(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020601
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H10K 50/10 20230101AFI20240206BHJP
H10K 50/81 20230101ALI20240206BHJP
H10K 50/818 20230101ALI20240206BHJP
H10K 50/82 20230101ALI20240206BHJP
H10K 50/828 20230101ALI20240206BHJP
H10K 59/38 20230101ALI20240206BHJP
H10K 59/00 20230101ALI20240206BHJP
H10K 102/10 20230101ALN20240206BHJP
H10K 102/20 20230101ALN20240206BHJP
【FI】
H10K50/10
H10K50/81
H10K50/818
H10K50/82
H10K50/828
H10K59/38
H10K59/00
H10K102:10
H10K102:20
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023203644
(22)【出願日】2023-12-01
(62)【分割の表示】P 2022058313の分割
【原出願日】2017-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2016025292
(32)【優先日】2016-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 輝一
(72)【発明者】
【氏名】丹 博樹
(72)【発明者】
【氏名】大下 勇
(57)【要約】
【課題】透光性を有する発光装置において、発光スペクトルのピークを急峻にするとともに、発光装置の透光性が低下しないようにする。
【解決手段】複数の発光部140は基板100の第1面100aに設けられており、互いに離れている。発光部140は、透光性の第1電極110、有機層120、及び光反射性の第2電極130を有している。有機層120は第1電極110と第2電極130の間に位置している。透光領域は発光部140の間に位置しており、発光装置10の厚さ方向に光を透過する。光フィルタ200は、発光部140と重なっていて透光領域の少なくとも一部と重なっていない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性の基板と、
前記基板の第1面に互いに離れて設けられており、透光性の第1電極、光反射性の第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極の間に位置する有機層を有する複数の発光部と、
前記発光部の間に位置し、厚さ方向に光を透過する透光領域と、
前記基板の光射出面に設けられ、前記発光部と重なっていて前記透光領域の少なくとも一部と重なっていない第1光フィルタと、
を備える発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は有機ELを利用した発光装置の開発が進んでいる。この発光装置は、照明装置や表示装置として使用されており、第1電極と第2電極の間に有機層を挟んだ構成を有している。そして、一般的には第1電極には透明材料が用いられており、第2電極には金属材料が用いられている。
【0003】
有機ELを利用した発光装置の一つに、特許文献1に記載の技術がある。特許文献1の技術は、有機ELを利用した表示装置に光透過性(シースルー)を持たせるために、第2電極を画素の一部にのみ設けている。このような構造において、複数の第2電極の間に位置する領域は光を透過させるため、表示装置は光透過性を有することができる。なお、特許文献1に記載の技術において、複数の第2電極の間には、画素を画定するために、透光性の絶縁膜が形成されている。特許文献1において、この絶縁膜の材料として、酸化シリコンなどの無機材料や、アクリル樹脂などの樹脂材料が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発光装置の用途によっては、発光装置の発光スペクトルのピークを急峻にすることが求められる。このためには、例えば、発光装置に光フィルタを重ねればよい。しかし、透光性を有する発光装置に光フィルタを設けると、透光性が低下してしまう。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、透光性を有する発光装置において、発光スペクトルのピークを急峻にするとともに、発光装置の透光性が低下しないようにすることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、透光性の基板と、
