(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020717
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】マージングユニットおよびインテリジェント電子デバイス
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20240207BHJP
H02H 3/02 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
H02J13/00 311A
H02J13/00 301A
H02H3/02 G
H02H3/02 F
H02H3/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123105
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 光之
(72)【発明者】
【氏名】アンディ アントニウス
(72)【発明者】
【氏名】水野上 光章
(72)【発明者】
【氏名】石橋 哲
(72)【発明者】
【氏名】金田 啓一
【テーマコード(参考)】
5G064
5G142
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AC06
5G064AC09
5G064CB08
5G064CB11
5G064DA02
5G142AA16
5G142BB02
5G142BB07
5G142BD01
5G142BD03
5G142CC08
(57)【要約】
【課題】プロセスバスが適用された変電所自動化システムにおいて、装置や機器の試験をより好適に行うことができるマージングユニットおよびインテリジェント電子デバイスを提供することである。
【解決手段】実施形態のマージングユニットは、試験データ保存部と、試験データ出力部と、動作信号受信部と、時間測定部と、を持つ。試験データ保存部は、当該マージングユニットとインテリジェント電子デバイスとの間の動作の試験に使用する試験データを保存する。試験データ出力部は、試験開始信号に応じて、試験データを、プロセスバスを介してインテリジェント電子デバイスに送信する。動作信号受信部は、送信された試験データに応じてインテリジェント電子デバイスによりプロセスバスを介して送信されてきた動作信号を受信する。時間測定部は、試験開始信号が出力された時刻、または試験データが送信された時刻と、動作信号が受信された時刻との時間を測定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力設備の動作を制御する変電所自動化システムにおいて、プロセスバスを介してインテリジェント電子デバイスと接続されるマージングユニットであって、
前記変電所自動化システムにおける当該マージングユニットと前記インテリジェント電子デバイスとの間の動作の試験に使用する電流値または/および電圧値を表す試験データを保存する試験データ保存部と、
前記試験を開始する試験開始信号に応じて、前記試験データを、前記プロセスバスを介して前記インテリジェント電子デバイスに送信する試験データ出力部と、
送信された前記試験データに応じて前記インテリジェント電子デバイスにより前記プロセスバスを介して送信されてきた動作信号を受信する動作信号受信部と、
前記試験開始信号が出力された時刻、または前記試験データが送信された時刻と、前記動作信号が受信された時刻との時間を測定する時間測定部と、
を備える、
マージングユニット。
【請求項2】
前記試験データ保存部は、前記インテリジェント電子デバイスの特性試験に使用した電流値または/および電圧値と同一の前記試験データを保存する、
請求項1に記載のマージングユニット。
【請求項3】
前記試験データ保存部は、当該マージングユニットに入力されるアナログの電流値または/および電圧値に基づくデジタルの前記試験データを保存する、
請求項1に記載のマージングユニット。
【請求項4】
前記試験データ保存部は、
複数の前記試験データを保存し、
出力する前記試験データを切り替える切り替え部、を備える、
請求項1に記載のマージングユニット。
【請求項5】
前記試験データ出力部は、前記変電所自動化システムの平常の動作時に当該のマージングユニットに入力される平常時の電流値または/および電圧値に基づく平常時データが前記インテリジェント電子デバイスに送信されている状態で、前記試験データを前記インテリジェント電子デバイスに送信する、
請求項1に記載のマージングユニット。
【請求項6】
前記試験データ出力部は、連続して、あるいは所定の時間間隔で複数回、前記試験データを前記インテリジェント電子デバイスに送信する、
請求項1に記載のマージングユニット。
【請求項7】
前記試験データ出力部は、前記試験データが表す電流値または/および電圧値が変化したことを通知する通知信号を、前記インテリジェント電子デバイスに送信する、
請求項1に記載のマージングユニット。
【請求項8】
前記試験データ保存部は、電流値または/および電圧値を急変させた前記試験データである急変試験データを保存し、
前記試験データ出力部は、前記急変試験データとともに、前記急変試験データに基づく判定結果を含む前記動作信号の出力を要求する要求信号を、前記インテリジェント電子デバイスに送信する、
請求項1に記載のマージングユニット。
【請求項9】
前記時間測定部は、電流値または/および電圧値を急変させた前記試験データである急変試験データが送信された場合、前記電流値または/および前記電圧値を急変させた時刻と、前記動作信号が受信された時刻との時間を測定する、
請求項1に記載のマージングユニット。
【請求項10】
前記時間測定部は、電流値または/および電流値を急変させた前記試験データである急変試験データが送信された場合、前記電流値または/および前記電圧値を急変させた時刻と、受信された前記動作信号に基づいて前記電力設備の動作を制御した時刻、または受信された前記動作信号に基づいて制御した前記電力設備の動作が完了した時刻との時間を測定する、
請求項1に記載のマージングユニット。
【請求項11】
前記試験データ出力部は、接続された試験器により出力された電流値または/および電流値に基づく前記試験データを前記インテリジェント電子デバイスに送信し、
前記時間測定部は、前記試験器により出力された所定の時刻と、前記動作信号が受信された時刻との時間を測定する、
請求項1に記載のマージングユニット。
【請求項12】
試験データ保存部は、前記インテリジェント電子デバイスに送信する前記試験データを保存する、
請求項11に記載のマージングユニット。
【請求項13】
電力設備の動作を制御する変電所自動化システムにおいて、プロセスバスを介してマージングユニットと接続されるインテリジェント電子デバイスであって、
前記マージングユニットにより前記プロセスバスを介して送信された試験データを受信する試験データ受信部と、
前記試験データに対して演算処理を行い、前記試験データが、前記電力設備の動作を制御させる所定の状態を満たすか否かを判定した判定結果を出力する演算処理部と、
前記判定結果に基づく動作信号を、前記プロセスバスを介して前記マージングユニットに送信する動作信号出力部と、
を備える、
インテリジェント電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、マージングユニットおよびインテリジェント電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
変電所は、電力系統において、電力の供給、品質の確保、効率的な運用などに関して重用な役割を担っている。近年のデジタル技術の発展に伴って、変電所において保護や監視制御を行う変電所自動化システムにおいても、デジタル化が進んでいる。デジタル化された変電所自動化システムでは、変電所に設置されたそれぞれの電力機器とのインターフェースを司るマージングユニット(Merging Unit:MU)を実装し、インテリジェント電子デバイス(Intelligent Electronic Device:IED)とマージングユニットとをネットワークで接続(結合)し、変電所内の各種情報をネットワーク経由で授受する構成が採用されるものも提案されている。
【0003】
変電所において採用されるネットワークとしては、例えば、国際標準規格であるIEC61850に準拠した通信プロトコルによってデジタル通信を行うプロセスバスネットワークが採用されているため、プロセスバスを採用した変電所自動化システムでは、多様なベンダーの装置や機器を組み合わせてシステムを構築できるようになる。しかしながら、複数のベンダーの装置や機器を組み合わせてシステムを構築すると、ネットワークを含めた変電所自動化システムの全体の機能や性能を確認するために、各ベンダーの工場に変電所(現地)の環境を模擬した環境を試験用に構築して検証する、あるいは現地に試験環境を構築して検証することが必要となってしまい、その費用や、手間、時間を要してしまう。
【0004】
ところで、変電所自動化システムを構築するためのそれぞれの装置や機器は、それぞれのベンダーの工場において個別に試験が行われ、動作時間や、所定の機能を有するか否かなどが確認される。特に、系等事故発生時に事故除去を行う保護リレー装置では、動作時間が規定されており、動作のためのデータの授受に要する時間が重要である。プロセスバスを採用した変電所自動化システムにおいては、この動作時間は、伝送路の長さや、保護リレー装置の性能、プロセスバスを流れるデータ量などの影響を受ける。このため、保護リレー装置は、現地での運用を開始する前に、現地を模擬した環境、または設置した場所に試験環境を構築した上で動作時間の測定を行って、所定の機能を満足することの確認が重要となる。しかしながら、変電所自動化システムを構築するための装置や機器のベンダーが異なると、各ベンダーの工場に現地を模擬した環境を試験環境として構築するのは困難であり、現地でそれぞれの装置や機器を組合せた後に問題が発生すると、その原因を特定することが困難となってしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、プロセスバスが適用された変電所自動化システムにおいて、装置や機器の試験をより好適に行うことができるマージングユニットおよびインテリジェント電子デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のマージングユニットは、電力設備の動作を制御する変電所自動化システムにおいて、プロセスバスを介してインテリジェント電子デバイスと接続されるマージングユニットであって、試験データ保存部と、試験データ出力部と、動作信号受信部と、時間測定部と、を持つ。試験データ保存部は、前記変電所自動化システムにおける当該マージングユニットと前記インテリジェント電子デバイスとの間の動作の試験に使用する電流値または/および電圧値を表す試験データを保存する。試験データ出力部は、前記試験を開始する試験開始信号に応じて、前記試験データを、前記プロセスバスを介して前記インテリジェント電子デバイスに送信する。動作信号受信部は、送信された前記試験データに応じて前記インテリジェント電子デバイスにより前記プロセスバスを介して送信されてきた動作信号を受信する。時間測定部は、前記試験開始信号が出力された時刻、または前記試験データが送信された時刻と、前記動作信号が受信された時刻との時間を測定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係るマージングユニットを適用した変電所自動化システムの構成の一例を示す図。
【
図2】第1の実施形態のマージングユニットの構成の一例を示す図。
【
図3】第1の実施形態のマージングユニットが備える試験データ保存部の構成の一例を模式的に示す図。
【
図4】第1の実施形態のマージングユニットに試験データを追加する際に関連する構成の一例を示す図。
【
