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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002061
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】放香装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/12 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
A61L9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101029
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】509282767
【氏名又は名称】スマートチップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081318
【弁理士】
【氏名又は名称】羽切 正治
(74)【代理人】
【識別番号】100132458
【弁理士】
【氏名又は名称】仲村 圭代
(74)【代理人】
【識別番号】100165146
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 博喜
(74)【代理人】
【識別番号】100101188
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 義雄
(72)【発明者】
【氏名】井上 賢一
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA03
4C180AA13
4C180CA06
4C180EA52Y
4C180GG03
4C180HH05
4C180HH13
4C180HH19
4C180LL01
4C180LL06
(57)【要約】
【課題】
香水、芳香剤、消臭剤、トイレタリー商品等の香りを発生させる際に、必要な分量を適宜投入し、好みの濃度の香料を揮発させることができる放香装置を提供する。
【解決手段】
筐体内に位置して複数の球形芳香剤を収容する上部トレーと、前記筐体の下部側に位置して内部に溶媒を収容する下部トレーと、前記上部トレーから前記下部トレーへ球形芳香剤を投入する投入口とを備え、前記上部トレーは、複数の前記球形芳香剤を貯えており、前記投入口に向かって前記球形芳香剤が誘導されて集まる傾斜部を備え、前記球形芳香剤を、前記上部トレーから前記投入口を通って前記下部トレーに所定のタイミングで投入して前記溶媒に溶解させ、前記溶媒から揮発した香料(香気)を筐体の外部に送り出す。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に位置して複数の球形芳香剤を収容する上部トレーと、
前記筐体の下部側に位置して内部に溶媒を収容する下部トレーと、
前記上部トレーから前記下部トレーへ前記球形芳香剤を投入する投入口とを備え、
前記上部トレーは、複数の前記球形芳香剤を貯えており、前記投入口に向かって前記球形芳香剤が誘導されて集まる傾斜部を備え、
前記球形芳香剤を、前記上部トレーから前記投入口を通って前記下部トレーに所定のタイミングで投入して前記溶媒に溶解させることを特徴とする放香装置。
【請求項2】
前記上部トレーの傾斜部と前記投入口をつなぐ導入部を備え、
前記導入部は、導入口、導入路、及び押出し空間を有し、
前記上部トレー内の前記球形芳香剤が、前記導入口に誘導されて前記導入路に侵入するように構成され、
前記押出し空間は、前記導入路の出口側端部に前記球形芳香剤が入るサイズで前記投入口に隣接して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の放香装置。
【請求項3】
前記押出し空間で前記投入口に対して進退可能な押出し部を更に備え、当該押出し部がピストン運動を行い、前記球形芳香剤を前記投入口へ押出す動作を行うことを特徴とする請求項2に記載の放香装置。
【請求項4】
前記押出し部は押出し板を備え、前記押出し板は、側面部と天面部とを有し、
前記側面部は、前記球形芳香剤を前記投入口から押出すために前記球形芳香剤と接触し、前記天面部は、前記球形芳香剤を上に載せて押し出しを待機させる機能を有することを特徴とする請求項3に記載の放香装置。
【請求項5】
前記下部トレー及び前記溶媒は、前記下部トレーより下方に配置されたヒーターにより、加熱されることを特徴とする請求項1に記載の放香装置。