前記基板の第1面に互いに離れて設けられており、透光性の第1電極、光反射性の第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極の間に位置する有機層を有する複数の発光部と、
前記発光部の間に位置し、厚さ方向に光を透過する透光領域と、
前記基板の光射出面に設けられ、前記発光部と重なっていて前記透光領域の少なくとも一部と重なっていない第1光フィルタと、
を備える発光装置である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0009】
【
図1】実施形態に係る発光装置の構成を示す断面図である。
【
図3】変形例1に係る発光装置の構成を示す断面図である。
【
図4】変形例2に係る発光装置の構成を示す断面図である。
【
図5】変形例3に係る発光装置の構成を示す断面図である。
【
図6】変形例4に係る発光装置の構成を示す断面図である。
【
図7】
図6の変形例に係る発光装置の構成を示す断面図である。
【
図8】実施例に係る発光装置の使用方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る発光装置10の構成を示す断面図である。
図2は発光装置10の平面図である。
図1は
図1のA-A断面に対応している。実施形態に係る発光装置10は、透光性の基板100、複数の発光部140、透光領域(第2領域104及び第3領域106)、及び第1光フィルタ200を備えている。複数の発光部140は基板100の第1面100aに設けられており、互いに離れている。発光部140は、透光性の第1電極110、有機層120、及び光反射性の第2電極130を有している。有機層120は第1電極110と第2電極130の間に位置している。透光領域は発光部140の間に位置しており、発光装置10の厚さ方向に光を透過する。第1光フィルタ200は、発光部140と重なっていて透光領域の少なくとも一部と重なっていない。本図に示す例において、第1光フィルタ200は基板100の第2面100bに設けられている。以下、詳細に説明する。
【0012】
基板100は、例えばガラス基板や樹脂基板などの透光性を有する基板である。基板100は可撓性を有していてもよい。可撓性を有している場合、基板100の厚さは、例えば10μm以上1000μm以下である。基板100は、例えば矩形などの多角形や円形である。基板100が樹脂基板である場合、基板100は、例えばPEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルホン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、又はポリイミドを用いて形成されている。また、基板100が樹脂基板である場合、水分が基板100を透過することを抑制するために、基板100の少なくとも一面(好ましくは両面)に、SiNxやSiONなどの無機バリア膜が形成されているのが好ましい。なお、基板100を樹脂基板で形成する場合は、樹脂基板に直接後述する第1電極110や有機層120を成膜する方法と、ガラス基板の上に第1電極110以降の層を形成した後に、第1電極110とガラス基板を剥離し、さらに、剥離した積層体を樹脂基板に配置する方法などがある。
【0013】
基板100の一面には、発光部140が形成されている。発光部140は、第1電極110、発光層を含む有機層120、及び第2電極130をこの順に積層させた構成を有している。発光装置10が照明装置の場合、複数の発光部140はライン状(例えば直線状)に延在している。複数の発光部140は、互いに平行に延在しているのが好ましい。一方、発光装置10が表示装置の場合、複数の発光部140はマトリクスを構成するように配置されているか、セグメントを構成したり所定の形状を表示するように(例えばアイコンを表示するように)なっていてもよい。そして複数の発光部140は、画素別に形成されている。
【0014】
