(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020705
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】制御棒案内シンブル固定装置、固定方法、並びに燃料集合体用上部ノズル
(51)【国際特許分類】
G21C 19/20 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
G21C19/20 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123084
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 勇司
(57)【要約】
【課題】様々なクレーンを適用すること。
【解決手段】燃料集合体の上部ノズル54の開口部54Cから制御棒案内シンブル56の内部に挿入可能に設けられた本体部2と、本体部2を制御棒案内シンブル56の内面に係合させ装着させる作動部3と、上部ノズル54の基板54Aの上面54Aaから下側に窪むように開口部54Cの周りに凹部54Dが形成され、制御棒案内シンブル56への本体部2の装着時に、上部ノズル54の基板54Aの上面54Aaよりも下側に位置するように、本体部2および作動部3の上端部を凹部54Dの内部に配置させる位置規制機構(フランジ部2B、移動部3A,操作部3C、各係合部2Cおよび押圧部3B)と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料集合体の上部ノズルの開口部から制御棒案内シンブルの内部に挿入可能に設けられた本体部と、
前記本体部を前記制御棒案内シンブルの内面に係合させ装着させる作動部と、
前記上部ノズルの基板の上面から下側に窪むように前記開口部の周りに凹部が形成され、前記制御棒案内シンブルへの前記本体部の装着時に、前記上面よりも下側に位置するように、前記本体部および前記作動部の上端部を前記凹部の内部に配置させる位置規制機構と、
を備える、制御棒案内シンブル固定装置。
【請求項2】
前記位置規制機構は、
前記本体部の上端部を構成し、前記凹部に収容されて前記凹部の底面に当接され、かつ前記上面よりも下側に配置されるフランジ部と、
前記作動部の上端部を構成し、前記本体部の前記制御棒案内シンブルへの装着に際して上下方向に移動可能に設けられ、かつ前記本体部が前記制御棒案内シンブルに装着された状態で前記上面よりも下側に配置される移動部と、
前記移動部の上端に設けられ、前記移動部を操作する工具が係合され、かつ前記移動部から取り外すことが可能に構成された操作部と、
を備える、請求項1に記載の制御棒案内シンブル固定装置。
【請求項3】
前記位置規制機構は、
前記本体部の上端部を構成し、前記凹部に収容されて前記凹部の底面に当接され、かつ前記上面よりも下側に配置されるフランジ部と、
前記作動部の上端部を構成し、前記本体部の前記制御棒案内シンブルへの装着に際して上下方向に移動可能に設けられ、かつ前記本体部が前記制御棒案内シンブルに装着された状態で前記上面よりも下側に配置される移動部と、
前記制御棒案内シンブルへの前記本体部の装着時に前記移動部の上端を前記上面よりも下側に配置するように前記移動部の操作範囲を規定する規定手段と、
を備える、請求項1に記載の制御棒案内シンブル固定装置。
【請求項4】
前記作動部は、回転によって上下方向に移動可能に設けられ、
前記本体部は、前記作動部の移動に伴って前記制御棒案内シンブルの内面に係合し装着される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の制御棒案内シンブル固定装置。
【請求項5】
燃料集合体の上部ノズルの基板の上面から下側に窪むように制御棒案内シンブルに繋がる開口部の周りに凹部を形成する工程と、
制御棒案内シンブル固定装置の本体部を前記開口部から前記制御棒案内シンブルに挿入して当該本体部の上端を前記上面よりも下側に配置するように前記凹部の内部に収容する工程と、
前記制御棒案内シンブル固定装置の作動部の操作によって前記本体部を前記制御棒案内シンブルの内面に係合させ装着させ、かつ前記作動部の上端を前記上面よりも下側に配置するように前記凹部の内部に収容する工程と、
を含む、制御棒案内シンブル固定方法。
【請求項6】
