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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020724
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】紙製カップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 3/22 20060101AFI20240207BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240207BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240207BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
B65D3/22 B
B32B27/00 H
B32B27/32 D
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123120
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】田中 義久
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AD06
3E086AD24
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA25
3E086BA35
3E086BB01
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB21
3E086BB71
3E086CA01
3E086CA11
4F100AK04B
4F100AK04D
4F100AK06C
4F100AK48C
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100DB02
4F100DG10A
4F100JB16B
4F100JB16D
4F100JD02C
4F100JD03
4F100JL12
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】成型後でもバリア性を維持でき、かつ、成型しやすい紙製カップを提供する。
【解決手段】紙製カップは、略円筒形状の胴部を備える紙製カップであって、前記胴部は、前記胴部を形成する積層体30の内側端部と外側端部とを重ねて貼り合わせた貼り合わせ部を有し、前記積層体30は、紙基材3と、前記紙基材3の内側INに形成され、かつ、ポリエチレン樹脂を含む第一熱可塑性樹脂層1aと、前記第一熱可塑性樹脂層1aの内側INに、ナイロン樹脂で形成され、かつ、厚さが10μm以上100μm以下であるバリア層1bと、を備え、前記貼り合わせ部の端面部が前記バリア層1bに覆われている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒形状の胴部を備える紙製カップであって、
前記胴部は、前記胴部を形成する積層体の内側端部と外側端部とを重ねて貼り合わせた貼り合わせ部を有し、
前記積層体は、
紙基材と、
前記紙基材の内側に形成され、かつ、ポリエチレン樹脂を含む第一熱可塑性樹脂層と、
前記第一熱可塑性樹脂層の内側に、ナイロン樹脂で形成され、かつ、厚さが10μm以上100μm以下であるバリア層と、
を備え、
前記貼り合わせ部の端面部が前記バリア層に覆われている、
紙製カップ。
【請求項2】
前記バリア層の内側に形成され、かつ、ポリエチレン樹脂を含む第二熱可塑性樹脂層を備える、
請求項1に記載の紙製カップ。
【請求項3】
前記第一熱可塑性樹脂層の厚さが10μm以上100μm以下である、
請求項1に記載の紙製カップ。
【請求項4】
前記第一熱可塑性樹脂層の融点は、前記バリア層の融点よりも低い、
請求項1に記載の紙製カップ。
【請求項5】
酸素透過率が0.01cc/pkg・day以下である、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の紙製カップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製カップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙製カップは、成型時の加熱により樹脂を融着して成型される。そのため、紙製カップの紙基材に積層する樹脂として、分子量が小さく融点が低く、かつ、コスト性に優れるポリエチレンが用いられる。また、飲料又は食品等を充填して蓋材で密封する紙製カップにおいて、長期間保管する場合は、充填された内容物を保護するために酸素又は水蒸気等が透過するのを防ぐバリア性が求められる。しかしながら、ポリエチレンはバリア性を有さないため、長期間保管する紙製カップには適さない。
【0003】
