(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020704
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】温度センサ、温度センサ組立体および検査装置
(51)【国際特許分類】
G01K 1/14 20210101AFI20240207BHJP
G01K 1/16 20060101ALI20240207BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
G01K1/14 E ZHV
G01K1/16
H01M10/48 301
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123082
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000145242
【氏名又は名称】株式会社芝浦電子
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】石井 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】濱田 守富
【テーマコード(参考)】
2F056
5H030
【Fターム(参考)】
2F056CE01
2F056DA02
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF22
(57)【要約】
【課題】測定対象物に接した際に往復移動することを前提とし、小径化ができるために狭いスペースに挿入することができる温度センサを提供すること。
【解決手段】本発明の温度センサ(10)は、感熱体(21)と、感熱体(21)に電気的に接続される一対の電線(23,23)と、を有するセンサ素子(20)と、センサ素子を保持するハウジング(40)と、を備える。ハウジング(40)は、軸線(C)の方向の一方の端部が閉じられ、他方の端部が開口される収容スペース(42C)に感熱体(21)を収容する可動筒(41)と、可動筒(41)が軸線(C)の方向に往復移動可能に嵌合される固定筒(45)と、軸線(C)の方向の一方側が可動筒(41)に係止され、軸線(C)の方向の他方側が固定筒(45)に係止される圧縮コイルばね(49)と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱体と、前記感熱体に電気的に接続される一対の電線と、を有するセンサ素子と、
前記センサ素子を保持するハウジングと、を備え、
前記ハウジングは、
軸線の方向の一方の端部が閉じられ、他方の端部が開口とされる収容スペースに前記感熱体を収容する可動筒と、
前記可動筒が前記軸線の方向に往復移動可能に嵌合される固定筒と、
前記軸線の方向の一方の端部の側が前記可動筒に係止され、前記軸線の方向の他方の端部の側が前記固定筒に係止される圧縮コイルばねと、
を備えることを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
前記可動筒は、
前記感熱体が収容される前記収容スペースが設けられる収容筒と、
前記収容筒と接続される支持筒と、を備える、
請求項1に記載の温度センサ。
【請求項3】
前記収容筒は、
測定対象物に接する検知面を有する集熱ヘッドと、
前記集熱ヘッドから前記軸線の方向に延びる、前記収容スペースを取り囲む嵌合スリーブと、を備え、
前記嵌合スリーブが前記支持筒の内側に嵌合されることで、前記収容筒が前記支持筒と接続され、
前記支持筒が前記固定筒の外側に摺動可能に嵌合される、
請求項2に記載の温度センサ。
【請求項4】
前記集熱ヘッドと前記支持筒とは、互いの外周面が面一をなしている、
請求項3に記載の温度センサ。
【請求項5】
前記可動筒は、前記圧縮コイルばねの一方の端部が係止される可動側係止片を備え、
前記固定筒は、前記圧縮コイルばねの他方の端部が係止される固定側係止片を備える、
請求項1に記載の温度センサ。
【請求項6】
前記圧縮コイルばねの一方の端部が、前記嵌合スリーブの前記固定筒に対向する端部に係止され、
前記圧縮コイルばねの他方の端部が、前記固定筒の前記嵌合スリーブの前記端部に対向する端部に係止される、
請求項3に記載の温度センサ。
【請求項7】
前記圧縮コイルばねは、前記支持筒に内接される、
請求項2または請求項3に記載の温度センサ。
【請求項8】
温度センサと、
前記温度センサを保持するとともに、前記温度センサを測定対象物に装着するためのホルダと、を備える温度センサ組立体であって、
前記温度センサは、