基板の上面から下側に窪むように制御棒案内シンブルに繋がる開口部の周りに凹部が形成された新規の上部ノズルを、燃料集合体に設けられた既存の上部ノズルと交換する工程と、
制御棒案内シンブル固定装置の本体部を前記開口部から前記制御棒案内シンブルに挿入して当該本体部の上端を前記上面よりも下側に配置するように前記凹部の内部に収容する工程と、
前記制御棒案内シンブル固定装置の作動部の操作によって前記本体部を前記制御棒案内シンブルの内面に係合させ装着させ、かつ前記作動部の上端を前記上面よりも下側に配置するように前記凹部の内部に収容する工程と、
を含む、制御棒案内シンブル固定方法。
【請求項7】
基板の上面から下側に窪むように制御棒案内シンブルに繋がる開口部の周りに凹部が形成されている、燃料集合体用上部ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御棒案内シンブル固定装置、固定方法、並びに燃料集合体用上部ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、燃料集合体の上部ノズルと制御棒案内シンブルとの接続をするスリーブの応力腐食割れに対する補修スリーブについて示されている。補修スリーブは、上部ノズルの制御棒案内シンブルの開口部の中に嵌合するように形成されるシャフトと、シャフトに設けられてスリーブと制御棒案内シンブルとが嵌合するくぼみ部分の中に挿入される突出部を有するテンドンと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
補修スリーブが取り付けられた燃料集合体は、原子力発電所において安全に燃料交換機で吊り上げることが可能になる。しかし、補修スリーブが上部ノズルの基板の上面から上側に突出している燃料集合体は、その他のクレーンでは、当該突出部分と干渉して上部ノズルを係止できず吊り上げられないことがある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、様々なクレーンを適用することのできる制御棒案内シンブル固定装置、固定方法、並びに上部ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る制御棒案内シンブル固定装置は、燃料集合体の上部ノズルの開口部から制御棒案内シンブルの内部に挿入可能に設けられた本体部と、前記本体部を前記制御棒案内シンブルの内面に係合させ装着させる作動部と、前記上部ノズルの基板の上面から下側に窪むように前記開口部の周りに凹部が形成され、前記制御棒案内シンブルへの前記本体部の装着時に、前記上面よりも下側に位置するように、前記本体部および前記作動部の上端部を前記凹部の内部に配置させる位置規制機構と、を備える。
【0007】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る制御棒案内シンブル固定方法は、燃料集合体の上部ノズルの基板の上面から下側に窪むように制御棒案内シンブルに繋がる開口部の周りに凹部を形成する工程と、制御棒案内シンブル固定装置の本体部を前記開口部から前記制御棒案内シンブルに挿入して当該本体部の上端を前記上面よりも下側に配置するように前記凹部の内部に収容する工程と、前記制御棒案内シンブル固定装置の作動部の操作によって前記本体部を前記制御棒案内シンブルの内面に係合させ装着させ、かつ前記作動部の上端を前記上面よりも下側に配置するように前記凹部の内部に収容する工程と、を含む。
【0008】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る制御棒案内シンブル固定方法は、基板の上面から下側に窪むように制御棒案内シンブルに繋がる開口部の周りに凹部が形成された新規の上部ノズルを、燃料集合体に設けられた既存の上部ノズルと交換する工程と、制御棒案内シンブル固定装置の本体部を前記開口部から前記制御棒案内シンブルに挿入して当該本体部の上端を前記上面よりも下側に配置するように前記凹部の内部に収容する工程と、前記制御棒案内シンブル固定装置の作動部の操作によって前記本体部を前記制御棒案内シンブルの内面に係合させ装着させ、かつ前記作動部の上端を前記上面よりも下側に配置するように前記凹部の内部に収容する工程と、を含む。