バリア性を有する紙製カップとして、特許文献1に記載の紙カップがある。特許文献1に記載の紙カップは、ガスバリア層と紙基材とが、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートを用いた押出しラミネート法によって積層されている。また、ガスバリア層は、金属又は無機化合物を蒸着した蒸着層を有するプラスチックフィルムで形成され、バリア性を有する。また、ガスバリア層と紙基材とを接着剤を介さずに押出しラミネート法で積層するため、紙カップの成型時の熱によって接着剤が軟化し、さらに、紙基材に含まれている水分が水蒸気化することで発生する層間の剥離を防止し、バリア性の低下を防ぐ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013―180793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の紙カップのガスバリア層は、紙カップを成型する工程で折り曲げられることで、蒸着層にクラックが入り、バリア性が不均一になる虞がある。
【0006】
上記事情を踏まえ、本発明は、バリア性を有し、かつ、ポリエチレンを含む紙製カップに関する以上のような問題に鑑みてなされたもので、成型後でもバリア性を維持でき、かつ、成型しやすい紙製カップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の紙製カップは、略円筒形状の胴部を備える紙製カップであって、前記胴部は、前記胴部を形成する積層体の内側端部と外側端部とを重ねて貼り合わせた貼り合わせ部を有し、前記積層体は、紙基材と、前記紙基材の内側に形成され、かつ、ポリエチレン樹脂を含む第一熱可塑性樹脂層と、前記第一熱可塑性樹脂層の内側に、ナイロン樹脂で形成され、かつ、厚さが10μm以上100μm以下であるバリア層と、を備え、前記貼り合わせ部の端面部が前記バリア層に覆われている。
【0008】
上記紙製カップでは、前記バリア層の内側に形成され、かつ、ポリエチレン樹脂を含む第二熱可塑性樹脂層を備えてもよい。
【0009】
上記紙製カップでは、前記第一熱可塑性樹脂層の厚さが10μm以上100μm以下であってもよい。
【0010】
上記紙製カップでは、前記第一熱可塑性樹脂層の融点は、前記バリア層の融点よりも低くてもよい。
【0011】
上記紙製カップでは、酸素透過率が0.01cc/pkg・day以下であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の紙製カップによれば、成型後でもバリア性を維持でき、かつ、成型しやすい紙製カップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る蓋付きカップの断面図である。
図2】本実施形態に係る紙製カップの製造工程を示す説明図である。
図3】本実施形態に係る積層体の断面図である。
図4】本実施形態に係る内側端部、外側端部および貼り合わせ部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態について、図1から図4を参照して説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る蓋付きカップ100の断面図である。
蓋付きカップ100は、飲料を充填した紙製カップ110の開口部に蓋材120を密封シールしたカップである。蓋付きカップ100において、蓋材120でシールされているため、飲料は紙製カップ110の外部へ漏れない。
【0016】
蓋付きカップ100は、蓋材120がシールされた側を上にして机の上等に置くことができる。本実施形態では、置いた状態の蓋付きカップ100における鉛直方向を「上下方向V」、鉛直上向きを上下方向Vにおける「上側UP」、鉛直下向きを上下方向Vにおける「下側LO」と定義する。また、蓋付きカップ100の上下方向Vにおける中心軸を「中心軸O」、中心軸Oと略垂直な方向を「径方向R」、径方向Rにおいて中心軸Oに向かう方向を「内側IN」、径方向Rにおいて中心軸Oから離れる方向を「外側OU」と定義する。
【0017】
紙製カップ110は、胴部10と底部20とを備える有底の略円筒形状である。
図2は、紙製カップ110の製造工程を示す説明図である。図2(a)は胴部10を形成する胴部シート10aの正面図である。図2(b)は、胴部シート10aを略円筒形状に成型した胴部10の斜視図である。
【0018】
胴部シート10aは、シート状の積層体で形成され、図2(a)に示すように、略扇形状である。胴部シート10aは、略扇形状の一方の側端部である内側端部11と、もう一方の側端部である外側端部12とを有する。内側端部11の外側OUに外側端部12を重ね合わせて貼り合わせ部10pを形成し、貼り合わせ部10pで内側端部11と外側端部12とを接合して、図2(b)に示す略円筒形状の胴部10を形成する。また、胴部10は、上側UPに向けて拡径している。
【0019】
図2(c)は、底部20を形成する底部シート20aの正面図である。図2(d)は、底部シート20aの周縁部20eを下側LOに屈曲して成型した底部20の断面図である。
【0020】
底部シート20aは、シート状の積層体で形成され、図2(c)に示すように、略円形状である。図2(d)に示すように、底部シート20aの周縁部20eを下側LOに屈曲させて、底部20を形成する。
【0021】
