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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020620
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】光学式変位計
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20240206BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
G01B11/00 A
G01B11/24 K
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023206072
(22)【出願日】2023-12-06
(62)【分割の表示】P 2019203520の分割
【原出願日】2019-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】冬野 明
(57)【要約】
【課題】プロファイルの測定精度を低下させることなくワークに対する位置調整を容易に行うことが可能な光学式変位計を提供する。
【解決手段】撮像ヘッド100は、測定光をワークWに照射するレーザ投光部110と、一様な観察光をワークWに照射するLED投光部120と、ワークWからの測定光および観察光の反射光を集束する受光レンズ132と、2次元に配置された複数の受光素子により構成される受光面を有する受光部131と、処理装置200とを備える。レーザ投光部110、受光部131および受光レンズ132は、受光面を含む平面および受光レンズ132の主面を含む平面がレーザ投光部110の投光軸に対してシャインプルーフの条件を満足するように配置されることにより、測定時に測定光が照射される測定位置近傍の領域に、受光部131の焦点が相対的に合致した観察画像を示す観察画像データが生成される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物のプロファイルを測定する光切断方式の光学式変位計であって、
第1の投光軸を有し、第1方向に延びる帯状のレーザ光、または前記第1方向に走査される点状のレーザ光を測定光として測定対象物に照射するためのレーザ投光部と、
一様な光を観察光として測定対象物に照射するためのLED投光部と、
測定対象物からの測定光および観察光の反射光を集束する受光レンズと、
2次元に配置された複数の受光素子により構成される受光面を有し、前記受光レンズにより集束された光を受光して受光量分布を出力する受光部と、
測定時に前記受光部により出力された測定光の受光量分布に基づいて測定対象物のプロファイルを示すプロファイルデータを生成する処理と、前記受光部により出力された観察光の受光量分布に基づいて観察光が照射されている測定対象物の画像を観察画像として示す観察画像データを生成する処理とを実行するための処理装置とを備え、
前記レーザ投光部、前記受光部および前記受光レンズは、前記受光面を含む平面および前記受光レンズの主面を含む平面が前記第1の投光軸に対してシャインプルーフの条件を満足するように配置されることにより、前記測定時に前記測定光が照射される測定位置近傍の領域に、前記受光部の焦点が相対的に合致した観察画像を示す観察画像データが生成され、
前記LED投光部が、前記測定位置近傍の領域よりも前記第1方向と直交する第2方向に広い領域に前記観察光を照射することにより、前記観察画像には、前記測定位置近傍の領域から前記第2方向に離れるほど前記受光部の焦点の合致度合が低下していくことが使用者に視認可能な明るさで示されることを特徴とする、光学式変位計。
【請求項2】
前記処理装置は、測定光および観察光が同時に出射されるように前記レーザ投光部および前記LED投光部を制御し、測定対象物における測定光が照射されている測定位置に測定光の輝線が重畳表示された観察画像データを生成する、請求項1記載の光学式変位計。
【請求項3】
前記処理装置は、測定光および観察光が交互に出射されるように前記レーザ投光部および前記LED投光部を制御し、前記受光部により出力された測定光の受光量分布に基づいて測定光が照射されている測定対象物の画像を測定画像として示す測定画像データを生成する処理と前記観察画像データを生成する処理とを交互に実行する、請求項1記載の光学式変位計。
【請求項4】
前記処理装置は、測定画像と観察画像とを自動的に切り替えて表示させる、請求項3記載の光学式変位計。
【請求項5】
前記処理装置は、観察画像データに測定画像データを合成し、測定対象物における測定光が照射されている測定位置に測定光の輝線が重畳表示された観察画像を表示させる、請求項3記載の光学式変位計。
【請求項6】
前記処理装置は、前記受光部の同一の露光期間内において、測定光および観察光が交互に出射されるように前記レーザ投光部および前記LED投光部を制御し、測定対象物における測定光が照射されている測定位置に測定光の輝線が重畳表示された観察画像を示す観察画像データを生成する、請求項1記載の光学式変位計。
【請求項7】
測定光と観察光とが同時に出射されることを禁止するように構成された排他制御回路をさらに備える、請求項3~6のいずれか一項に記載の光学式変位計。
【請求項8】
前記レーザ投光部、前記LED投光部、前記受光レンズおよび前記受光部を収容する内部空間を有するハウジング内部において、前記LED投光部は、前記レーザ投光部の前記第1の投光軸に略平行な第2の投光軸を有し、
前記ハウジングは、
前記第1および第2の投光軸に略垂直な第1の面と、
前記第1の面に対して傾斜した第2の面と、
前記第1の面に設けられ、前記レーザ投光部から測定対象物に照射される測定光が透過する測定窓と、
前記第1の面に設けられ、前記LED投光部から測定対象物に照射される観察光が透過する観察窓と、
前記第2の面に設けられ、測定対象物からの測定光および観察光の反射光が透過する受光窓とを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の光学式変位計。
【請求項9】
前記観察窓は、前記測定窓よりも前記受光窓に近い位置に設けられた、請求項8記載の光学式変位計。
【請求項10】
測定対象物からの反射光の光路上に設けられたバンドパスフィルタをさらに備え、
前記レーザ投光部は、400nm以上480nm以下の波長を有する測定光を出射し、
前記LED投光部は、測定光の波長を含む波長範囲を有する観察光を出射し、
測定光の波長範囲内における前記バンドパスフィルタの透過率は、測定光の波長範囲外における前記バンドパスフィルタの透過率よりも高い、請求項1~9のいずれか一項に記載の光学式変位計。
【請求項11】
前記処理装置は、前記受光部により出力された測定光の受光量分布に基づいて測定光が照射されている測定対象物の画像を測定画像として示す測定画像データとプロファイルデータとを合成することによりプロファイルに測定光の輝線が重畳表示された第1の合成画像を示す合成画像データを生成し、前記第1の合成画像と前記観察画像とを表示させる、請求項1~10のいずれか一項に記載の光学式変位計。
【請求項12】
測定対象物のプロファイルを測定する光切断方式の光学式変位計であって、
第1の投光軸を有し、一方向に延びる帯状のレーザ光、または前記一方向に走査される点状のレーザ光を測定光として測定対象物に照射するためのレーザ投光部と、
一様な光を観察光として測定対象物に照射するためのLED投光部と、