図5】第1の実施形態のマージングユニットによる変電所自動化システムの第2の試験動作に関連する構成の一例を示す図。
【
図6】第2の実施形態のマージングユニットの構成の一例を示す図。
【
図7】第3の実施形態のマージングユニットの構成の一例を示す図。
【
図8】第1の実施形態のマージングユニットによる変電所自動化システムの第3の試験動作に関連する構成の一例を示す図。
【
図9】第1の実施形態のマージングユニットに試験データを追加する第2の追加動作に関連する構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態のマージングユニット(Merging Unit:MU)およびインテリジェント電子デバイス(Intelligent Electronic Device:IED)を、図面を参照して説明する。実施形態のマージングユニットおよびインテリジェント電子デバイスが適用された変電所自動化システムは、例えば、変電所などの高電圧を扱う電力施設に設置される。変電所自動化システムは、変電所に設置された装置や機器などの電力設備を制御する。電力設備は、例えば、遮断器などである。この場合の変電所自動化システムにおいて、IEDは、例えば、落雷などの事故発生時に事故を除去するための保護リレー装置である。マージングユニットは、送電線や母線等の事故時に、保護リレー装置からの指令により遮断器等を制御する。
【0010】
(第1の実施形態)
[変電所自動化システムの構成]
図1は、第1の実施形態に係るマージングユニットを適用した変電所自動化システムの構成(IEDとMU間の構成)の一例を示す図である。
図1には、例えば、二つのマージングユニット(以下、「MU」という)10(MU10-1および10-2)と、二つのインテリジェント電子デバイス(以下、「IED」という)20(IED20-1および20-2)とを備える変電所自動化システム1の一例を示している。
【0011】
変電所自動化システム1では、MU10-1が、プロセスバスPB-1を介してIED20-1およびIED20-2と接続され、MU10-2が、プロセスバスPB-2を介してIED20-1およびIED20-2と接続されている。プロセスバスPBは、例えば、国際標準規格であるIEC61850に準拠した通信プロトコルによってデジタル通信を行うプロセスバスネットワークの伝送路(信号線)である。プロセスバスPBは、例えば、光通信によってデジタルデータをやり取りするための光ケーブルである。変電所自動化システム1において、MU10とIED20とは、プロセスバスPBを介して常時通信を行っている。
【0012】
変電所自動化システム1が採用された変電所において、MU10は、変電所に設置された電力設備の近傍に配置される。
図1には、MU10-1が、送電線用の計器用変成器・変流器101-1、および母線用の計器用変成器102-1の近傍に配置され、MU10-2が、送電線用の計器用変成器・変流器101-2、および母線用の計器用変成器102-2の近傍に配置されている場合の一例を示している。MU10は、計器用変成器・変流器101における変圧後の電圧値および変流後の電流値や、計器用変成器102における変圧後の電圧値を取得し、プロセスバスPBを介してIED20に送信する。MU10は、IED20によりプロセスバスPBを介して送信されてきた動作指令に応じて、接続されている電力設備(例えば、不図示の遮断器)を制御するための制御信号を、電力設備に出力する。MU10は、プロセスインターフェースユニット(Process Interface Unit:PIU)とよばれる場合もある。
【0013】
変電所自動化システム1が採用された変電所において、IED20は、例えば、リレー盤室や中央管理室など、電力設備の運用を管理するための任意の場所に配置される。IED20は、MU10によりプロセスバスPBを介して送信された、計器用変成器・変流器101における変圧後の電圧値および変流後の電流値や、計器用変成器102における変圧後の電圧値に基づいて、計器用変成器・変流器101に接続されている送電線や、計器用変成器102に接続されている母線の事故を監視する。IED20は、送電線や母線の事故を検出した場合、MU10に、プロセスバスPBを介して動作指令を送信し、事故を検出した送電線や母線に接続された電力設備(不図示の遮断器)の動作を制御する。
【0014】
[マージングユニットの構成]
図2は、第1の実施形態のマージングユニット(MU10)の構成の一例を示す図である。
図1には、MU10に関連する計器用変成器・変流器101と、プロセスバスPB、IED20、および電力設備MXも併せて示している。より具体的には、
図2には、一つのMU10と一つのIED20とがプロセスバスPBを介して接続される変電所自動化システム1において、MU10が、計器用変成器・変流器101の電圧値VTおよび電流値CTを取得してプロセスバスPBを介してIED20に送信し、IED20により送信されてきた動作指令に応じて電力設備MXを制御する構成の一例を示している。
【0015】
MU10は、例えば、アナログ/デジタル変換部11と、データ出力部12と、試験開始指令部13と、試験データ保存部14と、試験データ出力部15と、時間測定部16と、動作信号受信部17と、を備える。
【0016】
MU10が備える構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することによりそれぞれの構成要素の機能が実現されてもよい。MU10が備える構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)などによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によってそれぞれの構成要素の機能が実現されてもよい。MU10が備える構成要素のうち一部または全部は、専用のLSIによってそれぞれの構成要素の機能が実現されてもよい。ここで、プログラム(ソフトウェア)は、予めMU10が備えるROM(Read Only Memory)や、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がMU10の備えるドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。
【0017】
アナログ/デジタル変換部11は、アナログ/デジタル変換器である。アナログ/デジタル変換部11は、計器用変成器・変流器101が変圧したアナログの電圧値VT、および計器用変成器・変流器101が変流したアナログの電流値CTを取得し、取得した電圧値VTと電流値CTとのそれぞれを、デジタルの電圧データと電流データとのそれぞれにアナログ/デジタル変換する。電圧値VTおよび電流値CTは、交流の電圧値および電流値である。従って、電圧データと電流データとのそれぞれは、交流の電圧値および電流値を、アナログ/デジタル変換部11におけるサンプリングタイミングでサンプリングした電圧値および電流値のデジタル値を表すデータである。アナログ/デジタル変換部11は、アナログ/デジタル変換した電圧データと電流データとのそれぞれを、データ出力部12に出力する。
【0018】
データ出力部12は、アナログ/デジタル変換部11により出力された電圧データと電流データとのそれぞれを、プロセスバスPBの通信プロトコルに適合したサンプル値データ(以下、「SV(Sampled Value)データ」という)に変換する。データ出力部12は、変換したSVデータを、プロセスバスPBを介してIED20に送信する。
【0019】
試験開始指令部13は、変電所自動化システム1におけるインテリジェント電子デバイスの機能や性能を確認するための試験の開始を指示するための試験開始信号を出力する。試験開始指令部13は、例えば、試験の開始を指示する際に操作される不図示のボタン(以下、「テストボタン」という)を備える。テストボタンは、例えば、変電所自動化システム1を構築する際や、構築した変電所自動化システム1の保守を行う際などに、変電所においてMU10やIED20の設置や保守を行う作業員などによって操作(押下)される。試験開始指令部13は、テストボタンが押下されると、試験を開始することを表す試験開始信号を、試験データ保存部14と、試験データ出力部15と、時間測定部16とのそれぞれに出力する。変電所自動化システム1における試験が複数種類ある場合、試験開始指令部13は、例えば、試験の種類を指定するための切り替えスイッチを備えてもよい。この場合、試験開始指令部13は、試験の開始に加えて、切り替えスイッチに応じた試験の種類を表す情報を含めた試験開始信号を、試験データ保存部14と、試験データ出力部15と、時間測定部16とのそれぞれに出力する。
【0020】
試験データ保存部14は、変電所自動化システム1におけるインテリジェント電子デバイスの機能や性能を試験するための試験データを保存(記憶)する。試験データ保存部14は、例えば、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子を、試験データを保存するための構成要素として備える。試験データは、変電所自動化システム1の試験を行う際の計器用変成器・変流器101における交流の電圧値VTや電流値CTと同一のものである。より具体的には、試験データは、アナログ/デジタル変換部11によってアナログ/デジタル変換された電圧データと電流データとのそれぞれと同一のデジタルのデータである。試験データは、例えば、MU10の出荷前に工場において個別に試験を行う際に保存(記憶)される。ここで試験データ保存部14に保存される試験データは、工場においてインテリジェント電子デバイスの特性試験を個別に行う際に使用したものと同一のデータである。これにより、変電所(現地)においてMU10を設置する際に、工場において行ったインテリジェント電子デバイスの特性試験と同じ条件で試験をすることができる。試験データは、変電所(現地)においてMU10を設置する際に保存(記憶)されてもよい。つまり、試験データは、現地の環境に合わせて試験データ保存部14に追加されてもよい。試験データ保存部14は、試験開始指令部13により出力された試験開始信号に応じて、保存している試験データを、試験データ出力部15に出力する。試験データ保存部14は、試験データ出力部15からの読み出し制御に従って試験データを出力する(つまり、試験データが読み出される)構成であってもよい。
【0021】
試験データ保存部14は、変電所自動化システム1における種々の試験に対応する複数の試験データを保存(記憶)していてもよい。この場合、試験データ保存部14は、試験開始指令部13により出力された試験開始信号に含まれる試験の種類を表す情報に対応する試験データを、試験データ出力部15に出力する。
図3は、第1の実施形態のマージングユニット(MU10)が備える試験データ保存部14の構成の一例を模式的に示す図である。
図3には、試験データ保存部14にn個(nは、自然数)の試験データ(試験データ141-1、試験データ141-2、・・・、試験データ141-n)を保存しており、切り替えスイッチ142によって試験データを選択して出力する構成の一例を示している。切り替えスイッチ142による試験データの切り替えは、試験開始指令部13により出力された試験開始信号に含まれる試験の種類を表す情報によって行われてもよいし、試験データ出力部15からの読み出し制御によって行われてもよい。切り替えスイッチ142は、「切り替え部」の一例である。
【0022】
