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特開2024-20718検査方法、検査装置および生産システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020718
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】検査方法、検査装置および生産システム
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20240207BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20240207BHJP
   H05K 13/08 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
H05K3/34 512A
H05K13/04 M
H05K13/08 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123109
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】塚田 拓郎
【テーマコード(参考)】
5E319
5E353
【Fターム(参考)】
5E319CD52
5E319GG20
5E353AA02
5E353CC01
5E353EE26
5E353EE53
5E353EE62
5E353EE63
5E353GG01
5E353HH11
5E353JJ02
5E353JJ25
5E353JJ48
5E353KK02
5E353KK03
5E353KK11
5E353MM04
5E353MM07
5E353MM08
5E353NN18
5E353QQ12
(57)【要約】
【課題】リフロー処理後における基板への部品の半田付け具合を高精度に検査することができる検査方法、検査装置および生産システムを提供する。
【解決手段】この発明は、リフロー処理前に取得された部品画像から部品におけるリード先端部の実測位置に関連する位置情報が取得されるとともに、当該位置情報に基づいて検査領域が設定される。つまり、位置情報に応じて検査領域が移動され、部分画像には、常にリード先端部の像およびリード先端部の周辺像が含まれる。その結果、部分画像から基板への部品の半田付け具合を高精度に検査することが可能となっている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフロー処理を受けたことにより部品のリード先端部が半田付けされた基板を検査する検査方法であって
(a)前記リフロー処理前に、前記部品を撮像して得られる部品画像から前記部品における前記リード先端部の実測位置に関連する位置情報を取得する工程と
(b)前記リフロー処理後に、前記基板を撮像して検査用画像を取得する工程と
(c)前記検査用画像において、前記リード先端部および前記リード先端部の周辺を含む検査領域を前記位置情報に基づいて設定する工程と
(d)前記検査用画像のうち前記工程(c)で設定された前記検査領域に含まれる部分画像から、前記基板に対する前記リード先端部の半田付け具合の良否を検査する工程と、
を備えることを特徴とする検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の検査方法であって、
前記工程(a)は、前記部品の仕様から定まる前記部品における前記リード先端部の設計位置からの前記実測位置のずれを考慮して前記検査領域を補正するのに要する補正値を前記位置情報として取得する工程を含み、
前記工程(c)は、前記検査用画像内において、前記設計位置に位置する前記リード先端部および前記リード先端部の周辺を含む設計領域を前記補正値だけ移動させることで、前記検査領域を設定する工程を含む、
検査方法。
【請求項3】
請求項2に記載の検査方法であって、
前記部品が複数のリードを有するとき、
前記工程(a)は、前記リード毎に前記補正値を取得することで、前記リードを特定するためのピン番号と前記補正値とを関連付けた補正ファイルを作成する工程を有し、
前記工程(c)は、前記リード毎に前記補正ファイルから前記リードに対応した前記補正値を読み出して前記検査領域を設定する工程を含む、
検査方法。
【請求項4】
請求項1に記載の検査方法であって、
前記工程(a)は、前記実測位置を前記位置情報として取得する工程を含み、
前記工程(c)は
(c-1)前記部品の仕様から定まる前記部品における前記リード先端部の設計位置を前記実測位置に補正するのに要する補正値を取得する工程と
(c-2)前記検査用画像内において、前記設計位置に位置する前記リード先端部および前記リード先端部の周辺を含む設計領域を前記補正値だけ移動させることで、前記検査領域を設定する工程を含む、
検査方法。
【請求項5】
請求項4に記載の検査方法であって、
前記部品が複数のリードを有するとき、
前記工程(a)は、前記リード毎に前記実測位置を取得することで、前記リードを特定するためのピン番号と前記実測位置とを関連付けた位置情報ファイルを作成する工程を有し、
前記工程(c-1)は、前記リード毎に、前記位置情報ファイルから前記実測位置を読み出すとともに前記設計位置との差分を前記補正値として取得する工程を含み、
前記工程(c-2)は、前記リード毎に、前記工程(c-1)で取得した前記補正値だけ前記設計領域を移動させる工程を含む、
検査方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の検査方法であって、
前記工程(c)は、前記検査用画像内において、前記リード先端部の像と、前記リード先端部に半田付けされた半田の像とが前記検査領域に含まれるように、前記検査領域を設定する工程である、
検査方法。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の検査方法であって、
前記工程(d)は、互いに異なる複数の検査項目に有し、前記検査項目毎に前記半田付け具合の良否を検査する工程を有し、
前記工程(c)は、前記検査項目に応じて前記検査領域の形状または大きさを変化させる、
検査方法。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の検査方法であって、
前記工程(c)は、前記リード先端部が前記検査領域の中央部に位置するように、前記検査領域を設定する、
検査方法。
【請求項9】
リフロー処理を受けたことにより部品のリード先端部が半田付けされた基板を検査する検査装置であって、
前記リフロー処理前に、前記部品を撮像して得られる部品画像から取得された、前記部品における前記リード先端部の実測位置に関連する位置情報を受信する通信部と、
前記基板を撮像して検査用画像を取得する検査撮像部と、
前記検査用画像において、前記リード先端部および前記リード先端部の周辺を含む検査領域を前記位置情報に基づいて設定する検査領域設定部と、
前記検査用画像のうち前記検査領域設定部により設定された前記検査領域に含まれる部分画像から、前記基板に対する前記リード先端部の半田付け具合の良否を検査する検査実行部と、
を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項10】
リフロー処理により部品のリード先端部を基板に半田付けした後で、前記基板を検査する生産システムであって、
