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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020635
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】入力装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20240206BHJP
   G06F 3/0488 20220101ALI20240206BHJP
   G06F 3/046 20060101ALI20240206BHJP
   G06F 3/03 20060101ALI20240206BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
G06F3/01 570
G06F3/0488
G06F3/046 A
G06F3/03 400B
G06F3/041 560
G06F3/041 590
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023207381
(22)【出願日】2023-12-08
(62)【分割の表示】P 2019151645の分割
【原出願日】2019-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】加藤 壮
(57)【要約】
【課題】入力装置に対して所定の処理を迅速に指示することができる。
【解決手段】使用者が把持する電子ペンによる入力面におけるペン指示位置を検出するペン指示位置検出部と、入力面における使用者のタッチ位置を検出するタッチ位置検出部と、ペン指示位置検出部で検出されたペン指示位置の情報と、タッチ位置検出部で検出されたタッチ位置の情報とを受け、ペン指示位置の情報及び/又はタッチ位置の情報に基づいた処理を行う制御部とを備える。制御部は、ペン指示位置検出部で電子ペンによるペン指示位置を検出した場合に、タッチ位置検出部でタッチ位置を検出したか否かを判別し、タッチ位置を検出したと判別した場合に、検出したタッチ位置が、ペン指示位置から所定の距離以下の範囲内であるか否かを判別する。そして、タッチ位置が、ペン指示位置から所定の距離以下の範囲内であると判別した場合に、予め設定されている機能を実行する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が把持する電子ペンによる入力面におけるペン指示位置を検出するペン指示位置検出部と、
前記入力面における使用者のタッチ位置を検出するタッチ位置検出部と、
前記ペン指示位置検出部で検出されたペン指示位置の情報と、前記タッチ位置検出部で検出された前記タッチ位置の情報とを受け、前記ペン指示位置の情報及び/又は前記タッチ位置の情報に基づいた処理を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記ペン指示位置検出部で、前記電子ペンによる前記ペン指示位置を検出した場合に、前記タッチ位置検出部で前記タッチ位置を検出したか否かを判別する第1の判別手段と、
前記第1の判別手段で前記タッチ位置を検出したと判別した場合に、前記検出した前記タッチ位置が、前記検出した前記ペン指示位置から所定の距離以下の範囲内であるか否かを判別する第2の判別手段と、
前記第2の判別手段で、前記検出した前記タッチ位置が、前記検出した前記ペン指示位置から所定の距離以下の範囲内であると判別した場合に、予め設定されている機能を実行する手段と、
を備えることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記第2の判別手段で、前記検出した前記タッチ位置が、前記検出した前記ペン指示位置から所定の距離以下の範囲内ではないと判別した場合には、検出した前記タッチ位置は無効とする、又は、予め設定されている機能を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記所定の距離以下は、3cm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項4】
前記タッチ位置検出部は、静電結合方式の第1のセンサと第1の位置検出回路とからなり、
前記ペン指示位置検出部は、電磁誘導方式の第2のセンサと第2の位置検出回路とからなり、
前記第1のセンサと前記第2のセンサとは、前記入力面に直交する方向に重畳して配設されている
ことを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項5】
前記タッチ位置検出部は、静電結合方式の第1のセンサと、前記タッチを検出するための第1の位置検出回路とからなり、
前記ペン指示位置検出部は、前記第1のセンサと、静電結合方式の電子ペンからの信号を前記第1のセンサを受信して前記静電結合方式の電子ペンによる指示位置を検出するための第2の位置検出回路とからなり、
第1の位置検出回路と前記第2の位置検出回路とを時分割で動作させる
ことを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項6】
前記予め設定されている機能は、モード切替である
ことを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項7】
前記モード切替は、前記電子ペンによる指示位置の入力を、筆記入力として検出する筆記モードと、消去入力として検出する消しゴムモードとの切替である
ことを特徴とする請求項6に記載の入力装置。
【請求項8】
前記予め設定されている機能は、所定の処理機能の開始処理である
ことを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項9】
前記入力面は、表示画面の表面上に設けられていると共に、前記表示画面に前記電子ペンによる指示位置の軌跡を表示する機能を備えており、
前記タッチ位置と前記ペン指示位置との位置関係が前記特殊位置関係となっていると判別したときに行う前記所定の処理は、前記電子ペンによる指示位置の軌跡についての表示属性の切替処理である
ことを特徴とする請求項5に記載の入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば使用者の指でタッチされたタッチ位置を検出するタッチ位置検出機能と、使用者により把持された電子ペンにより指示入力されたペン指示位置を検出するペン指示位置検出機能を備えた入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ペンを用いて筆記入力をしたり、描画入力をしたりすることができる入力装置が広く普及している。この種の入力装置として、電子ペンにより指示入力されたペン指示位置を検出するだけでなく、使用者のタッチ位置を検出することができるものも提供されている(例えば特許文献1(特開2015-38718号公報)等参照)。