図2に戻り、試験データ出力部15は、試験データ保存部14により出力された試験データを、プロセスバスPBの通信プロトコルに適合したデータ(以下、「試験データ」という)に変換する。試験データ出力部15は、変換した試験データを、プロセスバスPBを介してIED20に送信する。このとき、試験データ出力部15は、試験データをSVデータとしてIED20に送信する。試験データ出力部15は、変電所自動化システム1が平常の運用を行っている状態、つまり、データ出力部12が、平常時のSVデータをIED20に送信している状態でも、試験データをIED20に送信することができる。このとき、試験データ出力部15は、平常時のSVデータと試験データとを識別するための識別情報を付与してIED20に送信する。例えば、平常時のSVデータと試験データとを時系列にIED20に送信する場合、試験データ出力部15は、試験データに、試験データであることを表すフラグ情報を識別情報として付与して、IED20に送信する。これにより、IED20は、現在送信されてきたSVデータが、平常時のSVデータであるか、試験用のSVデータ(試験データ)であるかを判定することができる。例えば、平常時のSVデータに試験データを含めて(重畳して)IED20に送信する場合、試験データ出力部15は、試験データの大きさを表す情報を識別情報として付与して、IED20に送信する。試験データの大きさを表す情報は、例えば、平常時のSVデータの大きさと試験データの大きさとの差分を表す情報である。これにより、IED20は、現在送信されてきたSVデータの大きさの内、どこまでの大きさが平常時のSVデータであるか、試験用のSVデータ(試験データ)であるかを判定することができる。平常時のSVデータは、「平常時データ」の一例である。
【0023】
時間測定部16は、変電所自動化システム1の試験を開始した時刻から、試験に応じた結果がIED20により送信されてきた時刻までの時間を測定する。変電所自動化システム1の試験を開始した時刻とは、例えば、試験開始指令部13により試験開始信号が出力された時刻、あるいは試験データ出力部15により試験データの送信が開始された時刻である。変電所自動化システム1の試験を開始した時刻が試験データ出力部15により試験データの送信が開始された時刻である場合、試験データ出力部15は、試験データの送信を開始したことを時間測定部16に通知する。変電所自動化システム1の試験を開始した時刻は、例えば、試験データ出力部15により送信している試験データに急変があった時刻であってもよい。急変とは、試験データの元となる試験データにおいて、電圧値VT(あるいは電圧データ)または電流値CT(あるいは電流データ)の振幅値が急峻に大きく変わることである。この場合、試験データ出力部15は、試験データにおいて振幅値に急変があったことを時間測定部16に通知する。試験に応じた結果がIED20により送信されてきた時刻とは、例えば、送信した試験データに応じた動作をIED20が行い、IED20により送信された動作結果を表す後述する動作信号を受信した時刻である。試験に応じた結果がIED20により送信されてきた時刻は、例えば、受信した動作信号(後述)に基づいて電力設備MXを制御するための制御信号を電力設備MXに出力した時刻であってもよい。試験に応じた結果がIED20により送信されてきた時刻は、例えば、電力設備MXを制御するための制御信号を電力設備MXに出力した後、電力設備MXから、動作が完了したことを表すフィードバック信号を受信した時刻であってもよい。電力設備MXを制御するための制御信号は、実際には電力設備MXが制御されない仮の制御信号であってもよい。この場合、電力設備MXは、MU10により出力された仮の制御信号に応じて実際に動作せずに、本来の制御信号に応じて動作した場合に、その動作が完了するまでに要する時間分だけ遅れたタイミングでフィードバック信号をMU10に出力するようにしてもよい。このようにして時間測定部16が測定した時間が、変電所自動化システム1における電力設備MXを制御するMUとIED(保護リレー装置)間の動作時間(性能)となる。時間測定部16は、測定した時間を作業員などに提示する。このとき、時間測定部16は、測定した時間を表す数値を、例えば、MU10が備える、あるいはMU10に接続された不図示の表示装置に表示させる方法などが考えられるが、時間測定部16における測定した時間の提示方法は、いかなる方法であってもよい。
【0024】
動作信号受信部17は、IED20により送信された動作指令や、送信した試験データに応じてIED20により送信された動作結果を表す動作信号(後述)を受信し、受信した動作信号を、プロセスバスPBの通信プロトコルに従って変換して復元する。動作信号受信部17は、動作指令の動作信号(後述)を受信した場合、プロセスバスPBの通信プロトコルに従って変換して復元した動作指令に応じて、接続されている電力設備MXを制御するための制御信号を、電力設備に出力する。動作信号受信部17は、動作結果を示す動作信号(後述)を受信した場合、動作信号を受信したことを時間測定部16に通知する。これにより、時間測定部16は、変電所自動化システム1の試験を開始した時刻からの時間の測定を終了する。動作信号受信部17は、動作結果を表す動作信号(後述)を受信した場合、復元した動作結果を示す情報を時間測定部16に出力してもよい。この場合、時間測定部16は、測定した時間を表す数値に加えて、動作結果が表す情報を作業員などに提示することができる。
【0025】
IED20は、例えば、データ受信部22と、リレー演算部24と、リレー動作出力部26と、を備える。
【0026】
IED20が備える構成要素は、例えば、CPUなどのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することによりそれぞれの構成要素の機能が実現されてもよい。IED20が備える構成要素のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPUなどのハードウェア(回路部;circuitryを含む)などによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によってそれぞれの構成要素の機能が実現されてもよい。IED20が備える構成要素のうち一部または全部は、専用のLSIによってそれぞれの構成要素の機能が実現されてもよい。ここで、プログラム(ソフトウェア)は、予めIED20が備えるROMや、RAM、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、HDDなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がIED20の備えるドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。
【0027】
データ受信部22は、MU10により送信されたSVデータ(試験データを含む)を受信し、受信したSVデータを、プロセスバスPBの通信プロトコルに従って変換して復元する。データ受信部22は、MU10により送信された平常時のSVデータを受信した場合、復元したSVデータをリレー演算部24に出力する。データ受信部22は、MU10により送信された試験データを受信した場合、復元した試験データをリレー演算部24に出力する。このとき、データ受信部22は、試験データに付与されている識別情報も、試験データとともにリレー演算部24に出力する。データ受信部22は、「試験データ受信部」の一例である。
【0028】
リレー演算部24は、データ受信部22により出力されたSVデータまたは試験データに対して演算処理を行って、SVデータまたは試験データが、電力設備MXを制御させる条件を満たすか否かを判定する。より具体的には、リレー演算部24は、例えば、SVデータが表す電圧データや電流データが、電力設備MXに接続されている送電線や母線に事故が発生している状態を表している場合に、電力設備MXを制御させると判定する。この場合、リレー演算部24は、電力設備MXを制御させると判定したことを表す通知信号を、リレー動作出力部26に出力する。リレー演算部24における演算処理および判定は、試験データに対しても同様である。リレー演算部24は、「演算処理部」の一例である。
【0029】
リレー動作出力部26は、リレー演算部24により出力された通知信号に応じた動作指令を生成し、生成した動作指令を、プロセスバスPBの通信プロトコルに適合した動作信号(以下、「goose(generic object oriented substation event)信号」という)に変換する。動作指令を変換したgoose信号には、電力設備MXを制御させるか否かの情報が含まれる。リレー動作出力部26は、変換した動作指令のgoose信号を、プロセスバスPBを介してMU10に送信する。これにより、MU10が備える動作信号受信部17は、上述したように、受信したgoose信号に応じた動作を行う。つまり、動作信号受信部17は、goose信号に応じて電力設備MXを制御したり、goose信号を受信したことを時間測定部16に通知したりする。リレー動作出力部26は、「動作信号出力部」の一例である。
【0030】
このような構成によって、MU10では、変電所自動化システム1の構成におけるMU10とIED20との間の機能や性能を確認するための試験を行うことができる。
【0031】
[変電所自動化システムにおける平常時の動作]
ここで、変電所自動化システム1における動作の流れについて説明する。まず、変電所自動化システム1において平常の運用を行っている場合の動作について説明する。
【0032】
変電所自動化システム1における平常時の動作では、MU10において、アナログ/デジタル変換部11が、計器用変成器・変流器101から電圧値VTおよび電流値CTを取得してアナログ/デジタル変換した電圧データと電流データとのそれぞれを、データ出力部12に出力する。そして、データ出力部12が、SVデータを、プロセスバスPBを介してIED20に送信する。
【0033】
これにより、IED20では、データ受信部22が、送信されたSVデータを受信し、リレー演算部24が、SVデータに対して演算処理を行って、SVデータが、電力設備MXに接続されている送電線や母線に事故が発生している状態であるか否かを判定する。SVデータが送電線や母線に事故が発生している状態であることを表している場合、リレー演算部24は、送電線や母線に事故が発生している状態であることをリレー動作出力部26に通知し、リレー動作出力部26が、電力設備MXを制御させることが示されたgoose信号を、プロセスバスPBを介してMU10に送信する。この場合、MU10では、動作信号受信部17が、受信したgoose信号に応じて、電力設備MXを制御する。
【0034】
[変電所自動化システムにおける第1の試験動作]
続いて、変電所自動化システム1の構成におけるMU10とIED20との間の機能や性能の試験をする場合の動作として、変電所自動化システム1において電力設備MXに対する制御が正しく行われるか否かの試験を行う場合の動作(以下、「第1の試験動作」という)について説明する。上述したように、MU10は、変電所自動化システム1において平常の運用を行っている状態でも試験を行うことができる。しかし、以下の説明においては、説明を容易にするため、MU10が、変電所自動化システム1において試験のみを行うものとして、第1の試験動作を説明する。
【0035】
変電所自動化システム1における第1の試験動作では、作業員などによって試験開始指令部13のテストボタンが操作(押下)されると、試験開始指令部13が、試験開始信号を試験データ保存部14と、試験データ出力部15と、時間測定部16とのそれぞれに出力する。これにより、MU10では、時間測定部16が、時間の測定を開始する。さらに、MU10では、試験データ保存部14が、試験データを試験データ出力部15に出力する。そして、試験データ出力部15が、試験データを、SVデータとしてプロセスバスPBを介してIED20に送信する。
【0036】
これにより、IED20では、データ受信部22が、送信されたSVデータを受信し、リレー演算部24が、試験データに対して演算処理を行って、試験データが、電力設備MXに接続されている送電線や母線に事故が発生している状態であるか否かを判定する。そして、リレー演算部24は、判定結果を表す通知信号を、リレー動作出力部26に出力する。ここで、リレー演算部24は、試験データが送電線や母線に事故が発生している状態であることを表している場合、電力設備MXを制御させると判定したことを表す通知信号をリレー動作出力部26に出力する。そして、リレー動作出力部26は、リレー演算部24により出力された通知信号に表された判定結果が示されたgoose信号を、プロセスバスPBを介してMU10に送信する。
