(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020755
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】積層フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20240207BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20240207BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240207BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20240207BHJP
C08L 23/12 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
B32B27/32
B32B27/36
B65D65/40 D
C08L23/06
C08L23/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123179
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000222462
【氏名又は名称】東レフィルム加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】徳田 浩忠
(72)【発明者】
【氏名】豊島 裕
(72)【発明者】
【氏名】大谷 博志
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD24
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA33
3E086BB51
3E086BB90
3E086DA08
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK04
4F100AK04A
4F100AK07
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK42
4F100AK42B
4F100AK63
4F100AK63C
4F100AT00C
4F100BA06
4F100CB03
4F100CB03A
4F100EH20
4F100EH20A
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100JA06
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4F100JK02
4F100JK06
4F100JL12
4F100JL12A
4J002BB031
4J002BB122
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】本発明は、容器の蓋材などに使用する際、蓋材として開封時に蓋裂け等の発生がなく、簡単に開封できる積層フィルムを提供する。
【解決手段】ヒートシール層と少なくとも1層以上の支持層を有する積層フィルムであって、ヒートシール前の破断伸度A1、破断強度B1、および、ポリエチレンテレフタレートフィルムと重ねてシール温度200℃、シール圧力0.2MPa、シール時間1秒で、ヒートシールし、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムをはがした後の破断伸度A2、破断強度B2について、長手方向と幅方向いずれも、A1/A2が2.5以下、B1/B2が3.0以下である積層フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシール層と少なくとも1層以上の支持層を有する積層フィルムであって、
ヒートシール前の破断伸度A1、破断強度B1、および、ポリエチレンテレフタレートフィルムと重ねてシール温度200℃、シール圧力0.2MPa、シール時間1秒で、ヒートシールし、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムをはがした後の破断伸度A2、破断強度B2について、
長手方向と幅方向いずれも、A1/A2が2.5以下、B1/B2が3.0以下である積層フィルム。
【請求項2】