胴部10の下側LOに底部20を接合して、図1に示す紙製カップ110を形成する。底部20は紙製カップ110の底面110bを形成する。また、底面110bは、中心軸Oに略垂直である。
【0022】
紙製カップ110は、フランジ部110fを備える。フランジ部110fは、胴部10の上側UPの開口部周縁の全周に配置され、開口部周縁を外側OUに巻き込むトップカール処理を施した後、さらに、その上側UPの面110sが平坦になるように上下方向Vに押しつぶされて形成される。紙製カップ110の上側UPの面110sは蓋材120とシールされる面であり、紙製カップ110の底面110bと略平行な面である。
【0023】
フランジ部110fの径方向Rにおける幅は、フランジ部110fの全周で略一致しており、蓋材120をシールするのに十分な幅である。紙製カップ110の底面110bから上側UPの面110sまでの上下方向Vの高さは、フランジ部110fの全周で略一致する。
【0024】
蓋材120は、紙製カップ110の開口部とフランジ部110fとを覆う形状を有する。蓋材120は、紙製カップ110の上側UPの面110sとシール可能な材質で形成されている。そのため、紙製カップ110の上側UPの面110sと蓋材120とをシールすることで、蓋付きカップ100の内容物を密封することができる。
【0025】
胴部10および底部20は、シート状の積層体30で形成されている。
図3は、積層体30の断面図であり、一例として、胴部10を形成する積層体の断面を図示している。胴部10を形成する積層体の場合、積層体30の厚さ方向Tは蓋付きカップ100の径方向Rと略一致し、積層体30において、紙製カップ110に内容物が充填される側が内側IN、内容物が充填される側と反対側が外側OUである。
底部20を形成する積層体においても同様に、紙製カップ110に内容物が充填される側が内側IN、内容物が充填される側と反対側が外側OUである。
【0026】
積層体30は、バリア積層体1と中間樹脂層2と紙基材3と外側樹脂層4とを備える。バリア積層体1は、積層体30の内側INに積層された層であり、外側OUから順に、第一熱可塑性樹脂層1aとバリア層1bと第二熱可塑性樹脂層1cとを積層した複層フィルムである。
【0027】
第一熱可塑性樹脂層1aは、バリア層1bの外側OUに溶融押出法により形成された層である。第一熱可塑性樹脂層1aとして、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)および高密度ポリエチレン(HDPE)並びにこれらの混合物等のポリエチレン樹脂を採用できる。第一熱可塑性樹脂層1aを溶融押出法で形成するときにアンカーコート剤を用いてもよい。アンカーコート剤を用いることで、第一熱可塑性樹脂層1aとバリア層1bとの密着性を向上できる。
【0028】
第一熱可塑性樹脂層1aの厚さは、10μm以上100μm以下である。第一熱可塑性樹脂層1aの融点は90℃以上125℃以下であり、90℃以上115℃以下がより好ましい。
【0029】
バリア層1bは、バリア性を有する層であり、ナイロン6又はMXD6等のナイロン樹脂で形成された層である。ナイロン樹脂はバリア性と柔軟性とを有するため、紙製カップ110を成型する工程で折り曲げられてもクラックが入らず、バリア性が低下しない。
【0030】
バリア層1bの厚さは10μm以上100μm以下である。バリア層1bの厚さが10μm未満だとバリア性が不十分である。また、バリア層1bを溶融押出法等で形成する場合、バリア層1bの厚さが100μmを超えると形成するのが難しく、また、コストが増大するため好ましくない。バリア層1bの融点は215℃以上245℃以下である。
【0031】
第二熱可塑性樹脂層1cは、バリア層1bの内側INに溶融押出法により形成された層である。第二熱可塑性樹脂層1cとして、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)および高密度ポリエチレン(HDPE)並びにこれらの混合物等のポリエチレン樹脂を採用できる。第二熱可塑性樹脂層1cを溶融押出法で形成するときにアンカーコート剤を用いてもよい。アンカーコート剤を用いることで、第二熱可塑性樹脂層1cとバリア層1bとの密着性を向上できる。
【0032】
第二熱可塑性樹脂層1cの厚さは、10μm以上100μm以下である。第二熱可塑性樹脂層1cの融点は90℃以上125℃以下であり、90℃以上115℃以下がより好ましい。
【0033】
中間樹脂層2は、バリア積層体1の外側OUに溶融押出法により形成された層である。中間樹脂層2として、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)および高密度ポリエチレン(HDPE)並びにこれらの混合物等のポリエチレン樹脂を採用できる。中間樹脂層2を溶融押出法で形成するときにアンカーコート剤を用いてもよい。アンカーコート剤を用いることで、バリア積層体1と中間樹脂層2との密着性を向上できる。
【0034】
紙基材3は、中間樹脂層2の外側OUに積層された層である。紙基材3として、紙製カップ110の内容物の要求に合わせて耐酸紙又は遮光紙等の紙材を採用できる。紙基材3の坪量は、100g/m以上500g/m以下である。紙基材3の坪量が100g/m未満であると、積層体30の剛性が低く、紙製カップ110が自立しない。また、紙基材3の坪量が500g/mを超えると、積層体30の剛性が高く、フランジ部110fを形成するトップカール処理を施せない。