【0009】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る燃料集合体用上部ノズルは、基板の上面から下側に窪むように制御棒案内シンブルに繋がる開口部の周りに凹部が形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本開示は、様々なクレーンを適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、燃料集合体の構成を表す概略側面図である。
【
図2】
図2は、燃料集合体の上部を表す概略拡大断面図である。
【
図3】
図3は、制御棒案内シンブル固定装置の構成例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、制御棒案内シンブル固定方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、制御棒案内シンブル固定方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、制御棒案内シンブル固定方法を示す工程図である。
【
図7】
図7は、制御棒案内シンブル固定方法を示す工程図である。
【
図8】
図8は、制御棒案内シンブル固定方法を示す工程図である。
【
図9】
図9は、制御棒案内シンブル固定方法を示す工程図である。
【
図10】
図10は、制御棒案内シンブル固定方法を示す工程図である。
【
図11】
図11は、制御棒案内シンブル固定装置の他の構成例を示す断面図である。
【
図12】
図12は、制御棒案内シンブル固定装置の他の構成例を示す断面図である。
【
図13】
図13は、制御棒案内シンブル固定装置の効果を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0013】
図1は、燃料集合体の構成を表す概略側面図である。
図2は、燃料集合体の上部を表す概略拡大断面図である。
【0014】
図1および
図2に示す燃料集合体51は、加圧水型炉(PWR:Pressurized Water Reactor)の燃料集合体である。燃料集合体51は、上下方向に長尺に形成される。燃料集合体51は、燃料棒52と、複数の燃料棒52を束ねる支持格子53と、複数の燃料棒52の長さ方向の上部に設けられた上部ノズル54と、複数の燃料棒52の長さ方向の下部に設けられた下部ノズル55と、上部ノズル54および下部ノズル55を連結する制御棒案内シンブル56と、を備えている。燃料棒52は、図には明示しないが、上下方向に長尺で円筒形状の燃料被覆管の内部に核燃料ペレットが燃料被覆管の長さ方向に複数配置される。支持格子53は、複数の燃料棒52を挿通する複数の格子を構成しており、複数の燃料棒52を長さ方向の複数箇所(
図1では10箇所)に所定間隔毎に設けられている。上部ノズル54は、平面視で矩形状に形成され、矩形状の基板54Aの4つの角部に上方に突出する上部突起54Bが設けられる。上部突起54Bは、
図2に示すように、その上端に内側に向く係止部54Baが形成される。下部ノズル55は、平面視で矩形状に形成され、矩形状の基板55Aの4つの角部に下方に突出する下部突起55Bが設けられる。制御棒案内シンブル56は、上側から制御棒が挿入されるもので、上下方向に長尺で円筒形状に形成される。制御棒案内シンブル56は、円筒形状の中心軸CLが上下方向に延びて設けられる。制御棒案内シンブル56は、その下端が下部ノズル55の基板55Aに接合される。制御棒案内シンブル56は、
図2に示すように、その上端が円筒形状のスリーブ57を介して上部ノズル54の基板54Aに連結される。上部ノズル54の基板54Aは、上下方向に貫通する貫通孔54Abが形成される。スリーブ57は、基板54Aの上面54Aaから上側に突出しないように貫通孔54Abに挿通されて上端が基板54Aに溶接によって接合される。また、スリーブ57は、下端部に制御棒案内シンブル56の上端部が挿入されて拡管加工によって接合される。これにより、上部ノズル54には、基板54Aの上面54Aaに、スリーブ57を介して制御棒案内シンブル56に繋がる開口部54Cが形成される。
【0015】
このように構成される燃料集合体51は、上端の上部ノズル54がクレーンに係止され、制御棒案内シンブル56によって上部ノズル54と下部ノズル55とが連結されていることで全体が吊り上げられて移動や設置が行われる。