前記ヒートシール層を、ポリプロピレンシートと140℃で1秒ヒートシールしたときのヒートシール度が10N/15mm以上である請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記ヒートシール層を、ポリプロピレンシートと180℃で4秒ヒートシールしたときのヒートシール強度と、同温度で1秒ヒートシールしたときのピール強度が、いずれも20N/15mm以上28N/15mm以下の範囲で、それらの差が3.5N/15mm以下である請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記ヒートシール層が、ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂を混合した樹脂組成物からなり、ポリエチレン系樹脂が51質量%~80質量%で、ポリプロピレン系樹脂が20質量%~49質量%である請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記支持層が、直鎖状低密度ポリエチレンを50質量%以上含有する請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記ヒートシール層のポリエチレン系樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレンを50質量%以上含有し、ポリプロピレン系樹脂がシングルサイト触媒法のポリプロピレン系樹脂を20質量%以上含む請求項4または5に記載の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた開封性を有する積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
包装体の本来の目的は内容物を保護することであって、輸送や陳列時の外力に抗して容易に開封されないという性能が重要である。一方で使用時に蓋裂けなどが発生せず正常に、簡単に開封できる易開封性が求められる。
【0003】
特に近年高齢者人口の増加や個食化が進み、利便性が良い容易に開封できる包装体への要望が高まってきた。易開封性の包装体としては、種々のものが提案されており、イージーピールと呼ばれる包装体は、開封性を付与したシーラントフィルムを用いるものであって、ゼリー、ヨーグルト、プリンなどのデザートや米飯、総菜などのカップ容器の蓋材、ハム、ベーコンなどの畜肉加工品のパックなどに広範囲に用いられている。
【0004】
シーラントフィルムの易開封性として、特定の比率でポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂を混合したヒートシール層からなる共押出多層フィルムが提案されている。(例えば特許文献1、2参照)
しかし、前記特許文献1、2で提案された共押出多層フィルムをシーラントフィルムとして使用した場合であっても、シール条件が変化した場合、開封強度が強くなり、適度な力で開封できなかったり、開封途中で蓋が裂けてしまったりする問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-95162号公報
【特許文献2】特開2019-209541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、容器の蓋材などに使用する際、蓋材として打抜き性と開封時に蓋裂け等の発生がなく、簡単に開封できる積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下のとおりである。
【0008】
ヒートシール層と少なくとも1層以上の支持層を有する積層フィルムであって、ヒートシール前の破断伸度A1、破断強度B1、および、ポリエチレンテレフタレートフィルムと重ねてシール温度200℃、シール圧力0.2MPa、シール時間1秒で、ヒートシールし、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムをはがした後の破断伸度A2、破断強度B2について、長手方向と幅方向いずれも、A1/A2が2.5以下、B1/B2が3.0以下である積層フィルムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層フィルムは、蓋材として開封時に蓋裂け等の発生がなく正常に開封でき、また適度な力で容易に開封することができる。さらに二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルム、印刷紙、金属箔などから選ばれる少なくとも1層を前記積層フィルムの支持層側に積層することで、蓋材として開封時の蓋裂け発生がなく正常に開封できる包装体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の積層フィルムについて具体的に説明する。
【0011】
本発明の積層フィルムは、ヒートシール可能なヒートシール層と、1層以上の支持層を有する積層フィルムであり、ヒートシール層は易開封性を有し、少なくとも1層以上の支持層を積層することで、開封時の蓋裂けの発生がなく正常に開封することができる。
本発明の積層フィルムは支持層は1層でも製膜性は良好で、開封時の蓋裂け発生がなく正常に開封することができるが、支持層を2層とすることにより、支持層1で製膜速度の上昇などの製膜性向上と、支持層2で蓋材に用いたときの開封時の蓋裂け抑制を付与することができる。
【0012】
