質Aと非汚損物質Bが付着した直後の状態では、第二電極22bは腐食しておらず、第一電極22aと第二電極22bとに質量の差は生じない。このため、電極の質量増加による第一共振周波数と第二共振周波数の変動量は同じである。よって、第一共振周波数に対する第二共振周波数は変動しない。
【0018】
図3は、本実施形態の汚損物質量測定装置10の第一水晶振動子21a及び第二水晶振動子21bに汚損物質と非汚損物質が付着してから時間が経過した後の状態を示す断面図である。図3の(a)は、第一水晶振動子21aの第一電極22aに汚損物質Aと非汚損物質Bが付着してから時間が経過した状態を示す断面図である。図3の(b)は、第二水晶振動子21bの第二電極22bに汚損物質Aと非汚損物質Bが付着してから時間が経過した状態を示す断面図である。
図3(a)に示すように、第一水晶振動子21aの第一電極22aは、汚損物質Aと非汚損物質Bが付着してから時間が経過しても変化しない。一方、図3(b)に示すように、第二水晶振動子21bの第二電極22bは、非汚損物質Bが付着した部分は変化しないが、汚損物質Aが付着した部分は腐食して、腐食生成物Cが生成する。腐食生成物Cの生成量の変化に伴う第二電極22bの質量の変化によって、第二共振周波数は変動する。すなわち、第一共振周波数に対する第二共振周波数が変動する。よって、本実施形態の汚損物質量測定装置10は、非汚損物質Bの付着量の影響を受けずに、第二共振周波数の変動に基づいて、腐食生成物Cの生成量、すなわち汚損物質Aの付着量を測定することができる。
【0019】
汚損物質検出センサ20は、さらに、第二水晶振動子21bの周囲に配置された温度・湿度計測部27を有する。温度・湿度計測部27は、第二水晶振動子21bの周囲に配置されている。
【0020】
汚損物質量算出装置30は、計測データ保存部31、第一データ照合部32、第一演算部33、第二演算部34、第三演算部35、第二データ照合部36および第四演算部37を有する。
【0021】
計測データ保存部31は、第一周波数計測部26aにて計測された第一共振周波数、第二周波数計測部26bにて計測された第二共振周波数、温度・湿度計測部27にて計測された温度および湿度を一定の時間ステップで記憶する。時間ステップは、特に制限はないが、例えば1時間である。
【0022】
第一データ照合部32および第一演算部33は、第二水晶振動子21bの周囲の温度と湿度に基づいて第二電極22b、24bの温度・湿度補正値を算出する補正値算出部である。第二水晶振動子21bの第二電極22b、24bに汚損物質が付着して腐食生成物が生成した場合、腐食生成物の吸湿によって第二電極22b、24bの質量が変化するおそれがある。腐食生成物の吸湿による質量変化の変化は、第一共振周波数と第二共振周波数の差分からでは算出できない。このため、第二水晶振動子21bの周囲の温度と湿度に基づく第二電極22b、24bの温度・湿度補正値を用いて第二共振周波数を補正することが必要となる場合がある。
【0023】
第一データ照合部32は、温度・湿度計測部27で測定された温度ならびに湿度と、予め測定した温度ならびに湿度および汚損物質が付着した第二電極22b、24bの共振周波数の相関を規定するデータベースと、に基づいて、第二共振周波数の予測値を算出する。データベースは、例えば、温度ならびに湿度と、汚損物質によって生成する腐食生成物の水分吸湿量との関係を規定する第一データベースと、腐食生成物の水分吸湿量と第二電極の共振周波数の変化量との関係を規定する第二データベースである。この場合、現在の時間ステップでの温度ならびに湿度と、一つ前の時間ステップでの腐食生成物量と、第一データベースとを照合することによって現在の時間ステップでの腐食生成物の水分吸湿量を得ることができる。そして得られた腐食生成物による水分吸湿量と第二データベースを照合することにより、現在の時間ステップでの第二共振周波数の予測値を得ることができる。
【0024】
第一演算部33は、第一データ照合部32によって得られた現在の時間ステップでの第二共振周波数の予測値に基づいて、第二共振周波数の温度・湿度補正値を算出する。この温度・湿度補正値は、後述の第三演算部35に送られる。
【0025】
温度・湿度補正値を算出するためには、各時間ステップにおいて、1ステップ前に得られた腐食生成物量を参照する必要がある。計測開始時(t0)には腐食生成物がないため、時間ステップt1で参照するデータは腐食生成物量=0である。各時間ステップtn(nは、時間ステップを示す数を表す)で得られる腐食生成物量をMn(nは、時間ステップを示す数を表す)とすると、第一データ照合部32で参照する腐食生成物量とは下記の表1の関係となる。
