IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ベークライト株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-脳波測定装置および脳波測定方法 図1
  • 特開-脳波測定装置および脳波測定方法 図2
  • 特開-脳波測定装置および脳波測定方法 図3
  • 特開-脳波測定装置および脳波測定方法 図4
  • 特開-脳波測定装置および脳波測定方法 図5
  • 特開-脳波測定装置および脳波測定方法 図6
  • 特開-脳波測定装置および脳波測定方法 図7
  • 特開-脳波測定装置および脳波測定方法 図8
  • 特開-脳波測定装置および脳波測定方法 図9
  • 特開-脳波測定装置および脳波測定方法 図10
  • 特開-脳波測定装置および脳波測定方法 図11
  • 特開-脳波測定装置および脳波測定方法 図12
  • 特開-脳波測定装置および脳波測定方法 図13
  • 特開-脳波測定装置および脳波測定方法 図14
  • 特開-脳波測定装置および脳波測定方法 図15
  • 特開-脳波測定装置および脳波測定方法 図16
  • 特開-脳波測定装置および脳波測定方法 図17
  • 特開-脳波測定装置および脳波測定方法 図18
  • 特開-脳波測定装置および脳波測定方法 図19
  • 特開-脳波測定装置および脳波測定方法 図20
  • 特開-脳波測定装置および脳波測定方法 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020664
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】脳波測定装置および脳波測定方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/256 20210101AFI20240206BHJP
   A61B 5/291 20210101ALI20240206BHJP
【FI】
A61B5/256 110
A61B5/291
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023212871
(22)【出願日】2023-12-18
(62)【分割の表示】P 2022563483の分割
【原出願日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2021094959
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】尾野 慈厚
(57)【要約】
【課題】装着する人の頭の形状によらず装着可能な脳波測定装置を提供する。
【解決手段】脳波測定装置10は、人間の頭部99の形状に追随して装着されるバンド部材11と、バンド部材11の一面に設けられた、複数の電極部13と、バンド部材11の頭部99の形状への追随を支援する追随支援部30と、を有し、追随支援部30は、人間の耳80(外耳)に装着させる耳装着部40と、バンド部材11に取り付けられる取付部50と、耳装着部40と取付部50との間にわたされて設けられた連結部材60とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の頭部の形状に追随して装着されるバンド部材と、
前記バンド部材の一面に設けられた、複数の電極部と、
前記バンド部材の頭部の形状への追随を支援する追随支援部と、
を有し、
前記追随支援部は、
人間の耳に装着させる耳装着部と
前記バンド部材に取り付けられる取付部と、
前記耳装着部と前記取付部との間にわたされて設けられた連結部材と
を有する、脳波測定装置。
【請求項2】
前記追随支援部は頭部の形状への追随状態を調整する調整部を有する、請求項1に記載の脳波測定装置。
【請求項3】
前記調整部は、前記耳装着部と前記取付部との間の長さを調整する機構を有する、請求項2に記載の脳波測定装置。
【請求項4】
前記調整部は、板状部材と前記板状部材を所定位置でロックするロック部と、を有する請求項3に記載の脳波測定装置。
【請求項5】
前記連結部材は弾性部材を有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の脳波測定装置。
【請求項6】
前記耳装着部は、耳甲介に嵌め込まれて装着される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の脳波測定装置。
【請求項7】
前記耳装着部は、前記耳甲介に装着された状態において、前記耳甲介の内外を連通する連通孔を有する、請求項6に記載の脳波測定装置。
【請求項8】
前記耳装着部は、外耳部を挟むことで装着される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の脳波測定装置。
【請求項9】
前記耳装着部は、外耳部に掛けることで装着される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の脳波測定装置。
【請求項10】
前記バンド部材はゴム状の弾性体を有して構成されている、請求項1から4までのいずれか1項に記載の脳波測定装置。
【請求項11】
前記バンド部材と一体に設けられた複数の弾性体の突起部を有し、
前記電極部は、前記突起部に設けられている、請求項1から4までのいずれか1項に記載の脳波測定装置。
【請求項12】
前記電極部は、前記突起部の少なくとも先端部に設けられた導電部材を有する、請求項11に記載の脳波測定装置。
【請求項13】
請求項1~4に記載の脳波測定装置を被験者の頭部に装着して脳波を測定する脳波測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳波測定装置および脳波測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで脳波測定装置において様々な開発がなされてきた。この種の技術として、例えば、特許文献1や特許文献2に記載の技術が知られている。
特許文献1に開示の技術では、導電性の複数の櫛歯を並べた櫛歯列を有し、被験者の頭髪の間に分け入って頭皮に到達するようになっている。
特許文献2に開示の技術では、人の頭部に装着されるバンドと、バンドに調節可能に結合された第1のストリップとを含み、さらに頭部から第1のセットの信号を収集するための、第1のストリップに結合された第1のセットの電極と、第1のストリップをバンドに結合するための磁気ファスナとを含む構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-175287号公報
【特許文献2】特開2018-94434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、頭の形状によっては、脳波検出用電極を装着できないという課題があった。また、装着できる場合でも、電極部分に圧力が集中し、人によっては不快感を持つ場合もあった。特に、頭の形状によっては一部の電極部分に圧力が過度に集中し、非常に不快感を持つ人もいた。一方で、不快感の解消に重点をおくと電極部分と頭部との接触が不十分になり、適切な脳波測定が難しくなるという課題もあった。特許文献1や特許文献2に開示の技術では、それらの対策がなされておらず新たな技術が求められていた。
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みなされたものであって、装着する人の頭の形状によらず装着可能な脳波測定装置および脳波測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の技術が提供される。
[1]
人間の頭部の形状に追随して装着されるバンド部材と、
前記バンド部材の一面に設けられた、複数の電極部と、
前記バンド部材の頭部の形状への追随を支援する追随支援部と、
を有し、
前記追随支援部は、
人間の耳に装着させる耳装着部と
前記バンド部材に取り付けられる取付部と、
前記耳装着部と前記取付部との間にわたされて設けられた連結部材と
を有する、脳波測定装置。
[2]
前記追随支援部は頭部の形状への追随状態を調整する調整部を有する、[1]に記載の脳波測定装置。
[3]
前記調整部は、前記耳装着部と前記取付部との間の長さを調整する機構を有する、[2]に記載の脳波測定装置。
[4]
前記調整部は、板状部材と前記板状部材を所定位置でロックするロック部と、を有する[3]に記載の脳波測定装置。
[5]
前記連結部材は弾性部材を有する、[1]から[4]までのいずれか1に記載の脳波測定装置。
[6]
前記耳装着部は、耳甲介に嵌め込まれて装着される、[1]から[5]までのいずれか1に記載の脳波測定装置。
[7]
前記耳装着部は、前記耳甲介に装着された状態において、前記耳甲介の内外を連通する連通孔を有する、[6]に記載の脳波測定装置。
[8]
前記耳装着部は、外耳部を挟むことで装着される、[1]から[5]までのいずれか1に記載の脳波測定装置。
[9]
前記耳装着部は、外耳部に掛けることで装着される、[1]から[5]までのいずれか1に記載の脳波測定装置。
[10]
前記バンド部材はゴム状の弾性体を有して構成されている、[1]から[9]までのいずれか1に記載の脳波測定装置。
[11]
前記バンド部材と一体に設けられた複数の弾性体の突起部を有し、
前記電極部は、前記突起部に設けられている、[1]から[10]までのいずれか1に記載の脳波測定装置。
[12]
前記電極部は、前記突起部の少なくとも先端部に設けられた導電部材を有する、[11]に記載の脳波測定装置。
[13]
[1]~[12]のいずれか1に記載の脳波測定装置を被験者の頭部に装着して脳波を測定する脳波測定方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、装着する人の頭の形状によらず装着可能な脳波測定装置および脳波測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る部に脳波測定装置を装着した状態の脳波検出システムを示す模式図である。
図2】実施形態に係る頭部に脳波測定装置を装着した状態の脳波検出システムを示す模式図である。
図3】実施形態に係る脳波検出用電極の正面図である。
図4】実施形態に係る脳波検出用電極の平面図である。
図5】実施形態に係る図3の一部領域X1の拡大図である。
図6】実施形態に係る図4のX2-X2断面図である。
図7】実施形態に係る図4のX2-X2断面図の別の例を示す図である。
図8】実施形態に係る脳波検出用電極の別の例(形態2)の平面図である。
図9】実施形態に係る脳波検出用電極の別の例(形態3)の平面図である。
図10】実施形態に係る脳波検出用電極の別の例(形態4)の平面図である。
図11】実施形態に係る脳波検出用電極の別の例(形態5)の平面図である。
図12】実施形態に係る脳波検出用電極の別の例(形態6)の平面図である。