測定対象物からの測定光および観察光の反射光を集束する受光レンズと、
2次元に配置された複数の受光素子により構成される受光面を有し、前記受光レンズにより集束された光を受光して受光量分布を出力する受光部と、
測定時に前記受光部により出力された測定光の受光量分布に基づいて測定対象物のプロファイルを示すプロファイルデータを生成する処理と、前記受光部により出力された観察光の受光量分布に基づいて観察光が照射されている測定対象物の画像を観察画像として示す観察画像データを生成する処理とを実行するための処理装置とを備え、
前記レーザ投光部、前記受光部および前記受光レンズは、前記受光面を含む平面および前記受光レンズの主面を含む平面が前記第1の投光軸に対してシャインプルーフの条件を満足するように配置されることにより、前記測定時に前記測定光が照射される測定位置近傍の領域に、前記受光部の焦点が相対的に合致した観察画像を示す観察画像データが生成され、
前記処理装置は、前記受光部により出力された測定光の受光量分布に基づいて測定光が照射されている測定対象物の画像を測定画像として示す測定画像データとプロファイルデータとを合成することによりプロファイルに測定光の輝線が重畳表示された第1の合成画像を示す合成画像データを生成し、前記第1の合成画像と前記観察画像とを表示させることを特徴とする、光学式変位計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物のプロファイルを測定する光切断方式の光学式変位計に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物(以下、ワークと呼ぶ。)のプロファイルを測定するために、光切断方式の光学式変位計が用いられることがある。例えば、特許文献1に記載された光学式変位計においては、レーザダイオードから線状の計測光がワーク上に照射され、その反射光が2次元のCCD(電荷結合素子)により受光される。CCDにより生成される映像信号に基づいて、ワークの高さ方向の変位が測定される。
【0003】
使用者は、ワークの所望位置を正確に測定するために、光学式変位計とワークとの相対位置を調整することにより計測光の照射位置をワークの計測したい位置に正確に一致させなければならない。しかしながら、光学式変位計とワークとが近接している場合には、計測光の照射位置を肉眼で観察することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第01/73375号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された光学式変位計においては、ワークの正視画像を取得するためにCCDがワークに対して物理的または光学的に正対視される。この構成においては、全体的に鮮明なワークの画像を取得することができ、光学式変位計の位置調整が容易となるが、ワークの計測位置上に高さが大きく異なる部分が存在する場合、計測位置の各部分にCCDの焦点が一致した斜視画像を取得することができない。この場合、計測位置の高さに応じて変位の測定精度が異なるため、ワークのプロファイルを高い精度で測定することができない。
【0006】
本発明の目的は、プロファイルの測定精度を低下させることなくワークに対する位置調整を容易に行うことが可能な光学式変位計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る光学式変位計は、測定対象物のプロファイルを測定する光切断方式の光学式変位計であって、第1の投光軸を有し、第1方向に延びる帯状のレーザ光、または第1方向に走査される点状のレーザ光を測定光として測定対象物に照射するためのレーザ投光部と、一様な光を観察光として測定対象物に照射するためのLED投光部と、測定対象物からの測定光および観察光の反射光を集束する受光レンズと、2次元に配置された複数の受光素子により構成される受光面を有し、受光レンズにより集束された光を受光して受光量分布を出力する受光部と、測定時に受光部により出力された測定光の受光量分布に基づいて測定対象物のプロファイルを示すプロファイルデータを生成する処理と、受光部により出力された観察光の受光量分布に基づいて観察光が照射されている測定対象物の画像を観察画像として示す観察画像データを生成する処理とを実行するための処理装置とを備え、レーザ投光部、受光部および受光レンズは、受光面を含む平面および受光レンズの主面を含む平面が第1の投光軸に対してシャインプルーフの条件を満足するように配置されることにより、測定時に測定光が照射される測定位置近傍の領域に、受光部の焦点が相対的に合致した観察画像を示す観察画像データが生成され、LED投光部が、測定位置近傍の領域よりも第1方向と直交する第2方向に広い領域に観察光を照射することにより、観察画像には、測定位置近傍の領域から第2方向に離れるほど受光部の焦点の合致度合が低下していくことが使用者に視認可能な明るさで示されることを特徴とする。
【0008】
この光学式変位計においては、一方向に延びる帯状のレーザ光、または一方向に走査される点状のレーザ光が測定光としてレーザ投光部により測定対象物に照射される。測定対象物から反射された測定光が受光レンズにより集束される。受光レンズにより集束された測定光が受光部の2次元に配置された複数の受光素子により構成される受光面により受光され、受光量分布が出力される。測定時に受光部により出力された測定光の受光量分布に基づいて、測定対象物のプロファイルを示すプロファイルデータが生成される。
【0009】
また、一様な光が観察光としてLED投光部により測定対象物に照射される。測定対象物から反射された観察光が受光レンズにより集束される。受光レンズにより集束された観察光が受光部の受光面により受光され、受光量分布が出力される。受光部により出力された観察光の受光量分布に基づいて、観察光が照射されている測定対象物の画像を観察画像として示す観察画像データが生成される。
【0010】
ここで、レーザ投光部、受光部および受光レンズは、受光部の受光面を含む平面および受光レンズの主面を含む平面がレーザ投光部の第1の投光軸に対してシャインプルーフの条件を満足するように配置される。この場合、測定対象物に高さが大きく異なる部分が存在する場合でも、測定時に測定光が照射される測定位置近傍の領域に、受光部の焦点が相対的に合致する。そのため、プロファイルデータが高い精度で生成される。
【0011】
また、測定時に測定光が照射される測定位置近傍の領域に、受光部の焦点が相対的に合致した観察画像を示す観察画像データが生成される。これにより、観察画像には、測定対象物における測定光による測定位置が鮮明に現れる。したがって、使用者は、観察画像における測定対象物の所望の部分が鮮明になるように光学式変位計または測定対象物の位置を調整することにより、測定対象物に対する光学式変位計の位置調整を容易に行うことが可能になる。これらの結果、プロファイルの測定精度を低下させることなく測定対象物に対する光学式変位計の位置調整を容易に行うことができる。
【0012】
処理装置は、測定光および観察光が同時に出射されるようにレーザ投光部およびLED投光部を制御し、測定対象物における測定光が照射されている測定位置に測定光の輝線が重畳表示された観察画像データを生成してもよい。
【0013】
