(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002077
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】歯科用ハンドピース
(51)【国際特許分類】
A61C 1/08 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
A61C1/08 F
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101057
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000138185
【氏名又は名称】株式会社モリタ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 仁
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA06
4C052AA10
4C052BB01
4C052EE03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】切削工具の縦方向に噴霧注水を広げることができ、かつ切削工具の横方向への噴霧注水の広がりを抑えることができる歯科用ハンドピースを提供する。
【解決手段】歯科用ハンドピースは、切削工具3を着脱可能に保持する歯科用ハンドピースである。歯科用ハンドピースは、切削工具3を挿入可能な挿入口IPが設けられ、挿入口IPに挿入された切削工具3を保持する保持部と、保持部を収容し、注水穴WHおよび複数のチップエア穴CHが設けられた本体部MPとを備えている。複数のチップエア穴CHは、挿入口IPと注水穴WHとが並ぶ第1方向D1に交差する第2方向D2に注水穴WHを挟むように配置されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削工具を着脱可能に保持する歯科用ハンドピースであって、
前記切削工具を挿入可能な挿入口が設けられ、前記挿入口に挿入された前記切削工具を保持する保持部と、
前記保持部を収容し、注水穴および複数のチップエア穴が設けられた本体部とを備え、
前記本体部に設けられた複数の前記チップエア穴は、前記挿入口と前記注水穴とが並ぶ第1方向に交差する第2方向に前記注水穴を挟むように配置されている、歯科用ハンドピース。
【請求項2】
複数の前記チップエア穴は、第1穴、第2穴、第3穴、第4穴を含み、
前記第1穴と前記第2穴は、前記第1方向に沿って並んでおり、
前記第3穴と前記第4穴は、前記第1方向に沿って並んでおり、
前記第1穴と前記第3穴は、前記第2方向に前記注水穴を挟んで並んでおり、かつ前記第1方向に沿って前記注水穴の前記第1方向の中心に対して一方側に配置されており、
前記第2穴と前記第4穴は、前記第2方向に前記注水穴を挟んで並んでおり、かつ前記第1方向に沿って前記注水穴の前記第1方向の前記中心に対して他方側に配置されている、請求項1に記載の歯科用ハンドピース。
【請求項3】
前記第1穴および前記第3穴は、前記注水穴に向けて傾斜しており、
前記第2穴および前記第4穴は、前記注水穴に向けて傾斜している、請求項2に記載の歯科用ハンドピース。
【請求項4】
前記注水穴の開口は、前記第1方向に前記第2方向よりも大きな寸法を有している、請求項1~3のいずれか1項に記載の歯科用ハンドピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用ハンドピースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯科用ハンドピースは、歯科用ハンドピースに装着された切削工具を高速回転させる。このため、歯牙の切削時に切削工具が発熱する。これにより、生体に悪影響を及ぼすことがある。したがって、歯科用ハンドピースは、切削工具を冷却するために切削工具に噴霧水を注水する機能を備えている。
【0003】