【0003】
ところで、従来、この種の入力装置では、電子ペンによるペン指示位置入力に対する処理機能のモードを切替可能にしたり、ペン種(例えばボールペンと筆)や筆記色を切替可能としている。例えば、特許文献1の入力装置では、電子ペンによるペン指示位置入力を、新たな筆記入力として受け付ける筆記モードと、過去の筆記入力についての消去入力として受け付ける消しゴムモードとを備えており、使用者により、モード切替が可能に構成されている。
【0004】
この場合に、従来の入力装置では、上記の切り替えは、使用者による表示画面に表示されたアイコンのクリック操作や、入力装置に物理的に設けられた操作ボタンの押下操作に基づいてなされるように構成されている。例えば入力装置が筆記モードの状態において、使用者が指や電子ペンで、消しゴムアイコンをクリックすると、入力装置は、筆記モードから消しゴムモードに切り替えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-38718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の入力装置では、上記のように、処理機能の切替のためには、アイコンのクリック操作や操作ボタンの操作が必要であるので、迅速な切り替えができず、作業効率が悪くなる恐れがあった。
【0007】
この発明は、以上の問題点を軽減することができるようにした入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、
使用者が把持する電子ペンによる入力面におけるペン指示位置を検出するペン指示位置検出部と、
前記入力面における使用者のタッチ位置を検出するタッチ位置検出部と、
前記ペン指示位置検出部で検出されたペン指示位置の情報と、前記タッチ位置検出部で検出された前記タッチ位置の情報とを受け、前記ペン指示位置の情報及び/又は前記タッチ位置の情報に基づいた処理を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記ペン指示位置検出部で、前記電子ペンによる前記ペン指示位置を検出した場合に、前記タッチ位置検出部で前記タッチ位置を検出したか否かを判別する第1の判別手段と、
前記第1の判別手段で前記タッチ位置を検出したと判別した場合に、前記検出した前記タッチ位置が、前記検出した前記ペン指示位置から所定の距離以下の範囲内であるか否かを判別する第2の判別手段と、
前記第2の判別手段で、前記検出した前記タッチ位置が、前記検出した前記ペン指示位置から所定の距離以下の範囲内であると判別した場合に、予め設定されている機能を実行する手段と、
を備えることを特徴とする入力装置を提供する。
【0009】
上述の構成の入力装置においては、制御部は、ペン指示位置検出部で電子ペンによるペン指示位置を検出した場合に、タッチ位置検出部でタッチ位置を検出したか否かを判別し、タッチ位置を検出したと判別した場合に、検出したタッチ位置が、検出したペン指示位置から所定の距離以下の範囲内であるか否かを判別する。そして、検出したタッチ位置が、検出したペン指示位置から所定の距離以下の範囲内であると判別した場合に、予め設定されている機能を実行する。
【0010】
したがって、上記の構成の入力装置によれば、使用者は、電子ペンを把持して入力面でペン指示位置入力をしながら、例えば、電子ペンのペン先の近傍で指によりタッチをするなどすることで、入力装置に所定の処理、例えば筆記モードから消しゴムモードへのモード切り替えなどをさせることができる。
【0011】
これにより、入力装置の使用者は、入力装置に表示されているアイコンをクリックしたり、操作ボタンを押下操作したりするなどの操作をすることなく、電子ペンによるペン指示位置入力の状態を継続しながら、指でペン指示位置から所定の距離以下の範囲内でタッチ指示をすることで、入力装置に対して所定の処理を迅速に実行指示することができるので、作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明による入力装置の実施形態の外観の構成例を説明するための図である。
図2】この発明による入力装置の第1の実施形態のハードウエア構成例を説明するための分解斜視図である。
図3】この発明による入力装置の第1の実施形態の電気的構成例を示す図である。
図4】この発明による入力装置の第1の実施形態の要部を説明するために用いる図である。
図5】この発明による入力装置の第1の実施形態の要部を説明するために用いる図である。
図6】この発明による入力装置の第1の実施形態の処理動作例を説明するためのフローチャートを示す図である。
図7】この発明による入力装置の第1の実施形態の処理動作例を説明するためのフローチャートを示す図である。
図8】この発明による入力装置の第2の実施形態の電気的構成例を示す図である。
図9】この発明による入力装置の第2の実施形態の処理動作例を説明するために用いる図である。
図10】この発明による入力装置のさらに他の実施形態を説明するために用いる図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明による入力装置の実施形態を、図を参照しながら説明する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1は、この発明の第1の実施形態の入力装置1の外観を示すものであり、また、図2は、この実施形態の入力装置1の構成例の分解斜視図である。
【0015】
この実施形態の入力装置1は、図1に示すように、薄型で矩形の筐体16の一面側に表示画面11Dを備える。そして、この実施形態の入力装置1は、この表示画面11Dの表示領域の全領域を、使用者による入力操作を受け付ける入力領域とする入力面11Sとして用い、位置指示器の例としての使用者の指2F及び電子ペン3のペン先3aによるペン指示位置を検出する機能を備えるパッド型端末の構成である。
【0016】
この実施形態の入力装置は、入力面11Sにおける使用者の指2Fのタッチ位置を検出するタッチ位置検出部と、入力面11Sにおける電子ペン3によるペン指示位置を検出するペン指示位置検出部とを備える。そして、この実施形態の入力装置1は、タッチ位置検出部で検出されたタッチ位置と、ペン指示位置検出部で検出されたペン指示位置とに基づいた制御処理を行うと共に、表示画面11Dに表示する表示画像を制御するための制御部を備える。
【0017】
表示デバイス11は、例えば液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイなどのフラットディスプレイからなり、図2に示すように、ディスプレイ基板111上に、表示画素112が、X軸方向(横方向)に多数個配列されていると共に、X軸方向に直交するY軸方向(縦方向)に多数個配列された表示画面11Dを備えている。
【0018】