【0026】
【表1】
【0027】
第二演算部34は、第二周波数計測部26bにて測定された第二共振周波数から第一周波数計測部26aにて測定された第一共振周波数を差し引いた差分周波数を取得する差分周波数取得部である。差分周波数を所定の間隔で取得することができる。差分周波数を取得する間隔は、例えば、1時間である。
【0028】
第三演算部35は、差分周波数の微分量の変化量を取得する変化量取得部である。すなわち、時間ステップごとに差分周波数の微分量(時間微分量)を算出して、微分量が所定の数値を超えて変化したときの値を変化量として取得する。所定の数値は、例えば微分量が10%以上変化したときである。
また、第三演算部35は、第二電極の温度・湿度補正値を算出した後に取得された差分周波数の微分量を、第一演算部33にて算出された第二共振周波数の温度・湿度補正値に基づいて補正する補正部としても機能する。
【0029】
第二データ照合部36は、予測差分量と、予め測定した第二電極22b、24bの汚損物質の付着量および差分周波数の時間変化曲線の相関を規定するデータベースと、に基づいて、第二電極22b、24bの汚損物質の付着量を判定する判定部である。また、第二データ照合部36は、変化量と、予め測定した第二電極の汚損物質の付着量および差分周波数の時間変化曲線の相関を規定するデータベースとを用いて、差分周波数の微分量の変化予測値を算出する変化予測値算出部でもある。
【0030】
第四演算部37は、変化予測値と、第二電極22b、24bの汚損物質の付着量を判定した後に取得された差分周波数の微分量とが異なる場合は、当該差分周波数の微分量とその変化予測値との予測差分量を取得する予測差分量取得部である。予測差分量は、第二データ照合部36(判定部)に送られる。そして、判定部は、予測差分量と、予め測定した第二電極22b、24bの汚損物質の付着量および差分周波数の時間変動変化曲線の相関を規定するデータベースと、に基づいて、第二電極22b、24bの汚損物質の付着量を判定する。
【0031】
次に、本実施形態の汚損物質量測定装置10を用いた汚損物質量測定方法について説明する。
本実施形態の汚損物質量測定方法は、汚損物質検出センサ20の設置工程と、第一共振周波数と第二共振周波数の差分周波数を取得する差分周波数取得工程と、差分周波数の微分量の変化量を取得する変化量取得工程と、汚損物質の付着量を判定する第1判定工程とを含む。
【0032】
設置工程では、汚損物質量測定装置10を汚損物質の測定対象場所に設置する。汚損物質量測定装置10は、汚損物質検出センサ20が汚損物質を検出しやすい場所、例えば、吸気口の周囲などに設置することが好ましい。汚損物質量測定装置10の配置の例は後述する。
【0033】
差分周波数取得工程では、第二周波数計測部26bにて測定された第二共振周波数から第一周波数計測部26aにて測定された第一共振周波数を差し引いた差分周波数を取得する。この工程は、第二演算部34にて行われる。
【0034】
図4は、本実施形態の汚損物質量測定装置10の第一水晶振動子21a及び第二水晶振動子21bに汚損物質が付着したときの共振周波数の変化を示すグラフである。すなわち、図4は、第一周波数計測部26aにて計測された第一共振周波数と第二周波数計測部26bにて計測された第二共振周波数であり、計測データ保存部31に記憶されるデータである。
図4において、横軸は共振周波数の測定時間であり、縦軸は、第一水晶振動子21a及び第二水晶振動子21bの共振周波数である。また、図4において、21aは、第一水晶振動子21aの共振周波数(第一共振周波数)である。21bは、第二水晶振動子21bの共振周波数(第二共振周波数)である。図4のグラフでは、第一共振周波数及び第二共振周波数は、共に4時間と8時間の時点で大きく増大している。これは、第一水晶振動子21aの第一電極22a、24aと第二水晶振動子21bの第二電極22b、24bのそれぞれに汚損物質が付着したためである。
【0035】
図5は、図4に示す第一水晶振動子21aの共振周波数と第二水晶振動子21bの共振周波数と差分である差分周波数を示すグラフである。
図5のグラフでは、汚損物質が付着した時点(4時間、8時間)から差分周波数が増加している。これは、第二水晶振動子21bの第二電極22b、24bが、汚損物質によって腐食して腐食生成物が生成したためである。すなわち、差分周波数の微分量(時間微分量)は、腐食生成物の生成速度を表している。