この場合、観察画像には、測定対象物における測定光が照射されている測定位置が輝線として鮮明に現れる。使用者は、観察画像における測定対象物の所望の部分に輝線が重なるように光学式変位計または測定対象物の位置を調整することにより、測定対象物に対する光学式変位計の位置調整をより容易にかつより精密に行うことができる。
【0014】
処理装置は、測定光および観察光が交互に出射されるようにレーザ投光部およびLED投光部を制御し、受光部により出力された測定光の受光量分布に基づいて測定光が照射されている測定対象物の画像を測定画像として示す測定画像データを生成する処理と観察画像データを生成する処理とを交互に実行してもよい。
【0015】
この場合、測定画像には、測定光の輝線が現れる。使用者は、測定画像における測定光の輝線と観察画像における測定対象物とを視認しつつ、光学式変位計または測定対象物の位置を調整することが可能になる。これにより、測定対象物に対する光学式変位計の位置調整を精密に行うことができる。
【0016】
処理装置は、測定画像と観察画像とを自動的に切り替えて表示させてもよい。この場合、使用者は、自動的に切り替えて表示される測定画像と観察画像とを視認しつつ、測定画像における輝線が観察画像における測定対象物の所望の部分に重なるように光学式変位計または測定対象物の位置を調整することが可能になる。これにより、測定対象物に対する光学式変位計の位置調整をより容易にかつより精密に行うことができる。
【0017】
処理装置は、観察画像データに測定画像データを合成し、測定対象物における測定光が照射されている測定位置に測定光の輝線が重畳表示された観察画像を表示させてもよい。この場合、使用者は、観察画像における輝線が測定対象物の所望の部分に重なるように光学式変位計または測定対象物の位置を調整することが可能になる。これにより、測定対象物に対する光学式変位計の位置調整をより容易にかつより精密に行うことができる。
【0018】
処理装置は、受光部の同一の露光期間内において、測定光および観察光が交互に出射されるようにレーザ投光部およびLED投光部を制御し、測定対象物における測定光が照射されている測定位置に測定光の輝線が重畳表示された観察画像を示す観察画像データを生成してもよい。
【0019】
この場合、観察画像には、測定対象物における測定光が照射されている測定位置が輝線として鮮明に現れる。使用者は、観察画像における測定対象物の所望の部分に輝線が重なるように光学式変位計または測定対象物の位置を調整することにより、測定対象物に対する光学式変位計の位置調整をより容易にかつより精密に行うことができる。
【0020】
光学式変位計は、測定光と観察光とが同時に出射されることを禁止するように構成された排他制御回路をさらに備えてもよい。
【0021】
光学式変位計から出射される光の強度が所定の上限値を超えないように制限されることが望まれることがある。上記の構成によれば、測定光と観察光とが同時に出射されることが排他制御回路により禁止されるので、測定光の強度が上限値である場合でも、光学式変位計から出射される光の強度が上限値を超えることがない。したがって、測定光の強度を上限値に維持することが可能となる。これにより、測定光の強度不足による処理効率の低下を防止することができる。
【0022】
レーザ投光部、LED投光部、受光レンズおよび受光部を収容する内部空間を有するハウジング内部において、LED投光部は、レーザ投光部の第1の投光軸に略平行な第2の投光軸を有し、ハウジングは、第1および第2の投光軸に略垂直な第1の面と、第1の面に対して傾斜した第2の面と、第1の面に設けられ、レーザ投光部から測定対象物に照射される測定光が透過する測定窓と、第1の面に設けられ、LED投光部から測定対象物に照射される観察光が透過する観察窓と、第2の面に設けられ、測定対象物からの測定光および観察光の反射光が透過する受光窓とを含んでもよい。この場合、シャインプルーフの条件を成立しつつレーザ投光部、LED投光部および撮像部をコンパクトに収容することができる。
【0023】
観察窓は、測定窓よりも受光窓に近い位置に設けられてもよい。この場合、観察窓、測定窓および受光窓が並ぶ方向において、ハウジングが大型化することを防止することができる。
【0024】
光学式変位計は、測定対象物からの反射光の光路上に設けられたバンドパスフィルタをさらに備え、レーザ投光部は、400nm以上480nm以下の波長を有する測定光を出射し、LED投光部は、測定光の波長を含む波長範囲を有する観察光を出射し、測定光の波長範囲内におけるバンドパスフィルタの透過率は、測定光の波長範囲外におけるバンドパスフィルタの透過率よりも高くてもよい。
【0025】
この場合、バンドパスフィルタは、測定光または測定光と略等しい波長を有する観察光の成分を透過させ、他の波長を有する観察光の成分および外乱光を遮蔽する。そのため、プロファイルデータおよび観察画像データを正確に生成することができる。また、測定光は400nm以上の波長を有するので、使用者は測定光を肉眼で容易に認識することができる。これにより、光学式変位計の使い易さが向上する。さらに、測定光は480nm以下の波長を有するので、プロファイルデータを高い精度で生成することができる。
【0026】
処理装置は、受光部により出力された測定光の受光量分布に基づいて測定光が照射されている測定対象物の画像を測定画像として示す測定画像データとプロファイルデータとを合成することによりプロファイルに測定光の輝線が重畳表示された第1の合成画像を示す合成画像データを生成し、第1の合成画像と観察画像とを表示させてもよい。
【0027】
第2の発明に係る光学式変位計は、測定対象物のプロファイルを測定する光切断方式の光学式変位計であって、第1の投光軸を有し、一方向に延びる帯状のレーザ光、または一方向に走査される点状のレーザ光を測定光として測定対象物に照射するためのレーザ投光部と、一様な光を観察光として測定対象物に照射するためのLED投光部と、測定対象物からの測定光および観察光の反射光を集束する受光レンズと、2次元に配置された複数の受光素子により構成される受光面を有し、受光レンズにより集束された光を受光して受光量分布を出力する受光部と、測定時に受光部により出力された測定光の受光量分布に基づいて測定対象物のプロファイルを示すプロファイルデータを生成する処理と、受光部により出力された観察光の受光量分布に基づいて観察光が照射されている測定対象物の画像を観察画像として示す観察画像データを生成する処理とを実行するための処理装置とを備え、レーザ投光部、受光部および受光レンズは、受光面を含む平面および受光レンズの主面を含む平面が第1の投光軸に対してシャインプルーフの条件を満足するように配置されることにより、測定時に測定光が照射される測定位置近傍の領域に、受光部の焦点が相対的に合致した観察画像を示す観察画像データが生成され、処理装置は、受光部により出力された測定光の受光量分布に基づいて測定光が照射されている測定対象物の画像を測定画像として示す測定画像データとプロファイルデータとを合成することによりプロファイルに測定光の輝線が重畳表示された第1の合成画像を示す合成画像データを生成し、第1の合成画像と観察画像とを表示させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、プロファイルの測定精度を低下させることなく測定対象物に対する光学式変位計の位置調整を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1の実施の形態に係る光学式変位計の構成を示すブロック図である。
図2図1の撮像ヘッドを示す外観斜視図である。
図3図1の撮像ヘッドを示す底面図である。