本発明の積層フィルムは、ヒートシール層と少なくとも1層以上の支持層を有する積層フィルムであって、その積層フィルムのヒートシール前の破断伸度A1、破断強度B1と、200℃で1秒ヒートシールした後の破断伸度A2、破断強度B2について、該積層フィルム長手方向と幅方向いずれもA1/A2が2.5以下、B1/B2が3.0以下であり、好ましくは、A1/A2が2.3以下、B1/B2が2.8以下、いずれも下限は1.0である。
【0013】
本発明の積層フィルムは、フィルム長手方向と幅方向いずれもA1/A2が2.5以下とすることで、フィルムに柔軟性が増し、開封時の蓋裂け発生がなくなる。フィルム長手方向と幅方向いずれもB1/B2が3.0以下とすることで、フィルム製膜時の巻取り時にシワの発生がなく、製膜性が良好となる。
【0014】
本発明の積層フィルムは、該積層フィルムのヒートシール層を、ポリプロピレンシートと140℃で1秒ヒートシールしたときのヒートシール強度が10N/15mm以上であることが好ましく、12N/15mm以上がより好ましい。ポリプロピレンシートと140℃で1秒ヒートシールしたときのヒートシール強度が10N/15mm以上であることで、ヒートシール温度が低温の140℃からの、広い温度範囲でヒートシール性がより良好となり、包装材の製造および包装材への内容物充填時の作業性がより高くなるので好ましい。
【0015】
本発明の積層フィルムのヒートシール層を、ポリプロピレンシートと180℃で4秒ヒートシールしたときと、1秒ヒートシールしたときのヒートシール強度が、いずれも20N/15mm以上28N/15mm以下の範囲で、それらの差が3.5N/15mmm以下とすることが好ましい。
【0016】
上記の140℃1秒でのヒートシール強度が10N/15mm以上で、かつ、180℃で4秒と1秒でのヒートシール強度がいずれも20N/15mm以上28N/15mm以下の範囲で、その差が3.5N/15mmm以下とすることで、シール温度依存性が小さく、広い温度範囲でヒートシール性がより良好となり、包装材の製造および包装材への内容物充填時の作業性がより高くなる。
【0017】
本発明の積層フィルムのヒートシール層は、ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂を混合した樹脂組成物からなることが好ましく、さらに、ポリエチレン系樹脂が51質量%~80質量%、ポリプロピレン系樹脂が20質量%~49質量%混合した樹脂組成物であることが、シール温度依存性が小さく、広い温度範囲でヒートシール性が良好となるので好ましい。
【0018】
上記ポリエチレン系樹脂としては、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマーなどの少なくとも1種類以上をあげることができる。なかでも、直鎖状低密度ポリエチレンとエチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマーとの混合樹脂組成が好ましい。
【0019】
上記直鎖状低密度ポリエチレンは、密度0.910~0.940g/cm3、メルトフローレート(以下、MFRと略称することがある)は、190℃で1.0~40.0g/10分の範囲が好ましく、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマーは、密度0.865~0.895g/cm3で、MFRが190℃で0.5~10.0g/10分の範囲であることが、それぞれの混合性が良く好ましい。
【0020】
上記ヒートシール層のポリプロピレン系樹脂は、プロピレンとコモノマーとのエチレン・プロピレンランダム共重合体が好ましく、コモノマーはエチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン等から好ましく選ぶことができ、コモノマーが5質量%未満のものが好ましい。
【0021】
上記ポリプロピレン系樹脂には、シングルサイト触媒(メタロセン触媒)などを用いて重合されたポリプロピレン系樹脂を含むことが、上記ポリエチレン系樹脂との混合性がよく、シール温度依存性が小さく、低温からシール可能で広い温度範囲でヒートシール性が良好となり好ましい。
【0022】
シングルサイト触媒を用いて重合されるポリプロピレン系樹脂は、マルチサイト触媒法(チーグラー・ナッタ触媒)を用いた場合よりも、分子量分布が狭く、組成分布が狭く、低規則性成分が少ないことがあり、そのため、低温シール性に優れ、剛性が強く、引張強度、耐衝撃性が高いことがある。
【0023】
シングルサイト触媒の種類は特に限定されないが、代表的な例としてメタロセン触媒が挙げられる。メタロセン系ポリプロピレンの製造には、一般的に(i)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆるメタロセン化合物)と、(ii)メタロセン化合物と反騰して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒を用いることが例示される。この助触媒は必要により、有機アルミニウム化合物などで反応処理されていてもよい。メタロセン化合物は、好ましくはプロピレンの立体規則性を有する重合が可能となる架橋メタロセン化合物であり、より好ましくはプロピレンのアイソタクチック規則性を有する重合が可能となる架橋メタロセン化合物である。