【0036】
変化量取得工程では、差分周波数の微分量が所定の数値(例えば10%以上)を超えて変化したときの値を変化量△1として取得する。変化量△1が大きいことは、差分周波数の微分量が大きく変化したこと、すなわち腐食生成物が急激に生成したことを意味する。この工程は、第三演算部35にて行われる。
【0037】
図6は、図5に示すグラフの差分周波数の微分量が最初に変化したときの変化量を示すグラフである。すなわち、図6は、図5の4時間の時点での差分周波数の微分量の変化量を示したグラフである。
【0038】
第1判定工程では、変化量△1と、予め測定した第二電極の汚損物質の付着量および差分周波数の時間変化曲線の相関を規定するデータベースとを用いて、第二電極22b、24bの汚損物質の付着量を判定する。この工程は、第二データ照合部36にて行われる。
【0039】
図7は、本実施形態の汚損物質量測定装置10の第一水晶振動子21a及び第二水晶振動子21bに汚損物質が付着したときの差分周波数の時間変化曲線を示すグラフである。 図7において、横軸は、汚損物質が付着してから経過時間であり、縦軸は、差分周波数の微分量である。また、図7において、汚損物質の付着量a~amg/cmは、第二水晶振動子21bの第二電極22b、24bに付着した汚損物質の量を意味し、付着量はamg/cmが最も多く、amg/cmが次に多く、amg/cmが最も少ない。図7に示すように、差分周波数の微分量の変化と汚損物質の付着量とは相関関係があり、汚損物質の付着量がamg/cmのときがもっと大きく、次にamg/cmのときが大きく、amg/cmのときが最も小さい。よって、第二電極の汚損物質の付着量と差分周波数の時間変化曲線の相関を規定するデータベースを予め作成しておくことによって、差分周波数の微分量の変化量△1から汚損物質の付着量を判定することができる。
【0040】
汚損物質付着量判定工程はさらに、差分周波数微分量の変化量の予測値を算出する変化量予測工程と、変化予測値と取得された差分周波数の微分量を対比する対比工程と、差分量を取得する差分量取得工程と、差分量から汚損物質の付着量を判定する第2判定工程とを含む。
【0041】
変化量予測工程では、変化量Δ1と、予め測定した第二電極22b、24bの汚損物質の付着量および差分周波数の時間変化曲線の相関を規定するデータベースとを用いて、差分周波数の微分量の変化予測値を算出する。この工程は、第四演算部にて行われる。
データベースとしては、図7に示す差分周波数の時間変化曲線を用いることができる。
【0042】
図8は、図5に示す差分周波数の最初のピークの差分周波数の微分量の変化量から算出される差分周波数の微分量の変化予測値を示すグラフである。
図8において、横軸は、時間であり、縦軸は、差分共振周波数の微分量である。図8において、符号(1)は、実測した第一共振周波数と第二共振周波数に基づいて算出した値を示し、符号(1)’は、予測値を示す。図8の予測値から4時間の時点で付着した汚損物質による腐食生成物の生成による質量変化は、9時間まで継続することがわかる。
【0043】
対比工程では、さらに、上記の差分周波数の微分量の変化予測値と、第2判定工程で第二電極22b、24bの汚損物質の付着量を判定した後に取得された差分周波数の微分量とを対比する。この工程は、第四演算部にて行われる。
【0044】
図9は、図8に示す差分周波数の微分量の変化予測値と、本実施形態の汚損物質量測定装置10で取得された差分周波数の微分量との関係を示すグラフである。
図9において、横軸は、時間であり、縦軸は、差分共振周波数の微分量である。図8において、符号(1)および(2)は、実測した第一共振周波数と第二共振周波数に基づいて算出した値を示し、符号(1)’および(2)’は、予測値を示す。すなわち、図8のグラフは、8時間まで差分周波数の微分量を取得した結果を表している。
【0045】
対比工程において、図8図9とを比較すると、5時間~7時間までは、差分周波数の微分量の変化予測値(図8の(1)’)と汚損物質量測定装置10で取得された差分周波数の微分量の実測値(図9の(1))とは一致していることがわかる。一方、8時間では、変化予測値に対して差分周波数の微分量の実測値が大きくなっている。これは、8時間の時点で新たな汚損物質が第二水晶振動子21bの第二電極22b、24bに付着したことを意味する。この場合は、差分量取得工程にて、差分周波数の微分量の実測値と変化予測値との差分である予測差分量△2を取得する。