図13】実施形態に係る脳波検出用電極の別の例(形態7)の平面図である。
図14】実施形態に係る脳波検出用電極の別の例(形態8)の平面図である。
図15】実施形態に係る脳波検出用電極の別の例(形態9)の平面図である。
図16】実施形態に係る脳波検出用電極の別の例(形態10)の平面図である。
図17】実施形態に係る耳装着部の模式図である。
図18】実施形態に係る耳装着部の別の例(形態2)のを示す図である。
図19】実施形態に係る耳装着部の別の例(形態3)を示す図である。
図20】実施形態に係る耳装着部の別の例(形態4)を示す図である。
図21】実施形態に係る取付部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
本実施の形態では図示するように前後左右上下の方向を規定して説明する。しかし、これは構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定するものである。したがって、本発明を実施する製品の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
【0010】
図1及び図2は人の頭部99に脳波測定装置10を装着した状態の脳波検出システム1を示す模式図である。図1は装着した人を正面から見た図である。図2は装着した人を横から見た図である。脳波検出システム1は、脳波測定装置10と脳波表示装置20とを備える。
【0011】
脳波測定装置10は、人の頭部99に装着され脳波を生体からの電位変動として検出し、検出した脳波を脳波表示装置20に出力する。脳波表示装置20は、脳波測定装置10が検出した脳波を取得して、モニタ表示したり、データ保存したり、周知の脳波解析処理(測定処理)を行う。
【0012】
<脳波測定装置10の概略構造>
図1図2に示すように、脳波測定装置10は、人間の頭部99の形状に追随して装着されるゴム状の弾性体のバンド部材11と、バンド部材11が頭部99に適切に追従(追随)するように支援する追随支援部30とを有する。
【0013】
バンド部材11の一面(ここでは頭部99側のバンド内面11a)には、バンド部材11と一体に設けられた複数の弾性体の突起部12が設けられている。突起部12の少なくとも先端部が、導電部材からなる電極部13を構成している。
【0014】
追随支援部30は、バンド部材11の長手方向の両端部のそれぞれに設けられており、それぞれ耳80に装着される耳装着部40と、バンド部材11に取り付けられた取付部50と、耳装着部40と取付部50との間にわたされて設けられた連結部60(連結部材)とを備える。
これによって、バンド部材11の両端部が頭部99から浮いてしまって適切に脳波計測ができなくなってしまうことを防止することができる。
【0015】
<脳波表示装置20のシステム概要構成>
脳波測定装置10は、コネクタや電子部品等を備えて、脳波表示装置20と接続する。なお、脳波測定装置10と脳波表示装置20とが一体に構成されてもよい。また、脳波表示装置20がスマートデバイス(スマートホン、タブレット端末)及びそれらで機能する所定のアプリケーションにより構成されてもよい。この場合、脳波測定装置10は、検出した脳波を無線で送信する通信機能を有する。
【0016】
脳波表示装置20は、例えば、制御部と、記憶部と、ユーザIFと、出力部と、脳波処理データ処理部と、を有する。これらは、CPU等の演算装置、ROMやRAM等のメモリや、HDD、SSD等の記憶装置、モニタ、通信IF等を備え、所定のプログラムにより、脳波測定装置10から取得した脳波を利用可能なデータ形式に変換し、また周知の脳波解析機能を実行する。
【0017】
<脳波測定装置10の具体的構成>
脳波測定装置10の具体的な構造について、まずバンド部材11及び電極部13の構成について説明し、つづいて追随支援部30の構成について説明する。
【0018】
<バンド部材11>
図3はバンド部材11の正面図である。図4はバンド部材11の平面図である。ここでは、図1で湾曲していたバンド部材11を平らな状態にして示している。なお、各図の説明において、便宜的に、バンド部材11の厚さ方向をZ方向(上方向が+Z)、矩形形状の長手方向をX方向(右方向が+X)、短手方向をY方向(奥方向が+Y)として説明する。また奥側(+Y側)を前、手前側(-Y側)を後として説明する。なお、図8図16でバンド部材11のバリエーションを説明するが、便宜的に図1図7で説明するバンド部材11を形態1、図8図16で説明するバンド部材11を形態2~形態10として説明する。
【0019】
<バンド部材11の形状>
バンド部材11は、所定厚さtの板状体である。具体的には、バンド部材11は、上面視(平面図)で帯状の矩形形状を呈する。
バンド部材11の厚さtは、例えば、0.1mm~30mmである。
矩形形状の長手方向の長さL1は、例えば20cm~65cmである。
矩形形状の短手方向の長さL2は、例えば0.5cm~5cmである。
なお、バンド部材11の形状は、帯状の矩形形状に限る趣旨ではない。例えば、矩形形状の代わりに長細い楕円形状であってよい。また、バンド部材11の厚さtが一定に限る趣旨ではなく、一部の厚さが薄くなったり厚くなったりしてもよい。いずれにせよ、バンド部材11は、脳波測定装置10が頭部99に装着された際に、その頭部99の形状に追従する。
【0020】
<突起部12の配置>
突起部12は、バンド部材11の一面(頭部99側のバンド内面11a)に、バンド部材11と一体に複数設けられる。例えば図4の平面図に示すように、複数の突起部12は、上面視で一列に所定ピッチPで並んで設けられる。突起部12(すなわち電極部13)のピッチPは、例えば、1mm~20mmである。ピッチPは、脳波の検知に必要とされる電極部13の数及び頭部99へのバンド部材11の追従性の観点から定まる。
【0021】
<突起部12の形状>
図5および図6に突起部12を手前側(後側)から見た図を示す。図5は、図3の正面図の領域X1を拡大して一つの突起部12を示した図である。図6は、図4のX2-X2断面図であり、図5の突起部12の断面図でもある。
【0022】
突起部12は、バンド部材11の一面(ここではバンド内面11a)から突出するようにバンド部材11と一体に形成されている。なお、突起部12が設けられない側の面(ここではバンド外面11b)には取付部50が取り付けられる。
三角錐の突起部12の高さh1は、例えば、0.5mm~20mmであり、好ましくは3mm~15mmであり、より好ましく4mm~10mmである。
【0023】
突起部12が呈する三角錐の具体的な形状として、例えば、図4に示すように、三角錐の底面(すなわち、バンド内面11aとの境界部分)の形状が頂点を鋭角とする二等辺三角形であって、向きが揃っている。ここでは、二等辺三角形の頂点が矩形形状の短手方向の一方側(図示では前側(+Y側))にあり、底辺が他方側(図示では後側(-Y側))にある。また、三角錐の頂点(すなわち突起部12の先端)は、図示の例では、上面視で、二等辺三角形の重心に位置する。言い換えると、突起部12は、図示で前側(+Y側)がなだらかな辺で、後側(-Y側)が急になる面となった向きで設けられている。なお、本実施形態において、「突起部12の向き」とは、上記「二等辺三角形の頂点が向いている方向」を意味する。
【0024】
脳波測定装置10を頭部99に取り付けるときに、なだらかな側(+Y側)から突起部12を頭部99に当てることで、被験者に不快感(痛み等)等を与えることなく、また、頭髪からの抵抗が少なくスムーズに脳波測定装置10を取り付けることができる。
【0025】
<電極部13の形状および材料>
突起部12の少なくとも先端部には導電部材からなる電極部13が、突起部12の表面を覆うように設けられている。ここでは、突起部12の三角錐の頂点から所定高さh2の範囲の表面に電極部13が設けられている。
電極部13が形成される所定高さh2は、突起部12の高さh1にもよるが、例えば、1mm~10mmである。
【0026】
電極部13の導電部材は、例えば、良導電性金属を含むペーストである。良導電性金属は、銅、銀、金、ニッケル、錫、鉛、亜鉛、ビスマス、アンチモン、或いはこれらの合金からなる群から選択される一種以上を含む。特に、入手性や導電性の観点から、銀や塩化銀、銅が好適である。
【0027】
良導電性金属を含むペーストで電極部13を形成する場合は、ゴム状の弾性体でできた突起部12の頂部を、良導電性金属を含むペースト状の導電性溶液にディップ(浸漬塗布)する。これにより、突起部12の先端部の表面に電極部13が形成される。
【0028】
なお、導電性フィラーおよび溶剤を含む導電性溶液を、突起部12の先端部分に塗布することにより、導電性樹脂層としての電極部13を形成してもよい。このとき、溶剤を突起部12と同じ系統の材質(シリコーンゴム)とすることで、電極部13(導電性樹脂層)の密着性を高められる。
【0029】
突起部12の内部には、電極部13に接続する導電性の信号線14が設けられている。信号線14の材料や太さ、配置位置については特に限定せず、接続される脳波表示装置20等で適切に脳波の測定が可能であればよい。電極部13が突起部12の先端部の表面に設けられる場合、例えば、図6に示すように、突起部12の頂部部分の電極部13内面(すなわち突起部12と接する側の面)に信号線14が接続される。
【0030】
本実施形態の脳波測定装置10に好適な信号線14の具体的態様について以下に説明する。
信号線14は、突起部12の先端を覆う電極部13と電気的に接続するとともに、先端からバンド部材11に向かって突起部12の内部に配置される。
【0031】
信号線14は、公知のものを使用することができるが、例えば、導電繊維で構成され得る。
導電繊維としては、金属繊維、金属被覆繊維、炭素繊維、導電性ポリマー繊維、導電性ポリマー被覆繊維、および導電ペースト被覆繊維からなる群から選択される一種以上を用いることができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
上記金属繊維、金属被覆繊維、の金属材料は、導電性を有するものであれば限定されないが、銅、銀、金、ニッケル、錫、鉛、亜鉛、ビスマス、アンチモン、ステンレス、アルミニウム、銀/塩化銀およびこれらの合金等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、導通性の観点から、銀を用いることができる。また、金属材料は、クロム等の環境に負荷を与える金属を含まないことが好ましい。
【0033】
上記金属被覆繊維、導電性ポリマー被覆繊維、導電ペースト被覆繊維の繊維材料は、特に限定されないが、合成繊維、半合成繊維、天然繊維のいずれでもよい。これらの中でも、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、絹および綿等を用いることが好ましい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
