(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020730
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】排水トラップ、排水トラップと異物収集器具との位置決め構造及び浴室ユニット
(51)【国際特許分類】
E03C 1/282 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
E03C1/282
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123129
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000108661
【氏名又は名称】タカラスタンダード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】植田 勇輔
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061DA01
2D061DD08
2D061DE06
2D061DE13
(57)【要約】
【課題】異物収集器具を取り付ける際の位置決めが容易であり、かつ、清掃が容易な排水トラップを提供する。
【解決手段】排水トラップ1は、トラップフランジ9の上面と連接した外縁部12と、この外縁部12から内側に向かうにしたがって下方に向けて傾斜した案内面部13と、この案内面部13の下端から内側に向けて伸びた内縁部14とを有し、外縁部12と案内面部13との角15の曲率半径R
1が、0.6から3.0ミリメートルであり、案内面部13と内縁部14との隅16の曲率半径R
2が、0.6から3.0ミリメートルである。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水時の異物を収集する異物収集器具が着脱される排水口縁部を有し、
前記排水口縁部の上面が、
前記異物収集器具の周縁に形成されたフランジ部の外径よりも大きな外縁部と、
前記外縁部から内側に向かうにしたがって下方に向けて傾斜した案内面部と、
前記案内面部の下端に形成されて前記フランジ部が載置される内縁部と、を有する、
ことを特徴とする排水トラップ。
【請求項2】
前記外縁部と前記案内面部との角の曲率半径が、0.6から3.0ミリメートルである、
ことを特徴とする請求項1に記載された排水トラップ。
【請求項3】
前記案内面部と前記内縁部との隅の曲率半径が、0.6から3.0ミリメートルである、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された排水トラップ。
【請求項4】
排水時の異物を収集する異物収集器具と、
前記異物収集器具が着脱される排水口縁部を有する排水トラップと、を有し、
前記排水口縁部の上面が、
前記異物収集器具の周縁に形成されたフランジ部の外径よりも大きな外縁部と、
前記外縁部から内側に向かうにしたがって下方に向けて傾斜した案内面部と、
前記案内面部の下端から内側に向けて伸びた内縁部と、を有し、
前記フランジ部が前記案内面部を滑って前記内縁部において位置決めされる、
ことを特徴とする排水トラップと異物収集器具との位置決め構造。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載された排水トラップ及び異物収集器具、又は、
請求項4に記載された排水トラップと異物収集器具との位置決め構造を有する、
ことを特徴とする浴室ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室等の排水設備である排水トラップ、排水トラップと異物収集器具との位置決め構造及び浴室ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば浴室等に備えられた排水トラップの排水口には、排水と共に流れる毛髪等の異物を収集するため、ヘアキャッチャーが着脱される。ヘアキャッチャーは椀状であり、側面の上端縁に環状のフランジ部を有している。排水口の内径は、ヘアキャッチャーのフランジ部とほぼ一致しており、排水口の内面には、突起が形成されている。したがって、突起の上にフランジ部が載せられると、フランジ部の先端が排水口の内面と対面し、フランジ部の上面が排水口の縁と同一面に揃った状態で、ヘアキャッチャーが排水口に取り付けられる。
【0003】
排水口の内径は、製品毎に異なっているため、ヘアキャッチャーも排水口の内径のサイズ毎に作製する必要があるため、非経済的であるうえ、煩雑である。ヘアキャッチャーのフランジ部が、排水口の縁に載せられる構造であれば、フランジ部の外径を予め適度な大きさに設定しておくことで、排水口の内径のサイズに関わらず、排水口にヘアキャッチャーを取り付けることができる。例えば、下記特許文献1には、排水口の縁の上面に段部が形成され、ヘアキャッチャーのフランジ部が段部に取り付けられている(以下、特許文献1に記載された発明を「文献公知1発明」と記す。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、文献公知1発明では、ヘアキャッチャーのフランジ部の外径と、排水口の段部の内径とが、ほぼ同じであるため、ヘアキャッチャーの位置決めが簡単ではない。すなわち、ヘアキャッチャーは、単に段部の周辺に置かれた程度では段部に嵌らず、段部に適切に置かれる必要がある。また、段部に水垢等が付着すると、段部の清掃が容易ではない。
【0006】