【0046】
第2判定工程では、取得された予測差分量△2と、予め測定した第二電極22b、24bの汚損物質の付着量および差分周波数の時間変化曲線の相関を規定するデータベースとを用いて、第二電極22b、24bの汚損物質の付着量を判定する。この工程は、第二データ照合部36にて行われる。第2判定工程での汚損物質の付着量の判定方法は、変化量△1の代わりに予測差分量△2を用いること以外は、第1判定工程と同じである。
【0047】
さらに、得られた予測差分量△2に基づいて、変化量予測工程、対比工程、予測差分量取得工程、そして予測差分量から汚損物質の付着量を判定する判定工程を、予測差分量が取得されなくなるまで繰り返し行うことによって、長期間にわたって、第二電極22b、24bに付着した汚損物質の付着量を測定することができる。これらの工程は、差分周波数の微分量が0となるまで行われる。
【0048】
さらに、本実施形態の汚損物質量測定装置10を用いた汚損物質量測定方法では、温度・湿度補正値に基づいて、差分周波数の微分量を補正する工程を含む。この工程は、温度・湿度測定工程と、補正値算出工程と、補正工程とを含む。
【0049】
温度・湿度測定工程では、第二水晶振動子21bの周囲の温度と湿度を測定する。この工程は、温度・湿度計測部27で行われる。
補正値算出工程では、測定された温度と湿度と、予め測定した温度ならびに湿度および汚損物質が付着した第二電極の共振周波数の相関を規定するデータベースと、に基づいて、第二電極の温度・湿度補正値を算出する。この工程は、第一データ照合部32および第一演算部33にて行われる。
補正工程では、第二電極の温度・湿度補正値を算出した後に取得された差分周波数の微分量を前記第二電極の温度・湿度補正値に基づいて補正する。この工程は、第三演算部35にて行われる。
【0050】
図10は、汚損物質量測定装置10の第二水晶振動子21bの第二電極22b、24bに付着した汚損物質の量を示すグラフである。図11は、汚損物質量測定装置10の第二水晶振動子21bの第二電極22b、24bに付着した汚損物質の量の積算値を示すグラフである。
図10および図11において、横軸は、時間であり、縦軸は、汚損物質の付着量である。図10および図11のグラフから、4時間と8時間の時点で汚損物質が付着していることがわかる。このように、汚損物質量測定装置10を用いることにより、例えば、電力設備などの対象機器で使用されている絶縁材料への汚損物質の付着量を見積もることができる。また、その汚損物質が特定の時期に付着したのか、短期間に集中的に付着したのか、長期間かけて連続的に付着したのかなど汚損形態を確認することができる。汚損形態を確認することによって、対象機器の設置環境に変化が起きたことをいち早く察知することができ、異常の早期発見につながる。
【0051】
計測データ保存部31、第一データ照合部32、第一演算部33、第二演算部34、第三演算部35、第二データ照合部36および第四演算部37の機能は、例えば汚損物質量算出装置30が備えるCPU(Central Processing Unit)及びメモリによってプログラムが実行されることによって実現されてもよい。また、上記各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。実行されるプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0052】
図12は、対象機器45に対する汚損物質量測定装置10の配置の例を示す図である。 図12において、対象機器45は、筐体41に収容されている。筐体41は、吸気口42と排気口43を有する。汚損物質量測定装置10は、対象機器45の異なる側面に沿って2つ設置されている。一つの汚損物質量測定装置10は、対象機器45の吸気口42側の側面に配置されていて、他方の汚損物質量測定装置10は、対象機器45の上面に配置されている。対象機器の45の異なる側面に沿って汚損物質量測定装置10を設置することにより、局所的な汚損形態の違いを特定することができ、この汚損形態の違いは今後の絶縁材料の劣化診断技術に活かすことが可能となる。対象機器45は、汚損物質によって汚損される材料を用いた電気装置であり、例えば、電力設備である。