第1電極110は、光透過性を有する透明電極である。透明電極の材料は、金属を含む材料、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、IWZO(Indium Tungsten Zinc Oxide)、ZnO(Zinc Oxide)等の金属酸化物である。第1電極110の厚さは、例えば10nm以上500nm以下である。第1電極110は、例えばスパッタリング法又は蒸着法を用いて形成される。なお、第1電極110は、カーボンナノチューブ、又はPEDOT/PSSなどの導電性有機材料であってもよい。また、第1電極110は複数の膜を積層した積層構造を有していてもよい。本図において、基板100の上には、複数の線状の第1電極110が互いに平行に形成されている。このため、第2領域104及び第3領域106には第1電極110は位置していない。
【0015】
有機層120は発光層を有している。有機層120は、例えば、正孔注入層、発光層、及び電子注入層をこの順に積層させた構成を有している。正孔注入層と発光層との間には正孔輸送層が形成されていてもよい。また、発光層と電子注入層との間には電子輸送層が形成されていてもよい。有機層120は蒸着法で形成されてもよい。また、有機層120のうち少なくとも一つの層、例えば第1電極110と接触する層は、インクジェット法、印刷法、又はスプレー法などの塗布法によって形成されてもよい。なお、この場合、有機層120の残りの層は、蒸着法によって形成されている。また、有機層120のすべての層が、塗布法を用いて形成されていてもよい。なお、有機層120の代わりに他の発光層(例えば無機発光層)を有していてもよい。また、発光層の発光する発光色(又は有機層120から放射される光の色)は、隣の発光部140の発光層の発光色(又は有機層120から放射される光の色)と異なっていてもよいし、同じでも良い。
【0016】
第2電極130は、例えば、Al、Au、Ag、Pt、Mg、Sn、Zn、及びInからなる第1群の中から選択される金属、又はこの第1群から選択される金属の合金からなる金属層を含んでいる。このため、第2電極130は遮光性あるいは光反射性を有している。第2電極130の厚さは、例えば10nm以上500nm以下である。第2電極130は、例えばスパッタリング法又は蒸着法を用いて形成される。本図に示す例において、発光装置10は複数の線状の第2電極130を有している。第2電極130は、第1電極110のそれぞれに対して設けられており、かつ第1電極110よりも幅が広くなっている。このため、基板100に垂直な方向から見た場合において、幅方向において第1電極110の全体が第2電極130によって重なっており、また覆われている。このような構成にすることで、有機層120の発光層で発光した光の取出し方向を調整することができる。具体的には、発光装置10の第1面100a側への光の放射を抑えることができる。逆に、第1電極110は、第2電極130よりも幅が広く、基板100に垂直な方向から見た場合において、幅方向において第2電極130の全体が第1電極110によって覆われていてもよい。この場合、発光装置10の第2電極130が形成されている側の方向への発光量は比較的多くなる。
【0017】
第1電極110の縁は、絶縁膜150によって覆われている。絶縁膜150は例えばポリイミドなどの感光性の樹脂材料によって形成されており、第1電極110のうち発光部140となる部分を囲んでいる。言い換えると、絶縁膜150は発光部140を画定している。絶縁膜150は透光性を有しているが、その透光率は高くなくてもよい。第2電極130の幅方向の縁は、絶縁膜150上に位置している。言い換えると、発光部140が延在する方向に垂直な方向から見た場合において、絶縁膜150の一部は第2電極130から食み出ている。また本図に示す例において、有機層120は絶縁膜150の上及び側面にも形成されている。
【0018】
発光部140が延在する方向に垂直な方向から見た場合(すなわち
図1の断面図)において、発光装置10は、第1領域102、第2領域104、及び第3領域106を有している。
【0019】
第1領域102は第2電極130と重なる領域である。つまり、第1領域102は基板100に垂直な方向から見た場合において、第2電極130に覆われている領域であり、発光部140と同じ幅か、または発光部140よりも幅が広い。本図に示す例では、第1領域102の幅は発光部140の幅よりも幅が広い。第1領域102は、発光装置10または基板100の表面から裏面、及び裏面から表面のそれぞれにおいて光を通さない領域である。
【0020】
そして、第2電極130の間に位置する領域は透光領域となっている。この透光領域は、第2領域104(第1透光領域)及び第3領域106(第2透光領域)により構成されている。第2領域104は、透光領域のうち絶縁膜150を含む領域である。第3領域106は、透光領域のうち絶縁膜150を含まない領域である。第3領域106の透光率は第2領域104の透光率よりも高い。