前記リフロー処理前に前記部品を撮像して部品画像を取得するリフロー前撮像部と、
前記部品画像から前記部品における前記リード先端部の実測位置に関連する位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記基板を撮像して検査用画像を取得する検査撮像部と、
前記検査用画像において、前記リード先端部および前記リード先端部の周辺を含む検査領域を前記位置情報に基づいて設定する検査領域設定部と、
前記検査用画像のうち前記検査領域設定部により設定された前記検査領域に含まれる部分画像から、前記基板に対する前記リード先端部の半田付け具合の良否を検査する検査実行部と、
を備えることを特徴とする生産システム。
【請求項11】
請求項10に記載の生産システムであって、
前記部品を撮像する第1カメラを有し、前記第1カメラで前記部品を撮像して取得した画像に基づいて前記基板の上面に印刷された前記半田に前記リード先端部を載置して前記基板に前記部品を実装する部品実装装置をさらに備え、
前記第1カメラが前記リフロー前撮像部として機能し、前記第1カメラで撮像された画像が前記部品画像として供される、
生産システム。
【請求項12】
請求項11に記載の生産システムであって、
前記リフロー処理前に前記基板を搬送する搬送経路に沿って前記部品実装装置が複数台、直列に配置されているとき、
前記複数の部品実装装置のうち前記搬送経路において最下流に配置された前記部品実装装置の前記第1カメラが前記リフロー前撮像部として機能し、前記第1カメラで撮像された画像が前記部品画像として供される、
生産システム。
【請求項13】
請求項10に記載の生産システムであって、
その上面に印刷された前記半田に前記部品の前記リード先端部が載置された前記基板を撮像する第2カメラを有し、前記第2カメラで前記部品を撮像して取得した画像に基づいて前記リフロー処理前に前記基板を検査するリフロー前検査装置をさらに備え、
前記第2カメラが前記リフロー前撮像部として機能し、前記第2カメラで撮像された画像が前記部品画像として供される、
生産システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リフロー処理後における基板への部品の半田付け具合を検査する検査技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、印刷装置、部品実装装置およびリフロー装置を装備する生産システムが記載されている。印刷装置は、半田ペーストを基板に印刷する(印刷処理)。部品実装装置は、印刷済の基板を印刷装置から受け取り、当該基板に部品を実装する(部品実装処置)。リフロー装置は、部品実装された基板を部品実装装置から受け取り、リフロー処理を実行する。これらの装置を組み合わせることで、部品を搭載した基板の生産が実行される。
【0003】
生産システムでは、基板生産が良好に行われたことを確認するために、印刷装置と部品実装装置との間、部品実装装置とリフロー装置との間、リフロー装置の後段などに検査装置が配置されることがある。特に、リフロー装置の後段に配置された検査装置では、印刷処理、部品実装処置およびリフロー処理の全てを受けた基板に照明部から光を照射しつつカメラが基板を撮像する。そして、当該撮像により得られた画像に基づいて種々の検査内容について検査が実行される。そのひとつが、部品のリード先端部に対する半田の接合具合の良否検査である。この検査においては、上記カメラが撮像した画像(以下「検査用画像」という)に映し出されたリード先端周辺像(つまり、リード先端部およびその周囲を含む検査領域内の像)に基づいてリード先端部と基板とが適切な量や形状などを有する半田により接合されているか否かが判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-88876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記検査精度を高めるために、検査用画像からリード先端周辺像を的確に捉えることが要望される。しかしながら、次の事情により、上記要望を満足することは難しかった。つまり、部品の形状や寸法などは予め仕様で決められているが、その仕様においては一定の公差が含まれている。しかも、リード長さに至っては、決められていない、もしくは指定されていたとしても比較的大きな公差が含まれている。したがって、部品毎あるいは同一部品であってもリード毎にリード長さは個体差を有している。したがって、部品の仕様から検査領域を一義的に決めていた従来技術においては、リード長さの個体差に対応することができなかった。すなわち、リード長さの個体差に応じて検査領域を変位させる必要があるのにもかかわらず、部品の仕様により定まる設計枠をそのまま検査領域とし、検査していた。このことが、検査精度の向上にとって障害のひとつとなっていた。
【0006】
ここで、検査用画像からリード先端部の像を抽出することができれば、当該像に基づき検査領域の位置を補正することは可能である。しかしながら、リフロー処理後においては、リード先端部は半田に埋もれている。したがって、上記補正は困難であった。これらのことから、従来技術においては、リフロー処理後における基板への部品の半田付け具合を検査する精度を向上させることが難しかった。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、リフロー処理後における基板への部品の半田付け具合を高精度に検査することができる検査方法、検査装置および生産システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の第1の態様は、リフロー処理を受けたことにより部品のリード先端部が半田付けされた基板を検査する検査方法であって、(a)リフロー処理前に、部品を撮像して得られる部品画像から部品におけるリード先端部の実測位置に関連する位置情報を取得する工程と、(b)リフロー処理後に、基板を撮像して検査用画像を取得する工程と、(c)検査用画像において、リード先端部およびリード先端部の周辺を含む検査領域を位置情報に基づいて設定する工程と、(d)検査用画像のうち工程(c)で設定された検査領域に含まれる部分画像から、基板に対するリード先端部の半田付け具合の良否を検査する工程と、を備えることを特徴としている。
【0009】
また、この発明の第2の態様は、リフロー処理を受けたことにより部品のリード先端部が半田付けされた基板を検査する検査装置であって、リフロー処理前に、部品を撮像して得られる部品画像から取得された、部品におけるリード先端部の実測位置に関連する位置情報を受信する通信部と、基板を撮像して検査用画像を取得する検査撮像部と、検査用画像において、リード先端部およびリード先端部の周辺を含む検査領域を位置情報に基づいて設定する検査領域設定部と、検査用画像のうち検査領域設定部により設定された検査領域に含まれる部分画像から、基板に対するリード先端部の半田付け具合の良否を検査する検査実行部と、を備えることを特徴としている。
【0010】