【請求項6】
前記投入口の直下に当該投入部の開閉を行うスライド部を備え、
前記スライド部は、スライド板をスライドさせて、前記球形芳香剤を前記スライド板に設けられた投入孔を通過して、前記上部トレーから前記投入口を通って前記下部トレーに投入させることを特徴とする請求項1に記載の放香装置。
【請求項7】
さらに、発光することにより、イルミネーションを作り出すLEDを備えることを特徴とする請求項1に記載の放香装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放香装置に係り、更に詳しくは、香水、芳香剤、消臭剤、トイレタリー商品等の香りを発生させる際に、必要な分量を適宜投入し、好みの濃度の香料を揮発させることができる放香装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ホテルのロビー、空港のラウンジ、店舗内、企業の受付やミーティングルーム等、部屋全体や広い空間で香りを演出する要望が高まっている。狭い空間等や個人的に香り(アロマ)を楽しむ場合等は、液体、ジェル、錠剤等の形状の芳香剤を揮発させるアロマディフューザ(放香装置)が用いられる。
このような芳香装置としては、特許文献1、2に記載されたものが知られている。
特許文献1に記載の薬剤揮散装置1は、薬剤収容容器10の嵌合部14に揮散室20のホルダ部21を嵌めて一体化した後に開口部13を下方に向けて一体化された薬剤収容容器10と揮散室20を倒立させて使用する。薬剤収容容器10内に収容された粒状のゲル状薬剤2は、揮散室20の受け皿部23に自重により落下して供給され、供給量がほぼ飽和状態となり供給が一旦停止され、外部に露出される。
そして、揮散室20内の露出されたゲル状薬剤2に含まれる揮散性薬剤が揮散開口部22を通じて、大気中に徐々に放出され、芳香が外部に漂うことになる。その後、揮散性薬剤が揮散すると、露出した部分のゲル状薬剤2は次第に収縮・減少していくが、それに伴って、収容部11内にあるゲル状薬剤2が下方に自重により落下して供給され、外部に露出し、新たに供給され、揮散性薬剤が、自動的に常に一定レベルで大気中に揮散されるようになっている。
特許文献2に記載の気化薬剤収納容器40は、収容体48に収容された固形状の気化薬剤Mが、取り出し孔52から取り出され、気化薬剤収納容器40の外カバー75を押し下げることのみで、破砕体67によって簡単に気化薬剤Mの破砕を行うことができ、破砕された後に、気化薬剤保持部材51上に落下することで、気化薬剤保持部材51に保持されつつ気化ガスを揮散させることができるようになっている。
すなわち、気化薬剤Mが収容体48に収容された状態では、気化薬剤Mから気化ガスが揮散されることを抑制し、気化薬剤Mが無駄に消費されることを防止することができる。そして、気化薬剤Mの気化ガスを揮散させたいときには、気化薬剤Mを破砕することによって、ある程度の時間(所定時間)継続して、破砕後の気化薬剤Mから気化ガスを揮散させることができる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4816568号公報
【特許文献2】特許6093595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、一定レベルで待機中に香料が揮散されるので、かえって揮散量を調整することができないという不都合がある。
【0005】
また、特許文献2では、破砕する気化薬剤Mの数量を調整することで揮散量を調整することができるが、収容体48が破砕された際に、気化薬剤Mの破砕された外殻の残骸が気化薬剤保持部材51上に残る場合があること、また、固形状気化薬剤Mが破砕されて気化薬剤保持部材51上に落下するまでに、気化薬剤Mが気化してしまうという不都合を生じる。
【0006】
[発明の目的]
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、薬剤を任意の量を確保して揮発させることで、香りの強さを調整可能であり、また、当該薬剤を揮発させる際に残骸等が残らない放香装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、特許請求の範囲に記載の構成を採用したものである。具体的には、筐体内に位置して複数の球形芳香剤を収容する上部トレーと、前記筐体の下部側に位置して内部に溶媒を収容する下部トレーと、前記上部トレーから前記下部トレーへ前記球形芳香剤を投入する投入口とを備え、前記上部トレーは、複数の前記球形芳香剤を貯えており、前記投入口に向かって前記球形芳香剤が誘導されて集まる傾斜部を備え、前記球形芳香剤を、前記上部トレーから前記投入口を通って前記下部トレーに所定のタイミングで投入して前記溶媒に溶解させる、という構成を採っている。