図4図1のレーザ投光部、LED投光部および撮像部の配置を説明するための図である。
図5図1のレーザ投光部、LED投光部および撮像部の配置を説明するための図である。
図6】光学フィルタの通過波長帯域の一例を示す図である。
図7】ワークの表面における測定光の照射位置と受光部における光の入射位置との関係を示す図である。
図8】ワークの表面における測定光の照射位置と受光部における光の入射位置との関係を示す図である。
図9】ワークの表面における測定光の照射位置と受光部における光の入射位置との関係を示す図である。
図10】受光部の受光面における受光量分布を示す図である。
図11図10の1つの画素列における波形データを示す図である。
図12図10の受光量分布における全てのピーク位置を示す図である。
図13図12のピーク位置に基づいて生成されたプロファイルデータを示す図である。
図14】表示部の画面の一例を示す図である。
図15】表示部の画面の一例を示す図である。
図16】画像表示領域の他の表示例を示す図である。
図17】画像表示領域のさらに他の表示例を示す図である。
図18】測定画像生成部により生成された測定画像データに基づく測定画像を示す図である。
図19】観察画像生成部により生成された観察画像データに基づく測定画像を示す図である。
図20】撮像ヘッドに与えられる制御パルスのタイムチャートである。
図21】排他制御回路の一例を示す図である。
図22】ハウジングの他の例を示す図である。
図23】ハウジングのさらに他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[1]第1の実施の形態
(1)光学式変位計の構成
以下、本発明の実施の形態に係る光学式変位計として、光切断方式の光学式変位計について図面を参照しながら説明する。図1は、第1の実施の形態に係る光学式変位計の構成を示すブロック図である。図1に示すように、光学式変位計500は、撮像ヘッド100、処理装置200、入力部300および表示部400を備える。撮像ヘッド100は、処理装置200に対して着脱可能に構成される。撮像ヘッド100と処理装置200とは一体的に構成されてもよい。
【0031】
撮像ヘッド100は、レーザ投光部110、LED投光部120および撮像部130を含む。レーザ投光部110は、一方向に延びる帯状の測定光を測定対象物(以下、ワークWと呼ぶ。)に照射可能に構成される。レーザ投光部110は、一方向に延びる帯状の測定光に代えて、一方向に走査される点状の光を測定光としてワークWに照射可能に構成されてもよい。LED投光部120は、ワークWに一様な観察光を照射可能に構成される。撮像部130は、ワークWにより反射された測定光または観察光を受光し、受光量分布を出力する。
【0032】
処理装置200は、記憶部201および制御部202を含む。記憶部201は、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリメモリ)、ハードディスクまたは半導体メモリ等により構成され、測定プログラムを記憶する。制御部202は、例えばCPU(中央演算処理装置)である。
【0033】
また、処理装置200は、機能部として、設定部210、ヘッド制御部220、測定画像生成部230、観察画像生成部240、プロファイル生成部250、計測部260および表示処理部270を含む。制御部202が記憶部201に記憶された測定プログラムを実行することにより処理装置200の機能部が実現される。処理装置200の機能部の一部または全てが電子回路等のハードウエアにより実現されてもよい。
【0034】
処理装置200の表示処理部270は、観察画像、測定画像および合成画像(それぞれ後述)の表示を切り替えることができる。設定部210は、入力部300により与えられる指定に基づいて、表示部400に表示する画像を観察画像、測定画像および合成画像のいずれかに設定する。
【0035】
また、設定部210は、入力部300により与えられる指定に基づいて、測定光の明るさ(強度)、観察光の明るさ(強度)または撮像部130の露光期間等の撮像条件を設定する。使用者は、入力部300を操作することにより、撮像条件を設定部210に指定することができる。ヘッド制御部220は、設定部210に設定された撮像条件に基づいてレーザ投光部110、LED投光部120および撮像部130の動作を制御する。
【0036】
測定画像生成部230は、撮像部130により出力された測定光の受光量分布に基づいて、測定光が照射されたときのワークWの画像(以下、測定画像と呼ぶ。)を示す測定画像データを生成する。観察画像生成部240は、撮像部130により出力された観察光を含む光の受光量分布に基づいて、観察光を含む光が照射されたときのワークWの画像(以下、観察画像と呼ぶ。)を示す観察画像データを生成する。
【0037】
なお、本発明における「観察画像」とは、レーザ投光部110が点灯状態であるか否かを問わず、LED投光部120がワークWに観察光を照射し、撮像部130がワークWを撮像することにより生成された画像データが示す画像である。本発明における「測定画像
」とは、レーザ投光部110が測定光を照射し、LED投光部120がワークWに観察光を照射していない状態で、撮像部130がワークWを撮像することにより生成された画像データが示す画像である。本発明における「合成画像」とは、プロファイルを測定画像上または観察画像上に重畳表示するように生成された画像データが示す画像である。
【0038】
プロファイル生成部250は、測定画像生成部230により生成された測定画像データに基づいてワークWのプロファイルを示すプロファイルデータを生成する。計測部260は、プロファイル生成部250により生成されたプロファイルデータに基づいて計測処理を行う。ここで、計測処理とは、プロファイルデータに基づいてワークWの表面の任意の部分の寸法(変位)を算出する処理である。使用者は、入力部300を操作することにより、計測処理を行うワークWの所望の部分をプロファイルデータ上に指定することができる。
【0039】
表示処理部270は、測定画像、観察画像、プロファイルまたは計測部260による計測結果を示す画像等の種々の画像を表示部400に表示させる。使用者は、入力部300を操作することにより、表示される画像を表示処理部270に指定し、または表示される画像の切り替えを表示処理部270に指示することができる。表示処理部270の詳細については後述する。
【0040】
入力部300は、キーボードおよびポインティングデバイスを含み、使用者により操作可能に構成される。ポインティングデバイスとしては、マウスまたはジョイスティック等が用いられる。また、入力部300として専用のコンソールを用いてもよい。表示部400は、例えば液晶ディスプレイパネルまたは有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルにより構成される。
【0041】
(2)撮像ヘッド
図2は、図1の撮像ヘッド100を示す外観斜視図である。図3は、図1の撮像ヘッド100を示す底面図である。図2および図3に示すように、撮像ヘッド100においてハウジング140は、略直方体の外観形状および内部空間を有する。レーザ投光部110、LED投光部120および撮像部130は、ハウジング140の内部空間に収容される。ハウジング140には、互いに直交する幅方向、長手方向および上下方向が定義される。
【0042】
