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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002071
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】果汁およびニンジン汁含有飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/02 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
A23L2/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101044
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】廣岡 健太朗
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC02
4B117LC03
4B117LG05
4B117LG07
4B117LG08
(57)【要約】
【課題】 果汁とニンジン汁とを含有する飲料において、飲みやすさを維持または改善しつつニンジン感を改善できる新規な技術を提供する。
【解決手段】 果汁およびニンジン汁を含有する飲料であって、果汁の含有率とニンジン汁の含有率との合計が2%以上50%未満であり、果汁の含有率に対するニンジン汁の含有率の比が0.7~1.5であり、香料を非含有である、前記飲料。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
果汁およびニンジン汁を含有する飲料であって、
果汁の含有率とニンジン汁の含有率との合計が2%以上50%未満であり、
果汁の含有率に対するニンジン汁の含有率の比が0.7~1.5であり、
香料を非含有である、前記飲料。
【請求項2】
果汁およびニンジン汁を含有し、香料を非含有である飲料において、果汁の含有率とニンジン汁の含有率との合計が2%以上50%未満であり、果汁の含有率に対するニンジン汁の含有率の比が0.7~1.5であるように果汁の含有率およびニンジン汁の含有率を調整することを含む、前記飲料の飲みやすさを維持または改善しつつニンジン感を改善する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は果汁およびニンジン汁を含有する飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
飲用者の多様なニーズに応えるべく様々な飲料が開発されており、その一つとして果汁およびニンジン汁を含有する飲料が知られている。果汁およびニンジン汁を含有する飲料としては例えば特許文献1や特許文献2に記載の飲料が知られている。
果汁およびニンジン汁を含有する飲料は香味や健康に対する飲用者の好みに答えることが可能である一方、ニンジン汁に由来するえぐみや臭みにより飲みにくいとの印象を飲用者に与える場合がある。そのため、果汁およびニンジン汁を含有する飲料の飲みやすさを改善する方法が提案されている(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-213593号公報
【特許文献2】特開2019-149964号公報
【特許文献3】特開2009-171881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、果汁とニンジン汁とを含有する飲料において、飲みやすさを維持または改善しつつニンジン感を改善できる新規な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
商品設計の自由度の観点などから、飲料を飲んだときに得られる感覚を改善する方法について複数の選択肢があることが好ましい。
鋭意研究の結果、本発明者は、果汁およびニンジン汁を含有する飲料において、所定の関係を満足するように果汁の含有率およびニンジン汁の含有率を調整しさらに香料を非含有とすることで、飲みやすさを維持または改善しつつニンジン感も改善できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