【0008】
前記放香装置において、前記上部トレーの傾斜部と前記投入口をつなぐ導入部を備え、前記導入部は、導入口、導入路、及び押出し空間を有し、前記上部トレー内の前記球形芳香剤が、前記導入口に誘導されて前記導入路に侵入するように構成され、前記押出し空間は、前記導入路の出口側端部に前記球形芳香剤が入るサイズで前記投入口に隣接して形成されるように設けることができる。
【0009】
また、前記放香装置の前記押出し空間で前記投入口に対して進退可能な押出し部を更に備え、当該押出し部がピストン運動を行い、前記球形芳香剤を前記投入口へ押出す動作を行うように設けることが好ましい。
【0010】
更に、前記放香装置の前記押出し部は押出し板を備え、前記押出し板は、側面部と天面部とを有し、前記側面部は、前記球形芳香剤を前記投入口から押出すために前記球形芳香剤と接触し、前記天面部は、前記球形芳香剤を上に載せて押し出しを待機させる機能を有するように設けられている。
【0011】
また、前記放香装置の前記下部トレー及び前記溶媒は、前記下部トレーより下方に配置されたヒーターにより、加熱されるように設けられている。
【0012】
更に、前記放香装置は、前記投入口の直下に当該投入口の開閉を行うスライド部を備え、前記スライド部は、スライド版をスライドさせて、前記球形芳香剤を前記スライド版に設けられた投入孔を通過して、前記上部トレーから前記投入口を通って前記下部トレーに投入させるように設けるとよい。
【0013】
なお、前記放香装置は、発光することにより、イルミネーションを作り出すLEDを備える構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、筐体の内部に球形芳香剤を多数保有し、所定のタイミングで必要な量の球形芳香剤を溶媒に投入して溶解させ、溶解した香料を揮発させて匂いを放出することができ、ユーザーの望む適正量の香料(匂い)を提供することができる。
【0015】
球形芳香剤は固形な為、液状の芳香剤と比較して、補充や交換等の取り扱いが容易であり、メンテナンスを行いやすい。また、筐体の内部に球形芳香剤を多数保有しても、球形芳香剤は溶媒に触れるまで揮発しないので、香料を無駄にせず、且つ新鮮に保つことができる。
また、前記導入路の出口側端部に押出し空間を設けたことにより、当該空間に球形芳香剤の投入を待機させることができる。そして、押出し部のピストン運動により、所定のタイミングすなわち投入を必要とするときに球形芳香剤を投入口から押し出すことが可能となる。なお、押出し部が側面部と天面部とを有する押出し板を備えた構成とすることで、球形芳香剤を間欠的に押し出す動作を確実に行うことができ、球形芳香剤の無駄な投入が回避可能となる。
【0016】
また、ヒーターで溶媒を熱することにより、香料の揮発を加速させることができ、ユーザーの望む強度の香り(匂い)を提供することができる。
更に、投入口にスライド部を設けた構成では、スライド板のスライド動作で球形芳香剤の投入を行うことができ、構成の簡易化を図ることができる。
【0017】
また、送風ファンで送風の強弱を調整することにより、香料を含んだ送風を調整することで、ユーザーの望む適正量の香料(匂い)を提供することができる。
更に、LEDを備えた構成では、球形芳香剤をきらきら輝くように見せることができ、放香装置が有する本来の機能に加えて装飾品として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る放香装置の外観斜視図。
図2】前記放香装置の全体の内部構造を示す斜視図。
図3図2に示すA-A線矢視断面図。
図4図2に示すB-B線矢視断面図。
図5】前記放香装置の制御に係るブロック図。
図6】(A)乃至(D)は、図4に示す、押出し機構の動作を示す図。(E)は他の押出し機構の形状を示す図。
図7】前記放香装置の上部トレーをカートリッジ化した例を示す図。
図8】(A)は、第2実施形態に係る、放香装置の全体の内部構造を示す正面図、(B)は、内部構造を示す側面図、(C)(D)は、投下機構の動作を示す図。
図9】(A)(B)は、第1実施形態に係る、ルーパー構造を備えた例を示す図。