さらに、この発明の第3の態様は、リフロー処理により部品のリード先端部を基板に半田付けした後で、基板を検査する生産システムであって、リフロー処理前に部品を撮像して部品画像を取得するリフロー前撮像部と、部品画像から部品におけるリード先端部の実測位置に関連する位置情報を取得する位置情報取得部と、基板を撮像して検査用画像を取得する検査撮像部と、検査用画像において、リード先端部およびリード先端部の周辺を含む検査領域を位置情報に基づいて設定する検査領域設定部と、検査用画像のうち検査領域設定部により設定された検査領域に含まれる部分画像から、基板に対するリード先端部の半田付け具合の良否を検査する検査実行部と、を備えることを特徴としている。
【0011】
このように構成された発明では、リフロー処理後に、基板を撮像して取得した検査用画像のうち検査領域に含まれる部分画像から、基板に対するリード先端部の半田付け具合の良否が検査される。この検査領域を固定化すると、既述のようにリード長さや部品の個体差に伴うリード先端部の位置変化に対応することができない。そこで、本発明では、リフロー処理前に取得された部品画像から部品におけるリード先端部の実測位置に関連する位置情報が取得されるとともに、当該位置情報に基づいて上記検査領域が設定される。つまり、位置情報に応じて検査領域が移動され、部分画像には、常にリード先端部の像およびリード先端部の周辺像が含まれる。その結果、部分画像から基板への部品の半田付け具合を高精度に検査することが可能となっている。
【0012】
ここで、位置情報として、部品の仕様から定まる部品におけるリード先端部の設計位置
からの実測位置のずれを考慮して検査領域を補正するのに要する補正値を位置情報として用いてもよい。この場合、検査用画像内において、設計位置に位置するリード先端部およびリード先端部の周辺を含む設計領域が補正値だけ移動される。その結果、検査に適正した検査領域が得られ、検査精度の向上を図ることができる。
【0013】
また、部品が複数のリードを有するとき、リード毎に補正値を取得することで、リードを特定するためのピン番号と補正値とを関連付けた補正ファイルを作成してもよい。そして、リード毎に補正ファイルからリードに対応した補正値を読み出して検査領域を設定することで、リードの間で個体差が生じている場合であっても、リード毎に検査に適正した検査領域が得られる。その結果、リード本数にかかわらず、検査精度を向上させることができる。
【0014】
また、位置情報として、実測位置を位置情報として用いてもよい。この場合、検査装置内で、リード先端部の設計位置を実測位置に補正するのに要する補正値が、設計位置および実測位置から算出される。そして、検査用画像内において、設計位置に位置するリード先端部およびリード先端部の周辺を含む設計領域が補正値だけ移動される。その結果、検査に適正した検査領域が得られ、検査精度の向上を図ることができる。
【0015】
また、部品が複数のリードを有するとき、リード毎に実測位置を取得することで、リードを特定するためのピン番号と実測位置とを関連付けた位置情報ファイルを作成してもよい。そして、リード毎に位置情報ファイルからリードに対応した実測位置を読み出し、上記補正量の算出および設計領域の補正量移動によって検査領域を設定することで、リードの間で個体差が生じている場合であっても、リード毎に検査に適正した検査領域が得られる。その結果、リード本数にかかわらず、検査精度を向上させることができる。
【0016】
また、設計領域を補正量だけ移動させる、あるいはリード先端部が検査領域の中央部に位置するように検査領域を設定してもよい。これらによって、検査用画像内において、リード先端部の像と、リード先端部に半田付けされた半田の像とが検査領域に含まれる。その結果、半田付け具合を確実に検査することができる。
【0017】
また、リフロー処理前に部品画像を撮像するためには、リフロー装置および検査装置以外に、リフロー処理前の部品を撮像するリフロー前撮像部を設ける必要がある。ただし、部品実装を行う部品実装装置が、部品を撮像する第1カメラを有し、第1カメラで部品を撮像して取得した画像に基づいて基板の上面に印刷された半田にリード先端部を載置して基板に部品を実装するものである場合、第1カメラをリフロー前撮像部として機能させてもよい。これにより、生産システムにおいて、位置情報を取得するための専用のリフロー前撮像部を設ける必要がなくなり、システムコストを抑えることが可能となる。
【0018】
また、リフロー処理前に基板を搬送する搬送経路に沿って部品実装装置が複数台、直列に配置される場合には、複数の部品実装装置のうち搬送経路において最下流に配置された部品実装装置の第1カメラがリフロー前撮像部として機能し、第1カメラで撮像された画像が部品画像として供されるように、構成してもよい。これによって、半田付け具合の検査に最も近い状態で部品を撮像することができる。その結果、検査精度を高めることができる。
【0019】
また、その上面に印刷された半田に部品のリード先端部が載置された基板を撮像する第2カメラを有し、第2カメラで部品を撮像して取得した画像に基づいてリフロー処理前に基板を検査するリフロー前検査装置が生産システムに設けられる場合には、第2カメラがリフロー前撮像部として機能し、第2カメラで撮像された画像が部品画像として供される、ように構成してもよい。これにより、生産システムにおいて、位置情報を取得するための専用のリフロー前撮像部を設ける必要がなくなり、システムコストを抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、リフロー処理後における基板への部品の半田付け具合を高精度に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る検査方法の第1実施形態を適用可能な生産システムの構成を模式的に示すブロック図である。
図2図1に示す生産システムに設けられる部品実装装置の構成の一例を示す図である。
図3図2の部品実装装置により基板に実装される部品の一例を示す図である。
図4】第1実施形態において本発明の位置情報の供給源として機能する補正ファイルの一例を示す図である。
図5図1に示す生産システムに設けられる検査装置の一例を模式的に示すブロック図である。
図6図5の検査装置が備える検査ヘッドの一例を示す部分側面図である。
図7図1に示す生産システムにおける各部の動作を示すフローチャートである。
図8】リフロー処理後の検査処理中に、検査装置の表示/操作部に映し出される表示画面の一例を模式的に示した図である。
図9】検査装置の動作を模式的に示す図である。
図10】本発明に係る検査方法の第2実施形態を適用可能な生産システムにおける各部の動作を示すフローチャートである。
図11】第3実施形態において本発明の位置情報として機能する位置情報ファイルの一例を示す図である。
図12】第3実施形態における各部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明に係る検査方法の第1実施形態を適用可能な生産システムの構成を模式的に示すブロック図である。生産システム1は、基板搬送方向であるX方向(図1中の左右方向)に延びる搬送経路に沿って直列に並ぶ印刷装置100、部品実装装置200、リフロー装置300および検査装置400を備え、これらをサーバー500により統括的に制御することで、部品を搭載した基板を生産する。サーバー500は、CPU(= Central Processing Unit)やRAM(=Random Access Memory)等を有するコンピュータにより構成される演算処理部501の他、ハードディスクドライブなどの記憶部502、各種情報を表示して作業者に報知するディスプレイ530およびキーボードやマウス等の入力部540を備えている。