【0053】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、汚損物質検出センサ20が第一水晶振動子21aと第二水晶振動子21bを含み、第二水晶振動子21bは第二金属を含む第二電極22b、24bを備え、その第二金属は、第二電極22b、24bに汚損物質が付着したときに、第二水晶振動子21bが出力する第二共振周波数を、第一水晶振動子21aが出力する第一共振周波数に対して変化させる作用を有することにより、汚損物質の付着量を精度よく測定することができる。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0055】
10…汚損物質量測定装置、20…汚損物質検出センサ、21a…第一水晶振動子、21b…第二水晶振動子、22a…第一電極、22b…第二電極、23…水晶板、24a…第一電極、24b…第二電極、25a…第一周波数発振部、25b…第二周波数発振部、26a…第一周波数計測部、26b…第二周波数計測部、27…温度・湿度計測部、30…汚損物質量算出装置、31…計測データ保存部、32…第一データ照合部、33…第一演算部、34…第二演算部、35…第三演算部、36…第二データ照合部、37…第四演算部、41…筐体、42…吸気口、43…排気口、45…対象機器、A…汚損物質、B…非汚損物質、C…腐食生成物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-12-26
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚損物質検出センサと、汚損物質量算出装置とを有し、
前記汚損物質検出センサは、互いに同一の環境に配置される第一水晶振動子と第二水晶振動子、前記第一水晶振動子に接続する第一周波数発振部と第一周波数計測部、および前記第二水晶振動子に接続する第二周波数発振部と第二周波数計測部を含み、
前記第一水晶振動子は第一金属を含む第一電極を備え、前記第二水晶振動子は第二金属を含む第二電極を備え、前記第二金属は、前記第二電極に汚損物質が付着したときに、前記第二水晶振動子が出力する第二共振周波数を、前記第一水晶振動子が出力する第一共振周波数に対して変化させる作用を有し、
前記汚損物質量算出装置は、前記第二周波数計測部にて測定された第二共振周波数から前記第一周波数計測部にて測定された第一共振周波数を差し引いた差分周波数を取得する差分周波数取得部と、
差分周波数と、予め測定した第二電極の汚損物質の付着量および差分周波数の相関を規定するデータベースと、に基づいて、前記第二電極の汚損物質の付着量を判定する判定部と、を含む汚損物質量測定装置。
【請求項2】
さらに、前記汚損物質検出センサは、前記第二水晶振動子の周囲に配置された温度・湿度計を有し、
前記温度・湿度計で測定された温度と湿度と、予め測定した温度ならびに湿度および汚損物質が付着した第二電極の共振周波数の相関を規定するデータベースと、に基づいて、第二電極の温度・湿度補正値を算出する補正値算出部と、
前記第二電極の温度・湿度補正値を算出した後に取得された差分周波数を前記第二電極の温度・湿度補正値に基づいて補正する補正部と、を含む請求項に記載の汚損物質量測定装置。
【請求項3】
互いに同一の環境に配置される第一水晶振動子と第二水晶振動子、前記第一水晶振動子に接続する第一周波数発振部と第一周波数計測部、および前記第二水晶振動子に接続する第二周波数発振部と第二周波数計測部を含み、
前記第一水晶振動子は第一金属を含む第一電極を備え、前記第二水晶振動子は第二金属を含む第二電極を備え、前記第二金属は、前記第二電極に汚損物質が付着したときに、前記第二水晶振動子が出力する第二共振周波数を、前記第一水晶振動子が出力する第一共振周波数に対して変化させる作用を有する汚損物質検出センサを用い、
前記第二周波数計測部にて測定された第二共振周波数から前記第一周波数計測部にて測定された第一共振周波数を差し引いた差分周波数を取得する工程と、
差分周波数と、予め測定した第二電極の汚損物質の付着量とおよび差分周波数の相関を規定するデータベースと、に基づいて、前記第二電極の汚損物質の付着量を判定する工程と、を含む汚損物質量測定方法。
【請求項4】
さらに、前記第二水晶振動子の周囲の温度と湿度を測定する工程と、
前記温度と前記湿度と、予め測定した温度ならびに湿度および汚損物質が付着した第二電極の共振周波数の相関を規定するデータベースと、に基づいて、第二電極の温度・湿度補正値を算出する工程と、
前記第二電極の温度・湿度補正値を算出した後に取得された差分周波数を前記第二電極の温度・湿度補正値に基づいて補正する工程と、を含む請求項に記載の汚損物質量測定方法。