上記炭素繊維は、例えば、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。
【0035】
上記導電性ポリマー繊維および導電性ポリマー被覆繊維の導電性ポリマー材料は、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリナフタレン、及びこれらの誘導体等の導電性高分子およびバインダ樹脂の混合物、あるいは、PEDOT-PSS((3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸))等の導電性高分子の水溶液が用いられる。
【0036】
上記導電ペースト被覆繊維の導電ペーストに含まれる樹脂材料は特に限定されないが伸縮性を有することが好ましく、例えばシリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、クロロプレンゴム、およびエチレンプロピレンゴムからなる群から選択される一種以上を含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
上記導電ペースト被覆繊維の導電ペーストに含まれる導電性フィラーは特に限定されないが、公知の導電材料を用いてもよいが、金属粒子、金属繊維、金属被覆繊維、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー、導電性ポリマー被覆繊維および金属ナノワイヤーからなる群から選択される一種以上を含むことができる。
【0038】
上記導電性フィラーを構成する金属は、特に限定はされないが、例えば、銅、銀、金、ニッケル、錫、鉛、亜鉛、ビスマス、アンチモン、銀/塩化銀、或いはこれらの合金のうち少なくとも一種類、あるいは、これらのうちの二種以上を含むことができる。この中でも、導電性の高さや入手容易性の高さから、銀または銅が好ましい。
【0039】
上記信号線14が、線状の導電繊維を複数本撚り合わせた撚糸で構成されてもよい。これにより、変形時における信号線14の断線を抑制できる。
【0040】
本明細書において、導電繊維における被覆とは、単に繊維材料の外表面を覆うことのみならず、単繊維を撚り合わせた撚糸などの場合は、その撚糸の中の繊維間隙に金属、導電性ポリマー、または導電ペーストが含浸し、撚糸を構成する単繊維を1本毎に被覆するものを含む。
【0041】
上記信号線14の引張破断伸度は、例えば、1%以上~50%以下、好ましくは1.5%以上~45%である。このような数値範囲内とすることで、変形時の破断を抑制しつつも、突起部12の過度な変形を抑制できる。
信号線14は、突起部12の内部を導通する態様であれば各種の配置構造を採用し得る。
例えば、信号線14の先端は、突起部12の先端あるいは先端部の傾斜面に対して、突出した構造、略同一面上となる構造、埋没した構造のいずれでもよい。電極部13との接続安定性の観点から、突出した構造を用いてもよい。信号線14の先端の突出部分は、一部または全体が電極部13で覆われている。
【0042】
信号線14の先端の突出構造は、折り返し無し、折り返し有り、突起部12の先端部の表面に巻き付ける構造が採用し得る。また、信号線14は、突起部12の先端(頂点)から延びる垂線と一致せず、垂線に対して傾斜してもよい。
【0043】
また、図7の断面図に示すように、信号線14が電極部13の下側(バンド部材11側)の端部に接続され、突起部12の斜面(表面)に沿って延び、所定の位置から突起部12の内部へ引き込まれる形態であってよい。
なお、信号線14において、電極部13と接続される側の端部と反対側の端部は、それぞれが個別にバンド部材11の外部に引き出されてもよい。また、複数の信号線14について、バンド部材11のバンド外面11bに設けられたコネクタ等にバンド部材11内部から接続され取りまとめられてもよい。
【0044】
つづいて、図8図16を参照して、バンド部材11の別の形態(形態2~10)を説明する。
【0045】
<バンド部材11の形態2>
図8に形態2のバンド部材11Aの平面図を示す。形態1と異なる点は、主に、突起部12の配置にある。すなわち、形態1では、複数の突起部12が一列に同じ向きで配列していた。
一方、形態2では、複数の突起部12が二列に並んでいる。すなわち、形態1の突起部12の並びをもう一列追加した構成といえる。換言すると、複数の突起部12が格子状(正格子状)に配置されている。
【0046】
形態2のバンド部材11Aでは、複数の突起部12が格子状(正格子状)に配置されている。これによって、形態1の効果を実現できるとともに、脳波検出にとって好適な突起部12(すなわち電極部13)の配置が可能となる。すなわち、安定した脳波検出を実現できる。
【0047】
<バンド部材11の形態3>
図9に形態2のバンド部材11Bの平面図を示す。形態1と異なる点は、主に、突起部12の配置にある。すなわち、形態1では、複数の突起部12が一列に同じ向きで配列していた。
一方、形態3では、複数の突起部12が二列に並んでいる。ただし、形態2のバンド部材11Aと異なり、突起部12の並びが互い違いになっている。換言すると、複数の突起部12が千鳥格子状に配置されている。
【0048】
形態3のバンド部材11Bでは、複数の突起部12が千鳥格子状に配置されている。これによって、形態1の効果を実現できるとともに、脳波検出にとって好適な突起部12(すなわち電極部13)の配置が可能となる。すなわち、安定した脳波検出を実現できる。
【0049】
<バンド部材11の形態4>
図10に形態4のバンド部材11Cの平面図を示す。本形態の特徴は、複数の突起部12が二列に並んでおり、前側の列(+Y側列)の突起部12の数(密度)が少なくなっている点にある。具体的には、図示で後側の列(-Y側列)の突起部12は、所定の第1のピッチPc1で配置されている。また、奥側の列(+Y側)の突起部12は、所定の第2のピッチPc2(例えば第1のピッチPc1の2倍)で配置されている。言い換えると、複数の突起部12が互い違いかつ密度違いに配置されているとも言える。
【0050】
本形態のバンド部材11Cでは、複数の突起部12が互い違いかつ密度違いに配置されている。これによって、形態1の効果を実現できるとともに、脳波検出にとって好適な突起部12(すなわち電極部13)の配置が可能となる。すなわち、安定した脳波検出を実現できる。具体的には、人の頭部99は、共通する一定の形状を有する。また、脳波測定装置10(バンド部材11C)が装着され頭部99の位置、装着する際に触れる頭部99の位置の形状に一定の特徴がある。バンド部材11Cによれば、そのような特徴に対しても良好に追従することができる。
【0051】
<バンド部材11の形態5>
図11に形態5のバンド部材11Dの平面図を示す。本形態のバンド部材11Dでは、複数の突起部12が一列に配置されている点では形態1と同じであるが、突起部12の向きが異なる。これにより毛髪の流れに適切に対応させる。
具体的には、図示で左側半分(左側の8個)の突起部12の向きが右向き(すなわちバンド部材11の長手方向中央向き)であり、図示で右側半分(右側の8個)の突起部12の向きが左向き(すなわちバンド部材11Dの長手方向中央向き)である。言い換えると、脳波測定装置10(バンド部材11D)を頭部99に装着したときに、それぞれの突起部12は、頭部99の頂部を向いていると言える。
【0052】
本形態のバンド部材11Dでは、上述のようにバンド部材11Dを頭部99に装着したときに、それぞれの突起部12は、頭部99の頂部を向いている。したがって、頭部99の毛髪の流れや量に対して適切に追従して脳波測定装置10(バンド部材11D)を装着することができる。特に、バンド部材11Dを平らな状態から湾曲させて状態で装着する場合に、突起部12のなだらかな辺から頭部99に接することになるため、不快感を与えることを回避できる。
【0053】
<バンド部材11の形態6>
図12に形態6のバンド部材11Eの平面図を示す。本形態のバンド部材11Eでは、複数の突起部12が一列に配置されている点では形態1、5と同じであるが、突起部12の向きが異なる。これにより毛髪の流れに適切に対応させる。
具体的には、図示で左側半分(左側の8個)の突起部12の向きが左向き(すなわちバンド部材11の長手方向の左端部側向き)であり、図示で右側半分(右側の8個)の突起部12の向きが右向き(すなわちバンド部材11Eの長手方向の右端部側向き)である。言い換えると、脳波測定装置10(バンド部材11E)を頭部99に装着したときに、それぞれの突起部12は、頭部99の頂部から下側(耳の位置側)に向いていると言える。
【0054】
本形態のバンド部材11Eでは、上述のように脳波測定装置10(バンド部材11E)を頭部99に装着したときに、それぞれの突起部12は、頭部99の頂部から下側を向いている。したがって、頭部99の毛髪の流れや量に対して適切に追従して脳波測定装置10(バンド部材11E)を装着することができる。特に、バンド部材11Eをバンド内面11aにある程度湾曲させた状態で装着する場合に、突起部12のなだらかな辺から頭部99に接することになるため、不快感を与えることを回避できる。
【0055】
<バンド部材11の形態7>
図13に形態7のバンド部材11Fの平面図を示す。本形態のバンド部材11Fでは、形態5のバンド部材11Dにおける突起部12の配置に、さらに、バンド部材11Fの長手方向中央において、互いに向きを対向させた二つの突起部12を追加して設けている。
具体的には、追加した二つの対向する突起部12について、図示で前側(+Y側)の突起部12は後向き(-Y方向)であり、図示で後側(-Y側)の突起部12は前向き(+Y方向)である。すなわち、上面視でバンド部材11F(バンド内面11a)の中心(長手方向及び短手方向の各中央)に向いた二つの対向する突起部12が設けられている。
【0056】
本形態のバンド部材11Fでは、形態5のバンド部材11Dと同様の効果が得られる。さらに、上述の二つの対向する突起部12を追加したことで、脳波測定装置10(バンド部材11F)の頭部99への装着を安定させることができる。
【0057】
<バンド部材11の形態8>
図14に形態8のバンド部材11Gの平面図を示す。本形態のバンド部材11Gでは、形態6のバンド部材11Eにおける突起部12の配置に、さらに、バンド部材11Gの長手方向中央において、互いに向きを背向させた二つの突起部12を追加して設けている。
具体的には、追加した二つの背向する突起部12について、図示で前側(+Y側)の突起部12は前向き(+Y方向)であり、図示で後側(-Y側)の突起部12は後向き(-Y方向)である。すなわち、上面視でバンド部材11G(バンド内面11a)の中心(長手方向及び短手方向の各中央)で二つの背向した突起部12が設けられている。
【0058】
本形態のバンド部材11Gでは、形態6のバンド部材11Eと同様の効果が得られる。さらに、上述の二つの背向する突起部12を追加したことで、脳波測定装置10(バンド部材11G)の頭部99への装着性、特に突起部12が毛髪を分け入って安定させる機能を向上させることができる。