【0016】
図3は、制御棒案内シンブル固定装置の構成例を示す断面図である。
【0017】
実施形態の制御棒案内シンブル固定装置(以下、固定装置という)1は、原子炉において使用済の燃料集合体51において、応力腐食割れによって制御棒案内シンブル56とスリーブ57との接合の健全性が低下した場合に、これら制御棒案内シンブル56とスリーブ57とを固定する補修を行うものである。実施形態では、固定装置1が設けられる上部ノズル54の基板54Aに、上面54Aaから下側に窪むように、開口部54Cの周りに凹部54Dが形成される。凹部54Dは、基板54Aを上下に貫通することなく、上面54Aaにのみ開口するように上面54Aaから下側に深さWに形成され、その底面54Daが上面54Aaに沿って(好ましくは平行に)平坦に形成される。凹部54Dを設けた場合、基板54Aの開口部54Cは、凹部54Dの底面54Daに形成されることとなる。
【0018】
実施形態の固定装置1は、本体部2と、作動部3と、を備える。
【0019】
本体部2は、燃料集合体51の上部ノズル54の開口部54Cから制御棒案内シンブル56の内部に挿入可能に設けられる。本体部2は、支持部2Aと、フランジ部2Bと、係合部2Cと、可動部2Dと、を含む。
【0020】
支持部2Aは、開口部54Cからスリーブ57または制御棒案内シンブル56の内部に挿入することが可能な外径に形成される。支持部2Aは、作動部3を上下方向に移動可能にし、かつ移動した位置で支持することができるように構成される。実施形態では、支持部2Aは、開口部54Cから挿入された形態で、中心軸CLに沿って作動部3が上下方向に貫通し得る貫通孔2Aaが形成され、この貫通孔2Aaに雌ネジが形成される。
【0021】
フランジ部2Bは、支持部2Aの上端に設けられ、支持部2Aが開口部54Cから挿入された形態で、中心軸CLから遠ざかる外側に広がって開口部54Cよりも大径に形成される。フランジ部2Bは、中心軸CLの周りに円環状(リング状)に形成されていることが好ましいが、円に限らない環状に形成されていてもよく、円環状(環状)の一部が切り欠かれて形成されていてもよい。フランジ部2Bは、凹部54Dの内径D1よりも小さい外径D2に形成され、かつ凹部54Dの深さWよりも小さい厚さTに形成される。従って、フランジ部2Bは、支持部2Aが開口部54Cから挿入され、凹部54Dの底面54Daに当接し、凹部54Dの内部に収容される。
【0022】
係合部2Cは、開口部54Cからスリーブ57を介して制御棒案内シンブル56の内部に挿入することが可能な外径に形成される。係合部2Cは、中心軸CLを基にした周方向で円環状が複数に分割して形成される。各係合部2Cは、制御棒案内シンブル56の内面に接触することが可能な外面2Caを有する。また、各係合部2Cは、下側に向かって中心軸CLから離れるように傾斜した内面2Cbを有する。
【0023】
可動部2Dは、各係合部2Cを支持部2Aに連結するもので、中心軸CLに対して各係合部2Cを接近・離隔することができるように、変形または変位が可能に形成される。
【0024】
作動部3は、本体部2の係合部2Cを制御棒案内シンブル56の内面に係合させ装着させるものである。作動部3は、移動部3Aと、押圧部3Bと、操作部3Cと、を含む。
【0025】
移動部3Aは、本体部2における支持部2Aの貫通孔2Aaに挿通されるように、中心軸CLに沿って上下方向に延びる棒状に形成される。移動部3Aは、貫通孔2Aaに挿通された状態で、上下方向に移動が可能に設けられる。実施形態では、移動部3Aは、貫通孔2Aaに形成された雌ネジに捩じ込まれる雄ネジが周面3Aaに形成される。従って、移動部3Aは、中心軸CLの周りに回転操作されることで、本体部2の支持部2Aに対して上下方向に移動する。
【0026】
押圧部3Bは、移動部3Aの下端に配置され、開口部54Cからスリーブ57を介して制御棒案内シンブル56の内部に挿入することが可能な外径に形成される。押圧部3Bは、移動部3Aと共に上下方向に移動する。押圧部3Bは、下側に向かって中心軸CLから離れるように傾斜した外面3Baを有する。この外面3Baは、本体部2における各係合部2Cの内面2Cbに対面する。また、外面3Baは、移動部3Aの移動に伴って上方に移動した場合、各係合部2Cの内面2Cbに当接する。さらに、外面3Baは、移動部3Aのさらなる移動に伴ってさらに上方に移動した場合、各係合部2Cの内面2Cbとの相互の傾斜によって各係合部2Cを中心軸CLから離れる外側に押圧する。外側に押圧された各係合部2Cは、外面2Caが制御棒案内シンブル56の内面に接触し、押圧されて係合する。これにより、本体部2が制御棒案内シンブル56に装着される。