そして、この実施形態の入力装置1においては、表示デバイス11の表示画面11Dの前面側(表面側)に、入力面11Sにおける使用者の指2Fのタッチ位置を検出するためのタッチ検出センサ12が配設されると共に、表示画面11Dの後面側(裏面側)に、入力面11Sにおける電子ペン3によるペン指示位置を検出するためのペン指示検出センサ13が配設されている。さらに、図2に示すように、ペン指示検出センサ13の裏側には、制御部が形成される制御回路基板14が配設される。
【0019】
そして、タッチ検出センサ12、表示デバイス11、ペン指示検出センサ13及び制御回路基板14は、図2に示すように、表示画面11Dに直交する方向に重畳された状態で、例えば合成樹脂により構成されている筐体16の凹部161内に収納される。その後、例えばガラスや樹脂などの透明材料からなる平面部材15の枠領域15aが筐体16の枠領域162に、例えば接着材によって結合されることにより、筐体16の凹部161が閉塞されて、入力装置1が組み立てられる。
【0020】
したがって、平面部材15の表面側の図2において点線で囲んで示す領域は、指2Fや電子ペン3のペン先3aにより位置指示をするときの入力面11Sとなる。そして、この平面部材15の裏面側に、タッチ検出センサ12、表示デバイス11、ペン指示検出センサ13及び制御回路基板14が配置されている。
【0021】
タッチ検出センサ12は、この実施形態では、静電結合方式の位置検出センサで構成され、制御回路基板14に設けられるタッチ位置検出回路と共に、タッチ位置検出部を構成する。また、ペン指示検出センサ13は、この実施形態では、電磁誘導方式の位置検出センサで構成され、制御回路基板14に設けられるペン指示位置検出回路と共に、ペン指示位置検出部を構成する。
【0022】
そして、この実施形態では、タッチ検出センサ12のタッチ位置検出領域と、ペン指示検出センサ13のペン指示位置検出領域と、表示デバイス11の表示画面11Dの表示領域とが、ほぼ等しい大きさとされると共に、表示画面11D(入力面11S)に対して直交する方向において重畳して配置される関係となっている。
【0023】
以上のようなハードウエア構成を備えるこの実施形態の入力装置1の電気的構成例を図3に示す。なお、この図3では、電子ペン3の電気的構成例も併せて示し、電子ペン3と入力装置1との信号のインタラクションについても併せて説明する。
【0024】
図3に示すように、この実施形態の入力装置1は、上述したように、制御回路基板14に設けられる制御部100に対して、表示デバイス11と、タッチ検出センサ12と、ペン指示検出センサ13とが接続されて構成されている。
【0025】
制御部100は、表示制御回路101と、タッチ位置検出回路102と、ペン指示位置検出回路103とが、処理制御回路104に接続されて構成されている。処理制御回路104は、この実施形態では、コンピュータ(マイクロプロセッサ)で構成されており、この実施形態の入力装置1の全体の動作を制御する機能を備える。
【0026】
そして、表示制御回路101に対して、表示デバイス11が接続される。また、タッチ位置検出回路102に対して、タッチ検出センサ12が接続され、ペン指示位置検出回路103に対して、ペン指示検出センサ13が接続される。
【0027】
なお、図2では図示を省略したが、制御回路基板14の制御部100のタッチ位置検出回路102とタッチ検出センサ12、また、ペン指示位置検出回路103とペン指示検出センサ13、さらに表示制御回路101と表示デバイス11とは、それぞれ例えばフレキシブルケーブルにより電気的に接続される。
【0028】
タッチ検出センサ12は、この例では、図3に示すように、絶縁基板の一方の面においてX軸方向(例えば横方向)に配列される複数個の直線状のX導体12X1~12Xn(n=1,2,・・・)と、絶縁基板の他方の面において、この複数のX導体12X1~12Xnとは直交して交差するようにY軸方向(例えば縦方向)に配列されている複数個の直線状のY導体12Y1~12Ym(m=1,2,・・・)とからなる。X導体12X1~12XnとY導体12Y1~12Ymとは、その交点位置において、絶縁基板を介して静電容量結合する状態となっている。
【0029】
タッチ位置検出回路102は、指2Fのタッチを検出するための送信信号の送信回路と、受信回路を備える。そして、タッチ位置検出回路の送信回路は、タッチ検出センサ12の例えばY導体12Y1~12Ymに接続され、受信回路は、タッチ検出センサ12のX導体12X1~12Xnに接続される。指2Fのタッチを検出する送信信号としては、例えば拡散符号などが用いられる。
【0030】
タッチ位置検出回路の送信回路からタッチ検出センサ12のY導体12Y1~12Ymに送信された送信信号は、タッチ検出センサ12のY導体12Y1~12YmとX導体12X1~12Xnとの間の静電容量及びX導体12X1~12Xnを介してタッチ位置検出回路の受信回路に受信される。
【0031】
この場合に、タッチ検出センサ12において指2Fがタッチされている位置では、送信信号の一部が、人体を通じて流れてしまうので、当該タッチ位置における受信回路で検出される受信信号のレベルが低くなる。タッチ位置検出回路102では、この受信信号のレベルが低くなっているタッチ検出センサ12上の位置を、送信信号と受信信号との相関関係を監視することで検出する。この場合に、タッチ位置検出回路102は、入力面11S上で複数の異なる位置でタッチされた複数の指を同時に検出することが可能である。そして、タッチ位置検出回路102は、検出したタッチ位置の情報を処理制御回路104に供給する。
【0032】
次に、ペン指示検出センサ13は、図3に示すように、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに、複数個のX軸方向ループコイル13X及び複数個のY軸方向ループコイル13Yが配列されて構成されている。このペン指示検出センサ13は、表示デバイス11の表示画面11Dの裏面側において、入力面11Sにおいて電子ペン3により指示された位置を検出するように、表示デバイス11及びタッチ検出センサ12と重畳するように配置される。したがって、タッチ検出センサ12とペン指示検出センサ13とは、ともに、入力面11S上の座標位置を、検出することができるように配設されている。
【0033】
この例の電磁誘導結合方式の電子ペン3は、図3に示すように、コイル31と、コンデンサ32とからなる共振回路RCpを備える。そして、この例の電子ペン3は、その芯体のペン先3aに印可される筆圧を静電容量の変化として検出する筆圧検出部を備えており、当該筆圧検出部で構成される可変容量コンデンサ33Cが、共振回路RCpの一部を構成するように、コイル31に並列に接続されている。
【0034】
そして、ペン指示位置検出回路103からは、電子ペン3の共振回路RCpの共振周波数に等しい周波数の交流信号が、ペン指示検出センサ13のループコイル13X及び13Yを通じて電子ペン3に対して送信される。電子ペン3では、ペン指示検出センサ13のループコイル13X及び13Yとの電磁誘導結合により、共振回路RCpで、ペン指示検出センサ13からの交流信号を受信し、当該受信した交流信号を共振回路RCpからペン指示検出センサ13に帰還する。