【0021】
第2領域104の幅は、第3領域106の幅よりも狭い。このため、発光装置10は、十分な光透過性を有している。また第3領域106の幅は第1領域102の幅よりも広くてもよいし、狭くてもよい。第1領域102の幅を1とした場合、第2領域104の幅は例えば0以上(又は0超若しくは0.1以上)0.2以下であり、第3領域106の幅は例えば0.3以上2以下である。また第1領域102の幅は、例えば50μm以上500μm以下であり、第2領域104の幅は例えば0μm以上(又は0μm超)100μm以下であり、第3領域106の幅は例えば15μm以上1000μm以下である。
【0022】
なお、
図1に示す例において、有機層120の少なくとも一部の層は第1領域102、第2領域104、及び第3領域106に連続的に形成されている。言い換えると、複数の発光部140の有機層120は連続的に形成されている。このようにすると、有機層120のうち連続している層を形成する際にマスクを用いる必要がないため、有機層120の製造コストを低くすることができる。ただし、有機層120は第3領域106に形成されていなくてもよい。また、有機層120は、第2領域104に形成されていなくてもよい。
【0023】
また、発光部140は格子状であってもよい。この場合、第3領域106は、基板100のうち第2電極130で囲まれた領域になる。
【0024】
発光装置10は、さらに第1光フィルタ200を有している。第1光フィルタ200は、発光部140が発光した光の一部をフィルタリングする。第1光フィルタ200は、例えば発光部140の発光スペクトルのピークを急峻にするため(言い換えると発光部140の発光色をきれいにするため)のカラーフィルタである。この場合、第1光フィルタ200の透過スペクトルのピーク波長は、発光部140の発光スペクトルに含まれている。例えば、発光部140の発光色が赤である場合、第1光フィルタ200は赤の光を通し、他の色の光を落さない赤色のフィルタである。また、発光部140の発光色が緑である場合、第1光フィルタ200は緑の光を通し、他の色の光を落さない緑色のフィルタである。また、発光部140の発光色が青である場合、第1光フィルタ200は青の光を通し、他の色の光を落さない青色のフィルタである。第1光フィルタ200は、例えば所望の色が着色された透光性の層又はシートである。また、第3領域106を可視光が透過する場合のうち、第3領域と第1光フィルタ200が重ならない部分の可視光の透過率は、例えば70%以上95%以下である。また、第1光フィルタ200と第3領域106が重なる部分の透過率は、第1光フィルタ200が透過する波長の光に対して70%以上95%以下である。また、発光装置10の透過率は10%以上90%以下である。
【0025】
図1に示す例では、第1光フィルタ200の縁は第2領域104と重なっている。いいかえると、第1光フィルタ200の幅は発光部140の幅よりも大きい。このようにすると、発光部140に対する第1光フィルタ200の位置や、第1光フィルタ200の幅にばらつきが生じても、発光部140のうち第1光フィルタ200に覆われない部分が生じることを抑制できる。なお、本図に示す例では、第1光フィルタ200の幅は第2電極130の幅よりも大きい。
【0026】
次に、発光装置10の製造方法について説明する。まず、基板100に第1電極110を、例えばスパッタリング法を用いて形成する。次いで、第1電極110を例えばフォトリソグラフィー法を利用して所定のパターンにする。次いで、第1電極110の縁の上に絶縁膜150を形成する。例えば絶縁膜150が感光性の樹脂で形成されている場合、絶縁膜150は、露光及び現像工程を経ることにより、所定のパターンに形成される。次いで、有機層120及び第2電極130をこの順に形成する。有機層120が蒸着法で形成される層を含む場合、この層は、例えばマスクを用いるなどして所定のパターンに形成される。第2電極130も、例えばマスクを用いるなどして所定のパターンに形成される。その後、封止部材(図示せず)を用いて発光部140を封止する。
【0027】
そして、基板100の第2面100bに、第1光フィルタ200を設ける。第1光フィルタ200は例えば塗布(例えばスクリーン印刷)によって形成される。このとき、例えば絶縁膜150及び第2電極130の位置に基づいて、第1光フィルタ200の形成位置を定める。なお、第1光フィルタ200は予めシート状に形成されていてもよい。この場合、第1光フィルタ200は、例えば接着層(又は粘着層)を用いて基板100の第2面100bに貼り付けられる。
【0028】
以上、本実施形態によれば、第1光フィルタ200は発光部140を覆っているが、透光領域の少なくとも一部(