【0023】
また、サーバー500は、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリー等のコンピュータ読み取り可能な非一過性の記録媒体RMaにアクセスして、記録媒体RMaからプログラムを読み出す読取部520を備える。そして、サーバー500は、こうして読み出したプログラムに従って、印刷装置100、部品実装装置200、リフロー装置300および検査装置400の各制御ユニット110、210、310、410との間で各種情報や指令などの授受を行う。特に第1実施形態では、リフロー装置300によるリフロー処理前に、部品実装装置200は、部品を撮像して部品画像を取得するとともに当該部品画像から部品におけるリード先端部の実測位置に関連する位置情報(本実施形態では、後で説明する図4の補正ファイル)を取得する。さらに、検査装置400は、当該位置情報を用いた検査領域の補正によって半田付けの良否検査の精度向上を図っている。このように、本実施形態では、部品実装装置200および検査装置400が本発明に係る検査方法と密接に関連している。そこで、以下においては、部品実装装置200および検査装置400の構成の一例を説明した後で、検査方法について詳述する。
【0024】
図2は、図1に示す生産システムに設けられる部品実装装置の構成の一例を示す図である。図3は、図2の部品実装装置により基板に実装される部品の一例を示す図である。部品実装装置200は、以下のように構成される装置各部を制御ユニット210により制御することで、印刷装置100により基板Bの上面に印刷された半田に部品のリード先端部LDa(図3(c)参照)を実装する機能を有している。制御ユニット210は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)で構成されたプロセッサーである演算処理部211およびHDD(Hard Disk Drive)などで構成された記憶部212を有するコンピュータである。さらに、制御ユニット210は、部品実装装置200の駆動系を制御する駆動制御部213と、部品実装装置200の撮像系を制御する撮像制御部214と、サーバー500との間で各種情報や指令などを送受信する機能を有する通信部215と、部品実装装置200の状況などを表示したり、ユーザからの指示を受け付けたりする表示/操作部216と、を有する。
【0025】
部品実装装置200は、基台201の上に設けられた一対のコンベア202、202を備える。そして、部品実装装置200は、コンベア202によりX方向(基板搬送方向)の上流側から実装処理位置(図2の基板Bの位置)に搬入した基板Bに対して部品を実装し、部品実装を完了した基板Bをコンベア202により実装処理位置からX方向の下流側へ搬出する。
【0026】
部品実装装置200では、Y方向に延びる一対のY軸レール221、221と、Y方向に延びるY軸ボールネジ222と、Y軸ボールネジ222を回転駆動するY軸モーターMy(サーボモーター)とが設けられ、X軸レール223が一対のY軸レール221、221にY方向に移動可能に支持された状態でY軸ボールネジ222のナットに固定されている。X軸レール223には、X方向に延びるX軸ボールネジ224と、X軸ボールネジ224を回転駆動するX軸モーターMx(サーボモーター)とが取り付けられており、ヘッドユニット230がX軸レール223にX方向に移動可能に支持された状態でX軸ボールネジ224のナットに固定されている。したがって、制御ユニット210の駆動制御部213は、Y軸モーターMyによりY軸ボールネジ222を回転させてヘッドユニット230をY方向に移動させ、あるいはX軸モーターMxによりX軸ボールネジ224を回転させてヘッドユニット230をX方向に移動させることができる。
【0027】
一対のコンベア202、202のY方向の両側それぞれでは、2つの部品供給部240がX方向に並んでいる。各部品供給部240に対しては、複数のテープフィーダー241がX方向に並んで着脱可能に装着されている。テープフィーダー241はY方向に延設されており、Y方向におけるヘッドユニット230側の先端部に部品供給箇所242を有する。そして、集積回路、トランジスター、コンデンサ等の小片状の部品を所定間隔おきに収納したテープがテープフィーダー241に装填されている。各テープフィーダー241は、テープをヘッドユニット230側へ向けてY方向に間欠的に送り出す。これによって、テープ内の部品がY方向(フィード方向)に送り出されて、各テープフィーダー241の部品供給箇所242に順番に供給される。
【0028】
ヘッドユニット230は、X方向に等ピッチで一列に並ぶ複数の実装ヘッド231を有する。実装ヘッド231の下端にはノズル232が着脱可能に取り付けられており、実装ヘッド231はノズル232により部品の吸着・実装を行う。つまり、実装ヘッド231は、ノズル232をテープフィーダー241の部品供給箇所242の上方へ移動させた後で、部品供給箇所242に供給された部品をノズル232により吸着(ピックアップ)する。また、実装ヘッド231はノズル232に部品を保持した状態で、実装処理位置の基板Bの上方に移動して基板Bに部品を実装する。
【0029】
さらに、部品実装装置200は、上方を向いて基台201に取り付けられた部品認識カメラ250をX方向に並ぶ2個の部品供給部240の間に備える。部品供給部240から部品を吸着した実装ヘッド231は、これらの部品認識カメラ250のうち近い方の部品認識カメラ250の上方へ移動し、部品を保持したまま部品認識カメラ250の上方を通過する。これに対して、部品認識カメラ250は、上方を通過する部品を下方から撮像して部品画像を取得する。そして、演算処理部211は、撮像制御部214を介して取得した部品認識カメラ250の撮像結果に基づき、ノズル232に吸着される部品の状態を判断する。
【0030】
この第1実施形態では、演算処理部211は、上記部品状態のみならず、各リード先端部LDaの実測位置を算出する機能および補正量を算出する機能を兼ね備えている。これらの機能について、図3および図4を参照しつつ説明する。
【0031】
例えば図3(a)に示すように、基板Bに実装される部品Cの多くは、複数のリード(リード端子やリードピンなどを称することもある)LDを有している。各リードLDの先端部位、つまりリード先端部LDaの位置(同図中の「ステップ中心」に相当)は部品仕様により決まっている。この位置を本明細書では「リード先端部の設計位置」と称し、水平面内において部品Cの中心座標(0,0)に対する各リード先端部LDaのXY座標で表している。ただし、部品Cは個体差を有しており、実際のリード先端部LDaの位置は図3(b)に示すように設計位置と異なることがある。そこで、本実施形態では、演算処理部211が部品認識カメラ250により撮像された部品画像から各リード先端部LDaの位置を実測し、水平面内において部品Cの中心座標(0,0)に対する各リード先端部LDaのXY座標で表している。このリード先端部LDaの位置を本明細書では「リード先端部の実測位置」と称している。さらに、演算処理部211は、実測位置の設計位置からのずれを考慮して検査領域を補正するためのX方向距離およびY方向距離を補正量として算出するとともに、各リードを特定するためのピン番号と対応付け、通信部215を介してサーバー500に送信する。これを受け取ったサーバー500では、図4に示すデータ構造を有する補正ファイルCFに書き込む。