【0035】
ペン指示位置検出回路103は、ペン指示検出センサ13を通じて、電子ペン3からの帰還信号を受信し、当該受信した交流信号を検出したペン指示検出センサ13のループコイル13X及び13Yの位置を検出することで、電子ペン3の芯体のペン先3aにより指示された位置を検出する。
【0036】
この場合に、電子ペン3では、芯体のペン先3aに印可される筆圧に応じて筆圧検出部を構成する可変容量コンデンサ33Cの容量が変化するために、電子ペン3の共振回路RCpからペン指示検出センサ13に帰還される交流信号の周波数が、当該可変容量コンデンサ33Cの容量に応じて変化する。ペン指示位置検出回路103では、受信した交流信号を、送信周波数の信号で同期検波して、交流信号波数変化(位相変化)を検出することで電子ペン3の芯体のペン先に印可された筆圧を検出する。そして、ペン指示位置検出回路103は、検出したペン指示位置の座標情報を、検出した筆圧情報と共に処理制御回路104に供給する。
【0037】
処理制御回路104では、また、ペン指示位置検出回路103からの筆圧情報に基づいて、電子ペン3のペン先3aが、入力面11Sに接触しているか、非接触の状態で入力面11Sの上空に存在しているか(ホバー状態という)を検出し、その検出結果の接触状態検出情報をペン指示位置検出回路103で検出されたペン指示位置の情報に含める。すなわち、この実施形態では、ペン指示位置検出回路103では、電子ペン3のペン先3aが入力面11Sに接触しているときの位置の座標情報だけでなく、ホバー状態にある電子ペン3のペン先3aの位置の座標情報も検出可能である。
【0038】
そして、処理制御回路104では、タッチ位置検出回路102で検出された指2Fのタッチ位置と、ペン指示位置検出回路103で検出されたペン指示位置とに基づいた処理として、周知の入力装置と同様の処理を行うほか、この実施形態では、ペン指示位置とタッチ位置との位置関係を監視し、ペン指示位置とタッチ位置との位置関係が予め定められている所定の位置関係になっていることを判別したときには、当該所定の位置関係に対応して定められているモード切り替えなどの所定の処理を実行するようにする。
【0039】
処理制御回路104は、周知の入力装置と同様の処理としては、電子ペン3によるペン指示位置に基づいた筆記軌跡の画像を生成して、表示制御回路101を通じて表示デバイス11に供給することで、表示画面11Dに筆記軌跡を表示する処理をしたり、電子ペン3のペン先3aや指2Fでタッチされた位置に表示されているアイコンに対応するアプリケーションプログラムを判断して、そのアプリケーションプログラムを起動する処理をしたりする。
【0040】
<実施形態の要部の説明>
そして、この実施形態の入力装置1では、電子ペン3を把持している使用者が通常の筆記入力操作では行わないような特殊操作態様を定める。この特殊操作態様は、入力面11Sにおいて電子ペン3によるペン指示位置とタッチ位置とが同時に検出される操作態様であって、ペン指示位置とタッチ位置との位置関係が、通常の筆記入力操作では生じない所定の位置関係(以下、この所定の位置関係を特殊位置関係という)を満足する(あるいは所定の位置関係を呈する)操作態様である。この実施形態では、通常の筆記入力操作では生じない特殊位置関係は、予め定められており、ペン指示位置とタッチ位置との離間距離が、所定の距離以下、例えば3cm以下となっている位置関係とされている。
【0041】
この実施形態の入力装置1において、前記特殊位置関係を満足する使用者の特殊操作態様の一例を、図4を用いて説明する。
【0042】
使用者が電子ペン3を手2Hで把持して、表示画面11D(入力面11S)において筆記入力をする際には、図4(A)に示すように、電子ペン3のペン先3aを入力面11Sに接触したときに、電子ペン3を把持している手2Hの掌2Haあるいは小指2Faが入力面11Sに接触してしまうことがある。この入力面11Sに接触している掌2Haあるいは小指2Faはパームと称する。このパームの部分は、使用者がタッチ指示するための入力面11Sに接触させたものではないので、従来から、この掌2Haや小指2Faなどのパームの入力面11S上の接触は入力操作ではないとして判断して、そのタッチ検出を無視する(無効とする)機能(パームリジェクション機能と称する)が提供されている(例えば特開2012-221358号公報参照)。
【0043】
この実施形態の入力装置1においても、制御部100の処理制御回路104は、図3に示すように、このパームリジェクション機能を実行するためのパームリジェクション機能部1041を備えている。
【0044】
パームリジェクション機能部1041は、例えば特開2012-221358号公報に記載されているパームリジェクション機能部と同様に構成されており、予め、使用者毎に、電子ペンを手で把持して指示入力操作をするときの電子ペンによるペン指示位置とパームの検出位置との位置関係を登録して記憶しておく。そして、実際の使用者による電子ペンによる指示入力操作時には、登録してある位置関係を参照することで、パームを検出したときには、当該パームの検出を無視するようにする。
【0045】
なお、この実施形態の制御部100の処理制御回路104に設けられるパームリジェクション機能部1041は、パームを検出して無視することができればよいので、上記の公開公報に開示されている手法を用いるものに限られるものではなく、種々のパームリジェクション手法を用いることができることは言うまでもない。例えば、パームリジェクション機能部1041は、タッチ位置検出部分の面積を検出し、その面積が指先でタッチする場合に比較して区別可能な程度に大きいときには、検出したタッチをパームと判断して、そのタッチ位置を無視するようにするなどの手法を用いてもよいし、複数の手法を併せて用いるように構成してもよい。
【0046】
この実施形態で定められている上述の特殊位置関係を満足する特殊操作態様は、入力面11Sにおいて同時に検出される電子ペン3によるペン指示位置とタッチ位置との位置関係が、パームリジェクション機能部1041によって、その時のタッチ位置が無視されない(無効とされない)ようになる操作態様とされている。
【0047】
一般的に、電子ペンのペン先の接触に基づくペン指示位置と、小指や掌などのパームのタッチ位置との離間距離D1(図4(A)参照)は比較的大きく、例えば3cm程度となる。したがって、電子ペンによるペン指示位置とタッチ位置とが同時に検出されたときに、当該ペン指示位置とタッチ位置との離間距離が、3cmよりも短い距離であると判別されたときには、そのタッチ位置は、パームリジェクション機能部1041により無視されないタッチ位置入力となる。
【0048】
そして、このようにペン指示位置に対して所定の距離、例えば3cm以下となるようなペン指示位置の近傍を、指でタッチするような操作態様は、通常の操作態様ではなく特殊な操作態様であり、当該ペン指示位置とタッチ位置との離間距離が、所定の距離、例えば3cmよりも短い距離であるような位置関係は特殊位置関係である。