感熱体と、前記感熱体に電気的に接続される一対の電線と、を有するセンサ素子と、
前記センサ素子を保持するハウジングと、を備え、
前記ハウジングは、
軸線の方向の一方端が閉じられ収容スペースに前記感熱体を収容する可動筒と、
前記可動筒が前記軸線の方向に往復移動可能に嵌合される固定筒と、
前記軸線の方向の一方の端部の側が前記可動筒に係止され、前記軸線の方向の他側の側が前記固定筒に係止される圧縮コイルばねと、
を備えることを特徴とする温度センサ組立体。
【請求項9】
前記ホルダは、
前記固定筒が固定される保持スリーブと、
前記固定筒から引き出される一対の電線が挿通される電線孔と、を備え、
前記電線孔から引き出される一対の前記電線は、前記固定筒から引き出される向きと交差する向きに折り曲げられている、
請求項8に記載の温度センサ組立体。
【請求項10】
前記ホルダは、
前記固定筒が圧入により固定される保持スリーブと、
前記固定筒から引き出される一対の電線が挿通される電線孔と、を備える、
請求項8に記載の温度センサ組立体。
【請求項11】
蓄電器を収容する筐体と、
前記筐体に収容される前記蓄電器の温度を測定する請求項1または請求項2に記載の温度センサと、を備えることを特徴とする検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池やキャパシタなどの蓄電器を検査する装置の温度測定に好適な温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池、ニッケル水素電池をはじめとする繰り返し充電可能な二次電池などの蓄電器がモバイル機器、電気自動車、ハイブリッド自動車、家庭用蓄電システムなどの幅広い分野でその重要性が高くなっている。蓄電器は、例えば充放電検査装置を用いて正常に機能することを検査により確認してから出荷される。
【0003】
蓄電器の高精度な検査のためには、蓄電器の温度および検査環境の温度が要求される範囲に保たれている必要がある。そこで、特許文献1に記載されるように、これらの検査温度の管理をするために充放電検査装置には温度測定器(温度センサ)が設けられる。温度センサは、特許文献1に開示されるように蓄電器の底面と接触するように配列されることもあるし、蓄電器に電気的に接続されるプローブと接触するように配列されることもある。蓄電器の底面およびプローブは、いずれも温度測定の対象物である。
【0004】
特許文献1に開示される温度センサは、その先端部が上下にストロークする。これは、当該先端部に接触される蓄電器の底面が上下方向に位置ずれを起こしたとしても、ストロークにより位置ずれを吸収するためと解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種の温度センサは、温度の測定対象物に接触するために、狭いスペースに挿入されることがある。
そこで本発明は、測定対象物に接した際に往復移動することを前提とし、小径化ができるために狭いスペースに挿入することができる温度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の温度センサは、感熱体と、感熱体に電気的に接続される一対の電線と、を有するセンサ素子と、センサ素子を保持するハウジングと、を備える。
ハウジングは、軸線の方向の一方の端部が閉じられ、他方の端部が開口とされる収容スペースに感熱体を収容する可動筒と、可動筒が軸線の方向に往復移動可能に嵌合される固定筒と、軸線の方向の一方の端部の側が可動筒に係止され、軸線の方向の他方の端部の側が固定筒に係止される圧縮コイルばねと、を備える。
【0008】
本発明における可動筒は、好ましくは、感熱体が収容される収容スペースが設けられる収容筒と、収容筒と接続される支持筒と、を備える。
【0009】
本発明における収容筒は、好ましくは、測定対象物に接する検知面を有する集熱ヘッドと、集熱ヘッドから軸線の方向に延びる、収容スペースを取り囲む嵌合スリーブと、を備える。嵌合スリーブが支持筒の内側に嵌合されることで、収容筒が支持筒と接続され、支持筒が固定筒の外側に摺動可能に嵌合される。
【0010】
本発明における集熱ヘッドと支持筒とは、好ましくは、互いの外周面が面一をなしている。
【0011】
本発明において、好ましくは、可動筒は、圧縮コイルばねの一方の端部が係止される可動側係止片を備え、固定筒は、圧縮コイルばねの他方の端部が係止される固定側係止片を備える。
【0012】
本発明において、好ましくは、圧縮コイルばねの一方の端部が、嵌合スリーブの固定筒に対向する端部に係止され、圧縮コイルばねの他方の端部が、固定筒の嵌合スリーブの端部に対向する端部に係止される。
【0013】
本発明において、圧縮コイルばねは、好ましくは、支持筒に内接される。