【0059】
<バンド部材11の形態9>
形態9のバンド部材11Hでは、形態5のバンド部材11Dにおける複数の突起部12の列を前後二列としたものである。言い換えると形態2と形態5の特徴をあわせたものとも言える。
具体的には、前後のそれぞれの列において、図示で左側半分(左側の8個)の突起部12の向きが右向き(すなわちバンド部材11Hの長手方向中央向き)であり、図示で右側半分(右側の8個)の突起部12の向きが左向き(すなわちバンド部材11Hの長手方向中央向き)である。
【0060】
本形態のバンド部材11Hでは、形態5のバンド部材11Dと同様の効果が得られる。さらに、複数の突起部12の配置を手前及び奥の二列としたことで、形態2のバンド部材11Bと同様の効果、すなわち、脳波検出にとって好適な突起部12(すなわち電極部13)の配置が可能となり、安定した脳波検出を実現できる。
【0061】
<バンド部材11の形態10>
形態10のバンド部材11Iでは、形態6のバンド部材11Eにおける複数の突起部12の列を前後二列としたものである。言い換えると形態2と形態6の特徴をあわせたものとも言える。
具体的には、前後のそれぞれの列において、図示で左側半分(左側の8個)の突起部12の向きが左向き(すなわちバンド部材11Eの長手方向の左端部側向き)であり、図示で右側半分(右側の8個)の突起部12の向きが右向き(すなわちバンド部材11Eの長手方向の右端部側向き)である。
【0062】
本形態のバンド部材11Iでは、形態5のバンド部材11Eと同様の効果が得られる。さらに、複数の突起部12の配置を手前及び奥の二列としたことで、形態2のバンド部材11Bと同様の効果、すなわち、脳波検出にとって好適な突起部12(すなわち電極部13)の配置が可能となり、安定した脳波検出を実現できる。
【0063】
なお、形態1~10では、突起部12の形状として、三角錐を例示したが、円錐や四角錐などの他の錐体や、錐体の頂部を取り除いた截頭錐体であってもよい。
【0064】
<バンド部材11及び突起部12の材料>
バンド部材11及び突起部12は、ゴム状の弾性体であり、より具体的にはゴムや熱可塑性エラストマー(単に「エラストマー(TPE)」ともいう)である。ゴムとしては、例えばシリコーンゴムがある。熱可塑性エラストマーとして、例えば、スチレン系TPE(TPS)、オレフィン系TPE(TPO)、塩化ビニル系TPE(TPVC)、ウレタン系TPE(TPU)、エステル系TPE(TPEE)、アミド系TPE(TPAE)などがある。
【0065】
脳波測定装置10のバンド部材11及び突起部12がシリコーンゴムである場合、37℃、JIS K 6253(1997)に準拠して測定される、バンド部材11の表面(バンド内面11aやバンド外面11b)におけるタイプAデュロメータ硬さをゴム硬度Aとしたとき、ゴム硬度Aが、例えば、15以上55以下である。
【0066】
ここで、上記シリコーンゴム系硬化性組成物について説明する。
上記シリコーンゴムは、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物で構成することができる。シリコーンゴム系硬化性樹脂組成物の硬化工程は、例えば、100~250℃で1~30分間加熱(1次硬化)した後、100~200℃で1~4時間ポストベーク(2次硬化)することによって行われる。
【0067】
絶縁性シリコーンゴムは、導電性フィラーを含まないシリコーンゴムであり、導電性シリコーンゴムは導電性フィラーを含むシリコーンゴムである。
【0068】
本実施形態に係るシリコーンゴム系硬化性組成物は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)を含むことができる。ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物の主成分となる重合物である。
【0069】
絶縁性シリコーンゴム系硬化性組成物および導電性シリコーンゴム系硬化性組成物は、同種のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンを含んでもよい。同種のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンとは、少なくとも官能基が同じビニル基を含み、直鎖状を有していればよく、分子中のビニル基量や分子量分布、あるいはその添加量が異なっていてもよい。
なお、絶縁性シリコーンゴム系硬化性組成物および導電性シリコーンゴム系硬化性組成物は、互いに異なるビニル基含有オルガノポリシロキサンをさらに含んでもよい。
【0070】
上記ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、直鎖構造を有するビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を含むことができる。
【0071】
上記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)は、直鎖構造を有し、かつ、ビニル基を含有しており、かかるビニル基が硬化時の架橋点となる。
【0072】
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)のビニル基の含有量は、特に限定されないが、例えば、分子内に2個以上のビニル基を有し、かつ15モル%以下であるのが好ましく、0.01~12モル%であるのがより好ましい。これにより、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)中におけるビニル基の量が最適化され、後述する各成分とのネットワークの形成を確実に行うことができる。本実施形態において、「~」は、その両端の数値を含むことを意味する。
【0073】
なお、本明細書中において、ビニル基含有量とは、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を構成する全ユニットを100モル%としたときのビニル基含有シロキサンユニットのモル%である。ただし、ビニル基含有シロキサンユニット1つに対して、ビニル基1つであると考える。
【0074】
また、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の重合度は、特に限定されないが、例えば、好ましくは1000~10000程度、より好ましくは2000~5000程度の範囲内である。なお、重合度は、例えばクロロホルムを展開溶媒としたGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)におけるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)等として求めることができる。
【0075】
さらに、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の比重は、特に限定されないが、0.9~1.1程度の範囲であるのが好ましい。
【0076】
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)として、上記のような範囲内の重合度および比重を有するものを用いることにより、得られるシリコーンゴムの耐熱性、難燃性、化学的安定性等の向上を図ることができる。
【0077】
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)としては、特に、下記式(1)で表される構造を有するものであるが好ましい。
【0078】
【化1】
【0079】
式(1)中、Rは炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられ、中でも、ビニル基が好ましい。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基等が挙げられる。
【0080】
また、Rは炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基が挙げられる。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0081】
また、Rは炭素数1~8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0082】
さらに、式(1)中のRおよびRの置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、Rの置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
【0083】
なお、式(1)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。さらに、R、およびRについても同様である。
【0084】
さらに、m、nは、式(1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を構成する繰り返し単位の数であり、mは0~2000の整数、nは1000~10000の整数である。mは、好ましくは0~1000であり、nは、好ましくは2000~5000である。
【0085】
また、式(1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の具体的構造としては、例えば下記式(1-1)で表されるものが挙げられる。
【0086】
【化2】
【0087】
式(1-1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、メチル基またはビニル基であり、少なくとも一方がビニル基である。
【0088】
さらに、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)としては、ビニル基含有量が分子内に2個以上のビニル基を有し、かつ0.4モル%以下である第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)と、ビニル基含有量が0.5~15モル%である第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを含有するものであるのが好ましい。シリコーンゴムの原料である生ゴムとして、一般的なビニル基含有量を有する第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)と、ビニル基含有量が高い第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを組み合わせることで、ビニル基を偏在化させることができ、シリコーンゴムの架橋ネットワーク中に、より効果的に架橋密度の疎密を形成することができる。その結果、より効果的にシリコーンゴムの引裂強度を高めることができる。
【0089】