図10】(A)(B)は、第2実施形態に係る他の例を示す、放香装置の全体の内部構造を示す正面図、(B)は、内部構造を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、本発明について、その実施形態を示す図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書において、特に明示しない限り、「上下」、「左右」等の位置若しくは方向を示す用語は、図1及び図2を正面に見た状態を基準とし、紙面の手前側を「表」、奥行側を「裏」とする。なお、「表」、「裏」は、製品の「表裏」を限定するものではなく、本発明の構成を説明するために便宜上使用されるものに過ぎない。
【0020】
図1及び図2に示されるように、第1実施形態に係る放香装置1は、略立方体の筐体3と、筐体3の上部に位置して香料入り球形カプセル(以下、球形芳香剤)2を蓄積する上部トレー4と、筐体3の下部に位置して球形芳香剤2が溶解した香料を含む溶媒6を貯える下部トレー5と、下部トレー5の下方に配置され、下部トレー5及び溶媒6を下方から温めて、香料の揮発を促進させるヒーター10と、前記揮発した香料(香気)が浮遊するスペースである揮発空間7と、揮発空間7に浮遊する香気に送風し、筐体3の外部に前記香気を送り出す送風ファン41と、当該送風ファン41と相対する筐体3の面内に設けられ、前記香気通過させる網部8と、送風ファン41等の電気的な機器の動きを制御する制御部9(図5参照)とを備えて構成されている。
【0021】
球形芳香剤2は、常温で香料(芳香成分)が揮散する液体状の芳香材料を、ゼラチン、寒天、或いはカラギーナンのような増粘多糖類等を使用し、界面張力の原理を利用した球形のソフトカプセル内に封入したものを芳香剤として使用する。球形芳香剤2は、溶媒6に接触すると、ソフトカプセルが溶解して、内部の香料が流れ出し、溶媒6に溶ける性状のものである。
【0022】
前記筐体3は、前記香料を外部に漏らさないガスバリア性を有する素材又は、内部がガスバリア性を有する素材コーティングされている。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂成形体、ガラス等である。大きさ及び形状は特に限定しないが、本実施形態では、各辺が170mm×170mm×170mmの立方体の形状とされている。
【0023】
前記上部トレー4は、球形芳香剤2を貯留若しくは収容するものであり、図2乃至図4に示されるように、底面が傾斜部21として形成されている。この傾斜部21は、上部トレー4の四隅から、底面の一端部に設けられた導入口23に向かって低くなる漏斗状に設けられており、上部トレー4内の球形芳香剤2は、傾斜部21を自重で転がって、導入部22の導入口23に誘導されて集まるように構成されている。
【0024】
上部トレー4のサイズは、筐体3に収まるサイズであり、球形芳香剤2の直径にもよるが、深さは四隅の浅い箇所HUU:15~20mm、導入部22は筐体3の上端から深くHUB:20~30mmの範囲が好適であり、本実施形態では、HUU20mm、HUB30mmとされている。また、傾斜部21は四隅から導入部22まで直線形状で図示されているが、円弧形状の構造でも良く、特に限定するものではない。
【0025】
また、上部トレー4の上面は、蓋部15で塞がれ、球形芳香剤2や香気が上部トレー4から筐体3外部に漏れることや、外部の埃等が球形芳香剤2に接触して汚れることを防ぐ。蓋部15は、球形芳香剤2を上部トレー4内に補給するための補給孔16と、補給孔16を塞ぐ開閉可能な補給孔蓋17を備えている。補給孔16及び補給孔蓋17の形状、大きさは特に限定されるものではなく、円形、多角形の形状や、蓋部15の半分ほどの面積を有する構成でもよい。
【0026】
前記導入部22は、導入口23、導入路24、及び押出し空間25から構成されている。
導入口23は、傾斜部21及び導入路24と連接されており、導入路24は下部トレー5の底面から15~20mmの位置まで延伸している。上部トレー4の傾斜部21から転がって来た球形芳香剤2は、導入口23から導入路24に侵入し、下部トレー5の底面から15~20mmの位置で、押出し板31の天面部31bに乗り、球形芳香剤2が縦一列に積み重なった状態で停止する。導入路24の内径サイズは、球形芳香剤2が縦一列に並ぶ大きさであればよい。
【0027】
導入路24の最下端部すなわち出口側端部の球形芳香剤2が停止する位置は、球形芳香剤2の全体が入るサイズの押出し空間25を成す。押出し空間25は、押出し板31が、図2中左右方向にピストン運動を行う空間であり、このピストン運動によって、球形芳香剤2を投入口26から下部トレー5上に押出すことができる。なお、投入口26には開閉可能な投入口蓋27が設けられている。