【0024】
シングルサイト触媒を用いて製造されるポリプロピレン系樹脂の製造方法は、特に制限はなく公知のスラリー重合法、バルク重合法、気相重合法等を用いることができる。また多段重合法を利用して製造することも可能である。
【0025】
シングルサイト触媒を用いて製造されるポリプロピレン系樹脂の融点は、120~160℃が好ましく、140℃以下がより好ましく、更にビカット軟化温度が100~135℃が好ましく、この温度範囲であれば、低温からヒートシールができ、より良好なフィルムが得られる。
【0026】
上記ポリプロピレン系樹脂の密度は、0.87~0.93g/cm3、MFRは230℃で1~30g/分の範囲が好ましく、その場合、製膜性がよく、ヒートシール強度も適度で好ましい。
【0027】
上記ヒートシール層の樹脂組成は、上記の通り、ポリエチレン系樹脂が51~80質量%とポリプロピレン系樹脂が20質量%~49質量%を混合した樹脂組成物からなることが好ましく、容器蓋材として用いたときにヒートシール層が凝集破壊して、ヒートシール温度140℃~180℃の範囲で、ヒートシール強度が10~28N/15mmの範囲となり、開封時の糸引きがなく、より開封性が良好なフィルムが得られる。
【0028】
本発明の積層フィルムの支持層は、直鎖状低密度ポリエチレンが50質量%以上であることが好ましい。上記直鎖状低密度ポリエチレンが50質量%未満では、積層フィルムの柔軟性が低下することがあり、開封時にフィルム裂けが発生し、容器の蓋材と用いた時に正常に開封できなくなることがある。支持層が2層以上の場合、いずれの支持層も直鎖状低密度ポリエチレンが50質量%以上であることが好ましい。
【0029】
上記直鎖状低密度ポリエチレンは、シングルサイト触媒法、マルチサイト触媒法を用いて得られたものであってもよく、コモノマーとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンから選ぶことができる。直鎖状低密度ポリエチレンは、高圧法低密度ポリエチレンより融点(Tm)が高い場合があり、フィルムの耐熱性を向上させ、耐寒性も優れるため、耐蓋裂け性が強くなることがある。密度は0.905~0.95g/cm3の範囲が好ましく、0.910~0.940g/cm3の範囲がより好ましい。MFRは190℃で0.5~100g/10分の範囲が好ましく、1~20g/10分の範囲がより好ましい。
【0030】
上記支持層の直鎖状低密度ポリエチレン以外の樹脂としては、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・プロピレンブロック共重合体、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体エラストマーから選ばれる少なくとも1種以上であることが、直鎖状低密度ポリエチレンへの分散性がよく好ましい。
【0031】
本発明における支持層とヒートシール層には本発明の目的を損なわない範囲で、フィルム加工に適した滑り性やラミネート適性を確保するため、特定の添加剤、具体的にはエルカ酸アミドなどの有機滑剤、分子量500以上の酸化防止剤、シリカ、ゼオライト、炭酸カルシウムなどの無機粒子や、ポリメチルメタクリレート架橋粒子などの有機粒子を選択して使用してもよい。また、製膜性を良好にする酸化防止剤、耐熱安定剤、帯電防止剤等を含むことができる。支持層には本発明の効果を阻害しない範囲であれば、必要に応じて本発明の積層フィルムを生産する際に生じる耳やスリット屑などを混合して使用することができる。
【0032】
本発明における支持層とヒートシール層には、環境負荷低減を目的として植物由来のポリエチレン系樹脂や植物由来のポリプロピレン系樹脂(以下、バイオマス樹脂ということもある。)を選択して使用してもよい。その際、全組成中の植物由来の原料の比率(質量%)を表す指標は、バイオマス度といわれ、植物由来の原料中には一定濃度で含まれ、石油由来の原料中には殆ど存在しない放射性炭素(C14)の濃度を加速器質量分析により測定することで、バイオマス度(%)を算出することができる。しかし、近年は、実際の製品を加速器質量分析しないでも、原料メーカーから各植物由来の原料の最小バイオマス度の値が提供されているので、これら原料メーカーから提供される各植物由来の原料の各最小バイオマス度と、各植物由来の原料の配合量とに基づいて、全組成中の植物由来の原料の比率(%)であるバイオマス度を略正確に算出することができる。
【0033】
植物由来の樹脂としては、ポリテルペン樹脂を挙げることができる。ポリテルペン樹脂としては、αピネン、βピネン、ジペンテン、スチレン変性テルペンおよびそれらの水素添加品が挙げられる。
【0034】
本発明の積層フィルムに植物由来の樹脂を添加した場合におけるバイオマス度は、1質量%以上45質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以上40質量%以下である。バイオマス度1質量%未満では環境負荷低減への貢献度は低く、バイオマス度が高いほど、環境負荷の低減への貢献度が高くなるが45質量%を超えると製膜性が悪化することがあり、フィルムが脆くなって加工性が悪化する場合がある。