【0014】
本発明は、温度センサと、温度センサを保持するとともに、温度センサを測定対象物に装着するためのホルダと、を備える温度センサ組立体を提供する。
温度センサ組立体を構成する温度センサは、感熱体と、感熱体に電気的に接続される一対の電線と、を有するセンサ素子と、センサ素子を保持するハウジングと、を備える。ハウジングは、軸線方向の一方端が閉じられ収容スペースに感熱体を収容する可動筒と、
可動筒が軸線の方向に往復移動可能に嵌合される固定筒と、軸線の方向の一方の端部の側が可動筒に係止され、軸線の方向の他側の側が固定筒に係止される圧縮コイルばねと、を備える。
【0015】
温度センサ組立体を構成するホルダは、好ましくは、固定筒が固定される保持スリーブと、固定筒から引き出される一対の電線が挿通される電線孔と、を備え、電線孔から引き出される一対の電線は、固定筒から引き出される向きと交差する向きに折り曲げられている。
【0016】
ホルダは、好ましくは、固定筒が圧入により固定される保持スリーブと、固定筒から引き出される一対の電線が挿通される電線孔と、を備える。
【0017】
本発明は、蓄電器を収容する筐体と、筐体に収容される蓄電器の温度を測定する以上で説明したいずれかの温度センサと、を備える検査装置を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の温度センサによれば、測定対象物に接した際に往復移動することを前提とし、小径化ができるために狭いスペースに挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る温度センサ組立体を示す斜視図である。
【
図2】
図1の温度センサ組立体を示す一部断面を含む側面図である。
【
図3】
図1の温度センサ組立体を示す平面図(PV)および部分側面図(SV)である。
【
図4】
図1の温度センサ組立体の一部を分解して示す断面図である。
【
図5】
図1の温度センサ組立体の収容筒およびセンサ素子を示す図である。
【
図6】
図1の温度センサ組立体における可動体の動作を示す図である。
【
図7】
図1の温度センサ組立体のホルダを示す図である。
【
図8】
図1の温度センサ組立体のホルダを示す図である。
【
図10】温度センサ組立体の他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[温度センサ組立体1の全体構成:
図1~
図3,
図12]
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る温度センサ組立体1について説明する。温度センサ組立体1は、一例として、
図12に示されるように、検査装置100において検査される例えばリチウムイオン電池200の温度を測定するのに好適に用いられる。温度センサ組立体1は、
図1に示されるように、検査装置100における測定対象物の温度を測定する温度センサ10と、温度センサ10を保持するとともに、検査装置100おいて必要な個所に装着するためのホルダ50と、を備える。
【0021】
検査装置100は、複数の蓄電器200、例えばリチウムイオン電池を収容する筐体101と、複数の蓄電器200のそれぞれの温度を測定する温度センサ10と、を備える。筐体101は、一例として、上蓋102と、上蓋102と対向する底床103と、上蓋102と底床103の間に設けられる枠体104と、を備える。
上蓋102は、枠体104に対して着脱自在である。蓄電器200を筐体101に収容する際には、上蓋102は枠体104から取り外され、充放電検査をする際には、上蓋102は枠体104に取り付けられる。
底床103には、充放電検査の際に、プローブ201の被検知面202に接する温度センサ10が貫通するセンサ挿通孔105が穿孔されている。
【0022】
充放電検査される蓄電器200には、例えば正極用のプローブ201と負極用のプローブ203とが電気的に接続される。プローブ201は、充放電検査の際に、後述する温度センサ10の集熱ヘッド42Aの検知面42B(
図4参照)と接する被検知面202を備える。
【0023】
温度センサ10は、簡易な構造でありながら、測定対象物との接触状態に応じて往復移動する機能を有する。以下、温度センサ10、ホルダ50の順に説明する。
【0024】
[温度センサ10:
図2~
図5]
温度センサ10は、
図2および
図3に示されるように、温度測定の主たる要素であるセンサ素子20と、センサ素子20を往復移動可能に保持するハウジング40と、を備えている。
