(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020702
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】連続式スチーム加工装置及び蒸しあがり農産食品原料の製造方法
(51)【国際特許分類】
A47J 27/16 20060101AFI20240207BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20240207BHJP
A23L 11/00 20210101ALI20240207BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20240207BHJP
A23L 19/10 20160101ALI20240207BHJP
【FI】
A47J27/16 G
A23L5/10 A
A23L11/00 C
A23L19/00 A
A23L19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123078
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】390009874
【氏名又は名称】株式会社ペリカン
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】原田 洋志
【テーマコード(参考)】
4B016
4B020
4B035
4B054
【Fターム(参考)】
4B016LC06
4B016LG06
4B016LP06
4B020LC07
4B020LG01
4B020LP05
4B035LC16
4B035LG32
4B035LG33
4B035LP03
4B035LT02
4B054AA02
4B054AA06
4B054AA12
4B054AB03
4B054AC03
4B054AC09
4B054BA02
4B054BC12
4B054CH12
4B054CH13
(57)【要約】
【課題】加工時間が比較的短くて済み、段取り替えの手間がかからず、十分な殺菌能力を有し、豆類や芋類などの農産食品原料を連続的に均一に低温スチームするのに用いられる連続式スチーム加工装置及び蒸しあがり農産食品原料の製造方法を提供する。
【解決手段】円筒状スチーム圧力釜と、原料搬送ベルトと、農産食品原料が投入される原料投入口と、前記円筒状スチーム圧力釜内部に120℃~130℃の水蒸気を吹き込み、前記農産食品原料に対してスチーム加工を行って蒸しあげるための水蒸気吹き込み口と、蒸しあがり農産食品原料の芯温が80℃以上100℃未満になるように、蒸気を設定温度にするための温度調整機構と、前記円筒状スチーム圧力釜内部の雰囲気を対流させるための雰囲気対流ファンと、蒸しあがり農産食品原料を排出させる蒸しあがり原料排出口と、を含む、連続式スチーム加工装置とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒部が水平方向に設置され、内部を密閉可能な円筒状スチーム圧力釜と、
前記円筒状スチーム圧力釜内に設けられた原料搬送ベルトと、
前記原料搬送ベルトへと農産食品原料が投入される原料投入口と、
前記円筒状スチーム圧力釜内部に120℃~130℃の水蒸気を吹き込み、前記農産食品原料に対してスチーム加工を行って蒸しあげるための水蒸気吹き込み口と、
前記スチーム加工を行って蒸しあげられた蒸しあがり農産食品原料の芯温が80℃以上100℃未満になるように、前記円筒状スチーム圧力釜に入れられる蒸気を設定温度にするための温度調整機構と、
前記円筒状スチーム圧力釜内部の雰囲気を対流させるための雰囲気対流ファンと、
前記水蒸気によって蒸しあげられた蒸しあがり農産食品原料を排出させる蒸しあがり原料排出口と、
を含む、
連続式スチーム加工装置。
【請求項2】
前記円筒状スチーム圧力釜内部が飽和湿り空気で満たされてなり、前記飽和湿り空気が前記農産食品原料に接触せしめられることでスチーム加工されてなる、請求項1記載の連続式スチーム加工装置。
【請求項3】
前記雰囲気対流ファンが、前記円筒状スチーム圧力釜の天井部に少なくとも2つ設置されてなる、請求項1記載の連続式スチーム加工装置。
【請求項4】
前記雰囲気対流ファンの翼の直径が、前記円筒状スチーム圧力釜の内径の半径以上である、請求項1記載の連続式スチーム加工装置。