切削工具に噴霧水を注水する機能を備えた歯科用ハンドピースは、たとえば、特許第5186464号公報(特許文献1)に記載されている。この公報に記載された歯科用ハンドピースでは、ヘッド部に給水管路からの水と給気管路からの空気とを混合して噴射口から切削工具に向けて噴射するための水噴霧管路が形成されている。水噴霧管路は、給水管路および給気管路の合流部から斜め下向きに形成され、ヘッド部の基部下面で開口した噴射口より噴霧水を注水するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公報に記載された歯科用ハンドピースでは、給水管路および給気管路の合流部で混合された噴霧水が噴出口から切削工具に向けて注水されるため、噴射口から噴霧水が切削工具の縦方向および横方向に均等に広がる。切削工具に確実に当てるために、切削工具の縦方向(長手方向)に噴霧水が広がることが求められる。他方、切削工具の横方向(短手方向)に噴霧水が広がると、歯牙の切削時に切削部位が見にくくなる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、切削工具の縦方向に噴霧水を広げることができ、かつ切削工具の横方向への噴霧水の広がりを抑えることができる歯科用ハンドピースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の歯科用ハンドピースは、切削工具を着脱可能に保持する歯科用ハンドピースである。歯科用ハンドピースは、切削工具を挿入可能な挿入口が設けられ、挿入口に挿入された切削工具を保持する保持部と、保持部を収容し、注水穴および複数のチップエア穴が設けられた本体部とを備えている。複数のチップエア穴は、挿入口と注水穴とが並ぶ第1方向に交差する第2方向に注水穴を挟むように配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の歯科用ハンドピースによれば、切削工具の縦方向に噴霧水を広げることができ、かつ切削工具の横方向への噴霧水の広がりを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る歯科用ハンドピースを概略的に示す斜視図である。
【
図3】
図2のIII部分を拡大して示す拡大断面図である。
【
図5】実施の形態に係る歯科用ハンドピースの注水穴および複数のチップエア穴と切削工具の位置関係を示す図である。
【
図6】
図5のVI部分の噴霧部を拡大して示す拡大図である。
【
図7】実施の形態に係る歯科用ハンドピースでの噴霧水の状態を示す斜視図である。
【
図8】実施の形態に係る歯科用ハンドピースでの噴霧水の状態を示す側面図である。
【
図9】実施の形態に係る歯科用ハンドピースの変形例1の噴霧部を拡大して示す拡大図である。
【
図10】実施の形態に係る歯科用ハンドピースの変形例2の噴霧部を拡大して示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
まず、本発明の実施の形態に係る歯科用ハンドピースの構成について説明する。
【0011】
図1を参照して、歯科用ハンドピース1は、切削工具3を着脱可能に保持するように構成されている。歯科用ハンドピース1は、歯牙を切削する切削工具3を保持して高速回転させるように構成されている。本実施の形態では、歯科用ハンドピース1は、モータによって切削工具3を高速回転させるモータハンドピースである。より具体的には、歯科用ハンドピース1は、コントラアングル型ハンドピースである。なお、歯科用ハンドピース1は、エアタービンによって切削工具3を高速回転させるエアタービンハンドピースであってもよい。
【0012】
歯科用ハンドピース1の長手方向の一端側(基端側)に駆動部2が接続されている。駆動部2は、歯科用ハンドピース1の基端側に着脱可能に構成されている。駆動部2は、回転駆動するモータを内部に備えている。歯科用ハンドピース1の長手方向の他端側(先端側)に切削工具3が保持されている。切削工具3は、回転することにより歯牙を切削可能に構成されている。