【0028】
前記投入口26は、球形芳香剤2が通り抜けられるサイズであれば、形状、大きさは限定しない。
前記投入口蓋27は板状をなし、その上端が導入路24の内面側下端にヒンジ連結され、下端側が自由端となって揺動可能に設けられている。従って、常時は投入口26を塞ぐ位置に保たれ、球形芳香剤2が押し出されるときに投入口26を開放するようになっている。
【0029】
押出し部30は、球形芳香剤2を押出し空間25から押出して、下部トレー5に投入する動作を行う。押出し部30は、押出し板31と、押出しモータ32と、シャフト33とを含む。
【0030】
押出し板31は、投入口26側の側面部31aと球形芳香剤2を受け止めて押し出しを待機する位置に保持する天面部31bとから構成されている。本実施形態では、図6(A)~(D)に示されるように、略L字型の形状のものが用いられているが図6(E)に示されるように、は箱型の形状である押出し板31Sを用いてもよい。押出し板31の側面部31aは球形芳香剤2と接触して、球形芳香剤2を押す役割を持つ。側面部31aは押出しモータ32のシャフト33の先端に固定されている。
【0031】
前記押出しモータ32は、制御部9からの制御により、所定のタイミングでシャフト33及び押出し板31の位置を移動させる動作を行う。押出し板31の側面部31aが球形芳香剤2を押して動かし、投入口26から球形芳香剤2を押出して、下部トレー5に投入(落下)させる。押出しモータ32は、大きさ、出力、形状等を特定しないが、本発明では、ソレノイドによる、ピストン運動を行うモータを用いると好適である。
なお、押出しモータ32を設置せず、手動により、所定のタイミングでシャフト33及び押出し板31を動作する構成にしてもよい。
【0032】
前記下部トレー5は、筐体3の底面積と同等の面積と、球形芳香剤2の直径よりも大きい深さを有する皿状となっている。下部トレー5は、球形芳香剤2の香料を漏らさないガスバリア性、及び、ヒーター10の熱に対する耐熱性をもつ素材が望ましい。
下部トレー5の内部には、溶媒6が貯えられている。溶媒6は、球形芳香剤2が投入されて溶解し、球形芳香剤2の水溶液となる。溶媒6の初期成分は、球形芳香剤2が溶解した香料を劣化させない成分であれば良く、例えば、水道水や蒸留水等でよい。
また、下部トレー5は新しい下部トレー5と交換可能な構造になっている。これにより、球形芳香剤2の香料を別の香料に変更した際に、下部トレー5に残った異なる香料(香り)が混合してしまうことを避けることができる。
【0033】
揮発空間7は、上部トレー4の底面と下部トレー5の間に構成される空間であり、下部トレー5内の、球形芳香剤2が溶解した溶媒6から揮発した香気が漂う空間である。
図4に示されるように、揮発空間7の表側(図2の表側)は筐体3が大きく開口しており、網部8で揮発空間7と外部とを隔てている。
網部8は、外部の埃、塵等が、溶媒6と揮発空間7に侵入して汚すのを防ぐ。また、揮発空間7の裏側となる筐体3の内壁面に送風ファン41が設置されている。送風ファン41が回転すると、揮発空間7に漂う香気は網部8を通過して、筐体3の外部に送られる。網部8は、網状であることに限定せず、複数のパンチ穴やスリット等の開いた構造でも構わない。
【0034】
前記ヒーター10は、下部トレー5の下方に配置され、制御部9からの制御で、下部トレー5及び溶媒6を下方から加熱することで、溶媒6に溶解している香料の揮発を促進させる。なお、ヒーター10は、調理器具や暖房器具等に用いられている一般的な構成を備えた公知のものでよく、詳細な説明は省略する。
【0035】
前記制御部9は、図5に示されるように、ヒーター10、押出しモータ32及びファンモータ42を制御する装置である。制御部9の図示しない入力装置から、使用者が任意の動作設定の入力を行い、それぞれの機器を制御する。
制御する主な内容を以下に示す。
・ヒーター:電源ON/OFF、動作タイマー、温度の強/弱、等
・押出しモータ:電源ON/OFF、動作タイマー、1回あたりの投入個数(リピート回数)、等
・ファンモータ:電源ON/OFF、動作タイマー、送風(回転数)の強/弱、等
なお、制御する内容はこれに限定するものではない。例えば、香料を揮発させたり、停止させる曜日や時間、ON/OFFを繰り返すインターバル運転等を設定できるプログラムを搭載し、自動制御するようにしてもよい。
【0036】
前記送風ファン41は、ファンモータ42によって回転するプロペラ状の機器で、送風を行う装置である。送風ファン41は、一般的な構成のもので足りる。
【0037】