【0035】
本発明の積層フィルムの厚さは15~100μmが好ましい。支持層の厚さは10~70μmが好ましく、更に好ましくは13~60μmの範囲のものが、容器蓋材として用いたときの打ち抜き性と取り扱いがよく好適である。
【0036】
ヒートシール層の厚さは、1~30μm、好ましくは1.5~20μmの範囲が好適である。ヒートシール層の厚さが30μmを超えると剥離する際、糸引き、フェザリング、膜残りと呼ばれる剥離外観不良が発生することがあり、ヒートシール層の厚さが1μm未満であると安定したヒートシール強度が得られないことがある。
【0037】
ここで、糸引きとは開封時にフィルムが糸のように伸びて剥離する状態を言い、またフェザリング、膜残りは開封時にフィルムが被着体の容器に残って剥離してしまう状態のことを言う。
【0038】
本発明の積層フィルムは、支持層側にポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム、印刷紙、金属箔から選ばれる少なくとも1層の他基材層を必要に応じて、単独、あるいは、組合せで積層して使用するのが好ましい。
【0039】
ポリアミドフィルムとしては、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン66などが挙げられ、なかでも二軸延伸ナイロン66フィルムが、耐熱性、耐湿性の面でより好ましい。
【0040】
ポリエステルフィルムとしては、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETと略称することがある。)、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムなどがあげられ、中でも二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが、耐熱性とフィルム価格等で総合的により好ましい。
【0041】
前記ポリアミドフィルム、または、ポリエステルフィルムの厚みは、5~100μmの範囲が好ましく、特に、12~50μmの範囲であると印刷加工適性が良く、蓋材とした場合に、耐蓋裂け性と打ち抜き性から好ましい。
【0042】
金属箔としては、アルミ箔、銅箔などが挙げられ、なかでもアルミ箔がより好ましい。金属箔の厚さとしては、5~30μmの範囲であることが、蓋材とした場合に、打ち抜き性、取り扱い性および経済性から好ましい。
【0043】
印刷紙としては、合成紙、上質紙、中質紙、アート紙、コート紙、更紙などが挙げられるが、印刷の出来具合からアート紙が好ましい。
【0044】
支持層側にこれらの他基材層を積層する方法としては、特に限定されないが、接着剤、ホットメルト剤、低融点の押出ラミネート樹脂を介して積層する方法が挙げられる。
【0045】
次に、本発明の積層フィルムの製造法の一例を説明する。
【0046】
3台の押出機を用いて、1台の押出機から、支持層1として、密度が0.90~0.97g/cm3、MFR(190℃)が、1.0~40.0g/10分の範囲のポリエチレン系樹脂を180~250℃で押出し、
もう1台の押出機から、支持層2として、密度が0.90~0.97g/cm3、MFR(190℃)が、1.0~40.0g/10分の範囲のポリエチレン系樹脂を180~250℃で押出、
もう一台の押出機からヒートシール層として、密度が0.90~0.94g/cm3、MFR(190℃)が、1.0~40.0g/10分の範囲の直鎖状低密度ポリエチレンと密度が0.87~0.93g/cm3、MFR(230℃)が1~40g/分の範囲のエチレン・プロピレンランダム共重合体を混合した樹脂組成物を200~250℃で押出して、共押出多層Tダイで積層する。ここで、支持層1/支持層2/ヒートシール層の厚みを、例えば5μm/45μm/5μmとなるようにフィルム状に押出し、25~50℃の冷却ロールでキャスト冷却固化し、積層フィルムとする。続いて、必要に応じ支持層1の表面にコロナ放電処理を施す。
【実施例0047】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明における特性の測定方法並びに効果の評価方法は、次の通りである。
【0048】
(1)樹脂の密度
JIS K 7112(1980)に規定された密度勾配管法に従い密度を測定した。
【0049】
(2)フィルムの厚さ
ダイヤルゲージ式厚さ計(JIS B 7509(1992)、測定子5mmΦ平型)を用いて、フィルムの長手方向及び幅方向に10cm間隔で10点測定して、その平均値とした。
【0050】
(3)各層の厚さ
フィルムの断面をミクロトームにて切り出し、その断面についてデジタルマイクロスコープVHX-5000形(株式会社キーエンス製)を用いて1000倍に拡大観察して撮影した断面写真を用いて、各層の厚さ方向の距離を計測し、拡大倍率から逆算して各層の厚みを求めた。尚、各層の厚さを求めるに当たっては、互いに異なる測定視野から任意に選んだ計5箇所の断面写真計5枚を使用し、それらの平均値として算出した。