【0027】
操作部3Cは、移動部3Aの上端に配置され、本体部2における支持部2Aの貫通孔2Aaから上側に突出され、上部ノズル54における基板54Aの上側からアクセスすることが可能である。従って、作動部3は、操作部3Cが基板54Aの上側から中心軸CLの周りに回転操作される。また、操作部3Cは、移動部3Aへの締め付けトルクが所定値を超えたときに、移動部3Aからねじ切れて外れるように構成されている。
【0028】
このように構成された固定装置1は、本体部2の支持部2Aに移動部3Aが挿通された形態で作動部3および本体部2が一体に設けられる。
【0029】
そして、固定装置1は、操作部3Cが回転操作されることで、移動部3Aが上下方向に移動し、移動部3Aが上方に移動した場合(
図9参照)、押圧部3Bによって本体部2の各係合部2Cが制御棒案内シンブル56に係合し、本体部2が制御棒案内シンブル56に装着される。各係合部2Cが制御棒案内シンブル56に係合すると、押圧部3Bが各係合部2Cに係合し、移動部3A作動部3には、操作部3Cを介して締め付けトルクが発生する。そして、移動部3Aへの締め付けトルクが所定値を超えたとき、操作部3Cは、移動部3Aからねじ切れて外れる(
図10参照)。
【0030】
固定装置1は、本体部2が制御棒案内シンブル56に装着されると、本体部2のフランジ部2Bが上部ノズル54における基板54Aに形成された凹部54Dの底面54Daに当接しているため、本体部2を介して制御棒案内シンブル56を上部ノズル54に固定する。
【0031】
図4は、制御棒案内シンブル固定方法を示すフローチャートである。
図5は、制御棒案内シンブル固定方法を示すフローチャートである。
図6は、制御棒案内シンブル固定方法を示す工程図である。
図7は、制御棒案内シンブル固定方法を示す工程図である。
図8は、制御棒案内シンブル固定方法を示す工程図である。
図9は、制御棒案内シンブル固定方法を示す工程図である。
図10は、制御棒案内シンブル固定方法を示す工程図である。
【0032】
上述した固定装置1を用いた制御棒案内シンブル固定方法は、
図4に示すように、ステップS1において、使用済の燃料集合体51の検査において、制御棒案内シンブル56とスリーブ57との接合の健全性が低下している場合、補強が必要と判断される(ステップS1:Yes)。補強が必要と判断された場合、固定装置1を用いて制御棒案内シンブル56を固定する必要がある。
【0033】
ここで、ステップS2において、多数の燃料棒52のうち漏洩(リーク)が確認された燃料棒52がある場合(ステップS2:Yes)、当該燃料棒52を取り出す。従って、リークした燃料棒52を取り出すため、ステップS3において、上部ノズル54を取り外し、リークした燃料棒52を取り外した後、新たな上部ノズル54に交換する。なお、リークした燃料棒52がない場合(ステップS2:No)、上部ノズル54の交換は行わない。
【0034】
ステップS4において、固定装置1を用いて制御棒案内シンブル56を固定する補強を行う。
【0035】
固定装置1による補強は、
図5に示すように、ステップS41において、上部ノズル54の基板54Aに上述した凹部54Dを形成する。即ち、
図6の状態から
図7の状態にする。
図6に示すように、スリーブ57は、基板54Aの貫通孔54Abに挿通され、上端が基板54Aに溶接される。また、スリーブ57は、基板54Aの貫通孔54Abの内壁が大径に形成された溝部54Abaに上端部が拡径されて嵌合される。そして、凹部54Dは、
図7に示すように、スリーブ57の上端の溶接部と、上端部の拡径部の一部を基板54Aの一部と共に削って形成される。削った後のスリーブ57は、上端が凹部54Dの底面54Daより上側に突出しない。これは、リークした燃料棒52がなく上部ノズル54の交換を行わない場合、またはリークした燃料棒52があり交換後の上部ノズル54に凹部54Dが形成されていない場合である。なお、リークした燃料棒52があり上部ノズル54の交換を行う場合は、予め貫通孔54Abを一部とし凹部54Dが形成された上部ノズル54を用意し、この凹部54Dおよび貫通孔54Abに合わせてスリーブ57の上端部を削る。