次に、本実施形態に係る放香装置の使用方法、動作について説明する。
まず、使用者は、蓋部15の補給孔蓋17を開けて、補給孔16から、任意の個数の球形芳香剤2を入れる。補給孔16から上部トレー4に入った球形芳香剤2は、傾斜部21を転がって、導入口23から導入路24に入り、押出し板31の天面部31bの上に縦一列に並んで静止する。ここで使用者は、補給孔蓋17を閉め、制御部9に、ヒーター10、押出しモータ32及びファンモータ42を制御する動作設定を入力する。なお、下部トレー5には所定量の溶媒6が収容されている。
【0038】
制御部9の命令により、押出しモータ32の動作が開始され、図6(A)乃至(D)に示される動作を行う。
まず、図6(A)に示されるように、初期位置として、押出し板31が押出し空間25の中にあり、押出し板31の左端である側面部31aが、投入口26に隣接する位置に停止して閉塞位置にある投入口蓋27に接する状態にある。同時に、押出し板31の天面部31bには、球形芳香剤2が載っている状態に位置して投入に待機した状態となる。
次に、図6(B)に示されるように、押出しモータ32が駆動し、押出し板31を右側(導入路24から出てもよい)に移動させる。すると、押出し空間25内に球形芳香剤2を受け入れ可能となり、天面部31bに載っていた球形芳香剤2が押出し空間25に落下する。
図6(C)に示されるように、押出しモータ32が駆動し、押出し板31を左方向(投入口26に接近する方向)に移動させると、押出し板31の側面部31aは、球形芳香剤2を投入口26方向に押出す。球形芳香剤2は、投入口蓋27を押しのけて開き始める。
そして、図6(D)に示されるように、押出しモータ32が駆動し、側面部31aをさらに左方向の、投入口26まで移動させる。これにより、球形芳香剤2は、押出し空間25から押出されて、投入口蓋27を押しのけて投入口26から下部トレー5に投入される。
この後、投入口蓋27が自重で閉じることで、図6(A)の状態に戻る。
【0039】
次に、制御部9の命令により、ファンモータ42が回転することで、送風ファン41が回転し、送風を開始する。また、ヒーター10の発熱が開始され、溶媒6の過熱及び揮発が開始される。
【0040】
球形芳香剤2は、投入口26から下部トレー5に貯えられた溶媒6中に投入されて、溶解する。溶解した香料は、ヒーター10が溶媒6を過熱することにより、揮発して揮発空間7を漂う。揮発空間7の香料と空気は混合して香気となり、さらに送風ファン41からの送風により網部8を透過して外部に放出される。
【0041】
このようにして、使用者は、放香装置1から送風された球形芳香剤2の香料の香りを嗅ぐことができる。なお、この時、香りの濃度の調整は、
・投入口26から、溶媒6に投入する球形芳香剤2の間隔(所定のタイミング)及び/又は個数
・送風ファン41による送風の強度
・ヒーターの発熱による、溶液の揮発速度
の内の何れか、または組み合わせによって、最適な好みの香りに調整することができる。
【0042】
図7は、上部トレー4をカートリッジ化して取り外し可能とした例である。カートリッジ化することで、あらかじめ上部トレー4に球形芳香剤2を満載した状態で持ち運び、交換することができる。導入路24の下端部は、シール等で密封しておき、筐体3にカートリッジをはめ込み時に、剥がすようにしてもよい。
また、導入路24を設けず、図7のD-Dに示す線、つまり導入口23までの構成としたカートリッジの構成としてもよい。
【0043】
[第2実施形態]
図8(A)及び(B)は、本発明の第2実施形態を示す図である。第1実施形態と同等の構成については、説明を省略する。
第2実施形態の筐体103は、ガスバリア性を有する素材、かつ、内部が透けて見える素材を用いて、円柱又は四角柱に形成されている。球形芳香剤102は、カラフルな有色に着色し、光を透過するように制作されている。
上部トレー104は、筐体103の縦方向中央部より下方位置に設けられている。上部トレー104の底面である傾斜部121は、上部トレー4の四隅から、底面の一端部に設けられた投入口126に向かって下降する漏斗状に設けられており、上部トレー104内の球形芳香剤102は、傾斜部121を自重で転がって、投入口126に誘導されて集まるように構成されている。
【0044】
また、筐体103の中心線上に、蓋部115から傾斜部121にかけて、LED111を備えている。LED111は、発光して複数の色に変色可能なものが望ましい。
そして、LED111を点灯することで、LED111及び球形芳香剤102が光りイルミネーションの効果をもたらし、視覚的にも美しい放香装置として、付加価値が付与される。