以下、各図及び各説明において、この温度センサ10の軸線C方向を高さ方向Hとも称し、軸線C方向の一端側を先端F若しくは上または前、他端側を後端R若しくは下または後と称する。また以下の説明の便宜のため、この軸線方向Cと直交する方向を幅方向W、後述する継線27,29の延伸方向を長さ方向Lと称する。
【0025】
[センサ素子20:
図2,
図3,
図4,
図5]
センサ素子20は、
図5に示されるように、感熱体21と、感熱体21の対向する二面のそれぞれに形成される電極22,22と、電極22,22を介して感熱体21に電気的に接続される一対のリード線23,23と、感熱体21を封止する保護層26とを備えている。センサ素子20は、リード線23,23のそれぞれと電気的に接続される継線27,27を備える(
図2及び
図3参照)。
【0026】
感熱体21は、温度変化によって電気抵抗値が変化する特性を有する金属酸化物または金属が用いられる。感熱体21に一対のリード線23,23を介して一定の電流を流し、測定器で感熱体21の電極22,22の間の電圧を測定し、オームの法則(E=IR)から抵抗値を求め、温度を検出する。
金属酸化物としてはサーミスタ(Thermistor:Thermally Sensitive Resistor)が好適に用いられ、典型的には負の温度係数を有するNTCサーミスタ(Negative Temperature
Coefficient Thermistor)が用いられる。金属としては白金(例えば、Pt100;JIS-C1604)が好適に用いられる。
【0027】
電極22は、感熱体21とリード線23を電気的に接続するものであり、好ましくは金、白金などの貴金属で構成される。
リード線23は感熱体21に一定の電流を流す導電線であり、芯線24と、芯線24を覆う絶縁被覆25と、からなる。芯線24には電気伝導度の高い金属材料、典型的には銅が用いられる。リード線23の芯線24は単線からなる。
【0028】
保護層26としてガラスが用いられる場合には、芯線24にはジュメット線(Dumet Wire)が好適に用いられる。ジュメット線とは、鉄-ニッケル合金からなる内層と銅からなる外層とをクラッドした複合線をいう。内層を構成する鉄-ニッケル合金の線膨張係数がガラスに近似する。したがって、保護層26がガラスからなる場合であっても、ジュメット線を用いることにより芯線24の熱膨張による保護層26の破損が防止される。
リード線23は感熱体21に一定の電流を流す電線である点で後述する継線27と同じ役割を有するが、感熱体21に直接的に接続される電線をリード線23と称し、リード線23を介して感熱体21に間接的に接続される電線を継線27と区別する。
【0029】
絶縁被覆25は、芯線24の外周面を覆う電気的な絶縁性を有する、例えば架橋ポリエチレン、架橋ポリオレフィン、ポリイミドなどの樹脂材料から構成される。
【0030】
保護層26は、感熱体21を封止して気密状態に維持することによって、感熱体21に化学的な変化および物理的な変化が生ずるのを抑えるために設けられる。保護層26としてはガラスが用いられるのが好ましいが、温度センサ10を使用する環境によっては樹脂材料を用いることもできるし、保護層26を省くこともできる。
【0031】
図2および
図3に示されるように、継線27,27は、センサ素子20と図示しない電気回路等とを電気的に接続するための電線で、芯線28,28と、芯線28,28を覆う絶縁被覆29,29と、を備えている。
芯線28は、一本の導電線から構成できるし、複数本、例えば7本、12本の導電線を撚り合わせて作製された撚線から構成できる。撚線を構成するそれぞれの導電線にはリード線23の芯線24よりも線径が小さい導電線が用いられる。
【0032】
芯線28,28は、その端部側がリード線23,23の芯線24,24と一例として端子31,31を介して電気的に接続され、端部が図示しない後段の電気回路等に接続される。端子31,31による芯線24,24と芯線28,28の接続は、
図3に示されるように、幅方向Wの寸法を抑えるために、長手方向Lにその位置をずらして行われている。端子31による一方の芯線24と芯線28の接続部分は、絶縁チューブ32により被覆されており、他方の芯線24と芯線28の接続部分との電気的な絶縁を確保している。また、リード線23,23と継線27,27は、所定の範囲が絶縁チューブ33により一括して被覆されている。
【0033】
[ハウジング40:
図2,
図4,
図5]
次に、センサ素子20を往復移動が可能なように保持するハウジング40について、
図2、
図4および
図5を参照して説明する。
ハウジング40は、測定対象である被検知面202に接すると軸線Cの方向に移動する可動筒41と、可動筒41を支持する固定筒45と、可動筒41と固定筒45の間において伸縮される圧縮コイルばね49と、を備えている。