ハウジング140の下部には、下面141および傾斜面142が設けられる。また、ハウジング140の下部における長手方向の略中央部には、上方に凹む凹部143が形成される。下面141は、上下方向に略直交し、下方を向く。傾斜面142は、凹部143に位置し、斜め下方を向く。下面141には、測定窓144および観察窓145が形成される。傾斜面142には、受光窓146が形成される。
【0043】
測定窓144は、幅方向に延びる略矩形状を有し、ハウジング140に収容された図1のレーザ投光部110からの帯状の測定光を下方に透過可能に配置される。観察窓145は、略正方形状を有し、ハウジング140に収容された図1のLED投光部120からの観察光を下方に透過可能に幅方向の略中央部に配置される。受光窓146は、円形状を有し、斜め下方からの光をハウジング140に収容された図1の撮像部130に透過可能に幅方向の略中央部に配置される。
【0044】
本例では、観察窓145は、測定窓144と凹部143との間に位置する。すなわち、観察窓145は、長手方向において測定窓144よりも受光窓146に近い位置に設けられる。この配置によれば、長手方向において、ハウジング140が大型化することを防止することができる。
【0045】
図4および図5は、図1のレーザ投光部110、LED投光部120および撮像部130の配置を説明するための図である。図4は長手方向に見た撮像ヘッド100を示し、図5は幅方向に見た撮像ヘッド100を示す。図4に示すように、レーザ投光部110は、LD(レーザダイオード)111、コリメータレンズ112および投光レンズ113,114を含む。
【0046】
LD111、コリメータレンズ112および投光レンズ113,114は、この順で上方から下方に並ぶようにハウジング140内に配置される。投光レンズ114の下方には、図2の測定窓144が位置する。LD111、コリメータレンズ112および投光レンズ113,114により形成されるレーザ投光部110の投光軸は、上下方向に略平行であり、ハウジング140の下面141と略直交する。
【0047】
LD111は、例えば400nm以上480nm以下の波長を有するレーザ光を測定光として下方に出射する。コリメータレンズ112は、LD111により出射された測定光を平行化しつつ透過させる。投光レンズ113,114は、コリメータレンズ112により平行化された測定光を幅方向に帯状に拡張しつつ透過させる。投光レンズ113,114により帯状に拡張された測定光は、測定窓144を透過してワークWに照射される。
【0048】
LED投光部120は、LEDにより実現され、図2の観察窓145に近接するようにハウジング140内に配置される。LED投光部120の投光軸は、上下方向に略平行であり、ハウジング140の下面141と略直交する。すなわち、レーザ投光部110の投光軸と略平行である。LED投光部120は、400nm以上480nm以下の波長を有する光を観察光として下方に出射する。LED投光部120により出射された観察光は、観察窓145を透過してワークWに照射される。
【0049】
図5に示すように、撮像部130は、受光部131、受光レンズ132および光学フィルタ133を含む。受光部131は、例えばCMOS(相補型金属酸化膜半導体)センサであり、複数の受光素子が2次元に配置された受光面を有する。受光素子は、例えばフォトダイオードである。受光部131および受光レンズ132は、受光部131の受光面を含む平面と受光レンズ132の主面を含む平面とがレーザ投光部110の投光軸に対してシャインプルーフの条件を満足するようにハウジング140内に配置される。
【0050】
受光レンズ132は、図2の受光窓146に近接しかつ主面がハウジング140の傾斜面142と略平行になるように設けられる。これらの配置によれば、ハウジング140は、上記のシャインプルーフの条件を成立しつつレーザ投光部110、LED投光部120および撮像部130をコンパクトに収容することができる。
【0051】
受光レンズ132は、ワークWから反射して受光窓146を透過した測定光または観察光を集束しつつ受光部131に導く。受光部131は、受光レンズ132により集束された測定光または観察光を光学フィルタ133を通して受光し、受光量分布を出力する。
【0052】
光学フィルタ133は、例えばバンドパスフィルタであり、受光部131の受光面に取り付けられる。図6は、光学フィルタ133の通過波長帯域の一例を示す図である。図6の横軸は光の波長を示し、縦軸は規格化された光の強度を示す。また、測定光の波長分布が実線で示され、観察光の波長分布が点線で示され、光学フィルタ133の通過波長帯域がハッチングパターンで示される。
【0053】
図6の例では、測定光の波長は約450nmであり、観察光の中心波長は測定光の波長と略一致する。光学フィルタ133は、波長450nm付近の光を通過させ、他の波長帯域の光を遮蔽する。この場合、測定光または測定光と略等しい波長を有する観察光の成分は、光学フィルタ133を通過して受光部131により受光される。一方、測定光とは離間した波長を有する観察光の成分およびその他の外乱光は、光学フィルタ133により遮蔽される。
【0054】
この場合、プロファイルデータおよび観察画像データを正確に生成することができる。また、測定光は400nm以上の波長を有するので、使用者は測定光を肉眼で容易に認識することができる。これにより、光学式変位計500の使い易さが向上する。さらに、測定光は480nm以下の波長を有するので、プロファイルデータを高い精度で生成することができる。
【0055】
なお、図6の例では、観察光の中心波長は測定光の波長と略一致するが、実施の形態はこれに限定されない。観察光の波長分布の範囲内に測定光の波長が含まれる限り、観察光の中心波長は測定光の波長と一致しなくてもよい。また、測定光の波長範囲内における光学フィルタ133の透過率が測定光の波長範囲外における光学フィルタ133の透過率よりも高い限り、光学フィルタ133の通過波長帯域は図6の例よりも狭くてもよいし、広くてもよい。
【0056】
(3)プロファイルデータの生成
図7は、撮像ヘッド100およびワークWの外観斜視図である。図8および図9は、ワークWの表面における測定光の照射位置と受光部131における光の入射位置との関係を示す図である。図7図9では、水平面内で互いに直交する2方向をX1方向およびY1方向と定義し、それぞれ矢印X1,Y1で示す。また、鉛直方向をZ1方向と定義し、矢印Z1で示す。X1方向、Y1方向およびZ1方向は、図2のハウジング140の幅方向、長手方向および上下方向にそれぞれ一致する。図8および図9では、受光部131の受光面上で互いに直交する2方向をX2方向およびZ2方向と定義し、それぞれ矢印X2,Z2で示す。
【0057】
図7の例では、ワークWの表面にY1方向に延びる断面台形状の溝が形成される。撮像ヘッド100は、X1方向に沿った帯状の測定光をワークWの表面に照射する。以下、帯状の測定光が照射されるワークWの表面の線状の領域を照射領域T1と呼ぶ。図8に示すように、照射領域T1で反射される測定光が、受光レンズ132を通して受光部131に入射する。この場合、照射領域T1における光の反射位置がZ1方向に異なると、受光部131への反射光の入射位置がZ2方向に異なる。
【0058】
また、図9に示すように、照射領域T1における光の反射位置がX1方向に異なると、受光部131への反射光の入射位置がX2方向に異なる。これにより、受光部131のZ2方向における光の入射位置が、照射領域T1のZ1方向における位置(高さ)を表し、受光部131のX2方向における光の入射位置が、照射領域T1におけるX1方向の位置を表す。