なお、本明細書において、飲みやすさとは、飲料を飲み込むことに対する抵抗についての感覚をいう。飲みやすさはニンジン汁に由来するえぐみや臭みなどが感じられると低下する。また、飲みやすさの改善とは、飲料を飲み込むことについての抵抗感が少なくなることをいう。飲みやすさの改善の程度によっては、例えばすっきりしていてゴクゴク飲める飲料である、などと表現できる。
また、ニンジン感とは、飲料を飲んだときにニンジンが原材料として含まれることをイメージできる感覚をいい、味や香り等として得られる。ニンジン感の改善とは、感じられるニンジン感の好ましさ(ニンジン感の良さ)が高まることをいう。
【0007】
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]
果汁およびニンジン汁を含有する飲料であって、
果汁の含有率とニンジン汁の含有率との合計が2%以上50%未満であり、
果汁の含有率に対するニンジン汁の含有率の比が0.7~1.5であり、
香料を非含有である、前記飲料。
[2]
果汁およびニンジン汁を含有し、香料を非含有である飲料において、果汁の含有率とニンジン汁の含有率との合計が2%以上50%未満であり、果汁の含有率に対するニンジン汁の含有率が0.7~1.5であるように果汁の含有率およびニンジン汁の含有率を調整することを含む、前記飲料の飲みやすさを維持または改善しつつニンジン感を改善する方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、果汁とニンジン汁とを含有する飲料において、飲みやすさを維持または改善しつつニンジン感を改善できる新規な技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の1つの実施形態について、詳細に説明する。
本実施形態は果汁およびニンジン汁を含有する飲料に関する。該飲料は、果汁の含有率とニンジン汁の含有率との合計が2%以上50%未満であり、果汁の含有率に対するニンジン汁の含有率の比が0.7~1.5であり、香料を非含有である。
【0010】
本明細書において、果汁とは、果実を破砕して搾汁又は裏ごし等をし、必要に応じて皮、種子等を除去した液体成分をいう。また、果汁には、当該液体成分を濃縮したものや、これらの希釈還元物も含まれる概念である。また、果汁は、精密濾過法、酵素処理法、限外濾過法等の手法により清澄処理した透明汁であっても、不溶性固形分を含む混濁汁であってもよい。
【0011】
果汁が由来する果物については、例えば、柑橘類、バラ科植物の果物、ブドウ、パイナップル、グァバ、バナナ、マンゴー、アセロラ、ライチ、パパイヤ、パッションフルーツ、ブルーベリー、キウイフルーツ、メロン、キウイフルーツ、カラント、グーズベリーなどのスグリ類、クランベリー等のツツジ科植物の果物などが挙げられる。柑橘類としてはオレンジ、うんしゅうみかん、グレープフルーツ、レモン、ライム、柚子、いよかん、なつみかん、はっさく、ポンカン、シークワーサー、かぼす等が例示できる。また、バラ科植物の果物としてはアンズ、イチゴ、ウメ、サクランボ、スモモ、西洋ナシ、日本梨、ビワ、モモ、リンゴ、プルーン、ラズベリー、ブラックベリーなどが挙げられる。例えばこれらのうち1種または2種以上の果物の果汁が選択されて本実施形態の飲料に含有されるようにしてもよい。
【0012】
本明細書において、ニンジン汁とは、ニンジンを破砕して搾汁又は裏ごし等をし、必要に応じて皮、種子等を除去した液体成分をいう。また、ニンジン汁も、当該液体成分を濃縮したものや、これらの希釈還元物も含まれる概念である。ここで、ニンジン濃縮汁とは、例えば、ニンジンを破砕して搾汁し、若しくは裏ごしし、皮等を除去したもの又はこれを濃縮したものをいい、該ニンジン濃縮汁も本明細書におけるニンジン汁の定義に含まれる。また、ニンジン汁も、精密濾過法、酵素処理法、限外濾過法等の手法により清澄処理した透明汁であっても、不溶性固形分を含む混濁汁であってもよい。なお、ニンジン汁については特に限定されないが通常食されている地下部を原材料とすることが挙げられる。
ここで、本発明の構成を適用することでニンジン感をより改善できるため、ニンジン汁としてニンジン濃縮汁を含有することが好ましい。搾汁や加熱によりニンジン本来の風味が損なわれるので、香料を入れるのが一般的だが、ニンジン濃縮汁を原料として用いる場合にも本発明の構成を適用することで意外にもニンジン感の改善が認められた。
【0013】
本実施形態の飲料においては、果汁の含有率とニンジン汁の含有率との合計が2%以上50%未満である。また、ニンジン感の改善の観点から、2%以上30%以下が好ましい。
【0014】