【0032】
図4は、第1実施形態において本発明の位置情報の供給源として機能する補正ファイルの一例を示す図であり、同図中の「基板ID」は部品Cが実装される基板を識別する基板識別情報であり、「Ref名」はユーザが任意に設定する名称などであり、「ブロック番号」は当該基板Bに実装される部品Cを識別するための番号である。例えば図3(c)では、ピン番号「8」についてリード先端部LDaの実測位置を示すステップ中心(XG18、YG18)が実測されるとともに、リード先端部LDaの設計位置を示すステップ中心(X18、Y18)とのX方向差分x18およびY方向差分y18を補正量として求める。すると、上記補正量(x18、y18)は部品実装装置200からサーバー500に送信され、図4に示す補正ファイルCFにおいてドットを付した欄に書き込まれる(なお、同欄中のドットは説明のために付したものである)。このように基板Bに実装される全部品Cについて、リフロー処理前に、補正量が求められ、サーバー500に補正ファイルCFの形で保存される。この補正ファイルCFは適宜検査装置400で参照され、検査装置400による基板Bに対するリード先端部LDaの半田付け具合の良否検査の精度向上に寄与する。この点については、後で詳述する。
【0033】
図5は、図1に示す生産システムに設けられる検査装置の一例を模式的に示すブロック図である。この検査装置400は、制御ユニット410の他に、検査ヘッド420、搬送コンベア430および駆動機構450を有している。これら検査ヘッド420、搬送コンベア430および駆動機構450が制御ユニット410によって制御されることで、リフロー装置300によるリフロー処理を受けた基板B(部品Cが実装されたプリント基板)が予め設定された検査内容(後で説明する図8の「はんだ少」、「ブリッジ」など)について全体的に検査される。
【0034】
搬送コンベア430は、基板Bを所定の搬送経路に沿って搬送する。具体的には、搬送コンベア430は、検査前の基板B、つまりリフロー処理後の基板Bを検査ヘッド420の直下に設定された検査位置PB(図5に示す位置)に搬入し、基板Bを検査位置PBで水平に保持する。こうして基板Bを検査位置PBで保持した状態において、基板Bの上面Baは水平となり、基板Bの上面Baの法線は鉛直方向Zに平行となる。ここで、基板Bの上面Baの法線は、基板Bの上面Baのうち露出した平面の法線、すなわち部品や半田等の付着物が存在しない平面の法線に相当する。そして、検査位置PBでの基板Bへの検査が終了すると、搬送コンベア430は、検査後の基板Bを検査位置PBから検査装置400の外へ搬出する。
【0035】
検査ヘッド420は、撮像範囲Rを上側から撮像する単一の正対カメラ421、複数の傾斜カメラ422、および撮像範囲Rを上側から照らす照明部423を一体的に備える。正対カメラ421は、鉛直方向Zに対して平行な方向から撮像範囲Rに対向し、傾斜カメラ422は、鉛直方向Zに対して傾斜した方向から撮像範囲Rに対向する。そして、検査位置PBに搬入された基板Bの検査領域を撮像範囲R内に収めた状態で、照明部423から撮像範囲Rへ光を照射しつつ正対カメラ421および傾斜カメラ422で撮像を行う。かかる検査ヘッド420は、正対カメラ421および傾斜カメラ422のそれぞれによって、異なる角度から基板Bの検査対象部位の画像が撮像することができ、検査精度の向上に資する。ちなみに、検査ヘッド420は4個の傾斜カメラ422を備えるが、図5では、図示を簡便化するために2個の傾斜カメラ422が代表して示されている。
【0036】
図6は、図5の検査装置が備える検査ヘッドの一例を示す部分側面図である。検査ヘッド420は、正対カメラ421、傾斜カメラ422および照明部423を一体的に支持する保持フレーム424を有する。保持フレーム424は、鉛直方向Zに平行な中心線C4に対して回転対称な形状を具備しており、鉛直方向Zの上側のカメラ支持部42と、鉛直方向Zの下側の照明支持部426とで構成される。
【0037】
カメラ支持部425は略円筒形状を有しており、その上面を貫通するように配置された正対カメラ421と、その側面の周りに円周状に配置された4個の傾斜カメラ422とをそれぞれ支持する。正対カメラ421の光軸A1(正対カメラ421の対物レンズの光軸)は中心線C4に平行であり、換言すれば基板Bの上面Baの法線に平行である。こうして、正対カメラ421は中心線C4の延びる方向から撮像範囲Rに対向する。4個の傾斜カメラ422は、中心線C4を中心として等角度ピッチ(90度ピッチ)で円周状に並ぶ。各傾斜カメラ422の光軸A1(各傾斜カメラ422の対物レンズの光軸)は中心線C4に対して傾斜しており、換言すれば基板Bの上面Baの法線に対して傾斜している。こうして、各傾斜カメラ422は、中心線C4に対して傾斜する方向から撮像範囲Rに対向する。
【0038】
照明支持部426は略ドーム形状を有しており、その上部がカメラ支持部425の底部に取り付けられ、その底部に照明部423が取り付けられている。この照明支持部426は、カメラ支持部425と撮像範囲Rとの間に位置しており、正対カメラ421および傾斜カメラ422のそれぞれは、照明支持部426に設けられた開口を介して撮像範囲Rに対向する。こうして、図6に示すように鉛直方向Zから見た場合において、照明支持部426では、正対カメラ421に対して設けられた開口が中央に位置し、傾斜カメラ422毎に設けられた開口が上記正対カメラ421用の開口の周囲に位置する。
【0039】
照明部423は、中心線C4を中心とする円環形状を有する。具体的には、照明部423は、中心線C4を中心とする円環形状を有した平板状の環状平板の直上に位置する多数の点光源(例えば、Light Emitting Diode)により構成されている。点光源から射出された光の大部分は鉛直方向Zに対して傾斜した方向から撮像範囲Rへ照射される一方、残りは、環状平板にて一部は拡散光となり、撮像範囲Rへ照射される。照明部423は、制御ユニット410からの制御指令に応じて露光時間を変更可能となっている。
【0040】
このように照明される撮像範囲Rでは、上記照明光が基板Bで反射される。そして、反射光を正対カメラ421および傾斜カメラ422が受光することで、撮像範囲R内の基板Bが撮像される。なお、このように構成された検査ヘッド420は、制御ユニット410からの制御指令に応じて撮像範囲Rを変更可能となっている。
【0041】
駆動機構450は、検査ヘッド420を支持しつつ、図示省略のモーターによって水平方向および鉛直方向Zへ検査ヘッド420を駆動させる。つまり、駆動機構450によって、検査ヘッド420を基板Bの検査対象部位の上方へ移動させることができるとともに、検査ヘッド420を基板Bの検査対象部位に対して上下方向へ移動させることができる。
【0042】
制御ユニット410は、CPUおよびRAM等を有するコンピュータにより構成される演算処理部411を有している。演算処理部411が検査装置各部の制御を統括することで、検査が実行される。制御ユニット410は、照明部423を制御する照明制御部412、カメラ421、422を制御する撮像制御部413および駆動機構450を制御する駆動制御部414を有する。搬送コンベア430が検査位置PBに基板Bを搬入すると、演算処理部411は、駆動制御部414により駆動機構450を制御して、基板Bの検査対象部位の上方へ検査ヘッド420を移動させる。これによって、正対カメラ421および傾斜カメラ422の撮像範囲R内に検査領域が収まる。続いて、制御ユニット410は、照明制御部412により照明部423を制御することで照明部423から撮像範囲Rへ所定照度の光を照射する。こうして撮像範囲Rを照らした状態で、制御ユニット410は、撮像制御部413により正対カメラ421および傾斜カメラ422それぞれの露光時間を制御しつつ正対カメラ421および傾斜カメラ422のそれぞれで撮像を行う。これによって、撮像範囲R内における基板Bの検査領域の画像が撮像される。