【0059】
図10は、受光部131の受光面における受光量分布を示す図である。図10に示すように、受光部131の複数の画素pは、X2方向およびZ2方向に沿うように2次元に配置される。Z2方向に沿った複数の画素pの列の各々を画素列SSと呼ぶ。図7の照射領域T1で反射された光は、主として図10に示される受光領域R1に入射する。それにより、受光領域R1に位置する画素pの受光量が大きくなる。図10の測定光の受光量分布に基づいて測定画像データが図1の測定画像生成部230により生成される。
【0060】
測定画像データに基づいて画素列SSごとの波形データが図1のプロファイル生成部250により生成される。図11は、図10の1つの画素列SSにおける波形データを示す図である。図11において、横軸はZ2方向の位置を示し、縦軸は受光量を示す。図11に示すように、1つの画素列SSにおける波形データには、図10の受光領域R1に対応するピークP(極大値)が現れる。ピークPのZ2方向における位置(以下、ピーク位置PPと呼ぶ。)は、照射領域T1におけるワークWの表面(反射面)の高さを示す。
【0061】
複数の画素列SSに対応する複数の波形データの各々において1つのピーク位置PPがプロファイル生成部250により検出される。また、複数のピーク位置PPに基づいて、ワークWのプロファイル(照射領域T1の形状)を示すプロファイルデータがプロファイル生成部250により生成される。
【0062】
図12は、図10の受光量分布における全てのピーク位置PPを示す図である。図13は、図12のピーク位置PPに基づいて生成されたプロファイルデータを示す図である。図12および図13に示すように、検出された全てのピーク位置PPが、連続的な線として示されることにより、ワークWのプロファイルを示すプロファイルデータが生成される。
【0063】
(4)画像の取得条件設定
上記のように、光学式変位計500は、観察画像と測定画像と合成画像との表示切替および画像生成条件を指定することができる。本実施の形態では、図1のLED投光部120は、レーザ投光部110と同時に点灯するように制御される。すなわち、観察光と測定光とは同時に出射される。ここで、レーザ投光部110および撮像部130にはシャインプルーフの条件が成立しているので、ワークWに高さが大きく異なる部分が存在する場合でも、ワークWにおける測定光による測定位置の全部に受光部131の焦点が一致する。そのため、ワークWにおける測定光の照射部分とその近傍領域とを示す観察画像データが生成される。
【0064】
生成された観察画像データに基づいて観察画像が表示部400に表示される。図14および図15は、表示部400の画面の一例を示す図である。図14に示すように、表示部400の画面には、画像表示領域410および指定受付領域420が並ぶように設けられる。画像表示領域410には、種々の画像を表示可能である。図14および図15の例では、画像表示領域410に観察画像が表示されている。
【0065】
指定受付領域420には、操作ボタン、操作バーまたは数値入力欄等を含むGUI(Graphical User Interface)が表示される。使用者は、図1の入力部300を用いて指定受付領域420のGUIを操作することにより、撮像条件を指定することができる。図1の設定部210は、指定受付領域420を通して与えられる指定に基づいて撮像条件を設定する。
【0066】
図14に示すように、観察画像には、ワークWにおける測定光の照射部分が輝線として鮮明に現れる。しかしながら、図14の例では、観察光の明るさが小さいため、ワークWにおける測定光の照射部分の近傍領域は鮮明には現れていない。この場合、使用者は、指定受付領域420のGUIを操作することにより、観察光の明るさを大きくする。これにより、図15に示すように、ワークWにおける測定光の照射部分とその近傍領域とが鮮明に現れかつ他の領域が不鮮明となった観察画像を画像表示領域410に表示させることができる。
【0067】
使用者は、画像表示領域410に表示された観察画像を視認しつつ、観察画像におけるワークWの所望の部分が鮮明になるように撮像ヘッド100とワークWとの位置調整を行う。これにより、ワークWに対する撮像ヘッド100の位置調整を容易に行うことができる。また、使用者は、観察画像におけるワークWの所望の部分に輝線が重なるように撮像ヘッド100またはワークWの位置を調整することにより、ワークWに対する撮像ヘッド100の位置調整をより精密に行うことができる。
【0068】
なお、観察画像には、ワークWにおける測定光の照射部分が鮮明に現れることが重要であり、照射部分の近傍領域がどの程度鮮明に現れるべきかは、観察状況により異なる。そのため、LED投光部120の自動点灯および観察光の明るさの自動調整が行われる場合、光学式変位計500の使い易さがかえって低下する。そこで、本例では、LED投光部120の自動点灯は行われず、使用者の指示に応答してLED投光部120が点灯する。また、観察光の明るさの自動調整は行われず、使用者の手動による指定に応答して観察光の明るさが調整される。
【0069】
画像表示領域410には、ワークWに対する撮像ヘッド100の位置調整を容易にする他の画像を表示可能である。図16は、画像表示領域410の他の表示例を示す図である。図1の表示処理部270は、測定画像データとプロファイルデータとを合成することにより、測定画像にプロファイルが重ね合わされた第1の合成画像を示す第1の合成画像データを生成する。図16の画像表示領域410には、第1の合成画像データに基づく第1の合成画像が表示されている。
【0070】
ワークWの表面で測定光が多重反射する場合、またはワークWの内部に測定光が潜り込む場合には、ワークWの表面以外の位置から反射した光が撮像部130により受光される。その結果、実際のワークWの断面形状とは異なるプロファイルが得られる。このような場合、図16に示すように、測定光の輝線とプロファイルとを重畳表示することにより、使用者は、どの部分が原因で正しいプロファイルが取得できていないかを把握することができる。
【0071】
表示処理部270は、図1の入力部300からの指示に応答して、図15の観察画像と図16の第1の合成画像とを切り替えて画像表示領域410に表示させる。ワークWには、例えば集積回路チップのように、類似した構造を有する複数の部分がY1方向(ハウジング140の長手方向)に並ぶように形成されていることがある。このような場合においても、使用者は、観察画像においてワークWにおける測定光の照射部分を視認しつつ、第1の合成画像においてプロファイルを視認することにより、ワークWの所望の部分に測定光が照射されているか否かを容易に認識することができる。
【0072】
図17は、画像表示領域410のさらに他の表示例を示す図である。表示処理部270は、観察画像データとプロファイルデータとを合成することにより、観察画像にプロファイルが重ね合わされた第2の合成画像を示す第2の合成画像データを生成する。図17の例では、第2の合成画像が画像表示領域410に表示されている。使用者は、第2の合成画像において観察画像およびプロファイルを視認することにより、ワークWの所望の部分に測定光が照射されているか否かを容易に認識することができる。
【0073】
(5)効果