【0035】
外側樹脂層4は、紙基材3の外側OUに溶融押出法により形成された層である。外側樹脂層4として、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)および高密度ポリエチレン(HDPE)並びにこれらの混合物等のポリエチレン樹脂を採用できる。外側樹脂層4を溶融押出法で形成するときにアンカーコート剤を用いてもよい。アンカーコート剤を用いることで、紙基材3と外側樹脂層4との密着性を向上できる。
【0036】
次に、紙製カップ110の製造方法について説明する。
積層体30で形成された胴部シート10aと底部シート20aとを準備する。図2に示すように、胴部シート10aの内側端部11と外側端部12とを重ね合わせて接合して、略円筒形状の胴部10を得る。
【0037】
ここで、内側端部11と外側端部12との接合について、図4を参照して説明する。
図4(a)は、接合する前の内側端部11の断面図である。内側端部11は、紙基材3が積層されない内側延設部13を有する。また、図4(b)は、接合する前の外側端部12の断面図である。外側端部12は、紙基材3が積層されない外側延設部14を有する。
【0038】
図4(c)は、貼り合わせ部10pの断面図である。図4(c)に示すように、内側延設部13を外側OUに折り返した内側端部11と、外側延設部14を外側OUに折り返した外側端部12とを接合して、貼り合わせ部10pを形成する。このとき、バリア積層体1が貼り合わせ部10pの端面部10sを覆って接合される。その結果、紙基材3の内部を通じて紙製カップ110の内側INに酸素又は水蒸気等が移動しにくい。このとき、少なくとも、内側端部11の端面がバリア層1bに覆われていればよい。さらに、内側延設部13を外側OUに折り返して接合することで、融着する樹脂の量を十分に確保できる。
【0039】
また、バリア層1bを形成するナイロン樹脂は柔軟性を有するため、貼り合わせ部10pを形成する工程で折り曲げられてもクラックが入らず、バリア性が低下しない。
【0040】
次に、底部シート20aの周縁部20eを下側LOに屈曲して、底部20を得る。
胴部10の下側LOに底部20を接合し、胴部10の上側UPの開口部周縁を外側OUに巻き込むトップカール処理を施した後、さらに、その上側UPの面110sが平坦になるように上下方向Vに押しつぶしてフランジ部110fを形成することで紙製カップ110を形成する。
【0041】
胴部シート10aの内側端部11と外側端部12との接合および胴部10と底部20との接合において、積層体30を加熱して融着させながら金型で適切な圧力をかけて接合する。積層体30は分子量が小さくて融点が低いポリエチレン樹脂で形成された層を有する。このポリエチレン樹脂で形成された層を融着して成型するため、容易に紙製カップ110を成型することができる。
【0042】
本実施形態の紙製カップ110によれば、バリア層1bにナイロン6又はMXD6等のナイロン樹脂を含むことで、バリア層1bは、バリア性と柔軟性を有する。そのため、バリア層1bは、紙製カップ110を成型する工程で折り曲げられてもクラックが入らず、バリア性が低下しない。また、バリア層1bの厚さが10μm以上100μm以下のため、十分なバリア性を有し、かつ、バリア層1bの成形性およびコスト性に優れる。さらに、貼り合わせ部10pの端面部10sがバリア層1bで覆われているため、紙基材3の内部を通じて紙製カップ110の内側INに酸素又は水蒸気等が移動しにくい。また、融点が低いポリエチレン樹脂で形成された層を融着して形成するため、容易に紙製カップ110を成型することができる。
その結果、成型後でもバリア性を維持でき、かつ、成型しやすい紙製カップ110を提供できる。
【0043】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の一実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0044】
(変形例1)
上記実施形態において、バリア積層体1の第一熱可塑性樹脂層1aおよび第二熱可塑性樹脂層1cは溶融押出法によりバリア層1bに積層されるが、バリア積層体の態様はこれに限定されない。バリア積層体の第一熱可塑性樹脂層および第二熱可塑性樹脂層は、接着剤を介してバリア層1bに積層されてもよい。接着剤を介して第一熱可塑性樹脂および第二熱可塑性樹脂層を積層する場合、接着剤の材料として、エーテル系若しくはエステル系等の主剤、芳香族系若しくは脂肪族系等の硬化剤又は有機溶剤系、水系若しくは無溶剤系の溶剤種等を用途に合わせて組み合わせて採用できる。接着剤が形成する層の厚さは、加工性の観点から1μm以上10μm以下が好ましい。
【0045】
(変形例2)