具体的には、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)として、例えば、上記式(1-1)において、Rがビニル基である単位および/またはRがビニル基である単位を、分子内に2個以上有し、かつ0.4モル%以下を含む第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)と、Rがビニル基である単位および/またはRがビニル基である単位を、0.5~15モル%含む第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを用いるのが好ましい。
【0090】
また、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)は、ビニル基含有量が0.01~0.2モル%であるのが好ましい。また、第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)は、ビニル基含有量が、0.8~12モル%であるのが好ましい。
【0091】
さらに、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)と第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを組み合わせて配合する場合、(A1-1)と(A1-2)の比率は特に限定されないが、例えば、重量比で(A1-1):(A1-2)が50:50~95:5であるのが好ましく、80:20~90:10であるのがより好ましい。
【0092】
なお、第1および第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)および(A1-2)は、それぞれ1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
また、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、分岐構造を有するビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(A2)を含んでもよい。
【0094】
<<オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、架橋剤を含んでもよい。架橋剤は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を含むことができる。
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、直鎖構造を有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐構造を有する分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)とに分類され、これらのうちのいずれか一方または双方を含むことができる。
【0095】
絶縁性シリコーンゴム系硬化性組成物および導電性シリコーンゴム系硬化性組成物は、同種の架橋剤を含んでもよい。同種の架橋剤とは、少なくとも直鎖構造や分岐構造などの共通の構造を有していればよく、分子中の分子量分布や異なる官能基が含まれていてもよく、その添加量が異なっていてもよい。
なお、絶縁性シリコーンゴム系硬化性組成物および導電性シリコーンゴム系硬化性組成物は、互いに異なる架橋剤をさらに含んでもよい。
【0096】
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、直鎖構造を有し、かつ、Siに水素が直接結合した構造(≡Si-H)を有し、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)のビニル基の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される成分が有するビニル基とヒドロシリル化反応し、これらの成分を架橋する重合体である。
【0097】
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の分子量は特に限定されないが、例えば、重量平均分子量が20000以下であるのが好ましく、1000以上、10000以下であることがより好ましい。
【0098】
なお、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の重量平均分子量は、例えばクロロホルムを展開溶媒としたGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)におけるポリスチレン換算により測定することができる。
【0099】
また、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、通常、ビニル基を有しないものであるのが好ましい。これにより、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の分子内において架橋反応が進行するのを的確に防止することができる。
【0100】
以上のような直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)としては、例えば、下記式(2)で表される構造を有するものが好ましく用いられる。
【0101】
【化3】
【0102】
式(2)中、Rは炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、またはヒドリド基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0103】
また、Rは炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、またはヒドリド基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0104】
なお、式(2)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。Rについても同様である。ただし、複数のRおよびRのうち、少なくとも2つ以上がヒドリド基である。
【0105】
また、Rは炭素数1~8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0106】
なお、式(2)中のR,R,Rの置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、分子内の架橋反応を防止する観点から、メチル基が好ましい。
【0107】
さらに、m、nは、式(2)で表される直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)を構成する繰り返し単位の数であり、mは2~150整数、nは2~150の整数である。好ましくは、mは2~100の整数、nは2~100の整数である。
【0108】
なお、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0109】
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、分岐構造を有するため、架橋密度が高い領域を形成し、シリコーンゴムの系中の架橋密度の疎密構造形成に大きく寄与する成分である。また、上記直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)同様、Siに水素が直接結合した構造(≡Si-H)を有し、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)のビニル基の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される成分のビニル基とヒドロシリル化反応し、これら成分を架橋する重合体である。
【0110】
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の比重は、0.9~0.95の範囲である。
【0111】
さらに、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、通常、ビニル基を有しないものであるのが好ましい。これにより、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の分子内において架橋反応が進行するのを的確に防止することができる。
【0112】
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)としては、下記平均組成式(c)で示されるものが好ましい。
【0113】
平均組成式(c)
(H(R3-aSiO1/2(SiO4/2
(式(c)において、Rは一価の有機基、aは1~3の範囲の整数、mはH(R3-aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である)
【0114】
式(c)において、Rは一価の有機基であり、好ましくは、炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0115】
式(c)において、aは、ヒドリド基(Siに直接結合する水素原子)の数であり、1~3の範囲の整数、好ましくは1である。
【0116】
また、式(c)において、mはH(R3-aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である。
【0117】
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は分岐状構造を有する。直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、その構造が直鎖状か分岐状かという点で異なり、Siの数を1とした時のSiに結合するアルキル基Rの数(R/Si)が、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)では1.8~2.1、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)では0.8~1.7の範囲となる。
【0118】
なお、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、分岐構造を有しているため、例えば、窒素雰囲気下、1000℃まで昇温速度10℃/分で加熱した際の残渣量が5%以上となる。これに対して、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、直鎖状であるため、上記条件で加熱した後の残渣量はほぼゼロとなる。
【0119】
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の具体例としては、下記式(3)で表される構造を有するものが挙げられる。