【請求項5】
前記温度調整機構がPID制御されてなる、請求項1記載の連続式スチーム加工装置。
【請求項6】
前記農産食品原料が、豆類及び芋類からなる群から選択される少なくとも一つである、請求項1記載の連続式スチーム加工装置。
【請求項7】
前記円筒状スチーム圧力釜が長手方向に傾斜して設けられてなり、前記円筒状スチーム圧力釜の一端部に設けられた前記原料投入口の側の前記円筒状スチーム圧力釜の底部よりも前記円筒状スチーム圧力釜の他端部に設けられた前記蒸しあがり原料排出口の側の前記円筒状スチーム圧力釜の底部の方が、水平方向で1度から5度高くなるように傾斜せしめられなる、請求項1記載の連続式スチーム加工装置。
【請求項8】
請求項1~7いずれか1項記載の連続式スチーム加工装置を用いた、蒸しあがり農産食品原料の製造方法であり、
農産食品原料にスチーム加工を行って、蒸しあがり農産食品原料の芯温が80℃以上100℃未満になるように蒸しあげる蒸しあげ工程を含む、蒸しあがり農産食品原料の製造方法。
【請求項9】
前記農産食品原料にスチーム加工を行って、蒸しあがり農産食品原料の芯温が80℃以上100℃未満になっているかを確認するための、試し蒸しあげ工程を含む、請求項8記載の蒸しあがり農産食品原料の製造方法。
【請求項10】
前記蒸しあげ工程が、前記試し蒸しあげ工程の後に行われる、請求項9記載の蒸しあがり農産食品原料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆類や芋類などの農産食品原料を低温スチーム加工、即ち低温で蒸しあげるのに用いられる連続式スチーム加工装置及び蒸しあがり農産食品原料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加工農産食品の原料である農産食品原料として、大豆がある。そして、無菌脱皮大豆及び無菌全脂大豆粉の製造方法として、特許文献1に記載された技術を出願人は提案している。特許文献1に記載された無菌全脂大豆は細菌数が300個/g以下の無菌脱皮大豆を用いることによって、水溶性蛋白質等の大豆保有の有効成分(栄養素組成)を損なわずに、大豆特有の青臭味を除去(脱臭)し、消化阻害酵素が失活されて消化吸収率が高く且つ充分に滅菌された無菌全脂大豆粉である。
【0003】
この無菌全脂大豆粉の製造にあたっては、選別工程、脱皮工程、脱臭・失活蒸煮工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、などが行われている。そして、前記脱臭・失活蒸煮工程では、70~125℃の温度に加熱した水蒸気などを脱皮大豆に当てて蒸煮工程が行われている。
【0004】
そして、最近では、100℃未満の飽和湿り空気中に食材を置き、前記食材を加熱調理する加熱調理装置が提案されている(特許文献2)。
【0005】
しかしながら、上記特許文献2の加熱調理装置では、専用のスチーム室(調理庫12)を設け、調理庫内に対象となる原材料を設置して低温(20℃以上100℃未満の飽和湿り空気)の蒸気を吹き込み、低温加熱を長時間行って低温スチームし、時間が経過した後に原材料を取り出して次のロットを室内に設置するバッチ生産方式で生産する装置である。
【0006】
低温スチーム、即ち低温での蒸しあげ、は温度帯が低いことや、密閉した空間を作る必要があることから、現状の低温スチーム技術ではこのタイプの装置が適用されている。しかしながら、特許文献2に記載されるような加熱調理装置を豆類や芋類といった農産食品原料の蒸煮工程に適用すると、食材の旨味を引き出すというメリットがあるものの、加工時間が長いことや段取り替えの手間がかかること、そのためコスト高になってしまうデメリットがあった。また、農産食品原料の載置の仕方によっては、蒸しあがりが均一ではなく十分な殺菌が行われない可能性もあり、そのため、低温スチーム後にレトルト加工で殺菌が必要となり、それが更にコストを高める要因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2004/060079