【0049】
使用者が電子ペンを把持する際には、少なくとも親指と人差し指で電子ペンを保持し、中指を添えるようにする。人によっては、親指と人差し指で電子ペンを保持し、中指を添えない持ち方をする場合もある。いずれにしても、使用者が電子ペンを把持する際には、中指や薬指は比較的自由に動かせるので、電子ペン3を手で把持しながら、当該把持している手の中指や薬指で、電子ペンのペン先の近傍をタッチすることができる。
【0050】
そこで、この実施形態では、以上のことを考慮して、使用者は、図4(B)に示すように、電子ペン3を把持している手2Hの中指2Fbにより、入力面11Sに接触している電子ペン3のペン先の近傍をタッチする操作を、上記の特殊操作態様の例として行うようにする。この場合に、中指2Fbによるタッチ位置と電子ペン3によるペン指示位置との距離D2(図4(B)参照)は、図4(A)に示したペン指示位置とパームのタッチ位置との離間距離D1よりも短くなる。この操作態様は、使用者が電子ペン3を用いた通常の筆記入力時の操作態様としては行わない操作態様であり、特殊操作態様である。
【0051】
以上のように、この実施形態では、同時に検出される電子ペン3によるペン指示位置とタッチ位置との距離が、所定の距離、この例では、ペン指示位置と、パームのタッチ位置との離間距離D1より短い距離、例えば2cm以下となる位置関係を特殊位置関係と定め、使用者に、この特殊位置関係を満足するような特殊操作態様を行わせるようにする。
【0052】
そして、この実施形態では、この特殊位置関係(特殊操作態様)に対して、所定の処理機能を割り当てるようにする。この実施形態では、割り当てることができる所定の処理は、使用者が複数の処理候補の中から選択して事前に登録しておくことができるように構成されている。
【0053】
制御部100の処理制御回路104は、以上説明したことを実現するために、図3に示すように、機能手段として、前述したパームリジェクション機能部1041の他に、設定登録部1042と、特殊位置関係判定部1043とを備える。
【0054】
パームリジェクション機能部1041は、上述したように、ペン指示位置検出回路103で電子ペン3によるペン指示位置を検出しているときのタッチ位置検出回路102のタッチ位置がパームであるか否かを判定して、パームを判定したときには、そのタッチは無視するようにする機能部である。
【0055】
設定登録部1042は、この実施形態では、特殊位置関係に対して割り当てることができる処理機能の使用者からの選択による登録を受け付けて、当該受け付けた処理機能を記憶保持する機能部である。
【0056】
図5は、この実施形態の入力装置1において、特殊位置関係に対して選択して割り当てることができる処理機能のメニューの一例を示すものである。すなわち、この例においては、特殊位置関係に対して設定可能な処理機能として、図5に示すように、
【0057】
(1)筆記モードと消去モード(消しゴムモード)とを交互に切り替える筆記/消去モード切替処理
【0058】
(2)表示画面11Dの表示モードをカラー表示モードと白黒表示モードとで交互に切り替える表示色モード切替処理
【0059】
(3)ペン軌跡の表示色のペン軌跡色切替処理
【0060】
(4)ペン軌跡の太さのペン軌跡太さ切替処理
【0061】
(5)アプリケーションの開始処理(開始するアプリケーションは選択)
などが提示され、使用者は、その中のいずれか一つの処理機能を選択選定可能とされている。
【0062】
この例では、上記(3)のペン軌跡色切替処理が選択されたときには、使用者による前記特殊位置関係となる特殊操作態様がなされるごとに、ペン軌跡の表示色が、予め用意されている複数色が順次にサイクリックに切り替えられる。同様に、上記(4)のペン軌跡太さ切替処理が選択されたときには、使用者による前記特殊位置関係となる特殊操作態様がなされるごとに、ペン軌跡の表示される太さが、予め用意されている複数通りに順次にサイクリックに切り替えられる。
【0063】
なお、上記(3)のペン軌跡色切替処理やペン軌跡太さ切替処理では、この例のように表示色や太さがサイクリックに切り替えられるのではなく、使用者による前記特殊位置関係となる特殊操作態様がなされると、表示画面のペン指示位置近傍に複数色や複数の太さがメニュー表示され、そのメニューから、使用者が電子ペン3を把持していない他方の手の指でタッチすることで、所望の表示色や太さを選択できるように構成してもよい。
【0064】
また、(5)のアプリケーションの開始処理が選択されたときには、さらに開始可能な複数のアプリケーションがプルダウンメニューとして表示され、そのメニューから、使用者が所望の一つのアプリケーションを選択選定することができるように構成されている。
【0065】
なお、開始可能なアプリケーションの選定は、使用者による前記特殊位置関係となる特殊操作態様がなされた時に行えるように構成してもよい。すなわち、使用者による前記特殊位置関係となる特殊操作態様がなされた時に、表示画面のペン指示位置近傍に、開始可能な複数のアプリケーションのメニューが表示され、そのメニューから、使用者が電子ペン3を把持していない他方の手の指でタッチすることで、所望のアプリケーションを選択設定して開始することができるように構成することもできる。
【0066】
この実施形態では、入力面11Sにおいて、使用者のタッチ指示や電子ペン3によるペン指示により処理機能の設定登録の項目が選択されると、制御部100の処理制御回路104は、設定登録部1042を起動して、図6のフローチャートに示す処理動作を実行させる。
【0067】
すなわち、設定登録部1042は、図5に示したような設定機能メニューを表示画面11Dに表示し(ステップS101)、当該設定機能メニューからの使用者による処理機能の選択の受け付けがなされるのを待つ(ステップS102)。そして、設定登録部1042は、このステップS102で、設定機能メニューからの使用者による処理機能の選択の受け付けがなされたと判別したときには、使用者の操作により、その選択された処理機能で確定されたか否か判別する(ステップS103)。
【0068】
そして、設定登録部1042は、ステップS103で、処理機能の選択が確定していないと判別したときには、処理をステップS102に戻して、ステップS102以降の処理を繰り返し、処理機能の選択が確定したと判別したときには、選択された処理機能の登録を受け付けて、記憶部に記憶保持する(ステップS104)。そして、この図5の処理ルーチンを終了する。
【0069】
制御部100の特殊位置関係判定部1043は、ペン指示位置検出回路103で検出された電子ペン3によるペン指示位置と、タッチ位置検出回路102で検出されたタッチ位置とが同時に検出されたときのペン指示位置とタッチ位置との位置関係が特殊位置関係になっているか否かを判定する。前述したように、この実施形態では、特殊位置関係となっているか否かは、ペン指示位置とタッチ位置との距離が、この例では、3cm以下であるか否かである。そして、特殊位置関係判定部1043は、ペン指示位置とタッチ位置との距離が3cm以下であって、ペン指示位置とタッチ位置とは特殊位置関係となっていると判定したときには、設定登録部1042に登録されている当該特殊位置関係に対応付けられている、上述の(1)~(5)に例示したような所定の処理を行う。