【0034】
[可動筒41:
図2,
図4]
可動筒41は、
図2および
図4に示されるように、リチウムイオン電池200の被検知面202に接触されるとともに、保護層26で覆われる感熱体21を収容して保持する収容筒42と、収容筒42を端部43Aの側で支持する支持筒43、を備えている。
【0035】
[収容筒42:
図4,
図5]
収容筒42は、
図4および
図5に示すように、軸線Cの方向に延びる円筒形状に形成され、リチウムイオン電池200の被検知面202に面で接触する集熱ヘッド42Aと、軸線Cの方向に延びる収容スペース42Cと、収容スペース42Cの周囲を取り囲む嵌合スリーブ42Dと、を備えている。収容筒42を構成する材料には、収容スペース42Cに感熱体21を収容して保持するとともに、被検知面202から伝達される熱を収容スペース42Cにある感熱体21に伝達できるかぎり特段の制約はなく、金属材料、樹脂材料などから任意の材料が選択される。熱応答性の観点からは、熱伝導性の優れるアルミニウム合金、銅合金から収容筒42が構成されるのが好ましい。金属材料からなる収容筒42は、円柱状の金属部材から削り出しで作製することができるし、収容筒42と同形状および寸法のキャビティに溶湯を鋳造して作製できる。
【0036】
集熱ヘッド42Aは、軸線C方向に所定の厚みを有し、そのおもて面42A1に平坦な検知面42Bを備える。検知面42Bは、平面視した形状が円形をなしている。収容スペース42Cは、平面視して円形であり円柱状の空隙からなり、検知面42Bと収容スペース42Cは軸線Cが一致する。収容スペース42Cは、集熱ヘッド42Aの内部にも入り込み、この部分の空隙は検知面42Bに向けて凸状の円錐形をなしている。感熱体21を覆う保護層26の先端部はこの円錐形をなした部分に配置されるので、感熱体21もまた径方向の中心が軸線Cと一致する。本実施形態における集熱ヘッド42Aは支持筒43の外径と同じ径方向の寸法を有している。
【0037】
収容スペース42Cは、軸線C方向の先端Fの側の端部が集熱ヘッド42Aにより閉じられているが、後端Rの側の端部は開口している。感熱体21はこの開口された端部から収容スペース42Cに挿入され、好ましくは、集熱ヘッド42Aのうら面42A2に接するように保持される。保護層26で覆われる感熱体21を収容スペース42Cの内部に保持するには、
図4に示されるように、収容スペース42Cにおける保護層26の周囲に例えばエポキシ樹脂からなる充填体35を埋設すればよい。
【0038】
嵌合スリーブ42Dは、次に説明する支持筒43から容易に抜け出すことがないように、支持筒42の内側で嵌合される。これにより、収容筒42と支持筒43とは一体化される。嵌合スリーブ42Dと支持筒43とは機械的な嵌め合いだけでなく、カシメを伴った接合をしてもよいし、または、接着剤を用いて接合してもよい。
嵌合スリーブ42Dは、集熱ヘッド42Aよりも径方向の寸法が微小量だけ小さく形成されており、集熱ヘッド42Aと嵌合スリーブ42Dの境界には平面視して環状の係止面42Eが設けられる。係止面42Eの径方向における寸法(幅)は、一例として支持筒43の肉厚(外径と内径の差)と同じに設定される。嵌合スリーブ42Dはこの係止面42Eが支持筒43の端部43Aに突き当たるまで支持筒43の内部に差し込まれる。
【0039】
[支持筒43:
図2,
図4]
支持筒43は、収容筒42とともに可動筒41を構成し、収容筒42とともにリチウムイオン電池200の被検知面202への接触の有無により、収容筒42とともに軸線Cの方向に往復移動する。
支持筒43は、軸線Cの先端Fの側の端部43Aから後端Rの側の端部43Bにわたって径の等しい円管から構成される。支持筒43は、好ましくは、金属材料または樹脂材料から構成される。好ましくは、ステンレス鋼のように耐食性に優れる金属材料が適用される。次に説明する固定筒45も同様である。
【0040】
支持筒43は、端部43Aの側の内側に嵌合スリーブ42Dが嵌合され、端部43Bの側の内側に円管からなる固定筒45が嵌合される。嵌合スリーブ42Dと支持筒43の嵌合は接合によるものであり、支持筒43と嵌合スリーブ42Dとは摺動することなく互いに固定される。これに対して、支持筒43と固定筒45との嵌合は、軸線Cの方向に相互に摺動が可能とされる。つまり、固定筒45に対して支持筒43が摺動しながら前進または後退する往復移動することができる。この往復移動は収容筒42と支持筒43とが可動筒41として軸線Cに沿って行われる。以下、可動筒41がホルダ50から離れる向きに移動することを前進といい、その逆に、可動筒41がホルダ50に近づく向きに移動することを後退という。