本実施の形態に係る光学式変位計500においては、測定光がレーザ投光部110によりワークWに照射され、ワークWから反射された測定光が受光レンズ132により集束される。受光レンズ132により集束された測定光が受光部131により受光され、受光量分布が出力される。受光部131により出力された測定光の受光量分布に基づいてプロファイルデータが生成される。
【0074】
また、観察光がLED投光部120によりワークWに照射され、ワークWから反射された観察光が受光レンズ132により集束される。受光レンズ132により集束された観察光が受光部131により受光され、受光量分布が出力される。受光部131により出力された観察光の受光量分布に基づいて観察画像データが生成される。
【0075】
ここで、レーザ投光部110、受光部131および受光レンズ132は、受光部131の受光面を含む平面および受光レンズ132の主面を含む平面がレーザ投光部110の投光軸に対してシャインプルーフの条件を満足するように配置される。この場合、ワークWに高さが大きく異なる部分が存在する場合でも、ワークWにおける測定光による測定位置の全部に受光部131の焦点が一致する。そのため、プロファイルデータが高い精度で生成される。
【0076】
また、ワークWにおける測定光による測定位置に受光部131の焦点が一致した観察画像を示す観察画像データが生成される。これにより、観察画像には、ワークWにおける測定光による測定位置が鮮明に現れる。さらに、観察画像データは、使用者が上方からワークWを視認した際に認識されるワークWの自然な観察画像を示す。
【0077】
したがって、使用者は、観察画像におけるワークWの所望の部分が鮮明になるように撮像ヘッド100またはワークWの位置を調整することにより、ワークWに対する撮像ヘッド100の位置調整を容易に行うことが可能になる。これらの結果、プロファイルの測定精度を低下させることなくワークWに対する光学式変位計500の位置調整を容易に行うことができる。
【0078】
[2]第2の実施の形態
以下、第2の実施の形態に係る光学式変位計500について、第1の実施の形態に係る光学式変位計500と異なる点を説明する。なお、本実施の形態に係る光学式変位計500は、第1の実施の形態に係る図1の光学式変位計500と同様の構成を有する。本実施の形態においては、レーザ投光部110とLED投光部120とが交互に点灯するようにヘッド制御部220により制御される。また、測定画像データおよび観察画像データは、測定画像生成部230および観察画像生成部240により交互に生成される。
【0079】
図18は、測定画像生成部230により生成された測定画像データに基づく測定画像を示す図である。図19は、観察画像生成部240により生成された観察画像データに基づく観察画像を示す図である。図18に示すように、測定画像には、ワークWにおける測定光の照射部分が輝線として現れる。一方、図19に示すように、本実施の形態の観察画像には、ワークWにおける測定光の照射部分を示す輝線は現れない。
【0080】
表示処理部270は、図18の測定画像と図19の観察画像とを繰り返し交互に表示部400に表示させる。使用者は、交互に表示される測定画像と観察画像とを視認しつつ、測定画像における輝線が観察画像におけるワークWの所望の部分に重なるように撮像ヘッド100またはワークWの位置を調整する。これにより、ワークWに対する撮像ヘッド100の位置調整を容易にかつ精密に行うことができる。
【0081】
表示処理部270は、例えば1秒間に10回以上の頻度で測定画像と観察画像との表示の切り替えを行ってもよい。この場合、使用者は、測定画像と観察画像との表示の切り替えをほとんど認識することができない。そのため、使用者には、レーザ投光部110とLED投光部120とが同時に点灯した場合と同様の画像(すなわち図15の観察画像)が表示部400に表示されているように認識される。使用者は、このような画像を視認することにより、ワークWに対する撮像ヘッド100の位置調整をより効率よく行うことができる。
【0082】
あるいは、表示処理部270は、測定画像データと観察画像データと合成することにより、レーザ投光部110とLED投光部120とが同時に点灯した場合と同様の画像を示す画像データを生成し、当該画像を表示部400に表示させてもよい。この場合でも、使用者は、表示部400に表示された画像を視認することにより、ワークWに対する撮像ヘッド100の位置調整をより効率よく行うことができる。
【0083】
[3]第3の実施の形態
以下、第3の実施の形態に係る光学式変位計500について、第1の実施の形態に係る光学式変位計500と異なる点を説明する。なお、第3の実施の形態に係る光学式変位計500は、第1の実施の形態に係る図1の光学式変位計500と同様の構成を有する。本実施の形態においては、撮像部130の同一の露光期間内にレーザ投光部110とLED投光部120とが交互に点灯するようにヘッド制御部220により制御される。また、観察画像データが観察画像生成部240により生成される。
【0084】
具体的には、ヘッド制御部220は、撮像ヘッド100のレーザ投光部110、LED投光部120および撮像部130の各々を制御するための2値の制御パルスを生成する。撮像部130を制御するための制御パルスを撮像パルスと呼ぶ。レーザ投光部110を制御するための制御パルスを測定パルスと呼ぶ。LED投光部120を制御するための制御パルスを観察パルスと呼ぶ。
【0085】
撮像部130は、“H”レベルの撮像パルスに応答して露光状態となり、“L”レベルの撮像パルスに応答して非露光状態となる。レーザ投光部110は、“H”レベルの測定パルスに応答して点灯状態となり、“L”レベルの測定パルスに応答して消灯状態となる。LED投光部120は、“H”レベルの観察パルスに応答して点灯状態となり、“L”レベルの観察パルスに応答して消灯状態となる。
【0086】
図20は、撮像ヘッド100に与えられる制御パルスのタイムチャートである。図20に示すように、初期時点t0においては、測定パルスP1、観察パルスP2および撮像パルスP3の各々が“L”レベルにある。したがって、レーザ投光部110は消灯状態にあり、LED投光部120は消灯状態にあり、撮像部130は非露光状態にある。
【0087】
時点t1に、撮像パルスP3が“H”レベルに立ち上がり、測定パルスP1が“H”レベルに立ち上がる。この場合、撮像部130が露光状態となる。また、レーザ投光部110が点灯状態となり、ワークWに測定光が照射される。時点t2に、測定パルスP1が“
L”レベルに立ち下がり、観察パルスP2が“H”レベルに立ち上がる。この場合、レーザ投光部110が消灯状態となる。また、LED投光部120が点灯状態となり、ワークWに観察光が照射される。
【0088】
時点t3に、撮像パルスP3が“L”レベルに立ち下がり、観察パルスP2が“L”レベルに立ち下がる。この場合、撮像部130が非露光状態となる。また、LED投光部120が消灯状態となる。この状態が時点t4まで維持される。その後、時点t1から時点t4の動作が繰り返される。
【0089】
時点t1と時点t3との間の期間が露光期間となる。撮像部130は、露光期間に受光されたワークWからの反射光の受光量分布を時点t3と時点t4との間の期間に出力する。撮像部130により出力された受光量分布に基づいて観察画像データが観察画像生成部240により生成される。表示処理部270は、観察画像生成部240により生成された観察画像データに基づいて観察画像を表示部400に表示させる。
【0090】