【0045】
また、筐体103は、図8(A)乃至(D)に示されるように、球形芳香剤102を溶媒106に投入する構成として、スライド部140を有している。スライド部140は、球形芳香剤102の直下で移動するスライド板141と、スライド板141を移動させるためのスライドつまみ142とからなり、スライド板141には、球形芳香剤102が通過可能な大きさの投入孔143が形成されている。
【0046】
次に、第2実施形態の動作について説明する。
初期位置として、図8(A)及び(C)に示されるように、投入口126の直上の位置Gに球形芳香剤102が静止している。このとき、球形芳香剤102はスライド板141上で投入孔143とは反対側の端部に静止している状態となる。
次に、スライドつまみ142を摘み、図8(A)中左右方向に沿ってスライド板141をスライドさせる。すると、球形芳香剤102は位置Gのまま、投入孔143が位置Gの直下の位置に移動してくるので、球形芳香剤102は落下して投入孔143を通過し、溶媒106に投入される。
このように、第2実施形態では、第1実施形態における押出し部30よりも簡易な構造で、球形芳香剤102を所定のタイミングで投入孔143から溶媒106に投入(落下)させることができる。
【0047】
そして、筐体103の、溶媒6から揮発した香気は、揮発空間107を漂い、揮発空間107のスライド部140の反対側に設けられたスリット103Sと網部108を通過して、筐体103の外部に香気が放出される。
【0048】
なお、第2実施形態は、一般家庭用を想定しており、騒音を抑えるために送風ファンを備えていないが、揮発空間107の上部、又は側面に小型のファンを設けてもよい。
また、第1実施形態における押出し部30を設ける必要等もないため、簡易な構成により廉価に提供することができる。
【0049】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施形態に対し、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【0050】
例えば、前記第1実施形態では、下部トレー5に貯えられた溶媒6に対して、ヒーター10で加熱し、溶媒6に溶解した香料の揮発を促進させる場合について図示、説明したが、図9に示されるように、ヒーター10に代えて、下部トレー5の上部側内側領域にルーパー51を設ける構成を採用してもよい。
この構成は、所定のタイミング(自動又は手動)でルーパー51の閉状態(図9(A)示す)から開状態(図9(B)示す)にすることで、ルーパー51で屈折した送風向きが、溶媒6の表面に到達し、表面から揮発した香料との混合を促進することができる。この際、ルーパー51の開閉角度を調整することで、香料の濃度を調整することができる。また、送風停止時は、ルーパー51の閉状態とすることで、香料の揮発を抑えることができる。
なお、ヒーター10を設けないことで、発熱に問題がある場所でも設置することができる。
【0051】
また、前記第2実施形態では、図8(A)及び(B)に示されるように、球形芳香剤102を下部トレー105に投入するスライド部140の構成を備える場合について説明したが、図10(A)及び(B)に示されるように、スライド部140に代えて、押出空間125、投入口126、投入口蓋127及び押出し部130を備える構成としてもよい。但し、前述した第2実施形態の構成によれば、構造の簡易化を図る上では有利である。
【符号の説明】
【0052】
1 放香装置
2 香料入り球形カプセル(球形芳香剤)
3 筐体
4 上部トレー
5 下部トレー
6 溶媒
7 揮発空間
8 網部
9 制御部
10 ヒーター
15 蓋部
16 補給孔
17 補給孔蓋
21 傾斜部
22 導入部
23 導入口
24 導入路
25 押出空間
26 投入口
27 投入口蓋
30 押出し部
31、31S 押出し板
31a 側面部
31b 天面部
32 押出しモータ
33 シャフト
41 送風ファン
42 ファンモータ
51 ルーパー
101 放香装置
102 香料入り球形カプセル(球形芳香剤)
103 筐体
103S スリット
104 上部トレー
105 下部トレー
106 溶媒
107 揮発空間
108 網部
110 ヒーター
111 LED
121 傾斜部
125 押出空間
126 投入口
127 投入口蓋
130 押出し部
140 スライド部
141 スライド板
142 スライドつまみ
143 投入孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10