【特許文献2】WO2009/151019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みなされたもので、加工時間が比較的短くて済み、段取り替えの手間がかからず、十分な殺菌能力を有し、豆類や芋類などの農産食品原料を連続的に均一に低温スチームするのに用いられる連続式スチーム加工装置及び蒸しあがり農産食品原料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の連続式スチーム加工装置は、円筒部が水平方向に設置され、内部を密閉可能な円筒状スチーム圧力釜と、前記円筒状スチーム圧力釜内に設けられた原料搬送ベルトと、前記原料搬送ベルトへと農産食品原料が投入される原料投入口と、前記円筒状スチーム圧力釜内部に120℃~130℃の水蒸気を吹き込み、前記農産食品原料に対してスチーム加工を行って蒸しあげるための水蒸気吹き込み口と、前記スチーム加工を行って蒸しあげられた蒸しあがり農産食品原料の芯温が80℃以上100℃未満になるように、前記円筒状スチーム圧力釜に入れられる蒸気を設定温度にするための温度調整機構と、前記円筒状スチーム圧力釜内部の雰囲気を対流させるための雰囲気対流ファンと、前記水蒸気によって蒸しあげられた蒸しあがり農産食品原料を排出させる排出口と、を含む、連続式スチーム加工装置である。
【0010】
前記円筒状スチーム圧力釜内部が飽和湿り空気で満たされてなり、前記飽和湿り空気が前記農産食品原料に接触せしめられることでスチーム加工されてなるのが好適である。
【0011】
前記雰囲気対流ファンが、前記円筒状スチーム圧力釜の天井部に少なくとも2つ設置されてなるのが好適である。
【0012】
前記雰囲気対流ファンの翼の直径が、前記円筒状スチーム圧力釜の内径の半径以上であるのが好適である。
【0013】
前記温度調整機構がPID制御されてなるのが好適である。
【0014】
前記農産食品原料が、豆類及び芋類からなる群から選択される少なくとも一つであるのが好適である。
【0015】
前記円筒状スチーム圧力釜が長手方向に傾斜して設けられてなり、前記円筒状スチーム圧力釜14の一端部に設けられた前記原料投入口20の側の前記円筒状スチーム圧力釜14の底部よりも前記円筒状スチーム圧力釜14の他端部に設けられた前記蒸しあがり原料排出口28の側の前記円筒状スチーム圧力釜14の底部の方が、水平方向で1度から5度高くなるように傾斜せしめられなるのが好適である。
【0016】
本発明の蒸しあがり農産食品原料の製造方法は、前記連続式スチーム加工装置を用いた、蒸しあがり農産食品原料の製造方法であり、農産食品原料にスチーム加工を行って、蒸しあがり農産食品原料の芯温が80℃以上100℃未満になるように蒸しあげる蒸しあげ工程を含む、蒸しあがり農産食品原料の製造方法である。
【0017】
前記農産食品原料にスチーム加工を行って、蒸しあがり農産食品原料の芯温が80℃以上100℃未満になっているかを確認するための、試し蒸しあげ工程を含むのが好適である。
【0018】
前記蒸しあげ工程が、前記試し蒸しあげ工程の後に行われるのが好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、加工時間が比較的短くて済み、段取り替えの手間がかからず、十分な殺菌能力を有し、豆類や芋類などの農産食品原料を連続的に均一に低温スチームするのに用いられる連続式スチーム加工装置及び蒸しあがり農産食品原料の製造方法を提供することができるという著大な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の連続式スチーム加工装置を示す正面図である。
【
図2】本発明の連続式スチーム加工装置を示す側面図である。
【
図3】本発明の連続式スチーム加工装置を示す平面図である。
【
図4】本発明の連続式スチーム加工装置において農産食品原料の低温スチームが行われる様子を示す模式図である。
【
図5】本発明の連続式スチーム加工装置へ農産食品原料が投入され、スチーム加工で蒸しあげられた蒸しあがり農産食品原料が排出される様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明するが、図示例は例示的に示されたもので、本発明の技術的思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことは言うまでもない。
【0022】
図1~
図5において、符号10は本発明の連続式スチーム加工装置の一つの実施の形態を示す。
【0023】
連続式スチーム加工装置10は、円筒部12が水平方向に設置され、内部を密閉可能な円筒状スチーム圧力釜14と、前記円筒状スチーム圧力釜14内に設けられた原料搬送ベルト16と、前記原料搬送ベルト16へと農産食品原料18(