【0051】
(4)メルトフローレート(MFR)
JIS K 7210(1999)に準拠して、ポリエチレン系樹脂は190℃、ポリプロピレン系樹脂は230℃で測定した。
【0052】
(5)シール用複合フィルム
積層フィルムの支持層側に、ポリウレタン接着剤を用いて塗布量2g/m2で厚さ12μmのPETをドライラミネートし、40℃、72時間エージングしたサンプルをシール用複合フィルムとした。
【0053】
(6)評価用ポリプロピレンシート(被着体)
押出機からホモポリプロピレン(後述のPP-3)樹脂を温度220~230℃で溶融し、口金よりフィルム状に押出し、25~50℃の冷却ロールでキャスト冷却固化し、厚さ300μmの評価用ポリプロピレンシートを作成した。
【0054】
(7)ヒートシール前および200℃シール後のフィルム破断伸度、破断強度
積層フィルムのヒートシール前の破断伸度と破断強度は、23℃室温下で株式会社オリエンテック製のテンシロン(RTC-1210A)を使用して、引張速度1000mm/minとし、その他は、JIS K 7127に準拠して測定した。
【0055】
200℃シール後のフィルム破断伸度、破断強度は、積層フィルムの両面に厚さ12μmのPET(東レ株式会社性“ルミラー(登録商標)”P60)を重ねて、テスター産業株式会社製の平板ヒートシールテスター(TP-701B)を使用し、シール温度200℃、シール圧力0.2MPa、シール時間1秒の条件で支持層側から片面加熱して熱処理した後、重ねていた厚さ12μmのPETを23℃の室温ではがして、熱処理した箇所について、23℃室温下で株式会社オリエンテック製のテンシロン(RTC-1210A)を使用して引張速度1000mm/minとし、その他は、JIS K 7127に準拠し測定した。
【0056】
(8)シール用複合フィルムの作成方法
積層フィルムの支持層側に厚さ12μmのPETをポリウレタン接着剤で塗布量2g/m2でドライラミネートし、40℃、72時間エージングしたサンプルをシール用複合フィルムとした。
【0057】
(9)ヒートシール強度
(8)で作成したシール用複合フィルムを100mm×15mmに切り出し、ヒートシール層と(6)で作成した300μmの評価用ポリプロピレンシートを重ねて、テスター産業株式会社製の平板シールテスター(TP-701B)を使用し、シール温度140℃、シール圧力0.2MPa、シール時間1秒で、PET側から片面加熱してヒートシールしたサンプルを、23℃室温下で株式会社オリエンテック製のテンシロン(RTC-1210A)を使用して300mm/分の引張速度で、180°剥離したときのヒートシール強度を測定した。そのとき、1試料について、n数10の測定値の平均値をとり、10N/15mm以上であるものを低温シール性と密封性、および剥離性が良好で○とし、10N/15mm未満のものを×とした。
【0058】
(10)ヒートシール強度の秒数依存性
(8)で作成したシール用複合フィルムを100mm×15mmに切り出し、ヒートシール層と(6)で作成した300μmの評価用ポリプロピレンシートに重ねて、テスター産業株式会社製の平板シールテスター(TP-701B)を使用し、シール温度180℃、シール圧力0.2MPa、シール時間1秒と4秒でPET側から片面加熱してヒートシールしたサンプルを23℃室温下で株式会社オリエンテック製のテンシロン(RTC-1210A)を使用して300mm/分の引張速度で、180°剥離したときのヒートシール強度を測定した。そのとき、1試料について、n数10の測定値の平均値をとり、20~28N/15mmの範囲で、シール時間1秒と4秒の差が3.5N/15mm以下であるものを密封性と剥離性が良好で、包装材の製造および包装材への内容物充填時の作業性が高くて○とし、該範囲を外れたものを×とした。
【0059】
(11)剥離外観
(9)で作成したヒートシール強度測定サンプルを手で剥離したとき、剥離外観を目視で評価し、糸引き、膜残りを下記の通り、判定した。
○:糸引き、膜残りが見られない。×:1.5mm以上の長い糸引き、膜残りが見られる。
【0060】
(12)蓋裂け性
(8)で作成したシール用複合フィルムを100mm×100mmにサンプルを切り出し、ヒートシール層とポリプロピレン製容器(95Φ×61.9H、東缶工業株式会社製)に重ねて、エーシンパック工業株式会社製のハンドシーラーを使用し、ヒートシール温度200℃、シール圧力0.3MPa、シール時間1秒の条件でヒートシールしたサンプルを作成し、手で剥離したときに、複合フィルムが裂けないものを○とし、複合フィルムが裂けたものを×とした。
【0061】
本実施例で使用した原料は次の通りである。
(1)1-ブテン共重合直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)
MFR=7.0g/10分、密度=0.920g/cm3、Tm=123℃
(2)1-オクテン共重合直鎖状低密度ポリエチレン(LL-2)