【0043】
さらに、制御ユニット410は、画像処理部415、記憶部416、通信部417および表示/操作部418を有する。画像処理部415は、正対カメラ421および傾斜カメラ422により撮像された画像に対して適宜の画像処理を行う。記憶部416は、ハードディスクドライブなどで構成され、予め設定された検査内容、画像処理部415による画像処理を受けた画像、および検査装置各部を制御して基板Bの全体検査を行うための検査プログラムなどを記憶する。通信部417は、サーバー500との間で各種情報や指令などを送受信する機能を有している。表示/操作部418は、例えば後で説明する図8に示すように検査装置400の検査状況などを表示したり、ユーザからの指示を受け付けたりする。
【0044】
このように構成された検査装置400では、演算処理部411が、記憶部416に記憶されている検査プログラムにしたがって装置各部を制御することで、予め設定された検査内容(その一部が例えば図8に示されている)を実行する。これによって、基板Bの全体検査が実行される。ここでは、「XXX1」の基板IDに実装されたブロック番号1の部品(図3中の部品C)に対する検査内容の一例として、基板Bに対するピン番号8のリード先端部LDaの半田付け具合の良否を検査する場合(図3および図8参照)を適宜に例示しながら、図7に基づいて生産システム1の各部(印刷装置100、部品実装装置200、リフロー装置300、検査装置400、サーバー500)の動作について説明する。
【0045】
図7は、図1に示す生産システムにおける各部の動作を示すフローチャートであり、基板IDが「XXX1」の基板および「XXX2」の基板に対する各種処理の流れを示している。また、図8は、リフロー処理後の検査処理中に、検査装置の表示/操作部418に映し出される表示画面の一例を模式的に示した図である。この生産システム1では、サーバー500により印刷装置100、部品実装装置200、リフロー装置300および検査装置400が統括的に制御され、1枚の基板Bに対して以下の処理が実行される。
【0046】
「基板ID:XXX1」の基板(以下「基板B1」という)が生産システム1の最上流側に位置する印刷装置100に搬入されると、印刷装置100は当該基板B1に半田ペーストを印刷する(ステップS101:印刷処理)。そして、印刷処理を受けた基板B1は印刷装置100から部品実装装置200に搬送される。
【0047】
部品実装装置200では、実装ヘッド231がノズル232をテープフィーダー241の部品供給箇所242の上方へ移動させて、部品供給箇所242に供給された部品をノズル232により吸着する(ステップS201)。それに続いて、実装ヘッド231はノズル232に部品を保持した状態のまま、部品認識カメラ250の上方を経由して実装処理位置の基板B1の上方に移動する。この移動中に、部品認識カメラ250が部品を撮像し、部品画像を取得する(ステップS202)。そして、基板B1の上方に移動した実装ヘッド231は基板B1の上面に印刷された半田ペーストの上に部品を実装する(ステップS203)。この部品実装と並行して、演算処理部211が上記部品画像から補正量を算出する(ステップS204)。このステップS204での処理により、既述のとおり、各リード先端部LDaの実装位置(ステップ中心)が実測されるとともに、当該実測位置と設計位置との差分が補正量として求められる。例えば図3では、基板B1に対して最初に実装される部品(ブロック番号1)におけるピン番号8の補正値として、X方向差分x18およびY方向差分y18が補正値として算出される。この補正値はサーバー500に送信され、図4中のドットで示すように補正ファイルに書き込まれる(ステップS501)。
【0048】
このような一連の工程(ステップS201~S204)は、実装ヘッド231により保持される部品数単位で行われ、基板B1に実装すべき全部品が実装されたことが確認される(ステップS205で「YES」と判定される)まで、繰り返して実行される。一方、ステップS205で「YES」と判定されると、全部品が実装された基板B1は部品実装装置200からリフロー装置300に搬送される。このとき、サーバー500に記憶されている補正ファイルCFでは、例えば図4に示すように、全てのリード先端部LDaに対する補正量の設定が完了している。
【0049】
基板B1を受け取ったリフロー装置300は、基板B1に対するリフロー処理を実行する(ステップS301)。そして、リフロー処理の完了後、リフロー処理済の基板B1が、リフロー装置300から検査装置400に搬送される。
【0050】
この検査装置400では、最初の基板B1が搬送されてくる前に、検査処理の初期設定が行われるが、その初期設定のひとつとして検査枠の設定が実行される(ステップS401)。ここでは、検査処理の説明の前に、検査枠について図9を参照しつつ説明する。
【0051】
図9は、検査装置の動作を模式的に示す図である。同図には、検査ヘッド420により撮像された検査用画像と、検査枠Fとが示されている。この「検査枠F」とは、基板Bに対するリード先端部LDaの半田付け具合を検査する領域(同図においてハッチングを施した領域)を囲う枠であり、検査枠Fに囲まれた領域が本発明の「検査領域」の一例に相当する。また、同図では、検査枠Fとリード先端部LDaとの位置関係を明確にするため、検査用画像からリフロー処理後の半田の像を取り除いている。また、符号ILは検査用画像に映り込んでいるリード先端部LDaの像であり、符号IEは検査用画像に映り込んでいる基板Bに印刷されたランドやパッドなどの電極部の像である。
【0052】
リードLD毎に半田付け具合を検査する場合、従来、部品Cの仕様からリード先端部LDaとおよびリード先端部LDaの周辺を含む領域を検査領域とし、この検査領域を規定する目的で検査枠Fが図9(a)に示すように設定されている。本明細書では、部品Cの仕様に対応する検査枠Fを「設計枠F0」と称する。この設計枠F0で囲まれた領域が本発明の「設計領域」の一例に相当している。
【0053】
従来技術では、設計枠F0が常に検査枠Fとして用いられている。しかしながら、既述のようにリード長さに個体差が存在する。このため、リード先端部が部品仕様から比較的大きくずれている場合、例えば図9(b)の部分拡大図に示すように、リード先端部LDaの像ILは設計枠F0の中心からずれて存在する。このため、設計枠F0で囲まれた設計料領域に存在する部分画像から半田付け具合、例えば半田量が少ないか否か(検査項目:「はんだ少」)を正確に検査することが困難となることがある。
【0054】
そこで、本実施形態では、図7に示すように、設計枠F0が設定される(ステップS401)のみならず、ステップS402~S404が実行される。これによって、図9(c)に示すように、リードLDの個体差が存在するにもかかわらず、常にリード先端部LDaの像ILが検査枠Fの中心に位置するように、検査領域が補正される。そして、補正後の検査領域で半田付け具合の良否が検査される。以下、図7に戻って説明を続ける。