【0036】
次に、ステップS42において、固定装置1を制御棒案内シンブル56の内部に挿入する。即ち、
図8に示すように、固定装置1の本体部2を上部ノズル54の開口部54Cから制御棒案内シンブル56の内部に挿入し、本体部2の上端のフランジ部2Bを基板54Aの上面54Aaよりも下側に配置するように凹部54Dの内部に収容する。この固定装置1の挿入は、工具4によって行うことができる。工具4は、上側から吊り下げられる工具本体4Aと、固定装置1におけるフランジ部2Bを掴むことのできる第一把持部4Bと、操作部3Cを掴むと共に、操作部3Cを中心軸CLの周りに回転させることのできる第二把持部4Cと、を含む。そして、固定装置1を制御棒案内シンブル56の内部に挿入する際、工具4の第一把持部4Bでフランジ部2Bを掴んで固定装置1を制御棒案内シンブル56の内部に挿入する。
【0037】
次に、ステップS43において、固定装置1を制御棒案内シンブル56に装着する。即ち、
図9に示すように、工具4によって、第二把持部4Cで操作部3Cを掴み、作動部3が上方に移動するように、中心軸CLの周りに回転させながら、工具4自体も上昇させる。固定装置1は、作動部3が上方に移動することで、各係合部2Cの外面2Caが制御棒案内シンブル56の内面に係合し、制御棒案内シンブル56に装着される。そして、さらに作動部3が回転し上方に移動することで、
図10に示すように、移動部3Aへの締め付けトルクが所定値を超え、操作部3Cが移動部3Aからねじ切れて外れる。即ち、操作部3Cが移動部3Aから外れることで、固定装置1が制御棒案内シンブル56に装着されたことを確認できる。
【0038】
図10に示すように、固定装置1が制御棒案内シンブル56に装着され、操作部3Cが外れるとき、移動部3Aは、その上端が凹部54Dの深さWの範囲内に位置するように、規定手段として制御棒案内シンブル56の内径に対して各係合部2Cおよび押圧部3Bの大きさや形状が設定されている。即ち、制御棒案内シンブル56に装着された固定装置1は、本体部2の最も上端にあるフランジ部2B、および作動部3の最も上端にある移動部3Aが、凹部54Dの内部に収容される。
【0039】
図11および
図12は、制御棒案内シンブル固定装置の他の構成例を示す断面図である。
【0040】
ところで、
図11に示すように、他の構成例としての固定装置11は、操作部31Cが上述した固定装置1とは異なる。操作部31Cは、多角形の穴として形成される。操作部31Cの穴には、図には明示しないが、第二把持部として同多角形の棒部材が挿入し嵌合される。従って、固定装置11は、工具によって、第二把持部を操作部31Cに嵌合させ、作動部3が上方に移動するように、中心軸CLの周りに回転させながら、工具自体も上昇させることで、各係合部2Cの外面2Caが制御棒案内シンブル56の内面に係合し、制御棒案内シンブル56に装着される。また、固定装置11は、制御棒案内シンブル56に装着されるとき、移動部3Aは、その上端が凹部54Dの深さWの範囲内に位置するように、規定手段として制御棒案内シンブル56の内径に対して各係合部2Cおよび押圧部3Bの大きさや形状が設定されている。即ち、制御棒案内シンブル56に装着された固定装置11は、本体部2の最も上端にあるフランジ部2B、および作動部3の最も上端にある移動部3Aが、凹部54Dの内部に収容される。
【0041】
また、
図12に示すように、他の構成例としての固定装置21は、支持部21Aおよび移動部31Aが上述した固定装置1とは異なる。支持部21Aにおける貫通孔21Aaの内面と、移動部31Aの外面31Aaとが、上下方向に相対移動できるように相互に係合される。従って、固定装置21は、工具4によって、第二把持部4Cを操作部3Cに嵌合させ、作動部3が上方に移動するように、工具自体を上昇させることで、各係合部2Cの外面2Caが制御棒案内シンブル56の内面に係合し、制御棒案内シンブル56に装着される。また、固定装置21は、制御棒案内シンブル56に装着され、上方への移動にトルクが掛かることで、操作部3Cが移動部3Aから外れる。即ち、操作部3Cが移動部3Aから外れることで、固定装置21が制御棒案内シンブル56に装着されたことを確認できる。また、固定装置21は、制御棒案内シンブル56に装着されるとき、移動部3Aは、その上端が凹部54Dの深さWの範囲内に位置するように、規定手段として制御棒案内シンブル56の内径に対して各係合部2Cおよび押圧部3Bの大きさや形状が設定されている。即ち、制御棒案内シンブル56に装着された固定装置21は、本体部2の最も上端にあるフランジ部2B、および作動部3の最も上端にある移動部3Aが、凹部54Dの内部に収容される。