【0070】
<処理制御回路104の処理動作例>
以上のように構成される制御部100の処理制御回路104における処理動作例を、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0071】
処理制御回路104は、ペン指示位置検出回路103の検出出力を監視して、ペン指示位置を検出したか否か判別する(ステップS111)。なお、この検出されたペン指示位置は、ホバー状態であってもよい。
【0072】
ステップS111で、ペン指示位置を検出してはいないと判別したときには、処理制御回路104は、タッチ位置検出回路102の検出出力を監視して、タッチ位置を検出したか否か判別する(ステップS112)。このステップS112で、タッチ位置を検出してはいないと判別したときには、処理制御回路104は、処理をステップS111に戻す。また、ステップS112で、タッチ位置を検出したと判別したときには、処理制御回路104は、パームリジェクション機能部1041の機能により、当該タッチはパームであるか否か判別し(ステップS113)、タッチはパームであると判別したときには、検出したタッチ位置を無視して処理をステップS111に戻す。
【0073】
また、ステップS113で、タッチはパームではなく指によるタッチ指示であると判別したときには、処理制御回路104は、検出されたタッチ位置に応じた通常の処理を行い(ステップS114)、その処理の終了後、処理をステップS111に戻す。
【0074】
そして、ステップS111で、ペン指示位置を検出したと判別したときには、処理制御回路104は、タッチ位置を同時に検出しているか否か判別する(ステップS115)。このステップS115で、タッチ位置を同時に検出してはいないと判別したときには、処理制御回路104は、検出したペン指示位置に応じた通常の処理を行い(ステップS116)、その処理の終了後、処理をステップS111に戻す。
【0075】
また、ステップS115で、タッチ位置を同時に検出したと判別したときには、処理制御回路104は、パームリジェクション機能部1041の機能により、タッチはパームであるか否か判別し(ステップS117)、タッチはパームであると判別したときには、検出したタッチ位置を無視して処理をステップS116に移行して、検出したペン指示位置に応じた通常の処理を行い、その処理の終了後、処理をステップS111に戻す。
【0076】
また、ステップS117で、タッチはパームではない指によるタッチ指示であると判別したときには、処理制御回路104は、特殊位置関係判定部1043の機能により、検出されたペン指示位置とタッチ位置との距離を算出し(ステップS118)、算出した距離は所定値、この例では3cm以下であるか否か判別する(ステップS119)。
【0077】
そして、ステップS119で、算出した距離は所定値以下ではないと判別したときには、処理制御回路104は、ペン指示位置に応じた通常の処理をすると共に、タッチ位置に応じた通常の処理を行う(ステップS120)。そして、ステップS120の終了後、処理制御回路104は、処理をステップS111に戻し、このステップS111以降の処理を繰り返す。
【0078】
また、ステップS119で、算出した距離は所定値以下であると判別したときには、処理制御回路104は、設定登録部1042に登録されて保持されている、上述の(1)~(5)のうちのいずれかの設定機能を実行する(ステップS121)。そして、ステップS121の終了後、処理制御回路104は、処理をステップS111に戻し、このステップS111以降の処理を繰り返す。
【0079】
上述したように、この実施形態の入力装置1によれば、使用者は、電子ペン3を把持して入力面11Sで電子ペン3による筆記入力をしているときに、アイコンクリックなどの筆記入力とは異なる操作をすることなく、入力面11S上で電子ペン3による位置指示入力の状態を継続しながら、上述したような特殊操作態様をすることにより、筆記入力モードから消去モード(消しゴムモード)へのモード切り替えなど、予め特殊位置関係に対応付けて設定した所定の処理を行うことができる。したがって、迅速な筆記入力作業が可能となる。
【0080】
特に、ペン型の外側ケースから操作部が露出する、いわゆるサイドスイッチを備えない電子ペンの場合に、有効である。すなわち、サイドスイッチを有する電子ペンの場合には、当該サイドスイッチの操作情報を入力装置に伝達することで、モード切替を行える。しかし、近年、位置検出センサとの信号のインタラクションを行う部材や筆圧検出部を含む電子ペン本体部をカートリッジタイプあるいはリフィルタイプとして交換可能とする電子ペンでは、サイドスイッチを配設することができない。このようなサイドスイッチを有しない電子ペンの場合には、上述したように、位置検出センサの入力面において特殊位置関係を満足する特殊操作態様をすることで、モード切替などの所定の処理を行うことできて、非常に便利である。
【0081】
そして、上述の図4(B)の例では、電子ペンを把持している手の指による操作(片手の操作)により、特殊位置関係を満足する特殊操作態様を行うことができるので、例えば携帯機器である入力装置を、電子ペンを把持していない方の手で保持しているときであっても、特殊操作態様を実行することができるという効果がある。
【0082】
なお、図7のフローチャートの例では、パームリジェクション機能部1041でタッチ位置がパームあるか否かを判定し、パームではないと判定したときに、特殊位置関係判定部1043による特殊位置関係であるか否かの判定を行うようにしたが、パームリジェクションとは関係なく、ペン指示位置とタッチ位置との距離が所定の距離以下であるか否かにより、特殊位置関係になっているかを判定するようにしてもよい。
【0083】
[第2の実施形態]
上述した第1の実施形態の入力装置1では、電子ペンとして、電磁誘導結合方式の電子ペン3を用いたが、電子ペンは静電結合方式の電子ペンであってもよい。以下に説明する第2の実施形態は、電子ペンとして、アクティブ静電方式の電子ペン3Aを用いることで、当該電子ペン3Aにより指示されたペン指示位置と、使用者の指2Fによるタッチ位置とを区別して検出することができるようにした場合である。
【0084】
図8は、この第2の実施形態の入力装置1Aの電気的構成例を示す。なお、この第2の実施形態の入力装置1Aのハードウエア構成は、ここでは図示を省略するが、図2に示した第1の実施形態の入力装置1のハードウエア構成において、ペン指示検出センサ13を除去し、電磁誘導結合方式の電子ペン3に代えてアクティブ静電方式の電子ペン3Aを用いものに相当する。
【0085】