MFR=2.2g/10分、密度=0.921g/cm3、Tm=120℃
(3)高圧法低密度ポリエチレン(LD-1)
MFR=7.0g/10分、密度=0.919g/cm3、Tm=106℃
(4)高密度ポリエチレン(HD-1)
MFR=8.0g/10分、密度=0.961g/cm3、Tm=130℃
(5)シングルサイト触媒法のエチレン・プロピレンランダム共重合体(PP-1)
MFR=7.0g/10分、密度=0.900g/cm3、Tm=120℃
(6)マルチサイト触媒法のエチレン・プロピレンランダム共重合体(PP-2)
MFR=6.0g/10分、密度=0.900g/cm3、Tm=145℃
(7)エチレン-α-オレフィンランダム共重合体エラストマー(E-1)
MFR=3.6g/10分、密度0.885g/cm3
(8)植物由来のポリテルペン樹脂(PT-1)
軟化点=115℃、バイオマス度=90%
(9)ホモポリプロピレン(PP-3)
MFR=8.0g/10分、密度=0.900g/cm3。
【0062】
実施例1
支持層1、2として、それぞれ1-ブテン共重合直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)100質量%を用い、ヒートシール層として、シングルサイト触媒法のエチレン・プロピレンランダムコポリマー(PP-1)30質量%と1-ブテン共重合直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)70質量%を混合した樹脂組成物を用い、3種3層無延伸フィルム成型機の押出機3台に各々投入し、支持層1、2、ヒートシール層を230℃の押出温度で溶融混練後、230℃の3種3層Tダイより押出し、40℃のキャスティングロールで急冷し積層フィルムを成形し、支持層1の表面にコロナ放電処理を施した。得られた積層フィルムの総厚みは50μmで、支持層1の厚さが5μm、支持層2の厚さが40μm、ヒートシール層の厚さが5μmであった。本発明の積層フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0063】
実施例2
実施例1のヒートシール層の1-ブテン共重合直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)を1-オクテン共重合直鎖状低密度ポリエチレン(LL-2)とした以外は、実施例1と同様に積層フィルムを得た。本発明の積層フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0064】
実施例3
実施例1のヒートシール層のシングルサイト触媒法のエチレン・プロピレンランダムコポリマー(PP-1)35質量%と1-オクテン共重合直鎖状低密度ポリエチレン(LL-2)60質量%とエチレン-α-オレフィンランダム共重合体エラストマー(E-1)5質量%混合した樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様に積層フィルムを得た。本発明の積層フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0065】
実施例4
実施例1のヒートシール層のシングルサイト触媒法のエチレン・プロピレンランダムコポリマー(PP-1)25質量%とシングルサイト触媒法のエチレン・プロピレンランダム共重合体(PP-2)5質量%と1-ブテン共重合直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)70質量%混合した樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様に積層フィルムを得た。本発明の積層フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0066】
実施例5
支持層1として、1-オクテン共重合直鎖状低密度ポリエチレン(LL-2)100質量%を用い、支持層2として、1-ブテン共重合直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)100質量%とした以外は実施例1と同様に積層フィルムを得た。本発明の積層フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0067】
実施例6
実施例5と同様の樹脂組成物を用い、ヒートシール層の厚みを3μmとした以外は、実施例1と同様に積層フィルムを得た。本発明の積層フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0068】
実施例7
実施例5と同様の樹脂組成物を用い、230℃の2種2層Tダイより支持層の厚みを35μmの1層とし、ヒートシール層の厚みを15μmとした以外は、実施例1と同様に積層フィルムを得た。本発明の積層フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0069】
実施例8