図1に示す例では第2領域104の一部及び第3領域106)を覆っていない。従って、発光部140の発光スペクトルのピークを急峻にできるとともに、発光装置10の透光性を維持することができる。
【0029】
また、第1光フィルタ200の屈折率が空気の屈折率と基板100の屈折率の間である場合、発光装置10の光取出効率を向上させることができる。
【0030】
(変形例1)
図3は、変形例1に係る発光装置10の構成を示す断面図であり、実施形態の
図1に対応している。本変形例に係る発光装置10は、第1光フィルタ200の縁が、第1領域102のうち発光部140以外の領域と重なっている点を除いて、実施形態に係る発光装置10と同様の構成である。言い換えると、本変形例において、第1光フィルタ200の縁は、第2電極130及び絶縁膜150と重なっている。また、別の言い方をすれば、第1光フィルタ200の縁は、第2領域104と発光部140の間に位置している。
【0031】
本変形例によっても、実施形態と同様に、発光部140の発光スペクトルのピークを急峻にできるとともに、発光装置10の透光性を維持することができる。
【0032】
(変形例2)
図4は、変形例2に係る発光装置10の構成を示す断面図であり、実施形態の
図1に対応している。本変形例に係る発光装置10は、第1光フィルタ200の縁が、第3領域106のうち絶縁膜150に近い領域と重なっている点を除いて、実施形態に係る発光装置10と同様の構成である。
【0033】
言い換えると、第1光フィルタ200は発光部140及び絶縁膜150を覆っている。また、第1光フィルタ200の端部は、第3領域106に食み出している。また、幅w1は、第3領域106の幅の10%以下であるのが好ましい。このようにすると、第1光フィルタ200の一部が第3領域106に食み出していても、第3領域106の透光率(言い換えると発光装置10の透光性)が低下することを抑制できる。なお、第1光フィルタ200の一方の端部のうち第3領域106に位置する部分の幅は、第1光フィルタ200の他方の端部のうち第3領域106に位置する部分の幅と同じであってもよいし。異なっていてもよい。
【0034】
本変形例によっても、実施形態と同様に、発光部140の発光スペクトルのピークを急峻にできるとともに、発光装置10の透光性を維持することができる。また、第1光フィルタ200の端部は、第3領域106に食み出しているため、発光部140に対する第1光フィルタ200の位置や、第1光フィルタ200の幅にばらつきが生じても、発光部140のうち第1光フィルタ200に覆われない部分が生じることを抑制できる。発光部140からの光のうち、第1光フィルタ200を通らないで第2面100bから放射される光を少なくすることができる。
【0035】
(変形例3)
図5は、変形例3に係る発光装置10の構成を示す断面図であり、実施形態の
図1に対応している。本変形例に係る発光装置10は、シート部材210を有している点を除いて、実施形態に係る発光装置10と同様の構成である。
【0036】
シート部材210は例えば透明な樹脂を用いて形成されており、接着層又は粘着層を用いて基板100の第2面100bに取り付けられている。そして、シート部材210のうち発光部140に対向する領域には、第1光フィルタ200が形成されている。ただし、シート部材210のうち第3領域106と重なる領域には第1光フィルタ200が形成されていない。
【0037】
なお、本図において、第1光フィルタ200と第1領域102、第2領域104、及び第3領域106の相対位置は、実施形態に示した通りである。ただし、この相対位置は、
図2と同様であってもよいし、
図3と同様であってもよいし、
図4と同様であってもよい。
【0038】
また、本図に示す例において、第1光フィルタ200はシート部材210のうち基板100とは逆側の面に設けられている。ただし、第1光フィルタ200はシート部材210のうち基板100に対向する面に設けられていてもよいし、シート部材210の内部に設けられていてもよい。例えばシート部材210の一部が着色されることにより、第1光フィルタ200が形成されていてもよい。
【0039】
本変形例によっても、実施形態と同様に、発光部140の発光スペクトルのピークを急峻にできるとともに、発光装置10の透光性を維持することができる。また、シート部材210を基板100に張り付けることにより第1光フィルタ200を基板100に取り付けることができるため、第1光フィルタ200を容易に基板100に取り付けることができる。
【0040】
(変形例4)