【0037】
そして、MU10では、動作信号受信部17が、送信されたgoose信号を受信し、goose信号を受信したことを時間測定部16に通知する。これにより、時間測定部16は、時間の測定を終了する。
【0038】
このような第1の試験動作によって、MU10では、時間測定部16が、変電所自動化システム1の試験を開始した時刻から、試験に応じた結果がIED20により送信されてきた時刻までの時間を測定することにより、変電所自動化システム1の構成におけるMU10とIED20との間の動作時間を測定することができる。つまり、変電所自動化システム1では、MU10が変電所に設置された状態で、機能や性能を確認するための試験を行うことができる。このことにより、変電所自動化システム1では、MU10の出荷前に変電所の環境と同じ試験環境を工場に構築したり、変電所に専用の試験環境を構築したりすることなく、プロセスバスPBのネットワークを含めた全体の機能や性能の試験を容易に行うことができる。
【0039】
[変電所自動化システムにおける試験データの第1の追加動作]
上述したように、MU10では、変電所(現地)においてMU10を設置する際に、現地の環境に合わせた試験データを試験データ保存部14に追加することもできる。ここで、MU10において、新たな試験データを試験データ保存部14に追加する場合の第1の追加動作について説明する。
図4は、第1の実施形態のマージングユニット(MU10)に試験データを追加する際に関連する構成の一例を示す図である。
図4には、
図2に示した変電所自動化システム1の構成において、試験データ保存部14に試験データを追加する第1の追加動作に関連する構成要素のみを示している。
【0040】
試験データ保存部14には、データ出力部12によりプロセスバスPBに送信されるデータを、追加する試験データとして保存(記憶)する。この場合、MU10では、アナログ/デジタル変換部11が、計器用変成器・変流器101から電圧値VTおよび電流値CTを取得してアナログ/デジタル変換した電圧データと電流データとのそれぞれを、データ出力部12に出力する。そして、データ出力部12が、SVデータを、プロセスバスPBを介してIED20に送信する。このとき、データ出力部12は、アナログ/デジタル変換した電圧データと電流データを、試験データ保存部14にも出力する。これにより、試験データ保存部14は、データ出力部12により出力された電圧データと電流データとを、追加する試験データとして保存する。
【0041】
ここで、試験データ保存部14に追加する試験データは、変電所自動化システム1の構成におけるMU10とIED20との間の機能や性能を試験するための試験データであることを考えると、例えば、電力設備MXに接続されている送電線や母線に事故が発生している状態のデータであることが好適であると考えられる。しかしながら、変電所自動化システム1における平常の運用においては、電力設備MXに接続されている送電線や母線に事故が発生している状態のデータが得られる電圧値VTおよび電流値CTを計器用変成器・変流器101が出力する頻度は少ないと考えられる。つまり、変電所自動化システム1における平常の運用において、変電所自動化システム1の構成におけるMU10とIED20との間の機能や性能を試験するための試験データは、頻繁に得ることはできないと考えられる。このため、例えば、電力設備MXに接続されている送電線や母線に事故が発生している状態を模擬したデータを意図的に得られるようにするための試験器などを計器用変成器・変流器101の代わりに接続し、この試験器が出力した試験用の電圧値VTおよび電流値CTに基づくデータを、追加する試験データとして保存(記憶)するようにしてもよい。この場合、試験器により出力させる試験用の電圧値VTおよび電流値CTを変えることにより様々な条件の試験データを、試験データ保存部14に追加で保存することができる。
【0042】
例えば、振幅値が急峻に大きく変わる電圧値VTおよび電流値CTを試験器に出力させることによって、電圧データと電流データとの振幅値が急変する条件で試験を行うことができる試験データを、試験データ保存部14に追加で保存することができる。ここで、試験器に出力させる電圧値VTおよび電流値CTは、交流であっても、直流であってもよい。この場合、アナログ/デジタル変換部11が、試験器により出力された電圧値VTおよび電流値CTにおいて振幅値に急変があったことを時間測定部16に通知することにより、時間測定部16は、振幅値に急変があった時刻を、変電所自動化システム1の試験を開始した時刻として、試験に応じた結果がIED20により送信されてきた時刻までの時間を測定することができる。
【0043】
このような第1の追加動作によって、MU10では、データ出力部12がプロセスバスPBを介してIED20に送信するSVデータを、新たな試験データとして試験データ保存部14に追加することができる。これにより、MU10では、予め準備して試験データ保存部14に保存(記憶)していた試験データによる特定の機能の試験以外の試験データを容易に準備することができ、変電所自動化システム1における様々な機能や性能の試験を行うことができるようになる。
【0044】
図4には、データ出力部12がSVデータの元データである、アナログ/デジタル変換部11により出力された電圧データや電流データを、追加する試験データとして試験データ保存部14に保存(記憶)する構成を示したが、試験データ保存部14に保存する追加の試験データは、例えば、プロセスバスPBを介してIED20に送信するSVデータであってもよい。この場合におけるMU10の第1の追加動作は、
図4を用いて説明した追加動作と等価なものになるようにすればよい。
【0045】
[変電所自動化システムにおける第2の試験動作]
上述した変電所自動化システム1における第1の試験動作では、MU10が、変電所自動化システム1において電力設備MXに対する制御が正しく行われるか否かの試験を行うための試験データを、IED20に一回送信する場合の動作について説明した。しかし、MU10は、試験データを複数回繰り返して送信することによって、電力設備MXに接続されている送電線や母線に発生する様々な事故に対して、制御が正しく行われるか否かの試験を行うようにすることもできる。この場合の変電所自動化システム1の動作(以下、「第2の試験動作」という)について説明する。第2の試験動作においても、MU10は、変電所自動化システム1において平常の運用を行っている状態でも試験を行うことができる。しかし、以下の説明においても、説明を容易にするため、MU10が、変電所自動化システム1において試験のみを行うものとして、第2の試験動作を説明する。
図5は、第1の実施形態のマージングユニット(MU10)による変電所自動化システム1の第2の試験動作に関連する構成の一例を示す図である。
【0046】
図5には、変電所自動化システム1の第2の試験動作に関連する構成要素を示しているが、第2の試験動作に関連する構成要素は、
図2に示した変電所自動化システム1の構成を用いて説明した第1の試験動作と同様である。つまり、第2の試験動作における変電所自動化システム1の動作、つまり、MU10およびIED20の動作は、第1の試験動作と同様である。ただし、第2の試験動作では、
図5に示したように、試験データ出力部15が、試験データをSVデータとして、IED20に複数回繰り返して送信する。このとき、試験データ出力部15は、同じ試験データを変換した試験データ、あるいは試験データ保存部14に保存された異なる試験データを変換した試験データ、つまり、異なる試験を行うための試験データを、毎回連続して、所定の回数ごとに切り替えて、あるいは所定の時間間隔ごとに、SVデータとしてIED20に送信してもよい。しかしながら、この場合においても、IED20に送信する試験データが異なるのみで、MU10の動作は第1の試験動作と同様である。従って、第2の試験動作におけるそれぞれの構成要素の動作に関する詳細な説明は省略する。
【0047】
このような第2の試験動作によって、MU10では、時間測定部16が、それぞれの試験データに対応する試験データがIED20に送信された時刻から、試験に応じた結果がIED20により送信されてきた時刻までの時間を測定することにより、送信した試験データによって行うそれぞれの試験ごとに、変電所自動化システム1の構成におけるMU10とIED20との間の動作時間を測定することができる。つまり、変電所自動化システム1では、MU10が変電所に設置された状態で、機能や性能を確認するための試験を複数回繰り返して行うことができる。このことにより、変電所自動化システム1では、MU10の出荷前に変電所の環境と同じ試験環境を工場に構築したり、変電所に専用の試験環境を構築したりすることなく、プロセスバスPBのネットワークを含めたMU10とIED20との間の機能や性能の複数の試験を容易に行うことができる。
【0048】
しかも、第2の試験動作では、MU10が、毎回、所定の回数ごと、あるいは所定の時間間隔ごとに、変電所自動化システム1の機能や性能を確認するための同じ試験を複数回繰り返したり、異なる複数の試験を行ったりすることができる。これにより、第2の試験動作では、電力設備MXに接続されている送電線や母線において、同じ事故が複数回繰り返される場合を容易に再現することができ、この場合における変電所自動化システム1の構成におけるMU10とIED20との間の機能や性能の試験を容易に行うことができるようになる。
【0049】
上記説明したように、第1の実施形態のMU10では、試験データ出力部15が、試験データ保存部14により出力された試験データを変換し、プロセスバスPBを介してIED20に送信する。そして、第1の実施形態のMU10では、時間測定部16が、変電所自動化システム1の試験を開始した時刻から、試験に応じた結果がIED20により送信されてきた時刻までの時間を測定する。これにより、第1の実施形態のMU10では、MU10の出荷前に変電所の環境と同じ試験環境を工場に構築したり、変電所に専用の試験環境を構築したりすることなく、プロセスバスPBのネットワークを含めて、第1の実施形態のMU10が適用された変電所自動化システム1の構成におけるMU10とIED20との間の機能や性能の複数の試験を容易に行うことができる。
【0050】
さらに、第1の実施形態のMU10では、試験を行うための試験データを、試験データ保存部14に追加することもできる。しかも、第1の実施形態のMU10では、第1の実施形態のMU10が適用された変電所自動化システム1において平常の運用を行っている状態でも試験を行うことができる。これにより、第1の実施形態のMU10は、変電所(現地)に設置された後でも、変電所における種々の環境に対応した試験を行うことができる。このことにより、第1の実施形態のMU10が適用された変電所自動化システム1が採用された変電所では、MUやIEDの点検や試験などを容易に行うことができる。