【0041】
センサ素子20を可動筒41の内部に装填するには、収容筒42の収容スペース42Cにセンサ素子20を感熱体21の側から挿入した状態で充填体35を収容スペース42Cに供給し、硬化させる。その後に、嵌合スリーブ42Dと支持筒43とを接合する。このとき、センサ素子20のリード線23,23などは支持筒43の内部に挿通される。可動筒41が収容筒42と支持筒43の二つの部材に分かれているために、可動筒41が一体として形成されているのに比べて、センサ素子20を装填する作業が容易である。
【0042】
[固定筒45:
図2,
図4]
固定筒45は、一例として、端部45Aから端部45Bにわたって径の等しい円管から構成される。固定筒45は、端部45Aの側において支持筒43の外側に摺動可能に嵌合し支持されることで、支持筒43および収容筒42を含む可動筒41の軸線Cに沿った往復移動を実現する。
固定筒45は、端部45Bの側がホルダ50に固定される。固定筒45は、ホルダ50に固定されるのでホルダ50に対する軸線Cの方向への変位が行えない状態で、可動筒41を往復移動可能に支持する。
【0043】
ここで、集熱ヘッド42Aの外径をOD(42A)、嵌合スリーブ42Dの外径をOD(42D)、支持筒43の内径をID(43)、支持筒43の外径をOD(43)および固定筒45の外径をOD(45)とすると、これらの寸法の関係は以下の通りとなる。つまり、可動筒41は収容筒42から支持筒43に亘って外周側面が面一をなしており、固定筒45は平面視して支持筒43の範囲内に収まる。ただし、上述したように、嵌合スリーブ42Dと支持筒43とは固定されているのに対して、固定筒45とは互いに摺動可能である。
OD(42A)=OD(43) , OD(42D)=ID(43)=OD(45)
【0044】
[圧縮コイルばね49:
図4,
図6]
ハウジング40は、可動筒41の往復移動を実現するために、可動筒41と固定筒45の間に圧縮荷重を受ける圧縮コイルばね49が設けられている。
圧縮コイルばね49は、
図4に示されるように、端部49A、端部49Bおよび外周49Cを備える。圧縮コイルばね49は、支持筒43の内部に収容され、かつ、支持筒43の内周面43Cに外周49Cが接するように設けられる。つまり、圧縮コイルばね49は、支持筒43に内接される。また、圧縮コイルばね49は、軸線C方向の先端F側の端部49Aが嵌合スリーブ42Dの端部42Fに係止され、軸線C方向の後端R側の端部49Bが固定筒45の端部45Aに係止される。
【0045】
図4において、集熱ヘッド42Aの検知面42Bから後端R側向きの荷重Pが加わると、集熱ヘッド42Aに連なる嵌合スリーブ42Dが圧縮コイルばね49を後端R側向きに押す。圧縮コイルばね49の端部49Bが固定筒45の端部45Aに係止されているので、圧縮コイルばね49は圧縮荷重を受けて軸線Cの方向に収縮し、可動筒41は圧縮コイルばね49の収縮量に応じた距離だけ後退する。
荷重Pが取り除かれると、圧縮コイルばね49に加わっていた圧縮荷重が解除されるので、圧縮コイルばね49は荷重Pが付加される前の状態に戻る。このとき、圧縮コイルばね49は軸線Cの方向に伸長するのに伴って、可動筒41は前進する。
【0046】
集熱ヘッド42Aに荷重Pが加わらない無負荷状態においては、圧縮コイルばね49には可動筒41の重量による荷重だけを受ける。以下、圧縮コイルばね49が可動筒41の重量による荷重だけを受けるときの集熱ヘッド42A(可動筒41)の位置を自由位置(
図6 FP)と称する。
リチウムイオン電池200を検査する際に、集熱ヘッド42Aの検知面42Bにリチウムイオン電池200の被検知面202が接触すると、集熱ヘッド42Aに後端R側向きの荷重Pが加わることがある。そうすると、圧縮コイルばね49が収縮し、可動筒41は後退する。荷重Pを受けて可動筒41が後退したときの位置を検査位置(
図6 IP)と称する。
リチウムイオン電池200を検査する際に、荷重Pを受けると、可動筒41は自由位置FPから検査位置IPまで後退し、荷重Pを受けなくなると、可動筒41は検査位置IPから自由位置FPまで前進する。リチウムイオン電池200の検査が繰り返されると、可動筒41は後退、前進、後退、前進、後退、前進…というように、往復移動を繰り返す。
【0047】
[ホルダ50:
図6,
図7,
図8]
次に、ホルダ50について、
図6、
図7および
図8を参照して説明する。
ホルダ50は、温度センサ10を保持するとともに、温度センサ10を検査装置100の必要な個所に装着するための部材である。
ホルダ50は、