【0013】
歯科用ハンドピース1は、ボディ部4、ネック部5およびヘッド部6を備えている。歯科用ハンドピース1の長手方向の基端側から先端側に向けて、ボディ部4、ネック部5およびヘッド部6は、この順に並んでいる。
【0014】
ボディ部4は、駆動部2に着脱可能に構成されている。ボディ部4は、歯科用ハンドピース1の基端側に配置されている。ボディ部4は、歯科用ハンドピース1の先端側に向かうに伴って徐々に縮径している。ボディ部4は、略円筒状のハウジングを備えている。ボディ部4は、施術者およびメンテナス作業者などの利用者が把持するグリップ部分である。
【0015】
ネック部5は、利用者が歯科用ハンドピース1を、切削工具3を下方にヘッド部6を上方にボディ部4を水平にして持った場合に、長手方向の中央部分において上方へ屈曲するとともに、先端側に向かうに伴って徐々に縮径している。ネック部5は、略円筒状のハウジングを備えている。
【0016】
ヘッド部6は、ネック部5を介してボディ部4と接続されている。ヘッド部6は、ネック部5の長手方向に対して略直交する方向(
図1において上下方向)を軸方向とする略円筒体状のハウジングを備えている。
【0017】
図1および
図2を参照して、歯科用ハンドピース1は、駆動部2のモータの回転を回転伝達機構10で増速して切削工具3を高速回転させるように構成されている。回転伝達機構10は、ボディ部4、ネック部5およびヘッド部6の各々のハウジングの内部に収容されている。
【0018】
回転伝達機構10は、第1伝達機構20、第2伝達機構30、第3伝達機構40および工具回転機構50を含んでいる。歯科用ハンドピース1の長手方向の基端側から先端側に向けて、第1伝達機構20、第2伝達機構30、第3伝達機構40および工具回転機構50は、この順に並んでいる。
【0019】
第1伝達機構20は、ボディ部4およびネック部5のハウジングの内部に配置されている。第2伝達機構30は、ネック部5のハウジングの内部に配置されている。第3伝達機構40は、ネック部5およびヘッド部6の内部に配置されている。工具回転機構50は、ヘッド部6のハウジングの内部に配置されている。
【0020】
第1伝達機構20は、駆動部2のモータの回転を第2伝達機構に伝達するように構成されている。第1伝達機構20は、モータ連結部21、第1回転軸22、2つの第1軸受部23およびドライブギヤ24を備えている。モータ連結部21は、駆動部2のモータの軸部に連結可能に構成されている。モータ連結部21は、第1回転軸22の基端側に接続されている。第1回転軸22は、中空状の略円柱体である。第1回転軸22は、軸方向に延びる回転軸を中心として回転可能に2つの第1軸受部23に保持されている。2つの第1軸受部23は、第1回転軸22の軸方向に互いに間隔をあけて配置されている。2つの第1軸受部23の各々はボールベアリングである。ドライブギヤ24は、第1回転軸22の先端側に接続されている。ドライブギヤ24は内歯車である。
【0021】
第2伝達機構30は、第1伝達機構20の回転を第3伝達機構40に伝達するように構成されている。第2伝達機構30は、ピニオンギヤ31、第2回転軸32、2つの第2軸受部33およびベベルギヤ34を備えている。ピニオンギヤ31は、ドライブギヤ24に噛み合うように構成されている。ピニオンギヤ31は、第2回転軸32の基端側に接続されている。第2回転軸32は、中実状の略円柱体である。第2回転軸32は、軸方向に延びる回転軸を中心として回転可能に2つの第2軸受部33に保持されている。2つの第2軸受部33は、第2回転軸32の軸方向に互いに間隔をあけて配置されている。2つの第2軸受部33の各々はボールベアリングである。ベベルギヤ34は、第2回転軸32の先端側に接続されている。ベベルギヤ34は内歯車である。
【0022】