【0120】
【化4】
【0121】
式(3)中、Rは炭素数1~8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基、もしくは水素原子である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。Rの置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
【0122】
なお、式(3)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0123】
また、式(3)中、「-O-Si≡」は、Siが三次元に広がる分岐構造を有することを表している。
【0124】
なお、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0125】
また、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)において、Siに直接結合する水素原子(ヒドリド基)の量は、それぞれ、特に限定されない。ただし、シリコーンゴム系硬化性組成物において、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)中のビニル基1モルに対し、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の合計のヒドリド基量が、0.5~5モルとなる量が好ましく、1~3.5モルとなる量がより好ましい。これにより、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)および分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)と、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)との間で、架橋ネットワークを確実に形成させることができる。
【0126】
<<シリカ粒子(C)>>
本実施形態に係るシリコーンゴム系硬化性組成物は、非導電性フィラーを含む。非導電性フィラーは、必要に応じ、シリカ粒子(C)を含んでもよい。これにより、エラストマーの硬さや機械的強度の向上を図ることができる。
【0127】
絶縁性シリコーンゴム系硬化性組成物および導電性シリコーンゴム系硬化性組成物は、同種の非導電性フィラーを含んでもよい。同種の非導電性フィラーとは、少なくとも共通の構成材料を有していればよく、粒子径、比表面積、表面処理剤、又はその添加量が異なっていてもよい。
なお、絶縁性シリコーンゴム系硬化性組成物および導電性シリコーンゴム系硬化性組成物は、互いに異なるシランカップリング剤をさらに含んでもよい。
【0128】
シリカ粒子(C)としては、特に限定されないが、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ等が用いられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0129】
シリカ粒子(C)は、例えば、BET法による比表面積が例えば50~400m/gであるのが好ましく、100~400m/gであるのがより好ましい。また、シリカ粒子(C)の平均一次粒径は、例えば1~100nmであるのが好ましく、5~20nm程度であるのがより好ましい。
【0130】
シリカ粒子(C)として、かかる比表面積および平均粒径の範囲内であるものを用いることにより、形成されるシリコーンゴムの硬さや機械的強度の向上、特に引張強度の向上をさせることができる。
【0131】
<<シランカップリング剤(D)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、シランカップリング剤(D)を含むことができる。
シランカップリング剤(D)は、加水分解性基を有することができる。加水分解基が水により加水分解されて水酸基になり、この水酸基がシリカ粒子(C)表面の水酸基と脱水縮合反応することで、シリカ粒子(C)の表面改質を行うことができる。
【0132】
絶縁性シリコーンゴム系硬化性組成物および導電性シリコーンゴム系硬化性組成物は、同種のシランカップリング剤を含んでもよい。同種のシランカップリング剤とは、少なくとも共通の官能基を有していればよく、分子中の他の官能基や添加量が異なっていてもよい。
なお、絶縁性シリコーンゴム系硬化性組成物および導電性シリコーンゴム系硬化性組成物は、互いに異なるシランカップリング剤をさらに含んでもよい。
【0133】
また、このシランカップリング剤(D)は、疎水性基を有するシランカップリング剤を含むことができる。これにより、シリカ粒子(C)の表面にこの疎水性基が付与されるため、シリコーンゴム系硬化性組成物中ひいてはシリコーンゴム中において、シリカ粒子(C)の凝集力が低下(シラノール基による水素結合による凝集が少なくなる)し、その結果、シリコーンゴム系硬化性組成物中のシリカ粒子(C)の分散性が向上すると推測される。これにより、シリカ粒子(C)とゴムマトリックスとの界面が増加し、シリカ粒子(C)の補強効果が増大する。さらに、ゴムのマトリックス変形の際、マトリックス内でのシリカ粒子(C)の滑り性が向上すると推測される。そして、シリカ粒子(C)の分散性の向上及び滑り性の向上によって、シリカ粒子(C)によるシリコーンゴムの機械的強度(例えば、引張強度や引裂強度など)が向上する。
【0134】
さらに、シランカップリング剤(D)は、ビニル基を有するシランカップリング剤を含むことができる。これにより、シリカ粒子(C)の表面にビニル基が導入される。そのため、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化の際、すなわち、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)が有するビニル基と、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)が有するヒドリド基とがヒドロシリル化反応して、これらによるネットワーク(架橋構造)が形成される際に、シリカ粒子(C)が有するビニル基も、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)が有するヒドリド基とのヒドロシリル化反応に関与するため、ネットワーク中にシリカ粒子(C)も取り込まれるようになる。これにより、形成されるシリコーンゴムの低硬度化および高モジュラス化を図ることができる。
【0135】
シランカップリング剤(D)としては、疎水性基を有するシランカップリング剤およびビニル基を有するシランカップリング剤を併用することができる。
【0136】
シランカップリング剤(D)としては、例えば、下記式(4)で表わされるものが挙げられる。
【0137】
-Si-(X)4-n・・・(4)
上記式(4)中、nは1~3の整数を表わす。Yは、疎水性基、親水性基またはビニル基を有するもののうちのいずれかの官能基を表わし、nが1の時は疎水性基であり、nが2または3の時はその少なくとも1つが疎水性基である。Xは、加水分解性基を表わす。
【0138】
疎水性基は、炭素数1~6のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基等が挙げられ、中でも、特に、メチル基が好ましい。
【0139】
また、親水性基は、例えば、水酸基、スルホン酸基、カルボキシル基またはカルボニル基等が挙げられ、中でも、特に、水酸基が好ましい。なお、親水性基は、官能基として含まれていてもよいが、シランカップリング剤(D)に疎水性を付与するという観点からは含まれていないのが好ましい。
【0140】
さらに、加水分解性基は、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、クロロ基またはシラザン基等が挙げられ、中でも、シリカ粒子(C)との反応性が高いことから、シラザン基が好ましい。なお、加水分解性基としてシラザン基を有するものは、その構造上の特性から、上記式(4)中の(Y-Si-)の構造を2つ有するものとなる。
【0141】
上記式(4)で表されるシランカップリング剤(D)の具体例は、次の通りである。
上記官能基として疎水性基を有するものとして、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシランのようなアルコキシシラン;メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシランのようなクロロシラン;ヘキサメチルジシラザンが挙げられる。この中でも、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、及びトリメチルエトキシシランからなる群から選択される一種以上を含むトリメチルシリル基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0142】
上記官能基としてビニル基を有するものとして、例えば、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランのようなアルコキシシラン;ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシランのようなクロロシラン;ジビニルテトラメチルジシラザンが挙げられる。この中でも、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、及びビニルメチルジメトキシシランからなる群から選択される一種以上を含むビニル基含有オルガノシリル基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0143】
またシランカップリング剤(D)がトリメチルシリル基を有するシランカップリング剤およびビニル基含有オルガノシリル基を有するシランカップリング剤の2種を含む場合、疎水性基を有するものとしてはヘキサメチルジシラザン、ビニル基を有するものとしてはジビニルテトラメチルジシラザンを含むことが好ましい。
【0144】
トリメチルシリル基を有するシランカップリング剤(D1)およびビニル基含有オルガノシリル基を有するシランカップリング剤(D2)を併用する場合、(D1)と(D2)の比率は、特に限定されないが、例えば、重量比で(D1):(D2)が、1:0.001~1:0.35、好ましくは1:0.01~1:0.20、より好ましくは1:0.03~1:0.15である。このような数値範囲とすることにより、所望のシリコーンゴムの物性を得ることができる。具体的には、ゴム中におけるシリカの分散性およびゴムの架橋性のバランスを図ることができる。
【0145】