果汁の含有率とは、果実を搾汁して得られ、濃縮等の処理を行っていない搾汁(ストレート果汁)のBrix値または酸度を100%としたときの、相対濃度である。また、本明細書においてBrix値は、JAS規格(果実飲料の日本農林規格)に基づき、試料の温度(液温度)20℃における糖用屈折計の示度をいう。Brix値の測定は、公知の方法、装置を用いて行うことができる。また、酸度は、100g中に含まれる有機酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100g)で表すことができる。酸度もまた、JAS規格の酸度測定法で定められた方法、具体的には0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定できる。
果汁含有率をBrix値または酸度のいずれに基づいて算出するかはJAS規格に基づき果物の種類ごとに定められている。例えば、オレンジはBrix値に基づいて算出し、また、レモンは酸度に基づいて算出する。果汁含有率をJAS規格のBrix値に基づいて換算する場合、果汁に加えられた糖類、はちみつ等のBrix値は除いて算出される。
例えば、オレンジについてはBrix値(Bx11°)に基づいて算出することができ、Brix値がBx55°の冷凍濃縮オレンジジュース(Frozen Concentrate Orange Juice, FCOJ)を飲料中4.0重量%配合した場合、20%の果汁率の飲料を得ることができる。
【0015】
ニンジン汁の含有率とは、ニンジンを搾汁して得られ、濃縮等の処理を行っていない搾汁(ストレートニンジン汁)のBrix値を100%としたときの相対濃度である。ニンジン汁に係るBrix値もJAS規格に示される上述の糖用屈折計示度の基準に基づき換算できるが、ニンジン汁はJAS規格では基準糖度が規定されておらず、搾汁の平均的な糖用屈折計示度が糖用屈折計示度の基準とされている。なお、本明細書の実施例で用いたニンジン汁の搾汁時の糖用屈折計示度はBx6°である。
【0016】
また、本実施形態の飲料においては、果汁の含有率に対するニンジン汁の含有率の比が0.7~1.5であり、飲みやすさについてより改善することができるため0.8~1.4が好ましく、より好ましくは0.8~1.3である。
【0017】
本実施形態の飲料は、果汁、ニンジン汁に加え、本発明の効果を得ることができる範囲で必要に応じて他の成分を適宜、飲料中に含ませることができる。
具体的には、糖類や高甘味度甘味料などの甘味料、ミネラル、酸味料、ビタミン、着色料、酸化防止剤、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定化剤、増粘剤などの、飲料に通常配合される成分を含有することができる。
また、本実施形態の飲料において糖度や酸度、pHは特に限定されず、当業者は適宜設定できる。
【0018】
一方、本実施形態の飲料においては香料を含有しない。本明細書において香料とは添加される対象(本発明においては飲料)に対し、香りや味を付与することができる物質を意味する。
【0019】
本実施形態の飲料は容器に充填されている容器詰めの飲料とすることができる。容器としては、ガラス製容器、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)製の容器、紙製容器、缶容器などが挙げられる。
【0020】
本実施形態の飲料は、例えば、果汁およびニンジン汁を配合することにより製造することができる。
具体的には、例えば、果汁、ニンジン汁、液体原料、および必要によって加えられるその他の成分を、果汁の含有率とニンジン汁の含有率との合計が2%以上50%未満、果汁の含有率に対するニンジン汁の含有率の比が0.7~1.5となるように混合することにより飲料を得る。液体原料は水のほか、上述の他の成分の溶液や分散液であってもよい。果汁、ニンジン汁は液体原料に同時に配合されてもよく、また、それぞれが別々に液体原料に配合されてもよく、さらにその順番も特に限定されない。
【0021】
上述のようにして得られた飲料に対しては殺菌処理を行なうようにしてもよい。
殺菌処理は、例えば、65℃で10分間と同等以上の殺菌価を有する加熱殺菌により行うことができる。殺菌処理の方法は特に制限されず、通常のプレート式殺菌、チューブラー式殺菌、レトルト殺菌、バッチ殺菌、オートクレーブ殺菌等の方法を採用することができる。殺菌処理は、容器充填前後のいずれか、もしくは両方で行うことができる。
【0022】