すなわち、この第2の実施形態の入力装置1Aでは、位置検出センサは、静電結合方式の位置検出センサ12Aのみを備え、電磁誘導結合方式の位置検出センサ(ペン指示検出センサ)13は備えない。そして、第2の実施形態では、制御回路基板14に形成する制御部として、図8に示すような構成の制御部100Aを用いる。位置検出センサ12Aは、第1の実施形態の入力装置1のタッチ検出センサ12と同様の構成を備え、この第2の実施形態においても、絶縁基板の一方の面においてX軸方向(例えば横方向)に配列される複数個の直線状のX導体12X1~12Xn(n=1,2,・・・)と、絶縁基板の他方の面において、この複数のX導体12X1~12Xnとは直交して交差するようにY軸方向(例えば縦方向)に配列されている複数個の直線状のY導体12Y1~12Ym(m=1,2,・・・)とからなる。
【0086】
そして、この第2の実施形態の入力装置1Aは、図8に示すように、位置検出センサ12Aと、この位置検出センサ12Aに接続される制御部100Aとで構成される。制御部100Aは、位置検出センサ12Aとの入出力インターフェースとされるマルチプレクサ105と、表示制御回路101Aと、タッチ位置検出回路102Aと、ペン指示位置検出回路103Aと、処理制御回路104Aとからなる。
【0087】
マルチプレクサ105は、処理制御回路104Aの切り替え制御により、位置検出センサ12Aをタッチ位置検出回路102Aとペン指示位置検出回路103Aのいずれかに接続するようにする切替回路の機能を備える。
【0088】
タッチ位置検出回路102Aは、第1の実施形態におけるタッチ位置検出回路102と同様の構成を有し、入力面11S上で複数の異なる位置でタッチされた複数の指2Fの位置を同時に検出することが可能である。なお、この実施形態では、タッチ位置検出回路102Aのタッチ位置検出機能では、例えば50kHz~200kHz程度の周波数f1の送信信号(この例では拡散符号)を用いる。
【0089】
ペン指示位置検出回路103Aは、位置検出センサ12A上、すなわち、入力面11Sにおけるアクティブ静電ペン3Aによるペン指示位置を検出するものである。
【0090】
アクティブ静電ペン3Aは、図8に示すように、ペンケース内部に発信回路3Sを備え、この発信回路3Sからの、前記周波数f1とは異なる、例えば1.8MHzの周波数f2の信号をペン先の電極から送出する。なお、発信回路3Sは、発振器で構成してもよいし、発振器で発生した発振信号に変調などの処理を施した信号を発生する回路であってもよい。ペン指示位置検出回路103Aは、このアクティブ静電ペン3Aからの信号を、位置検出センサ12AのX導体12X1~12Xnからのみならず、Y導体12Y1~12Ymからも受信する。
【0091】
そして、ペン指示位置検出回路103Aは、X導体12X1~12Xn及びY導体12Y1~12Ymについて、アクティブ静電ペン3Aからの1.8MHzの信号の受信信号のレベルをチェックして、1.8MHzの信号が高レベルとなっているX導体12X及びY導体12Yを検出して、アクティブ静電ペン3Aが指示する位置を検出するようにする。そして、ペン指示位置検出回路103Aは、アクティブ静電ペン3Aによるペン指示位置についての検出結果を処理制御回路104Aに供給する。
【0092】
なお、上述したように、指2Fとアクティブ静電ペン3Aによる指示位置を検出するために、タッチ位置検出回路102Aのタッチ位置検出機能で取り扱う信号の周波数f1は、50~200kHzとされ、ペン指示位置検出回路103Aで取り扱う信号の周波数f2は、1.8MHzとされていて、使用周波数帯域が大きく異なるものとされている。したがって、タッチ位置検出回路102Aと、ペン指示位置検出回路103Aとで取り扱う信号を、例えばバンドパスフィルタで帯域分離することができる。
【0093】
処理制御回路104Aは、第1の実施形態の処理制御回路104と同様に、コンピュータ(マイクロプロセッサ)で構成されており、この第2の実施形態の入力装置1Aでは、タッチ位置検出と、ペン指示位置の検出とを時分割で行うように制御する。すなわち、この第2の実施形態の入力装置1Aでは、図9に示すように、ペン指示位置の検出を実行するペン指示位置検出期間TPと、タッチ位置検出を実行するタッチ位置検出期間TFとを時分割で交互に実行するようにしている。
【0094】
すなわち、処理制御回路104Aは、ペン指示位置検出期間TPでは、位置検出センサ12Aをペン指示位置検出回路103Aに接続するように、マルチプレクサ105を制御すると共に、ペン指示位置検出回路103Aを動作状態(アクティブ状態)にするように制御する。
【0095】
処理制御回路104Aは、また、タッチ位置検出期間TFでは、位置検出センサ12Aをタッチ検出回路102Aに接続するように、マルチプレクサ105を制御すると共に、タッチ検出回路102Aを動作状態(アクティブ状態)にするように制御する。
【0096】
以上のように、処理制御回路104Aは、ペン指示位置検出期間TPとタッチ位置検出期間TFとの時分割処理のタイミング制御をすると共に、タッチ位置検出期間TFにおける指近接検出機能とタッチ位置検出機能との切り替え制御をする。これにより、この実施形態では、指2Fによる位置指示とアクティブ静電ペン3Aによる位置指示とを実質的に同時に検出可能としている。
【0097】
そして、この第2の実施形態の入力装置1Aの処理制御回路104Aは、第1の実施形態の処理制御回路104のパームリジェクション機能部1041、設定登録部1042及び特殊位置関係判定部1043と同様の機能手段を備える。そして、この第2の実施形態においても、処理制御回路104Aは、ペン指示位置検出回路103Aで検出された電子ペン3Aによるペン指示位置と、タッチ位置検出回路102Aで検出されたタッチ位置とについて、図7に示したのと同様の処理を行う。
【0098】
以上のようにして、この第2の実施形態の入力装置1Aにおいては、静電結合方式の電子ペン3Aを用いる場合においても、第1の実施形態と同様にして、入力面11S上で電子ペン3Aによる位置指示入力の状態を継続しながら、上述したような特殊位置関係を満足する特殊操作態様をすることにより、予め特殊位置関係に対応付けて設定した所定の処理を行うことができ、迅速な筆記入力作業が可能となる。
【0099】
そして、この第2の実施形態の入力装置1Aにおいては、ペン指示位置とタッチ位置とを検出するための位置検出センサは、静電結合方式の位置検出センサ12Aのみでよいので、ハードウエア構成を、第1の実施形態の入力装置1に比較して、簡略化することができると共に、製造コストを下げることができる。
【0100】
[他の実施形態又は変形例]
以上の実施形態では、特殊操作態様の一例として図4(B)に示すように、電子ペン3又は3Aを把持している手の中指で、ペン先近傍をタッチするような態様を示した。しかしながら、特殊位置関係を満足する特殊操作態様は、パームリジェクション機能部によりタッチがパームとして検出されない態様であって、上述の実施形態では、ペン指示位置とタッチ位置との距離が、例えば使用者がペン指示入力をしているときに検出されるパーム検出位置とペン指示位置との距離より短い所定の距離、例えば3cm以下となるような態様であればよい。したがって、特殊操作態様としては、図4(B)に示した態様に限られるものではないことは言うまでもない。