【0051】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、IED20が備えるリレー演算部24が、MU10によりプロセスバスPBを介して送信されたSVデータ(または試験データ)に対して演算処理を行って、電力設備MXを制御させる条件を満たすか否かを判定する構成を示した。より具体的には、リレー演算部24は、例えば、SVデータに対して演算処理を行って、電力設備MXに接続されている送電線や母線に事故が発生しているか否かを判定する構成を示した。ところで、リレー演算部24における演算処理では、例えば、振幅値の算出など、SVデータ(または試験データ)に基づいて事故が発生していると判定するまでに時間を要する演算を行う必要がある。このインテリジェント電子デバイスにおいて演算処理に要する時間は、それぞれのベンダーごとに異なる。そこで、第2の実施形態では、マージングユニットから、電力設備MXを制御させる条件を満たすか否かの判定結果をインテリジェント電子デバイスに通知することによって、インテリジェント電子デバイスにおける演算処理に要する時間を排除した状態で、変電所自動化システムの試験を開始した時刻から、試験に応じた結果がインテリジェント電子デバイスにより送信されてきた時刻までの時間を測定することができる構成について説明する。以下の説明においては、第2の実施形態のマージングユニットを「MU10a」といい、MU10aが適用された変電所自動化システムを「変電所自動化システム2」といい、プロセスバスPBを介してMU10aと接続されるインテリジェント電子デバイスを「IED20a」という。MU10aが適用された変電所自動化システム2の構成や、変電所自動化システム2が備えるそれぞれの構成要素の変電所内の配置や接続は、第1の実施形態のMU10が適用された変電所自動化システム1と等価である。このため、変電所自動化システム2の構成や、それぞれの構成要素の変電所内の配置や接続に関する詳細な説明は省略する。
【0052】
変電所自動化システム2において、MU10aは、電力設備MXに接続されている送電線や母線に事故が発生しているか否かを表す通知信号を、プロセスバスPBを介してIED20aに送信する。通知信号は、goose信号と同様に、プロセスバスPBの通信プロトコルに適合した信号(goose信号)である。以下の説明においては、通知信号(goose信号)を、「gooseN信号」という。MU10aは、IED20aによりプロセスバスPBを介して送信されてきた動作指令に応じて、電力設備MXを制御するための制御信号を、接続されている電力設備MXに出力する。
【0053】
変電所自動化システム2において、IED20aは、MU10aによりプロセスバスPBを介して送信されたgooseN信号が、送電線や母線の事故が発生していることを表している場合、MU10aに、プロセスバスPBを介して動作指令を送信し、事故を検出した送電線や母線に接続された電力設備MX(不図示の遮断器)の動作を制御する。
【0054】
[マージングユニットの構成]
図6は、第2の実施形態のマージングユニット(MU10a)の構成の一例を示す図である。
図6にも、第1の実施形態と同様に、MU10aに関連する計器用変成器・変流器101と、プロセスバスPB、IED20a、および電力設備MXも併せて示している。
【0055】
MU10aは、例えば、アナログ/デジタル変換部11と、データ出力部12と、試験開始指令部13と、試験データ保存部14と、試験データ出力部15aと、時間測定部16と、動作信号受信部17と、を備える。IED20aは、例えば、データ受信部22aと、リレー演算部24と、リレー動作出力部26aと、を備える。
図6においては、第1の実施形態と同様の機能を有する構成要素については同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0056】
変電所自動化システム2では、MU10aにおいて、第1の実施形態のMU10が備える試験データ出力部15が試験データ出力部15aに代わっている。さらに、変電所自動化システム2では、IED20aにおいて、第1の実施形態のIED20が備えるデータ受信部22がデータ受信部22aに代わり、リレー動作出力部26がリレー動作出力部26aに代わっている。
【0057】
試験データ出力部15aは、第1の実施形態の試験データ出力部15と同様に、試験データ保存部14により出力された試験データを、プロセスバスPBの通信プロトコルに適合した試験データに変換する。試験データ出力部15aは、変換した試験データを、プロセスバスPBを介してIED20aに送信する。さらに、試験データ出力部15aは、電力設備MXに接続されている送電線や母線に事故が発生しているか否かを表すgooseN信号を試験データとして、プロセスバスPBを介してIED20aに送信する。試験データ出力部15aも、変電所自動化システム2が平常の運用を行っている状態、つまり、データ出力部12が、平常時のSVデータをIED20aに送信している状態でも、gooseN信号を試験データとしてIED20aに送信することができる。
【0058】
データ受信部22aは、第1の実施形態のデータ受信部22と同様に、MU10aにより送信されたSVデータ(試験データとしてのgooseN信号を含む)を受信し、受信したSVデータやgooseN信号を、プロセスバスPBの通信プロトコルに従って変換して復元する。データ受信部22aは、第1の実施形態のデータ受信部22と同様に、MU10aにより送信された平常時のSVデータを受信した場合、復元したSVデータをリレー演算部24に出力する。これにより、リレー演算部24は、データ受信部22により出力されたSVデータに対して演算処理を行って、電力設備MXに接続されている送電線や母線に事故が発生している状態であるか否かを判定した判定結果を表す通知信号を、リレー動作出力部26に出力する。一方、データ受信部22aは、MU10aにより送信されたgooseN信号を受信した場合、復元したgooseN信号に基づいて、リレー演算部24の代わりに、電力設備MXを制御させると判定したことを表す通知信号を、リレー動作出力部26aに出力する。これにより、IED20aでは、MU10aにより送信されたgooseN信号を受信した場合、リレー演算部24を経由せずに、電力設備MXに接続されている送電線や母線に事故が発生していることが、リレー動作出力部26aに通知される。
【0059】
リレー動作出力部26aは、第1の実施形態のリレー動作出力部26と同様に、リレー演算部24、あるいはデータ受信部22aにより出力された通知信号に応じた動作指令や動作結果を生成し、生成した動作指令や動作結果を表すgoose信号を、プロセスバスPBを介してMU10bに送信する。これにより、MU10bは、第1の実施形態のMU10と同様に、goose信号に応じて電力設備MXを制御したり、時間測定部16における時間の測定を終了したりする。ここで、MU10aにより送信されたgooseN信号を受信した場合においてリレー動作出力部26aからMU10aに送信されるgoose信号は、データ受信部22aが受信したgooseN信号に基づくものである。つまり、goose信号は、リレー演算部24において演算処理が行われずに送信される。このため、時間測定部16は、変電所自動化システム2の試験を開始して試験データ出力部15aがgooseN信号を送信した時刻から、試験に応じた結果(goose信号)がIED20により送信されてきた時刻までの時間を、リレー演算部24における演算処理の遅延時間を除いた状態で測定することができる。
【0060】
このような構成によって、MU10aでも、第1の実施形態のMU10と同様に、変電所自動化システム2の構成におけるMU10aとIED20aとの間の機能や性能を確認するための試験を行うことができる。さらに、MU10aでは、gooseN信号を試験データとしてIED20aに送信することにより、リレー演算部24において演算処理に要する時間を排除した状態で、変電所自動化システム2の構成におけるMU10aとIED20aとの間の機能や性能を確認するための試験を行うことができる。
【0061】
変電所自動化システム2において平常の運用を行っている場合の動作や、変電所自動化システム2の構成におけるMU10aとIED20aとの間の機能や性能の試験をする場合の動作は、試験データがgooseN信号に代わるのみで、その動作は、第1の実施形態のMU10を適用した変電所自動化システム1における動作と同様である。従って、変電所自動化システム2における動作に関する詳細な説明は省略する。
【0062】
上記説明したように、第2の実施形態のMU10aでは、試験データ出力部15aが、電力設備MXに接続されている送電線や母線に事故が発生しているか否かを表すgooseN信号を試験データとして、プロセスバスPBを介してIED20aに送信する。そして、第2の実施形態のMU10aでも、第1の実施形態のMU10と同様に、時間測定部16が、変電所自動化システム2の試験を開始した時刻から、試験に応じた結果がIED20aにより送信されてきた時刻までの時間を測定する。これにより、第2の実施形態のMU10aでも、第1の実施形態のMU10と同様に、変電所に専用の試験環境を構築したりすることなく、プロセスバスPBのネットワークを含めて、第2の実施形態のMU10aが適用された変電所自動化システム2の構成におけるMU10aとIED20aとの間の機能や性能の複数の試験を容易に行うことができる。
【0063】
さらに、第2の実施形態のMU10aでも、第1の実施形態のMU10と同様に、試験を行うための試験データを、試験データ保存部14に追加することもできる。しかも、第2の実施形態のMU10aでも、第1の実施形態のMU10と同様に、第2の実施形態のMU10aが適用された変電所自動化システム2において平常の運用を行っている状態でも試験を行うことができる。これにより、第2の実施形態のMU10aでも、第1の実施形態のMU10と同様に、変電所(現地)に設置された後でも、変電所における種々の環境に対応した試験を行うことができる。このことにより、第2の実施形態のMU10aが適用された変電所自動化システム2が採用された変電所でも、第1の実施形態のMU10が適用された変電所自動化システム1が採用された変電所と同様に、MUやIEDの点検や試験などを容易に行うことができる。
【0064】
(第3の実施形態)
第2の実施形態では、MU10aからgooseN信号を送信し、IED20aが備えるリレー演算部24による演算処理に要する時間を排除した状態、つまり、リレー演算部24をスキップした状態で、試験を開始した時刻から、試験に応じた結果(goose信号)が送信されてくる時刻までの時間を測定する構成について説明した。この構成による時間の測定は、変電所自動化システム3が平常の運用を行っているときにSVデータが通る経路とは異なる経路での時間の測定である。そこで、第3の実施形態では、変電所自動化システムにおける実際の動作に近い状態で、リレー演算部24における演算処理の遅延時間を排除して、試験を開始した時刻から、試験に応じた結果が送信されてくる時刻までの時間を測定することができる構成について説明する。以下の説明においては、第3の実施形態のマージングユニットを「MU10b」といい、MU10bが適用された変電所自動化システムを「変電所自動化システム3」といい、プロセスバスPBを介してMU10bと接続されるインテリジェント電子デバイスを「IED20b」という。MU10bが適用された変電所自動化システム3の構成や、変電所自動化システム3が備えるそれぞれの構成要素の変電所内の配置や接続は、第1の実施形態のMU10が適用された変電所自動化システム1や、第2の実施形態のMU10aが適用された変電所自動化システム2と等価である。このため、変電所自動化システム3の構成や、それぞれの構成要素の変電所内の配置や接続に関する詳細な説明は省略する。
【0065】
変電所自動化システム3において、MU10bは、電圧値VTおよび電流値CTにおける直流の振幅値を急変させた情報(以下、「急変情報」という)に基づく試験データをSVデータとして、プロセスバスPBを介してIED20bに送信する。急変情報は、試験データ保存部14に、電圧値VT(あるいは電圧データ)または電流値CT(あるいは電流データ)の直流の振幅値を急変させた条件の試験データを保存(記憶)させておいたものであってもよい。
【0066】
変電所自動化システム3において、IED20bが備えるリレー演算部24は、SVデータに対して演算処理を行わずに、直ちに異常であるという判定(電力設備MXを制御させる条件を満たすという判定)をする動作モードを有している。そして、変電所自動化システム3では、MU10bとIED20bとの間の機能や性能の試験をする際に、IED20bが備えるリレー演算部24の動作モードを、IED20bが備えるリレー演算部24を、入力されたSVデータに対して演算処理を行わずに、直ちに送電線や母線の事故が発生している状態であると判定する動作モードにしておく。これにより、IED20bは、MU10bから、急変情報に基づく試験データがSVデータとして送信されてきた場合には、リレー演算部24bが直ちに異常であるという判定をして、試験に応じた結果(goose信号)をMU10bに送信することができる。