第3伝達機構40は、第2伝達機構30の回転を工具回転機構50に伝達するように構成されている。第3伝達機構40は、ミドルギヤ41、第3回転軸42、2つの第3軸受部43およびフロントギヤ44を備えている。ミドルギヤ41は、ベベルギヤ34に噛み合うように構成されている。ミドルギヤ41は、第3回転軸42の基端側に接続されている。第3回転軸42は、中実状の略円柱体である。第3回転軸42は、軸方向に延びる回転軸を中心として回転可能に2つの第3軸受部43に保持されている。2つの第3軸受部43は、第3回転軸42の軸方向に互いに間隔をあけて配置されている。2つの第3軸受部43の各々はボールベアリングである。フロントギヤ44は、第3回転軸42の先端側に接続されている。フロントギヤ44は外歯車である。
【0023】
工具回転機構50は、第3伝達機構40の回転を切削工具3に伝達することにより切削工具3を回転させるように構成されている。工具回転機構50は、保持部51および2つのヘッド部軸受部52を備えている。
【0024】
保持部51は、切削工具3の軸方向に延びる回転軸を中心として回転可能に2つのヘッド部軸受部52に保持されている。2つのヘッド部軸受部52は、保持部51の軸方向に互いに間隔をあけて配置されている。2つのヘッド部軸受部52の各々はボールベアリングである。
【0025】
切削工具3は、基軸3aと、切削刃部3bとを含んでいる。基軸3aおよび切削刃部3bは、一体的に構成されている。基軸3aおよび切削刃部3bは、略円柱上に構成されている。基軸3aは、ヘッド部6の内部の保持部51により保持される。切削刃部3bは、基軸3aの軸方向に基軸3aから突出している。
【0026】
保持部51は、切削工具3を着脱自在に保持する機構を有している。保持部51は、回転筒53、チャック54、弾性体55、スライドリング56およびリングストッパー57を備えている。
【0027】
チャック54、弾性体55、スライドリング56およびリングストッパー57は、回転筒53に挿入されている。チャック54、弾性体55、スライドリング56およびリングストッパー57は、切削工具3の刃先側から刃元側に向けてこの順番で回転筒53の内部に収容されている。
【0028】
回転筒53は、切削工具3を挿入可能に構成されている。回転筒53は、円筒状に形成されたヘッド側歯車である。回転筒53は、チャック54、弾性体55、スライドリング56およびリングストッパー57を収容可能な内径と、ヘッド部軸受部52の内輪に嵌合可能な外径とを有する略円筒体である。
【0029】
回転筒53は、ネック部5の長手方向に沿った軸を回転軸とした第3伝達機構40の回転を、切削工具3の長手方向に沿った軸を回転軸とした工具回転機構50の回転に変換することができる。
【0030】
回転筒53は、略円筒体である軸本体53aおよびローターギヤ歯53bを備えている。ローターギヤ歯53bは傘歯車である。軸本体53aは略円筒体である。ローターギヤ歯53bは、軸本体53aの外周面から径外側に突出するとともに、断面視において刃先側の面が径外側に向かうに伴って下方に傾斜している。ローターギヤ歯53bは、軸本体53aの外周に沿って等間隔で複数設けられている。複数のローターギヤ歯53bが設けられた回転筒53は、傘歯車であり、第3伝達機構40のフロントギヤ44に噛合する従動歯車である。
【0031】
チャック54は、回転筒53に挿入された切削工具3を着脱可能に構成されている。チャック54は、回転筒53の内部において、切削工具3の長手方向の略中央よりも刃先側(下方)に配設される。チャック54は、切削工具3の長手方向に沿って挿通された切削工具3の基軸3aを保持可能に構成されている。
【0032】
弾性体55は、チャック54が切削工具3と係合するようにチャック54を付勢するように構成されている。弾性体55は、圧縮方向に変形可能な圧縮弾性体であって、回転筒53の内部においてチャック54の上部に外嵌される。
【0033】
スライドリング56は、回転筒53内を軸方向に移動可能に構成されている。スライドリング56は、弾性体55より切削工具3の刃元側に収容され、弾性体55を押圧可能に構成されている。
【0034】
保持部51では、圧縮変形する前の弾性体55がチャック54における刃基側の端部を押圧し、弾性体55の押圧によって縮径されたチャック54は、切削工具3を保持することができる。一方、弾性体55が圧縮変形すると、チャック54による切削工具3の保持を開放することができる。