上記実施形態において、貼り合わせ部10pは、内側延設部13および外側延設部14を外側OUに折り返して接合して形成されるが、貼り合わせ部の態様はこれに限定されない。貼り合わせ部は、少なくとも内側端部11の端面部10sがバリア層1bに覆われていればよい。例えば、内側延設部13を外側OUに折り返した内側端部11と、外側延設部14を内側INに折り返した外側端部12とを重ねて貼り合わせ部を形成してもよい。また、内側延設部13を外側OUに折り返した内側端部11の外側OUから、外側延設部14を折り返さずに外側端部12を重ねて貼り合わせ部を形成してもよい。
【0046】
以下実施例により、本発明を詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
融点が215℃のナイロン樹脂で形成した厚さ15μmのバリア層1bの外側OUおよび内側INに、第一熱可塑性樹脂層1aおよび第二熱可塑性樹脂層1cとして、厚さ38μm、かつ、融点115℃の低密度ポリエチレンを積層したバリア積層体1を準備した。
バリア積層体1の外側OUに、中間樹脂層2として溶融押出法で形成したポリエチレン樹脂を介して紙基材3を積層した。紙基材3の外側OUに、外側樹脂層4として溶融押出法でポリエチレン樹脂を形成し、積層体30を形成した。
【0048】
積層体30を適切な形状に打ち抜いた胴部シート10aおよび底部シート20aで胴部10および底部20を成型した。このとき、バリア積層体1が貼り合わせ部10pの端面部10sを覆って接合されている。胴部10および底部20を熱圧着して、実施例1の紙製カップ110を形成した。
【0049】
(実施例2)
バリア層1bの厚さを10μmとし、第一熱可塑性樹脂層1aおよび第二熱可塑性樹脂層1cの厚さを25μmとして融点123℃の低密度ポリエチレンを用いた以外は実施例1と同様の方法により、実施例2の紙製カップ110を形成した。
【0050】
(比較例1)
バリア層にセラミックの蒸着を施した延伸ナイロンフィルム(東洋紡株式会社製のVN130)を使用し、第一熱可塑性樹脂層1aおよび第二熱可塑性樹脂層1cの厚さを23μmとして融点109℃の低密度ポリエチレンを用いた以外は実施例1と同様の方法により、比較例1の紙製カップを形成した。
【0051】
(比較例2)
バリア層にアルミナの蒸着を施したポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製のVA136)を使用し、かつ、バリア層の厚さを12μmとし、第一熱可塑性樹脂層1aおよび第二熱可塑性樹脂層1cの厚さを24μmとして融点109℃の低密度ポリエチレンを用いた以外は実施例1と同様の方法により、比較例2の紙製カップを形成した。
【0052】
(比較例3)
バリア層にポリエチレンテレフタレート(PET)を使用し、かつ、バリア層の厚さを12μmとし、第一熱可塑性樹脂層1aおよび第二熱可塑性樹脂層1cとして融点109℃の低密度ポリエチレンを用いて、第一熱可塑性樹脂層1aの厚さを15μm、第二熱可塑性樹脂層1cの厚さを60μmとした以外は実施例1と同様の方法により、比較例3の紙製カップを形成した。
【0053】
(実験1)
実施例1-2および比較例1―3の紙製カップに成型性評価試験を実施した。成型性評価試験では、紙製カップにテレピン油をスプレー噴射して30分間静置した後、紙製カップの貼り合わせ部を剥離し、全体の漏れの有無を目視確認した。
漏れがあるものは紙製カップを成型できていないとし、不合格とした。
〇(Good):漏れが無く、成型可能である。
×(Poor):漏れが有り、成型不可能である。
【0054】
(実験2)
実施例1-2および比較例1―3の紙製カップにバリア性評価試験を実施した。バリア性評価試験では、酸素透過率測定装置OX-TRAN2/21(MOCON社製)と紙製カップとを銅管で接続し、酸素透過率を測定した。試験温度は30℃、試験湿度は70%である。
評価基準は3段階とし、評価〇以上を合格とした。
◎(Very Good):0.01cc/pack・day未満。
〇(Good):0.01cc/pack・day以上1cc/pack・day以下。
×(Poor):1cc/pack・dayを超える。
【0055】
(実験3)
実施例1-2および比較例1―3の紙製カップにバリア均一性試験を実施した。バリア均一性試験では、ショ糖脂肪酸エステル、寒天末、水酸化ナトリウム、メチレンブルーおよびD-グルコースを混合して加熱溶解した薬剤を、紙製カップに空気が残存しないように直ちに充填および封緘した。酸素透過部分は、透明な薬剤が透明青色に変色するため、変色の程度でバリア均一性を評価した。
評価基準は2段階とし、評価×以外を合格とした。
〇(Good):バリア性が均一である。
×(Poor):バリア性が均一でない。
【0056】
(実験結果)
実験1-3の結果を表1に示す。
実施例1-2はすべての実験において良好な結果を示した。比較例1―2は実験1および実験3において不合格であった。
【0057】
【表1】
【符号の説明】
【0058】
100 蓋付きカップ
110 紙製カップ
120 蓋材
10 胴部
10a 胴部シート
10p 貼り合わせ部
10s 端面部
11 内側端部
12 外側端部
20 底部
20a 底部シート
30 積層体
1 バリア積層体
1a 第一熱可塑性樹脂層
1b バリア層
1c 第二熱可塑性樹脂層
2 中間樹脂層
3 紙基材
4 外側樹脂層
R 径方向
T 厚さ方向
IN 内側
OU 外側
図1
図2
図3
図4