本実施形態において、シランカップリング剤(D)の含有量の下限値は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合計量100重量部に対して、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。また、シランカップリング剤(D)の含有量上限値は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合計量100重量部に対して、100質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
シランカップリング剤(D)の含有量を上記下限値以上とすることにより、エラストマーを含む柱状部と導電性樹脂層との密着性を高めることができる。また、シリコーンゴムの機械的強度の向上に資することができる。また、シランカップリング剤(D)の含有量を上記上限値以下とすることにより、シリコーンゴムが適度な機械特性を持つことができる。
【0146】
<<白金または白金化合物(E)>>
本実施形態に係るシリコーンゴム系硬化性組成物は、触媒を含んでもよい。触媒は、白金または白金化合物(E)を含むことができる。白金または白金化合物(E)は、硬化の際の触媒として作用する触媒成分である。白金または白金化合物(E)の添加量は触媒量である。
【0147】
絶縁性シリコーンゴム系硬化性組成物および導電性シリコーンゴム系硬化性組成物は、同種の触媒を含んでもよい。同種の触媒とは、少なくとも共通の構成材料を有していればよく、触媒中に異なる組成が含まれていてもよく、その添加量が異なっていてもよい。
なお、絶縁性シリコーンゴム系硬化性組成物および導電性シリコーンゴム系硬化性組成物は、互いに異なる触媒をさらに含んでもよい。
【0148】
白金または白金化合物(E)としては、公知のものを使用することができ、例えば、白金黒、白金をシリカやカーボンブラック等に担持させたもの、塩化白金酸または塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とオレフィンの錯塩、塩化白金酸とビニルシロキサンとの錯塩等が挙げられる。
【0149】
なお、白金または白金化合物(E)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0150】
本実施形態において、シリコーンゴム系硬化性組成物中における白金または白金化合物(E)の含有量は、触媒量を意味し、適宜設定することができるが、具体的にはビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)、シリカ粒子(C)、シランカップリング剤(D)の合計量100重量部に対して、白金族金属が重量単位で0.01~1000ppmとなる量であり、好ましくは、0.1~500ppmとなる量である。
白金または白金化合物(E)の含有量を上記下限値以上とすることにより、シリコーンゴム系硬化性組成物が適切な速度で硬化することが可能となる。また、白金または白金化合物(E)の含有量を上記上限値以下とすることにより、製造コストの削減に資することができる。
【0151】
<<水(F)>>
また、本実施形態に係るシリコーンゴム系硬化性組成物には、上記成分(A)~(E)以外に、水(F)が含まれていてもよい。
【0152】
水(F)は、シリコーンゴム系硬化性組成物に含まれる各成分を分散させる分散媒として機能するとともに、シリカ粒子(C)とシランカップリング剤(D)との反応に寄与する成分である。そのため、シリコーンゴム中において、シリカ粒子(C)とシランカップリング剤(D)とを、より確実に互いに連結したものとすることができ、全体として均一な特性を発揮することができる。
【0153】
(その他の成分)
さらに、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、上記(A)~(F)成分以外に、他の成分をさらに含むことができる。この他の成分としては、例えば、珪藻土、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、ガラスウール、マイカ等のシリカ粒子(C)以外の無機充填材、反応阻害剤、分散剤、顔料、染料、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、熱伝導性向上剤等の添加剤が挙げられる。
【0154】
本実施形態に係る導電性溶液(導電性シリコーンゴム組成物)は、導電性フィラーを含まない上記シリコーンゴム系硬化性組成物に加えて、上記導電性フィラーおよび溶剤を含むものである。
【0155】
上記溶剤としては、公知の各種溶剤を用いることができるが、例えば、高沸点溶剤を含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0156】
上記溶剤の一例としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、トリフルオロメチルベンゼン、ベンゾトリフルオリドなどの芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、シクロペンチルエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタンなどのハロアルカン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどのカルボン酸アミド類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド類などを例示することができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0157】
上記導電性溶液は、溶液中の固形分量などを調整することで、スプレー塗布やディップ塗布等の各種の塗布方法に適切な粘度を備えることができる。
【0158】
また、上記導電性溶液が上記導電性フィラーおよび上記シリカ粒子(C)を含む場合、電極部13が含むシリカ粒子(C)の含有量の下限値は、シリカ粒子(C)および導電性フィラーの合計量100質量%に対して、例えば、1質量%以上であり、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上とすることができる。これにより、電極部13の機械的強度を向上させることができる。一方で、上記電極部13が含むシリカ粒子(C)の含有量の上限値は、シリカ粒子(C)および導電性フィラーの合計量100質量%に対して、例えば、20質量%以下であり、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。これにより、電極部13における導電性と機械的強度や柔軟性とのバランスを図ることができる。
【0159】
導電性溶液を必要に応じて加熱乾燥することで、導電性シリコーンゴムが得られる。
導電性シリコーンゴムは、シリコーンオイルを含まない構成であってもよい。これにより、電極部13の表面にシリコーンオイルがブリードアウトすることで導通性が低下することを抑制できる。
【0160】
これにより、頭部99への良好な追従性と所望の強度の両立を実現できる。また、脳波測定装置10を装着した際の突起部12による不快感の発生を回避できる。その結果、安定した脳波検出が可能となる。なお、脳波測定装置10を装着する被験者の特性に応じて、例えば「大人」であるか「子供」であるか、頭皮が敏感であるかないか、頭髪が硬いか柔らかいか等に応じて、ゴム硬度Aが選択されてもよい。
【0161】
バンド部材11をシリコーンゴムで成形する際に、シリコーンゴム系硬化性組成物等の硬化性エラストマー組成物を金型成形することで、バンド部材11と複数の突起部12とをシームレスで結合した成形体が得られる。これにより、柔軟性(すなわち頭部99に追従可能な可撓性)と強度に優れて、頭部99に良好に追従する脳波測定装置10を実現できる。なお、シリコーンゴム系硬化性組成物中に含まれる各成分の種類や配合量、シリコーンゴム系硬化性組成物の調製方法等を適切に選択することにより、ゴム硬度Aすなわち柔軟性を制御できる。
【0162】
<バンド部材11の製造方法>
バンド部材11の製造方法の一例は次の工程を含むことができる。
まず、金型を用いて、上記シリコーンゴム系硬化性組成物を加熱加圧成形し、バンド部材11および突起部12からなる成形体を得る。続いて、得られた成形体の各柱状部の内部に、縫い針を用いて、信号線14を通した。その後得られた成形体の突起部12の先端部分の表面(所定高さh2)に、ペースト状の導電性溶液をディップ塗布し、加熱乾燥後、ポストキュアを行う。これにより、突起部12の表面に電極部13を形成できる。
以上により、バンド部材11を製造することができる。
なお、上記成形工程時において、信号線14を配置した成形空間内に、上記シリコーンゴム系硬化性組成物を導入し、加圧加熱成形するインサート成形を用いてもよい。
【0163】
<追随支援部30>
追随支援部30は、耳装着部40と、取付部50と、連結部60とを有する。耳装着部40は人間の耳80に装着される。取付部50はバンド部材11に取り付けられる。連結部60は、線材であって一方の端部61が取付部50に取り付けられ他方の端部62が耳装着部40に取りつけられ、耳装着部40と取付部50との間にわたされている。
【0164】
<耳装着部40>
図17に耳装着部40を示す。図17(a)は耳装着部40の平面図であり、図17(b)は側面図である。耳装着部40は、例えば、いわゆるオープンイヤー型イヤホンと同様の形状として、耳甲介腔81に嵌まるように装着される。なお、耳装着部40は、カナル型イヤホンのように、装着部本体41から外耳道に嵌まる部材が設けられてもよい。
【0165】
耳装着部40は、耳甲介腔81に装着される装着部本体41と、装着部本体41から延出し珠間切痕84に通り耳80(外耳)の外に延びる延出部42とを有する。
【0166】
装着部本体41および延出部42は、例えば、ポリアミド樹脂のような硬質部材で形成されているが、これら材料に限る趣旨ではなく、耳80に装着して、装着した状態を維持できる材料であればよい。また、装着部本体41や延出部42は、全体が同一材料で構成されている必要はない。例えば、装着部本体41の耳甲介腔81と接触する部分はゴム部材としてもよい。
【0167】
装着部本体41は、略円錐形状を呈しており、円錐の底面に対応する部分が僅かに凸状(半球状)の曲面を構成している。
装着部本体41の大きさは、耳甲介腔81に装着できる大きさであれば特に制限はないが、耳甲介腔81の形状の個人差を考慮したうえで多数の人が円滑に装着でき、かつ装着後には不意に外れず装着状態が維持できればよい。また、耳装着部40(装着部本体41や延出部42)の大きさが1サイズだけでなく複数サイズが用意され、取り替え可能に構成されてもよい。
【0168】
装着部本体41が呈する円錐の底面の直径R11は、例えば16~27mmの範囲とすることができる。また、円錐の高さH11を8~20mmとすることができる。
【0169】