支持層1として、1-ブテン共重合直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)70質量%と高密度ポリエチレン(HD-1)30質量%混合した樹脂組成物を用いた以外は、実施例5と同様に積層フィルムを得た。本発明の積層フィルムとして要求特性を満足していた。
【0070】
実施例9
支持層1、2として、1-ブテン共重合直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)70質量%と高密度ポリエチレン(HD-1)30質量%混合した樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様に積層フィルムを得た。本発明の積層フィルムとして要求特性を満足していた。
【0071】
実施例10
支持層1、2として、1-ブテン共重合直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)90質量%と植物由来のポリテルペン樹脂(PT-1)10質量%混合した樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様に積層フィルムを得た。本発明の積層フィルムとして要求特性を満足していた。
【0072】
実施例11
支持層1、2として、1-ブテン共重合直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)90質量%とエチレン-α-オレフィンランダム共重合体エラストマー(E-1)10質量%混合した樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様に積層フィルムを得た。本発明の積層フィルムとして要求特性を満足していた。
【0073】
実施例12
支持層1、2として、1-ブテン共重合直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)70質量%と高圧法低密度ポリエチレン(LD-1)30質量%混合した樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様に積層フィルムを得た。本発明の積層フィルムとして要求特性を満足していた。
【0074】
比較例1
支持層1、2として、1-ブテン共重合直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)30質量%と高密度ポリエチレン(HD-1)70質量%混合した樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様に積層フィルムを得た。得られたフィルムを実施例1と同様に評価した。支持層1に高密度ポリエチレンの添加が多く、結晶性が高くなった影響で、シール後の破断伸度、破断強度ともに低下が大きく本発明の要求特性を満足するものではなかった。
【0075】
比較例2
支持層1、2は、比較例1と同じ組成とし、ヒートシール層をシングルサイト触媒法のエチレン・プロピレンランダムコポリマー(PP-1)70質量%と1-ブテン共重合直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)30質量%混合した樹脂組成物を用いた以外は、比較例1と同様に積層フィルムを得た。得られたフィルムを実施例1と同様に評価した。本フィルムは、シール前後の破断伸度、破断強度が大きく、ヒートシール層にエチレン・プロピレンランダムコポリマーの添加量が多く、ヒートシール温度180℃での秒数依存性のヒートシール強度について強度差が大きくなり、本発明の要求特性を満足するものではなかった。
【0076】
比較例3
支持層1、2は、比較例1と同じ組成とし、ヒートシール層をシングルサイト触媒法のエチレン・プロピレンランダム共重合体(PP-2)70質量%とした以外は、比較例1と同様に積層フィルムを得た。得られたフィルムを実施例1と同様に評価した。本フィルムは、シール前後の破断伸度、破断強度が大きく、また、ヒートシール層のエチレン・プロピレンランダム共重合体(PP-2)の融点が高いため低温シール性が損なわれ、140℃×1秒シールのヒートシール強度が弱く、またヒートシール温度180℃での秒数依存性のヒートシール強度について強度差が大きく本発明の要求特性を満足するものではなかった。
【0077】
比較例4
支持層1、2は、比較例1と同じ組成とし、ヒートシール層の厚みを25μm、支持層2の厚みを20μmにした以外は、比較例3と同様に積層フィルムを得た。得られたフィルムを実施例1と同様に評価した。本フィルムは、シール前後の破断伸度、破断強度が大きく、ヒートシール層の厚みが厚ため、剥離外観が悪く、また、エチレン・プロピレンランダム共重合体(PP-2)の融点が高いため、低温シール性が損なわれ、140℃×1秒シールのヒートシール強度が弱く、またヒートシール温度180℃での秒数依存性のヒートシール強度について強度差が大きく本発明の要求特性を満足するものではなかった。
【0078】
【0079】
【0080】