【0067】
[マージングユニットの構成]
図7は、第3の実施形態のマージングユニット(MU10b)の構成の一例を示す図である。
図7にも、第1の実施形態と同様に、MU10bに関連する計器用変成器・変流器101と、プロセスバスPB、IED20b、および電力設備MXも併せて示している。
【0068】
MU10bは、例えば、アナログ/デジタル変換部11と、データ出力部12と、試験開始指令部13と、試験データ保存部14と、試験データ出力部15bと、時間測定部16と、動作信号受信部17と、を備える。IED20bは、例えば、データ受信部22bと、リレー演算部24bと、リレー動作出力部26と、を備える。
図7においても、第1の実施形態と同様の機能を有する構成要素については同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0069】
変電所自動化システム3では、MU10bにおいて、第1の実施形態のMU10が備える試験データ出力部15が試験データ出力部15bに代わっている。さらに、変電所自動化システム3では、IED20bにおいて、第1の実施形態のIED20が備えるデータ受信部22がデータ受信部22bに代わり、リレー演算部24がリレー演算部24bに代わっている。
【0070】
試験データ出力部15bは、第1の実施形態の試験データ出力部15と同様に、試験データ保存部14により出力された試験データを、プロセスバスPBの通信プロトコルに適合した試験データに変換し、変換した試験データをSVデータとして、プロセスバスPBを介してIED20bに送信する。試験データ出力部15bは、直流の振幅値を急変させた試験データをSVデータとして送信する。試験データ出力部15bも、第1の実施形態の試験データ出力部15と同様に、変電所自動化システム3が平常の運用を行っている状態、つまり、データ出力部12が、平常時のSVデータをIED20bに送信している状態でも、試験データをSVデータとしてIED20bに送信することができる。
【0071】
データ受信部22bは、第1の実施形態のデータ受信部22と同様に、MU10bにより送信されたSVデータ(試験データを含む)を受信し、受信したSVデータを、プロセスバスPBの通信プロトコルに従って変換して復元して、リレー演算部24bに出力する。これにより、リレー演算部24bは、データ受信部22により出力されたSVデータまたは試験データに対して演算処理を行って、電力設備MXに接続されている送電線や母線に事故が発生している状態であるか否かを判定した判定結果を表す通知信号を、リレー動作出力部26に出力する。
【0072】
リレー演算部24bは、第1の実施形態のリレー演算部24と同様に、データ受信部22bにより出力されたSVデータまたは試験データに対して演算処理を行って、SVデータまたは試験データが、電力設備MXを制御させる条件を満たすか否かを判定する。つまり、リレー演算部24bは、例えば、SVデータが表す電圧データや電流データが、電力設備MXに接続されている送電線や母線に事故が発生している状態を表している場合に、電力設備MXを制御させると判定する。この場合、リレー演算部24bは、電力設備MXを制御させると判定したことを表す通知信号を、リレー動作出力部26に出力する。リレー演算部24bにおける演算処理および判定は、試験データに対しても同様である。ただし、リレー演算部24bは、データ受信部22bから急変情報に基づく試験データ(以下、「急変試験データ」という)を受信したと判定した場合、直ちに異常である(電力設備MXを制御させる)と判定する。この場合も、リレー演算部24bは、電力設備MXを制御させると判定した判定結果を表す通知信号を、リレー動作出力部26に出力する。
【0073】
これにより、リレー動作出力部26は、第1の実施形態のリレー動作出力部26と同様に、リレー演算部24bにより出力された通知信号に応じた動作指令や動作結果を生成し、生成した動作指令や動作結果を表すgoose信号を、プロセスバスPBを介してMU10bに送信する。これにより、MU10bは、第1の実施形態のMU10と同様に、goose信号に応じて電力設備MXを制御したり、時間測定部16における時間の測定を終了したりする。ここで、MU10bにより送信された急変試験データを受信した場合においてリレー動作出力部26からMU10bに送信されるgoose信号は、リレー演算部24bが直流の振幅値の急変を判定した結果と同様のものである。つまり、goose信号は、変電所自動化システム3が平常の運用を行っているときと同じ経路を通ってきたSVデータに対するものであるものの、急変試験データによって、リレー演算部24bが通常の演算処理の時間より短い時間で異常であると判定した判定結果に基づいたものである。このため、時間測定部16は、変電所自動化システム3の試験を開始して試験データ出力部15aが急変試験データを送信した時刻から、試験に応じた結果(goose信号)がIED20により送信されてきた時刻までの時間を、変電所自動化システム3における実際の動作に近い状態で(SVデータを用いて)、リレー演算部24bにおける演算処理の遅延時間を排除して(つまり、急変試験データを使用することによって通常の演算処理の時間より短い処理時間で異常を検出して)、測定することができる。
【0074】
このような構成によって、MU10bでも、第1の実施形態のMU10と同様に、変電所自動化システム3の構成におけるMU10bとIED20bとの間の機能や性能を確認するための試験を行うことができる。さらに、MU10bでは、直流の振幅値を急変させた試験データをSVデータとして送信することにより、リレー演算部24bにおいて演算処理に要する時間を除いた状態で、変電所自動化システム3の構成におけるMU10bとIED20bとの間の機能や性能を確認するための試験を行うことができる。
【0075】
図7に示した変電所自動化システム3では、試験データ出力部15bが、直流の振幅値を急変させた試験データ(急変試験データ)をSVデータとして送信する場合について説明した。しかし、試験データ出力部15bは、急変試験データに代えて、または加えて、直ちに異常であると判定することを要求するための要求信号をSVデータに付加して、プロセスバスPBを介してIED20bに送信してもよい。この場合、要求信号が付加されたSVデータを受信したIED20bでは、データ受信部22bが、要求信号を受信したことをリレー演算部24bに通知する。そして、要求信号を受信したことが通知されたリレー演算部24bは、SVデータに対して演算処理を行わずに、直ちに異常である(電力設備MXを制御させる)と判定する。この場合も、リレー演算部24bは、電力設備MXを制御させると判定した判定結果を表す通知信号を、リレー動作出力部26に出力する。これにより、リレー動作出力部26は、急変試験データを受信したときと同様に、動作指令や動作結果を表すgoose信号を、プロセスバスPBを介してMU10bに送信する。この場合のgoose信号も、変電所自動化システム3が平常の運用を行っているときと同じ経路を通ってきたSVデータに対するものであるものの、要求信号に応じてリレー演算部24bが直ちに異常であると判定した判定結果に基づいたものである。このため、時間測定部16は、変電所自動化システム3の試験を開始して試験データ出力部15aが要求信号を送信した時刻から、試験に応じた結果(goose信号)がIED20により送信されてきた時刻までの時間を、変電所自動化システム3における実際の動作に近い状態で(SVデータを用いて)、リレー演算部24bにおける演算処理の遅延時間を排除して(つまり、直ちに異常であると判定して)、測定することができる。
【0076】
上述した一例では、
図7に示した変電所自動化システム3の構成において、データ受信部22bが、MU10bにより送信された要求信号を受信した場合に、要求信号を受信したことをリレー演算部24bに通知する構成を説明した。しかし、データ受信部22bが要求信号を受信したことをリレー演算部24bに通知する構成は、
図7に示した構成に限定されない。例えば、データ受信部22bは、復元したSVデータ(試験データを含む)に、要求信号を受信したことを通知する情報を付加して、リレー演算部24bに出力する構成であってもよい。
【0077】
変電所自動化システム3において平常の運用を行っている場合の動作や、変電所自動化システム3の構成におけるMU10bとIED20bとの間の機能や性能の試験をする場合の動作は、急変試験データをSVデータとして、あるいは急変試験データに代えた、または加えた要求信号をSVデータに付加して送信するのみで、その動作は、第1の実施形態のMU10を適用した変電所自動化システム1における動作と同様である。従って、変電所自動化システム3における動作に関する詳細な説明は省略する。
【0078】
上記説明したように、第3の実施形態のMU10bでは、試験データ出力部15bが、直流の振幅値を急変させた試験データ(急変試験データ)、あるいは急変試験データに代えて、または加えて、直ちに異常であるという判定をすることを要求するための要求信号をSVデータに付加して、プロセスバスPBを介してIED20bに送信する。そして、第3の実施形態のMU10bでも、第1の実施形態のMU10と同様に、時間測定部16が、変電所自動化システム3の試験を開始した時刻から、試験に応じた結果がIED20bにより送信されてきた時刻までの時間を測定する。これにより、第3の実施形態のMU10bでも、第1の実施形態のMU10と同様に、変電所に専用の試験環境を構築したりすることなく、プロセスバスPBのネットワークを含めて、第3の実施形態のMU10bが適用された変電所自動化システム3の構成におけるMU10bとIED20bとの間の機能や性能の複数の試験を容易に行うことができる。
【0079】
さらに、第3の実施形態のMU10bでも、第1の実施形態のMU10と同様に、試験を行うための試験データを、試験データ保存部14に追加することもできる。しかも、第3の実施形態のMU10bでも、第1の実施形態のMU10と同様に、第3の実施形態のMU10bが適用された変電所自動化システム3において平常の運用を行っている状態でも試験を行うことができる。これにより、第3の実施形態のMU10bでも、第1の実施形態のMU10と同様に、変電所(現地)に設置された後でも、変電所における種々の環境に対応した試験を行うことができる。このことにより、第3の実施形態のMU10bが適用された変電所自動化システム3が採用された変電所でも、第1の実施形態のMU10が適用された変電所自動化システム1が採用された変電所と同様に、MUやIEDの点検や試験などを容易に行うことができる。
【0080】
(第4の実施形態)
第1~第3の実施形態では、MU10(MU10aやMU10bを含む)に計器用変成器・変流器101が接続され、変電所自動化システム1(変電所自動化システム2や変電所自動化システム3を含む)が平常の運用を行っている状態のときに、試験データを送信する場合について説明した。しかし、MU10を変電所に設置する場合、まずは計器用変成器・変流器101を接続せずに、試験器を用いて試験を行うことも考えられる。この場合、試験データ保存部14に保存された試験データではなく、試験器が出力した電圧値VTおよび電流値CTをそのまま試験データとして用いて、試験を行うこともできる。そこで、第4の実施形態では、試験器が出力した電圧値VTおよび電流値CTをそのまま試験データとして試験を行う場合の動作を第3の試験動作として説明する。以下の説明においては、第1の実施形態のMU10に試験器200を接続して試験を行う場合について説明する。ここでは、試験器が接続されたMU10が適用された変電所自動化システム1を「変電所自動化システム1a」という。
【0081】