本発明は、この様な実情に鑑みて提案されたものである。本発明は、異物を収集するための器具を取り付ける際の位置決めが容易であり、かつ、清掃が容易な排水トラップ、排水トラップと異物収集器具との位置決め構造及び浴室ユニットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る排水トラップは、排水時の異物を収集する異物収集器具が着脱される排水口縁部を有し、前記排水口縁部の上面が、前記異物収集器具の周縁に形成されたフランジ部の外径よりも大きな外縁部と、前記外縁部から内側に向かうにしたがって下方に向けて傾斜した案内面部と、前記案内面部の下端に形成されて前記フランジ部が載置される内縁部と、を有する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る排水トラップは、前記外縁部と前記案内面部との角の曲率半径が、0.6から3.0ミリメートルである、ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る排水トラップは、前記案内面部と前記内縁部との隅の曲率半径が、0.6から3.0ミリメートルである、ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る排水トラップと異物収集器具との位置決め構造は、排水時の異物を収集する異物収集器具と、前記異物収集器具が着脱される排水口縁部を有する排水トラップと、を有し、前記排水口縁部の上面が、前記異物収集器具の周縁に形成されたフランジ部の外径よりも大きな外縁部と、前記外縁部から内側に向かうにしたがって下方に向けて傾斜した案内面部と、前記案内面部の下端から内側に向けて伸びた内縁部と、を有し、前記フランジ部が前記案内面部を滑って前記内縁部において位置決めされる、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る浴室ユニットは、前記排水トラップ及び前記異物収集器具、又は、前記排水トラップと異物収集器具との位置決め構造を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る排水トラップは、排水時の異物を収集する異物収集器具が着脱される排水口縁部を有し、排水口縁部の上面が、異物収集器具の周縁に形成されたフランジ部の外径よりも大きな外縁部と、外縁部から内側に向かうにしたがって下方に向けて傾斜した案内面部と、案内面部の下端に形成されてフランジ部が載置される内縁部とを有している。この構成により、排水トラップに異物収集器具が取り付けられる際、異物収集器具のフランジ部が、案内面部を滑って内縁部に向かうことで、異物収集器具が排水口縁部に案内されて自然に取り付けられる。したがって、排水トラップに異物収集器具を取り付ける際の位置決めが容易である。また、案内面部が傾斜していることから、外縁部から案内面部に渡る角が緩やかであり、同様に、案内面部から内縁部に渡る隅が緩やかである。したがって、清掃用具が、角や隅に届き易く、清掃が容易である。
【0013】
本発明に係る排水トラップは、外縁部と案内面部との角の曲率半径が、0.6から3.0ミリメートルである。したがって、清掃用具が、角に届き易く、清掃が容易である。
【0014】
本発明に係る排水トラップは、案内面部と内縁部との隅の曲率半径が、0.6から3.0ミリメートルである。したがって、清掃用具が、隅に届き易く、清掃が容易である。
【0015】
本発明に係る排水トラップと異物収集器具との位置決め構造は、排水時の異物を収集する異物収集器具と、異物収集器具が着脱される排水口縁部を有する排水トラップとを有し、排水口縁部の上面が、異物収集器具の周縁に形成されたフランジ部の外径よりも大きな外縁部と、外縁部から内側に向かうにしたがって下方に向けて傾斜した案内面部と、案内面部の下端から内側に向けて伸びた内縁部とを有し、フランジ部が案内面部を滑って内縁部において位置決めされるものである。したがって、上記した排水トラップと同じ効果を奏する。
【0016】
本発明に係る浴室ユニットは、上記した排水トラップ及び異物収集器具、又は、上記した排水トラップと異物収集器具との位置決め構造を有している。したがって、上記した排水トラップと同じ効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る排水トラップの外観斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る排水トラップと異物収集器具との位置決め構造の外観斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る排水トラップの断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る排水トラップと異物収集器具との位置決め構造の断面図である。
【
図5】
図5は、
図4のA部分を拡大したものであり、本発明の実施形態に係る排水トラップと異物収集器具との位置決め構造の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る排水トラップの実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び2には、本実施形態の排水トラップ1の外観が示され、
図3には、排水トラップ1の断面が示されている。なお、本実施形態には、本発明に係る排水トラップ1と異物収集器具17との位置決め構造の実施形態、及び、本発明に係る浴室ユニットの実施形態が含まれる。
【0019】
本実施形態に係る排水トラップ1は、浴室ユニットの洗い場に取り付けられるものであり、
図1に示されているとおり、排水と共に流れる毛髪等の異物を収集する異物収集器具17が着脱される。なお、浴室ユニットは、浴槽、洗い場、壁パネル、給水湯設備等から構成されている(何れも図示省略)。