【0035】
リングストッパー57は、略リング状に構成され、スライドリング56の刃元側の部分に外嵌している。リングストッパー57は、切削工具3が装着されるときに切削工具3の位置を規制することができる。
【0036】
2つのヘッド部軸受部52の各々は、略リング状に形成されている。2つのヘッド部軸受部52は、ヘッド部6の内部において、保持部51の刃先側端部および刃基側端部を回転自在に支持している。
【0037】
ヘッド部6は、軸部60、ハウジング本体部61およびプッシュキャップ62を備えている。軸部60は、ネック部5の先端側に接続されている。ハウジング本体部61は、装着される切削工具3の長手方向に沿って伸びる中空状の略円筒体である。ハウジング本体部61の内部に保持した切削工具3を回転駆動させる工具回転機構50が収容されている。ハウジング本体部61の上端および下端は開口されており、上端部分にはプッシュキャップ62が配置されている。プッシュキャップ62は、ヘッド部6に対する切削工具3の着脱操作を行うためのものである。
【0038】
図3および
図4を参照して、保持部51には切削工具3を挿入可能な挿入口IPが設けられている。保持部51は、挿入口IPに挿入された切削工具3を保持するように構成されている。ヘッド部6は、噴霧部63を備えている。歯科用ハンドピース1は、本体部MPを備えている。本実施の形態では、軸部60、ハウジング本体部61および噴霧部63は、本体部MPを構成している。保持部51は、本体部MPに収容されている。本体部MPには注水穴WHおよび複数のチップエア穴CHが設けられている。本実施の形態では噴霧部63に注水穴WHおよび複数のチップエア穴CHが設けられている。注水穴WHが1つのみ設けられた1点注水が採用されている。
【0039】
噴霧部63は、軸部60に取り付けられている。軸部60には注水管路WPおよび給気管路APが設けられている。注水管路WPは注水穴WHに連通している。注水管路WPは注水穴WHに水を供給可能に構成されている。注水管路WPは注水管P1に接続されている。注水管P1は、
図1に示される駆動部2の注水部に接続されている。給気管路APは複数のチップエア穴CHに連通している。給気管路APは、複数のチップエア穴CHに空気を供給可能に構成されている。給気管路APは給気管P2に接続されている。給気管P2は、
図1に示される駆動部2の給気部に接続されている。
【0040】
図5および
図6を参照して、注水穴WHは切削工具3に向いて配置されている。注水穴WHの開口は円形である。複数の注水穴WHの開口は真円形であってもよい。注水穴WHの開口面積は、複数のチップエア穴CHの各々の開口面積よりも大きい。
【0041】
本体部MPに設けられた複数のチップエア穴CHは、挿入口IPと注水穴WHとが並ぶ第1方向D1に交差する第2方向D2に注水穴WHを挟むように配置されている。第1方向D1は第2方向D2に直交していてもよい。複数のチップエア穴CHの各々の開口は円形である。複数のチップエア穴CHの各々の開口は真円形であってもよい。複数のチップエア穴CHの各々は互いに同じ形状に形成されていてもよい。
【0042】
複数のチップエア穴CHは、第1穴CH1、第2穴CH2、第3穴CH3、第4穴CH4を含んでいる。第1穴CH1と第2穴CH2は、第1方向D1に沿って並んでいる。第3穴CH3と第4穴CH4は、第1方向D1に沿って並んでいる。第1穴CH1と第3穴CH3は、第2方向D2に注水穴WHを挟んで並んでおり、かつ第1方向D1に沿って注水穴WHの第1方向D1の中心Cに対して一方側に配置されている。第2穴CH2と第4穴CH4は、第2方向D2に注水穴WHを挟んで並んでおり、かつ第1方向D1に沿って注水穴WHの第1方向D1の中心Cに対して他方側に配置されている。
【0043】
第1方向D1において、第1穴CH1および第3穴CH3、ならびに、第2穴CH2および第4穴CH4は、注水穴WHの内側に配置されている。第2方向D2において、第1穴CH1は第3穴CH3に向かい合っており、第2穴CH2は第4穴CH4に向かい合っている。