図6は、変形例4に係る発光装置10の構成を示す断面図である。本変形例に係る発光装置10は、第2光フィルタ202を有している点を除いて、実施形態に係る発光装置10と同様の構成である。
【0041】
第2光フィルタ202は、発光部140を基準にしたとき第1光フィルタ200の反対側に位置している。言い換えると、発光部140は、第1光フィルタ200と第2光フィルタ202の間に位置している。そして、発光装置10が封止部材を有している場合、第2光フィルタ202は、この封止部材に取り付けられている。より具体的には、第2光フィルタ202は、この封止部材の発光部と反対側の面に取り付けられている。このような構造にすると、既存の発光装置10の製造方法に第2光フィルタ202の形成プロセスを追加することで、本変形例に係る発光装置10を製造することができる。従って、発光装置10の製造プロセスの変更が少なく済む。第2光フィルタ202の形成方法には、第1光フィルタ200の形成方法として例示した方法のいずれかを用いることができる。なお、封止部材は、透光性を有する封止部材であればよい。たとえば、ガラスなどの透明部材を用いたいわゆる中空封止構造を有していてもよいし、ラミネートフィルムなどのフィルムであってもよいし、無機膜などの膜であってもよい。
【0042】
第2光フィルタ202の色は、例えば第1光フィルタ200の色の補色である。この場合、第1光フィルタ200及び第2光フィルタ202が重なった領域における白色光の透過率は、5%以下、好ましくはほぼ0%になる。また、第2光フィルタ202は、可視光の全域にわたって光を一定以上透過しないという特性(例えば窓ガラス用のスモークフィルムと同様の特性)を有していてもよい。この場合、第2光フィルタ202に対する白色光の透過率は、例えば20%以上70%以下であるが、この範囲に限定されない。
【0043】
白色光は、一例として、例えばJISで昼光色、昼白色、白色、温白色、及び電球色として定義されている範囲の蛍光ランプ又はLEDの光源色に対応する光を意味する。昼光色、昼白色、白色、温白色、及び電球色は、JISZ9112で定義されている通りである。この定義によれば、昼光色は、xy色度図において(0.3274,0.3673)、(0.3282,0.3297)、(0.2998,0.3396)、及び、(0.3064,0.3091)を頂点とした四角形で囲まれた領域であり、相間色温度Tcpは5700~7100(K)である。また昼白色は、xy色度図において(0.3616,0.3875)、(0.3552,0.3476)、(0.3326,0.3635)、及び、(0.3324,0.3296)を頂点とした四角形で囲まれた領域であり、相間色温度Tcpは4600~5500(K)である。また白色は、xy色度図において(0.3985,0.4102)、(0.3849,0.3668)、(0.3652,0.3880)、及び、(0.3584,0.3499)を頂点とした四角形で囲まれた領域であり、相間色温度Tcpは3800~4500(K)である。また温白色は、xy色度図において(0.4305,0.4218)、(0.4141,0.3834)、(0.3966,0.4044)、及び、(0.3856,0.3693)を頂点とした四角形で囲まれた領域であり、相間色温度Tcpは3250~3800(K)である。また電球色は、xy色度図において(0.4834,0.4832)、(0.4594,0.3971)、(0.4305,0.4218)、及び、(0.4153,0.3862)を頂点とした四角形で囲まれた領域であり、相間色温度Tcpは2600~3250(K)である。ほかの例としては、白色光は、太陽光でもよい。ただし、白色光は、これらの例に限定されるものではなく、たとえば、赤色(波長640nm)、緑色(波長520nm)、及び青色(波長450nm)の波長の光を含む光でもよい。さらには、JISZ8120で定義されている通り、白色光は、肉眼で白色に見える放射、通常連続スペクトルからなる光でもよい。
【0044】
基板100に垂直な方向から見た場合、第2光フィルタ202の90%以上は、第1光フィルタ200と重なっていることが好ましい。また、第1光フィルタ200の90%以上は第2光フィルタ202と重なっていることが好ましい。
【0045】
例えば
図6に示す例では、第2光フィルタ202は、複数の第1光フィルタ200のそれぞれに対向して設けられている。言い換えると、一つの第1光フィルタ200に対して一つの第2光フィルタ202が設けられている。この場合、発光部140が並んでいる方向における第2光フィルタ202の幅は、例えば第1光フィルタ200の幅の95%以上105%以下である。また、発光部140が延在している方向における第2光フィルタ202の幅も、例えば第1光フィルタ200の幅の95%以上105%以下である。ただし、第2光フィルタ202の幅はこれらの範囲に限定されない。