図4参照)が投入される原料投入口20と、前記円筒状スチーム圧力釜14内部に120℃~130℃の水蒸気を吹き込み、前記農産食品原料18に対してスチーム加工を行って蒸しあげるための水蒸気吹き込み口22と、前記円筒状スチーム圧力釜14から排出された蒸しあがり農産食品原料18の芯温が80℃以上100℃未満になるように、前記円筒状スチーム圧力釜14に入れられる蒸気を設定温度にするための温度調整機構24(
図5参照)と、前記円筒状スチーム圧力釜14内部の雰囲気を対流させるための雰囲気対流ファン26a,26bと、前記水蒸気によって蒸しあげられた蒸しあがり農産食品原料を排出させる蒸しあがり原料排出口28と、を含む、構成とされている。
【0024】
前記温度調整機構24は、
図5では、モーターバルブの例を示した。
図1に示すように、前記円筒状スチーム圧力釜14内部の温度を測る温度センサー58と前記原料搬送ベルト16上の農産食品原料18に触れるように前記円筒状スチーム圧力釜14内部に設置された釜内圧力計80及び釜内用温度計82、を有しており、設定温度に応じてモーターバルブ24を開け閉めして水蒸気の量を調節して温度調整が行われる。なお、前記円筒状スチーム圧力釜14内部の設定温度は70℃以上110℃未満に設定するのが好適である。
【0025】
図5において、ボイラー44からの水蒸気は、グローブバルブ68、電磁弁64、圧力調整弁62、温度調整機構24であるモーターバルブ、を通って、前記円筒状スチーム圧力釜14へと送られる。符号60は圧力計、78は安全弁である。また、圧力調整弁62の上流と下流には圧力計72,74が設けられている。符号66はボールバルブであり、その先にはスチームトラップ70が設けられており、ドレンが排出されるようになっている。
【0026】
本発明の連続式スチーム加工装置10によれば、低温スチーム加工により、農産食品原料を連続的に低温で蒸しあげることができる。農産食品原料としては、豆類及び芋類からなる群から選択される少なくとも一つであるのが好適である。特に、大豆が農産食品原料であるのが好適である。
【0027】
前記農産食品原料18としては、丸大豆、脱皮大豆又は粉砕大豆といった豆類のほか、芋類等のように原料搬送ベルト16で搬送できるものである。原料搬送ベルト16としては、原料搬送ベルト16の下面からも通気するように、メッシュベルトが好適である。前記原料搬送ベルト16上の農産食品原料に、下側からでも水蒸気が当たるからである。図示例では、メッシュベルトの例を示した。なお、呉のように、大豆を水に浸して柔らかくし、すりつぶした乳状の汁については、原料搬送ベルト16による搬送に適さないので、本発明の農産食品原料には含まれない。本発明の農産食品原料は一定の形状を有するものである。原料搬送ベルト16は、図示を省略する外部動力により、動力伝達手段76を介して駆動せしめられる(
図2及び
図4参照)。
【0028】
図1~3において、連続式スチーム加工装置10は、設置用脚30,32を介して架台34に設置されている。そして、設置用脚30,32の脚の長さを変えることで、前記円筒状スチーム圧力釜14を長手方向に傾斜して設けることができる。より具体的には、前記円筒状スチーム圧力釜14の一端部に設けられた前記原料投入口20の側の前記円筒状スチーム圧力釜14の底部よりも前記円筒状スチーム圧力釜14の他端部に設けられた前記蒸しあがり原料排出口28の側の前記円筒状スチーム圧力釜14の底部の方が、水平方向で1度から5度高くなるように傾斜せしめられる。これは、気体から液体に戻って水になった水蒸気が、蒸しあがり原料排出口28側に流れ出ないようにするためである。なお、前記原料投入口20側の円筒状スチーム圧力釜の底部よりも前記蒸しあがり原料排出口28側の円筒状スチーム圧力釜の底部を1度程度高くして傾斜せしめるのがより好適である。
【0029】
図1において、符号36a,36bは雰囲気対流ファンに設けられたメカニカルシールであり、雰囲気対流ファンは、駆動源(図示は省略)によって駆動せしめられる。
【0030】
また、前記円筒状スチーム圧力釜14には、側部に蓋体38a,38bが設けられており、
図3に示すように開閉可能とされている。なお、
図3には架台34に登るための階段40も示されている。
【0031】