【0044】
第1穴CH1および第3穴CH3は、注水穴WHに向けて傾斜している。第1穴CH1および第3穴CH3の傾斜角度はたとえば5°である。第2穴CH2および第4穴CH4は、注水穴WHに向けて傾斜している。第2穴CH2および第4穴CH4の傾斜角度はたとえば5°である。
【0045】
注水穴WHの開口は、第1方向D1に第2方向D2よりも大きな寸法を有している。注水穴WHの開口は、第1方向D1に長手方向を有しており、第2方向D2に短手方向を有している。注水穴WHには、第1方向D1において開口に向かって開口面積が大きくなるテーパ部が設けられている。テーパ部は、平面視において三日月状に構成されている。
【0046】
次に、実施の形態に係る歯科用ハンドピース1の噴霧水SWが供給される動作について説明する。
【0047】
図3および
図4に示されるように、注水管路WPから注水穴WHに供給された水は、注水穴WHから注水される。注水穴WHから注水された水に当たるように、給気管路APから複数のチップエア穴CHに供給された空気は、複数のチップエア穴CHから噴射される。これにより、噴霧水が形成される。噴霧水は、切削工具3に向けて噴射される。噴霧水は、特に切削工具3の切削刃部3bに向けて噴射される。
【0048】
図5および
図6に示されるように、複数のチップエア穴CHから噴射される空気によって空気と注水穴WHからの注水とで形成される噴霧水SWの第2方向D2への広がりが抑制される。具体的には、第1穴CH1および第2穴CH2によって第2方向D2の一方側への噴霧水SWの広がりが抑制され、第3穴CH3および第4穴CH4によって第2方向D2の他方側への噴霧水SWの広がりが抑制される。複数のチップエア穴CHの各々から略均等の圧力で空気が噴射される。
【0049】
図7および
図8に示されるように、噴霧水SWは、複数のチップエア穴CHから噴射される空気によって縦方向D3に広がる。このようにして、噴霧水SWは、縦方向D3に広がり、噴霧水SWの第2方向(横方向)D2への広がりが抑制される。
【0050】
続いて、
図9および
図10を参照して、実施の形態に係る歯科用ハンドピース1の変形例について説明する。
【0051】
図9に示されるように、実施の形態に係る歯科用ハンドピース1の変形例1では、上記とは複数のチップエア穴CHの構成が異なっている。実施の形態に係る歯科用ハンドピース1の変形例1では上記とはチップエア穴CHの構成が異なっている。複数のチップエア穴CHは、第1穴CH1および第2穴CH2を含んでいる。第1穴CH1は第1方向D1に長手方向を有する長穴である。第2穴CH2は第1方向D1に長手方向を有する長穴である。第1穴CH1と第2穴CH2は第2方向D2に注水穴WHを挟んで並んでいる。
【0052】
図10に示されるように、実施の形態に係る歯科用ハンドピース1の変形例2では、上記とは複数のチップエア穴CHの構成が異なっている。複数のチップエア穴CHは、第1穴CH1、第2穴CH2、第3穴CH3、第4穴CH4、第5穴CH5、第6穴CH6を含んでいる。第1穴CH1、第2穴CH2および第5穴CH5は、第1方向D1に沿って並んでいる。第3穴CH3、第4穴CH4および第6穴CH6は、第1方向D1に沿って並んでいる。第1穴CH1と第3穴CH3は、第1方向D1に第5穴CH5を挟んで並んでいる。第2穴CH2と第4穴CH4は、第1方向D1に第6穴CH6を挟んで並んでいる。
【0053】
次に、実施の形態に係る歯科用ハンドピース1の作用効果について説明する。
実施の形態に係る歯科用ハンドピース1によれば、本体部MPに設けられた複数のチップエア穴CHは、挿入口IPと注水穴WHとが並ぶ第1方向D1に交差する第2方向D2に注水穴WHを挟むように配置されている。これにより、噴霧水SWは複数のチップエア穴CHから噴射される空気によって縦方向D3に広がるため、噴霧水SWを縦方向D3に広げることができる。また、複数のチップエア穴CHから噴射される空気によって噴霧水SWの第2方向D2への広がりを抑制することができる。したがって、縦方向D3に噴霧水SWを広げることができ、かつ第2方向(横方向)D2への噴霧水SWの広がりを抑えることができる。