延出部42は、円柱形状を呈しており、装着部本体41の円錐形状の側面から延出している。延出位置は、例えば、円錐の高さ方向1/2より頂点側とすることができる。延出部42の延出端部42aには、連結部60の一方の端部62が取り付けられる。
【0170】
延出部42の大きさは、耳甲介腔81に嵌まる装着部本体41から珠間切痕84を介して耳80(外耳)の外側または外側近傍まで延びる大きさであればよい。
延出部42の円柱形状の直径R12は例えば3~15mmとすることができる。また、延出部42の長さは、特に上面視で装着部本体41から外側に位置する部分の長さL11を例えば10~50mmとすることができる。
【0171】
取付部50の材料として特に限定はしないが各種のプラスチックを用いることができる。加工性やコストの観点から、ABS樹脂やポリプロピレン、ポリエチレンを好んで用いることができる。
【0172】
図18に別の形態の耳装着部40Aの斜視図を示す。耳装着部40Aは、図17で示した耳装着部40の変形例である。装着部本体41Aは、耳甲介(耳甲介腔81)に装着された状態において、耳甲介の内外を連通する連通孔48を有する。このような構成により、装着部本体41Aが耳甲介腔81に装着した状態でも、外音が遮断されず、脳波測定をする被験者と装置等の操作者とのコミュニケーションを円滑に行うことができる。
【0173】
図19は別の形態の耳装着部40Bを示す。耳装着部40Bは、耳80(外耳)の耳輪82や耳垂85を挟む構成を有している。図示の例では、耳装着部40Bは、バネによるクリップ式機構を有しており、表面部40B1と、それと対向する裏面部40B2と、それらをその間に配置された耳輪82を挟む方向に付勢するバネ40B3(ねじりバネ)とを有する。例えば、表面部40B1に連結部60の一端が取り付けられる。なお、クリップ式機構の他にマグネット式機構、ネジ式機構などが用いられてもよい。
【0174】
図20は、さらに別の形態の耳装着部40Cを示す。耳装着部40Cは、耳80(外耳)に掛ける形状、ここでは略C字形状を有している。図示の例では、耳装着部40Cは、装着時において、一方の端部40C1が耳輪82の上部で引っ掛かり裏側(頭部99側)の耳介側頭溝に沿って湾曲し他方の端部40C2が耳垂85に至る曲形状を有している。例えば、耳装着部40Cを装着した際に最も上側(すなわちバンド部材11側)となる部分に、板状部材52に繋がる連結部60の一方の端部61が取り付けられる。
【0175】
<取付部50>
図21に取付部50を示す。図21(a)は側面図、図20(b)は平面図である。取付部50は、バンド部材11のバンド外面11bの長手方向両端のそれぞれに取り付けられる。取付部50は、追随支援部30をバンド部材11に取り付ける固定部として機能するとともに、バンド部材11の頭部99への装着状態を調整する調整部として機能する。
【0176】
具体的には、取付部50は、長尺帯状の板状部材52と、板状部材52を所望の位置でロックするロック部51とを有する。
【0177】
板状部材52の一方の主面上には、先端部が短手方向に伸長する複数の歯52aが列設されている。板状部材52の一方の端部には、ワイヤー状の連結部60の一端が取り付けられる。
【0178】
ロック部51は、板状部材52を貫通させて挿入可能な通路54を有し、バンド部材11のバンド外面11bに取り付けられている。通路54は、爪55と、解除部56とを有する。
【0179】
爪55は、板状部材52を通路54に挿入する方向(ここでは左方向)に移動させるときには歯52aと噛み合わず、板状部材52を通路54から引き抜く方向(ここでは右方向)に移動させるときには歯52aと噛み合う爪55とが配置されている。
【0180】
解除部56は爪55と連動しており、解除部56を操作することで、爪55と歯52aとの噛み合いを解除し、板状部材52を左右いずれの方向に移動させることができる。すなわち、取付部50によると、板状部材52に連結部60を介して取り付けられた耳装着部40までの距離を調整でき、その結果、バンド部材11の装着状態を調整することができる。
【0181】
取付部50の材料として特に限定はしないが各種のプラスチックを用いることができる。物性、加工性やコスト等の観点から、66ナイロンを好んで用いることができる。
【0182】
取付部50の例として、面ファスナー機構やカムバックル式機構、バックル式機構、ボタン式機構などを採用することができる。例えば面ファスナー機構であれば、帯状の一枚の面ファスナーの一部をバンド部材11に取り付け、それを折り曲げることで面同士を接合する。折り曲げ部分に、連結部60の端部を環状にした部分が取り付ける。折り曲げる位置を調整することで、面ファスナーのバンド部材11から延出している長さ、すなわちバンド部材11から耳装着部40までの長さを調整する。
【0183】
<連結部60>
連結部60は中実の線部材で構成されており、一方の端部が耳装着部40(延出部42)に取り付けられ、他方の端部が取付部50の板状部材52に取り付けられている。
連結部60の材料として特に限定はしないが、ポリ塩化ビニルやポリエチレン等のような各種のプラスチックを用いることができる。連結部60は、伸縮しない樹脂性部材で構成されてもよいし、伸縮する弾性部材(ゴム状部材)で構成されてもよい。連結部60に弾性部材を用いることで、その弾性力により適度な緊張と、取付部50による長さの調整機能により、良好な脳波測定環境を実現することができる。
【0184】
<追随支援部30の装着・調整方法>
追随支援部30の装着方法は、例えば次の通りである。
まず、二つの取付部50のうち一方の取付部50について、板状部材52をロック部51から取り外した状態または十分に伸ばした状態で、耳装着部40の装着部本体41を耳甲介腔81に嵌め込み固定する(S10)。
つづいて、線材である連結部60を耳80の後ろに沿わせる(S11)。
つぎに、連結部60が沿わせた位置から外れないようにしながら、板状部材52をロック部51に挿入し、ロック部51から出ている板状部材52の長さを調整し仮止めする(S12)。
さらに他方の取付部50についても同様の手順(S10~S12)により装着部本体41を装着し、ロック部51から出ている板状部材52の長さを調整し仮止めする(S13)。
両方の取付部50について仮止めが終了した後、ロック部51から出ている板状部材52の長さを微調整し、追随支援部30によるバンド部材11の締め付け具合を調整する(S14)。
調整後(S14)、脳波測定を開始する。
【0185】
<実施形態の効果>
以上、実施形態の特徴および効果をまとめると次の通りである。
(1)脳波測定装置10は、人間の頭部99の形状に追随して装着されるバンド部材11と、
バンド部材11の一面に設けられた、複数の電極部13と、
バンド部材11の頭部99の形状への追随を支援する追随支援部30と、
を有し、
追随支援部30は、
人間の耳80(外耳)に装着させる耳装着部40と
バンド部材11に取り付けられる取付部50と、
耳装着部40と取付部50との間にわたされて設けられた連結部60(連結部材)と
を有する。
脳波測定装置10は、装着する人の頭部99の形状によらず装着である。また、追随支援部30を有するため、バンド部材11の頭部99の形状への追従を適切に支援できる。すなわち、バンド部材11を頭部99に装着したときにバンド部材11の長手方向の先に位置する耳甲介腔81や耳80の外側形状を利用した固定方法であることで、頭部99への追従不足を解消することが容易である。また、毛髪による反力によって電極部13が頭部99から浮いてしまうことを防止できる。また、日常的な動きでバンド部材11が頭部99から外れてしまうことを防止できる。
(2)追随支援部30は頭部99の形状への追随状態を調整する調整部を有する。
(3)調整部は、耳装着部40と取付部50との間の長さを調整する機構を有する。
例えば、取付部50(板状部材52、ロック部51)が調整部として機能することで、装着する人の頭部99の形状、大きさによらず、適切な追従状態、すなわち脳波測定環境を実現できる。
(4)調整部は、板状部材52とそれを所定位置でロックするロック部51とを有する。
ロック部51の通路54に板状部材52を挿入し、爪55が板状部材52の歯52aを係止する構成とすることで、細かな調整と適切な固定を両立することができる。
(5)連結部60は弾性部材を有する。
取付部50と耳装着部40とを繋ぐ連結部60を、ゴム線材のような弾性部材とすることで、長さの調整とバンド部材11(突起部12)の頭部99への当接状態の調整とをバランスよく行うことができる。
(6)耳装着部40は、耳甲介(すなわち耳甲介腔81)に嵌め込まれて装着される。
(7)耳装着部40は、耳甲介(すなわち耳甲介腔81)に装着された状態において、耳甲介の内外を連通する連通孔48を有する。
耳装着部40が耳甲介腔81に嵌め込まれる場合でも、外音が遮断されることがなく、脳波測定時の被験者と操作者とのコミュニケーションを維持できる。
(8)耳装着部40は、外耳部を挟むことで装着される。
(9)耳装着部40は、外耳部に掛けることで装着される。
(10)バンド部材11はゴム状の弾性体を有して構成されている。
バンド部材11がゴム状の弾性体であることから、人の頭部99の形状に追従する。その結果、人の頭部99の形状によらず、脳波測定装置10の装着が可能となる。
(11)バンド部材11と一体に設けられた複数の弾性体の突起部12を有し、
電極部13は、突起部12に設けられている。
複数の突起部12のバンド部材11の全体に配置することで、装着時の圧力を分散させることができる。さらに、装着した際に、頭部99の形状に追従する柔軟性を有することから、特定の突起部12(電極部13)に圧力が集中することがなく、人に不快を感じさせることを回避できる。換言すると、不快に感じることで測定結果に影響を及ぼすことを回避できる。また、バンド部材11が弾性体であり可撓性を有するため、突起部12の電極部13が、頭部99に適切な向きで、かつ適切な圧力で当接する。この観点でも、脳波検出を安定化できる。
(12)電極部13は、突起部12の少なくとも先端部に設けられた導電部材を有する。
(13)脳波測定方法は、上述の脳波測定装置10を被験者の頭部99に装着して脳波を測定する。
【0186】
この出願は、2021年6月7日に出願された日本出願特願2021-094959号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0187】
1 脳波検出システム
10 脳波検出用電極
11、11A、11B、11C、11D、11E、11F、11G、11H、11I バンド部材
11a バンド内面
11b バンド外面
12 突起部
13 電極部
14 信号線
20 脳波表示装置
30 追随支援部
40、40A、40B、40C 耳装着部
41 装着部本体
42 延出部
50 取付部
51 ロック部
52 板状部材
52a 歯
54 通路
55 爪
60 連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21