【0046】
なお、第2光フィルタ202が、上記したように窓ガラス用のスモークフィルムと同様の特性を有している場合(例えば薄い茶色や黒の場合)、
図7に示すように、複数の第1光フィルタ200と重なるように一つの第2光フィルタ202が設けられていてもよい。この場合、発光部140の間に位置する第3領域106にも第2光フィルタ202が設けられることになる。また、基板100のほぼ全域にわたって第2光フィルタ202が設けられていてもよい。
【0047】
本変形例によっても、実施形態と同様に、発光部140の発光スペクトルのピークを急峻にできるとともに、発光装置10の透光性を維持することができる。また、第1光フィルタ200と重なる位置に第2光フィルタ202を有しているため、発光部140が発光していないタイミングで発光部140以外の光が第1光フィルタ200を透過する場合に、発光装置10の少なくとも一部が第1光フィルタ200と同じ色を有しているように見えることを抑制できる。
【0048】
なお、変形例1~3に係る発光装置10が、本変形例に示した第2光フィルタ202を有していてもよい。
【0049】
(実施例)
図8は、実施例に係る発光装置10の使用方法を説明するための断面図である。本実施例において、発光装置10は透光部材20の一面に取り付けられている。透光部材20は、例えば窓ガラスである。そして、発光装置10は発光システムの一部である。この発光システムは、少なくとも発光装置10と透光部材20とを含み、発光装置10を制御する制御部(図示しない)、電源部(図示しない)、透光部材20を固定する固定部材、及び発光装置10を透光部材20に取り付ける取付部材などを有している。透光部材20が建物や移動体(例えば自動車、列車、又は飛行機)の窓ガラスの場合、発光装置10の光射出面(第2面100b)は、例えば透光部材20に対向している。すなわち、発光装置10が発光した光は透光部材20を介して建物や移動体の外部に放射される。なお、発光部140が建物や移動体の外面に設けられている場合、基板100の光射出面は、透光部材20とは逆側を向いている。また、発光装置10は、人の目と同じ高さに位置していてもよいし、人の目よりも高く位置していてもよいし、人の目よりも低く位置していてもよい。また、透光部材20は傾きを有してもよい。
【0050】
本実施例において、発光装置10は実施形態及び各変形例のいずれかに示した構成を有している。従って、透光部材20を介して発光装置10から放射される光のピークを急峻にできる。また、透光部材20のうち発光装置10が設けられている領域の透光性を維持することができる。
【0051】
発光装置10の発光輝度は、測定(認識)されるときの条件、例えば人の目の位置・角度によって変わる。通常、発光装置10の正面(発光装置10に対して垂直方向)で発光輝度は最大となる。そこで傾きを有する透光部材20及び発光装置10に対して、たとえば発光装置10の発光を水平方向で見たときに最大輝度とするというような、所望の角度での発光輝度を最大にしたいことがある。この場合、発光装置10を、共振構造を用いて、特定の波長を強めあうように設計することがある。この場合、所望の角度での発光輝度は向上するが、所望角度とそれ以外の角度から観測したときに発光装置10の発光の色味が変わって見えることがある。
【0052】
具体的には、共振構造によって、ある波長ピーク値での発光を強めた場合(例えば、赤色の発光で波長ピークが630nm付近)、所望の角度(例えば、傾きを透光部材20に対して水平方向から見た場合の角度)では630nmの発光が観測されるが、それ以外の角度(例えば、傾きを有する透光部材20に対して垂直から見た場合)では発光色が異なる。共振構造によって、それ以外の角度ではある波長ピーク(630nm付近の波長)の発光が相対的に弱くなる。そのため、発光装置10の観測点による色味の変化が発生してしまっていた。これに対して、本実施例において、たとえば、630nm以外の波長の光を低減する第1光フィルタ200を設置することで、人が発光装置10に対する角度を変えたときに、発光装置10の色味が変化することを抑制できる。
【0053】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0054】
この出願は、2016年2月12日に出願された日本出願特願2016-025292を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。