(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020681
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】ムース状乳化型クレンジング化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/06 20060101AFI20240207BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20240207BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/02
A61Q19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123034
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】306018365
【氏名又は名称】クラシエホームプロダクツ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】駒場 加奈枝
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC442
4C083AC662
4C083AD241
4C083AD242
4C083BB04
4C083BB13
4C083CC24
4C083DD08
4C083DD31
4C083EE01
4C083EE03
4C083EE05
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】
使用開始時にムース状であり、使用中にムース状からクリーム状、さらにオイル状へと、状態変化を感じることができるムース状乳化型クレンジング化粧料を提供する。
【解決手段】
ムース状であることを特徴とするムース状乳化型クレンジング化粧料により上記課題を解決する。好ましくは。使用中にムース状からクリーム状、さらにオイル状へと状態変化するムース状乳化型クレンジング化粧料である。さらに好ましくは、下記(A)を含有し、より好ましくは下記(B)及び(C)を含有することを特徴とするムース状乳化型クレンジング化粧料である。
(A)アクリル酸Naグラフトデンプン
(B)25℃において液状の炭化水素油
(C)非イオン性界面活性剤
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムース状であることを特徴とするムース状乳化型クレンジング化粧料。
【請求項2】
使用中にムース状からクリーム状、さらにオイル状へと状態変化する請求項1に記載のムース状乳化型クレンジング化粧料。
【請求項3】
下記(A)を含有することを特徴とするムース状乳化型クレンジング化粧料。
(A)アクリル酸Naグラフトデンプン
【請求項4】
さらに下記(B)及び(C)を含有する請求項3に記載のムース状乳化型クレンジング化粧料。
(B)25℃において液状の炭化水素油
(C)非イオン性界面活性剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用開始時にムース状であり、使用中にムース状からクリーム状、さらにオイル状へと、状態変化を感じることができるムース状乳化型クレンジング化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クレンジング化粧料は、皮膚上の皮脂汚れやメイクアップ化粧料を除去することを目的に、さまざまな剤型が開発されている。油性成分を界面活性剤により乳化したミルクタイプ、クリームタイプ、ジェルタイプ、油成分を配合しないか微量配合したローションタイプ、液状油を主成分とするオイルタイプ、バームタイプ等種々の洗浄料が開発され、生活者はそれぞれの剤型の有する特徴的な機能や使用感触を軸に、好みの商品を選定していると思われる。
【0003】
油性成分を多量に配合したO/W乳化型のクリームタイプは、使用時にクリーム状からオイル状へと状態変化し、転相感を得られることが特徴的である。製剤を肌へ塗布後、塗り伸ばし時のみずみずしい感触があり、さらに塗り伸ばしを続けたときに乳化滴が壊れ、油性成分が肌に広がることで、マッサージの負荷に変化を与えるこの感触は、使用者にリラックス感を与えうる。
【0004】
たとえば、特許文献1では、界面活性剤、30質量%以上の油相成分、水相成分、特定のポリマーを組み合わせることで、転相の分かりやすいクレンジングクリームを提案している。このようにクレンジング行為中の製剤の状態変化は、情緒面で様々なプラスの効果を使用者に与えることができ、製剤の付加価値となりうる。
【0005】
しかし、ふわふわとした感触で肌あたりが優しいムース剤型の乳化型クレンジング化粧料は存在していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、使用開始時にムース状であり、使用中にムース状からクリーム状、さらにオイル状へと、状態変化を感じることができるムース状乳化型クレンジング化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため鋭意研究を行った結果、乳化型クレンジング化粧料にアクリル酸Naグラフトデンプンを配合することで、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
1.ムース状であることを特徴とするムース状乳化型クレンジング化粧料である。
2.好ましくは、使用中にムース状からクリーム状、さらにオイル状へと状態変化するムース状乳化型クレンジング化粧料である。
3.下記(A)を含有することを特徴とするムース状乳化型クレンジング化粧料である。
(A)アクリル酸Naグラフトデンプン
4.好ましくは、さらに下記(B)及び(C)を含有するムース状乳化型クレンジング化粧料である。