図7に示されるように、概ね直方体状のベース51と、温度センサ10を支持するボス53と、検査装置100の必要な個所に温度センサ組立体1を装着するための締結孔57および圧入突起59と、を備える。ホルダ50は、ベース51、ボス53および圧入突起59が樹脂材料、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)により一体的に形成される。
【0048】
ボス53は、一例として、ベース51の幅方向Wに向けて突き出して設けられ、固定筒45を保持する保持スリーブ54と、保持スリーブ54の内側に設けられる挿入スペース55と、を備える。
保持スリーブ54は、軸線Cの周りを取り囲む保持壁54Aを備え、保持壁54Aの軸線Cの方向において、一方の側は開口54Bとされ、他方の側は床54Cにより閉じされている。ただし、床54Cには、リード線23,23が引き出される電線孔54Dが穿孔されている。
保持壁54Aで取り囲まれる挿入スペース55は、平面視した外周の形状が円形(真円)をなしている。つまり、保持壁54Aの内周面も円形をなしている。この内周面の径は、圧入により固定筒45を保持壁54Aに固定することができるように設定される。
【0049】
温度センサ10は、
図2および
図7に示すように、固定筒45の端部45B側が保持壁54Aに取り囲まれる挿入スペース55に挿入される。保持壁54Aの内周面に固定筒45の外周面が押し付けられながら固定筒45は保持壁54Aに圧入される。こうして、温度センサ10はホルダ50に装着される。
【0050】
締結孔57および圧入突起59は、締結および圧入によって、温度センサ組立体1を検査装置100に対する必要な位置に、温度センサ組立体1を位置決めするとともに、固定する。そうすることで、ホルダ50を含めた温度センサ組立体1が温度測定に必要な定位置に置かれる。
【0051】
図8は、以上説明した保持スリーブ54の変形例を示している。
この変形例は、保持壁54Aの内周面から突き出すリブ54Eを設ける。リブ54Eは、径に公差があり得る固定筒45の保持壁54Aの内部への圧入の圧力を確保するために設けられる。固定筒45が圧入されてもリブ54Eは当初の形態を維持しながら固定筒45を径方向に押圧することもあれば、固定筒45の端部45Bが突き当たることで削られることもある。
図8の例では、周方向に均等な間隔を隔てて三つのリブ54Eが設けられているが、圧入の圧力を確保することができるのであれば、他の数のリブ54Eを設けることができる。
【0052】
また、
図8に示される変形例は、より強固な固定筒45の抜け止めを実現するための接着剤の充填溝54Fを備える。固定筒45が保持壁54Aに圧入された後に、充填溝54Fに接着剤を充填、硬化することにより、固定筒45、ひいては温度センサ10がホルダ50から抜け出ることを抑制できる。
【0053】
[可動筒41の抜け出し防止:
図2,
図6]
温度センサ10のリード線23,23は、
図2および
図6に示されるように、電線孔54Dから保持壁54Aの外部に引き出されると、一例として向きを90°だけ変えるように折り曲げられる。折り曲げられる位置に連なるリード線23,23および継線27,27は、90°だけ変えられた向きに延びる。折り曲げられる位置の直近において、リード線23,23を覆う絶縁チューブ32の端部がボス53に突き当てられる。このリード線23の折り曲げおよび絶縁チューブ32の突き当ては、以下説明するように、可動筒41が支持筒43から抜け出るのを防ぐための構成である。
【0054】
支持筒43は固定筒45と摺動可能であるが、圧縮コイルばね49が設けられているので、可動筒41のハウジング40に近づく向き、つまり下向きへの一定量以上の移動が止められる。しかし、支持筒43を含む可動筒41の上向きへの移動を拘束する要素がハウジング40には設けられていないので、可動筒41は支持筒43から上向きに抜け出るおそれがある。そこで、温度センサ10においては、リード線23および絶縁チューブ32に可動筒41の抜け止め防止の機能を持たせる。つまり、固定筒45から引き出されるリード線23が90°だけ折り曲げられるので、リード線23に連なる感熱体21を固定する収容筒42が上向きに移動する抵抗になる。加えて、リード線23を覆う絶縁チューブ32の端部がボス53に突き当てられており、リード線23は絶縁チューブ32に固定されているので、収容筒42が上向きに移動するのが拘束される。
【0055】
[温度センサ10および温度センサ組立体1による効果]
温度センサ10において、圧縮コイルばね49は、互いに嵌合される可動筒41と固定筒45の間に圧縮コイルばね49が設けられる。よって、温度センサ10は、径方向の寸法が可動筒41の径方向の寸法の範囲内で収まり、小径化が可能である。したがって、温度センサ10は狭いスペースに無理なく挿入することができる。