前記雰囲気対流ファン26a,26bは、前記円筒状スチーム圧力釜14の天井部に2つ設置した例を示した。また、前記雰囲気対流ファン26a,26bによって、前記円筒状スチーム圧力釜14内部の雰囲気が前記円筒状スチーム圧力釜14の円周に沿って対流せしめられるが、
図4には、雰囲気対流ファン26a,26bによって、円筒状スチーム圧力釜14内部の雰囲気が対流せしめられる様子を黒い太字の矢印で示した。このようにして、前記円筒状スチーム圧力釜14内部は飽和湿り空気で満たされることとなる。そして、前記円筒状スチーム圧力釜14内部の雰囲気が対流することで前記円筒状スチーム圧力釜14の内部の温度が均一となり、温度勾配が少なくなり、低温スチーム加工が均一に行われる。
【0032】
図4に示すように、前記雰囲気対流ファン26a,26bの翼の直径D1は、図示した前記円筒状スチーム圧力釜14の内径D2の半分以上、すなわち、前記円筒状スチーム圧力釜14の内径の半径以上である例を示した。
なお、前記円筒状スチーム圧力釜14の天井部に設けられた前記雰囲気対流ファン26a,26bから、原料搬送ベルト16上の農産食品原料18との距離は、140~170mmが好ましい。
【0033】
農産食品原料18として例えば脱皮大豆を使用する場合の例を
図5に示す。
図5において、符号42は灯油タンクであり、符号44はボイラーである。また、符号46はヒーターである。
【0034】
図5に示すように、図示は省略する選別工程及び脱皮工程を経た脱皮大豆は、ホッパー48に投入され、定量供給フィーダ51を通って、ロータリバルブ50を介して原料投入口20から円筒状スチーム圧力釜14内部に送られる。円筒状スチーム圧力釜14内部の圧力は大気圧を少し超える程度である(例えば、0.101MPaを超えて0.300MPa以下)。
【0035】
前記円筒状スチーム圧力釜14には、120℃~130℃の水蒸気が水蒸気吹き込み口22から吹き込まれる。円筒状スチーム圧力釜14内部では、温度調整機構24のPID制御によって、釜内部の温度が100℃未満、例えば85℃~90℃に保たれる。前記円筒状スチーム圧力釜14内部の温度は70℃以上100℃未満が好適であるが、85℃以上100℃未満が特に好適である。
【0036】
前記円筒状スチーム圧力釜14内部をPID制御で温度管理できるように制御盤でコントロールし、前記円筒状スチーム圧力釜14内部で、前記雰囲気対流ファン26a,26bを回すことで、農産食品原料18の芯温を一気に設定温度まで高めることができる。
【0037】
本発明の蒸しあがり農産食品原料の製造方法は、農産食品原料にスチーム加工を行って、蒸しあがり農産食品原料の芯温が80℃以上100℃未満になるように蒸しあげる蒸しあげ工程を含む。従来の一般的な低温スチーム加工方法では、原料の芯温が徐々に上がっていくが、連続式スチーム加工装置10を用いた蒸しあがり農産食品原料の製造方法であれば、前記雰囲気対流ファン26a,26bで熱風を送ることで一気に設定温度になるため、低温スチームの課題である加工時間を短縮できる。
【0038】
また、前記円筒状スチーム圧力釜14内部の設定温度を100℃未満(例えば85℃や90℃)にしておくことで、吹き込まれた120℃~130℃の水蒸気と、投入された農産食品原料18の芯温(常温で5℃~20℃程度)との差により、円筒状スチーム圧力釜14内部は設定温度に近づきながら、農産食品原料18自体の芯温は高まることになる。農産食品原料18の芯温は、農産食品原料18を容器の中などに入れて芯温計を農産食品原料18に刺して中心の温度を測ることで計測できる。また、豆類の場合には、1回刺すことで中心の温度を測定することができるが、芋類などの比較的大きな農産食品原料の場合、中央まで達するように数か所に芯温計を刺して、計測された値の平均値で芯温を測定する。
【0039】
そして、本発明の蒸しあがり農産食品原料の製造方法は、前記農産食品原料18にスチーム加工を行って、蒸しあがり農産食品原料18の芯温が80℃以上100℃未満になっているかを確認するための、試し蒸しあげ工程を含むのが好適である。このように、まずは試し蒸しあげ工程を実施し、蒸しあがり農産食品原料18の芯温が80℃以上100℃未満になっているかを芯温計で確認した後、モーターバルブ24を開け閉めして水蒸気の量を調節して温度調整が行われる。このとき、設定した温度になるようにPID制御でモーターバルブ24を調節して温度調整が行われる。
【0040】