(B)25℃において液状の炭化水素油
(C)非イオン性界面活性剤
【発明の効果】
【0010】
本発明のムース状乳化型クレンジング化粧料は、使用中にムース状からクリーム状、さらにオイル状へと、状態変化を感じることができる。さらには、本発明のムース状乳化型クレンジング化粧料は、すすぎ性が良好で、高温での経時安定性も良好である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、ムース状とは、マットな質感でふんわりとした外観であり、使用感においても、空気を含んだようなふんわりとした感触を有することを意味する。また毛髪用製剤で用いられるムース剤型とは異なり、調製段階でアクリル酸Naグラフトデンプンが製剤中の水を吸収し膨潤することでムース状の外観や感触を呈するため、エアゾール缶(ガスで押し出す缶のこと)やポンプフォーマー(泡ソープのようなメッシュ容器のこと)のような容器を必要とせず、ムース状のままジャータイプ容器に充填し、ムース状のまま手に取り出すことができる。
【0012】
クリーム状とは、ツヤのある外観をした半固形状のO/W乳化型であり、使用感においては、塗り伸ばし時にみずみずしい感触を有することを意味し、ムース状からクリーム状への状態変化の分かりやすさとは、ふんわりとした弾力のある製剤に物理的な負荷をかけて塗り伸ばすことで、マットな質感からツヤのある質感へ変化し、みずみずしい感触に移行することである。
【0013】
次に、クリーム状からオイル状への状態変化とは、転相を意味する。肌上の皮脂汚れやメイクアップ化粧料が製剤中の油分と混ざり合い、また、製剤中の水分が蒸発し、O/W乳化型からオイル状の軽い感触を有するW/O乳化型に変化し、感触が軽くなり滑りが良好になることである。
【0014】
すすぎ性が良好とは、水洗時、および洗浄後の皮膚にべたつきがなく、さっぱり感を得られることを意味する。
【0015】
高温での経時安定性が良好とは、40℃以上の高温条件下における経時での油浮きや分離、粘度の著しい低下が認められず、製剤が均一であることを意味する。
【0016】
以下、本発明の構成について詳述する。
【0017】
<(A)成分>
本発明で使用する(A)成分は、アクリル酸Naグラフトデンプンである。この成分は、デンプンにアクリル酸をグラフト重合したもののナトリウム塩であり、化粧品には吸着剤、結合剤、乳化安定剤、親水性増粘剤として使用されることが知られている。本発明では、(A)を配合することにより、乳化型クレンジング化粧料の剤型をムース状にできることを見出した。さらに、製剤の高温での経時安定性を高めることができる。
【0018】
(A)成分として用いられるアクリル酸Naグラフトデンプンは、具体的には、サランジュールST-100MC、サランジュールST-100SP、サランジュール1000(以上、三洋化成株式会社)、MAKIMOUSSE7、MAKIMOUSSE12、MAKIMOUSSE25、MAKIMOUSSE400(以上、大東化成株式会社)など
の市販品を使用することができる。
【0019】
本発明における(A)成分の含有量は、全体質量中0.2質量%以上、さらには0.3質量%以上が好ましい。0.2質量%以上であれば、ムース状の外観や感触を付与することができる。また、高温での経時安定性が良好となり、さらに乳化型クレンジング化粧料を肌に塗布する際に化粧料の垂れ落ちが生じることなく使用性も良好となる。
【0020】
一方、さらに好ましくは、全体質量中2.0質量%以下、さらには1.2質量%以下が好ましい。2.0質量%以下であれば、ムース状からクリーム状、クリーム状からオイル状への変化に要する時間が短くなり、状態変化を認知しやすくなる。さらに、すすぎ性も良好であり、製剤ののびの悪さやべたつきといった使用性の低下が認められない。
【0021】
(A)成分が、全体質量中0.2~2.0質量%であれば、ムース状、クリーム状、オイル状への状態変化が分かりやすく、使用感触の変化を十分に楽しむことができる。
【0022】
<(B)成分>
本発明で使用する(B)成分は、25℃において液状の炭化水素油である。(B)成分は、クレンジング料の油性基剤として用いられ、(B)成分がメイク汚れとなじみ、汚れを肌から浮き上がらせる作用を有する。(B)成分の含有量が多ければ、マッサージ時の転送速度が速くなり、メイク落としも良好となる傾向がある。
【0023】
(B)成分を具体的に例示すれば、ミネラルオイル、α-オレフィンオリゴマー、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、ポリブテン、水添ポリブテン、揮発性イソパラフィン等が挙げられる。これら液状炭化水素油は、いずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
本発明における(B)成分の含有量は、全体質量中10質量%以上、さらには20質量%が好ましい。10質量%以上であれば、10質量%以上であれば、マッサージ時のクリーム状からオイル状への転相の速さが良好となる。
【0025】
一方、さらに好ましくは、全体質量中80質量%以下、さらには70質量%以下が好ましい。70質量%以下であれば、高温での経時安定性やメイク落ちが良好となる。これは、製剤中で乳化滴を安定に保つことができるため経時安定性が良好となる。また、油性汚れであるメイクアップ化粧料と製剤が十分になじみ、かつすすぎ時にメイクアップ化粧料や製剤が肌上に残ってしまうことがないため、メイク落ちも良好で洗いあがりの肌感触も良好となる。
【0026】
(A)成分と(B)成分の配合比(=(A)/(B))は、0.2質量%以上5.0質量%以下が好ましい。0.2質量%以上であれば製剤のムース感が良好で、ムース状からクリーム状への状態変化が分かり易く、5.0質量%以下であれば製剤のムース感が良好で、クリーム状からオイル状への状態変化が分かり易い。
【0027】
<(C)成分>