【0056】
温度センサ10において、可動筒41が収容筒42と支持筒43の二つの部材に分かれているために、可動筒41が一体として形成されているのに比べて、センサ素子20を装填する作業が容易である。
【0057】
温度センサ10における収容筒42は、収容スペース42Cを取り囲む嵌合スリーブ42Dを備え、この嵌合スリーブ42Dが支持筒43の内側に嵌合されることで、収容筒42が支持筒43と接続される。このように、収容筒42は、支持筒43との嵌合のための部材を個別に設けることなく、簡易な構成で支持筒43との接続が実現される。そして、集熱ヘッド42Aと支持筒43とは、互いの外周面が面一をなしている。したがって、集熱ヘッド42Aと支持筒43との境界部に段差を有さないために、周囲の部材に引っかかることがない。
【0058】
温度センサ10において、圧縮コイルばね49の端部49Aが、嵌合スリーブ42Dの固定筒45に対向する端部42Fに係止され、圧縮コイルばね49の端部49Bが、固定筒45の嵌合スリーブ42Dの端部42Fに対向する端部45Bに係止される。つまり、温度センサ10によれば、圧縮コイルばね49を係止するための要素を別に設けなくてもよいので、構成が簡易であるとともに、コストを低減できる。
【0059】
温度センサ10において、圧縮コイルばね49は、支持筒43に内接される。したがって、支持筒43は、圧縮コイルばね49の径方向への変位を規制するガイドとしての機能を有し、圧縮コイルばね49の安定した挙動を保証できる。
【0060】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
以上では、一台の温度センサ10を備える温度センサ組立体1を説明したが、本発明に係る温度センサ組立体は、複数の温度センサ10を備えることができる。例えば
図9および
図10に示すように2台の温度センサ10,10を備える温度センサ組立体1Bおよび温度センサ組立体1Cとして、本発明を実施できる。もちろん、3台以上の温度センサ10を備える温度センサ組立体としてもよい。
【0061】
また、以上説明した温度センサ10の可動筒41は、個別に作製された収容筒42と支持筒43とを接合して一体化されたものであるが、本発明には他の選択肢がある。例えば、
図11の左側に示されるように、収容筒42に相当する部分と支持筒43に相当する部分を当初から一体として作製される可動筒41とすることもできる。
【0062】
また、以上説明した温度センサ10は、可動筒41と固定筒45に跨る圧縮コイルばね49の係止を支持筒43の端部43Bと固定筒45の端部45Aとで行うが、本発明には他の選択肢がある。例えば、
図11の右側に示されるように、支持筒43の端部43Aの側に軸線Cに向けて突き出す内フランジ43Fを設け、かつ、固定筒45の端部45Aの側に軸線Cに向けて突き出す内フランジ45Fを設ける。そして、圧縮コイルばね49の端部49Aの側を内フランジ43Fに係止させ、圧縮コイルばね49の端部49Bの側を内フランジ45Fに係止させる。
【0063】
内フランジ43Fおよび内フランジ45Fは、それぞれ移動側の係止片の一例および固定側の係止片の一例に過ぎず、圧縮コイルばね49の端部49Aおよび圧縮コイルばね49の端部49Bを係止できる限り、その形態は問われない。例えば、内フランジ43Fおよび内フランジ45Fは周方向に連なっているが、周方向に間欠的に係止片が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 温度センサ組立体
10 温度センサ
20 センサ素子
21 感熱体
22 電極
23 リード線
24 芯線
25 絶縁被覆
26 保護層
27 継線
28 芯線
29 絶縁被覆
31 端子
32,33 絶縁チューブ
40 ハウジング
41 可動筒
42 収容筒
42A 集熱ヘッド
42A1 おもて面
42A2 うら面
42B 検知面
42C 収容スペース
42D 嵌合スリーブ
42E 係止面
42F 下端
43 支持筒
43A 端部
43B 端部
43C 内周面
45 固定筒
45A 端部
45B 端部
49 圧縮コイルばね
49A 端部
49B 端部
49C 外周
50 ホルダ
51 ベース
53 ボス
54 保持スリーブ
54A 保持壁
54B 開口
54C 床
54D 電線孔
54E リブ
54F 充填溝
55 挿入スペース
57 締結孔
59 圧入突起
100 検査装置
101 筐体101
102 上蓋
103 底床
104 枠体
105 センサ挿通孔
200 リチウムイオン電池
201,203 プローブ
202 被検知面
C 軸線
FP 自由位置
IP 検査位置