【0101】
例えば、図4(B)のように中指2Fbで、電子ペン3又は3Aのペン先の近傍をタッチする代わりに、電子ペン3又は3Aを把持している手の薬指で同様の操作をするようにする操作態様であってもよい。あるいは、電子ペンを把持している手の指ではなく、空いている他方の手のいずれかの指、例えば人差し指や中指で、ペン指示入力を行っている電子ペン3又は3Aのペン先の近傍の特殊位置関係を満足する入力面11Sの位置をタッチするようにする特殊操作態様であってもよい。
【0102】
このように、特殊操作態様は、複数通りが可能であるので、使用者は、自分がやり易い特殊操作態様を、制御部100又は100Aに登録するように構成してもよい。その場合には、制御部100又は100Aの設定登録部は、図6を用いて説明した設定機能の選択登録の受け付けに先立ち、あるいは、受け付け後に、使用者によるに入力面11Sにおける特殊操作態様の入力操作を受け付けて、その時のペン指示位置とタッチ位置との位置関係を登録して保持するようにする。
【0103】
なお、この場合に、制御部100又は100Aは、使用者が入力した操作態様が、特殊操作態様となり得るか否かを、例えばパームリジェクション機能部によりパームとして判断されないてタッチであるか否かなどにより判別して、その判別結果を、使用者に、例えば表示画面11Dを通じて報知するようにする。そして、制御部100又は100Aは、使用者が入力した操作態様が、特殊操作態様となり得ると判別したときには、その入力態様を特殊操作態様として受け付けて、その時のペン指示位置とタッチ位置との位置関係を登録して保持するようにする。
【0104】
このようにすれば、使用者は、入力した操作態様が特殊操作態様として使用可能かどうかを確認することができて、非常に便利である。また、特殊操作態様とならないとの判別結果の通知を受けた時には、使用者は、特殊操作態様となり得る入力操作を再入力することができて、便利である。
【0105】
また、特殊操作態様は、上述のように、複数通りが可能であることを考慮して、異なる特殊操作態様のそれぞれ毎に、異なる処理機能を設定して、登録することができるようにしてもよい。
【0106】
その場合に、異なる特殊操作態様としては、入力面11Sにおけるペン指示位置に対するタッチ位置の方向の違いを用いるようにしてもよい。このことは、特殊位置関係として、前述したようなペン指示位置とタッチ位置との距離だけでなく、ペン指示位置に対するタッチ位置の方向の違いをも加味したものとしてもよいことを意味している。
【0107】
例えば、図4(B)の例では、中指2Fbを、ペン指示位置の右横方向の近傍位置にタッチさせる態様を示したが、異なる態様として、ペン指示位置の前方の近傍位置をタッチする態様を用いるようにしてもよい。または、電子ペンを把持していない方の手の例えば人差し指で、ペン指示位置の左横方向の近傍位置にタッチさせる態様を、異なる態様として用いるようにしてもよい。
【0108】
また、異なる特殊操作態様としては、図4(B)の例に示すような、電子ペン3又は3Aによる一つのペン指示位置に対する、タッチ位置の数の違いを用いるようにしてもよい。このことは、特殊位置関係として、一つのペン指示位置に対する、タッチ位置の数の違いを加味したものとしてもよいことを意味する。
【0109】
例えば、図10に示すように、図4(B)の例のような電子ペンを把持している手2Hの中指2Fbによってペン指示位置の近傍をタッチする操作態様に加えて、空いている他方の手の1本の指2Fcにより、ペン指示位置の近傍(ペン指示位置と指2Fcによるタッチ位置との間の距離D3が3cm以下(D3<D1))でタッチ操作すると、一つのペン指示位置に対して、特殊位置関係を満足するタッチ位置が2つになるので、図4(B)に示した特殊操作態様と、図10に示した特殊操作態様とは異なる操作態様として用いることができる。
【0110】
なお、ペン指示位置の近傍における2つのタッチとしては、空いている方の手の2本の指でペン指示位置の近傍の2点をタッチするようにしてもよい。このタッチ位置を複数個とする特殊操作態様の場合に、タッチ位置として計数されるタッチには、パームとして検出されるタッチは含まれないことは言うまでもない。
【0111】
なお、異なる特殊操作態様としては、一つのペン指示位置に対するタッチ位置の数の違いに加えて、各タッチ位置のペン指示位置に対する方向の違いを加味してもよい。このことは、特殊位置関係として、一つのペン指示位置に対する、タッチ位置の数の違いに加えて、各タッチ位置のペン指示位置に対する方向の違いを加味したものとしてもよいことを意味する。
【0112】
また、異なる特殊操作態様としては、電子ペンの入力面11Sに対する傾きの違いを加味してもよい。この電子ペンの傾きをも、特殊位置関係を規定する要件とするようにしてもよい。
【0113】
以上のように、特殊位置関係を満足する複数個の異なる特殊操作態様のそれぞれについて、それぞれ異なる処理機能を対応付けて登録するようにすれば、より作業効率の向上を期待することができ、便利である。
【0114】
なお、上述の実施形態では、特殊位置関係となっているか否かは、ペン指示位置とタッチ位置との距離が所定の距離以下となっているか否かにより、判定するようにしたが、特殊位置関係となっているか否かは、タッチ位置がペン指示位置に対してパームリジェクション機能部でパームとして検出されない位置関係となっているか否かにより、判定するようにしてもよい。
【0115】
また、特殊位置関係となっているか否かは、上述のように、ペン指示位置に対するタッチ位置の方向の違いをも加味する場合には、ペン指示位置とタッチ位置との距離が、所定の距離以下であって、かつ、タッチ位置がペン指示位置を基準にした所定の方向にずれているか否かにより判定する。
【0116】
また、特殊位置関係となっているか否かは、上述のように、タッチ位置の数の違いを加味する場合には、ペン指示位置とタッチ位置との距離が、所定の距離以下であって、かつ、タッチ位置が複数であるか否かにより判定する。なお、タッチ位置の数に加えて、各タッチ位置のペン指示位置に対する方向の違いを加味する場合には、さらに、各タッチ位置がペン指示位置を基準にした所定の方向にずれた状態となているか否かを判定する。電子ペンの傾きを考慮する場合には、その時の電子ペンの傾きを検出して、判定する。
【符号の説明】
【0117】
1,1A…入力装置、2F…指、3,3A…電子ペン、11…表示デバイス、11S…入力面、12…タッチ検出センサ、12A…位置検出センサ、13…ペン指示検出センサ、14…制御回路基板、100,100A…制御部、102,102A…タッチ位置検出回路、103,103A…ペン指示位置検出回路、104,104A…処理制御回路、1041…パームリジェクション機能部、1042…設定登録部、1043…特殊位置関係判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10