【0042】
このように、実施形態の固定装置1,11,21は、燃料集合体51の上部ノズル54の開口部54Cから制御棒案内シンブル56の内部に挿入可能に設けられた本体部2と、本体部2を制御棒案内シンブル56の内面に係合させ装着させる作動部3と、上部ノズル54の基板54Aの上面54Aaから下側に窪むように開口部54Cの周りに凹部54Dが形成され、制御棒案内シンブル56への本体部2の装着時に、上部ノズル54の基板54Aの上面54Aaよりも下側に位置するように、本体部2および作動部3の上端部を凹部54Dの内部に配置させる位置規制機構(フランジ部2B、移動部3A,31A、操作部3C,31C、各係合部2Cおよび押圧部3B)と、を備える。
【0043】
この実施形態の固定装置1,11,21によれば、制御棒案内シンブル56へ本体部2を装着した時、位置規制機構によって本体部2および作動部3の上端部を凹部54Dの内部に配置され、上部ノズル54の基板54Aの上面54Aaよりも下側に位置する。このため、制御棒案内シンブル56を固定するにあたり、上部ノズル54の基板54Aの上面54Aaに突出する部分が存在しない。
図13に示すように、クレーン101には、その底面101aが基板54Aの上面54Aaに当接しつつ、爪部101bが上部ノズル54における上部突起54Bの係止部54Baに係る構成のものがある。この固定装置1,11,21を適用すれば、このようなクレーン101であっても、燃料集合体51を吊り上げることができる。従って、実施形態の固定装置1,11,21により、様々なクレーンを適用できる。
【0044】
また、実施形態の固定装置1,21では、位置規制機構は、本体部2の上端部を構成し、凹部54Dに収容されて凹部54Dの底面54Daに当接され、かつ上面54Aaよりも下側に配置されるフランジ部2Bと、作動部3の上端部を構成し、本体部2の制御棒案内シンブル56への装着に際して上下方向に移動可能に設けられ、かつ本体部2が制御棒案内シンブル56に装着された状態で上面よ54Aaよりも下側に配置される移動部3A,31Aと、移動部3Aの上端部に設けられ、移動部3Aを操作する工具4が係合され、かつ移動部3Aから取り外すことが可能に構成された操作部3Cと、を備える。
【0045】
この実施形態の固定装置1,21によれば、上面54Aaよりも上側に突出しないように、凹部54Dの内部に装置構成を配置できる。しかも、操作部3Cが移動部3Aから外れた場合に、本体部2が制御棒案内シンブル56に装着されたことを確認できる。また、操作部3Cが移動部3Aから外れることで、移動部3Aの移動ストロークを長く設定しても上面54Aaから上側への突出を防げるため、凹部54Dの深さWを抑えることができ、基板54Aの強度を確保できる。
【0046】
また、実施形態の固定装置1,11,21では、位置規制機構は、本体部2の上端部を構成し、凹部54Dに収容されて凹部54Dの底面54Daに当接され、かつ上面54Aaよりも下側に配置されるフランジ部2Bと、作動部3の上端部を構成し、本体部2の制御棒案内シンブル56への装着に際して上下方向に移動可能に設けられ、かつ本体部2が制御棒案内シンブル56に装着された状態で上面よ54Aaよりも下側に配置される移動部3A,31Aと、制御棒案内シンブル56への本体部2の装着時に移動部3A,31Aの上端を上面54Aaよりも下側に配置するように移動部3A,31Aの操作範囲を規定する規定手段(各係合部2Cおよび押圧部3B)と、を備える。
【0047】
この実施形態の固定装置1,11,21によれば、上面54Aaよりも上側に突出しないように、凹部54Dの内部に装置構成を配置できる。
【0048】
また、実施形態の固定装置1,11では、作動部3は、回転によって上下方向に移動可能に設けられ、本体部2は、作動部3の移動に伴って制御棒案内シンブル56の内面に係合し装着される。
【0049】
この実施形態の固定装置1,11によれば、作動部3の回転によって本体部2を制御棒案内シンブル56に係合し装着させることで、回転のトルク変動や回転数によって本体部2が制御棒案内シンブル56に装着されたことを確認できる。