本実施の形態の観察画像データは、レーザ投光部110とLED投光部120とが同時に点灯した場合と同様の観察画像(すなわち図15の観察画像)を示す。そのため、使用者は、表示部400に表示された観察画像を視認しつつ、観察画像におけるワークWの所望の部分に輝線が重なるように撮像ヘッド100またはワークWの位置を調整する。これにより、ワークWに対する撮像ヘッド100の位置調整を容易にかつ精密に行うことができる。
【0091】
本実施の形態においては、レーザ投光部110とLED投光部120とは同時に点灯状態にならないように制御される。しかしながら、ヘッド制御部220の故障等により、レーザ投光部110とLED投光部120とが同時に点灯する可能性がある。
【0092】
ここで、撮像ヘッド100から出射される光の強度が所定の上限値を超えないように制限されることが望まれることがある。このような制限がある場合には、測定光の強度と観察光の強度との合計が上限値を超えないように、測定光の強度を上限値よりも小さくする必要がある。この場合、撮像部130の露光時間を長くする必要があるため、処理効率が低下する。
【0093】
一方、レーザ投光部110とLED投光部120とが同時に点灯することが禁止される場合には、測定光の強度を上限値に維持することができる。したがって、撮像部130の露光時間を長くする必要がなく、処理効率の低下を防止することが可能になる。そこで、レーザ投光部110とLED投光部120とが同時に点灯することを禁止する排他制御回路がさらに設けられてもよい。
【0094】
図21は、排他制御回路の一例を示す図である。図21に示すように排他制御回路10は、増幅回路1,2、NOT回路3,4、AND回路5およびnpn型バイポーラトランジスタ6(以下単にトランジスタ6と呼ぶ。)を含む。測定パルスP1を出力するためのヘッド制御部220の端子221に増幅回路1の入力部およびNOT回路3の入力部が接続される。観察パルスP2を出力するためのヘッド制御部220の端子222にAND回路5の一方の入力部が接続される。NOT回路3の出力部とAND回路5の他方の入力部とが接続される。AND回路5の出力部と増幅回路2の入力部とが接続される。
【0095】
増幅回路1の出力部にレーザ投光部110のLD111のアノードが接続される。トランジスタ6のコレクタにLD111のカソードが接続される。トランジスタ6のエミッタは接地される。増幅回路2の出力部にLED投光部120のLDのアノードおよびNOT回路4の入力部が接続される。LEDのカソードは接地される。トランジスタ6のベースにNOT回路4の出力部が接続される。
【0096】
この排他制御回路10によれば、測定パルスP1が“H”レベルにあるときは、観察パルスP2が“H”レベルおよび“L”レベルのいずれにあっても、LED投光部120に
“L”レベルの制御パルスが与えられる。したがって、測定パルスP1および観察パルスP2が同時に“H”レベルになった場合には、LED投光部120は点灯状態にならない。これにより、レーザ投光部110とLED投光部120とが同時に点灯することが禁止される。このような排他制御回路は、第2の実施の形態に係る光学式変位計500に設けられてもよい。
【0097】
[4]他の実施の形態
(1)上記実施の形態において、ハウジング140に凹部143が形成されるが、実施の形態はこれに限定されない。図22は、ハウジング140の他の例を示す図である。図22に示すように、撮像ヘッド100とワークWとの間の測定距離によっては、受光レンズ132がハウジング140の下面141よりも下方に位置することがある。このような場合には、ハウジング140に凹部143が形成されなくてもよい。
【0098】
(2)上記実施の形態において、LED投光部120は長手方向においてレーザ投光部110よりも撮像部130に近い位置に設けられるが、実施の形態はこれに限定されない。図23は、ハウジング140のさらに他の例を示す図である。図23に示すように、ハウジング140が長手方向にわずかに大型化してもよい場合には、LED投光部120は、長手方向においてレーザ投光部110よりも撮像部130から遠い位置に設けられてもよい。この場合、観察窓145は、長手方向において測定窓144よりも受光窓146から遠い位置に設けられる。
【0099】
(3)上記実施の形態において、測定窓144と観察窓145とがハウジング140の下面141に別個に設けられるが、実施の形態はこれに限定されない。測定窓144および観察窓145に代えて、測定光および観測光を透過させる共通の窓がハウジング140の下面141に設けられてもよい。
【0100】
(4)上記実施の形態において、観察画像に測定光の輝線が重畳表示されるが、実施の形態はこれに限定されない。観察画像には測定光の輝線が重畳表示されなくてもよい。この場合でも、使用者は、観察画像を視認しつつ、観察画像におけるワークWの所望の部分が鮮明になるように撮像ヘッド100またはワークWの位置を調整することにより、ワークWに対する撮像ヘッド100の位置調整を容易に行うことができる。
【0101】
(5)上記実施の形態において、測定光は400nm以上480nm以下の波長を有するが、実施の形態はこれに限定されない。測定光の照射部分を肉眼で確認できなくてもよい場合には、測定光は400nmよりも短い波長を有してもよい。あるいは、プロファイルの測定精度がほとんど低下しない場合には、測定光は480nmよりも長い波長を有してもよい。
【0102】
また、観察光の波長および光学フィルタ133の通過波長帯域は、測定光の波長に応じて変更されてもよい。また、受光部131に外乱光がほとんど入射しない場合には、受光部131の受光面に光学フィルタ133が取り付けられなくてもよい。
【0103】
[5]請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応関係
上記実施の形態では、ワークWが測定対象物の例であり、光学式変位計500が光学式変位計の例であり、レーザ投光部110がレーザ投光部の例であり、LED投光部120がLED投光部の例である。受光レンズ132が受光レンズの例であり、受光部131が受光部の例であり、処理装置200が処理装置の例であり、排他制御回路10が排他制御回路の例であり、ハウジング140がハウジングの例である。下面141および傾斜面142がそれぞれ第1および第2の面の例であり、凹部143が凹部の例である。測定窓144が測定窓の例であり、観察窓145が観察窓の例であり、受光窓146が受光窓の例であり、光学フィルタ133がバンドパスフィルタの例である。
【符号の説明】
【0104】
1,2…増幅回路,3,4…NOT回路,5…AND回路,6…トランジスタ,10…
排他制御回路,100…撮像ヘッド,110…レーザ投光部,111…LD,112…コリメータレンズ,113,114…投光レンズ,120…LED投光部,130…撮像部,131…受光部,132…受光レンズ,140…ハウジング,141…下面,142…
傾斜面,143…凹部,144…測定窓,145…観察窓,146…受光窓,200…処理装置,201…記憶部,202…制御部,210…設定部,220…ヘッド制御部,230…測定画像生成部,240…観察画像生成部,250…プロファイル生成部,260…計測部,270…表示処理部,300…入力部,400…表示部,410…画像表示領域,420…指定受付領域,500…光学式変位計,p…画素,P…ピーク,P1…測定パルス,P2…観察パルス,P3…撮像パルス,PP…ピーク位置,R1…受光領域,SS…画素列,T1…照射領域,W…ワーク
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