[変電所自動化システムにおける第3の試験動作]
図8は、第1の実施形態のマージングユニット(MU10)による変電所自動化システムの第3の試験動作に関連する構成の一例を示す図である。
図8には、
図2に示した変電所自動化システム1の構成において、試験器200が出力した電圧値VTおよび電流値CTをそのまま試験データとして試験を行う第3の試験動作に関連する構成要素のみを示している。第3の試験動作では、試験器200が、振幅値が急変する試験用の電圧値VTおよび電流値CTをMU10に出力するものとする。
【0082】
第3の試験動作を開始すると、試験器200は、電圧値VTおよび電流値CTをMU10に出力する。さらに、試験器200は、電圧値VTおよび電流値CTの振幅値に急変を与えたタイミングのときに、このことを時間測定部16に通知する。これにより、MU10では、アナログ/デジタル変換部11が、試験器200により出力された電圧値VTおよび電流値CTを取得してアナログ/デジタル変換した電圧データと電流データとのそれぞれを、データ出力部12に出力する。そして、データ出力部12が、アナログ/デジタル変換部11により出力された電圧データと電流データとに基づくSVデータを、プロセスバスPBを介してIED20に送信する。さらに、MU10では、時間測定部16が、試験器200により振幅値に急変を与えたことが通知されると、この時刻からの時間の測定を開始する。第3の試験動作では、このSVデータが、試験データに相当するものである。
【0083】
そして、IED20では、データ受信部22が、送信されたSVデータ(試験データ)を受信し、リレー演算部24が、試験データに対して演算処理を行って、試験データが、電力設備MXに接続されている送電線や母線に事故が発生している状態であるか否かを判定する。そして、リレー演算部24は、判定結果を表す通知信号を、リレー動作出力部26に出力する。そして、リレー動作出力部26は、リレー演算部24により出力された通知信号に表された判定結果が示されたgoose信号を、プロセスバスPBを介してMU10に送信する。
【0084】
これにより、MU10では、動作信号受信部17が、送信されたgoose信号を受信し、goose信号を受信したことを時間測定部16に通知する。これにより、時間測定部16は、時間の測定を終了する。
【0085】
このような第3の試験動作によって、MU10では、時間測定部16が、試験器200によって振幅値に急変が与えられた時刻を、変電所自動化システム1aの試験を開始した時刻とし、この時刻から、試験に応じた結果がIED20により送信されてきた時刻までの時間を測定する。これにより、試験器200が出力した電圧値VTおよび電流値CTをそのまま試験データとして試験を行う第3の試験動作でも、MU10が備える試験データ保存部14に保存された試験データを用いて試験を行う第1の試験動作や第2の試験動作と同様に、変電所自動化システム1aにおけるMU10とIED20との間の動作時間を測定することができる。つまり、第3の試験動作でも、MU10が変電所に設置された状態で、変電所自動化システム1aの構成におけるMU10とIED20との間の機能や性能を確認するための試験を行うことができる。このことにより、変電所自動化システム1aの第3の試験動作でも、変電所に専用の試験環境を構築したりすることなく、プロセスバスPBのネットワークを含めた全体の機能や性能の試験を容易に行うことができる。
【0086】
図8には、データ出力部12が、試験器200により出力された電圧値VTおよび電流値CTに基づく試験データをIED20に送信する構成を示したが、試験データは、試験データ出力部15が出力する構成であってもよい。この構成の場合におけるアナログ/デジタル変換部11は、試験器200から電圧値VTおよび電流値CTを取得してアナログ/デジタル変換した電圧データと電流データとのそれぞれを、試験データ出力部15に出力するようにすればよい。
【0087】
上記説明したように、第4の実施形態として説明した第3の試験動作では、MU10が、計器用変成器・変流器101に代わって接続された試験器200が出力した電圧値VTおよび電流値CTをそのまま試験データとして用いて、プロセスバスPBを介してIED20に送信する。そして、第3の試験動作では、時間測定部16が、試験器200によって振幅値に急変が与えられた時刻から、試験に応じた結果がIED20により送信されてきた時刻までの時間を測定する。これにより、第3の試験動作でも、変電所に専用の試験環境を構築したりすることなく、プロセスバスPBのネットワークを含めて、MU10が適用された変電所自動化システム1の構成におけるMU10とIED20との間の機能や性能の複数の試験を容易に行うことができる。
【0088】
第4の実施形態では、第1の実施形態のMU10が適用された変電所自動化システム1において第3の試験動作を行う場合について説明した。しかし、第3の試験動作は、第2の実施形態のMU10aが適用された変電所自動化システム2や、第3の実施形態のMU10bが適用された変電所自動化システム3においても行うことができる。この場合の第3の試験動作は、
図8を用いて説明した第3の試験動作と等価なものになるようにすればよい。
【0089】
(第5の実施形態)
第4の実施形態として説明した第3の試験動作では、試験器200が出力した電圧値VTおよび電流値CTをそのまま試験データとして試験を行う場合について説明した。しかし、試験器200が出力した電圧値VTおよび電流値CTを試験データとして試験を行う場合においても、そのときの試験データを試験データ保存部14に追加することもできる。そこで、第5の実施形態では、試験器が出力した電圧値VTおよび電流値CTをそのまま試験データとして試験を行うとともに、データ出力部12によりプロセスバスPBに送信されるSVデータを、追加する試験データとして保存(記憶)する場合の動作を、試験データの第2の追加動作として説明する。以下の説明においては、第1の実施形態のMU10に試験器200を接続して試験を行う際に、SVデータを試験データ保存部14に追加する場合について説明する。ここでは、試験器が接続されたMU10が適用された変電所自動化システム1を「変電所自動化システム1b」という。
【0090】
[変電所自動化システムにおける試験データの第2の追加動作]
図9は、第1の実施形態のマージングユニット(MU10)に試験データを追加する第2の追加動作に関連する構成の一例を示す図である。
図9には、
図2に示した変電所自動化システム1の構成において、試験器200が出力した電圧値VTおよび電流値CTをそのまま試験データとして試験を行う際に、試験器200が出力した電圧値VTおよび電流値CTを新たな試験データとして試験データ保存部14に追加する第2の追加動作に関連する構成要素のみを示している。第2の追加動作では、試験器200が、振幅値を急変する試験用の電圧値VTおよび電流値CTをMU10に出力するものとする。
【0091】
第2の追加動作を開始すると、試験器200は、試験用の電圧値VTおよび電流値CTをMU10に出力する。さらに、試験器200は、試験用の電圧値VTおよび電流値CTの出力を開始したタイミング(または試験用の電圧値VTおよび電流値CTの振幅値に急変を与えたタイミングであってもよい)のときに、このことを試験データ保存部14に通知する。これにより、MU10では、アナログ/デジタル変換部11が、試験器200により出力された電圧値VTおよび電流値CTを取得してアナログ/デジタル変換した電圧データと電流データとのそれぞれを、データ出力部12に出力する。そして、データ出力部12が、電圧データと電流データとのそれぞれを変換したSVデータを、プロセスバスPBを介してIED20に送信する。このとき、データ出力部12は、電圧データと電流データとのそれぞれを、試験データ保存部14にも出力する。これにより、第2の追加動作では、試験データ保存部14が、試験器200により試験用の電圧値VTおよび電流値CTの出力を開始したことが通知されたとき、あるいはデータ出力部12によりSVデータが出力されたときから、データ出力部12により出力された電圧データと電流データとのそれぞれを、追加する試験データとして保存を開始する。
【0092】
そして、IED20では、データ受信部22が、送信されたSVデータ(試験データ)を受信し、リレー演算部24が、試験データに対して演算処理を行って、試験データが、電力設備MXに接続されている送電線や母線に事故が発生している状態であるか否かを判定する。そして、リレー演算部24は、判定結果を表す通知信号を、リレー動作出力部26に出力する。そして、リレー動作出力部26は、リレー演算部24により出力された通知信号に表された判定結果が示されたgoose信号を、プロセスバスPBを介してMU10に送信する。
【0093】
これにより、MU10では、動作信号受信部17が、送信されたgoose信号を受信し、goose信号を受信したことを時間測定部16に通知する。これにより、時間測定部16は、時間の測定を終了する。さらに、時間測定部16は、時間の測定を終了したことを試験データ保存部14に通知する。これにより、第2の追加動作では、試験データ保存部14が、データ出力部12により出力された電圧データと電流データとのそれぞれの追加する試験データとしての保存を終了する。
【0094】
このような第2の追加動作によって、MU10では、試験器200が出力した試験用の電圧値VTおよび電流値CTをそのまま試験データとして試験を行うとともに、試験データ保存部14が、試験を行っている期間のデータ出力部12により出力された電圧データと電流データを、追加する試験データとして保存する。これにより、第2の追加動作でも、第3の試験動作と同様に、変電所自動化システム1bにおけるMU10とIED20との間の動作時間を測定するとともに、このときのデータ出力部12により出力された電圧データと電流データを試験データとして保存することができる。つまり、第2の追加動作では、MU10が変電所に設置された状態で、変電所自動化システム1bの構成におけるMU10とIED20との間の機能や性能を確認するための試験を行うとともに、データ出力部12により出力された電圧データと電流データを新たな試験データとして保存することができる。このことにより、変電所自動化システム1bの第2の追加動作でも、変電所に専用の試験環境を構築したりすることなく、プロセスバスPBのネットワークを含めた全体の機能や性能の試験を容易に行うことができるとともに、試験データの追加も行うことができる。
【0095】
図9には、第4の実施形態として説明した第3の試験動作(
図8参照)と同様に、データ出力部12が、試験器200により出力された電圧値VTおよび電流値CTに基づく試験データをIED20に送信する構成を示したが、試験データは、試験データ出力部15が出力する構成であってもよい。この構成の場合におけるアナログ/デジタル変換部11も、第3の試験動作と同様に、試験器200から電圧値VTおよび電流値CTを取得してアナログ/デジタル変換した電圧データと電流データとのそれぞれを、試験データ出力部15に出力するようにすればよい。そして、試験データ出力部15は、プロセスバスPBを介してIED20に送信する試験データを、試験データ保存部14にも出力するようにすればよい。これにより、試験データ保存部14は、試験データ出力部15により出力された試験データを、追加する試験データとして保存することができる。
【0096】
上記説明したように、第5の実施形態として説明した第2の追加動作では、第3の試験動作と同様に、MU10が、計器用変成器・変流器101に代わって接続された試験器200が出力した電圧値VTおよび電流値CTをそのまま試験データとして用いて、プロセスバスPBを介してIED20に送信して、変電所自動化システム1bの試験を行う。これにより、第2の追加動作でも、第3の試験動作と同様に、MU10の出荷前に変電所の環境と同じ試験環境を工場に構築したり、変電所に専用の試験環境を構築したりすることなく、プロセスバスPBのネットワークを含めて、MU10が適用された変電所自動化システム1の構成におけるMU10とIED20との間の機能や性能の複数の試験を容易に行うことができる。