【0055】
検査装置400では、リフロー装置300から最初の基板B1が搬送されてくる前の適当なタイミング(例えば、検査装置400の電源投入時や生産対象となる基板の変更時)で、基板Bに実装される部品の仕様に基づき設計枠F0が設定される(ステップS401)。そして、リフロー装置300からリフロー処理済の基板B1が検査装置400に搬送されると、検査装置400では、演算処理部411は、基板B1に対応する補正ファイルCFを検索する(ステップS402)。補正ファイルCFがサーバー500に存在する場合(ステップS403で「YES」)には、演算処理部411はサーバー500から補正ファイルCFの提供を受け、リードLD毎に検査枠F(検査領域)を補正する(ステップS404)。すなわち、演算処理部411は、例えば図9(c)に示すように、1点鎖線で示す設計枠F0を補正量(x18、y18)だけ移動させる。そして、移動後の検査枠Fに含まれる部分画像(同図(c)中のハッチング領域の画像)に基づいて演算処理部411は半田付け具合を検査する(ステップS405)。より詳しくは、ステップS405では、リフロー処理後の基板B1を撮像して検査用画像(例えば図8中の「検査用画像」の欄に表示された画像)を取得した後で、検査用画像のうち検査枠Fで囲まれた検査領域の部分画像PI(=リード先端部LDaの像IL+電極部の像IE+半田の像(ドットが付された部位))から、基板B1に対するリード先端部LDaの半田付け具合の良否を検査する。
【0056】
なお、図8では、半田付け具合の検査項目として「はんだ少」が選択され、基板Bの電極部との接続状態が検査されているが、検査項目が切り替わる毎に検査内容が一部変化することがある。そこで、検査枠Fの位置のみならず検査項目に応じて大きさや形状なども補正されるように構成してもよい。これによって、各検査項目について適切かつ高精度に検査することができる。
【0057】
一方、ステップS403で「NO」と判定する、つまり基板B1に対応する補正ファイルCFが存在しないことを確認すると、演算処理部411は、検査枠Fの補正(ステップS404)を行うことなく、検査を行う(ステップS405)。つまり、部品仕様に対応した設計枠F0に含まれる部分画像に基づいて演算処理部411は半田付け具合を検査する。
【0058】
ステップS405は全リードLDに対して実行される。そして、全リードLDに対する検査が終了すると、演算処理部411は、その旨をサーバー500に報告するとともに、当該基板B1に対する補正ファイルCFを削除する(ステップS406)。
【0059】
こうして基板B1に対する一連の処理(=印刷処理+部品実装処理+リフロー処理+検査処理)が完了すると、基板B1は検査装置400から搬出される。
【0060】
なお、図7に示すように、生産システム1において基板B1に対して部品実装処理、リフロー処理または検査処理が実行されている間に、「基板ID:XXX2」の基板(以下「基板B2」という)が印刷装置100に搬入され、先の基板B1と並行して、基板B2に対する印刷処理、部品実装処理、リフロー処理および検査処理が実行される。これによって、生産システム1のスループットの向上が図られている。
【0061】
以上のように、第1実施形態によれば、リフロー処理前にリードLDの個体差に応じた補正量を算出する一方で、リフロー処理後の検査処理においてリードLD毎に上記補正量だけ検査枠Fを補正している。このため、例えば図8の「検査用画像」に示されているように、リフロー処理後の半田(検査用画像においてドットを付した部分)の存在によりリード先端部LDaの位置は明確でないものの、検査枠F内の部分画像PIにリード先端部LDaの像が必ず含まれる。しかも、上記補正によって、例えば図9(c)の部分拡大図に示すように、検査枠Fに含まれる部分画像では、その中央部にリード先端部LDaの実測位置(ステップ中心)が存在するとともに、その周囲にリード先端部LDaの周辺像が存在している。したがって、検査枠Fに囲まれた検査領域に存在する部分画像(例えば図8中の符号PI)には、リード先端部LDaの全部、電極部およびそれらに被さるように形成された半田が映り込んでいる。その結果、部分画像に基づき基板Bに対するリード先端部LDaの半田付け具合の良否を正確に検査することが可能となっている。
【0062】
また、第1実施形態では、部品実装装置200の部品認識カメラ250が本発明の「第1カメラ」の一例に相当しており、本発明の「リフロー前撮像部」としても機能している。そのため、生産システム1において、部品画像を取得するための専用のリフロー前撮像部を設ける必要がなくなり、システムコストを抑えることが可能となっている。
【0063】
このように第1実施形態では、補正ファイルCF中の補正量が本発明の「位置情報」の一例に相当している。また、図7中のステップS204が本発明の「工程(a)」の一例に相当し、ステップS405が本発明の「工程(b)」および「工程(d)」に相当し、ステップS404が本発明の「工程(c)」の一例に相当している。また、正対カメラ421および傾斜カメラ422が本発明の「検査撮像部」の一例に相当している。また、検査装置400の演算処理部411が本発明の「検査領域設定部」および「検査実行部」として機能している。また、部品実装装置200の部品認識カメラ250が本発明の「リフロー前撮像部」および「第1カメラ」として機能している。
【0064】
ところで、第1実施形態では、部品実装装置200の演算処理部211が本発明の「位置情報取得部」として機能しているが、サーバー500の演算処理部501が本発明の「位置情報取得部」として機能するように、生産システム1を構成してもよい(第2実施形態)。
【0065】
図10は、本発明に係る検査方法の第2実施形態を適用可能な生産システムにおける各部の動作を示すフローチャートである。第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、補正量の算出が部品実装装置200からサーバー500に移っている点であり、その他の構成および動作は基本的に第1実施形態と同一である。そこで、以下においては、相違点を中心に説明し、同一構成および動作については、同一符号を付して説明を省略する。
【0066】
第2実施形態では、図10に示すように、部品実装装置200は、補正量の算出を行わない代わりに、ステップS202で取得した部品画像をサーバー500に送信する(ステップS206)。一方、当該部品画像を受信したサーバー500では、演算処理部501が部品画像から補正量を算出し(ステップS504)、補正ファイルCFに追加する(ステップS501)。そして、第2実施形態においても、リフロー処理後の検査処理においてリードLD毎に上記補正量だけ検査枠Fを補正している。したがって、第1実施形態と同様に、検査枠Fに囲まれた検査領域に存在する部分画像(例えば図8中の符号PI)に基づき基板Bに対するリード先端部LDaの半田付け具合の良否を正確に検査することが可能となっている。
【0067】
このように第2実施形態では、図10中のステップS502が本発明の「工程(a)」の一例に相当し、サーバー500の演算処理部501が本発明の「位置情報取得部」として機能する。