得られた本実施形態の飲料は、上述のとおり容器詰め飲料としてもよい。容器に充填する方法は特に限定されず、当業者が適宜設定できる。例えば殺菌処理を行った場合の本実施形態に係る飲料を容器詰め飲料とする方法としては、容器に飲料をホットパック充填し、充填した容器を冷却する方法、又は容器充填に適した温度まで飲料を冷却して、予め洗浄殺菌した容器に無菌充填する方法などにより行うことができる。
【0023】
以上、本実施形態によれば、果汁およびニンジン汁を含有し、香料を非含有である飲料において、果汁の含有率とニンジン汁の含有率との合計が2%以上50%未満であり、果汁の含有率に対するニンジン汁の含有率の比が0.7~1.5であるように果汁の含有率およびニンジン汁の含有率を調整することで、飲料の飲みやすさを維持または改善しつつニンジン感を改善することができる。そのため、果汁およびニンジン汁を含有する飲料の嗜好性の向上に寄与することが可能である。
【実施例0024】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0025】
[試験1]
砂糖1.70g/L、精製塩0.17g/Lで処方し、調合液を得た。得られた調合液に、表1記載のように、オレンジ濃縮果汁(5.9倍濃縮)、ニンジン濃縮汁(9.1倍濃縮)、55°果糖ぶどう糖液糖、クエン酸三ナトリウム、無水クエン酸を添加した。その後、調合液を香料添加区と未添加区に分け、それぞれをペットボトルにホットパック充填し、容器詰飲料を得た。
【0026】
6人のパネリストに以下の7段階の評価基準でおいしさ、ニンジン感の良さ、味の濃さ、飲みやすさ、後味の良さについて官能評価を行い、その評点の平均値を表2に示した。
評価は絶対評価にて行い、飲みやすさについて4.0以上であり且つニンジン感の良さについて4.0より高い評価である場合に飲みやすさについて維持または改善しつつニンジン感が改善されていると判断した。
【0027】
評価基準:
7点・・・非常に良く(強く)感じる。
6点・・・良く(強く)感じる
5点・・・やや良く(強く)感じる。
4点・・・どちらでもない
3点・・・やや悪く(弱く)感じる。
2点・・・悪く(弱く)感じる。
1点・・・非常に悪く(弱く)感じる。



【0028】
【表1】
【0029】
表1から、果汁の含有率とニンジン汁の含有率との合計(果汁ニンジン汁率):2%以上50%未満、汁の含有率に対するニンジン汁の含有率の比(ニンジン汁率/果汁率):0.7~1.5、香料非含有である実施例の飲料は飲みやすさについて維持または改善しつつニンジン感が改善したことが理解できる。
【0030】
[試験2]
砂糖1.70g/L、精製塩0.17g/L処方し、調合液を得た。得られた調合液に表2記載のようにオレンジ濃縮果汁(5.9倍濃縮)、ニンジン濃縮汁(9.1倍濃縮)、55°果糖ぶどう糖液糖、クエン酸三ナトリウム、無水クエン酸を添加した。その後、調合液をペットボトルにホットパック充填し、容器詰飲料を得た。該飲料はいずれも香料未添加である。
得られた飲料について試験1と同様の官能評価を行った。その評点の平均値を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
表2から、果汁ニンジン汁率:2%以上50%未満、ニンジン汁率/果汁率:0.7~1.5、香料非含有である実施例の飲料は飲みやすさについて維持または改善しつつニンジン感が改善したことが理解できる。
【0033】
[試験3]
オレンジ濃縮果汁(5.9倍濃縮) 10.0g/L (果汁5.6%w/w)、りんご透明濃縮果汁(7倍濃縮) 5.00g/L (3.3%w/w)、ホワイトグレープ透明濃縮果汁(6.1倍濃縮) 1.00g/L (果汁0.6%w/w)、ニンジン濃縮汁(9.1倍濃縮) 10.0g/L (ニンジン汁8.8%w/w)、55°果糖ぶどう糖液糖95.0g/L、砂糖1.70g/L、クエン酸三ナトリウム1.60g/L、無水クエン酸2.67g/L、精製塩0.17g/Lを添加し、調合した。調合液を2区分に分け、一方に表3記載のように香料を添加した後、それぞれをペットボトルにホットパック充填し、容器詰飲料を得た。
得られた飲料について試験1と同様の官能評価を行った。その評点の平均値を表3に示す。
【0034】
【表3】
【0035】
表3から、果汁ニンジン汁率:2%以上50%未満、ニンジン汁率/果汁率:0.7~1.5、香料非含有である実施例の飲料は飲みやすさについて維持または改善しつつニンジン感が改善したことが理解できる。