本発明で用いられる(C)成分は、非イオン性界面活性剤である。(C)成分は、一般的に乳化剤として用いられる。非イオン性界面活性剤であれば、ムース状、クリーム状、オイル状の状態変化に影響を与えることはないが、非イオン性界面活性剤として2種以上のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを用いると、製剤の経時安定性を向上し、良好なすすぎ性を維持できる。
【0028】
(C)成分を具体的に例示すれば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)等が挙げられる。これらポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、いずれか2種以上を組み合わせて使用することが好ましい。
【0029】
市販品としては、レオドール TW-O120V、レオドール TW-S120V、レオドール TW-S320V、レオドール TW-L120(以上、花王社製)、ソルボンT-20(以上、東邦化学工業社製)等が挙げられる。
【0030】
本発明のムース状乳化型クレンジング化粧料における(C)成分の配合量は特に限定されないが、好ましくは2質量%以上である。2質量%以上であれば、すすぎ時にべたつき感がなく、洗い上がりの肌がさっぱりとし、また製剤の安定性も良好である。
【0031】
<水>
本発明のムース状乳化型クレンジング化粧料において水相を構成し、系を維持するために水を用いる。本発明における水の含有量は、保存安定性を向上させ、使用後にさっぱりとした感触が得られる観点から、5~60質量%、さらには10~50質量%が好ましい。
【0032】
本発明のムース状乳化型クレンジング化粧料は、上記成分に加えて必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で通常使用されている任意の成分を使用することが出来る。これらの成分としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、油分、紫外線吸収剤、防腐剤、保湿剤、ポリマー類、アミノ酸誘導体、糖誘導体、香料、水、アルコール、増粘剤、色剤、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、薬剤、香料等が挙げられる。
【実施例0033】
次に本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、これに限定されるものではない。実施例に先立ち、各実施例で採用した試験法、評価法を説明する。
【0034】
<製剤のムース感の評価試験>
<状態変化の分かりやすさ(ムース状からクリーム状)>
<状態変化の分かりやすさ(クリーム状からオイル状)>
10名の専門パネルが、顔に市販のパウダーファンデーション、マスカラ、及び口紅を塗布し、約4時間おいて乾燥させた。次に、実施例・比較例に記載の組成物を約1.2g取り、鏡を見ながら顔全体に伸ばして、人差し指、中指及び薬指で円を描きながらマッサージし、メイクとなじませ、その後水で洗い流した。そして、製剤のムース感及び「ムース状からクリーム状」への状態変化の分かりやすさを下記評価基準で絶対評価により評価し、その平均点にて判定した。次に「クリーム状からオイル状」への状態変化の分かりやすさを対象品(ナイーブ クレンジングクリーム(Z))の評価基準を3点とした相対評価により評価し、その平均点にて判定した。
【0035】
(評価基準)製剤のムース感
5点:マットな外観や空気を含んだようなふんわり感がとても感じられる
4点:マットな外観や空気を含んだようなふんわり感が感じられる
3点:マットな外観や空気を含んだようなふんわり感がやや感じられる
2点:マットな外観や空気を含んだようなふんわり感があまり感じられず、ツヤがありクリームのような使用感がややある
1点:マットな外観や空気を含んだようなふんわり感が全く感じられず、ツヤがありク
リームのような使用感がある
全パネルによる平均が、4点以上を◎、3点以上を○.2点以上を△、2点未満を×とした。
【0036】
(評価基準)状態変化の分かりやすさ(ムース状からクリーム状)
5点:非常に分かりやすい
4点:分かりやすい
3点:やや分かりやすい
2点:分かりにくい
1点:非常に分かりにくい
全パネルによる平均が、4点以上を◎、3点以上を○.2点以上を△、2点未満を×とした。
【0037】
(評価基準)状態変化の分かりやすさ(クリーム状からオイル状)
5点:非常に分かりやすい
4点:分かりやすい
3点:やや分かりやすい
2点:分かりにくい
1点:非常に分かりにくい
全パネルによる平均が、4点以上を◎、3点以上を○.2点以上を△、2点未満を×とした。
【0038】
<経時安定性評価試験>
試料を50mLの透明ガラス製容器に入れて密封し、45℃の恒温槽に3か月保存し、視覚判定により下記の基準で評価を行った。
【0039】
(評価基準)
5点:試料外観の変化が観察されない
4点:試料表面にごくわずかな油浮きや粘度低下が認められる
3点:試料表面に明確な油浮きや部分的な分離、著しい粘度低下が認められる
2点:試料全体に分離が認められる
1点:調製直後から分離が認められる
【0040】
実施例1~18、比較例1~6
表1~2に示した処方の乳化型クレンジング化粧料を常法に準じて調製し、上記各試験を実施した。その結果を表1および表2に併せて示す。
【0041】
【0042】
【0043】
表1~2より明らかなように本発明の成分を用いた実施例の乳化型クレンジング化粧料はいずれも優れた性能を有していた。一方、比較例では、状態変化の分かりやすさ(ムー
ス状からクリーム状)、状態変化の分かりやすさ(クリーム状からオイル状)、製剤のムース感、経時安定性のいずれかの面で劣っており、本発明の目的を達成できなかった。なお比較例5及び6は、処方の結果、乳化ができておらず分離しており、評価は不能であった。