【0050】
実施形態の固定方法は、燃料集合体51の上部ノズル54の基板54Aの上面54Aaから下側に窪むように制御棒案内シンブル56に繋がる開口部54Cの周りに凹部54Dを形成する工程と、固定装置1,11,21の本体部2を開口部54Cから制御棒案内シンブル56に挿入して当該本体部2の上端を上面54Aaよりも下側に配置するように凹部54Dの内部に収容する工程と、固定装置1,11,21の作動部3の操作によって本体部2を制御棒案内シンブル56の内面に係合させ装着させ、かつ作動部3の上端を上面54Aaよりも下側に配置するように凹部54Dの内部に収容する工程と、を含む。
【0051】
この実施形態の固定方法によれば、制御棒案内シンブル56へ本体部2を装着した時、本体部2および作動部3の上端部を、上部ノズル54の基板54Aの上面54Aaよりも下側に位置するように凹部54Dの内部に配置する。このため、制御棒案内シンブル56を固定するにあたり、上部ノズル54の基板54Aの上面54Aaに突出する部分が存在しない。
図13に示すように、クレーン101には、その底面101aが基板54Aの上面54Aaに当接しつつ、爪部101bが上部ノズル54における上部突起54Bの係止部54Baに係る構成のものがある。この固定方法によれば、このようなクレーン101であっても、燃料集合体51を吊り上げることができる。従って、実施形態の固定方法により、様々なクレーンを適用できる。
【0052】
実施形態の固定方法は、基板54Aの上面54Aaから下側に窪むように制御棒案内シンブル56に繋がる開口部54Cの周りに凹部54Dが形成された新規の上部ノズル54を、燃料集合体51に設けられた既存の上部ノズル54と交換する工程と、固定装置1,11,21の本体部2を開口部54Cから制御棒案内シンブル56に挿入して当該本体部2の上端を上面54Aaよりも下側に配置するように凹部54Dの内部に収容する工程と、固定装置1,11,21の作動部3の操作によって本体部2を制御棒案内シンブル56の内面に係合させ装着させ、かつ作動部3の上端を上面54Aaよりも下側に配置するように凹部54Dの内部に収容する工程と、を含む。
【0053】
この実施形態の固定方法によれば、制御棒案内シンブル56へ本体部2を装着した時、本体部2および作動部3の上端部を、上部ノズル54の基板54Aの上面54Aaよりも下側に位置するように凹部54Dの内部に配置する。このため、制御棒案内シンブル56を固定するにあたり、上部ノズル54の基板54Aの上面54Aaに突出する部分が存在しない。
図13に示すように、クレーン101には、その底面101aが基板54Aの上面54Aaに当接しつつ、爪部101bが上部ノズル54における上部突起54Bの係止部54Baに係る構成のものがある。この固定方法によれば、このようなクレーン101であっても、燃料集合体51を吊り上げることができる。従って、実施形態の固定方法により、様々なクレーンを適用できる。
【0054】
実施形態の燃料集合体用上部ノズル54は、基板54Aの上面54Aaから下側に窪むように制御棒案内シンブル56に繋がる開口部54Cの周りに凹部54Dが形成されている。
【0055】
この実施形態の上部ノズル54によれば、制御棒案内シンブル56を固定する固定装置1,11,21の上端部を、上部ノズル54の基板54Aの上面54Aaよりも下側に位置するように凹部54Dの内部に配置できる。このため、制御棒案内シンブル56を固定するにあたり、上部ノズル54の基板54Aの上面54Aaに突出する部分が存在しない。
図13に示すように、クレーン101には、その底面101aが基板54Aの上面54Aaに当接しつつ、爪部101bが上部ノズル54における上部突起54Bの係止部54Baに係る構成のものがある。この上部ノズル54によれば、このようなクレーン101であっても、燃料集合体51を吊り上げることができる。従って、実施形態の上部ノズル54により、様々なクレーンを適用できる。
【符号の説明】
【0056】
1,11,21 固定装置
2 本体部
2B フランジ部
3 作動部
3A,31A 移動部
3C,31C 操作部
4 工具
51 燃料集合体
54 上部ノズル
54A 基板
54Aa 上面
54C 開口部
54D 凹部
54Da 底面
56 制御棒案内シンブル