【0068】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記第1実施形態および第2実施形態では、補正量を本発明の「位置情報」とし、リードLD毎の補正量を補正ファイルCFに保存しているが、「位置情報」はこれに限定されるものではない。例えばリード先端部LDaの実測位置を本発明の「位置情報」とし、リードLD毎のリード先端部LDaの実測位置をテーブル形式でまとめた位置情報ファイルを作成してもよい(第3実施形態)。
【0069】
図11は、第3実施形態において本発明の位置情報として機能する位置情報ファイルの一例を示す図である。この位置情報ファイルPFが図4に示す補正ファイルCFと相違するのは、補正量の代わりに、リード先端部LDaの実測位置(=ステップ中心XG+ステップ中心YG)がリードLD毎に記憶されている点である。例えば図3では、基板B1に対して最初に実装される部品(ブロック番号1)におけるピン番号8のリード先端部LDaの実測位置、つまりステップ中心(XG18,Y18)が取得される。すると、上記ステップ中心(XG18、YG18)はサーバー500に送信され、図11に示す位置情報ファイルPFにおいてドットを付した欄に書き込まれる(なお、同欄中のドットは説明のために付したものである)。このように基板Bに実装される全部品Cについて、リフロー処理前に、リード先端部LDaの実測位置が求められ、サーバー500に位置情報ファイルPFの形で保存される。
【0070】
次に、第3実施形態における各部の動作について説明する。図12は、第3実施形態における各部の動作を示すフローチャートであり、基板IDが「XXX1」の基板および「XXX2」の基板に対する各種処理の流れを示している。第3実施形態が第1実施形態と大きく相違するのは、以下の2点であり、その他の構成および動作は基本的に第1実施形態と同一である。そこで、以下においては、相違点を中心に説明し、同一構成および動作については、同一符号を付して説明を省略する。
【0071】
一つ目の相違点は、位置情報としてリード先端部LDaの実測位置(=ステップ中心XG+ステップ中心YG)が用いられている点である。つまり、第3実施形態では、図12に示すように、部品実装装置200は、補正量の算出を行わない代わりに、ステップS202で取得した部品画像からリード先端部LDaの実測位置を取得し、サーバー500に送信する(ステップS207)。一方、当該実測位置を受信したサーバー500では、実測位置(=ステップ中心XG+ステップ中心YG)を位置情報ファイルPFに追加する(ステップS503)。
【0072】
二つ目の相違点は、補正ファイルCFの代わりに位置情報ファイルPFに基づき検査枠Fを補正している点である。つまり、図12に示すように、検査装置400の演算処理部411が、基板B1に対応する位置情報ファイルPFを検索する(ステップS407)。位置情報ファイルPFがサーバー500に存在する場合(ステップS408で「YES」)には、演算処理部411はサーバー500から位置情報ファイルPFの提供を受け、補正量を算出する(ステップS409)。つまり、図3に示すように、部品の仕様により定まっている設計位置(ステップ中心(X,Y))と、位置情報ファイルPFから読み出す実測位置(ステップ中心(XG,YG))との差分が補正値として算出される。それに続いて、演算処理部411は、第1実施形態と同様に、リードLD毎に検査枠Fを補正し(ステップS404)、補正された検査枠Fに含まれる部分画像に基づいて半田付け具合を検査する(ステップS405)。一方、ステップS408で「NO」と判定する、つまり基板B1に対応する位置情報ファイルPFが存在しないことを確認すると、演算処理部411は、補正量の算出(ステップS409)および検査枠Fの補正(ステップS404)を行うことなく、検査を行う(ステップS405)。つまり、部品仕様に対応した設計枠F0に含まれる部分画像に基づいて演算処理部411は半田付け具合を検査する。
【0073】
ステップS405は全リードLDに対して実行される。そして、全リードLDに対する検査が終了すると、演算処理部411は、その旨をサーバー500に報告するとともに、当該基板B1に対する位置情報ファイルPFを削除する(ステップS410)。
【0074】
こうして基板B1に対する一連の処理(=印刷処理+部品実装処理+リフロー処理+検査処理)が完了すると、基板B1は検査装置400から搬出される。
【0075】
以上のように、第3実施形態においても、第1実施形態および第2実施形態と同様に、リフロー処理後の検査処理においてリードLD毎に上記補正量だけ検査枠Fを補正している。したがって、検査枠Fに囲まれた検査領域に存在する部分画像(例えば図8中の符号PI)に基づき基板Bに対するリード先端部LDaの半田付け具合の良否を正確に検査することが可能となっている。
【0076】
また、上記実施形態では、部品実装装置200の部品認識カメラ250を本発明の「リフロー前撮像部」および「第1カメラ」として利用しているが、部品実装装置200に設けられる別のカメラ、いわゆる基板認識カメラを利用してもよい。また、部品実装装置200を1台のみを装備した生産システム1に本発明を適用しているが、複数台の部品実装装置を印刷装置100からリフロー装置300に向かって直列に設けた生産システム1にも本発明を適用することができる。この場合、リフロー装置300の最も近くに配置された部品実装装置に装備されるカメラを本発明の「リフロー前撮像部」として機能させ、当該カメラで撮像された画像が部品画像として供されるように、構成してもよい。これによって、半田付け具合の検査に最も近い状態で部品を撮像することができる。その結果、検査精度を高めることができる。
【0077】
また、特許文献1に記載されているように実装検査装置が装備された生産システムに対しても本発明を適用することができる。実装検査装置は、基板の上面に印刷された半田に部品のリード先端部が載置された基板を撮像するカメラが設けられ、当該カメラで部品を撮像して取得した画像に基づいてリフロー処理前に基板を検査する。そこで、実装検査装置が、上記実施形態における部品実装装置200と同様に、補正量を算出したり、実装位置を取得したり、部品画像をサーバー500に送信したりするように構成してもよい(第4実施形態)。これにより、生産システムにおいて専用のリフロー前撮像部を設ける必要がなくなり、システムコストを抑えることが可能となっている。このように、第4実施形態では、実装検査装置および上記カメラは、それぞれ本発明の「リフロー前検査装置」および「第2カメラ」の一例に相当している。
【産業上の利用可能性】
【0078】
この発明は、リフロー処理後における基板への部品の半田付け具合を検査する検査技術全般に対して適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1…生産システム
100…印刷装置
200…部品実装装置
250…部品認識カメラ(リフロー前撮像部、第1カメラ)
300…リフロー装置
400…検査装置
417…通信部
421…正対カメラ(検査撮像部)
422…傾斜カメラ(検査撮像部)
B,B1,B2…基板
Ba…(基板の)表面
C…部品
CF…補正ファイル
F…検査枠
F0…設計枠
IL…(リード先端部の)像
LD…リード
LDa…リード先端部
PB…検査位置
PF…位置情報ファイル
PI…(検査用画像の)部分画像
x18…X方向差分(補正量)
y18…Y方向差分(補正量)
図1
図2
図3
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図12