【0020】
図1ないし3に示されているとおり、排水トラップ1は、外側本体部2と、この外側本体部2に収容された内側本体部4とを有している。外側本体部2は、桶状であり、上端が開口し、側面から排水路部3が突出している。開口した部分の内面には、ネジ溝が形成されている。内側本体部4は、外側本体部2の上端から挿入されている。
【0021】
内側本体部4は、ほぼ円筒状であり、内側に排水口5が形成されている。内側本体部4は、異物収集器具17が着脱される被着脱部6と、この被着脱部6の下部に連結されたトラップ部10とを有している。被着脱部6は、円筒状の筒部7と、この筒部7の上端に連接されて周縁から外側に向けて伸びた円環状のトラップフランジ9とを有している。筒部7の外面には、外面ネジ部8が形成され、この外面ネジ部8が外側本体部2のネジ構造と螺合している。筒部7とトラップフランジ9とが連接した部位であって、排水口5の縁には、排水口縁部11が形成されている。
【0022】
異物収集器具17は、円形の椀状であり、複数の孔18が形成されている。異物収集器具17は、半球状の底部19と、この底部19の周縁に連接された側部20と、この側部20の上端に連接されて周縁から外側に向けて伸びたフランジ部23と、このフランジ部23の一部に連接された取っ手部24とを有している。側部20は、フランジ部23側と底部19側とで直径が異なり、フランジ部23側が、直径が大きな上段側部21であり、底部19側が、直径が小さな下段側部22である。側部20の外径Dは、排水トラップ1の被着脱部6の内径(排水口5の内径)よりも小さく形成されている。取っ手部24は、フランジ部23の先端から上方に向けて伸びている。使用者は、取っ手部24を把持し、異物収集器具17を、内側本体部4の被着脱部6に置くことで、被着脱部6の排水口縁部11に取り付ける。
【0023】
ここで、排水口縁部11を図面に基づいて詳説する。
図4には、異物収集器具17が取り付けられた状態の排水トラップ1の断面が示され、
図5には、拡大された排水口縁部11が示されている。
【0024】
図4及び5に示されているとおり、排水口縁部11の上面は、トラップフランジ9の上面と連接して内側に向かうにしたがって下方に向けて傾斜して平坦に形成された外縁部12と、この外縁部12から内側に向かうにしたがって下方に向けて傾斜して平坦に形成された案内面部13と、この案内面部13の下端から内側に向けて伸びて平坦に形成された内縁部14とを有している。案内面部13は、外縁部12よりも傾斜の度合いが大きく、急である。外縁部12は、異物収集器具17のフランジ部23の外径よりも大きく形成されている。外縁部12と案内面部13との角15は、緩やかであって、曲率半径R
1が、0.6から3.0ミリメートルである。案内面部13と内縁部14との隅16は、緩やかであって、曲率半径R
2が、0.6から3.0ミリメートルである。水平に対して直角な垂直線Lを基準とする案内面部13の角度θは、3度以上、70度以下である。好ましくは、56度以上、68度以下、さらに好ましくは65度以上、67度以下、さらに好ましくは、66度程度である。
【0025】
上記のとおり形成された排水トラップ1に、異物収集器具17が取り付けられる際、異物収集器具17のフランジ部23が、案内面部13を滑って内縁部14に向かい、内縁部14に位置決めされる。すなわち、異物収集器具17は、案内面部13を滑ることで排水口縁部11に案内されて自然に取り付けられる。したがって、排水トラップ1に異物収集器具17を取り付ける際の位置決めが容易である。
【0026】
また、案内面部13が傾斜していることから、外縁部12から案内面部13に渡る角15が緩やかであり、同様に、案内面部13から内縁部14に渡る隅16が緩やかである。特に、外縁部12と案内面部13との角15は、曲率半径R1が、0.6から3.0ミリメートルであり、案内面部13と内縁部14との隅16は、曲率半径R2が、0.6から3.0ミリメートルであるため、スポンジやブラシ等の清掃用具(図示省略)が、角15や隅16に届き易く、清掃が容易である。なお、曲率半径R1、R2が、0.6ミリメートルよりも小さい場合、清掃用具が届きにくくなり、一方で、曲率半径R1、R2が、3.0ミリメートルよりも大きい場合、案内面部13の傾斜の度合いが過度に緩やかとなり、異物収集器具17の位置決めが困難となる。また、案内面部13の角度θが小さい程、清掃用具が届きにくくなり、一方で、角度θが大きい程、異物収集器具17の位置決めが困難となる。R1、R2の範囲が適切であり、角度θの範囲が適切であれば、清掃の容易性と異物収集器具17の位置決めの適切性が両立する。
【0027】
本実施形態では、異物収集器具17のフランジ部23が、排水口縁部11に載せられた状態で、異物収集器具17の側部20の外径Dが、排水トラップ1の被着脱部6の内径(排水口5の内径)よりも小さく形成されているため、排水口5の内径のサイズに関わらず、排水トラップ1に異物収集器具17を取り付けることができる。
【0028】
なお、本発明の他の実施形態では、外縁部と案内面部との角における曲率半径、及び、案内面部と内縁部との隅の曲率半径は、任意である。
【0029】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 排水トラップ
2 外側本体部
3 排水路部
4 内側本体部
5 排水口
6 被着脱部
7 筒部
8 外面ネジ部
9 トラップフランジ
10 トラップ部
11 排水口縁部
12 外縁部
13 案内面部
14 内縁部
15 角
16 隅
17 異物収集器具
18 孔
19 底部
20 側部
21 上段側部
22 下段側部
23 フランジ部
24 取っ手部
D 外径
L 垂直線
θ 角度