【0054】
実施の形態に係る歯科用ハンドピース1では、注水穴WHが1つのみ設けられた、いわゆる1点注水が採用されている。1点注水は、注水穴WHが複数設けられた多点注水よりも注水管路WPおよび給気管路APを短くすることができる。このため、ヘッド部6の前方のスペースを小さくすることができる。したがって、実施の形態に係る歯科用ハンドピース1では、ヘッド部6の縦方向D3の寸法を小さくすることができる。つまり、ヘッド部6の高さを低くすることができる。
【0055】
また、特許文献1のように、給水管路と給気管路とが合流する合流部がヘッド部6の内側に設けられる場合には、合流部からヘッド部6の下面の噴出口まで水噴霧管路の高さ分だけヘッド部6の高さが大きくなる。実施の形態に係る歯科用ハンドピース1では、注水穴WHから注水された水と複数のチップエア穴CHから噴射された空気とが歯科用ハンドピース1の外側で衝突して噴霧水SWが形成される。このため、ヘッド部6の高さを低くすることができる。
【0056】
実施の形態に係る歯科用ハンドピース1によれば、第1穴CH1と第3穴CH3は、第2方向D2に注水穴WHを挟んで並んでおり、かつ第1方向D1に沿って注水穴WHの第1方向D1の中心Cに対して一方側に配置されている。第2穴CH2と第4穴CH4は、第2方向D2に注水穴WHを挟んで並んでおり、かつ第1方向D1に沿って注水穴WHの第1方向D1の中心Cに対して他方側に配置されている。このため、第1穴CH1および第3穴CH3、ならびに、第2穴CH2および第4穴CH4から噴射される空気によって噴霧水SWが第1方向D1に分断されることを抑制することができる。したがって、噴霧水SWを第1方向D1に連続して噴射することができる。
【0057】
実施の形態に係る歯科用ハンドピース1によれば、第1穴CH1および第3穴CH3は、注水穴WHに向けて傾斜しており、第2穴CH2および第4穴CH4は、注水穴WHに向けて傾斜している。このため、第1穴CH1および第3穴CH3、ならびに、第2穴CH2および第4穴CH4から噴射される空気を注水穴WHからの注水される水に衝突させることができる。これにより、噴霧水を形成することができる。
【0058】
実施の形態に係る歯科用ハンドピース1によれば、注水穴WHの開口は、第1方向D1に第2方向D2よりも大きな寸法を有している。このため、噴霧水SWを第2方向D2よりも第1方向D1に長くすることができる。したがって、噴霧水SWを縦長にすることができる。よって、噴霧水SWを縦方向D3に長くすることができる。これにより、切削工具3が長い場合でも噴霧水SWを切削工具3に確実に噴射することができる。
【0059】
また、注水穴WHの開口を単純に大きくすると、注水穴WHの開口は第1方向D1のみならず第2方向D2にも大きくなる。この場合、噴霧水SWが第2方向D2に広がることにより使用者の術野が妨げられるため、注水穴WHの開口を単純に大きくすることは好ましくない。実施の形態に係る歯科用ハンドピース1によれば、第2方向D2への噴霧水SWの広がりを抑えることができる。
【0060】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
1 歯科用ハンドピース、2 駆動部、3 切削工具、4 ボディ部、5 ネック部、6 ヘッド部、10 回転伝達機構、20 第1伝達機構、30 第2伝達機構、40 第3伝達機構、50 工具回転機構、51 保持部、52 ヘッド部軸受部、53 回転筒、54 チャック、55 弾性体、56 スライドリング、57 リングストッパー、60 軸部、61 ハウジング本体部、62 プッシュキャップ、63 噴霧部、C 中心、CH チップエア穴、CH1 第1穴、CH2 第2穴、CH3 第3穴、CH4 第4穴、CH5 第5穴、CH6 第6穴、D1 第1方向、D2 第2方向、IP 挿入口、MP 本体部、SW 噴霧水、WH 注水穴。