【0097】
さらに、第2の追加動作では、データ出力部12により出力された電圧データと電流データを、試験データとして試験データ保存部14に追加する。このとき、第2の追加動作では、試験データ保存部14が、試験器200により電圧値VTおよび電流値CTの出力を開始したことが通知されたとき、あるいはデータ出力部12により電圧データと電流データとのそれぞれが出力されたときから、時間測定部16により時間の測定を終了したことが通知されたときまで、データ出力部12により出力された電圧データと電流データとを追加する試験データとして保存する。つまり、第2の追加動作では、試験データを保存する期間を別途設定することなく、試験を行っている期間の電圧データと電流データとを、追加する試験データとして保存することもできる。このとき、試験データを保存する期間を別途指定するようにしてもよい。これにより、MU10は、変電所(現地)に設置された後でも、第2の追加動作と同じ試験環境(つまり、試験器200が出力した電圧値VTおよび電流値CTをそのまま試験データとして用いる試験環境)での試験を行うことができる。このことにより、MU10が適用された変電所自動化システム1が採用された変電所では、MU10を変電所に設置する際に行った試験と同じ試験を容易に行うことができる。データ出力部12がSVデータの元データである、アナログ/デジタル変換部11により出力された電圧データや電流データを、追加する試験データとして試験データ保存部14に保存(記憶)する構成を示したが、試験データ保存部14に保存する追加の試験データは、例えば、プロセスバスPBを介してIED20に送信するSVデータであってもよい。
【0098】
第5の実施形態でも、第4の実施形態と同様に、第1の実施形態のMU10が適用された変電所自動化システム1において第2の追加動作を行う場合について説明した。しかし、第2の追加動作は、第2の実施形態のMU10aが適用された変電所自動化システム2や、第3の実施形態のMU10bが適用された変電所自動化システム3においても行うことができる。この場合の第2の追加動作は、
図9を用いて説明した第2の追加動作と等価なものになるようにすればよい。
【0099】
上記に述べたとおり、各実施形態のマージングユニット(MU)は、インテリジェント電子デバイス(IED)とプロセスバスによって接続される。そして、各実施形態のMUは、MUとIEDとが接続された変電所自動化システムの構成におけるMUとIEDとの間の機能や性能を試験するための試験データを保存(記憶)している。そして、各実施形態のMUは、プロセスバスを介して試験データをIEDに送信し、IEDからプロセスバスを介して送信されてきたgoose信号を受信する。このとき、各実施形態のMUは、変電所自動化システムの試験を開始した時刻から、試験に応じた結果がIEDにより送信されてくる時刻までの時間を測定することにより、接続されている電力設備の動作を制御する際の動作時間(性能)を確認する。このことにより、変電所に専用の試験環境を構築したりすることなく、プロセスバスのネットワークを含めたMUとIEDとの間の機能や性能の試験を容易に行うことができる。そして、各実施形態のMUでは、変電所自動化システムの構成におけるMUとIEDとの間の機能や性能を試験するための試験データを追加することができる。これにより、各実施形態のMUでは、プロセスバスを介してIEDに送信する試験データの元となる試験データを異なるものにすることによって、変電所自動化システムにおける様々な機能や性能の試験を行うことができる。このことにより、各実施形態のMUが適用された変電所自動化システムが採用された変電所では、MUやIEDの点検や試験などを容易に行うことができる。
【0100】
各実施形態では、変電所自動化システムに各実施形態のMUが適用される場合について説明したが、各実施形態のMUの考え方は、プロセスバスを介してMUに相当する装置とIEDに相当する装置とが接続される構成であれば、異なる自動化システムに対して適用することができる。例えば、発電所などの高電圧を扱う電力施設に設置される自動化システムが、MUに相当する装置とIEDに相当する装置とがプロセスバスを介して接続される構成であれば、この自動化システムにおいても、各実施形態のMUの考え方を適用することができる。この場合における構成や、動作、処理は、上述した各実施形態の構成や、動作、処理と等価なものになるようにすればよい。
【0101】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、電力設備(MX)の動作を制御する変電所自動化システム(1)において、プロセスバス(PB)を介してインテリジェント電子デバイス(20)と接続されるマージングユニット(10)であって、変電所自動化システムにおける当該マージングユニットとインテリジェント電子デバイスとの間の動作の試験に使用する電流値(CT)または/および電圧値(VT)を表す試験データを保存する試験データ保存部(14)と、試験を開始する試験開始信号に応じて、試験データを(SVデータとして)、プロセスバスを介してインテリジェント電子デバイスに送信する試験データ出力部(15)と、送信された試験データに応じてインテリジェント電子デバイスによりプロセスバスを介して送信されてきた動作信号(goose信号)を受信する動作信号受信部(17)と、試験開始信号が出力された時刻、または試験データが送信された時刻と、動作信号が受信された時刻との時間を測定する時間測定部(16)と、を備えることにより、プロセスバスが適用された変電所自動化システムにおいて、装置や機器の試験をより好適に行うことができる。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0103】
以上の実施形態に関し、発明の一側面および選択的な特徴として以下の付記を開示する。
(付記1)
電力設備の動作を制御する変電所自動化システムにおいて、プロセスバスを介してインテリジェント電子デバイスと接続されるマージングユニットであって、
前記変電所自動化システムにおける当該マージングユニットと前記インテリジェント電子デバイスとの間の動作の試験に使用する電流値または/および電圧値を表す試験データを保存する試験データ保存部と、
前記試験を開始する試験開始信号に応じて、前記試験データを、前記プロセスバスを介して前記インテリジェント電子デバイスに送信する試験データ出力部と、
送信された前記試験データに応じて前記インテリジェント電子デバイスにより前記プロセスバスを介して送信されてきた動作信号を受信する動作信号受信部と、
前記試験開始信号が出力された時刻、または前記試験データが送信された時刻と、前記動作信号が受信された時刻との時間を測定する時間測定部と、
を備える、
マージングユニット。
【0104】
(付記2)
付記1に記載のマージングユニットにおいて、
前記試験データ保存部は、前記インテリジェント電子デバイスの特性試験に使用した電流値または/および電圧値と同一の前記試験データを保存してもよい。
【0105】
(付記3)
付記1に記載のマージングユニットにおいて、
前記試験データ保存部は、当該マージングユニットに入力されるアナログの電流値または/および電圧値に基づくデジタルの前記試験データを保存してもよい。
【0106】
(付記4)
付記1に記載のマージングユニットにおいて、
前記試験データ保存部は、
複数の前記試験データを保存し、
出力する前記試験データを切り替える切り替え部、を備えてもよい。
【0107】
(付記5)
付記1から付記4のうちいずれか一つに記載のマージングユニットにおいて、
前記試験データ出力部は、前記変電所自動化システムの平常の動作時に当該のマージングユニットに入力される平常時の電流値または/および電圧値に基づく平常時データが前記インテリジェント電子デバイスに送信されている状態で、前記試験データを前記インテリジェント電子デバイスに送信してもよい。
【0108】
(付記6)
付記1から付記5のうちいずれか一つに記載のマージングユニットにおいて、
前記試験データ出力部は、連続して、あるいは所定の時間間隔で複数回、前記試験データを前記インテリジェント電子デバイスに送信してもよい。
【0109】
(付記7)
付記1、付記5、または付記6に記載のマージングユニットにおいて、
前記試験データ出力部は、前記試験データが表す電流値または/および電圧値が変化したことを通知する通知信号を、前記インテリジェント電子デバイスに送信してもよい。
【0110】
(付記8)
付記1、または付記4から付記6のうちいずれか一つに記載のマージングユニットにおいて、
前記試験データ保存部は、電流値または/および電圧値を急変させた前記試験データである急変試験データを保存し、
前記試験データ出力部は、前記急変試験データとともに、前記急変試験データに基づく判定結果を含む前記動作信号の出力を要求する要求信号を、前記インテリジェント電子デバイスに送信してもよい。
【0111】
(付記9)
付記1から付記6のうちいずれか一つ、または付記8に記載のマージングユニットにおいて、
前記時間測定部は、電流値または/および電圧値を急変させた前記試験データである急変試験データが送信された場合、前記電流値または/および前記電圧値を急変させた時刻と、前記動作信号が受信された時刻との時間を測定してもよい。
【0112】
(付記10)
付記1から付記6のうちいずれか一つ、付記8、または付記9に記載のマージングユニットにおいて、
前記時間測定部は、電流値または/および電流値を急変させた前記試験データである急変試験データが送信された場合、前記電流値または/および前記電圧値を急変させた時刻と、受信された前記動作信号に基づいて前記電力設備の動作を制御した時刻、または受信された前記動作信号に基づいて制御した前記電力設備の動作が完了した時刻との時間を測定してもよい。
【0113】
(付記11)
付記1から付記6のうちいずれか一項、付記8、または付記10のうちいずれか一つに記載のマージングユニットにおいて、
前記試験データ出力部は、接続された試験器により出力された電流値または/および電流値に基づく前記試験データを前記インテリジェント電子デバイスに送信し、
前記時間測定部は、前記試験器により出力された所定の時刻と、前記動作信号が受信された時刻との時間を測定してもよい。
【0114】
(付記12)
付記11に記載のマージングユニットにおいて、
試験データ保存部は、前記インテリジェント電子デバイスに送信する前記試験データを保存してもよい。
【0115】
(付記13)
電力設備の動作を制御する変電所自動化システムにおいて、プロセスバスを介してマージングユニットと接続されるインテリジェント電子デバイスであって、
前記マージングユニットにより前記プロセスバスを介して送信された試験データを受信する試験データ受信部と、
前記試験データに対して演算処理を行い、前記試験データが、前記電力設備の動作を制御させる所定の状態を満たすか否かを判定した判定結果を出力する演算処理部と、
前記判定結果に基づく動作信号を、前記プロセスバスを介して前記マージングユニットに送信する動作信号出力部と、
を備える、
インテリジェント電子デバイス。
【符号の説明】
【0116】
1,1a,2,3・・・変電所自動化システム、10,10-1,10-2,10a,10b・・・MU、11・・・アナログ/デジタル変換部、12・・・データ出力部、13・・・試験開始指令部、14・・・試験データ保存部、15,15a,15b・・・試験データ出力部、16・・・時間測定部、17・・・動作信号受信部、20,20-1,20-2,20a,20b・・・IED、22,22a,22b・・・データ受信部、24,24b・・・リレー演算部、26,26a・・・リレー動作出力部、101,101-1,101-2・・・計器用変成器・変流器、102,102-1,102-2・・・計器用変成器、200・・・試験器、PB,PB-1,PB-2・・・プロセスバス、MX・・・電力設備