また、前記円筒状スチーム圧力釜14内部の温度を測る温度センサー58と前記原料搬送ベルト16上の農産食品原料18の表面温度を測定する接触温度計60も確認することで、より正確な温度管理を実現できる。
【0041】
このように、連続式スチーム加工装置10を用いた方法であれば、連続した工程の中に組み込むことが可能となり、独自の低温スチーム加工を実現することができる。そして、このように、雰囲気対流方式により低温でスチーム加工することで、雰囲気対流方式での低温での酵素失活を実現することができる。
【0042】
本発明の蒸しあがり農産食品原料の製造方法は、上述のように、連続式スチーム加工装置10を用いて、農産食品原料18にスチーム加工を行って、蒸しあがり農産食品原料18の芯温が80℃以上100℃未満になるように蒸しあげる蒸しあげ工程を含む、製造方法である。本発明の蒸しあがり農産食品原料の製造方法は、豆類や芋類などの農産食品原料をいわゆる低温スチーム加工(低温蒸しあげ)することによる製造方法である。
【0043】
連続式スチーム加工装置10を用いて、農産食品原料18に低温スチーム加工により蒸しあげられると、蒸しあがり原料排出口28から蒸しあがり農産食品原料が、ロータリバルブ52を介して排出される。排出先には、複数の振動コンベア54が設置されており、振動コンベア上を搬送される間に、冷却ファン56で蒸しあがり農産食品原料は冷却される。このように、農産食品原料18をホッパー48から投入し、円筒状スチーム圧力釜14に水蒸気を吹き込みながら失活し、水分と蒸しあがり農産食品原料とを分けて冷やしながら次工程である乾燥工程へと送る連続式加工となっている。
【0044】
このようにすれば、加工時間が比較的短くて済み、段取り替えの手間がかからず、十分な殺菌能力を有し、豆類や芋類などの農産食品原料を連続的に均一に低温スチームするのに用いられる連続式スチーム加工装置及び蒸しあがり農産食品原料の製造方法を提供することができる。
【実施例0045】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0046】
(実施例1)
農産食品原料として北米産大豆の脱皮大豆を用い、本発明の連続式スチーム加工装置10を用いて、円筒状スチーム圧力釜内部に120℃~130℃の水蒸気を吹き込み、前記脱皮大豆にスチーム加工処理を行った。前記スチーム加工処理は農産食品原料の芯温が80℃以上100℃未満になっていれば蒸しあがっているので、合格である。芯温および処理時間を表1に記載した。
【0047】
(比較例1及び比較例2)
農産食品原料として北米産大豆の脱皮大豆を用い、円筒状スチーム圧力釜内部の雰囲気を対流させる雰囲気対流ファンが無い以外は本発明の連続式スチーム加工装置10と同様の構成の連続式スチーム加工装置を用い、実施例1と同じ条件で前記脱皮大豆にスチーム加工処理を行った。比較例1及び比較例2では、処理時間を変更した。芯温および処理時間を表1に記載した。
【0048】
【0049】
実施例1では、農産食品原料として用いた北米産大豆の脱皮大豆の芯温を一気に設定温度の90℃まで高めて蒸しあげることができた。実施例1では処理時間は10分で済み、加工時間の短縮を図ることができた。
一方、比較例1では、処理時間10分では農産食品原料として用いた北米産大豆の脱皮大豆の芯温が50℃にしかならず、蒸しあげることができなかった。また、比較例2の処理時間30分では農産食品原料として用いた北米産大豆の脱皮大豆の芯温が70℃にしかならず、蒸しあげることができなかった。
10:連続式スチーム加工装置、12:円筒部、14:円筒状スチーム圧力釜、16:原料搬送ベルト、18:農産食品原料、20:原料投入口、22:水蒸気吹き込み口、24:温度調整機構、26a,26b:雰囲気対流ファン、28:蒸しあがり原料排出口、30,32:設置用脚、34:架台、36a,36b:メカニカルシール、38a,38b:蓋体、40:階段、42:灯油タンク、44:ボイラー、46:ヒーター、48:ホッパー、50,52:ロータリバルブ、51:定量供給フィーダ、54:振動コンベア、56:冷却ファン、58:温度センサー、60:圧力計、62:圧力調整弁、64:電磁弁、66:ボールバルブ、68:グローブバルブ、70:スチームトラップ、72,74:圧力計、76:動力伝達手段、78:安全弁、80:釜内圧力計、82:釜内用温度計、D1:雰囲気対流ファンの翼の直径、D2:円筒状スチーム圧力釜の内径。